IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高雄醫學大學の特許一覧

<>
  • 特許-マカ抽出物及びその用途 図1
  • 特許-マカ抽出物及びその用途 図2
  • 特許-マカ抽出物及びその用途 図3
  • 特許-マカ抽出物及びその用途 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】マカ抽出物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/16 20060101AFI20240301BHJP
   C07D 207/333 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 36/31 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C07D207/16 CSP
C07D207/333
A61K36/31
A61P7/02
A61P29/00
A61P37/00
A61P9/00
A61K31/40
A61K31/4015
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022088355
(22)【出願日】2022-05-31
(65)【公開番号】P2022184813
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】63/195,150
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505302362
【氏名又は名称】高雄醫學大學
【氏名又は名称原語表記】KAOHSIUNG MEDICAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.100, Shih-chuan 1st Road, Sanmin Dist. Kaohsiung City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】張芳榮
(72)【発明者】
【氏名】呉志中
(72)【発明者】
【氏名】陳炳宏
(72)【発明者】
【氏名】黄聰龍
(72)【発明者】
【氏名】王士維
(72)【発明者】
【氏名】プルノモ カルティコ アリフ
(72)【発明者】
【氏名】蔡逸宏
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/072684(WO,A1)
【文献】特開2005-281272(JP,A)
【文献】Sonia Piacente et al.,Investigation of the Tuber Constituents of Maca (Lepidium meyenii Walp.),AGRICULTURAL AND FOOD CHEMISTRY,2002年,Vol. 50,p.5621-5625
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4015
A61K 36/31
A61P 7/02
A61P 29/00
A61P 37/00
A61P 9/00
A61K 31/40
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(5S)-アセチル-1-(m-メトキシベンジル)-ピロリジン-2-オン、5-メトキシメチル-1-(m-メトキシベンジル)-2-アルデヒドピロール及び/または5-ヒドロキシメチル-1-(m-メトキシベンジル)-2-アルデヒドピロールから選択されることを特徴とする、マカ抽出物。
【請求項2】
抗血栓形成、抗好中球性炎症、抗アレルギー及び/または血管新生促進の薬物の調製に応用されることを特徴とする、請求項1記載のマカ抽出物。
【請求項3】
請求項1記載のマカ抽出物の抽出方法であって、その抽出プロセスは:
マカ塊茎を室温で95%エタノール水溶液で抽出してマカ粗抽出物を得る工程と、
前記マカ粗抽出物を酢酸エチル及び水で相分離抽出して、第1の水層抽出物及び酢酸エチル層抽出物を得る工程と、
前記酢酸エチル層抽出物を75%メタノール水溶液及びn-ヘキサンで相分離抽出してメタノール層抽出物及びn-ヘキサン層抽出物を得る工程と、
前記メタノール層抽出物をカラムクロマトグラフィーにかけて前記マカ抽出物を得る工程と、
を含むことを特徴とする、マカ抽出物の抽出方法。
【請求項4】
前記メタノール層抽出物をカラムクロマトグラフィーにかける抽出プロセスは:
前記メタノール層抽出物をシリカゲルカラムを用いて溶離液としてn-ヘキサン/アセトンで溶出し、溶出した画分を併合させた後、クロマトグラフィーにより7つの主要な画分F-1からF-7に分離させる工程と、
画分F-3をODSカラムを用いて溶離液としてメタノール/水で溶出し、8つの画分F-3-1からF-3-8を得る工程と、
画分F-3-3をシリカゲルカラムを用いて溶離液としてジクロロメタン/酢酸エチルで溶出し、7つの画分F-3-3-1からF-3-3-7を得る工程と、
画分F-3-3-3をルナシリカゲルカラムを用いて溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチルでの高速液体クロマトグラフィーで分離し、5-ヒドロキシメチル-1-(m-メトキシベンジル)-2-アルドルピロールを得る工程と、
画分F-3-3-4をシリカゲルカラムを用いて溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチルで溶出し、4つの画分F-3-3-4-1からF-3-3-4-4を得る工程と、
画分F-3-3-4-3をCNカラムを用いて溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチルでの高速液体クロマトグラフィーで分離し、(5S)-アセチル-1-(m-メトキシベンジル)-ピロリジン-2-オンを得る工程と、
画分F-3-4をシリカゲルカラムを用いて溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチルで溶出し、6つの画分F-3-4-1からF-3-4-6を得る工程と、
画分F-3-4-2をルナシリカゲルカラムを用いて溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチルでの高速液体クロマトグラフィーで分離し、5-メトキシメチル-1-(m-メトキシベンジル)-2-アルドルピロールを得る工程と、
を含むことを特徴とする、請求項3記載のマカ抽出物の抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マカ抽出物及びその用途に関する。特に、特定の溶媒を用いて抽出するマカ抽出物の、抗血栓形成、抗好中球性炎症、抗アレルギー及び/または血管新生促進における用途に関する。
【背景技術】
【0002】
マカは、[学名]Lepidium meyenii Walp、ペルー人参とも言われ、アブラナ科の植物に属し、ペルーのアンデスの薬用植物であり、その根または塊茎は、性機能と生殖能力を改善するための機能性食品および民間薬としてペルーの地元の人々に使用されている。
【0003】
近年、様々な薬理学的研究により、マカ抽出物は、抗疲労、性機能改善、抗骨粗鬆症、抗炎症、抗ウイルスおよび抗腫瘍活性などの様々な活性を有することを示した。
【0004】
さらに、いくつかの研究は、マカ抽出物が免疫機能を調節し、肝臓を保護する活性を有し、また閉経後症候群(postmenopausal syndrome)および良性前立腺肥大症(benign prostate hyperplasia)に対する治療効果を有することを示した。
【0005】
マカの食用部分の塊茎は、大量の炭水化物、タンパク質と脂質との一次代謝産物(primary metabolites)を含み、さらにアルカロイド(alkaloids)、フラボノリグナン(flavonolignans)、トリテルペノイド(glucosinolates)およびグルコシノレート(glucosinolates)などの様々な二次代謝産物を含む。
【0006】
それらの中で、アルカロイド誘導体は、研究されてきたマカ二次代謝産物のほとんどを表す生物学的に活性な成分であると考えられ、その次代謝産物はアルカロイドアミド(マカミド)、ヒダントイン誘導体(マカヒダントイン、メイエニヒダントイン、マカチオヒダントインなど)、ヘキサヒドロイミダゾールチアゾール誘導体(メイエニインなど)、イミダゾールアルカロイド(レピジリンなど)、ピリジン誘導体(マカリジン)およびピロール誘導体(マカピロリン)を含む。
【0007】
過去30年間で、マカはすでに需要の高い天然のヘルスケア材料および栄養補助食品として、世界中の様々な製品において高い市場価値を有する。したがって、関連分野の数多くの学者は、マカについて広範な研究を行って、人体への有益な効果の成分と試験的証拠を求めた。
【0008】
マカは、ナチュラルヘルス製品及び研究対象としての人気にもかかわらず、まだ発見されていない植物化学物質および生物学的活性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題を考慮して、本発明の作成者は、異なる溶媒による抽出および分離を行い、マカにおいてまだ発見されなかった活性化合物および生物学的活性を見つけるために様々な抽出成分について試験を行った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
マカ塊茎液をエタノール水溶液で抽出した後、減圧濃縮によりマカ粗抽出物を得た後、マカ粗抽出物を酢酸エチルと水を用いて相分離抽出を行い、酢酸エチル層及び第1の水層を得た。第1の水層をn-ブタノール水溶液で相分離抽出を行い、第2の水層とn-ブタノール層を得た。そして酢酸エチル層をメタノールとn-ヘキサンの混合溶液で相分離抽出を行い、メタノール層およびn-ヘキサン層を得た。
【0011】
次に、カラムクロマトグラフィーを用いてn-ヘキサン層およびメタノール層を溶出(elute)して精製し、図1に示す8種類のマカ抽出アルカロイド誘導体化合物を得た。そのうち化合物1、5~8は既知のアルカロイド誘導体化合物であり、化合物2~4は初めて単離された新しいアルカロイド誘導体化合物である。そのうち、化合物1は(5S)-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン(マカピロリドンA)であり、化合物2は(5S)-アセチル-1-(m-メトキシベンジル)-ピロリジン-2-オン(マカピロリドンB)であり、化合物3は5-メトキシメチル-1-(m-メトキシベンジル)-2-アルデヒドピロール(マカピロリンD)、化合物4は5-ヒドロキシメチル-1-(m-メトキシベンジル)-2-アルドルピロール、化合物5は5-メトキシメチル-1-(ベンジル)-2-アルドルピロール、化合物6は5-ヒドロキシメチル-1-(ベンジル)-2-アルドルピロール、化合物7は3-(ベンジル)-1-(ヒドロキシ)-4-アルドルピリジン、化合物8は3-ヒドロキシ-1-シアノメチルベンゼンである。読みやすくするために、以下は化合物1~8として称する。
【発明の効果】
【0012】
生物活性試験の結果、マカ抽出物における極性溶媒を用いて抽出する部分(即ち、第2の水層およびn-ブタノール層の部分)に抗血栓形成の活性を有し、中/低極性溶媒を用いて抽出する部分(即ち、メタノール層の部分)に抗好中球性炎症及び抗アレルギーの活性を有し、低極性溶媒を用いて抽出する部分(即ち、n-ヘキサン層の部分)には抗好中球性炎症の活性に加えて、血管新生促進の活性も有する。
【0013】
以下、本発明の目的、技術的特徴および利点を容易に理解できるように、本発明の技術的特徴を添付の図面と併せて具体的な実施形態と共に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、図面と併せて以下に説明する。
【0015】
図1図1は、本発明によって抽出されたマカ抽出アルカロイド誘導体の複合構造の概略図である。
図2図2は、本発明におけるマカの液相抽出プロセスの概略フローチャートである。
図3図3は、本発明におけるマカの液相抽出後のメタノール層をカラムクロマトグラフィーにかけたプロセスの概略フローチャートである。
図4図4は、ヒト内皮前駆細胞の管形成に対するn-ヘキサン層とマカラミドに富む画分の影響を示す。そのうちAはn-ヘキサン層であり、Bはマカラミドに富む画分である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の内容は図面と組み合わせて、特定の実施形態をもって本発明の技術を説明する。当該技術分野の技術者は、本発明に開示される内容から、本発明の利点及び効果を容易に理解できるであろう。本発明はまた、他の異なる実施形態によって実施または適用することができる。本明細書における様々な詳細もまた、本発明の要旨から逸脱しない限り、異なる視点および用途に基づいて修正および変更することができる。
【0017】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語)は、本発明が属する技術分野の通常の技術者が一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書が明示的に定義されていない場合、一般的に使用される辞書で定義される用語は、関連技術および本発明の文脈におけるそれらの意味と一致する定義を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味として解釈されるべきではない。
【0018】
素材
【0019】
マカ(Lepidium meyenii Walp.)の乾燥塊茎スライスである植物材料バウチャー標本(No.Lepidium-1)は、台湾高雄市高雄医科大学の自然医学研究所に寄託されている。
【0020】
実施例1
【0021】
抽出及び分離方法
【0022】
図2は、本発明におけるマカの液相抽出プロセスの概略フローチャートである。図2を参照して、マカの乾燥塊茎スライス(1.5kg)を95%エタノール水溶液で室温で毎回4Lエタノール水溶液で抽出し、4回連続抽出した後、減圧濃縮して得られた抽出物を合わせて、マカカラ粗抽出物を得た(400.3g)。マカ粗抽出物を酢酸エチルと水(体積比1:1)で相分離抽出して、第1の水層抽出物(370.1g)と酢酸エチル層抽出物(27.7g)を得た。第1の水層をn-ブタノール(両方の体積比は1:1)で再び相分離抽出して、第2の水層抽出物(351.6g)とn-ブタノール層抽出物(15.0g)を得た。酢酸エチル層抽出物を75%メタノール水溶液及びn-ヘキサン(体積比1:1)で再び相分離抽出して、メタノール層抽出物(6.7g)とn-ヘキサン層抽出物(3.32g)を得た。
【0023】
n-ヘキサン層抽出物は、Sephadex LH-20オープンカラムクロマトグラフィー(150cm×4.0cm i.d.)を使用して溶出し、溶離液はジクロロメタン/メタノール(体積比1:1)、溶出後、アルカロイドアミド(macamides、またはマカミド)が豊富な画分(fraction)が得た。
【0024】
図3は、本発明におけるマカの液相抽出後のメタノール層をカラムクロマトグラフィーにかけたプロセスの概略フローチャートである。図3を参照して、メタノール層抽出物をシリカゲルカラム(30cm×5.5cm i.d.)を用いて溶離液としてn-ヘキサン/アセトン(合計500mL)、両者の体積比は4:1、3:1、2:1、1:1、0:1(アセトンのみ)で順次溶出し、溶出した画分を併合させた後、クロマトグラフィーにより7つの主要な画分F-1からF-7に分離させ、そのうち画分F-2(461.01mg)をシリカゲルカラム(30cm×3.0cm i.d.)を用いて溶離液としてn-ヘキサン/ジクロロメタン/メタノール(合計200mL)、三者の体積比は50:10:0、40:10:1、20:10:1、10:10:1、5:10:1及び0:10:1で順次溶出し、7つの画分(F-2-1からF-2-7)に分離させ、そのうち画分F-2-2(348.40mg)と画分F-2-3(65.84mg)を併合させた後、ODS(OctaDecylSilane、オクタデシルシラン、すなわちカーボン18)カラムで溶出し、溶離液はメタノール/水(合計160mL)、すなわちメタノール水溶液で、体積比10%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、100%で順次溶出し、7つの画分(F-2-2-1からF-2-2-7)に分離させ、そのうち画分F-2-2-2(115.50mg)をシリカゲルカラム(20cm×2.5cm i.d.)を用いて溶離液としてジクロロメタン/酢酸エチル(合計100mL)、両者の体積比は20:1、10:1、5:1、1:1及び0:1で順次溶出し、6つの画分(F-2-2-2-1からF-2-2-2-6)に分離させ、そのうち画分F-2-2-2-4(58.14mg)をシリカゲルカラム(14cm×2.5cm i.d.)を用いて溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチル(合計80mL)、両者の体積比は5:1、3:1、1:1及び0:1で順次溶出し、化合物7(23.62mg)と化合物8(8.44mg)を得た。画分F-2-2-3(23.95mg)はLunaシリカゲルカラム(n-ヘキサン/酢酸エチルの体積比3:1、流量2mL/min)で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離させて化合物5(6.41mg)を得た。
【0025】
また、画分F-3(728.16mg)をODSカラム(6.5cm×4.0cm i.d.)を用いて溶離液としてメタノール/水(合計200mL)、すなわちメタノール水溶液で、体積比10%、30%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%で順次溶出し、8つの画分(F-3-1からF-3-8)に分離させ、そのうち画分F-3-3(203.68mg)をシリカゲルカラム(20cm×2.5cm i.d.)を用いて溶離液としてジクロロメタン/酢酸エチル(合計100mL)、両者の体積比は9:1、4:1、2:1、1:1及び0:1で順次溶出し、7つの画分(F-3-3-1からF-3-3-7)に分離させ、そのうち画分F-3-3-3(8.86mg)をLunaシリカゲルカラム(n-ヘキサン/酢酸エチルの体積比3:2、流量2mL/min)で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離させて化合物4(2.04mg)と化合物6(2.22mg)を得た。また、画分F-3-3-4(94.00mg)をシリカゲルカラム(18cm×2.5cm i.d.)を用いて溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチル(合計100mL)両者の体積比は3:1、2:1、1:1及び0:1で順次溶出し、4つの画分(F-3-3-4-1からF-3-3-4-4)に分離させ、そのうち画分F-3-3-4-3(51.53mg)をCNカラムを用いて(n-ヘキサン/酢酸エチル体積比1:1、流量2mL/min)で、高速液体クロマトグラフー(HPLC)により分離させて化合物1(9.10mg)と化合物2(0.78mg)を得た。画分F-3-4(95.45mg)をシリカゲルカラム((20cm×2.5cm i.d.)を用いて溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチル(合計100mL)両者の体積比は5:1、3:1、1:1及び0:1で順次溶出し、6つの画分(F-3-4-1からF-3-4-6)に分離させ、画分F-3-4-2(1.66mg)をLunaシリカゲルカラム(n-ヘキサン/酢酸エチルの体積比3:1、流量2mL/min)で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分離させて化合物3(0.42mg)を得た。
【0026】
実施例2
【0027】
血管新生促進試験
【0028】
内皮細胞培養:ヒトCD34陽性内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells,EPCs)の単離とし培養は、公知方法(Chen et al.,2018)を使用して実行した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells,HUVECs)はPromoCell(ハイデルベルク、ドイツ)から購入した。EPCとHUVECは、公知方法(Chung et al.、2013)に従ってMV2培地で維持された。
【0029】
細胞増殖測定:EPCおよびHUVECを96ウェルプレートでウェルあたり5x10細胞の密度で一晩培養し、次に試験サンプル(マカ抽出物)の存在下で、元の培地をMV2基本培地に交換して48時間培養した、EPC細胞増殖測定はYang et al.,2019に説明された通りに実行した。
【0030】
毛細血管の様管形成測定:EPCをマトリゲル(matrigel)コーティングされた96ウェルプレートにウェルあたり1.25×10細胞の密度で播種し、MV2基本培地と試験画分で24時間培養し、Yang et al.,2019の方法に従ってEPCの分化と毛細血管の様管形成を調べた。
【0031】
各細胞を培養した後、10μg/mLの各液体層に、5μg/mLのマカラミドに富む画分(すなわち、溶出したn-ヘキサン層)、および50μMの各単離化合物で試験を行い、結果を以下の表1に示す。その結果は、コントロールグループ(DSMO)と比較した平均±SEM(すべての試験を3回繰り返した)であり、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を意味し、-は未テストを意味する。
【0032】
【表1】
【0033】
血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生の重要なメディエーターであり、陽性対照群として使用された。表1から、n-ヘキサン層抽出物がEPCおよびHUVECの細胞増殖を有意に増加させたことがわる。また、n-ヘキサン層由来のマカラミドに富む画分はさらに細胞増殖速度を128±6%に増加させた。そして、マカ抽出物の血管新生促進活性を評価するために、n-ヘキサン層とマカラミドに富む画分をさらに比較した。
【0034】
図4は、ヒト内皮前駆細胞の管形成に対するn-ヘキサン層とマカラミドに富む画分の影響を示す。そのうちAはn-ヘキサン層であり、Bはマカラミドに富む画分である。この図から、n-ヘキサン層とマカダミドに富む画分の両方が濃度に依存していることがわかる。つまり、濃度が高くなると、形成されたEPCの毛細管の長さが長くなる。したがって、上記の試験結果は、n-ヘキサン層抽出物とそのマカラミドに富む画分の両方が、血管新生促進活性を有することを示し、組織の虚血および血管新生を改善することができる。
【0035】
実施例3
【0036】
抗血栓試験
【0037】
インビトロ血栓形成測定:インビトロ血栓形成測定は、Kao et al.,2021に記載された方法を使用して、蛍光色素DiOC6(3)をロードしたヒト全血をコラーゲン被覆フローチャンバー(μ-Slide VI 0.1)に通し、1500s-1の壁せん断速度で2分間灌流した後、リン酸緩衝液で洗浄し、各チャンバーの3つのランダムフィールドをCCDカメラで記録し、血栓で覆われた分野をImageJソフトウェアを使用して分析した。
【0038】
全血を濃度50μg/mLのマカ粗抽出物と各液相抽出の層(すなわち、n-ヘキサン層、第2の水層、メタノール層、及びn-ブタノール層)で処理し、全血の流動状態での血栓形成を測定した。ただ、メタノール層とn-ヘキサノール層は高濃度で使用すると自発的に血小板凝集を誘発するため、テストされていない。結果を以下の表2に示す。その結果は、平均±SEM(すべての試験を3回繰り返した)であり、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を意味し、N/Aはサンプルが培地に添加した時に菌糸体を形成したことを示しているため、結果は実証されていない。
【0039】
【表2】
【0040】
表2からわかるように、マカ粗抽出物で処理された全血サンプルでは、血栓面積が27.8±4.2%減少したが、n-ブタノール層と第2の水層はより優れた抗血栓活性を示し、それぞれ59.9±6.1%と50.5±12.1%の減少を示した。したがって、上記の試験結果は、マカを極性溶媒で抽出する部分が、抗血栓活性を有することを示している。
【0041】
実施例4
【0042】
抗好中球性炎症試験
【0043】
ヒト好中球の単離:好中球は、デキストラン沈降の標準的な方法に従って末梢血から得られ、続いてFicoll-Hypaque勾配で遠心分離し、赤血球の低張溶解により好中球を精製しました。その後、トリパンブルー(trypan blue)排除試験を使用して、精製された好中球に98%を超える生細胞が含まれることを確認し、試験前に精製された好中球をカルシウムを含まないHBSSに4℃で再懸濁しました(Yang et al.,2013)。
【0044】
スーパーオキシドアニオン生成測定およびエラスターゼ放出阻害測定:好中球活性化によるスーパーオキシドアニオン生成レベルの決定は、Yang et al.,2013によって記述された鉄チトクロームc還元法に基づくものである。つまり、好中球(6x10細胞/mL)と0.6mg/mLの鉄シトクロムc及び1mmol/LのCaClを37°Cでを混合した後、細胞をさまざまな濃度のテストサンプル(マカ抽出物)またはDMSO(コントロールとして0.1%)で5分間処理した後、100nMのfMLFで10分間活性化し、細胞をサイトカラシンB(1μg/mL)と一緒に3分間インキュベートし、分光光度計を用いて絶えず攪拌下でフェロサイトカラシンcの減少を伴う500nmの波長での吸光度の変化を継続的に監視すると共に、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ、100U/mL)の有無に基づく反応におけるフェロチトクロームc(21.1mM-1cm-1)の還元の吸光係数の減少で割った値に基づいて差の値を計算する。
【0045】
エラスターゼ(elastase)の放出を使用して活性化好中球上のアズール顆粒(azurophilic granule)の脱顆粒を測定し(Yang et al.,2013)、エラスターゼ基質としてメトキシスクシニル-Ala-Ala-Pro-Val-p-ニトロアニリンを使用して測定を行った。37°Cで好中球(6×10細胞/mL)をマトリックス(100μmol/L)とCaCl2(1mmol/L)の混合物に添加し、さまざまな濃度のテストサンプル(マカ抽出物)またはDMSO(コントロールとして0.1%)で5分間処理した後、fMLF(100nM)/CB(0.5μg/mL)で細胞を刺激し、エラスターゼの放出を測定するために波長405nmでの吸光度を継続的にモニターし、ゲニステイン(Genistein)とLY294002を陽性対照として使用した。試験結果を以下の表3に示しす。その結果は、平均±SEM(すべての試験を3回または4回繰り返した)であり、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、-は未テストを意味する。
【0046】
【表3】
【0047】
表3からわかるように、メタノール層とn-ヘキサン層の抗好中球炎症活性は非常に有意であり、fMLFの完全な除去によって好中球機能が活性化された(それぞれ101.12±0.26%と110.88±0.24%)。メタノール層(10μg/mL)は、すべての液体抽出層でスーパーオキシドアニオン生成とエラスターゼ放出に対して最も強い阻害効果を示したことがわかる。また、n-ヘキサン層(10μg/mL)も、スーパーオキシドアニオン生成(81.46±5.56%)およびエラスターゼ放出(96.39±5.89%)に対して強力な阻害効果を示したが、n-ブタノール層はスーパーオキシドアニオン生成(75.96±2.89%)のみに有意な阻害効果を示した。
【0048】
この試験では、化合物5(10μM)のみがfMLF/CB誘導の好中球でのスーパーオキシドアニオン生成に対してわずかな阻害効果(21.59±5.35%)を示した。メタノール層及びn-ヘキサン層での結果と比較して、単離された化合物は好中球性炎症に対する有意な活性はない。したがって、上記の試験結果から、中/低極性溶媒及び低極性溶媒を用いたマカ抽出物の部分は、抗好中球性炎症活性を有することを示す。
【0049】
実施例5
【0050】
抗アレルギー試験
【0051】
細胞培養:粘膜肥満細胞由来のラット好塩基性白血病(RBL-2H3)は、Korinek et al.,2017によって記述された方法を使用して培養した。細胞は、10%FBSと追加の100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンを添加したDMEM培地で、10cmディッシュ、37°C、5%COインキュベーターで、80%コンフルエンシーのトリプシンで継代培養した。継代培養は100度のトリプシンで継代培養しました。次に、分泌測定のために2x10細胞/mLの密度でプレーティングします。
【0052】
細胞生存率測定:RBL-2H3細胞を96ウェルプレートに2x10細胞/ウェルの濃度で一晩播種した後、さまざまな濃度のサンプル(マカ抽出物、DMSOに溶解)または未処理のコントロールグループ(Tyrodeバッファー中の1%DMSO;135mM NaCl、5mM KCl、1.8mM CaCl、1.0mM MgCl、5.6mM グルコース、20mM HEPESおよび1mg/ml BSA、pH7.4)で細胞を処理し、37°C、5%COで1時間培養した後、各ウェルの培地を除去し、ストックMTT溶液(5mg/mL)を培地で1:10に希釈し、ウェルに添加した(ウェルあたり100μL)。その後、細胞を37℃、5%COで1時間培養し、培地を除去し、形成されたフォルマザン結晶(正常健康な細胞でのみ形成可能)を100μLのDMSOに溶解し、マイクロプレートリーダーを使用して波長574nmの吸光度を測定する前に、プレートを静かに振とうした後に測定する。各サンプルの細胞生存率の値は、コントロールグループ(未処理の細胞)の割合(%)として計算された。
【0053】
RBL-2H3細胞におけるA23187および抗原誘導β-ヘキソサミニダーゼ放出阻害測定:RBL-2H3細胞を96ウェルプレートに2×10細胞/ウェルの密度で分布させ、抗原誘導試験用の細胞を48ウェルプレートに3×10細胞/ウェルの密度で播種し、抗DNP IgE(0.05μg/ml)で感作後、37°C、5%COで一晩培養し、細胞をウェルの底に完全に付着させる。その後、異なる濃度のサンプル(すなわち、DMSOに溶解したマカ抽出物)またはTyrodeバッファー(1%DMSO、未処理の対照群として)を各ウェル(100μL)に添加し、37°C、5%CO2で30分間培養した。その後、上清を除去し、カルシウムイオン担体A23187(0.5μM、A23187誘導測定)または架橋抗原DNP-BSA(100ng/ml、抗原誘導測定)により細胞を刺激し、37°C、5%COで30分間培養し、刺激されていない細胞は0.5%トリトンX-100溶液で切断し、β-ヘキサミナーゼを放出し、または処理せずβ-アミンヘキシルグリコシダーゼを自発的に放出する。対照ウェルおよび試験ウェルの等分上清(50μL)を0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.5)で調製した等体積(50μL)の1μM p-NAGと共に培養し、このバッファーを放出したβ-アミンヘキシルシダーゼの基質とし、37°Cで1時間培養した後、100μLの終端バッファー(0.1M Na/NaHCO,pH10.0)を加えて反応を終了させ、次いで酵素スケールで405nm波長の吸光度を測定した。RBL-2H3細胞放出β-アミンヘキシルグリコシダーゼの阻害率は、対照群(未処理刺激細胞)の割合(%)として算出し、窒素ビスチン(Azelastine、20μM)を陽性対照群として使用した。試験結果を下記表4から表6に示し、その結果は平均値±SEM(試験は3回繰り返した)であり、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001、-は未テストを意味し、N/Aはサンプルが培地に添加した時に菌糸体を形成したことを示しているため、結果は実証されていない。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
表4からわかるように、メタノール層は抗アレルギー試験において有意な効果を有し、A23187(IC50 97.1μg/mL)および抗原(IC50 102.7μg/mL)によって誘発されるRBL-2H3細胞において、β-アミンヘキシルシダーゼの放出が抑制された。
【0058】
表5からわかるように、メチルチアゾリルテトラゾリウム(MTT)測定で>90%の活性を示し、A23187および抗原誘発のRBL-2H3細胞脱顆粒におけるβ-ヘキソサミニダーゼ放出の阻害によって評価された化合物の抗アレルギー活性においても、メタノール層の阻害効果は依然として有意であった。
【0059】
表4および表6からわかるように、化合物5(IC50 96.1μM)は、A23187誘発のRBL-2H3細胞脱顆粒に対して最も強い阻害効果を示し、且つ化合物5のβ-アミンヘキシルグリコシダーゼ放出阻害活性は、10~500μMの間で用量依存的に増加する。また、化合物1(500μM)は、A23187誘発のβ-ヘキソサミニダーゼ放出活性の軽度の阻害(38.0±3.4%)を示した。しかし、どの化合物も抗原誘発のβ-ヘキソサミニダーゼ放出測定で有意な阻害効果を示さなかったため、これらの結果は、化合物5がIgE非依存性アレルゲンを介して作用し、特に肥満細胞へのカルシウム流入の阻害に関連することを示唆した。
【0060】
したがって、上記の試験結果は、中極性および低極性溶媒で抽出されたマカの部分が抗好中球性炎症活性を有することを示した。
【0061】
上記各実施例で得られた試験結果を総合すると、マカ抽出物は極性溶媒を用いて抽出した部分は抗血栓生成活性を有し、中/低極性溶媒を用いて抽出した部分は抗中性顆粒球炎症および抗アレルギー活性を有し、低極性溶媒を用いて抽出した部分も抗中性顆粒球炎症活性と、血管新生促進活性を有し。さらに、マカ抽出の過程において初めて3種類の新しいアルカロイド誘導体化合物が単離された。
【0062】
本発明の技術分野に属する者は、上記内容から理解することができ、本発明は、本開示の技術的概念または本質的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態によって利用することができる。 この点において、本明細書に開示された例示的な形態は、例示的な説明のみを目的としており、本開示の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。その逆に、本開示は、これらの例示的な態様だけでなく、様々な変更、修正、同等物、および他の形態も含まれることを意図している。
【符号の説明】
【0063】
無し。
図1
図2
図3
図4