(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
(21)【出願番号】P 2023152499
(22)【出願日】2023-09-20
【審査請求日】2023-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517117415
【氏名又は名称】ドナウ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183461
【氏名又は名称】福島 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】脇本 良太
(72)【発明者】
【氏名】森山 桂一
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172618(JP,A)
【文献】特開2023-129262(JP,A)
【文献】国際公開第2014/098229(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0272913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料と、ポリオールを含む溶媒とを加熱し、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解することなく溶融したポリオレフィン樹脂融液との混合物を得る加熱溶解工程、
前記加熱溶解工程によって得られた混合物を、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液との粘度差を利用して、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液とに分離する分離工程、及び
前記分離工程で得られた前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を、蒸発潜熱を利用して急冷すると同時に前記ポリオールを含む溶媒を留去し、ポリアミド樹脂を回収する冷却蒸留工程を備え
、
前記分離工程は、細孔を有する少なくとも1つのフィルターを用いて行われ、かつ、
前記フィルターは、開口率19%以上で、かつ、目開き0.5~2mmのフィルターである、
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
【請求項2】
前記ポリオールが、エチレングリコール及びプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
【請求項3】
前記ポリアミド系樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、及びこれらの共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のナイロンである、請求項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、及び、ポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂である、請求項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
【請求項5】
前記分離工程は、細孔を有する2つのフィルターを用いて行われ、
第1のフィルターが、開口率19%以上で、かつ、目開き0.5~2mmのフィルターであり、第2のフィルターが、開口率19%以上で、かつ、目開き0.2~0.5mmのフィルターである、請求項
1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
【請求項6】
前記冷却蒸留工程が、蒸発潜熱を利用して急冷し、温度の低下に連動して真空圧を下げ、最終真空圧を24hP以下に下げる冷却蒸留により、前記ポリオールを含む溶媒を除去する、請求項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
【請求項7】
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料と、ポリオールを含む溶媒とを加熱し、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解することなく溶融したポリオレフィン樹脂融液との混合物を得る加熱溶解工程、
前記加熱溶解工程によって得られた混合物を、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液との粘度差を利用して、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液とに分離する分離工程、及び
前記分離工程で得られた前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を、蒸発潜熱を利用して急冷すると同時に前記ポリオールを含む溶媒を留去し、ポリアミド樹脂を回収する冷却蒸留工程を備え
、
前記分離工程は、細孔を有する少なくとも1つのフィルターを用いて行われ、かつ、
前記フィルターは、開口率19%以上で、かつ、目開き0.5~2mmのフィルターである、リサイクルポリアミド系樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトル等の熱可塑性プラスチック製品は、使用済み製品を回収し、選別し、再溶融し、さらに、成形して再利用することがこれまでに事業化されてきた。
【0003】
2015年に、持続可能な開発目標(SDGs(Sustainable Development Goals))を中心とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国連サミットで採択された。SDGsは、17の目標(ゴール)と169のターゲットで構成されており、貧困、飢餓、健康、教育、水の安全等、開発途上国の開発支援等から、働きがい、経済成長、エネルギー、更には、気候変動、生物多様性に関するものまで多義に及び、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。そして、我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを2020年に宣言した。そこで、近年、地球環境保護のために、3Rと言われる、リデュース、リユース、リサイクルの促進がさらに加速している。
【0004】
プラスチック製品としては、様々な機能性を確保するために、1種類のプラスチック樹脂材料を用いるだけでなく、2種類以上のプラスチック樹脂材料を含む複合樹脂材料が、様々な用途で使用されている。
【0005】
例えば、近年、冷凍食品の普及に伴い、食品の保護及び鮮度保持のために、耐熱、耐低温、耐突き刺し性に優れたナイロンフィルム等のポリアミド系樹脂をベースに、水蒸気、酸素等が透過しにくいポリ塩化ビニリデン(以下、「PVDC」ということもある。)、ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂を積層させた、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂材料等が使用されている。
これら複合樹脂材料をそれぞれの樹脂に分離せず、そのまま利用した製品は、物理的性質が低下した製品となる。
【0006】
これまでに、ポリアミド系樹脂をリサイクルする方法としては、例えば、(i)焼却して熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクル法、(ii)溶融した後に再成型して再利用するマテリアルリサイクル法、(iii)化学的に解重合してナイロンの原料にまで戻し、ナイロン製造等に再利用するケミカルリサイクル法等が知られている。これらの従来のリサイクル法の中で、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂材料から、ポリアミド系樹脂のみを分離精製するには、ケミカルリサイクル法を適用するしかなかった。
しかしながら、ケミカルリサイクル方法は、解重合工程と重合工程とを必要とするため、実質的に不可能だった。特に、複合樹脂材料がポリアミド系樹脂と塩素を含むオレフィン系樹脂を含む場合には、焼却処理及びマテリアルリサイクルを行うことも困難であり、多くの場合は埋め立て処分されていた。
そこで、これら複合樹脂材料を用いた各種プラスチック製品から各樹脂材料を分離してリサイクルを可能にする技術の開発が急務となっている。
【0007】
例えば、特許文献1には、シリコンコートされたナイロンが含まれるエアバック屑からナイロンを回収する方法が記載されている。特許文献1に記載の方法は、ナイロン樹脂をエチレングリコールに溶解して、シリコン樹脂を分離する方法である。ナイロン樹脂はエチレングリコールの沸点(197℃)まで温度を上げると溶解する。その一方、この温度(197℃)でシリコン樹脂は溶解又は溶融しないことから、シリコン樹脂を容易に分離することができる。
ここで、一般のオレフィン系樹脂の融点は、エチレングリコールの沸点よりも低い。したがって、ポリアミド系樹脂が溶解した状態では、オレフィン系樹脂も溶融して液状となっているため、ろ過して分離することは困難である。
【0008】
特許文献2には、ポリ塩化ビニリデンコーティングフィルムからポリ塩化ビニリデンのコーティング層を除去し、熱可塑性樹脂を回収する方法が記載されている。特許文献2に記載の方法は、ポリ塩化ビニリデンをコーティングした熱可塑性樹脂フィルムを、連続的に有機溶媒中を通過させてポリ塩化ビニリデンを溶解させ、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を回収する方法である。
しかしながら、ポリ塩化ビニリデンを溶解する有機溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等)は、人体に有害である。また、熱可塑性樹脂フィルムがポリアミド系樹脂である場合、これらの溶媒はポリアミド樹脂との親和性が強く、完全に除去することが困難であるため、ポリアミド系樹脂を再使用することができない。
【0009】
特許文献3には、異物と脂肪族ポリアミドとの混合物から脂肪族ポリアミドを回収するにあたり、実質的に無水のポリオール(グリコール)に脂肪族ポリアミドを溶解する方法が記載されている。グリコールを加熱昇温して脂肪族ポリアミドを溶解すると、脂肪族ポリアミドの分子量が低下して、リサイクルポリアミドの品質が低下し、使用不可となる。それを防ぐため、特許文献3に記載の方法は、低温のグリコールを加えて冷却することにより、脂肪族ポリアミドの重合度低下を防ぐことを特徴としている。
しかしながら、冷却のためにグリコールを加えると溶媒の量が多くなり、溶媒回収に多くのエネルギー及び時間が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-172618号公報
【文献】特開2021-146682号公報
【文献】特表平10-512909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂材料から高品質なポリアミド系樹脂を回収することができる、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、
(1)ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂からなる複合材料をポリオールを含む溶媒とともに加熱すると、ポリアミド系樹脂は難溶であるが沸騰させると溶解する。一方のポリオレフィン系樹脂はポリオールを含む溶媒に溶解せず、融点が低いためポリオールを含む溶媒の沸点では溶融して融液となり浮遊する。
(2)このポリアミド系樹脂溶液とポリオレフィン系樹脂融液との混合物は粘度差が大きいので、細孔を通過させた場合、溶液は小さな孔径の細孔を通過するが、融液は通過し難い。このことを利用してポリアミド系樹脂溶液とポリオレフィン系樹脂融液とを分離することを検討した。細孔の孔径を小さくすると、ポリオレフィン系樹脂融液がポリアミド系樹脂溶液の通過を阻害して通過性が悪くなる。一方、細孔の孔径が大きいと、両者ともに通過する。そこで適度な細孔の孔径を選定するか、又は、細孔を複数回通過させることにより、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解した溶液とポリオレフィン系樹脂の融液とを効率よく分離できることを見出した。
(3)ポリオールを含む溶媒の沸点において溶解したポリアミド系樹脂は反応性があり、分子量低下を起こす。そのため良質のリサイクルポリアミド系樹脂が得られない。
分子量低下を防止するには、急冷して温度を下げて反応速度を下げる;急冷してポリアミド系樹脂を早く析出させる;早く溶媒を留去してポリアミド樹脂を析出させる;等の方法が考えられる。
そこで、ポリオレフィン系樹脂をフィルターで分離した沸騰状態のポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を冷却蒸留槽に移し、直ちに真空で溶媒を蒸発させてその潜熱で液温を低下させる方法を検討した。液温が下がるに従ってさらに真空圧力を下げて溶媒を蒸発させる。その熱でさらに液温を下げる。この繰り返しを連続的に行って、冷却と溶媒留去を同時に行う方法(以下、「冷却蒸留法」と称する)によりポリアミド系樹脂を析出させる。この方法を実施した結果、リサイクルポリアミド系樹脂の分子量低下が抑制され、ポリアミド系樹脂のリサイクルが可能であることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
項1.
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料と、ポリオールを含む溶媒とを加熱し、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解することなく溶融したポリオレフィン樹脂融液との混合物を得る加熱溶解工程、
前記加熱溶解工程によって得られた混合物を、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液との粘度差を利用して、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液とに分離する分離工程、及び
前記分離工程で得られた前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を、蒸発潜熱を利用して急冷すると同時に前記ポリオールを含む溶媒を留去し、ポリアミド樹脂を回収する冷却蒸留工程を備える、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
項2.
前記ポリオールが、エチレングリコール及びプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
項3.
前記ポリアミド系樹脂が、ナイロン6、ナイロン66、及びこれらの共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のナイロンである、請求項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
項4.
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、及び、ポリ塩化ビニリデンからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂である、項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
項5.
前記分離工程は、細孔を有する少なくとも1つのフィルターを用いて行われる、項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
項6.
前記フィルターは、開口率19%以上で、かつ、目開き0.5~2mmのフィルターである、項5に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
項7.
前記分離工程は、細孔を有する2つのフィルターを用いて行われ、
第1のフィルターが、開口率19%以上で、かつ、目開き0.5~2mmのフィルターであり、第2のフィルターが、開口率19%以上で、かつ、目開き0.2~0.5mmのフィルターである、項5に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
項8.
前記冷却蒸留工程が、蒸発潜熱を利用して急冷し、温度の低下に連動して真空圧を下げ、最終真空圧を24hP以下に下げる冷却蒸留により、前記ポリオールを含む溶媒を除去する、項1に記載のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
項9.
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料と、ポリオールを含む溶媒とを加熱し、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解することなく溶融したポリオレフィン樹脂融液との混合物を得る加熱溶解工程、
前記加熱溶解工程によって得られた混合物を、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液との粘度差を利用して、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液とに分離する分離工程、及び
前記分離工程で得られた前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を、蒸発潜熱を利用して急冷すると同時に前記ポリオールを含む溶媒を留去し、ポリアミド樹脂を回収する冷却蒸留工程を備える、リサイクルポリアミド系樹脂の製造方法。
項10.
項9に記載の製造方法によって得られたリサイクルポリアミド系樹脂。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂材料から高品質なポリアミド系樹脂を回収することができる、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法を提供することができる。
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明におけるポリアミド系樹脂回収装置の加熱溶解分離装置を示す概念図である。
【
図2】
図2は、本発明におけるポリアミド系樹脂回収装置の冷却蒸留装置を示す概念図である。
【
図3】
図3は、本発明におけるポリアミド系樹脂回収装置の加熱溶解分離装置を示す別の概念図である。
【
図4】
図4は、分離用フィルターを示す概念図である。
【
図5】
図5は、2段階分離の方法を示す概念図である。
【
図6】
図6は、2段階分離の方法(メッシュとパンチングとを組み合わせた例)を示す概念図である。
【
図7】
図7は、複合樹脂材料を本発明におけるポリアミド系樹脂回収装置に設置した写真である。
【
図8】
図8は、分離されたポリアミド系樹脂溶液の写真である。
【
図9】
図9は、分離工程後の分離用フィルターの写真である。
【
図10】
図10は、原料の複合樹脂材料をFT-IRで測定した後のチャート結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本発明でリサイクルしたポリアミド系樹脂をFT-IRで測定した後のチャート結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法>
本発明について以下に説明する。本発明のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法(以下、「複合樹脂材料のリサイクル方法」という場合もある。)は、下記工程(1)~工程(3)を備えている。
工程(1):ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料と、ポリオールを含む溶媒とを加熱し、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解することなく溶融したポリオレフィン樹脂融液との混合物を得る加熱溶解工程(以下、「第1工程」、「加熱溶解工程」ということもある。);
工程(2):前記加熱溶解工程によって得られた混合物を、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液との粘度差を利用して、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液とに分離する分離工程(以下、「第2工程」、「分離工程」ということもある。);
工程(3):前記分離工程で得られた前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を、蒸発潜熱を利用して急冷すると同時に前記ポリオールを含む溶媒を留去し、ポリアミド樹脂を回収する冷却蒸留工程(以下、「第3工程」、「冷却蒸留工程」、「冷却溶媒除去工程」ということもある。)。
上記工程(1)~工程(3)を備えることにより、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料から、ポリアミド系樹脂の分子量低下を起こすことなくポリアミド系樹脂を回収することができる。
【0018】
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料
本発明でいう複合樹脂材料は、少なくともポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する。
【0019】
ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂とは、アミド結合で連結したポリマーの総称であるが、特に脂肪族ポリアミドであるナイロン6及びナイロン66は、その優れた特性ゆえに、各種エンプラ(エンジニアリングプラスチック)として、工業製品、カーペット、自動車部品等に使用されている。このように、ポリアミド系樹脂は、エンプラとしては、ポリカーボネート(PC)と双璧の使用量となっている。また、ポリアミド系樹脂は、繊維としてもポリエステルに次ぐ市場規模を有する優れた素材である。
【0020】
ポリアミド系樹脂は、ポリオールを含む溶媒に溶解することができるものであれば、特に制限はない。ポリアミド系樹脂としては、公知の脂肪族ポリアミドを用いることができる。なお、脂肪族ポリアミドは、「ナイロン」とも呼ばれる。
ポリアミド系樹脂としては、ホモポリマー、又は、コポリマーであってもよい。脂肪族ポリアミドは、その一部に芳香族基を含んでいてもよい。なお、芳香族環とは、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等の縮合芳香環;ピリジン環、ピロール環等の複素芳香環等等が挙げられる。
例えば、ポリアミド系樹脂として具体的には、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-α-ピロリドン、ポリ-α-ピペリドン、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)等の開環又はアミノカルボン酸縮合物;
ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)等のジアミンと二塩基酸との縮合物;
カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族共重合ポリアミド;等が挙げられる。
【0021】
これらの脂肪族ポリアミドには、芳香族ポリアミドが共重合されていてもよい。
共重合される芳香族二塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。
共重合される芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、上記具体例のうち、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6及びナイロン66を用いることが好ましい。ナイロン6及びナイロン66は、それぞれ、物性に特に制限はない。例えば、ナイロン6においては、衣料用又は繊維用に使用される低重合度(相対粘度約2.4)からフィルム又はカーペット用に使用される中重合度(相対粘度約2.7)、さらに高強力を要する糸又は成形品に使用される高重合度(相対粘度約3.1)の全てのものを使用することができる。また、前記範囲より低重合度又は高重合度のものであっても使用することができる。
なお、前記相対粘度は、JIS K 6920-2に記載の測定方法に準拠し、ウベローデ粘度計(No.2)を用いて、25℃、濃硫酸、1.00%溶液での測定値である。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂(B)
ポリオレフィン系樹脂は非極性化合物であり、ポリオールは極性化合物であるため、通常のポリオレフィン系樹脂は、ポリオールに溶解することはない。
本発明の複合樹脂材料のリサイクル方法は、ポリアミド系樹脂をポリオールに溶解させ、ポリオールに溶解しないポリオレフィン系樹脂と分離する方法であるから、ポリオールに溶解しない全てのポリオレフィン系樹脂を使用することができる。すなわち、塩素を含有するポリオレフィン系樹脂も使用可能である。
【0024】
ポリアルキレン系樹脂
ポリアルキレン系樹脂としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。
【0025】
ポリエチレン(PE)
ポリエチレン(PE)としては、特に限定はなく、例えば、密度が0.910~0.930g/cm3の低密度ポリエチレン、及び密度が0.942g/cm3以上の高密度ポリエチレンが挙げられる。ポリエチレンの融点は、98~137℃程度であり、ポリオールを含む溶媒の沸点より低い。
【0026】
ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレン(PP)としては、特に限定はなく、一般に使用されている融点165℃程度の立体規則性ホモポリマー、及びアタクチックポリマーであってもよい。また、メルトブローン用低重合物(MI値50以上)、及び成形用高重合物(MI値10以下)であってもよい。低重合度のポリプロピレンであっても、その溶融粘度は、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液の粘度に比べればはるかに大きいので、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液とポリプロピレンとを分離することは可能である。
【0027】
ポリブテン(PB)
ポリブテン(PB)としては、特に限定はなく、例えば、1-ポリブテン、2-ポリブテン等が挙げられる。中でも、1-ポリブテンを好適に用いることができる。ポリブテンの融点は、128~142℃程度である。
【0028】
ポリスチレン(PS)
ポリスチレン(PS)としては、特に限定されない。ポリスチレンの融点はないが、100℃程度で流動する。
【0029】
塩素含有樹脂
塩素含有樹脂としては、特に限定はなく、例えば、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(例えば、「PVDC」と表記することもある。)、ポリ塩化ビニル(例えば、「塩ビ」、「PVC」と表記することもある。)等が挙げられる。
【0030】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(Polyvinylidene Chloride:PVDC)としては、特に限定はない。ポリ塩化ビニリデン樹脂は通常、ホモポリマーではなく、塩化ビニリデンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体が用いられており、共重合体が好ましい。共重合体としては、グラフト共重合体、ブロック共重合体又はランダム共重合体であってもよい。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
塩化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、塩化ビニル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステル類(アルキル基の炭素原子数1~18);メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル類(アルキル基の炭素原子数1~18);アクリロニトリル;スチレン等の芳香族ビニル;酢酸ビニル等の炭素原子数1~18の脂肪族カルボン酸のビニルエステル;炭素原子数1~18のアルキルビニルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のビニル重合性不飽和カルボン酸のアルキルエステル(部分エステルを含み、アルキル基の炭素原子数1~18)等が挙げられる。なかでも、塩化ビニル、アクリル酸メチル及びアクリル酸ラウリルからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。これらのモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、共重合体として使用されるため、融点は低下し、通常170℃程度で軟化流動する。よって、ポリオールを含む溶媒の沸点では、溶融して融液となる。
【0032】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂共重合体における、塩化ビニリデン以外の共重合成分の含有量の制限はないが、通常50モル%までのものをポリ塩化ビニリデン樹脂と称している。通常の食品包装用には、塩化ビニルが10~30モル%共重合されたものが使用されている。
【0033】
ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)
ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)としては、特に制限はなく、可塑剤が大量に入った軟質のものであっても、可塑剤を含まない硬質のものであっても使用することができる。前記可塑剤としては、例えば、フタル酸系、アジピン酸系、リン酸系、トリメリット酸系等のエステル化合物が挙げられる。可塑剤の量に制限はなく、樹脂全体量に対して通常50質量%未満で使用されているが、それ以上含まれていても問題はない。
ポリ塩化ビニル系樹脂は、ホモポリマーでも、塩化ビニルとこれに共重合可能なその他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体は、グラフト共重合体、ブロック共重合体又はランダム共重合体であってもよい。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
通常使用されるポリ塩化ビニル系樹脂の融点は、85~170℃程度であり、使用されるポリオールを含む溶媒の沸点よりも低い。
【0034】
共重合体を構成するその他のモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン;酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル等の飽和酸のビニルエステル;アクリル酸メチルエステル、メタクリル酸メチルエステル等の不飽和酸のアルキルエステル;ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、メチルスチレン、フッ化ビニリデン;等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
ポリ塩化ビニル系樹脂が共重合体である場合、共重合体における他のモノマー単位の含有量に制限はない。
【0036】
上述したポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料(以下、「複合樹脂材料」ということもある。)としては、例えば、ナイロン6(a1)とポリ塩化ビニリデン(b1-1)とを含有する複合樹脂材料;
ナイロン66(a2)とポリ塩化ビニリデン(b1-1)とを含有する複合樹脂材料;
ナイロン6(a1)とポリ塩化ビニル(b1-2)とを含有する複合樹脂材料;
ナイロン66(a2)とポリ塩化ビニル(b1-2)とを含有する複合樹脂材料;
ナイロン6(a1)とポリエチレン(b2-1)とを含有する複合樹脂材料;
ナイロン66(a2)とポリエチレン(b2-1)とを含有する複合樹脂材料;
ナイロン6(a1)とポリプロピレン(b3-1)とを含有する複合樹脂材料;
ナイロン66(a2)とポリプロピレン(b3-1)とを含有する複合樹脂材料;等が挙げられる。なかでも、複合樹脂材料としては、ナイロン6(a1)とポリ塩化ビニリデン(b1-1)とを含有する複合樹脂材料、及び、ナイロン6(a1)とポリエチレン(b2-1)とを含有する複合樹脂材料が好ましい。
【0037】
前記ポリアミド系樹脂及び前記ポリオレフィン系樹脂の合計100質量部に対し、前記ポリオレフィン系樹脂の含有量は1~90質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは1~10質量部である。
【0038】
複合樹脂材料の形態としては、特に制限はなく、例えば、粉末、ビーズ、ペレット、又はフィルム等の断片若しくは破砕物などの粒状物の形態、或いは、コーティング層、フィルム、シート、不織布、繊維、織物、又は包装材の構成層等の層状物の形態等が挙げられる。
【0039】
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂の個々の形態についても、制限はない。
例えば、ポリアミド系樹脂フィルム及びポリオレフィン系樹脂フィルムを含むフィルム状の多層フィルム、ポリアミド系樹脂を芯とした芯鞘繊維、ポリアミド系樹脂繊維とポリオレフィン系樹脂繊維との混紡糸、ポリアミド系樹脂繊維をポリオレフィン系樹脂でコーティングした糸、ポリアミド系樹脂織物をポリオレフィン系樹脂でラミネートした布等の様々な組合せが含まれる。
複合樹脂材料の好ましい形態としては、ポリアミド系樹脂フィルムとポリオレフィン系樹脂フィルムとが積層された多層フィルム、表面をポリオレフィン系樹脂でコートしたナイロンフィラメント、ナイロンシートをポリオレフィン系樹脂でラミネートした防水シート等が挙げられる。
本発明の複合樹脂材料は、廃棄物であってもよく、又は、未使用の物であってもよい。
【0040】
任意成分
複合樹脂材料には、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、例えば、添加剤、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂以外のその他の樹脂等の任意成分を配合することができる。
【0041】
前記ポリアミド系樹脂、前記ポリオレフィン系樹脂、及び前記任意成分の合計100質量部に対し、前記任意成分の含有量は通常0~30質量部であり、好ましくは0~20質量部であり、より好ましくは0~10質量部である。
【0042】
前記添加剤としては、熱安定剤、可塑剤、加工助剤、着色剤(例えば、顔料、染料等)、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散助剤等の各種の添加剤を挙げることができる。これらは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。添加剤が含まれる場合、その添加剤の配合量としては、特に限定はなく、例えば、複合樹脂材料100質量%中、0.001質量%~10質量%程度である。
【0043】
ポリオールを含む溶媒
本発明で使用されるポリオールは、2個以上の水酸基(-OH)を有する炭素数2~6の脂肪族化合物である。水酸基の数は、2~4個が好ましく、2~3個がより好ましく、2個がさらに好ましい。ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、グリセリン等が挙げられ、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)等が好ましく用いられる。
なお、ポリオールを含む溶液とは、1種類のポリオールを単独で用いてもよく、2種類のポリオール(エチレングリコール及びプロピレングリコール)を組合わせて使用してもよい。さらに、ポリオール以外の他の溶媒を加えることもできる。
ポリオールを含む溶媒としては、ポリアミド系樹脂の溶解性、溶媒の熱安定性、溶媒の回収性等の観点から、エチレングリコールを単独で使用することが好ましい。
【0044】
ポリオールは、水酸基による分子間力のために沸点が高いという特徴がある。
エチレングリコールの沸点は197℃であり、プロピレングリコールの沸点は188℃である。他のポリオールの沸点は、これらより高い。そのため、ポリオールの沸点において、一般のポリオレフィン系樹脂は溶融する。
ポリアミド系樹脂の溶剤としては、濃硫酸、ギ酸、フェノール類等がよく知られている。これらは常温でもポリアミド系樹脂を溶解する良溶媒である。しかしながら、これらの溶剤は取扱いが難しく、有毒であり、リサイクルポリアミド系樹脂に残留すれば、人体に対して危険である。
それに対して、本発明に使用する溶媒は、ポリオールを含む溶媒(以下、「ポリオール溶媒」ということもある。)である。ポリオールを含む溶媒は、人体に対する危険性が少ない一方、ポリアミド系樹脂の溶解性が乏しく、沸点まで温度を上げないとポリアミド系樹脂を溶解することができない。また、貧溶媒であるため、ポリアミド系樹脂を溶解した溶液を冷却すると、溶解したポリアミド系樹脂が粉状になって析出し、沈殿するという特徴がある。
沸点まで温度を上げてポリアミド系樹脂をポリオールを含む溶媒に溶解した際に問題となるのが、ポリアミド系樹脂の重合度の低下である。上述したように加熱保持時間とともに相対粘度が低下し、それにより品質が低下することでリサイクルポリアミド系樹脂の市場価値が失われる。
本発明では、加熱溶解工程、分離工程、及び冷却蒸留工程を行うことで、ポリオールを含む溶媒に溶解してもポリアミド系樹脂の重合度低下を起こすことなく、高品質のポリアミド系樹脂を回収することを可能にした。
【0045】
工程(1)(加熱溶解工程)
工程(1)の加熱溶解工程は、上述したポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料と、上述したポリオールを含む溶媒とを加熱し、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解することなく溶融したポリオレフィン樹脂融液との混合物を得る工程である。
【0046】
材料サイズ
前記複合樹脂材料は、裁断されてポリオールを含む溶媒中で加熱される。加熱されるときの複合樹脂材料の大きさは、ポリアミド系樹脂の溶解が容易となることから、小さいサイズにするのが好ましい。しかしながら、複合樹脂材料の大きさが、ポリアミド系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを分離する工程(2)に使用するネット状容器のフィルター細孔の孔径よりも小さい場合には、複合樹脂材料がネット状容器から漏れ落ちる。したがって、複合樹脂材料の大きさは、ネット状容器の細孔孔径より大きいことが好ましい。
すなわち、複合樹脂材料の裁断サイズは、ネット状容器2の細孔の孔径より大きければ特に制限はない。
【0047】
溶媒量
溶媒の量としては、特に限定はなく、例えば、複合樹脂材料100質量部に対して、250~1000質量部であり、好ましくは300~500質量部である。前記範囲の量とすることで、複合樹脂材料が溶媒に十分浸漬されて溶解しやすくなり、また、溶媒の回収に多くのエネルギー及び時間を要するのを防ぐことができる。
【0048】
加熱温度及び時間
ポリアミド系樹脂は、ポリオールを含む溶媒に溶解し難く、ポリオールを含む溶媒の沸点に達しないと溶解しない。しかしながら、ポリオールを含む溶媒が沸点に達すれば、ポリアミド系樹脂は瞬時に溶解する。
ポリアミド系樹脂が溶解すると、ポリアミド系樹脂の分子量の低下が起こる。そのため、ポリアミド系樹脂が溶解すれば、直ちに次の工程(2)(分離工程)に進むことが好ましい。
ポリアミド系樹脂が溶解した後の加熱時間の上限は、最大10分程度である。
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料(多層フィルム)は、沸騰したポリオールを含む溶媒の中で、ポリアミド系樹脂はポリオールを含む溶媒に溶解するが、ポリオレフィン系樹脂はポリオールを含む溶媒に溶解しない。すなわち、ポリオールを含む溶媒の沸点は、前記ポリオレフィン系樹脂より高いため、ポリオレフィン系樹脂は溶融する。ポリオレフィン系樹脂は溶融すると個々の溶融体が集合し、大きな集合体となって浮遊する。ポリオレフィン系樹脂の融点がポリオールを含む溶媒の沸点より高い場合には、ポリオレフィン系樹脂は固体のままであるため、ポリアミド系樹脂とポリオレフィン系樹脂との分別は容易である。しかしながら、一般のポリオレフィン系樹脂の融点はポリオールを含む溶媒の沸点よりも低いため、ポリオールを含む溶媒の沸点においてポリオレフィン系樹脂は溶融して液状となるため、両者の分離が難しい。
ポリオレフィン系樹脂が、融点が高いポリ塩化ビニリデンの場合、通常共重合体として使用されているため、融点が下がっている。そのため、ポリ塩化ビニリデン共重合体は、ポリオールを含む溶媒の沸点において溶融し、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、ポリオレフィン樹脂の融液との混合物が得られる。
【0049】
工程(2)(分離工程)
工程(2)の分離工程は、前記加熱溶解工程で得られた混合物から、ポリアミド樹脂を含む溶液と、溶融したポリオレフィン樹脂とを分離する工程である。
つまり、本発明における分離工程は、前記加熱溶解工程によって得られた混合物を、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液との粘度差を利用して、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液とに分離する工程である。
工程(1)で得られた混合物に含まれるポリアミド系樹脂の溶液とポリオレフィン系樹脂融液とは、両者ともに液状である。固体と液体との分離であれば、金網でろ過すれば容易に分離することができる。しかしながら、混合物に含まれているポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂は両方とも液状であるため、容易に分離することはできない。
そこで、種々の金網を用いて混合物の分離を試みたところ、網目が小さすぎる場合には、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂の両方とも通過しないことがわかった。そして、網目を少し大きくすると、ポリアミド系樹脂の溶液が網目を通過し始めるが、高粘度のポリオレフィン系樹脂溶融物に阻まれてわずかの量しか通過できないことがわかった。この場合、通過したポリアミド系樹脂の溶液から回収されたポリアミド系樹脂の純度は高いが、回収率が低かった。
さらに網目を大きくすると、ポリアミド系樹脂の溶液は網目を通過する一方、ポリオレフィン系樹脂溶融物は網目を通過せず、両者を分離することが可能な網目の大きさが存在することがわかった。さらに網目を大きくすると、ポリアミド系樹脂の溶液と溶融したポリオレフィン系樹脂が混ざって通過するようになった。網目が大きくなればなるほど、ポリオレフィン系樹脂融液の通過量が多くなり、ついには両者が一体となって全体が通過した。
この結果、適当な孔径のフィルターを通過させることにより、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、ポリオレフィン樹脂融液とを分離することが可能となった。
【0050】
フィルターの形状としては、細孔を有していれば特に限定はなく、金網、パンチングプレート、格子状等が挙げられる。フィルターは、シート状又は容器でもよい。その材質にも限定はなく、高温のポリオールを含む溶媒に侵されない素材であれば、金属であってもよく、又は、ガラス、炭素、プラスチック等であってもよい。
分離が可能なフィルターの目開きとしては、例えば、平織金網の場合、通常0.2~4mmであり、0.3~3mmが好ましく、0.5~2mmがより好ましい。
細孔の形状は、特に限定しない。例えば、正方形、長方形、台形、菱形、三角形、六角形、円形、楕円形等、どのような形状であってもよい。
細孔の断面積が同じであれば、ほぼ同じ効果を得ることができる。
金網の線径には特に制限はないが、線径が大きくなると開口率が小さくなり、ポリアミド系樹脂の溶液のフィルター通過性が阻害され、リサイクルポリアミド系樹脂の回収率が悪くなる。したがって、一定以上の回収率を得るためには、一定以上の開口率が必要である。すなわち、開口率は、通常19%以上であり、22%以上あることが好ましい。
【0051】
分離工程は、1回だけでなく、2回以上行うことができる。純度の高いリサイクルポリアミド樹脂を効率的に得るためには、1回だけでなく、2回以上フィルターを通過させることが好ましい。分離工程を2回行う場合、そのフィルターは、第1フィルター及び第2フィルターということができる。
第1フィルターにおいて目開きを大きくして、例えば3~4mmにすると、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液が通過しやすく、ポリオレフィン系樹脂融液と短時間で分離することが可能となる。しかも、フィルターを通過しないポリオレフィン系樹脂融液に妨害されてフィルターに残留するポリアミド系樹脂の量が少なくなるので、ポリアミド系樹脂の回収率が高くなる。しかしながら、目開きが大きいため、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液に、ポリオレフィン系樹脂融液の一部が随伴して通過するという欠点がある。この欠点を補うために、目開きの小さい第2フィルターを用いることで、随伴したポリオレフィン系樹脂融液を除去することが可能となる。
第2フィルターの目開きは、例えば、通常0.2~2mmであり、0.3~1mmが好ましい。第2フィルターの目開きは小さくしても妨害するオレフィン系樹脂が少ないため、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液はスムーズに網目を通過することができる。
【0052】
工程(3)(冷却蒸留工程)
工程(3)の冷却蒸留工程は、前記分離工程で得られた前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を、蒸発潜熱を利用して急冷すると同時に前記ポリオールを含む溶媒を留去し、ポリアミド樹脂を回収する工程である。
前述したように、ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂は、直ちに冷却して温度を下げなければ重合度が低下し、回収したポリアミド系樹脂の品質が低下する。
冷却する方法として、前記背景技術で述べた特許文献3では、ポリアミド系樹脂を溶解した溶媒と同じ溶媒を加えて冷却することが行われている。しかしながら、この方法では、回収する溶媒量が多くなり、回収に多くの時間及びエネルギーを要することになる。
そこで、本発明では、高温のポリアミド系樹脂をポリオールを含む溶媒に溶解した溶液を真空にすることにより溶媒を蒸発させ、その蒸発潜熱(例えば、エチレングリコールの蒸発潜熱は、191cal/gである)を利用して冷却し、冷却により温度が下がればさらに真空圧を下げて蒸発させてその潜熱で温度を下げることを繰り返す冷却蒸留法を採用した。この冷却蒸留法により、冷却、ポリアミド系樹脂の析出、及び溶媒除去を同時に行うことができる。
この方法によれば、回収したポリアミド樹脂の分子量低下を最小限にすることができる。
真空圧力は、突沸を起こさないように温度の低下とともに、段階的に下げていき、溶媒をできる限り短時間で留去することが好ましい。
そのためには、溶液の温度を探知しながら真空圧調整弁を用い、プログラミングされた様式にしたがって、自動的に真空圧を下げていくのが好ましい。
冷却と同時に溶媒が留去されるので、粒状のポリアミド系樹脂が急速に析出沈殿する。さらに真空圧を下げて溶媒を留去することにより、リサイクルポリアミド系樹脂を得ることができる。
【0053】
冷却時間としては、特に限定はないが、ポリアミド系樹脂が析出する温度までできるだけ短時間で下げることが好ましい。ポリアミド系樹脂が析出すれば、重合度の低下が起こりにくくなるからである。
ポリオールを含む溶媒がエチレングリコールの場合、約130℃でポリアミド系樹脂が析出する。この場合の冷却時間の上限としては、130℃に達する時間が80分以下であることが好ましく、40分以下であることがより好ましい。
エチレングリコールの沸点が130℃になる真空圧は33hPである。よって、その真空圧までは急速に下げることが好ましい。
【0054】
蒸留により溶媒が少なくなると、ポリアミド系樹脂の融着が起こり、溶媒の気化が阻害されて蒸留に時間がかかるようになる。また、ポリアミド系樹脂が融着すると、冷却蒸留槽からの排出が困難になる。よって、融着を防ぐためには、撹拌すること、水の添加等が効果的である。
水を加える際には、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液の温度が100℃以下であることが必要である。100℃以下まで下げた後、大気圧にして水を添加することが好ましい。
【0055】
(第1実施形態)
本発明のポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法について、第1実施形態を説明する。
ポリアミド系樹脂回収装置は、加熱溶解分離装置1及び冷却蒸留装置10を有する。
図1は、本発明の第1実施形態におけるポリアミド系樹脂回収装置の加熱溶解分離装置を示す概念図である。
図2は、本発明の第1実施形態におけるポリアミド系樹脂回収装置の冷却蒸留装置を示す概念図である。
【0056】
加熱溶解分離装置1は、
図1に示すように、ネット状容器2、溶解釜蓋3、溶解釜4、開閉弁5、リフラックスコンデンサー6、及び温度検出器7を有している。ここで、温度検出器7は、真空圧力調整弁22と連動している。
【0057】
ネット状容器2は、線径0.5mmで、10メッシュ(1インチに10個の網目)の金網から形成された容器である。このネット状容器2の中に、裁断されたポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料が入れられる。なお、本実施形態では、フィルターとしてネット状容器を用いたが、これに限らず、パンチングプレート、格子状形状からなる格子状箱等を用いてもよい。
【0058】
溶解釜4は、ステンレス(SAS316等)を材質として製造された釜であり、上方に溶解釜蓋3を、下方に開閉弁5を有している。溶解釜4は、
図1に示すように、その内部にネット状容器2を吊すことができる。溶解釜4に収容されていた混合物は、開閉弁5が開放されることにより冷却蒸留装置の冷却蒸留槽11に送られる。
【0059】
リフラックスコンデンサー6は、溶解釜4の上方に配管を介して溶解釜4と一体として形成されている。このリフラックスコンデンサー6は、沸騰して気体となった溶媒を凝縮して液体にし、その液体になった溶媒を、溶解釜4に戻すための装置である。
【0060】
上記のような構成の加熱溶解分離装置では、上述したポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法の工程(1)(加熱溶解工程)及び工程(2)(分離工程)を行うことができる。
【0061】
冷却蒸留装置10は、
図2に示すように、冷却蒸留槽11、攪拌装置12、開閉弁13、ポリアミド回収タンク14、コンデンサー16、溶媒回収タンク17、真空ポンプ18、温度検出器20、真空圧力検出器21、真空圧力調整弁22等を有している。
【0062】
冷却蒸留槽11は、溶解釜4から開閉弁5を介して送られてきたポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を収容し、ポリオールを含む溶媒を冷却しながら蒸留する装置である。冷却蒸留槽11は、攪拌装置12及び水洗用の水道管19を備えている。また、冷却蒸留槽11の加熱槽の下方には、開閉弁13を有する。また、この冷却蒸留槽11は、加熱装置、冷却装置等を備えることができる。冷却蒸留槽11は、真空ポンプ18により内部が所定の真空度になるように設定されている。すなわち、冷却蒸留槽11には、冷却蒸留槽11のポリアミド系樹脂溶液の温度を測定し、蒸発潜熱による温度低下に従って自動的に真空圧を下げていくシステムが組み込まれている。真空蒸発により気化されたポリオールを含む溶媒は、コンデンサー16に送られて液化し、溶媒回収タンク17に回収される。
【0063】
ポリアミド回収タンク14は、冷却蒸留槽11から開閉弁13を介して送られてきたポリアミド15を収容し、その固体を放冷させるための容器である。
【0064】
コンデンサー16は、冷却蒸留槽11に配管を介して設けられている。コンデンサー16は、沸騰して気体となった溶媒を凝縮して液体にし、その液体になった溶媒を溶媒回収タンク17に回収させるための装置である。
【0065】
溶媒回収タンク17は、コンデンサー16で液化されたポリオールを含む溶媒を回収するための容器である。
ここで、真空ポンプ18、温度検出器20、真空圧力検出器21、及び真空圧力調整弁22は、真空蒸留するための装置である。
【0066】
上記のような構成の冷却蒸留装置10では、上述したポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法の工程(3)(冷却蒸留工程)を行うことができる。
なお、第1実施形態の装置として、工程(1)(加熱溶解工程)及び工程(2)(分離工程)を溶解釜4で実施し、工程3(冷却蒸留工程)を冷却蒸留槽11で実施する形態を示したが、工程(1)、工程(2)及び工程(3)を全て1つの釜で実施することも可能である。
【0067】
次に、本発明の第1実施形態におけるポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法について具体的に説明する。
【0068】
本実施形態では、まず、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料を適当な大きさに細断する(複合樹脂材料細断工程)。この細断寸法は、使用されるフィルターの細孔より大きければよく、使用する設備又は処理量によって異なる。
加熱により溶融したポリオレフィン樹脂は、分裂小粒化することはなく、逆に互いに一体化して大きな溶融物を形成する。したがって、複合樹脂材料の裁断サイズは、フィルターの細孔サイズより大きければ特に問題はない。
【0069】
次に、溶解釜4の溶解釜3を開放し、溶解釜4の下部にある開閉弁5を閉じて、ポリオールを含む溶媒(例えば、エチレングリコール)を所定量注入する(溶媒注入工程)。
次に、溶解釜4の溶解釜3を閉止して、溶解釜4が加熱バーナ(図示略)により沸騰する温度まで加熱される。発生するポリオールを含む溶媒の蒸気は、リフラックスコンデンサー6で液化して、溶解釜2に還流させる。
【0070】
ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂材料の所定量を計量し、ネット状容器2に投入しておく。
溶解釜4の中のポリオールを含む溶媒の温度が沸点より10~20℃低い温度に到達した段階で、溶解釜4の溶解釜蓋3を開けて、所定量の複合樹脂材料を入れたネット状容器2を溶解釜4の上部に吊り下げ、ポリオールを含む溶媒の中に浸漬する。
加熱を続け、溶媒の温度が沸点に達すると、ポリアミド系樹脂は瞬時に溶解する。ポリオレフィン系樹脂は融点が低いので、沸点に達する前に溶融し液状化する。
よって、溶媒の温度が沸点に達したら直ちにネット状容器2を少しだけ吊り上げて浮かした状態で溶解釜4の下部の開閉弁5を開け、ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を冷却蒸留装置10に移送する。そうしないとポリアミド系樹脂の重合度低下が起こるからである。
【0071】
ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と溶融したポリオレフィン系樹脂との混合物が冷却蒸留装置10に流下する際、前記混合物はネット状容器2の細孔を通過する。その際、ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液は細孔を通過するが、溶融したポリオレフィン系樹脂は高粘度のため通過しない。
こうして、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液とポリオレフィン系樹脂融液とを分離することができる。
効率よく高品質のポリアミド系樹脂を回収するには、複数のフィルターを通過させることが好ましい。
すなわち、第1フィルターとして、目開きの大きな細孔を有するフィルターを用いて、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を高速で通過させる。第1フィルターの目開きが大きいため、ポリオレフィン系樹脂融液も一部随伴して通過する。一部通過したポリオレフィン系樹脂融液を、目開きの小さい細孔を有する第2フィルターで除去することにより、短時間で高品質のポリアミド系樹脂を回収することができる。
その方法として
図4のように示すように、第1フィルター2aを有するネット状容器2と、溶解釜4の底部に設置される第2フィルター2bとで構成された方式でもよい。また、
図5に示すように、第1フィルター2aを有するネット状容器2の下に第2フィルター2bを有するネット状容器2を配置して、2段階で分離してもよい。
また、
図6に示すように、第1フィルター2aを有するネット状容器をフックで吊るし、その外側に第2フィルター2bを有するネット状容器2を配置してもよい。
【0072】
このようにフィルターを2回通過させることにより、ポリオレフィン系樹脂融液が完全に除去されたポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を効率よく冷却蒸留槽11に投入することができる。
なお、ポリオレフィン系樹脂の残渣に付着しているポリアミド系樹脂は、別途次のバッチに加える等の方法で回収することができる。
なお、本実施形態では、溶解釜4に対して加熱バーナー(図示略)を用いて加熱させたが、これに限らず、熱媒により加熱してもよいし、別の容器で加熱した溶媒を溶解釜4に送液してもよい。
また、複合樹脂材料を入れたネット状容器2をあらかじめ溶解釜4に入れておき、ポリオールを含む溶媒を注加した後、溶媒とともに加熱してもよい。
【0073】
ポリオールを含む溶媒の量は、溶解釜4の容量によって定まる。
以下、溶媒で処理されるポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料の量について記述する。
前述したように生産性を向上させるためには、複合樹脂材料に対する溶媒量が少ない方が好ましい。逆に溶解性を上げるためには溶媒量が多い方が好ましい。特に溶媒が少なく、複合樹脂材料が溶媒に浸漬しない部分が多い場合は、溶解に時間を要するが、それはポリアミド系樹脂の劣化の原因となるため好ましくない。両者を満足するためには、複合樹脂材料100質量部に対して溶媒量250~1000質量部が適当であり、好ましくは350~500質量部である。
本来、ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂の濃度を基準に複合樹脂材料の処理量を決定すべきであるが、本発明成功の要因は、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液の粘度に比べてポリオレフィン系樹脂融液の溶融粘度が著しく大きいことに着眼して両者の分離に成功したことである。両者の粘度差が特に大きいことから、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液とポリオレフィン系樹脂融液との濃度の差は分離に影響しないのである。すなわち、ポリアミド系樹脂の濃度よりも溶解性又は生産性を考慮して、処理する複合樹脂材料及び溶媒の量を決定することができる。
【0074】
ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解すればポリアミド系樹脂の重合度が低下するため、それを最小にするために溶液を急冷する必要がある。そこでポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂材料が溶媒に溶解又は溶融すれば直ちに溶解釜蓋3を閉じたまま、ネット状容器2を上方に少し吊り上げ、溶解窯4の下部にある開閉弁5を開けてネット状容器2をさらに上方に吊り上げる。ポリアミド樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液は、冷却蒸留槽11に流下する。冷却蒸留槽11はあらかじめジャケットの冷媒で冷却しておくのが望ましい。
【0075】
次に、冷却蒸留槽11内に投入されたポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解した溶液から溶媒を除去するために、開閉弁5を閉じて真空蒸留を開始する。真空にすると蒸発が起こり、その潜熱により温度が低下する。さらに真空圧を下げていくと、さらに温度が低下する。なお、ここで真空圧を下げ過ぎると急激に溶媒が気化して突沸し、前記溶液がコンデンサー16を通過して溶媒回収タンク17に達することになる。
このトラブルを防ぐためには、あらかじめ溶媒の温度-蒸気圧曲線を作製しておき、溶液の温度を温度検出器20で探知しながら真空圧力調整弁22を自動開閉して、真空圧を自動コントロールするシステムを装備することが望ましい。その場合、溶媒の温度を均一にするために、攪拌しながら蒸留するのが望ましい。また、冷却蒸留槽11は、冷却速度を速めるためにジャケットの冷媒で冷却してもよい。
【0076】
ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解した溶液が冷却蒸留槽11内に投入されると、前記溶液の温度の低下とともに、ポリアミド系樹脂が析出してくる。析出したポリアミド系樹脂により溶媒が析出し難くなるのを防ぎ、また、槽内の温度を均一化するため、攪拌装置12により攪拌する。攪拌することにより、析出したポリアミド系樹脂に付着残留する溶媒を容易に除去することができる。真空圧が限界に達すれば加熱して残留溶媒の量を減らすことができる。
また、析出したポリアミド系樹脂同士の融着が起こる場合がある。融着を防ぐために、少量の水を注入することが好ましい。水を注入する際には、ポリアミド系樹脂がポリオールを含む溶媒に溶解した溶液の温度が100℃以下であることが、安全上、加水分解防止の観点から必要である。そのためには、例えば、ポリオールを含む溶媒がエチレングリコールの場合、冷却蒸留槽11内の真空圧を、最終的に24hP以下、好ましくは15hP以下に下げることが好ましい。
【0077】
ポリオールを含む溶媒はポリアミド系樹脂の貧溶媒であるため、冷却蒸留槽11内でポリオールを含む溶媒が気化しても、ポリアミド系樹脂が一体化した塊状になることはなく、粒状になって落下する。落下物であるポリアミド系樹脂は、冷却蒸留槽11の底面に堆積させることができる。そして、冷却蒸留槽11の底面に堆積した落下物は、若干融着を起こしていても脆いために簡単にバラバラになり、ポリアミド系樹脂の細片として、冷却蒸留槽11の下部の開閉弁13を開放することにより、ポリアミド回収タンク14に回収することができる。そして、このように回収されたポリアミド系樹脂の細片から得られた再生ポリアミドは、重合度が低下していないポリアミド系樹脂であり、そのまま使用することもできるが、溶融してペレット化して使用することもできる。
【0078】
冷却蒸留槽11で気化したポリオールを含む溶媒は、コンデンサー16で凝縮されて液化し、溶媒回収タンク17に収容される。そして、溶媒回収タンク17に収容されたポリオールを含む溶媒は、加熱溶解分離装置2に送って、複合樹脂材料のリサイクル方法を実施する際のポリアミド系樹脂の溶剤として再利用することができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0080】
<試験例1>
IR(赤外分光法)による測定
下記試料A~Eに含まれるPVDCの量(塩素原子が含まれているか)を確認するため、IR装置(株式会社島津製作所製、機種:IR-408)を用いて、測定した。
測定条件:ダイヤモンドATR法(Det.TDS、Scan:16回、Res.4cm―1)
【0081】
<試験例2>
燃焼イオンクラマトグラフ法による塩素の定量
下記試料A~Eに含まれるPVDCの量(塩素原子が含まれているか)を確認するため、装置(三菱化学アナリテック サーモフィッシュ サイエンティフィック社製、機種:AQF-2100 + ICS-1600)を用いて、測定した。
【0082】
<試験例3>
相対粘度測定
下記試料A~Eの相対粘度測定をJIS K-6920-2に準拠して測定した。
測定条件:溶媒96%濃硫酸、温度25℃、濃度0.01g/ml、ウベローデ粘度計使用。
【0083】
<実施例1>
リサイクル原料である、ポリアミド系樹脂組成物(ナイロン6)とポリオレフィン系樹脂組成物(PVDC)とを含む複合樹脂材料フィルムを所望(約1cm×2cm)の大きさに細断し、10gをフィルター1(網目1.0mm、線径0.29mm、20メッシュ)のネット状容器2に入れた。この容器を、あらかじめ190℃に加熱したエチレングリコール50mlが入った溶解釜4に投入し、さらに加熱してエチレングリコールを沸騰させた。沸騰すると同時にポリアミド系樹脂は溶解した。ポリオレフィン系樹脂は溶融し、個々の溶融物が合体してひと塊の溶融体となり、高比重のため沈降しそうであるが、沸騰気泡により浮遊状態となった。
直ちにネット状容器2を溶解釜4から取り出して、ナイロン6のエチレングリコール溶液を撹拌装置12付き冷却蒸留槽11に投入した。冷却蒸留槽11は、ウォーターバスで冷却し、真空ポンプ18を稼働させた。真空ポンプ18の吸引側に設けた真空圧力調整弁22をわずかに開けて真空ポンプ18で吸引を開始し、その後突沸が起こらないよう徐々に真空圧力調整弁22の開度を上げて真空圧を下げていった。蒸発潜熱で温度が下がれば、それにつれて真空圧を下げていった。その間攪拌を続け、35分で真空圧14hPa、温度が85℃まで下がった。真空を破って大気圧をした後、蒸留残渣を水洗乾燥して、ポリアミド粉末試料A(7.5g)を得た。
こうして、実施例1では、加熱溶解工程、分離工程、及び冷却蒸留工程を実施した。
【0084】
結果
リサイクル原料の試料Eは、
図9に示す塩素のピークがあるのに対して、実施例1で得られた試料Aは、IRの測定の結果、
図10に示すとおり、塩素のピークが消滅したことから、ポリアミド系樹脂がリサイクルできたことが分かった。また、燃焼イオンクラマトグラフ法によって、試料Aは、全塩素が0.35wt%未満であることが分かった。一方、リサイクル原料である試料Eは、全塩素が3.85wt%であることから、実施例1の方法によって、ポリアミド系樹脂がリサイクルできたことが分かった。
実施例1で得られたポリアミド系樹脂(ナイロン6)の重合度を示す相対粘度は2.671であった。
【0085】
<比較例1>
冷却蒸留装置10に投入するまでは実施例1と同様に行い、冷却蒸留装置10にナイロン6のエチレングリコール溶液を投入した後加熱して常圧で蒸留し、エチレングリコールを30分かけて60ml留去した。析出した残渣を放冷した後水洗し、乾燥した。得られたリサイクルナイロン6顆粒は褐色に着色しており、その相対粘度は1.913まで低下していた。
【0086】
<参考例1>
実施例1に使用した複合樹脂材料を常温でギ酸に溶解し、不溶のPVDCを除去した後、炭酸ナトリウムを加えてナイロン6を析出させた。この析出ナイロンの相対粘度は2.716であった。
すなわち、原料である複合樹脂材料試料Eの相対粘度は2.713であり、常圧で溶媒を除去した参考例1では相対粘度が1.913まで低下したことが分かった。
【0087】
<実施例2>
ネット状容器をフィルター2(網目0.5mm、線径0.14mm、40メッシュ)に代えた以外は、実施例1と同様の製造方法で、フィルターを通過した溶液からポリアミド粉末試料B(5.4g)を得た。
【0088】
結果
IRの測定の結果、実施例2においても、塩素のピークが消滅した(図省略)ことから、ポリアミド系樹脂がリサイクルできたことが分かった。また、燃焼イオンクラマトグラフ法によって、試料Aは、全塩素が0.33wt%未満であることが分かった。一方、リサイクル原料である試料Eは、全塩素が3.85wt%であることから、実施例2の方法によって、ポリアミド系樹脂がリサイクルできたことが分かった。試料Bの相対粘度は2.684であった。
【0089】
<実施例3>
ネット状容器をフィルター3(孔径が直径0.5mm、開口率19.0%のパンチングプレート)に代えた以外は、実施例1と同様の製造方法で、フィルター2側の試料Cと、溶液側からポリアミド粉末試料D(8.8g)を得た。
【0090】
結果
IRの測定の結果、実施例3においても、塩素のピークが消滅した(図省略)ことから、ポリアミド系樹脂がリサイクルできたことが分かった。また、燃焼イオンクラマトグラフ法によって、試料Dは、全塩素が0.01wt%未満であることが分かった。一方、フィルター側に残った試料Cは、全塩素が20.27wt%であった。実施例3の方法によって、ポリアミド系樹脂がリサイクルできたことが分かった。試料Dの相対粘度は2.706であった。
【0091】
<参考例2>
リサイクル原料である、ポリアミド系樹脂組成物(ナイロン6)とポリオレフィン系樹脂組成物(PVDC)とを含む複合樹脂材料フィルム(試料E)は、
図9に示すとおり、塩素のピークが存在した。また、燃焼イオンクラマトグラフ法によって、リサイクル原料である試料Eは、全塩素が3.85wt%であった。
【0092】
<実施例4>
ナイロン6とポリ塩化ビニリデンとからなる複合樹脂フィルム10gを用い、エチレングリコールの量及び網目の大きさを下記表1に示すように代えた以外は、上記実施例1と同様の方法で実験を行い、フィルターの網目を通過した樹脂の量(g)を測定した。なお、この量は、エチレングリコールを除去した後の、リサイクルポリアミド系樹脂の量である。その結果を表1に示す。
【0093】
【0094】
結果
表1に示すとおり、目開き5mmでは、全ての材料が通過してしまった。すなわち、細孔の径を大きくすれば、ポリオレフィン系樹脂融液が細孔からポリアミド樹脂溶液とともに流下し、リサイクルポリアミド系樹脂に混入するので品質が低下した。細孔の径を小さくすれば、ポリオレフィン系樹脂融液はフィルターを通過することなく全量がネット状容器2に残留し、ポリアミド系樹脂溶液のみ流下するので、分離が可能になった。しかしながら、細孔の径が小さすぎる場合には、リサイクルポリアミド系樹脂の品質は向上するが、ポリアミド系樹脂溶液がポリオレフィン樹脂融液とともにフィルター上に残留するため、リサイクルポリアミド系樹脂の収量が低下することが分かった。
【0095】
<実施例5>
図5に示したように、2重のネット状容器を使用してフィルターを2回通過させた。第1フィルター2aの線径は0.47mm、目開き3.2mmであり、第2フィルター2bの線径は0.12mm、目開き0.30mmであった。実施例4と同様にナイロン6とポリ塩化ビニリデンとの複合フィルム10gを使用した。溶媒エチレングリコールの倍率は5、すなわちエチレングリコールを50ml使用し、他は実施例1と同じ方法でナイロン6のリサイクルを行った。
第1フィルター2aにおいては、急速にナイロン6のエチレングルコール溶液が流下し、わずかにポリ塩化ビニリデン融液が随伴して流下した。しかしながら、第2フィルター2bにおいてはポリ塩化ビニリデン融液の妨害がほとんどないため、ナイロン6のエチレングリコール溶液のみが目開き0.3mmの細孔をスムーズに通過することができた。通過した溶液から回収されたナイロン6の質量は9.1gであった。
なお、実施例4では0.3mmの細孔を通過したナイロン6の量は3.2gにすぎなかった(表1参照)。
こうしてフィルターを複数回使用することにより、回収率を格段に向上させることができるとがわかった。なお、実施例5で得られたナイロン6の相対粘度は2.701であり、分子量の低下はなく、品質的にも問題ないことがわかった。
【0096】
<実施例6>
原料フィルムに対して5倍量のエチレングリコールを用いて、下記表2に示す目開き及び開口率に代えた以外は、上記実施例3と同様の方法で実験を行い、フィルターを通過した樹脂の回収量(g)を測定した。なお、この量は、エチレングリコールを除去した後の、リサイクルポリアミド系樹脂の量である。その結果を表2に示す。
【0097】
【0098】
結果
表2に示すとおり、目開きの径を大きくすれば、回収ポリアミド系樹脂の収量が増加することが分かった。また、開口率が小さいと、回収されるポリアミド系樹脂の収量が減ることから、回収率を上げるためには開口率が19%以上、好ましくは22%以上必要であることが分かった。
【0099】
<実施例7>
ナイロン6とポリエチレンとを含む複合樹脂材料フィルムに代えた以外は、実施例1と同様の方法で、リサイクルナイロン6試料B(7.5g)及びポリエチレン(2.1g)を得た。
これより、実施例1と同様に、ナイロン6のみを分離し、リサイクルナイロン6を得ることができた。回収されたナイロン6の相対粘度は、2.684であった。フィルターに残ったポリエチレンはリサイクルポリエチレンとして使用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 加熱溶解分離装置
2 ネット状容器
2a 第1のフィルター
2b 第2のフィルター
3 溶解釜蓋
4 溶解釜
5 開閉弁
6 リフラックスコンデンサー
7 温度検出器
10 冷却蒸留装置
11 冷却蒸留槽
12 攪拌装置
13 開閉弁
14 ポリアミド回収タンク
15 ポリアミド
16 コンデンサー
17 溶媒回収タンク
18 真空ポンプ
19 水道管
20 温度検出器
21 真空圧力検出器
22 真空圧力調整弁
【要約】
【課題】ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂材料から高品質なポリアミド系樹脂を回収することができる、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料と、ポリオールを含む溶媒とを加熱し、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解することなく溶融したポリオレフィン樹脂融液との混合物を得る加熱溶解工程、
前記加熱溶解工程によって得られた混合物を、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液との粘度差を利用して、前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液と、前記ポリオレフィン樹脂融液とに分離する分離工程、及び
前記分離工程で得られた前記ポリアミド系樹脂が前記ポリオールを含む溶媒に溶解したポリアミド系樹脂溶液を、蒸発潜熱を利用して急冷すると同時に前記ポリオールを含む溶媒を留去し、ポリアミド樹脂を回収する冷却蒸留工程を備える、ポリアミド系樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂材料のリサイクル方法。
【選択図】なし