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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】レース艇
(51)【国際特許分類】
   B63B 5/24 20060101AFI20240301BHJP
   B63B 43/18 20060101ALI20240301BHJP
   B63B 3/00 20060101ALI20240301BHJP
   B63B 43/12 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B63B5/24 Z
B63B43/18
B63B3/00 Z
B63B43/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023076598
(22)【出願日】2023-05-08
【審査請求日】2023-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596175326
【氏名又は名称】ヤマト発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信一
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特許第3435649(JP,B2)
【文献】実開昭58-153195(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 5/24
B63B 43/18
B63B 3/00
B63B 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハル部と、
前記ハル部の上面を塞いで配設されるデッキ部と、
前記デッキ部の一部を開口して形成され、外部空間と連通する操縦空間と、
前記ハル部と前記デッキ部との間に配設され、前記操縦空間をその間に挟むように前記ハル部の船尾側から船首側へと延在すると共に、その内部に第1の空間を有するストリンガー部と、
前記操縦空間より前記船首側であり、前記ハル部と前記デッキ部との間に形成される第2の空間と、
前記デッキ部に形成され、前記操縦空間と前記船首との間に前記第2の空間と前記外部空間とを連通させるデッキエアホールと、を備え、
前記ストリンガー部には、
前記第1の空間と前記操縦空間とを連通させる第1の注水開口部と、
前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させる第1の空気抜き開口部と、が形成されることを特徴とするレース艇。
【請求項2】
前記操縦空間を囲むように前記デッキ部に配設されるコーミング部を備え、
前記コーミング部には、前記外部空間と連通する第1の開口部が形成されると共に、前記コーミング部と前記ストリンガー部の内壁部との間には前記操縦空間と連通する隙間が形成され、
前記第2の空間は、前記操縦空間と連通することを特徴とする請求項1に記載のレース艇。
【請求項3】
前記ストリンガー部は、その延在方向において、前記デッキエアホールより前記船首側の端部に第2の開口部を有し、
前記第2の開口部は、前記第1の空気抜き開口部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレース艇。
【請求項4】
前記ストリンガー部は、前記ハル部の前記船尾から前記船首までに渡り、上面視略V字形状に一体に形成され、
前記第1の空気抜き開口部は、前記第2の空間を区画する前記ストリンガー部に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレース艇。
【請求項5】
前記ハル部、前記ストリンガー部の外壁部及び前記デッキ部にて囲まれた第3の空間と、を更に備え、
前記ストリンガー部は、前記ハル部の上面に立設される前記内壁部及び前記外壁部と、前記内壁部と前記外壁部の上面側に位置する天面部と、を有し、
少なくとも前記操縦空間の両側に位置する前記ストリンガー部の前記外壁部には、前記第1の空間と前記第3の空間とを連通させる第2の注水開口部が形成され、
少なくとも前記第2の空間の両側に位置する前記ストリンガー部の前記外壁部には、前記第1の空間と前記第3の空間とを連通させる第2の空気抜き開口部が形成されることを特徴とする請求項2に記載のレース艇。
【請求項6】
前記ハル部、前記ストリンガー部の外壁部及び前記デッキ部にて囲まれた第3の空間と、を更に備え、
前記ストリンガー部は、前記ハル部の上面に立設される前記内壁部及び前記外壁部と、前記内壁部と前記外壁部の上面側に位置する天面部と、を有し、
少なくとも前記操縦空間の両側には、前記天面部と前記デッキ部との間に注水路が形成され、
前記注水路は、前記第3の空間と前記操縦空間とを連通させることを特徴とする請求項2に記載のレース艇。
【請求項7】
前記デッキ部の上面に前記デッキエアホールを覆うように配設されるカウリング部と、を更に備え、
前記カウリング部の内側の前記デッキ部の上面には、補助浮力体が、前記デッキエアホールの近傍に配設され、
前記カウリング部には、前記デッキエアホールよりも前記船首側にカウルエアホールが形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレース艇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レース艇に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転覆後に速やかにレース艇の先端のバウを水面上に直立させるレース艇の構造が開示されている。ボートレース場では、競走水面に300mの間隔で設けられた第1ターンマークと第2ターンマークを6隻のレース艇が1周約35秒で3周回一斉に航走する。そして、コースの直線区間では、レース艇の最高速度は約80km/hに達する。
【0003】
レース中には、上記高速状態を維持したまま、第1ターンマークや第2ターンマークに向かって突入し、180度ターンするため、そのターンする際にレース艇のバランスを失い、他のレース艇と接触し転覆する場合がある。また、上記ターンの際に、向かい風や他のレース艇の起こす波等により煽られて転覆する場合もある。
【0004】
転覆したレース艇やレース艇から放り出された選手に他のレース艇が衝突する等の2重事故の防止を目的に、他のレース艇にいち早く転覆を知らせるため、レース艇には、転覆後速やかにバウを水面上に直立させる工夫が成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3435649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レース艇では、転覆後速やかにバウを水面上に直立させるため、デッキ部にデッキエアホールという開口部が形成されると共に、カウリング部にはカウルエアホールという開口部が形成される。この構造により、レース艇では、レース艇内部の空気が、デッキエアホールとカウルエアホールを介して速やかに抜かれることで、レース艇の内部に急速に水が浸入する。このとき、レース艇の船尾に設置された船外機等が水中へと引き入れられることで、レース艇本体が直立し、バウが水面上へと突出する。
【0007】
引用文献1の図1に示すように、従来のレース艇は、木質構造であり、レース艇としての剛性を高めるため、セミモノコック構造に形成される。この構造により、レース艇の内部空間が連通状態であり、レース艇内部の空気が、デッキエアホールとカウルエアホールを介して容易に外部へと抜かれた。
【0008】
しかしながら、昨今の環境問題等により、多量の木材を使用するレース艇の構造が、FRP(繊維強化プラスチック)等を使用した構造へと置き換わることが想定される。この場合には、レース艇の内部には、板状体から成形加工されたストリンガー部を用いて、従来の木質構造と同等の剛性を維持するため、レース艇の内部空間を上記木質構造のように連通状態とすることが難しい。その結果、単に、レース艇にデッキエアホールとカウルエアホールを形成したのみでは、レース艇の内部の空気が外部へと放出され難く、レース艇の内部への水の浸入を妨げることで、レース艇の転覆後速やかな上記バウ上げ動作が実現され難いという課題がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、船体の各所に注水開口部及び空気抜き開口部を配設することで、その転覆時に船体の内部へと急速に水を浸入させ、速やかなバウ上げ動作を実現するレース艇を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のレース艇では、ハル部と、前記ハル部の上面を塞いで配設されるデッキ部と、前記デッキ部の一部を開口して形成され、外部空間と連通する操縦空間と、前記ハル部と前記デッキ部との間に配設され、前記操縦空間をその間に挟むように前記ハル部の船尾側から船首側へと延在すると共に、その内部に第1の空間を有するストリンガー部と、前記操縦空間より前記船首側であり、前記ハル部と前記デッキ部との間に形成される第2の空間と、前記デッキ部に形成され、前記操縦空間と前記船首との間に前記第2の空間と前記外部空間とを連通させるデッキエアホールと、を備え、前記ストリンガー部には、前記第1の空間と前記操縦空間とを連通させる第1の注水開口部と、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させる第1の空気抜き開口部と、が形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のレース艇では、前記操縦空間を囲むように前記デッキ部に配設されるコーミング部を備え、前記コーミング部には、前記外部空間と連通する開口部が形成されると共に、前記コーミング部と前記ストリンガー部の内壁部との間には前記操縦空間と連通する隙間が形成され、前記第2の空間は、前記操縦空間と連通することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のレース艇では、前記ストリンガー部は、その延在方向において、前記デッキエアホールより前記船首側の端部に開口部を有し、前記開口部は、前記第1の空気抜き開口部であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のレース艇では、前記ストリンガー部は、前記ハル部の前記船尾から前記船首までに渡り、上面視略V字形状に一体に形成され、前記第1の空気抜き開口部は、前記第2の空間を区画する前記ストリンガー部に形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のレース艇では、前記ハル部、前記ストリンガー部の外壁部及び前記デッキ部にて囲まれた第3の空間と、を更に備え、前記ストリンガー部は、前記ハル部の上面に立設される前記内壁部及び前記外壁部と、前記内壁部と前記外壁部の上面側に位置する天面部と、を有し、少なくとも前記操縦空間の両側に位置する前記ストリンガー部の前記外壁部には、前記第1の空間と前記第3の空間とを連通させる第2の注水開口部が形成され、少なくとも前記第2の空間の両側に位置する前記ストリンガー部の前記外壁部には、前記第1の空間と前記第3の空間とを連通させる第2の空気抜き開口部が形成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のレース艇では、前記ハル部、前記ストリンガー部の前記外壁部及び前記デッキ部にて囲まれた第3の空間と、を更に備え、前記ストリンガー部は、前記ハル部の上面に立設される前記内壁部及び前記外壁部と、前記内壁部と前記外壁部の上面側に位置する天面部と、を有し、少なくとも前記操縦空間の両側には、前記天面部と前記デッキ部との間に注水路が形成され、前記注水路は、前記第3の空間と前記操縦空間とを連通させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のレース艇では、前記デッキ部の上面に前記デッキエアホールを覆うように配設されるカウリング部と、を更に備え、前記カウリング部の内側の前記デッキ部の上面には、補助浮力体が、前記デッキエアホールの近傍に配設され、前記カウリング部には、前記デッキエアホールよりも前記船首側にカウルエアホールが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレース艇は、ハル部と、ストリンガー部と、デッキ部とを有する船体を備え、船体の内部には、少なくともストリンガー部とハル部により区画された第1の空間と、操縦空間の前方であり、少なくともストリンガー部、ハル部及びデッキ部に区画された第2の空間と、を備える。そして、第1の空間は、ストリンガー部に形成された第1の注水開口部を介して操縦空間と連通状態となると共に、第1の空間は、ストリンガー部に形成された第1の空気抜き開口部を介して第2の空間と連通状態となる。そして、第2の空間は、デッキエアホール、カウルエアホールを介して外部空間と連通状態となる。この構造により、船体としての剛性を維持すると共に、レース艇の転覆時における船体内部から外部空間への空気の放出が実現される。その結果、レース艇の転覆後、水が急速に船体の内部に浸入することで、速やかなバウ上げ動作が実現され、後続艇との接触事故等が防止される。
【0018】
また、本発明のレース艇では、コーミング部が、操縦空間を囲むようにデッキ部に形成される。そして、コーミング部には、外部空間と連通させる開口部が形成されると共に、コーミング部とストリンガー部の内壁部との間には、操縦空間と連通させる隙間が形成される。この構造により、レース艇の転覆時に第1の空間等の船体内部への水の浸入が速やかに行われる。
【0019】
また、本発明のレース艇では、ストリンガー部が、ハル部の船尾から船首側の手前まで配設される。そして、ストリンガー部の先端には開口部が形成される。この構造により、レース艇の転覆時における船体の内部から外部空間への空気の放出が実現され、水が、急速に船体の内部に浸入する構造が実現される。また、船体の剛性が維持されると共に、ストリンガー部の構造が簡素化され、軽量化と共に製造コストが低減される。
【0020】
また、本発明のレース艇では、ストリンガー部が、ハル部の船尾から船首までに渡り配設される。この構造により、船体の剛性が実現されると共に、操縦空間と第1の空間が、ストリンガー部に形成された第1の注水開口部を介して連通状態となる。更には、第1の空間と第2の空間とが、ストリンガー部に形成された第1の空気抜き開口部とを介して連通状態となる。
【0021】
また、本発明のレース艇では、船体の内部の第3の空間が、ストリンガー部の側方であり、ストリンガー部の外壁部、ハル部及びデッキ部に区画されて形成される。そして、第3の空間は、第2の注水開口部と第2の空気抜き開口部とを介して第1の空間と連通する。この構造により、船体の内部への水の浸入速度が速くなり、レース艇の転覆後、速やかなバウ上げ動作の完了が実現される。
【0022】
また、本発明のレース艇では、船体の内部の第3の空間が、ストリンガー部の側方であり、ストリンガー部の外壁部、ハル部及びデッキ部に区画されて形成される。そして、第3の空間は、注水路を介して操縦空間と連通する。この構造により、船体の内部への水の浸入速度が速くなり、レース艇の転覆後、速やかなバウ上げ動作の完了が実現される。
【0023】
また、本発明のレース艇では、カウリング部が、操縦空間の前方のデッキ部上面に配設される。カウリング部の内側には補助浮力体が配設されると共に、カウリング部には、カウルエアホールが形成される。この構造により、レース艇の転覆後、船体内部から外部空間への空気の放出が容易となり、速やかなバウ上げ動作が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の一実施形態であるレース艇を説明する平面図である。
図1B】本発明の一実施形態であるレース艇を説明する側面図である。
図2】本発明の一実施形態であるレース艇の船体構造を説明する斜視図である。
図3A】本発明の一実施形態であるレース艇の船体構造を説明する断面図である。
図3B】本発明の一実施形態であるレース艇の船体構造を説明する断面図である。
図4】本発明の一実施形態であるレース艇の転覆時の空気の流れを説明する概略図である。
図5】本発明の一実施形態であるレース艇の転覆時の経過状態を説明する側面図である。
図6】本発明の一実施形態であるレース艇の転覆時の経過状態を説明する側面図である。
図7】本発明の一実施形態であるレース艇の転覆時の経過状態を説明する側面図である。
図8】本発明の一実施形態であるレース艇の船体構造の変形例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係るレース艇10を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、上下方向はレース艇10の高さ方向を示し、左右方向はレース艇10の横幅方向を示し、前後方向はレース艇10の奥行方向を示す。
【0026】
最初に、本実施形態のレース艇10の開発の経緯について説明する。ボートレースは、他艇との競走により順位を競う競技であり、その性質上、他艇との接触や衝突が起こり易い。その結果、レース艇10の船体11には破損が発生し易い。そして、レース艇10は、原則として、1年間各種レースに使用するため、上記破損箇所の修理メンテナンスを行う必要がある。
【0027】
そのため、レース艇10は、修理性の良さが求められている。現行の木質構造のレース艇では、外板の一部を開口して船体11の内部を修理する等、修理箇所や破損程度によって、それらの修理手順が確立されている。しかしながら、本実施形態のFRP(繊維強化プラスチック)等から成るレース艇10では、上記木質構造のレース艇のような修理方法はその構造上適さないため、デッキ部22を取り外して内部構造に直接アクセスする方法が検討されている。
【0028】
ここで、レース艇10のデッキ部22の取り外しによる修理方式では、デッキ部22を船体11の強度部材として設計出来ず、船体11の新たな強度部材が求められる。そして、レース艇10の船体11では、縦方向縦通材、所謂、ロンジによる強度部材を大型化したストリンガー構造が船体11の新たな強度部材として採用された。
【0029】
しかしながら、上記ストリンガー構造は断面箱型形状であり、船体11の内部に複数の空間が形成されることで、レース艇10の転覆時に水の浸入が遅くなってしまい、レース艇10のバウ上げまでの時間が掛かり過ぎるという新たな課題が発生した。そこで、本実施形態のレース艇10は、この新たな課題を解決すべく、様々な観点から検討して成されたものである。
【0030】
次に、図1Aから図3Bを用いて、レース艇10の構造について説明する。
【0031】
図1Aは、本実施形態のレース艇10を説明する平面図である。図1Bは、本実施形態のレース艇10を説明する側面図である。図2は、本実施形態のレース艇10の船体11を説明する斜視図である。図3Aは、本実施形態のレース艇10の船体11の構造を説明する断面図であり、図2に示すA-A線方向の断面を示す。図3Bは、本実施形態のレース艇10の船体11の構造を説明する断面図であり、図2に示すB-B線方向の断面を示す。
【0032】
図1A及び図1Bに示す如く、レース艇10の船体11の船尾11Bには、ブラケット12を介して船外機13が着脱自在に装着される。そして、レース艇10は、船外機13の機関部であるパワーユニット14を駆動させ、駆動機構(図示せず)を介してプロペラ15を回転させることで航行する。レース艇10は、直線コースにて、機関回転速度が約7000rpmとなり、約80km/hの速度にて航行可能である。尚、点線21は、レース艇10の航行時における水面のラインを示す。
【0033】
レース艇10には、操縦空間16が、船体11の中央領域であり、船体11の長手方向(紙面前後方向)に沿って配置される。操縦空間16は、その上方にて外部空間と連通した構造である。そして、デッキ部22の上面には、コーミング部25及びカウリング部24が配設される。コーミング部25は、操縦空間16の周囲にデッキ部22より隆起して、デッキ部22と一体に配設され、操縦空間16内への水の浸入を防止する。また、カウリング部24は、操縦空間16の前方及び側方に配設された流線形形状のカバー部材であり、レース艇10の空力特性を高める。
【0034】
船体11のデッキ部22の船首11A側には、ソフトバウ23が配設される。ソフトバウ23は、例えば、特殊合成ゴム等の弾性及び可撓性を有する素材から形成される。そして、ソフトバウ23が、船体11よりも柔らかい素材から形成されることで、レース艇10同士の接触時やレース艇10と選手19との接触時の衝撃が低減される。
【0035】
更には、詳細は後述するが、ソフトバウ23が船体11のデッキ部22の船首11A側に位置し、自艇の転覆時に水面上に高く掲げられる。そして、船体11のハル部31の塗装色が黄色に着色され目立つことで、後続のレース艇10に対して、自艇が転覆状態にあることをいち早く知らせることが出来る。
【0036】
また、図示したように、操縦空間16の先端側にはステアリングホイール17及びスロットルレバー18が配置される。選手19は、レースのスタート前には操縦空間16の最後方にてステアリングホイール17及びタイマーハンドル20を操作する。そして、選手19は、スタート開始後には航走中の空気抵抗を低減するための頭を伏せた前傾姿勢や操縦空間16の後方に立ち上がっての旋回姿勢(所謂、モンキーターン)にてステアリングホイール17及びスロットルレバー18等を操作する。
【0037】
図2に示す如く、レース艇10の船体11は、主に、ハル部31と、ストリンガー部32と、デッキ部22と、コーミング部25と、カウリング部24(図1B参照)と、を有する。尚、説明の都合上、カウリング部24は省略して図示する。そして、ハル部31、ストリンガー部32、デッキ部22、コーミング部25及びカウリング部24は、例えば、FRP(繊維強化プラスチック)、ポリエチレン、ポリウレタン等のプラスチック材料により形成される。
【0038】
ここで、従来の木質構造のレース艇では、多量の木材を使用して船体にセミモノコック構造が採用されることで、船体としての剛性が実現されていた。一方、本実施形態のレース艇10では、FRP等により形成されることで、船体11の構成部材が大幅に低減される。特に、ストリンガー部32の一体構造により、上記セミモノコック構造の多数の木材が不要となる。
【0039】
ストリンガー部32は、例えば、上面視略V字形状となり、船体11を構成するハル部31の船尾11B側から船首11A側まで配設される。ストリンガー部32は、断面視略コの字形状となり、ストリンガー部32が、ハル部31の上面に接着固定されると共に、デッキ部22は、ストリンガー部32の上面に配設される。そして、ストリンガー部32は、ハル部31の長手方向(紙面前後方向)に渡り操縦空間16の両側に配置される。尚、操縦空間16は、デッキ部22の開口部22Aを介して船体11の船尾11B側の中央領域に配置される。
【0040】
この構造により、レース艇10の航行時にハル部31が水から受ける外力に対して、ハル部31が折れ曲がる等することが防止され、船体11としての剛性が満たされる。また、レース中にレース艇10同士が衝突し、自艇に対して他艇が側方から衝突した際には、ストリンガー部32にて他艇の船体11が操縦空間16へと侵入し難くなり、選手19の怪我等の危険が回避される。
【0041】
また、ストリンガー部32が、断面視略コの字の箱状体の一体構造として形成されることで、船体11が複数の空間に区画されるため水密性が向上すると共に、船体11の軽量化が実現される。また、船体11の部品点数の低減により組み立て作業が容易となり、製造コストや修繕コストが低減される。尚、船体11として木材が不要となることで、森林伐採が不要となり、環境面に配慮した構造となる。
【0042】
尚、詳細は後述するが、操縦空間16の配置領域のストリンガー部32には、複数の第1の注水開口部33が内壁部32Aに形成される。ストリンガー部32とデッキ部22との間には、複数の注水路34が天面部32Cに形成される。そして、複数の第2の注水開口部43がストリンガー部32の外壁部32Bに形成される。
【0043】
第2の空間44の配置領域のストリンガー部32には、複数の第1の空気抜き開口部35が内壁部32Aに形成される。上記ストリンガー部32には、複数の第2の空気抜き開口部37が外壁部32Bに形成される。そして、第2の空間44の上方のデッキ部22には、デッキエアホール36が形成される。
【0044】
そして、第1の注水開口部33、注水路34、第2の注水開口部43、第1の空気抜き開口部35及び第2の空気抜き開口部37は、それぞれ操縦空間16や第2の空間44の両側のストリンガー部32に形成される。
【0045】
図3Aに示す如く、ストリンガー部32は、断面視略コの字形状の箱形状であり、内壁部32Aと、外壁部32Bと、天面部32Cと、を有する。ストリンガー部32は、例えば、複数枚のFRP材を積層して形成され、内壁部32A、外壁部32B及び天面部32Cは、一体構造に形成される。そして、内壁部32A及び外壁部32Bの下端側は、ハル部31の上面に接着固定される。
【0046】
船体11のストリンガー部32の配置領域には、ハル部31とストリンガー部32との間に第1の空間41が形成される。また、ストリンガー部32の側方には、ストリンガー部32の外壁部32B、ハル部31及びデッキ部22に囲まれた第3の空間42が形成される。
【0047】
また、操縦空間16は、ストリンガー部32の内壁部32Aの間であり、船体11の中央領域に形成され、デッキ部22の端部であり、コーミング部25の内法の開口部22Aを介して船体11の外側の外部空間と連通状態となる。そして、操縦空間16は、選手19がレース艇10を操縦するための空間、所謂、コックピットである。
【0048】
デッキ部22の端部には、コーミング部25が、操縦空間16を囲むようにデッキ部22に一体に設置される。そして、コーミング部25の内側であり、ストリンガー部32の内壁部32Aの上端側には、複数の第1の注水開口部33が、ストリンガー部32の延在方向に一定間隔にて配列される。尚、コーミング部25は、内壁部32Aと離間した状態となり、コーミング部25と内壁部32Aとの間には隙間25Bが形成される。そして、コーミング部25には、開口部25Aが形成される。本願発明の第1の開口部は、本実施形態の開口部25Aに対応する。
【0049】
この構造により、外部空間と第1の空間41とは、開口部25Aと第1の注水開口部33を介して連通状態となる。また、操縦空間16と第1の空間41とは、隙間25Bと第1の注水開口部33を介して連通状態となる。このため、図3Aに示すように、レース艇10がひっくり返った状態となる転覆時には、外部空間及び操縦空間16から第1の空間41へと水が浸入可能となる。尚、レース艇10の航行時には、第1の注水開口部33が、コーミング部25に覆われることで、水飛沫等が第1の空間41に浸入し難い構造となる。
【0050】
また、ストリンガー部32の外壁部32Bの上端部側には、複数の第2の注水開口部43が形成される場合でも良い。第2の注水開口部43は、第1の空間41と第3の空間42とを連通させる開口部である。そして、第2の注水開口部43は、第1の注水開口部33と同様に、ストリンガー部32の延在方向に一定間隔にて配列される。この構造により、第3の空間42には、第1の空間41内部の水が、第2の注水開口部43を介して浸入可能となる。
【0051】
図3Bに示す如く、ストリンガー部32の天面部32Cとデッキ部22との間には、注水路34が形成される。そして、注水路34は、例えば、天面部32Cの一部に形成される凹部形状の領域の上面をデッキ部22が塞ぐことで形成される。
【0052】
この構造により、外部空間と第3の空間42とは、開口部25Aと注水路34を介して連通状態となる。また、操縦空間16と第3の空間42とは、隙間25Bと注水路34を介して連通状態となる。このため、図示したように、レース艇10がひっくり返った状態となる転覆時には、外部空間及び操縦空間16から第3の空間42へと水が浸入可能となる。上述したように、第3の空間42には、第2の注水開口部43を介して第1の空間41からも水が浸入可能となる。尚、レース艇10の航行時には、注水路34が、コーミング部25に覆われることで、水飛沫等が第3の空間42に浸入し難い構造となる。
【0053】
次に、図4から図7を用いて、レース艇10がひっくり返った状態での転覆後におけるバウ上げ動作について説明する。尚、レース艇10のバウ上げ動作の説明の際には、適宜、図1Aから図3Bの説明を参照し、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0054】
図4は、本実施形態のレース艇10の転覆時における船体11内部の水の流路及び空気の流路を説明する概略図である。図5から図7は、本実施形態のレース艇10の転覆後におけるバウ上げ動作を説明する側面図である。尚、実線の矢印51は、船体11内部の水の流れを示し、点線の矢印52は、船体11内部の空気の流れを示す。また、図5から図7では、説明の都合上、船体11内部に位置する第1の注水開口部33、注水路34、第1の空気抜き開口部35及び補助浮力体53を実線にて示している。また、図4では、カウリング部24は省略して図示するが、説明の都合上、デッキ部22に対してカウルエアホール45を図示している。
【0055】
図2から図4に示す如く、レース艇10の船体11では、ハル部31及びストリンガー部32の上方が、デッキ部22にて塞がれることで、デッキ部22の下方の内部空間は、複数の空間に区画される。
【0056】
上述したように、第1の空間41が、ハル部31とストリンガー部32との間に形成される。第3の空間42が、ストリンガー部32の側方であり、ストリンガー部32の外壁部32B、ハル部31及びデッキ部22に囲まれて形成される。そして、操縦空間16の前方であり、操縦空間16と連通する第2の空間44が、ストリンガー部32の内壁部32A、ハル部31及びデッキ部22に囲まれて形成される。
【0057】
図2に示すように、操縦空間16の前方側であり、第2の空間44を区画するストリンガー部32の内壁部32Aには、複数の第1の空気抜き開口部35が形成される。そして、第1の空間41と第2の空間44とは、第1の空気抜き開口部35を介して連通状態となる。尚、ストリンガー部32の外壁部32Bにも複数の第2の空気抜き開口部37が形成される。そして、第1の空間41と第3の空間42とは、第2の空気抜き開口部37を介しても連通状態となる。この構造により、第3の空間42と第2の空間44とは、第1の空気抜き開口部35及び第2の空気抜き開口部37を介して連通状態となる。
【0058】
また、デッキ部22の操縦空間16の前方側には、デッキエアホール36が形成される。そして、第2の空間44は、デッキエアホール36及びカウリング部24に形成されるカウルエアホール45(図1A参照)を介してデッキ部22の上方の外部空間と連通する。
【0059】
図2に示すように、第1の空気抜き開口部35は、第1の注水開口部33よりも内壁部32Aの下端側に配置される。そして、第2の空気抜き開口部37は、第2の注水開口部43よりも外壁部32Bの下端側に配置される。これらのことから、レース艇10の転覆時には、図5に示すように、水面下となる第1の注水開口部33及び第2の注水開口部43に対して第1の空気抜き開口部35及び第2の空気抜き開口部37は水面上に位置する。そして、図4図5の矢印52にて示すように、船体11内部の空気は、第1の空間41及び第3の空間42内を流れて、浸水の影響を受け難い上方側にある第2の空気抜き開口部37及び第1の空気抜き開口部35を介して第2の空間44へとスムーズに流れる。
【0060】
図2図5に示すように、レース艇10の転覆直後には、操縦空間16上の開口部22Aは水面によって塞がれる。デッキ部22の下方の操縦空間16、第1の空間41、第3の空間42及び第2の空間44には空気が存在することで、ハル部31を上にしてレース艇10は水面上に浮いた状態を保つ。そして、船体11の船尾11Bには重量のある船外機13が配置されることで、図5に示すように、船体11は、船尾11B側に傾斜して、船尾11B寄りの第1の注水開口部33や第2の注水開口部43及び注水路34が水面下にある状態となる。
【0061】
この構造により、図4の実線の矢印51にて示すように、外部空間や操縦空間16の水が、コーミング部25の開口部25Aやコーミング部25と内壁部32Aの隙間25Bから第1の注水開口部33及び注水路34を介して第1の空間41及び第3の空間42へと浸入する。また、第3の空間42には、第2の注水開口部43を介して第1の空間41からも水が浸入する。
【0062】
このとき、図4の点線の矢印52にて示すように、船体11内部の空気は、第1の空間41及び第3の空間42内を流れて、第2の空気抜き開口部37及び第1の空気抜き開口部35を介して第2の空間44へと流れることで、水が、第1の空間41及び第3の空間42へと更に浸入する。同時に操縦空間16へも水が浸入し、操縦空間16内の空気は、操縦空間16と連通する第2の空間44へと押し出される。
【0063】
一方、船体11の内部では、点線の矢印52にて示すように、第2の空間44へと流れた空気が、デッキエアホール36及びカウルエアホール45を介して外部空間へと勢い良く放出される。その結果、船体11の船尾11B側では、水が、放出された空気量に比例して船体11の内部へと勢い良く浸入する。
【0064】
図6に示す如く、船体11の船尾11B側では、船外機13の重さや第1の空間41及び第3の空間42、操縦空間16への浸水により、船体11は船尾11B側から沈む速度を加速すると共に、船体11は、ピッチング方向へと回転する。そして、点線の矢印52にて示すように、第1の空間41及び第3の空間42、操縦空間16の内部の空気は、船体11の船首11A側へと追いやられ、第2の空間44を経由してデッキエアホール36及びカウルエアホール45を介して船体11の外部へと放出される。
【0065】
図7に示す如く、船体11の内部への水の浸入が加速することで、船体11の沈降も加速する。その後、船体11は、転覆した後、凡そ、30秒程度にて船体11の沈降が停止する。このとき、船体11の内部へと浸入した水が、第1の空気抜き開口部35、第2の空気抜き開口部37及び操縦空間16から第2の空間44へと浸入し、デッキエアホール36よりも上方まで浸水する。
【0066】
図示したように、船体11は、船首11A側から長さ約850mm程度の部分を、水面から約75度の角度にて水面上に突出して停止する。つまり、レース艇10のバランスが保たれた状態になり、レース艇10のバウ上げ動作が完了する。尚、カウリング部24の内側に補助浮力体53が配設される。この構造により、レース艇10の転覆の初期段階にて、デッキエアホール36とカウルエアホール45が水面上に維持し易くなり、第2の空間44と外部空間とが確実に連通することで、バウ上げを円滑に進行させる効果が得られる。
【0067】
周回して来た後続艇らは、転覆し、水面上に直立するレース艇10の黄色く塗装されたハル部31やソフトバウ23を速やかに把握することで、転覆したレース艇10を回避しながら、レースを続行することが出来る。そして、上記後続艇らが、転覆したレース艇10やレース艇10付近に放り出された選手19と接触する等の事故を防止する。
【0068】
尚、本実施形態のレース艇10では、船体11の剛性や強度を向上させる構成部品であるストリンガー部32が、上面視略V字形状であり、船体11に対して船尾11Bから船首11Aまで配設される構造について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、図8に示すように、ストリンガー部62の構造としては、船体61の船尾61Bから延在し、その先端部が船首61A側まで届かない構造、例えば、上面視略ハの字形状の構造の場合でも、上述した効果と同様な効果を得ることが出来る。ここで、図8は、本実施形態のレース艇10の船体61を説明する斜視図である。そして、図8のストリンガー部62の説明に際し、図2の説明を参照し、同一の部材には同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0069】
図8に示す如く、レース艇10の船体61は、主に、ハル部31と、ストリンガー部62と、デッキ部22と、コーミング部25と、カウリング部24(図1B参照)と、を有する。尚、説明の都合上、カウリング部24は省略して図示する。そして、ハル部31、ストリンガー部62、デッキ部22、コーミング部25及びカウリング部24は、例えば、FRP(繊維強化プラスチック)等により形成される。
【0070】
ストリンガー部62は、断面視略コの字形状の箱形状であり、内壁部62Aと、外壁部62Bと、天面部62Cと、を有する。ストリンガー部62は、例えば、複数枚のFRP材を積層して形成され、内壁部62A、外壁部62B及び天面部62Cは、一体構造に形成される。そして、内壁部62A及び外壁部62Bの下端側は、ハル部31の上面に接着固定される。
【0071】
ストリンガー部62は、船体61の船尾61Bからデッキエアホール36付近まで延在して配設される。そして、ストリンガー部62には、ストリンガー部32と同様に、内壁部62Aには複数の第1の注水開口部33が形成され、外壁部62Bには複数の第2の注水開口部43が形成され、天面部62Cには注水路34用の複数の凹部形状が形成される。尚、ストリンガー部62の延在方向の長さは、船体61の剛性とレース艇10のバウ上げ動作との関係により、任意の設計変更が可能である。
【0072】
一方、ストリンガー部62では、船首61A側の先端部が大きく開口した形状となる。言い換えると、ストリンガー部62は、ストリンガー部32の船首11A側を切断して除去した形状となる。つまり、ストリンガー部62の船首61A側の先端には、一対の開口部63が形成される。本願発明の第2の開口部は、本実施形態の開口部63に対応する。
【0073】
この構造により、第1の空間41は、ストリンガー部62の開口部63より船首61A側の船体61の内部の空間を介して、第2の空間44と連通状態となる。そして、ストリンガー部62の開口部63が、ストリンガー部32の第1の空気抜き開口部35としての機能を備えることで、ストリンガー部62の内壁部62Aには、第1の空気抜き開口部35が形成されない場合でも良い。この場合には、船体61の第1の空間41の内部の空気は、開口部63を介して第2の空間44へと放出される。
【0074】
また、船体61の第3の空間42は、ストリンガー部62の開口部63より船首61A側の船体61の内部の空間を介して、第2の空間44と連通状態となる。この構造により、第3の空間42の内部の空気は、ストリンガー部32の先端側にて第2の空間44へと放出される。その結果、ストリンガー部62の外壁部62Bには、第2の空気抜き開口部37が形成されない場合でも良い。
【0075】
また、レース艇10の航行時には、ストリンガー部62は、船体61としての剛性を実現させる。一方、レース艇10の転覆時には、ストリンガー部62は、船体61の内部での水と空気の流れを効率良くサポートすることで、レース艇10の速やかなバウ上げ動作を実現させる。更には、ストリンガー部62に第1の空気抜き開口部35や第2の空気抜き開口部37を形成する作業が不要となり、製造コストの低減が実現される。
【0076】
本実施形態のレース艇10は、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 レース艇
11,61 船体
11A,61A 船首
11B,61B 船尾
13 船外機
16 操縦空間
19 選手
22 デッキ部
22A 開口部
23 ソフトバウ
24 カウリング部
25 コーミング部
25A 開口部
25B 隙間
31 ハル部
32,62 ストリンガー部
32A,62A 内壁部
32B,62B 外壁部
32C,62C 天面部
33 第1の注水開口部
34 注水路
35 第1の空気抜き開口部
36 デッキエアホール
37 第2の空気抜き開口部
41 第1の空間
42 第3の空間
43 第2の注水開口部
44 第2の空間
45 カウルエアホール
53 補助浮力体
63 開口部
【要約】
【課題】従来の木質構造のレース艇からFRP(繊維強化プラスチック)等によるレース艇とすることで、複数の空間に区画されて水密性が高まり、転覆時におけるバウ上げ動作を実現し難くなるという課題があった。
【解決手段】
本発明のレース艇10は、ハル部31と、ストリンガー部32と、デッキ部22とを有する船体11を備える。そして、船体11の内部の第1の空間41は、ストリンガー部32に形成された第1の注水開口部33を介して操縦空間16と連通状態となると共に、第1の空間41は、ストリンガー部32に形成された第1の空気抜き開口部35を介して第2の空間44と連通状態となる。この構造により、船体11としての剛性を維持すると共に、レース艇10の転覆時における船体11の内部から外部空間への空気の放出が実現される。その結果、レース艇10の転覆後に水が急速に船体11の内部に浸入することで、速やかなバウ上げ動作が実現され、後続艇との接触事故等が防止される。
【選択図】図2
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8