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特許7446098ペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物、並びにペースト加工用プラスチゾル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物、並びにペースト加工用プラスチゾル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20240301BHJP
   C08K 5/5317 20060101ALI20240301BHJP
   C08K 7/16 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/5317
C08K7/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221511
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021091755
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】597012286
【氏名又は名称】新第一塩ビ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】織田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】紙中 学
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-011977(JP,B1)
【文献】特開昭55-129437(JP,A)
【文献】特開昭63-223050(JP,A)
【文献】特開2000-160033(JP,A)
【文献】特開2007-119791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
C08K 5/5317
C08K 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の平均粒子径が0.1~3.0μmのペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂微粒子と、リン酸型アニオン系界面活性剤と、一次粒子の平均粒子径が5.0~50.0μmのペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子と、可塑剤とを含有するペースト加工用プラスチゾルであって、
前記リン酸型アニオン系界面活性剤が、下記式(1A)で表される化合物であることを特徴とするペースト加工用プラスチゾル。
【化1】
(式(1A)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、又はアラルキル基を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表し、n1は0~5の整数であり、n2は0~5の整数であり、n1+n2は1~5の整数であり、R~Rは、水素原子又はアルキル基を表す。)
【請求項2】
一次粒子の平均粒子径が0.1~3.0μmのペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂微粒子と、一次粒子の平均粒子径が5.0~50.0μmのペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子と、可塑剤とを含有するペースト加工用プラスチゾルの製造方法であって、
下記式(1A)で表される化合物であるリン酸型アニオン系界面活性剤を配合することを特徴とするペースト加工用プラスチゾルの製造方法。
【化2】
(式(1A)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、又はアラルキル基を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表し、n1は0~5の整数であり、n2は0~5の整数であり、n1+n2は1~5の整数であり、R~Rは、水素原子又はアルキル基を表す。)
【請求項3】
ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂微粒子の水性分散液に、リン酸型アニオン系界面活性剤を配合し、乾燥して、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂顆粒を調製する第1工程と、
前記ペースト加工用塩化ビニル系樹脂顆粒と、ペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子と、可塑剤とを混合して、ゾルを調製する第2工程と、
を有することを特徴とする請求項記載のペースト加工用プラスチゾルの製造方法。
【請求項4】
前記リン酸型アニオン系界面活性剤を、前記ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂微粒子100質量部に対して0.01~2.0質量部配合することを特徴とする請求項2又は3記載のペースト加工用プラスチゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト加工に用いられる塩化ビニル系樹脂組成物、並びにペースト加工に用いられるプラスチゾル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂のペースト加工は、ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂微粒子を可塑剤と混合してプラスチゾルに調製して実施されている。その際、上記ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂微粒子の可塑剤への分散性を向上させるために界面活性剤が配合されることがある。かかる界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系非イオン性界面活性剤が好適なものとして汎用され、その他に、そのリン酸エステル化体であるリン酸エステル系アニオン性界面活性剤等も使用されている。これらポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤は、一般的に界面活性能が高く、より汎用的な存在であるなどの理由から、オキシエチレン単位の繰り返し数が8程度の長鎖のものが使用されている。
【0003】
このプラスチゾルの用途としては、塗料、コーティング剤等の低粘度品用途がある。このような低粘度品用途の場合、得られるプラスチゾルの粘度を低下させる目的で、上記のようなペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂微粒子及び可塑剤の他に、ペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子を混合することがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-140256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、プラスチゾルにペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子を混合する場合、界面活性剤として、上記のようなポリオキシエチレン単位の繰り返し数が8程度のポリオキシエチレンアルキルエーテル系非イオン性界面活性剤や、そのリン酸エステル化体を使用すると、プラスチゾルを長期間保存した際、ぺースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子に由来した沈降物が生じるという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、低粘度のプラスチゾルにおいて、ぺースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子に由来した沈降物の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、界面活性剤として、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5のポリオキシエチレン鎖が短いポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤を使用することにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤(ただし、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。)とを含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
[2]前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤が、下記式(1)又は(2)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
(式(1)及び(2)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、又はアラルキル基を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表し、nは1~5の整数を表し、ポリオキシエチレン単位のエチレン基は、それぞれアルキル基又はアルケニル基で置換されていてもよい。)
【0012】
[3]前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤が、ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂100質量部に対して0.01~2.0質量部含有されていることを特徴とする[1]又は[2]記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
[4]前記ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂は、一次粒子の平均粒子径が0.1~3.0μmの微粒子であることを特徴とする[1]~[3]のいずれか記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
[5]顆粒状であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【0013】
[6]ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤(ただし、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。)と、ペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂と、可塑剤とを含有することを特徴とするペースト加工用プラスチゾル。
[7]前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤が、上記式(1)又は(2)で表される化合物であることを特徴とする[6]記載のペースト加工用プラスチゾル。
[8]粘度が、1500~3200mPa・sであることを特徴とする[6]又は[7]記載のペースト加工用プラスチゾル。
【0014】
[9]ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂と、ペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂と、可塑剤とを含有するペースト加工用プラスチゾルの製造方法であって、
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤(ただし、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。)を配合することを特徴とするペースト加工用プラスチゾルの製造方法。
[10]ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂の水性分散液に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤(ただし、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。)を配合し、乾燥して、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂顆粒を調製する第1工程と、
前記ペースト加工用塩化ビニル系樹脂顆粒と、ペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子と、可塑剤とを混合して、ゾルを調製する第2工程と、
を有することを特徴とする[9]記載のペースト加工用プラスチゾルの製造方法。
【0015】
[11]前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤が、上記式(1)又は(2)で表される化合物であることを特徴とする[9]又は[10]記載のペースト加工用プラスチゾルの製造方法。
【0016】
[12]前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤を、前記ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂100質量部に対して0.01~2.0質量部配合することを特徴とする[9]~[11]のいずれか記載のペースト加工用プラスチゾルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低粘度のプラスチゾルにおいて、ぺースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子に由来した沈降物の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[ペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物]
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物は、ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤(ただし、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。)とを含有する。
【0019】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物の形態としては、例えば、顆粒状物の他、それぞれの粉体の混合物等の粉体の組合せを挙げることができる。顆粒状物の場合、そのレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した平均粒子径は20~150μmであることが好ましく、30~100μmであることがより好ましい。粉体の場合、そのレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した平均粒子径は0.1~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。
【0020】
ぺースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂を使用するプラスチゾルの製造において、本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物を使用することにより、低粘度のゾルとすることができると共に、ぺースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子に由来した沈降物の発生を抑制することができる。また、顆粒とした際に、見掛け密度が高いものとなり、空送性や流動性に優れた取り扱い性の良好なものとなる。さらに、長期保存後も、ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂の可塑剤への良好な分散性を維持することができる。
【0021】
以下、本件明細書においては、本発明におけるペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂を、単に塩化ビニル系原料樹脂と称し、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤(ただし、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。)を単にリン酸型アニオン系界面活性剤と称し、ペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂を、単に塩化ビニル系ブレンド樹脂と称すことがある。
【0022】
(ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂)
本発明におけるペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂としては、塩化ビニルのホモポリマーの他、塩化ビニルを主体とするコポリマーが含まれる。塩化ビニルを主体とするとは、例えば、塩化ビニルが全体の50質量%以上であることをいい、70質量%以上であることが好ましい。
【0023】
塩化ビニルと共重合し得る単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-N,N-ジメチルアミノエチル等の不飽和モノカルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和アミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;これらのエステルおよびこれらの無水物;N-置換マレイミド類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニリデン等のビニリデン化合物等を挙げることができる。
【0024】
本発明の塩化ビニル系原料樹脂は、塩化ビニル単独で、又は塩化ビニルとこれと共重合可能な不飽和単量体とからなる単量体混合物を従来公知の方法で重合することにより得ることができる。例えば、乳化重合(播種乳化重合を含む)や、微細懸濁重合(播種微細懸濁重合を含む)により得ることができる。
【0025】
得られる塩化ビニル系原料樹脂は、通常、一次粒子の平均粒子径が0.1~3.0μmの微粒子であり、0.7~2.0μmの微粒子であることが好ましい。この一次粒子の平均粒子径は、光透過式-遠心沈降粒度分布測定器により、測定されたものをいう。
【0026】
(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤)
本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。
具体的には、下記式(1)又は(2)に示すものを挙げることができる。
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
式(1)及び(2)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、又はアラルキル基を表す。アルキル基、アルケニル基、又はアラルキル基のアルキル部分は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、その炭素数としては、例えば、1~30が好ましく、5~20がより好ましく、10~16がさらに好ましい。アラルキル基のアリール部分としては、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0030】
Mは、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を表す。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等を挙げることができ、ナトリウムが好ましい。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等を挙げることができ、マグネシウムが好ましい。
nは1~5の整数を表し、1~4の整数が好ましい。
また、ポリオキシエチレン単位のエチレン基は、それぞれアルキル基又はアルケニル基で置換されていてもよい。すなわち、一部のポリオキシエチレン単位のエチレン基が置換基を有していてもよいし、すべてのポリオキシエチレン単位のエチレン基が置換基を有していてもよい。置換基としてのアルキル基及びアルケニル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、その炭素数としては、例えば、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
【0031】
より具体的に、式(1)又は(2)に示すリン酸型アニオン系界面活性剤は、下記式(1A)又は(2A)で表すことができる。
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
式(1A)及び(2A)中、ポリオキシエチレン単位は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。ポリオキシエチレン単位の構造は、ブロック構造であっても、ランダム構造であってもよい。R~Rは、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。また、n1は0~5の整数であり、n2は0~5の整数であり、n1+n2=nである。n1は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物においては、リン酸型アニオン系界面活性剤が、塩化ビニル系原料樹脂100質量部に対して0.01~2.0質量部含有されていることが好ましく、0.02~1.5質量部含有されていることがより好ましい。この範囲で配合することにより、プラスチゾルに配合した際、本発明の効果を十分に享受することができる。
【0036】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法としては、塩化ビニル系原料樹脂及びリン酸型アニオン系界面活性剤を混合して混合粉体とする方法や、塩化ビニル系原料樹脂及びリン酸型アニオン系界面活性剤を造粒して顆粒とする方法を挙げることができる。顆粒の製造方法は、具体的には、後述するペースト加工用プラスチゾルの製造方法における第一工程と同様である。
【0037】
[ペースト加工用プラスチゾル]
本発明のペースト加工用プラスチゾルは、ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤(ただし、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。)と、塩化ビニル系ブレンド樹脂と、可塑剤とを含有する。
【0038】
本発明のペースト加工用プラスチゾルは、粘度が低く、塩化ビニル系ブレンド樹脂に由来した沈降物の発生が抑制される。また、塩化ビニル系原料樹脂の可塑剤への分散性が良好である。
【0039】
ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤については、上記本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物で説明したものと同様である。
【0040】
(ぺースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂)
本発明におけるぺースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂としては、塩化ビニル系原料樹脂と同様、塩化ビニルのホモポリマーの他、塩化ビニルを主体とするコポリマーであってもよい。
【0041】
塩化ビニル系ブレンド樹脂は、塩化ビニル系原料樹脂よりも粒子径が大きく、通常、一次粒子の平均粒子径が5.0~50.0μmの粒子であり、20.0~40.0μmの粒子であることが好ましい。一次粒子の平均粒子径の測定方法は、塩化ビニル系原料樹脂の場合と同様である。
【0042】
塩化ビニル系ブレンド樹脂の配合量は、用途等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、塩化ビニル原料樹脂100質量部当たり、25~100質量部である。
【0043】
(可塑剤)
本発明のペースト加工用プラスチゾルにおいては、従来塩化ビニル樹脂プラスチゾルの可塑剤として公知のものを使用することができる。
【0044】
本発明においては、例えば、ジブチルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレートなどのフタル酸誘導体;ジ-(2-エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;ジ-(2-エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ-n-オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸誘導体;ジ-n-ブチルアジペート、ジ-(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸誘導体;ジ-(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジ-n-ヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸誘導体;ジ-n-ブチルセバケート、ジ-(2-エチルヘキシル)セバケートなどのセバシン酸誘導体;ジ-n-ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ-(2-エチルヘキシル)マレエートなどのマレイン酸誘導体;ジ-n-ブチルフマレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フマレートなどのフマル酸誘導体;トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリ-n-ヘキシルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸誘導体;テトラ-(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-n-オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸誘導体;トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルヘキシル)シトレートなどのクエン酸誘導体;モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ-(2-エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸誘導体;ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエートなどのオレイン酸誘導体;グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸誘導体;グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸誘導体;ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸誘導体;トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸誘導体;ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール誘導体;グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン誘導体;アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤;あるいは部分水添ターフェニル、接着性可塑剤;さらにはジアリルフタレート、アクリル系モノマーやオリゴマーなどの重合性可塑剤などを用いることができる。
【0045】
可塑剤は、これらの中でもフタル酸エステル系のものが好適である。なお、これらの可塑剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
可塑剤の配合量は、用途等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、塩化ビニル原料樹脂100質量部当たり、40~250質量部である。
【0046】
(その他の成分)
本発明のペースト加工用プラスチゾルにおいては、その他の各種成分を配合してもよい。例えば、熱安定剤、充填剤、発泡剤、発泡促進剤、粘度調節剤、接着性付与剤、着色剤、希釈剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、補強剤を挙げることができる。
【0047】
本発明のペースト加工用プラスチゾルは、塩化ビニル系ブレンド樹脂を配合した低粘度ゾルであり、粘度は、例えば、1500~3200mPa・sであり、1500~3000Pa・sが好ましく、1500~2500Pa・sがより好ましい。この粘度は、実施例で示した測定方法により測定されたものをいう。
【0048】
本発明のペースト加工用プラスチゾルは低粘度ゾルであるため、塗料、コーティング剤等の低粘度品用途として有用である。
【0049】
[ペースト加工用プラスチゾルの製造方法]
本発明のペースト加工用プラスチゾルの製造方法は、ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂と、ペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂と、可塑剤とを含有するペースト加工用プラスチゾルの製造方法であって、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩型アニオン系界面活性剤(ただし、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数が1~5である。)を配合する。
各成分については、上記本発明のペースト加工用プラスチゾルで説明したものと同様である。
【0050】
リン酸型アニオン系界面活性剤は、プラスチゾルの製造のどの段階で配合してもよく、例えば、予め塩化ビニル系原料樹脂に配合しておいてもよく、塩化ビニル系ブレンド樹脂に配合しておいてもよく、また、塩化ビニル系原料樹脂、塩化ビニル系ブレンド樹脂、可塑剤の混合と同時に配合してもよい。これらの中でも、予め塩化ビニル系原料樹脂に配合しておく方法が好ましい。
【0051】
具体的に、リン酸型アニオン系界面活性剤を予め塩化ビニル系原料樹脂に配合しておく方法としては、ペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂の水性分散液に、リン酸型アニオン系界面活性剤を配合し、乾燥して、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂顆粒を調製する第1工程と、かかるペースト加工用塩化ビニル系樹脂顆粒と、ペースト加工用塩化ビニル系ブレンド樹脂粒子と、可塑剤とを混合して、ゾルを調製する第2工程とを有する方法を挙げることができる。
【0052】
ここで、水性分散液とは、水を主体とする分散媒を用いた分散液をいう。水を主体とする分散媒とは、例えば、水が分散媒全体の50質量%以上のものをいい、70質量%以上のものが好ましく、90%以上のものがより好ましい。
また、水性分散液中の塩化ビニル系原料樹脂の含有量としては、分散液全体の30~70質量%であることが好ましく、35~65質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
また、第1工程におけるリン酸型アニオン系界面活性剤が配合されたペースト加工用塩化ビニル系原料樹脂の水性分散液の乾燥は、通常、噴霧乾燥により行われる。噴霧乾燥機としては、本件技術分野で用いられている公知の噴霧乾燥機を用いることができ、噴霧形式としても、回転円盤型、二流体ノズル型、加圧ノズル型いずれの形式であってもよい。この噴霧乾燥により、通常、20~150μm程度の平均粒子径の顆粒が得られる。
【0054】
また、第1工程においては、リン酸型アニオン系界面活性剤を、塩化ビニル系原料樹脂100質量部に対して0.01~2.0質量部配合することが好ましく、0.02~1.5質量部配合することがより好ましい。この範囲で配合することにより、所望の顆粒を容易に製造できると共に、第1工程で得られた顆粒をプラスチゾルに配合した際、本発明の効果を十分に享受することができる。
【実施例
【0055】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
ステンレス製の撹拌機及びジャケット付耐圧反応機に、脱イオン水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7部、ラウリルアルコール/ミリスチルアルコール混合物1.0部、ジ-(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート0.05部を仕込み、減圧脱気した後、塩化ビニル単量体100部を仕込み、混合撹拌した。この混合物をホモジナイザーで均質化した後、別の脱気された耐圧反応器に移し、47℃に昇温して重合、重合転化率が85%に達した後、未反応単量体を除去し、一次粒子の平均粒子径が1.0μm、固形分濃度43重量%の塩化ビニル系原料樹脂の水性分散液(塩化ビニル重合体水性分散液)を得た。この塩化ビニル重合体水性分散液に分散する塩化ビニル系原料樹脂の一次粒子径は、光透過式-遠心沈降粒度分布測定器により測定して1.0μmであった。
【0057】
上記塩化ビニル重合体水性分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)水溶液を0.3phr(塩化ビニル重合体100質量部に対してポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸が0.3質量部)添加して十分に撹拌分散させた後、スプレードライヤーで入口温度150℃、出口温度55℃、アトマイザー回転数19000rpmでスプレー乾燥することによりペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。このペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した平均粒子径は70μmであった。
【0058】
[実施例2]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)の添加量を0.03phrに変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
[実施例3]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)の添加量を1.2phrに変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
【0059】
[実施例4]
実施例1で得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を微粉砕機(株式会社ダルトン製AIIW)で破砕し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定した平均粒子径が2.0μmペースト加工用塩化ビニル樹脂粉末を得た。
[実施例5]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数1)に変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
【0060】
[実施例6]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数4)に変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
[実施例7]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレン単位数2)に変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
【0061】
[実施例8]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸リン酸(ポリオキシエチレン単位数2)に変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
【0062】
[比較例1]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を添加しない他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
[比較例2]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数7)に変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
【0063】
[比較例3]
比較例2で得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を微粉砕機(株式会社ダルトン製AIIW)で破砕し、ペースト加工用塩化ビニル樹脂粉末を得た。
[比較例4]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ポリオキシエチレン単位数7)に変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
【0064】
[比較例5]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリエチレングリコール(平均分子量:約20000)に変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
[比較例6]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリエチレングリコール(平均分子量:約300)に変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
【0065】
[比較例7]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(ポリオキシエチレン単位数2)を、ポリビニルアルコールに変更した他は実施例1と同様にしてペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒を得た。
【0066】
上記実施例1~8及び比較例1~7のペースト加工用塩化ビニル樹脂組成物(顆粒、粉末)について、(1)ペースト粘度、(2)プラスチゾルの沈降性、(3)見掛け密度、及び(4)可塑剤への分散性を以下の方法で評価した。
【0067】
(1)ペースト粘度
500mlのプラスチックカップに、ペースト加工用塩化ビニル樹脂組成物(顆粒、粉末)50重量部、塩化ビニルブレンド樹脂〔新第一塩ビ(株)製PBZXA 一次粒子の平均粒子径35μm〕50重量部、可塑剤としてのジ-(2-エチルヘキシル)フタレート((株)ジェイ・プラス製DOP)50重量部、液状バリウム-亜鉛系熱安定剤2重量部を加え、プロペラ撹拌翼をとりつけたメカニカル制御撹拌機で10分間混練後、真空脱泡機に5分間かけてプラスチゾルを得た。気温23℃、湿度50%RHの雰囲気下で1時間静置後、プラスチゾルをよく掻き混ぜ、ブルックフィールド粘度計(英弘精機(株)製LVDV-3T)ローターNo.4、6rpmの粘度を測定した。
【0068】
(2)プラスチゾルの沈降性
上記(1)と同様に調製したプラスチゾルを容量150mlのプラスチック容器に200g計量し、温度23℃、湿度50%RHの条件下で7日間静置後、容器を逆さにして5分間プラスチゾルを排出し、容器内残留物の質量測定と堆積物の有無の確認を行った。プラスチゾルの沈降割合は、下記の式より求めた。
【0069】
ゾル沈降割合(%)=(容器内残留プラスチゾル質量÷200×100)
【0070】
(3)見掛け密度
得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂組成物を、JISカサ比重測定器(筒井理化学器械(株))を使用し、JIS K7365の方法に従って測定し、見掛け密度を求めた。
【0071】
(4)可塑剤への分散性
得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂組成物を、製造から3カ月後に、可塑剤としてのアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製LA-960)に投入して5分間超音波をかけ、粒度分布を測定して10μm以下の粒子の割合を求めた。
【0072】
結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1~3及び5~8のペースト加工用塩化ビニル樹脂顆粒は、ペースト粘度が十分に低粘度で、7日間静置後のプラスチゾルに、塩化ビニルブレンド樹脂に由来する堆積物は見られなかった。また、樹脂顆粒は、見掛け密度が高く、3カ月経過後も高い分散性を維持していた。
【0075】
なお、実施例1~3に示すように、ペースト粘度は、リン酸型アニオン系界面活性剤の添加量が多いほど低粘度であるが、添加量が少ない場合でも十分な減粘効果を示した。また、見かけ密度は、リン酸型アニオン系界面活性剤の添加量が多いほど高密度であり、添加量が少ない場合でも比較的高い見掛け密度を示した。
また、樹脂顆粒(実施例3)は、樹脂粉末(実施例4)に比して、高い見掛け密度を示した。
【0076】
実施例4のペースト加工用塩化ビニル樹脂粉末は、上記のように、見掛け密度で劣るものの、ペースト粘度、7日間静置後のプラスチゾルの沈降性、及び3カ月経過後の分散性において、粉砕前の樹脂顆粒(実施例3)と同等の物性であった。
【0077】
これに対して、本発明のリン酸型アニオン系界面活性剤を添加しない比較例1においては、ペースト粘度が高く、また、見掛け密度は低かった。
また、リン酸型アニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン単位数7)を用いた比較例2では、7日間静置後のプラスチゾルで堆積物が確認された。したがって、実施例1、5及び6の結果を合わせて考慮すると、ポリオキシエチレン単位数は、1~5程度が好ましいと考えられる。
比較例2の樹脂顆粒を粉砕した比較例3では、比較例2と同様、7日間静置後のプラスチゾルで堆積物が確認された。また、見掛け密度は、比較例2よりも低密度となった。
【0078】
リン酸型ではないノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレン単位数7)を用いた比較例4では、ペースト粘度は低粘度であったが、7日間静置後のプラスチゾルで堆積物が確認された。
水溶性ポリマーを用いた比較例5~7では、ペースト粘度はいずれも著しい増粘が見られた。また、3カ月経過後の樹脂顆粒の分散性はいずれも低下した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物及びペースト加工用プラスチゾルは、塩化ビニル樹脂のペースト加工に用いることができることから、産業上有用である。