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特許7446053リアルタイム長距離遠隔溶接用のシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】リアルタイム長距離遠隔溶接用のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/10 20060101AFI20240301BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20240301BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B23K9/10 A
B23K9/095 515A
B23K9/095 515Z
B23K9/12 331F
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018114099
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019000910
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】15/626,655
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ジョン ムジラ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ジョン チャントリー
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0260261(US,A1)
【文献】国際公開第2015/179136(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/100556(WO,A1)
【文献】特開平10-034342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014637(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0016176(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0298024(US,A1)
【文献】特開2015-174155(JP,A)
【文献】特開2007-276052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長距離リアルタイム遠隔溶接を実行するシステムであって、
実際の溶接作業を実行するために遠隔溶接現場に設置されるように構成されているロボット溶接システムであって、
溶接トーチと、カメラと、
前記ロボット溶接システムを制御して、前記カメラを介して前記実際の溶接作業中に加工物と前記溶接トーチとの間の少なくともアーク又はビームの映像を収集するように構成されている第1の制御器と
を含むロボット溶接システムと、
ローカル現場に設置されるように構成されている模擬溶接システムであって、
前記ローカル現場で少なくとも前記映像を観察するために、人間の溶接士によって着用されるように構成されている頭部装着型ディスプレイデバイスと、
少なくとも前記映像を観察しながら、前記ローカル現場で模造溶接ツールを保持して移動させる前記人間の溶接士に応じて、前記溶接トーチを遠隔で制御するように構成されている模造溶接ツールと、
前記模擬溶接システムを制御して、前記模造溶接ツールの移動を追跡しながら制御パラメータを生成するように構成されている第2の制御器と
を含む模擬溶接システムと、
前記遠隔溶接現場における前記第1の制御器と前記ローカル現場における前記第2の制御器との間で、少なくとも前記映像及び前記制御パラメータの通信を行うように構成されている超低待ち時間通信ネットワークであって、前記第1の制御器と前記第2の制御器との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と10ミリ秒との間であり、前記遠隔溶接現場と前記ローカル現場との間の直線距離は、少なくとも10キロメートルである超低待ち時間通信ネットワークと
を含み、前記遠隔溶接現場における前記第1の制御器と前記ローカル現場における前記第2の制御器との間の通信を提供するために、前記超低待ち時間通信ネットワークのための少なくとも2つの経路が設けられ、該少なくとも2つの経路の待ち時間は異なり、前記第1の制御器及び前記第2の制御器のうちの少なくとも一方は、往復通信待ち時間を判定するために少なくとも1回の待ち時間試験を実行するように構成され、
前記ロボット溶接システムは、少なくとも前記制御パラメータに応じた前記模造溶接ツールによる前記溶接トーチの遠隔ロボット制御を介して、前記実際の溶接作業中に、前記遠隔溶接現場で前記加工物に実際の溶接部を形成するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記ロボット溶接システムは、自動遮光フィルターを含み、前記第1の制御器は、前記自動遮光フィルターを通して観察する前記カメラを介して前記実際の溶接作業中に前記加工物と前記溶接トーチとの間の少なくとも前記アーク又は前記ビームの前記映像を収集するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ロボット溶接システムは、マイクロホンを含み、前記第1の制御器は、前記マイクロホンを介して前記実際の溶接作業中に前記加工物と前記溶接トーチとの間の少なくとも前記アーク又は前記ビームの音声を収集するように構成されており、前記超低待ち時間通信ネットワークは、前記遠隔溶接現場における前記第1の制御器から前記ローカル現場における前記第2の制御器に、前記ローカル現場で前記頭部装着型ディスプレイデバイスを介して前記人間の溶接士によって観察されるべき前記音声の通信を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記模造溶接ツールは、前記模造溶接ツールの位置及び方向のうち少なくとも1つを監視して、三次元空間で前記模造溶接ツールを追跡する前記第2の制御器に、対応する位置及び方向信号を供給するように構成されている1つ又は複数のセンサーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記模造溶接ツールの位置及び方向のうち少なくとも1つを監視して、三次元空間で前記模造溶接ツールを追跡する前記第2の制御器に、対応する位置及び方向信号を供給するように構成されている、前記模造溶接ツールの外部にある1つ又は複数のセンサーを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の制御器は、前記遠隔溶接現場における前記第1の制御器と前記ローカル現場における前記第2の制御器との間の前記往復通信待ち時間を判定する待ち時間試験を実行するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の制御器は、前記遠隔溶接現場における前記第1の制御器と前記ローカル現場における前記第2の制御器との間の前記往復通信待ち時間を判定する待ち時間試験を実行するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記超低待ち時間通信ネットワークは、無線周波数無線ネットワークセグメント及び光ファイバーネットワークセグメントのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記超低待ち時間通信ネットワークは、前記遠隔溶接現場と前記ローカル現場との間で動作する専用プライベートネットワークである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記超低待ち時間通信ネットワークは、受動光学構成要素、遮光フィルター、分散補償モジュール、非順方向誤り訂正トランスポンダー、ソフトウェア定義ネットワーク、及びネットワーク機能仮想化技法のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記超低待ち時間通信ネットワークは、三次元集積回路チップ、三次元集積回路チップスタック、回路基板に組み込まれた光導波路、チップスタック内の光集積トランシーバー、及びシャーシ内の回路基板の完全無線チップ間相互接続性のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の制御器及び前記第2の制御器は各々、三次元集積回路チップ、三次元集積回路チップスタック、回路基板に組み込まれた光導波路、チップスタック内の光集積トランシーバー、及びシャーシ内の回路基板の完全無線チップ間相互接続性のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
リアルタイムで長距離にわたってロボット溶接システムを遠隔で制御する方法であって、
ローカル現場で人間の溶接士によって動作される模造溶接ツールの移動及び制御を追跡して、前記模造溶接ツールの前記移動及び前記制御に対応する制御パラメータを生成するステップと、
超低待ち時間通信ネットワーク上で前記ローカル現場から遠隔溶接現場におけるロボット溶接システムに前記制御パラメータを伝送するステップであって、前記超低待ち時間通信ネットワーク上の前記ローカル現場と前記遠隔溶接現場との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と10ミリ秒との間であり、前記ローカル現場と前記遠隔溶接現場との間の直線距離は、少なくとも10キロメートルであるステップであって、前記遠隔溶接現場における第1の制御器と前記ローカル現場における第2の制御器との間の通信を提供するために、前記超低待ち時間通信ネットワークのための少なくとも2つの経路が設けられ、該少なくとも2つの経路の待ち時間は異なり、前記第1の制御器及び前記第2の制御器のうちの少なくとも一方は、往復通信待ち時間を判定するために少なくとも1回の待ち時間試験を実行するように構成されている、ステップと、
前記ロボット溶接システムの実際の溶接作業を前記遠隔溶接現場で制御して、前記制御パラメータに応じた前記ロボット溶接システムの遠隔ロボット制御を介して前記遠隔溶接現場で加工物に実際の溶接部を形成するステップであって、前記ロボット溶接システムの溶接トーチは、リアルタイムで前記ローカル現場で前記人間の溶接士によって動作される前記模造溶接ツールの前記移動及び前記制御に追従するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記人間の溶接士によって動作される前記模造溶接ツールの前記移動は、前記遠隔溶接現場で前記加工物を模擬する、前記ローカル現場における模擬加工物に沿っている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ロボット溶接システムの前記溶接トーチの先端部が、前記遠隔溶接現場で前記実際の溶接作業中に前記加工物から適切な距離でない場合を判定するステップと、
前記溶接トーチの前記先端部が前記適切な距離でない場合、前記超低待ち時間通信ネットワーク上で、前記遠隔溶接現場から前記ローカル現場にフィードバック信号を伝送するステップと、
前記フィードバック信号に応じて前記ローカル現場における前記模造溶接ツール内で触覚反応を生成するステップと
を更に含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ロボット溶接システムの前記溶接トーチが、前記遠隔溶接現場で前記実際の溶接作業中に前記加工物に対して適切な角度でない場合を判定するステップと、
前記溶接トーチが前記適切な角度でない場合、前記超低待ち時間通信ネットワーク上で、前記遠隔溶接現場から前記ローカル現場にフィードバック信号を伝送するステップと、
前記フィードバック信号に応じて前記ローカル現場における前記模造溶接ツール内で触覚反応を生成するステップと
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ロボット溶接システムの前記溶接トーチが、前記遠隔溶接現場で前記実際の溶接作業中に前記加工物に対して適切な移動速度で移動していない場合を判定するステップと、
前記溶接トーチが前記適切な移動速度で移動していない場合、前記超低待ち時間通信ネットワーク上で、前記遠隔溶接現場から前記ローカル現場にフィードバック信号を伝送するステップと、
前記フィードバック信号に応じて前記ローカル現場における前記模造溶接ツール内で触覚反応を生成するステップと
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
次の1ミリ秒以上にわたって前記模造溶接ツールの前記移動及び前記制御に対応する前記制御パラメータを予想するために、前記遠隔溶接現場に近い前記超低待ち時間通信ネットワークのエッジの近くで、予測、内挿又は外挿技法のうち少なくとも1つを使用するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記遠隔溶接現場で前記実際の溶接作業中に前記加工物と前記溶接トーチとの間に形成される少なくともアーク又はビームの音声を収集するステップと、
前記超低待ち時間通信ネットワーク上で前記遠隔溶接現場から前記ローカル現場に前記音声を伝送するステップと、
前記人間の溶接士が前記実際の溶接作業中に前記模造溶接ツールを移動させるにつれて、リアルタイムで前記ローカル現場における前記人間の溶接士に対して前記音声を再生するステップと
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記遠隔溶接現場で前記実際の溶接作業中に前記加工物と前記溶接トーチとの間に形成される少なくともアーク又はビームの映像を収集するステップと、
前記超低待ち時間通信ネットワーク上で前記遠隔溶接現場から前記ローカル現場に前記映像を伝送するステップと、
前記人間の溶接士が前記実際の溶接作業中に前記模造溶接ツールを移動させるにつれて、リアルタイムで前記ローカル現場における前記人間の溶接士に対して前記映像を表示するステップと
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記映像を、前記遠隔溶接現場における自動遮光フィルターを介して収集する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、溶接に関連したシステム及び方法に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、長距離リアルタイム遠隔溶接を実行するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、人間の溶接士は、特定のタイプの溶接において長年の経験を積んだ熟練溶接士であることが多い。重要な部品又は構造体が故障すると(例えば、プラント、工場又は現場で)、問題を解決するために、特定のタイプの熟練溶接士を迅速に必要とすることがある。しかし、このような熟練溶接士は、その位置ですぐに応対できないことがあり、熟練溶接士が問題を解決するためにその位置に移動することができるまで、重大なダウンタイム及び/又は安全上の問題を引き起こすことがある。よりタイムリーな方法で、重要な部品又は構造体を修理するために、このような熟練溶接士にアクセスできる必要がある。更に、重要な部品又は構造体が位置する特定の領域は、人間にあまり適していないことがある。例えば、熱、湿度、化学物質、又は放射線などの環境要因は、人間の溶接士に対して問題を引き起こすことがある。このような適さない領域(例えば、低地球軌道空間)に遠隔アクセスできる必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の実施形態は、遠隔溶接に関連したシステム及び方法を含む。ある場所に位置する人間の溶接士は、別の場所で溶接作業を遠隔で実行することができる。例えば、原子炉に関連した特定のタイプの溶接における専門家である、第1の場所に位置する応対できる熟練溶接士は、何マイルも離れている第2の場所で、原子炉の構造体を修理することができる。一実施形態において、第1の位置における熟練溶接士は、溶接トーチ/ガンを使用して、遠隔地で同様の溶接トーチ/ガンを保持するロボットを制御することができる。熟練溶接士によって保持された溶接トーチ/ガンは、作動中でないが、三次元空間で溶接トーチ/ガンの位置及び方向を示す加速度計又はジャイロを有する。熟練溶接士がトーチ/ガンを移動させるにつれて、遠隔地でロボットによって保持されたトーチ/ガンは、同様に移動して能動的に溶接部を生成する。熟練溶接士は、遠隔地(例えば、頭部装着型ディスプレイを介して)で、溶接環境(加工物、トーチ/ガン、溶接溜まりなど)の表示(映像及び音声)を有する。熟練溶接士がサイバー病を生じないように(すなわち、熟練溶接士が第1の位置でトーチ/ガンを用いて行っている作業が遠隔地で丁度同時に起こっているように熟練溶接士に見える)、第1の位置と遠隔地との間に短い往復通信待ち時間(例えば、約1ミリ秒)がある。このように、より長距離にわたる遠隔溶接を、リアルタイムで実行することができる。より長距離にわたって遠隔で効果的に溶接する手掛かりの1つは、2つの位置間の超低待ち時間通信ネットワークである。アーク溶接をここで主に説明するが、特定の実施形態は、例えば、電子ビーム溶接又はレーザービーム溶接などの他のタイプの溶接にも適用できる。ここで使用される用語「アーク」は、プラズマアークを意味し、ここで使用される用語「ビーム」は、電子ビーム又はレーザービームを意味してもよい。
【0004】
一実施形態は、長距離リアルタイム遠隔溶接を実行するシステムを含む。システムは、実際の溶接作業を実行するために遠隔溶接現場に設置されるように構成されているロボット溶接システムを含む。システムは、ローカル現場に設置されるように構成されている模擬溶接システムを更に含む。ロボット溶接システムは、溶接トーチと、カメラと、第1の制御器とを含む。第1の制御器は、ロボット溶接システムを制御して、カメラを介して実際の溶接作業中に加工物と溶接トーチとの間の少なくともアーク又はビームの映像を収集するように構成されている。模擬溶接システムは、ローカル現場で少なくとも映像を観察するために、人間の溶接士によって着用されるように構成されている頭部装着型ディスプレイデバイスを含む。模擬溶接システムは、少なくとも映像を観察しながら、ローカル現場で模造溶接ツールを保持して移動させる人間の溶接士に応じて、溶接トーチを遠隔で制御するように構成されている模造溶接ツールを更に含む。模擬溶接システムは、模擬溶接システムを制御して、模造溶接ツールの移動及び制御を追跡しながら制御パラメータを生成するように構成されている第2の制御器を更に含む。一実施形態において、第1の制御器及び第2の制御器は各々、三次元集積回路チップ、三次元集積回路チップスタック、回路基板に組み込まれた光導波路、チップスタック内の光集積トランシーバー、及びシャーシ内の回路基板の完全無線チップ間相互接続性のうち少なくとも1つを含む。システムは、遠隔溶接現場における第1の制御器とローカル現場における第2の制御器との間で、少なくとも映像及び制御パラメータの通信を行うように構成されている超低待ち時間通信ネットワークを更に含む。一実施形態において、第1の制御器と第2の制御器との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と10ミリ秒との間であり、遠隔溶接現場とローカル現場との間の直線距離は、少なくとも10キロメートルである。ここで使用されるように、用語「直線距離」は、用語「最短距離」の意味に対応する。一実施形態において、第1の制御器又は第2の制御器のうち少なくとも1つは、遠隔溶接現場における第1の制御器とローカル現場における第2の制御器との間の往復通信待ち時間を判定する待ち時間試験を実行するように構成されている。ロボット溶接システムは、少なくとも制御パラメータに応じた模造溶接ツールによる溶接トーチの遠隔ロボット制御を介して、実際の溶接作業中に、遠隔溶接現場で加工物に実際の溶接部(例えば、溶接ビード)を形成するように構成されている。一実施形態において、超低待ち時間通信ネットワークは、無線周波数無線ネットワークセグメント及び光ファイバーネットワークセグメントのうち少なくとも1つを含む。一実施形態において、超低待ち時間通信ネットワークは、遠隔溶接現場とローカル現場との間で動作する専用プライベートネットワークである。一実施形態において、超低待ち時間通信ネットワークは、受動光学構成要素、ダークファイバー、分散補償モジュール、非順方向誤り訂正トランスポンダー、ソフトウェア定義ネットワーク、及びネットワーク機能仮想化技法のうち少なくとも1つを含む。一実施形態において、超低待ち時間通信ネットワークは、三次元集積回路チップ、三次元集積回路チップスタック、回路基板に組み込まれた光導波路、チップスタック内の光集積トランシーバー、及びシャーシ内の回路基板の完全無線チップ間相互接続性のうち少なくとも1つを含む。一実施形態において、ロボット溶接システムは、自動遮光フィルターを含む。第1の制御器は、自動遮光フィルターを通して観察するカメラを介して実際の溶接作業中に加工物と溶接トーチとの間の少なくともアーク又はビームの映像を収集するように構成されている。一実施形態において、ロボット溶接システムは、マイクロホンを含む。第1の制御器は、マイクロホンを介して実際の溶接作業中に加工物と溶接トーチとの間の少なくともアーク又はビームの音声を収集するように構成されている。超低待ち時間通信ネットワークは、遠隔溶接現場における第1の制御器からローカル現場における第2の制御器に、ローカル現場で頭部装着型ディスプレイデバイスを介して人間の溶接士によって観察されるべき音声の通信を行うように構成されている。一実施形態において、模造溶接ツールは、模造溶接ツールの位置及び方向のうち少なくとも1つを監視して、三次元空間で模造溶接ツールを追跡する第2の制御器に、対応する位置及び方向信号を供給するように構成されている1つ又は複数のセンサーを含む。別の実施形態において、1つ又は複数のセンサーは、模造溶接ツールの外部にある。
【0005】
一実施形態は、リアルタイムで長距離にわたってロボット溶接システムを遠隔で制御する方法を含む。方法は、ローカル現場で人間の溶接士によって動作される模造溶接ツールの移動及び制御を追跡して、模造溶接ツールの移動及び制御に対応する制御パラメータを生成するステップを含む。方法は、超低待ち時間通信ネットワーク上でローカル現場から遠隔溶接現場におけるロボット溶接システムに制御パラメータを伝送するステップを更に含む。一実施形態において、超低待ち時間通信ネットワーク上のローカル現場と遠隔溶接現場との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と10ミリ秒との間であり、ローカル現場と遠隔溶接現場との間の直線距離は、少なくとも10キロメートルである。方法は、ロボット溶接システムの実際の溶接作業を遠隔溶接現場で制御して、制御パラメータに応じたロボット溶接システムの遠隔ロボット制御を介して遠隔溶接現場で加工物に実際の溶接部(例えば、溶接ビード)を形成するステップを更に含む。一実施形態において、ロボット溶接システムの溶接トーチは、リアルタイムでローカル現場で人間の溶接士によって動作される模造溶接ツールの移動及び制御に追従する。一実施形態において、人間の溶接士によって動作される模造溶接ツールの移動は、遠隔溶接現場で加工物を模擬する、ローカル現場における模擬加工物に沿っている。一実施形態において、方法は、ロボット溶接システムの溶接トーチの先端部が、遠隔溶接現場で実際の溶接作業中に加工物から適切な距離でない場合を判定するステップを含む。溶接トーチの先端部が適切な距離でない場合、超低待ち時間通信ネットワーク上で、遠隔溶接現場からローカル現場にフィードバック信号を伝送する。フィードバック信号に応じてローカル現場における模造溶接ツール内で触覚反応を生成する。一実施形態において、方法は、ロボット溶接システムの溶接トーチが、遠隔溶接現場で実際の溶接作業中に加工物に対して適切な角度でない場合を判定するステップを含む。溶接トーチが適切な角度でない場合、超低待ち時間通信ネットワーク上で、遠隔溶接現場からローカル現場にフィードバック信号を伝送する。フィードバック信号に応じてローカル現場における模造溶接ツール内で触覚反応を生成する。一実施形態において、方法は、ロボット溶接システムの溶接トーチが、遠隔溶接現場で実際の溶接作業中に加工物に対して適切な移動速度で移動していない場合を判定するステップを含む。溶接トーチが適切な移動速度で移動していない場合、超低待ち時間通信ネットワーク上で、遠隔溶接現場からローカル現場にフィードバック信号を伝送する。フィードバック信号に応じてローカル現場における模造溶接ツール内で触覚反応を生成する。一実施形態において、方法は、遠隔溶接現場で実際の溶接作業中に加工物と溶接トーチとの間に形成される少なくともアーク又はビームの映像を収集するステップを更に含む。遠隔溶接現場からの映像を、超低待ち時間通信ネットワーク上でローカル現場に伝送して、人間の溶接士が実際の溶接作業中に模造溶接ツールを移動させるにつれてリアルタイムでローカル現場における人間の溶接士に対して映像を表示する。一実施形態において、映像を、遠隔溶接現場における自動遮光フィルターを介して収集する。一実施形態において、方法は、遠隔溶接現場で実際の溶接作業中に加工物と溶接トーチとの間に形成される少なくともアーク又はビームの音声を収集するステップを更に含む。遠隔溶接現場からの音声を、超低待ち時間通信ネットワーク上でローカル現場に伝送して、人間の溶接士が実際の溶接作業中に模造溶接ツールを移動させるにつれてリアルタイムでローカル現場における人間の溶接士に対して音声を再生する。一実施形態において、方法は、次の1ミリ秒以上にわたって模造溶接ツールの移動及び制御に対応する制御パラメータを予想するために、遠隔溶接現場に近い超低待ち時間通信ネットワークのエッジの近くで、予測、内挿又は外挿技法のうち少なくとも1つを使用するステップを含む。
【0006】
一般的な発明概念の多くの態様は、下記の例示的な実施形態の詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付図面から容易に明白になるであろう。
【0007】
明細書に取り入れられ、明細書の一部を構成する添付図面は、開示の様々な実施形態を例示する。図面における例示要素境界(例えば、ボックス、ボックスのグループ、又は他の形状)は、境界の一実施形態を表すことが分かる。幾つかの実施形態では、1つの要素を多くの要素として設計してもよく、その多くの要素を1つの要素として設計してもよい。幾つかの実施形態では、別の要素の内部構成要素として示す要素を、外部構成要素として実施してもよく、その逆でもよい。更に、要素を、原寸に比例して描かなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】長距離リアルタイム遠隔溶接を実行するシステムの実施形態を示す。
図2図1のシステムのロボット溶接システムの実施形態を示す。
図3図1のシステムの模擬溶接システムの実施形態を示す。
図4図3の模擬溶接システムの頭部装着型ディスプレイデバイスの実施形態及び模造溶接ツールの実施形態を示す。
図5】リアルタイムで長距離にわたってロボット溶接システムを遠隔で制御する方法の実施形態のフローチャートを示す。
図6図2のロボット溶接システムの制御器、又は図3の模擬溶接システムの制御器の実施形態の例を示す。
図7図1のシステムの超低待ち時間通信ネットワークの一実施形態を示す。
図8図1のシステムの超低待ち時間通信ネットワークの別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
リアルタイム長距離遠隔溶接を実行するシステム及び方法の実施形態が開示されている。一実施形態において、人間の溶接士がローカル現場で模造溶接ツールを使用して、遠隔地で実際の溶接トーチ/ガンを遠隔で制御し、実際の溶接作業を遠隔で観察しながら(例えば、視覚的に、可聴的に、及び触覚的に)、実際の溶接作業を実行する。人間の溶接士が「サイバー病」を生じないように、遠隔地における溶接トーチ/ガンは、人間の溶接士による模造溶接ツールの移動に即時に反応する。すなわち、人間の溶接士がローカル現場で模造溶接ツールを用いて行っている作業が、遠隔地で実際の溶接トーチ/ガンを用いて丁度同時に起こっているように、人間の溶接士に見える。ローカル現場と遠隔溶接現場との間の通信待ち時間は、人間の溶接士の感覚を混乱させる又は方向感覚を失わせる視覚的、音声的及び触覚的遅延に人間の溶接士が全く気付かないほど十分に短い。
【0010】
ここでの例及び図面は、例示に過ぎず、特許請求の範囲の精神及び範囲によって評価される主題の本発明を限定することを意味しない。主題の本発明の例示的な実施形態を限定する目的ではなく、これらの実施形態を単に示す目的である図面について説明する。図1は、長距離リアルタイム遠隔溶接を実行するシステム100の一実施形態を示す。用語「ガン」及び「トーチ」は、溶接に関してここで区別なく使用される。
【0011】
図1について説明する。システム100は、遠隔溶接現場におけるロボット溶接システム200と、超低待ち時間(ULL)通信ネットワーク400上で互いに通信する、ローカル現場における模擬溶接システム300とを含む。一実施形態によれば、ULL通信ネットワーク400上のロボット溶接システム200と模擬溶接システム300との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と10ミリ秒との間であり、遠隔溶接現場とローカル現場との間の直線距離(最短距離)は、少なくとも10キロメートルである。ここで使用されるように、往復通信待ち時間は、ローカル現場における模擬溶接システムから遠隔溶接現場におけるロボット溶接システムにデータのパケットが伝わるのにかかる時間の単位であり、再度戻る。人間が技術システムと対話すると、人間とシステムとの間のフィードバックが人間の反応時間に対応する場合にだけ、対話は人間にとって本質的及び本能的であるように見える。例えば、人間の聴覚反応時間は、約100ミリ秒であり、人間の視覚反応時間は、約10ミリ秒であり、人間の触覚反応時間は、約1ミリ秒である。
【0012】
一般的に、通信待ち時間は、ローカル現場と遠隔現場との間の通信ネットワークの構成要素及び動作によって制限される。しかし、最終的に、通信ネットワークに待ち時間がない(すなわち、理想的なネットワーク)場合、通信待ち時間は、光速(毎秒約300,000キロメートル)によって依然として制限される。すなわち、光は、真空中で1ミリ秒の間に約300キロメートル進むことができる。従って、2つの現場間の距離は、1ミリ秒の往復通信待ち時間を達成するのに150キロメートル未満である必要がある。2つの現場間の通信ネットワークの構成要素のために通信待ち時間が長くなればなるほど、例えば1ミリ秒の往復通信待ち時間を維持するために、2つの現場は、より近くする必要がある。
【0013】
長距離にわたって超低待ち時間を達成することができる通信ネットワークは、先進技術を使用する。例えば、一実施形態において、ULL通信ネットワーク400は、受動光学構成要素、ダークファイバー、分散補償モジュール、非順方向誤り訂正トランスポンダー、ソフトウェア定義ネットワーク、及びネットワーク機能仮想化技法のうち少なくとも1つを使用してもよい。ULL通信ネットワーク400が使用してもよい追加の先進技術は、三次元集積回路チップ、三次元集積回路チップスタック、回路基板に組み込まれた光導波路、チップスタック内の光集積トランシーバー、及びシャーシ内の回路基板の完全無線チップ間相互接続性を含む。他の実施形態によれば、他の先進技術も可能である。一実施形態によれば、長距離リアルタイム遠隔溶接を支援するULL通信ネットワークの一部である低地球軌道(LEO)衛星のネットワークで、このような先進技術を使用してもよい。
【0014】
図2は、図1のシステム100のロボット溶接システム200の実施形態を示す。ロボット溶接システム200は、遠隔制御を介して実際の溶接作業を実行するために遠隔溶接現場に設置されるように構成されている。ロボット溶接システム200は、溶接トーチ210と、ビデオカメラ(又は他の撮像センサー)220と、自動遮光フィルター230と、マイクロホン(又は他の音声センサー)240と、制御器250とを含む。一実施形態において、溶接トーチ210を、ロボット溶接システム200のアームに取り付ける。アーム(従って、溶接トーチ210)の移動を、制御器250によって命令する。例えば、一実施形態において、アームは、制御器250の制御下で溶接トーチ210の移動の少なくとも6つの自由度を与えてもよい。しかし、一実施形態によれば、制御器250は、ここで後述されるように、ULL通信ネットワーク400上で模擬溶接システム300から受信される制御パラメータに応じて、アーム(従って、溶接トーチ210)の移動を制御する。
【0015】
制御器250は、ロボット溶接システム200を制御して、カメラ220及びマイクロホン240を介して、実際の溶接作業中に加工物260と溶接トーチ210との間のプラズマアーク、電子ビーム又はレーザービームの映像及び音声をそれぞれ収集するように構成されている。一実施形態において、自動遮光フィルター230を介して観察するカメラ220によって、映像を収集する。一実施形態によれば、カメラ220、自動遮光フィルター230及びマイクロホン240が移動して、トーチ210が加工物260と接触する点に追従するように(例えば、加工物260の平面に対して、x及びyの2軸の動作を介して)、カメラ220、自動遮光フィルター230及びマイクロホン240を、ロボット溶接システム200のアームに直接又は間接的に取り付けてもよい。別の実施形態によれば、トーチ210が加工物260と接触する点に追従する別の方法で(例えば、カメラ220からの入力を介してトーチ210の動作を追跡する個別動作制御器を介して)、カメラ220、自動遮光フィルター230及びマイクロホン240を制御する。映像及び音声をそれぞれ、カメラ220及びマイクロホン240から制御器250に供給する。制御器250は、映像及び音声をULL通信ネットワーク400上で模擬溶接システム300にリアルタイムで伝送するように構成されている。
【0016】
図3は、図1のシステム100の模擬溶接システム300の実施形態を示す。模擬溶接システム300は、ULL通信ネットワーク400上で遠隔溶接現場における実際の溶接作業を遠隔で制御する模擬溶接作業を実行するためにローカル現場に設置されるように構成されている。模擬溶接システム300は、模造溶接ツール310と、頭部装着型ディスプレイデバイス320と、制御器330とを含む。頭部装着型ディスプレイデバイス320は、遠隔溶接現場におけるロボット溶接システム200からの映像及び音声を観察するために、人間の溶接士(例えば、図3のローカル熟練溶接士)によって着用されるように構成されている。模造溶接ツール310は、映像及び音声を観察しながら、ローカル現場で模造溶接ツール310を保持して移動させる人間の溶接士に応じて、溶接トーチ210を遠隔で制御するように構成されている。例えば、人間の溶接士は、遠隔溶接現場で実際の加工物260を模擬する模擬加工物又は試験片340に沿って模造溶接ツール310を移動させてもよい。制御器330は、模擬溶接システム300を制御して、三次元空間で模造溶接ツール310の位置及び移動を追跡しながら、制御パラメータを生成するように構成されている。例えば、一実施形態において、制御器330は、時間と共に模造溶接ツール310の位置及び方向を追跡する空間追跡技術を含む。空間追跡技術は、例えば、一実施形態によれば、磁気に基づいてもよく、又は、別の実施形態によれば、慣性に基づいてもよい。他の実施形態によれば、他のタイプの空間追跡技術も可能である。
【0017】
再度、図1について説明する。ULL通信ネットワーク400は、リアルタイムで、ローカル現場における制御器330と遠隔溶接現場における制御器250との間で、映像、音声及び制御パラメータの通信を行うように構成されている。再度、一実施形態によれば、ULL通信ネットワーク400上のロボット溶接システム200と模擬溶接システム300との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と10ミリ秒との間であり、遠隔溶接現場とローカル現場との間の直線距離(最短距離)は、少なくとも10キロメートルである。このようにして、ロボット溶接システム200は、制御パラメータに応じた模造溶接ツール310による溶接トーチ210の遠隔ロボット制御を介して、実際の溶接作業中に、遠隔溶接現場で加工物260に実際の溶接部を形成するように構成されている。実際の溶接作業中に、人間の溶接士は、模造溶接ツール310を移動させて、頭部装着型ディスプレイデバイス320を介して映像及び音声を観察する。その結果、人間の溶接士は、サイバー病などの悪影響を被ることなく、遠隔溶接現場で実際の溶接を経験する。
【0018】
一実施形態によれば、制御器250は、ULL通信ネットワークを通る経路に沿って遠隔溶接現場における制御器250とローカル現場における制御器330との間の往復通信待ち時間を判定する待ち時間試験を実行するように構成されている。別の実施形態によれば、制御器330は、ULL通信ネットワークを通る経路に沿って遠隔溶接現場における制御器250とローカル現場における制御器330との間の往復通信待ち時間を判定する待ち時間試験を実行するように構成されている。このような待ち時間試験は、制御器250と制御器330との間を往復するデータのタイムスタンプパケットを送信するステップと、パケット間の平均待ち時間を計算するステップとを含んでもよい。このようにして、遠隔溶接作業を実行しようとする前に、2つの現場間の所望又は所要の待ち時間を検証することができる。他の実施形態によれば、他のタイプの待ち時間試験も可能である。
【0019】
ULL通信ネットワークは、ULL通信ネットワークを通る2つ以上の経路を提供してもよい。異なる経路は、異なる待ち時間を有してもよい。一実施形態によれば、制御器は、ULL通信ネットワークを通る様々な経路の予備知識を有することができる。待ち時間試験が失敗した場合(すなわち、待ち時間を、長すぎると判定する)、待ち時間試験を実行した制御器は、ULL通信ネットワークを通る異なる経路に沿って次の待ち時間試験を実行することができる。受け入れ可能な経路を判定するまで、又は全経路がなくなるまで、このような待ち時間試験は続けてもよい。
【0020】
図4は、図3の模擬溶接システム300の頭部装着型ディスプレイデバイス320の実施形態及び模造溶接ツール310の実施形態を示す。模造溶接ツール310は、ハンドル311と、先端部312と、グースネック313と、トリガ314とを含む。模造溶接ツール310は、三次元空間で模造溶接ツール310の位置、方向及び動作を追跡する信号を生成するために使用される慣性センサー316(例えば、加速度計又はジャイロ)を更に含む。別の実施形態によれば、模擬溶接システム300は、三次元空間で模造溶接ツール310を追跡する、模造溶接ツール310の外部にあるセンサーを含む。このような外部センサーは、例えば、模造溶接ツール310の位置、方向及び/又は移動を検出するレーザーデバイス又はカメラデバイスを含んでもよい。一実施形態において、ローカル現場で上に位置するセンサーの配列によって検出される模造溶接ツール310に、ペンダントを取り付ける。
【0021】
模造溶接ツール310は、制御器330と無線で通信する無線伝送器318を更に含む。例えば、一実施形態において、トリガ314の位置を表すデータ、及び模造溶接ツール310の位置、方向及び動作を追跡する信号を、無線伝送器318を介して制御器に無線で通信する。別の実施形態において、データを、模造溶接ツール310から制御器330に有線で通信する。制御器330は、ロボット溶接システム200を遠隔で制御するために使用される模造溶接ツール310からのデータに基づいて、制御パラメータを生成する。一実施形態によれば、模造溶接ツール310は、信号を収集してデータを生成するように構成されているプロセッサ(図示せず)及びメモリ(図示せず)を含む。
【0022】
一実施形態において、頭部装着型ディスプレイデバイス320は、溶接ヘルメット又はマスク322と、遠隔溶接現場から流体及びリアルタイム全動作映像を表示するように構成されている2つのディスプレイ324(例えば、2つの高コントラストSVGA 3D OLED超小型ディスプレイ)とを含む。頭部装着型ディスプレイデバイス320は、リアルタイムで遠隔溶接現場から音声を再生するように構成されている2つのスピーカー326を更に含む。一実施形態において、頭部装着型ディスプレイデバイス320は、映像及び音声を受信するために、制御器330と有線でインターフェースをとる。別の実施形態において、インターフェースは、無線トランシーバーデバイス328を介した無線であってもよい。
【0023】
一実施形態において、頭部装着型ディスプレイデバイス320を、三次元空間で追跡する(例えば、センサー及び制御器330を介して模造溶接ツール310を追跡する方法と同様)。頭部装着型ディスプレイデバイス320の追跡を使用して、遠隔溶接現場におけるカメラ220、マイクロホン240及び自動遮光フィルター230の位置を制御してもよい。このようにして、ローカル現場における人間の溶接士が、この溶接士の頭部を移動させるにつれて、遠隔溶接現場におけるカメラ220、マイクロホン240及び自動遮光フィルター230は、その移動に追従する(溶接トーチ210が模造溶接ツール310に追従する方法と同様)。一実施形態によれば、遠隔溶接現場におけるカメラ220、マイクロホン240及び自動遮光フィルター230を、例えば、個別のサーボ機構システムと作動的に接続してもよい。
【0024】
図5は、(例えば、図1のシステム100を用いて)リアルタイムで長距離にわたってロボット溶接システムを遠隔で制御する方法500の実施形態のフローチャートを示す。ブロック510で、模造溶接ツール310をローカル現場で人間の溶接士によって動作させるにつれて、模造溶接ツール310の移動及び制御を追跡する。模造溶接ツール310の移動及び制御に対応する制御パラメータを生成する。例えば、一実施形態において、制御パラメータは、実際の溶接作業中に溶接トーチ210を動作させて制御する方法をロボット溶接システム200に通信するように構成されている。一実施形態によれば、模造溶接ツール310は、実際の溶接トーチ210の特性(例えば、グースネック及び先端部)を模擬してもよい。
【0025】
ブロック520で、制御パラメータを、ULL通信ネットワーク400上でローカル現場から遠隔溶接現場におけるロボット溶接システム200に伝送する。一実施形態によれば、ULL通信ネットワーク400上のローカル現場と遠隔溶接現場との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と10ミリ秒との間であり、ローカル現場と遠隔溶接現場との間の直線距離(最短距離)は、少なくとも10キロメートルである。別の実施形態によれば、ULL通信ネットワーク400上のローカル現場と遠隔溶接現場との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と20ミリ秒との間であり、ローカル現場と遠隔溶接現場との間の直線距離(最短距離)は、少なくとも50キロメートルである。更に別の実施形態において、ULL通信ネットワーク400上のローカル現場と遠隔溶接現場との間の往復通信待ち時間は、0.5ミリ秒と50ミリ秒との間であり、ローカル現場と遠隔溶接現場との間の直線距離(最短距離)は、少なくとも100キロメートルである。
【0026】
ブロック530で、ロボット溶接システム200の実際の溶接作業を遠隔溶接現場で制御して、制御パラメータに応じたロボット溶接システム200の遠隔ロボット制御を介して加工物260に実際の溶接部を形成する。ロボット溶接システム200の溶接トーチ210は、リアルタイムでローカル現場で人間の溶接士によって動作される模造溶接ツール310の移動及び制御に追従する。一実施形態によれば、人間の溶接士によって動作される模造溶接ツール310の移動は、ローカル現場における模擬加工物又は試験片340に沿っている。一実施形態によれば、模擬加工物340は、遠隔溶接現場で加工物260を模擬してもよい。
【0027】
実際の溶接作業中、加工物260と溶接トーチ210(及び/又は加工物260及び溶接トーチ210の少なくとも一部を含むアーク又はビームを囲む範囲)との間に形成された少なくともアーク(すなわち、プラズマアーク)又はビーム(すなわち、電子ビーム又はレーザービーム)の映像及び音声を、遠隔溶接現場で収集して、ULL通信ネットワーク400上でローカル現場に伝送する。人間の溶接士が実際の溶接作業中に模造溶接ツールを移動させるにつれて、リアルタイムでローカル現場における人間の溶接士に対して、映像を表示し、音声を再生する。
【0028】
一実施形態において、ロボット溶接システム200の溶接トーチ210の先端部が、遠隔溶接現場で実際の溶接作業中に加工物から適切な又は指定の距離でない場合について、判定を行う。このような判定を行う方法は、当業界で周知である。溶接トーチ210の先端部が加工物から指定の距離でない場合、フィードバック信号を、(例えば、制御器250によって)ULL通信ネットワーク400上で、生成して、遠隔溶接現場からローカル現場に伝送する。触覚反応を、フィードバック信号に応じてローカル現場における模造溶接ツール310内で生成する。触覚反応は、例えば、模造溶接ツール310のハンドルで生成された振動(例えば、ハンドル内の振動デバイスを介して)であってもよく、模造溶接ツール310を持つと、その振動を人間の溶接士は検出することができる。他の実施形態によれば、他の触覚反応も可能である。このようにして、触覚反応がやむまで模造溶接ツール310の先端部が加工物340にどれくらい近いかを調整することによって、人間の溶接士は反応することができる。
【0029】
一実施形態において、ロボット溶接システム200の溶接トーチ210が、遠隔溶接現場で実際の溶接作業中に加工物260に対して適切な又は指定の角度でない場合について、判定を行う。このような判定を行う方法は、当業界で周知である。溶接トーチ210が加工物260に対して指定の角度でない場合、フィードバック信号を、(例えば、制御器250によって)ULL通信ネットワーク400上で、生成して、遠隔溶接現場からローカル現場に伝送する。触覚反応を、フィードバック信号に応じてローカル現場における模造溶接ツール310内で生成する。再度、触覚反応は、例えば、模造溶接ツール310のハンドルで生成された振動であってもよく、模造溶接ツール310を持つと、その振動を人間の溶接士は検出することができる。他の実施形態によれば、他の触覚反応も可能である。このようにして、触覚反応がやむまで加工物340に対する模造溶接ツール310の角度を調整することによって、人間の溶接士は反応することができる。
【0030】
一実施形態において、ロボット溶接システム200の溶接トーチ210が、遠隔溶接現場で実際の溶接作業中に加工物260に対して適切な又は指定の移動速度で移動していない場合について、判定を行う。このような判定を行う方法は、当業界で周知である。溶接トーチ210が加工物260に対して指定の移動速度で移動していない場合、フィードバック信号を、(例えば、制御器250によって)ULL通信ネットワーク400上で、生成して、遠隔溶接現場からローカル現場に伝送する。触覚反応を、フィードバック信号に応じてローカル現場における模造溶接ツール310内で生成する。再度、触覚反応は、例えば、模造溶接ツール310のハンドルで生成された振動であってもよく、模造溶接ツール310を持つと、その振動を人間の溶接士は検出することができる。他の実施形態によれば、他の触覚反応も可能である。このようにして、触覚反応がやむまで加工物340に対する模造溶接ツール310の移動速度を調整することによって、人間の溶接士は反応することができる。
【0031】
図6は、図2のロボット溶接システム200の制御器250、又は図3の模擬溶接システム300の制御器330の実施形態の例を示す。制御器は、バスサブシステム612を介して多くの周辺デバイスと通信する少なくとも1つのプロセッサ614(例えば、中央処理装置、テンソル処理ユニット、グラフィックス処理ユニット)を含む。これらの周辺デバイスは、例えば、メモリサブシステム628及びファイル記憶サブシステム626を含む記憶サブシステム624、ユーザインターフェース入力デバイス622、ユーザインターフェース出力デバイス620、及びネットワークインターフェースサブシステム616を含んでもよい。入力及び出力デバイスにより、ユーザは、制御器と対話することができる。ネットワークインターフェースサブシステム616は、外部ネットワーク(例えば、ULL通信ネットワーク400)とのインターフェースを提供し、他のデバイス(例えば、模造溶接ツール310及び頭部装着型ディスプレイデバイス320)における対応するインターフェースデバイスに結合されている。一実施形態において、プロセッサ614のうち少なくとも1つは、機械学習専用に生成された特定用途向け集積回路(ASIC)であるテンソル処理ユニット(TPU)である。グラフィックス処理ユニット(GPU)と違って、TPUは、より大量の縮小精度計算に対応するように構成されている。
【0032】
ユーザインターフェース入力デバイス622は、キーボード、ポインティングディバイス(例えば、マウス、トラックボール、タッチパッド、又はグラフィックスタブレット)、スキャナー、ディスプレイに組み込まれたタッチスクリーン、音声入力デバイス(例えば、音声認識システム、マイクロホン)、及び/又は他のタイプの入力デバイスを含んでもよい。一般的に、用語「入力デバイス」の使用は、制御器又は通信ネットワークに情報を入力する全ての可能なタイプのデバイス及び方法を含むように意図されている。
【0033】
ユーザインターフェース出力デバイス620は、ディスプレイサブシステム、プリンター、ファックス、又は音声出力デバイスなどの非視覚的ディスプレイを含んでもよい。ディスプレイサブシステムは、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルデバイス、投射デバイス、又は可視画像を生成する幾つかの他の機構を含んでもよい。ディスプレイサブシステムは、例えば、音声出力デバイスを介した非視覚的ディスプレイを更に提供してもよい。一般的に、用語「出力デバイス」の使用は、制御器からユーザ又は別の機械又はコンピュータシステムに情報を出力する全ての可能なタイプのデバイス及び方法を含むように意図されている。
【0034】
記憶サブシステム624は、ここに記載の機能の一部又は全部を与えるプログラミング及びデータ構成体を記憶する。例えば、コンピュータ実行可能命令及びデータを、一般的に、プロセッサ614単独によって、又は他のプロセッサとの組み合わせで実行する。記憶サブシステム624で使用されるメモリ628は、プログラム実行中の命令及びデータの記憶用の主ランダムアクセスメモリ(RAM)630と、固定命令を記憶する読み取り専用メモリ(ROM)632とを含む多くのメモリを含むことができる。ファイル記憶サブシステム626は、プログラム及びデータファイル用の持続性記憶を与えることができ、ハードディスクドライブ、関連の取り外し可能媒体と併せたフロッピーディスクドライブ、CD-ROMドライブ、光ドライブ、又は取り外し可能媒体カートリッジを含んでもよい。特定の実施形態の機能を実行するコンピュータ実行可能命令及びデータを、記憶サブシステム624におけるファイル記憶サブシステム626によって、又はプロセッサ614がアクセス可能な他の機械に、記憶してもよい。
【0035】
バスサブシステム612は、制御器の様々な構成要素及びサブシステムに目的通りに互いに通信させる機構を与える。バスサブシステム612を単一バスとして概略的に示してあるが、バスサブシステムの代替の実施形態では、多重バスを使用してもよい。
【0036】
図6の制御器の様々な構成要素は、例えば、三次元集積回路チップ、三次元集積回路チップスタック、回路基板に組み込まれた光導波路、チップスタック内の光集積トランシーバー、及びシャーシ内の回路基板の完全無線チップ間相互接続性を含む先進技術を使用してもよい。他の実施形態によれば、他の先進技術も可能である。
【0037】
制御器は、ワークステーション、サーバ、計算クラスタ、ブレードサーバ、サーバファーム、又は任意の他のデータ処理システム又は計算デバイスを含む様々なタイプであることができる。計算デバイス及びネットワークの変化の激しい性質のために、図6に示す制御器の説明は、幾つかの実施形態を示す目的で、単に特定の例として意図されている。図6に示す制御器よりも多い又は少ない構成要素を有する制御器の多くの他の構成が可能である。
【0038】
図7は、図1のULL通信ネットワーク400の一実施形態を示す。一実施形態において、ULL通信ネットワーク400は、第1の無線周波数無線ネットワークセグメント710と、第2の無線周波数無線ネットワークセグメント720と、第1の光ファイバーネットワークセグメント730と、第2の光ファイバーネットワークセグメント740とを含む。例えば、光ファイバーネットワークセグメント730及び740は、ULL通信ネットワーク400のエッジのより近くにある(すなわち、ローカル現場及び遠隔溶接現場にそれぞれ近い)。無線周波数無線ネットワークセグメント710及び720は、光ファイバーネットワークセグメント間にある(例えば、ローカル現場と遠隔溶接現場との間の距離の大部分にわたって通信を行う)。一実施形態において、ULL通信ネットワーク400は、ローカル現場と遠隔溶接現場との間で動作する専用プライベートネットワークである。
【0039】
図8は、図1のULL通信ネットワーク400の別の実施形態を示す。一実施形態において、ULL通信ネットワーク400は、第1の光ファイバーネットワークセグメント810と、第2の光ファイバーネットワークセグメント820と、第1の無線周波数無線ネットワークセグメント830と、第2の無線周波数無線ネットワークセグメント840と、低地球軌道(LEO)衛星ネットワークセグメント850とを含む。再度、光ファイバーネットワークセグメント810及び820は、ULL通信ネットワーク400のエッジのより近くにある(すなわち、ローカル現場及び遠隔溶接現場にそれぞれ近い)。無線周波数無線ネットワークセグメント830及び840とLEO衛星ネットワークセグメント850とは、光ファイバーネットワークセグメント間にある(例えば、ローカル現場と遠隔溶接現場との間の距離の大部分にわたって通信を行う)。一実施形態において、ULL通信ネットワーク400は、ローカル現場と遠隔溶接現場との間で動作するパブリックアクセスネットワークである。
【0040】
一実施形態において、予測、内挿及び/又は外挿技法を、ULL通信ネットワーク400のエッジの近くで使用する。このような技法により、実際の動作用の指令がULL通信ネットワーク400上でまだ移動中でありながら、統計的に同等な動作を自動的に実行することができる。すなわち、システム100は、とられるべき動作を予想して、その動作を実行する実際の指令が、例えば遠隔溶接現場に到達する前に、その動作の実行を開始することができる。例えば、最後の10ミリ秒にわたって(対応する制御パラメータをもたらす)ローカル現場で加工物340に対して移動された模造溶接ツール310を有する人間の溶接士に応じて、(予測、内挿及び/又は外挿技法を実行する)遠隔溶接現場における制御器250は、次の1ミリ秒間、ロボット溶接システム200の溶接トーチ210を制御する制御パラメータを生成することができる。このようにして、待ち時間の影響を減らすことができ、ローカル現場が遠隔溶接現場で作業できる距離をおそらく伸ばすことができる。
【0041】
開示の実施形態は、かなり詳細に例示及び説明されているが、このような詳細に添付の請求項の範囲を制限又は限定するように決して意図されていない。主題の様々な態様を説明する目的で、構成要素又は方法の考えられる全ての組み合わせを説明することは当然できない。従って、開示は、ここに記載の特定の詳細又は例示的な例に限定されない。従って、この開示は、米国特許法第101条の法定の主題要件を満たす、添付の請求項の範囲に含まれる変更、修正及び変型を含むように意図されている。特定の実施形態の上述の説明は、一例として与えられている。所与の開示から、当業者は、一般的な発明概念及び付随する利点を理解するだけでなく、開示の構造体及び方法に対する様々な変更及び修正も明白に分かるであろう。従って、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって規定されるように、一般的な発明概念の精神及び範囲に含まれるような全てのこのような変更及び修正を含む。
【符号の説明】
【0042】
100 システム
200 ロボット溶接システム
210 溶接トーチ
220 ビデオカメラ
230 自動遮光フィルター
240 マイクロホン
250 制御器
260 加工物
300 模擬溶接システム
310 模造溶接ツール
311 ハンドル
312 先端部
313 グースネック
314 トリガ
316 慣性センサー
318 無線伝送器
320 頭部装着型ディスプレイデバイス
322 溶接ヘルメット又はマスク
324 ディスプレイ
326 スピーカー
328 無線トランシーバーデバイス
330 制御器
340 模擬加工物
400 超低待ち時間通信ネットワーク
612 バスサブシステム
614 プロセッサ
616 ネットワークインターフェースサブシステム
620 ユーザインターフェース出力デバイス
622 ユーザインターフェース入力デバイス
624 記憶サブシステム
626 ファイル記憶サブシステム
628 メモリサブシステム
630 ランダムアクセスメモリ
632 読み取り専用メモリ
710 第1の無線周波数無線ネットワークセグメント
720 第2の無線周波数無線ネットワークセグメント
730 第1の光ファイバーネットワークセグメント
740 第2の光ファイバーネットワークセグメント
810 第1の光ファイバーネットワークセグメント
820 第2の光ファイバーネットワークセグメント
830 第1の無線周波数無線ネットワークセグメント
840 第2の無線周波数無線ネットワークセグメント
850 低地球軌道衛星ネットワークセグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8