IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-フィルム巻装体及び接続体の製造方法 図1
  • 特許-フィルム巻装体及び接続体の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】フィルム巻装体及び接続体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20240301BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240301BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240301BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240301BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240301BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20240301BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240301BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20240301BHJP
   B65D 85/672 20060101ALI20240301BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20240301BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J11/06
C09J163/00
C09J11/04
C09J4/02
C09J7/10
C09J9/02
H01B5/16
B65D85/672
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019219031
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021088645
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹崎 裕城
(72)【発明者】
【氏名】本村 大助
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111162(JP,A)
【文献】特開平09-095600(JP,A)
【文献】特開2012-236992(JP,A)
【文献】特開2017-117794(JP,A)
【文献】特開平07-292339(JP,A)
【文献】特開2013-241542(JP,A)
【文献】特開2013-010961(JP,A)
【文献】特開2010-084121(JP,A)
【文献】特表2000-509425(JP,A)
【文献】特開2015-083691(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021936(WO,A1)
【文献】特開2000-104033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
H01B 5/16
B65D 85/672
H01R 11/01
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離基材と該剥離基材上に設けられた接着剤層とを含む接着フィルムが巻き芯に巻回されたフィルム巻装体であって、
接着剤層が、(A)ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物と、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤と、ラジカル重合開始剤を含有し、
前記成分(B)が常温で固体状のエポキシ樹脂を含み、
前記成分(C)が常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤を含み、
前記ラジカル重合開始剤が有機過酸化物である、フィルム巻装体。
【請求項2】
接着剤層の不揮発成分の合計を100体積%としたとき、常温で固体状のエポキシ樹脂と常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤の合計が2体積%以上である、請求項1に記載のフィルム巻装体。
【請求項3】
接着剤層の不揮発成分の合計を100体積%としたとき、常温で固体状のエポキシ樹脂と常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤の合計が4体積%以上30体積%以下である、請求項1又は2に記載のフィルム巻装体。
【請求項4】
前記ラジカル重合開始剤が常温で固体状である、請求項1~3の何れか1項に記載のフィルム巻装体。
【請求項5】
接着フィルムの長さが5m以上である、請求項1~4の何れか1項に記載のフィルム巻装体。
【請求項6】
接着フィルムの幅が5mm以下である、請求項1~5の何れか1項に記載のフィルム巻装体。
【請求項7】
接着フィルムが側板を備えた巻き芯に巻回されている、請求項1~6の何れか1項に記載のフィルム巻装体。
【請求項8】
接着剤層が、さらに導電性粒子を含む、請求項1~7の何れか1項に記載のフィルム巻装体。
【請求項9】
第1の電子部品と第2の電子部品とを、請求項1~8の何れか1項に記載のフィルム巻装体から引き出された接着フィルムの接着剤層を介在させて、圧着する工程を含む、接続体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム巻装体及びそれを用いた接続体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品と回路基板等とを接着する手段として、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)などの接着フィルムが広く用いられている。例えば、異方性導電フィルムは、FPDモジュールなどにおいて、フレキシブルプリント基板(FPC)の端子と、リジッド基板の端子とを接続する場合(FOB)をはじめとして、種々の端子同士を接着すると共に電気的に接続する場合に用いられている。
【0003】
この接着フィルムとしては、接着性に優れると共に良好な接続信頼性をもたらすことから、絶縁性バインダー樹脂としてエポキシ樹脂を含む接着フィルムが従来から用いられている(例えば特許文献1)。
【0004】
近年、リジッド基板の端子部等への熱的ストレスを低減すべく、接着フィルムを用いて熱圧着する際の温度を下げることが求められており、また、熱的ストレスの低減のみならず生産効率の向上のために、圧着時間の短縮も求められている。斯かる観点から、一般に高温・長時間の熱圧着を要するエポキシ樹脂に代えて、低温・短時間で硬化可能なラジカル重合性(メタ)アクリル化合物を絶縁性バインダー樹脂として利用した接着フィルムも提案されている(例えば特許文献2、3)。ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物を利用した接着フィルムに関しては接着性に改善の余地があり、絶縁性バインダー樹脂として、斯かるラジカル重合性(メタ)アクリル化合物と、接着性に優れるエポキシ樹脂とを併用した接着フィルムも提案されている(例えば特許文献4、5)。
【0005】
他方、異方性導電フィルムなどの接着フィルムは、一般に、PETフィルム等の剥離基材と、該剥離基材上に設けられた絶縁性バインダー樹脂を含む接着剤層とを備えた、積層フィルム(層構成:接着剤層/剥離基材)の状態で製造される。そして、図1に示すように、斯かる接着フィルム(接着剤層2/剥離基材3)は、所定幅にスリット加工された後、リール4の巻き芯5に巻回されたフィルム巻装体1の状態で保管・出荷される。ここで、細幅(例えば10mm未満、本発明では、一般的な接着フィルムにおいて比較的幅が細い、の趣旨で用いる)の接着フィルムの場合、側板(フランジ)6を備えた巻き芯5に巻回されるのが一般的である。使用時には、フィルム巻装体1から接着フィルム2、3を引き出し、必要な長さにカットした後、電子部品等の接着に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-141083号公報
【文献】特開2011-202173号公報
【文献】特開2018-110120号公報
【文献】特開2013-138013号公報
【文献】特開2007-224228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂とを併用する特許文献4、5記載の接着フィルムによれば、低温・短時間の熱圧着にて良好な接着性をもたらすものと期待される。そこで本発明者らは、特許文献4、5記載の技術において特に好適とされている、エポキシ樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いる態様につき、実際の使用を想定して、フィルム巻装体を製造し、電子部品等の接着への使用を試みた。
【0008】
その結果、製造したフィルム巻装体において、接着フィルムの露出側面から接着剤層がはみ出し、剥離基材を越えて接着剤層間が貼り付くことにより、フィルム巻装体からの接着フィルムの引き出し性が不良となる問題(以下、「ブロッキング」ともいう。)が生じることを見出した。斯かるブロッキングは、巻回された接着フィルムが長尺であるほど顕著に生じ、とりわけ、細幅の接着フィルムの場合、接着フィルムの露出側面からはみ出した接着剤層がリールの側板(フランジ)にも接触して貼り付き易くなることから、ブロッキングはより深刻であった。接着フィルムの短尺化によりブロッキングは軽減し得るものの、その場合にはフィルム巻装体の交換頻度が増し、その都度ラインを停止する必要があるなど、生産効率の低下は避けられない(生産性の観点から、接着フィルムが長尺であることが、接続体の製造(接着フィルムの使用)に求められている)。
【0009】
本発明の課題は、低温・短時間の熱圧着であっても優れた接着性を呈する接着フィルムを繰り出すことが可能であり、かつ、該接着フィルムを長尺巻きする場合であってもブロッキングの発生を抑制し得る、フィルム巻装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、下記構成を有するフィルム巻装体によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] 剥離基材と該剥離基材上に設けられた接着剤層とを含む接着フィルムが巻き芯に巻回されたフィルム巻装体であって、
接着剤層が、(A)ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物と、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤とを含有し、
前記成分(B)が常温で固体状のエポキシ樹脂を含み、
前記成分(C)が常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤を含む、フィルム巻装体。
[2] 接着剤層の不揮発成分の合計を100体積%としたとき、常温で固体状のエポキシ樹脂と常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤の合計が2体積%以上である、[1]に記載のフィルム巻装体。
[3] 接着剤層が、さらにラジカル重合開始剤を含む、[1]又は[2]に記載のフィルム巻装体。
[4] 前記ラジカル重合開始剤が常温で固体状のラジカル重合開始剤を含む、[1]~[3]の何れか1つに記載のフィルム巻装体。
[5] 接着フィルムの長さが5m以上である、[1]~[4]の何れか1つに記載のフィルム巻装体。
[6] 接着フィルムの幅が5mm以下である、[1]~[5]の何れか1つに記載のフィルム巻装体。
[7] 接着フィルムが側板を備えた巻き芯に巻回されている、[1]~[6]の何れか1つに記載のフィルム巻装体。
[8] 接着剤層が、さらに導電性粒子を含む、[1]~[7]の何れか1つに記載のフィルム巻装体。
[9] 第1の電子部品と第2の電子部品とを、[1]~[8]の何れか1つに記載のフィルム巻装体から引き出された接着フィルムの接着剤層を介在させて、圧着する工程を含む、接続体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温・短時間の熱圧着であっても優れた接着性を呈する接着フィルムを繰り出すことが可能であり、かつ、該接着フィルムを長尺巻きする場合であってもブロッキングの発生を抑制し得る、フィルム巻装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、フィルム巻装体の一例を示す模式図である。
図2図2は、フィルム巻装体のはみ出し試験を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。説明にあたり図面を参照する場合もあるが、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0015】
[フィルム巻装体]
本発明のフィルム巻装体は、剥離基材と該剥離基材上に設けられた接着剤層とを含む接着フィルムが巻き芯に巻回されたフィルム巻装体であって、
接着剤層が、(A)ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物と、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤とを含有し、
成分(B)が常温で固体状のエポキシ樹脂を含み、
成分(C)が常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤を含むことを特徴とする。
【0016】
ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂とを併用する接着フィルムによれば、低温・短時間の熱圧着にて良好な接着性をもたらすものと期待され、本来的にはFPDモジュールをはじめとする対象製品の生産効率・品質向上に寄与するものである。しかしながら、斯かる接着フィルムについて、実際の使用を想定してフィルム巻装体を製造し、電子部品等の接着への使用を試みたところ、先述のとおり、製造したフィルム巻装体において、接着フィルムの露出側面から接着剤層がはみ出し、剥離基材を越えて接着剤層間が貼り付くことにより、ブロッキングが発生する場合のあることを見出した。接着フィルムの交換頻度は、ラインを止めることになるため接続工程の生産性に直結する。長尺であれば交換頻度は少なく済むため望ましくなるが、ブロッキングの発生リスクは増加してしまう。これに対し、本発明では、ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂とを併用する樹脂系において、常温で固体状のエポキシ樹脂と、常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤とを組み合わせて使用することにより、低温・短時間の熱圧着による良好な接着性という、ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂とを併用することによる利点を享受しつつ、接着フィルムを長尺巻きする場合であっても(中でもブロッキングや取り扱いが深刻化し易い細幅の接着フィルムを長尺巻きする場合であっても)、ブロッキングの発生を抑制し得るという顕著な効果を奏することを見出したものである。本発明のフィルム巻装体は、FPDモジュールをはじめとする対象製品の生産効率・品質向上に著しく寄与するものである。
【0017】
図1は、フィルム巻装体の一例を示す模式図である。図1において、フィルム巻装体1は、接着フィルム2、3が、リール4の巻き芯5に巻回されることにより形成されている。リール4は、接着フィルムを巻き取る巻き芯5を少なくとも備え、巻き芯5は、リール4を回転させるための回転軸が挿入される軸穴を有する。細幅(例えば10mm未満)の接着フィルムを巻回する場合、通常、リール4は、巻き芯5の両端にそれぞれ設けられた側板(フランジ)6を備える(図1には側板6を備えるリール4を示している)。したがって一実施形態において、接着フィルムは、側板を備えた巻き芯に巻回されている。
【0018】
巻き芯5には、接着フィルムの長手方向の一端が固定されており(斯かる固定部を「繋ぎ部」ともいう。)、接着フィルムが巻回されている。接着フィルムは、剥離基材3と、該剥離基材上に設けられた接着剤層2とを含む積層フィルム(接着剤層2/剥離基材3)の状態で、リール4の巻き芯5に巻回されている。接着フィルムは、接着剤層2が内周側となるように巻回してもよく、剥離基材3が内周側となるように巻回してもよい。接着剤層2の汚染防止のためには、両面に剥離基材を設けてもよい(所謂、カバーフィルム)。
【0019】
リール4(巻き芯5、側板6)の形状や寸法は、所期の幅及び長さの接着フィルムを巻回し得る限り特に限定されず、従来公知の任意の形状、寸法としてよい。接着フィルムの幅とリール4の有効幅(上記側板間の距離)は、ブロッキングとフィルムの引き出し易さから、調節すればよい。
【0020】
<接着フィルム>
以下、本発明のフィルム巻装体を構成する接着フィルムについて、詳細に説明する。
【0021】
本発明において、接着フィルムは、剥離基材と、該剥離基材上に設けられた接着剤層とを含む。
【0022】
(剥離基材)
剥離基材は、接着剤層を支持することができ、所期のタイミングにて接着剤層から剥離することができるフィルム状物である限り特に限定されない。剥離基材の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ-4-メチルペン-1(PMP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のプラスチック材料を用いてよい。剥離基材はまた、接着剤層と接合する側の表面に剥離層を有する基材であってよく、剥離層は、例えば、シリコーン樹脂やポリオレフィン樹脂等の剥離剤を含んでよい。
【0023】
剥離基材の厚さは、特に限定されないが、長尺巻きのフィルム巻装体を効率よく形成し得る観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下、更により好ましくは50μm以下である。剥離基材の厚さの下限は、特に限定されないが、接着フィルムの製造時、スリット加工時、巻き芯への巻き取り時の取り扱い性の観点から、好ましくは8μm以上である。
【0024】
(接着剤層)
本発明のフィルム巻装体において、接着剤層は、(A)ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物と、(B)エポキシ樹脂と、(C)エポキシ樹脂硬化剤とを含有し、成分(B)が常温で固体状のエポキシ樹脂を含み、成分(C)が常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤を含むことを特徴とする。
【0025】
-(A)ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物-
接着剤層は、絶縁性バインダー樹脂として、ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物を含む。これにより、低温・短時間の熱圧着であっても接着性を発現することが可能である。なお、「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル化合物及びメタクリル化合物の双方を意味する。「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」なる表現についても同様である。
【0026】
ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基を有しラジカル重合し得る限り特に限定されず、モノマー及びオリゴマーの何れの状態でも用いることができ、それらを併用してもよい。
【0027】
ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、リン酸エステル型(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、o-フタル酸ジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート及びウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。また、ラジカル重合し得る限り、分子内の水素原子の1個以上がヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基でさらに置換されていてもよい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0028】
接着剤層中の重合性(メタ)アクリル化合物の含有量は、低温・短時間の熱圧着であっても接着性を発現し得る観点から、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、更に好ましくは15体積%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは60体積%以下、より好ましくは55体積%以下、更に好ましくは50体積%以下、更により好ましくは45体積%以下、特に好ましくは40体積%以下である。
なお、本発明において、接着剤層中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、接着剤層中の不揮発成分の合計を100体積%としたときの値である。
【0029】
-(B)エポキシ樹脂-
接着剤層は、絶縁性バインダー樹脂として、エポキシ樹脂を含む。先述のラジカル重合性(メタ)アクリル化合物と組み合わせてエポキシ樹脂を含むことにより、低温・短時間の熱圧着であっても接着性を発現するばかりでなく、熱圧着の直後並びに高温高湿環境下で長時間保持した後にも高い接着性を実現することが可能である。
【0030】
エポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を有し熱硬化し得る限り特に限定されないが、良好な耐熱性、接着性を実現し得る観点から、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100体積%としたとき、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは50体積%以上、より好ましくは60体積%以上、更に好ましくは70体積%以上、更により好ましくは80体積%以上である。該含有量の上限は特に限定されず、100体積%であってもよい。
【0031】
本発明において、エポキシ樹脂が、常温で固体状のエポキシ樹脂(以下、単に「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)を含むことが重要である。後述の常温で固体状のエポキシ樹脂硬化物と組み合わせて固体状エポキシ樹脂を用いることにより、接着フィルムを長尺巻きする場合であっても(中でもブロッキングや取り扱いが深刻化し易い細幅の接着フィルムを長尺巻きする場合であっても)、ブロッキングの発生を抑制し得る。ここで、常温とは、試験場所の標準状態に係るJIS Z 8703で規定される5~35℃の温度範囲を意味する(以下、同じである)。
【0032】
固体状エポキシ樹脂としては、常温で固体状である限り特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。これらの中でも、軟化点あるいは融点を有するエポキシ樹脂が好ましく、例えば、軟化点(環球法)あるいは融点が、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、更により好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上であるエポキシ樹脂が好適である。軟化点・融点の上限は特に限定されないが、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
【0033】
市場で入手可能な固体状エポキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル(株)製の「jER1001」、「jER1003」、「jER1007」などを挙げることができる。
【0034】
エポキシ樹脂中の固体状エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂の不揮発成分の合計を100体積%としたとき、好ましくは70体積%以上、より好ましくは75体積%以上、更に好ましくは80体積%以上、更により好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。該含有量の上限は特に限定されず、100体積%であってもよい。
【0035】
エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂を含む限りにおいて、常温で液状のエポキシ樹脂(以下、単に「液状エポキシ樹脂」ともいう。)をさらに含んでもよい。液状エポキシ樹脂としては、常温で液状である限り特に限定されず、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。市場で入手可能な液状エポキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル(株)製の「jER806」、「jER807」などを挙げることができる。ブロッキングを顕著に抑制し得る観点から、エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂のみ含むことが好適である。
【0036】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは2500以下、より好ましくは2200以下、更に好ましくは2000以下、更により好ましくは1800以下、特に好ましくは1600以下、最も好ましくは1500以下である。エポキシ当量の下限は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは300以上である。エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0037】
接着剤層中のエポキシ樹脂の含有量は、低温・短時間の熱圧着であっても高い接着性を発現し得る観点から、好ましくは2体積%以上、より好ましくは4体積%以上、更に好ましくは5体積%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下、更に好ましくは25体積%以下、更により好ましくは20体積%以下、特に好ましくは15体積%以下である。
【0038】
-(C)エポキシ樹脂硬化剤-
接着剤層は、エポキシ樹脂硬化剤を含む。これにより、熱圧着の際に、エポキシ樹脂を円滑に硬化させることができる。
【0039】
本発明において、エポキシ樹脂硬化剤は、常温では反応せずに実装時の熱圧着温度にて短時間(例えば、数秒間)のうちに反応が進行・完了する潜在性硬化剤である。これにより、フィルム巻装体の保管・運搬時には硬化反応が生じず、電子部品等の接着に供する際に硬化反応が進行・完了し所期の接着性を実現し得る。示差走査熱量測定(DSC)において、10℃/分にて昇温した際に、80℃以上、かつ、実装時の熱圧着温度以下の範囲に発熱ピークが生じるような潜在性硬化剤を使用することが好適である。
【0040】
本発明において、エポキシ樹脂硬化剤が、常温で固体状のエポキシ樹脂硬化剤(以下、単に「固体状エポキシ硬化剤」ともいう。)を含むことが重要である。先述の固体状エポキシ樹脂と組み合わせて固体状エポキシ硬化剤を用いることにより、接着フィルムを長尺巻きする場合であっても(中でもブロッキングや取り扱いが深刻化し易い細幅の接着フィルムを長尺巻きする場合であっても)、ブロッキングの発生を抑制し得る。
【0041】
固体状エポキシ硬化剤としては、常温で固体状である限り特に限定されないが、例えば、アミン系、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ジシアンジアミド塩、及びこれらの変性物が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0042】
市場で入手可能な固体状エポキシ硬化剤の具体例としては、東京化成工業(株)等から入手し得るジアミノジフェニルメタン(DDM)、メタフェニレンジアミン(MPD)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などを挙げることができる。
【0043】
エポキシ樹脂硬化剤中の固体状エポキシ硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂硬化剤の不揮発成分の合計を100体積%としたとき、好ましくは70体積%以上、より好ましくは75体積%以上、更に好ましくは80体積%以上、更により好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。該含有量の上限は特に限定されず、100体積%であってもよい。
【0044】
エポキシ樹脂硬化剤は、固体状エポキシ硬化剤を含む限りにおいて、常温で液状のエポキシ樹脂硬化剤(以下、単に「液状エポキシ硬化剤」ともいう。)をさらに含んでもよい。液状エポキシ硬化剤としては、常温で液状である限り特に限定されず、例えば、アミン系、イミダゾール系などが挙げられる。市場で入手可能な液状エポキシ樹脂の具体例としては、四国化成工業(株)等から入手し得る2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)などを挙げることができる。ブロッキングを顕著に抑制し得る観点から、エポキシ樹脂硬化剤は、固体状エポキシ硬化剤のみ含むことが好適である。
【0045】
接着剤層中のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、特に限定されないが、低温・短時間の熱圧着であっても高い接着性を発現し得る観点から、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは0.8体積%以上、更に好ましくは1体積%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは5体積%以下、より好ましくは4体積%以下、更に好ましくは3体積%以下、更により好ましくは2体積%以下である。
【0046】
接着フィルムを長尺巻きする場合であっても(中でもブロッキングや取り扱いが深刻化し易い細幅の接着フィルムを長尺巻きする場合であっても)、ブロッキングの発生を顕著に抑制し得る観点から、接着剤層中の固体状エポキシ樹脂と固体状エポキシ硬化剤の合計の含有量は、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、更に好ましくは4体積%以上である。ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂を併用することにより、低温・短時間の熱圧着であっても良好な接着性を実現し得ることは先述のとおりであるが、本発明者らは、接着剤層中の固体状エポキシ樹脂と固体状エポキシ硬化剤の合計の含有量が4体積%以上であると、熱圧着の直後並びに高温高湿環境下で長時間保持した後にも格別優れた接着性を実現し得ることを見出した。該合計の含有量は、更に好ましくは5体積%以上、更により好ましくは6体積%以上、特に好ましくは8体積%以上、最も好ましくは10体積%以上である。該合計の含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは45体積%以下、より好ましくは40体積%以下、更に好ましくは35体積%以下、更により好ましくは30体積%以下、特に好ましくは25体積%以下、最も好ましくは20体積%以下である。格別優れた接着性を実現し得る観点から、該合計の含有量の上限は、30体積%以下であることが好ましい。
【0047】
本発明のフィルム巻装体において、接着フィルムの接着剤層は、さらにラジカル重合開始剤、成膜樹脂、導電性粒子等を含んでもよい。
【0048】
-ラジカル重合開始剤-
接着剤層は、ラジカル重合開始剤を含んでもよい。ラジカル重合開始剤としては、実装時の熱圧着温度にて遊離ラジカルを発生し先述のラジカル重合性(メタ)アクリル化合物の重合反応を進行させ得る限り特に限定されず、熱圧着時の圧着温度や時間等を考慮して、適宜選択してよい。
【0049】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化化合物、アゾ系化合物が挙げられる。過酸化化合物としては、有機過酸化物が好適であり、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0050】
ブロッキングの発生を顕著に抑制し得る観点から、ラジカル重合開始剤は、常温で固体状のラジカル重合開始剤(以下、単に「固体状ラジカル重合開始剤」ともいう。)を含むことが好適である。ラジカル重合開始剤の不揮発成分の合計を100体積%としたとき、固体状ラジカル重合開始剤の含有量は、好ましくは70体積%以上、より好ましくは75体積%以上、更に好ましくは80体積%以上、更により好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。該含有量の上限は特に限定されず、100体積%であってもよい。ブロッキングを顕著に抑制し得る観点から、ラジカル重合開始剤は、固体状ラジカル重合開始剤のみ含むことが好適である。
【0051】
接着剤層中のラジカル重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、低温・短時間の熱圧着であっても接着性を発現し得る観点から、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、3体積%以上又は5体積%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは15体積%以下、より好ましくは10体積%以下、更に好ましくは8体積%以下である。
【0052】
-成膜樹脂-
接着剤層は、成膜樹脂を含んでもよい。成膜樹脂としては、特に限定されず目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、フェノキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0053】
成膜性の観点から、成膜樹脂のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上、更に好ましくは20000以上である。該Mnの上限は、特に限定されないが、好ましくは80000以下、より好ましくは70000以下、60000以下であってもよい。他の配合物や使用目的に応じて適宜選択すればよい。成膜樹脂のポリスチレン換算のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0054】
接着剤層中の成膜樹脂の含有量は、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよいが、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは25体積%以上、更により好ましくは30体積%以上である。該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。
【0055】
-導電性粒子-
接着剤層は、導電性粒子を含んでよい。導電性粒子を含むことにより、接着フィルムは、導電性フィルムや異方性導電フィルム(ACF)として用いることができる。
【0056】
導電性粒子としては、異方性導電フィルムにおいて用いられる公知の導電性粒子を用いてよい。導電性粒子としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の金属の粒子;これら金属の合金の粒子;金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、樹脂等の粒子の表面に金属を被覆した被覆粒子等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属を被覆した金属被覆樹脂粒子を用いる場合、樹脂粒子の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。なお、導電性粒子は、接続後の導通性能に支障を来さなければ、端子間でのショートリスクの回避のために、上記粒子の表面に更に絶縁薄膜を被覆したものや、絶縁粒子を表面に付着させたものなど絶縁処理を施したものであってもよい。これら導電性粒子は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0057】
導電性粒子の平均粒子径は、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよいが、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下、更により好ましくは20μm以下である。該平均粒子径の下限は、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更により好ましくは3μm以上である。導電性粒子の平均粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により観察し、複数個(n≧10)の導電性粒子について粒子径を測定し、その平均値を算出すればよい。もしくは、画像型粒度分布測定装置(例として、FPIA-3000(マルバーン社))を用いて測定した測定値(N=1000以上)であってもよい。
【0058】
導電性粒子を用いる場合、接着剤層中の導電性粒子の含有量は、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよいが、好ましくは1体積%以上、より好ましくは1.5体積%以上、更に好ましくは2体積%以上である。該含有量の上限は、所期の異方導電性を得る観点から、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下、更に好ましくは25体積%以下、更により好ましくは20体積%以下である。
【0059】
本発明のフィルム巻装体において、接着フィルムの接着剤層は、必要に応じてさらに他の成分を含んでもよい。斯かる成分としては、例えば、絶縁性無機フィラー(例えば、シリカフィラー)などの導通を阻害しない充填材、表面改質剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤等の、接着フィルム(接着剤)の製造において使用される公知の添加剤が挙げられる。
【0060】
接着剤層の厚さは、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよいが、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上である。接着剤層の厚さの上限は、特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下、更により好ましくは50μm以下である。
【0061】
本発明のフィルム巻装体は、上記特定の接着剤層組成を有する接着フィルムがリールに巻回されたフィルム巻装体が得られる限り任意の製造方法により製造してよい。例えば、接着フィルムを製造し、スリット加工した後、リールに巻回することによりフィルム巻装体を製造することができる。以下、フィルム巻装体の製造方法の一例について説明する。
【0062】
接着フィルムは、例えば、上記成分(A)乃至(C)をはじめとする各成分を、必要に応じて有機溶剤と混合し、均一に混合した樹脂組成物(接着剤組成物)を調製し、この樹脂組成物を、剥離基材上に塗布し、更に乾燥させて接着剤層を形成させることにより製造することができる。樹脂組成物の塗布は、バーコーター等の塗布装置を用いて実施すればよい。ドクターブレード法など、公知の接着フィルムの塗布方式を用いることができる。
【0063】
次いで、接着フィルムをスリット加工し、接着フィルムの幅を所期の範囲とする。スリット加工の際、切削屑等により接着剤層が汚染されるのを防止すべく、接着剤層の露出表面にカバーフィルムを設けてよい。カバーフィルムは、接着フィルムのスリット加工時に使用される公知のフィルムを用いてよい。ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂とを併用する樹脂系において、固体状エポキシ樹脂と固体状エポキシ硬化剤とを組み合わせて使用する本発明においては、スリット加工の際に、スリッターに接着剤層が貼り付くことを顕著に抑制することが可能であり、所期の幅に円滑にスリット加工することが可能である。
【0064】
スリット加工の後、所期の幅の接着フィルムをリールに巻回することによりフィルム巻装体が得られる。
【0065】
本発明のフィルム巻装体において、接着フィルムの幅は、特に限定されず目的に応じて適宜決定してよい。先述のとおり、本発明においては細幅の接着フィルムを長尺巻きする場合であってもブロッキングを顕著に抑制し得る。好適な一実施形態において、接着フィルムの幅は、10mm未満でもよく、5mm以下としてもよい。接着フィルムの幅は、例えば、4mm以下、3mm以下又は2mm以下にまで小さくすることができる。接着フィルムの幅の下限は、特に限定されないが、0.1mm以上でもよく、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。
【0066】
好適な一実施形態において、接着フィルムの長さ(巻き長)は、5m以上である。本発明においては長尺巻きする場合であってもブロッキングを顕著に抑制し得ることから、接着フィルムの長さは、例えば、10m以上、20m以上、30m以上、50m以上、100m以上であってもよく、その上限は、例えば、500m以下、400m以下、300m以下であってよい。
【0067】
本発明のフィルム巻装体は、低温・短時間の熱圧着であっても優れた接着性をもたらす接着フィルムを繰り出すことが可能であり、電子部品等を接着する手段として好適に使用することができる。また、接着剤層が導電性粒子を含む場合、異方性導電フィルム(ACF)として用いることが可能であり、後述のとおり、第1の電子部品と第2の電子部品とを異方性導電接続する手段として好適に使用することができる。ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂とを併用する樹脂系において、固体状エポキシ樹脂と固体状エポキシ硬化剤とを組み合わせて使用する本発明においてはまた、熱圧着による硬化収縮(シュリンク)を有利に低減させ得ることから、複数の電子部品を一括実装する場合であっても基板の反りの発生を顕著に減じることが可能である。
【0068】
[接続体の製造方法]
本発明のフィルム巻装体を用いて、電子部品同士を接着した接続体を製造することができる。
【0069】
本発明の接続体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品とを、本発明のフィルム巻装体から引き出された接着フィルムの接着剤層を介在させて、圧着する工程を有する。
【0070】
第1の電子部品としては、例えば、一般的なプリント配線板(PWB)であればよく、リジッド基板、ガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板、FPC等が挙げられ、また、第2の電子部品としては、FPC、ICチップ等が挙げられる。本発明の方法により、FOB(Film On Board)、FOG(Film On Grass)、FOF(Film On Film)、COG(Chip On Grass)等の多用な接続体を製造し得る。
【0071】
本発明の接続体の製造方法において、はじめにフィルム巻装体から接着フィルムを引き出し、所定の長さにカットした後、第1の電子部品に仮貼り(貼着)する。後述する仮圧着以下の温度と圧力を加えてもよい。本発明のフィルム巻装体を用いることにより、ブロッキングの問題なく、接着フィルムを円滑に引き出すことができる。
【0072】
仮貼りの後、剥離基材を剥離して接着剤層を露出させる。次いで、第1の電子部品の電極(配列)と第2の電子部品の電極(配列)が対向するように位置合わせ(アライメント)し、第2の電子部品を搭載する。ここで、第2の電子部品側から圧着ツールにて仮圧着を実施することが好適である。仮圧着時の温度、圧力及び時間は、具体的な設計に応じて適宜決定してよく、例えば60~80℃、0.5~2MPa、0.5~2秒間とし得る。後述する本圧着を実施するに先立ち、斯かる仮圧着を実施することにより、電子部品同士(それぞれの部品の導通部同士)をより精確に位置合わせして接続することができ好適である。仮圧着を行うことで、より高圧力で押圧する本圧着時の位置ずれの抑制が期待できる。
【0073】
仮圧着の後、第2の電子部品側から圧着ツールにて本圧着を実施する。本圧着時の温度、圧力及び時間は、接着フィルムを用いて電子部品を接着する際に用いられる公知の任意の条件としてよく、具体的な設計に応じて適宜決定してよい。また、圧着は、接着フィルムを用いて電子部品を接着する際に用いられる公知の装置を用いて実施してよい。先述のとおり、ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂とを併用する樹脂系において、固体状エポキシ樹脂と固体状エポキシ硬化剤とを組み合わせて使用する本発明のフィルム巻装体を用いることにより、低温(例えば、200℃以下、180℃以下、160℃以下)かつ短時間(例えば、10秒間以下、8秒間以下、6秒間以下)の圧着であっても、第1の電子部品と第2の電子部品を良好に接着することが可能である。
【0074】
なお、仮圧着、本圧着の別を問わず、第2の電子部品と圧着ツールの間に緩衝材(例えば緩衝シート)を設けてよい。緩衝材は、その使用の有無も含めて、電子部品の組み合わせに応じて適宜調整、決定すればよい。
【0075】
本発明は、斯かる低温・短時間の熱圧着による良好な接着性という利点を享受しつつ、接着フィルムを長尺巻きする場合であっても(中でもブロッキングや取り扱いが深刻化し易い細幅の接着フィルムを長尺巻きする場合であっても)、ブロッキングの発生を抑制し得るという顕著な効果を奏するものであり、FPDモジュールをはじめとする対象製品の生産効率・品質向上に著しく寄与するものである。
【実施例
【0076】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、「体積部」及び「体積%」をそれぞれ意味する。
【0077】
[実施例1]
-接着剤組成物の調製-
ウレタンアクリレート(商品名:U-2PPA、新中村化学工業(株)製)30部、アクリルモノマー(商品名:A-200、新中村化学工業(株)製)50部、固体状エポキシ樹脂(商品名:jER1007、三菱ケミカル(株)製)20部、固体状エポキシ硬化剤(ジアミノジフェニルメタン(DDM)、東京化成工業(株)製)3部、有機過酸化物(商品名:パーロイルL、日本油脂(株)製、ジラウロイルパーオキサイド)12部、フェノキシ樹脂(商品名:YP-50、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製)50部、フェノキシ樹脂(商品名:YD-019、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製)50部、及び導電性粒子(Ni粒子、平均粒径5μm)5部を、溶媒150部に加え、均一に混合して、接着剤組成物を得た。
【0078】
-接着フィルムの作製-
剥離基材として、PETフィルム(厚さ50μm)を用意した。この剥離基材上に、乾燥後の接着剤層の厚さが35μmとなるように、接着剤組成物を均一に塗布した。その後、60℃で5分間乾燥させて、剥離基材上に接着剤層を形成して接着フィルムを得た。
【0079】
-フィルム巻装体の作製-
得られた接着フィルムの接着剤層露出面にカバーフィルムを貼り付け、幅2.0mmにスリット加工した後、カバーフィルムを剥離した。次に、内周側に接着剤層が配されるように、側板を備えた巻き芯(巻き芯の直径100mm)に、接着フィルムを300m巻回し、フィルム巻装体を得た。
【0080】
[実施例2]
(i)固体状エポキシ樹脂(商品名:jER1007、三菱ケミカル(株)製)の配合量を20部から5部に変更した点、(ii)アクリルモノマー(商品名:A-200、新中村化学工業(株)製)の配合量を50部から65部に変更した点以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物、接着フィルム及びフィルム巻装体を得た。
【0081】
[実施例3]
(i)固体状エポキシ樹脂(商品名:jER1007、三菱ケミカル(株)製)の配合量を20部から65部に変更した点、(ii)アクリルモノマー(商品名:A-200、新中村化学工業(株)製)の配合量を50部から5部に変更した点以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物、接着フィルム及びフィルム巻装体を得た。
【0082】
[比較例1]
(i)固体状エポキシ樹脂(商品名:jER1007、三菱ケミカル(株)製)20部に代えて液状エポキシ樹脂(商品名:jER828、三菱ケミカル(株)製)5部を使用した点、(ii)アクリルモノマー(商品名:A-200、新中村化学工業(株)製)の配合量を50部から65部に変更した点以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物、接着フィルム及びフィルム巻装体を得た。
【0083】
[比較例2]
(i)エポキシ樹脂を配合しなかった点、(ii)アクリルモノマー(商品名:A-200、新中村化学工業(株)製)の配合量を50部から70部に変更した点以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物、接着フィルム及びフィルム巻装体を得た。
【0084】
[比較例3]
固体状エポキシ硬化剤(DDM、東京化成工業(株)製)3部に代えて液状エポキシ硬化剤(2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、四国化成工業(株)製)3部を使用した点以外は、実施例2と同様にして、接着剤組成物、接着フィルム及びフィルム巻装体を得た。
【0085】
以下、試験・評価方法について説明する。全評価ともB以上であれば、実用上の使用に問題はない。
【0086】
<はみ出し試験>
実施例及び比較例で作製したフィルム巻装体について、接着フィルムの露出側面からの接着剤層のはみ出し量に基づき、はみ出しの良否を評価した。斯かる評価は、以下に示すはみ出し試験により行った。
【0087】
すなわち、図2に示すように、実施例及び比較例で作製したフィルム巻装体のリール4をはみ出し試験用治具の固定棒10に取付け、巻き芯の回転を固定すると共に、フィルム巻装体から所定長さ引き出された接着フィルムの端部に分銅20を付け、静荷重を負荷した(はみ出し試験用治具の詳細及びそれを用いた試験手順の詳細は特開2017-137188号公報を参照されたい。)。本試験においては、繋ぎ角α(上記公報参照)が90~180°の範囲となるようにリール4を固定し、フィルム巻装体からの接着フィルムの引き出し長さ30cm、分銅20の重量30g、環境温度30℃の条件で、静荷重を6時間負荷した。
【0088】
静荷重を6時間負荷した後、デジタルマイクロスコープを用いて、フィルム巻装体の巻き芯外周の繋ぎ部から半径方向の側面を175倍の倍率で外観を観察した。接着剤層が剥離基材を挟み込み、1層上段の接着剤層と貼り付いた(連結した)場合を「1層はみ出し」とし、2層上段の接着剤層と貼り付いた場合を「2層はみ出し」とし、はみ出し層数を接着剤成分の剥離基材の挟み込み具合により小数点第1位まで求めた。フィルム巻装体のはみ出しは、得られたはみ出し層数に基づき、以下の基準で評価した。
【0089】
(評価基準)
A:はみ出し層数が1層未満
B:はみ出し層数が2層未満
C:はみ出し層数が2層以上
【0090】
<ブロッキングの評価>
はみ出し試験の後、フィルム巻装体から接着フィルムを引き出し、ブロッキングの発生の有無を観察した。本試験において、接着フィルムを引き出した際に剥離基材から接着剤層が剥がれたり浮きが生じたりした場合にブロッキングが発生したと判定した。また、本試験は、フィルム巻装体からの接着フィルムの引き出しを、(1)リール側板に平行な向き(MD方向;フィルム引き出し方向とリール側板の延伸方向とのなす角度が0°)、(2)リール側板に斜めの向き(MD方向に対し30°;フィルム引き出し方向とリール側板の延伸方向とのなす角度が30°)の2通りについて実施した。そしてフィルム巻装体のブロッキングは、以下の基準で評価した。
【0091】
(評価基準)
A:引き出し方向によらずブロッキングは発生せず
B:リール側板に平行な向きに引き出した際はブロッキングは発生しないが、リール側板に斜めの向きに引き出した際はブロッキングの発生あり
C:引き出し方向によらずブロッキングの発生あり
【0092】
<接着強度の評価>
-接続体の作製-
実施例及び比較例で作製したフィルム巻装体から接着フィルムを引き出し、剥離基材を剥離した接着剤層を介在させて、フレキシブルプリント基板(FPC)とリジッド基板とを熱圧着し、FPCとリジッド基板の対向した導通部を全て接着剤層の硬化物により接着することで異方性接続された接続体を得た。ここで、本試験に使用したFPC、リジッド基板の仕様、熱圧着の条件は以下のとおりであった。
【0093】
FPC仕様:ポリイミドフィルム厚さ38μm、銅回路厚さ8μm、銅回路ライン幅200μm(ピッチ400μm、L/S=1/1)
リジッド基板仕様:ガラスエポキシ基板厚さ1.0mm、銅回路厚さ35μm、銅回路ライン幅200μm(ピッチ400μm、L/S=1/1)
熱圧着条件:160℃/4MPa/5秒間
【0094】
-接着強度の測定・評価-
得られた接続体について、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿条件にて500時間保持した後に、90度剥離試験により接着強度を測定した。詳細には、FPCおよび硬化物を長さ10mmになるよう切り込み、その長さ10mmのFPCをつかみ具で掴み、室温(25℃)下、50mm/分の速度で垂直方向にFPCがリジット基板から剥離するまで引き剥がした時の荷重(N/cm)を測定し、以下の基準で接着強度を評価した。なお、測定には、テンシロン試験機(株式会社オリオンテック製STA-1150)を使用した。
【0095】
(評価基準)
A:10N/cm以上
B:5N/cm以上10N/cm未満
C:5N/cm未満
【0096】
<導通抵抗の評価>
上記<接着強度の評価>と同様の手順で接続体を得た。得られた接続体について、導通抵抗を測定し、以下の基準で評価した。尚、導通抵抗は初期および信頼性試験後も実用上問題はなかった。何れの接続体についても良好(A評価)であった。
【0097】
初期(評価基準)
A:5Ω未満
B:5Ω以上10Ω未満
C:10Ω以上
信頼性試験後(評価基準)
A:10Ω未満
B:10Ω以上15Ω未満
C:15Ω以上
【0098】
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例1~3から、本発明のフィルム巻装体は、低温・短時間の熱圧着であっても優れた接着性を呈する接着フィルムを繰り出すことが可能であり、かつ、該接着フィルムを長尺巻きする場合であってもブロッキングの発生を抑制し得ることが確認された。また、フェノキシ樹脂に代えて/加えて、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂等の他の成膜用成分を使用した場合、表1記載の特定のウレタンアクリレート及びアクリルモノマーに代えて/加えて、他の重合性(メタ)アクリル化合物を使用した場合、表1記載の特定の固体状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ硬化剤に代えて/加えて、他の固体状エポキシ樹脂及び固体状エポキシ硬化剤を使用した場合に関しても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。
【0101】
一方、重合性(メタ)アクリル化合物とエポキシ樹脂を併用する比較例1及び3のフィルム巻装体は、接着性こそ良好な結果を示したものの、固体状エポキシ樹脂(比較例1について)又は固体状エポキシ硬化剤(比較例3について)を含まないことから、何れも、はみ出し性が不良であり、ブロッキングが発生した。また、重合性(メタ)アクリル化合物は含むもののエポキシ樹脂を含まない比較例2のフィルム巻装体は、接着性、はみ出し性、ブロッキングの何れの結果も不良であった。
【符号の説明】
【0102】
1 フィルム巻装体
2 接着剤層
3 剥離基材
4 リール
5 巻き芯
6 側板(フランジ)
10 固定棒
20 分銅
図1
図2