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特許7446072開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置、開閉体装置並びに開閉体制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置、開閉体装置並びに開閉体制御方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/68 20060101AFI20240301BHJP
   E05F 15/665 20150101ALI20240301BHJP
   E05F 15/43 20150101ALI20240301BHJP
【FI】
E06B9/68 Z
E06B9/68 A
E05F15/665
E05F15/43
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019172158
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2020193551
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019098030
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀正
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒平
(72)【発明者】
【氏名】岩田 保
(72)【発明者】
【氏名】高井 邦治
(72)【発明者】
【氏名】日高 和幸
(72)【発明者】
【氏名】大橋 利幸
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 翼
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和徳
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179736(JP,A)
【文献】特開平04-161095(JP,A)
【文献】特開2000-130058(JP,A)
【文献】特開2019-015166(JP,A)
【文献】特開2016-089486(JP,A)
【文献】特開2001-323758(JP,A)
【文献】特開2014-025222(JP,A)
【文献】特開2014-101738(JP,A)
【文献】特開平10-025980(JP,A)
【文献】特開2006-002531(JP,A)
【文献】特開2011-214292(JP,A)
【文献】特開2020-183625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00,9/02,9/06-9/18,
9/40-9/50,9/56-9/92
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉する開閉手段の開閉停の各動作を、モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知する開閉体装置の故障予知検知方法において、
前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知方法と、
前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知方法の少なくとも一方の感知方法を備え、
所定時間における前記モータ電流の変化の割合がしきい値以上となった時点又は所定時間経過後に底値に到達しなかった時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を実行し、
前記負荷感知方法によって前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知方法の感知状態に基づいて前記感知方法の故障及び不具合の発生を検知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知方法。
【請求項2】
開口部を開閉する開閉手段の開閉停の各動作を、モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知する開閉体装置の故障予知検知方法において、
前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知方法と、
前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知方法の少なくとも一方の感知方法を備え、
前記開閉手段の開閉動作時における前記モータ電流の平均値を求め、前記平均値にプラスマイナスの所定の数値を乗じて、所定巾を持ったしきい値波形を生成し、前記モータ電流が前記しきい値波形の所定巾の内側から突出した時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を実行し、
前記負荷感知方法によって前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知方法の感知状態に基づいて前記感知方法の故障及び不具合の発生を検知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、
前記開閉体装置は、前記開口部の周縁部に設けられた収納手段の両端に設けられたブラケット手段と、前記ブラケット手段に回動可能に軸支された巻取シャフト手段と、
前記モータの駆動力によって前記巻取シャフト手段を回転制御し、前記開閉手段を前記巻取シャフト手段に巻き取ったり巻き戻したりすることによって、前記開閉手段の開閉動作を制御する制御手段を備え、
前記ブラケット手段の特定個所の変形を検出してその検出信号を出力する歪検出手段、及び/又は前記ブラケット手段の特定個所の振動を検出してその検出信号を出力する振動検出手段を備え、
前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知方法。
【請求項4】
請求項に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、
前記モータの駆動力は、前記モータの主動スプロケット手段と前記巻取シャフト手段の従動スプロケット手段を連結するチェーン手段によって伝達されるように構成され、
前記歪検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の変形を検出する第1の歪検出手段と、
前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の変形を検出する第2の歪検出手段とから構成され、
前記振動検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の振動を検出する第1の振動検出手段と、
前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の振動を検出する第2の振動検出手段とから構成されることを特徴とする開閉体装置の故障予知検知方法。
【請求項5】
請求項又はに記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、
前記収納手段内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段及び/又は前記モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知方法。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、
前記故障及び不具合の発生を予知した場合は、故障予知ランプを点灯して故障及び不具合の発生する可能性があることを報知し、
前記故障及び不具合の発生を検知した場合には、故障発生ランプを点灯して故障及び不具合が発生したことを報知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知方法。
【請求項7】
開口部を開閉するように動作する開閉手段と、
モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御する制御手段とを備えた開閉体装置の前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知する開閉体装置の故障予知検知装置において、
前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知手段と、
前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知手段の少なくとも一方の感知手段を備え、
前記制御手段は、所定時間における前記モータ電流の変化の割合がしきい値以上となった時点又は所定時間経過後に底値に到達しなかった時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知手段を備え、
前記負荷感知手段が前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知手段の感知状態に基づいて前記感知手段の故障及び不具合の発生を検知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知装置。
【請求項8】
開口部を開閉するように動作する開閉手段と、
モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御する制御手段とを備えた開閉体装置の前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知する開閉体装置の故障予知検知装置において、
前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知手段と、
前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知手段の少なくとも一方の感知手段を備え、
前記制御手段は、前記開閉手段の開閉動作時における前記モータ電流の平均値を求め、前記平均値にプラスマイナスの所定の数値を乗じて、所定巾を持ったしきい値波形を生成し、前記モータ電流が前記しきい値波形の所定巾の内側から突出した時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知手段を備え、
前記負荷感知手段が前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知手段の感知状態に基づいて前記感知手段の故障及び不具合の発生を検知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、
前記開閉体装置は、前記開口部の周縁部に設けられた収納手段の両端に設けられたブラケット手段と、前記ブラケット手段に回動可能に軸支された巻取シャフト手段と、
前記モータの駆動力によって前記巻取シャフト手段を回転制御し、前記開閉手段を前記巻取シャフト手段に巻き取ったり巻き戻したりすることによって、前記開閉手段の開閉動作を制御する制御手段を備え、
前記ブラケット手段の特定個所の変形を検出してその検出信号を出力する歪検出手段、及び/又は前記ブラケット手段の特定個所の振動を検出してその検出信号を出力する振動検出手段を備え、
前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知装置。
【請求項10】
請求項に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、
前記モータの駆動力は、前記モータの主動スプロケット手段と前記巻取シャフト手段の従動スプロケット手段を連結するチェーン手段によって伝達されるように構成され、
前記歪検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の変形を検出する第1の歪検出手段と、
前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の変形を検出する第2の歪検出手段とから構成され、
前記振動検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の振動を検出する第1の振動検出手段と、
前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の振動を検出する第2の振動検出手段とから構成されることを特徴とする開閉体装置の故障予知検知装置。
【請求項11】
請求項又は10に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、
前記収納手段内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段、及び/又は前記モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知装置。
【請求項12】
請求項7から11までのいずれか1に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、
前記制御手段は、前記故障及び不具合の発生を予知した場合は、故障予知ランプを点灯して故障及び不具合の発生する可能性があることを報知し、
前記故障及び不具合の発生を検知した場合には、故障発生ランプを点灯して故障及び不具合が発生したことを報知することを特徴とする開閉体装置の故障予知検知装置。
【請求項13】
開口部を開閉するように動作する開閉手段と、
モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知又は検知する制御手段を備えた開閉体装置において、
前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知手段と、
前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知手段の少なくとも一方の感知手段を備え、
前記制御手段は、所定時間における前記モータ電流の変化の割合がしきい値以上となった時点又は所定時間経過後に底値に到達しなかった時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知手段を備え、
前記負荷感知手段が前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知手段の感知状態に基づいて前記感知手段の故障及び不具合の発生を検知することを特徴とする開閉体装置。
【請求項14】
開口部を開閉するように動作する開閉手段と、
モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知又は検知する制御手段を備えた開閉体装置において、
前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知手段と、
前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知手段の少なくとも一方の感知手段を備え、
前記制御手段は、前記開閉手段の開閉動作時における前記モータ電流の平均値を求め、前記平均値にプラスマイナスの所定の数値を乗じて、所定巾を持ったしきい値波形を生成し、前記モータ電流が前記しきい値波形の所定巾の内側から突出した時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知手段を備え、
前記負荷感知手段が前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知手段の感知状態に基づいて前記感知手段の故障及び不具合の発生を検知することを特徴とする開閉体装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の開閉体装置において、
前記開口部の周縁部に設けられた収納手段の両端に設けられたブラケット手段と、前記ブラケット手段に回動可能に軸支された巻取シャフト手段と、
前記モータの駆動力によって前記巻取シャフト手段を回転制御し、前記開閉手段を前記巻取シャフト手段に巻き取ったり巻き戻したりすることによって、前記開閉手段の開閉動作を制御する制御手段を備え、
前記ブラケット手段の特定個所の変形を検出してその検出信号を出力する歪検出手段、及び/又は前記ブラケット手段の特定個所の振動を検出してその検出信号を出力する振動検出手段を備え、
前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することを特徴とする開閉体装置。
【請求項16】
請求項15に記載の開閉体装置において、
前記モータの駆動力は、前記モータの主動スプロケット手段と前記巻取シャフト手段の従動スプロケット手段を連結するチェーン手段によって伝達されるように構成され、
前記歪検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の変形を検出する第1の歪検出手段と、
前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の変形を検出する第2の歪検出手段とから構成され、
前記振動検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の振動を検出する第1の振動検出手段と、
前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の振動を検出する第2の振動検出手段とから構成されることを特徴とする開閉体装置。
【請求項17】
請求項1又は1に記載の開閉体装置において、
前記収納手段内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段、及び/又は前記モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することを特徴とする開閉体装置。
【請求項18】
請求項13から17までのいずれか1に記載の開閉体装置において、
前記制御手段は、前記故障及び不具合の発生を予知した場合は、故障予知ランプを点灯して故障及び不具合の発生する可能性があることを報知し、
前記故障及び不具合の発生を検知した場合には、故障発生ランプを点灯して故障及び不具合が発生したことを報知することを特徴とする開閉体装置。
【請求項19】
請求項18に記載の開閉体装置において、
前記制御手段は、前記故障予知ランプが点灯している状態で、開ボタン又は閉ボタンが押し切り操作された場合は、その押し切り操作に対応した開動作又は閉動作を実行し、
前記故障発生ランプが点灯している状態で、開ボタン及び閉ボタンが操作された場合は、その操作を無効とし、開動作及び閉動作を実行しないことを特徴とする開閉体装置。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の開閉体装置において、
前記制御手段は、前記故障予知ランプ及び前記故障発生ランプが点灯していない状態で、閉ボタンが押し切り操作された場合は、通常の速度よりも早い高速で閉動作を実行することを特徴とする開閉体装置。
【請求項21】
開口部を開閉する開閉手段の開閉停の各動作を、モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知又は検知する開閉体制御方法において、
前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知方法と、
前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知方法の少なくとも一方の感知方法を備え、
所定時間における前記モータ電流の変化の割合がしきい値以上となった時点又は所定時間経過後に底値に到達しなかった時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を実行し、
前記負荷感知方法によって前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知方法の感知状態に基づいて前記感知方法の故障及び不具合の発生を検知することを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項22】
開口部を開閉する開閉手段の開閉停の各動作を、モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知又は検知する開閉体制御方法において、
前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知方法と、
前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知方法の少なくとも一方の感知方法を備え、
前記開閉手段の開閉動作時における前記モータ電流の平均値を求め、前記平均値にプラスマイナスの所定の数値を乗じて、所定巾を持ったしきい値波形を生成し、前記モータ電流が前記しきい値波形の所定巾の内側から突出した時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を実行し、
前記負荷感知方法によって前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知方法の感知状態に基づいて前記感知方法の故障及び不具合の発生を検知することを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の開閉体制御方法において、
前記開口部の周縁部に設けられた収納手段の両端に設けられたブラケット手段と、前記ブラケット手段に回動可能に軸支された巻取シャフト手段と、
前記モータの駆動力によって前記巻取シャフト手段を回転制御し、前記開閉手段を前記巻取シャフト手段に巻き取ったり巻き戻したりすることによって、前記開閉手段の開閉動作を制御する制御手段を備え、
前記ブラケット手段の特定個所の変形を検出してその検出信号を出力する歪検出手段、及び/又は前記ブラケット手段の特定個所の振動を検出してその検出信号を出力する振動検出手段を備え、
前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項24】
請求項23に記載の開閉体制御方法において、
前記モータの駆動力は、前記モータの主動スプロケット手段と前記巻取シャフト手段の従動スプロケット手段を連結するチェーン手段によって伝達されるように構成され、
前記歪検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の変形を検出する第1の歪検出手段と、
前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の変形を検出する第2の歪検出手段とから構成され、
前記振動検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の振動を検出する第1の振動検出手段と、
前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の振動を検出する第2の振動検出手段とから構成されることを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項25】
請求項2又は2に記載の開閉体制御方法において、
前記収納手段内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段、及び/又は前記モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項26】
請求項21から25までのいずれか1に記載の開閉体制御方法において、
前記故障及び不具合の発生を予知した場合は、故障予知ランプを点灯して故障及び不具合の発生する可能性があることを報知し、
前記故障及び不具合の発生を検知した場合には、故障発生ランプを点灯して故障及び不具合が発生したことを報知することを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項27】
請求項26に記載の開閉体制御方法において、
前記故障予知ランプが点灯している状態で、開ボタン又は閉ボタンが押し切り操作された場合は、その押し切り操作に対応した開動作又は閉動作を実行し、
前記故障発生ランプが点灯している状態で、開ボタン及び閉ボタンが操作された場合は、その操作を無効とし、開動作及び閉動作を実行しないことを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の開閉体制御方法において、
前記故障予知ランプ及び前記故障発生ランプが点灯していない状態で、閉ボタンが押し切り操作された場合は、閉動作を通常の速度よりも早い高速で実行することを特徴とする開閉体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、工場、倉庫などの建物を含む構造物躯体の開口部などをシャッターなどの開閉体を用いて仕切るように構成された開閉体装置の故障や不具合を予知し検知する開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置、開閉体装置並びに開閉体制御方法に係り、特に交流モータを用いて開閉体の開閉動作を制御するように構成された開閉体装置が正常時と違う状態にあることを検知することによって故障や不具合を予知し検知する開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置、開閉体装置並びに開閉体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッターカーテンなどのような開閉体装置は、住宅、ビル、工場、倉庫、車庫などの建物を含む構造物躯体の開口部や窓部あるいは内部の通路や空間などの開口部に設置され、その開閉体を移動させることによってその開口部を開放、閉鎖するものである。この開閉体装置は、多数の短冊状のスラット材からなるスラットカーテン、多数のパイプ材をリンク材などで連結させてなるパイプグリルカーテン、一枚状あるいは多数連結されたパネル材からなるパネルカーテン、ネット材からなるネットカーテン、合成樹脂あるいは布繊維製のシート材からなるシートカーテン、あるいはこれらの複合部材などからなる複合カーテンなどの開閉体を、開口部の上部から繰り出し下降させて開口部全体を閉鎖するように構成されている。このような開閉体装置は、開閉体の開閉動作を電動で行なう場合が多い。電動の開閉体装置としては、電動シャッター装置、電動ドア装置、電動オーニング装置などがある。
【0003】
電動の開閉体装置の中には、開閉体装置の故障を知らせるための表示ランプ、メンテナンス時期を知らせる表示ランプ、動作数を知らせる動作カウンタなどが制御盤等に設けられているが、故障の前兆や予兆を知らせる故障予知の表示ランプ等は存在しない。
【0004】
特許文献1には、開閉動作が正常に行われるか否かを確認する機能を備えたシャッターとして、複数のセンサの動作確認及び断線検出を短時間で確実に実行するようにしたものが記載してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-16239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のものは、複数のセンサの動作確認及び断線検出を行うものであり、故障の前兆や予兆を知らせるものではない。すなわち、故障の予兆又は前兆時には、シャッターの部品劣化、部品締結部分の緩み、溶接外れ等に伴い、モータトルク電流が通常の動作時のものと異なる変化を示す場合がある。また、シャッター各部材の振動等がモータトルク電流に影響を与え、所定の閾値を越えることなどがある。故障の予知とは、このような故障する前における故障の予兆又は前兆を捉え、それを操作者等に報知するシステムのことである。しかし、従来はこのような故障の前兆又は予兆を予知し、それを操作者等のユーザーに報知するものは存在しなかった。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、開閉体装置の故障及び不具合の発生の前兆又は予兆を予知又は検知することのできる開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置、開閉体装置並びに開閉体制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開閉体装置の故障予知検知方法の第1の特徴は、開口部を開閉する開閉手段の開閉停の各動作を、モータの駆動力によって制御する開閉体装置の故障予知検知方法において、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における運転状況を常時観察し、前記観察して得たデータに基づいて正常時と異なる運転状態を検出することによって故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
これは、モータの駆動力によって制御される開閉体装置の各動作時における運転状況として、モータ駆動時の電流・電圧を常時観察し、観察して得られた電流波形・電圧波形等から正常時の電流波形・電圧波形を把握しておき、開閉体装置の開閉停の動作制御時の電流波形・電圧波形が正常時と異なる運転状態になった場合に故障及び不具合の発生を予知するようにしたものである。なお、開閉体装置の各動作時における運転状況には、モータ回転数検出器によって検出された回転数、モータ温度検出器によって検出されたモータ温度、モータ振動検出器によって検出された振動信号、ブラケット振動検出器によって検出されたブラケットの振動、ブラケット歪検出器によって検出されたブラケット歪、ブラケット傾き検出器によって検出されたブラケットの傾き、マイクロフォンによって検出されたケース内の動作音などが該当し、これらの全てが故障予知検知の観察対象となる。これらの観察対象となる各検出器(センサ)によって検出されたデータは、メモリに蓄積され、後で解析手段等によって解析され、故障及び不具合の発生の予知又は検知に利用される。
【0009】
本発明の開閉体装置の故障予知検知方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、三相交流モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知することにある。
これは、モータが三相交流モータで構成され、このモータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら開閉手段の開閉停の各動作をベクトル制御する場合に、そのモータ電流の変化を常時観察し、その観察して得られたモータ電流の波形に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知するようにしたものである。
【0010】
本発明の開閉体装置の故障予知検知方法の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知方法と、前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知方法の少なくとも一方の感知方法を備え、所定時間における前記モータ電流の変化の割合がしきい値以上となった時点又は所定時間経過後に底値に到達しなかった時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を実行し、前記負荷感知方法によって前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知方法の感知状態に基づいて前記感知方法の故障及び不具合の発生を検知することにある。
【0011】
これは、開閉体装置が光学系の感知方法及び/又は座板スイッチなどの接触式の感知方法を備えている場合に、モータ電流に基づいて障害物を感知するモータ負荷感知方式の障害物検出部を利用して、光学系の感知方法及び/又は座板スイッチなどの接触式の感知方法の故障及び不具合の発生を検知するようにしたものである。すなわち、開閉手段の閉動作時に、モータ電流値(トルク)は、図3及び図4に示すように、一定間隔で脈動しながら右肩上がりの直線又は曲線に沿って徐々に大きくなるという波形w1を示すので、この波形w1の変化量Δiを常時検出し、変化量Δiがしきい値以上となった時点又は所定時間t1,t2経過後に底値に到達しなかった時点で開閉手段に障害物が接触したことを感知する。従って、モータ負荷感知方式の障害物検出部が障害物を感知した場合に、光学系の感知方法及び/又は座板スイッチなどの接触式の感知方法のいずれか一方又は両方が障害物を感知できなかったときは、その感知方法に何らかの故障及び不具合が発生していることを検知することになる。
【0012】
本発明の開閉体装置の故障予知検知方法の第4の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知方法と、前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知方法の少なくとも一方の感知方法を備え、前記開閉手段の開閉動作時における前記モータ電流の平均値を求め、前記平均値にプラスマイナスの所定の数値を乗じて、所定巾を持ったしきい値波形を生成し、前記モータ電流が前記しきい値波形の所定巾の内側から突出した時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を実行し、前記負荷感知方法によって前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知方法の感知状態に基づいて前記感知方法の故障及び不具合の発生を検知することにある。
【0013】
これは、モータ負荷感知方式の障害物検出部として、開閉手段の開閉動作を繰り返し実行し、図5のように変化する波形を複数サンプリングし、そのサンプリングした波形の平均値を算出し、平均波形w10を生成し、さらに平均波形w10に±1.1~1.3を乗じ、所定巾を持ったしきい値波形w3,w4を生成し、モータ電流値がしきい値波形w3,w4の所定巾の内側から突出した時点で開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を採用したものである。平均波形w10に乗じる数値は、±αのように同じ値αを乗じてもいいし、+α,-βのようにそれぞれ異なる値α,βを乗じるようにしてもよい。従って、前記第3の特徴に記載の故障予知検知方法と同様に、モータ負荷感知方式の障害物検出部が障害物を感知した場合に、光学系の感知方法及び/又は座板スイッチなどの接触式の感知方法のいずれか一方又は両方が障害物を感知できなかったときは、その感知方法に何らかの故障及び不具合が発生していることを検知することになる。
【0014】
本発明の開閉体装置の故障予知検知方法の第5の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、前記開閉体装置は、前記開口部の周縁部に設けられた収納手段の両端に設けられたブラケット手段と、前記ブラケット手段に回動可能に軸支された巻取シャフト手段と、前記モータの駆動力によって前記巻取シャフト手段を回転制御し、前記開閉手段を前記巻取シャフト手段に巻き取ったり巻き戻したりすることによって、前記開閉手段の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記ブラケット手段の特定個所の変形を検出してその検出信号を出力する歪検出手段及び/又は前記ブラケット手段の特定個所の振動を検出してその検出信号を出力する振動検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
【0015】
これは、開閉体装置の各動作時における運転状況を常時観察する手段として、ブラケット手段の特定個所の変形を検出する歪検出手段と、ブラケット手段の特定個所の振動を検出する振動検出手段の少なくとも一方からの検出信号を用いて、故障及び不具合の発生を予知又は検知するようにしたものである。
【0016】
図24の一覧表に示すように、歪検出手段である歪センサ63の開閉動作時におけるレジスタR1,R7のいずれか一方の値が「1」になった場合には、スラット片寄りの発生する可能性があるので、その予知を行うことになる。また、レジスタR1,R7の両方の値が「1」になった場合には、スラット片寄りが発生したことを意味するので、その検知を行うことになる。
【0017】
歪検出手段である歪センサ62の開動作時におけるレジスタR6、振動手段である加速度センサ60,61の開動作時におけるレジスタR8,R9のいずれか1又は複数のレジスタの値が「1」若しくは「2」になった場合には、スラット片下がりの発生する可能性があるので、その予知を行うことになる。また、レジスタR6,R8,R9の全てのレジスタの値が「2」になった場合には、スラット片下がりが発生したことを意味するので、その検知を行うことになる。
【0018】
歪検出手段である歪センサ62の開閉動作時におけるレジスタR0,R6、振動手段である加速度センサ60の開閉動作時におけるレジスタR2,R8のいずれか1又は複数のレジスタの値が「1」になった場合又は4個のレジスタR0,R6,R2,R8の半分以上のレジスタの値が「1」になった場合には、スプロケット芯ずれの発生する可能性があるので、その予知を行うことになる。また、レジスタR0,R6,R2,R8の全ての値が「1」になった場合には、スプロケット芯ずれが発生したことを意味するので、その検知を行うことになる。
【0019】
歪検出手段である歪センサ62の開閉動作時におけるレジスタR0,R1,R6,R7、振動手段である加速度センサ60,61の開閉動作時におけるレジスタR2,R3,R8,R9のいずれか1又は複数のレジスタの値が「1」又は「2」になった場合又は8個のレジスタR0,R1,R6,R7,R2,R3,R8,R9の半分以上のレジスタの値が「1」又は「2」になった場合には、ローラチェーン弛みの発生する可能性があるので、その予知を行うことになる。また、8個のレジスタR0,R1,R6,R7,R2,R3,R8,R9の全ての値が「2」になった場合には、ローラチェーン弛みが発生したことを意味するので、その検知を行うことになる。なお、巻取シャフト手段をダイレクトドライブ駆動(ギアレス)方式にて回転駆動するように構成された開閉体装置の場合は、ローラチェーンに関する予知検知は行われない。
【0020】
なお、図24の一覧表に示すように、スラット片寄りの予知及び検知を行うためには、1個の歪検出手段をモータ側に設ければよい。スラット片下がりの予知及び検知を行うためには、少なくとも1個の歪検出手段を巻取シャトフ手段側に設ければよい。開閉機固定ボルト弛みの予知及び検知を行うためには、少なくとも歪検出手段をモータ側と巻取シャフト側の両方に設ければよい。スプロケット芯ずれの予知及び検知を行うためには、少なくとも1個の歪検出手段を巻取シャトフ手段側に、1個の振動検出手段をモータ側にそれぞれ設ければよい。ローラチェーン弛みの予知及び検知を行うためには、歪検出手段及び振動検出手段のすくなくとも1個をモータ側又は巻取シャフト側に設ければよい。
【0021】
本発明の開閉体装置の故障予知検知方法の第6の特徴は、前記第5の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、前記モータの駆動力は、前記モータの主動スプロケット手段と前記巻取シャフト手段の従動スプロケット手段を連結するチェーン手段によって伝達されるように構成され、前記歪検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の変形を検出する第1の歪検出手段と、前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の変形を検出する第2の歪検出手段とから構成され、前記振動検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の振動を検出する第1の振動検出手段と、前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の振動を検出する第2の振動検出手段とから構成されることにある。
【0022】
これは、モータの主動スプロケット手段と巻取シャフト手段の従動スプロケット手段とを連結するチェーン手段を用いてモータの駆動力を伝達するように構成された開閉体装置において、歪検出手段と振動検出手段を巻取シャフト手段側とモータ側にそれぞれ設置するようにしたものである。これによって、スラット片寄り、スラット片下がり、開閉機固定ボルト弛み、スプロケット芯ずれ及びローラチェーン弛みを効率的に予知及び検知することが可能となる。
なお、第1及び第2の歪検出手段だけを設けてもよい。この場合は、スラット片寄り、スラット片下がり、開閉機固定ボルト弛み、スプロケット芯ずれ及びローラチェーン弛みの故障及び不具合の予知及び検知することができる。第1及び第2の振動検出手段だけを設けてもよい。この場合は、スラット片下がり、スプロケット芯ずれ及びローラチェーン弛みの故障及び不具合の発生を予知又は検知することができる。
【0023】
本発明の開閉体装置の故障予知検知方法の第7の特徴は、前記第5又は第6の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、前記収納手段内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段、及び/又は前記モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
これは、収納手段であるケース内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段(マイクロフォン)、モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段(クランプセンサ)を設けることによって、検出信号の変化に基づいて故障及び不具合の発生を効率的に予知及び検知できるようにしたものである。
なお、歪検出手段及び振動検出手段を用いることなく、動作音検出手段だけを用いることが可能であり、この場合は、スラット片下がり、スプロケット芯ずれ及びローラチェーン弛みの故障及び不具合を予知又は検知することが可能である。また、歪検出手段及び振動検出手段を用いることなく、電流検出手段だけを用いるも可能であり、この場合は、ローラチェーン弛みの故障及び不具合を予知又は検知することが可能である。
【0024】
本発明の開閉体装置の故障予知検知方法の第8の特徴は、前記第3から第7までのいずれか1の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法において、前記故障及び不具合の発生を予知した場合は、故障予知ランプを点灯して故障及び不具合の発生する可能性があることを報知し、前記故障及び不具合の発生を検知した場合には、故障発生ランプを点灯して故障及び不具合が発生したことを報知することにある。
これは、故障及び不具合の発生を予知した場合は故障予知ランプを、故障及び不具合を検知した場合は故障発生ランプを、それぞれ点灯して操作者に報知するようにしたものである。なお、開閉体装置が正常運転状態にある場合は、正常運転表示ランプを点灯する。
【0025】
本発明の開閉体装置の故障予知検知装置の第1の特徴は、開口部を開閉するように動作する開閉手段と、モータの駆動力によって前記開閉手段の開閉停の各動作を制御する制御手段を備えた開閉体装置の故障予知検知装置であって、前記制御手段は、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における運転状況を常時観察し、前記観察して得たデータに基づいて正常時と異なる運転状態を検知することによって故障及び不具合の発生を予知することにある。
これは、前記第1の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法に対応した故障予知検知装置の発明である。
【0026】
本発明の開閉体装置の故障予知検知装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、前記制御手段は、三相交流モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を予知することにある。
これは、前記第2の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法に対応した故障予知検知装置の発明である。
【0027】
本発明の開閉体装置の故障予知検知装置の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知手段と、前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知手段の少なくとも一方の感知手段を備え、前記制御手段は、所定時間における前記モータ電流の変化の割合がしきい値以上となった時点又は所定時間経過後に底値に到達しなかった時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知手段を備え、前記負荷感知手段が前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知手段の感知状態に基づいて前記感知手段の故障及び不具合の発生を検知することにある。
これは、前記第3の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法に対応した故障予知検知装置の発明である。
【0028】
本発明の開閉体装置の故障予知検知装置の第4の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知手段と、前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知手段の少なくとも一方の感知手段を備え、前記制御手段は、前記開閉手段の開閉動作時における前記モータ電流の平均値を求め、前記平均値にプラスマイナスの所定の数値を乗じて、所定巾を持ったしきい値波形を生成し、前記モータ電流が前記しきい値波形の所定巾の内側から突出した時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知手段を備え、前記負荷感知手段が前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知手段の感知状態に基づいて前記感知手段の故障及び不具合の発生を検知することにある。
これは、前記第4の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法に対応した故障予知検知装置の発明である。
【0029】
本発明の開閉体装置の故障予知検知装置の第5の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、前記開閉体装置は、前記開口部の周縁部に設けられた収納手段の両端に設けられたブラケット手段と、前記ブラケット手段に回動可能に軸支された巻取シャフト手段と、前記モータの駆動力によって前記巻取シャフト手段を回転制御し、前記開閉手段を前記巻取シャフト手段に巻き取ったり巻き戻したりすることによって、前記開閉手段の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記ブラケット手段の特定個所の変形を検出してその検出信号を出力する歪検出手段、及び/又は前記ブラケット手段の特定個所の振動を検出してその検出信号を出力する振動検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
これは、前記第6の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法に対応した故障予知検知装置の発明である。
【0030】
本発明の開閉体装置の故障予知検知装置の第6の特徴は、前記第5の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、前記モータの駆動力は、前記モータの主動スプロケット手段と前記巻取シャフト手段の従動スプロケット手段を連結するチェーン手段によって伝達されるように構成され、前記歪検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の変形を検出する第1の歪検出手段と、前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の変形を検出する第2の歪検出手段とから構成され、前記振動検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の振動を検出する第1の振動検出手段と、前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の振動を検出する第2の振動検出手段とから構成されることにある。
これは、前記第6の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法に対応した故障予知検知装置の発明である。
【0031】
本発明の開閉体装置の故障予知検知装置の第7の特徴は、前記第5又は第6の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、前記収納手段内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段、及び/又は前記モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
これは、前記第7の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法に対応した故障予知検知装置の発明である。
【0032】
本発明の開閉体装置の故障予知検知装置の第8の特徴は、前記第3から第7までのいずれか1の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知装置において、前記制御手段は、前記故障及び不具合の発生を予知した場合は、故障予知ランプを点灯して故障及び不具合の発生する可能性があることを報知し、前記故障及び不具合の発生を検知した場合には、故障発生ランプを点灯して故障及び不具合が発生したことを報知することにある。
これは、前記第8の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法に対応した故障予知検知装置の発明である。
【0033】
本発明の開閉体装置の第1の特徴は、開口部を開閉するように動作する開閉手段と、モータの駆動力によって前記開閉手段の開閉停の各動作を制御する制御手段を備えた開閉体装置であって、前記制御手段は、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における運転状況を常時観察し、前記観察して得たデータに基づいて正常時と異なる運転状態を検知することによって故障及び不具合の発生を検知及び予知することにある。
これは、前記第1の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置を備えた開閉体装置の発明である。
【0034】
本発明の開閉体装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置において、前記制御手段は、三相交流モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を検知及び予知することにある。
これは、前記第2の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置を備えた開閉体装置の発明である。
【0035】
本発明の開閉体装置の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体装置において、前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知手段と、前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知手段の少なくとも一方の感知手段を備え、前記制御手段は、所定時間における前記モータ電流の変化の割合がしきい値以上となった時点又は所定時間経過後に底値に到達しなかった時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知手段を備え、前記負荷感知手段が前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知手段の感知状態に基づいて前記感知手段の故障及び不具合の発生を検知することにある。
これは、前記第3の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置を備えた開閉体装置の発明である。
【0036】
本発明の開閉体装置の第4の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体装置において、前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知手段と、前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知手段の少なくとも一方の感知手段を備え、前記制御手段は、前記開閉手段の開閉動作時における前記モータ電流の平均値を求め、前記平均値にプラスマイナスの所定の数値を乗じて、所定巾を持ったしきい値波形を生成し、前記モータ電流が前記しきい値波形の所定巾の内側から突出した時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知手段を備え、前記負荷感知手段が前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知手段の感知状態に基づいて前記感知手段の故障及び不具合の発生を検知することにある。
これは、前記第4の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置を備えた開閉体装置の発明である。
【0037】
本発明の開閉体装置の第5の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置において、前記開口部の周縁部に設けられた収納手段の両端に設けられたブラケット手段と、前記ブラケット手段に回動可能に軸支された巻取シャフト手段と、 前記モータの駆動力によって前記巻取シャフト手段を回転制御し、前記開閉手段を前記巻取シャフト手段に巻き取ったり巻き戻したりすることによって、前記開閉手段の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記ブラケット手段の特定個所の変形を検出してその検出信号を出力する歪検出手段、及び/又は前記ブラケット手段の特定個所の振動を検出してその検出信号を出力する振動検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
これは、前記第5の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置を備えた開閉体装置の発明である。
【0038】
本発明の開閉体装置の第6の特徴は、前記第5の特徴に記載の開閉体装置において、前記モータの駆動力は、前記モータの主動スプロケット手段と前記巻取シャフト手段の従動スプロケット手段を連結するチェーン手段によって伝達されるように構成され、前記歪検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の変形を検出する第1の歪検出手段と、前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の変形を検出する第2の歪検出手段とから構成され、前記振動検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の振動を検出する第1の振動検出手段と、前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の振動を検出する第2の振動検出手段とから構成されることにある。
これは、前記第6の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置を備えた開閉体装置の発明である。
【0039】
本発明の開閉体装置の第7の特徴は、前記第5又は第6の特徴に記載の開閉体装置において、前記収納手段内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段、及び/又は前記モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
これは、前記第7の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置を備えた開閉体装置の発明である。
【0040】
本発明の開閉体装置の第8の特徴は、前記第1から第7までのいずれか1の特徴に記載の開閉体装置において、前記制御手段は、前記故障及び不具合の発生を予知した場合は、故障予知ランプを点灯して故障及び不具合の発生する可能性があることを報知し、前記故障及び不具合の発生を検知した場合には、故障発生ランプを点灯して故障及び不具合が発生したことを報知することにある。
これは、前記第8の特徴に記載の開閉体装置の故障予知検知方法及び故障予知検知装置を備えた開閉体装置の発明である。
【0041】
本発明の開閉体装置の第9の特徴は、前記第8の特徴に記載の開閉体装置において、前記制御手段は、前記故障予知ランプが点灯している状態で、開ボタン又は閉ボタンが押し切り操作された場合は、その押し切り操作に対応した開動作又は閉動作を実行し、
前記故障発生ランプが点灯している状態で、開ボタン及び閉ボタンが操作された場合は、その操作を無効とし、開動作及び閉動作を実行しないことにある。
これは、故障予知ランプが点灯している状態で開ボタン又は閉ボタンが押し切り操作された場合には、その操作に応じて開閉手段の開動作又は閉動作を実行し、故障発生ランプが点灯している状態で開ボタン又は閉ボタンが操作(押し切り操作も含む)されても、その操作自体を無効にしたものである。故障予知ランプが点灯した時点ですなわち故障の前兆が発生した段階で、部品交換及び修理等を実施することによって、開閉体装置に故障が発生して長時間停止することを回避することになる。
【0042】
本発明の開閉体装置の第10の特徴は、前記第8又は第7の特徴に記載の開閉体装置において、前記制御手段は、前記故障予知ランプ及び前記故障発生ランプが点灯していない状態で、閉ボタンが押し切り操作された場合は、通常の速度よりも早い高速で閉動作を実行することにある。
これは、故障予知ランプ及び故障発生ランプが点灯していない状態、すなわち正常運転表示ランプが点灯している開閉体装置が正常運転状態にある場合は、閉ボタンが押し切り操作された場合に限って、通常の速度よりも早い速度(高速)で閉動作を実行するようにしたものである。近年、開閉手段の開閉速度が高速化されており、開閉動作時に開閉体装置近辺の監視が一層重要となっている。そこで、操作者が閉ボタンを操作してその場から離れた場合は通常の速度(高速動作よりも遅い速度)で閉動作するようにした。すなわち押し切り操作時の場合だけ高速で閉動作できるようにして、それ以外の場合は通常速度で動作するようにしている。これによって、開閉体装置の安全性・信頼性の向上を図っている。
【0043】
本発明の開閉体制御方法の第1の特徴は、開口部を開閉する開閉手段の開閉停の各動作を、モータの駆動力によって制御する開閉体制御方法において、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における運転状況を常時観察し、前記観察して得たデータに基づいて正常時と異なる運転状態を検知することによって故障及び不具合の発生を検知及び予知することにある。
これは、前記第1の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0044】
本発明の開閉体制御方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体制御方法において、三相交流モータに供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、前記励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら前記開閉手段の開閉停の各動作を制御し、前記開閉手段の開閉停の各動作制御時における前記モータ電流の変化に基づいて開閉体装置の故障及び不具合の発生を検知及び予知することにある。
これは、前記第2の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0045】
本発明の開閉体制御方法の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知方法と、前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知方法の少なくとも一方の感知方法を備え、所定時間における前記モータ電流の変化の割合がしきい値以上となった時点又は所定時間経過後に底値に到達しなかった時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を実行し、前記負荷感知方法によって前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知方法の感知状態に基づいて前記感知方法の故障及び不具合の発生を検知することにある。
これは、前記第3の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0046】
本発明の開閉体制御方法の第4の特徴は、前記第2の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記開口部の左右両端にそれぞれ設けられた投光器及び受光器によって形成される光路を感知領域とし、前記光路上に存在する障害物を感知する第1の感知方法と、前記開閉手段の移動方向先端部に設けられ、障害物に接触することによって前記障害物の存在を感知する第2の感知方法の少なくとも一方の感知方法を備え、前記開閉手段の開閉動作時における前記モータ電流の平均値を求め、前記平均値にプラスマイナスの所定の数値を乗じて、所定巾を持ったしきい値波形を生成し、前記モータ電流が前記しきい値波形の所定巾の内側から突出した時点で前記開閉手段に障害物が接触したことを感知する負荷感知方法を実行し、前記負荷感知方法によって前記障害物の存在を感知した場合に、前記感知方法の感知状態に基づいて前記感知方法の故障及び不具合の発生を検知することにある。
これは、前記第4の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0047】
本発明の開閉体制御方法の第5の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記開口部の周縁部に設けられた収納手段の両端に設けられたブラケット手段と、前記ブラケット手段に回動可能に軸支された巻取シャフト手段と、前記モータの駆動力によって前記巻取シャフト手段を回転制御し、前記開閉手段を前記巻取シャフト手段に巻き取ったり巻き戻したりすることによって、前記開閉手段の開閉動作を制御する制御手段を備え、前記ブラケット手段の特定個所の変形を検出してその検出信号を出力する歪検出手段、及び/又は前記ブラケット手段の特定個所の振動を検出してその検出信号を出力する振動検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
これは、前記第5の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0048】
本発明の開閉体制御方法の第6の特徴は、前記第5の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記モータの駆動力は、前記モータの主動スプロケット手段と前記巻取シャフト手段の従動スプロケット手段を連結するチェーン手段によって伝達されるように構成され、前記歪検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の変形を検出する第1の歪検出手段と、前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の変形を検出する第2の歪検出手段とから構成され、前記振動検出手段は、前記ブラケット手段の前記巻取シャフト手段側に設けられ、前記巻取シャフト手段側の振動を検出する第1の振動検出手段と、前記ブラケット手段の前記モータ側に設けられ、前記モータ側の振動を検出する第2の振動検出手段とから構成されること
これは、前記第6の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0049】
本発明の開閉体制御方法の第7の特徴は、前記第5又は第6の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記収納手段内の動作音を検出してその検出信号を出力する動作音検出手段、及び/又は前記モータに供給される電流を検出してその検出信号を出力する電流検出手段を備え、前記検出信号の変化に基づいて前記故障及び不具合の発生を予知又は検知することにある。
これは、前記第10の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0050】
本発明の開閉体制御方法の第8の特徴は、前記第1から第7までのいずれか1の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記故障及び不具合の発生を予知した場合は、故障予知ランプを点灯して故障及び不具合の発生する可能性があることを報知し、前記故障及び不具合の発生を検知した場合には、故障発生ランプを点灯して故障及び不具合が発生したことを報知することにある。
これは、前記第8の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0051】
本発明の開閉体制御方法の第9の特徴は、前記第8の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記故障予知ランプが点灯している状態で、開ボタン又は閉ボタンが押し切り操作された場合は、その押し切り操作に対応した開動作又は閉動作を実行し、前記故障発生ランプが点灯している状態で、開ボタン及び閉ボタンが操作された場合は、その操作を無効とし、開動作及び閉動作を実行しないことにある。
これは、前記第9の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0052】
本発明の開閉体制御方法の第10の特徴は、前記第8又は第9の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記故障予知ランプ及び前記故障発生ランプが点灯していない状態で、閉ボタンが押し切り操作された場合は、閉動作を通常の速度よりも早い高速で実行することあにある。
これは、前記第10の特徴に記載の開閉体装置に対応した開閉体制御方法の発明である。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、開閉体装置の故障及び不具合の発生の前兆又は予兆を予知又は検知することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明に係るシャッター装置の概略構成の第1の実施の形態を示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る開閉体装置の制御装置の概略構成を示す図である。
図3】ベクトル制御によってシャッターを下降動作している時のモータトルク電流値の変化の一例を示す図である。
図4】ベクトル制御によってシャッターを下降動作している時に、シャッター先端部が障害物に接触した時のモータトルク電流値の変化の一例を示す図である。
図5図4のモータトルク電流値の波形によって障害物を感知する場合の別の変形例を示す図である。
図6図4又は図5に示したモータトルク電流値に基づいて障害物を感知した場合の障害物検出部の故障検出処理の一例を示すフローチャート図である。
図7図4及び図5に示すモータトルク電流値に基づいて障害物を感知する方法をモータ負荷感知方式の障害物検出部として応用し、光電センサ方式及び座板感知レバー方式の障害物検出部と共に障害物を感知するようにした場合の処理の一例を示すフローチャート図である。
図8】機械的な故障予知状態の中の振動系及び衝撃系の故障予知状態に対応したモータトルク電流値の変化の様子を示す図である。
図9図2に示す正常運転表示ランプ、故障予知ランプ及び故障発生ランプの点灯処理の一例を示すフローチャート図である。
図10図9の正常運転表示ランプ、故障予知ランプ及び故障発生ランプの点灯処理の変形例を示すフローチャート図である。
図11】既設の開閉体装置の一例であって、回転体手段をモータ等の駆動力によって正逆回転駆動することによって、開閉体を開閉動作させるシャッター装置を示す図である。
図12図11のシャッター装置を左側面から見た断面形状の概略を示す図である。
図13図11のシャッター装置のシャッターケースのブラケットを右側面から見た概略図である。
図14】開閉体装置にスラット片寄りという現象が発生した場合を模式的に表した図である。
図15】スラット片寄りが発生した状態でシャッター装置が開閉動作した時の歪センサの検出信号の実測値を示す図である。
図16】開閉体装置にスラット片下がりという現象が発生した場合を模式的に表した図である。
図17】スラット片下がりが発生した状態でシャッター装置が閉動作した時の歪センサ、加速度センサ及びマイクロフォンの検出信号の実測値を示す図である。
図18】スラット片下がりが発生した状態でシャッター装置が開動作した時の歪センサ、加速度センサ及びマイクロフォンの検出信号の実測値を示す図である。
図19】開閉機40の固定ボルトに弛みが発生した状態で、シャッター装置が開閉動作した時の歪センサの検出信号の実測値を示す図である。
図20】スプロケット同士の芯ずれが発生した状態でシャッター装置が閉動作した時の歪センサ、加速度センサ及びマイクロフォンの検出信号の実測値を示す図である。
図21】スプロケット同士の芯ずれが発生した状態でシャッター装置が開動作した時の歪センサ、加速度センサ及びマイクロフォンの検出信号の実測値を示す図である。
図22】ローラチェーンに弛みが発生した状態でシャッター装置が閉動作した時の歪センサ、加速度センサ、マイクロフォン及び電流クランプの検出信号の実測値を示す図である。
図23】ローラチェーンに弛みが発生した状態でシャッター装置が開動作した時の歪センサ、加速度センサ、マイクロフォン及び電流クランプの検出信号の実測値を示す図である。
図24図15図17図23の検知結果に対応した故障検知状態の一覧表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下添付図面に従って本発明に係る開閉体装置の好ましい実施の形態について説明する。この実施の形態では開閉手段として上下に開閉動作されるシャッター装置を例に説明する。図1は、本発明に係るシャッター装置の概略構成の第1の実施の形態を示す図である。図1において、開閉体装置10は出入口の開口部を上下方向に移動することによって開閉するシャッター装置である。
【0056】
開閉体装置10は、建物の開口部に設けられるものであり、基本的にシャッターケース11、シャッターカーテン12、ガイドレール13,14、巻取シャフト15、三相交流モータ17、制御装置18、操作スイッチ19、リミットスイッチ20、光電センサ22,23及び障害物感知器25などを含んで構成される。
開閉体装置10は、通常時には、操作スイッチ19の操作に応じて、開閉機である三相交流モータ17を駆動して開閉制御するようになっている。さらに、開閉体装置10では、シャッターカーテン12が巻取シャフト15に巻き取られている開放状態を機械的な保持機構(図示せず)によって保持しており、この開放状態で外部から火災の発生などを示す非常信号BSなどが制御装置18に入力された場合には、その保持機構による開放状態の保持が解除されて、シャッターカーテン12は、その自重で自然降下して開口部を自動閉鎖する機能を備えていてもよい。
【0057】
ガイドレール13,14は、シャッターカーテン12の両端部に接するように建物の開口部の両端側に設けられ、まぐさ部から床面まで掛け渡された断面形状がコの字型の案内溝を有する金属製部材又はこれと同等の部材で構成されている。シャッターカーテン12は、このガイドレール13,14の各案内溝に沿って上昇下降し、開口部の開閉動作を行う。
【0058】
巻取シャフト15は、シャッターケース11の両端側に回動可能に設けられ、シャッターカーテン12を巻き取ったり巻き戻したりする。
開閉機を構成するブレーキ16と三相交流モータ17が巻取シャフト15にそれぞれ設けてある。三相交流モータ17は、巻取シャフト15をダイレクトドライブ駆動(ギアレス)方式にて回転駆動するように構成された三相交流モータである。なお、ギア付きの三相交流モータでもよいことは言うまでもない。
制御装置18は、ブレーキ16及び三相交流モータ17の動作を制御するものであり、ブレーキ16又は三相交流モータ17のいずれか一方のシャッターケース内に設けられる。
【0059】
三相交流モータ17には、その回転位置すなわちシャッターカーテン12の開閉位置と開閉状態を検出するための位置検出装置(図示せず)が設けられている。この位置検出装置は、パルス発生型のロータリーエンコーダ等で構成される。三相交流モータ17の回転に応じたパルス信号が制御装置18に出力されるので、三相交流モータ17の回転位置やシャッターカーテン12の閉鎖側先端部の開口部における位置などは、このパルスの発生状況に基づいて制御装置18が演算にて求めることになる。
【0060】
制御装置18は、マイクロコンピューター構成になっており、電源ラインから三相交流電圧200[V]の電力が三相交流モータ17に供給されている。制御装置18は、操作スイッチ19上の各操作スイッチの操作状態に対応した制御信号や三相交流モータ17に設けられた位置検出装置からの信号やプロテクタからの信号などに基づいて三相交流モータ17の回転を制御する。
【0061】
操作スイッチ19は、開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして、上昇(開)ボタン19A、停止(停)ボタン19B、下降(閉)ボタン19Cをそれぞれ有し、これら各ボタンの操作状態に応じた制御信号を制御装置18に出力する。
【0062】
光電センサ22,23は、人や自動車等の通過状態、及び物体等の存在を確認するために使用される障害物検出部であり、開口部の下側左右両端に設けられている。なお、図では、開口部の前後のいずれか一方の所定箇所に設けられているが、前後両方及び/又は開口部上方に設けるようにしてもよい。光電センサ22は、角柱状の投光器支持部材によって構成され、その反対側に同じ形状の受光器支持部材によって構成される光電センサ23が対となるように設けられている。これらの光電センサ22,23は、シャッターカーテン12の座板の長手方向寸法又は開口部の横幅寸法に相当する距離だけ互いに離間して配置されている。
【0063】
光電センサ22には、例えば赤外線等の光を自ら発光する発光素子からなる投光器が支持されている。一方、光電センサ23には、光を自ら受光感知する受光素子からなる受光器が支持されている。光電センサ22の投光器および光電センサ23の受光器は、互いに向かい合って配置され、開口部の下側位置で座板に沿って走る物体感知用の光線の光路24を形成している。光電センサ22,23が光路24内で人や物体(自動車)を感知した場合には、スイッチング機構によって、その感知信号が制御装置18に送信される。図1において、光路24は、光電センサ22,23の物体感知領域を模式的に示したものである。
【0064】
障害物感知器25は、障害物に接触することによって移動する座板スイッチを用いた座板感知レバー方式の障害物検出部である。障害物感知器25は、シャッターカーテン12の下端部(座板)に無線送信機を備えており、座板スイッチの移動に対応した感知信号を制御装置18側の無線受信機26に送信し、また、その後の障害物の除去により座板スイッチの復帰移動時には、復帰信号を送信する構成となっている。障害物感知器25の無線送信機から制御装置18への信号の送信は、図のような無線方式に限らず、有線方式のものでもよい。また、シャッターカーテン12の下端部に障害物の接触で移動する座板スイッチの代わりに、障害物接触時の座板の移動力でガイドレールの高さ方向に沿って設けられたテープスイッチを押圧する構成や、テープスイッチから制御装置18に対し感知信号を有線出力する構成としてもよい。
【0065】
図2は、第1の実施の形態に係る開閉体装置の制御装置の概略構成を示す図である。制御装置18は、開閉体装置10の動作時に、外部から制御盤に入力される電流を検出する制御盤入力電流検出器を、故障検知用の各種センサ27の一つとして備えている。これは、制御装置18の動作時に入力される電流の値を常時観測し、通常とは異なる入力電流が発生した場合に、何らかの不具合が発生したことを検知するものである。また、制御装置18は、図示していないが、三相交流モータ17を駆動制御するモータドライブ回路や操作者に異常を報知するLED・ブザーなどを備えている。
【0066】
制御装置18は、操作スイッチ19上の各操作ボタンの操作状態に対応した制御信号、上限リミットスイッチ20A及び下限リミットスイッチ20Bからの接点信号に基づいて、インバータから構成されるモータドライブ回路を介して開閉機を構成する三相交流モータ17にモータ運転指令信号を出力し、ブレーキ16にブレーキ作動指令信号を出力し、三相交流モータ17の回転を制御する。三相交流モータ17には、過熱保護装置のひとつであるサーマルプロテクタ(図示せず)が接続されている。モータ運転指令信号は、三相交流モータ17に供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら制御するベクトル制御信号である。
【0067】
操作スイッチ19は、開閉停の各動作に対応した制御スイッチとして機能する開ボタン19A、停止ボタン19B及び閉ボタン19Cを備えている。操作スイッチ19は、各ボタンの操作状態に応じた制御信号を制御装置18に出力する。図2の実施の形態では、開ボタン19A及び閉ボタン19Cは手動操作自動復帰型のa接点で構成されており、通常はオフ状態にある。停止ボタン19Bは、手動操作残留型スイッチのb接点で構成され、通常はオン状態にある。
【0068】
上限リミットスイッチ20A及び下限リミットスイッチ20Bは、三相交流モータ17の回転位置に応じてオン・オフ状態を維持するものであり、シャッターカーテン12が上限又は下限位置に達すると、上限リミットスイッチ20A又は下限リミットスイッチ20Bの接点が開いて、シャッターカーテン12がこの上限位置又は下限位置に達したことを制御装置18に通知する。制御装置18は、シャッターカーテン12が上限又は下限位置に達すると、シャッターカーテン12を上限又は下限位置で停止させる。
【0069】
三相交流モータ17には、シャッター駆動回路からモータに供給される駆動電流及び駆動電圧を検出するモータトルク電流検出器(電流センサ)及びモータ駆動電圧検出器(電圧センサ)が故障検知用の各種センサ27として設けられている。モータトルク電流検出器(電流センサ)及びモータ駆動電圧検出器(電圧センサ)によって検出されたモータトルク電流及びモータ駆動電圧の値は制御装置18にフィードバックされる。図2では、モータトルク電流検出器のみを図示し、モータ駆動電圧検出器の図示は省略している。モータトルク電流検出器によって駆動電流が検出された場合、三相交流モータ17は駆動状態にあり、駆動電流が検出されないゼロの場合、三相交流モータ17は非駆動状態にあると判断できる。
【0070】
三相交流モータ17には、そのモータ回転数検出器、モータ温度検出器(温度センサ)、モータ振動検出器などが故障検知用の各種センサ27として設けられている。モータ回転数検出器によって検出された回転数、モータ温度検出器によって検出されたモータ温度、並びにモータ振動検出器によって検出された振動信号も制御装置18にフィードバックされ、故障予知用又は故障検知用の信号として利用される。
【0071】
三相交流モータ17には、モータの回転位置すなわちシャッターカーテン12の開閉位置と開閉状態を検出するための位置検出装置(図示せず)が設けられている。この位置検出装置は、パルス発生型のロータリーエンコーダ等で構成される。三相交流モータ17の回転に応じたパルス信号が制御装置18に出力されるので、三相交流モータ17の回転位置やシャッターカーテン12の閉鎖側先端部の開口部における位置などは、このパルスの発生状況に基づいて制御装置18が演算にて求めることになる。
【0072】
この実施の形態では、開閉体装置10の動作に関わる重要部品であるブラケットの振動を検出するブラケット振動検出器、ブラケットの傾きを検出するブラケット傾き検出器などが故障検知用の各種センサ27として、ブラケット本体に直接又は間接的に検出可能な位置に設けられている。ブラケット傾き検出器の値がシャッター動作に支障をきたすような値となった場合、電動による動作を無効とするための制御を行う。また、大規模な地震などで建物自体が変形し、開閉動作の実施によってシャッターカーテンが落下する可能性が発生していると思われるようなブラケット傾き検出器の値になった場合においても同様に電動による動作を無効とするための制御を行う。これによって、地震等の影響による開閉体装置10の構造変形を検出し、その動作を不能とし、シャッターカーテン自体の落下等を未然に防ぐことができる。
【0073】
この実施の形態では、上述のブラケット傾き検出器と同じ位置、又はそれとは異なる位置(例えば、開閉機内又はその周辺の建物部材)にブラケット振動検出器が故障検知用の各種センサ27として設けられている。ブラケット振動検出器は、地震の震度を計測する震度計やブラケット自体の振動を計測する振動計などで構成される。大規模震災直後に火災が発生した際に、直ちに閉鎖しなければならないような開閉体装置などの場合には、ブラケット振動検出器の値が所定値以上となった際に閉鎖動作を行うような制御を行う。一方、大規模震災直後に避難路を確保する必要のある開閉体装置については、地震発生時に、ブラケット振動検出器の値が所定値以上となった際に全開又は半開若しくは半閉の動作を行うような制御を行う。これによって避難経路を確保できるようにする。
【0074】
制御装置18は、光電センサ22の投光器と光電センサ23の受光器との間の光路24に人や物体(自動車)などが存在するか否かに応じて、シャッターカーテン12の開放動作及び/又は閉鎖動作を制御する。この実施の形態では、制御装置18は、光電センサ22に対する電源供給を遮断できるように構成されたスイッチング機構を備えている。スイッチング機構は、制御装置18からの制御信号に応じて動作するトランジスタ回路等にて構成されている。制御装置18は、所定の条件に合致した場合に光電センサ22への電源供給を一瞬遮断してから電源供給を復帰させることによって、光電センサ23の受光器の受光状態を確認し、故障等を検知している。
【0075】
各種表示ランプ30は、制御装置18の制御状態を視認可能に表示する表示ランプであり、通常は、電源ランプ、電池ランプ、座板ランプ、作動ランプ及び異常ランプなどから構成される。図2の実施の形態では、開閉体装置10が正常運転状態にあることを示す緑色の正常運転表示ランプ30aと、開閉体装置10に何らかの故障が発生する可能性が高い故障予知状態にあることを示す黄色の故障予知ランプ30bと、開閉体装置10に何らかの故障状態にあることを示す赤色の故障発生ランプ30cとを備えている。
リセットスイッチ31は、手動操作自動復帰型のa接点で構成されており、通常はオフ状態にあり、押圧操作されることによって、故障予知状態を解除する。このリセットスイッチ31は、故障を誤って検出した場合の復旧手段として利用される。
【0076】
故障予知状態には、電気的な故障予知状態と機械的な故障予知状態がある。電気的な故障予知状態には、開閉機である三相交流モータ17の固定ボルトの緩み,モータ加熱・振動、開閉機を構成するブレーキ16の動作不良,停止遅れ、制御装置18を含む制御盤内の各種電子部品の寿命診断、リミットスイッチ20の作動不良、光電センサ22,23及び障害物感知器25の障害物検出部の作動不良、操作スイッチ19の作動不良などが該当する。制御盤の故障予知には、稼働状況・温度・負荷率などの情報からインバータ自身が内部部品の寿命を計算することで検知することができる。
機械的な故障予知状態には、巻取シャフト15の溶接剥がれ,シャフト曲損,変形、ローラチェーンの歯飛び,引っ掛かり,変形、ブラケットの溶接剥がれ,アンカーボルトの緩み,変形、スラット及びその吊元の片寄り,脱落,変形、ガイドレール13,14の呑口の開き,変形などが該当する。ローラチェーンは、三相交流モータ17と巻取シャフト15とが主動スプロケットと従動スプロケットとで連結されている場合に該当する。
【0077】
各種センサ27を構成する制御盤入力電流検出器、モータトルク電流検出器(電流センサ)及びモータ駆動電圧検出器(電圧センサ)、モータ回転数検出器、モータ温度検出器(温度センサ)、モータ振動検出器、ブラケット振動検出器及びブラケット傾き検出器などの各検出器によって検出された情報(データ)は、制御装置18内のメモリに蓄積され、分析・解析されて、故障及び不具合の発生の予知に利用される。この故障及び不具合の発生の予知を行うためにAI等を利用することが好ましい。また、分析・解析される情報は、同様の開閉体装置10の複数台から抽出し、膨大なデータを平均化することによって作成することが可能となる。
【0078】
図3は、ベクトル制御によってシャッターを下降動作している時のモータトルク電流値の変化の一例を示す図である。各種センサ27の中のモータトルク電流検出器は、ベクトル制御時におけるモータ負荷(モータトルク電流値)を検出しながら、そのモータトルク電流値の変化に基づいて、開閉体装置10の故障を検知する。
【0079】
図3において、縦軸は制御装置18が三相交流モータ17に出力するモータ運転指令信号すなわちベクトル制御時のモータトルク電流値を示し、横軸はベクトル制御時の時間経過を示す。シャッターカーテン12の下降時に、モータトルク電流値は、図3に示すように、一定間隔t01,t02,t03の時間間隔で脈動しながら右肩上がりの直線又は曲線に沿って徐々に大きくなるという波形w1を示す。モータトルク電流値の波形w1が脈動しているのは、巻取シャフト15に巻き取られていたシャッターカーテン12が巻き戻される際のスラットの形状に依存するからである。また、モータトルク電流値の波形w1が徐々に大きくなるのは、シャッターカーテン12が巻き戻されることによって、巻取シャフト15に架かるスラットの重量が徐々に増加するためである。
【0080】
図3に示すように、脈動しながら徐々に大きくなる波形w1のピーク値から次のピーク値までの時間t01,t02,t03の間において、底値までの時間t1,t2,t3に置ける変化量Δi1,Δi2,Δi3を検出し、変化量Δi1,Δi2,Δi3が通常の変化の割合(これをしきい値Δithとする)を超えた場合に、シャッターカーテン12に何らかの障害物が接触したことを検出する。すなわち、脈動しながら徐々に大きくなる波形w1のピーク値から次のピーク値までの時間t01,t02,t03の間において、底値までの時間t1,t2,t3は、ほぼ同じ値を示すので、時間t1,t2,t3を経過しても底値に到達しない場合に、シャッターカーテン12に障害物が接触したことを検出する。図3に示すように制御装置18が三相交流モータ17に出力するモータ運転指令信号すなわちベクトル制御時のモータトルク電流値の変化量Δiを常時検出し、変化量Δiが通常の変化の割合Δith(しきい値)を超えた場合、又は所定時間t1,t2,t3を経過しても底値に到達しなかった場合に、シャッターカーテン12に障害物が接触したと判断する。
【0081】
図3において、ピーク値から時間t1を経過するまでにモータトルク電流値は、変化量Δi1だけ低下しているが、これは通常のトルク変動の範囲内であり、この場合は障害物に接触したとは判定されない。次の時間t2の間にもモータトルク電流値は、変化量Δi2だけ低下しているが、これも同じく通常のトルク変動の範囲内であり、障害物に接触したとは判定されない。次の時間t3の間もモータトルク電流値は、変化量iΔ3だけ低下しているが、これも同じく通常のトルク変動の範囲内であり、障害物に接触したとは判定されない。
【0082】
図4は、ベクトル制御によってシャッターを下降動作している時に、シャッター先端部が障害物に接触した時のモータトルク電流値の変化の一例を示す図である。図4において、一点鎖線の波形w1は、図3の波形w2である。一方、波形w2は、障害物がシャッターカーテン12の先端部に接触し、シャッターカーテン12の移動が停止した場合を示す。この場合、時間t1,t2の場合は、図3の波形w1と同じモータトルク電流値を示す。ところが、時刻t3aにおいて、モータトルク電流値は、しきい値であるΔith以上の変化を示す。従って、時刻t3aでシャッターカーテン12に障害物が接触したと判断する。
【0083】
すなわち、図4の波形w2は、時間t3を経過してもモータトルク電流値は低下し続けているので、この時点t3bでシャッターカーテン12に障害物が接触したと判断することもできる。すなわち、障害物がシャッターカーテン12の先端部に接触すると、シャッターカーテン12の移動が停止する。重量シャッター装置のスラットは、その剛性が非常に高いので、接触した瞬間にその接触力が巻取シャフト15側を介して三相交流モータ17側に伝達するので、モータトルク電流値は時刻t3bでしきい値であるΔith以上の低下を示すことになると共に時刻t3bを経過しても低下し続けることになる。これによって、モータトルク電流値の変化に基づいて、シャッターカーテン12の先端部が障害物に接触したことを感知することができる。
【0084】
一方、図4に示すようにモータトルク電流値が波形w2のように変化した場合において、光電センサ22,23方式の障害物検出部及び/又は座板感知レバー方式の障害物検出部が障害物を何ら感知しなかった場合には、これらの障害物検出部に何らかの不具合が発生して作動しなかったこと、すなわち障害物検出部に故障等が発生したことを検知することが可能となる。
【0085】
図5は、図4のモータトルク電流値の波形によって障害物を感知する場合の別の変形例を示す図である。障害物等が存在しない状態のベクトル制御時におけるモータトルク電流値は、図3及び図4に示した波形w1のように変化する。そこで、図5の障害物感知方法では、シャッターカーテン12の開閉動作を繰り返し実行し、図3及び図4のように変化する波形w1を複数回サンプリングし、そのサンプリングした波形の平均値を算出し、図5に示すような平均波形w10を生成する。この平均波形w10に±1.1~±1.3を乗じてしきい値波形w3,w4を生成する。すなわち、このしきい値波形w3,w4は、Δi0の所定巾を持った波形となる。なお、平均波形w10に乗じる数値は、±αのように同じ値αを乗じてもいいし、+α,-βのようにそれぞれ異なる値α,βを乗じるようにしてもよい。
【0086】
このしきい値波形w3,w4の内側を図3及び図4に示すような波形w1が変化している場合は、正常な動作であると判断する。一方、シャッターカーテン12の先端部が障害物に接触した場合は、図4に示すような波形w2のように時刻T0でしきい値波形w3,w4の所定巾の内側からはみ出し、しきい値波形w3の下側に突出する。この時刻T0でシャッターカーテン12の先端部が障害物に接触したと判断することができる。なお、平均波形w10は、開口部の大きさ(高さ、巾)、シャッターカーテン12の形状、重さなどに依存し、個々の開閉体装置で異なるものとなる。従って、シャッターカーテン12の開閉動作を繰り返し実行し、開閉体装置固有の波形を学習し取得することが重要となる。シャッター設置後に複数回(例えば、10~100回)の開閉動作時の波形の平均を平均波形w10とし、それ以降はこの平均波形w10を基準として、しきい値波形w3,w4を生成する。正常に動作していても長年の使用によって、波形w1がしきい値波形w3,w4の所定巾の内側からはみ出したりする場合には、経年劣化によるものと判断し、メンテナンスの実行を促す表示やアナウンスを行うようにしてもよい。
【0087】
図6は、図4又は図5に示したモータトルク電流値に基づいて障害物を感知した場合の障害物検出部の故障検出処理の一例を示すフローチャート図である。
ステップS61では、シャッターカーテン12が下降中であるか否かの判定を行い、下降中(yes)の場合は次のステップS62に進み、停止中又は上昇中(no)の場合はリターンする。
【0088】
ステップS62では、モータトルク電流値の変化に異常があるか否かの判定を行い、異常あり(yes)の場合は次のステップS63に進み、異常なし(no)の場合はリターンする。ここで、モータトルク電流値の変化に異常がありとは、図4及び図5に示すように波形w2が異常な変化を示した場合を言う。すなわち、モータトルク電流値の変化に異常があったということは、シャッターカーテン12に障害物が接触し、それを感知したことを意味する。
【0089】
ステップS63では、光電センサ22,23方式の障害物検出部及び/又は座板感知レバー方式の障害物検出部が既に障害物を感知しているか否かの判定を行い、感知している(yes)場合はリターンし、感知していない(no)場合は次のステップS64に進む。
【0090】
ステップS64では、シャッターカーテン12に障害物が接触した可能性が高いにも係わらず、光電センサ22,23方式の障害物検出部及び/又は座板感知レバー方式の障害物検出部がそのことを感知することができなかったので、感知しなかった障害物検出部について故障が発生したことを報知する。光電センサ22,23方式の障害物検出部の場合、故障の原因として、光軸のズレや発光素子の寿命等が考えられる。座板感知レバー方式の障害物検出部の場合、故障の原因として、座板の変形、凍結、マイクロスイッチの故障等が考えられる。
【0091】
図7は、図4及び図5に示すモータトルク電流値に基づいて障害物を感知する方法をモータ負荷感知方式の障害物検出部として応用し、光電センサ方式及び座板感知レバー方式の障害物検出部と共に障害物を感知するようにした場合の処理の一例を示すフローチャート図である。図2では、障害物検出部21として、光電センサ方式を用いた障害物検出部と、座板スイッチを用いた座板感知レバー方式の障害物検出部のみを用いた場合について示しているが、図4又は図5に示すモータ負荷感知方式の障害物検出部を障害物検出部21の一つとして応用した場合の処理について説明する。
【0092】
ステップS71では、シャッターカーテン12が下降中であるか否かの判定を行い、下降中(yes)の場合は次のステップS73に進み、停止中又は上昇中(no)の場合はステップS72に進む。
ステップS72では、上昇(開)ボタン19A、停止(停)ボタン19B及び下降(閉)ボタン19Cの各ボタンの操作状態に応じた通常の開閉停の各動作を実行し、リターンする。
【0093】
ステップS73では、光電センサ方式の障害物検出部(光電センサ22,23)及び/又は座板感知レバー方式の障害物検出部(障害物感知器25)が障害物を感知したか否かの判定を行い、感知した(yes)場合は次のステップS74に進み、感知していない(no)の場合はステップS76に進む。
【0094】
ステップS74では、障害物が感知されたので、下降中のシャッターカーテン12を直ちに停止し、反転上昇させる。上昇の高さは、シャッターカーテン12を全開するように上昇してもよいし、障害物を感知した高さから所定の高さ(30~100[cm])だけ上昇させるようにしてもよい。
【0095】
ステップS75では、シャッター制限動作1を設定し、反転上昇後に下降(閉)動作を実行しようとする場合には、下降(閉)ボタン19Cを押し切り操作しないと実行できないようにし、押し切り操作によってのみ下降動作を継続して実行できるようにしてリターンする。
【0096】
ステップS76では、モータトルク電流値の変化に異常があるか否かの判定を行い、異常あり(yes)の場合は次のステップS77に進み、異常なし(no)の場合はステップS72に進む。モータトルク電流値の変化に異常があるか否かの判定は、図6のステップS62の判定と同じように、図4及び図5に示す波形w2に基づいて処理する。
【0097】
ステップS77では、シャッターカーテン12に障害物が接触し、それをモータ負荷感知方式の障害物検出部が感知したので、下降中のシャッターカーテン12を直ちに停止し、反転上昇させる。上昇の高さは、シャッターカーテン12を全開するように上昇してもよいし、障害物を感知した高さから所定の高さ(30~100[cm])だけ上昇させるようにしてもよい。
【0098】
ステップS78では、シャッター制限動作2を設定し、反転上昇後に上昇(開)動作又は下降(閉)動作を実行しようとする場合には、上昇(開)ボタン19A又は下降(閉)ボタン19Cを押し切り操作しないと実行できないようにし、押し切り操作によってのみ上昇(開)動作又は下降(閉)動作を継続して実行できるようにしてリターンする。
【0099】
ステップS79では、モータ負荷感知方式の障害物検出部によってシャッターカーテン12に障害物が接触したことが検知されたにも係わらず、光電センサ22,23方式の障害物検出部及び座板感知レバー方式の障害物検出部が障害物を感知することができなかったので、図6のステップS64と同様に、感知しなかった障害物検出部について故障が発生したことを報知する。
【0100】
図7の処理では、光電センサ方式の障害物検出部(光電センサ22,23)及び/又は座板感知レバー方式の障害物検出部(障害物感知器25)が障害物を感知した場合には、反転開動作後に操作者がシャッターカーテン12の閉動作を確認しながら、押し切り操作にて閉ボタン19Cを操作した場合に限り閉動作を実行できるようにし、モータ負荷感知方式の障害物検出部21が障害物を感知した場合には、反転開動作後に操作者がシャッターカーテン12の開動作又は閉動作を確認しながら、開ボタン19A又は閉ボタン19Cを押し切り操作した場合に限り押し切り操作に対応した開動作又は閉動作を実行することができる。
【0101】
これによって、閉動作及び閉動作の両方の動作が押し切り操作でなければ実行されない場合には、何らかの事象によってモータ負荷感知方式の障害物検出部21が障害物を感知した状態となっていることを操作者は理解することができる。また、開動作は開ボタンの操作で実行するが閉動作は押し切り操作しなければ実行されない場合には、何らかの事象によって光電センサ方式の障害物検出部(光電センサ22,23)及び/又は座板感知レバー方式の障害物検出部(障害物感知器25)が障害物を感知した状態となっていることを操作者は理解することができる。
【0102】
図8は、機械的な故障予知状態の中の振動系及び衝撃系の故障予知状態に対応したモータトルク電流値の変化の様子を示す図である。図8(A)は、故障予知状態にない正常な場合の開閉体装置10の開閉動作時におけるモータトルク電流値の波形を示す図である。図8(B)は、振動系の故障予知状態におけるモータトルク電流値の波形を示す図である。図8(C)は、衝撃系の故障予知状態におけるモータトルク電流値の波形を示す図である。
【0103】
機械的な故障予知状態の中の振動系の故障予知状態においては、ブラケットの変形,溶接不良、シャフトの変形,溶接不良、三相交流モータ17の固定ボルトの緩みなどが原因で、開閉体装置10に所定の振動が発生するようになり、その振動によって開閉動作時のモータトルク電流値が図8(B)に示すような特有の変化を示すことが分かっている。また、機械的な故障予知状態の中の衝撃系の故障予知状態においては、スラットの擦れ,引っ掛かり、オーバーラン(上限・下限リミット超え)などが原因で、開閉動作時のモータトルク電流値が図8(C)に示すような特有の変化を示すことが分かっている。すなわち、この実施の形態では、開閉体装置10の開閉停の各動作制御時における運転状況(モータトルク電流値)を常時観察し、観察して得られたデータに基づいて正常時と異なる運転状態を検知することによって、故障及び不具合の発生を予知している。
【0104】
図8(A)は、図3のモータトルク電流値の波形w1と同じであり、一定間隔で脈動しながら右肩上がりの直線又は曲線に沿って徐々に大きくなっている。図8(A)の波形w1は、開閉体装置10の開閉動作が正常に実行されていることを示す。図8(B)において、正常な波形w1は一点鎖線で示し、振動系の故障予知状態に対応するモータトルク電流値を波形w21で示す。シャッター部品の連結部分や溶接部分の強度等が低下すると振動や脈動が増加するようになり、図8(B)に示すように、時間t4の区間で小さな周期的な振動が発生し、正常な波形w1に対して振動周期が短くなり、モータトルク電流値(波形w21)が通常のトルク振動量の閾値Δi1を何度も超える事象(波形の一部w21a,w21b)が発生するようになる。そこで、モータトルク電流値を常時観察し、観察して得たデータに基づいて、波形w21a,w21bのような振動の変化(事象)を読み取って、振動系の故障予知を検知する。
【0105】
図8(C)において、正常な波形w1は一点鎖線で示し、衝撃系の故障予知状態に対応するモータトルク電流値を波形w22で示す。シャッター本体の負荷がしきい値を超える負荷や機械的な衝撃が発生すると、モータトルク電流値(消費電力)もそれに伴って変化するようになり、図8(C)に示すように、正常な波形w1に対して、モータトルク電流値(波形w22)が閾値Δi1を大幅に超える事象(波形w22a)が発生するようになる。そこで、モータトルク電流値を常時観察し、観察して得たデータに基づいて、波形w22aのような振動の変化(事象)を読み取って、衝撃系の故障予知を検知する。
【0106】
図9は、図2に示す正常運転表示ランプ、故障予知ランプ及び故障発生ランプの点灯処理の一例を示すフローチャート図である。正常運転状態にあることを示す正常運転表示ランプ、故障が発生する可能性が高いことを示す故障予知ランプ及び故障状態にあることを示す故障発生ランプがそれぞれどのような場合に表示されるのかを説明する。
【0107】
ステップS91では、開閉体装置10に何らかの故障が発生したか否かの判定を行い、故障発生(yes)の場合は次のステップS92に進み、故障発生でない(no)場合はステップS94に進む。ここで故障の発生としては、図6に示したように、光電センサ22,23方式の障害物検出部及び/又は座板感知レバー方式の障害物検出部が故障した場合が該当する。
ステップS92では、故障が発生しているので、赤色の故障発生ランプ30cを点灯させる。
【0108】
ステップS93では、シャッター動作を無効とする。すなわち、操作スイッチ19の上昇(開)ボタン19A、停止(停)ボタン19B、下降(閉)ボタン19Cの通常の操作が行われても、その操作を実行しない。なお、このステップS93の処理は、図7のステップS74及びステップS75のように、下降(閉)ボタン19Cの操作に制限を加えるようにして、これ以外の上昇(開)ボタン19A、停止(停)ボタン19Bの操作については有効としてもよい。
【0109】
ステップS94では、開閉体装置10に何らかの故障予知状態が検出されたか否かの判定を行い、故障予知状態が検出された(yes)場合は次のステップS95に進み、故障予知状態が検出されていない(no)場合はステップS98に進む。ここで故障予知状態が検出された場合には、上述の電気的な故障予知状態と機械的な故障予知状態のいずれかの状態が検出された場合が該当する。
ステップS95では、故障予知状態が検出されたので、黄色の故障予知ランプ30bを点灯させる。なお、黄色の故障予知ランプ30bを点灯表示すると共に制御盤内部の液晶部に部品交換の詳細情報を表示してもよい。部品交換に該当する部品としては、主回路コンデンサ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、突入防止リレー、冷却ファン等が該当する。
【0110】
ステップS96では、上昇(開)動作又は下降(閉)動作を実行しようとする場合には、上昇(開)ボタン19A又は下降(閉)ボタン19Cを押し切り操作しないと実行できないようにし、押し切り操作によってのみ上昇(開)動作又は下降(閉)動作を継続して実行できるようにしてステップS97に進む。
ステップS97では、リセットスイッチ31が操作(ON)されたか否かの判定を行い、オン操作された(yes)場合は次のステップS98に進み、操作されていない(no)場合はリターンする。
【0111】
ステップS98では、故障の発生が確認されておらず、さらに故障予知状態が検出されていない場合、又はリセットスイッチ31がオン操作された場合に該当するので、緑色の正常運転表示ランプ30aを点灯させる。
ステップS99では、上昇(開)ボタン19A、停止(停)ボタン19B及び下降(閉)ボタン19Cの各ボタンの操作状態に応じた通常の開閉停の各動作を通常の速度で実行可能とし、リターンする。
【0112】
図10は、図9の正常運転表示ランプ、故障予知ランプ及び故障発生ランプの点灯処理の変形例を示すフローチャート図である。図10において、図9と同じステップには同一の符号が付してあるので、その説明は省略する。
図9の処理では、緑色の正常運転表示ランプ30aを点灯させた後のステップS99では、シャッターカーテン12の開閉停の各動作を通常の速度で実行可能としているが、この実施の形態では、ステップS9a、ステップS9b及びステップS9cの処理で、押し切り操作の場合は高速で開閉動作を実行するようにした。
【0113】
ステップS9aでは、操作スイッチ19が押切操作されているか否かの判定を行い、押切操作(yes)の場合はステップS9bに進み、押切操作でない(no)場合はステップS9cに進む。
ステップS9bでは、シャッターカーテン12の開閉動作時の移動速度を通常速度の約1.5倍速の高速移動で開閉動作を実行する。インバータ駆動によって、モータ周波数を75Hzとすることで1.5倍速を実現する。なお、この高速移動は開動作時又は閉動作時のみで実行可能としてもよい。
ステップS9cでは、シャッターカーテン12の開閉動作時の移動速度を通常の速度で実行する。
【0114】
上述の実施の形態では、三相交流モータ17に供給されるモータ電流をトルク電流及び励磁電流に分割し、励磁電流が一定となるようにモータ電圧を調整しながら制御するベクトル制御の場合のモータ電流を観察することによって、故障及び不具合の発生を予知しているが、ベクトル制御にて駆動されないモータの場合は、そのモータ電流及び電圧を常時観察することによって、同様に故障及び不具合の発生を予知することが可能である。
【0115】
上述の実施の形態では、光電センサ22,23を用いた障害物検出部と、座板スイッチを用いた座板感知レバー方式の障害物検出部の両方を設ける場合について説明したが、いずれか一方を設けるものでもよい。
【0116】
上述の実施の形態では、上下昇降方式で繰り出されるシャッターカーテンを例に説明したが、シャッター状の開閉部材が横引き方式で繰り出されたり、あるいは水平方式で繰り出されたりするものであっても同様に適用することができる。また、開閉体装置としては、例えば、シャッター装置、窓シャッター装置、ブラインド装置、ロールスクリーン装置、垂れ幕装置、引戸装置、移動間仕切装置、オーニング装置、防水板装置などにも適用可能である。
【0117】
上述の実施の形態では、モータ駆動時の電流・電圧を常時観察し、観察して得られた電流波形・電圧波形等から正常時の電流波形・電圧波形を把握し、開閉停の動作制御時の電流波形・電圧波形が正常時と異なる運転状態になった場合に故障及び不具合の発生を予知するようにしたものであるが、既設の開閉体装置にあっては、モータ駆動時の電流及び電圧を検出することができない場合がある。そこで、開閉体装置の各動作時における運転状況として、観察対象となる既設の開閉体装置に各種検出器(センサ)によって検出されたデータを用いて不具合の発生を予知することが可能となる。以下、この各種検出器によって開閉体装置の運転状況を観察し、不具合の発生を予知するように構成された開閉体装置について説明する。
【0118】
図11は、既設の開閉体装置の一例であって、回転体手段をモータ等の駆動力によって正逆回転駆動することによって、開閉体を開閉動作させるシャッター装置を示す図である。図12は、図11の開閉体装置10aを左側面から見た断面形状の概略を示す図である。図11及び図12において、ガイドレール13,14はシャッターカーテン12によって開閉される開口部の両側左右に対向して起立配置されている。これらのガイドレール13,14は、対向する面側にそれぞれ縦長の開口を有する断面コの字状の部材から構成されている。ガイドレール13,14の上部にはボックス状のシャッターケース11が設けられている。このシャッターケース11内には、ギヤードモータからなるブレーキ及び減速機を備えた開閉機40と、この開閉機40で正逆回転駆動される回転体手段である巻取シャフト50とが収納配置されている。従って、巻取シャフト50の正逆回転によりシャッターカーテン12の巻取り/巻戻し動作が行われ、これによって、シャッターカーテン12がガイドレール13,14に沿って昇降(開閉)駆動される。なお、巻取シャフト50には、開閉体が閉鎖するに従い付勢されるように設けられた付勢手段によって付勢力が付勢されている場合がある。
【0119】
図13は、図11のシャッター装置のシャッターケース内のブラケットを右側面から見た概略図である。開閉機40は、開閉機取付ベースに設けられた固着手段401~404(例えば、固定ボルトなどの締結部材)によってブラケット11Rの側面に固着されている。開閉機取付ベースの固着手段401~404のほぼ中央には開閉機40の出力軸410が位置する。開閉機40の出力軸410の先端部には、出力スプロケット51が取付けられている。この出力スプロケット51と巻取シャフト5側の入力スプロケット53との間に無端輪状動力伝達手段であるローラチェーン52が噛合巻回されている。従って、開閉機40の回転出力は、出力スプロケット51、ローラチェーン52、入力スプロケット53を介して巻取シャフト50に伝達されるようになっている。
【0120】
図13において、各種検出手段(センサ)は、6個所に配置される。加速度センサ60は、ブラケット11Rの振動を検出するためのセンサであり、ブラケット11Rの外側であって、巻取シャフト50の周囲(図13では巻取シャフト50の上側であって、シャッターカーテン12の最大巻取径の近辺)に配置される。加速度センサ61は、ブラケット11Rの内側(開閉機40の設置側及び巻取シャフト50側)であって、固着手段401~404の近辺(図13では固着手段401と固着手段402の間)に配置される。これ以外の場所にも別途加速度センサを設けてもよい。例えば、開閉機40に直接加速度センサを別途設けてもよい。
【0121】
歪センサ62は、ブラケット11Rの歪(変形量)を検出する歪ゲージであり、ブラケット11Rの外側であって、巻取シャフト50の周囲(図13では巻取シャフト50の左側であって、巻取シャフト50の外径の近辺)に配置される。歪センサ63は、ブラケット11Rの外側であって、固着手段404の近辺に配置される。これ以外の場所にも別途歪センサを設けてもよい。例えば、開閉機40と巻取シャフト50とのほぼ中間付近に歪センサを別途設けてもよい。
【0122】
電流クランプ64は、開閉機40に供給される電流値を検出するクランプセンサであり、開閉機40の下側に配置される。マイクロフォン65は、シャッターケース11内で発生する動作音を検出(集音)するものであり、ブラケット11Rの内側であって、その上部先端側に配置される。これ以外の場所にも別途マイクロフォンを設けてもよい。例えば、開閉機40及び巻取シャフト50の近傍に別途設けてもよい。
【0123】
図13に示すように、各種センサとして、加速度センサ60,61、歪センサ62,63、電流クランプ64及びマイクロフォン65の6種類を設置することによって、スラット片寄り、スラット片下がり、開閉機固定ボルト弛み、スプロケット芯ずれ及びローラチェーン弛み等の故障及び不具合の発生を予知又は検知することができる。予知又は検知の方法について後述する。
【0124】
図14は、開閉体装置にスラット片寄りという現象が発生した場合を模式的に表した図である。図14に示すように、シャッターカーテン12の下から2番目とスラット122と4番目のスラット124の2枚が右側にずれている、この状態をスラット片寄りと言う。このスラット片寄りの状態で、開閉機40によって開閉(上昇下降)動作が実行され、シャッターカーテン12が巻取シャフト50に巻取り巻戻されると、図14に示すようにスラット122,124の右側端部がレール13の底面に接触することがある。また、図14の点線のスラット122a,124aに示すように、その右側端部がブラケット11Rの側面に接触して擦るために磨耗が進行し、最悪の場合、ブラケット11Rをくり抜くという事態が発生する場合がある。
図14に示すようなスラット片寄りが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、図13に示すセンサの中で、歪センサ63の検出信号が大きく変動するのを確認することができる。
【0125】
図15は、スラット片寄りが発生した状態でシャッター装置が開閉動作した時の歪センサの検出信号の実測値を示す図である。図15(A)は、開閉体装置10aの閉動作時における歪センサ62,63の検出信号を示し、図15(B)は、開閉体装置10aの開動作時における歪センサ62,63の検出信号を示す。図15において、縦軸が歪方向とその歪量を示し、横軸が時間を示す。図15(A)及び図15(B)において、上側の検出信号波形が巻取シャフト50の周囲に配置された歪センサ62のものであり、下側の検出信号波形が開閉機40の固着手段404の近辺に配置された歪センサ63のものである。図15では、図14に示すようにスラット122,124がスラット片寄りした状態と、正常な状態のシャッターカーテン12の開閉動作時の検出信号をそれぞれ示している。
【0126】
図15(A)において、開閉体装置10aが全開状態にあるということは、巻取シャフト50にシャッターカーテン12が巻き取られている状態にあることを意味する。この全開状態においては、歪センサ62,63は共に歪の発生していない状態、すなわち歪が発生していないことを示す縦軸の±0付近に検出信号が現れる。開閉体装置10aが全開状態から閉動作を開始すると、巻取シャフト50から巻き戻されたシャッターカーテン12の荷重が巻取シャフト50の半径に応じた回転モーメントを発生するようになるので、図15(A)の歪センサ62の検出信号のように閉動作に伴って上下に変動するプラス方向の歪が発生する。図15における歪センサ62の検出信号は、スラットの片寄りの有無に応じた変化はほとんど示さない。正常な状態の検出信号に対して、スラット片寄り有りの検出信号の波形の平均値が約10%よりも小さい範囲で増加している場合に該当する。
【0127】
一方、歪センサ63の検出信号は、スラット片寄りに応じて大きな変化を示している。図15において、歪センサ63の検出信号の下側の明るい波形がスラット片寄りの無い場合を示し、この波形の上に現れている比較的暗い波形がスラット片寄り有りの場合を示す。スラット片寄り有りの検出信号のうち、図15(A)の閉動作時における歪センサ63の検出信号は、下側の正常な明るい検出信号よりも全体的に上側に位置し、その平均値が正常な状態の検出信号の10%以上も増加している。また、図15(B)の開動作時における歪センサ63の検出信号は、下側の正常な明るい検出信号とほぼ同じように変化しているが、上に大きな変動幅を有している。このようにスラット片寄り有りの場合における歪センサ63の検出信号は、スラットの端部がレールの底面に接触し、スラットの端部がブラケットの側面に接触し、擦ることによって発生する応力が、シャッターカーテン12を構成するスラットから直接ブラケット11Rに伝達していることが原因と考えられる。
【0128】
すなわち、スラット片寄りが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、開閉動作時に歪センサ62の検出信号が平均値で約10%以上大きく変動するので、このような検出信号の変化が発生した場合には、スラット片寄りが発生したことを検知することができる。なお、開閉動作時のいずれか一方の動作時にのみ平均値が約10%以上の変動を示した場合は、スラット片寄りの発生を予知することができる。また、開閉動作時の検出信号の平均値が約5%以上の変動を示した場合にスラット片寄りの発生を予知してもよい。
【0129】
図16は、開閉体装置にスラット片下がりという現象が発生した場合を模式的に表した図である。図16に示すように、巻取シャフト50の右側においてシャッターカーテン12と巻取シャフト50との間に何らかの異物が混入した場合や吊元のボルトが緩んでいる場合などに、シャッターカーテン12の左下端部が下がって全体的に傾いたような状態となる。このような状態をスラット片下がりと言う。このスラット片下がりの状態で開閉機40によって開閉(上昇下降)動作が実行され、シャッターカーテン12が巻取シャフト50に巻取り巻戻されると、図16に示すようにシャッターカーテン12の右側の下端部がレール13の底面等を擦りながら上昇下降するため、レール13にシャッターカーテン12のスラットが引っ掛かり、最悪の場合、シャッターカーテン12が急降下するという事態が発生する可能性がある。
図16に示すようなスラット片下がりが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、図13に示すセンサの中で、加速度センサ60,61、歪センサ62及びマイクロフォン65の検出信号が大きく変動するのを確認することができる。
【0130】
図17は、スラット片下がりが発生した状態でシャッター装置が閉動作した時の歪センサ、加速度センサ及びマイクロフォンの検出信号の実測値を示す図である。図18は、スラット片下がりが発生した状態でシャッター装置が開動作した時の歪センサ、加速度センサ及びマイクロフォンの検出信号の実測値を示す図である。
図17(A)は、図15(A)と同様に、開閉体装置10aの閉動作時における歪センサ62,63の検出信号を示し、図18(A)は、開動作時における歪センサ62,63の検出信号を示す。
【0131】
図17(B)は、開閉体装置10aの閉動作時における開閉機40側に設置された加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)を示し、図18(B)は、開動作時における開閉機40側に設置された加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)を示す。図17(C)は、開閉体装置10aの閉動作時におけるブラケット側に設置された加速度センサ61の検出信号(ブラケット側の振動)を示し、図18(C)は、開閉体装置10aの開動作時におけるブラケット側に設置された加速度センサ61の検出信号(ブラケット側の振動)を示す。図17(B),図17(C),図18(B),図18(C)において、縦軸が振動の大きさを、横軸が時間を示す。
【0132】
図17(D)は、開閉体装置10aの閉動作時におけるシャッターケース内に設置されたマイクロフォン65の検出信号(閉動作音)を示し、図18(D)は、開閉体装置10aの開動作時におけるシャッターケース内に設置されたマイクロフォン65の検出信号(開動作音)を示す。図17(D),図18(D)において、縦軸が音の大きさを、横軸が時間を示す。
【0133】
図17(A)及び図18(A)の上側の検出信号波形が、図15の検出信号波形と同様に、巻取シャフト50の周囲に配置された歪センサ62のものであり、下側の検出信号波形が開閉機40の固着手段404の近辺に配置された歪センサ63のものである。
開閉体装置10aが全開状態から閉動作を開始すると、巻取シャフト50から巻き戻されたシャッターカーテン12の荷重が巻取シャフト50の半径に応じた回転モーメントを発生するようになるので、図18(A)の歪センサ62の検出信号のように閉動作に伴って上下に変動するプラス方向の歪が発生する。このとき、図17(A)及び図18(A)の点線で示した楕円形の部分において、歪センサ62の検出信号がスラットの片下がりの有無に応じて大幅な変化を示している。このときの振幅の上下変動の割合は正常な状態の検出信号の約30%以上である。
【0134】
すなわち、スラット片下がりが有る場合、点線楕円形で囲まれた歪センサ62の検出信号に示すように、検出信号の上下の変動幅が約30%以上もあり、極めて大きく現れている。一方、歪センサ63の検出信号は、スラット片下がりの有無に応じた変化をほとんど示していない。このようにスラット片下がり有りの場合における歪センサ63の検出信号は、スラットの端部がレールの底面に接触し、擦ることによって発生する応力が、シャッターカーテン12を構成するスラットを介して巻取シャフト50側に伝達していることが原因と考えられる。
【0135】
図17(B)の閉動作時の加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)は、点線で示した楕円形の部分において、スラットの片下がりの有無に応じて大幅な変化を示している。このときの振幅の上下の変化の割合は正常な状態の検出信号の約30%以上である。一方、図18(B)の開動作時の加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)は、スラット片下がりの有無に応じた変化をほとんど示していない。図17(C)の閉動作時の加速度センサ61の検出信号(ブラケット側振動)と、図18(C)の開動作時の加速度センサ61の検出信号(ブラケット側振動)の場合にも同様のことが言える。さらに、図17(D)の閉動作時のマイクロフォン65の検出信号(閉動作音)と、図18(D)の開動作時のマイクロフォン65の検出信号(開動作音)についても同様のことが言える。
すなわち、スラット片下がりが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、閉動作時に加速度センサ60,61、歪センサ62及びマイクロフォン65の検出信号が大きく変動するので、このような検出信号の変化が発生した場合には、スラット片下がりが発生したことを検知することができる。
なお、閉動作時に加速度センサ60,61、歪センサ62及びマイクロフォン65の検出信号のいずれか一つの振幅が約30%以上の変動を示した場合は、スラット片下がりの発生を予知することができる。また、閉動作時の加速度センサ60,61、歪センサ62及びマイクロフォン65の全ての検出信号の振幅が約10~20%以上の変動を示した場合にスラット片下がりの発生を予知してもよい。
【0136】
図13に示すように、開閉機40は、固定ボルトなどの締結部材によってブラケット11Rの側面に固着されている。この固定ボルトに弛みが発生した場合、開閉機40やブラケット11Rには振動音が発生し、最悪の場合には開閉機40がブラケット11Rから外れるという事態が発生する可能性がある。
開閉機40の固定ボルトに弛みが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、図13に示すセンサの中で、歪センサ62,63の検出信号が大きく変動するのを確認することができる。
【0137】
図19は、開閉機40の固定ボルトに弛みが発生した状態で、シャッター装置が開閉動作した時の歪センサの検出信号の実測値を示す図である。図19(A)は、開閉体装置10aの閉動作時における歪センサ62,63の検出信号を示し、図19(B)は、開閉体装置10aの開動作時における歪センサ62,63の検出信号を示す。
【0138】
図19(A)及び図19(B)において、上側の2本の検出信号波形が巻取シャフト50の周囲に配置された歪センサ62のものであり、下側の2本の検出信号波形が開閉機40の固着手段404の近辺に配置された歪センサ63のものである。図19では、正常な状態のシャッターカーテン12の開閉動作時の検出信号に歪センサ62a,63a、開閉機40の固定ボルトに弛みが発生した状態の検出信号に歪センサ62b,63bを矢印で対応付けて示している。
【0139】
図19の正常な状態の歪センサ62a,63aの検出信号波形は、図15(A)、図17(A)及び図18(A)に示したものとほぼ同じ変化を示している。一方、図19の固定ボルトに弛みが発生した状態の検出信号は、歪センサ62b,63bに示すように、歪センサ62a,63aとは全く異なる変化を示す波形となっている。歪センサ62b,63bの検出信号波形の平均値は正常な状態の検出信号の10~20%以上も増加している。
このように開閉機40の固定ボルトに弛みが有る場合には、歪センサ62,63の検出信号が全く異なる信号波形を示すようになるので、このような検出信号が現れた場合には、開閉機40の固定ボルトに弛みが発生したことを検知することができる。
なお、開閉動作時に歪センサ62,63のいずれかの検出信号の平均値が約10~20%以上の変動を示した場合は、固定ボルト弛みの発生を予知することができる。また、開閉動作時の歪センサ62,63の検出信号全ての平均値が約5%以上の変動を示した場合に固定ボルト弛みの発生を予知してもよい。
【0140】
図13に示すように、出力スプロケット51と巻取シャフト5側の入力スプロケット53との間にローラチェーン52が噛合巻回されている。ブラケット11R,11Lの変形した場合や出力スプロケット51及び/又は入力スプロケット53が磨耗した場合に、スプロケット同士の芯ずれが発生する可能性がある。スプロケット同士の芯ずれが発生すると、最悪の場合には開閉機40からローラチェーン52が外れてシャッターカーテン12が急降下に至るという事態が発生する可能性がある。
出力スプロケット51と入力スプロケット53との間で芯ずれが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、図13に示すセンサの中で、加速度センサ60,61、歪センサ62及びマイクロフォン65の検出信号が大きく変動するのを確認することができる。
【0141】
図20は、スプロケット同士の芯ずれが発生した状態でシャッター装置が閉動作した時の歪センサ、加速度センサ及びマイクロフォンの検出信号の実測値を示す図である。図21は、スプロケット同士の芯ずれが発生した状態でシャッター装置が開動作した時の歪センサ、加速度センサ及びマイクロフォンの検出信号の実測値を示す図である。
【0142】
図20(A)は、図15(A)及び図17(A)と同様に、開閉体装置10aの閉動作時における歪センサ62,63の検出信号を示し、図21(A)は、開動作時における歪センサ62,63の検出信号を示す。
図20(B)は、開閉体装置10aの閉動作時における開閉機40側に設置された加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)を示し、図21(B)は、開動作時における開閉機40側に設置された加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)を示す。
図20(C)は、開閉体装置10aの閉動作時におけるブラケット側に設置された加速度センサ61の検出信号(ブラケット側の振動)を示し、図21(C)は、開閉体装置10aの開動作時におけるブラケット側に設置された加速度センサ61の検出信号(ブラケット側の振動)を示す。
図20(D)は、開閉体装置10aの閉動作時におけるシャッターケース内に設置されたマイクロフォン65の検出信号(閉動作音)を示し、図21(D)は、開閉体装置10aの開動作時におけるシャッターケース内に設置されたマイクロフォン65の検出信号(開動作音)を示す。
【0143】
図20(A)及び図21(A)において、上側の2本の検出信号波形が巻取シャフト50の周囲に配置された歪センサ62のものであり、下側の2本の検出信号波形が開閉機40の固着手段404の近辺に配置された歪センサ63のものである。図20(A)及び図21(A)では、正常な状態のシャッターカーテン12の開閉動作時の検出信号に歪センサ62a,63a、スプロケットの芯ずれが発生した状態の検出信号に歪センサ62b,63bを矢印で対応付けて示している。
【0144】
図20(A)及び図21(A)の正常な状態の歪センサ62a,63aの検出信号波形は、図15(A)、図17(A)、図18(A)及び図19(A)に示したものとほぼ同じ変化を示している。一方、図20(A)及び図21(A)のスプロケット同士の芯ずれが発生した状態の検出信号は、センサ62b,63bに示すように、歪センサ62a,63bとは全く異なる変化を示す波形となっている。歪センサ62b,63bの検出信号波形の平均値は正常な状態の検出信号の10~20%以上も増加している。
【0145】
図20(B)及び図21(B)の開閉動作時の加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)は、スプロケット同士の芯ずれの有無に応じた変化をほとんど示していない。一方、図20(C)及び図21(C)の開閉動作時の加速度センサ61の検出信号(ブラケット側振動)は、全体に渡ってスプロケット同士の芯ずれの有無に応じて、突発的な変化を示している。加速度センサ61の検出信号波形の平均値は正常な状態の検出信号の10~20%以上も増加している。同様に、図20(D)及び図21(D)の開閉動作時のマイクロフォン65の検出信号(開閉動作音)についても同様に、検出信号全体に渡ってスプロケット同士の芯ずれの有無に応じて、突発的な変化を示している。マイクロフォン65の検出信号波形の平均値は正常な状態の検出信号の10~20%以上も増加している。
すなわち、スプロケットの芯ずれが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、開閉動作時に加速度センサ61、歪センサ62,63及びマイクロフォン65の検出信号が大きく変動するので、このような検出信号の変化が発生した場合には、スプロケットの芯ずれが発生したことを検知することができる。
なお、開閉動作時に加速度センサ61、歪センサ62,63のいずれかの検出信号の平均値が約10~20%以上の変動を示した場合は、スプロケットの芯ずれの発生を予知することができる。また、開閉動作時の加速度センサ61、歪センサ62,63の検出信号全ての平均値が約5%以上の変動を示した場合にスプロケットの芯ずれの発生を予知してもよい。
【0146】
図13に示すように、出力スプロケット51と巻取シャフト5側の入力スプロケット53との間にローラチェーン52が噛合巻回されている。このローラチェーン52に弛みが発生した場合に、ローラチェーン52とスプロケットとの間で歯飛びが発生する可能性がある。ローラチェーン52の歯飛びが発生すると、最悪の場合には開閉機40からローラチェーン52が外れたり、ローラチェーン52が切断したりしてシャッターカーテン12が急降下に至るという事態が発生する可能性がある。
ローラチェーン52に弛みが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、図13に示すセンサの中で、加速度センサ60,61、歪センサ62,63、マイクロフォン65及び電流クランプ64の検出信号が大きく変動するのを確認することができる。
【0147】
図22は、ローラチェーン52に弛みが発生した状態でシャッター装置が閉動作した時の歪センサ、加速度センサ、マイクロフォン及び電流クランプの検出信号の実測値を示す図である。図23は、ローラチェーン52に弛みが発生した状態でシャッター装置が開動作した時の歪センサ、加速度センサ、マイクロフォン及び電流クランプの検出信号の実測値を示す図である。
【0148】
図22(A)は、図15(A)、図17(A)及び図20(A)と同様に、開閉体装置10aの閉動作時における歪センサ62,63の検出信号を示し、図23(A)は、開動作時における歪センサ62,63の検出信号を示す。
図22(B)は、開閉体装置10aの閉動作時における開閉機40側に設置された加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)を示し、図23(B)は、開動作時における加速度センサ60の検出信号(開閉機側の振動)を示す。
図22(C)は、開閉体装置10aの閉動作時におけるブラケット側に設置された加速度センサ62の検出信号(ブラケット側の振動)を示し、図23(C)は、開閉体装置10aの開動作時における加速度センサ62の検出信号(ブラケット側の振動)を示す。
図22(D)は、開閉体装置10aの閉動作時におけるシャッターケース内に設置されたマイクロフォン65の検出信号(閉動作音)を示し、図23(D)は、開閉体装置10aの開動作時におけるマイクロフォン65の検出信号(閉動作音)を示す。
図22(E)は、開閉体装置10aの閉動作時における開閉機40に供給される電流値を検出する電流クランプ64の検出信号(モータ電流)を示し、図23(E)は、開閉体装置10aの開動作時における電流クランプ64の検出信号(モータ電流)を示す。
【0149】
図22(A)及び図23(A)において、正常な状態のシャッターカーテン12の開閉動作時の検出信号に歪センサ62a,63a、ローラチェーン52に弛みが発生した状態の検出信号に歪センサ62b,63bを矢印で対応付けて示している。
図22(A)及び図23(A)の正常な状態の歪センサ62a,63aの検出信号波形は、図15(A)、図17(A)、図18(A)、図19(A)、図20(A)及び図21(A)に示したものとほぼ同じ変化を示している。
【0150】
図23(A)に示されるローラチェーン52に弛みが発生した状態の検出信号(歪センサ62b)は、歪センサ62aと同じような変化を示すが、チェーンの歯飛びによって、周期的に大きな変動を示している。すなわち、図23(A)の歪センサ62bでは、その4個所に大きな振幅の変動が現れている。この振幅が変動した時に歯飛びが発生したものと思われる。また、図23(A)に示されるローラチェーン52に弛みが発生した状態の検出信号(歪センサ63b)は、全体的に上側にシフトしたような歪センサ63aと同じ変化を示し、チェーンの歯飛びによって、周期的に大きな変動を示す波形となっている。図23(A)では、歪センサ63bは歯飛びによる大きな振幅の変動が4個所で現れている。これによって、歪センサ62b,63bの検出信号波形は正常な状態の検出信号の30%以上も増加している。
【0151】
図22(B)及び図22(C)の閉動作時の加速度センサ60,61の検出信号(開閉機側信号,ブラケット側振動)は、全体に渡ってローラチェーン52の弛みに応じた大きな変動を示す波形を示している。図22(D)の閉動作時のマイクロフォン65の検出信号(閉動作音)についても同様に、検出信号全体に渡ってローラチェーン52の弛みに応じた大きな変動を示す波形を示している。
【0152】
図23(B)及び図23(C)の開動作時の加速度センサ60,61の検出信号(開閉機側信号,ブラケット側振動)も、全体に渡ってローラチェーン52の弛みに応じた離散的に突発的に大きな変動を示す波形となっている。
図23(D)の開動作時のマイクロフォン65の検出信号(開動作音)についても同様に、検出信号全体に渡ってローラチェーン52に弛みに応じた離散的に突発的に大きな変動を示す波形となっている。
図22(E)及び図23(E)の開閉動作時の電流クランプ64の検出信号(モータ電流)も、全体に渡ってローラチェーン52の弛みに応じた変動を示す波形となっている。以上のように、ローラチェーン52に弛みが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、開閉動作時に加速度センサ60,61、歪センサ62,63、マイクロフォン65及び電流クランプ64の検出信号が正常な状態の検出信号の約30%以上も増加している。
【0153】
ローラチェーン52に弛みが発生した状態で、シャッターカーテン12の開閉動作(上昇下降動作)を実行すると、開閉動作時に加速度センサ60,61、歪センサ62,63、マイクロフォン65及び電流クランプ64の検出信号が大きく変動するので、このような検出信号の変化が発生した場合には、ローラチェーン52に弛みが発生したことを検知することができる。
なお、開閉動作時に加速度センサ60,61、歪センサ62、マイクロフォン65及び電流クランプ64の検出信号のいずれか一つの振幅が約30%以上の変動を示した場合は、ローラチェーン弛みの発生を予知することができる。また、開閉動作時の加速度センサ60,61、歪センサ62、マイクロフォン65及び電流クランプ64の全ての検出信号の振幅が約10~20%以上の変動を示した場合にローラチェーン弛みの発生を予知してもよい。
【0154】
図24は、図15図17図23の検知結果に対応した故障検知状態の一覧表を示す図である。この故障検知状態の一覧表における各行は、図15のスラット片寄りの故障検知状態、図17及び図18のスラット片下がりの故障検知状態、図19の開閉機固定ボルト弛みの故障検知状態、図20及び図21のスプロケット芯ずれの故障検知状態、図22及び図23のローラチェーン弛みの故障検知状態をそれぞれ示し、各行には閉動作時と開動作時にそれぞれ対応した結果が示されている。一覧表における各列は、ブラケット変形(歪)を検出するために巻取シャフト50側に設置された歪センサ62、開閉機40側に設置された歪センサ63、ブラケット振動を検出するために巻取シャフト50側のブラケット11Rの外側に設置された加速度センサ60、開閉機40側の固着手段側に設置された加速度センサ61、動作音を集音するためのブラケット11Rに設置されたマイクロフォン65、開閉機40に供給されるモータ電流を検出する電流クランプ64にそれぞれ対応している。
【0155】
一覧表に表示されている文字Aは検出信号に変化がないことを示し、文字Bは検出信号に増加傾向にあることを示し、文字Cは検出信号に大幅な変化があることを示す。
文字Aの検出信号に変化がないとは、検出信号の波形の平均値が約10%よりも小さい場合が該当する。
文字Bの検出信号に増加傾向にあるとは、図15のスラット片寄りの故障検知状態における歪センサ63の検出信号、図19の開閉機固定ボルト弛みの故障検知状態における歪センサ62,63の検出信号、並びに図20及び図21のスプロケット芯ずれの故障検知状態における歪センサ62の検出信号、加速度センサ60の検出信号、マイクロフォン65の検出信号に示されるように、正常な検出信号に対して故障検知状態における検出信号の平均値が約10%以上増加した場合に該当するものである。
【0156】
文字Cの検出信号に大幅な変化があるとは、図18の開動作時のスラット片下がりの故障検知状態における歪センサ62の検出信号、加速度センサ60,61の検出信号、マイクロフォン65の検出信号、並びに図22及び図23のローラチェーン弛みの故障検知状態における各検出センサの検出信号に示されるように、正常な検出信号に対して故障検知状態における検出信号の振幅が約30%以上増加した場合が該当する。
【0157】
なお、文字Bに対応する平均値約10%以上増加及び文字Cに対応する約30%以上増加における数値は一例であり、各種センサの設置されるシャッターカーテン装置の規模や各種センサの設置場所等の各種の要因によってそれぞれ異なる数値を当てはめる場合がある。例えば、文字Bに対応する増加の割合は平均値約5~15%、文字Cに対応する増加の割合は約20~40%に設定される場合がある。
【0158】
各文字A~Cの下には、一覧表に示される各行と各列に対応した12個のレジスタR0~RBと、それに格納される数値0~2が示されている。すなわち、レジスタR0は、閉動作時における歪センサ62の検出信号がA~Cのいずれに該当するのかを示すものであり、スラット片寄りの故障検知状態及びスラット片下がりの故障検知状態にある場合は、レジスタR0には数値0が格納される。開閉機固定ボルト弛みの故障検知状態及びスプロケット芯ずれの故障検知状態にある場合は、レジスタR0には数値1が格納される。ローラチェーン弛みの故障予知感知状態にある場合は、レジスタR0には数値2が格納される。他のレジスタR1~R5は、閉動作時に歪センサ63、加速度センサ60,61、マイクロフォン65及び電流クランプ64の検出信号がA~Cのいずれに該当するのかをそれぞれ示している。レジスタR6~RBは、開動作時に歪センサ62,63、加速度センサ60,61、マイクロフォン65及び電流クランプ64の検出信号がA~Cのいずれに該当するのかをそれぞれ示している。
【0159】
正常な状態における12個のレジスタR0~RBの値は「000000000000」である。スラット片寄りの故障検知状態におけるレジスタR0~RBの値は「010000010000」である。スラット片下がりの故障検知状態におけるレジスタR0~RBの値は「000000202220」である。開閉機固定ボルト弛みの故障検知状態におけるレジスタR0~RBの値は「110000110000」である。スプロケット芯ずれの故障検知状態におけるレジスタR0~RBの値は「10101010101010」である。ローラチェーン弛みの故障検知状態におけるレジスタR0~RBの値は「222222222222」である。
【0160】
各レジスタR0~RBへの格納処理は、図9のステップS99又は図10のステップS9cのシャッター通常動作の終了時に各種センサの検出信号に応じて実行される。
図9又は図10のステップS91の故障発生処理において、レジスタR0~RBに格納されている数値が、図24の故障検知状態の一覧表に示されるレジスタR0~RBの値「010000010000」、「000000202220」、「110000110000」、「10101010101010」又は「222222222222」と一致するか否かの判定を行い、レジスタR0~RBの値が一致した場合には、その一致した故障検知状態に対応した故障が発生したことを意味するので、図9又は図10に示すような故障検知状態に対応した処理を実行する。
【0161】
一方、図9又は図19のステップS94の故障予知検出処理において、レジスタR0~RBの値が「000000000000」にも、「010000010000」、「000000202220」、「110000110000」、「10101010101010」及び「222222222222」にも該当しない場合には、故障予知状態にあることを意味するので、そのレジスタR0~RBの値に基づいた故障予知状態に対応した処理を実行する。
【0162】
レジスタR0~RBの値が一覧表の中の所定のものに該当していれば、その故障検知状態に対応する故障が発生する可能性があることを示すために、黄色の故障予知ランプ30bを点灯表示すると共に制御盤内部の液晶部に故障予知状態に関する詳細情報を表示する。以下、所定のものに該当する場合の具体例を説明する。
レジスタR1,R7のいずれか一方の値が「1」の場合は、スラット片寄りに関する故障予知情報を表示し、両方の値が「1」の場合は、スラット片寄りに関する故障検知情報を表示する。
【0163】
レジスタR6,R8,R9,RAの少なくとも2個の値が「1」又は「2」の場合は、スラット片下がりに関する故障予知情報を表示し、全ての値が「2」の場合は、スラット片下がりに関する故障検知情報を表示する。ここで2個としたのは、スラット片下がりに関するレジスタの総数4の50%としたためである。従って、レジスタR6,R8,R9,RAのいずれかの値が「1」又は「2」となった場合をスラット片下がりに関する故障予知情報の表示対象としてもよい。
【0164】
レジスタR0,R1,R6,R7の少なくとも2個の値が「1」の場合は、開閉機固定ボルト弛みに関する故障予知情報を表示し、全ての値が「1」の場合は、開閉機固定ボルト弛みに関する故障検知情報を表示する。ここで2個としたのは、開閉機固定ボルト弛みに関するレジスタの総数4の50%としたためである。従って、レジスタR0,R1,R6,R7のいずれか一つの値が「1」となった場合を開閉機固定ボルト弛みに関する故障予知情報の表示対象としてもよい。
【0165】
レジスタR0,R2,R4,R6,R8,RAの少なくとも3個の値が「1」の場合は、スプロケット芯ずれに関する故障予知情報を表示し、全ての値が「1」の場合は、スプロケット芯ずれに関する故障検知情報を表示する。ここで3個としたのは、スプロケット芯ずれに関するレジスタの総数6の50%としたためである。従って、レジスタR0,R2,R4,R6,R8,RAのいずれか一つの値が「1」となった場合をスプロケット芯ずれに関する故障予知情報の表示対象としてもよい。
【0166】
レジスタR0~RBの少なくとも6個の値が「1」又は「2」の場合は、ローラチェーン弛みに関する故障予知情報を表示し、全ての値が「2」の場合は、ローラチェーン弛みに関する故障検知情報を表示する。ここで6個としたのは、ローラチェーン弛みに関するレジスタの総数12の50%としたためである。従って、レジスタR0~RBのいずれか一つの値が「1」又は「2」となった場合をローラチェーン弛みに関する故障予知情報の表示対象としてもよい。なお、ローラチェーン弛みに関するレジスタの総数は12なので、故障予知情報の表示対象とするレジスタの組み合わせは適宜変更してもよい。例えば、レジスタR0~R3,R6~R9の少なくとも4個の値と、レジスタR4,R5,RA,RBの少なくとも2個の値が「1」又は「2」の場合を故障予知情報の表示対象としてもよい。
【0167】
上述の実施の形態では、歪センサ62、歪センサ63、加速度センサ60、加速度センサ61、マイクロフォン65、電流クランプ64を設け、12個のレジスタR0~RBの値が一覧表の中のどれに該当するかに基づいて、故障予知状態又は故障検知状態に対応するかの判断を行う場合について説明したが、一覧表に示すように、歪センサ62だけを設けることによって、レジスタR0,R6の値に基づいて、スラット片下がり、開閉機固定ボルト弛み、スプロケット芯ずれ、ローラチェーン弛みに関する予知又は検知を実施することが可能である。
【0168】
なお、歪センサ63だけを設けることによって、レジスタR1,R7の値に基づいてスラット片寄り、開閉機固定ボルト弛み、ローラチェーン弛みに関する予知又は検知を実施することが可能となる。
加速度センサ60だけを設けることによって、レジスタR2,R8の値に基づいてスラット片下がり、スプロケット芯ずれ、ローラチェーン弛みに関する予知又は検知を実施することが可能となる。
加速度センサ61だけを設けることによって、レジスタR3,R9の値に基づいてスラット片下がり、ローラチェーン弛みに関する予知又は検知を実施することが可能となる。
マイクロフォン65だけを設けることによって、レジスタR4,RAの値に基づいてスラット片下がり、スプロケット芯ずれ、ローラチェーン弛みに関する予知又は検知を実施することが可能となる。
電流クランプ64だけを設けることによって、レジスタR5,RBの値に基づいてローラチェーン弛みに関する予知又は検知を実施することが可能となる。
また、一覧表に示すように、歪センサ62、歪センサ63、加速度センサ60、加速度センサ61、マイクロフォン65、電流クランプ64の種々の組み合わせを設けることによって、一覧表に対応する故障及び不具合の予知又は検知を実施することが可能となる。
【0169】
上述の実施の形態では、6個のセンサを特定個所に設ける場合について説明したが、これよりも多くのセンサをブラケット及びそれ以外の個所に設けることによって、故障及び不具合の予知又は検知の精度が格段に向上することは言うまでもない。
また、スラット片寄り、スラット片下がり、開閉機固定ボルト弛み、スプロケット芯ずれ及びローラチェーン弛みの他にローラチェーンの錆、スラット吊り元ボルトの弛み、座板ネジの弛み、上限位置ずれ又は押し車外れ等についてもその発生を予知又は検知することができるように各種センサを設けることが好ましい。例えば、シャッターケース内に監視カメラを設置し、その画像を処理することによって、これらの状態の予知又は検知が可能となる。
【符号の説明】
【0170】
10,10a…開閉体装置
11…シャッターケース
11R,11L…ブラケット、
12…シャッターカーテン
122,124,122a,124a…スラット
13,14…ガイドレール
15…巻取シャフト
16…ブレーキ
17…三相交流モータ
18…制御装置
19…操作スイッチ
19A…開ボタン
19B…停ボタン
19C…閉ボタン
20…リミットスイッチ
20A…上限リミットスイッチ
20B…下限リミットスイッチ
21…障害物検出部
22,23…光電センサ
24…光路
25…障害物感知器
26…無線受信機
27…各種センサ
30…各種表示ランプ
30a…正常運転表示ランプ
30b…故障予知ランプ
30c…故障発生ランプ
31…リセットスイッチ
40…開閉機、
401~404…固着手段
410…出力軸
51…出力スプロケット、
52…ローラチェーン、
53…入力スプロケット、
R0~RB…レジスタ
60,61…加速度センサ
62,63…歪センサ
64…電流クランプ
65…マイクロフォン
図1
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