(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】タービンブレードを能動的に冷却するための冷却システム
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
F01D5/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019127638
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】10 2018 119 572.9
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028384
【氏名又は名称】エムテーウー・アエロ・エンジンズ・アクチェンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】DACHAUER STRASSE 665,80995 MUENCHEN,GERMANY
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディエター・フレーノ
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・ペーラー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ペルンライトナー
(72)【発明者】
【氏名】パウル・シュトルム
(72)【発明者】
【氏名】エレクトラ・スタフロポウロウ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・フランク
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0110639(US,A1)
【文献】特開平10-339104(JP,A)
【文献】特開2004-132218(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0281674(US,A1)
【文献】米国特許第08864468(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0140851(US,A1)
【文献】特開平04-232304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-11/24
F02C 1/00-9/58
F23R 3/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンブレード(2)に形成されている内部流路(3)を介して冷却流体で前記タービンブレード(2)を能動的に冷却するための冷却システム(1)であって、
前記内部流路(3)が、入口側縁部(4)から出口側縁部(5)に至るまで延在しており、
前記内部流路(3)が、第1の流れ方向を規定する第1の流路区間(6)と、第2の流れ方向を規定する第2の流路区間(7)と、前記第1の流路区間(6)と前記第2の流路区間(7)との間に配置されている第1の壁(8)と、前記第1の流路区間(6)と前記第2の流路区間(7)との間において前記第1の流れ方向から前記第2の流れ方向に移行させるように構成されている第1の方向転換部(9)と、を備え、
前記第1の壁(8)が、第1の堤頭部(10)を前記第1の方向転換部(9)の領域に形成しており、前記第1の堤頭部(10)の少なくとも堤頭区間が、前記第1の流路区間(6)の領域内に延在しており、これにより前記内部流路(3)の流れ断面を低減させる冷却システムにおいて、
前記第1の堤頭部(10)は、
- 前記第1の流路区間(6)の直線状に延在している前記第1の壁(8)から延在すると共に、前記第1の流路区間(6)に向かって湾曲している第1の湾曲区間(21)を備えており、
- 前記第1の湾曲区間(21)は、前記第1の方向転換部(9)に部分円として形成された第1の弧状区間(22)に合流しており、
- 前記第1の弧状区間(22)は、前記第1の方向転換部(9)の出口において、前記第2の流路区間(7)の直線状に延在している第2の壁(18)に合流しているが、前記第2の流路区間(7)の内部に突出している外面形状を有しておらず、
前記第1の方向転換部(9)に続く前記第2の流路区間(7)は、始点から前記第2の流れ方向に向かって狭まって
おり、
前記内部流路(3)が、第3の流路区間(17)に向かって開口している第2の方向転換部(16)を前記第2の流路区間(7)の端部に備えており、且つ、第2の堤頭部(19)を具備して形成されている第2の壁(18)を前記第2の流路区間(7)と前記第3の流路区間(17)との間に備えており、
前記第2の堤頭部(19)の少なくとも堤頭区間が、前記第2の流路区間(7)の領域内に延在しており、これにより前記内部流路(3)の流れ断面を低減させることを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記第2の堤頭部(19)は、
- 前記第2の流路区間(7)の直線状に延在している前記第2の壁(18)から延在すると共に、前記第2の流路区間(7)に向かって湾曲している第2の湾曲区間(23)を備えており、
- 前記第2の湾曲区間(23)は、前記第2の方向転換部(16)に部分円として形成された第2の弧状区間(24)に合流しており、
- 前記第2の弧状区間(24)は、前記第2の方向転換部(16)の出口において、前記第3の流路区間(17)の直線状に延在している第3の壁に合流しているが、前記第3の流路区間(17)の内部に突出している外面形状を有していない、
ことを特徴とする請求項
1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記タービンブレード(2)が、上側ブレード輪郭(12)と下側ブレード輪郭(13)との間に環状空間(11)を備えており、
前記環状空間(11)が、前記タービンブレード(2)のガス伝達面を形成していることを特徴とする請求項1
または2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記内部流路(3)が、冷却流体を前記内部流路(3)に受容させるための開口部を形成している入口(25)と、冷却流体を前記内部流路(3)から流出させるための開口部を形成している噴出口(26)とを備えていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記タービンブレード(2)が、前記入口側縁部(4)の領域において、冷却流体を前記内部流路(3)から流出させるための複数の出口開口部(14)であって、互いから離隔して配置されている複数の前記出口開口部(14)を備えていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記タービンブレード(2)が、冷却流体を前記内部流路(3)から流出させるための複数の出口開口部(15)であって、互いから離隔して配置されている複数の前記出口開口部(15)を備えていることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンブレードの内側に形成されている流路を介して冷却流体でタービンブレードを能動的に冷却するための冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内部冷却機構を具備する高温のタービンブレードは、冷却流体の流路又は流れ方向が方向転換する領域において流れが剥離するという問題を有している場合がある。次の流路区間に向かう冷却用空気が入口において剥離することによって、流体としての冷却性能が低減されるので、タービンブレードの耐用寿命にも悪影響が及ぼされる。また、流路は、一般に最適な流れパターンに適合するように設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、タービンブレードの内部に形成されている内部流路を当該タービンブレードに付与することである。これにより、当該問題は軽減され、特に冷却用空気の流れが潜在的に剥離することが、当該流れが方向転換する領域において解消するか、又は最小限度に抑えられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該目的は、請求項1に記載の特徴の組み合わせによって解決される。
【0005】
本発明は、タービンブレードの内部に形成された内部流路を介して冷却流体でタービンブレードを能動的に冷却するための冷却システムを提案する。本発明では、流路は、入口側縁部から出口側縁部に延在しており、第1の流れ方向を規定している第1の流路区間と、第2の流れ方向を規定している第2の流路区間とを備えている。さらに、内部流路は、壁と、第1の流路区間と第2の流路区間との間に配置されている方向転換部であって、第1の流れ方向から第2の流れ方向に流れを移行させるように構成されている方向転換部とを備えている。方向転換部では、壁が、少なくとも堤頭部区間において第1の流路区間の領域の内側に延在しており、これにより内部流路の流れ断面を意図する特定の態様で低減させる堤頭部を形成している。これにより、冷却流体の流れが、方向転換部に到達する前に加速される。この結果、流れは、方向転換部による剥離が無い状態で、又はごく僅かな状態で次の流路に流入することができる。
【0006】
好ましくは、当該冷却システムでは、内部流路が、第2の流路区間の端部に第2の方向転換部を備えており、第2の方向転換部が、第3の流路区間に向かって開口しており、且つ、第2の流路区間と第3の流路区間との間に形成されている第2の壁に向かって開口しており、第2の壁が、第2の流路区間の領域の内側に延在しており且つ内部流路の流れ断面を同様に低減させる堤頭区間を少なくとも備える、第2の堤頭部を具備して形成されている。これにより、冷却流体の流れは、方向転換部に到達する前に再び加速され、この時点において、方向転換部による剥離が無い状態で、又はごく僅かな状態で次の流路に流入することができる。
【0007】
優位な実施例では、少なくとも端面区間における堤頭部の断面が、円弧状とされ、湾曲しており、又は涙滴状とされ、堤頭部が、第1の流路区間に向かって延在している。端面区間が第1の流路区間に向かって延在していることによって、望み通りに断面を狭窄させることができ、円弧状の、湾曲した、又は涙滴状の外形を流れ制御に最適な輪郭とすることができる。
【0008】
本発明の代替的な典型的実施例では、少なくとも端面区間における堤頭部の断面が、複数の直線状区間及び/又は傾斜した多項式区間から形成されており、堤頭部が、第1の流路区間に向かって延在している。複数の直線状区間及び/又は傾斜した多項式区間を適切に配置させることによって、流れ制御のための表面がさらに最適化される。
【0009】
好ましくは、さらには、流れ方向における第1の堤頭部の外面形状は、第1の流路区間に向かって湾曲している湾曲区間を具備する第1の流路区間の直線状に延在している壁から、反対側の湾曲区間であり且つ部分円として形成された弧状区間に合流するように延在しており、弧状区間が、第1の方向転換部の出口において、第2の流路区間の直線状に延在している壁に合流しているが、第2の流路区間の内部に突出している外面形状を有していない。これにより、方向転換部における流れ断面が、少なくとも出口において壁による変化を受けず、当該流れ縁部において維持されている。
【0010】
本発明のさらなる優位な変形例では、第2の堤頭部の外面形状が、流れ方向で見ると、第3の流路区間に向かって湾曲している湾曲区間を具備する第2の流路区間の直線状に延在している壁から、反対側の湾曲区間であり且つ部分円として形成された弧状区間に合流するように延在しており、弧状区間が、第2の方向転換部の出口において、第3の流路区間の直線状に延在している壁に合流しているが、第3の流路区間の内部に突出している外面形状を有していない。
【0011】
本発明における冷却システムの一の実施例では、タービンブレードが、上側ブレード輪郭と下側ブレード輪郭との間に環状空間を備えており、環状空間が、タービンブレードのガス伝達面を形成している。
【0012】
さらに、堤頭部の中心が、上側ブレード輪郭又は下側ブレード輪郭の内側において、環状空間の反対側の外側に向かってオフセットして配置されている領域に位置している場合に優位である。
【0013】
本発明における冷却システムのさらなる発展形態では、内部流路が、冷却流体を内部流路に受容するための開口部を形成している入口と、内部流路から冷却流体を流出させるための開口部を形成している噴出口とを備えている。
【0014】
本発明の好ましい実施例では、タービンブレードが、入口側縁部の領域において、内部流路から冷却流体を流出させるために、互いから離隔して配置されている複数の出口開口部(14)を備えている。複数の入口開口部によって、冷却流体は、タービンブレードの幅全体に亘って流路に受容されるので、その結果として、タービン流れが最適化される。
【0015】
好ましくは、タービンブレードが、内部流路から冷却流体を流出させるために、互いから離隔して配置されている複数の出口開口部を備えている。複数の入口開口部を通じて、冷却流体は、タービンブレードの幅全体に亘って流路から流出可能とされる。
【0016】
本発明の他の優位なさらなる発展形態は、従属請求項において特徴づけられており、本発明の好ましい実施例についての説明と共に図面によって、より詳細に以下に示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】内側に配置されている流路を具備するタービンブレードの斜視図である。
【
図2】流路の構造を説明するための、型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明について、
図1及び
図2を参照しつつ、典型的な実施例に基づいて以下に説明する。
【0019】
図1は、内側に配置されている流路3(
図1には詳細に図示しない)を具備するタービンブレード2の斜視図である。タービンブレード2は、丸められた入口側縁部4と出口側縁部5とを備えており、入口側縁部4から出口側縁部5に至るまで僅かに湾曲している。さらに、タービンブレード2は、上側ブレード輪郭12と下側ブレード輪郭13とを有しており、タービンブレード2は、上側ブレード輪郭12と下側ブレード輪郭13とを介して、タービンに取り付けられている。上側ブレード輪郭12と下側ブレード輪郭13とはそれぞれ、タービンブレード2を実質的に横断している表面Fを形成しており、タービンブレード2と共に、ガスを伝導するための環状空間11を形成している。さらに、
図1は、入口側縁部4の領域において互いから離隔配置されている複数の出口開口部14を表わす。また、複数の出口開口部15が、タービンブレード2に形成されており、且つ、出口側縁部5に配置されている。
【0020】
図2は、流路3を説明するための型の断面図を表わす。流路3は、入口25と噴出口26とを具備するように形成されている。流路3は、方向転換部9に至る第1の流路区間6と、流れ方向を最初に約90°方向転換させた後にさらに約90°方向転換させ、第2の流路区間7における流れ方向を略反対方向に方向づける方向転換部9と、方向転換部9と第2の方向転換部16との間に形成されている第2の流路区間7と、流れ方向を約160°方向転換させ、当該流れ方向を略反対方向に方向づける第2の方向転換部16と、第2の方向転換部16に隣接している第3の流路区間17と、を備えている。また、
図2は、壁8と、壁8に形成されている堤頭部10と表わす。堤頭部10は、第1の流路区間6の直線状に延在している壁8から延在しており、第1の流路区間6に向かって湾曲している湾曲区間21を備えている。湾曲区間21は、反対側の湾曲区間であり且つ部分円として形成された弧状区間22に合流しており、弧状区間22は、方向転換部9の出口において第2の流路区間7の直線状に延在している壁18に合流しているが、第2の流路区間7の内部に突出している外面形状を有していない。
【0021】
さらに、
図2は、第2の流路区間7と第3の流路区間17との間に形成されている壁18と、壁18に形成されている堤頭部19とを表わす。堤頭部19は、第2の流路区間7の直線状に延在している壁18から延在しており、第2の流路区間7に向かって湾曲している湾曲区間23を備えている。湾曲区間23は、反対側の湾曲区間であり且つ部分円として形成された弧状区間24に合流しており、弧状区間24は、第2の方向転換部16の出口において第3の流路区間17の直線状に延在している壁18に合流しているが、第3の流路区間17の内部に突出している外面形状を有していない。
【0022】
図2に表わす矢印は、型成形された流路3の流れパターンを概略的に表わす。
【0023】
当該実施例では、本発明は、上述の好ましい典型的な実施例に限定される訳では無い。また、基本的に異なるタイプの実施例においても提示した解決手段を利用する様々な変形例を想到することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 冷却システム
2 タービンブレード
3 流路
4 入口側縁部
5 出口側縁部
6 第1の流路区間
7 第2の流路区間
8 壁
9 方向転換部
10 堤頭部
11 環状空間
12 上側ブレード輪郭
13 下側ブレード輪郭
14 出口開口部
15 出口開口部
16 第2の方向転換部
17 第3の流路区間
18 壁
19 堤頭部
20 端面区間
21 湾曲区間
22 弧状区間
23 湾曲区間
24 弧状区間
25 入口
26 噴出口
F 表面