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  • 特許-露光装置、および、物品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】露光装置、および、物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019160663
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021039243
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 諒
(72)【発明者】
【氏名】小林 大輔
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-110529(JP,A)
【文献】国際公開第99/036832(WO,A1)
【文献】特開2006-019702(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010560(WO,A1)
【文献】特開2008-153401(JP,A)
【文献】特開2010-073835(JP,A)
【文献】特開2002-033272(JP,A)
【文献】特開2000-164498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の走査露光を行う露光装置であって、
光源からの光で原版の被照明面を照明する照明光学系を有し、
前記照明光学系は、
前記光源から前記被照明面に至る光路上に配置された回折光学素子と、
前記被照明面の共役面から前記光源側にデフォーカスした位置に配置される第1遮光部と、
前記被照明面の前記共役面から前記被照明面側にデフォーカスした位置に配置される第2遮光部と、を有し、
前記回折光学素子は、前記回折光学素子と光学的にフーリエ変換の関係にあるフーリエ変換面に、前記第1遮光部と前記第2遮光部とに起因する積算有効光源分布の非対称性を低減する光強度分布を形成する、ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
σ値を変更するズームレンズユニットを有し、
前記回折光学素子は、前記ズームレンズユニットにより変更可能なσ値の範囲の中心値において前記非対称性を低減するような回折特性を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記積算有効光源分布を調整可能な第3遮光部を有し、
前記ズームレンズユニットの状態に応じて、前記第3遮光部により前記積算有効光源分布が調整される、ことを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記第3遮光部は、前記ーリエ変換面の位置から前記光源側にデフォーカスした位置に配置されることを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記第1遮光部および前記第2遮光部はそれぞれ、可変スリットを含み、
前記非対称性を低減するように前記可変スリットを調整する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第3遮光部は、可変スリットを含み、
前記ズームレンズユニットの状態に応じて、前記可変スリットを調整する、ことを特徴とする請求項3または4に記載の露光装置。
【請求項7】
前記回折光学素子は、回折パターン面に所望の回折パターンが得られるように計算機で設計された計算機ホログラムを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記共役面に配置され、前記原版の照明範囲を画定するマスキングユニットを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光された基板を現像する工程と、を有し、前記現像された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、および、物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、半導体デバイスの製造工程であるリソグラフィ工程で使用される露光装置にはさらなる高解像度化が求められている。高解像度を達成するためには、露光光の短波長化、投影光学系の開口数(NA)の増加(高NA化)、さらには、変形照明(輪帯照明、二重極照明、四重極照明など)の使用が有効である。
【0003】
一方、近年のデバイス構造の多層化に伴い、露光装置は高い重ね合わせ精度も求められている。特許文献1には、被照明面の共役面であるマスキングユニット104の前後に遮光部103および遮光部105を配置した、ダブルスリット構成が開示されている(図1)。このダブルスリット構成は、重ね合わせ精度を向上させるために有効である。
【0004】
また、特許文献1には、ダブルスリット構成によって生じる積算有効光源分布の非対称性を緩和するための遮光部401またはフィルタ402を配置することも開示されている(図12図14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-73835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ダブルスリット構成によって生じる積算有効光源分布の非対称性を緩和するための遮光部またはフィルタを配置する場合には、像面照度が低下してしまう。像面照度が低下することは、スループットが低下することにつながるため、好ましくない。
【0007】
本発明は、例えば、照明光学系の像面の照度分布の補正性能と像面照度の低下抑制の両立に有利な露光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、基板の走査露光を行う露光装置であって、光源からの光で原版の被照明面を照明する照明光学系を有し、前記照明光学系は、前記光源から前記被照明面に至る光路上に配置された回折光学素子と、前記被照明面の共役面から前記光源側にデフォーカスした位置に配置される第1遮光部と、前記被照明面の前記共役面から前記被照明面側にデフォーカスした位置に配置される第2遮光部と、を有し、前記回折光学素子は、前記回折光学素子と光学的にフーリエ変換の関係にあるフーリエ変換面に、前記第1遮光部と前記第2遮光部とに起因する積算有効光源分布の非対称性を低減する光強度分布を形成する、ことを特徴とする露光装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、照明光学系の像面の照度分布の補正性能と像面照度の低下抑制の両立に有利な露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における露光装置の構成を示す概略断面図。
図2】積算有効光源を説明する図。
図3】積算有効光源を説明する図。
図4】遮光部の構成を示す図。
図5】実施形態における回折光学素子の設計について説明する図。
図6】σ値ごとの積算有効光源の非対称性を示すグラフ。
図7】σ値ごとの、縦方向のパターンと横方向のパターンの線幅差を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、実施形態における露光装置の構成を示す概略断面図である。この露光装置は、ステップ・アンド・スキャン方式で原版(マスク)のパターンを基板に露光する走査型露光装置である。ステップ・アンド・スキャン方式では、原版と基板と相対的に駆動(スキャン)させながら1ショットの露光が行われ、1ショットの露光終了後、基板のステップ移動により次のショット領域への移動が行われる。
【0013】
露光装置は、光源1からの光束を利用して原版であるレチクル24を照明する照明光学系と、レチクル24のパターンを基板27に投影する投影光学系26とを有する。
【0014】
光源1には、波長約365nmの水銀ランプ、波長約248nmのKrFエキシマレーザー、波長約193nmのArFエキシマレーザー等が使用されうる。
【0015】
照明光学系は、引き回し光学系2、射出角度保存光学素子5、回折光学素子6、コンデンサレンズ7、プリズムユニット10を有する。また、照明光学系は、ズームレンズユニット11、オプティカルインテグレータ12、絞り13、コンデンサレンズ14、第1遮光部18および第2遮光部20、マスキングユニット19、コンデンサレンズ21、及び、コリメータレンズ23を更に有する。
【0016】
引き回し光学系2は、光源1と射出角度保存光学素子5との間に設けられ、光源1からの光束を射出角度保存光学素子5に導く。射出角度保存光学素子5は、回折光学素子6の光源側に設けられ、光源1からの光束をその発散角度を一定に保ちながら回折光学素子6へ導く。射出角度保存光学素子5は、マイクロレンズアレイ、または、ファイバー束などのオプティカルインテグレータによって構成されうる。射出角度保存光学素子5によって、光源1の出力変動が回折光学素子6によって形成されるパターン分布に及ぼす影響を軽減することができる。
【0017】
回折光学素子6は、被照明面(像面)であるレチクル24と共役な面または照明光学系の瞳面とフーリエ変換の関係のある面に配置される。回折光学素子6は、投影光学系26の瞳面と共役な面である照明光学系の瞳面やそれと共役な面などの所定面上に、光源1からの光束の光強度分布を回折作用により変換して所望の光強度分布を形成する。回折光学素子6には、回折パターン面に所望の回折パターンが得られるように計算機で設計された計算機ホログラム(CGH;Computer Generated Hologram)を使用してもよい。投影光学系26の瞳面に形成される光源形状は、有効光源形状と呼ばれる。なお、本明細書において、「有効光源」とは、被照明面およびその共役面上における光強度分布あるいは光の角度分布をいう。回折光学素子6は、射出角度保存光学素子5とコンデンサレンズ7との間に設けられている。射出角度保存光学素子5からの光束は、回折光学素子6を照射し、回折光学素子6で回折して、コンデンサレンズ7へ導かれる。
【0018】
一例において、照明光学系には回折光学素子6は複数設けられ、それぞれの回折光学素子6はターレット(不図示)の複数のスロットの対応する1つに取り付けられて搭載されている。複数の回折光学素子はそれぞれ異なる有効光源形状を形成することができる。これらの有効光源形状により、照明モードの名前が、小σ照明、大σ照明、輪帯照明、二重極照明、四重極照明などと呼ばれる。
【0019】
コンデンサレンズ7は、回折光学素子6とプリズムユニット10との間に設けられ、回折光学素子6で回折した光束を集光し、フーリエ変換面9に回折パターンを形成する。回折パターンの分布は一定である。
【0020】
フーリエ変換面9は、オプティカルインテグレータ12と回折光学素子6との間にあり、回折光学素子6と光学的にフーリエ変換の関係にある面である。光路に位置する回折光学素子6を交換すれば、フーリエ変換面9に形成される回折パターンの形状を変えることができる。
【0021】
プリズムユニット10とズームレンズユニット11は、オプティカルインテグレータ12に対して光源側に設けられ、フーリエ変換面9に形成された光強度分布を拡大するズーム光学系として機能する。プリズムユニット10は、フーリエ変換面9に形成された回折パターン(光強度分布)を、輪帯率等を調整してズームレンズユニット11へと導くことができる。
【0022】
また、ズームレンズユニット11は、プリズムユニット10とオプティカルインテグレータ12との間に設けられる。ズームレンズユニット11は、フーリエ変換面9に形成された回折パターンを、照明光学系のNAと投影光学系のNAとの比を基準としたσ値を調整してオプティカルインテグレータ12へ導くことができる。
【0023】
オプティカルインテグレータ12は、ズームレンズユニット11とコンデンサレンズ14との間に設けられ、輪帯率、開口角及びσ値が調整された回折パターンに応じて多数の2次光源を形成してコンデンサレンズ14へ導くハエの目レンズを含みうる。ただし、オプティカルインテグレータ12のハエの目レンズの部分は、オプティカルパイプ、回折光学素子やマイクロレンズアレイなどから構成されてもよい。オプティカルインテグレータ12とコンデンサレンズ14との間には、絞り13が設けられている。
【0024】
コンデンサレンズ14は、オプティカルインテグレータ12とレチクル24との間に設けられている。これにより、オプティカルインテグレータ12から導かれた多数の光束を集光してレチクル24を重畳的に照明することができる。コンデンサレンズ14は、ハーフミラー15を含み、露光光の一部が光量測定光学系16に入射する。光量測定光学系16は、光量を測定するセンサ17を持つ。このセンサ17により測定された光量に基づいて、露光時の露光量が適切に制御されうる。
【0025】
照明面の共役面には、マスキングユニット19が配置される。マスキングユニット19は、レチクル24の照明範囲を画定するために配置され、レチクル24を保持するレチクルステージ25および基板27を保持する基板ステージ28と共に同期して走査される。
【0026】
マスキングユニット19からデフォーカスした位置に、2つの遮光部が設けられている。具体的には、被照明面から光源側にデフォーカスした位置及び被照明面の共役面から光源側にデフォーカスした位置のうちのいずれかの位置に、第1遮光部18が配置される。また、被照明面の共役面から被照明面側にデフォーカスした位置に、第2遮光部20が配置される。被照明面の照度分布の不均一性を軽減するため、第1遮光部18および第2遮光部20はそれぞれ、可変スリットであってもよい。
【0027】
コンデンサレンズ21からの光束に対して所定の傾きを有するミラー22で反射した光は、コリメータレンズ23を介してレチクル24を照明する。レチクル24のパターンは投影光学系26を介して基板27に投影される。
【0028】
次に、図2を参照して、積算有効光源について説明する。図2(a)は、被照明面であるレチクル24面の照明領域24aを表す。図2(b)は、レチクル24面と共役関係にあるマスキングユニット19面の照明領域19aを表す。露光において照明領域24aが走査される。このとき、露光面上のある点を照明する入射角度分布は、照明領域24aにおける走査方向(y方向)に平行な直線24b上の各点を照明する入射角度分布を積算したものである。これを積算有効光源と呼ぶ。言い換えると、積算有効光源とは、照明領域のある一点を走査露光によって照明する期間における入射角度分布を積算した積算入射角度分布をいう。
【0029】
次に、図3を参照して、第1遮光部18および第2遮光部20を用いたときに、スキャン後の積算有効光源がどのようになるかについて説明する。図3(a)は、第1遮光部18および第2遮光部20付近の拡大図である。図3(b)は、マスキングユニット19面上の点A,B,Cを通過する照明光の角度分布である。オプティカルインテグレータ12を経て、コンデンサレンズ14から点Aへ向かう光束は、光軸1bに対して平行に射出され、第1遮光部18および第2遮光部20の一部によってケラれることはない。そのため、レチクル面上の点A’における有効光源24aの形状は、ほぼ円形となる。
【0030】
一方、オプティカルインテグレータ12を経て、コンデンサレンズ14から点Bへ向かう光束については、第1遮光部18の遮光部材18aおよび第2遮光部20の遮光部材20aによって一部の光線がケラれる。このため、レチクル面上の点B’における有効光源24bの角度分布は、走査露光の走査方向(Y方向)に関して非対称となる。有効光源24bの上側が欠けるのは第2遮光部20の遮光部材20aによってケラれるためであり、下側が欠けるのは第1遮光部18の遮光部材18aによってケラれるためである。このように、2つの遮光部があるために、有効光源24bには走査露光の走査方向(Y方向)に関して非対称性が生じることが分かる。レチクル面上の点C’における有効光源24cの形状についても、点Bへ向かう光束と同様の考え方で、Y方向に非対称性が生じる。
【0031】
点A、点B、点Cを含む直線上を通過する全ての光束をY方向に走査した積算有効光源は、図3(c)のようになり、走査方向に積算有効光源の非対称性が生じることが分かる。積算有効光源に非対称性があると、露光時に問題が生じうる。例えば、縦方向、横方向に同一線幅のライン・アンド・スペース・パターンを焼き付ける場合、縦方向のパターンと横方向のパターンとの間で線幅差が生じ、好ましくない。そのため、非対称性を補正することが必要となる。
【0032】
実施形態において、フーリエ変換面9の光源側に第3遮光部8が配置される。第3遮光部8は、例えば、フーリエ変換面9の位置からややデフォーカスした位置に配置される。積算有効光源(積算入射角度分布)を補正するために、第3遮光部8を用いることが可能である。図4に、第3遮光部8の構成を示す。第3遮光部8は、例えば4枚の遮光板で構成されており、4枚の遮光板のそれぞれは、X方向またはY方向に独立して駆動させることができる。例えば、図3に示された積算有効光源の場合、2枚の遮光板をX方向に閉じる方向に駆動させ、X方向の光を部分的にケラせることによって、積算有効光源の非対称性を調整することができる。遮光部の代わりにフィルタを適用して調整してもよい。
【0033】
従来、フーリエ変換面9の分布は一様であったが、本実施形態では、図5(a)に示されるように、回折光学素子6が、Y方向に対して一様でない分布になるように設計される。回折光学素子6は、第1遮光部18と第2遮光部20とによって被照明面に生じる積算有効光源に関して、走査露光の走査方向(Y方向)と該走査方向と直交する非走査方向(X方向)との差を低減する回折特性を有する。具体的には、Y方向について、フーリエ変換面の分布と第1遮光部18および第2遮光部20により有効光源が非対称になる分とを相殺することにより、図5(b)に示されるように、積算有効光源のY方向の光強度分布が一定となるようにする。この結果、積算有効光源のX方向とY方向が対称になる。これにより、第3遮光部8を適用して非対称性の調整を行う必要がなくなる。このため、第3遮光部8を適用することによる像面照度の低下がなくなり、露光装置のスループットの観点で有利である。
【0034】
<第2実施形態>
第2実施形態は、ズームレンズユニット11を用いて、σ値を変更して使用する際の例である。ズームレンズユニット11を駆動させてズームを変えると、第1遮光部18および第2遮光部20でのケラレの影響が変わり、積算有効光源の非対称性が変化する。そのため、1種類の回折光学素子を用いた場合、全てのズームで積算有効光源の非対称性を十分に小さくすることは困難である。よって、本実施形態では第3遮光部8も併用する。
【0035】
図6は、ズームレンズユニット11を駆動させたときの、σ値と積算有効光源の非対称性との関係を示したグラフである。図6に示されているように、従来技術では、どのσ値についても、積算有効光源に非対称性がある。一方、本実施形態では、回折光学素子6は、ズームレンズユニット11により変更可能なσ値の範囲の中心値において、積算有効光源に関して走査方向(Y方向)と非走査方向(X方向)との差が低減するような回折特性を有するように設計される。それにより、σ値の駆動範囲の積算有効光源の非対称性が従来技術に対して小さくなる。
【0036】
図7は、図6に示されるような従来の非対称性を持つ積算有効光源で露光した場合の縦方向のパターンと横方向のパターンの線幅差を光学像シミュレーションによって求めた結果である。このグラフから、従来技術よりも本実施形態の方が、縦方向のパターンと横方向のパターンの線幅差が小さいことが分かる。
【0037】
実際に装置を使用するときには、図6に示されるような積算有効光源の非対称性の大きさをスタートとして、使用するσに応じ、第3遮光部8を用いて非対称性の調整を行う。すなわち、第3遮光部8は、ズームレンズユニットの状態(使用されるσ値)に応じて調整される。従来例と比べて、使用するσ値の範囲で非対称性の小さい本実施形態の方が、非対称性を調整すべき量が少ないため、第3遮光部8適用分の像面照度の低下が少なく、露光装置のスループットの観点で有利である。
【0038】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態に係る物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記の露光装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板を露光する工程)と、かかる工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0039】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0040】
1:光源、6:回折光学素子、11:ズームレンズユニット、18:第1遮光部、19:マスキングユニット、20:第2遮光部、24:レチクル(原版)、26:投影光学系、27:基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7