(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240301BHJP
G02B 7/34 20210101ALI20240301BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20240301BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20240301BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20240301BHJP
G03B 13/36 20210101ALN20240301BHJP
【FI】
H01L27/146 A
G02B7/34
H01L31/10 B
H04N23/67
H04N25/76
G03B13/36
(21)【出願番号】P 2019061361
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018074047
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛和
(72)【発明者】
【氏名】松尾 康弘
(72)【発明者】
【氏名】熊木 聡
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 久敬
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037672(JP,A)
【文献】特開2017-059563(JP,A)
【文献】特開2012-129276(JP,A)
【文献】特開2017-117834(JP,A)
【文献】特開2016-171308(JP,A)
【文献】特開2013-149740(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130723(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0104020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
G02B 7/34
H01L 31/107
H04N 23/67
H04N 25/76
G03B 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行及び複数の列に渡って配された複数の画素を有し、
前記複数の画素の各々は、
半導体基板の表面部に設けられた第1導電型の複数の第1の半導体領域と、前記複数の第1の半導体領域の間の前記半導体基板の前記表面部に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記複数の第1の半導体領域の各々との間の前記半導体基板の前記表面部にそれぞれ設けられ、前記複数の第1の半導体領域よりも不純物濃度が低い前記第1導電型の複数の第3の半導体領域と、を有し、前記第2の半導体領域と前記複数の第1の半導体領域の各々との間にそれぞれフォトダイオードが構成された受光部と、
前記複数の第1の半導体領域の各々に各々が接続された複数のクエンチング回路と、
前記複数の第1の半導体領域と前記複数のクエンチング回路との間の接続ノードの各々に接続され、前記受光部への光子の入射に応じて生成されるパルスを計数する計数部と、を有し、
前記フォトダイオードのアノードを構成する前記第2の半導体領域は、
前記フォトダイオードのカソードを構成する前記複数の第1の半導体領域よりも前記半導体基板の深い部分で、前記複数の第1の半導体領域の間に延在する領域を有
し、
ガードリングとして機能する前記複数の第3の半導体領域は、前記複数の第1の半導体領域よりも前記半導体基板の深くに渡って設けられるとともに、前記第2の半導体領域の前記延在する領域は、前記複数の前記第3の半導体領域の底部のうち、前記複数の第1の半導体領域の間の領域を覆うように設けられており、
前記複数の第1の半導体領域のいずれかと前記第2の半導体領域の前記延在する領域との間の高電界領域におけるアバランシェ増倍により生じた電子が前記複数の第1の半導体領域のいずれかにより収集されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第2の半導体領域の前記延在する領域は、前記複数の前記第3の半導体領域の底部の全体を覆うように設けられている
ことを特徴とする請求項
1に記載の撮像装置。
【請求項3】
隣接する前記画素の前記受光部の間に設けられた前記第2導電型の第4の半導体領域よりなる第1の分離部を更に有する
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2の半導体領域から前記半導体基板の前記表面部とは反対側の第2の表面部に渡って設けられ、前記第2の半導体領域よりも不純物濃度が低い前記第2導電型の第5の半導体領域よりなる第2の分離部を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記複数の画素の各々は、前記表面部とは反対側の前記半導体基板の第2の表面部に設けられた1つのマイクロレンズを更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記複数の画素の各々は、平面視における前記受光部の中心を挟んで第1の方向に隣り合う2つの前記第1の半導体領域を含む
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記複数の画素の各々は、前記中心を挟んで第1の方向と交差する第2の方向に隣り合う2つの前記第1の半導体領域を更に含む
ことを特徴とする請求項
6記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数の画素は、
平面視における前記受光部の中心を挟んで第1の方向に隣り合う2つの前記第1の半導体領域を含む第1の画素と、
前記中心を挟んで第1の方向と交差する第2の方向に隣り合う2つの前記第1の半導体領域を含む第2の画素と、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記複数の画素の各々は、前記中心に配された前記第1の半導体領域を更に含む
ことを特徴とする請求項
6乃至
8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第2の半導体領域に第1の駆動電圧を供給し、前記複数の第1の半導体領域の各々に前記クエンチング回路を介して第2の駆動電圧を供給する第1の駆動モードと、
前記第2の半導体領域に第1の駆動電圧を供給し、前記複数の第1の半導体領域のうちの一つの前記第1の半導体領域のみに第3の駆動電圧を供給する第2の駆動モードと、を有する
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第3の駆動電圧と前記第1の駆動電圧との間の電位差は、前記第2の駆動電圧と前記第1の駆動電圧との間の電位差よりも大きい
ことを特徴とする請求項
10記載の撮像装置。
【請求項12】
前記一つの前記第1の半導体領域は、平面視における前記受光部の中心に位置している
ことを特徴とする請求項
10または11記載の撮像装置。
【請求項13】
前記第1の駆動モードにおいて、前記複数の第1の半導体領域のうちの一部の前記第1の半導体領域に接続された計数回路により計数された計数値と、前記複数の第1の半導体領域のうちの他の一部の前記第1の半導体領域に接続された計数回路により計数された計数値と、に基づき、焦点検出用の信号を生成する焦点検出用信号生成部を更に有する
ことを特徴とする請求項
10乃至
12のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記第2の駆動モードにおいて、前記一つの前記第1の半導体領域に接続された計数回路により計数された計数値に基づき、撮像用の信号を生成する画像処理部を更に有する
ことを特徴とする請求項
10乃至
12のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記複数の第1の半導体領域に接続された計数回路により計数された計数値の合計の値に基づき、撮像用の信号を生成する画像処理部を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
撮像光学系の開口状態に応じて、前記第2の駆動電圧を供給する前記第1の半導体領域を選択する
ことを特徴とする請求項
10乃至
14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項17】
請求項1乃至
16のいずれか1項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置から出力される信号を処理する信号処理部と
を有することを特徴とする撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
単一光子レベルの微弱光を検出可能な検出器として、単一光子アバランシェダイオード(SPAD:SinglePhotonAvalancheDiode)が知られている。SPADは、半導体のpn接合部に誘起された強電界により発生するアバランシェ増倍現象を用いることで、光子により励起された信号電荷を数倍~数百万倍程度に増幅するものである。このアバランシェ増倍現象の高ゲイン性を利用することで、微弱光の信号を読み出しノイズよりも十分大きく増幅し、単一光子レベルの輝度分解能を実現することができる。特許文献1には、SPADを備えた画素を2次元状に配列してなる撮像装置が開示されている。
【0003】
一方では、撮像と位相差検出法による焦点検出との両方に使用可能な撮像装置が実用化されている。撮影光学系の瞳領域を分割して受光できるように撮像装置を構成することにより、分割して得た信号は位相差検出に用いることができ、これらを加算した信号は撮像に用いることができる。特許文献2には、位相差検出法による焦点検出に利用可能なように光電変換部を分割した撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-174783号公報
【文献】特開2013-149757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、SPADを用いた撮像装置において位相差検出法による焦点検出に利用可能なように光電変換部を分割した場合、分割された光電変換部から得た信号を加算しただけでは、光電変換部を分割しない場合と同様のボケ味を得ることができなかった。
【0006】
本発明の目的は、SPADを用いた撮像装置であって、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を得ることができる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、複数の行及び複数の列に渡って配された複数の画素を有し、前記複数の画素の各々は、半導体基板の表面部に設けられた第1導電型の複数の第1の半導体領域と、前記複数の第1の半導体領域の間の前記半導体基板の前記表面部に設けられた第2導電型の第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域と前記複数の第1の半導体領域の各々との間の前記半導体基板の前記表面部にそれぞれ設けられ、前記複数の第1の半導体領域よりも不純物濃度が低い前記第1導電型の複数の第3の半導体領域と、を有し、前記第2の半導体領域と前記複数の第1の半導体領域の各々との間にそれぞれフォトダイオードが構成された受光部と、前記複数の第1の半導体領域の各々に各々が接続された複数のクエンチング回路と、前記複数の第1の半導体領域と前記複数のクエンチング回路との間の接続ノードの各々に接続され、前記受光部への光子の入射に応じて生成されるパルスを計数する計数部と、を有し、前記フォトダイオードのアノードを構成する前記第2の半導体領域は、前記フォトダイオードのカソードを構成する前記複数の第1の半導体領域よりも前記半導体基板の深い部分で、前記複数の第1の半導体領域の間に延在する領域を有し、ガードリングとして機能する前記複数の第3の半導体領域は、前記複数の第1の半導体領域よりも前記半導体基板の深くに渡って設けられるとともに、前記第2の半導体領域の前記延在する領域は、前記複数の前記第3の半導体領域の底部のうち、前記複数の第1の半導体領域の間の領域を覆うように設けられており、前記複数の第1の半導体領域のいずれかと前記第2の半導体領域の前記延在する領域との間の高電界領域におけるアバランシェ増倍により生じた電子が前記複数の第1の半導体領域のいずれかにより収集されることを特徴とする撮像装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、SPADを用いた撮像装置において、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態による撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による撮像装置の画素の構成例を示す回路図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図(その1)である。
【
図5】本発明の第1実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図(その2)である。
【
図6】本発明の第1実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図(その3)である。
【
図8】本発明の第1実施形態の変形例による撮像装置の構造を示す平面図(その1)である。
【
図9】本発明の第1実施形態の変形例による撮像装置の構造を示す平面図(その2)である。
【
図10】本発明の第1実施形態の変形例による撮像装置の構造を示す平面図(その3)である。
【
図11】本発明の第1実施形態の変形例による撮像装置の構造を示す平面図(その4)である。
【
図12】本発明の第1実施形態による撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャート(その1)である。
【
図13】本発明の第1実施形態による撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャート(その2)である。
【
図14】本発明の第2実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
【
図16】本発明の第3実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
【
図17】本発明の第3実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
【
図18】本発明の第4実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
【
図19】本発明の第4実施形態による撮像装置の画素の構成例及び駆動例を示す回路図(その1)である。
【
図20】本発明の第4実施形態による撮像装置の画素の構成例及び駆動例を示す回路図(その2)である。
【
図21】本発明の第4実施形態による撮像装置の画素の構成例及び駆動例を示す回路図(その3)である。
【
図22】本発明の第4実施形態による撮像装置の画素の構成例及び駆動例を示す回路図(その4)である。
【
図23】本発明の第5実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
【
図24】本発明の第5実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
【
図25】本発明の第6実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
【
図26】本発明の第6実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
【
図28】本発明の第6実施形態の変形例による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
【
図29】本発明の第7実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
【
図30】本発明の第7実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
【
図31】本発明の第7実施形態による撮像装置において開口絞りの状態を変更したときのフォトダイオードに入射する光束の変化を示す模式図である。
【
図32】本発明の第7実施形態による撮像装置において開口絞りの状態を変更したときのフォトダイオードに入射する光束の変化を示す平面図である。
【
図33】本発明の第8実施形態による撮像装置の画素の構造例を示す図である。
【
図35】本発明の第8実施形態による撮像装置の画素の構造例を示す図である。
【
図36】本発明の第8実施形態による撮像装置の画素の配置例を示す図である。
【
図37】本発明の第8実施形態による撮像装置の画素の構成例を示す図である。
【
図38】本発明の第9実施形態による撮像装置の画素の構成例を示す図である。
【
図39】本発明の第9実施形態による撮像装置の画素の構成例を示す図である。
【
図40】本発明の第10実施形態による撮像装置の画素の構成例を示す図である。
【
図41】本発明の第10実施形態による撮像装置の画素の不純物濃度に関する図である。
【
図42】本発明の第11実施形態による撮像装置の画素の構造例を示す図である。
【
図43】本発明の第12実施形態による撮像装置の画素へ電圧供給に関する図である。
【
図44】本発明の第13実施形態による撮像装置の画素の構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による撮像装置及びその駆動方法について、
図1乃至
図13を用いて説明する。
【0011】
はじめに、本実施形態による撮像装置100の概略構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態による撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態による撮像装置の画素の構成例を示す回路図である。
【0012】
本実施形態による撮像装置100は、
図1に示すように、画素領域10と、タイミング発生回路(TG)20と、垂直走査回路30と、水平走査回路40と、出力部50と、を有している。
【0013】
画素領域10には、複数行及び複数列に渡ってマトリクス状に配された複数の画素12が設けられている。
図1には、4行×8列に配された32個の画素12を示しているが、実際には高精細画像を得るために数百万から数千万程度の画素12が配列される。
図1の各画素12には、符号12に行番号p及び列番号qを表す座標を付記して「12(p,q)」のように表している。例えば、「12(2,5)」は、第2行第5列に配された画素12を表している。
【0014】
画素領域10の各行には、第1の方向(
図1においてX方向)に延在して制御線が配されている。各行の制御線は、第1の方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。制御線が延在する第1の方向は、行方向或いは水平方向と表記することがある。各行の制御線は、垂直走査回路30に接続されている。垂直走査回路30は、信号の読み出しを行う画素12を行単位で選択するための行選択信号を各行の制御線に出力する回路部である。また、各画素12はタイミング発生回路20に接続されており、タイミング発生回路20から各画素12に所定の制御信号(イネーブル信号PEN_A,PEN_B及びリセット信号PRES)を供給できるように構成されている。
【0015】
画素領域10の各列には、第1の方向と交差する第2の方向(
図1においてY方向)に延在して垂直信号線VLが配されている。垂直信号線VLは、第2の方向に並ぶ画素12に共通の信号線をなしている。垂直信号線VLが延在する第2の方向は、列方向或いは垂直方向と表記することがある。なお、
図1には、垂直信号線VLを、列番号qを付記した符号VLqにより表している。例えば、第4列の垂直信号線VLには、符号「VL4」を付している。
【0016】
水平走査回路40は、水平信号線HLに画素信号を出力する垂直信号線VLを選択する選択信号を供給する回路部である。出力部50は、水平走査回路40により選択された垂直信号線VLから出力された画素信号を出力信号OUTとして撮像装置の外部へ出力するための回路部である。タイミング発生回路20は、垂直走査回路30及び水平走査回路40にも接続されており、垂直走査回路30及び水平走査回路40の動作やそのタイミングを制御する制御信号を供給する。
【0017】
各々の画素12は、
図2に示すように、フォトダイオードPD_A,PD_Bと、抵抗R_A,R_Bと、インバータ回路INV_A,INV_Bと、計数回路CNT_A,CNT_Bと、を含む。フォトダイオードPD_A,PD_Bは、画素12の受光部を構成する。抵抗R_A,R_Bは、クエンチング回路を構成する。インバータ回路INV_A,INV_Bは、波形成形部を構成する。計数回路CNT_A,CNT_Bは、画素12の計数部を構成する。
【0018】
フォトダイオードPD_Aのアノードには、図示しない電圧供給部から駆動電圧として負電圧(例えば-20V)が供給される。フォトダイオードPD_Aのカソードには、抵抗R_Aの一方の端子が接続されている。抵抗R_Aの他方の端子には、図示しない電圧供給部から駆動電圧として正電圧(VDDA:例えば3V)が供給される。フォトダイオードPD_Aと抵抗R_Aとの間の接続ノードには、インバータ回路INV_Aの入力端子が接続されている。インバータ回路INV_Aの出力端子には、計数回路CNT_Aが接続されている。計数回路CNT_Aには、タイミング発生回路20から、イネーブル信号PEN_A及びリセット信号PRESが供給される。計数回路CNT_Aの出力が、画素12の1つの出力となる。
【0019】
同様に、フォトダイオードPD_Bのアノードには、図示しない電圧供給部から駆動電圧として負電圧(例えば-20V)が供給される。フォトダイオードPD_Bのカソードには、抵抗R_Bの一方の端子が接続されている。抵抗R_Bの他方の端子には、図示しない電圧供給部から駆動電圧として正電圧(VDDB:例えば3V)が供給される。フォトダイオードPD_Bと抵抗R_Bとの間の接続ノードには、インバータ回路INV_Bの入力端子が接続されている。インバータ回路INV_Bの出力端子には、計数回路CNT_Bが接続されている。計数回路CNT_Bには、タイミング発生回路20から、イネーブル信号PEN_B及びリセット信号PRESが供給される。計数回路CNT_Bの出力が、画素12の他の1つの出力となる。
【0020】
次に、本実施形態による撮像装置100の動作の概略について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0021】
フォトダイオードPD_Aには、クエンチング回路として機能する抵抗R_Aを介して、ブレークダウン電圧以上の大きさの逆バイアス電圧が印加されている。フォトダイオードPD_Aにこのように大きな逆バイアス電圧を印加することで、フォトダイオードPD_Aに入射した単一光子の光電変換で生じた1つの電子をアバランシェ増倍することができる。アバランシェ増倍に伴ってフォトダイオードPD_Aに電流が流れると、フォトダイオードPD_Aのアノードの電位はカソードの電位(-20V)の付近まで下降する。しかし、クエンチング回路として機能する抵抗R_Aを備えることで、ある時定数をもってこの電流を打ち消すことができる(いわゆるガイガーモード動作)。抵抗R_Aに電流が流れなくなれば、フォトダイオードPD_Aのカソードの電位は電圧VDDA(3V)に戻る。つまり、単一光子の光電変換で生じた1つの電子により1つの電圧パルスが生じるのである。この動作が繰り返されることで、入射した光子の数に応じた数の電圧パルスが出力されることになる。
【0022】
インバータ回路INV_Aは、上記の電圧パルスを整形するためのバッファである。計数回路CNT_Aは、インバータ回路INV_Aにより整形された電圧パルスの数を計数するカウンタである。計数回路CNT_Aは、タイミング発生回路20からイネーブル信号PEN_Aを受信するためのイネーブル端子EN_Aと、タイミング発生回路20からリセット信号PRESを受信するためのリセット端子RESと、を備える。例えば、イネーブル信号PEN_Aにより計数回路CNT_Aをイネーブル状態としたうえで、リセット信号PRESによりリセット状態を解除すれば、その時点から計数回路CNT_Aによる電圧パルスの計数を開始することができる。また、別のタイミングにおいて、イネーブル信号PEN_Aにより計数回路CNT_Aをディゼーブル状態とすれば、その時点までの計数値を保持することができる。すなわち、タイミング発生回路20は、撮像装置100の各画素12に対し、撮影のための蓄積期間の開始のタイミングと終了のタイミングとを与える。所定の計数期間の間に計数回路CNT_Aが計数した計数値は、受光量に応じて生じる電圧パルスの数に比例するため、AD変換して得られた値と等価である。
【0023】
なお、ここでは説明を省略するが、フォトダイオードPD_B、抵抗R_B、インバータ回路INV_B及び計数回路CNT_Bの動作は、フォトダイオードPD_A、抵抗R_A、インバータ回路INV_A及び計数回路CNT_Aの動作と同じである。
【0024】
所定の蓄積期間が経過した後、各画素12の計数回路CNT_A,CNT_Bが計数した計数値を、出力部50を通じて撮像装置100の外部に出力する。垂直走査回路30は、タイミング発生回路20からの制御信号に応じた所定のタイミングで、指定された行の制御線に行選択信号を出力する。選択された行に属する画素12は、各々の画素12に対応する列の垂直信号線VLに、計数回路CNT_A,CNT_Bの計数値を出力する。水平走査回路40は、選択された行に属する画素12の計数値が出力されている垂直信号線VLを第0列から第7列まで順に選択し、選択した垂直信号線VLの計数値を水平信号線HLに順に出力する。出力部50は、水平信号線HLに出力された計数値をLVDS(LowVoltageDifferentialSignal)などの所定のシリアル伝送フォーマットに変換し、出力信号OUTとして出力する。この動作を第0行から第3行まで繰り返し行うことで、総ての画素12の計数回路CNT_A,CNT_Bの計数値を出力することができる。
【0025】
このように、本実施形態による撮像装置の各々の画素12は、フォトダイオードPD_Aに入射した光子の数に応じた計数値を示す信号と、フォトダイオードPD_Bに入射した光子の数に応じた計数値を示す信号と、を出力する。1つの画素12から2つの信号を得る場合、1つの画素12の一方の信号の読み出しと他方の信号の読み出しとを別々に行うようにしてもよい。この場合、例えば2水平同期期間の間隔で行を順次選択するように構成すればよい。
【0026】
1つの画素12のフォトダイオードPD_Aに入射した光子の数に応じた計数値を示す信号と、フォトダイオードPD_Bに入射した光子の数に応じた計数値を示す信号とは、位相差検出用の信号として利用することができる。この場合、撮影光学系の異なる瞳領域を通過した光がフォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Bとに入射するように、フォトダイオードPD_A,PD_Bを共通のマイクロレンズの下に配置すればよい。フォトダイオードPD_Aに入射した光子の数に応じた計数値を示す信号とフォトダイオードPD_Bに入射した光子の数に応じた計数値を示す信号とを加算した信号は、撮像用の信号として利用することができる。これら信号の加算は、図示しない画像処理部において行うことができる。
【0027】
本実施形態による撮像装置100には、裏面照射構造が好適に用いられる。その場合、計数回路などを設けた別の基板を、フォトダイオードを設けた基板の光入射面とは反対の面側に積層する。イネーブル信号PEN_A,PEN_Bなどの制御信号は、例えば、当該別の基板に設けた貫通電極(TSV:ThroughSiliconVia)を介して光入射面とは反対側から供給することができる。
【0028】
次に、本実施形態による撮像装置100のフォトダイオードPD_A,PD_Bの構造について、
図3乃至
図7を用いて更に詳細に説明する。
図3は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
図3には、1つの画素12の2つのフォトダイオードPD_A及びフォトダイオードPD_Bを示している。
図4乃至
図6は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
図4は、
図3のB-B′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図5は、
図3のC-C′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図6は、
図3のD-D′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。なお、
図3は、
図4、
図5及び
図6のA-A′線に沿った断面図である。
図7は、画素の光入射角度特性を示す図である。
【0029】
図3に示すように、画素12のフォトダイオードPD_A及びフォトダイオードPD_Bは、第1面102とその反対側の第2面103とを有する半導体基板101に設けられる。半導体基板101の第1面102側の表面部には、フォトダイオードPD_Aのカソードを構成する高濃度(N+)のN型半導体領域104Aが設けられている。また、半導体基板101の第1面102側の表面部には、N型半導体領域104AからX方向に離間して、フォトダイオードPD_Bのカソードを構成する高濃度(N+)のN型半導体領域104Bが設けられている。また、第1面102側の表面部には、N型半導体領域104Aの側面を囲うように配された低濃度(N-)のN型半導体領域105Aと、N型半導体領域104Bの側面を囲うように配された低濃度(N-)のN型半導体領域105Bと、が設けられている。N型半導体領域105A,105Bは、半導体基板101の第1面102からN型半導体領域104A,104Bの底部よりも深い位置に渡って設けられている。
【0030】
また、半導体基板101の第1面102側の表面部には、
図3及び
図4に示すように、N型半導体領域105A,105Bの側面を囲うように、フォトダイオードPD_A,PD_Bのアノードを構成するP型半導体領域106が設けられている。P型半導体領域106は、N型半導体領域104A,105AとN型半導体領域104B,105Bとの間に設けられており、これらを電気的に分離する機能を備えている。具体的には、P型半導体領域106は、N型半導体領域104AをカソードとするフォトダイオードPD_Aがガイガーモードで動作する際の電位変化がN型半導体領域104Bに伝わるのを防止する機能を備える。また、P型半導体領域106は、N型半導体領域104BをカソードとするフォトダイオードPD_Bがガイガーモードで動作する際の電位変化がN型半導体領域104Aに伝わるのを防止する機能を備える。この目的のもと、P型半導体領域106は、少なくともN型半導体領域105A,105Bよりも半導体基板101の深くに渡って設けられている。
【0031】
P型半導体領域106は、
図3乃至
図5に示すように、平面視においてN型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとが対向している領域においては、N型半導体領域105A,105Bの側面から底部に渡って延在している。以下の説明の便宜上、N型半導体領域105A,105Bの底部に沿って延在する部分のP型半導体領域106を、P型半導体領域106aと呼ぶことがある。
【0032】
P型半導体領域106aとN型半導体領域104A,104Bとは、
図3に示すように、N型半導体領域104A,104BとN型半導体領域105A,105Bとの深さの差に応じた所定の間隔で離間している。また、P型半導体領域106aは、
図4及び
図5に示すように、平面視において、N型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとの間の領域の全体に渡って設けられている。言い換えると、P型半導体領域106aは、平面視においてN型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとの間に途切れなく延在している。N型半導体領域105A,105Bとの関係から言うと、P型半導体領域106aは、N型半導体領域105A,105Bの底部のうち、N型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとの間の領域を覆うように設けられている。
【0033】
図示しない隣接画素との間の境界部に位置するP型半導体領域106は、
図3乃至
図6に示すように、N型半導体領域105A,105Bの側面に沿って半導体基板101の第2面103側まで達し、第2面103の表面部に延在している。P型半導体領域106は、隣接画素を分離するための分離部として利用することができる。
【0034】
N型半導体領域105A,105Bは、P型半導体領域106とN型半導体領域104A,104Bの各々との間に設けられており、ガードリングとしての機能を備える。すなわち、N型半導体領域105A,105Bは、N型半導体領域104A,104Bよりも不純物濃度の低い半導体領域で構成され、P型半導体領域106とN型半導体領域104A,104Bとの間の電界を緩和してエッジブレークダウンを防止する。
【0035】
半導体基板101の深部には、
図3及び
図6に示すように、N型半導体領域104A,104Bに電気的に接続されたN型半導体領域107が設けられている。N型半導体領域107は、第2面103側及び側面部においてP型半導体領域106に接し、P型半導体領域106との間に接合面を形成する。また、N型半導体領域107は、第1面102側においてP型半導体領域106aに接し、P型半導体領域106aとの間に接合面を形成する。N型半導体領域107は、フォトダイオードPD_A及びフォトダイオードPD_Bの受光領域の一部として機能する。N型半導体領域107は、典型的には、N型半導体領域104A,104B,105A,105Bよりも不純物濃度の低い半導体領域(N--)により構成される。N型半導体領域107が設けられた領域は、撮像装置の駆動時には空乏化する領域であり、必ずしもN型半導体領域で構成されている必要はなく、低濃度のP型半導体領域により構成されていてもよい。
【0036】
また、半導体基板101の第2面103には、フォトダイオードPD_A及びフォトダイオードPD_Bに、図示しない撮影光学系により結像された光を集光するためのマイクロレンズ120が設けられている。1つの画素12は、2つのフォトダイオードPD_A,PD_Bに対して1つのマイクロレンズ120を備えており、撮像光学系の異なる瞳領域を通過した光がフォトダイオードPD_A及びフォトダイオードPD_Bに入射するように構成されている。これにより、所定の方向に視差をもった対の画像を取得することが可能となる。
【0037】
マイクロレンズ120の光軸は、画素12の平面視における受光部の中心に概ね一致する。フォトダイオードPD_Aを構成するN型半導体領域104AとフォトダイオードPD_Bを構成するN型半導体領域104Bとは、平面視における画素12の受光部の中心を挟んで隣り合うように配置されていることが望ましい。
【0038】
1つの画素12を構成するこれらフォトダイオードPD_A,PD_B及びマイクロレンズ120は、半導体基板101に2次元マトリクス状に配される。このとき、
図3において側面部に位置するP型半導体領域106は、前述のように、隣接する画素12間を分離するための分離部として機能する。
【0039】
なお、
図3乃至
図6に示す例では、隣接する画素12間をP型半導体領域106によって分離する観点から、P型半導体領域106を、N型半導体領域105A,105Bの側面に沿って半導体基板101の第2面103側まで延在している。しかしながら、P型半導体領域106が画素12間を規定することは、本発明に必須の構成ではない。
【0040】
フォトダイオードPD_A,PD_Bに入射する光はマイクロレンズ120により集光されるため、一の画素12のフォトダイオードPD_A,PD_Bに、当該一の画素12に隣接する他の画素に入射した光が漏れ込む確率は極めて小さくなっている。また、本実施形態の撮像装置100では、後述するようにN型半導体領域104A,105A間における検出効率が高くなっているため、ガイガーモード動作を経た画素12間の混色も相対的に非常に小さくなっている。したがって、P型半導体領域106は、必ずしも画素12間に設ける必要はない。
【0041】
ただし、例えばベイヤー型カラーフィルタ配列など、隣接画素の分光特性が異なるような撮像装置においては、わずかな画素間の混色でも画質劣化に結び付く場合が多いので、P型半導体領域106により画素12間を分離するように構成するのが好適である。この場合において、カラーフィルタは、半導体基板101とマイクロレンズ120との間に配置することができる。
【0042】
P型半導体領域106には、半導体基板101の第1面102側に配される図示しないコンタクト電極を介して、大きな負電圧(例えば-20V)が印加される。N型半導体領域104Aには、クエンチング回路として機能する抵抗R_Aや半導体基板101の第1面102側に配される図示しないコンタクト電極を介して、正電圧(電圧VDDA、例えば3V)が印加される。また、N型半導体領域104Bには、クエンチング回路として機能する抵抗R_Bや半導体基板101の第1面102側に配される図示しないコンタクト電極を介して、正電圧(電圧VDDB、例えば3V)が印加される。これにより、P型半導体領域106,106aとN型半導体領域107との間のpn接合の空乏化領域が広がり、この空乏化領域に入射した光子により励起されて電子正孔対が生成される。
【0043】
このように生成されたキャリアのうち正孔は、電界ドリフトによりP型半導体領域106へと収集され、撮像装置100の外部へと排出される。一方、生成されたキャリアのうち電子は、電界ドリフトによりN型半導体領域107内を拡散しN型半導体領域104A又はN型半導体領域104Bへと収集される。この過程で、電子はP型半導体領域106aとN型半導体領域104A,104Bとの間の距離が短い高電界領域108においてアバランシェ増倍を引き起こし、これにより生じた多数の電子がN型半導体領域104A又はN型半導体領域104Bに収集される。したがって、高電界領域108は、アバランシェ増倍領域とも呼ぶことができる。
【0044】
P型半導体領域106aは、前述のように、N型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとの間に途切れなく延在し、N型半導体領域107との接合面を持つ。これにより、空乏化領域で発生した電子がN型半導体領域104A,104B方向にドリフトするのを促進し、電子が再結合によって消滅する前に高電界領域108においてアバランシェ増倍を起こすことができる。
【0045】
つまり、N型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとの間の中間の領域に垂直に入射した光子により生じた電子は、50%の確率でN型半導体領域104AとP型半導体領域106との間の高電界領域108でアバランシェ増倍を引き起こす。或いは、この電子は、残り50%の確率でN型半導体領域104BとP型半導体領域106との間の高電界領域108でアバランシェ増倍を引き起こす。これにより、光子の検出効率を大幅に向上することができる。
【0046】
この結果、本実施形態による撮像装置においては、例えば
図7(a)に示すような光入射角度特性を得ることができる。
図7中、点線は光入射角度(横軸)に対する計数回路CNT_Aの計数値を示し、一点鎖線は光入射角度(横軸)に対する計数回路CNT_Bの計数値を示し、実線はこれらの合計を示している。出力の値には、受光効率に加えて前述の検出効率が影響する。また、光入射角度0°が垂直入射した光子に対応する。
【0047】
図7(a)に実線で示すように、光入射角度特性は、入射角度が0°をピークとし、その付近に変曲点を持たない形状となる。そのため、点光源のボケ形状もその中心輝度が最も高い真円となる。これは、
図7(a)の光入射角度特性を点拡がり関数(PSF:PointSpreadFunction)として伝達されることに起因する現象であり、点光源以外の被写体においても、写真表現で一般に好ましいとされる輝度の緩やかなボケ味で再現される。
【0048】
また、中心から少しでもN型半導体領域104A及びN型半導体領域104Bのうちのいずれかに近い受光領域に入射した光子により生じた電子は、光子が入射した領域に近い側の高電界領域108においてアバランシェ増倍を引き起こす。これにより、フォトダイオードPD_Aにより検出した光子に基づく信号と、フォトダイオードPD_Bにより検出した光子に基づく信号との分離特性を向上することができる。これは、
図7中に点線及び一点鎖線で示すように、位相差検出に用いる瞳分離特性に現れる。
【0049】
特許文献2には、1つの画素の光電変換部を複数に分割する場合において、光電変換部を構成する第1導電型の第1半導体領域と第2導電型の第2半導体領域との間に印加される逆バイアス電圧により第1半導体領域を空乏化するための条件が記載されている。そして、分割された複数の第1半導体領域が完全空乏化された際にこれら空乏化領域が互いに接することで、分割された光電変換部の信号を加算して出力する撮像時に好適な光入射角度特性が得られることが示されている。しかしながら、第1半導体領域と第2半導体領域との間にクエンチング回路を介して降伏電圧以上の逆バイアス電圧を印加してSPADとしてガイガーモード動作をさせる場合、光電変換部を分割しない場合と同様のボケ味を得ることができなかった。
【0050】
これは、ガイガーモード動作で感度を得るには、光電変換部の受光率だけでなく光子を光電変換した1つの電子をアバランシェ増幅できる確率、すなわち検出効率を1に近づける必要があるからである。特に、複数の光電変換部の間の領域で生じた電子には高電界がかかりにくく、検出効率が下がってしまう。そして、これが原因して光入射角度特性のピーク付近に変曲点が生じると、例えば撮影光学系のピントからずれた点光源の中心輝度が低下してリング形状として写るなど、光電変換部を分割しない場合と同様のボケ身が得られなくなる。
【0051】
図7(b)には比較例として、画素12の中心に垂直入射した光子の検出効率が100%を下回った場合を想定した光入射角度特性を示している。この特性は入射角度0°付近において出力が低下する変曲点を有する形状であるため、この特性をPSFとして伝達される点光源のボケ形状も、その中心輝度が低下したリング形状として再現されてしまう。これは、写真表現で一般に好ましくない。
【0052】
このように、本実施形態による撮像装置100においては、フォトダイオードPD_Aの出力に基づく信号と、フォトダイオードPD_Bの出力に基づく信号とにより、位相差検出方式の焦点検出が可能である。また、フォトダイオードPD_Aの出力に基づく信号とフォトダイオードPD_Bの出力に基づく信号との加算信号を用いて画像を生成する場合にあっては、瞳分割を行わない場合と同様のボケ味を実現することができる。
【0053】
図3乃至
図6に示したレイアウトは、
図1のX方向、すなわち水平方向(行方向)に沿って瞳分割を行う場合の例であるが、瞳分割を行う方向は、必ずしも水平方向である必要はない。
図8乃至
図11を参照して、これまでに説明した水平方向とは異なる方向に瞳分割を行う場合の例を説明する。
図8乃至
図11は、本実施形態の変形例による撮像装置の構造を示す平面図である。
【0054】
図8は、
図1のY方向、すなわち垂直方向(列方向)に沿って瞳分割を行う場合のレイアウトの一例である。
図8(a)は、
図3のB-B′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図8(b)は、
図3のC-C′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。なお、
図8(a)及び
図8(b)におけるA-A′線断面図は、
図3と同等である。また、
図3のD-D′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6と同等である。
【0055】
図9は、右下がりの斜め方向に沿って瞳分割を行う場合のレイアウトの一例である。
図9(a)は、
図3のB-B´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図9(b)は、
図3のC-C´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。なお、
図9(a)及び
図9(b)におけるA-A´線断面図は、
図3と同等である。また、
図3のD-D´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6と同等である。
【0056】
図10は、左下がりの斜め方向に沿って瞳分割を行う場合のレイアウトの一例である。
図10(a)は、
図3のB-B´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図10(b)は、
図3のC-C´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。なお、
図10(a)及び
図10(b)におけるA-A´線断面図は、
図3と同等である。また、
図3のD-D´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6と同等である。
【0057】
瞳分割方向が異なる画素12を、
図1に示した画素配列内に配置することで、複数の異なる方向の瞳分割を実現し、焦点検出に利用することができる。
図11は、一例として右下がりの斜め方向に瞳分割を行った画素12(
図9)と、左下がりの斜め方向に瞳分割を行った画素12(
図10)とを用いて画素配置を行った一例である。ここでは瞳分割方向がわかるように、
図3のC-C′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図を用いて画素配列を示している。
図11では、ベイヤー配列の画素配列において、右下がりの斜め方向に瞳分割を行った画素12と、左下がりの斜め方向に瞳分割を行った画素12とを、2行ずつ交互に配置している。
図11の画素12に示したR,G,Bの記号は、それぞれ赤色、緑色、青色のカラーフィルタが設けられていることを示している。このように配置することで、レンズ枠による開口ケラレが発生する画面周辺の領域において、基線長を長く取れる瞳分割方向を選択することができ、高精度な焦点検出を実現することができる。
【0058】
また、画素配置の他の一例として、
図5から
図7に示した水平方向に瞳分割を行った画素12の配列の一部の領域に、
図8に示した垂直方向に瞳分割を行った画素12を配置する構成が挙げられる。このようにすることで、縦線と横線の両方の被写体の焦点検出を実現することができる。
【0059】
なお、瞳分割方向は本実施形態に示した4つの分割方向に限られるものではない。また、複数の瞳分割方向の画素を用いて画素配列を構成する方法も本実施形態で説明したものに限られるものではない。
【0060】
次に、本実施形態による撮像装置の駆動方法について、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12及び
図13は、本実施形態による撮像装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
【0061】
本実施形態による撮像装置は、特に限定されるものではないが、例えば、
図12に示す第1の駆動モードや
図13に示す第2の駆動モードにより駆動することができる。
【0062】
図12は、位相差検出信号を得る第1の駆動モードを示すタイミングチャートの一例である。各画素12は、電圧VDDA及び電圧VDDBとしてともに正電圧(例えば3V)を与えられており、高電界領域108でアバランシェ増倍を起こしガイガーモード動作することができる状態になっている。
【0063】
時刻t1200において、タイミング発生回路20は、リセット信号PRESをローレベル(Lo)として計数回路CNT_A及び計数回路CNT_Bのリセット状態を解除する。このとき、計数回路CNT_Aは、イネーブル信号PEN_Aがハイレベル(Hi)であれば、フォトダイオードPD_Aで生じるガイガーモード動作に伴う電圧パルスの数をカウントする。同様に、計数回路CNT_Bは、イネーブル信号PEN_BがHiであれば、フォトダイオードPD_Bで生じるガイガーモード動作に伴う電圧パルスの数をカウントする。計数回路CNT_A,CNT_Bは、時刻t1201においてタイミング発生回路20がイネーブル信号PEN_A,PEN_BをLoにするまで(前述の計数期間)、電圧パルスの数をカウントする。
【0064】
次いで、時刻t1201以降において、各画素12の計数回路CNT_A,CNT_Bがカウントした計数値の読み出しを行う。まず、時刻t1201において垂直走査信号がHiとなり、第0行が選択される。続く時刻t1202において垂直走査信号が再度極性変化して第1行が選択されるまでの間に、水平走査回路40は、水平走査信号を各列に順次供給し、第0行の第0列から第7列までの8つの画素12の計数値を、水平信号線HLを介して順次読み出す。
図13では、各画素12の計数回路CNT_A,CNT_Bに対応する16の計数値を読み出すために、画素12の数の2倍に相当する16回、水平走査信号の極性変化を繰り返している。次いで、時刻t1202以降において、上述の第0行の読み出しと同様にして、第1行から第3行目までの読み出しを同様に行う。
【0065】
位相差検出信号として読み出した計数回路CNT_Aの計数値及び計数回路CNT_Bの計数値を図示しない画像処理部で加算すれば、撮像信号を得ることができる。ただし、本実施形態の撮像装置とは別にオートフォーカス専用のセンサーを備える場合など、撮像装置100からは撮像信号のみを読み出せばよい場合には、例えば以下に記すような別の駆動方法を実行し得る。
【0066】
図13は、撮像信号のみを得る第2の駆動モードを示すタイミングチャートの一例である。
図12のタイミングチャートとの相違は、電圧VDDBを浮遊状態としてフォトダイオードPD_Bを非ガイガーモード動作とし、対応する計数回路CNT_Bのイネーブル信号PEN_BをLoとしている点である。これによりフォトダイオードPD_Aのみをガイガーモード動作として、撮像信号をアバランシェ増倍の段階から片方に集約して計数回路CNT_Aで計数する。
【0067】
第2の駆動モードの時刻t1300から時刻t1301の期間に相当する計数期間が、仮に第1の駆動モードの時刻t1200から時刻t1201と同一の長さであったとしても、読み出す計数値の数は第1の駆動モードの場合の半分で済む。したがって、時刻t1301以降における各行の読み出し期間は、第1の駆動モードの場合の半分の長さとなる。
【0068】
電圧VDDBを浮遊状態としたときのフォトダイオードPD_Bは、N型半導体領域104Bが非リセット状態となっている。したがって、フォトダイオードPD_Bは、前のフレームで発生した電子や暗電流による電子で満たされた平衡状態となっており、受光領域で発生した電子を新たにドリフトで移動させることができなくなっている。そのため、受光領域で発生した新たな電子は総てフォトダイオードPD_AのN型半導体領域104Aにドリフトで移動してアバランシェ増倍に寄与するので、撮像信号を集約することができる。
【0069】
なお、行ごとに電圧VDDBを設定するように構成すれば、電圧VDDBを、特定の行では3Vとし、その他の行では浮遊状態とすることで、行を限定して位相差検出を行うこともできる。例えば、位相差検出は第1行や第2行のように主要被写体が多い画像中央部で行い、それ以外の領域では撮像信号のみを得ることで、読み出し期間の短縮と位相差検出信号の取得とを両立することができる。或いは、位相差検出を特定の行の画素に限定するのと同様にして、位相差検出を特定の列の画素に限定するようにしてもよい。
【0070】
また、第2の駆動モードでは、フォトダイオードPD_Aのアノードに印加する電圧と電圧VDDAとの間の電位差を、第1の駆動モードにおける設定値よりも高い値に設定することが望ましい。これは、受光領域で発生した電子をドリフトでN型半導体領域104Aに移動させる際、受光領域のより広い範囲から電子を収集することができるからである。これにより、垂直入射光子に対する検出効率のロスをなくし光電変換部を分割しない場合と同様のボケ味を得ることができる。
【0071】
このように、本実施形態によれば、SPADを用いた撮像装置において、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を実現することができる。
【0072】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による撮像装置について、
図14及び
図15を用いて説明する。第1実施形態による撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0073】
図14は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
図14には、1つの画素12のフォトダイオードPD_A及びフォトダイオードPD_Bの構造を示している。
図15は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
図15(a)は、
図14のB-B´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図15(b)は、
図14のC-C´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図14のD-D´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6に示した第1実施形態による撮像装置と同様である。なお、
図14は、
図15のA-A´線に沿った断面図である。
【0074】
本実施形態による撮像装置は、
図14に示すように、P型半導体領域106aの平面的なレイアウトが異なるほかは、第1実施形態による撮像装置と同様である。すなわち、本実施形態による撮像装置では、P型半導体領域106aが、N型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとの間の領域のみならず、N型半導体領域105A,105Bの底部の全体を覆うように設けられている。P型半導体領域106aが設けられた深さにおける平面図で見ると、
図15(b)に示すように、P型半導体領域106aは、平面視においてN型半導体領域104A,104Bと重なる領域を除いて一面に設けられている。
【0075】
P型半導体領域106aをこのように配置することで、P型半導体領域106とN型半導体領域104A,104Bとの間の高電界領域108は、平面視におけるN型半導体領域104A,104Bの外周形状に沿った環状の領域に形成される。これにより、マイクロレンズ120からの距離が近くN型半導体領域104A,104Bから遠い受光領域で光電変換された電子をも確実に高電界領域108に導き、アバランシェ増倍に寄与させることができる。これにより、裏面照射型構造の撮像装置において短波長光の撮像を行うときの感度低下を抑制するとともに、光電変換部の瞳分割を行わない場合と同様のボケ味を得ることができる。
【0076】
なお、本実施形態においては、平面視におけるN型半導体領域104A,104Bの形状を、
図15(a)に示すように円形形状としている。これは、P型半導体領域106とN型半導体領域104A,104Bとの間に加わる電界を均一化し局所的な電界集中によって生じるエッジブレークダウンを抑制するうえで円形形状が最も好ましいからである。実際の使用態様において局所的な電界集中の生じる虞がないような場合などは、平面視におけるN型半導体領域104A,104Bの形状は、必ずしも円形である必要はない。また、P型半導体領域106aは、必ずしも平面視におけるN型半導体領域104A,104Bの全周に渡って設ける必要はない。その一態様が、第1実施形態であるとも言える。
【0077】
このように、本実施形態によれば、SPADを用いた撮像装置において、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を実現することができる。
【0078】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による撮像装置について、
図16及び
図17を用いて説明する。第1及び第2実施形態による撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0079】
図16は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
図16には、1つの画素12のフォトダイオードPD_A及びフォトダイオードPD_Bの構造を示している。
図17は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
図17は、
図16のD-D′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図16のB-B′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図及びC-C′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図15に示した第2実施形態による撮像装置と同様である。なお、
図16は、
図17のA-A′線に沿った断面図である。
【0080】
本実施形態による撮像装置は、
図16に示すように、第2実施形態の撮像装置におけるN型半導体領域107が、N型半導体領域104Aに接続されたN型半導体領域107Aと、N型半導体領域104Bに接続されたN型半導体領域107Bとに分けられている。N型半導体領域107AとN型半導体領域107Bとは、これらの間に配されたP型半導体領域106よりも不純物濃度が低い(P-)のP型半導体領域110によって電気的に分離されている。P型半導体領域110は、
図16及び
図17に示すように、半導体基板101の第1面102側においてP型半導体領域106aに接続され、半導体基板101の第2面側及び側面側においてP型半導体領域106に接続されている。その他の点は、第2実施形態による撮像装置と同様である。
【0081】
P型半導体領域110は、P型半導体領域106よりも低濃度であり、N型半導体領域107との間にアバランシェ増倍を起こすほどの高電界を発生するものではない。しかしながら、P型半導体領域110があることにより、マイクロレンズ120からの距離が近くN型半導体領域104A,104Bから遠い受光領域で光電変換された電子も、より確実にN型半導体領域104A,104Bに向けてドリフトさせることができる。これにより、裏面照射型構造の撮像装置において短波長光の撮像を行うときに、光電変換部の瞳分割を行わない場合と同様のボケ味を得ることができる。
【0082】
このように、本実施形態によれば、SPADを用いた撮像装置において、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を実現することができる。
【0083】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による撮像装置について、
図18乃至
図22を用いて説明する。第1乃至第3実施形態による撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0084】
本実施形態では、1つの画素12が、2方向に瞳分割した4つのフォトダイオードを含む撮像装置及びその駆動方法を説明する。
【0085】
はじめに、本実施形態による撮像装置の構造について、
図18を用いて説明する。
図18は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
図18(a)は、
図14のB-B´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図18(b)は、
図14のC-C´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図14のD-D´線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6に示した第1実施形態による撮像装置と同様である。なお、本実施形態による撮像装置における
図18のA-A´線断面図は、
図14に示した第2実施形態による撮像装置と同様であるため、ここでは図示を省略する。
【0086】
本実施形態による撮像装置は、
図18に示すように、第2実施形態による撮像装置と同様、N型半導体領域104AをカソードとするフォトダイオードPD_Aと、N型半導体領域104BをカソードとするフォトダイオードPD_Bと、を含む。また、本実施形態による撮像装置は更に、N型半導体領域104CをカソードとするフォトダイオードPD_Cと、N型半導体領域104DをカソードとするフォトダイオードPD_Dと、を含む。フォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Bとは、X方向に隣接して配されている。フォトダイオードPD_CとフォトダイオードPD_Dとは、X方向に隣接して配されている。また、フォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Cとは、Y方向に隣接して配されている。また、フォトダイオードPD_BとフォトダイオードPD_Dとは、Y方向に隣接して配されている。隣接するフォトダイオード間の構造は、第2実施形態におけるフォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Bとの間の構造と同じである。
【0087】
フォトダイオードPD_Aを構成するN型半導体領域104AとフォトダイオードPD_Dを構成するN型半導体領域104Dとは、平面視において、受光部の中心を挟んで第1の方向に隣り合っている。また、フォトダイオードPD_Bを構成するN型半導体領域104BとフォトダイオードPD_Cを構成するN型半導体領域104Cとは、平面視において、受光部の中心を挟んで第1の方向と交差する第2の方向に隣り合っている。
【0088】
本実施形態による撮像装置では、以下に説明するように、信号を出力するフォトダイオードやその組み合わせを適宜選択することで、瞳分割方向を切り替えることが可能である。
【0089】
図19乃至
図22は、本実施形態による撮像装置の画素の構成例及び駆動例を示す回路図である。
図19乃至
図21は、回路構成は同じであるが、スイッチを切り替える態様が異なっている。
図22は、
図19乃至
図21とは別の回路構成である。
【0090】
フォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_Dのアノードには、図示しない電圧供給部から負電圧(例えば-20V)が供給される。フォトダイオードPD_Aのカソードには、抵抗R_Aの一方の端子が接続されている。抵抗R_Aの他方の端子には、スイッチSW_VDDAを介して、図示しない電圧供給部から正電圧(VDDA:例えば3V)が供給される。同様に、フォトダイオードPD_Bのカソードには、抵抗R_Bの一方の端子が接続されている。抵抗R_Bの他方の端子には、スイッチSW_VDDBを介して、図示しない電圧供給部から正電圧(VDDB:例えば3V)が供給される。また、フォトダイオードPD_Cのカソードには、抵抗R_Cの一方の端子が接続されている。抵抗R_Cの他方の端子には、スイッチSW_VDDCを介して、図示しない電圧供給部から正電圧(VDDC:例えば3V)が供給される。また、フォトダイオードPD_Dのカソードには、抵抗R_Dの一方の端子が接続されている。抵抗R_Dの他方の端子には、スイッチSW_VDDDを介して、図示しない電圧供給部から正電圧(VDDD:例えば3V)が供給される。
【0091】
フォトダイオードPD_Aと抵抗R_Aとの間の接続ノードは、スイッチSW1_Aを介してインバータ回路INV_1の入力端子に接続され、スイッチSW2_Aを介してインバータ回路INV_2の入力端子に接続されている。同様に、フォトダイオードPD_Bと抵抗R_Bとの間の接続ノードは、スイッチSW1_Bを介してインバータ回路INV_1の入力端子に接続され、スイッチSW2_Bを介してインバータ回路INV_2の入力端子に接続されている。また、フォトダイオードPD_Cと抵抗R_Cとの間の接続ノードは、スイッチSW1_Cを介してインバータ回路INV_1の入力端子に接続され、スイッチSW2_Cを介してインバータ回路INV_2の入力端子に接続されている。また、フォトダイオードPD_Dと抵抗R_Dとの間の接続ノードは、スイッチSW1_Dを介してインバータ回路INV_1の入力端子に接続され、スイッチSW2_Dを介してインバータ回路INV_2の入力端子に接続されている。
【0092】
インバータ回路INV_1の出力端子には、計数回路CNT_1が接続されている。計数回路CNT_1には、タイミング発生回路20から、イネーブル信号PEN_1及びリセット信号PRESが供給される。計数回路CNT_1の出力が、画素12の1つの出力となる。同様に、インバータ回路INV_2の出力端子には、計数回路CNT_2が接続されている。計数回路CNT_2には、タイミング発生回路20から、イネーブル信号PEN_2及びリセット信号PRESが供給される。計数回路CNT_2の出力が、画素12のもう1つの出力となる。
【0093】
スイッチSW_VDDA,SW_VDDB、SW_VDDC,SW_VDDDは、ガイガーモード動作するフォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_Dを選択するスイッチである。スイッチSW1_A,SW1_B,SW1_C,SW1_Dは、計数回路CNT_1で計数を行うフォトダイオードを選択するスイッチである。スイッチSW2_A,SW2_B,SW2_C,SW2_Dは、計数回路CNT_2で計数を行うフォトダイオードを選択するスイッチである。これらスイッチの動作やタイミングは、タイミング発生回路20により制御される。
【0094】
図19には、4つのフォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_Dのうち、2つのフォトダイオードPD_A,PD_Dを選択し、瞳分割方向を
図9と同様の右下がりの斜め方向に設定する場合の駆動モードを示している。この駆動モードでは、
図19に示すように、スイッチSW_VDDA,SW_VDDD,SW1_A,SW2_Dをオン、その他のスイッチをオフに設定する。
【0095】
図19に示す駆動モードでは、スイッチSW_VDDAとスイッチSW_VDDDとをオンにすることにより、フォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Dとがガイガーモード動作するように設定している。このとき、スイッチSW_VDDBとスイッチSW_VDDCは、オフにすることに加え、抵抗R_B,R_Cの端子電圧を-20Vにクリッピングするようにしてもよい。計数回路CNT_1は、スイッチSW1_Aをオンにすることにより、フォトダイオードPD_Aから得られた電圧パルスをカウントする。また、計数回路CNT_2は、スイッチSW2_Dをオンにすることにより、フォトダイオードPD_Dから得られた電圧パルスをカウントする。このように各スイッチを切り替えることで、瞳分割方向を右下がりの斜め方向に設定することができる。
【0096】
図20には、カウントを行うフォトダイオードPD_A,PD_Dだけでなく、カウントを行わないフォトダイオードPD_B,PD_Cについてもガイガーモード動作させる駆動モードを示している。この駆動モードでは、スイッチSW_VDDB,SW_VDDCを更にオンに設定することで、カウントを行わないフォトダイオードPD_B,PD_Cについてもガイガーモード動作させている。この場合、フォトダイオードPD_B,PD_Cの受光領域で発生する電子は、フォトダイオードPD_B,PD_Cでアバランジェ増倍されるため、電子がドリフトし、PD_AとPD_Dでアバランシェ増倍されることはなくなる。そのため、スイッチSW_VDDB,SW_VDDCをオフに設定する場合と比べて、フォトダイオードPD_A,PD_Dの分離特性が改善し、基線長を長く取ることができる。
【0097】
図21には、1つの計数回路で複数のフォトダイオードからの電圧パルスをカウントする駆動モードを示している。
図21では、スイッチSW_VDDA,SW_VDDB,SW_VDDC,SW_VDDD,SW1_A,SW2_B,SW1_C,SW2_Dをオン、その他のスイッチをオフに設定している。この場合、フォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Cから出力される電圧パルスが計数回路CNT_1でカウントされ、フォトダイオードPD_BとフォトダイオードPD_Dから出力される電圧パルスが計数回路CNT_2でカウントされる。これにより、瞳分割方向を、X方向に設定することができる。
【0098】
図22は、フォトダイオード1つに対して1つの計数回路を設けた構成である。すなわち、フォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_Dのアノードには、図示しない電圧供給部から負電圧(例えば-20V)が供給される。フォトダイオードPD_Aのカソードには、抵抗R_Aの一方の端子が接続されている。抵抗R_Aの他方の端子には、スイッチSW_VDDAを介して、図示しない電圧供給部から正電圧(VDDA:例えば3V)が供給される。同様に、フォトダイオードPD_Bのカソードには、抵抗R_Bの一方の端子が接続されている。抵抗R_Bの他方の端子には、スイッチSW_VDDBを介して、図示しない電圧供給部から正電圧(VDDB:例えば3V)が供給される。また、フォトダイオードPD_Cのカソードには、抵抗R_Cの一方の端子が接続されている。抵抗R_Cの他方の端子には、スイッチSW_VDDCを介して、図示しない電圧供給部から正電圧(VDDC:例えば3V)が供給される。また、フォトダイオードPD_Dのカソー
ドには、抵抗R_Dの一方の端子が接続されている。抵抗R_Dの他方の端子には、スイッチSW_VDDDを介して、図示しない電圧供給部から正電圧(VDDD:例えば3V)が供給される。
【0099】
フォトダイオードPD_Aと抵抗R_Aとの間の接続ノードは、インバータ回路INV_1の入力端子に接続されている。インバータ回路INV_1の出力端子は、計数回路CNT_1の入力端子に接続されている。計数回路CNT_1には、タイミング発生回路20から、イネーブル信号PEN_1及びリセット信号PRESが供給される。同様に、フォトダイオードPD_Bと抵抗R_Bとの間の接続ノードは、インバータ回路INV_2の入力端子に接続されている。インバータ回路INV_2の出力端子は、計数回路CNT_2の入力端子に接続されている。計数回路CNT_2には、タイミング発生回路20から、イネーブル信号PEN_2及びリセット信号PRESが供給される。また、フォトダイオードPD_Cと抵抗R_Cとの間の接続ノードは、インバータ回路INV_3の入力端子に接続されている。インバータ回路INV_3の出力端子は、計数回路CNT_3の入力端子に接続されている。計数回路CNT_3には、タイミング発生回路20から、イネーブル信号PEN_3及びリセット信号PRESが供給される。また、フォトダイオードPD_Dと抵抗R_Dとの間の接続ノードは、インバータ回路INV_4の入力端子に接続されている。インバータ回路INV_4の出力端子は、計数回路CNT_4の入力端子に接続されている。計数回路CNT_4には、タイミング発生回路20から、イネーブル信号PEN_4及びリセット信号PRESが供給される。
【0100】
図22に示す回路構成の場合、撮像装置に設けられた図示しない焦点検出用信号生成部において、各計数回路から得られた計数値をもとに、任意の方向の瞳分割を実現する焦点検出用の信号を生成することができる。
【0101】
なお、
図22の構成に加えて、計数回路選択部としてのスイッチを設け、計数回路に接続するフォトダイオードを選択する構成とし、1つの計数回路で複数のフォトダイオードからの電圧パルスをカウントするようにしてもよい。
【0102】
また、
図19から
図22の等価回路に示した計数回路の数は、必ずしも2つ或いはフォトダイオードの数と同じである必要はない。また、複数の計数回路に対して、それぞれ異なる組み合わせの複数のフォトダイオードからの電圧パルスを同時にカウントするような構成としてもよい。
【0103】
このように、本実施形態によれば、SPADを用いた撮像装置において、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を実現することができる。また、瞳分割方向を任意の方向に切り替えることができる。
【0104】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による撮像装置について、
図23及び
図24を用いて説明する。第1乃至第4実施形態による撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0105】
図23は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
図24は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
図24(a)は、
図23のB-B′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図24(b)は、
図23のC-C′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図24のD-D′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6に示した第1実施形態による撮像装置と同様である。なお、
図23は、
図24のA-A′線に沿った断面図である。
【0106】
本実施形態による撮像装置は、
図23及び
図24に示すように、フォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Bとの間にフォトダイオードPD_Eを更に有する点で、第1実施形態による撮像装置とは異なっている。
【0107】
フォトダイオードPD_Eは、カソードを構成する高濃度(N+)のN型半導体領域104Eと、ガードリングを構成する低濃度(N-)のN型半導体領域105Eと、を含む。N型半導体領域104Eは、半導体基板101の第1面102側のN型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとの間に、これらから離間して設けられている。N型半導体領域105Eは、半導体基板101の第1面102側に、N型半導体領域104Eの側面を囲うようにリング状に設けられている。N型半導体領域105Eは、半導体基板101の第1面102からN型半導体領域104Eの底部よりも深い位置に渡って設けられている。
【0108】
N型半導体領域105EとN型半導体領域105A,105Bとの間には、N型半導体領域105Eの側面を囲うようにリング状のP型半導体領域106が設けられている。N型半導体領域105A,105Bの底部に配されたP型半導体領域106aは、N型半導体領域105Eの底部にも延在している。P型半導体領域106aが設けられた深さにおける平面図で見ると、
図24(b)に示すように、P型半導体領域106aは、平面視においてN型半導体領域104A,104B,104Eと重なる領域には設けられていない。
【0109】
このように構成することにより、P型半導体領域106は、N型半導体領域104A,104Bとの最近接部において高電界領域108を形成し、入射した光子により生じた電子をアバランシェ増倍することができる。これにより、位相差検出に用いる場合の分離特性は良好となる。
【0110】
また、中心部のP型半導体領域106に囲まれてN型半導体領域104Eに接するリング状のN型半導体領域107が存在することにより、P型半導体領域106aとN型半導体領域104Eとの間に高電界領域112を形成することができる。これにより、N型半導体領域104A,104Bに与える電圧を大きく上昇することなく、垂直入射光子に対する検出効率のロスをなくし光電変換部を分割しない場合と同様のボケ味を得ることができる。
【0111】
本実施形態の撮像装置を用いる場合、撮像信号を得る第2の駆動モードにおいては、N型半導体領域104Eに与える電圧VDDEを正電圧とし、N型半導体領域104A,104Bに与える電圧VDDA,VDDBを浮遊状態とするとよい。フォトダイオードPD_Eのガイガーモード動作に伴う電圧パルス数を計数する計数回路としては、図示しないスイッチを切り替えることにより計数回路CNT_A又は計数回路CNT_Bを利用しても構わない。
【0112】
このように、本実施形態によれば、SPADを用いた撮像装置において、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を実現することができる。
【0113】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による撮像装置について、
図25乃至
図28を用いて説明する。第1乃至第5実施形態による撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0114】
本実施形態による撮像装置の構造について、
図25及び
図26を用いて説明する。
図25は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
図26は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
図26(a)は、
図25のB-B′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図26(b)は、
図25のC-C′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図25のD-D′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6に示した第1実施形態による撮像装置と同様である。なお、
図25は、
図26のA-A′線に沿った断面図である。
【0115】
本実施形態による撮像装置は、
図25及び
図26に示すように、フォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Bとの間にフォトダイオードPD_Eを更に有する点で、第2実施形態による撮像装置とは異なっている。
【0116】
フォトダイオードPD_Eは、カソードを構成する高濃度(N+)のN型半導体領域104Eと、ガードリングを構成する低濃度(N-)のN型半導体領域105Eと、を含む。N型半導体領域104Eは、半導体基板101の第1面102側のN型半導体領域104AとN型半導体領域104Bとの間に、これらから離間して配されている。N型半導体領域105Eは、半導体基板101の第1面102側に、N型半導体領域104Eの側面を囲うように設けられている。N型半導体領域105Eは、半導体基板101の第1面102からN型半導体領域104Eの底部よりも深い位置に渡って設けられている。
【0117】
N型半導体領域105EとN型半導体領域105A,105Bとの間には、P型半導体領域106が設けられている。N型半導体領域105A,105Bの底部に配されたP型半導体領域106aは、N型半導体領域105Eの底部にも延在している。P型半導体領域106aが設けられた深さにおける平面図で見ると、
図26(b)に示すように、P型半導体領域106aは、平面視においてN型半導体領域104A,104B,104Eと重なる領域を除いて一面に設けられている。
【0118】
このように構成することで、P型半導体領域106aとN型半導体領域104Eとの間には、P型半導体領域106aとN型半導体領域104A,104Bとの間に形成される高電界領域108と同様の高電界領域112が形成される。これにより、N型半導体領域104AとN型半導体領域104Bの中間の受光領域で光電変換された電子を高電界領域112でアバランシェ増倍することができる。これにより、画素12の受光領域の中心部に入射する光子の検出効率を向上することができる。
【0119】
本実施形態による撮像装置では、
図22において、フォトダイオードのそれぞれに対して計数回路を設けた構成を採用することができる。撮像を行う場合は、フォトダイオードPD_A,PD_B,PD_Eの3つから得られた計数値を用いることで、瞳分割しない場合のボケ味を実現することができる。焦点検出を行う場合は、フォトダイオードPD_A,PD_Bの2つから得られた計数値を用いることで、十分な基線長の確保による高精度な焦点検出を実現することができる。
【0120】
図27は、画素12の光入射
角度特性を示すグラフである。
図27(a)は、本実施形態による撮像装置の画素の光入射角度特性を示すグラフである。図中、点線はフォトダイオードPD_Aの光入射角度特性であり、一点鎖線はフォトダイオードPD_Bの光入射角度特性であり、二点鎖線はフォトダイオードPD_Eの光入射角度特性である。実線は、フォトダイオードPD_A,PD_B,PD_Eの和を示している。図中、縦の点線は、フォトダイオードPD_A,PD_Bの光入射角度特性の分布の重心の位置を示しており、これら点線の間隔が、基線長を示している。
図27(b)は、第1実施形態による撮像装置の画素の光入射角度特性を示すグラフである。図中、点線はフォトダイオードPD_Aの光入射角度特性であり、一点鎖線はフォトダイオードPD_Bの光入射角度特性であり、実線は、フォトダイオードPD_A,PD_Bの和を示している。図中、縦の点線は、フォトダイオードPD_A,PD_Bの光入射角度特性の分布の重心の位置を示しており、これら点線の間隔が、基線長を示している。
【0121】
図27に示すように、本実施形態による撮像装置では、フォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Bとの間にフォトダイオードPD_Eが配されているため、フォトダイオードPD_A,PD_Bの光入射角度特性における低角度側への裾引きが少ない。そのため、本実施形態による撮像装置では、第1実施形態による撮像装置と比較して、フォトダイオードPD_A,PD_Bの光入射角度特性の分布の重心の位置の差(基線長)を長くすることができる。したがって、本実施形態の撮像装置によれば、撮像時には受光領域の中心部に不感帯が生じることを防止することができ、焦点検出時には基線長を長くすることができ焦点検出精度を向上することができる。
【0122】
また、画素12の受光領域の中心部にフォトダイオードPD_Eを配置することで、垂直入射光子に対する検出効率を向上することができる。これにより、第1実施形態で説明した第2の駆動モードにおける電圧VDDA,VDDBの設定値の増加を抑制することができる。
【0123】
なお、本実施形態ではX方向に瞳分割を行う場合を示したが、瞳分割方向はX方向に限られるものではない。例えば、第1実施形態に示した
図8乃至
図10の構成において、フォトダイオードPD_AとフォトダイオードPD_Bとの間の領域にフォトダイオードPD_Eを設けるようにしてもよい。
【0124】
また、焦点検出に用いる場合の瞳領域の分割数は、
図25及び
図26に示した数(2分割)に限られるものではない。例えば、
図28に図示するように瞳領域を4分割してもよい。
【0125】
図28は、瞳領域を4分割した場合における構成例を示す平面図である。
図28(a)は、
図25のB-B′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図28(b)は、
図25のC-C′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図25は、
図28のA-A′線に沿った断面図に相当する。
図25のD-D′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6に示した第1実施形態による撮像装置と同様である。
【0126】
瞳領域を4分割する場合、フォトダイオードPD_Eは、例えば
図28に示すように、平面視において十字型の形状とすることができる。このような形状とすることにより、フォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_D間の分離特性を向上することができ、隣り合うフォトダイオード間の基線長の長さを長くすることができる。
【0127】
このように、本実施形態によれば、SPADを用いた撮像装置において、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を実現することができる。また、位相差検出の際の分離特性を向上することができ、焦点検出精度を向上することができる。
【0128】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態による撮像装置について、
図29乃至
図32を用いて説明する。第1乃至第6実施形態による撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0129】
本実施形態では、撮影光学系の開口絞りの状態に応じて十分な基線長を確保できるように瞳分割を切り替える機能を備えた撮像装置及びその駆動方法を説明する。
【0130】
図29は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す概略断面図である。
図30は、本実施形態による撮像装置の画素の構造を示す平面図である。
図30(a)は、
図29のB-B′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図30(b)は、
図29のC-C′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図である。
図29のD-D′線を含む半導体基板101の表面に平行な面における平面図は、
図6に示した第1実施形態による撮像装置と同様である。なお、
図29は、
図30のA-A′線に沿った断面図である。
【0131】
本実施形態による撮像装置は、
図29及び
図30に示すように、4つのフォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_Dを含む。これらフォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_Dは、平面視において短冊状の形状を有し、X方向に並べて配されている。隣接するフォトダイオードは、第2又は第6実施形態の場合と同様、P型半導体領域106により分離されている。また、フォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_DのN型半導体領域105A,105B,105C,105Dの底部には、P型半導体領域106aが延在している。
【0132】
図31は、撮影光学系の開口絞りの状態を変更したときのフォトダイオードに入射する光束の変化を示す模式図である。
図31(a)は開口絞り140が開放の状態であり、
図31(b)は開口絞り140を絞った状態である。
【0133】
撮影光学系の一部を構成するレンズ130及び開口絞り140を介して画素12に入射した光は、マイクロレンズ120を介して半導体基板101の第2面103側からフォトダイオードPD_A,PD_B,PD_C,PD_Dへと入射する。このとき、撮影光学系の開口絞り140の開口径に応じて、光の入射する領域が変化する。例えば、
図31(a)のように開口絞り140の開口径が開放の状態では、フォトダイオードPD_Aの領域からフォトダイオードPD_Dの領域まで光が入射している。これに対し、
図31(b)のように開口絞り140の開口径を絞った状態では、開口絞り140により光束が制限され、フォトダイオードPD_Bの領域及びフォトダイオードPD_Cの領域にしか光が入射していない。
【0134】
図32は、開口絞り140の状態を変更したときのフォトダイオードに入射する光束の変化を示す平面図である。開口絞り140が開放の条件下では、
図32に一点鎖線で示すように、フォトダイオードPD_AからフォトダイオードPD_Dまでの領域に対して光が入射する。しかし、開口絞り140を絞った条件下では、
図32に点線で示すように、開口絞り140によって光束が制限され、光が入射する領域はフォトダイオードPD_B,PD_Cのみとなる。
【0135】
そこで、本実施形態による撮像装置においては、開口絞り140の状態に応じて、駆動するフォトダイオードを選択するように構成する。例えば、開口絞り140の状態とそのときに駆動電圧(電圧VDDA,VDDB,VDDC,VDDD)を印加するN型半導体領域104A,104B,104C,104Dとの関係を示す参照テーブルを予め用意しておく。そして、図示しないシステム制御部により、開口絞り140の状態の取得と、参照テーブルの参照と、タイミング発生回路20によるフォトダイオードの切り替えとを行う。システム制御部により開口絞り140の状態に応じたフォトダイオードを適宜選択することで、最も基線長が長くなるように制御することができる。
【0136】
なお、読み出し回路の回路構成は、
図19乃至
図22で説明した構成のいずれでもよい。また、フォトダイオードの配置は短冊状に限らず、複数の領域を持つ配置であればどのようなものでもよい。また、電圧印加領域テーブルは、開口絞り140の状態に限らず、撮像光学系の光軸中心からの距離に応じて変化するレンズ枠ケラレの影響を考慮して作成するようにしてもよい。
【0137】
このように、本実施形態によれば、SPADを用いた撮像装置において、位相差検出法による焦点検出が可能であるとともに、撮像時には瞳を分割しない場合と同様のボケ味を実現することができる。また、撮像光学系の開口状態に応じて分離特性を最適化することができ、焦点検出精度を向上することができる。
【0138】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態について説明する。特許文献2に記載されるように、2つに分割された光電変換領域の間を電気的に分離する構造を有すると、瞳分割の性能は向上する反面、光電変換領域の間で発生した電子には高電界がかかりにくい。そのため、電子の検出効率(すなわち感度)が低下する。
【0139】
焦点検出性能の観点では、光電変換領域間を電気的に分離した方がよいが、撮像性能の観点では、感度を低下させるため、光電変換領域間を電気的に分離しない方がよい。このように、光電変換領域を分割した構成でSPAD動作をさせる場合、光電変換領域間の電気的な分離は、焦点検出性能の撮像性能の間にトレードオフの関係をもたらす。本実施形態は、焦点検出性能と撮像性能を両立させるための構造を提案する。
【0140】
図14および
図33から
図37を参照して、本発明の第8実施形態による撮像装置の画素12(光電変換に関する部分)の構成について説明する。本実施形態の画素12は、第2実施形態で説明した画素と同様、
図14に示す断面構造を有するが、深さ方向の構成において異なる。
【0141】
ここで、画素は裏面照射型の構成を有している。これは、ガードリングとしてのN型半導体領域105A,105Bに入射したフォトンの検出効率が著しく低いためである。N型半導体領域105Aおよび105Bで光電変換により発生した電子のほとんどは、アバランシェ増倍領域としての高電界領域108に到達することなく、直接、N型半導体領域104Aおよび104Bに移動してしまう。そのため、仮に、表面照射型の構成として半導体基板101の表面(図面上方の、N型半導体領域105A,105Bの形成されている側)から光を入射した場合、フォトダイオードの表面付近で主に光電変換される短波長の光の検出効率が低下してしまう。したがって、短波長の光の検出効率の低下を抑制するために裏面照射型の構成を採用している。
【0142】
短波長の光によって生成される電子は、そのほとんどが光電変換領域の浅い部分で生成される。
図14に示すような裏面照射型構造において光電変換領域の浅い部分で発生した電子は、アバランシェ増倍領域に到達するまでに必要な移動距離が長い。そのため、長波長の光で生成される電子と比較すると、光の入射位置に対応したフォトダイオードではなく、隣のフォトダイオードで検出される確率が高くなり、分離性能が低下する。
【0143】
そのため、本実施形態では、分離性能の悪化を抑制するために、受光面を有する第1導電型の半導体領域に、受光面の反対側の面から所定の深さまで入り込んだ第2導電型の半導体領域による分離部を設ける。短波長の光は光電変換領域の深い部分でほとんど電子を生成しない。したがって、深い部分に設ける分離部は、短波長の光に対する不感帯にはならない。
【0144】
一方、長波長の光について考えると、長波長の光は光電変換領域の深い部分でも電子を生成する。深い部分で発生した電子は、アバランシェ増倍領域に到達するまでに必要な移動距離が短い。そのため、短波長の光で生成される電子と比較して分離性能を悪化させる確率は低くなる。一方で、深い部分に設けた分離部が長波長の光に関しては不感帯となりうる。
【0145】
本実施形態では、このような入射光の波長によって主に電子が生成される深さが異なる点に着目し、検出する光の波長に応じて画素構造を異ならせる。
まず、長波長の光を検出する画素12の構成例について説明する。上述したように、断面構造は
図14に示したとおりである。
【0146】
なお、P型(第2導電型)半導体領域106は、
図14に示す垂直断面では分断されているように記載されているが、別の断面では接続しており、一体形成されている。また、P型半導体領域106は、正電圧を与えられたN型領域との間で形成される空乏化領域に入射した単一光子を光電変換した際に生じる正孔をドリフトで吸収して撮像装置の外に排出する機能も有する。
【0147】
それぞれが別個のフォトダイオードを構成するN型(第1導電型)半導体領域104Aおよび104Bは、マイクロレンズ120で規定される1つの画素に電気的に独立に形成される。N型半導体領域104Aおよび104Bはそれぞれクエンチング回路としての抵抗R_AおよびR_Bを介して正電圧(例えば3V)を与えられ、P型半導体領域106との間で形成されるPN接合フォトダイオードのカソード端子として機能する。
図2に示すように、N型半導体領域104Aおよび104BはINV_AおよびINV_Bの入力側に接続される。
【0148】
また、N型半導体領域104Aおよび104Bは、P型半導体領域106との間で形成される空乏化領域に入射した単一光子を光電変換した際に生じる電子をドリフトで吸収する。そして、N型半導体領域104Aおよび104Bは、P型半導体領域106との距離が短くなる高電界領域108にアバランシェ増倍を起こさせる。
【0149】
P型半導体領域106は、N型半導体領域104Aおよび104Bの間に途切れなく延在する。そして、P型半導体領域106は、N型半導体領域104Aおよび104Bを電気的に分離する構成を持たずにN型半導体領域107との間に接合面を形成する。これにより、P型半導体領域106は、N型半導体領域104Aおよび104Bとの間で形成される空乏化領域で生成された電子がN型半導体領域104Aまたは104Bにドリフトするのを促進する。これにより、空乏化領域で生成された電子を、再結合する前にもれなく高電界領域108の一方に移動させ、アバランシェ増倍を生じさせることができる。
【0150】
このような構造により、マイクロレンズ120を通じてN型半導体領域104Aと104Bの間に垂直に入射した単一光子は、50%の確率でN型半導体領域104AとP型半導体領域106との間の高電界領域108の一方でアバランシェ増倍する。そして、50%の確率でN型半導体領域104BとP型半導体領域106との間の高電界領域108の一方でアバランシェ増倍する。したがって、光子をロスなく検出することができる。
【0151】
図33(a)~
図33(c)はそれぞれ、
図14に示す線B-B’、C-C’、D-D’に示す位置における、半導体基板101の表面に平行な面の断面図である。以下、半導体基板101の表面に平行な面の断面図を水平断面図と呼ぶ。なお、
図33(a)~
図33(c)における線A-A’を含む、半導体基板101の表面に垂直な断面図が
図14に相当する。
【0152】
図33(a)に示すように、線B-B’の断面において、P型半導体領域106は画素間に設けられた部分(外縁部分)とN型半導体領域104Aおよび104Bの間に設けられた部分とが接続した形態を有する。また、N型半導体領域104Aおよび104Bとの間にガードリングとしてのN型半導体領域105A,105Bを設けて電界を緩和している。
【0153】
また、
図33(b)に示すように、線C-C’の断面において、P型半導体領域106は画素間に設けられた部分(外縁部分)に加え、N型半導体領域107と接合面を形成するよう、N型半導体領域104Aおよび104Bの間に途切れなく延在する。
【0154】
図33(c)に示すように、線D-D’の断面においては、P型半導体領域106と接合面を形成するN型半導体領域107が、外縁部分に設けられたP型半導体領域106の内部全体に設けられている。
【0155】
なお、P型半導体領域106が画素間に設けられることは必須でない。これは、各画素に設けられたマイクロレンズ120により、画素境界部の受光率は極めて小さいためである。加えて、本実施形態では受光率の高いN型半導体領域104Aと104Bとの間の検出効率が高く、画素間の混色も相対的に非常に小さいからである。
【0156】
ただし、例えばベイヤー型のカラーフィルタが設けられる場合のように、隣接画素の分光特性もしくは分光透過率が異なる撮像装置においては、わずかであっても画素間の混色が画質低下の原因になりうる。そのため、P型半導体領域106を画素間に設けることで画質低下を抑制できる。
【0157】
上述した構成の画素に対する長波長の光の入射角度特性と短波長の光の入射角度特性を
図34(a)および
図34(b)にそれぞれ示す。ここで、破線151は分布150の重心位置を、一点鎖線153は分布152の重心位置をそれぞれ示している。破線151と一点鎖線153の距離LA、LBは分布間の重心間距離を表す。重心間距離が長いほうが分離性能は良く、焦点検出精度が高い。
【0158】
上述したように、短波長の光では主に浅い部分で電子が生成され、アバランシェ増倍を発生させるのに長い移動距離が必要になる。そのため、分離性能が低下し、
図34(b)における重心間距離LBはLAより短くなる。
【0159】
本実施形態では、電子の移動距離の長さに起因する分離性能の低下を抑制する、短波長の光を検出する画素に適した構造を提案する。
図35は、短波長の光を検出する画素12の構成例を示し、
図35(a)は垂直断面図、
図35(b)は線D-D’で示す位置の水平断面図である。
【0160】
長波長の光を検出する画素の垂直断面構造(
図14)との違いは、P型半導体領域106が、N型半導体領域104Aおよび104Bの間から、N型半導体領域107に、受光面と反対側の面から所定の深さまで入り込んだ壁状の部分106bを有する点である。壁状の部分106bは、N型半導体領域104Aおよび104Bを電気的に分離する分離部として機能するため、以下では分離部と呼ぶ。分離部106bは、P型半導体領域106のうち、N型半導体領域107との接合面(N型半導体領域107の、受光面の反対側の面)から、N型半導体領域107の内部に入り込んだ部分である。また、分離部106bは、N型半導体領域104Aおよび104Bを分離する壁状の部分を深さ方向に延長した位置に設けられている。
【0161】
N型半導体領域104Aおよび104Bの間からN型半導体領域107に入り込んだP型半導体領域である分離部106bにより、N型半導体領域104A側で生成された電子がN型半導体領域104B側(および逆方向に)に移動することを抑制できる。特に、N型半導体領域107の深い部分(受光面から遠い部分)に分離部106bを設けることにより、分離部106bが短波長の光に対する不感帯となる可能性は十分に小さくすることができる。そのため、画質の低下を抑制しつつ、分離性能を向上させることができる。短波長の光を検出する画素を
図35に示す構成とすることにより、短波長の光に対する入射角度特性を、
図34(b)に示す状態から
図34(a)に示す状態に近づけることができる。
【0162】
なお、
図35(a)の垂直断面を有する画素において、線B-B’で示す位置の水平断面における構成は、
図33(a)と同じである。また、線C-C’で示す位置の水平断面における構成は、
図33(b)と同じである。一方、線D-D’で示す位置の水平断面では、
図35(b)に示す構成となる。
【0163】
線D-D’で示す位置の水平断面においては、N型半導体領域107を2つの領域に分割するように、P型半導体領域である分離部106bが設けられている。これにより、一方のN型半導体領域107A/Bから他方のN型半導体領域107B/Aへの電子の移動を防ぐことができる。
【0164】
ここでは、本実施形態の技術思想を説明するため、便宜上、光の波長を短波長と長波長に分けて説明した。しかし、本実施形態の基本的な技術思想は、画素が主に検出する波長の光に応じて、分離部を設けるか否かや、分離部の高さ(深さ)を定めることにある。したがって、分離部の高さ(深さ)を、画素が主に検出する光の波長に応じて異ならせてもよい。長波長、低波長は特定の範囲を指す訳ではなく、分離部による画質低下が起こりやすい波長、分離部による分離性能の向上が容易な波長と考えてもよい。
【0165】
図36は、上述した長波長用の構成(分離部なし)を有する画素と、短波長用の構成(分離部あり)を有する画素とを、ベイヤー配列のカラーフィルタが設けられた画素に割り当てる例を示している。この場合、画素領域10に配列される複数の画素12は、分光特性または分光透過率の異なる複数の種類の画素を含む。Rは赤、Gは緑、Bは青のカラーフィルタが設けられた画素(それぞれ、R画素、G画素、B画素と呼ぶ)を示す。ここで、主に検出する光の波長は、R画素が一番長く、次いでG画素、B画素の順になる。
【0166】
図36(a)は、B画素にのみ短波長用の構成(分離部あり)を適用し、R画素とG画素には長波長用の構成(分離部なし)を適用する例を示している。また、
図36(b)は、B画素とG画素に短波長用の構成(分離部あり)を適用し、R画素のみに長波長用の構成(分離部なし)を適用する例を示している。また、
図36(c)は、分離部の高さがB画素>G画素>R画素となるように、R画素、G画素、B画素の全てに分離部を設ける構成を適用する例を示している。なお、
図36(b)の場合も、B画素に設ける分離部の高さをG画素に設ける分離部より高くしてもよい。分離部の高さは、例えば主に検出する波長の光が到達する深さや、分離性能の向上と画質の低下などを勘案して定めることができる。
【0167】
図37(a)~
図37(c)は、
図36(c)におけるR画素、G画素、B画素の構成例をそれぞれ示している。
R画素が主に検出する波長の光は、N型半導体領域107の深い部分(受光面から遠い部分)で主に電子を生成する。そのため、電子の生成位置から高電界領域108までの距離が短く、もともと分離性能の低下はG画素やB画素よりも小さい。一方で、分離部が不感帯となって感度を低下させる可能性はG画素やB画素よりも高い。したがって、R画素に設ける分離部の高さは、G画素やB画素に設ける分離部の高さよりも低くする。ここで、分離部106bの高さhは、例えば、分離部106bを設けない構成におけるP型半導体領域106とN型半導体領域107との接合面を基準として、N型半導体領域107に入り込んだ部分の長さとする。
図37(a)の例では、分離部106bの高さhは、H1<h<H2である。
【0168】
一方、B画素が主に検出する波長の光は、N型半導体領域107の浅い部分(受光面から近い部分)で主に電子を生成する。そのため、電子の生成位置から高電界領域108までの距離が長く、分離性能の低下はG画素や
R画素よりも大きい。一方で、分離部が不感帯となって感度を低下させる可能性はG画素や
R画素よりも低い。したがって、B画素に設ける分離部の高さは、G画素や
R画素に設ける分離部の高さよりも高くする。
図37(c)の例では、分離部106bの高さhは、H2<H3<h<H4である。
【0169】
G画素が主に検出する光の波長は、B画素が主に検出する光の波長より長く、R画素が主に検出する光の波長より短い。そのため、G画素に設ける分離部の高さは、R画素に設ける分離部の高さとB画素に設ける分離部の高さの中間とする。
図37(b)の例では、分離部106bの高さhは、H2<h<H3である。
【0170】
なお、線H1-H1’、H2-H2’、H3-H3’、H4-H4’の各位置における水平断面の構造は、分離部が存在する面では
図35(b)、分離部が存在しない面では
図33(c)に示した構造である。
【0171】
以上説明したように、本実施形態では、複数のフォトダイオードが形成された裏面照射型の画素構造において、受光面を有する第1導電型の半導体領域に、受光面の反対側の面から所定の深さまで入り込んだ第2導電型の半導体領域(分離部)を設けるようにした。第2導電型の半導体領域が入り込んだ部分では、第1導電型の半導体領域が電気的に分離される。そのため、電子が発生位置に対応しないフォトダイオードで検出されることを抑制でき、分離性能を向上することができる。また、分離部の高さ(深さ)を、画素が主に検出する光の波長に応じて調整することにより、分離部による画質を低下を抑制しながら分離性能を向上させることができる。
【0172】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態による撮像装置の画素12について説明する。
本実施形態では、第8実施形態で説明した分離部106bを全ての画素に設ける。そして、画素が主に検出する光の波長に応じて分離部の幅(厚み)を調整する。
【0173】
具体的には、主に長波長の光を検出する画素では、不感帯となる分離部の幅(厚み)を、主に短波長の光を検出する画素に設ける分離部より狭く(薄く)する。N型半導体領域107の深い部分でも光電変換によって電子が生成される長波長の光を検出する画素において、生成される電子が分離部によって減少することを抑制するためである。また、主に短波長の光を検出する画素に設ける分離部の幅を調整することで、分離性能の悪化を改善する度合いを調整し、分離性能の波長依存性を低減する。
【0174】
図38(a)は、本実施形態に係る画素のうち、主に長波長の光を検出する画素の構造例を示す垂直断面図である。第8実施形態で説明した構成(
図35(a))と同様に、N型半導体領域104Aおよび104Bの間に配置されたP型半導体領域106が、受光領域を形成するN型半導体領域107に入り込んだ分離部106bを有している。しかし、N型半導体領域104Aおよび104Bの間に設けられたP型半導体領域106の幅(厚み)よりも、分離部106bの幅が狭い(厚みが薄い)。
【0175】
なお、分離部106bの幅に加え、第8実施形態で述べたように分離部106bの深さ(高さ)も調整することができる。分離部106bが不感帯となることによる画質の低下を勘案して幅と深さを定めることができる。
【0176】
なお、
図38(a)に線B-B’で示す位置の水平断面の構成は、
図33(a)と同じである。また、
図38(a)に線C-C’で示す位置の水平断面の構成は、
図33(b)と同じである。
図38(b)は、
図38(a)に線D-D’で示す位置の水平断面図である。
図35(b)に示した第8実施形態における同位置の水平断面の構成よりも、分離部106bの幅が狭い。分離部106bを設けることで、N型半導体領域107Aから107Bもしくはその逆方向へ電子が移動することを抑制できる。また、分離部106bの幅を狭くすることで、不感帯となる分離部の容積を削減し、分離部106bによる画質の低下を抑制できる。
【0177】
図39は、本実施形態に係る画素のうち、主に短波長の光を検出する画素の構造例を示す垂直断面図である。
図38に示した主に長波長の光を検出する画素の構造よりも、分離部106bの幅(厚み)が大きい。なお、分離部106bの高さ(深さ)が
図38と等しい構成を記載しているが、主に検出する光の波長に応じて、分離部106bの深さ(高さ)は異なっていてもよい。短波長側の光が受光面に入射すると、電子は受光面近くの浅い部分で主に生成される。そのため、深い部分に設けられた分離部106bが、短波長の光が生成する電子の数に与える影響は非常に小さい。したがって、分離部106bをの幅を大きくして分離性能を高めても、不感帯の体積は実質的に増加しない。
【0178】
なお、
図39(a)に線B-B’で示す位置の水平断面の構成は、
図33(a)と同じである。また、
図39(a)に線C-C’で示す位置の水平断面の構成は、
図33(b)と同じである。
図39(b)は、
図38(a)に線D-D’で示す位置の水平断面図である。
図35(b)に示した第8実施形態における同位置の水平断面の構成よりも、分離部106bの幅が広い。分離部106bを設けることで、N型半導体領域107Aから107Bもしくはその逆方向へ電子が移動することを抑制できる。また、分離部106bの幅を広くすることで、分離部の効果をより高めることができる。
【0179】
なお、主に短波長の光を検出する画素における分離部106bの幅は、主に長波長の光を検出する画素と分離性能が同等であれば、N型半導体領域104Aおよび104Bの間に設けられたP型半導体領域106の幅より広くしなくてもよい。例えば、主に長波長の光を検出する画素に設ける分離部106bの幅(
図38)より広く、N型半導体領域104Aおよび104Bの間に設けられたP型半導体領域106の幅より狭くしてもよい。
【0180】
上述の通り、本実施形態は第8実施形態と組み合わせることができる。例えば、
図37に示した、R画素、G画素、B画素の構造において、分離部106bの幅を異ならせてもよい。例えば、R画素よりもG画素の分離部の幅を広くし、G画素よりもB画素の分離部の幅を広くすることができる。
【0181】
本実施形態では、受光面を有する第1導電型の半導体領域に設ける第2導電型の半導体の分離部の幅(厚み)を、画素が主に検出する光の波長に応じて調整することにより、分離部による画質を低下を抑制しながら分離性能を向上させることができる。
【0182】
[第10実施形態]
次に、本発明の第10実施形態による撮像装置の画素12について説明する。
本実施形態では、第8実施形態で説明した分離部106bを全ての画素に設ける。ただし、深い部分でも電子が生成される、長波長の光を検出する画素では、分離部106bを設けることによる画質低下を抑制するため、分離部の不純物濃度を低くする。P型半導体領域である分離部の不純物濃度を低くすることで、分離部における少数キャリアである電子の寿命が長くなり、分離部で生成された電子が分離部から出られる確率を高めることができる。
【0183】
図40は、本実施形態に係る画素の構造例を示す垂直断面図である。本実施形態では、検出する波長にかかわらず、第8実施形態で説明した、主に短波長の光を検出する画素の構造(
図35)と同様の断面構造を有する。したがって、
図40に線B-B’およびC-C’で示す位置の水平断面の構成は、
図33(a)および
図33(b)と同じである。また、線D-D’で示す位置の水平断面の構成は、
図35(b)と同じである。しかし、分離部106bの不純物濃度が、P型半導体領域106の他の部分より低減されている。
【0184】
図41は、
図40に示すマイクロレンズ120の光軸xに沿った、P型半導体領域106の不純物濃度を示している。
図41における深さは、受光面からの距離に相当する。主に短波長の光を検出する画素については実線で示す濃度変化、主に長波長の光を検出する画素については一点鎖線で示す濃度変化となるように制御されている。主に短波長の光を検出する画素については不純物濃度は深さに依存せず一定である。一方、主に長波長の光を検出する画素については、分離部106bに相当する、線E-E’から線F-F’までの部分の不純物濃度が他の部分より低くなるように制御されている。
【0185】
分離部106bを設けることで、N型半導体領域107Aから107Bもしくはその逆方向へ電子が移動することを抑制できる。また、分離部106bの不純物濃度をP型半導体領域106の他の部分よりも低くすることにより、分離部で生成された電子の寿命を長くし、ドリフトによって電子が分離部から抜け出す確率を高めることができる。このように、分離部106bの不純物濃度を低くすることによっても、分離部106bに起因する画質低下を抑制することができる。
【0186】
本実施形態は第8および第9実施形態において説明した、分離部106bの深さおよび幅の少なくとも一方の制御と組み合わせることができる。したがって、分離部106bを設ける場合には、分離部106bにおける不純物濃度の制御だけでなく、幅や深さの制御を組み合わせて、分離部106bによる画質劣化を抑制しつつ、分離性能を向上させることができる。
【0187】
なお、
図41では、主に短波長の光を検出する画素についてはP型半導体領域106の不純物濃度を一定としている。しかし、分離部106bの部分(線E-E’から線F-F’までの部分)の不純物濃度を他の部分(線A-A’から線E-E’までの部分)より低くしてもよい。短波長の光でも、分離部106bで生成される電子がないとは限らないためである。
【0188】
本実施形態を例えばR画素、G画素、B画素の構造に適用する場合、例えば、B画素よりもG画素の分離部106bの不純物濃度を低くし、G画素よりもR画素の分離部106bの不純物濃度を低くすることができる。
【0189】
本実施形態では、受光面を有する第1導電型の半導体領域に設ける第2導電型の半導体の分離部の不純物濃度を、画素が主に検出する光の波長に応じて調整することにより、分離部による画質を低下を抑制しながら分離性能を向上させることができる。
【0190】
[第11実施形態]
次に、本発明の第11実施形態による撮像装置の画素12について説明する。本実施形態では、受光面からN型半導体領域内に伸びた分離部をさらに設けることにより、浅い部分で生成された電子の分離性能を向上させる。
【0191】
図42(a)は、本実施形態に係る、画素の構造例を示す垂直断面図である。本実施形態では、N型半導体領域107の受光面からN型半導体領域107に入り込んだP型半導体領域の分離部106bを設けている。受光面側の分離部106bの位置は、受光面と反対側の面に設けた分離部106bと同じであってよい。ただし、受光面から浅い部分に設けた分離部106bは画質に与える影響が大きい。そのため、第9実施形態で記載したように幅を狭くしたり、第10実施形態で記載したように不純物濃度を下げたりするといった、分離部106bによる画質低下を抑制するための構成を1つ以上組み合わせることができる。本実施形態に係る画素構造は主に検出する光の波長にかかわらず採用することができる。ただし、浅い部分で生成される電子の分離性能の向上という観点からは、主に短波長の光を検出する画素に適用すると効果が大きい。
【0192】
なお、
図42(a)に線B-B’で示す位置の水平断面の構成は、
図33(a)と同じである。また、
図42(a)に線C-C’で示す位置の水平断面の構成は、
図33(b)と同じである。また、
図42(b)は、
図42(a)の線G-G’で示す位置の水平断面図である。
図42(c)は、
図42(a)の線D-D’および線H-H’で示す位置の水平断面図である。
【0193】
本実施形態では、受光面を有する第1導電型の半導体領域に設ける第2導電型の半導体の分離部を、受光面と、受光面と反対側の面との両方に設けるようにした。これにより、第1導電型の半導体領域の浅い部分で生成される電子の分離性能を向上させることができる。
【0194】
[第12実施形態]
次に、本発明の第12実施形態による撮像装置の構成について説明する。
本実施形態は、検出する波長に応じて、第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域の電位差を異ならせることにより、受光領域のポテンシャル形状を異ならせる。
【0195】
図43は、本実施形態にかかる撮像装置の画素領域10の一部を示している。ここでは、撮像装置にはベイヤー配列のカラーフィルタが設けられているものとする。
図43におけるR,G,Bは、それぞれ赤、緑、青のカラーフィルタが設けられた画素12(R画素、G画素、B画素)を示す。
【0196】
本実施形態では、画素に供給する電圧のうち、負電圧については全画素に共通した配線を有する。そのため、すべての画素の第2導電型(P型)の半導体領域には共通の負電圧-20Vが印加される。一方、正電圧については、R画素、G画素、B画素ごとの配線を有する。したがって、R画素、G画素、B画素の第1導電型(N型)の半導体領域には、それぞれ異なる正電圧VDDR、VDDG、VDDBを供給することができる。
【0197】
短波長の光を主に検出するB画素では浅い部分で電子が生成されるため、G画素やR画素よりも分離性能が低くなる。そのため、R画素やG画素のN型半導体領域に印加する正電圧VDDR、VDDGよりも、B画素のN型半導体領域に印加する正電圧VDDBを高くする。これにより、B画素のポテンシャルの勾配を大きくし、電子のドリフトによる分離性能悪化を低減することができる。
【0198】
同様に、R画素に印加する正電圧VDDRよりもG画素に印加する正電圧VDDGを大きくする。なお、R画素に印加する正電圧VDDRとG画素に印加する正電圧VDDGは同じにしてもよい。
【0199】
なお、本実施形態は、第8から第11実施形態に係る、分離部を設けた画素構造の1つ以上と組み合わせることができる。この場合、分離部で生成された電子が分離部から抜け出す確率を上げることができるため、不感帯の低減効果がある。
【0200】
[第13実施形態]
次に、本発明の第13実施形態による撮像装置の画素12について説明する。
本実施形態では、検出する波長に応じて、フォトダイオードのカソードを構成する2つの第1導電型(N型)の半導体領域104Aと104Bの間隔を異ならせることにより、受光領域のポテンシャル形状を制御する。
【0201】
図44(a)~
図44(c)は、
図36(c)におけるR画素、G画素、B画素の構成例を示す垂直断面図である。なお、
図44には分離部を設けない構成を示しているが、上述した第8~第11実施形態の1つ以上を組み合わせて分離部を設けてもよい。
R画素は、長波長の光を検出するため、電子の移動による分離性能の悪化が小さい。一方、分離部を設けた場合に、分離部による画質劣化の影響を受けやすい。そのため、R画素(
図44(a))ではG画素(
図44(b))よりもN型半導体領域104Aおよび104Bの間隔を狭くする。
B画素は、短波長の光を検出するため、電子の移動による分離性能の悪化が大きい。一方、分離部を設けた場合に、分離部による画質劣化の影響を受けづらい。そのため、
B画素ではG画素よりもN型半導体領域104Aおよび104Bの間隔を広くする。
【0202】
なお、
図44(a)~
図44(c)には、主に検出する光の波長に応じてN型半導体領域104Aおよび104Bの間隔を変える構成を示した。しかし、N型半導体領域104Aおよび104Bの間隔は、他の条件に基づいて決定してもよい。例えば、焦点検出時における瞳の分離性能の波長依存性を小さくする場合、主に検出する光の波長が短い画素ほど、N型半導体領域104Aおよび104Bの間隔を広くすることができる。また、本実施形態は第8~第11実施形態の1つ以上と組み合わせることもできる。
【0203】
[変形実施形態]
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0204】
また、上記実施形態において説明した撮像装置は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と固体撮像装置とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。また、これら撮像システムを構成する場合、上記実施形態において説明した撮像装置の機能の一部、例えば、焦点検出用信号生成部や画像処理部などは、撮像装置の外部の信号処理部が実施するように構成してもよい。
【0205】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0206】
PD_A,PD_B…フォトダイオード、R_A,R_B…抵抗、INV_A,INV_B…インバータ回路、CNT_A,CNT_B…計数回路、12…画素、101…半導体基板、104A,104B,105A,105B,107…N型半導体領域、106,106a,106b…P型半導体領域、120…マイクロレンズ