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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240301BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
H01L29/78 616A
H01L29/78 616L
H01L29/78 617L
H01L29/78 617M
H01L29/78 617T
H01L29/78 617U
H01L29/78 618B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019181794
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021057538
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】花田 明紘
(72)【発明者】
【氏名】海東 拓生
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-026831(JP,A)
【文献】特開2015-079949(JP,A)
【文献】特開2015-005730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極の上にゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上に酸化物半導体膜が形成されたTFTを有する半導体装置であって、
前記酸化物半導体膜は、チャネル領域、ドレイン領域、ソース領域と、前記チャネル領域と前記ドレイン領域の間及び前記チャネル領域と前記ソース領域の間に中間抵抗領域と、を有し、
平面で視て、前記ゲート電極の上面で、前記酸化物半導体膜の前記チャネル領域と対向する部分には金属窒化膜が形成され、前記酸化物半導体膜の前記中間抵抗領域に対応する部分には前記金属窒化膜は形成されておらず、前記酸化物半導体膜の前記ドレイン領域及び前記ソース領域に対応する部分には前記金属窒化膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極の側面にも前記金属窒化膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記金属窒化膜は窒化チタン(TiN)であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極は、Al層の上にTi層が形成された構成であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
ゲート電極の上にゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上に酸化物半導体膜が形成されたTFTを有する半導体装置であって、
前記酸化物半導体膜は、チャネル領域、ドレイン領域、ソース領域と、前記チャネル領域と前記ドレイン領域の間及び前記チャネル領域と前記ソース領域の間に中間抵抗領域と、を有し、
平面で視て、前記ゲート電極の上面で、前記酸化物半導体膜の前記チャネル領域と対向する部分には金属酸化膜が形成され、前記酸化物半導体膜の前記中間抵抗領域に対応する部分には前記金属酸化膜は形成されておらず、前記酸化物半導体膜の前記ドレイン領域及び前記ソース領域に対応する部分には前記金属酸化膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート電極の側面にも前記金属酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記金属酸化膜は導電性の金属酸化膜であることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記金属酸化膜はITOであることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属酸化膜は、前記酸化物半導体膜とは別に形成された酸化物半導体膜であることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
ゲート電極の上にゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上に酸化物半導体膜が形成されたTFTを有する半導体装置であって、
前記酸化物半導体膜は、チャネル領域、ドレイン領域、ソース領域を有し、
平面で視て、前記ゲート電極の上面で、前記酸化物半導体膜の前記チャネル領域と対向する部分には絶縁性金属酸化膜が形成され、前記酸化物半導体膜の前記ドレイン領域及び前記ソース領域に対応する部分には前記絶縁性金属酸化膜は存在しないことを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
ゲート電極の上にゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上に酸化物半導体膜が形成されたTFTを有する半導体装置であって、
前記酸化物半導体膜は、チャネル領域と、ドレイン領域と、ソース領域と、前記チャネル領域と前記ドレイン領域の間及び前記チャネル領域と前記ソース領域の間に中間抵抗領域と、を有し、
平面で視て、前記ゲート電極の上面前記酸化物半導体膜の前記チャネル領域と対向する部分には絶縁性金属酸化膜が形成され、前記酸化物半導体の前記中間抵抗領域に対応する部分には前記絶縁性金属酸化膜は形成されておらず、前記酸化物半導体膜の前記ドレイン領域及び前記ソース領域に対応する部分には前記絶縁性金属酸化膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電極の側面にも前記絶縁性金属酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記絶縁性金属酸化膜はアルミナ(AlOx)膜であることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体によるTFTを用いた表示装置や光センサ装置を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物半導体を用いたTFT(Thin Film Transistor)は、ポリシリコンを用いたTFTに比べてOFF抵抗を大きくでき、a-Si(アモルファスシリコン)を用いたTFTに比べて移動度を大きくできるので、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置、あるいは、センサ等の半導体装置に用いることが出来る。
【0003】
TFTを用いた半導体装置では、TFTのドレイン電極、ソース電極、映像信号線、走査線等にAl配線が多用される。配線抵抗を低くできるからである。しかし、Al配線は、エレクトロマイグレーション現象やストレスマイグレーションによって断線等が生じやすい。これを防止するために、特許文献1にはAl配線の周囲を窒化チタン(TiN)で覆う構成が記載されている。
【0004】
また、上記のような半導体装置では、Al配線とともに、透明金属酸化物導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)が用いられる。ITOとAl配線を直接接続させると、AlがITOの酸素を奪い、Al配線とITOの接続が取れなくなる。これを防止するために、特許文献2の比較例には、Al配線をTi、Al、TiNの三層構造とする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-291119号公報
【文献】特開2012-43821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体は、酸素が抜かれると金属化し、導電化する。また、酸化物半導体を用いたTFTにおいて、チャネル領域から酸素が抜かれるとTFTが導通化し、TFTとしての動作ができなくなる。
【0007】
一方、TFTを用いた半導体装置では、TFTのゲート電極、ドレイン電極、ソース電極等に金属が使用される。金属は酸素を奪う性質がある。ボトムゲートタイプの酸化物半導体TFTでは、ゲート電極の上にゲート絶縁膜が存在し、その上に酸化物半導体膜が存在している。このような構成では、金属であるゲート電極がゲート絶縁膜を介して酸化物半導体から酸素を奪い、酸化物半導体TFTが動作しなくなる現象が生ずる。
【0008】
本発明の課題は、酸化物半導体TFTにおいて、特にチャネル領域を構成する酸化物半導体から酸素が奪われることによって、酸化物半導体TFTが動作しなくなる現象を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0010】
(1)ゲート電極の上にゲート絶縁膜が形成され、前記ゲート絶縁膜の上に酸化物半導体膜が形成されたTFTを有する半導体装置であって、前記酸化物半導体膜は、チャネル領域、ドレイン領域、ソース領域を有し、平面で視て、前記ゲート電極の上面で、前記酸化物半導体膜の前記チャネル領域と対向する部分には、金属窒化膜が形成され、前記ゲート電極の上面の一部は前記金属窒化膜が存在していないことを特徴とする半導体装置。
【0011】
(2)平面で視て、前記ゲート電極の上面の、前記酸化物半導体膜の前記ドレイン領域、前記ソース領域に対応する部分には、前記金属窒化膜は存在しないことを特徴とする(1)に記載の半導体装置。
【0012】
(3)前記酸化物半導体膜は、前記チャネル領域と前記ドレイン領域の間、及び、前記チャネル領域と前記ソース領域の間に中間抵抗領域を有し、前記ゲート電極の上面の、前記酸化物半導体膜の前記中間抵抗領域に対応する部分には前記金属窒化膜は形成されておらず、前記酸化物半導体膜の前記ドレイン領域及び前記ソース領域に対応する部分には、前記金属窒化膜が形成されていることを特徴とする(1)に記載の半導体装置。
【0013】
(4)前記ゲート電極の側面にも前記金属窒化膜が形成されていることを特徴とする(1)に記載の半導体装置。
【0014】
(5)前記金属窒化膜の代わりに金属酸化膜が形成されていることを特徴とする(1)乃至(4)に記載の半導体装置。
【0015】
(6)前記金属窒化膜の代わりに絶縁性金属酸化膜が形成されていることを特徴とする(1)乃至(4)に記載の半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】液晶表示装置の平面図である。
図2】液晶表示装置の表示領域の平面図である。
図3】液晶表示装置の表示領域の断面図である。
図4】実施例1の第1の形態によるTFT付近の断面図である。
図5】実施例1によるゲート電極の断面構造の例である。
図6】実施例1の第2の形態によるTFT付近の断面図である。
図7】実施例1の第3の形態によるTFT付近の断面図である。
図8】実施例1の第4の形態によるTFT付近の断面図である。
図9】実施例2の第1の形態によるTFT付近の断面図である。
図10】実施例2の第2の形態によるTFT付近の断面図である。
図11】実施例2の第3の形態によるTFT付近の断面図である。
図12】実施例2の第4の形態によるTFT付近の断面図である。
図13】実施例3の第1の形態によるTFT付近の断面図である。
図14】実施例3の第2の形態によるTFT付近の断面図である。
図15】実施例3の第3の形態によるTFT付近の断面図である。
図16】実施例3の第4の形態によるTFT付近の断面図である。
図17】実施例4の第1の形態によるTFT付近の断面図である。
図18】実施例4の第2の形態によるTFT付近の断面図である。
図19】比較例におけるTFT付近の断面図である。
図20】比較例の詳細断面図である。
図21】比較例の他の詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、液晶表示装置を例にとって本発明の内容を詳細に説明する。図1は、本発明が適用される例としての液晶表示装置の平面図である。図1において、TFT基板100と対向基板200がシール材16によって接着し、TFT基板100と対向基板200の間に液晶層が挟持されている。TFT基板100と対向基板200が重なっている部分に表示領域14が形成されている。
【0018】
TFT基板100の表示領域14には、走査線11が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線12が縦方向に延在して横方向に配列している。走査線11と映像信号線12に囲まれた領域が画素13になっている。
【0019】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100が対向基板200と重なっていない部分は端子領域15となっている。端子領域15にはフレキシブル配線基板17が接続している。液晶表示装置を駆動するドライバICはフレキシブル配線基板17に搭載されている。
【0020】
液晶は、自らは発光しないので、TFT基板100の背面にバックライトを配置している。液晶表示パネルはバックライトからの光を画素毎に制御することによって画像を形成する。フレキシブル配線基板17は、バックライトの背面に折り曲げられることによって、液晶表示装置全体としての外形を小さくする。
【0021】
本発明の液晶表示装置では、表示領域14に用いるTFTには、リーク電流の少ない酸化物半導体を用いたTFTが使用されている。また、シール材付近の額縁部分には、例えば、走査線駆動回路が形成されており、走査線駆動回路には、移動度の大きい、ポリシリコン半導体を用いたTFTが使用されることが多いが、酸化物半導体によるTFTを使用することも出来る。
【0022】
図2は、表示領域における画素の平面図である。図2は、IPS(In Plane Switching)方式における、FFS(Fringe Field Swtiching)と呼ばれる方式の液晶表示装置である。図2では、酸化物半導体106を用いたボトムゲートタイプのTFTが使用されている。酸化物半導体TFTはリーク電流が小さいので、スイッチングTFTとして好適である。
【0023】
図2において、走査線11が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線12が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線11と映像信号線12に囲まれた領域に画素電極116が形成されている。図2において、映像信号線12と画素電極116との間に酸化物半導体106を有する酸化物半導体TFTが形成されている。酸化物半導体TFTにおいて、映像信号線12がドレイン電極107を構成し、走査線11が分岐して酸化物半導体TFTのゲート電極104を構成している。酸化物半導体TFTのソース電極108は画素電極116側に延在し、スルーホール112を介して画素電極116と接続している。
【0024】
画素電極116は櫛歯状に形成されている。画素電極116はスリット1161を有している。画素電極116の下側には、容量絶縁膜を介してコモン電極113が平面状に形成されている。コモン電極113は各画素に連続して共通に形成されている。画素電極116に映像信号が供給されると、画素電極116とコモン電極113との間に液晶層を通過する電気力線が発生し、液晶分子を回転させることによって画像を形成する。
【0025】
図3は、図2に対応する液晶表示装置の断面図の例である。図3では、酸化物半導体膜106を用いたボトムゲートタイプのTFTが使用されている。酸化物半導体TFTはリーク電流が小さいので、スイッチングTFTとして好適である。
【0026】
酸化物半導体には、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)、ZnON(Zinc Oxide Nitride)、IGO(Indium Gallium Oxide)等がある。本実施例では、酸化物半導体としてIGZOを使用している。
【0027】
図3において、ガラス基板90の上にポリイミド基板100が形成されている。工程の最後において、ガラス基板90がポリイミド基板100から剥離されると、液晶表示装置は、フレキシブル液晶表示装置になる。ポリイミド基板100の上に、酸化シリコン(SiO)で形成された第1下地膜101、窒化シリコン(SiN)で形成された第2下地膜102、酸化シリコン(SiO)で形成された第3下地膜103の3層からなる下地膜が形成されている。
【0028】
第3下地膜103の上にゲート電極104が形成されている。ゲート電極104は、Ti及びAlの積層構造である。ゲート電極104を覆ってゲート絶縁膜105がSiOで形成され、ゲート絶縁膜105の上に酸化物半導体膜106が形成されている。酸化物半導体膜106の一方の端にはドレイン電極107が積層し、酸化物半導体106の他方の端にはソース電極108が積層している。ドレイン電極107、ソース電極108のいずれも金属あるいは合金で形成されている。
【0029】
酸化物半導体106、ドレイン電極107、ソース電極108を覆って、SiOによる第1層間絶縁膜109が形成され、その上にSiNによる第2層間絶縁膜110が形成されている。第1層間絶縁膜109をSiOで形成する理由は、SiOから酸素を酸化物半導体106のチャネル領域に供給するためである。
【0030】
第2層間絶縁膜110の上に有機パッシベーション膜111が例えばアクリル樹脂によって形成される。有機パッシベーション膜111は、平坦化膜としての役割を有しているので2μm程度と厚く形成される。有機パッシベーション膜111には、ソース電極108と画素電極116の導通をとるために、スルーホール112が形成されている。
【0031】
有機パッシベーション膜111の上にコモン電極113が平面状に形成され、その上に容量絶縁膜114が形成され、その上に画素電極116が形成されている。画素電極116とソース電極108との導通をとるために、容量絶縁膜114には、有機パッシベーション膜111のスルーホール112内においてスルーホール115が形成されている。画素電極116を覆って液晶分子を初期配向させるための配向膜117が形成されている。
【0032】
液晶層300を挟んで、画素電極116等と対向して対向基板200が配置している。対向基板200の内側にはカラーフィルタ201とブラックマトリクス202が形成されている。ブラックマトリクス202は、TFT及びスルーホール112を覆い、光もれを防止している。カラーフィルタ201及びブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成され、その上に配向膜204が形成されている。
【0033】
図3において、画素電極116に電圧が印加されると液晶層300を通過する電気力線が発生し、これによって液晶分子301が回転し、液晶層300の光透過率を変化させる。画素毎に液晶層300の光透過率を変えることによって画像を形成する。
【0034】
図3に示すように、金属で形成されたゲート電極104が、ゲート絶縁膜105を挟んで酸化物半導体106と対向している。ゲート電極104は金属であるために、ゲート絶縁膜105を介して、酸化物半導体106から酸素を抜き取る作用がある。そうすると、酸化物半導体106の抵抗が低下し、TFTが正常に動作しなくなる。
【0035】
図19は、これを対策する、比較例としてのTFT付近の断面図である。図19において、左側が酸化物半導体106を用いたTFT付近の断面図であり、右側が、TFTと同時に形成される、容量を形成するための、容量配線120及び容量電極122である。
【0036】
図19の層構成は図3で説明したとおりである。図19図3と異なる点は、ゲート電極104と酸化物半導体膜106の間のゲート絶縁膜105として、SiNで形成された第1ゲート絶縁膜1051とSiOで形成された第2ゲート絶縁膜1052が存在していることである。SiO膜1052が酸化物半導体膜106と接触している。
【0037】
図20は、図19におけるSiNで形成された第1ゲート絶縁膜1051の作用を示す断面図である。SiN膜1051は酸素をブロックする性質を有している。図20において、金属で形成されたゲート電極104は、第2ゲート絶縁膜1052であるSiO膜や酸化物半導体膜106から酸素を引き寄せようとするが、図20に示すように、第1ゲート絶縁膜1051であるSiN膜によって酸素の移動がブロックされ、酸化物半導体106から酸素が抜かれることを防止することが出来る。図20における矢印に付されたXのマークは、酸素がSiN膜1051によってブロックされることを示している。
【0038】
図21図19の構成の問題点を示す断面図である。第1ゲート絶縁膜1051を構成するSiN膜は、酸素をブロックする一方、水素を放出する。この水素が酸化物半導体膜106に達すると、酸化物半導体が還元され、すなわち、酸素を奪われ、酸化物半導体膜106が導通してしまう。
【0039】
したがって、図19の構成では、十分な対策にならない。以下に示す実施例1乃至4は、このような問題点を生じないようにしつつ、酸化物半導体層106から酸素が奪われる現象を対策する構成を与えるものである。
【実施例1】
【0040】
図4は実施例1の第1の形態を示す断面図である。図4の層構成は図3で説明したのと同様である。図5に示すように、ゲート電極104は、Al膜1042がベースメタル1041であるTi膜とキャップメタル1043であるTi膜によってサンドイッチされた構成である。図4及び図5の特徴は、ゲート電極104の上に金属窒化膜10である窒化チタン(TiN)を形成している点である。窒化チタン膜10の上にSiO膜によるゲート絶縁膜105が形成され、ゲート絶縁膜106の上に酸化物半導体膜106が形成されている。
【0041】
窒化チタン膜10はスパッタリングによって形成するが、これは、キャップメタル1043であるTi膜のスパッタリングと同じチャンバで連続して行うことが出来る。すなわち、Ti膜1043をスパッタリングで形成した後、窒素ガスを導入し、反応性スパッタリングによってTiN膜10を形成することが出来る。
【0042】
図5において、ベースメタル1041の膜厚は例えば50nm、Al膜1042の膜厚は例えば300nm、キャップメタル1043の膜厚は例えば50nmである。TiN膜10の膜厚は例えば10nmであるが、5nm乃至30nm程度であればよい。SiOで形成されたゲート絶縁膜105の膜厚は例えば300nm乃至500nm、酸化物半導体106の膜厚は例えば50nmである。なお、図5におけるベースメタル1041は省略されることもある。
【0043】
図4において、ゲート電極104の上に形成された窒化チタン膜10によって酸化物半導体106から酸素がゲート電極104に吸収されるのを阻止することが出来る。したがって、酸化物半導体TFTの特性が変化することを防止することが出来る。
【0044】
図4において、窒化チタン膜10は、ゲート電極104の上面全面ではなく、一部形成されていない領域であるホール存在している。このホールは、酸化物半導体膜106における中間抵抗領域(これはLDD領域とも呼ばれている)1062を形成するためである。すなわち、ホールが形成されている部分では、酸化物半導体膜106から酸素がゲート電極104によって抜かれるので、この部分では酸化物半導体106の抵抗が低下し、中間抵抗領域1062が形成される。中間抵抗領域1062は、ホットキャリアの生成を抑え、酸化物半導体TFTの特性を安定化させる。
【0045】
なお、ドレイン電極107あるいはソース電極108が酸化物半導体106に積層されている領域1063、1064では、酸化物半導体1063、1064から、金属であるドレイン電極107あるいはソース電極108によって酸素が大量に抜かれるので、酸化物半導体1063、1064は導電性となっている。一方、酸化物半導体のチャネル領域1061は窒化チタン膜10の存在によって酸化物半導体1061内に酸素が維持されるので、高抵抗が維持され、TFTの特性を維持することが出来る。したがって、酸化物半導体TFTの信頼性を維持することが出来る。
【0046】
図4の右側において、ゲート電極104と同時に形成される容量配線120の上にも窒化チタン膜10が形成されている。しかし、窒化チタン膜10は導電性なので、容量配線120と容量電極121の導通が損なわれることはない。
【0047】
図6は実施例1の第2の形態を示す断面図である。図6図4と異なる点は、ゲート電極104の上に形成された窒化チタン膜10が、酸化物半導体106のチャネル領域1061に対応する部分にのみ形成されていることである。すなわち、酸化物半導体106のチャネル領域1061では、窒化チタン膜10によって酸素が抜かれることを阻止されるので高抵抗を維持することが出来る。
【0048】
しかし、ゲート電極104の上に窒化チタン膜10が形成されている部分以外に対応する酸化物半導体106からは、ゲート電極104によって酸素が奪われるので酸化物半導体106の抵抗は低下する。ところで、ドレイン電極107及びソース電極108が積層している酸化物半導体106の領域、すなわち、ドレイン領域1063及びソース領域1064は、ドレイン電極107及びソース電極108によって、大量に酸素が抜かれるので抵抗が大きく低下する。これに対して、チャネル領域1061とドレイン領域1063との間、あるいは、チャネル領域1061とソース領域1064との間はゲート電極104から、ゲート絶縁膜105を介して酸素が抜かれるだけなので、酸化物半導体106の抵抗値はドレイン領域1063やソース領域1064に比べて、大きく低下することは無い。すなわち、図6の構成においても、中間抵抗領域(LDD領域)は形成される。したがって、図6の構成においても、特性の安定した酸化物半導体TFTを形成することが出来る。
【0049】
図7は、実施例1の第3の形態を示す断面図である。図7が第1の実施形態である図4と異なる点は、ゲート電極104の側面にも窒化チタン膜10が形成されていることである。これによって、ゲート電極104による、酸化物半導体106からの酸素の吸収をより効率的に阻止することが出来る。
【0050】
ゲート電極104の側面にも窒化チタン膜10を形成するために、ゲート電極104の側面のテーパは急峻でないほうがよい。この目的のためには、ゲート電極104の側面のテーパ角θは好ましくは、40度乃至60度である。
【0051】
図8は、実施例1の第4の形態を示す断面図である。図8が第2の実施形態である図6と異なる点は、ゲート電極104の側面にも窒化チタン膜10が形成されていることである。これによって、ゲート電極104による、酸化物半導体106からの酸素の吸収をより効率的に阻止することが出来る。図8のその他の構成は図6及び図7で説明したのと同様である。
【0052】
以上の説明では、金属窒化膜10として窒化チタンを例にとって説明したが、金属窒化膜10は、これには限らない。例えば窒化タンタル(TaNx)等も使用することが出来る。
【実施例2】
【0053】
実施例2の構成が実施例1の構成と異なる点は、液晶表示装置の基板がポリイミド基板100ではなく、ガラス基板90であるということである。図9は実施例2の第1の形態を示す断面図である。図9が実施例1の図4と異なる点は、ポリイミド基板と第1乃至第3下地膜が存在せず、ガラス基板90の上に直接ゲート電極104が形成されている点である。
【0054】
一般には、ガラス基板90はノンアルカリガラスが使用される。また、酸化物半導体106に対する、ガラス基板90からの不純物の影響は金属であるゲート電極104によって阻止される。しかし、ガラス基板90からの不純物の影響が残る場合は、図3で説明したような第1乃至第3下地膜101、102、103を形成すればよい。図9におけるその他の層構造は、図4と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
図10は実施例2の第2の形態を示す断面図である。図10が実施例1の図6と異なる点は、ポリイミド基板と第1乃至第3下地膜が存在せず、ガラス基板90の上に直接ゲート電極104が形成されている点である。この差については、図9で説明したのと同じなので省略する。
【0056】
図11は実施例2の第3の形態を示す断面図である。図11が実施例1の図7と異なる点は、ポリイミド基板と第1乃至第3下地膜が存在せず、ガラス基板90の上に直接ゲート電極104が形成されている点である。この差については、図9で説明したのと同じなので省略する。
【0057】
図12は実施例2の第4の形態を示す断面図である。図12が実施例1の図8と異なる点は、ポリイミド基板と第1乃至第3下地膜が存在せず、ガラス基板90の上に直接ゲート電極104が形成されている点である。この差については、図9で説明したのと同じなので省略する。
【実施例3】
【0058】
図13は実施例3の第1の形態を示す断面図である。図13が実施例1の図4と異なる点は、ゲート電極104の上に、金属窒化膜ではなく、金属酸化膜20が形成されていることである。金属酸化膜20も、ゲート電極104が酸化物半導体106から酸素を抜くことを阻止することが出来る。つまり、金属酸化膜20の作用は、実施例1の図4において、金属窒化膜について説明したのと同様である。
【0059】
金属酸化物20の種類としては、先に説明した種々の酸化物半導体、ITO等の金属酸化物導電体、アルミナ(AlOx)等の絶縁金属酸化物等がある。なお、他の金属酸化物導電体としては、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等がある。金属酸化膜20の膜厚は、金属窒化膜の場合と同様、好ましくは5nm乃至30nmである。
【0060】
金属酸化物は絶縁物の場合もあるので、図13において、容量配線120の上に形成された金属酸化膜20には、容量配線120が容量電極121と接続する部分にはスルーホールが形成されている。図13のその他の構成及び作用は実施例1の図4で説明したのと同様であるので省略する。
【0061】
図14は実施例3の第2の形態を示す断面図である。図14が実施例1の図6と異なる点は、金属窒化膜の代わりに金属酸化膜20が形成されている点である。図14における金属酸化膜20の作用は図6における金属窒化膜20の作用と同様であるので説明は省略する。
【0062】
図15は、実施例3の第3の形態を示す断面図である。図15において、ゲート電極104の側面は金属酸化膜20によって覆われている。図15が実施例1の図7と異なる点は、金属窒化膜の代わりに金属酸化膜20が形成されている点である。図15における金属酸化膜20の作用は図7における金属窒化膜20の作用と同様であるので説明は省略する。
【0063】
図16は、実施例3の第4の形態を示す断面図である。図16において、ゲート電極104の側面は金属酸化膜20によって覆われている。図16が実施例1の図8と異なる点は、金属窒化膜の代わりに金属酸化膜20が形成されている点である。図16における金属酸化膜20の作用は図8における金属窒化膜の作用と同様であるので説明は省略する。
【実施例4】
【0064】
図17は、実施例4の第1の形態を示す断面図である。図17では、ゲート電極104の上に絶縁膜である金属酸化膜20が形成されている。絶縁膜である金属酸化膜20としは、例えば、アルミナ(AlOx)膜を挙げることが出来る。アルミナ(AlOx)膜30の厚さは、実施例1における金属窒化膜と同様5nm乃至30nmである。
【0065】
アルミナ(AlOx)膜30の作用も実施例1の図4あるいは図7等で説明した金属窒化膜の作用と同様である。アルミナ(AlOx)膜30は絶縁膜なので、ゲート電極104あるいは容量配線120の上のみでなく、基板全面を覆うことが出来る。これによって、アルミナ(AlOx)膜30に対して、ガラス基板90やポリイミド基板100等からの不純物を阻止するためのブロック膜としての作用を持たせることも出来る。
【0066】
図18は実施例4の第2の形態を示す断面図である。図18が実施例2の図12と異なる点は、ゲート電極104の上に、金属窒化膜ではなく、アルミナ(AlOx)膜30が形成されていることと、アルミナ(AlOx)膜30がゲート電極104及び容量配線120の上のみでなく、基板全面に形成されている点である。アルミナ(AlOx)膜30の作用等は、図17等で説明したのと同様であるので省略する。
【0067】
以上のように、本発明によれば、酸化物半導体膜からの酸素の消失を効果的に防止することが出来、安定した酸化物半導体TFTを形成することが出来る。
【0068】
なお、以上は、酸化物半導体を液晶表示装置に適用した例で説明したが、本発明は、有機EL表示装置等の他の表示装置、2次元光センサ等、他の酸化物半導体を用いた装置にも使用することが出来る。
【符号の説明】
【0069】
10…金属窒化膜、 11…走査線、 12…映像信号線、 13…画素、 14…表示領域、 15…端子領域、 16…シール材、 17…フレキシブル配線基板、 20…金属酸化物、 30…アルミナ(AlOx)膜、 90…ガラス基板、 100…ポリイミド基板、 101…第1下地膜、 102…第2下地膜、 103…第3下地膜、 104…ゲート電極、 105…ゲート絶縁膜、 106…酸化物半導体膜、 107…ドレイン電極、 108…ソース電極、 109…第1層間絶縁膜、 110…第2層間絶縁膜、 111…有機パッシベーション膜、 112…スルーホール、 113…コモン電極、 114…容量絶縁膜、 115…スルーホール、 116…画素電極、 117…配向膜、 120…容量配線、 121…スルーホール、 122…容量電極、 136…スルーホール、 150…下部電極、 151…有機EL層、 152…カソード、 153…保護層、 154…粘着材、 155…偏光板、 160…バンク、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 204…配向膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 1041…ベースメタル、 1042…Al膜、 1043…キャップメタル、 1051…SiN膜、 1052…SiO膜、 1061…チャネル領域、 1062…中間抵抗領域(LDD領域)、 1063…ドレイン領域、 1064…ソース領域、 1161…画素電極スリット
図1
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