(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】不感帯が低減された飛行時間測定値を判定する距離検出システム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/526 20060101AFI20240301BHJP
G01S 15/10 20060101ALI20240301BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G01S7/526 M
G01S15/10
G10K11/178
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019213830
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-08-09
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399132320
【氏名又は名称】ティーイー・コネクティビティ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】トダ,ミノル
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-155569(JP,U)
【文献】特開平2-187682(JP,A)
【文献】特開平8-166440(JP,A)
【文献】特開2016-191614(JP,A)
【文献】特開昭61-288185(JP,A)
【文献】特開2002-365111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72-1/82
3/80-3/86
5/18-5/30
7/52-7/64
15/00-15/96
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離検出システム(150、300、500、600)であって、
前記距離検出システム(150、300、500、600)は、
- 駆動信号(162、324)を提供するように構成された信号発生器(151、312)と、
- 少なくとも1つの超音波素子(105、156、181、182、183、302、304、502、504、602、604)を有する超音波トランスデューサ(106、154、301、601)であって、前記駆動信号(162、324)に応答して音波パルス(160)を送信するように構成され、前記音波パルス(160)が界面(330)の方へ誘導され、反射された音波を検出するように構成された超音波トランスデューサ(106、154、301、601)と、
- 前記超音波トランスデューサからの検出信号(172)を受信するように構成された受信器(170、320)であって、前記検出信号が、前記超音波トランスデューサの反響を表す反響成分および前記界面から反射された音波を表す反射成分を含む、受信器(170、320)と、を備え、
前記受信器は、前記検出信号の前記反響成分に対して反転された駆動打消し信号(174)を受信するように構成され、
前記受信器は、前記検出信号の前記反響成分が前記駆動打消し信号によって低減された前記検出信号に基づいて飛行時間測定値を判定するように構成されているとともに、
前記超音波トランスデューサ(154、301、601)は、第1の超音波素子(156、181、182、183、302、502、602)を含み、
前記音波パルス(160)は第1のパルスであり、前記検出信号(172)は第1の検出信号であり、
前記距離検出システムは、第2の音波パルスを前記界面(330)の方へ誘導する第2の超音波素子(304、504、604)をさらに備える
とともに、
前記受信器は、前記第2の超音波素子から第2の検出信号を受信するように構成され、前記第2の検出信号は前記駆動打消し信号を含む、
距離検出システム(150、300、500、600)。
【請求項2】
前記駆動信号に基づいて反転駆動信号を生成するように構成された信号インバータ(152、314)をさらに備え、
前記駆動打消し信号は、前記反転駆動信号が与えられた抑制モジュール(164)によって生成される、
請求項1に記載の距離検出システム(150、300、500、600)。
【請求項3】
前記受信器(170、320)は、前記音波パルスが前記界面の方へ送信されるときに前記検出信号を受信し、前記音波パルスが送信されたときに受信した前記反射成分の前記飛行時間測定値を判定するように構成されている、
請求項1に記載の距離検出システム(150、300、500、600)。
【請求項4】
送信モードと受信モードとの間を切り換えるように構成されたスイッチング回路(316)をさらに備え、
前記検出信号は前記受信モード中に受信され、前記受信モードは不感帯なく生じる、
請求項1に記載の距離検出システム(150、300、500、600)。
【請求項5】
前記超音波トランスデューサ(301)において、
前記第2の音波パルスは、反転駆動信号を受信したことに応答して送信され
る、
請求項1に記載の距離検出システム(150、300)。
【請求項6】
前記超音波トランスデューサ(601)において、
前記第2の音波パルスは前記駆動信号に応答して送信され、
前記第1の超音波素子(602)および前記第2の超音波素子(604)は逆の極性を有
する、
請求項1に記載の距離検出システム(150、600)。
【請求項7】
前記超音波トランスデューサ(601)において、
前記信号発生器(151)は、前記第2の超音波素子(604)へ反転駆動信号を提供するように構成され、前記第1の超音波素子(602)および前記第2の超音波素子(604)は逆の極性を有
する、
請求項1に記載の距離検出システム(150、600)。
【請求項8】
距離検出システム(150、400)であって、
前記距離検出システム(150、400)は、
- 駆動信号(162)を提供するように構成された信号発生器(151、412)と、
- 少なくとも1つの超音波素子(105、156、402)を有する超音波トランスデューサ(106、401)であって、前記駆動信号(162)に応答して音波パルス(160)を送信するように構成され、前記音波パルス(160)が界面(330)の方へ誘導され、反射された音波を検出するように構成された超音波トランスデューサ(106、401)と、
- 前記超音波トランスデューサからの検出信号(172)を受信するように構成された受信器(170、420)であって、前記検出信号が、前記超音波トランスデューサの反響を表す反響成分および前記界面から反射された音波を表す反射成分を含む、受信器(170、420)と、を備え、
前記受信器(170、420)は、前記検出信号の前記反響成分に対して反転された駆動打消し信号(174)を受信するように構成され、
前記受信器(170、420)は、前記検出信号の前記反響成分が前記駆動打消し信号によって低減された前記検出信号に基づいて飛行時間測定値を判定するように構成されているとともに、
前記検出信号は第1の検出信号であり、
前記距離検出システム(150、400)は、
- 前記信号発生器(151、412)から反転駆動信号を受信するように構成されたダミー超音波素子(184、404)をさらに備え、
前記受信器は、前記ダミー超音波素子(184、404)から第2の検出信号を受信するように構成され、前記第2の検出信号は前記駆動打消し信号を含む、距離検出システム(150、400)。
【請求項9】
前記駆動打消し信号を提供するように構成された共振回路(704)をさらに備える、
請求項1に記載の距離検出システム(150、300、500、600)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの超音波素子の共振周波数が、100kHz~10MHzであり、前記音波パルス内のサイクル数が、少なくとも3サイクルを含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の距離検出システム(150、300、400、500、600)。
【請求項11】
- 駆動信号(162、324)を超音波トランスデューサ(106、154、301、601)へ提供して音波パルス(160)を界面(330)の方へ送信するステップと、
- 前記超音波トランスデューサから検出信号(172)を受信するステップであって、前記検出信号が、前記超音波トランスデューサの反響を表す反響成分および前記界面からの反射された音波を表す反射成分を含む、受信するステップと、
- 前記検出信号の前記反響成分に対して反転された駆動打消し信号(174)を受信するステップと、
- 前記反響成分が前記駆動打消し信号によって低減された前記検出信号に基づいて飛行時間測定値を判定するステップと、
を含む方法であり、
前記超音波トランスデューサは第1の超音波素子を含み、前記音波パルスは第1のパルスであり、前記検出信号(172)は第1の検出信号であり、
前記方法は、
- 反転駆動信号を第2の超音波素子へ提供して第2の音波パルスを前記界面の方へ誘導するステップと、
- 前記超音波トランスデューサから第2の検出信号を受信するステップとをさらに含み、前記第2の検出信号は前記駆動打消し信号(174)を含む、
方法。
【請求項12】
前記駆動信号を反転させて反転駆動信号を形成するステップをさらに含み、
前記駆動打消し信号は、前記反転駆動信号が与えられた抑制モジュール(164)によって生成される、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出信号を受信するステップは、前記音波パルスが前記界面の方へ送信されるときに前記反射成分を受信し、前記音波パルスが送信されたときに受信した前記反射成分の前記飛行時間測定値を判定することを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
- 送信モードと受信モードとの間を切り換えるステップをさらに含み、
前記検出信号は前記受信モード中に受信され、前記受信モードは不感帯なく生じる、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、一般に、トランスデューサを使用して界面とトランスデューサとの間の距離を判定する距離検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象と検出可能な境界との間の距離を検出するセンサを有する機械がますます多く設計されている。たとえば、車両は、近接センサを使用して車両の経路内に障害物が存在するかどうかを判定し、障害物が識別されたときは操作者に警告する。これらの近接センサはまた、衝突回避などにおいて車両を自動的に制御するために使用することもできる。1つの種類の近接センサは、超音波トランスデューサを含む。超音波トランスデューサは、指定の駆動信号に応答して音波を生成する。これらの音波は、断続的なパルスであっても連続送信であってもよい。これらの音波は、インピーダンスの不整合が存在する境界で反射される。たとえば、これらの音波は、気液界面、気固界面、または気液界面によって反射することができる。反射された音波は、超音波トランスデューサによって検出される。
これらの音波が超音波トランスデューサから出て戻ってくるまでの持続時間が、「飛行時間」(TOF)と呼ばれることがある。TOF値は、音波が進む距離、および超音波トランスデューサと境界との間の距離を計算するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
超音波トランスデューサは、1つまたは複数の超音波素子(たとえば、圧電素子)を使用して、音波(本明細書で「パルス波」と呼ぶ)を送信し、反射された音波(本明細書で「反射波」または「エコー」と呼ぶ)を検出することができる。いくつかの超音波トランスデューサでは、同じ超音波素子が異なるモードで動作して、パルス波を送信し、かつ反射波を検出(または受信)することができる。上記の超音波トランスデューサは、特定の距離範囲を正確に推定することができるが、より短い距離の検出は難しいことがある。たとえば、パルス波が超音波素子から15ミリメートル未満しか離れていない界面によって反射されたときの距離計算は困難なことがある。
【0004】
より具体的には、超音波素子が駆動信号に応答しているときは、駆動信号が終了した後でも、距離の計算は困難なことがある。駆動信号は、トランスデューサを励起する電気信号である。駆動信号に応答しているとき、超音波素子によって引き起こされる振動が、音波を生成する。駆動信号が終了した後でも、超音波素子は引き続き振動し、それによって音波を引き起こし、それらの音波がセンサによって検出される。この現象を「リンギング」または「リングダウン」と呼ぶ。したがって、反射波が超音波トランスデューサに到達する前に、超音波素子自体からの振動が検出されることがある。振動によって引き起こされる信号は、何らかの反射波を受信したかどうかを判定することを困難にする。
【0005】
この問題に対処するために、超音波トランスデューサは、典型的に、距離を計算する際に検出可能な音波に依拠しない時間窓(「不感帯」と呼ぶ)を有する。たとえば、超音波トランスデューサは、駆動信号が終了してから5.0ミリ秒後たってはじめて、検出された音波を考慮することができる。この窓を低減させるには、広範なトランスデューサ/回路設計の変更および相当な追加コストが必要になる可能性がある。リングダウン期間を低減させることができた場合でも、駆動信号中に検出可能な音波が考慮されない時間が依然として存在する。したがって、超音波素子から特定の短い距離にある境界は検出されないことがある。
【0006】
解決すべき問題は、超音波素子が駆動信号に応答したとき、または超音波素子のリングダウン中に、反射された音波を検出することが可能な距離検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は、駆動信号を提供するように構成された信号発生器と、少なくとも1つの超音波素子を有する超音波トランスデューサとを含む距離検出システムによって解決される。超音波トランスデューサは、駆動信号に応答して音波パルスを送信するように構成される。パルスは、界面の方へ誘導される。超音波トランスデューサは、反射された音波を検出するように構成される。距離検出システムはまた、超音波トランスデューサからの検出信号を受信するように構成された受信器を含む。検出信号は、超音波トランスデューサの反響を表す反響成分および界面から反射された音波を表す反射成分を含む。受信器は、検出信号の反響成分に対して反転された駆動打消し信号を受信するように構成され、受信器は、検出信号の反響成分が駆動打消し信号によって低減された検出信号に基づいて飛行時間測定値を判定するように構成されている。
【0008】
本発明について、添付の図面を参照して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態によって形成された距離検出システムを示す図である。
【
図2】
図1の距離検出システムに類似または同一とすることができる一実施形態によって形成された距離検出システムの概略図である。
【
図3】一実施形態によって形成された方法を示す流れ図である。
【
図4】反転駆動信号で動作する第1の超音波素子および第2の超音波素子を有する一実施形態によって形成された距離検出システムの概略図である。
【
図5】駆動成分および反響成分を含む検出信号を示すグラフである。
【
図6】一実施形態による駆動成分および反響成分を抑制した後の検出信号を示すグラフである。
【
図7】液面が9ミリメートル(mm)であるときの抑制された駆動成分および反射成分を有する検出信号を示すグラフである。
【
図8】液面が2.5mmであるときの抑制された駆動成分および反射成分を有する検出信号を示すグラフである。
【
図9】2.4~3.6MHzの周波数範囲内の非反転駆動信号、反転駆動信号によって低減された非反転駆動信号、および反射成分に対するピークトゥピーク電圧を示すグラフである。
【
図10】反転駆動信号で動作する超音波素子およびダミー超音波素子を有する一実施形態によって形成された距離検出システムの概略図である。
【
図11】反転駆動信号で動作する変位された第1の超音波素子および第2の超音波素子を有する一実施形態によって形成された距離検出システムの概略図である。
【
図12】逆の極性を有し、反転駆動信号で動作する第1の超音波素子および第2の超音波素子を有する一実施形態によって形成された距離検出システムの概略図である。
【
図13】超音波素子および反転駆動信号を提供する等価共振回路を有する一実施形態によって形成された距離検出システムの概略図である。
【
図14A】
図13の距離検出システムとともに使用することができる等価共振回路の回路図である。
【
図14B】
図13の距離検出システムとともに使用することができる等価共振回路の回路図である。
【
図15】1つまたは複数の実施形態によって使用することができる圧電性超音波素子の概略断面図である。
【
図16】1つまたは複数の実施形態によって使用することができる容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)素子の概略断面図である。
【
図17】1つまたは複数の実施形態によって使用することができる圧電性微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、距離検出システム、超音波センサ、およびそれらの動作方法を含む。超音波センサは、気液界面または気固界面などの界面の方へ音波を誘導するトランスデューサを含む。これらの音波は、反転されてトランスデューサの方へ戻ってくる。トランスデューサは、反射された音波を検出して電気信号を電子回路へ通信し、電子回路はこの電気信号を処理する。電子回路は、この電気信号を使用して、飛行時間(TOF)測定値などの有用な情報を判定する。TOF測定値は、音波パルスが送信されたときと、反射された音波が検出されたときとの間の時間間隔を表す。TOF測定値を使用することで、超音波トランスデューサと界面との間の距離などの指定のパラメータを判定することができる。
本明細書に記載の実施形態は、1つの対象と別の対象との間(たとえば、車両と障害物との間)の距離を判定するために使用することができ、あるいは流体レベル(たとえば、タンク内)の監視および/または液体の種類もしくは品質の識別のために使用することができる。
【0011】
図1は、一実施形態によって形成された距離検出システム100を示す。距離検出システム100は、制御モジュール102と、超音波センサ104と、超音波センサ104および制御モジュール102を通信結合する通信ケーブル110とを含む。したがって、図示の実施形態では、センサ104およびモジュール102は互いに有線接続されている。しかし他の実施形態では、センサ104およびモジュール102は、無線規格(たとえば、Bluetooth(登録商標))を介して通信結合することもできる。
【0012】
センサ104は、少なくとも1つの超音波素子105を有する超音波トランスデューサ106を含む。いくつかの実施形態では、超音波素子は別個の結晶である。複数の超音波素子を有する実施形態は、指定のアレイトランスデューサを形成するように構成することができる。たとえば、これらの超音波素子は、方形の形状とすることができ、指定のアレイ(たとえば、線形または1次元のアレイ)を形成するように位置することができる。超音波素子は、正方形の形状とすることができ、指定のアレイ(たとえば、2次元のアレイ)を形成するように位置することができる。超音波素子は、環状のアレイを形成するように同心円状に位置決めされたリングの形状とすることができる。任意選択で、実施形態は、同時に送信および受信することができる。
たとえば、アレイの1つまたは複数の超音波素子が送信器として動作しながら、アレイの1つまたは複数の超音波素子が受信器として動作することができる。
【0013】
上記に対する別法または追加としてとして、単一の結晶を、個別の区画を含むように製造(たとえば、ダイスアンドフィル、微細加工)することができる。これらの個別の区画は、個別の超音波素子として機能することができる。したがって、単一の結晶を、アレイトランスデューサを提供するように製造することができる。例には、1次元のアレイ、2次元のアレイ、および環状のアレイを含むことができる。任意選択で、実施形態は、同時に送信および受信することができる。たとえば、アレイの1つまたは複数の超音波素子が送信器として動作しながら、アレイの1つまたは複数の超音波素子が受信器として動作することができる。
【0014】
制御モジュール102は、駆動信号をセンサ104へ提供するように構成される。たとえば、制御モジュール102は、電気駆動信号を生成する回路を含むことができ、この電気駆動信号が超音波トランスデューサ106へ通信される。駆動信号は、超音波素子105を振動させ、音波パルスを生成させる。駆動信号は、様々な形態および周波数範囲を有することができる。たとえば、駆動信号は、正弦波または正方形のパルス(たとえば、ユニポーラ、マルチレベルユニポーラ、バイポーラ)を含むことができる。この駆動信号を反転させて、本明細書に記載する駆動打消し信号を作成することができる。
【0015】
音波は、界面(たとえば、液体と気体との間の境界)によって反射され、これらの音波の一部分が、反射されて超音波素子105の方へ戻ってくる。反射された音波は、超音波素子105を振動させ、それによって電気信号を生成し、この電気信号が制御モジュール102へ通信される。駆動信号が印加されると、超音波素子105の振動は電気信号に寄与し、制御モジュール102へ通信される。駆動信号が終了した後も、超音波素子105は引き続き振動することがあり、これらの振動もまた、制御モジュール102へ通信される電気信号に寄与する。
【0016】
したがって、制御モジュール102によって受信される検出信号は、駆動成分、反響成分、および反射成分を含む。駆動成分は主に、超音波素子105が駆動信号によって作動されたときに超音波素子105の振動によって引き起こされる。反響成分は主に、駆動信号が超音波素子105を作動することを止めた後に超音波素子105の振動によって引き起こされる。
【0017】
また、センサ104は、取付け具108およびセンサハウジング116を含むことができることが示されている。取付け具108は、トランスデューサ106を位置決めする容器または他の装置(図示せず)に結合するように構成される。センサハウジング116は、トランスデューサ106に結合してトランスデューサ106を支持する。図示の実施形態では、センサハウジング116は細長く、最終用途に基づいて任意の所望の長さを有することができる。通信ケーブル110は、反対側の端部にコネクタ118を有することができ、コネクタ118は、制御モジュール102の嵌合コネクタ119に機械的および電気的に結合するように構成される。
【0018】
制御モジュール102は、検出信号を処理して反響成分をオフセットまたは抑制し、偽の反射エコーを除去する電子回路112を含む。いくつかの応用例では、検出信号は、音波が通過する1つ(または複数)の媒体の温度の影響を受けることがある。この目的で、制御モジュール102および/または超音波センサ104は、周囲環境(たとえば、液体および/または空気)の温度を判定する1つまたは複数の温度センサを含むことができる。電子回路112は、TOF測定値を判定するときに温度を補償することができる。
【0019】
図示の実施形態では、電子回路112は、アナログフロントエンド(AFE)モジュール114およびプロセッサ113を含む。AFEモジュール114は、超音波トランスデューサ106を駆動し、検出信号を、TOF測定の開始(START)および終了(STOP)を表すデジタル信号に変換するように構成される。AFEモジュール114またはプロセッサ113は、検出信号を処理して反響成分を抑制することができる。プロセッサ113は、AFEモジュール114を制御し、スタート信号とストップ信号との間の時間差を測定し、TOF測定値を処理して液面値にすることができる。次いで、制御モジュール102のディスプレイ120または別の形態の通信(たとえば、スマートフォンの応用例)を介して、この液面値をユーザへ通信することができる。
【0020】
図1で、電子回路112は、別個のハードウェア構成要素(AFEモジュール113およびプロセッサ114)として示されている。しかし、電子回路112は、単一のデバイスに一体化することができ、または3つ以上の電子構成要素を有することができることを理解されたい。さらに、AFEモジュール113またはプロセッサ114によって実行される本明細書に記載の機能および/または動作は、他の構成要素または追加の電子構成要素によって共用および/または実行することもできる。
【0021】
図1には示されていないが、電子回路112は、とりわけ、駆動信号を生成する信号発生器、駆動信号を反転させる反転回路、加算回路、および受信器を含むことができる。いくつかの実施形態では、電子回路112は、超音波トランスデューサ106の動作モードを変化させるスイッチング回路、整合回路、および共振回路を含むことができる。
【0022】
実施形態は、距離を計算する際に検出可能な音波に依拠しない期間(「不感帯」と呼ぶ)を低減させることができる。この期間は事実上、確実な測定を行うことができない超音波トランスデューサからの距離であると解釈される。例として、実施形態は、25mm~2.5mmの液面の応用例において、この不感帯を低減させることができる。しかし、不感帯のサイズは、様々な超音波デバイスの性能に影響を与えることがある。したがって、実施形態は、様々な超音波デバイスおよび超音波の応用例を改善することができる。
【0023】
逆に、実施形態は、より大きい振幅および/またはより大きいサイクル数で超音波トランスデューサを駆動することを可能にし、それによってより大きいエネルギー伝達を生成することができる。いくつかの応用例では、より大きいエネルギー伝達は侵入深さを改善することができる。たとえば、実施形態は、軍用空中距離センサに適したものとすることができる。
【0024】
距離検出システム(たとえば、液面監視システム)に加えて、実施形態は、感光性物質の光学密度を測定するデンシトメトリーシステムで利用することができることが企図される。実施形態は、設置面積のより小さいデンシトメトリーシステムを可能にすることができる。
【0025】
図2は、距離検出システム100(
図1)に類似または同一とすることができる一実施形態によって形成された距離検出システム150の概略図である。たとえば、距離検出システム150は、超音波素子156を有する超音波トランスデューサ154を含む。距離検出システム150はまた、信号発生器151および信号反転回路152を含み、信号反転回路152は、信号反転器(信号インバータ)と呼ぶこともできる。信号発生器151は、超音波素子156を誘発するための駆動信号を提供するように構成される。超音波素子156は、駆動信号に応答して音波パルス160を生成する。
【0026】
図2に示すように、駆動信号162は、信号反転回路152を介して送信される。信号反転回路152は、反響成分を事実上低減させまたは打ち消すために使用することができる反転駆動信号を提供するように構成される。たとえば、信号反転回路152は、駆動信号を反転させ、反転駆動信号が非反転駆動信号に対して180°位相シフトされるように構成することができる。いくつかの実施形態では、信号反転回路152は、駆動信号を事実上反転させる駆動トランスフォーマを含むことができる。信号反転回路152は、非反転駆動信号162を超音波素子156に提供し、反転駆動信号163を抑制モジュール164に提供するように構成される。他の実施形態では、信号反転回路152は、非反転駆動信号162を抑制モジュール164に提供し、反転駆動信号163を超音波素子156に提供する。
特定の実施形態では、信号反転回路152は、センタータップインダクタを含むことができる。そのような実施形態は、より低い周波数(たとえば、1メガヘルツ未満)に特に適したものとすることができる。
【0027】
上述したように、超音波素子156は、反転されていない検出信号172を受信器170へ通信する。検出信号172は、駆動成分、反響成分、および反射成分を含む。
【0028】
抑制モジュール164は、駆動打消し信号174を生成し、駆動打消し信号を受信器170へ通信するように構成された素子である。本明細書に記載するように、「抑制モジュール」という用語は、共振回路、別の能動超音波素子、またはダミー超音波素子を含むことができる。たとえば、抑制モジュール164は、反転駆動信号163によって駆動される超音波素子181とすることができる。抑制モジュール164は、反転駆動信号163によって駆動される超音波素子182とすることができ、超音波素子182は、超音波素子156の極性とは逆の極性を有する。抑制モジュール164は、非反転駆動信号162によって駆動される超音波素子182とすることができ、超音波素子182は、超音波素子156の極性とは逆の極性を有する。
抑制モジュール164は、非反転駆動信号163によって駆動される超音波素子183とすることができ、超音波素子183は、超音波素子156の極性と同じ極性を有するが、超音波素子183は、超音波素子156および超音波素子183が平面にならないようにずらされる。したがって、超音波素子183のパルスは、超音波素子156からのパルス160に対して位相がずれている。抑制モジュール164は、非反転駆動信号163によって駆動されるダミー超音波素子184とすることができるが、ダミー超音波素子184は、超音波素子184からのパルスを事実上阻止する吸収体186を有する。いくつかの実施形態では、抑制モジュール164は、駆動打消し信号を提供するように構成された共振回路184とすることができる。共振回路184は、駆動信号または反転駆動信号に応答することができる。
【0029】
任意選択で、抑制モジュールの1つまたは複数は、反転駆動信号163に応答して、駆動打消し信号174を受信器170へ提供することができる。
【0030】
駆動打消し信号は、検出信号の駆動成分および/または反響成分をオフセットまたは抑制するために使用される。駆動成分および/または反響成分が抑制されたとき、反射成分をより容易に識別することができる。特定の実施形態では、反射成分は、リングダウン中に識別することができ、または超音波素子が駆動信号に応答したときに識別することができる。
【0031】
図2で、駆動打消し信号は、反転検出信号と呼ばれる。他の実施形態では、駆動打消し信号は、共振回路によって生成される合成信号である。したがって、「駆動打消し信号」という用語は、反転検出信号および共振回路によって生成される合成信号の両方を含む。
【0032】
受信器170は、超音波トランスデューサ154、より具体的には超音波素子156からの検出信号172を受信するように構成される。検出信号は、超音波素子156の反響を表す反響成分および界面から反射された音波を表す反射成分を含む。受信器170は、検出信号の反響成分に対して反転された駆動打消し信号174を受信するように構成される。受信器170は、反響成分が駆動打消し信号174によってオフセットされた検出信号172に基づいてTOF測定値を判定するように構成される。
【0033】
図3は、一実施形態によって形成された方法200を示す流れ図である。方法200について、距離検出システム150(
図2)を参照して説明する。方法200はまた、距離検出システム400(
図10)、500(
図11)、600(
図12)、および700(
図13)などの1つまたは複数の他の実施形態によって実行することができる。方法200は、202で、超音波素子156を作動または励起するように構成された駆動信号162を生成するステップを含み、その結果、音波パルス160が超音波素子156から放出され、界面(
図2には図示せず)の方へ誘導される。駆動信号162は、電気信号の形態とすることができる。音波パルスは、一連の音波(または音波サイクル)を含むことができる。
【0034】
音波パルス160は、指定の周波数を有する。たとえば、指定の周波数は、500Hz~20MHzとすることができる。特定の実施形態では、指定の周波数は、100kHz~10MHzである。パルス160はまた、サイクル数を有する。たとえば、パルス160は、3サイクル以上(たとえば、10サイクル以上)を含むことができる。204で、駆動信号162が反転され、したがって反転駆動信号163は、駆動信号162に対して位相が約180°ずれている。205で、駆動信号162が超音波素子156へ通信され、207で、反転駆動信号163が抑制モジュール164へ通信される。
【0035】
206で、パルス160が超音波素子156から送信される。超音波素子156で検出信号172が生成され、受信器170へ通信される。210で、検出信号は受信器170によって受信される。検出信号は、駆動成分、反響成分、および反射成分を含むことができる。界面が不感帯の外側にある実施形態の場合、反射成分は反響成分および駆動成分とは別個である。しかし、界面が超音波素子156に十分に近い場合、反射成分は反響成分、および場合により駆動成分と重複することがある。
【0036】
いくつかの実施形態では、駆動信号162が超音波素子156へ提供されるとき、反転駆動信号163もまた抑制モジュール164へ提供される。212で、反転駆動信号163は抑制モジュール164を作動させる。214で、駆動打消し信号174が抑制モジュール164によって生成される。駆動打消し信号174は、反転駆動信号163の関数である。216で、駆動打消し信号174が受信器170によって受信される。
【0037】
駆動打消し信号174は、検出信号172に対して位相がほぼずれている。実際には、界面、超音波素子、および重力に対する液面の状態および特徴が理想的でない可能性が高いため、駆動打消し信号174の位相が完全にずれる見込みはない。したがって、駆動打消し信号174は、検出信号172に対して実質上位相がずれている。218で、駆動打消し信号174を使用して、駆動成分および反響成分を低減させることができる。
【0038】
220で、TOF測定値を判定することができる。TOF測定値は、指定の開始点と指定の停止点との間の差である。開始点は、超音波トランスデューサからのパルス送信に相関し、停止点は、超音波トランスデューサによるエコー検出に相関する。TOF測定値は、指定のパラメータを判定するために使用することができる。たとえば、TOF測定値は、流体の識別情報、濃度、または距離(たとえば、流体レベル)を示すことができる。222で、TOF測定値および指定の媒体を通る既知の音速を使用して、距離を判定することができる。いくつかの実施形態では、パラメータは、プログラムされたアルゴリズムを使用して計算される。他の実施形態では、パラメータは、たとえば、TOF測定値がパラメータの値に相関するルックアップテーブル(LUT)を使用して識別することができる。
【0039】
戻り矢印224によって示すように、方法200は、連続して、指定の間隔で、または同様の形で繰り返すことができる。たとえば、液面を10秒ごとに複数回計算することができる。
【0040】
図4および
図10~
図14は、異なる距離検出システムを示す。いずれの場合も、実施形態は、駆動打消し信号を利用して不感帯のサイズを低減させることができる。
図4は、一実施形態によって形成された距離検出システム300の概略図である。距離検出システム300は、異なる駆動信号で動作する第1の超音波素子302および第2の超音波素子304を有する超音波トランスデューサ301を含む(超音波トランスデューサの第1の超音波素子302および第2の超音波素子304)。距離検出システム300は、距離検出システム100(
図1)の素子に類似または同一の素子を含む。たとえば、距離検出システム300は、信号発生器312および信号インバータ314を含む。距離検出システム300はまた、スイッチング回路316、整合回路318、および受信器320を含む。
【0041】
図示のように、駆動信号324が信号インバータ314へ通信される。駆動信号324を反転させて反転駆動信号326を提供した後、駆動信号324および反転駆動信号326が、それぞれの超音波素子302、304へ通信される。
【0042】
超音波素子302、304はそれぞれ、容器315の材料層によって覆われた面を有する。超音波素子302、304は、界面330の方へパルスを放出する。パルスの音波は、反射されて超音波素子302、304の方へ戻り、超音波素子302、304はこの反射成分を検出する。特に、それぞれの超音波素子302、304によって検出される反射成分は、実質上位相がずれている。次いで検出信号および駆動打消し信号は、整合回路へ通信され、次いで受信器320へ通信される。
【0043】
概して、2つの超音波素子が逆の位相で駆動されるとき、それぞれの超音波素子によって検出される信号は打ち消されると考えられる。しかし、パルスの波長λが小さく、2つのトランスデューサの離隔距離が波長λより十分に大きいとき、打消しは容器の角度設定が非常に正確でなければ行うことができない。2つの超音波素子間の距離は小さく、臨界角度は3MHzで0.55度であった。この条件は満足させるのが非常に困難であり、受信信号は打ち消されない。液体表面がわずかでも不安定であり、容器の設定が理想的でない場合、打消しはなかったかのようになる。
【0044】
図5は、駆動成分322および反響成分324を含む検出信号(mV/μs)を示すグラフである。図示のように、駆動成分322は1マイクロ秒で始まり、5マイクロ秒まで継続する。駆動信号が終了した後、超音波素子は引き続き振動し、それによって検出可能な信号を生成する。この検出可能な信号は徐々に減少し、反響成分324を形成する。
図6は、一実施形態によって駆動成分322および反響成分324を抑制した後の検出信号を示すグラフである。図示のように、駆動成分および反響成分は大幅に低減されている。
【0045】
図7および
図8は、液体が比較的高い(
図7に9mmで示す)ときおよび液体が比較的低い(2.5mm)ときに獲得することができる検出信号を示す。
図7および
図8のパルスに対するサイクル数は21サイクルであり、動作周波数は3MHzである。
図8に示すように、実施形態は、駆動信号が超音波素子に印加されたときおよびリングダウン中に反射成分を検出することが可能である。
【0046】
図9は、非反転駆動信号、反転駆動信号と組み合わせた非反転駆動信号、および反射成分に対する周波数範囲(2.4~3.6MHz)におけるピークトゥピーク電圧(mVpp)を示すグラフである。2.9MHz~3.4MHzの周波数の場合、反射成分に対するmVppは、反転駆動信号によって低減された非反転駆動信号より大きい。
【0047】
図10は、一実施形態によって形成された距離検出システム400の概略図である。距離検出システム400は、距離検出システム100(
図1)の素子に類似または同一の素子を含む。たとえば、距離検出システム400は、信号発生器412および信号インバータ414を含む。距離検出システム400はまた、スイッチング回路416、整合回路418、および受信器420を含む。
【0048】
距離検出システム400はまた、超音波素子402およびダミー超音波素子404を有する超音波トランスデューサ401を含む。これら2つを区別するために、超音波素子402(
図4)を「能動超音波素子」と呼ぶことができ、またはダミー超音波素子404を「ダミー素子」と呼ぶことができる。超音波素子304とは異なり、ダミー超音波素子404は、反射成分の検出および通信を行わない。代わりに、ダミー超音波素子404は、駆動信号によって引き起こされる振動および後の反響に応答して、電気信号を生成する。
【0049】
図示の実施形態では、超音波素子402およびダミー超音波素子404は、位相がずれた駆動信号によって駆動される。超音波素子402は、音波パルスを送信し、音波パルスから反射成分を検出するように構成される。しかしダミー超音波素子404は、パルスを媒体内へ送信できないように位置決めされ、したがって反射成分をダミー超音波素子404によって検出することができない。たとえば、超音波トランスデューサ401は、ダミー超音波素子404によって生成される音波を吸収する吸収体415を含むことができる。それにもかかわらず、ダミー超音波素子404は反転駆動信号によって駆動され、それによってダミー超音波素子404を振動させる。ダミー超音波素子404は、ダミー超音波素子404の振動に応答して電気信号を生成する。
【0050】
したがって、超音波素子402のみが界面の方へパルスを放出する。パルスの音波は、反射されて超音波素子402の方へ戻り、超音波素子402はこの反射成分を検出する。この反射成分は、ダミー超音波素子の反射成分に対して位相がずれていない。なぜなら、ダミー超音波素子からの反射成分は存在しないからである。それにもかかわらず、ダミー超音波素子404は、反転駆動成分および反転反響成分を含む反転検出信号を受信器420へ提供する。したがって、ダミー超音波素子404は、超音波素子402からの検出信号の反射成分を低減させることなく駆動成分および反響成分を低減させるために使用される反転検出信号を提供する。
【0051】
図11は、一実施形態によって形成された距離検出システム500の概略図である。距離検出システム500は、第1の超音波素子502および第2の超音波素子504を有する。第1の超音波素子502および第2の超音波素子504は、これらの超音波素子のうちの一方が、他方の超音波素子より2分の1波長前に位置決めされるように、互いに対して変位される。第1の超音波素子502および第2の超音波素子504は、非反転駆動信号および反転駆動信号によって駆動されるように構成される。距離検出システム500は、距離検出システム500の素子に類似または同一の素子を有することができる。
【0052】
図11に示すように、第1の超音波素子502および第2の超音波素子504は、互いに対してずれている。したがって、第1の超音波素子502および第2の超音波素子504で検出される反射成分が打ち消されない。より具体的には、超音波素子504は、超音波素子502より2分の1波長前に位置決めされ、したがって前軸では反射成分が打ち消されない。それにもかかわらず、反転駆動信号の駆動成分および反響成分は、非反転駆動信号の駆動成分および反響成分に対して位相がずれている。したがって、反転駆動信号の駆動成分および反響成分は、非反転駆動信号の駆動成分および反響成分を低減させるために使用される。しかし反射成分は位相がずれていない。
【0053】
図12は、逆の極性(+/-および-/+によって示す)を有する第1の超音波素子602および第2の超音波素子604を有する一実施形態によって形成された距離検出システム600の概略図である。第1の超音波素子602および第2の超音波素子602、604は、それぞれ非反転駆動信号および反転駆動信号によって駆動される。距離検出システム600は、第1の超音波素子602および第2の超音波素子604を有する超音波トランスデューサ601を含む。第1の超音波素子602および第2の超音波素子604は逆の極性を有するため、位相がずれた駆動信号により、第1の超音波素子602および第2の超音波素子604が同相になる。
それにもかかわらず、駆動成分および反響成分に対して第1の超音波素子602および第2の超音波素子604によって提供される検出信号は位相がずれており、これを使用して駆動成分および反響成分を低減させることができる。
【0054】
図13は、一実施形態によって形成された距離検出システム700の概略図である。距離検出システム700は、超音波素子702および等価共振回路704を有する超音波トランスデューサ701を含む。距離検出システム700はまた、距離検出システム100(
図1)の素子に類似または同一の素子を含むことができる。たとえば、距離検出システム700は、信号発生器712および信号インバータ714を含む。距離検出システム700はまた、スイッチング回路716、整合回路718、および受信器720を含む。
【0055】
図示のように、駆動信号724が信号インバータ714へ通信される。反転駆動信号726を生成した後、駆動信号724および反転駆動信号726は、それぞれ超音波素子702および等価共振回路704へ通信される。上記の実施形態と同様に、超音波素子702は、駆動成分、反響成分、および反射成分を含む検出信号を提供するように構成される。等価共振回路704は、反転駆動信号726を受信し、反転検出信号を生成するように構成され、反転検出信号は、駆動成分および反響成分を低減させるために使用される。
【0056】
図14Aおよび
図14Bは、距離検出システム700(
図13)とともに使用することができるそれぞれ等価共振回路742、744の回路図である。共振回路742は、超音波素子の前後に空気が存在する純粋な圧電性共振等価回路である。低周波数f<<f
0で、測定される静電容量はC≒Cs+Cpであり、高周波数f>>f
0で、測定される静電容量はC≒Csである。共鳴f
0で、測定される抵抗はR≒Rsである。前後の材料がプラスチック/水および吸収体であるとき、他の抵抗が加わる可能性もある。
【0057】
図15~
図17は、本明細書に記載する超音波素子を単独で形成することができ、または本明細書に記載する超音波素子の一部を形成することができる素子を示す。より具体的には、
図15は、1つまたは複数の実施形態によって使用することができる圧電性超音波素子760の概略断面図である。素子760は、高伝導性の電極層764、766間に挟まれた圧電材料762を含み、電極層764、766は、たとえば金または白金から構成することができる。電極層766は、バッキング層768によって支持される。電極層764、766は、それぞれ導体770、772に電気的に結合される。
【0058】
図16は、1つまたは複数の実施形態によって使用することができる容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)素子774の概略断面図である。図示のように、CMUT素子774は、キャビティ778を覆うように配置された金属化懸架膜776(たとえば、窒化ケイ素(Si
xN
y))を含む。CMUT素子774はまた、剛性基板780を含む。2つの電極782、784間にDC電圧が印加されたとき、膜776は撓み、静電力によって基板の方へ引き付けられる。膜776の剛性によって引き起こされる機械的回復力は、この引力に耐える。したがって、AC電圧入力による膜776の振動から超音波を生成することができる。
【0059】
図17は、1つまたは複数の実施形態によって使用することができる圧電性微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)素子784の概略断面図である。PMUT素子784は、電極層788、790間に挟まれた膜786を含む。膜786の圧電作用から生成される横方向の歪みによって、PMUT素子784内の膜786の撓みが引き起こされる。膜786は、少なくとも1つの圧電層792および受動弾性層794を含む。動作の際、PMUTの共振周波数は、圧電層792の厚さに直接依存しない。代わりに、屈曲モードの共振周波数が、膜の形状、寸法、境界状態、真性応力、および機械的剛性に密接に関係する。