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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240301BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240301BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20240301BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20240301BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20240301BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240301BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/131 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/136 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/133 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/134 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/58 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/587 20100101ALN20240301BHJP
   H01M 4/38 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 Z
H01M4/1391
H01M4/1397
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/38 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022570089
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 KR2021002063
(87)【国際公開番号】W WO2021172809
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0024951
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521189156
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ アール アンド ディービー ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アン,キョン・ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヘ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ミン・ファン
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-216288(JP,A)
【文献】特開2008-041971(JP,A)
【文献】国際公開第2010/035827(WO,A1)
【文献】特開2013-073685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01G11/22-11/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ステップS1)活物質、バインダー、導電材及び溶媒を含む電極スラリーを多孔性基材の一面に塗布した後、前記多孔性基材の反対側の面に脱水工程を行って電極層を形成する段階と、
(ステップS2)前記多孔性基材上に形成された電極層に電極集電体を積層させて、多孔性基材、電極層及び電極集電体が順次に積層された積層体を形成し、前記積層体を加圧して追加脱水を行う段階と、
(ステップS3)前記多孔性基材を電極層から分離した後、集電体上に形成された電極層を乾燥する段階と、を含む、電極の製造方法。
【請求項2】
前記多孔性基材の気孔は、0.1~20μmの平均サイズを有する、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記多孔性基材の気孔率が、50~95%である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記多孔性基材は、ポリマー、ガラス繊維、紙、金属またはセラミック材のメッシュ状である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記脱水工程は、負圧で減圧して行われる、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記活物質は、リチウム二次電池用の正極活物質または負極活物質である、請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項7】
前記正極活物質は、LiCoO,LiNiO,LiMn,LiCoPO,LiFePO及びLiNi1-x-y-zCoM1M2(M1及びM2は、互いに独立してAl,Fe,Mn,V,Cr,Ti,W,Ta,Mg及びMoからなる群から選択された何れか1つであり、x,y及びzは、互いに独立して酸化物組成元素の原子分率として0≦x<0.5,0≦y<0.5,0≦z<0.5,0<x+y+z≦1である)からなる群から選択された何れか1つの活物質粒子またはこれらのうち2種以上の混合物を含む、請求項6に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素質材料;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO),Si,Sn,Li,Zn,Mg,Cd,Ce,NiまたはFeである金属類(Me);前記金属類(Me)で構成された合金類;前記金属類(Me)の酸化物(MeOx);及び前記金属類(Me)と炭素との複合体からなる群から選択された何れか1つの活物質粒子またはこれらのうち2種以上の混合物を含む、請求項6に記載の電極の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年2月28日付の大韓民国特許出願10-2020-0024951号に基づいた優先権の利益を主張し、該特許文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用電極の製造方法、具体的に、脱水工程を含む電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器、電気自動車のような4次産業革命関連技術の開発と需要とが増加するにつれて、再充電が可能であり、小型化及び大容量化が可能なリチウム二次電池の需要が急増している。
【0004】
リチウム二次電池は、集電体上に活物質が塗布されている電極である正極と負極、及びこれらを分離するための多孔性分離膜で構成された電極組立体に、リチウム塩を含む電解質が含浸されている構造からなっている。前記電極は、フォイル(foil)状の集電体に活物質、導電材、バインダーなどの電極材を含有するスラリーをコーティングして乾燥し、ロールプレッシングによる加圧(pressing)の工程を経て活物質層を形成することで製造され、その速度は、通常50~120m/minのレベルであると知られている。
【0005】
このような電極の製造速度を速くするために、温度を上げるか、熱風速度の増加を利用するが、この場合、スラリーのうち、バインダー成分が表面方向に移動する現象及び表面のみ乾燥されるスキニング(skinning)現象が発生して、電極性能の低下を引き起こし得る。
【0006】
これにより、本発明者らは、電極性能の低下なしに電極の製造の生産性を上げることができる代案として、紙の製造工程でなされる脱水工程を電極の製造に適用する場合、乾燥速度を向上させるということに着眼し、前記脱水工程を電極スラリーの乾燥前に適用することができる方法について研究を進めた。
【0007】
一般的な紙の製造の場合には、原料をワイヤメッシュ状の抄紙機上に均一に塗布した後、脱水してシート状の紙を得た後、それを高圧のロールと乾燥機とを通過させて乾燥する。前記抄紙機に塗布される紙の原料は、ほとんどが水である状態で脱水を通じて95%以上の水が除去されながら、連続してロールプレスに伝達され、以後、高温の乾燥機を通じて残りの水が除去される。
【0008】
このような脱水工程を二次電池の電極の製造に適用するためには、抄紙機(forming fabric)に対応する別途の部材が必要であり、そのような部材を通じて紙に比べて固形分含量が高い電極スラリーから固形分の離脱を防止しながら脱水を進めなければならず、脱水に使われた部材を効果的に除去することができる具体的な技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明者らは、紙の製造で使われた脱水工程を二次電池の電極の製造に効率的に適用することができる方法を探し出し、これに基づいて電極の製造時に、乾燥速度を向上させて生産性を極大化させることができる方法を具現することにより、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、リチウム二次電池用電極の製造時に、電極性能の低下なしに乾燥速度を向上させて生産性を極大化させることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(ステップS1)活物質、バインダー、導電材及び溶媒を含む電極スラリーを多孔性基材の一面に塗布した後、前記多孔性基材の反対側の面に脱水工程(dewatering)を行って電極層を形成する段階;(ステップS2)前記多孔性基材上に形成された電極層に電極集電体を積層させて、多孔性基材、電極層及び電極集電体が順次に積層された積層体を形成し、前記積層体を加圧して追加脱水を行う段階;及び(ステップS3)前記多孔性基材を電極層から分離した後、集電体上に形成された電極層を乾燥する段階;を含む電極の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記方法で製造された電極及びそれを含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リチウム二次電池用電極の製造過程に多孔性基材を利用した脱水工程を適用して、電極スラリーのうち、溶媒の相当量をあらかじめ除去し、多孔性基材、電極層及び電極集電体の状態で加圧して追加脱水を経た後、多孔性基材を電極層から分離した後、電極層を乾燥する過程を通じて乾燥速度を短縮させて、電極性能の低下なしに電極の生産性を極大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による脱水工程を導入した電極の製造過程を概略的に示すフローチャートである。
図2】本発明の実施例1による脱水工程を導入した電極の製造過程及び比較例1による既存の電極の製造過程間の乾燥完了時間を比較した結果を示した図である。
図3A】それぞれ本発明の実施例1による脱水工程を導入した工程で製造された電極及び比較例1による既存の工程で製造された電極内の導電材の分布状態を示すFIB-SEMイメージである。
図3B】それぞれ本発明の実施例1による脱水工程を導入した工程で製造された電極及び比較例1による既存の工程で製造された電極内の導電材の分布状態を示すFIB-SEMイメージである。
図4】本発明の実施例1による脱水工程を導入した工程で製造された電極及び比較例1による既存の工程で製造された電極の接着力を比較した結果を示した図である。
図5】本発明の実施例1による脱水工程を導入した工程で製造された電極及び比較例1による既存の工程で製造された電極の充放電サイクルによる容量を比較した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面を参照して詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常の、または辞書的な意味として限定して解釈されてはならず、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義できるという原則を踏まえて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0016】
また、本明細書に記載の実施例と図面とに示された構成は、本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をいずれも代弁するものではないので、本出願時点において、これらを代替しうる多様な均等物と変形例とがあるということを理解しなければならない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による脱水工程を導入した電極の製造過程を概略的に示したものである。
【0018】
図1に示したように、本発明の電極の製造方法は、(ステップS1)電極スラリーを脱水して電極層を形成する段階;(ステップS2)多孔性基材、電極層及び電極集電体の積層体を形成した後、追加脱水のために加圧する段階;及び(ステップS3)前記多孔性基材の分離後、乾燥段階;を含む。
【0019】
下記では、本発明による電極の製造方法を段階別に説明する。
【0020】
まず、電極スラリーを多孔性基材の一面に塗布した後、前記多孔性基材の反対側の面に脱水工程を行って電極層を形成する(ステップS1)。
【0021】
前記電極スラリーは、活物質を溶媒に分散させ、バインダー、導電材などを混合及び撹拌して収得することができる。
【0022】
前記活物質は、電極で電気化学的反応を起こす成分である。本発明によって製造された電極がリチウム二次電池用正極として使われる場合、LiCoO,LiNiO,LiMn,LiCoPO,LiFePO,及びLiNi1-x-y-zCoM1M2(M1及びM2は、互いに独立してAl,Fe,Mn,V,Cr,Ti,W,Ta,Mg及びMoからなる群から選択された何れか1つであり、x,y及びzは、互いに独立して酸化物組成元素の原子分率として0≦x<0.5,0≦y<0.5,0≦z<0.5、0<x+y+z≦1である)からなる群から選択された何れか1つの活物質粒子またはこれらのうち2種以上の混合物を含みうる。一方、本発明によって製造された電極がリチウム二次電池用負極として使われる場合、前記活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素質材料;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO),Si,Sn,Li,Zn,Mg,Cd,Ce,NiまたはFeである金属類(Me);前記金属類(Me)で構成された合金類;前記金属類(Me)の酸化物(MeOx);及び前記金属類(Me)と炭素との複合体からなる群から選択された何れか1つの活物質粒子またはこれらのうち2種以上の混合物を含みうる。このような電極活物質は、電極スラリーの全体重量を基準に10~80重量%で使われる。
【0023】
前記導電材は、電極材間の電気的連結のための導電経路を提供する成分であって、電池に化学的変化を誘発せずとも、導電性を有したものであれば、特に制限されるものではない。例えば、カーボンブラック,アセチレンブラック,ケッチェンブラック,チャネルブラック,ファーネスブラック,ランプブラック,サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フルオロカーボン,アルミニウム,ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使われる。前記導電材は、電極スラリーの全体重量を基準に0.1~10重量%で添加される。
【0024】
前記バインダーは、電極層で活物質及び導電材の間に位置して、これらを連結及び固定しながら電極層と電極集電体との間の結合を図る成分であって、フッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HEP),フッ化ポリビニリデン(polyvinylidenefluoride),ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile),ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate),ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース(CMC),澱粉,ヒドロキシプロピルセルロース,再生セルロース,ポリビニルピロリドン,テトラフルオロエチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアクリル酸,スチレンブタジエンゴム(SBR),フッ素含有ゴムなどの多種のバインダー高分子が使われる。前記バインダーは、電極スラリーの全体重量を基準に0.1~10重量%で添加される。
【0025】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトン、水などを使用することができる。
【0026】
前記電極スラリーに含まれる活物質,バインダー,導電材及び溶媒の含量は、リチウム二次電池用電極の製造時に通常使われる範囲内で選択され、例えば、固形分含量が10~80重量%以下である液相の電極スラリーが収得される。
【0027】
また、前記電極スラリーは、増粘剤,充填剤などのその他の添加剤をさらに含み、このようなその他の添加剤の含量は、電極の性能を低下しない範囲内で適切に選択されうる。
【0028】
一方、一般的な電極の製造の場合には、液相のスラリーを直ちに電極用集電体上に塗布した後、溶媒を乾燥し、加圧する。
【0029】
一方、本発明の電極の製造方法は、電極スラリーを電極用集電体に塗布するのに先立って、紙の製造工程で行われる脱水工程をリチウム二次電池用電極の製造に適用したことが特徴である。
【0030】
一般的な紙の製造の場合には、原料をワイヤメッシュ状の抄紙機上に均一に塗布した後、脱水してシート状の紙を得た後、それを高温に通過させて乾燥する。前記抄紙機に塗布される紙の原料は、ほとんどが水である状態(水のうち、紙の原料の濃度1%前後)で脱水を通じて水の95%以上が除去されながら、連続してロールプレス及び乾燥機に伝達される。
【0031】
このような脱水工程を二次電池の電極の製造に適用するためには、抄紙機に対応する別途の部材が必要であり、そのような部材を通じて紙に比べて固形分含量が高い電極スラリーから固形分の離脱を防止しながら脱水を進めなければならない。
【0032】
これにより、本発明では、電極スラリーの脱水工程を行うための部材として多孔性基材を使用し、その上に液相の電極スラリーを塗布した後、前記多孔性基材の反対側の面に脱水工程を行って電極スラリーのうち、溶媒を除去する。この際、液相電極スラリーの塗布厚さは、100~1,000μm、例えば300μmである。
【0033】
本発明において、脱水工程に使われた多孔性基材は、ポリマー、ガラス繊維、紙、金属またはセラミック材のメッシュ(mesh)状であるが、その形態及び材質に特別な制限はない。前記ポリマーとしては、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PES(polyethersulfone)などが使用可能であり、これらは、必要に応じて表面処理された形態で使われる。
【0034】
前記多孔性基材は、材質の種類によって気孔サイズが変わりうるが、粒子形態の固形分を含む二次電池用電極スラリーの脱水を効率的に行うために、気孔の平均サイズは、0.1~20μm、例えば1~10μmの範囲である。前記気孔範囲を満足する時、多孔性基材上で活物質、バインダー及び導電材の電極材の通過を抑制しながら溶媒のみを通過させて有利である。
【0035】
また、前記多孔性基材は、気孔率(porosity)が50~95%、例えば、70~90%の範囲であり、前記気孔率は、MIP(mercury intrusion porosimeter)、ガス吸着法(BET)などの方法で測定される。
【0036】
さらに、前記脱水工程は、より迅速かつ円滑な脱水のために、負圧(negative pressure)状態で圧力を下げて行われる。
【0037】
このような脱水工程によれば、電極スラリーのうち、溶媒の相当量、例えば、使われた溶媒含量の40~80%、詳細には、50~70%のレベルで除去することができ、これにより、引き続き進行する電極層の乾燥時間を短縮させて電極の生産性を極大化することができる。
【0038】
本発明の電極の製造方法では、脱水工程後、前記多孔性基材上に形成された電極層に電極集電体を積層させて、多孔性基材、電極層及び電極集電体が順次に積層された積層体を形成し、前記積層体を加圧する(ステップS2)。
【0039】
前記加圧は、電極の容量密度を高め、電極集電体と電極材との間の接着性を増加させながら電極スラリーの追加脱水のための過程であって、多孔性基材、電極層及び電極集電体が順次に積層された状態で加圧を行うことができる。また、前記加圧は、ロールプレッシングの方式で行われる。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記加圧は、0.05~20,000kPa、詳細には、0.1~4,000kPaの圧力で行われ、前記加圧範囲を満足する時、電極スラリーの追加脱水を効果的に行うことができるだけではなく、電極の容量密度を高め、電極集電体と電極材との間の接着性を増加させる点で有利である。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記加圧は、前記積層体の多孔性基材側で加圧を行うことができ、このような場合、電極層が多孔性基材に比べて集電体と接触する面が増加して、以後の段階で集電体に接着された電極層から多孔性基材を容易に分離して除去することができると見なされる。
【0042】
前記電極集電体は、外部導線に提供される電子を電極活物質に供給するための中間媒質の役割を行うか、逆に電極反応の結果として生成された電子を集めて外部導線に流す伝達者の役割を行うものであって、電池に化学的変化を誘発せずとも、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではない。例えば、ステンレススチール,アルミニウム,ニッケル,チタン,焼成炭素,銅;カーボン,ニッケル,チタンまたは銀で表面処理されたステンレススチール;アルミニウム-カドミウム合金;導電材として表面処理された非導電性高分子;アルミニウムのような金属で表面処理された非導電性高分子;または導電性高分子である。また、前記電極集電体は、フィルム,シート,フォイル,ネット,多孔質体,発泡体,不織布体など多様な形態が可能であり、その厚さは3~500μmの範囲であるが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明の電極の製造方法では、加圧後、電極スラリーの脱水に使われた多孔性基材を分離して除去した後、電極集電体上に形成された電極層を乾燥して電極を製造する(ステップS3)。
【0044】
前記乾燥は、前記行われた脱水工程を通じて電極スラリーのうち、相当量の溶媒が除去された後、残っている溶媒を除去するための工程であって、既存の電極の製造時に電極スラリーに含まれたあらゆる溶媒を除去する乾燥と区別される。すなわち、本発明では、脱水工程をあらかじめ行ったので、既存の電極の製造での乾燥工程に比べて速い速度で乾燥を行うことができる。一方、前記乾燥温度は、電極スラリーに含まれた溶媒の種類によって変わる。
【0045】
このような乾燥速度の短縮は、電極の生産性を極大化するだけではなく、既存の電極の製造工程で乾燥速度を速くするために、温度を上げるか、熱風速度が増加することで引き起こされた問題点、すなわち、スラリーのうち、バインダー成分が表面方向に移動する現象及び表面のみ乾燥されるスキニング現象を抑制して、電極性能の低下を防止することができる。
【0046】
前記のように製造された電極は、活物質と共にバインダー及び導電材が均一に分布されるだけではなく、導電材粒子の間の空隙平均サイズが減少して、例えば空隙のサイズ分布が0.005~60μm、詳細には0.01~45μmであり、その平均サイズが0.25~0.29μm、詳細には0.26~0.28μmである電極が製造可能である。
【0047】
これにより、本発明の方法で製造された電極は、接着力及び電気化学的の側面において、優れた電極性能を示して、スタック型,巻き取り型,スタックアンドホールディング型,ケーブル型などの多種のリチウム二次電池用電極として有用に使われる。
【0048】
例えば、正極、負極、前記正極と前記負極上に介在される分離膜、及び非水電解液を含む二次電池において、前記正極及び負極のうち少なくとも1つは、本発明の製造方法で製造された電極である。
【0049】
前記二次電池において、負極と正極とを隔離させるのに使われる分離膜は、当分野において通常使われる多孔性基材であれば、いずれも使用が可能であり、例えば、ポリオレフィン系多孔性膜(membrane)または不織布を使用することができ、また、前記多孔性基材の少なくとも一面上に無機物粒子及びバインダー高分子を含む多孔性コーティング層をさらに備えることができるが、これに特別に限定されるものではない。
【0050】
また、前記非水電解液は、有機溶媒及び電解質塩を含み、前記電解質塩は、リチウム塩である。前記リチウム塩は、リチウム二次電池用非水電解液に通常使われるものが制限なしに使われる。
【0051】
このような二次電池は、小型デバイスの電源として使われる電池セルに使われるだけではなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても望ましくは使われる。前記中大型デバイスの望ましい例としては、電気自動車,ハイブリッド電気自動車,プラグインハイブリッド電気自動車,電力貯蔵用システムなどが挙げられ、特に、高出力が要求される領域であるハイブリッド電気自動車及び新再生エネルギー貯蔵用バッテリなどに有用に使われる。
【0052】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は、いろいろ他の形態に変形され、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0053】
〔実施例1〕脱水工程を適用した負極の製造
活物質として天然黒鉛40重量%、導電材としてカーボンブラック(carbon black)0.8重量%、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム0.7重量%及び増粘剤(CMC)0.7重量%を残りの量の蒸留水に添加して負極スラリー(固形分含量:42.2重量%)を準備した。
【0054】
図1に示すように、前記負極スラリーを親水性で表面処理されたPTFE材の多孔性基材(平均気孔サイズ:1μm)上に300μmの厚さに塗布した後、前記多孔性基材の反対側の面に常温で脱水工程を行って、スラリーのうち、蒸留水を除去した。引き続き、前記多孔性PTFE基材のスラリーが塗布された面を厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜の一面に積層させた後、前記積層体を加圧して追加的な脱水工程を行った。この際、加圧は、0.1~4,000kPaの範囲で調節して行った。このような2回の脱水工程を通じて、スラリーの重量は、脱水前、初期重量の約65%に減少した(使われた蒸留水の約60%が除去される)(図2参照)。
【0055】
以後、前記多孔性PTFE基材をスラリーが塗布された面(負極層)から分離した後、60℃で乾燥を行い、乾燥が完了した時点は、約2分以後であった。
【0056】
これにより、銅集電体上に負極層(厚さ:35~45μm)が形成された負極を製造した。
【0057】
〔実施例2〕減圧下の脱水工程を適用した負極の製造
脱水工程を負圧レベルに圧力を下げて行うことを除いては、実施例1と同じ過程で負極を製造した。
【0058】
〔比較例1〕脱水工程ない負極の製造
活物質として天然黒鉛40重量%、導電材としてカーボンブラック0.8重量%、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム0.7重量%及び増粘剤(CMC)0.7重量%を残りの量の蒸留水に添加して負極スラリー(固形分含量:42.2重量%)を準備した。
【0059】
前記負極スラリーを厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜の一面に300μmの厚さに塗布した後、60℃で乾燥し、乾燥が完了した時点は、約6分以後であった。
【0060】
これにより、銅集電体上に負極層(厚さ:50~55μm)が形成された負極を製造した。
【0061】
〔実験例1〕乾燥速度の評価
実施例1及び比較例1によって製造されたそれぞれの負極に対する乾燥速度を比較し、その結果を図2に示した。
【0062】
図2を参照すると、スラリーのうち、固形分含量及び乾燥温度が同じ条件で、脱水工程を通じてスラリーのうち、溶媒を大幅に除去した後、乾燥を行った実施例1は、約2分の乾燥時間を要したのに対し、脱水工程を適用していない比較例1は、溶媒乾燥時まで約6分を要し、実施例1による電極の製造工程が、乾燥時間を著しく短縮させることが分かる。
【0063】
〔実験例2〕電極層内の導電材の分布図の評価
実施例1及び比較例1によって製造された負極に対するSEMイメージをそれぞれ図3A及び図3Bに示した。
【0064】
実施例1によって製造された負極の表面形状(図3A)及び比較例1によって製造された負極の表面形状(図3b)を比較する時、導電材として使われたカーボンブラックの間の空隙サイズが減少したと把握される。具体的に、実施例1の負極は、空隙サイズ分布が0.01~45μmであり、空隙の平均サイズが0.27μmである一方、比較例1の負極は、空隙サイズ分布が0.01~45μmであり、空隙の平均サイズが0.30μmであって、実施例1の負極が、比較例1に比べてより小さく、均一な空隙を保有することが分かる。
【0065】
〔実験例3〕接着力の評価
実施例1及び比較例1によって製造された負極を1.5cm×7cmの試片で製作した後、ガラス上に両面テープを用いて接着させた後、UTM装備(Comtech QC506B)を使用して、分当たり3mmの速度で両面テープから電極を取り外す時に必要な力、すなわち、剥離強度を測定した。その結果を図4に示した。
【0066】
図4を参照すると、実施例1によって製造された電極の剥離強度が、比較例1に比べて高いことを確認することができる。これは、比較例1の場合、集電体上に塗布された負極スラリーが乾燥されて電極層を形成する過程でスラリー内の水分が蒸発しながらバインダーが電極層の表面に移動するために、集電体と電極層との界面に位置するバインダー量が減少する。一方、実施例1は、脱水工程を経て乾燥速度を短縮させることによって、スラリー内のバインダーが電極層の表面に移動する現象が減少して接着力が改善されたことが分かる。
【0067】
〔実験例4〕容量保持率の評価
実施例1及び比較例1によって製造された負極が含まれたリチウム二次電池セルを製造し、充電0.1C、放電0.1C、30℃の条件下で初期容量に比べて、サイクル進行による容量を測定した。その結果を図5に示した。
【0068】
図5に示したように、実施例1の負極が使われた電池セルは、比較例1の負極が使われた電池セルに比べて初期容量が微かに異なるが、サイクルの進行数が増加するほど容量保持率がさらに高く表われた。
【0069】
すなわち、脱水工程を行って製造した実施例1の電極は、電気的性能の低下がないだけではなく、比較例1の電極に比べてさらに優れた電池寿命を示すことが分かる。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5