(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】貼合装置、および貼合方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/16 20060101AFI20240301BHJP
B29C 65/78 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B32B37/16
B29C65/78
(21)【出願番号】P 2022518571
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(86)【国際出願番号】 JP2020018386
(87)【国際公開番号】W WO2021220504
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】596149604
【氏名又は名称】クライムプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】薦田 大介
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198194(WO,A1)
【文献】特開2011-194607(JP,A)
【文献】特開2010-94910(JP,A)
【文献】特開2015-39862(JP,A)
【文献】特開2013-139108(JP,A)
【文献】特開2001-138482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0255033(US,A1)
【文献】特開2015-167214(JP,A)
【文献】中国実用新案第205819648(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B29C63/00-63/48;65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ワーク(W1)を吸着保持する上吸着台(4)を備えた上吸着盤(1)と、第2ワーク(W2)を吸着保持する下吸着台(6)を備えた下吸着盤(2)とを有し、
上吸着台(4)には、予め突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲形状を含んで成形された第1ワーク(W1)を吸着保持するための吸着台(14)が形成されており、
下吸着台(6)には、基台(5)に固定される枠構造の固定吸着台(16)と、固定吸着台(16)の周囲に配置される枠構造の可動吸着台(17)と、可動吸着台(17)の上開口面を覆う吸着スクリーン(8)とが設けられており、
可動吸着台(17)は、その上開口面が固定吸着台(16)の上開口面より上側に位置して、吸着スクリーン(8)上の第2ワーク(W2)を平坦姿勢で吸着保持するワーク支持位置と、上開口面が固定吸着台(16)の上開口面より下側へ下降して、吸着スクリーン(8)が固定吸着台(16)の上開口面で支持されるワーク移転位置との間で上下動可能に構成されており、
固定吸着台(16)の周枠部分には、第1ワーク(W1)の凹凸湾曲形状に対応した凹凸湾曲部(18)が形成されており、可動吸着台(17)がワーク移転位置へ下降した状態では、吸着スクリーン(8)で平坦姿勢に支持されていた第2ワーク(W2)が、凹凸湾曲部(18)に合致して変形した吸着スクリーン(8)を介して凹凸湾曲形状に吸着保持されるようになっており、
上吸着台(4)に吸着保持された第1ワーク(W1)と、下吸着台(6)に吸着保持された第2ワーク(W2)とを上下に正対させた状態で、固定吸着台(16)の内部に設けた貼合ローラー(7)で第2ワーク(W2)を第1ワーク(W1)に押付け、その状態で貼合ローラー(7)を第1ワーク(W1)の凹凸湾曲形状に沿って昇降移動させながら、貼合始端から貼合終端へ移動させることで、第1ワーク(W1)と第2ワーク(W2)とを貼合することを特徴とする貼合装置。
【請求項2】
固定吸着台(16)と可動吸着台(17)とは、それぞれ四角枠状に形成されており、
固定吸着台(16)を構成する四周辺部のうち、一方の対向辺部のそれぞれの辺部には凹凸湾曲部(18)が形成されており、この対向辺部の外側方には、吸着スクリーン(8)を展張保持する展張構造が配置されており、
展張構造は、吸着スクリーン(8)を貼合ローラー(7)の貼合移動方向と平行な向きに展張させる第1展張構造と、吸着スクリーン(8)を貼合ローラー(7)の貼合移動方向と直交する向きに展張させる第2展張構造とを備えており、
第2展張構造が、基台(5)で前後スライド自在に案内支持されるスライド台(23)と、スライド台(23)で上下スライド自在に案内支持されるスライダー(24)と、スライダー(24)を昇降操作して吸着スクリーン(8)を展張させる昇降シリンダー(25)と、スライダー(24)に装着されて吸着スクリーン(8)の端部を固定保持する連結構造(26)とを備えており、
連結構造(26)が、スライダー(24)で傾動可能に支持される傾動ブロック(34)と、傾動ブロック(34)と協同して吸着スクリーン(8)を挟持固定する締結具(35)とを備えており、
凹凸湾曲部(18)の凹凸湾曲形状に倣って吸着スクリーン(8)が凹凸湾曲形状に変形し、この吸着スクリーン(8)の変形に伴って当該吸着スクリーン(8)に吸着保持される第2ワーク(W2)が凹凸湾曲部(18)の凹凸湾曲形状に変形され、
加えて、吸着スクリーン(8)の変形に伴って、凹凸湾曲部(18)に臨む傾動ブロック(34)が傾動するとともに、スライド台(23)が前後方向にスライドするように構成されている、請求項1に記載の貼合装置。
【請求項3】
傾動ブロック(34)の傾動軸(36)がスライダー(24)の上部に設けた軸受部(33)で傾動可能に軸支されており、
軸受部(33)と傾動ブロック(34)との間に、吸着スクリーン(8)の展張力を受止めるスラスト軸受(38)が配置されている請求項2に記載の貼合装置。
【請求項4】
固定吸着台(16)の内部に、貼合ローラー(7)を貼合始端と貼合終端の間で移動操作するローラー移動構造が設けられており、
ローラー移動構造が、基台(5)に固定したガイドレール(41)で移動案内されるローラー台(42)と、ガイドレール(41)と平行に配置されて、基台(5)で回転自在に支持される駆動ねじ軸(43)と、駆動ねじ軸(43)を正逆転駆動するモーター(44)と、ローラー台(42)に装着されて駆動ねじ軸(43)とかみ合う雌ねじ体(45)とを備えている請求項1から3のいずれかひとつに記載の貼合装置。
【請求項5】
貼合ローラー(7)を回転自在に支持するローラーベース(47)とローラー台(42)の間に、貼合ローラー(7)を第1ワーク(W1)の凹凸湾曲形状に倣って昇降操作するローラー昇降構造が設けられており、
ローラー昇降構造が、ローラー台(42)の縦ガイドレール(48)でスライド案内されるローラーベース(47)と、ローラー台(42)に固定した昇降台(50)と、昇降台(50)に固定したモーター(51)と、モーター(51)で正逆転駆動される昇降ねじ軸(52)と、ローラーベース(47)に装着されて昇降ねじ軸(52)とかみ合う雌ねじ体(53)とを備えている請求項4に記載の貼合装置。
【請求項6】
凹凸湾曲部(18)に臨む可動吸着台(17)の辺部の外面に沿って、外気が固定吸着台(16)の内部に侵入するのを防ぐ遮断板(56)の一群が配置されており、
各遮断板(56)は、吸着スクリーン(8)に装着したブラケット(57)で支軸(58)を介して揺動可能に吊持されており、
可動吸着台(17)がワーク移転位置へ下降した状態において、凹凸湾曲部(18)に臨む可動吸着台(17)の上開口面と吸着スクリーン(8)の間の空隙が遮断板(56)で閉止されるように構成されている請求項1から5のいずれかひとつに記載の貼合装置。
【請求項7】
隣接する遮断板(56)の隣接端どうしが内外に重なっており、
可動吸着台(17)がワーク移転位置へ下降した状態において、一群の遮断板(56)が支軸(58)で垂直姿勢に吊持されて、遮断板(56)の隣接端どうしが内外に重なる状態で、可動吸着台(17)の上開口面と吸着スクリーン(8)との間の空隙が閉止されるようになっている請求項6に記載の貼合装置。
【請求項8】
予め突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲形状に成形された第1ワーク(W1)を上吸着台(4)で吸着保持し、ワーク支持位置に移動させた可動吸着台(17)で平坦に支持した吸着スクリーン(8)上に第2ワーク(W2)を載置し吸着保持する工程と、
可動吸着台(17)をワーク移転位置へ下降移動させて、固定吸着台(16)に形成された凹凸湾曲部(18)の凹凸湾曲形状に倣って吸着スクリーン(8)を凹凸湾曲形状に変形させ、この吸着スクリーン(8)の変形に伴って当該吸着スクリーン(8)に吸着保持された第2ワーク(W2)を凹凸湾曲部(18)の凹凸湾曲形状に変形させる工程と、
上吸着台(4)と下吸着台(6)を上下に正対させて、第1ワーク(W1)と第2ワーク(W2)の凹凸湾曲形状を一致させ、両ワーク(W1・W2)の対向間隔を凹凸湾曲形状に沿って一定に保持する工程と、
固定吸着台(16)の内部に設けた貼合ローラー(7)を、ローラー昇降構造で待機位置から押圧位置へ上昇操作して第2ワーク(W2)を第1ワーク(W1)に押圧した状態で、ローラー移動構造で貼合始端から貼合終端へ向かって移動させて、第2ワーク(W2)を第1ワーク(W1)に貼合する工程を備えており、
第2ワーク(W2)を第1ワーク(W1)に貼合する工程において、貼合ローラー(7)をローラー昇降構造で第1ワーク(W1)の凹凸湾曲形状に沿って昇降操作して、第2ワーク(W2)を第1ワーク(W1)に対して均一な押圧力で貼合することを特徴とする貼合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突曲面と凹曲面が連続する2次元平面状の一対のワークを貼合するための貼合装置と貼合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のワークを貼合して貼合体を得る貼合装置に関して、本出願人は特許文献1の貼合装置を先に提案している。特許文献1の貼合装置は、第1ワークを吸着保持する上吸着台と、第2ワークを吸着保持する一群の下吸着台とを備える。下吸着台には、第2ワークを第1ワークに貼合する貼合ローラーと、貼合ローラーを昇降移動させる昇降構造と、貼合ローラーを貼合始端から貼合終端へ向かって横移動させるローラー移動構造などが設けられている。両ワークの貼合時には、第2ワークの貼合始端を貼合ローラーで押圧保持した状態で、次々に下吸着台を貼合ローラーの横移動領域から退避させながら、第2ワークを第1ワークに貼合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の貼合装置によれば、一対のワークをそれぞれ例えば突曲面状に吸着保持した状態で貼合するので、両ワークを適正に貼合することができる。しかし、精度良く貼合することができるのは各ワークの貼合面が単純な突曲面や凹曲面である場合に限られ、貼合面が突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲面である場合には貼合精度に限界がある。これは、ガラス基板などの自己保形性を備えたワークと、機能性シートのような自己保形性のないワークとを貼合させる場合には、後者(機能性シート)を正確に凹凸曲面状に保形させることができず、結果として、両ワークを正しく位置決めすることが困難となることに拠る。より具体的には、特許文献1の貼合装置では、一群の下吸着台を下降させた状態で、吸着スクリーン上に機能性シートを載置して位置決めしても、下吸着台を吸着位置へ上昇させて機能性シートを吸着保持する際に、個々の下吸着台の吸着タイミングにずれが生じて、機能性シートがずれ動くことが避けられないことに拠る。このため、特許文献1の貼合装置では、貼合面が突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲面である場合には、両ワークの貼合精度には限界があり、その点に改良の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、各ワークの貼合面が突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲面を含むものであっても、両ワークを適確に位置決めして、より精度良く両ワークを貼合することが可能な貼合装置と貼合方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る貼合装置は、第1ワークW1を吸着保持する上吸着台4を備えた上吸着盤1と、第2ワークW2を吸着保持する下吸着台6を備えた下吸着盤2とを有している。上吸着台4には、予め突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲形状を含んで成形された第1ワークW1を吸着保持するための吸着台14が形成されている。下吸着台6には、基台5に固定される枠構造の固定吸着台16と、固定吸着台16の周囲に配置される枠構造の可動吸着台17と、可動吸着台17の上開口面を覆う吸着スクリーン8とが設けられている。可動吸着台17は、その上開口面が固定吸着台16の上開口面より上側に位置して、吸着スクリーン8上の第2ワークW2を平坦姿勢で吸着保持するワーク支持位置と、上開口面が固定吸着台16の上開口面より下側へ下降して、吸着スクリーン8が固定吸着台16の上開口面で支持されるワーク移転位置との間で上下動可能に構成されている。固定吸着台16の周枠部分には、第1ワークW1の凹凸湾曲形状に対応した凹凸湾曲部18が形成されており、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態では、吸着スクリーン8で平坦姿勢に支持されていた第2ワークW2が、凹凸湾曲部18に合致して変形した吸着スクリーン8を介して凹凸湾曲形状に吸着保持されるようになっている。上吸着台4に吸着保持された第1ワークW1と、下吸着台6に吸着保持された第2ワークW2とを上下に正対させた状態で、固定吸着台16の内部に設けた貼合ローラー7で第2ワークW2を第1ワークW1に押付け、その状態で貼合ローラー7を第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って昇降移動させながら、貼合始端から貼合終端へ移動させることで、第1ワークW1と第2ワークW2とを貼合することを特徴とする。
【0007】
固定吸着台16と可動吸着台17とは、それぞれ四角枠状に形成されている。固定吸着台16を構成する四周辺部のうち、一方の対向辺部のそれぞれの辺部には凹凸湾曲部18が形成されており、この対向辺部の外側方には、吸着スクリーン8を展張保持する展張構造が配置されている。展張構造は、吸着スクリーン8を貼合ローラー7の貼合移動方向と平行な向きに展張させる第1展張構造と、吸着スクリーン8を貼合ローラー7の貼合移動方向と直交する向きに展張させる第2展張構造とを備えている。第2展張構造が、基台5で前後スライド自在に案内支持されるスライド台23と、スライド台23で上下スライド自在に案内支持されるスライダー24と、スライダー24を昇降操作して吸着スクリーン8を展張させる昇降シリンダー25と、スライダー24に装着されて吸着スクリーン8の端部を固定保持する連結構造26とを備えている。連結構造26が、スライダー24で傾動可能に支持される傾動ブロック34と、傾動ブロック34と協同して吸着スクリーン8を挟持固定する締結具35とを備えている。凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に倣って吸着スクリーン8が凹凸湾曲形状に変形し、この吸着スクリーン8の変形に伴って当該吸着スクリーン8に吸着保持される第2ワークW2が凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に変形され、加えて、吸着スクリーン8の変形に伴って、凹凸湾曲部18に臨む傾動ブロック34が傾動するとともに、スライド台23が前後方向にスライドするように構成されている。
【0008】
傾動ブロック34の傾動軸36がスライダー24の上部に設けた軸受部33で傾動可能に軸支されている。軸受部33と傾動ブロック34との間に、吸着スクリーン8の展張力を受止めるスラスト軸受38が配置されている。
【0009】
固定吸着台16の内部に、貼合ローラー7を貼合始端と貼合終端の間で移動操作するローラー移動構造が設けられている。ローラー移動構造は、基台5に固定したガイドレール41で移動案内されるローラー台42と、ガイドレール41と平行に配置されて、基台5で回転自在に支持される駆動ねじ軸43と、駆動ねじ軸43を正逆転駆動するモーター44と、ローラー台42に装着されて駆動ねじ軸43とかみ合う雌ねじ体45とを備えている。
【0010】
貼合ローラー7を回転自在に支持するローラーベース47とローラー台42の間に、貼合ローラー7を第1ワークW1の凹凸湾曲形状に倣って昇降操作するローラー昇降構造が設けられている。ローラー昇降構造は、ローラー台42の縦ガイドレール48でスライド案内されるローラーベース47と、ローラー台42に固定した昇降台50と、昇降台50に固定したモーター51と、モーター51で正逆転駆動される昇降ねじ軸52と、ローラーベース47に装着されて昇降ねじ軸52とかみ合う雌ねじ体53とを備えている。
【0011】
凹凸湾曲部18に臨む可動吸着台17の辺部の外面に沿って、外気が固定吸着台16の内部に侵入するのを防ぐ遮断板56の一群が配置されている。各遮断板56は、吸着スクリーン8に装着したブラケット57で支軸58を介して揺動可能に吊持されている。可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、凹凸湾曲部18に臨む可動吸着台17の上開口面と吸着スクリーン8の間の空隙が遮断板56で閉止されるように構成されている。
【0012】
隣接する遮断板56の隣接端どうしは内外に重なっている。可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、一群の遮断板56は支軸58で垂直姿勢に吊持されて、遮断板56の隣接端どうしが内外に重なる状態で、可動吸着台17の上開口面と吸着スクリーン8との間の空隙が閉止されるようになっている。
【0013】
本発明に係る貼合方法は、予め突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲形状に成形された第1ワークW1を上吸着台4で吸着保持し、ワーク支持位置に移動させた可動吸着台17で平坦に支持した吸着スクリーン8上に第2ワークW2を載置し吸着保持する工程と、可動吸着台17をワーク移転位置へ下降移動させて、固定吸着台16に形成された凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に倣って吸着スクリーン8を凹凸湾曲形状に変形させ、この吸着スクリーン8の変形に伴って当該吸着スクリーン8に吸着保持された第2ワークW2を凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に変形させる工程と、上吸着台4と下吸着台6を上下に正対させて、第1ワークW1と第2ワークW2の凹凸湾曲形状を一致させ、両ワークW1・W2の対向間隔を凹凸湾曲形状に沿って一定に保持する工程と、固定吸着台16の内部に設けた貼合ローラー7を、ローラー昇降構造で待機位置から押圧位置へ上昇操作して第2ワークW2を第1ワークW1に押圧した状態で、ローラー移動構造で貼合始端から貼合終端へ向かって移動させて、第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する工程を備えている。第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する工程において、貼合ローラー7をローラー昇降構造で第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って昇降操作して、第2ワークW2を第1ワークW1に対して均一な押圧力で貼合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の貼合装置においては、下吸着盤2の下吸着台6に、枠構造からなる固定吸着台16と、この固定吸着台16の周囲に配置される枠構造の可動吸着台17とを設ける。また、可動吸着台17を、上開口面が固定吸着台16の上開口面より上側に位置して、吸着スクリーン8上の第2ワークW2を平坦姿勢で吸着保持するワーク支持位置と、上開口面が固定吸着台16の上開口面より下側へ下降して、吸着スクリーン8が固定吸着台16の上開口面で支持されるワーク移転位置との間で上下動可能に構成する。さらに、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態では、吸着スクリーン8で平坦姿勢に支持されていた第2ワークW2が、凹凸湾曲部18に合致して変形した吸着スクリーン8を介して凹凸湾曲形状に吸着保持されるようにし、この状態で第1ワークW1と第2ワークW2とを貼合するようにする。
【0015】
以上のように、本発明に係る貼合装置においては、ワーク支持位置では吸着スクリーン8上に第2ワークW2を平坦姿勢に吸着保持し、ワーク移転位置では凹凸湾曲部18に合致して変形した吸着スクリーン8を介して第2ワークW2を凹凸湾曲形状に吸着保持するので、ワーク支持位置からワーク移転位置に至るまで、吸着スクリーン8の変形と同調させながら、しかも吸着スクリーン8を介した吸着保持状態を維持したままで、第2ワークW2を平坦姿勢から凹凸湾曲形状に変形させることができる。これにより、吸着スクリーン8と第2ワークW2との間に位置ずれが生じることを防ぐことができるので、各ワークW1・W2の貼合面が凹凸湾曲面を含む形で形成されているにも拘わらず、両ワークW1・W2を適確に位置決めながら、精度良く貼合することができる。
【0016】
吸着スクリーン8を展張保持するための展張構造を、吸着スクリーン8を貼合ローラー7の貼合移動方向と平行な向きに展張させる第1展張構造と、吸着スクリーン8を貼合ローラー7の貼合移動方向と直交する向きに展張させる第2展張構造とを備えるものとし、第2展張構造を前後スライドするスライド台23と、スライド台23に対して上下スライドするスライダー24と、スライダー24を昇降操作する昇降シリンダー25と、吸着スクリーン8の端部を固定保持する連結構造26とで構成し、連結構造26を、スライダー24で傾動可能に支持される傾動ブロック34と、傾動ブロック34と協同して吸着スクリーン8を挟持固定する締結具35とを備えるものとする。そして、凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に倣って吸着スクリーン8が凹凸湾曲形状に変形し、この吸着スクリーン8の変形に伴って当該吸着スクリーン8に吸着保持される第2ワークW2が凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に変形され、加えて、吸着スクリーン8の変形に伴って、凹凸湾曲部18に臨む傾動ブロック34が傾動するとともに、スライド台23が前後方向にスライドするように構成する。これによれば、吸着スクリーン8の変形に従属させながら、傾動ブロック34を傾動させるとともに、スライド台23をスライド移動させることができるので、吸着スクリーン8に適正な展張力を掛けながら、当該吸着スクリーン8を凹凸湾曲形状に変形させることができる。換言すれば、皺や弛みが生じず、しかも過剰なストレスが付与されないような適正な展張力を吸着スクリーン8に付与しながら、当該吸着スクリーン8を凹凸湾曲形状に変形させることができる。
【0017】
傾動ブロック34の傾動軸36がスライダー24の上部の軸受部33で傾動可能に軸支され、軸受部33と傾動ブロック34との間に、吸着スクリーン8の展張力を受止めるスラスト軸受38が配置されていると、傾動ブロック34に作用する吸着スクリーン8の展張力を、スラスト軸受38で受止めて逃がすことができる。従って、吸着スクリーン8に過剰なストレスが付与されることを抑えて、吸着スクリーン8に適正な展張力を付与することができる。
【0018】
固定吸着台16の内部に、貼合ローラー7を貼合始端と貼合終端の間で移動操作するローラー移動構造が設けられていると、貼合ローラー7が第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って昇降移動するときのローラー移動速度を、モーター44の駆動回転数を制御するだけで好適化することができる。従って、第1ワークW1に対する第2ワークW2の貼合を、均等かつ適正に行うことができる。
【0019】
貼合ローラー7を支持するローラーベース47とローラー台42の間に、貼合ローラー7を第1ワークW1の凹凸湾曲形状に倣って昇降操作するローラー昇降構造が設けられており、ローラー昇降構造が、ローラー台42の縦ガイドレール48でスライド案内されるローラーベース47と、ローラー台42に固定した昇降台50と、昇降台50に固定したモーター51と、モーター51で正逆転駆動される昇降ねじ軸52と、ローラーベース47に装着される雌ねじ体53で構成されていると、貼合ローラー7をローラー昇降構造で第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って正確に昇降操作することができるので、第2ワークW2を第1ワークW1に常に均等な力で押付けて、両ワークW1・W2の貼合を常に適正に行うことができる。
【0020】
凹凸湾曲部18に臨む可動吸着台17の外面に沿って、外気の侵入を防ぐ遮断板56の一群を配置し、各遮断板56を、吸着スクリーン8に装着したブラケット57で支軸58を介して揺動可能に吊持されていると、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、凹凸湾曲部18に臨む可動吸着台17の上開口面と吸着スクリーン8の間の空隙を遮断板56で閉止できる。従って、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、下吸着台6の内部に外気が侵入するのを遮断板56の一群で阻止して、第2ワークW2を凹凸湾曲部18の凹凸形状に沿って適正に吸着保持し続けることができる。
【0021】
隣接する遮断板56の隣接端どうしが内外に重なるようにされていると、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、一群の遮断板56は支軸58で垂直姿勢に吊持されて、遮断板56の隣接端どうしが内外に重なる状態で、可動吸着台17の上開口面と吸着スクリーン8の間の空隙を閉止できる。また、遮断板56は、その隣接端どうしが内外に重なる状態で配置するので、遮断板56が占めるスペースを小さくコンパクトにまとめることができる。
【0022】
本発明に係る貼合方法においては、凹凸湾曲形状に成形された第1ワークW1を上吸着台4で吸着保持し、ワーク支持位置に位置する可動吸着台17で支持した吸着スクリーン8上に第2ワークW2を載置し吸着保持する工程と、可動吸着台17をワーク移転位置へ下降移動させて、固定吸着台16に形成された凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に倣って吸着スクリーン8を凹凸湾曲形状に変形させ、この吸着スクリーン8の変形に伴って当該吸着スクリーン8に吸着保持された第2ワークW2を凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に変形させる工程と、上吸着台4と下吸着台6を上下に正対させて、第1ワークW1と第2ワークW2の凹凸湾曲形状を一致させ、両ワークW1・W2の対向間隔を一定に保持する工程と、固定吸着台16の内部に設けた貼合ローラー7を、ローラー昇降構造で上昇操作して第2ワークW2を第1ワークW1に押圧し、その状態で貼合ローラー7をローラー移動構造で貼合終端へ向かって移動させて、第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する工程を備えるようにした。また、第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する工程においては、貼合ローラー7をローラー昇降構造で第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って昇降操作して、第2ワークW2を第1ワークW1に対して均一な押圧力で貼合するようにした。
【0023】
こうした貼合方法によれば、常態において平坦な第2ワークW2を、固定吸着台16の凹凸湾曲部18で第1ワークW1の凹凸湾曲形状に合致して吸着保持できるので、各ワークW1・W2の貼合面が凹凸湾曲面で形成されているにも拘わらず、両ワークW1・W2を適確に位置決めして精度良く貼合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る貼合装置の上吸着台を開放した状態の縦断正面図である。
【
図2】貼合装置の上吸着台を開放した状態の平面図である。
【
図6】吸着スクリーンの端部の連結構造を示す縦断正面図である。
【
図7】吸着スクリーンの端部の連結構造を示す平面図である。
【
図9】凹凸湾曲部における吸着スクリーンの吸着状態を示す説明図である。
【
図10】傾動ブロックの傾動動作を示す説明図である。
【
図11】遮断板の遮断状況を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例)本発明に係る貼合装置の実施例を
図1から
図12に示す。本実施例における前後、左右、上下は、
図1および
図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍の前後、左右、上下の各表記に従う。
【0026】
貼合装置は
図1に向かって右側の上吸着盤1と、左側の下吸着盤2を備える。上吸着盤1の内部には、アライメントテーブル3が設けられており、その上面に第1ワークW1を吸着保持する上吸着台4が設けられている。下吸着盤2は四角枠状の基台5を備えており、基台5の上部に第2ワークW2を吸着保持する下吸着台6が設けられている。基台5および下吸着台6の内部には第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する貼合ローラー7と、貼合ローラー7を貼合始端と貼合終端の間で移動操作するローラー移動構造と、ローラー昇降構造などが設けられている。また、基台5および下吸着台6の周囲には、下吸着台6の開口面を覆う吸着スクリーン8を展張操作する展張構造が設けられている。
【0027】
上吸着盤1は、
図1に実線で示す開放位置と、想像線で示す貼合位置の間で揺動開閉可能に構成されている。具体的には、基台5の右外側の前後にブラケット9が固定されており、両ブラケット9で軸支した開閉軸10で上吸着盤1の基端部分が軸支されている。開閉軸10は前側のブラケット9に固定したギヤードモーター11で回転駆動される。貼合位置へ揺動移動した上吸着盤1を固定保持するために、基台5の左外側の前後に閉止枠を立設し、その上部に閉じロック体12が設けられている。本実施例における第1ワークW1は、予め突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲形状に成形されたガラス基板からなり、第2ワークW2は偏向シートや反射防止フィルムなどの平坦な機能性フィルムからなり、第1ワークW1との貼合面(上面)には透明の接着剤が塗布されている。
【0028】
図1および
図2において、上吸着台4は凹凸湾曲形状に成形された中空の吸着台14を備えており、吸着台14の内部は、空気通路や電磁バルブなどを介して、図示しない吸着源に接続されている。吸着台14の表面には第1ワークW1を吸着保持するための一群の吸着穴が形成されている。上吸着盤1を水平の開放姿勢にした状態で、第1ワークW1を吸着台14に被せつけて位置決めし、この状態で吸着台14の内部に真空圧を作用させることにより、第1ワークW1を吸着台14に吸着固定することができる。
【0029】
図3に示すように、下吸着台6は、基台5に固定される上下面が開口する枠構造の固定吸着台16と、固定吸着台16の周囲に配置される枠構造の可動吸着台17とを備えている。下吸着台6の内部は、上吸着台4と同様に、空気通路および電磁バルブなどを介して、図示していない吸着源に接続されている。可動吸着台17の上開口面は、先の吸着スクリーン8で覆われている。該吸着スクリーン8は、厚みが1mm程度の帆布材に樹脂を含浸させたシート体からなり、第2ワークW2の吸着領域に微小孔の一群が形成されている。固定吸着台16の左右の対向辺部(周枠部分)には、第1ワークW1の凹凸湾曲形状に対応した凹凸湾曲部18が形成されている。
【0030】
可動吸着台17は、
図3に示すように基台5の前後辺部の外面に設けた一対の操作シリンダー19で、その上開口面が固定吸着台16の上開口面と面一になるワーク支持位置と、上開口面が固定吸着台16の上開口面より下側へ下降するワーク移転位置(
図11に示す状態)の間を昇降移動できる。可動吸着台17がワーク支持位置に保持された状態で、吸着スクリーン8上に第2ワークW2が載置されて位置決めされたのち吸着保持される。また、可動吸着台17の上開口面が、凹凸湾曲部18より下側のワーク移転位置へ下降した状態では、吸着スクリーン8で平坦姿勢に支持されていた第2ワークW2は、凹凸湾曲部18の凹凸形状に合致する状態で吸着保持される。その詳細は後述する。
【0031】
吸着スクリーン8を展張保持する展張構造は、吸着スクリーン8を貼合ローラー7の貼合移動方向と平行な向き(前後方向)に展張させる第1展張構造と、吸着スクリーン8を貼合ローラー7の貼合移動方向と直交する向き(左右方向)に展張させる第2展張構造とを備える。
図3において第1展張構造は、吸着スクリーン8の前縁部を固定保持する固定枠20と、吸着スクリーン8の後縁部の近傍を下向きに変向案内する変向枠21と、吸着スクリーン8の後縁部を下向きに引っ張る展張シリンダー22とを備えている。
図1に示すように第2展張構造は基台5の左右辺部に配置されており、各第2展張構造は
図4に示すように、基台5で前後スライド自在に案内支持される5組のスライド台23と、各スライド台23で上下スライド自在に案内支持されるスライダー24と、スライダー24を昇降操作する昇降シリンダー25と、スライダー24の上部に装着されて吸着スクリーン8の端部を固定保持する連結構造26を備えている。
【0032】
スライド台23はL字状に形成されて、その縦枠部の内側面に固定した上下一対のスライドブロック27が、基台5に固定した前後方向のガイドレール28でスライド自在に案内支持されている。また、縦柱状のスライダー24は、その下側の内側面に固定した縦長のスライダー29が、スライド台23の外側面に固定した上下方向のガイドレール30でスライド自在に案内支持されている。昇降シリンダー25は、スライド台23の横枠部の下面に固定されて、そのピストンロッドがスライダー24の下端に連結されている。
【0033】
図6および
図7に示すように連結構造26は、スライダー24の上部の一対の軸受部33で傾動可能に支持される傾動ブロック34と、傾動ブロック34と協同して吸着スクリーン8の側縁を挟持固定する締結具35とを備えている。
図6に示すように、傾動ブロック34には傾動軸36が一体に設けられており、各傾動軸36の軸端が軸受部33に装着したブッシュ37で傾動可能に支持されている。また、内側面側の軸受部33と傾動ブロック34の間には、傾動ブロック34に作用する吸着スクリーン8の展張力を受止めるスラスト軸受38が配置されている。締結具35は六角穴付きボルトからなり、そのねじ軸を傾動ブロック34にねじ込むことにより、吸着スクリーン8の側縁を締結固定する。
【0034】
図3においてローラー移動構造は、基台5に固定した前後に長いガイドレール41で移動案内される逆門型のローラー台42と、ガイドレール41と平行に配置されて、基台5の前後壁で回転自在に支持される左右中央の駆動ねじ軸43と、駆動ねじ軸43を正逆転駆動するモーター44と、ローラー台42に装着されて駆動ねじ軸43とかみ合う雌ねじ体45とを備えている。駆動ねじ軸43をモーター44で回転駆動することにより、ローラー台42および貼合ローラー7を貼合始端(
図3に示す前端位置)と貼合終端(後端位置)との間で移動操作することができる。
【0035】
図5において貼合ローラー7はH字状のローラーベース47で回転自在に支持されており、ローラーベース47と先のローラー台42の間に、貼合ローラー7を第1ワークW1の凹凸湾曲形状に倣って昇降操作するローラー昇降構造が設けられている。ローラー昇降構造は、ローラー台42の左右枠に固定した縦ガイドレール48と、同レール48でスライド案内されるローラーベース47側のスライダー49と、ローラー台42の中央に固定した昇降台50と、昇降台50に固定したモーター51と、モーター51で正逆転駆動される昇降ねじ軸52と、ローラーベース47に装着されて昇降ねじ軸52とかみ合う雌ねじ体53などで構成される。昇降ねじ軸52をモーター51で回転駆動することにより、ローラーベース47および貼合ローラー7を、第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って昇降させて、第2ワークW2を第1ワークW1に貼合することができる。
【0036】
可動吸着台17の辺部の外側面には、外気が固定吸着台16の内部に侵入するのを防ぐための遮蔽構造が設けられている。この遮蔽構造は、凹凸湾曲部18に臨む可動吸着台17の辺部の外側面に配置された一群の遮断板56で構成されており、本実施例では、可動吸着台17の外側面に沿って複数個の遮断板56が配置されている。
図4、
図6および
図7に示すように、各遮断板56は、吸着スクリーン8に固定したブラケット57で支軸58を介して揺動可能に吊持されており、ブラケット57はボルト59で吸着スクリーン8に締結固定されている。前後方向に隣接する遮断板56の隣接端どうしは内、外、内、外と交互に重なっており、
図11に示すように、可動吸着台17の上開口面が凹凸湾曲部18より下側のワーク移転位置へ下降した状態において、可動吸着台17の上開口面と吸着スクリーン8の間の隙間を一群の遮断板56で塞ぐ。従って、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、前記隙間を介して下吸着台6の内部に外気が侵入するのを一群の遮断板56で阻止して、第2ワークW2を凹凸湾曲部18の凹凸形状に倣って適正に吸着保持することができる。ブラケット57は凹凸湾曲部18に沿って吸着スクリーン8が変形することによって傾動するが、遮断板56は支軸58で揺動可能に吊持されているので、
図12に示すように支軸58の回りに揺動して常に垂直に吊持される。
【0037】
一対のワークW1・W2を貼合する場合には、上吸着盤1を
図1および
図2に示す開放位置に保持して、第1ワークW1を上吸着台4の吸着台14に載置して吸着保持する。また、可動吸着台17をワーク支持位置に保持した状態で、吸着スクリーン8上に第2ワークW2を載置して位置決めし、
図8(a)に示すように下吸着台6の内部に真空圧を作用させて、第2ワークW2を平坦姿勢のままで吸着保持する。この時、吸着スクリーン8の左右側縁は、固定吸着台16および可動吸着台17の側枠部分で支持されているので、第2ワークW2は平坦姿勢に保持されている。
【0038】
次に、可動吸着台17をワーク移転位置まで下降移動させると、吸着スクリーン8の左右側縁が、固定吸着台16の側枠部分のみで支持されるため、吸着スクリーン8は、第1および第2の展張構造により
図8(b)に示すように凹凸湾曲部18に沿って変形され、第1ワークW1の凹凸形状と同じ湾曲形状に保持される。これに伴い第2ワークW2も第1ワークW1の凹凸形状と同じ湾曲形状に保持される。このとき、吸着スクリーン8の展張力が傾動ブロック34に作用するが、傾動ブロック34は
図10に示すように吸着スクリーン8の変形動作に連動して傾動する。さらに、スライダー24およびスライド台23が傾動ブロック34の傾動方向とは逆向きにスライド移動する。これにより、吸着スクリーン8に異常な張力が作用するのを防止できる。この状態で、上吸着盤1を
図8(c)に示すように貼合位置へ揺動移動させ、上吸着台4と下吸着台6を上下に正対させて、第1ワークW1と第2ワークW2の対向間隔を凹凸湾曲形状に沿って一定に保持する。
【0039】
上記のように上下に対向する一対のワークW1・W2は、大まかに位置決めされているものの両者の位置精度は充分ではない。この位置精度を精密なレベルにまで向上するために、上吸着盤1の2ヶ所にずれ検知器(CCDカメラ)を配置して、両ワークW1・W2の位置ずれを光学的に検知し、この検知結果に基づきアライメントコントローラーが位置ずれを認識し、同コントローラーから出力される信号に基づきアライメントテーブル3を作動させて、両ワークW1・W2を精密に位置決めする。つまり、第2ワークW2を位置基準にして、上吸着台4および第1ワークW1をアライメントテーブル3で位置補正して、両ワークW1・W2を精密に位置決めする。
【0040】
一対のワークW1・W2が精密に位置決めされた状態で、
図8(d)に示すように貼合始端位置に位置させた貼合ローラー7を、ローラー昇降構造で待機位置から押圧位置へ上昇操作し、第2ワークW2を第1ワークW1に押圧した状態で、同ローラー7を貼合始端から貼合終端へ向かって移動させて、第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する。貼合ローラー7が貼合終端へ向かって移動するとき、貼合ローラー7はローラー昇降構造で凹凸湾曲形状に沿って昇降操作されるので、第2ワークW2を第1ワークW1に対して均一な押圧力で貼合することができる。貼合ローラー7が貼合終端位置まで移動し終わったら、下吸着台6に作用させていた真空圧を停止させ、貼合ローラー7を待機位置へ下降させた状態で貼合始端側へと戻す。さらに、上吸着盤1を開放位置に戻し、上吸着台4に作用させていた真空圧を停止させて第1ワークW1と第2ワークW2からなる貼合体を取り出す。以後、上記の作業を繰り返し行うことにより、突曲面と凹曲面が連続する凹凸湾曲面を備えた貼合体を、効率よく量産することができる。
【0041】
以上のように、本実施例に係る貼合装置においては、ワーク支持位置では吸着スクリーン8上に第2ワークW2を平坦姿勢に吸着保持し、ワーク移転位置では凹凸湾曲部18に合致して変形した吸着スクリーン8を介して第2ワークW2を凹凸湾曲形状に吸着保持するようにしたので、ワーク支持位置からワーク移転位置に至るまで、吸着スクリーン8の変形と同調させながら、しかも吸着スクリーン8を介した吸着保持状態を維持したままで、第2ワークW2を平坦姿勢から凹凸湾曲形状に変形させることができる。これにより、吸着スクリーン8と第2ワークW2との間に位置ずれが生じることを防ぐことができるので、各ワークW1・W2の貼合面が凹凸湾曲面を含む形で形成されているにも拘わらず、両ワークW1・W2を適確に位置決めながら、精度良く貼合することができる。また、両ワークW1・W2を貼合ローラー7で貼合する状態においては、貼合ローラー7を第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って昇降移動させながら、貼合始端から貼合終端へ移動させるので、両ワークW1・W2を均等な貼合力で凹凸湾曲形状に従って適正に貼合することができる。
【0042】
吸着スクリーン8を展張保持するための展張構造を、吸着スクリーン8を貼合ローラー7の貼合移動方向と平行な向きに展張させる第1展張構造と、吸着スクリーン8を貼合ローラー7の貼合移動方向と直交する向きに展張させる第2展張構造とを備えるものとし、第2展張構造を前後スライドするスライド台23と、スライド台23に対して上下スライドするスライダー24と、スライダー24を昇降操作する昇降シリンダー25と、吸着スクリーン8の端部を固定保持する連結構造26とで構成し、連結構造26を、スライダー24で傾動可能に支持される傾動ブロック34と、傾動ブロック34と協同して吸着スクリーン8を挟持固定する締結具35とを備えるものとした。そして、凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に倣って吸着スクリーン8が凹凸湾曲形状に変形し、この吸着スクリーン8の変形に伴って当該吸着スクリーン8に吸着保持される第2ワークW2が凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に変形され、加えて、吸着スクリーン8の変形に伴って、凹凸湾曲部18に臨む傾動ブロック34が傾動するとともに、スライド台23が前後方向にスライドするように構成した。これによれば、吸着スクリーン8の変形に従属させながら、傾動ブロック34を傾動させるとともに、スライド台23をスライド移動させることができるので、吸着スクリーン8に適正な展張力を掛けながら、当該吸着スクリーン8を凹凸湾曲形状に変形させることができる。換言すれば、皺や弛みが生じず、しかも過剰なストレスが付与されないような適正な展張力を吸着スクリーン8に付与しながら、当該吸着スクリーン8を凹凸湾曲形状に変形させることができる。
【0043】
傾動ブロック34の傾動軸36をスライダー24の上部の軸受部33で傾動可能に軸支し、軸受部33と傾動ブロック34との間に、吸着スクリーン8の展張力を受止めるスラスト軸受38を配置したので、傾動ブロック34に作用する吸着スクリーン8の展張力を、スラスト軸受38で受止めて逃がすことが可能となり、従って、吸着スクリーン8に過剰なストレスが付与されることを抑えて、吸着スクリーン8に適正な展張力を付与することができる。
【0044】
固定吸着台16の内部に、貼合ローラー7を貼合始端と貼合終端の間で移動操作するローラー移動構造を設けたので、貼合ローラー7が第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って昇降移動するときのローラー移動速度を、モーター44の駆動回転数を制御するだけで好適化できる。従って、第1ワークW1に対する第2ワークW2の貼合を、均等かつ適正に行うことができる。
【0045】
貼合ローラー7を支持するローラーベース47とローラー台42の間に、貼合ローラー7を第1ワークW1の凹凸湾曲形状に倣って昇降操作するローラー昇降構造を設けて、ローラー昇降構造が、ローラー台42の縦ガイドレール48でスライド案内されるローラーベース47と、ローラー台42に固定した昇降台50と、昇降台50に固定したモーター51と、モーター51で正逆転駆動される昇降ねじ軸52と、ローラーベース47に装着される雌ねじ体53で構成したので、貼合ローラー7をローラー昇降構造で第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って正確に昇降操作することが可能となり、第2ワークW2を第1ワークW1に常に均等な力で押付けて、両ワークW1・W2の貼合を常に適正に行うことができる。
【0046】
凹凸湾曲部18に臨む可動吸着台17の外面に沿って、外気の侵入を防ぐ遮断板56の一群を配置し、各遮断板56を、吸着スクリーン8に装着したブラケット57で支軸58を介して揺動可能に吊持したので、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、凹凸湾曲部18に臨む可動吸着台17の上開口面と吸着スクリーン8との間の空隙を遮断板56で閉止できる。従って、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、下吸着台6の内部に外気が侵入するのを遮断板56の一群で阻止して、第2ワークW2を凹凸湾曲部18の凹凸形状に沿って適正に吸着保持し続けることができる。
【0047】
隣接する遮断板56の隣接端どうしが内外に重なるようにしたので、可動吸着台17がワーク移転位置へ下降した状態において、一群の遮断板56は支軸58で垂直姿勢に吊持されて、遮断板56の隣接端どうしが内外に重なる状態で、可動吸着台17の上開口面と吸着スクリーン8の間の空隙を閉止できる。また、遮断板56は、その隣接端どうしが内外に重なる状態で配置するので、遮断板56が占めるスペースを小さくコンパクトにまとめることができる。
【0048】
加えて本実施例に係る貼合方法においては、凹凸湾曲形状に成形された第1ワークW1を上吸着台4で吸着保持し、ワーク支持位置に位置する可動吸着台17で支持した吸着スクリーン8上に第2ワークW2を載置し吸着保持する工程と、可動吸着台17をワーク移転位置へ移動させて、吸着スクリーン8および第2ワークW2を固定吸着台16の凹凸湾曲部18の凹凸湾曲形状に沿って吸着保持する工程と、上吸着台4と下吸着台6を上下に正対させて、第1ワークW1と第2ワークW2の凹凸湾曲形状を一致させ、両ワークW1・W2の対向間隔を一定に保持する工程と、固定吸着台16の内部に設けた貼合ローラー7を、ローラー昇降構造で上昇操作して第2ワークW2を第1ワークW1に押圧し、その状態で貼合ローラー7をローラー移動構造で貼合終端へ向かって移動させて、第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する工程とを含むものとした。また、第2ワークW2を第1ワークW1に貼合する工程においては、貼合ローラー7をローラー昇降構造で第1ワークW1の凹凸湾曲形状に沿って昇降操作して、第2ワークW2を第1ワークW1に対して均一な押圧力で貼合した。
【0049】
上記の貼合方法によれば、常態において平坦な第2ワークW2を、固定吸着台16の凹凸湾曲部18で第1ワークW1の凹凸湾曲形状に合致して吸着保持できるので、各ワークW1・W2の貼合面が凹凸湾曲面で形成されているにも拘わらず、両ワークW1・W2を適確に位置決めして精度良く貼合することができる。
【0050】
上記の実施例では、ワーク支持位置における可動吸着台17を、その上開口面が固定吸着台16の上開口面と面一になるようにしたがその必要はなく、ワーク支持位置における可動吸着台17の上開口面は、固定吸着台16の上開口面より上側に位置させてあればよい。また、傾動軸36は傾動ブロック34と別体に形成してあってもよい。
【0051】
一対のワークW1・W2を貼合して得られた貼合体は、例えば自動車の計器やディスプレイを統合して表示するインストルメントパネルとして使用される。
【符号の説明】
【0052】
1 上吸着盤
2 下吸着盤
4 上吸着台
5 基台
6 下吸着台
7 貼合ローラー
8 吸着スクリーン
14 吸着台
16 固定吸着台
17 可動吸着台
18 凹凸湾曲部
23 スライド台
24 スライダー
25 昇降シリンダー
26 連結構造
33 軸受部
34 傾動ブロック
35 締結具
36 傾動軸
38 スラスト軸受
41 ガイドレール
42 ローラー台
43 駆動ねじ軸
44 モーター
45 雌ねじ体
47 ローラーベース
50 昇降台
51 モーター
52 昇降ねじ軸
53 雌ねじ体
56 遮断板