(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物、高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物から製造されたコンタクトレンズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20240301BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G02C7/04
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2023070837
(22)【出願日】2023-04-24
【審査請求日】2023-04-24
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521378233
【氏名又は名称】▲ユウ▼嘉科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳耀倫
(72)【発明者】
【氏名】黄士哲
(72)【発明者】
【氏名】歐修▲イ▼
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-316133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0017383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物であって、
第一シリコンポリマー:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が5%~20%であり、下記の構造式(I)、即ち、
【化1】
(I)を有し、その中で、mが1~20範囲内の整数であり、nが40~80範囲内の整数であり、
第二シリコンポリマー:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が30%~60%であり、下記の構造式(II)、即ち、
【化2】
(II)を有し、その中で、oが1~10範囲内の整数であり、pが5~15範囲内の整数であり、
少なくとも一つの親水性単量体:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が20%~50%であり、
一つの架橋剤:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が0.1%~2%であり、
一つの開始剤:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が0.5%~2%であり、及び
一つの溶剤:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が5%~20%である、という組成成分が含まれることを特徴とする高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物。
【請求項2】
前記親水性単量体が、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethyl methacrylate,HEMA)、グリセロールメタクリレート(glycerol methacrylate,GMA)、アクリル酸(acrylic acid,AA)、メタアクリル酸(methacrylic acid,MAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド(N,N-dimethylacrylamide,DMA)、N-ビニルピロリドン(N-vinylpyrrolidone,NVP)、N-ビニル、N-メチルアセトアミド(N-vinyl-N-methyl acetamide,VMA)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine,MPC)及び前記化合物の混合物又は誘導体から構成されるクラスターから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物。
【請求項3】
前記架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol di(meth)acrylate,EGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol di(meth)acrylate,TEGDMA)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(tri(ethylene glycol)divinyl ether,TEGDVE)、テトラメチレングリコールジメタクリレート(tetramethylene glycol di(meth)acrylate,TMGDMA)及びイソシアヌル酸トリアリル(triallyl isocyanurate,TIC)から構成されるクラスターから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物。
【請求項4】
前記溶剤が、n-ブチルアルコール(n-butanol)、t-ブチルアルコール(t-butanol)、n-ペンチルアルコール(n-pentyl alcohol)、2-メチル-2-ブタノール(t-amyl alcohol)、n-ヘキサノール(n-hexanol)、n-オクタノール(n-octanol)、n-ノナノール(n-nonanol)及びn-デカノール(n-decanol)から構成されるクラスターから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物。
【請求項5】
前記開始剤が光開始剤であり、且つ、Darocur 1173、Irgacure 184、Irgacure TPO、Irgacure 1700、Irgacure 1800、Irgacure 1850及びIrgacure 819から構成されるクラスターから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物。
【請求項6】
前記開始剤が熱開始剤であり、且つ、2,2′-アゾビス(イソブチロニトリル)(2,2’-azobis(2-methylpropionitrile),AIBN)及び1,1′-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(1,1’-azobis(cyanocyclohexane),ACHN)から構成されるクラスターから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか
一項に記載の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物から製造されたコンタクトレンズ。
【請求項8】
コンタクトレンズの製造方法であって、
a)請求項6に記載の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の成分を均一に混ぜた後、成形金型に埋め込むこと、
b)下記各段階によって、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を連続に加熱して硬化させることによって、原材料を形成すること:
第一段階:40±2℃に加熱した後、30分間保持すること、
第二段階:60±2℃に加熱した後、30分間保持すること、
第三段階:80±2℃に加熱した後、30分間保持すること、及び
c)前記原材料を、アルコール類水溶液で洗い流すことによって、前記原材料内に硬化していない成分を抽出して、コンタクトレンズを形成すること、というステップが含まれることを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。
【請求項9】
コンタクトレンズの製造方法であって、
a)請求項5に記載の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の成分を均一に混ぜた後、透明な成形金型に埋め込むこと、
b)25±2℃条件の下で、紫外線で前記透明な成形金型を15~30分間照射して、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を硬化させることによって、原材料を形成すること、及び
c)前記原材料を、アルコール類水溶液で洗い流すことによって、前記原材料内に硬化していない成分を抽出して、コンタクトレンズを形成すること、というステップが含まれることを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。
【請求項10】
前記アルコール類水溶液がエタノール水溶液又はイソプロパノール水溶液であることを特徴とする請求項8又は
請求項9に記載のコンタクトレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物及び前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物から製造されたコンタクトレンズに係り、特にフリーラジカル重合反応により製造された高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物と、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物から製造されたコンタクトレンズ及びその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
シリコーンハイドロゲルは、有機高分子材料であり、コンタクトレンズの応用面において、その研究開発方向は、水分子に依存しない状況の下でコンタクトレンズの酸素伝送を提供することである。但し、シリコーンハイドロゲルでのシリコン分子は、極めて高い疎水性を有するので、親水性単量体と相分離状態を生じることに加えて、シリコーンハイドロゲル・コンタクトレンズ表面が疎水性を呈するようにする為、コンタクトレンズの酸素透過効果を著しくなくし、これで、目不快症状を引き起こす。従って、どのように高酸素透過性を有し、且つ、両立性の高い親水性単量体を含有して、コンタクトレンズ製造に適するシリコーンハイドロゲル組成物をどのように合成することは、ずっと各コンタクトレンズ製造業者の研究開発重点である。本発明の技術は、正に真新しい高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物及び前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物から製造されたコンタクトレンズを提供することである。前記組成物でのシリコン分子と親水性単量体との混合比を調整することによって、コンタクトレンズに、高酸素透過性を有させることができるので、コンタクトレンズの適用性を向上させることができる。
【発明の概要】
【0003】
当該条項は、本発明の幾らかの特徴をまとめて編集する。その他の特徴は、その後の条項に開示される。その目的は、追加される特許の請求範囲における宗旨と範囲での様々な修正及び類似的な配列をカバーすることである。
【0004】
本発明は、高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を開示する。前記組成物は下記の組成成分を有する。
第一シリコンポリマー:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が5%~20%であり、下記の構造式(I)、即ち、
【化1】
(I)を有し、その中で、mが1~20範囲内の整数であり、nが40~80範囲内の整数であり、第二シリコンポリマー:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が30%~60%であり、下記の構造式(II)、即ち、
【化2】
(II)を有し、その中で、oが1~10範囲内の整数であり、pが5~15範囲内の整数であり、―少なくとも一つの親水性単量体:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が20%~50%であり、一つの架橋剤:その含有量が当該組成物総量に占める重量百分率が0.1%~2%であり、一つの開始剤:その含有量が前記組成物総量に占める重量百分率が0.5%~2%であり、及び一つの溶剤:その含有量が前記組成物総量に占める重量百分率が5%~20%である。
【0005】
本発明によって、前記親水性単量体が、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸グリセリル、アクリル酸、メタアクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニル、N-メチルアセトアミド、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及び前記化合物の混合物又は誘導体から構成されるクラスターから選ばれる。
【0006】
本発明によって、前記架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジメタクリレート及びイソシアヌル酸トリアリルから構成されるクラスターから選ばれる。
【0007】
本発明によって、前記溶剤は、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、2-メチル-2-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール及びn-デカノールから構成されるクラスターから選ばれる。
【0008】
前記開始剤が光開始剤である可能性があり、且つ、Darocur 1173、Irgacure 184、Irgacure TPO、Irgacure 1700、Irgacure 1800、Irgacure 1850及びIrgacure 819から構成されるクラスターから選ばれる。
【0009】
前記開始剤が熱開始剤である可能性もあり、且つ、2,2′-アゾビス(イソブチロニトリル)及び1,1′-アゾビス(シアノシクロヘキサン)から構成されるクラスターから選ばれる。
【0010】
本発明は、コンタクトレンズも開示して、コンタクトレンズが、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物から製造されたものである。
【0011】
本発明は、コンタクトレンズの製造方法も開示して、製造方法が下記のステップを含む。a)熱開始剤を使用する前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の成分を均一に混ぜた後、成形金型に埋め込むこと、b)下記各段階によって、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を連続に加熱して硬化させることによって、原材料を形成すること。第一段階:40±2℃に加熱した後、30分間保持すること、第二段階:60±2℃に加熱した後、30分間保持すること及び第三段階:80±2℃に加熱した後、30分間保持すること、及びc)前記原材料を、アルコール類水溶液で洗い流すことによって、前記原材料内に硬化していない成分を抽出して、コンタクトレンズを形成すること。
【0012】
本発明は、コンタクトレンズのその他の製造方法も更に開示して、製造方法が下記のステップを含む。a)光開始剤を使用する前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の成分を均一に混ぜた後、透明な成形金型に埋め込むこと、b)25±2℃条件の下で、紫外線で前記透明な成形金型を15~30分間照射して、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を硬化させることによって、原材料を形成すること、及びc)前記原材料を、アルコール類水溶液で洗い流すことによって、前記原材料内に硬化していない成分を抽出して、コンタクトレンズを形成すること。
【0013】
好ましくは、前記アルコール類水溶液がエタノール水溶液又はイソプロパノール水溶液である。
【0014】
コンタクトレンズでの各シリコンポリマー分子と親水性単量体との混合比を調整することによって、本発明において、コンタクトレンズの高酸素透過率を提供することに加えて、シリコーンハイドロゲル・コンタクトレンズの設計範囲も増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、熱開始剤によるコンタクトレンズ製造方法のフローチャートである。
【0016】
【
図2】
図2は、光開始剤によるコンタクトレンズ製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
開示内容の叙述を一層詳しくて完備させる為に、これから本発明の実施形態と具体的な実施例を対象として説明する。
【0018】
本発明は、高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を開示する。前記高酸素透過シリコーンハイドロゲル組成物は、下記の組成成分から構成されている。第一シリコンポリマー、第二シリコンポリマー、少なくとも一つの親水性単量体、架橋剤、開始剤と溶剤。
【0019】
第一シリコンポリマー含有量が前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物総量に占める重量百分率が5%~20%であり、且つ、下記の構造式(I)、即ち、
【化1】
(I)を有し、その中で、mが1~20範囲内の整数であり、nが40~80範囲内の整数である。第一シリコンポリマー分子の平均分子量が、5000~10000の範囲にある。
【0020】
第二シリコンポリマー含有量が前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物総量に占める重量百分率が30%~60%であり、且つ、下記の構造式(II)、即ち、
【化2】
(II)を有し、その中で、oが1~10範囲内の整数であり、pが5~15範囲内の整数である。第二シリコンポリマー分子の平均分子量が、1000~5000の範囲にある。
【0021】
親水性単量体は、単一ヒドロキシ基(OH-)分子のような極性基を有し、水に対して大きい親和性を持ち、水分子を吸引したり、又は水に溶けたりすることができる単量体を指す。本発明によって、親水性単量体が、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethyl methacrylate,HEMA)、グリセロールメタクリレート(glycerol methacrylate,GMA)、アクリル酸(acrylic acid,AA)、メタアクリル酸(methacrylic acid,MAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド(N,N-dimethylacrylamide,DMA)、N-ビニルピロリドン(N-vinylpyrrolidone,NVP)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(N-vinyl-N-methyl acetamide,VMA)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine,MPC)及び前記化合物の混合物又は誘導体から構成されるクラスターから選ばれる。言い換えれば、高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の中で、親水性単量体が、一種だけでなく、それに加えて、すべての親水性単量体の含有量が高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物総量に占める重量百分率が20%~50%である。
【0022】
架橋剤は、第一シリコンポリマー、第二シリコンポリマーと親水性単量体の間に架橋の役割を果たして、生成物を不溶性の架橋ポリマーに変換する。本発明によって、前記架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol di(meth)acrylate,EGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol di(meth)acrylate,TEGDMA)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(tri(ethylene glycol)divinyl ether,TEGDVE)、テトラメチレングリコールジメタクリレート(tetramethylene glycol di(meth)acrylate,TMGDMA)及びイソシアヌル酸トリアリル(triallyl isocyanurate,TIC)から構成されるクラスターから選ばれ、それに加えて、その含有量というと、前記架橋剤が高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物総量に占める重量百分率が0.1%~2%である。
【0023】
架橋剤は、第一シリコンポリマー、第二シリコンポリマー、親水性単量体と架橋剤の間に硬化(架橋)反応の役割を果たす化合物である。本発明によって、硬化反応は、熱硬化反応であってもいいし、又は是光硬化反応であっても良い。従って、開始剤は熱開始剤であってもいいし、又は光開始剤であっても良い。光開始剤は、Darocur 1173、Irgacure 184、Irgacure TPO、Irgacure 1700、Irgacure 1800、Irgacure 1850及びIrgacure 819から構成されるクラスターから選ばれる。前記開始剤は、皆ドイツのBASF社の製品である。光開始剤は、2,2′-アゾビス(イソブチロニトリル)(2,2’-azobis(2-methylpropionitrile),AIBN)及び1,1′-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(1,1’-Azobis(cyanocyclohexane),ACHN)から構成されるクラスターから選ばれる。熱開始剤であれ、光開始剤であれ、含有量というと、高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物総量に占める重量百分率が皆0.5%~2%である。
【0024】
第一シリコンポリマー、第二シリコンポリマーと親水性単量体の間に架橋反応を行うので、流動性を維持する為に、一定量の架橋剤が必要となる。本発明によって、前記溶剤が、n-ブチルアルコール(n-butanol)、t-ブチルアルコール(t-butanol)、n-ペンチルアルコール(n-pentyl alcohol)、2-メチル-2-ブタノール(t-amyl alcohol)、n-ヘキサノール(n-hexanol)、n-オクタノール(n-octanol)、n-ノナノール(n-nonanol)及びn-デカノール(n-decanol)から構成されるクラスターから選ばれ、それに加えて、含有量というと、高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物総量に占める重量百分率が5%~20%である。
【0025】
以上開示された高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物にもとづき、本発明は、幾つかのコンタクトレンズの製造方法も開示した。
【0026】
図1を参照してください。当該図は、熱開始剤によるコンタクトレンズ製造方法のフローチャートである。コンタクトレンズ製造方法は、下記の幾つかのステップを含む。第一ステップは、(前記)高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の成分を均一に混ぜた後、成形金型に埋め込むこと(S01)である。熱硬化反応に使用する為、成形金型は、鋼製金型又はプラスチック製金型の使用に限らず、且つ、金型自身が透明であるかどうかにも関わらず、金型が熱材料を、その内部にある高酸素透過シリコーンハイドロゲル組成物の組成成分に有効に伝送するだけで良い。第二ステップは、下記各段階によって、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を連続に加熱して硬化させることによって、原材料を形成することである。第一段階:40±2℃に加熱した後、30分間保持すること。第二段階:60±2℃に加熱した後、30分間保持すること及び第三段階:80±2℃に加熱した後、30分間保持すること(S02)。このステップは、段階に分けて、成形金型を通して高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を加熱することによって、熱開始剤に、熱硬化反応を完成させることである。このステップで取得される原材料は、コンタクトレンズのプロトタイプである。その中に、熱硬化反応が終了していない一部分の高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の成分が含まれているので、抽出することによって、成形するコンタクトレンズの使用性を確保する必要がある。第三ステップは、前記原材料を、アルコール類水溶液で洗い流すことによって、前記原材料内に硬化していない成分を抽出して、コンタクトレンズを形成することである(S03)。本発明によって、アルコール類水溶液がエタノール水溶液又はイソプロパノール水溶液である。アルコール類水溶液は、流れて原材料を通すことができるので、硬化していない第一シリコンポリマー、第二シリコンポリマー、親水性単量体、架橋剤、開始剤と溶剤を抽出することができる。抽出された原材料は、正に使用可能なコンタクトレンズである。この後、コンタクトレンズ製造方法は、幾つかのカプセル化ステップを含む。例えば、前記コンタクトレンズを、緩衝溶液(生理食塩水)含有包装容器ないに埋め込んでから、前記包装容器を密封した後、前記包装容器に対して滅菌(湿熱滅菌法)等を行う。これらのカプセル化ステップについて、ISO標準フローを参照してください。ここでくどくど述べない。
【0027】
図2を参照してください。当該図は、光開始剤によるコンタクトレンズ製造方法のフローチャートである。コンタクトレンズ製造方法は、下記の幾つかのステップを含む。第一ステップは(前記)高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の成分を均一に混ぜた後、成形金型に埋め込むこと(S11)である。光硬化反応の為に、外部からの紫外線を受け取る必要があるので、成形金型の材質は良い透光性を有さなければならない。従って、透明なプラスチック金型を使用しなければならない。透明なプラスチック金型の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリホルムアルデヒド、ポリエチレンテレフタレート、シクロアルケン共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルとスチレン等から選ばれる。その次に、第二ステップは、25±2℃の下で、紫外線で前記透明な成形金型を15~30分間照射して、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を硬化させることによって、原材料(S12)を形成することである。本ステップは、室温と標準気圧の条件の下で実施される。紫外線の照射時間は、原材料が検収・合格の基準に達するまで、光開始剤の量と金型自身の特性によって調整することができる。原材料の特性は前記述べた通りであるので、ここでくどくど述べない。第三ステップは、前記原材料を、アルコール類水溶液で洗い流すことによって、前記原材料内に硬化していない成分を抽出して、コンタクトレンズ(S13)を形成することである。同様に、アルコール類水溶液は、エタノール水溶液又はイソプロパノール水溶液から選ばれるものである。アルコール類水溶液は、流れて原材料を通すことができるので、硬化していない高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物を抽出してコンタクトレンズを形成することができる。光開始剤によるコンタクトレンズ製造方法において、前記のカプセル化ステップを更に実行することもできる。
【0028】
本発明によって、機能性を向上させる為に、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物に加えて、コンタクトレンズにその他の組成物も追加することができる。よくある追加成分は下記を含む。紫外線吸収単量体(熱開始剤と組み合わせて使用される):目に入る外部紫外線の減少に用いられる。反応性染料:コンタクトレンズの外観色の変更に用いられる。湿潤剤:コンタクトレンズと眼球との間の潤滑程度の改善に用いられる。更に、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物に加えて、コンタクトレンズにまた第三シリコンポリマーを追加することによって、水含有量と引張モジュラス等を含むコンタクトレンズの物理学的性質を調整することもできる。前記の追加成分総量と高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物との混合比は、重量百分率からいうと、0.25:1以下であっても良い。
【0029】
これから実施形態を使って、特定な成分の上限の決定方法及び、異なる混合比の下で高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物から前記方法によって製造されたコンタクトレンズの性質を具体的に説明する。
【0030】
下記の表1を参照してください。第一実施形態のクラスターを使って、シリコンポリマーと親水性単量体との間の両立性及び、親水性単量体含有量によるコンタクトレンズの光透過率に対する影響を説明する。表1は両立性分析の結果を示す。その中で、各実施形態において、シリコンポリマーを親水性単量体(本テストでHEMA単量体によって実施した)に追加して混ぜることによって観察したが、前記のコンタクトレンズ製造方法で完全なコンタクトレンズを製造しなかった。第一シリコンポリマーと第二シリコンポリマーを、比例によって親水性単量体に追加し、それに加えて、対照群と比べて溶液の透明度を確認した。両立性を確認してからこそ、始めて後続のレシピ調整及びコンタクトレンズの物理学的性質のテストに役立つようになる。両立性テストの結果、第一シリコンポリマーと第二シリコンポリマーとの主体両立性は、透明で澄んでいる状態を示すので、本発明で提供された第一シリコンポリマーと第二シリコンポリマーとの間に、良好な両立性の性質を有することを説明した。異なる混合比でHEMA単量体を追加した場合、実施形態A2~A4でその結果を表した。HEMA含有量が総量に20~40%を占めた場合、シリコンポリマーとの両立性を相変わらず維持した。但し、含有量が50%に達した時に、溶液が白濁り状態を呈するようになったので、シリコンポリマーとHEMAとの間の不均質性を表す。前記の実験結果によって、その後高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物のレシピテストを行う時に、前記テスト結果によって親水性単量体の上限を設定することができる。これで親水性単量体の含有量を調整することができる。
【表1】
【0031】
下記の表2を参照してください。第二実施形態のクラスターを使って、異なる混合比の下で高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物から前記方法によって製造されたコンタクトレンズの性質を説明する。実施形態B1~B5で使用された高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物の成分は、第一シリコンポリマー、第二シリコンポリマー、HEMA(親水性単量体)、EGDMA(架橋剤)、Irgacure 819(開始剤剤)とn-ヘキサノール(溶剤)であり、それぞれ異なる重量百分率を有した。その実験結果を分析した結果、コンタクトレンズの水含有量(water content,WC%)、引張モジュラス(modulus,MPa)及び酸素透過度(oxygen permeability,Dk)は表2で示す通りである。水含有量の変化が26.6%~38.4%の範囲にあり、引張モジュラスの変化が0.8~1.5MPaの範囲にあり、且つ、酸素透過率の変化が83~105barrerの範囲にあった。これらの物理学的性質が、皆コンタクトレンズ市場のニーズを適合する。
【表2】
【0032】
下記の表3を参照してください。第三実施形態のクラスターを使って、異なる混合比の下で高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物に対して、多種の親水性単量体を追加した後、前記光開始剤の方法により製造したコンタクトレンズの性質を説明する。本発明によって、親水性単量体は、一回で多種の組成成分を使用することができる。従って、この前の実施形態クラスターと異なり、実施形態C1~C5で使用した親水性単量体に、HEMAを除いて、DMAとNVPも追加した。各組成成分の重量百分率表を、表3に列記する。その実験結果を分析した結果、実施形態C1~C5でのコンタクトレンズの水含有量変化が33.5%~43.6%の範囲にあり、引張モジュラスの変化が0.6~1.2MPaの範囲にあり、且つ、酸素透過率の変化が87~115Barrerの範囲にあった。これらの物理学的性質が、皆コンタクトレンズ市場のニーズを適合する。更に、第三実施形態クラスターと第二実施形態クラスターの全体的な表現から見ると、前者の水含有量と酸素透過率が比較的に高く、且つ、引張モジュラスも比較的に低かった(比較的に柔らかかった)。
【表3】
【0033】
下記の表四を参照してください。第四実施形態のクラスターを使って、異なる混合比の下で高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物に対して、多種の親水性単量体及び余分な第三シリコンポリマーを追加した後、前記光開始剤の方法により製造したコンタクトレンズの性質を説明する。本発明によって、高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物に、余分なシリコンポリマーを追加して共にコンタクトレンズ製造に使用することができる。この前の実施形態クラスターと異なり、実施形態D1~D5に、余分な第三シリコンポリマーを追加した。第三シリコンポリマーは、コンタクトレンズの物理的性質調整に用いられることに加えて、自主シリコンポリマーと両立する特性を通じて、レシピ調整に、比較的に良い設計弾性を持たせることができる。本実施形態クラスターにおいて、第三シリコンポリマーは、(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン((3-methacryloxy-2-hydroxypropoxy)propylbis(trimethylsiloxy)methylsilane,SiGMA)である。実際操作において、トリス(トリメチルシロシキ)シリルプロピルビニルカーバメート(3-vinyl carbamatepropyl tris(trimethylsiloxy)silane,TRISVC)又は平均分子量が2000を下回るジメチルポリシロキサン(monofunctional polydimethylsiloxane,mPDMS)及びその組み合わせから構成されるポリマーから選ばれることもでき、且つ、前記高酸素透過性シリコーンハイドロゲル組成物に占める重量百分率が5%~20%である場合がある。各組成成分の重量百分率表を、表四に列記する。その実験結果を分析した結果、実施形態D1~D5でのコンタクトレンズの水含有量変化が35.5%~43.1%の範囲にあり、引張モジュラスの変化が0.6~1.1MPaの範囲にあり、且つ、酸素透過率の変化が84~110Barrerの範囲にあった。これらの物理学的性質も、皆コンタクトレンズ市場のニーズを適合する。
【表4】
【0034】
前記のように本発明を開示したが、本発明を限定するものではない。 如何なる所属技術分野における、通常な知識を持つ人員は、本発明の宗旨と範囲を離れない前提の下で、少し変更と修飾を行うことができるので、 本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定められる内容に準じる。
【符号の説明】
【0035】
無し