(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ガスタービン用燃焼器、ガスタービン及び油燃料の燃焼方法
(51)【国際特許分類】
F23R 3/28 20060101AFI20240301BHJP
F23R 3/00 20060101ALI20240301BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20240301BHJP
F23R 3/48 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F23R3/28 D
F23R3/00 A
F23R3/42 A
F23R3/48
(21)【出願番号】P 2019183413
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 総一
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】三谷 真規
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194928(JP,A)
【文献】特開2019-167924(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046097(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/080131(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0058696(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0335214(US,A1)
【文献】特開2003-014232(JP,A)
【文献】特開2009-052795(JP,A)
【文献】特開2016-023917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00-3/60
F02C 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン用燃焼器であって、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、燃料を噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃焼筒の軸方向から見たときの前記燃料噴射孔の図心と前記燃料噴射孔の外周縁との距離は、前記燃焼筒の周方向における前記外周縁の位置によって異なり、
前記軸方向から見たときの前記外周縁の形状は、前記図心を通過する最も長い長軸と、前記図心を通過するとともに前記長軸と直交していて前記長軸よりも短い短軸とを有し、
前記ガスタービン用燃焼器は、ガスタービンのロータの周囲に環状に複数配置され、
前記複数のガスタービン用燃焼器のそれぞれは、隣り合う二つのガスタービン用燃焼器の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管が取り付けられており、
前記長軸は、前記軸方向から見たときに、前記連結管の開口に向かって延在する
ガスタービン用燃焼器。
【請求項2】
ガスタービン用燃焼器であって、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、燃料を噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃焼筒の軸方向から見たときの前記燃料噴射孔の図心と前記燃料噴射孔の外周縁との距離は、前記燃焼筒の周方向における前記外周縁の位置によって異なり、
前記軸方向から見たときの前記外周縁の形状は、前記図心を通過する最も長い長軸と、前記図心を通過するとともに前記長軸と直交していて前記長軸よりも短い短軸とを有し、
前記ガスタービン用燃焼器は、ガスタービンのロータの周囲に環状に複数配置され、
前記複数のガスタービン用燃焼器のそれぞれは、隣り合う二つのガスタービン用燃焼器の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管が取り付けられており、
前記燃料噴射孔から噴射される前記燃料が有する前記周方向への速度成分によって前記燃料が旋回する方向を第1旋回方向としたときに、
前記長軸は、前記軸方向から見たときに、前記図心と前記連結管の開口の中心とを結ぶ仮想線に対して前記第1旋回方向とは逆の方向にずれている
ガスタービン用燃焼器。
【請求項3】
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、
前記第2ノズルの中心軸と一致する中心軸を有していて燃料だけを噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃焼筒の軸方向から見たときの前記燃料噴射孔の図心と前記燃料噴射孔の外周縁との距離は、前記燃焼筒の周方向における前記外周縁の位置によって異なる
ガスタービン用燃焼器。
【請求項4】
前記軸方向から見たときの前記外周縁の形状は、前記図心を通過する最も長い長軸と、前記図心を通過するとともに前記長軸と直交していて前記長軸よりも短い短軸とを有する
請求項3に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項5】
前記軸方向から見たときの前記外周縁の形状は、楕円形状である
請求項1、2、又は4の何れか一項に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項6】
前記軸方向から見たときの前記外周縁の形状は、前記長軸に対する前記短軸の長さの比がtan15°以上tan30°以下である
請求項1、2、4又は5の何れか一項に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項7】
前記第1ノズルの周囲を囲む第1ノズル筒の出口側の開口と一致する入口開口と、環状扇型形状の出口開口とを有する複数の延長管
をさらに備え、
前記長軸は、前記軸方向から見たときに、前記出口開口における前記周方向の中心位置から前記周方向にずれた位置に向かって延在する
請求項1、2、4乃至6の何れか一項に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項8】
水を噴射可能な複数の水噴射孔を有するアトマイズキャップ
をさらに備え、
前記複数の水噴射孔は、それぞれ水入口開口と水出口開口とを有し、
前記水出口開口のそれぞれは、前記燃料噴射孔よりも前記燃焼筒の径方向外側において前記周方向に沿って間隔を空けて配置されており、
前記水入口開口のそれぞれの前記径方向の位置は、前記水出口開口の前記周方向の位置よって異なる
請求項1、2、4乃至7の何れか一項に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項9】
ガスタービン用燃焼器であって、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、
燃料を噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃料噴射孔から噴射される前記燃料の噴霧形状が前記燃焼筒の中心軸に直交する断面において、前記噴霧形状の図心である第1図心を通過する最も長い第1長軸と、前記第1図心を通過するとともに前記第1長軸と直交していて前記第1長軸よりも短い第1短軸とを有するように前記燃料を噴射可能であり、
前記ガスタービン用燃焼器は、ガスタービンのロータの周囲に環状に複数配置され、
前記複数のガスタービン用燃焼器のそれぞれは、隣り合う二つのガスタービン用燃焼器の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管が取り付けられており、
前記噴霧形状の第1長軸は、前記燃焼筒の中心軸に直交する断面のうち前記連結管の開口が存在する断面において、前記連結管の前記開口に向かって延在する
ガスタービン用燃焼器。
【請求項10】
ガスタービン用燃焼器であって、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、
燃料を噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃料噴射孔から噴射される前記燃料の噴霧形状が前記燃焼筒の中心軸に直交する断面において、前記噴霧形状の図心である第1図心を通過する最も長い第1長軸と、前記第1図心を通過するとともに前記第1長軸と直交していて前記第1長軸よりも短い第1短軸とを有するように前記燃料を噴射可能であり、
前記ガスタービン用燃焼器は、ガスタービンのロータの周囲に環状に複数配置され、
前記複数のガスタービン用燃焼器のそれぞれは、隣り合う二つのガスタービン用燃焼器の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管が取り付けられており、
前記燃焼筒の軸方向から見たときの前記燃料噴射孔の外周縁の形状は、前記燃料噴射孔の図心である第2図心を通過する最も長い第2長軸と、前記第2図心を通過するとともに前記第2長軸と直交していて前記第2長軸よりも短い第2短軸とを有し、
前記燃料噴射孔から噴射される前記燃料が有する前記燃焼筒の周方向への速度成分によって前記燃料が旋回する方向を第1旋回方向としたときに、
前記第2長軸は、前記軸方向から見たときに、前記第2図心と前記連結管の開口の中心とを結ぶ第2仮想線に対して前記第1旋回方向とは逆の方向にずれている
ガスタービン用燃焼器。
【請求項11】
ガスタービン用燃焼器であって、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、
燃料を噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃料噴射孔から噴射される前記燃料の噴霧形状が前記燃焼筒の中心軸に直交する断面において、前記噴霧形状の図心である第1図心を通過する最も長い第1長軸と、前記第1図心を通過するとともに前記第1長軸と直交していて前記第1長軸よりも短い第1短軸とを有するように前記燃料を噴射可能であり、
前記ガスタービン用燃焼器は、ガスタービンのロータの周囲に環状に複数配置され、
前記複数のガスタービン用燃焼器のそれぞれは、隣り合う二つのガスタービン用燃焼器の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管が取り付けられており、
前記燃焼筒の軸方向から見たときの前記燃料噴射孔の外周縁の形状は、前記燃料噴射孔の図心である第2図心を通過する最も長い第2長軸と、前記第2図心を通過するとともに前記第2長軸と直交していて前記第2長軸よりも短い第2短軸とを有し、
前記燃料噴射孔からの前記燃料が前記連結管の開口が存在する前記軸方向の位置に到達するまでに前記燃焼筒の周方向に旋回する旋回方向及び旋回角度を燃料旋回方向及び燃料旋回角度としたときに、
前記第2長軸は、前記軸方向から見たときに、前記第2図心と前記連結管の開口の中心とを結ぶ仮想線に対して前記燃料旋回方向とは逆方向にずれており、
前記軸方向から見たときの前記第2長軸と前記仮想線との角度のずれ量は、前記燃料旋回角度に対して±5°の範囲内である
ガスタービン用燃焼器。
【請求項12】
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、
前記第2ノズルの中心軸と一致する中心軸を有していて燃料だけを噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃料噴射孔から噴射される前記燃料の噴霧形状が前記燃焼筒の中心軸に直交する断面において、前記噴霧形状の図心である第1図心を通過する最も長い第1長軸と、前記第1図心を通過するとともに前記第1長軸と直交していて前記第1長軸よりも短い第1短軸とを有するように前記燃料を噴射可能である
ガスタービン用燃焼器。
【請求項13】
前記噴霧形状は、前記燃焼筒の中心軸に直交する断面において楕円形状である
請求項9乃至12の何れか一項に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項14】
前記燃焼筒の中心軸に直交する断面における前記噴霧形状は、前記第1長軸に対する前記第1短軸の長さの比がtan15°以上tan30°以下である
請求項9乃至13の何れか一項に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項15】
前記第1ノズルの周囲を囲む第1ノズル筒の出口側の開口と一致する入口開口と、環状扇型形状の出口開口とを有する複数の延長管
をさらに備え、
前記噴霧形状の第1長軸は、前記燃焼筒の中心軸に直交する断面のうち前記出口開口が存在する断面において、前記第1図心と前記出口開口の中心とを結ぶ第1仮想線の延在方向とは異なる方向に延在する
請求項9乃至14の何れか一項に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項16】
水を噴射可能な複数の水噴射孔を有するアトマイズキャップ
をさらに備え、
前記複数の水噴射孔は、それぞれ水入口開口と水出口開口とを有し、
前記水出口開口のそれぞれは、前記燃料噴射孔よりも前記燃焼筒の径方向外側において前記燃焼筒の周方向に沿って間隔を空けて配置されており、
前記水入口開口のそれぞれの前記径方向の位置は、前記水出口開口の前記周方向の位置よって異なる
請求項9乃至15の何れか一項に記載のガスタービン用燃焼器。
【請求項17】
ロータと、
前記ロータの周囲に環状に複数配置される請求項1乃至16の何れか一項に記載の燃焼器と、
を備えるガスタービン。
【請求項18】
ガスタービンにおける油燃料の燃焼方法であって、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナにおいて前記複数の第1ノズルから前記油燃料を噴射する工程と、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルが有する
燃料噴射孔であって前記第2ノズルの中心軸と一致する中心軸を有していて前記油燃料だけを噴射可能な燃料噴射孔から前記油燃料を噴射する工程と、
を備え、
前記燃料噴射孔から前記油燃料を噴射する工程は、前記燃料噴射孔から噴射される前記油燃料の噴霧形状が前記燃焼筒の中心軸に直交する断面において、前記噴霧形状の図心を通過する最も長い長軸と、前記図心を通過するとともに前記長軸と直交していて前記長軸よりも短い短軸とを有するように前記油燃料を噴射する
油燃料の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービン用燃焼器、ガスタービン及び油燃料の燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンを構成する燃焼器は、圧縮機によって生成された圧縮空気が導入される車室内部に設けられている。燃焼器は、筒状をなす燃焼筒の内部で高温かつ高圧の燃焼ガスを生成する。燃焼器は、燃焼ガスが供給されるタービンの周方向に複数個が互いに隣接するように配置されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスタービンの出力を増加させるためにタービン入口温度を上昇させると燃焼振動が上昇するため、ガスタービンの出力増の妨げとなる。そのため、燃焼振動を抑制することが求められている。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、燃焼振動を抑制できるガスタービン用燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用燃焼器は、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、燃料を噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃焼筒の軸方向から見たときの前記燃料噴射孔の図心と前記燃料噴射孔の外周縁との距離は、前記燃焼筒の周方向における前記外周縁の位置によって異なる。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用燃焼器は、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナと、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルと、
を備え、
前記第2ノズルは、
燃料を噴射可能な燃料噴射孔を有し、
前記燃料噴射孔から噴射される前記燃料の噴霧形状が前記燃焼筒の中心軸に直交する断面において、前記噴霧形状の図心である第1図心を通過する最も長い第1長軸と、前記第1図心を通過するとともに前記第1長軸と直交していて前記第1長軸よりも短い第1短軸とを有するように前記燃料を噴射可能である。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
ロータと、
前記ロータの周囲に環状に複数配置される上記(1)又は(2)の何れかの構成の燃焼器と、
を備える。
【0009】
(4)本開示の少なくとも一実施形態に係る油燃料の燃焼方法は、
ガスタービンにおける油燃料の燃焼方法であって、
複数の第1ノズルが円筒状の燃焼筒の内周に沿って設けられた第1バーナにおいて前記複数の第1ノズルから前記油燃料を噴射する工程と、
前記複数の第1ノズルに取り囲まれた第2ノズルが有する燃料噴射孔から前記油燃料を噴射する工程と、
を備え、
前記燃料噴射孔から前記油燃料を噴射する工程は、前記燃料噴射孔から噴射される前記油燃料の噴霧形状が前記燃焼筒の中心軸に直交する断面において、前記噴霧形状の図心を通過する最も長い長軸と、前記図心を通過するとともに前記長軸と直交していて前記長軸よりも短い短軸とを有するように前記油燃料を噴射する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、燃焼振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係るガスタービンの構成を概略的に示す図である。
【
図2】ガスタービンの燃焼器周辺の構成を説明するための図である。
【
図3】燃焼筒(内筒)の軸方向に沿った、内筒の近傍の断面を模式的に示す図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV矢視断面を模式的に示した図である。
【
図5】
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図である。
【
図6】ガスタービンの周方向に沿って隣り合う二つの燃焼器を示す図である。
【
図7】幾つかの実施形態に係るパイロットノズルの先端近傍の軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。
【
図9】幾つかの実施形態に係るスプレーノズルの模式的な斜視図である。
【
図10】幾つかの実施形態に係るスプレーノズルの燃料噴射孔から噴射される燃料の噴霧形状について説明するための図である。
【
図11】アトマイズキャップの水噴射孔から噴射される水の流れについて説明するための図である。
【
図12】水噴射孔から噴射される水の噴霧形状の望ましい形状の例を示す図である。
【
図13】延長管の出口開口の軸方向位置において燃焼筒の中心軸に直交する断面を軸方向下流側から見たときの模式的な図である。
【
図14】延長管の出口開口の軸方向位置において燃焼筒の中心軸に直交する断面を軸方向下流側から見たときの模式的な図である。
【
図15】連結管が存在する軸方向位置における断面図である。
【
図16】燃焼筒内での燃料の旋回について説明するための模式図である。
【
図17】連結管が存在する軸方向位置における断面図である。
【
図18】一実施形態に係る油燃料の燃焼方法における処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係るガスタービンの構成を概略的に示す図である。
図2は、ガスタービンの燃焼器周辺の構成を説明するための図である。
図3は、燃焼筒(内筒)の軸方向に沿った、内筒の近傍の断面を模式的に示す図である。
図4は、
図3におけるIV-IV矢視断面を模式的に示した図である。
図5は、
図3におけるV-V矢視断面を模式的に示した図である。
【0014】
(ガスタービン1について)
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービン1は、圧縮機2、燃焼器3、及び、タービン4を備えており、例えば発電機G等の外部機器を駆動するものである。発電用のガスタービン1の場合、ロータ5には発電機
6が連結される。
圧縮機2は、外部の空気である大気を吸入して圧縮し、圧縮された空気を1つ以上の燃焼器3に供給するものである。
【0015】
燃焼器3は、圧縮機2により圧縮された空気を用いて、外部から供給された燃料を燃焼させることにより、高温ガス(燃焼ガス)を生成するものである。一実施形態に係るガスタービン1では、複数の燃焼器3がロータ5の周囲に環状に配置されている。一実施形態に係るガスタービン1では、燃料として可燃性の液体である油燃料(液体燃料)が用いられるが、燃料として可燃性の気体である気体燃料を用いてもよい。
タービン4は、燃焼器3により生成された高温燃焼ガスの供給を受けて回転駆動力を発生させ、発生した回転駆動力を圧縮機2及び外部機器に出力するものである。
【0016】
図2に示したように、車室7内には、燃焼器3の燃焼器設置スペース8が設けられている。燃焼器設置スペース8は、軸方向上流側の圧縮機2の出口と軸方向下流側のタービン4の入口との間に位置している。燃焼器3は、燃焼器設置スペース8に配置され、圧縮空気が燃焼器3の一端側から燃焼器3内に流入する。一方、燃焼器3には、外部から燃料が供給され、燃料と空気を混合させ高温の燃焼ガスを発生させ、燃焼ガスにより下流側のタービン4を回転駆動させる。
【0017】
より詳しくは、幾つかの実施形態に係る燃焼器3は、ノズル部10と、燃焼筒20とを有する。燃焼筒20は、内筒12と、尾筒14とを含む。なお、内筒12と尾筒14とは一体的に形成されていてもよい。燃焼筒20は、後述するメインノズル64及びパイロットノズル54から噴射された燃料が燃焼する燃焼室18を内側に有する。
ノズル部10は、パイロットバーナ50及び複数のメインバーナ(予混合燃焼バーナ)60を有する。以下の説明では、メインバーナ60のことを第1バーナ60とも呼び、パイロットバーナ50のことを第2バーナ50とも呼ぶ。
【0018】
パイロットバーナ50は、燃焼筒20の中心軸AXに沿って配置されている。そして、パイロットバーナ50を囲むように、複数のメインバーナ60が互いに離間して配列されている。
パイロットバーナ50は、燃料ポート52に連結されたパイロットノズル(第2ノズル)54と、パイロットノズル54を囲むように配置されたパイロットノズル筒(第2ノズル筒)56と、パイロットノズル54の外周に設けられた不図示のスワラと、を有している。なお、パイロットバーナ50の具体的な構成については後述する。
メインバーナ60は、燃料ポート62に連結されたメインノズル(第1ノズル)64と、メインノズル64を囲むように配置されたメインノズル筒(第1ノズル筒)66と、メインノズル64の外周に設けられた不図示のスワラと、を有している。
【0019】
幾つかの実施形態に係るメインバーナ60は、メインノズル筒66の出口側の開口66bと一致する入口開口68aと、環状扇型形状の出口開口68bとを有する複数の延長管68を有する。延長管68は、入口開口68aがメインノズル筒66の出口側の開口66bに接続されている。
【0020】
上記構成を有する燃焼器3において、圧縮機2で生成された圧縮空気は燃焼器設置スペース8内に供給され、さらに燃焼器設置スペース8からメインノズル筒66内に流入する。そして、この圧縮空気と、燃料ポート62から供給された燃料とがメインノズル筒66内で予混合される。この際、予混合気は不図示のスワラにより主として旋回流を形成し、内筒12に流れ込む。また、圧縮空気と、燃料ポート52を介してパイロットバーナ50から噴射された燃料とが混合され、図示しない種火により着火されて燃焼し、燃焼ガスが発生する。このとき、燃焼ガスの一部が火炎を伴って周囲に拡散することで、各メインバーナ60から内筒12内に流れ込んだ予混合気に着火されて燃焼する。すなわち、パイロットバーナ50から噴射されたパイロット燃料によるパイロット火炎によって、メインバーナ60からの予混合気(予混合燃料)の安定燃焼を行うための保炎を行うことができる。
【0021】
図6は、ガスタービン1のロータ5の周囲に環状に複数配置された燃焼器3のうち、ガスタービン1の周方向に沿って隣り合う二つの燃焼器3を示す図である。なお、
図6は、
図3におけるVI矢視断面における模式的な断面図である。幾つかの実施形態に係る複数の燃焼器3のそれぞれは、隣り合う二つの燃焼器3の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管22が取り付けられている。
【0022】
図7は、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54の先端近傍の軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。なお、
図7では、燃焼筒20の中心軸AXよりも上側の断面は、
図4におけるVIIa矢視断面を表し、燃焼筒20の中心軸AXよりも下側の断面は、
図4におけるVIIb矢視断面を表す。また、
図7では、図示の便宜上、パイロットノズル54の内部を流通する燃料や水を漏れを防止するためのシール部材などの記載を省略している。
図8は、
図7のVIII矢視図である。すなわち、
図8は、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54を軸方向下流側から上流側に向かって見たときの図である。
以下の説明では、燃焼筒20の中心軸AXの延在方向を単に軸方向とも呼び、中心軸AXと中心とする周方向を単に周方向とも呼び、中心軸AXと中心とする径方向を単に径方向とも呼ぶ。
【0023】
幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54は、二重管構造を有しており、内側管102と外側管152とを含む。
内側管102は、燃料ポート52と接続されている。内側管102の下流端104には、スプレーノズル110が取り付けられている。幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110は、パイロットノズル54の中心軸AXnに沿って配置されている。
外側管152は、不図示の水供給配管と接続されている。外側管152の下流端には、後述するアトマイズキャップ160が取り付けられている。
【0024】
(スプレーノズル110について)
図9は、幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110の模式的な斜視図である。なお、
図9では、スプレーノズル110の燃料噴射孔114の拡大図も併せて図示している。
幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110は、例えば円柱形状を有するスプレーノズル本体112の先端に燃料噴射孔114が形成されている。スプレーノズル本体112には、外周面からスプレーノズル本体112の径方向外側に突出するフランジ部116が形成されている。フランジ部116には、フランジ部116の周方向に沿って180度毎に、切欠き部118が形成されている。切欠き部118は、スプレーノズル本体112の径方向外側を向いた平面部118aを有する。
【0025】
幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110の燃料噴射孔114は、スプレーノズル本体112の軸AXs方向に沿ってスプレーノズル本体112の内部からスプレーノズル本体112の先端112aに向かうにつれて、スプレーノズル本体112の径方向外側に向かうように形成された傾斜面114aを有する。この傾斜面を外周縁114aとも呼ぶ。
【0026】
幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110の燃料噴射孔114では、スプレーノズル本体112の軸方向から見たときの燃料噴射孔114の図心(第2図心)G2と燃料噴射孔114の外周縁114aとの距離Lnは、スプレーノズル本体112の周方向における外周縁114aの位置によって異なっている。例えば、幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110の燃料噴射孔114では、外周縁114aは、スプレーノズル本体112の軸方向から見たときに、第2図心G2を通過する最も長い長軸(第2長軸)XL2と、第2図心G2を通過するとともに第2長軸XL2と直交していて第2長軸XL2よりも短い短軸(第2短軸)XS2とを有するように形成されているとよい。このような外周縁114aの形状の一例として、
図9によく示すように、スプレーノズル本体112の軸方向から見たときの外周縁114aの形状は、楕円形状であってもよい。
スプレーノズル本体112の軸方向から見たときの外周縁114aの形状は、楕円形状以外の回転対称の性質を有する種々の形状であってもよい。
なお、説明の便宜上、以下の説明では、第2長軸XL2を含む直線を直線Lcとし、第2短軸XS2を含む直線を直線Ldとする。
【0027】
図10は、幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110の燃料噴射孔114から噴射される燃料の噴霧形状について説明するための図である。
幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110では、燃料ポート52から内側管102を介して供給される燃料Fを燃料噴射孔114から噴射できる。
【0028】
燃料噴射孔114から燃料Fを噴射すると、燃料Fの噴霧形状120は、燃料噴射孔114の形状に応じた形状となる。具体的には、幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110では、燃料噴射孔114から噴射される燃料Fの噴霧形状120がスプレーノズル本体112の軸AXsに直交する断面(例えば
図10におけるX-X矢視断面)において、噴霧形状120の図心である第1図心G1と、噴霧形状120の外縁121との距離Lfは、軸AXsを中心とする周方向における該外縁121の位置によって異なる。
【0029】
例えば、幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110では、燃料Fの噴霧形状120がスプレーノズル本体112の軸AXs、すなわち燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、第1図心G1を通過する最も長い第1長軸XL1と、第1図心G1を通過するとともに第1長軸XL1と直交していて第1長軸XL1よりも短い第1短軸XS1とを有するように燃料Fを噴射可能であるとよい。
例えば、幾つかの実施形態に係るスプレーノズル110では、燃料Fの噴霧形状120は、燃焼筒の中心軸に直交する断面において楕円形状であるとよい。
燃料Fの噴霧形状120は、楕円形状以外の回転対称の性質を有する種々の形状であってもよい。
なお、燃料Fの噴霧形状120は、例えば
図10に示すように、燃料Fが存在しない円錐形状の領域122が形成される中空の噴霧形状120であってもよく、図示はしていないが中実の噴霧形状120であってもよい。
説明の便宜上、以下の説明では、第1長軸XL1を含む直線を直線Laとし、第1短軸XS1を含む直線を直線Lbとする。
【0030】
(スプレーノズル110の位置決めについて)
幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、例えば上述した第1長軸XL1及び第1短軸XS1が燃焼器3内で予め定められた方向に向かって延在するように、パイロットノズル54の中心軸AXnを中心とするスプレーノズル110の角度位置が予め定められている。幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、スプレーノズル110の角度位置が予め定められた角度位置となるように、以下の構成を有する。
すなわち、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、
図7に示すように、内側管102の下流端104には、内側管102の軸方向に突出する突出部106が形成されている。幾つかの実施形態では、突出部106は、内側管102の周方向に沿って180度毎に形成されており、内側管102の径方向内側を向いた平面部106aをそれぞれ有する。
【0031】
幾つかの実施形態では、スプレーノズル110を内側管102の下流端104に取り付けると、突出部106の平面部106aとスプレーノズル110の切欠き部118の平面部118aとが当接するように突出部106及び切欠き部118が構成されている。したがって、幾つかの実施形態では、突出部106及び切欠き部118によって、スプレーノズル110の角度位置を予め定められた角度位置に位置決めすることができる。
なお、幾つかの実施形態では、スプレーノズル110は、取り付けナット132を内側管102の下流端104近傍で内側管102の外周面に形成された雄ネジ部に結合することで、取り付けナット132と内側管102の下流端104とでフランジ部116が挟持されて内側管102に固定される。
【0032】
(アトマイズキャップ160について)
例えば
図7に示すように、幾つかの実施形態では、燃焼ガス中の窒素酸化物を抑制するために、水を噴射可能なアトマイズキャップ160が外側管152の下流端に取り付けられている。
幾つかの実施形態に係るアトマイズキャップ160は、例えば
図8に示すように、外側管152を介して供給される水を燃焼室18内に噴射可能な複数の水噴射孔162を有する。複数の水噴射孔162は、それぞれ水入口開口164と水出口開口166とを有する。
【0033】
水出口開口166のそれぞれは、燃料噴射孔114よりも径方向外側において周方向に沿って間隔を空けて配置されている。水出口開口166のそれぞれの径方向の位置は、例えば同じである。
水入口開口164のそれぞれの径方向の位置は、水出口開口166の周方向の位置よって異なる。具体的には、水入口開口164及び水出口開口166の位置、すなわち水噴射孔162の延在方向は、燃料噴射孔114から噴射された燃料Fの径方向外側の領域で燃料Fの噴射方向に沿って水Wを噴射できるように設定されている。
図11は、アトマイズキャップ160の水噴射孔162から噴射される水Wの流れについて説明するための図である。なお、
図11では、燃焼筒20の中心軸AX(パイロットノズル54の中心軸AXn)よりも上側の断面は、
図4におけるVIIa矢視断面を表し、パイロットノズル54の中心軸AXnよりも下側の断面は、
図4におけるVIIb矢視断面を表す。
【0034】
幾つかの実施形態では、例えば、燃料Fの噴霧形状120が楕円形状を有していれば、水噴射孔162から噴射される水Wの噴射形状も楕円形状を有しているとよい。
図12は、燃料Fの噴霧形状120が楕円形状を有している場合に水噴射孔162から噴射される水Wの噴霧形状170の望ましい形状の例を示す図である。なお、
図12は、軸方向下流側から見たときの水Wの噴霧形状170を表している。
図12に示す噴霧形状170は、ある軸方向位置において燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面に現れる噴射形状である。
図12において各水出口開口166から径方向外側に向かって延在する一点鎖線172は、水噴射孔162から噴射される水Wの軌跡を示している。
【0035】
幾つかの実施形態によれば、水入口開口164のそれぞれの径方向の位置を水出口開口166の周方向の位置よって異ならせることで、燃料噴射孔114から噴射された燃料Fの径方向外側の領域で燃料Fの噴射方向に沿って水Wを噴射できる。これにより、噴射される水Wによる燃料Fの噴霧形状120への影響を抑制しつつ、燃料Fの燃焼による窒素酸化物の発生を抑制できる。
【0036】
(燃焼振動の抑制について)
ガスタービン1の出力を増加させるためにタービン入口温度を上昇させると燃焼振動が大きくなるため、ガスタービン1の出力増の妨げとなる。そのため、燃焼振動を抑制することが求められている。
燃焼振動を抑制するには、複数のメインノズル64から同時刻に噴射された燃料Fが火炎となって燃焼筒20の内壁に接触することにより振動するまでの時間、及び火炎と内壁との接触位置を周方向の位置によって異ならせるとよい。
そこで、幾つかの実施形態に係る燃焼器3では、次のようにして燃焼振動を抑制するようにしている。
【0037】
例えば幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54は、燃料Fを噴射可能な燃料噴射孔114を有する。より具体的には、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54は、スプレーノズル本体112の先端に燃料噴射孔114が形成されたスプレーノズル110を有する。
幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54は、燃料噴射孔114から噴射される燃料Fの噴霧形状120が燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、第1図心G1と、噴霧形状120の外縁121との距離Lfが、周方向における該外縁121の位置によって異なるように構成されている。
なお、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、軸方向から見たときの燃料噴射孔114の図心である第2図心G2と燃料噴射孔114の外周縁114aとの距離Lnを、周方向における外周縁114aの位置によって異ならせてもよい。
【0038】
このようなパイロットノズル54によれば、燃料Fの噴霧形状120は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、第1図心G1と、噴霧形状120の外縁121との距離Lfが、周方向における噴霧形状120の外縁121の位置によって異なる。すなわち、燃料Fの噴霧形状120は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、円形にはならない。そのため、燃料噴射孔114から噴射された燃料Fによって、噴霧形状120と同様の形状の火炎が形成される。このような形状を有する火炎によって複数のメインノズル64から噴射された燃料Fが着火されると、燃焼器3内の同一断面中に火炎が充満し難くなるため、燃焼振動の発生が抑制される。より具体的には、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54によれば、複数のメインノズル64から同時刻に噴射された燃料Fが火炎となって燃焼筒20の内壁に接触することにより振動するまでの時間、及び火炎と内壁との接触位置を周方向の位置によって異ならせることができる。これにより、振動の発生する時刻及び軸方向位置が分散されるので、燃焼振動の発生が抑制される。
【0039】
幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54は、燃料噴射孔114から噴射される燃料Fの噴霧形状120が燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、第1図心G1を通過する最も長い第1長軸XL1と、第1図心G1を通過するとともに第1長軸XL1と直交していて第1長軸XL1よりも短い第1短軸XS1とを有するように燃料Fを噴射可能に構成されている。
なお、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、軸方向から見たときの燃料噴射孔114の外周縁114aの形状は、第2図心G2を通過する最も長い第2長軸XL2と、第2図心G2を通過するとともに第2長軸XL2と直交していて第2長軸XL2よりも短い第2短軸XS2とを有していてもよい。
【0040】
このようなパイロットノズル54によれば、燃料Fの噴霧形状120は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、第1図心G1を通過する最も長い第1長軸XL1と、第1図心G1を通過するとともに第1長軸XL1と直交していて第1長軸XL1よりも短い第1短軸XS1とを有する。これにより、燃焼器3内の同一断面中に火炎がより充満し難くなるため、燃焼振動の発生が効果的に抑制される。
【0041】
幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、噴霧形状120は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において楕円形状である。
なお、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、軸方向から見たときの外周縁114aの形状は、楕円形状であってもよい。
【0042】
このようなパイロットノズル54によれば、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、燃料Fの噴霧形状120を楕円形状とすることができる。これにより、燃焼振動の発生を効果的に抑制できる燃料Fの噴霧形状120を容易に実現できる。また、燃料噴射孔114の形状が比較的単純な形状となるので、パイロットノズル54の製造コストを抑制できる。
【0043】
幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面における噴霧形状120は、第1長軸XL1に対する第1短軸XS1の長さの比がtan15°以上tan30°以下であるとよい。
なお、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、軸方向から見たときの外周縁114aの形状は、第2長軸XL2に対する第2短軸XS2の長さの比がtan15°以上tan30°以下であってもよい。
【0044】
発明者らが鋭意検討した結果、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、噴霧形状120の第1長軸XL1に対する第1短軸XS1の長さの比がtan15°以上tan30°以下とすると、燃焼振動の抑制効果が比較的高くなることが分かった。また、上述したように、燃料Fの噴霧形状120は、燃料噴射孔114の形状に応じた形状となる。したがって、このようなパイロットノズル54によれば、第1長軸XL1に対する第1短軸XS1の長さの比がtan15°以上tan30°以下となる形状に噴霧形状120が近づくので、燃焼振動の発生を効果的に抑制できる。
【0045】
図13は、延長管68の出口開口68bの軸方向位置において燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面を軸方向下流側から見たときの模式的な図であり、
図3におけるV-V矢視断面と同じ断面を示す図である。説明の便宜上、
図13では、延長管68の出口開口68bと燃料Fの噴霧形状120との関係の説明に必要のない構成の記載は省略している。
図14は、延長管68の出口開口68bの軸方向位置において燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面を軸方向下流側から見たときの模式的な図であり、
図3におけるV-V矢視断面と同じ断面を示す図である。説明の便宜上、
図14では、延長管68の出口開口68bと燃料噴射孔114との関係の説明に必要のない構成の記載は省略している。
【0046】
図13に示すように、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、第1長軸XL1は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち延長管68の出口開口68bが存在する断面において、第1図心G1と出口開口68bの中心(図心)C1とを結ぶ第1仮想線Li1の延在方向とは異なる方向に延在する。
なお、
図14に示すように、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、出口開口68bにおける周方向の中心(図心)C1位置から周方向にずれた位置に向かって延在してもよい。
【0047】
発明者らが鋭意検討した結果、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち延長管68の出口開口68bが存在する断面において、第1図心G1と出口開口68bの中心C1とを結ぶ第1仮想線Li1の延在方向とは異なる方向に第1長軸XL1が延在するように燃料Fを噴射すると、第1長軸LX1が第1仮想線Li1の延在方向と同じ方向に延在するように燃料Fを噴射した場合よりも燃焼振動を効果的に抑制できることが分かった。したがって、このようなパイロットノズル54によれば、第1長軸XL1が第1仮想線Li1の延在方向とは異なる方向に延在するように燃料Fを噴射できるので、燃焼振動を効果的に抑制できる。
なお、延長管68の出口開口68bの軸方向位置において、周方向に隣り合う二つの出口開口68bの間に第1長軸XL1が向かっていると、燃焼振動をより効果的に抑制できる。周方向に隣り合う二つの出口開口68bについての二つの第1仮想線Li1がなす角度θi1を二等分する線分を線分Lihとする。第1長軸XL1(直線La)と線分Lihとの角度の差が、例えば10°以内であれば、燃焼振動をより効果的に抑制できる。
【0048】
図6に示すように、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54では、第1長軸XL1は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、連結管22の開口22aに向かって延在するとよい。
なお、
図6は、
図3におけるVI矢視断面における模式的な断面図、すなわち、連結管22が存在する軸方向位置における断面図である。
図15は、連結管22が存在する軸方向位置における断面図である。説明の便宜上、
図15では、連結管22の開口22aと燃料噴射孔114との関係の説明に必要のない構成の記載は省略している。
図15に示すように、第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、連結管22の開口22aに向かって延在していてもよい。
【0049】
燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1が連結管22の開口22aに向かって延在するように燃料を噴射することで、隣り合う二つの燃焼器3の一方から他方へ連結管22を介して火炎を伝播させることが容易となる。したがって、幾つかの実施形態に係るパイロットノズル54によれば、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1の延在方向を連結管22の開口22aに近づけることができるので、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
なお、連結管22の開口22aの軸方向位置において、第1図心G1と開口22aの中心(図心)C2とを結ぶ第2仮想線Li2(
図6参照)と第1長軸XL1(直線La)との角度の差が、例えば22.5°以内であれば、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
【0050】
(燃焼筒20内での燃料Fの旋回について)
図16は、燃焼筒20内での燃料Fの旋回について説明するための模式図であり、軸方向下流側から上流側に向かって見た状態を示している。なお、
図16は、連結管22が存在する軸方向位置における燃料Fの噴霧形状120を表している。
幾つかの実施形態では、燃料噴射孔114から噴射される燃料Fは、スプレーノズル本体112の軸AXsを中心とする周方向、すなわち燃焼筒20の中心軸AXを中心とする周方向に旋回する旋回速度成分を有している。そのため、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、該旋回速度成分によって燃焼筒20内で旋回しようとする。
また、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、燃焼筒20内の圧縮空気の流れの影響を受ける。燃焼筒20内では、圧縮空気は上述した不図示のスワラによって燃焼筒20の中心軸AXを中心とす
る周方向に旋回する旋回速度成分が与えられている。
すなわち、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、燃料Fが有する旋回速度成分と、燃焼筒20内で旋回する圧縮空気の流れの影響とによって、燃焼筒20内で旋回する。
【0051】
例えば、幾つかの実施形態に係る燃焼器3では、燃料Fが有する旋回速度成分による燃料Fの旋回方向は、燃焼筒20内での圧縮空気の旋回方向と逆の方向である。以下の説明では、燃料Fが有する旋回速度成分による燃料Fの旋回方向を第1旋回方向S1とも呼び、第1旋回方向S1とは反対の旋回方向を第2旋回方向S2とも呼ぶ。
図16に示すように、燃焼筒20内で旋回する圧縮空気の流れの影響がなかったと仮定したとき、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、噴霧形状120iのように、連結管22が存在する軸方向位置に到達するまでに第1旋回方向S1に向かって角度θ1だけ旋回する。すなわち、燃焼筒20内で旋回する圧縮空気の流れの影響がなかったと仮定したとき、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fの仮想的な第1長軸XL1iは、第2長軸XL2に対して角度θ1だけ第1旋回方向S1にずれる。
【0052】
しかし、ガスタービン1の運転時には、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、連結管22が存在する軸方向位置に到達するまでに第2旋回方向S2に向かって角度θ2だけ押し戻される。したがって、ガスタービン1の運転時には、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、連結管22が存在する軸方向位置に到達するまでに、「角度θ1-角度θ2」となる角度だけ第1長軸XL1が第2長軸XL2に対して第1旋回方向S1にずれる。なお、(角度θ2の絶対値)<(角度θ1の絶対値)であれば、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、第1旋回方向S1に旋回し、(角度θ1の絶対値)<(角度θ2の絶対値)であれば、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、第2旋回方向S2に旋回する。(角度θ2の絶対値)=(角度θ1の絶対値)であれば、燃料噴射孔114から噴射された後の燃料Fは、第1旋回方向S1にも第2旋回方向S2にも旋回しない。
【0053】
したがって、上述した燃焼筒20内での燃料Fの旋回量を考慮した上で、第1長軸XL1の延在方向が所望の方向となるようにすることが望ましい。
【0054】
なお、幾つかの実施形態では、上述した水噴射孔162から噴射される水Wは、燃料Fが有する旋回速度成分による燃料Fの旋回方向とは逆の方向に向かう速度成分、すなわち第2旋回方向S2へ向かう速度成分を有している。
【0055】
図17は、連結管22が存在する軸方向位置における断面図である。説明の便宜上、
図17では、連結管22の開口22aと燃料噴射孔114との関係の説明に必要のない構成の記載は省略している。
例えば
図17に示すように、幾つかの実施形態において、第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、第2図心G2と連結管22の開口22aの中心C2とを結ぶ第2仮想線Li2に対して第1旋回方向S1とは逆の方向、すなわち第2旋回方向S2にずれていてもよい。
【0056】
燃料噴射孔114から噴射される燃料Fは、該燃料Fが周方向への速度成分を有していると、周方向に旋回しながら軸方向下流側に向かって流れる。そのため、該燃料Fが周方向への速度成分を有していると、第1長軸XL1の向きは軸方向位置によって変化する。例えば、燃料Fが周方向への速度成分による寄与分が燃焼筒20内で旋回する圧縮空気の流れによる寄与分よりも大きいと、第1長軸XL1は軸方向下流側に向かうにつれて第1旋回方向S1に旋回する。
このような場合であっても、軸方向から見たときに、第2長軸XL2が第2仮想線Li2に対して第2旋回方向S2にずれていれば、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1の延在方向を連結管22の開口22aに近づけることができる。これにより、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
【0057】
燃料噴射孔114からの燃料Fが連結管22の開口22aが存在する軸方向位置に到達するまでに燃焼筒20の周方向に実際に旋回する旋回方向及び旋回角度を燃料旋回方向S及び燃料旋回角度θsとする。
燃料旋回方向S及び燃料旋回角度θsは、上述したように、燃料Fが有する旋回速度成分と、燃焼筒20内で旋回する圧縮空気の流れの影響とによって決まる。
【0058】
幾つかの実施形態において、第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、第2仮想線Li2に対して燃料旋回方向Sとは逆方向にずれているとよい。すなわち、燃焼筒20内で燃料Fが周方向に旋回することを見越して、第2仮想線Li2に対して燃料旋回方向Sとは逆方向に第2長軸XL2がずれているとよい。そして、軸方向から見たときの第2長軸XL2と第2仮想線Li2との角度のずれ量△θは、燃料旋回角度θsに対して±5°の範囲内であるとよい。
これにより、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1の延在方向を連結管22の開口22aに近づけることができる。具体的には、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1の延在方向と第2仮想線Li2との角度のずれ量を±5°以内とすることができる。これにより、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
【0059】
幾つかの実施形態に係る燃焼器3を備えたガスタービン1によれば、燃焼振動を抑制できる。
【0060】
(油燃料の燃焼方法について)
幾つかの実施形態に係る燃焼器3を備えたガスタービン1において、次のような油燃料の燃焼方法で油燃料を燃焼させてもよい。
図18は、一実施形態に係る油燃料の燃焼方法における処理手順を示したフローチャートである。
一実施形態に係る油燃料の燃焼方法は、複数のメインノズル64から油燃料Fを噴射する工程S10と、パイロットノズル54が有する燃料噴射孔114から油燃料Fを噴射する工程S20とを備える。
一実施形態に係る油燃料の燃焼方法では、燃料噴射孔114から油燃料Fを噴射する工程S20は、燃料噴射孔114から噴射される油燃料Fの噴霧形状120が燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、噴霧形状120の第1図心G1を通過する最も長い第1長軸XL1と、第1図心G1を通過するとともに第1長軸XL1と直交していて第1長軸XL1よりも短い第1短軸XS1とを有するように油燃料Fを噴射する。
【0061】
一実施形態に係る油燃料の燃焼方法によれば、燃料Fの噴霧形状120が燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、上記第1長軸XL1及び第1短軸XS1を有するので、上述したように、燃焼器3内の同一断面中に火炎がより充満し難くなるため、燃焼振動の発生が効果的に抑制される。
【0062】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0063】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン用燃焼器(燃焼器3)は、
複数の第1ノズル(メインノズル64)が円筒状の燃焼筒20の内周に沿って設けられた第1バーナ(メインバーナ60)を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼器3は、複数のメインノズル64に取り囲まれた第2ノズル(パイロットノズル54)を備える。
パイロットノズル54は、燃料Fを噴射可能な燃料噴射孔114を有する。
燃焼筒20の軸方向から見たときの燃料噴射孔114の図心(第2図心G2)と燃料噴射孔114の外周縁114aとの距離Lnは、燃焼筒20の周方向における外周縁114aの位置によって異なる。
【0064】
上記(1)の構成によれば、パイロットノズル54が上記燃料噴射孔114を有するので、上述したように、燃料噴射孔114から燃焼筒20の軸方向に燃料Fを噴射すると、燃料Fの噴霧形状120は、燃料噴射孔114の形状に応じた形状となる。具体的には、燃料Fの噴霧形状120は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、噴霧形状120の図心である第1図心G1と、噴霧形状120の外縁121との距離Lfは、燃焼筒20の周方向における噴霧形状120の外縁121の位置によって異なる。すなわち、燃料Fの噴霧形状は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、円形にはならない。そのため、上記燃料噴射孔114から噴射された燃料Fによって、上述した噴霧形状120と同様の形状の火炎が形成される。このような形状を有する火炎によって複数のメインノズル64から噴射された燃料Fが着火されると、燃焼器3内の同一断面中に火炎が充満し難くなるため、燃焼振動の発生が抑制される。より具体的には、上記(1)の構成によれば、複数のメインノズル64から同時刻に噴射された燃料Fが火炎となって燃焼筒20の内壁に接触することにより振動するまでの時間、及び火炎と内壁との接触位置を周方向の位置によって異ならせることができる。これにより、振動の発生する時刻及び軸方向位置が分散されるので、燃焼振動の発生が抑制される。
【0065】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、軸方向から見たときの外周縁114aの形状は、図心(第2図心G2)を通過する最も長い長軸(第2長軸XL2)と、第2図心G2を通過するとともに第2長軸XL2と直交していて第2長軸XL2よりも短い短軸(第2短軸XS2)とを有する。
【0066】
上述したように、燃料Fの噴霧形状120は、燃料噴射孔114の形状に応じた形状となる。したがって、上記(2)の構成によれば、燃料Fの噴霧形状120は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、噴霧形状120の図心である第1図心G1を通過する最も長い第1長軸XL1と、第1図心G1を通過するとともに第1長軸XL1と直交していて第1長軸XL1よりも短い第1短軸XS1とを有する。これにより、燃焼器3内の同一断面中に火炎がより充満し難くなるため、燃焼振動の発生が効果的に抑制される。
【0067】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、軸方向から見たときの外周縁114aの形状は、楕円形状である。
【0068】
上記(3)の構成によれば、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、燃料Fの噴霧形状120を楕円形状とすることができる。これにより、燃焼振動の発生を効果的に抑制できる燃料Fの噴霧形状120を容易に実現できる。また、燃料噴射孔114の形状が比較的単純な形状となるので、パイロットノズル54の製造コストを抑制できる。
【0069】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、軸方向から見たときの外周縁114aの形状は、第2長軸XL2に対する第2短軸XS2の長さの比がtan15°以上tan30°以下である。
【0070】
上述したように、発明者らが鋭意検討した結果、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、噴霧形状120の第1長軸XL1に対する第1短軸XS1の長さの比がtan15°以上tan30°以下とすると、燃焼振動の抑制効果が比較的高くなることが分かった。また、上述したように、燃料Fの噴霧形状120は、燃料噴射孔114の形状に応じた形状となる。したがって、上記(4)の構成によれば、第1長軸XL1に対する第1短軸XS1の長さの比がtan15°以上tan30°以下となる形状に噴霧形状120が近づくので、燃焼振動の発生を効果的に抑制できる。
【0071】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかの構成において、
メインノズル64の周囲を囲む第1ノズル筒(メインノズル筒66)の出口側の開口66bと一致する入口開口68aと、環状扇型形状の出口開口68b
とを有する複数の延長管68をさらに備える。
第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、出口開口68bにおける周方向の中心(図心)C1位置から周方向にずれた位置に向かって延在する。
【0072】
上述したように、発明者らが鋭意検討した結果、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち延長管68の出口開口68bが存在する断面において、上述した第1図心G1と出口開口68bの中心とを結ぶ第1仮想線Li1の延在方向とは異なる方向に第1長軸XL1が延在するように燃料Fを噴射すると、第1長軸XL1が第1仮想線Li1の延在方向と同じ方向に延在するように燃料Fを噴射した場合よりも燃焼振動を効果的に抑制できることが分かった。したがって、上記(5)の構成によれば、第1長軸XL1が第1仮想線Li1の延在方向とは異なる方向に延在するように燃料Fを噴射できるので、燃焼振動を効果的に抑制できる。
【0073】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(5)の何れかの構成において、
水Wを噴射可能な複数の水噴射孔162を有するアトマイズキャップ160をさらに備える。
複数の水噴射孔162は、それぞれ水入口開口164と水出口開口166とを有する。
水出口開口166のそれぞれは、燃料噴射孔114よりも燃焼筒20の径方向外側において周方向に沿って間隔を空けて配置されている。
水入口開口164のそれぞれの径方向の位置は、水出口開口166の周方向の位置よって異なる。
【0074】
上記(6)の構成によれば、水入口開口164のそれぞれの径方向の位置を水出口開口166の周方向の位置よって異ならせることで、燃料噴射孔114から噴射された燃料Fの径方向外側の領域で燃料Fの噴射方向に沿って水Wを噴射できる。これにより、噴射される水Wによる燃料Fの噴霧形状120への影響を抑制しつつ、燃料Fの燃焼による窒素酸化物の発生を抑制できる。
【0075】
(7)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(6)の何れかの構成において、燃焼器3は、ガスタービン1のロータ5の周囲に環状に複数配置されている。
複数の燃焼器3のそれぞれは、隣り合う二つの燃焼器3の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管22が取り付けられている。
第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、連結管22の開口22aに向かって延在する。
【0076】
上述した噴霧形状120における第1長軸XL1が燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、連結管22の開口22aに向かって延在するように燃料Fを噴射することで、隣り合う二つの燃焼器3の一方から他方へ連結管22を介して火炎を伝播させることが容易となる。したがって、上記(7)の構成によれば、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1の延在方向を連結管22の開口22aに近づけることができるので、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
【0077】
(8)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(6)の何れかの構成において、燃焼器3は、ガスタービン1のロータ5の周囲に環状に複数配置されている。
複数の燃焼器3のそれぞれは、隣り合う二つの燃焼器3の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管22が取り付けられており、
燃料噴射孔114から噴射される燃料Fが有する周方向への速度成分によって燃料Fが旋回する方向を第1旋回方向S1とする。
第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、第2図心G2と連結管22の開口22aの中心C2とを結ぶ第2仮想線Li2に対して第1旋回方向S1とは逆の方向にずれている。
【0078】
燃料噴射孔114から噴射される燃料Fは、該燃料Fが周方向への速度成分を有していると、周方向に旋回しながら軸方向下流側に向かって流れる。そのため、該燃料Fが周方向への速度成分を有していると、第1長軸XL1の向きは軸方向位置によって変化する。
上記(8)の構成によれば、該燃料Fが周方向への速度成分を有していても、燃焼筒20の中心軸に直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1の延在方向を連結管22の開口22aに近づけることができる。これにより、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
【0079】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係る燃焼器3は、複数のメインノズル64が円筒状の燃焼筒20の内周に沿って設けられたメインバーナ60と、複数のメインノズル64に取り囲まれたパイロットノズル54とを備える。
パイロットノズル54は、燃料Fを噴射可能な燃料噴射孔114を有する。パイロットノズル54は、燃料噴射孔114から噴射される燃料Fの噴霧形状120が燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、噴霧形状120の図心である第1図心G1を通過する最も長い第1長軸XL1と、第1図心G1を通過するとともに第1長軸XL1と直交していて第1長軸XL1よりも短い第1短軸XS1とを有するように燃料Fを噴射可能である。
【0080】
上記(9)の構成によれば、燃料Fの噴霧形状120が、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、第1長軸XL1及び第1短軸XS1を有するので、上述したように、燃焼器3内の同一断面中に火炎がより充満し難くなるため、燃焼振動の発生が効果的に抑制される。
【0081】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、噴霧形状120は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において楕円形状である。
【0082】
上記(10)の構成によれば、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、燃料Fの噴霧形状120が楕円形状を有するので、上述したように、燃焼器3内の同一断面中に火炎がより充満し難くなるため、燃焼振動の発生が効果的に抑制される。
【0083】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)の構成において、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面における噴霧形状120は、第1長軸XL1に対する第1短軸XS1の長さの比がtan15°以上tan30°以下である。
【0084】
上述したように、発明者らが鋭意検討した結果、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、噴霧形状120の第1長軸XL1に対する第1短軸XS1の長さの比がtan15°以上tan30°以下とすると、燃焼振動の抑制効果が比較的高くなることが分かった。したがって、上記(11)の構成によれば、燃焼振動の発生を効果的に抑制できる。
【0085】
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(11)の何れかの構成において、メインノズル64の周囲を囲むメインノズル筒66の出口側の開口66bと一致する入口開口68aと、環状扇型形状の出口開口68bとを有する複数の延長管68をさらに備える。
噴霧形状120の第1長軸XL1は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち出口開口68bが存在する断面において、第1図心G1と出口開口68bの中心とを結ぶ第1仮想線Li1の延在方向とは異なる方向に延在する。
【0086】
上述したように、発明者らが鋭意検討した結果、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち延長管68の出口開口68bが存在する断面において、第1仮想線Li1の延在方向とは異なる方向に第1長軸XL1が延在するように燃料Fを噴射すると、第1仮想線Li1の延在方向と同じ方向に第1長軸XL1が延在するように燃料Fを噴射した場合よりも燃焼振動を効果的に抑制できることが分かった。したがって、上記(12)の構成によれば、燃焼振動を効果的に抑制できる。
【0087】
(13)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(12)の何れかの構成において、
水Wを噴射可能な複数の水噴射孔162を有するアトマイズキャップ160をさらに備える。
複数の水噴射孔162は、それぞれ水入口開口164と水出口開口166とを有する。
水出口開口166のそれぞれは、燃料噴射孔114よりも燃焼筒20の径方向外側において燃焼筒20の周方向に沿って間隔を空けて配置されている。
水入口開口164のそれぞれの径方向の位置は、水出口開口166の周方向の位置よって異なる。
【0088】
上記(13)の構成によれば、水入口開口164のそれぞれの径方向の位置を水出口開口166の周方向の位置よって異ならせることで、燃料噴射孔114から噴射された燃料Fの径方向外側の領域で燃料Fの噴射方向に沿って水Wを噴射できる。これにより、噴射される水Wによる燃料Fの噴霧形状120への影響を抑制しつつ、燃料Fの燃焼による窒素酸化物の発生を抑制できる。
【0089】
(14)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(13)の何れかの構成において、燃焼器3は、ガスタービン1のロータ5の周囲に環状に複数配置されている。
複数の燃焼器3のそれぞれは、隣り合う二つの燃焼器3の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管22が取り付けられている。
噴霧形状120の第1長軸XL1は、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、連結管22の開口22aに向かって延在する。
【0090】
上記(14)の構成によれば、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
【0091】
(15)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(14)の何れかの構成において、燃焼器3は、ガスタービン1のロータ5の周囲に環状に複数配置されている。
複数の燃焼器3のそれぞれは、隣り合う二つの燃焼器3の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管22が取り付けられている。
燃焼筒20の軸方向から見たときの燃料噴射孔114の外周縁114aの形状は、燃料噴射孔114の図心である第2図心G2を通過する最も長い第2長軸XL2と、第2図心G2を通過するとともに第2長軸XL2と直交していて第2長軸XL2よりも短い第2短軸XS2とを有する。
燃料噴射孔114から噴射される燃料Fが有する燃焼筒20の周方向への速度成分によって燃料Fが旋回する方向を第1旋回方向S1とする。
第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、第2図心G2と連結管22の開口22aの中心C2とを結ぶ第2仮想線Li2に対して第1旋回方向S1とは逆の方向にずれている。
【0092】
上記(15)の構成によれば、燃料噴射孔114から噴射される燃料Fが周方向への速度成分を有していても、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1の延在方向を連結管22の開口22aに近づけることができる。これにより、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
【0093】
(16)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(14)の何れかの構成において、燃焼器3は、ガスタービン1のロータ5の周囲に環状に複数配置されている。
複数の燃焼器3のそれぞれは、隣り合う二つの燃焼器3の一方から他方へ火炎を伝播させるための連結管22が取り付けられている。
燃焼筒20の軸方向から見たときの燃料噴射孔114の外周縁114aの形状は、燃料噴射孔114の図心である第2図心G2を通過する最も長い第2長軸XL2と、第2図心G2を通過するとともに第2長軸XL2と直交していて第2長軸XL2よりも短い第2短軸XS2とを有する。
燃料噴射孔114からの燃料Fが連結管22の開口22aが存在する軸方向の位置に到達するまでに燃焼筒20の周方向に旋回する旋回方向及び旋回角度を燃料旋回方向S及び燃料旋回角度θsとする。
第2長軸XL2は、軸方向から見たときに、第2図心G2と連結管22の開口22aの中心C2とを結ぶ第2仮想線Li2に対して燃料旋回方向Sとは逆方向にずれている。
軸方向から見たときの第2長軸XL2と第2仮想線Li2との角度のずれ量△θは、燃料旋回角度θsに対して±5°の範囲内である。
【0094】
上記(16)の構成によれば、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面のうち連結管22の開口22aが存在する断面において、第1長軸XL1の延在方向を連結管22の開口22aに近づけることができる。これにより、連結管22を介した火炎の伝搬性が良好となる。
【0095】
(17)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン1は、ロータ5と、ロータ5の周囲に環状に複数配置される上記(1)乃至(16)の何れかの構成の燃焼器3と、を備える。
【0096】
上記(17)の構成によれば、燃焼振動を抑制できる。
【0097】
(18)本開示の少なくとも一実施形態に係る油燃料の燃焼方法は、ガスタービン1における油燃料の燃焼方法である。
一実施形態に係る油燃料の燃焼方法は、複数のメインノズル64が円筒状の燃焼筒20の内周に沿って設けられたメインバーナ60において複数のメインノズル64から油燃料Fを噴射する工程S10を備える。
一実施形態に係る油燃料の燃焼方法は、複数のメインノズル64に取り囲まれたパイロットノズル54が有する燃料噴射孔114から油燃料Fを噴射する工程S20とを備える。
燃料噴射孔114から油燃料Fを噴射する工程S20は、燃料噴射孔114から噴射される油燃料Fの噴霧形状120が燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、噴霧形状120の第1図心G1を通過する最も長い第1長軸XL1と、第1図心G1を通過するとともに第1長軸XL1と直交していて第1長軸XL1よりも短い第1短軸XS1とを有するように油燃料Fを噴射する。
【0098】
上記(18)の方法によれば、燃料Fの噴霧形状120が、燃焼筒20の中心軸AXに直交する断面において、第1長軸XL1及び第1短軸XS1を有するので、上述したように、燃焼器3内の同一断面中に火炎がより充満し難くなるため、燃焼振動の発生が効果的に抑制される。
【符号の説明】
【0099】
1 ガスタービン
3 燃焼器
5 ロータ
20 燃焼筒
22 連結管
50 パイロットバーナ
54 パイロットノズル
60 メインバーナ
64 メインノズル
68 延長管
110 スプレーノズル
114 燃料噴射孔
160 アトマイズキャップ
162 水噴射孔