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特許7446081真空ボトム中にアスファルテンの再利用蓄積のないアップグレードされた沸騰床式反応器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】真空ボトム中にアスファルテンの再利用蓄積のないアップグレードされた沸騰床式反応器
(51)【国際特許分類】
   C10G 47/26 20060101AFI20240301BHJP
   C10G 47/30 20060101ALI20240301BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C10G47/26
C10G47/30
C10G45/02
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019189615
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2020090659
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】62/746,867
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518068774
【氏名又は名称】ハイドロカーボン テクノロジー アンド イノベーション、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Hydrocarbon Technology & Innovation,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ルーター
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・マウンテンランド
(72)【発明者】
【氏名】ブレット・シルバーマン
(72)【発明者】
【氏名】エヴェレット・ハリス
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0005976(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0081599(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0081600(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0355913(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0251690(US,A1)
【文献】特表2007-535604(JP,A)
【文献】特表2001-525858(JP,A)
【文献】特表2007-535603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ボトムを再利用しながら、アスファルテンの再利用蓄積のない1つ以上の沸騰床式反応器を含む沸騰床式水素化処理システムをアップグレードする方法であって、
不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、ベースライン条件で、重油を水素化処理すること、ここで、前記ベースライン条件は、操作温度、スループット、及び変換率に関連する過酷度を含む、と、
前記沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒及び分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、
前記ベースライン条件で前記沸騰床式反応器を操作する時と同じか又はより高い過酷度で、前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理して、炭化水素生成物を生成することと、
前記炭化水素生成物に真空蒸留を含む1つ以上の分離プロセスを施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、
残留金属硫化物触媒粒子を含有する前記真空ボトムのうちの少なくとも一部分を、前記沸騰床式水素化処理システムのアスファルテンの再利用蓄積のない前記アップグレードされた沸騰床式反応器に再利用すること、ここで、前記真空ボトムが、前記アップグレードされた沸騰床式反応器に添加される未使用の重油の流量の体積パーセントとして、再利用される真空ボトムの流量に基づいて、1%~50%の再利用比で再利用され、前記再利用することが、前記アップグレードされた沸騰床式反応器及び/又は前記真空ボトム中のアスファルテン濃度を増加させない、と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件での変換率よりも高い変換率で、前記真空ボトム中のアスファルテンの再利用蓄積を引き起こさずに操作することを含み、より高い変換率が、装置のファウリングを増加させることなく、かつ/あるいはボトム生成物の品質を低減することなく、前記ベースライン条件と比較して、変換された生成物の生成速度を増加させるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件での変換率と同様の変換率で、前記真空ボトム中の低減されたアスファルテン濃度で操作することを含み、同様の変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件と比較して、装置のファウリングを減少させながら、かつ/あるいはボトム生成物の品質を改善しながら、前記変換された生成物の生成速度を維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件での変換率よりも高い変換率で、前記真空ボトム中の低減されたアスファルテン濃度で操作することを含み、より高い変換率が、装置のファウリングを減少させながら、かつ/あるいはボトム生成物の品質を改善しながら、前記ベースライン条件と比較して、前記変換された生成物の生成速度を増加させるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記真空ボトムが、前記アップグレードされた沸騰床式反応器に添加される未使用の重油の流量の体積パーセントとして、再利用される真空ボトムの流量に基づいて、5~40%、又は10%~30%の再利用比で再利用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースラインでの温度と比較して同様か又はより高い温度で操作され、
任意選択的に、前記アップグレードされた沸騰床式反応器の前記温度が、前記ベースライン条件で前記沸騰床式反応器を操作する時の温度と比較して、少なくとも2.5℃、少なくとも5℃、少なくとも7.5℃、又は少なくとも10℃、上昇している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースラインでの変換率と比較して同様か又はより高い変換率で操作され、
任意選択的に、前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースライン条件で前記沸騰床式反応器を操作する時の変換率と比較して、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%、又は少なくとも15%、増加されている変換率で操作される
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースラインでのスループットと比較して同様か又はより高いスループットで操作され、
任意選択的に、前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースライン条件で前記沸騰床式反応器を操作する時のスループットと比較して、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも10%、又は少なくとも20%、増加されているスループットで操作される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、
前記ベースライン条件で重油を水素化処理するときと比較して、より高いアスファルテン濃度を任意選択的に有する、より低品質を有する重油を水素化処理することを含み、
任意選択的に前記アップグレードされた沸騰床式反応器により水素化処理された前記低品質の重油の前記アスファルテン濃度が、前記ベースライン条件で操作するとき、前記沸騰床式反応器により水素化処理された前記重油の前記アスファルテン濃度よりも少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%高い、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースライン条件で前記沸騰床式反応器を操作した時のアスファルテン変換率と比較して、少なくとも2%大きい、少なくとも5%大きい、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、又は少なくとも20%大きいアスファルテン変換率でアスファルテンを水素化処理する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースライン条件で前記沸騰床式反応器を操作するときの装置のファウリング速度以下である、装置のファウリング速度であるような条件で操作され
任意選択的に、前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースライン条件で前記沸騰床式反応器を操作するときの装置のファウリング速度よりも低い、装置のファウリング速度であるような条件で操作され
任意選択的に、前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースライン条件で前記沸騰床式反応器を操作する時の前記装置のファウリング速度と比較して、前記装置のファウリング速度を少なくとも5%、25%、50%、又は75%低減する条件で操作される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記装置のファウリング速度が、
(i)必要とされる熱交換器洗浄の頻度、
(ii)予備熱交換器への切り替えの頻度、
(iii)フィルタ交換の頻度、
(iv)ストレーナの洗浄若しくは交換の頻度、
(v)熱交換器、分離器、若しくは蒸留塔から選択される装置内を含む、装置の表面温度の低下速度、
(vi)炉管の金属温度の上昇速度、
(vii)熱交換器及び炉の計算されたファウリング抵抗因子の増加速度、
(viii)熱交換器の差圧の上昇速度、
(ix)常圧蒸留塔及び/若しくは真空蒸留塔の洗浄頻度、又は
(x)定期的メンテナンスの頻度、のうちの少なくとも1つによって決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記重油が、重質原油、オイルサンドビチューメン、精製所プロセスからの残渣油、少なくとも343℃(650°F)の公称沸点を有する常圧塔ボトム、少なくとも524℃(975°F)の公称沸点を有する真空塔ボトム、高温分離器からの残渣油、残渣油ピッチ、溶媒抽出からの残渣油、又は真空残留物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記分散金属硫化物触媒粒子が、1μm未満のサイズ、又は約500nm未満のサイズ、又は約250nm未満のサイズ、又は約100nm未満のサイズ、又は約50nm未満のサイズ、又は約25nm未満のサイズ、又は約10nm未満のサイズである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
二重触媒系を使用する前記沸騰床式反応器をアップグレードして操作することが、触媒前駆体から前記重油内でその場で前記分散金属硫化物触媒粒子を形成することを含み、
任意選択的に、前記分散金属硫化物触媒粒子を前記重油内でその場で形成することが、前記触媒前駆体を希釈炭化水素と混合して希釈前駆体混合物を形成することと、前記希釈前駆体混合物を前記重油とブレンドして、調整された重油を形成することと、前記調整された重油を加熱して前記触媒前駆体を分解し、前記重油内でその場で前記分散金属硫化物触媒粒子を形成することと、を含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
不均質触媒を使用する前記沸騰床式反応器を操作して、ベースライン条件で、重油を水素化処理することが、真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用することを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、真空ボトムを再利用しながら、アスファルテンの再利用蓄積のない、二重触媒系を利用する沸騰床式水素化処理方法及びシステムを含む、重油水素化処理方法及びシステムに関する。
【0002】
(関連技術)
重油を有用な最終生成物に変換することは、重油の沸点を低減すること、水素対炭素比を増加させること、並びに金属、硫黄、窒素、及びコークス前駆体などの不純物を除去することなどの広範な処理を伴う。従来の不均質触媒を使用する常圧塔ボトムをアップグレードする水素化分解処理の例としては、固定床水素化処理、沸騰床式水素化処理、及び移動床水素化処理が挙げられる。真空塔ボトムをアップグレードするための非触媒アップグレード処理としては、ディレードコーキング、フレキシコーキング、ビスブレーキング、及び溶媒抽出などの熱分解が挙げられる。
【0003】
低品質の重油供給原料をより効率的に利用し、それから燃料値を得ることに対する需要が、ますます高まっている。低品質の供給原料は、公称524℃(975°F)以上で沸騰する比較的大量の炭化水素を含むことを特徴とする。それらはまた、比較的高濃度の硫黄、窒素及び/又は金属を含有する。これらの低品質の供給原料から誘導される高沸点留分は、典型的には、高い分子量(多くの場合、より高い密度及び粘度を示す)、並びに/又は低水素/炭素比を有し、アスファルテン及び炭素残留物を含む高濃度の望ましくない構成成分の存在に関連する。アスファルテン及び炭素残留物は、コークス及び沈殿物の形成の一因となるので、処理が困難であり、通常、従来の触媒及び水素化処理装置のファウリングを引き起こす。
【0004】
低品質の重油供給原料は、より高濃度のアスファルテン、炭素残留物、硫黄、窒素、及び金属を含有する。例としては、重質原油、オイルサンドビチューメン、及び従来の精製処理から残った残渣油が挙げられる。残渣油(residuum)(又は「resid」)は、常圧塔ボトム及び真空塔ボトムを指す場合がある。常圧塔ボトムは、少なくとも343℃(650°F)の沸点を有し得るが、カットポイントは精製所間で変動し得、380℃(716°F)ほどの高さであることが理解されている。真空塔ボトム(「残渣油ピッチ」又は「真空残留物」としても知られる)は、少なくとも524℃(975°F)の沸点を有し得るが、カットポイントは精製所間で変動し得、538℃(1000°F)、又は更には565℃(1050°F)ほどの高さであることが理解されている。
【0005】
比較として、アルバータライト原油は約9体積%の真空残留物を含有する一方で、Lloydminster重油は、約41体積%の真空残留物を含有し、Cold Lakeビチューメンは、約50体積%の真空残留物を含有し、Athabascaビチューメンは、約51体積%の真空残留物を含有する。更なる比較として、北海地域からのDansk Blendなどの比較的軽い油は、約15%のみの真空残留物を含有する一方で、ウラルなどのより低品質の欧州の油は、30%超の真空残留物を含有し、Arab Mediumなどの油は更に高く、約40%の真空残留物を含む。
【0006】
所与の沸騰床式システムでは、変換された生成物の生成速度は、多くの場合、ファウリングによって制限される。ある特定の実用限界を超えて変換による生成を増加させる試みが行われると、ある特定の熱交換器又は他の処理装置のファウリング速度が急速になりすぎて、メンテナンス及び洗浄のためにより頻繁なシャットダウンを必要とする。変換された生成物の生成を増加させる1つの方式は、沸騰床式反応器によって生成されるアップグレードされた炭化水素の真空蒸留中に生成される真空ボトムを再利用することである。しかしながら、これにより、典型的には、真空ボトム中にアスファルテンの再利用蓄積を引き起こして、沈殿物の蓄積及び装置のファウリングなく所望の変換を維持する能力を制限する。また、燃料油として使用することができる、より低品質の真空ボトム生成物を得る。
【0007】
典型的には、精製所は、装置のファウリングの観察された速度を沈殿物生成の測定値に関連付け、操作沈降限界に到り、この沈殿限界を超えると、精製所は、沸騰床式水素化分解器の操作を回避するであろう。更に、沈殿物生成及び装置のファウリングは、高沸点留分の下流での処理に制限を課す。それらはまた、水素化処理反応器への真空ボトムの再利用を制限又は妨げる。そのような問題は、より低品質の重油供給原料を使用すると悪化する。精製所が真空ボトムを再利用する方法を見出したとしても、得られるのは、低品質であり、かつ燃料油として使用するための最低限の基準を満たすこともできない最終ボトム生成物であり得る。装置のファウリング及びシャットダウンのリスクを増加させ、より低品質のボトム生成物を生成するアスファルテンの再利用蓄積を引き起こすことなく、真空ボトムを再利用する方法を見出す必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
沸騰床式水素化処理システムをアップグレードして、アスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムの再利用を可能にするための方法が、本明細書に開示される。また、アスファルテンの再利用蓄積のない再利用される真空ボトムを利用する、アップグレードされた沸騰床式水素化処理システムについても開示される。開示される方法及びシステムは、固体担持触媒及び十分に分散されている(例えば、均質な)触媒粒子で構成される二重触媒系の使用を伴う。二重触媒系は、アスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムを再利用しながら、沸騰床式水素化処理システムの沸騰床式反応器を操作することを可能にする。
【0009】
いくつかの実施形態では、沸騰床式水素化処理システムをアップグレードして、アスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムの再利用を可能にする方法は、(1)任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理することと、(2)沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒及び分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、(3)二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理して、炭化水素生成物を生成することと、(4)炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、(5)沸騰床式水素化処理システムのアスファルテンの再利用蓄積のないアップグレードされた沸騰床式反応器に、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムのうちの少なくとも一部分を再利用することと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、真空ボトムを再利用しながら、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作することとしては、(i)ベースライン条件と比較して高い変換率で、沸騰床式水素化処理システムのアスファルテンの再利用蓄積のないアップグレードされた沸騰床式反応器を操作すること、(ii)ベースライン条件と比較して同様の変換率で、真空ボトム中の低減されたアスファルテンを用いるアップグレードされた沸騰床式反応器を操作すること、又は(iii)ベースライン条件と比較して高い変換率で、真空ボトム中の低減されたアスファルテンを用いるアップグレードされた沸騰床式反応器を操作すること、が挙げられる。第3のシナリオとしては、変換率の増加とボトム生成物中のアスファルテンの低減との任意の組み合わせを挙げることができ、これは変動し得る供給原料の品質(例えば、沈殿物形成傾向)、装置のファウリング速度、及び/又は燃料油又は他の最終生成物として使用されるボトム生成物の所望の品質量に依存し得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、真空ボトムは、約1%~約50%、好ましくは約5%~約40%、より好ましくは約10%~約30%の再利用比で再利用することができる。再利用比は、体積基準又は質量基準のいずれかで、真空ボトム再利用量対未使用の供給原料量の比によって決定される百分率として表すことができる。これらの百分率は、未使用の供給原料の流量の体積パーセントとして、真空ボトムの流量を示す。供給原料及び真空ボトムの密度が既知である場合、再利用比はまた、質量パーセント基準に容易に変換することもできる。
【0012】
いくつかの実施形態では、真空ボトム中にアスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムを再利用することにより、ベースライン条件と比較して、変換された生成物の生成速度の増加が生じる。いくつかの実施形態では、スループットは、ベースライン条件と比較して、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも10%、又は少なくとも20%増加させることができる。いくつかの実施形態では、変換率は、ベースライン条件と比較して、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%、又は少なくとも15%増加させることができる。いくつかの実施形態では、アップグレードされた沸騰床式反応器の操作温度は、ベースライン条件と比較して、少なくとも2.5℃、少なくとも5℃、少なくとも7.5℃、又は少なくとも10℃上昇させることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、装置のファウリング速度は、真空ボトムを再利用しながら、アップグレードされた沸騰床式反応器を操作すると、ベースライン条件と比較して同じか又は少なくすることができる。いくつかの実施形態では、真空ボトムを再利用しながら沸騰床式反応器を操作することにより、ベースライン条件での装置のファウリングと比較して、装置のファウリング速度を少なくとも5%、少なくとも25%、少なくとも50%、又は少なくとも75%低下させることができる。
【0014】
装置のファウリング速度は、(i)必要とされる熱交換器洗浄の頻度、(ii)予備熱交換器への切り替えの頻度、(iii)フィルタ交換の頻度、(iv)ストレーナの洗浄若しくは交換の頻度、(v)熱交換器、分離器、若しくは蒸留塔から選択される装置内を含む、装置の表面温度の低下速度、(vi)炉管の金属温度の上昇速度、(vii)熱交換器及び炉の計算されたファウリング抵抗因子の増加速度、(viii)熱交換器の差圧の上昇速度、(ix)常圧蒸留塔及び/若しくは真空蒸留塔の洗浄頻度、又は(x)定期的メンテナンスの頻度、のうちの少なくとも1つによって測定することができる。
【0015】
一部の実施形態では、分散金属硫化物触媒粒子は、1μm未満のサイズ、又は約500nm未満のサイズ、又は約250nm未満のサイズ、又は約100nm未満のサイズ、又は約50nm未満のサイズ、又は約25nm未満のサイズ、又は約10nm未満のサイズ、又は約5nm未満のサイズである。
【0016】
いくつかの実施形態では、分散金属硫化物触媒粒子は、触媒前駆体から重油内でその場で形成することができる。例として、限定するものではないが、分散金属硫化物触媒粒子は、触媒前駆体の熱分解及び活性金属硫化物触媒粒子の形成の前に、触媒前駆体を重油全体にブレンドすることによって形成することができる。更なる例として、方法は、触媒前駆体を希釈炭化水素と混合して、まず希釈前駆体混合物を形成することと、続いて希釈前駆体混合物を重油とブレンドして、調整された重油を形成することと、調整された重油を加熱して触媒前駆体を分解し、重油内で分散金属硫化物触媒粒子をその場で形成することと、を含み得る。
【0017】
本発明のこれら及び他の利点及び特色は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかとなるか、又はこの後に記載の本発明の実施によって習得され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記及び他の利点及び特色を更に明確にするために、本発明のより具体的な説明は、添付の図面に示されるその特定の実施形態を参照することによって表されている。これらの図面は、ただ典型的な本発明の実施形態を示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことが理解されている。本発明は、添付図面を使用して、追加の特異性及び詳細と共に記載及び説明されるであろう。
【0019】
図1】アスファルテンの仮定的な分子構造を示す。
【0020】
図2A】例示的な沸騰床式反応器を概略的に示す。
図2B】例示的な沸騰床式反応器を概略的に示す。
【0021】
図2C】複数の沸騰床式反応器及び真空塔ボトムの再利用を含む例示的な沸騰床式水素化処理システムを概略的に示す。
【0022】
図2D図2Cと同様の複数の沸騰床式反応器と、反応器のうちの2つの間の段階間分離器と、を備える例示的な沸騰床式水素化処理システムを概略的に示す。
【0023】
図3A】沸騰床式反応器をアップグレードして、真空ボトム中にアスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムを再利用する、例示的な方法を示すフロー図である。
【0024】
図3B】沸騰床式反応器をアップグレードして、ベースライン条件と比較して増加された変換率で、真空ボトム中にアスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムを再利用する、例示的な方法を示すフロー図である。
【0025】
図3C】沸騰床式反応器をアップグレードして、ベースライン条件と比較して同様の変換率で、真空ボトム中のアスファルテンを低減させた真空ボトムを再利用する、例示的な方法を示すフロー図である。
【0026】
図3D】沸騰床式反応器をアップグレードして、ベースライン条件と比較して増加された変換率で、真空ボトム中のアスファルテンを低減させた真空ボトムを再利用する、例示的な方法を示すフロー図である。
【0027】
図4】二重触媒系を使用する例示的な沸騰床式水素化処理システムを概略的に示す。
【0028】
図5】不均質触媒それ自体、又は不均質触媒及び分散金属硫化物粒子を含む二重触媒系のいずれかを用いるように構成されている、パイロットスケールの沸騰床式水素化処理システムを概略的に示す。
【0029】
図6】不均質触媒を使用するベースライン条件、及び二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作させたときを含む、実施例1~6の各々の残渣油変換率と相関するCアスファルテン含有量を示す線グラフである。
【0030】
図7】真空ボトム中にアスファルテンの再利用蓄積のない、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器が、ベースライン条件と比較して高い変換率で操作される実施形態を示す線グラフである。
【0031】
図8】真空ボトム中の低減されたアスファルテンを用いる二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器が、ベースライン条件と比較して同様の変換率で操作される実施形態を示す線グラフである。
【0032】
図9】真空ボトム中の低減されたアスファルテンを用いる二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器が、ベースライン条件と比較して高い変換率で操作される実施形態を示す線グラフである。
【0033】
図10】真空ボトム中の低減されたアスファルテンを用いる二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器が、ベースライン条件と比較して高い変換率で操作される他の実施形態を示す線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
I.序論及び定義
【0035】
本発明は、沸騰床式水素化処理システムをアップグレードして、(例えば、沸騰床式反応器などの水素化処理システム内に、及び/又は真空ボトム中に)アスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムを再利用することを可能にするための方法に関する。アップグレードされた沸騰床式システムは、開示される方法を実行することによって作製される。
【0036】
「アスファルテン(asphaltene)」及び「アスファルテン(asphaltenes)」という用語は、典型的にはプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンなどの、パラフィン系溶媒に不溶性である重油供給原料中の物質を指すものとする。アスファルテンとしては、硫黄、窒素、酸素、及び金属などのヘテロ原子によって一緒に保持されている縮合環化合物のシートを挙げることができる。広くは、アスファルテンは、80~1200個の炭素原子を有する広範囲の複合化合物が挙げられ、溶液技法によって決定される場合、専ら1200~16,900の範囲の分子量を有する。高濃度の非金属性ヘテロ原子と一緒になって、原油中のアスファルテン分子をより親水性にして他の炭化水素よりも低い疎水性にする、原油中の金属の約80~90%は、アスファルテン留分に含有されている。
【0037】
A.G.Bridge及びChevron社の協働者によって開発された仮定的なアスファルテン分子構造を図1に示す。一般に、アスファルテンは、典型的には、不溶性法の結果に基づいて定義され、アスファルテンの定義のうちの2つ以上を使用してもよい。具体的には、通常使用されるアスファルテンの定義は、ヘプタン不溶分からトルエン不溶分を減算したものである(すなわち、アスファルテンはトルエンに可溶性であり、トルエンに不溶性の沈殿物及び残留物は、アスファルテンとして計上されない)。この様式で定義されるアスファルテンは、「Cアスファルテン」と称され得る。しかしながら、また、同等の有効性を有する代替的な定義を使用して、ペンタン不溶分からトルエン不溶分を減算したものとして測定してもよく、通常「Cアスファルテン」と称される。本発明の実施例では、Cアスファルテン定義が使用されるが、Cアスファルテン定義に容易に置換することができる。
【0038】
「アスファルテンの再利用蓄積」という用語は、沸騰床式反応器に真空ボトムを戻して再利用することにより、沸騰床式反応器などの沸騰床式水素化処理システム内及び/又は真空ボトム中により高濃度のアスファルテンを生じる状況を指す。例えば、変換率、温度、及び/又はスループットなどの任意の所与の反応器条件では、真空ボトムを再利用するときのアスファルテンの再利用蓄積とは、重油供給原料と比較して、真空ボトム中のアスファルテン濃度の上昇に起因して、変換率が一定のままであるときでさえもアスファルテン濃度が上昇することを意味する。そのような場合、沸騰床式反応器は、アスファルテンの再利用蓄積を防止するのに十分に速い速度で、追加のアスファルテンを効果的に水素化処理し、変換することができない。これにより、沈殿物の蓄積及び装置のファウリングの増加、洗浄のためのより頻繁なシャットダウン、並びにより低品質の真空ボトムを生じる。アスファルテンの再利用蓄積は、アスファルテンの定常状態濃度の上昇を指すことができる。
【0039】
「アスファルテンの再利用蓄積のない」真空ボトムを再利用しながら、アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することとは、沸騰床式反応器を含む沸騰床式水素化処理システム内のアスファルテン含有量が、再利用の不在下で起こるであろうものと同じか又はより低いレベルで維持されることを意味する。場合によっては、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器に真空ボトムを再利用するときに、ベースライン条件と比較して同じ変換率又はより高い変換率で操作すると、アスファルテン濃度は更に降下する場合もある。変換率の増加により、典型的には全ての物に等しく、より高い沈殿物形成及び装置のファウリングを生じるので、これは予想外である。
【0040】
「沈殿物」という用語は、沈降し得る、液体流中に形成される固体を指す。沈殿物としては、変換後に析出する無機物、コークス、又は不溶性アスファルテンを挙げることができる。石油生成物中の沈殿物は、通常、ISO10307及びASTM D4870の一部として公開されている残留燃料油中の総沈殿物についてのIP-375熱時濾過試験手順を使用して測定される。他の試験としては、IP-390沈殿物試験及びシェル熱時濾過試験が挙げられる。沈殿物は、処理及び取り扱い中に固体を形成する性質を有する油の構成成分に関連する。これらの固体形成構成成分は、生成物品質(例えば、真空ボトム品質)の劣化、及び装置のファウリングに関連する操作性の問題を含む、水素化変換プロセスにおける複数の望ましくない効果を有する。沈殿物の厳密な定義は、沈殿物試験における固体の測定値に基づくが、この用語は、一般定に、油自体の固体形成構成成分を指すためにより緩やかに使用され、油中に実際の固体として存在しない場合があるが、ある特定の条件下で固体形成の一因となることに留意するべきである。
【0041】
全ての原油は、特徴的な「沈殿物形成傾向」を有する真空残渣油構成成分を有する。重油供給原料の沈殿物形成傾向は常に定量可能ではないが、いくつかの重油供給原料は、より少ないか又はより多くの沈殿物形成傾向を有する。例えば、ウラルなどの東欧原油、ベネズエラ及びコロンビアなどの南米原油、並びにメキシコ及びある特定のメキシコ湾原油などの一部中米又は北米原油は、ウエストテキサスインターミディエイト原油、アラスカノーススロープ原油、多くのアフリカ原油、北海原油、及びアラビアンミディアム原油、アラビア重質原油を含むほとんどの中近東原油、及びボニーライト原油などの通常の原油と比較して、顕著により高い沈殿物形成傾向を有する真空残渣油構成成分を有する。
【0042】
「ファウリング」という用語は、処理に干渉する望ましくない相(ファウリング物質)の形成を指す。ファウリング物質は、通常、処理装置内に堆積及び集まる炭素質の物質又は固体である。装置のファウリングは、装置のシャットダウン、装置性能の低下に起因する生成性損失、熱交換器又は加熱器内のファウリング物質堆積の絶縁効果に起因するエネルギー消費の増加、装置洗浄のための維持コストの増加、留分効率の低減、及び不均質触媒の反応性低減を生じ得る。
【0043】
水素化分解反応器をアップグレードして二重触媒系を使用する前後の「装置のファウリング速度」は、(i)必要とされる熱交換器洗浄の頻度、(ii)予備熱交換器への切り替えの頻度、(iii)フィルタ交換の頻度、(iv)ストレーナの洗浄若しくは交換の頻度、(v)熱交換器、分離器、若しくは蒸留塔から選択される装置内を含む、装置の表面温度の低下速度、(vi)炉管の金属温度の上昇速度、(vii)熱交換器及び炉の計算されたファウリング抵抗因子の増加速度、(viii)熱交換器の差圧の上昇速度、(ix)常圧蒸留塔及び/若しくは真空蒸留塔の洗浄頻度、又は(x)定期的メンテナンスの頻度、のうちの少なくとも1つによって測定することができる。
【0044】
「重油供給原料」という用語は、重質原油、オイルサンドビチューメン、バレルのボトム、及び精製所プロセス(例えば、ビスブレーカボトム)から残った残渣油、並びに、相当量の高沸点炭化水素留分を含有する、かつ/あるいは不均質触媒を不活化し得る顕著な量のアスファルテンを含む、かつ/あるいはコークス前駆体及び沈殿物の形成を引き起こすか又は生じる、任意の他のより低品質の材料を指す。重油供給原料の例としては、限定するものではないが、Lloydminster重油、Cold Lakeビチューメン、Athabascaビチューメン、常圧塔ボトム、真空塔ボトム、残渣油(又は「resid」)、残渣油ピッチ、真空残留物(例えば、ウラルVR、Arab Medium VR、Athabasca VR、Cold Lake VR、Maya VR、及びChichimene VR)、溶媒脱によるアスファルテンによって得られる脱アスファルテン液体、脱アスファルテンの副生成物として得られるアスファルテン液体、及び原油、タールサンドからのビチューメン、液化石炭、オイルシェール、又はコールタール供給原料に蒸留、熱分離、溶媒抽出などを施した後に残留する不揮発性液体留分が挙げられる。更なる例として、常圧塔ボトム(atmospheric tower bottoms、ATB)は、少なくとも343℃(650°F)の公称沸点を有し得るが、カットポイントは、精製所間で変動し得、380℃(716°F)ほどの高さであることが理解されている。真空塔ボトムは、少なくとも524℃(975°F)の公称沸点を有し得るが、カットポイントは、精製所間で変動し得るが、538℃(1000°F)又は更には565℃(1050°F)ほどの高さであることが理解されている。
【0045】
重油の「品質」は、限定されないが、(i)沸点、(ii)硫黄濃度、(iii)窒素濃度、(iv)金属濃度、(v)分子量、(vi)水素対炭素比、(vii)アスファルテン含有量、及び(viii)沈殿物形成傾向、から選択される少なくとも1つの特徴によって測定することができる。
【0046】
「より低品質の重油」及び/又は「より低品質の供給原料ブレンド」は、限定されないが、(i)より高い沸点、(ii)より高い硫黄濃度、(iii)より高い窒素濃度、(iv)より高い金属濃度、(v)より高い分子量(多くの場合、高密度及び粘度を示す)、(vi)より低い水素対炭素比、(vii)より高いアスファルテン含有量、及び(viii)より高い沈殿物形成傾向、から選択される初期重油供給原料と比較して、少なくとも1つのより低品質の特徴を有し得る。
【0047】
「有利な条件の供給原料」という用語は、初期重油供給原料と比較して、少なくとも1つの低品質特徴を有するより低品質の重油、及びより低品質の重油供給原料ブレンドを指す。有利な条件の供給原料はまた、典型的には、初期供給原料と比較して、より低い市場価値(又は価格)を有する。
【0048】
「水素化分解」及び「水素化変換」という用語は、主要な目的が、重油供給原料の沸騰範囲を低減することであり、供給原料のかなりの部分が元の供給原料のものよりも低い沸騰範囲を有する生成物に変換されるプロセスを指すものとする。水素化分解又は水素化変換は、一般に、より大きい炭化水素分子の、より少ない数の炭素原子及びより高い水素対炭素比を有するより小さい分子断片への断片化を伴う。水素化分解が起こるメカニズムは、典型的には、熱断片化中の炭化水素フリーラジカルの形成、続いてフリーラジカル末端又は部分を水素でキャッピングすることを伴う。水素化分解中に炭化水素フリーラジカルと反応する水素原子又はラジカルは、活性触媒部位において、又は活性触媒部位によって生成され得る。
【0049】
「水素化処理」という用語は、供給原料から硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、及び微量金属などの不純物を除去し、それら自体で反応させるよりも水素と反応させることによって、オレフィンを飽和させる、かつ/あるいは炭化水素フリーラジカルを安定化させることが主要な目的である操作を指すものとする。主要な目的は、供給原料の沸点範囲を変化させないことである。水素化処理は、ほとんどの場合、固定床反応器を使用して実行されるが、例えば沸騰床式水素化反応器である他の水素化処理反応器もまた水素化処理のために使用することができる。
【0050】
当然のことながら、「水素化分解」又は「水素化変換」はまた、供給原料からの硫黄及び窒素の除去、並びにオレフィン飽和及び典型的には「水素化処理」に関連する他の反応を伴ってもよい。「水素化処理」及び「水素化変換」という用語は、スペクトルの対向する両端、及びスペクトルに沿ったその間の全てを定義する「水素化分解」及び「水素化処理」プロセスの両方を広く指すものとする。
【0051】
「水素化分解反応器」という用語は、水素及び水素化分解触媒の存在下での供給原料の水素化分解(すなわち、沸点範囲の低減)が主要な目的である、任意の容器を指すものとする。水素化分解反応器は、重油供給原料及び水素を導入することができる入口ポートと、アップグレードされた供給原料又は材料を引き出すことができる出口ポートと、より大きな炭化水素分子のより小さい分子への断片化を引き起こすために炭化水素フリーラジカルを形成するのに十分な熱エネルギーと、を有することを特徴とする。水素化分解反応器の例としては、限定するものではないが、スラリー相反応器(すなわち、2相、気液系)、沸騰床式反応器(すなわち、3相、気液固系)、固定床反応器(すなわち、固体不均質触媒の固定床を通って、重油へと下方に流れ落ちる又は上方に流れる(典型的には水素は並流するが場合によっては逆流する)、液体供給物を含む三相系)が挙げられる。
【0052】
「水素化分解温度」という用語は、重油供給原料の顕著な水素化分解を引き起こすために必要な最低温度を指すものとする。一般に、水素化分解温度は、好ましくは約399℃(750°F)~約460℃(860°F)、より好ましくは約418℃(785°F)~約443℃(830°F)の範囲、最も好ましくは約421℃(790°F)~約440℃(825°F)の範囲内に入るであろう。
【0053】
「気液スラリー相水素化分解反応器」という用語は、液相内に気泡がある「スラリー」を形成する、連続した液相と気体分散相とを含む水素化処理反応器を指すものとする。液相は、典型的には、低濃度の分散金属硫化物触媒粒子を含有し得る炭化水素供給原料を含み、気相は、典型的には、水素ガス、硫化水素、及び蒸発させた低沸点炭化水素生成物を含む。液相は、任意選択的に水素供与溶媒を含むことができる。固体触媒が液体及び気体と共に用いられるとき、「気液固、3相スラリー水素化分解反応器」という用語が使用される。気体は、水素、硫化水素、及び蒸発させた低沸点炭化水素生成物を含有し得る。「スラリー相反応器」という用語は、両方の種類の反応器(例えば、分散金属硫化物触媒粒子を含むもの、マイクロメートルサイズ又はより大きい微粒子触媒を含むもの、及びその両方を含むもの)を広く指すものとする。
【0054】
「固体不均質触媒」、「不均質触媒」、及び「担持触媒」という用語は、基本的に水素化分解、水素化変換、水素化脱金属、及び/又は水素化処理用に設計された触媒を含む、沸騰床式及び固定床水素化処理システムにおいて典型的に使用される触媒を指すものとする。不均質触媒は、典型的には、(i)大きな表面積、及び相互接続されたチャネル又は細孔を有する担持触媒と、(ii)チャネル又は細孔内に分散されたコバルト、ニッケル、タングステン、及びモリブデンの硫化物などの微細な活性触媒粒子と、を含む。担持体の細孔は、典型的には、不均質触媒の機械的一体性を維持し、反応器内の過剰な微粒子の破壊及び形成を防止する限定的なサイズのものである。不均質触媒は、円筒形ペレット、円筒形押出物、三つ葉状、リング状、鞍形などの他の形状、又は球状の固体として製造することができる。
【0055】
「分散金属硫化物触媒粒子」及び「分散触媒」という用語は、1μm(サブミクロン、又はサブマイクロメートル)未満、例えば、直径約500nm未満、又は直径約250nm未満、又は直径約100nm未満、又は直径約50nm未満、又は直径約25nm未満、又は直径約10nm未満、又は直径約5nm未満の粒径を有する触媒粒子を指すものとする。「分散金属硫化物触媒粒子」という用語は、分子分散触媒化合物又は分子内分散触媒化合物を挙げることができる。「分散金属硫化物触媒粒子」という用語は、典型的には、1μmよりも大きい金属硫化物粒子及び金属硫化物粒子の凝集体を除外する。
【0056】
「分子内分散触媒」という用語は、炭化水素供給原料又は好適な希釈剤中に本質的に「溶解」しているか、又は炭化水素供給原料又は好適な希釈剤中の他の触媒化合物又は分子から解離している触媒化合物を指すものとする。一緒に結合している数個の触媒分子(例えば、15分子以下)を含有する非常に小さい触媒粒子を挙げることができる。
【0057】
「残留触媒粒子」及び「残留分散金属硫化物触媒粒子」という用語は、1つの容器から別の容器へ(例えば、水素化処理反応器から分離器及び/又は他の水素化処理反応器へ)移されると、炭化水素生成物と共に残留する触媒粒子を指すものとする。残留分散金属硫化物触媒粒子はまた、熱分離、常圧蒸留、又は真空蒸留によってなど、炭化水素生成物を蒸留液及び残留液に分離後、液体残留留分中にも残留し得る。
【0058】
「調整された供給原料」という用語は、触媒前駆体が十分に組み合わせられ混合された結果、触媒前駆体の分解及び活性触媒の形成時に、触媒が供給原料内でその場で形成される分散金属硫化物触媒粒子を含むであろう、炭化水素供給原料を指すものとする。
【0059】
「アップグレードする」、「アップグレード」、及び「アップグレードされた」という用語は、水素化処理されているか若しくは処理を施された供給原料、又は得られた材料若しくは生成物を説明するために使用されるとき、供給原料の分子量の低減、供給原料の沸点範囲の低減、アスファルテン濃度の低減、炭化水素フリーラジカル濃度の低減、並びに/又は硫黄、窒素、酸素、ハロゲン化物、及び金属などの不純物の量の低減のうちの1つ以上を指すものとする。
【0060】
「過酷度」という用語は、一般に、水素化処理中に重油に導入されるエネルギーの量を指し、多くの場合、当該温度曝露の持続時間と組み合わせた、水素化処理反応器の操作温度に関連する(すなわち、より高い温度は、より高い過酷度に関連し、より低い温度は、より低い過酷度に関連する)。過酷度の増加は、一般に、望ましい生成物及び望ましくない生成物の両方を含む、水素化処理反応器によって生成される変換された生成物の量を増加させる。
【0061】
望ましい変換生成物としては、分子量、沸点、及び比重が低減された炭化水素が挙げられ、これらとしては、ナフサ、ディーゼル、ジェット燃料、ケロシン、ワックス、燃料油などの最終生成物を挙げることができる。他の望ましい変換生成物としては、従来の精製及び/又は蒸留プロセスを使用して更に処理することができるより高沸点炭化水素が挙げられる。燃料油として有用であるのに十分な品質のボトム生成物は、望ましい変換生成物の別の例である。
【0062】
望ましくない変換生成物としては、コークス、沈殿物、金属、及び他の固体物質が挙げられ、これらは、水素化処理装置に堆積し、反応器、分離器、フィルタ、パイプ、塔、熱交換器、及び不均質触媒などの内部構成要素のファウリングを引き起し得る。望ましくない変換生成物とはまた、具体的には、品質が低すぎて燃料油又は他の所望の使用に有用ではない、常圧塔ボトム(「ATB」)又は真空塔ボトム(vacuum tower bottoms、「VTB」)などの、蒸留後に残留する未変換の残渣油をも指す場合がある。望ましくない変換生成物を最小限に抑えることにより、装置のファウリング及び装置の洗浄に必要なシャットダウンが低減される。それにもかかわらず、下流分離装置が適切に機能するために、かつ/あるいは堆積し装置を汚染し得るが残留している残渣油によって輸送され得る、含有されているコークス、沈殿物、金属、及び他の固体物質に液体輸送媒体を提供するために望ましい量の未変換の残渣油が存在してもよい。
【0063】
温度に加えて、「過酷度」は、「変換率」及び「スループット」のうちの一方又は両方に関連し得る。過酷度の増加が、変換率の増加及び/又はスループットの増減を伴うかどうかは、重油供給原料の品質及び/又は全体的な水素化処理システムの物質収支に依存し得る。例えば、より多量の供給材料を変換すること、及び/又はより多量の材料を下流装置に提供することが望ましい場合、過酷度の増加は、基本的に、必ずしも留分変換率の増加を伴うとは限らないスループットの増加を伴う場合がある。これは、残渣油留分(ATB及び/又はVTB)が燃料油として販売され、スループットを増加させることなく変換率を増加することにより、この生成物の量が減少された場合を挙げることができる。アップグレードされた材料対残渣油留分の比を増加させることが望ましい場合、基本的に、必ずしもスループットの増加を伴うとは限らない変換率の増加が望ましい場合がある。水素化処理反応器に導入される重油の品質が変動する場合、変換率及びスループットのうちの一方又は両方を選択的に増減させて、生成される最終生成物のアップグレードされた材料対残渣油留分の所望の比、及び/又は所望の絶対量を維持することが望ましい場合がある。
【0064】
「変換率」及び「留分変換」という用語は、多くの場合、低沸点物質及び/又はより低分子量の物質に変換された重油の百分率として表される割合を指す。変換率は、定義されるカットポイント未満の沸点を有する生成物に変換された初期の残渣油含有量(すなわち、定義される残留物カットポイントを超える沸点を有する構成成分)の百分率として表される。残留物カットポイントの定義は変動し得、公称524℃(975°F)、538℃(1000°F)、565℃(1050°F)などを挙げることができる。これは、定義されるカットポイントを超える沸点を有する構成成分の濃度を決定する供給流及び生成物流の蒸留分析によって、測定することができる。留分変換率は、(F-P)/Fとして表され、Fが、組み合わせた供給流中の残渣油の量であり、Pが、組み合わせた生成物流中の残渣油の量であり、供給物及び生成物の両方の残渣油含有量は、同じカットポイント定義に基づく。残渣油の量は、多くの場合、定義されるカットポイントを超える沸点を有する構成成分の質量に基づいて定義されるが、体積又はモルによる定義も使用することができる。
【0065】
アスファルテンの変換率は、全体としての重油供給原料の変換率とは異なり得る。本開示の目的では、アスファルテン変換率の有用な定義は、未使用の供給原料中のアスファルテンの量に基づき、100を乗算することによって百分率に変換することができる0~1の小数点留分をもたらす、以下によって定義することができる。
Conv=[Asph(未使用の供給物)-Asph(生成物)]/Asph(未使用の供給物)
再利用流のアスファルテン含有量は、プロセスの内部である。アスファルテンの変換率が、全体としての重油の変換率と比較して低すぎると、アスファルテンの再利用蓄積が起こり得る。
【0066】
「スループット」という用語は、時間と相関する、水素化処理反応器に導入される供給材料の量を指す。スループットは、1日当たりのバレルなどの体積的な用語、又は1時間当たりのメートルトンなどの質量的な用語で表すことができる。通常の使用では、スループットは、重油供給原料自体(例えば、真空塔ボトムなど)のみの質量的な又は体積的な供給速度として定義される。この定義は、時折水素化変換ユニットへの全体的な供給物中に含まれ得る量の希釈剤又は他の構成成分の量を通常含まないが、それらの他の構成成分を含む定義を、使用してもよい。
【0067】
「変換された生成物の生成速度」は、1日当たりのバレルなどの体積的な用語、又は1時間当たりのメートルトンなどの質量的な用語で表すことができる絶対速度である。「変換された生成物の生成速度」は、「速度」(例えば、ユニット供給速度当たりの生成速度、又は変換されたユニット供給物当たりの生成速度)と時折誤って呼ばれる、収率又は効率と混同されるべきではない。変換された生成物の初期生成速度及び変換された生成物の生成速度の増加の両方の実際の数値は、個々の生成施設に特有であり、その施設の能力に依存することが理解されるであろう。したがって、異なる能力で構築された異なるユニット又は施設に対してではなくアップグレードの前後に対して、問題のユニット又は施設の生成速度を比較することが有効である。
II.沸騰床式水素化処理反応器及びシステム
【0068】
図2A~2Dは、本発明に従ってアップグレードして二重触媒系を使用することができる、重油などの炭化水素供給原料を水素化処理するために使用される、沸騰床式水素化処理反応器及びシステムの非限定的な例を概略的に示している。例示的な沸騰床式水素化処理反応器及びシステムとしては、段階間分離、一体化水素化処理、及び/又は一体化水素化分解を挙げることができることが理解されるであろう。
【0069】
図2Aは、C-E Lummusにより開発されたLC-Fining水素化分解システムで使用される、沸騰床式水素化処理反応器10を概略的に示している。沸騰床式反応器10は、供給原料14及び加圧水素ガス16が導入される入口ポート12を底部付近に、水素化処理された材料20が引き出される出口ポート18を上部に含む。
【0070】
反応器10は、膨張又は流動状態に維持される不均質触媒24を含む膨張触媒ゾーン22を更に含み、沸騰床式反応器10を通る液体炭化水素及び気体(気泡25として概略的に示される)の上方への動きによって重力に逆らって維持される。膨張触媒ゾーン22の下端は、膨張触媒ゾーン22を、沸騰床式反応器10の底部と分配器グリッドプレート26との間に位置する下方不均質触媒不含ゾーン28から分離する、分配器グリッドプレート26によって画定される。分配器グリッドプレート26は、水素ガスと炭化水素とを反応器全体にわたって均一に分配し、不均質触媒24が重力によって下方不均質触媒不含ゾーン28に落ちるのを防止するように構成されている。膨張触媒ゾーン22の上端は、下向きの重力が、不均質触媒24が所与のレベルの膨張又は分離に達したときに、沸騰床式反応器10を通って上方に動く供給原料及び気体の上昇力に等しいか、又はそれを超え始める高さである。膨張触媒ゾーン22の上は、上方不均質触媒不含ゾーン30である。
【0071】
沸騰床式反応器10内の炭化水素及び他の材料は、沸騰床式反応器10の底部で沸騰ポンプ34に接続されている沸騰床式反応器10の中心に位置する再利用チャネル32によって、上方不均質触媒不含ゾーン30から下方不均質触媒不含ゾーン28へと連続的に再循環される。再利用チャネル32の上部には、供給原料が上方不均質触媒不含ゾーン30から引き込まれる漏斗形状の再利用カップ36がある。再利用チャネル32を通って下方に引き込まれた材料は、下方触媒不含ゾーン28に入り、次いで、分配器グリッドプレート26を上向きに通って膨張触媒ゾーン22へ入り、入口ポート12を通って沸騰床式反応器10に入る新たに添加される供給原料14及び水素ガス16とブレンドされる。沸騰床式反応器10を通って上向きにブレンド材料を連続的に循環させることにより、有利には、不均質触媒24が膨張触媒ゾーン22内で膨張又は流動状態で維持され、チャネリングを最小限に抑え、反応速度を制御し、発熱水素化反応によって放出される熱を安全なレベルに保持する。
【0072】
未使用の不均質触媒24は、沸騰床式反応器10の上部を通って膨張触媒ゾーン22に直接入る触媒入口管38を通って、膨張触媒ゾーン22などの沸騰床式反応器10に導入される。使用済み不均質触媒24は、膨張触媒ゾーン22の下端から分配器グリッドプレート26及び沸騰床式反応器10の底部を通る触媒引き出し管40を通って、膨張触媒ゾーン22から引き出される。触媒引き出し管40は、完全に使用済みの触媒と、部分的に使用済みだが活性な触媒と、新たに添加された触媒とを区別することができないため、不均質触媒24のランダム分布が、典型的には、「使用済み」触媒として、沸騰床式反応器10から引き出されることが理解されるであろう。
【0073】
沸騰床式反応器10から引き出されたアップグレードされた炭化水素材料20は、分離器42(例えば、高温分離器、段階間圧力差分離器、常圧蒸留塔、又は真空蒸留塔)に導入することができる。分離器42は、不揮発性留分(又は液体)48から1つ以上の揮発性留分(又は蒸留液)46を分離する。
【0074】
図2Bは、Hydrocarbon Research Incorporatedによって開発され、Axensによって現在認可されているH-Oil水素化分解システムで使用される、沸騰床式反応器110を概略的に示している。沸騰床式反応器110は、重油供給原料114及び加圧水素ガス116が導入される入口ポート112と、アップグレードされた炭化水素材料120が引き出される出口ポート118と、を含む。不均質触媒124を含む膨張触媒ゾーン122は、膨張触媒ゾーン122を、反応器110の底部と分配器グリッドプレート126との間の下方触媒不含ゾーン128から分離する分配器グリッドプレート126と、膨張触媒ゾーン122と上方触媒不含ゾーン130との間のおおよその境界を画定する上端129とによって画定される。点線の境界線131は、膨張又は流動状態にないときの不均質触媒124のおおよそのレベルを概略的に示している。
【0075】
材料は、反応器110の外側に位置する沸騰ポンプ134に接続されている再利用チャネル132によって、沸騰床式反応器110内で連続的に再循環される。材料は、上方触媒不含ゾーン130から漏斗形状の再利用カップ136を通って引き込まれる。再利用カップ136は螺旋形状であり、再利用される材料132からの水素の気泡125の分離に役立ち、沸騰ポンプ134のキャビテーションを防止する。再利用される材料132は、未使用の供給原料116及び水素ガス118とブレンドされる下方触媒不含ゾーン128に入り、混合物が分配器グリッドプレート126を通って上がり、膨張触媒ゾーン122に入る。未使用の触媒124は、触媒入口管137を通って膨張触媒ゾーン122に導入され、使用済み触媒124は、触媒排出管140を通って膨張触媒ゾーン122から引き出される。
【0076】
H-Oil沸騰床式反応器110とLC-Fining沸騰床式反応器10との主な違いは、沸騰ポンプの位置である。H-Oil反応器110内の沸騰ポンプ134は、反応器チャンバの外部に位置する。再循環されている供給原料は、反応器110の底部の再循環ポート141を通って導入される。再循環ポート141は、下方触媒不含ゾーン128を通って材料を均一に分配するのを補助する分配器143を含む。アップグレードされた炭化水素材料120は、分離器142(例えば、高温分離器、圧力差段階間分離器、常圧蒸留塔、又は真空蒸留塔)に送られ、不揮発性留分(又は液体)148から1つ以上の揮発性留分(又は蒸留液)146が分離されることが示されている。
【0077】
図2Cは、複数の沸騰床式反応器を備える、沸騰床式水素化処理システム200を概略的に示している。水素化処理システム200の一例は、LC-Fining又はH-Oil水素化処理ユニットであり、供給原料212をアップグレードするために、直列の3つの沸騰床式反応器210を含んでもよい。サージタンク214からの供給原料212は加圧され、予熱され、水素ガス216と一緒に第1の沸騰床式反応器210aに導入され、その両方が反応器に入る前にそれぞれ加熱器を通過する。第1の沸騰床式反応器210aからのアップグレードされた炭化水素材料220aは、追加の水素ガス216と一緒に第2の沸騰床式反応器210bに導入される。第2の沸騰床式反応器210bからのアップグレードされた炭化水素材料220bは、追加の水素ガス216と一緒に第3の沸騰床式反応器210cに導入される。
【0078】
1つ以上の段階間分離器(図示せず)は、任意選択的に、第1及び第2の沸騰床式反応器210aと210bとの間、並びに/又は第2及び第3の沸騰床式反応器210bと210cとの間に介在させて、液体炭化水素及び残留分散金属硫化物触媒粒子を含有する不揮発性留分からより低い沸騰留分及び気体を除去することができると理解されるべきである。有益な燃料生成物であるが、アスファルテンには貧溶媒であるヘキサン及びヘプタンなどの低級アルカンを除去することが望ましい場合がある。複数の反応器間での揮発性材料の除去は、有益な生成物の生成を向上し、下流反応器(複数可)に供給される液体炭化水素材料中のアスファルテンの溶解度を増加させる。両方が全体的な水素化処理システムの効率を向上させる。
【0079】
第3の沸騰床式反応器210cからのアップグレードされた炭化水素材料220cは、揮発性留分と不揮発性留分とを分離する高温分離器242aに送られる。揮発性留分246aは、第1の沸騰床式反応器210aに供給される前に、水素ガス216を予熱するために使用された熱を除去する熱交換器250を通過する。いくらか冷却された揮発性留分246aは、中温分離器242bに送られ、ここで残りの揮発性分246bを、熱交換器250による冷却の結果として形成され得られる液体留分248bから分離する。気体留分252cと脱気液体留分248cとに更に分離するために、残りの揮発性留分246bは下流の低温分離器242cに送られる。
【0080】
高温分離器242aからの液体留分248aは、中温分離器242bから生じる液体留分248bと共に、低圧分離器242dに送られ、脱気された液体留分248dから水素リッチガス252dを分離し、低温分離器242cからの脱気された液体留分248cと共に真空蒸留塔を含む1つ以上の蒸留塔を含むバックエンドシステム260に送られ、材料は、生成物262と真空塔ボトム264の再利用流とに留分される。真空塔ボトム264の再利用流は、バックエンドシステム260によって生成された真空塔ボトムの一部又は全てを含んでもよく、真空塔ボトムの一部分は、任意選択的に、生成物262として除去され、再利用されない。
【0081】
低温分離器242cからの気体留分252cは、オフガス、パージガス、及び水素ガス216に精製される。水素ガス216は圧縮され、メークアップ水素ガス216aと混合され、熱交換器250を通され、供給原料216と一緒に第1の沸騰床式反応器210aに導入されるか、又は第2及び第3の沸騰床式反応器210b及び210bに直接導入される。
【0082】
図2Dは、図2Cに示されているシステムと同様に、複数の沸騰床式反応器を備える沸騰床式水素化処理システム200を概略的に示しているが、第2及び第3の反応器210bと210cとの間に介在する段階間分離器221を示している(が、段階間分離器221(又は他の分離器)は、第1及び第2の反応器210aと210bとの間に介在してもよい)。図示されるように、第2段階反応器210bからの流出液は、高圧高温分離器であり得る段階間分離器221に入る。分離器221からの液体留分は、ライン216からの再利用水素の一部分と組み合わせられ、次いで第3段階反応器210cに入る。段階間分離器221からの蒸気留分は第3段階反応器210cを迂回し、第3段階反応器210cから流出液と混合され、次いで高圧高温分離器242aに入る。
【0083】
これにより、第1の2つの反応器段階で形成されたより軽い、より飽和した構成成分は、第3段階反応器210cを迂回することが可能になる。この利点は、(1)第3段階反応器への蒸気負荷の低減であり、これにより、残りの重い構成成分を変換するための第3段階反応器の体積利用率を増加させ、(2)「逆溶媒」構成成分(飽和物)の濃度の低減であり、これにより第3段階反応器210c内のアスファルテンを不安定化(例えば、沈殿)させることができる。
【0084】
好ましい実施形態では、水素化処理システムは、水素化処理などのあまり過酷でない水素化処理反応よりも、水素化分解反応を促進するように構成及び操作される。水素化分解は、より大きい炭化水素分子の分子量の低減、及び/又は芳香族化合物の環開環などの炭素-炭素分子結合の破壊を伴う。一方、水素化処理は、主に、炭素-炭素分子結合の破壊が最小限であるか又は全く破壊されない、不飽和炭化水素の水素化を伴う。
【0085】
単なる水素化処理反応よりも水素化分解を促進するために、水素化処理反応器(複数可)は、好ましくは約750°F(399℃)~約860°F(460℃)の範囲、より好ましくは約780°F(416℃)~約830°F(443℃)の範囲の温度で操作され、好ましくは約1000psig(6.9MPa)~約3000psig(20.7MPa)の範囲、より好ましくは約1500psig(10.3MPa)~約2500psig(17.2MPa)の範囲の圧力で操作され、好ましくは0.05時間-1~約0.45時間-1の範囲、より好ましくは約0.1時間-1~約0.35時間-1の範囲の空間速度(例えば、時間当たりの供給体積対反応器体積の比として定義される液空間速度、すなわちLHSV)で操作される。
【0086】
水素化分解と水素化処理との間の差はまた、残渣油変換率の観点から表すこともできる(水素化分解はより高沸点炭化水素の低沸点炭化水素への実質的な変換を生じるが、水素化処理は生じない)。本明細書に開示される水素化処理システムは、約40%~約95%、好ましくは約55%~約90%の残渣油変換率を生じることができる。好ましい変換率の範囲は、典型的には、異なる供給原料間の処理困難性が異なるので、供給原料の種類に依存する。場合によっては、変換率は、本明細書に開示されるようにアップグレードして二重触媒系を利用する前に沸騰床式反応器を操作する場合と比較して、同じままであり得るか、又は少なくとも約5%高い、好ましくは少なくとも約10%高い場合がある。
III.沸騰床式水素化処理反応器のアップグレード
【0087】
図3A、3B、3C、及び3Dは、沸騰床式反応器をアップグレードして、水素化処理システムの真空ボトム中などのアスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムの再利用を可能にするための例示的な方法を示すフロー図である。
【0088】
図3Aは、アスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムを再利用しながら、沸騰床式反応器をアップグレードする例示的な方法であって、(1)任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理することと、(2)沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒及び分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、(3)二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理して、炭化水素生成物を生成することと、(4)炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、(5)沸騰床式水素化処理システム(例えば真空ボトム)にアスファルテンの再利用蓄積のない、アップグレードされた沸騰床式反応器に、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムのうちの少なくとも一部分を再利用することと、を含む、例示的な方法を示すフロー図である。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、ベースライン条件下で最初に沸騰床式反応器を操作するときに利用される不均質触媒は、沸騰床式反応器システムで典型的に使用される市販の触媒である。効率を最大化するために、ベースライン反応器条件は、有利には、沈殿物形成及び装置のファウリングが許容可能なレベル内に維持されるレベルである。重油及びアスファルテンの絶対変換率を増加させ、真空ボトムを沸騰床式反応器に再利用することによって、協働的に生成物の総生成を増加させる試みがいくつかなされてきた。真空ボトムを再利用することは理論的に役立ち得るが、多くの場合、水素化処理システムにアスファルテンの再利用蓄積を生じ、装置のファウリングのリスクを増加させ、多くの場合、水素化処理反応器、並びにパイプ、塔、加熱器、熱交換器、不均質触媒及び/又は分離装置などの関連装置のより頻繁なシャットダウン及び洗浄を必要とするであろう。
【0090】
真空ボトムのより有効な再利用を可能にし、水素化処理システムのアスファルテンの再利用蓄積を排除又は低減するために、沸騰床式反応器をアップグレードして、不均質触媒及び分散金属硫化物触媒粒子を含む二重触媒系を使用する。二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作することにより、ベースライン条件と比較して、より高い変換率、より高い温度、及び/又はより高いスループットのうちの1つ以上ででさえも、アスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムの再利用を可能にする。これにより、アスファルテンの再利用蓄積のある真空ボトムを再利用するときよりも、より少ない装置のファウリング及びより少ない頻度のシャットダウン及び洗浄を生じる。
【0091】
分散金属硫化物触媒粒子は、別で生成され、次いで、不均質触媒と一緒に沸騰床式反応器に添加されて、二重触媒系を形成することができる。あるいは又は加えて、分散金属硫化物触媒粒子の少なくとも一部分は、沸騰床式反応器内でその場で生成してもよい。分散金属硫化物触媒粒子の更なる詳細、及びそれらが形成される方法については、以下に記載されている。
【0092】
図3Bは、沸騰床式反応器をアップグレードして、増加された変換率でアスファルテンの再利用蓄積のない真空ボトムを再利用することを可能にする例示的な方法であって、(1)任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理することと、(2)沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒及び分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、(3)二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作して重油を水素化処理して、ベースライン条件と比較して高い変換率で炭化水素生成物を生成することと、(4)炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、(5)沸騰床式水素化処理システム(例えば真空ボトム)にアスファルテンの再利用蓄積のない、アップグレードされた沸騰床式反応器に、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムのうちの少なくとも一部分を再利用することと、を含む、例示的な方法を示すフロー図である。
【0093】
図3Cは、沸騰床式反応器をアップグレードして、同様の変換率で真空ボトム及び低減されたアスファルテンを再利用することを可能にする別の例示的な方法であって、(1)任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理することと、(2)沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒及び分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、(3)二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作して重油を水素化処理して、ベースライン条件と比較して同様の変換率で炭化水素生成物を生成することと、(4)炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、(5)沸騰床式水素化処理システム(例えば真空ボトム)に低減されたアスファルテンを用いるアップグレードされた沸騰床式反応器に、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムのうちの少なくとも一部分を再利用することと、を含む、例示的な方法を示すフロー図である。
【0094】
図3Dは、沸騰床式反応器をアップグレードして、より高い変換率で真空ボトム及び低減されたアスファルテンを再利用することを可能にする別の例示的な方法であって、(1)任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理することと、(2)沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、分散不均質触媒及び金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、(3)二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作して重油を水素化処理して、ベースライン条件と比較して高い変換率で炭化水素生成物を生成することと、(4)炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、(5)沸騰床式水素化処理システム(例えば真空ボトム)に低減されたアスファルテンを用いるアップグレードされた沸騰床式反応器に、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムのうちの少なくとも一部分を再利用することと、を含む、例示的な方法を示すフロー図である。
【0095】
いくつかの実施形態では、二重触媒系を使用する真空ボトムを再利用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作するとき、(i)初期条件で操作するときと同じか又は同様のスループットでより高い温度及びより高い変換率、(ii)初期条件で操作するときと同じか又は同様の変換率でより高い温度及びより高いスループット、又は(iii)初期条件で操作するときよりも高い温度、高いスループット、及び高い変換率、のうちの少なくとも1つによって、変換された生成物の生成速度を増加することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、真空ボトムは、約1%~約50%、好ましくは約5%~約40%、より好ましくは約10%~約30$の再利用比で再利用することができる。再利用比は、体積基準又は質量基準のいずれかで、真空ボトム再利用量対未使用の供給原料量の比によって決定される百分率として表すことができる。これらの百分率は、未使用の供給原料の流量の体積パーセントとして、真空ボトムの流量を示す。供給原料及び真空ボトムの密度が既知である場合、再利用比はまた、質量パーセント基準に容易に変換することもできる。
【0097】
いくつかの実施形態では、スループットは、ベースライン条件と比較して、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも10%、又は少なくとも20%増加させることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、変換率は、ベースライン条件と比較して、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%、又は少なくとも15%増加させることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、温度は、ベースライン条件と比較して、少なくとも2.5℃、少なくとも5℃、少なくとも7.5℃、又は少なくとも10℃上昇させることができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、沸騰床式反応器をアップグレードして二重触媒系を使用し真空ボトムを再利用した後の、装置のファウリング速度は、ベースライン条件で操作するとき、及び/又はアップグレードすることなく二重触媒系を使用して真空ボトムを再利用するときの装置のファウリング速度と比較して、少なくとも5%、25%、50%、又は75%低下させることができる。いくつかの実施形態では、アップグレードして二重触媒系を使用した後、水素化処理システム内のアスファルテンの絶対濃度は、ベースライン条件で沸騰床式反応器を操作するときよりも低いか、同じか、又は更にはより高い場合がある。
【0101】
いくつかの実施形態では、アップグレードされた沸騰床式反応器内のアスファルテンの濃度は、ベースライン条件で真空ボトム再利用するアスファルテン濃度と比較して、少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%低減することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、分散金属硫化物触媒粒子は、沸騰床式反応器に添加される重油供給原料の全体内にその場で形成することができる。これは、触媒前駆体を重油供給原料の全体と最初に混合して、調整された供給原料を形成し、その後、調整された供給原料を加熱して触媒前駆体を分解し、重油中及び/又は重油に添加された硫黄及び/又は硫黄含有分子と触媒金属が反応することを引き起こすか又は可能にして、分散金属硫化物触媒粒子を形成することによって達成することができる。
【0103】
触媒前駆体は、油溶性であり得、約100℃(212°F)~約350℃(662°F)の範囲、又は約150℃(302°F)~約300℃(572°F)の範囲、又は約175℃(347°F)~約250℃(482°F)の範囲の分解温度を有し得る。触媒前駆体の例としては、有機金属錯体又は化合物、より具体的には、好適な混合条件下で重油供給原料と混合されると実質的な分解を回避するのに十分高い分解温度又は範囲を有する、遷移金属と有機酸との油溶性化合物又は錯体が挙げられる。触媒前駆体を炭化水素油希釈剤と混合すると、触媒前駆体の顕著な分解が起こる温度未満で希釈剤を維持することが有利である。当業者であれば、本開示に従い、分散金属硫化物触媒粒子の形成前に、実質的な分解を伴わずに、選択された前駆体組成物の密接な混合を生じる混合温度プロファイルを選択する。
【0104】
触媒前駆体の例としては、限定されないが、モリブデン2-ヘキサン酸エチル、オクタン酸モリブデン、ナフテン酸モリブデン、ナフテン酸バナジウム、オクタン酸バナジウム、ヘキサカルボニルモリブデン、ヘキサカルボニルバナジウム、及びペンタカルボニル鉄が挙げられる。他の触媒前駆体としては、複数のカチオン性モリブデン原子と、少なくとも8個の炭素原子の複数のカルボン酸アニオンとを含み、(a)芳香族、(b)脂環式、又は(c)分枝状、不飽和及び脂肪族のうちの少なくとも1つであるモリブデン塩が挙げられる。例として、各カルボン酸アニオンは、8~17個の炭素原子、又は11~15個の炭素原子を有し得る。前述のカテゴリーのうちの少なくとも1つに適合するカルボン酸アニオンの例としては、3-シクロペンチルプロピオン酸、シクロヘキサンブチル酸、ビフェニル-2-カルボン酸、4-ヘプチル安息香酸、5-フェニルバレリン酸、ゲラン酸(3,7ジメチル-2,6-オクタジエン酸)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカルボン酸から誘導されるカルボン酸アニオンが挙げられる。
【0105】
他の実施形態では、油溶性、熱安定性、モリブデン触媒前駆体化合物の作製への使用に好適なカルボン酸アニオンは、3-シクロペンチルプロピオン酸、シクロヘキサンブチル酸、ビフェニル-2-カルボン酸、4-ヘプチル安息香酸、5-フェニルバレリン酸、ゲラン酸(3,7ジメチル-2,6-オクタジエン酸)、10-ウンデセン酸、ドデカン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるカルボン酸から誘導される。前述のカルボン酸から誘導されたカルボン酸アニオンを使用して作製されたモリブデン触媒前駆体は、改善された熱安定性を有することが発見されている。
【0106】
熱安定性が高い触媒前駆体は、210℃超、約225℃超、約230℃超、約240℃超、約275℃超、又は約290℃超の第1の分解温度を有し得る。そのような触媒前駆体は、250℃超、又は約260℃超、又は約270℃超、又は約280℃超、又は約290℃超、又は約330℃超のピーク分解温度を有し得る。
【0107】
当業者であれば、本開示に従い、分散金属硫化物触媒粒子の形成前に、実質的な分解を伴わずに、選択された前駆体組成物の密接な混合を生じる混合温度プロファイルを選択する。
【0108】
触媒前駆体を重油供給原料と直接ブレンドすることは本発明の範囲内であるが、そのような場合には、前駆体組成物の実質的な分解が起こる前に、供給原料内の触媒前駆体を完全にブレンドするのに十分な時間、構成成分を混合するように注意しなければならない。例えば、その開示が参照により組み込まれる、Cyrらへの米国特許第5,578,197号は、モリブデン2-ヘキサン酸エチルをビチューメン真空等残渣油と24時間混合した後、得られた混合物を反応容器内で加熱して触媒化合物を形成し、水素化分解に効果を与える方法について記載している(同段落10、4~43行参照)。ベンチ試験環境で24時間混合することは、専ら許容可能であり得るが、そのような長い混合時間は、ある特定の工業的操作を非常に高価にし得る。加熱前に重油内で触媒前駆体を完全に混合して確実に活性触媒を形成するために、調整された供給原料を加熱する前に異なる混合機器によって一連の混合工程が実施される。これらとしては、1つ以上の低剪断インラインミキサ、続いて1つ以上の高剪断ミキサ、続いてサージ容器及びポンプアラウンドシステム、続いて水素化処理反応器に導入する前に供給流を加圧するために使用される1つ以上の多段階高圧力ポンプを挙げることができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、調整された供給原料は、水素化処理反応器に入る前に加熱機器を使用して予熱されて、反応器に入る前に重油内で分散金属硫化物触媒粒子の少なくとも一部分をその場で形成する。他の実施形態では、調整された供給原料は、加熱されるか又は水素化処理反応器内で更に加熱されて、反応器内にある間に重油内でその場で分散金属硫化物触媒粒子の少なくとも一部分を形成する。
【0110】
いくつかの実施形態では、分散金属硫化物触媒粒子は、多工程プロセスで形成することができる。例えば、油溶性触媒前駆体組成物を炭化水素希釈剤と事前混合して、希釈前駆体混合物を形成することができる。好適な炭化水素希釈剤の例としては、限定されないが、真空ガス油(典型的には、360~524℃の公称沸点範囲を有する)(680~975°F)、デカント油又はサイクル油(典型的には、360℃~550℃の公称沸点範囲を有する)(680~1022°F)、及びガス油(典型的には200℃~360℃の公称沸点範囲を有する)(392-680°F)、重油供給原料の一部分、及び公称約200℃超の温度で沸騰する他の炭化水素が挙げられる。
【0111】
希釈前駆体混合物を作製するために使用される触媒前駆体対炭化水素油希釈剤の比は、約1:500~約1:1の範囲、又は約1:150~約1:2の範囲、又は約1:100~約1:5(例えば、1:100、1:50、1:30、又は1:10)の範囲であり得る。
【0112】
希釈前駆体混合物中の触媒金属(例えば、モリブデン)の量は、好ましくは希釈前駆体混合物の約100重量ppm~約7000重量ppmの範囲、より好ましくは希釈前駆体混合物の約300重量ppm~約4000重量ppmの範囲内である。
【0113】
触媒前駆体は、有利には、触媒前駆体組成物のかなりの部分が分解される温度未満で炭化水素希釈剤と混合される。混合は、約25℃(77°F)~約250℃(482°F)の範囲、又は約50℃(122°F)~約200℃(392°F)の範囲、又は約75℃(167°F)~約150℃(302°F)の範囲の温度で実施して、希釈前駆体混合物を形成してもよい。希釈前駆体混合物が形成される温度は、利用される触媒前駆体の分解温度及び/若しくは他の特徴、並びに/又は粘度などの炭化水素希釈剤の特徴に依存し得る。
【0114】
触媒前駆体は、好ましくは、約0.1秒~約5分の範囲、又は約0.5秒~約3分の範囲、又は約1秒~約1分の範囲の期間、炭化水素油希釈剤と混合される。実際の混合時間は、少なくとも部分的に、温度(すなわち、流体の粘度に影響する)及び混合強度に依存する。混合強度は、少なくとも部分的に、例えばインライン静的ミキサ用の段階の数に依存する。
【0115】
触媒前駆体を炭化水素希釈剤と事前ブレンドして希釈前駆体混合物を形成し、次いで、重油供給原料とブレンドすることは、特に大規模な工業的操作に必要な比較的短い時間で、供給原料内で触媒前駆体を完全にかつ密接にブレンドするのを大幅に補助する。希釈前駆体混合物を形成することは、(1)より極性の高い触媒前駆体とより疎水性の重油供給原料との間の溶解度の差を低減又は排除すること、(2)触媒前駆体と重油供給原料との間のレオロジーの差を低減若しくは排除すること、及び/又は(3)触媒前駆体分子を分解して、重油供給原料内により容易に分散される炭化水素希釈剤内に溶質を形成すること、によって全体的な混合時間を短縮する。
【0116】
次いで、希釈前駆体混合物は、重油供給原料と組み合わせられ、触媒前駆体を重油全体に分散させて、熱分解及び活性金属硫化物触媒粒子の形成前に触媒前駆体が重油内で完全に混合されている調整された供給原料を形成するような様式で、十分な時間混合される。重油供給原料内での触媒前駆体の十分な混合を得るために、希釈前駆体混合物及び重油供給原料は、有利には、約0.1秒~約5分の範囲、又は約0.5秒~約3分の範囲、又は約1秒~約1分の範囲の期間、混合される。混合プロセスの激しさ及び/又は剪断エネルギーを増加させることは、一般に、完全な混合をもたらすのに必要な時間を低減する。
【0117】
触媒前駆体及び/又は希釈前駆体混合物と重油との完全な混合をもたらすために使用することができる混合機器の例としては、限定されないが、プロペラ又はタービンインペラを有する容器内に作製される混合などの高剪断混合、複数の静的インラインミキサ、インライン高剪断ミキサと組み合わせた複数の静的インラインミキサ、サージ容器が後続するインライン高剪断ミキサと組み合わせた複数の静的インラインミキサ、1つ以上の多段階遠心分離ポンプが後続する上記の組み合わせ、及び1つ以上の多段階遠心分離ポンプが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、バッチ式混合ではなく連続的な混合は、複数のチャンバを有する高エネルギーポンプを使用して実行することができ、その中で触媒前駆体組成物及び重油供給原料は、圧送プロセス自体の一部として撹拌及び混合される。前述の混合機器はまた、触媒前駆体が炭化水素希釈剤と混合されて触媒前駆体混合物を形成する上で考察される事前混合プロセスに使用されてもよい。
【0118】
室温で固体であるか又は極めて粘稠である重油供給原料の場合、そのような供給原料は、有利には、油溶性触媒前駆体を供給原料組成物に良好に混合することができるように、軟化させ、十分に低い粘度を有する供給原料を作製するために加熱され得る。一般に、重油供給原料の粘度を低下させることにより、供給原料内の油溶性前駆体組成物の完全かつ密接な混合をもたらすのに必要な時間を低減するであろう。
【0119】
重油供給原料並びに触媒前駆体及び/又は希釈前駆体混合物を、有利には、約25℃(77°F)~約350℃(662°F)の範囲、又は約50℃(122°F)~約300℃(572°F)の範囲、又は約75℃(167°F)~約250℃(482°F)の範囲の温度で混合して、調整された供給原料を得る。
【0120】
希釈前駆体混合物を最初に形成せずに、触媒前駆体が重油供給原料と直接混合される場合、触媒前駆体と重油供給原料とを、約0.2秒~約10分の範囲、又は約1秒~約6分の範囲、又は約2秒~約2分の範囲の期間の期間、混合することが有利であり得る。触媒前駆体組成物のかなりの部分が分解される温度未満で、触媒前駆体と重油供給原料とを混合することも有利であり得る。
【0121】
触媒前駆体を炭化水素希釈剤と事前混合して希釈前駆体混合物を形成し、その後これを重油と混合する場合、重油供給原料を触媒前駆体の分解温度以上にしてもよい。場合によっては、炭化水素希釈剤は、混合中に個々の触媒前駆体分子を遮蔽し、それらが凝集してより大きな粒子を形成することを防止し、触媒前駆体分子を重油からの熱から一時的に断熱し、金属を遊離させるように分解される前に、重油供給原料全体にわたる触媒前駆体分子の分散を十分に迅速に促進する。加えて、重油中の硫黄担持分子から硫化水素を遊離させて、金属硫化物触媒粒子を形成するために、供給原料の更なる加熱が必要な場合がある。このようにして、触媒前駆体の漸進的な希釈により、重油供給原料内の高レベルの分散を可能にし、供給原料が触媒前駆体の分解温度を超える温度であっても、高分散金属硫化物触媒粒子の形成を生じる。
【0122】
触媒前駆体を重油全体にわたって良好に混合して、調整された供給原料を得た後、この組成物を加熱して触媒前駆体の分解を引き起こし、これにより触媒金属を遊離させ、触媒金属を重油内の硫黄及び/又は重油に添加した硫黄との反応を引き起こすかあるいは可能にし、活性金属硫化物触媒粒子を形成する。触媒前駆体からの金属は、最初に金属酸化物を形成し、次いで重油中の硫黄と反応して、最終活性触媒を形成する金属硫化物化合物を得ることができる。重油供給原料が十分又は過剰な硫黄を含む場合、最終活性化触媒は、重油供給原料から硫黄を遊離させるのに十分な温度に重油供給原料を加熱することによって、その場で形成してもよい。場合によっては、硫黄は、前駆体組成物が分解されるのと同じ温度で遊離され得る。他の場合では、より高い温度に更に加熱することが必要であり得る。
【0123】
触媒前駆体が重油全体にわたって完全に混合されている場合、遊離金属イオンのうちの少なくとも実質的な部分は、他の金属イオンから十分に保護又は遮蔽される結果、硫黄と反応して金属硫化物化合物を形成する際に分子分散触媒を形成することができる。いくつかの状況下では、わずかな凝集が起こり、コロイドサイズの触媒粒子が得られる場合がある。しかしながら、触媒前駆体の熱分解前に触媒前駆体を供給原料全体にわたって完全に混合するように注意を払うことにより、コロイド粒子ではなく個々の触媒分子を得ることができると考えられる。十分に混合されずに単純にブレンドすると、供給原料を含む触媒前駆体は、典型的には、マイクロメートルサイズ以上の大きな凝集金属硫化物化合物の形成を引き起こす。
【0124】
分散金属硫化物触媒粒子を形成するために、調整された供給原料は、約275℃(527°F)~約450℃(842°F)の範囲、又は約310℃(590°F)~約430℃(806°F)の範囲、又は約330℃(626°F)~約410℃(770°F)の範囲の温度に加熱される。
【0125】
分散金属硫化物触媒粒子により提供される重油中の触媒金属の初期濃度は、重油供給原料の、約1重量ppm~約500重量ppmの範囲、又は約5重量ppm~約300重量ppmの範囲、又は約10重量ppm~約100重量ppmの範囲であり得る。触媒は、揮発性留分が残渣油留分から除去されるにつれて、より濃縮され得る。真空ボトムの再利用は、分散金属硫化物触媒粒子の供給源になり得、触媒前駆体の使用を減少させた沸騰床式反応器内で所望の濃度を維持することができるか、あるいは分散金属硫化物触媒粒子の濃度を増加させることができ、再利用される真空ボトムによって提供される追加のアスファルテンを水素化処理するのに役立ち得る。
【0126】
重油供給原料がかなりの量のアスファルテン分子を含む場合、分散金属硫化物触媒粒子は、アスファルテン分子と優先的に会合するか、又はごく近接したままであり得る。アスファルテン分子は一般に、重油内に含有される他の炭化水素よりもより親水性かつより低い疎水性であるため、アスファルテン分子は、金属硫化物触媒粒子に対してより高い親和性を有することができる。金属硫化物触媒粒子は非常に親水性である傾向があるので、個々の粒子又は分子は、重油供給原料内のより親水性の部分又は分子に向かって移動する傾向があるであろう。
【0127】
金属硫化物触媒粒子の非常に極性の高い性質は、アスファルテン分子との会合を引き起こすか又はそれを可能にするが、一般に、非常に極性の高い触媒化合物と疎水性の重油との間は不相溶性であり、活性触媒粒子の分解及び形成の前に、重油内での触媒前駆体組成物の前述の密接な又は完全な混合を必要とする。金属触媒化合物は非常に極性が高いので、それらは、直接添加された場合、重油内で効果的に分散することができない。実際には、より小さい活性触媒粒子を形成することにより、重油全体により均一に分布された触媒部位を提供する、多数の触媒粒子を生じる。
IV.アップグレードされた沸騰床式反応器
【0128】
図4は、開示される方法及びシステムで使用することができる、例示的なアップグレードされた沸騰床式水素化処理システム400を概略的に示している。沸騰床式水素化処理システム400は、アップグレードされた沸騰床式反応器430と、高温分離器404(又は蒸留塔などの他の分離器)と、を含む。アップグレードされた沸騰床式反応器430を作製するために、触媒前駆体402を、最初に1つ以上のミキサ406内で炭化水素希釈剤404と事前ブレンドして、触媒前駆体混合物409を形成する。触媒前駆体混合物409を、供給原料408に添加し、1つ以上のミキサ410内の供給原料とブレンドして、調整された供給原料411を形成する。調整された供給原料を、ポンプアラウンドループ414を有するサージ容器412に供給して、調整された供給原料内の触媒前駆体の更なる混合及び分散を引き起こす。
【0129】
アップグレードされた沸騰床式水素化処理システムは、再利用される真空ボトム407を添加するための手段を含む。添加の正確な位置は、特定の水素化処理システムの構成及び/又は必要性に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、再利用される真空ボトム407は、1つ以上のミキサ410のうちの少なくとも1つより上流、1つ以上のミキサ410のうちの少なくとも1つより下流のサージ容器412内又はポンプアラウンドループ414内で供給原料408に添加することができる。いくつかの実施形態では、再利用される真空ボトム407は、複数の位置で添加することができる。
【0130】
サージ容器412からの調整された供給材料は、1つ以上のポンプ416によって加圧され、予熱器418を通り、沸騰床式反応器430の底部又はその付近に位置する入口ポート436を通って、加圧された水素ガス420と一緒に沸騰床式反応器430に供給される。沸騰床式反応器430内の重油材料426は、触媒粒子424として概略的に示されている分散金属硫化物触媒粒子を含有する。
【0131】
重油供給原料408としては、任意の所望の化石燃料供給原料、及び/又は限定されないが、重質原油、オイルサンドビチューメン、バレルのボトム、原油からの留分、常圧塔ボトム、真空塔ボトム、コールタール、液化石炭、及び他の残渣油留分のうちの1つ以上を含む化石燃料供給原料の留分を含み得る。いくつかの実施形態では、重油供給原料408としては、高沸点炭化水素(すなわち、公称343℃(650°F)以上、より具体的には公称約524℃(975°F)以上)のかなりの留分、及び/又はアスファルテンを挙げることができる。アスファルテンは、パラフィン側鎖を有する相当数の縮合芳香環及びナフテン環の結果である、比較的低い水素対炭素の比を含む複合炭化水素分子である(図1を参照されたい)。縮合芳香環及びナフテン環からなる薄膜は、硫黄、若しくは窒素などのヘテロ原子、及び/又はポリメチレンの架橋、チオ-エーテル結合、及びバナジウム錯体、及びニッケル錯体によって一緒に保持される。また、アスファルテン留分は、原油又は真空残渣油の残部よりも高い含有量の硫黄及び窒素を含有し、また、より高濃度の炭素で形成されている化合物(すなわち、コークス前駆体及び沈殿物を形成するもの)も含有する。
【0132】
沸騰床式反応器430は、不均質触媒444を含む膨張触媒ゾーン442を更に含む。下方不均質触媒不含ゾーン448は、膨張触媒ゾーン442の下に位置し、上方不均質触媒不含ゾーン450は、膨張触媒ゾーン442の上に位置する。分散金属硫化物触媒粒子424は、膨張触媒ゾーン442、不均質触媒不含ゾーン448、450、452を含む沸騰床式反応器430内の材料426全体に分散され、それによって、二重触媒系を含むようにアップグレードされる前に、沸騰床式反応器内のいずれかの構成触媒不含ゾーン内の反応のアップグレードを促進するように利用可能である。
【0133】
単なる水素化処理反応よりも水素化分解反応を促進するために、水素化処理反応器(複数可)は、好ましくは約750°F(399℃)~約860°F(460℃)の範囲、より好ましくは約780°F(416℃)~約830°F(443℃)の範囲の温度で操作され、好ましくは約1000psig(6.9MPa)~約3000psig(20.7MPa)の範囲、より好ましくは約1500psig(10.3MPa)~約2500psig(17.2MPa)の範囲の圧力で操作され、好ましくは0.05時間-1~約0.45時間-1の範囲、より好ましくは約0.1時間-1~約0.35時間-1の範囲の空間速度(LHSV)で操作される。水素化分解と水素化処理との間の差はまた、残渣油変換率の観点から表すこともできる(水素化分解はより高沸点炭化水素の低沸点炭化水素への実質的な変換を生じるが、水素化処理は生じない)。本明細書に開示される水素化処理システムは、約40%~約95%の範囲、好ましくは約55%~約90%の範囲の残渣油変換率を生じることができる。好ましい変換率の範囲は、典型的には、異なる供給原料間の処理困難性が異なるので、供給原料の種類に依存する。典型的には、変換率は、本明細書に開示されるようにアップグレードして二重触媒系を利用する前に沸騰床式反応器を操作することと比較して、少なくとも約5%高い、好ましくは少なくとも約10%高いであろう。
【0134】
沸騰床式反応器430内の材料426は、沸騰ポンプ454に接続された再利用チャネル452によって、上方不均質触媒不含ゾーン450から下方不均質触媒不含ゾーン448へと連続的に再循環される。再利用チャネル452の上部には、材料426が上方不均質触媒不含ゾーン450から引き込まれる漏斗形状の再利用カップ456がある。再利用材料426は、未使用の調整された供給原料411及び水素ガス420とブレンドされる。
【0135】
未使用の不均質触媒444は、触媒入口管458を通って沸騰床式反応器430に導入され、使用済み不均質触媒444は、触媒引き出し管460を通って引き出される。触媒引き出し管460は、完全に使用済みの触媒と、部分的に使用済みだが活性の触媒と、未使用の触媒とを区別することができないが、分散金属硫化物触媒粒子424の存在は、膨張触媒ゾーン442、再利用チャネル452、並びに下方及び上方不均質触媒不含ゾーン448、450内で追加の触媒活性を提供する。不均質触媒444の外側の炭化水素への水素の付加は、多くの場合不均質触媒の不活化に関与する沈殿物及びコークス前駆体の形成を最小限にする。
【0136】
沸騰床式反応器430は、上部又はその付近に、変換された材料440が引き出される出口ポート438を更に含む。変換された材料440は、高温分離器又は蒸留塔404に導入される。高温分離器又は蒸留塔404は、高温分離器404の上部から引き出される1つ以上の揮発性留分405を、高温分離器又は蒸留塔404の底部から引き出される残渣油留分407から分離する。残渣油留分407は、触媒粒子424として概略的に示されている残留金属硫化物触媒粒子を含有している。必要に応じて、残渣油留分407のうちの少なくとも一部分を沸騰床式反応器430に戻して再利用して、供給材料の一部を形成し、追加の金属硫化物触媒粒子を供給してもよい。あるいは、残渣油留分407は、別の沸騰床式反応器などの下流処理装置を使用して更に処理してもよい。その場合、分離器404は、段階間分離器であってもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、真空ボトムを再利用しながら、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作することにより、二重触媒系ではなく不均質触媒のみを用いるベースライン条件で沸騰床式反応器を操作することと比較して、同じか又は低減された装置のファウリングを生じ得る。例えば、真空ボトムを再利用しながら、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作するときの装置のファウリング速度は、ベースライン条件で沸騰床式反応器を運転するとき以下の頻度の洗浄のための熱交換器のシャットダウン及び/又は蒸留塔のシャットダウンを生じ得る。
【0138】
加えて、又は代替的に、真空ボトムを再利用しながら二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作するときの装置のファウリング速度は、ベースライン条件で沸騰床式反応器を操作するとき以下の頻度のフィルタ及びストレーナの交換又は洗浄を生じ得る。
【0139】
加えて、又は代替的に、真空ボトムを再利用しながら二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作するときの装置のファウリング速度は、最初に沸騰床式反応器を操作するとき以下の頻度の予備熱交換器への切り替えを生じ得る。
【0140】
加えて、又は代替的に、真空ボトムを再利用しながら二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作するときの装置のファウリング速度は、最初に沸騰床式反応器を操作するときよりも低減された、熱交換器、分離器、又は蒸留塔のうちの1つ以上から選択される装置の表面温度の低下速度を生じ得る。
【0141】
加えて、又は代替的に、真空ボトムを再利用しながら二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作するときの装置のファウリング速度は、最初に沸騰床式反応器を操作するときよりも低減された、炉管金属温度の上昇速度を生じ得る。
【0142】
加えて、又は代替的に、真空ボトムを再利用しながら二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器を操作するときの装置のファウリング速度は、最初に沸騰床式反応器を操作するときよりも低減された、計算された熱交換器のファウリング抵抗因子の増加速度を生じ得る。
【実施例
【0143】
V.実験研究及び結果
【0144】
2段階沸騰床式パイロットプラントを使用して、一連の実験を行った。これらの試験は、沸騰床式反応器に真空ボトムを再利用しないものと再利用するものの両方を含み、3つの異なるレベルの分散触媒を使用して行った。他の点では、ロシア輸出ブレンド(ウラル)タイプの同じ真空残留供給原料、同じ固体担持沸騰床触媒、及び同じプロセス操作パラメータ(圧力、空間速度など)を使用して、試験は同一であった。試験は、真空ボトムを再利用しながら、沸騰床式プロセスで有害なアスファルテンの再利用蓄積が、二重触媒系の使用によっていかに防止され得るかを実証した。
【0145】
図5に概略的に示されるように、直列に接続された2つの沸騰床式反応器512、512’を有するパイロットプラント500を使用して、不均質触媒自体の使用と、分散金属硫化物触媒粒子と組み合わせた不均質触媒で構成される二重触媒系(すなわち、分散二硫化モリブデン触媒粒子)の使用とを比較した。
【0146】
パイロットプラント500は、より具体的には、触媒前駆体(例えば、モリブデン2-エチルヘキサノエート、15重量%モリブデン)を、重油供給原料(総じて501として示される)とブレンドして、調整された供給原料を形成するための混合デバイス502を含む。適切なブレンドは、まず、触媒前駆体を炭化水素希釈剤と事前ブレンドして、希釈前駆体混合物を形成することによって達成される。以下の試験研究では、水素化処理された重質真空ガス油を炭化水素希釈剤として使用した。1重量部の混合物を99重量部の重油供給原料に添加して、調整された供給原料中の分散金属硫化物触媒の目標充填量を達成することができるように、希釈前駆体混合物を調製した。特定の例として、調整された供給原料中に30ppmの分散金属硫化物触媒の目標充填量(充填量は金属濃度に基づいて表す)で試験研究するために、希釈前駆体混合物を、3000ppmの金属濃度で調製した。
【0147】
分散金属硫化物触媒を使用しなかった比較試験研究では、1重量部のHVGO対99重量部の重油供給原料と同じ割合で、重油供給原料に炭化水素希釈剤(水素化処理された重質真空ガス油)を添加したことに留意されたい。これにより、二重触媒系を使用した試験と不均質(沸騰床)触媒のみを使用した試験との間で、背景的な組成が同じであることを確実にし、それにより試験結果を直接比較することを可能にする。
【0148】
実際の試験の重油供給原料(複数可)及び操作条件は、以下の実施例でより具体的に特定される。不均質触媒は、沸騰床式反応器で通常使用される市販の触媒であった。調整された供給原料を、サージ容器及びポンプアラウンドと同様のポンプ504によって混合容器502内に再循環させた。高精度容積移送式ポンプ506を使用して、再循環ループから調整された供給原料を引き出し、それを反応器圧力に加圧した。水素ガス508を加圧供給原料に供給し、得られた混合物を予熱器510に通した後、第1の沸騰床式反応器512に導入した。
【0149】
各沸騰床式反応器512、512’は、約3000mlの内部容積を有し、不均質触媒を反応器内に保持するためのメッシュワイヤガード514を含んでいた。各反応器512、512’はまた、不均質触媒床を膨張させるために反応器内に必要な流速を提供する、再利用ライン511、511’、及び再利用ポンプ513、513’も装備した。両方の反応器及びそれらのそれぞれの再利用ラインの全てが特定の反応器温度で維持され、それらの組み合わせた体積は、6,700mlであった。これは、システムの熱反応体積であり、液体空間速度(Liquid Hourly Space Velocity、LHSV)の計算の基礎として使用した。
【0150】
図5では、各沸騰床式反応器512、512’内の触媒の沈降高さは、下方の点線516によって概略的に示され、使用中の膨張触媒床は、上方の点線518によって概略的に示されている。更なる水素化処理のために、第1の反応器512からのアップグレードされた材料520を、補充水素508’と一緒に第2の反応器512’に移した。第2の反応器512’からの更なるアップグレードされた材料520’を高温分離器522に導入して、未変換の液体留分(又は分離器ボトム)526から低沸点炭化水素生成物及びガス524を分離した。ガス及び炭化水素生成物蒸気524を冷却し、低温分離器528に通して、それらをガス530と変換された炭化水素生成物とに分離し、分離器塔頂留出物532として回収した。
【0151】
別個の(すなわちオフライン)バッチ真空蒸留機器534を使用して、分離器ボトム526をバッチ式で処理した。点線は、バッチ式処理を示しているが、連続処理を使用することは、本開示の範囲内である。市販のユニットにおける真空蒸留は、連続的なオンライン蒸留塔で実施されるであろうが、バッチ蒸留機器534をパイロットプラント試験の目的で使用した。バッチ蒸留機器534は、各バッチが6時間以内に完了して6000gの分離器ボトム526を処理し、分離器塔頂留出物536及び真空ボトム生成物538を生成した。650°F未満の実際のポット温度に達するように975°Fの常圧で等価な端点を可能にして、バッチを約1.5mmHgの圧力で行い、それによって真空蒸留中の分解反応の開始を回避した。
【0152】
バッチ蒸留機器534を使用して、4つの真空蒸留バッチを毎日完了し、分析及び再利用の両方に必要な真空ボトム生成物を提供した。再利用を伴う条件では、真空ボトム生成物538を供給原料構成成分501とブレンドする混合デバイス502に再利用することによって、未使用の真空残留物供給速度の20体積%の真空ボトム生成物を再利用した。
実施例1
【0153】
実施例1で使用したプロセスは比較例であり、上述のパイロットプラントを、不均質な沸騰床式触媒のみで使用した。実施例1では、分散金属硫化物触媒を使用せず(二重触媒系が存在しないことを意味する)、かつ沸騰床式反応器に真空ボトムを再利用せずにプロセスを操作した。両方の反応器段階のプロセスを、0.3時間-1の液体空間速度、及び414℃の加重平均床温度(weighted average bed temperature、WABT)で操作した。LHSVは、熱反応体積当たり1時間毎に供給される未使用の真空残留供給原料の体積として定義される。変換率が538℃(1000°F)のカットポイントに基づいて定義したこれらの条件下で、約55%の真空残留物変換率が達成された。
【0154】
パイロットプラントの分離器ボトム生成物の試料に、ASTM D-1160法を使用する実験室蒸留を施して、538℃+真空残留生成物留分を得、Cアスファルテン含有量を分析した。Cアスファルテン含有量は、試料のヘプタン不溶物とトルエン不溶物の含有量との差として決定した。
【0155】
実施例1の結果は、図6に示される結果のチャートに含まれ、白抜きの正方形として示す。
実施例2
【0156】
実施例2で使用したプロセスは、オフラインバッチ真空蒸留機器を使用して真空ボトム生成物を生成し、次いで処理重油供給物の一部として沸騰床式反応器に再利用したことを除き、実施例1と同じ方式で実施した。バッチ真空蒸留を524℃(975°F)の終点で操作し、得られた真空ボトム生成物を、未使用の真空残留物供給原料の20体積%で沸騰床式プロセス重油供給物に添加した。LHSVの定義が未使用の真空残留供給物に基づくことに留意しながら、実施例1に示されるように、LHSVを0.3時間-1で維持した。
【0157】
実施例2のデータを2つの異なる反応器温度(411℃及び414℃)で収集し、53%及び58%の残留物変換率をそれぞれ生じた。実施例1に記載のように、538℃+真空残留生成物の試料を、実験室D-1160真空蒸留によって生成し、次いで、Cアスファルテン含有量について特徴評価した。結果は、図6に示される結果のチャートに示されており、線で結ばれた実線の正方形として示されている。
【0158】
図6に見られるように、等しい残渣油変換率では、真空ボトムを再利用する実施例2で用いたプロセスは、実施例1のプロセスよりも顕著に高いCアスファルテン含有量を生じ、再利用が使用されると有害なアスファルテンの顕著な再利用蓄積を示す。
実施例3
【0159】
実施例3で使用したプロセスは、分散金属硫化物触媒を重油供給物混合物に添加したことを除き、実施例2と同じ方式で操作した。上記のように、触媒前駆体を炭化水素希釈剤(重質真空ガス油)中に事前分散させ、次いで触媒前駆体と炭化水素希釈剤(希釈触媒前駆体)との事前混合ブレンドを真空残留供給物油に添加した。1重量%の未使用の供給物ミックスの添加速度が20重量ppm(モリブデンとして)の分散触媒濃度を生成するように、触媒前駆体/炭化水素希釈剤を調製した。
【0160】
両方の反応器段階のプロセスを、0.3時間-1の液体空間速度、及び414℃の加重平均床温度(WABT)で操作した。これにより、52%の残留物変換率を生じた。前述のように、538℃+真空残留生成物の試料を、実験室D-1160真空蒸留によって生成し、次いで、Cアスファルテン含有量について特徴評価した。
【0161】
試験結果を、図6のチャートに白抜きの三角形として示す。実施例1の結果(白抜きの正方形)に対して、分散金属硫化物触媒の効果に起因して、アスファルテン含有量が低減されている。実施例4からの追加データによって示されるように、アスファルテン含有量の低減は、単なる変換率低減の結果ではなかった。
実施例4
【0162】
実施例4で使用したプロセスは、実施例3の方法を使用して供給物混合物に分散金属硫化物触媒を添加したことを除いて、真空ボトムを再利用しながら実施例2と同じ方式で操作した。未使用の分散触媒の濃度は、未使用の供給物ミックス(真空残留物プラス分散触媒/炭化水素希釈剤ブレンド)の量に基づいて、20重量ppm(モリブデンとして)であった。真空ボトム再利用流はまた、重油供給物ミックスに添加された未使用の分散触媒に加えて、残留(使用済み)分散金属硫化物触媒を含有していた。
【0163】
実施例4のデータを2つの異なる沸騰床式反応器温度(414℃及び418℃)で収集し、52%及び58%の残留物変換率をそれぞれ生じた。上記のように、538℃+真空残留生成物留分を実験室蒸留によって生成し、Cアスファルテン含有量を測定した。結果は、線で結ばれた黒塗りの三角形として図6のチャートに示されており、アスファルテン濃度と変換率との間の統計的な直線相関を示しているが、全ての点は実施例2の結果よりも実質的に低い。
【0164】
不均質触媒と分散金属硫化物触媒とを含む二重触媒系を使用せずに得られた実施例1及び2の結果とは対照的に、20ppmの分散金属硫化物触媒を用い真空ボトムを再利用する実施例4の結果は、再利用しない実施例3の結果と重複している。これは、20ppmの分散触媒の使用がアスファルテンの再利用蓄積を防止することを意味する。真空ボトムの再利用と組み合わせて使用されると、分散触媒は、(1)ベースラインのアスファルテン含有量(再利用なし)を低減し(又は低減することができる)、かつ(2)真空ボトムを沸騰床式反応器に戻して再利用するとアスファルテンの再利用蓄積が防止される、という二重の利点を提供する。
実施例5
【0165】
実施例5で使用したプロセスは、分散金属硫化物触媒濃度の濃度を35重量ppm(モリブデンとして)に増加したことを除き、実施例3と同じ方式で操作した。プロセスを、両方の反応器段階において415℃の平均沸騰床温度で操作し、54%の残留物変換率を生じた。
【0166】
実験室で生成された真空残留生成物留分の得られたCアスファルテン含有量を、図6のチャートに白抜きの菱形として示す。35ppmの分散金属硫化物触媒での実施例5の結果は、20ppmでの実施例3の結果と比較して、アスファルテン含有量の更なる低減及びより高い変換率を示した。
実施例6
【0167】
実施例6で使用したプロセスは、分散金属硫化物触媒濃度を35重量ppm(モリブデンとして)に増加したことを除き、実施例4と同じ方式で操作した。プロセスを、415℃、418℃、420℃、及び425℃の平均沸騰床温度で操作し、55%、59%、62%、及び66%の残留物変換率をそれぞれ生じた。
【0168】
対応する実験室で生成された真空残留生成物留分の得られたCアスファルテン含有量を、最も近接する線で結んだ黒塗りの菱形として図6のチャートに示す。実施例3及び4の結果と同様に、実施例6の結果は実施例5のものと重複しており、分散金属硫化物触媒が、真空ボトムを再利用せずにアスファルテンのバックグラウンドレベルを低減することに加えて、アスファルテンの再利用蓄積を防止したことを示している。
実施例7
【0169】
図7、及び図3Bに示されるプロセスによって例示されるチャートを参照すると、真空ボトムを再利用しながら、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器は、白抜きの正方形の右側に延びる実線の水平な矢印によって示されるように、アスファルテンの再利用蓄積を伴わずに、より高い変換率で操作することができる。これは、真空ボトムの再利用することにより、等しい変換率でのアスファルテン濃度が増加された、白抜きの正方形の上に延びる垂直に折れた矢印とは対照的である。
【0170】
分散金属硫化物触媒を添加して二重触媒系を作製することにより、等量のアスファルテン濃度を維持しながら残渣油変換率を増加させることを可能にし、(1)変換された生成物の生成速度を増加しながら、(2)プロセス又は装置のファウリング増加のリスクの回避又は低減、(3)ボトム生成物の品質の維持を生じる。
【0171】
この実施形態は、ベースラインプロセスのファウリングが管理可能であり、変換された生成物の生成速度の増加に対して経済的な利益が最も好ましいときに好ましい。
実施例8
【0172】
図8、及び図3Cに示されるプロセスによって例示されるチャートを参照すると、真空ボトムを再利用しながら、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器は、白抜きの正方形の下に延びる実線の垂直な矢印によって示されるように、同様の変換率で、実質的に低減されたアスファルテン濃度で操作することができる。これは、真空ボトムの再利用することにより、等しい変換率でのアスファルテン濃度が増加された、白抜きの正方形の上に延びる垂直に折れた矢印とは対照的である。
【0173】
分散金属硫化物触媒を添加して二重触媒系を作製することにより、アスファルテン濃度を低減しながら残渣油変換率を維持することを可能にし、(1)変換された生成物の生成速度を同じに維持しながら、(2)プロセス又は装置のファウリングの低減、(3)ボトム生成物の品質の改善を生じる。
【0174】
この実施形態は、ファウリングを低減し、かつ/あるいはボトム生成物の品質を改善することによって、経済的な利益が最大化されるように、ベースラインプロセスのファウリング及び/又はボトム生成物の品質が制限されるときに好ましい。
実施例9
【0175】
図9、及び図3Dに示されるプロセスによって例示されるチャートを参照すると、真空ボトムを再利用しながら、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器は、白抜きの正方形の右及び下に斜めに延びる実線の垂直な矢印によって示されるように、より高い変換率で、低減されたアスファルテン濃度で操作することができる。これは、真空ボトムの再利用することにより、等しい変換率でのアスファルテン濃度が増加された、白抜きの正方形の上に延びる垂直に折れた矢印とは対照的である。
【0176】
分散金属硫化物触媒を添加して二重触媒系を作製することにより、残渣油変換率を増加させながらアスファルテン濃度を低減させることを可能にし、(1)実施例7よりも小さい範囲であるが、変換された生成物の生成速度を増加させながら、(2)プロセス又は装置のファウリングの低減、(3)実施例8よりも少ない程度ではあるが、ボトム生成物の品質の改善を生じる。
【0177】
この実施形態は、プロセスの全体的な経済的性能を最適化する方式で利益の均衡をとることを可能にする。この実施例の説明は、生成率の改善が、プロセスのファウリングの低減及び/又はボトム生成物の品質の改善よりも比較的重んじられる場合を示している。
実施例10
【0178】
図10、及び図3Dに示されるプロセスによって例示されるチャートを参照すると、真空ボトムを再利用しながら、二重触媒系を使用するアップグレードされた沸騰床式反応器は、白抜きの正方形の右及び下に斜めに延びる実線の垂直な矢印によって示されるように、より高い変換率で、低減されたアスファルテン濃度で操作することができる。これは、真空ボトムの再利用することにより、等しい変換率でのアスファルテン濃度が増加された、白抜きの正方形の上に延びる垂直に折れた矢印とは対照的である。
【0179】
分散金属硫化物触媒を添加して二重触媒系を作製することにより、残渣油変換率を増加させ、アスファルテン濃度を低減させることを可能にし、(1)実施例7及び9よりも小さい範囲であるが、変換された生成物の生成速度を増加させながら、(2)プロセス又は装置のファウリングの低減、(3)実施例8よりも少ない程度ではあるが実施例9よりも大きい範囲で、ボトム生成物の品質の改善を生じる。
【0180】
実施例9と比較して、この実施形態は、プロセスのファウリングの低減及び/又はボトム生成物の品質改善が、変換された生成物の生成速度の増加よりも比較的経済性が重んじられる場合を示している。
【0181】
本発明は、その主旨又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。記載される実装形態は、全ての点で、例示としてのみ考慮され、制限するものではないと考慮されるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の記載ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内にある全ての変更は、本範囲内に包含されるものである。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
真空ボトムを再利用しながら、アスファルテンの再利用蓄積のない1つ以上の沸騰床式反応器を含む沸騰床式水素化処理システムをアップグレードする方法であって、
不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、重油を水素化処理することと、
前記沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作して、重油を水素化処理して、炭化水素生成物を生成することと、
前記炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、
残留金属硫化物触媒粒子を含有する前記真空ボトムのうちの少なくとも一部分を、前記沸騰床式水素化処理システムのアスファルテンの再利用蓄積のない前記アップグレードされた沸騰床式反応器に再利用することと、を含む、方法。
[態様2]
前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件よりも高い変換率で、前記真空ボトム中のアスファルテンの再利用蓄積を引き起こさずに操作することを含む、態様1に記載の方法。
[態様3]
より高い変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、装置のファウリングを増加させることなく、前記ベースライン条件と比較して、変換された生成物の生成速度を増加させる、態様2に記載の方法。
[態様4]
より高い変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件と比較して、ボトム生成物品質を低減することなく、前記変換された生成物の生成速度を増加させる、態様2又は3に記載の方法。
[態様5]
前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件と同様の変換率で、前記真空ボトム中の低減されたアスファルテン濃度で操作することを含む、態様1に記載の方法。
[態様6]
同様の変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件と比較して、装置のファウリングを減少させながら、前記変換された生成物の生成速度を維持する、態様5に記載の方法。
[態様7]
同様の変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件と比較して、ボトム生成物の品質を改善しながら、前記変換された生成物の生成速度を維持する、態様5又は6に記載の方法。
[態様8]
前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件よりも高い変換率で、前記真空ボトム中の低減されたアスファルテン濃度で操作することを含む、態様1に記載の方法。
[態様9]
より高い変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、装置のファウリングを減少させながら、前記ベースライン条件と比較して、前記変換された生成物の生成速度を増加させる、態様8に記載の方法。
[態様10]
より高い変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、ボトム生成物の品質を改善しながら、前記ベースライン条件と比較して、前記変換された生成物の生成速度を増加させる、態様8又は9に記載の方法。
[態様11]
前記真空ボトムが、前記アップグレードされた沸騰床式反応器に添加される未使用の重油の流量の体積パーセントとして、再利用される真空ボトムの流量に基づいて、約1%~約50%、又は約5%~約40%、又は約10%~約30%の再利用比で再利用される、態様1~10のいずれか一項に記載の方法。
[態様12]
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースラインと比較して同様か又はより高い温度で実施され、前記温度が、少なくとも2.5℃、少なくとも5℃、少なくとも7.5℃、又は少なくとも10℃など、上昇している、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
[態様13]
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースラインと比較して同様か又はより高い変換率で実施され、前記変換率が、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%、又は少なくとも15%など、増加されている、態様1~12のいずれか一項に記載の方法。
[態様14]
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースラインと比較して同様か又はより高いスループットで実施され、前記スループットが、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも10%、又は少なくとも20%など、増加されている、態様1~13のいずれか一項に記載の方法。
[態様15]
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件で重油を水素化処理するときと比較して、より高いアスファルテン濃度を有するなど、より低品質を有する重油を水素化処理することを含む、態様1~14のいずれか一項に記載の方法。
[態様16]
前記低品質の重油の前記アスファルテン濃度が、初期条件で操作するとき、前記重油の前記アスファルテン濃度よりも少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%高い、態様15に記載の方法。
[態様17]
前記アップグレードされた沸騰床式反応器が、前記ベースライン条件でのアスファルテン変換率と比較して、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%の増加された変換率でアスファルテンを水素化処理する、態様15又は16に記載の方法。
[態様18]
前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件で操作するときの装置のファウリング速度以下である、装置のファウリング速度を生じる、態様1~17のいずれか一項に記載の方法。
[態様19]
前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件で操作するときの装置のファウリング速度よりも低い、装置のファウリング速度を生じる、態様1~18のいずれか一項に記載の方法。
[態様20]
前記装置のファウリング速度が、
(i)必要とされる熱交換器洗浄の頻度、
(ii)予備熱交換器への切り替えの頻度、
(iii)フィルタ交換の頻度、
(iv)ストレーナの洗浄若しくは交換の頻度、
(v)熱交換器、分離器、若しくは蒸留塔から選択される装置内を含む、装置の表面温度の低下速度、
(vi)炉管の金属温度の上昇速度、
(vii)熱交換器及び炉の計算されたファウリング抵抗因子の増加速度、
(viii)熱交換器の差圧の上昇速度、
(ix)常圧蒸留塔及び/若しくは真空蒸留塔の洗浄頻度、又は
(x)定期的メンテナンスの頻度、のうちの少なくとも1つによって決定される、態様18又は19に記載の方法。
[態様21]
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件での前記装置のファウリング速度と比較して、前記装置のファウリング速度を少なくとも5%、25%、50%、又は75%低減する、態様18~20のいずれか一項に記載の方法。
[態様22]
前記重油が、重質原油、オイルサンドビチューメン、精製所プロセスからの残渣油、少なくとも343℃(650°F)の公称沸点を有する常圧塔ボトム、少なくとも524℃(975°F)の公称沸点を有する真空塔ボトム、高温分離器からの残渣油、残渣油ピッチ、溶媒抽出からの残渣油、又は真空残留物のうちの少なくとも1つを含む、態様1~21のいずれか一項に記載の方法。
[態様23]
前記分散金属硫化物触媒粒子が、1μm未満のサイズ、又は約500nm未満のサイズ、又は約250nm未満のサイズ、又は約100nm未満のサイズ、又は約50nm未満のサイズ、又は約25nm未満のサイズ、又は約10nm未満のサイズである、態様1~22のいずれか一項に記載の方法。
[態様24]
二重触媒系を使用する前記沸騰床式反応器をアップグレードして操作することが、触媒前駆体から前記重油内でその場で前記分散金属硫化物触媒粒子を形成することを含む、態様1~23のいずれか一項に記載の方法。
[態様25]
前記分散金属硫化物触媒粒子を前記重油内でその場で形成することが、前記触媒前駆体を希釈炭化水素と混合して希釈前駆体混合物を形成することと、前記希釈前駆体混合物を前記重油とブレンドして、調整された重油を形成することと、前記調整された重油を加熱して前記触媒前駆体を分解し、前記重油内でその場で前記分散金属硫化物触媒粒子を形成することと、を含む、態様24に記載の方法。
[態様26]
真空ボトムを再利用しながら、増加された変換率で、アスファルテンの再利用蓄積のない1つ以上の沸騰床式反応器を含む沸騰床式水素化処理システムをアップグレードする方法であって、
不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、重油を水素化処理することと、
前記沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作して重油を水素化処理して、前記ベースライン条件と比較して高い変換率で炭化水素生成物を生成することと、
前記炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、
残留金属硫化物触媒粒子を含有する前記真空ボトムのうちの少なくとも一部分を、前記真空ボトム中にアスファルテンの再利用蓄積のない前記アップグレードされた沸騰床式反応器に再利用することと、を含む、方法。
[態様27]
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作すると、変換率が、前記ベースライン条件と比較して、少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%、又は少なくとも15%増加される、態様26に記載の方法。
[態様28]
より高い変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、ベースライン条件と比較して、装置のファウリングを増加させることなく、前記変換された生成物の生成速度を増加させる、態様26又は27に記載の方法。
[態様29]
より高い変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、ベースライン条件と比較して、ボトム生成物品質を低減することなく、前記変換された生成物の生成速度を増加させる、態様26~28のいずれか一項に記載の方法。
[態様30]
真空ボトムを再利用しながら、同様の変換率で、低減されたアスファルテン濃度を有する1つ以上の沸騰床式反応器を含む沸騰床式水素化処理システムをアップグレードする方法であって、
不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、重油を水素化処理することと、
前記沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作して重油を水素化処理して、前記ベースライン条件と比較して同様の変換率で炭化水素生成物を生成することと、
前記炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、
残留金属硫化物触媒粒子を含有する前記真空ボトムのうちの少なくとも一部分を、前記真空ボトム中に低減されたアスファルテンを用いる前記アップグレードされた沸騰床式反応器に再利用することと、を含む、方法。
[態様31]
同様の変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件と比較して、装置及び/又はプロセスのファウリングを減少させながら、前記変換された生成物の生成速度を維持する、態様30に記載の方法。
[態様32]
同様の変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、ベースライン条件と比較して、ボトム生成物品質を改善しながら、前記変換された生成物の生成速度を維持する、態様30に記載の方法。
[態様33]
真空ボトムを再利用しながら、増加された変換率で、低減されたアスファルテン濃度を有する1つ以上の沸騰床式反応器を含む沸騰床式水素化処理システムをアップグレードする方法であって、
不均質触媒を使用する沸騰床式反応器を操作して、任意選択的に真空ボトム及びアスファルテンの再利用蓄積を再利用しながら、ベースライン条件で、重油を水素化処理することと、
前記沸騰床式反応器内に分散金属硫化物触媒粒子を添加又はその場で形成して、不均質触媒分散金属硫化物触媒粒子で構成される二重触媒系を含むアップグレードされた沸騰床式反応器を得ることと、
前記二重触媒系を使用する前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作して重油を水素化処理して、前記ベースライン条件と比較して高い変換率で炭化水素生成物を生成することと、
前記炭化水素生成物に真空蒸留を施し、残留金属硫化物触媒粒子を含有する真空ボトムから蒸留液を分離することと、
残留金属硫化物触媒粒子を含有する前記真空ボトムのうちの少なくとも一部分を、前記真空ボトム中に低減されたアスファルテンを用いる前記アップグレードされた沸騰床式反応器に再利用することと、を含む、方法。
[態様34]
より高い変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件と比較して、装置のファウリングを減少させながら、前記変換された生成物の生成速度を増加させる、態様33に記載の方法。
[態様35]
より高い変換率で前記アップグレードされた沸騰床式反応器を操作することが、前記ベースライン条件と比較して、ボトム生成物品質を改善しながら、前記変換された生成物の生成速度を増加させる、態様33又は34に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10