(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
A63B37/00 128
A63B37/00 142
A63B37/00 140
(21)【出願番号】P 2022174436
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】393000847
【氏名又は名称】キャスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】谷本 佳亮
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-314481(JP,A)
【文献】特開2005-342407(JP,A)
【文献】特開2005-152290(JP,A)
【文献】特開2001-276277(JP,A)
【文献】米国特許第08974320(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にディンプルを備えるゴルフボールにおいて、
前記ディンプルは、第1直径を有する底面と、
円形状の開口の周縁部によって形成され、前記第1直径よりも大きな第2直径を有する開口周縁と、
前記開口周縁から前記底面に向かって延び、該ディンプルの深さ方向に沿って見たときにテーパー状に傾斜する内側壁部と、
を有し、
前記底面は、該底面の直径方向内側部分を形成し、該ディンプルの深さ方向に沿って見たときに円弧状に湾曲した第1底面部と、前記第1底面部の直径方向外側に位置して該底面の直径方向外側部分を形成し、且つ該ディンプルの深さ方向に沿って見たときに直線状に延在する第2底面部と、を有し、
前記第1直径は、前記第2直径の80%~95%の長さであり、
前記開口周縁を通る第1仮想水平線と、前記第1底面部と前記第2底面部との交点を通り且つ前記第1仮想水平線に平行な第2仮想水平線とを引き、前記内側壁部と前記第1仮想水平線との交差角度をθ1とし、且つ前記第2底面部と前記第2仮想水平線との交差角度をθ2としたとき、θ1は3°~62°の範囲内であり且つθ1>θ2であり、
前記第1底面部の最深部と前記第1仮想水平線との間の最短距離をd1とし、且つ前記第2底面部の最浅部と前記第1仮想水平線との間の最短距離をd2としたとき、d2はd1の30%~
48%の長さである、ゴルフボール。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフボールにおいて、前記第2直径が前記第1底面部の曲率半径の18%~50%であり且つ3.0mm~5.5mmの範囲内であり、
前記最短距離d1が0.10mm~0.20mmの範囲内である、ゴルフボール。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴルフボールにおいて、前記交差角度θ2が0.2°~6.0°の範囲内である、ゴルフボール。
【請求項4】
請求項1又は2記載のゴルフボールにおいて、前記内側壁部と前記第2底面部との間に、前記内側壁部及び前記第2底面部に折曲して連なる周壁部が介在する、ゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にディンプルを備えるゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールの表面には、打球時の飛行軌道を安定させ且つ飛距離を大きくするため、複数個のディンプルが形成される。一般的なディンプルは、ゴルフボールの表面から小さな球欠を刳り抜いたような形状であるが、近時、飛距離を一層大きくするため、ディンプルの形状について様々な検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、深さ方向に沿った断面において、中央部側に形成された曲線部分と、周縁部側に形成されて傾斜した直線部分とが現れるディンプルの形状が提案されている。ここで、直線部分は、曲線部分に連なる第1直線部分と、第1直線部分における周縁部側の端部に連なる第2直線部分とを有する。第2直線部分におけるゴルフボールの表面に対する傾斜は、第1直線部分におけるゴルフボールの表面に対する傾斜よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドライバークラブを用いたショット(ドライバーショット)において、ゴルフボールのスピン量が過度に多いと、いわゆる吹き上がった弾道となる。この場合、ゴルフボールの飛距離が低下することがある。これとは逆に、ショートアイアン又はウェッジクラブを用いたショット(アプローチショット)において、ゴルフボールのスピン量が過度に少ないと、目標地点又はその近傍でゴルフボールを停止させることが容易ではない。
【0006】
従って、ドライバーショットにおいて十分な飛距離が得られ、且つアプローチショットにおいてプレイヤの意図した地点又はその近傍で停止させることが容易なゴルフボールが要請されている。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、表面にディンプルを備えるゴルフボールにおいて、前記ディンプルは、第1直径を有する底面と、円形状の開口の周縁部によって形成され、前記第1直径よりも大きな第2直径を有する開口周縁と、前記開口周縁から前記底面に向かって延び、該ディンプルの深さ方向に沿って見たときにテーパー状に傾斜する内側壁部と、を有し、前記底面は、該底面の直径方向内側部分を形成し、該ディンプルの深さ方向に沿って見たときに円弧状に湾曲した第1底面部と、前記第1底面部の直径方向外側に位置して該底面の直径方向外側部分を形成し、且つ該ディンプルの深さ方向に沿って見たときに直線状に延在する第2底面部と、を有し、前記第1直径は、前記第2直径の80%~95%の長さであり、前記開口周縁を通る第1仮想水平線と、前記第1底面部と前記第2底面部との交点を通り且つ前記第1仮想水平線に平行な第2仮想水平線とを引き、前記内側壁部と前記第1仮想水平線との交差角度をθ1とし、且つ前記第2底面部と前記第2仮想水平線との交差角度をθ2としたとき、θ1は3°~62°の範囲内であり且つθ1>θ2であり、前記第1底面部の最深部と前記第1仮想水平線との間の最短距離をd1とし、且つ前記第2底面部の最浅部と前記第1仮想水平線との間の最短距離をd2としたとき、d2はd1の30%~70%の長さである、ゴルフボールが提供される。
【発明の効果】
【0009】
ディンプルにおける諸寸法が上記のように設定されたゴルフボールによれば、ドライバーショットにおいて十分な飛距離が得られる。また、このゴルフボールは、アプローチショットにおいて十分なスピン量で回転する。従って、アプローチショットにおいて目標地点又はその近傍にゴルフボールを停止させることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るゴルフボールの概略全体平面図である。
【
図2】
図2は、ディンプルの深さ方向に沿った概略断面図である。
【
図3】
図3は、周壁部を有するディンプルの深さ方向に沿った概略断面図である。
【
図4】
図4は、
参考例1のゴルフボールにおけるディンプルの諸寸法を示す図表である。
【
図5】
図5は、実施例2のゴルフボールにおけるディンプルの諸寸法を示す図表である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、
参考例1、
実施例2及び比較例のゴルフボールにつき打球試験によって得られた結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明における飛距離は、ゴルフボールを打球したときのショット地点から着地点までの距離(キャリー)と、着地点から停止地点までの距離(ラン)との合計値を指す。
【0012】
図1は、本実施形態に係るゴルフボール10の概略全体平面図である。ゴルフボール10は、その表面に複数個のディンプル12を備える。ディンプル12は、ゴルフボール10の表面から窪んだ凹部であり、ゴルフボール10の表面で円形状に開口する。1個のディンプル12は、底面14と、開口の周縁部によって形成される開口周縁16と、内側壁部18とを有する。プレイヤがゴルフボール10を平面視したとき、ディンプル12が深さ方向上方から視認される。このとき、底面14及び開口周縁16は円形状である。
【0013】
図2は、ディンプル12を深さ方向に沿って切断したときの概略断面図である。
図2から理解されるように、ディンプル12の底面14は、第1直径としての底径ΦBを有する。ディンプル12の開口周縁16は、第2直径としての開口径ΦAを有する。底径ΦBは、開口径ΦAよりも小さい。ただし、開口径ΦAに対して底径ΦBが過度に小さいと、ドライバーショット時に吹き上がった弾道になり易く、飛距離が低下する。また、アプローチショットにおいてゴルフボール10のスピン量が不十分となる場合がある。これを回避するため、底径ΦBは、開口径ΦAの80%~95%の長さに設定される。
【0014】
開口径ΦAは、3.0mm~5.5mmの範囲内であることが好ましい。開口径ΦAが5.0mmである場合、底径ΦBは、例えば、4.6mmである。
【0015】
全てのディンプル12の底径ΦB及び開口径ΦAが同一である必要は特にない。本実施形態では、ディンプル12は、
図1に示すように開口径ΦAが互いに相違する第1ディンプル12a~第5ディンプル12eを有する。ただし、第1ディンプル12a~第5ディンプル12eは全て、
図2に示す形状を有する。
【0016】
開口径ΦAは、第1ディンプル12a、第2ディンプル12b、第3ディンプル12c、第4ディンプル12d、第5ディンプル12eの順に小さくなる。第1ディンプル12a~第5ディンプル12eの開口径ΦAの一例は、それぞれ、5.0mm、4.8mm、4.5mm、4.2mm及び3.5mmである。この場合において、第1ディンプル12a~第5ディンプル12eの各開口径ΦAに対する各底径ΦBの割合は、例えば、92.0%、91.7%、91.1%、90.5%及び88.6%である。また、第1ディンプル12a、第2ディンプル12b、第3ディンプル12c、第4ディンプル12d及び第5ディンプル12eの個数の一例は、それぞれ、80個、40個、130個、10個及び12個である。
【0017】
第1ディンプル12a~第5ディンプル12eの各々の開口径ΦA及び個数は、上記の数値に特に限定されない。また、第1ディンプル12a~第5ディンプル12eと開口径ΦAが異なるディンプル12をさらに増やしてもよい。又は、第1ディンプル12a~第5ディンプル12eのうちから1種以上を省いてもよい。
【0018】
図2に示すように、ディンプル12の底面14は、第1底面部20と、第2底面部22とを有する。第1底面部20は、底面14の直径方向内側部分を形成する。第1底面部20は、ディンプル12の深さ方向に沿って見たときに円弧状に湾曲している。第1底面部20は、曲率半径Rを有する。曲率半径Rは、例えば、第1ディンプル12a~第5ディンプル12eの順に小さく設定される。第1底面部20において、最も窪んだ箇所は、最深部DMである。
【0019】
ディンプル12の開口径ΦAは、曲率半径Rの18%~50%の範囲内であることが好ましく、曲率半径Rの25%~45%の範囲内であることが一層好ましい。典型例において、第1ディンプル12a~第5ディンプル12eの曲率半径Rは、それぞれ、17.4mm、16.0mm、14.1mm、12.2mm及び8.6mmである。第1ディンプル12a~第5ディンプル12eの開口径ΦAが上記した数値である場合、第1ディンプル12aの開口径ΦAは、曲率半径Rの28.7%である。また、第2ディンプル12b~第5ディンプル12eの開口径ΦAは、それぞれ、曲率半径Rの29.9%、32.0%、34.4%及び40.6%である。
【0020】
第2底面部22は、底面14の直径方向外側部分を形成する。すなわち、第2底面部22は第1底面部20を取り囲む。第2底面部22は、ディンプル12の深さ方向に沿って見たときに直線状に延在する。底径ΦBは、第2底面部22における最浅部DSを通る円の直径である。
【0021】
第1底面部20と第2底面部22とは、交点Aで交わる。ここで、交点Aを通り且つ第1仮想水平線M1に平行に引かれた仮想的な水平線を、第2仮想水平線M2とする。なお、第1仮想水平線M1は、開口周縁16を通る仮想的な水平線である。
【0022】
第1底面部20の最深部DMと第1仮想水平線M1との間の最短距離を、第1距離d1とする。本実施形態において、第1距離d1は、0.10mm~0.20mmの範囲内であることが好ましい。典型例では、第1ディンプル12a~第4ディンプル12dにおける第1距離d1が0.130mmであり、且つ第5ディンプル12eにおける第1距離d1が0.125mmである。
【0023】
また、第2底面部22における最浅部DSと、第1仮想水平線M1との間の最短距離を第2距離d2とする。第2距離d2が過度に小さいと、ドライバーショットにおいてゴルフボール10が吹き上がる弾道となることを抑制することが容易ではない。また、アプローチショットにおいてスピン量が不十分となる場合がある。このような理由から、第2距離d2を、第1距離d1の30%~70%の範囲内に設定することが好ましい。典型例では、第1ディンプル12a~第5ディンプル12eにおいて、第2距離d2が0.085mmに設定される。上記したように第1ディンプル12a~第4ディンプル12dにおける第1距離d1が0.130mmであり、第5ディンプル12eにおける第1距離d1が0.125mmであるとき、第1ディンプル12a~第4ディンプル12dでは、第2距離d2は第1距離d1の65.4%である。第5ディンプル12eでは、第2距離d2は第1距離d1の68.0%である。
【0024】
内側壁部18は、ディンプル12の内周壁であり、開口周縁16から第2底面部22の最浅部DSに向かって延びる。内側壁部18は、開口周縁16から第2底面部22の最浅部DSに向かうにつれてテーパー状に先細る。換言すれば、ディンプル12を深さ方向に沿って見たとき、内側壁部18は、テーパー状に傾斜している。
【0025】
内側壁部18と第1仮想水平線M1との交差角度を、第1角度θ1とする。第1角度θ1が過度に小さいと、アプローチショットにおいてゴルフボール10のスピン量が十分でなくなる場合がある。第1角度θ1が過度に大きいと、ゴルフボール10の飛行する弾道が低くなり、その結果、飛距離が不十分となる場合がある。これを回避するため、第1角度θ1は3°~62°の範囲内であることが好ましい。第1角度θ1の一層好ましい範囲は、15°~25°である。
【0026】
第2底面部22と第2仮想水平線M2との交差角度を、第2角度θ2とする。第1角度θ1と第2角度θ2との間には、θ1>θ2の関係が成り立つ。第2角度θ2が過度に大きいと、飛距離を向上させることが容易ではない。また、アプローチショットにおいてゴルフボール10のスピン量が不十分となる場合がある。これを回避するため、第2角度θ2は0.2°~6.0°の範囲内であることが好ましい。第2角度θ2の一層好ましい範囲は、0.5°~2.0°である。
【0027】
ディンプル12の開口径ΦA、底径ΦB、ΦB/ΦA、第1距離d1、第2距離d2、d2/d1、第1底面部20の曲率半径R、第1角度θ1及び第2角度θ2が以上のように設定されたディンプル12(第1ディンプル12a~第5ディンプル12e)を有するゴルフボール10によれば、ドライバーショットにおいて十分な飛距離が得られる。また、このゴルフボール10は、アプローチショットにおいて、十分なスピン量で回転する。このため、目標地点又はその近傍にゴルフボール10を停止させることが容易である。
【0028】
図3に示すように、第2底面部22と内側壁部18との間に、周壁部30が介在してもよい。
図3における周壁部30は、第2底面部22及び内側壁部18に対して所定角度で交差するように屈曲している。しかしながら、周壁部30は特にこの形状に限定されない。例えば、周壁部30は、曲率半径が極めて小さな湾曲部であってもよい。いずれの場合においても、周壁部30は、第2底面部22及び内側壁部18に対し折曲して連なる。
【実施例】
【0029】
開口径ΦA、底径ΦB、ΦB/ΦA、第1底面部20と第1仮想水平線M1との間の最短距離(第1距離)d1、第2底面部22の最浅部DSと第1仮想水平線M1との間の最短距離(第2距離)d2、d2/d1、第1底面部20の曲率半径R、ΦA/R、内側壁部18と第1仮想水平線M1との交差角度(第1角度)θ1、第2底面部22と第2仮想水平線M2との交差角度(第2角度)θ2が、
図4及び
図5に示される第1ディンプル12a~第5ディンプル12eを有するゴルフボール10をそれぞれ作製した。それぞれのゴルフボール10を
参考例1、
実施例2とする。
【0030】
比較例のため、開口径ΦA及び第1距離d1が参考例1、実施例2と同一であり、深さ方向に沿った断面において1つの湾曲面のみが現れる底面と、該底面に連なり開口周縁まで延びる内側壁部とからなる5種類のディンプルを有するゴルフボールを作製した。
【0031】
参考例1、
実施例2の各ゴルフボール10と、比較例のゴルフボールとを、第1のテスターがドライバーで打球し、各ボールの最高到達点高さと、ショット地点から着地点までの距離(キャリー)と、ショット地点から停止地点までの飛距離(キャリーとランとの合計値)とを測定した。このドライバーショットでの結果を、
図6Aに示す。
【0032】
さらに、
参考例1、
実施例2の各ゴルフボール10と、比較例のゴルフボールとを、第1のテスターがウェッジクラブで打球したときにおける各ゴルフボール10のスピン数を求めた。このアプローチショットでの結果を、
図6Aに併せて示す。
【0033】
第2のテスターが、
参考例1、
実施例2の各ゴルフボール10と、比較例のゴルフボールとを、上記と同様に打球した。ドライバーショット及びアプローチショットでの結果を、
図6Bに示す。
【0034】
図6A及び
図6Bから、比較例のゴルフボールでのドライバーショットでは、
参考例1、
実施例2の各ゴルフボール10よりも吹き上がった弾道となっていることが分かる。このため、比較例のゴルフボールでのドライバーショットでは、
参考例1、
実施例2の各ゴルフボール10よりも飛距離が小さい。換言すれば、
参考例1、
実施例2のようにディンプル12を形成することにより、ゴルフボール10の飛距離を大きくすることができる。
【0035】
また、
図6A及び
図6Bから、
参考例1、
実施例2の各ゴルフボール10でのアプローチショットにおいて、比較例のゴルフボールよりも多くのスピン量が得られていることが分かる。このことは、
参考例1、
実施例2の各ゴルフボール10が、比較例のゴルフボールよりも目標地点又はその近傍で停止させることが容易であることを表す。
【0036】
次に、参考例1、実施例2の各ゴルフボール10及び比較例のゴルフボールにつき、飛行中の空力特性を測定するITR(Indoor Test Range)計測を実施した。その結果、参考例1、実施例2の各ゴルフボール10では、打球直後のスピン量が多い飛行領域において過剰な揚力が抑制され、さらに最高到達点付近に到達するまで低い抗力で飛行し、最高到達点付近から着地まで揚力が持続されることが確認された。これにより、参考例1、実施例2の各ゴルフボール10の飛距離が、比較例のゴルフボールの飛距離よりも大きくなる。
【0037】
さらに、有限要素法を用いた構造解析により、ゴルフクラブフェースを模した3Dモデル上に配置されたゴルフボールに荷重を付与したときのディンプル12の周辺における応力分布を分析した。この構造解析には、ゴルフボールの材料特性の数値を用いた。これにより、参考例1、実施例2の各ゴルフボール10では、比較例のゴルフボールよりもディンプル12の周辺に大きな応力が加わりながら変形しており、ゴルフクラブフェースに対してディンプル12が大きな力で接触しているとの解析結果が得られた。
【0038】
以上説明したように、本実施形態は、表面にディンプル(12)を備えるゴルフボール(10)において、前記ディンプルは、第1直径(ΦB)を有する底面(14)と、円形状の開口の周縁部によって形成され、前記第1直径よりも大きな第2直径(ΦA)を有する開口周縁(16)と、前記開口周縁から前記底面に向かって延び、該ディンプルの深さ方向に沿って見たときにテーパー状に傾斜する内側壁部(18)と、を有し、前記底面は、該底面の直径方向内側部分を形成し、該ディンプルの深さ方向に沿って見たときに円弧状に湾曲した第1底面部(20)と、前記第1底面部の直径方向外側に位置して該底面の直径方向外側部分を形成し、且つ該ディンプルの深さ方向に沿って見たときに直線状に延在する第2底面部(22)と、を有し、前記第1直径は、前記第2直径の80%~95%の長さであり、前記開口周縁を通る第1仮想水平線(M1)と、前記第1底面部と前記第2底面部との交点(A)を通り且つ前記第1仮想水平線に平行な第2仮想水平線(M2)とを引き、前記内側壁部と前記第1仮想水平線との交差角度をθ1とし、且つ前記第2底面部と前記第2仮想水平線との交差角度をθ2としたとき、θ1は3°~62°の範囲内であり且つθ1>θ2であり、前記第1底面部の最深部(DM)と前記第1仮想水平線との間の最短距離をd1とし、且つ前記第2底面部の最浅部(DS)と前記第1仮想水平線との間の最短距離をd2としたとき、d2はd1の30%~70%の長さである、ゴルフボールを開示する。
【0039】
ディンプルにおける諸寸法が上記のように設定されたゴルフボールでは、ドライバーショットにおいて十分な飛距離が得られる。また、このゴルフボールは、アプローチショットにおいて十分なスピン量で回転する。従って、アプローチショットにおいて目標地点又はその近傍にゴルフボールを停止させることが容易である。
【0040】
本実施形態は、前記第2直径が前記第1底面部の曲率半径(R)の18%~50%であり且つ3.0mm~5.5mmの範囲内であり、前記最短距離d1が0.10mm~0.20mmの範囲内である、ゴルフボールを開示する。
【0041】
本実施形態は、前記交差角度θ2が0.2°~6.0°の範囲内である、ゴルフボールを開示する。
【0042】
いずれの場合も、特にドライバーショットにおいて、ゴルフボールが吹き上がった弾道となることが一層回避される。また、アプローチショットにおけるスピン量が一層十分となる。すなわち、ドライバーショットにおいて一層十分な飛距離が得られ、且つアプローチショットにおいて目標地点又はその近傍にゴルフボールを停止させることが一層容易なゴルフボールが得られる。
【0043】
本実施形態は、前記内側壁部と前記第2底面部との間に、前記内側壁部及び前記第2底面部に折曲して連なる周壁部(30)が介在する、ゴルフボールを開示する。
【0044】
このような構成においても、上記と同様に、ドライバーショットにおいて十分な飛距離が得られ、且つアプローチショットにおいて目標地点又はその近傍にゴルフボールを停止させることが容易なゴルフボールが得られる。
【0045】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0046】
10…ゴルフボール 12、12a~12e…ディンプル
14…底面 16…開口周縁
18…内側壁部 20…第1底面部
22…第2底面部 30…周壁部
DM…第1底面部の最深部 DS…第2底面部の最浅部
M1…第1仮想水平線 M2…第2仮想水平線
【要約】
【解決手段】ゴルフボール(10)に形成されたディンプル(12)は、底面(14)と、開口周縁(16)と、開口周縁から底面に向かってテーパー状に傾斜する内側壁部(18)とを有する。底面は、直径方向内側部分である第1底面部(20)と、直径方向外側部分である第2底面部(22)とを有する。開口周縁を通る第1仮想水平線(M1)と内側壁部との交差角度θ1は、3°~62°である。第2底面部の最浅部(DS)と第1仮想水平線との間の最短距離d2は、第1底面部の最深部(DM)と第1仮想水平線との間の最短距離d1の30%~70%である。
【選択図】
図2