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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】照明光学系、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240301BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G02B19/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019219854
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021089371
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 瑞真
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100461(JP,A)
【文献】特開2002-050564(JP,A)
【文献】特開2003-059799(JP,A)
【文献】特開2004-253758(JP,A)
【文献】特開2018-045060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
G02B 5/00-5/136、7/00-7/24
19/00-21/00、21/06-21/36
26/10-26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を用いて被照明面を照明する照明光学系であって、
前記光源を収容する第1構造体と、
入射端面から入射した前記光源からの光を内面で複数回反射させるオプティカルインテグレータと、
前記被照明面に前記オプティカルインテグレータの射出端面の像を形成する結像光学系と、
前記結像光学系を収容する、前記第1構造体とは異なる第2構造体と、
前記光源の光軸に対して前記オプティカルインテグレータの前記入射端面の位置がずれないように前記オプティカルインテグレータを前記第1構造体に結合させ、前記オプティカルインテグレータの前記入射端面における位置を回転中心として前記オプティカルインテグレータを傾ける第1チルト機構と、
前記結像光学系の光軸に対して前記オプティカルインテグレータの前記射出端面の位置がずれないように前記オプティカルインテグレータを前記第2構造体に結合させ、前記オプティカルインテグレータの前記射出端面における位置を回転中心として前記オプティカルインテグレータを傾ける第2チルト機構と、
を有する、ことを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
前記光源からの光の光軸と前記結像光学系の光軸との間の位置ずれ量をa、前記結像光学系の結像倍率をm、前記被照明面におけるテレセントリシティ許容値をTとするとき、前記オプティカルインテグレータの長さLは、
L>a・m/T
の条件を満たす長さである、ことを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
前記第1チルト機構または前記第2チルト機構は、
外枠部材と、
前記外枠部材の中に配置された中間枠部材と、
前記中間枠部材の中に配置され、前記オプティカルインテグレータの側面を保持する保持部材と、
前記外枠部材に対して前記中間枠部材を第1軸の周りに回転可能に支持する第1軸受と、
前記中間枠部材に対して前記保持部材を前記第1軸と直交する第2軸の周りに回転可能に支持する第2軸受と、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の照明光学系。
【請求項4】
前記第1チルト機構または前記第2チルト機構は、
外枠部材と、
前記外枠部材の中に配置された中間枠部材と、
前記中間枠部材の中に配置され、前記オプティカルインテグレータの側面を保持する保持部材と、
前記外枠部材に対して前記中間枠部材を第1軸の周りに回転可能に支持する第1板バネと、
前記中間枠部材に対して前記保持部材を前記第1軸と直交する第2軸の周りに回転可能に支持する第2板バネと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の照明光学系。
【請求項5】
前記第1チルト機構または前記第2チルト機構は、前記オプティカルインテグレータの光軸方向に移動可能な直動機構を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項6】
前記オプティカルインテグレータは、前記第1構造体と前記第2構造体との間に配置される、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項7】
前記第1チルト機構は断熱部材を介して前記第1構造体に結合され、かつ/または、前記第2チルト機構は断熱部材を介して前記第2構造体に結合されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項8】
前記第1チルト機構は吸振部材を介して前記第1構造体に結合され、かつ/または、前記第2チルト機構は吸振部材を介して前記第2構造体に結合されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系。
【請求項9】
原版を照明する請求項1乃至のいずれか1項に記載の照明光学系と、
前記照明された原版のパターンの像を基板に投影する投影光学系と、
を含むことを特徴とする露光装置。
【請求項10】
請求項に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記工程で露光された基板を現像する工程と、
を含み、前記現像された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体、液晶デバイス製造における照明光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの製造に用いられる露光装置は、原版(レチクルなど)に形成されているパターンを、結像光学系および投影光学系を介して基板(表面にレジスト層が形成されたウエハなど)に転写する。露光装置は、光源からの光束で原版を照明する照明光学装置を備える。露光装置の生産性は照度を高くすることで上がるため、一般的に照度は高いことが求められる。また、高品位なデバイスのためには、テレセントリシティ(光軸に対する主光線の傾き)が小さいこと、像面照度が均一であることが必要である。したがって、照明光学装置には、原版に必要な照明領域に光束を照射しつつ、照度が高いこと、テレセントリシティが小さいこと、像面照度が均一であることが求められる。
【0003】
照度均一性を向上するために、オプティカルインテグレータを備えた照明光学装置が知られている。特許文献1には、内面反射型のオプティカルインテグレータが、入射端面から入射した光束を内面で複数回反射させ、射出端面での光強度分布を均一化させることが記載されている。また、特許文献1には、オプティカルインテグレータの射出端面と被照明面とが共役関係となるように射出端面と被照明面との間に結像光学系を配置することで、被照明面での照度均一性が向上するが記載されている。さらに、特許文献1には、オプティカルインテグレータを射出端面の中心を回転中心として傾けることによりテレセントリシティを調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6494259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の照明装置では、光源からの光を無駄なく利用し、原版への照明領域を調整するためには、光源を含む構造体の位置および姿勢を高精度に調整する必要がある。しかし、光源を含む構造体は、光を遮蔽する機構や排気のための構成を含むため高重量であり、高精度な調整が困難になりうる。
【0006】
原版および結像光学系を配置する空間において構成物には高精度な位置決めと駆動が求められるため、熱膨張を抑制するべく温度一定であることが必要である。そのため、発熱体である光源101と結像光学系108とは、分離された別々の構造体によって構成されるのが通常である。例えば、図6(a)のように、光源101は構造体205に収容され、結像光学系108は、構造体205とは異なる構造体206に収容される。図6(a)の例では、構造体205には、光源101の他、反射ミラー103、および、オプティカルインテグレータ104が、収容されている。すなわち、光源101と反射ミラー103とオプティカルインテグレータ104とが同一構造体に配置される。ここで、「同一構造体に配置される」とは、その構造体の中に配置される複数の構成要素の間の位置関係が、所定の要求精度内に収まるように、それらの構成要素が固定的に配置されることをいう。図6(a)の場合、構造体205内のオプティカルインテグレータ104の光軸と、構造体206内の結像光学系108の光軸とが合うように、構造体205と構造体206との位置を合わせる必要がある。オプティカルインテグレータ104の射出端面は被照明面であるレチクル112と光学的に共役となっている。そのため、レチクル112における照明領域を調整するために、光源101およびオプティカルインテグレータ104を含む構造体205の位置および姿勢を、高精度に調整する必要がある。
【0007】
一方、図6(b)は、オプティカルインテグレータ104が光源101側の構造体207ではなく結像光学系108側の構造体208に含まれる構成を示している。この場合、光源101の光軸に対してオプティカルインテグレータ104の入射端面の位置がずれると照度低下を生じるため、構造体207の位置および姿勢を高精度に調整する必要がある。また、構造体208においても光量損失を抑えるために、ミラー等を調整する機構が結像光学系108内に設ける必要がある。そのため、結像光学系が複雑化し、照明光学装置の大型化およびコスト増を引き起こしうる。
【0008】
本発明は、例えば、被照明面における照明領域の調整の高精度化に有利な照明光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、光源からの光を用いて被照明面を照明する照明光学系であって、前記光源を収容する第1構造体と、入射端面から入射した前記光源からの光を内面で複数回反射させるオプティカルインテグレータと、前記被照明面に前記オプティカルインテグレータの射出端面の像を形成する結像光学系と、前記結像光学系を収容する、前記第1構造体とは異なる第2構造体と、前記光源の光軸に対して前記オプティカルインテグレータの前記入射端面の位置がずれないように前記オプティカルインテグレータを前記第1構造体に結合させ、前記オプティカルインテグレータの前記入射端面における位置を回転中心として前記オプティカルインテグレータを傾ける第1チルト機構と、前記結像光学系の光軸に対して前記オプティカルインテグレータの前記射出端面の位置がずれないように前記オプティカルインテグレータを前記第2構造体に結合させ、前記オプティカルインテグレータの前記射出端面における位置を回転中心として前記オプティカルインテグレータを傾ける第2チルト機構と、を有する、ことを特徴とする照明光学系が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、被照明面における照明領域の調整の高精度化に有利な照明光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】露光装置の構成を示す図。
図2】照明光学系の構成を示す図。
図3】チルト機構の構成を示す図。
図4】固定機構の構成を示す図。
図5】照明光学系の構成を示す図。
図6】従来の照明光学系の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に係る露光装置100の構成を示す図である。露光装置100は、例えば半導体デバイスの製造工程におけるリソグラフィ工程で用いられるものであり、レチクル112(原版、マスク)に形成されているパターンの像を基板114上に露光(転写)する装置である。本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、被露光基板である基板114はその表面が水平面(XY平面)と平行になるように基板ステージ116の上に置かれる。よって以下では、基板Wの表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向といい、X軸周りの回転方向、Y軸周りの回転方向、Z軸周りの回転方向をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向という。
【0014】
露光装置100は、照明光学系110と、投影光学系113と、基板ステージ116とを備えうる。照明光学系110は、光源101と、楕円ミラー102と、オプティカルインテグレータ104と、結像光学系108とを含みうる。光源101は、例えば、i線(波長365nm)等の光を供給する超高圧水銀ランプでありうる。光源101はこれに限らず、例えば248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ、193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ、または、157nmの波長の光を供給するF2レーザであってもよい。光源101は、楕円ミラー102の第1焦点付近に配置される。楕円ミラー102は、光源101からの光束を、楕円ミラー102の第2焦点付近のオプティカルインテグレータ104の入射端面104aに集光する。図1に示されるように、楕円ミラー102とオプティカルインテグレータ104の間に反射ミラー103を介在させてもよい。
【0015】
オプティカルインテグレータ104は、入射端面104aから入射した光源101からの光を内面で複数回反射させて、射出端面104bでの光強度分布を均一化させる内面反射形のロッド型オプティカルインテグレータ(オプティカルロッド)である。オプティカルインテグレータ104の形状は例えば四角柱であり、入射端面104aおよび射出端面104bの形状は四角形となっている。ただし、オプティカルインテグレータ104の形状は他の形状であってもよい。
【0016】
結像光学系108は、第1光学部材105と、反射ミラー106と、第2光学部材107とを含む。第1光学部材105は、オプティカルインテグレータ104の射出端面104bからの光を平行光にする1つ以上のレンズを含みうる。第2光学部材107は、第1光学部材105で平行光にされた光を被照明面であるレチクル112へ集光する1つ以上のレンズを含みうる。オプティカルインテグレータ104の射出端面104bと被照明面であるレチクル112とが光学的に共役な関係になるように構成することで、レチクル112を均一な照度で照明することができる。
【0017】
レチクル112は、基板114上に転写されるべきパターン(例えば回路パターン)が形成された、例えば石英ガラス製の原版である。レチクル112は、不図示のレチクルステージによって保持され、X方向およびY方向に可動である。
【0018】
投影光学系113は、レチクル112を通過した光を所定の倍率で基板114上に投影する。基板114は、表面上にレジスト(感光性材料)が塗布された、例えば単結晶シリコンからなる基板である。基板ステージ116は、基板チャック115を介して基板114を保持し、X,Y,Z方向ならびにθx,θy,θz方向に可動である。
【0019】
一般的に、レチクル112上の光強度分布を均一化するために、オプティカルインテグレータ104の内面で光が反射する回数は十分に多くとられている。ここで、図1において一点鎖線で示されたX方向に延びる光軸に対してオプティカルインテグレータ104をθ傾けることにより、オプティカルインテグレータ104の射出光束の光量重心はθ変化する。
【0020】
光学系の光軸に対して瞳中心を通る主光線が平行であることを、「光学系がテレセントリックである」という。これは、物体がデフォーカスしてもその像がボケるだけで横ずれしないことを保証する概念である。露光装置における光学系は可能な限りテレセントリックであるように設計されるが、製造誤差等から主光線の傾きの発生を完全になくすことは極めて難しい。以下では、光学系の主光線の傾きを、「テレセントリシティ」という。結像光学系108のレンズ倍率をmとすると、オプティカルインテグレータ104をθ傾けることにより、レチクル112におけるテレセントリシティは、平均的にθ/m変化する。
【0021】
図2は、本実施形態における照明光学系110の構成を示す図である。図2の例では、光源101とオプティカルインテグレータ104が構造体201に収容され、結像光学系108は構造体201とは別の構造体202に収容されている。光源101とオプティカルインテグレータ104が同一構造体に配置されているので、光源101とオプティカルインテグレータ104は、所定の要求精度内に収まるような位置関係が維持されている。この構成は、光源101とオプティカルインテグレータ104の入射端面104aとの間の相対位置誤差を抑えやすく、光源101の光軸に対するオプティカルインテグレータ104の入射端面104aの位置ずれによる照度低下の抑制の点で有利である。また、熱源である光源101と結像光学系108は、空間的に分離された別々の構造体に収容されるため、高度な位置精度が要求される結像光学系108の熱膨張を抑制することができる。
【0022】
図2において、照明光学系110は、オプティカルインテグレータ104を傾けることによりオプティカルインテグレータ104の光軸を調整する調整部40を備える。調整部40は、チルト機構41と固定機構42とを含みうる。チルト機構41は、入射端面における位置(例えば入射端面の中心)を回転中心としてオプティカルインテグレータ104を傾けるための機構である。固定機構42は、チルト機構41によって調整されたオプティカルインテグレータ104の傾き状態を維持(固定)するための機構であり、射出端面104b付近に設けられる。
【0023】
図2において、光源101からの光の光軸と、結像光学系108の光軸との間の位置ずれ量がaで表されている。これは例えば、構造体201と構造体202の設置時の誤差、光源101の稼働時に生じる熱膨張等によって生じうる。オプティカルインテグレータ104の射出端面104bと被照明面であるレチクル112は共役関係にあるため、結像光学系108の結像倍率をmとすると、レチクル112上の照明領域は、m・aだけ平行に位置ずれする。そこで、チルト機構41により、オプティカルインテグレータ104を、入射端面上の位置を回転中心として傾けて射出端面104bを距離aだけ移動させる。これにより、レチクル112での照明領域の平行位置ずれを解消できる。このように入射端面104a上の位置を回転中心としてオプティカルインテグレータ104を傾けるこの構成によれば、入射端面104aの光源101との位置関係は変わらないため、照度低下が発生しない。したがってこの構成は、オプティカルインテグレータ104を平行移動させて調整する場合と比較し、この点において有利である。
【0024】
照度分布計測部301は、被照明面であるレチクル112における照度分布を計測する。図2の例では、照度分布計測部301は構造体202に配置されているが、基板ステージ116等に配置されてもよい。また、位置計測部302は、構造体202に配置され、オプティカルインテグレータ104の射出端面104bの位置を計測する。
【0025】
駆動部304は、チルト機構41を駆動する。制御部303は、照度分布計測部301による計測結果および位置計測部302による計測結果に基づいて、駆動部304を制御する。制御部303は、CPUおよびメモリを含むコンピュータによって構成されうる。
【0026】
例えば、事前の計測により、位置計測部302により計測されたオプティカルインテグレータ104の射出端面104bの位置と照度分布計測部301により計測された照度分布との対応関係が得られる。予め得られた対応関係は制御部303のメモリに記憶される。その後、調整時において、制御部303は、メモリに記憶されている対応関係を参照して、照度分布計測部301での計測結果に対応するオプティカルインテグレータ104の射出端面104bの位置を決定する。制御部303は、オプティカルインテグレータ104の射出端面104bの位置が上記決定された位置になるように駆動部304に指令を出す。これに応じてチルト機構41が駆動する。
【0027】
図3は、チルト機構41の構成例を示す図である。図3は、チルト機構41を反射ミラー103側から光軸方向に見た図であり、ハッチングされた部分は断面図を表している。図3(a)において、中央の四角形がオプティカルインテグレータ104の入射端面104aを表している。オプティカルインテグレータ104の入射端面の104a付近の側面が、保持部材413によって保持される。
【0028】
チルト機構41の外周部をなす外枠部材411は、構造体201に結合されている。外枠部材411の中には、隙間を設けて中間枠部材412が配置されている。外枠部材411の縦壁の中央部には、Y方向に光軸に向かって延びるロッド421(第1軸)が突設されている。中間枠部材412は、第1軸受414を介して、外枠部材411に対して、ロッド421の周りに回転可能に支持されている。保持部材413は、中間枠部材412の中に、隙間を設けて配置されている。中間枠部材412の横壁の中央部には、Z方向に光軸に向かって延びるロッド422(第2軸)が突設されている。保持部材413(すなわちオプティカルインテグレータ104)は、第2軸受416を介して、中間枠部材412に対して、ロッド422の周りに回転可能に支持されている。また、保持部材413と中間枠部材412とはロッド422により連結されているから、中間枠部材412が第1軸受414によりロッド421周りに回転するのに伴って、保持部材413およびオプティカルインテグレータ104もロッド421周りに回転する。このように、オプティカルインテグレータ104は、チルト機構41によって、入射端面104aの位置(例えば中心位置)を回転中心にして回転することにより、オプティカルインテグレータ104の傾きを調整することが可能である。
【0029】
図3(a)では、第1軸受414および第2軸受416には転がり軸受が使用されている。第1軸受414および第2軸受416にはすべり軸受が使用されてもよい。図3(b)は、図3(a)の変形例を示している。図3(b)では、第1軸受414および第2軸受416の代わりに、第1軸(Y軸)の周りに回転可能な第1板バネ415と第2軸(Z軸)の周りに回転可能な第2板バネ417が使用されている。第1板バネ415および第2板バネ417にはそれぞれ、Y軸周りおよびZ軸周りの方向にねじり剛性が弱い板バネが使用される。
【0030】
図4は、固定機構42の構成を示す図である。図4は、固定機構42を、結像光学系108側から光軸方向に見た図であり、ハッチングされた部分は断面図を表している。ここで、オプティカルインテグレータ104の射出端面104b付近の側面は、第2保持部材513によって保持されている。なお、第2保持部材513は、図3で示した保持部材413と同一の部材であってもよいし、別の部材であってもよい。固定機構42は、第2保持部材513を支持し、第2保持部材513(すなわちオプティカルインテグレータ104の射出端面104b)のY方向(第1軸方向)の位置を調整するY調整ベース502(第1調整ベース)を含みうる。また、固定機構42は、第2保持部材513(すなわちオプティカルインテグレータ104の射出端面104b)のZ方向(第2軸方向)の位置を調整するZ調整ベース501(第2調整ベース)を含みうる。Z調整ベース501は、構造体201に結合されている。Y調整ベース502は、X-Z面においてボルト503で固定されることにより、Z調整ベース501によって支持されている。第2保持部材13は、X-Y面においてボルト504で固定されることによりY調整ベース502によって支持されている。
【0031】
オプティカルインテグレータ104のZ方向の位置を調整する場合、ボルト503を緩め、所望の位置にZ調整ベース501を移動させ、ボルト503を固定する。オプティカルインテグレータ104のY方向の位置を調整する場合、ボルト504を緩め、所望の位置に第2保持部材13を移動させ、ボルト504を固定する。このような固定機構42によって、チルト機構41によって調整されたオプティカルインテグレータ104の傾き状態が維持される。
【0032】
チルト機構41によりオプティカルインテグレータ104を傾けることによりテレセントリシティが発生する。オプティカルインテグレータ104の傾き量をθ、結像光学系108の結像倍率をmとすると、レチクル112におけるテレセントリシティは、θ/mとなる。ここで、オプティカルインテグレータ104の長さ(ロッド型オプティカルインテグレータのロッド長)をLとする。また、構造体201と構造体202の光軸の位置ずれ量(すなわち、光源101からの光の光軸と結像光学系108の光軸との間の位置ずれ量)をaとする。この場合、傾き量θをa/mにすれば、レチクル112における照明領域の位置ずれを解消することができる。よって、レチクル112におけるテレセントリシティ許容値をTとするとき、a/L<T・mの関係を満たす場合には、オプティカルインテグレータ104を傾けても、テレセントリシティを許容値内とすることができる。よって、ロッド長Lは、
L>a・m/T
の条件を満たす長さであればよい。一例として、mを5倍、aを1mm、Tを1nm/1μmとするとき、Lは200mm以上であればよい。
【0033】
一般に、光源を含む構造体は、光の遮蔽する構成や、排気のための構成を含むため、重量が嵩み高精度な位置調整が困難になる。これに対し本実施形態では、構造体201自体の位置調整ではなく、オプティカルインテグレータ104の傾き調整により、照明領域を調整可能とした。これにより、構造体201自体の高精度な位置調整が不要でありながら、照明領域の調整が可能で、高照度、小テレセントリシティ、像面照度均一化を実現できる。
【0034】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る照明光学系110の構成を示す図である。図5の例では、光源101が構造体203(第1構造体)に収容され、結像光学系108が構造体203とは異なる構造体204(第2構造体)に収容されている。オプティカルインテグレータ104は、構造体203と構造体204との間に配置される。オプティカルインテグレータ104の傾きを調整する調整部40は、入射端面104a側のチルト機構41a(第1チルト機構)と射出端面104b側のチルト機構41b(第2チルト機構)とを含みうる。チルト機構41aは、オプティカルインテグレータ104の入射端面104aにおける位置を回転中心としてオプティカルインテグレータ104を傾ける機能を持つ。一方、チルト機構41bは、オプティカルインテグレータ104の射出端面104bにおける位置を回転中心としてオプティカルインテグレータ104を傾ける機能を持つ。オプティカルインテグレータ104は、チルト機構41aを介して構造体203と結合され、チルト機構41bを介して構造体204と結合されている。
【0035】
構造体203と構造体204は、光軸がZ方向に距離aだけ平行に位置ずれしている。しかし、光源101の光軸に対するチルト機構41aの構造体203への取り付け精度は予め保証されている。そのため、このような構造体同士の位置ずれがあっても、光源101の光軸に対してオプティカルインテグレータ104の入射端面104aの位置がずれることによる照度低下は生じない。同様に、結像光学系108の光軸に対するチルト機構41bの構造体204への取り付け精度は予め保証されている。そのため、このような構造体同士の位置ずれがあっても、結像光学系108の光軸に対してオプティカルインテグレータ104の射出端面104bの位置がずれることによるレチクル112における照明領域の位置ずれは生じない。
【0036】
また、露光装置の継続的な運用により、床の装置搭載面の変形や、光源101による構造体203の熱膨張等により、構造体203と構造体204の位置関係の変化が生じうる。しかし、そのような変化があっても、光源101とオプティカルインテグレータ104の入射端面104aとの相対位置、および、オプティカルインテグレータ104の射出端面104bと結像光学系108との相対位置は変わらない。よって、照度低下やレチクル112における照明領域の位置ずれは発生しない。
【0037】
チルト機構41aおよびチルト機構41bのどちらかに、光軸方向に移動可能な直動機構を設け、オプティカルインテグレータ104がその直動機構を介して構造体203または構造体204に結合されてもよい。これにより、オプティカルインテグレータ104の両端のチルト機構同士の距離が変動しても、チルト機構への応力を解消することが可能である。
【0038】
チルト機構41aは断熱部材を介して構造体203に結合され、かつ/または、チルト機構41bは断熱部材を介して構造体204に結合されてもよい。これにより、光源101の熱が構造体204(結像光学系108)へ伝わることを防止できる。
【0039】
また、チルト機構41aは吸振部材を介して構造体203に結合され、かつ/または、チルト機構41bは吸振部材を介して構造体204に結合されてもよい。これにより、構造体203と構造体204との間で振動が伝わることを防止できる。
【0040】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態に係る物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、基板に塗布された感光剤に上記の露光装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板を露光する工程)と、かかる工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0041】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0042】
40:調整部、100:露光装置、101:光源、102:楕円ミラー、104:オプティカルインテグレ―タ、108:結像光学系、112:レチクル(被照明面)、113:投影光学系、114:基板、116:基板ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6