(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】皮膚又は毛髪用組成物および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240301BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240301BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240301BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240301BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240301BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240301BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/891
A61Q5/00
A61Q17/04
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019224968
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋平
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-206467(JP,A)
【文献】特開2017-186312(JP,A)
【文献】特開2019-182769(JP,A)
【文献】特開2015-124167(JP,A)
【文献】特開2011-111401(JP,A)
【文献】特開2013-071931(JP,A)
【文献】特開2019-178069(JP,A)
【文献】特開2018-070556(JP,A)
【文献】アジエンス美髪オイル, 花王, 2008年4月12日, Cosmetic-Info.jp [online],[検索日 2023.10.20], インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=8348>
【文献】Treatment Oil, Uniliver, 2019年9月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.10.20], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:6835601
【文献】Perfumed Dry Oil, Roger & Gallet, 2012年12月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.10.20], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:1945780
【文献】"Soft to Touch...Hard to Get" Silky & Seductive Body Oil Mist, Benefit, 2013年10月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.10.20], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:2168175
【文献】Cleansing Oil, E'quipe, 2011年6月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.10.20], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:156439
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収剤、揮発性炭化水素、及び液状のイソノナン酸エステルが配合され
、
揮発性環状シリコーンが無配合、又は、揮発性環状シリコーンよりも前記揮発性炭化水素の配合量が多く、
水が無配合、又は、水の配合量が3.0質量%未満であり、
前記紫外線吸収剤の配合量が1.0質量%以上であることを特徴とする
皮膚又は毛髪用組成物。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤として、固形の紫外線吸収剤が配合された請求項
1に記載の皮膚又は毛髪用組成物。
【請求項3】
前記揮発性炭化水素の配合量が10質量%以上である請求項1
又は2に記載の皮膚又は毛髪用組成物。
【請求項4】
高重合メチルポリシロキサンが配合された請求項1~
3のいずれか1項に記載の皮膚用又は毛髪用組成物。
【請求項5】
非水系組成物である請求項1~
4のいずれか1項に記載の皮膚又は毛髪用組成物。
【請求項6】
粘度が50mPa・s以上である請求項1~
5のいずれか1項に記載の皮膚又は毛髪用組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の皮膚又は毛髪用組成物を使用することを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚又は毛髪用組成物および当該組成物を使用する毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、日常生活において日光に曝され、同時に日光に含まれる紫外線の影響を受ける。その影響として、毛髪損傷、ヘアカラー処理が施された毛髪の褪色などが報告されている。また、皮膚も紫外線によって影響を受けることは、広く知られている。
【0003】
毛髪についての紫外線対策のため、毛髪化粧料に紫外線吸収剤を配合することが公知となっており、市場を流通する毛髪用商品も存在する。このような商品の中には、皮膚を紫外線A波から守る指標であるPA(Protection Grade of UVA)や、紫外線B波から守る指標であるSPF(Sun Protection Factor)の表示がされているものもあり、この表示により消費者の購買意欲が高まることがある。また、PA又はSPFが示す皮膚を守る機能をもってして、皮膚用途への適用も可能といえる。
【0004】
紫外線吸収剤配合の毛髪化粧料は文献にも開示されており、例えば特許文献1には、紫外線吸収剤、揮発性環状シリコーンなどを配合した非水系毛髪化粧料が開示されている。この化粧料は、非水系であることから、水系のものとは異なった感触を毛髪に付与する。ただ、配合される揮発性環状シリコーンは、毛髪化粧料に配合される汎用性が高い成分である上に、化粧品需要量が世界的に増加しているために、その供給が不安視される場合がある。
【0005】
また、特許文献2にも紫外線吸収剤配合の化粧料が開示されており、同文献は、紫外線吸収剤1~25重量%、エステル油5~75重量%、揮発性炭化水素5~75重量%含有するものを開示する(請求項1)。そして、エチルヘキサン酸PPG-3ベンジルエーテルなどの特定のエステル油含む化粧料の場合には、紫外線吸収剤の均一な溶解に好ましいとされている(請求項2、段落0016、0039)。このように、紫外線吸収剤の溶解性を高める技術提案が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-109954号公報
【文献】特開2015-168664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、紫外線吸収剤の溶解性に優れる皮膚又は毛髪用組成物、及びこの組成物を使用する毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が紫外線吸収剤を配合する皮膚又は毛髪用組成物について鋭意検討を行った結果、液状のイソノナン酸エステルがエチルヘキサン酸PPG-3ベンジルエーテルなどの他のエステル油よりも紫外線吸収剤の溶解に適することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物は、紫外線吸収剤、揮発性炭化水素、及び液状のイソノナン酸エステルが配合されたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物において、紫外線吸収剤の配合量が1.0質量%以上であると良い。皮膚又は毛髪の紫外線対策には一定量以上の紫外線吸収剤の配合が有効であるから、紫外線吸収剤の配合量が1.0質量%以上であると好適である。
【0011】
本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物は、前記紫外線吸収剤として、固形の紫外線吸収剤が配合されたものでも良い。固形の紫外線吸収剤の溶解が不十分であると、この紫外線吸収剤が皮膚表面又は毛髪表面の手触りを粗くし易くするが、液状イソノナン酸エステルの配合が紫外線吸収剤の溶解性を高めるから、その粗さの感触を低減できる。
【0012】
本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物において、揮発性炭化水素の配合量が10質量%以上であると良い。化粧品の汎用原料であるデカメチルシクロペンタシロキサンなどの揮発性環状シリコーンは、化粧品需要量が世界的に増加しているために、供給が不安視される場合があるところ、揮発性炭化水素を10質量%以上配合すれば、揮発性環状シリコーンの使用量抑制に適する。
【0013】
本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物において、高重合メチルポリシロキサンが配合されていても良い。高重合メチルポリシロキサンの配合が紫外線吸収剤の溶解性を低下させることが一般的であるが、その低下を液状イソノナン酸エステルの配合により抑制できる。
【0014】
本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物は、非水系組成物であっても良い。非水系組成物の場合、紫外線吸収剤の溶解性が課題となり易いが、その溶解性は液状イソノナン酸エステルの配合により高まる。
【0015】
本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物は、粘度が50mPa・s以上のものが良い。粘度が50mPa・s以上であると、PA等(PA又はSPF)の向上に好適である。
【0016】
本発明に係る毛髪処理方法は、本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る皮膚又は毛髪用組成物によれば、紫外線吸収剤と共に液状イソノナン酸エステルが配合されるから、紫外線吸収剤の溶解性が高まり、紫外線吸収剤の配合量の増加が可能となる。
【0018】
また、本発明に係る毛髪処理方法によれば、液状イソノナン酸エステルの配合により紫外線吸収剤の溶解性が高まった皮膚又は毛髪用組成物を使用するから、紫外線吸収剤の溶解性低下による毛髪の手触りへの影響を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る組成物は、皮膚又は毛髪に塗布して使用されるものであり、水系組成物及び非水系組成物のいずれであっても良い。ここで、「水系」組成物とは、使用時に手などが直接ふれる外相が水相である組成物を意味し、水の配合量が例えば50質量%以上のものである。また、「非水系」組成物とは、外相が油相である組成物を意味し、非水系組成物は水系組成物とは異なった感触を皮膚又は毛髪に付与する。そして、非水系組成物への水の配合は、水相と油相の分離又は白濁が生じることがあるので、非水系組成物の場合の本実施形態の組成物は、水の配合量が3.0質量%未満が良く、1.0質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましく、0.1質量%未満が更に好ましく、水が無配合がより更に好ましい。
【0020】
本実施形態の組成物は、紫外線吸収剤、揮発性炭化水素、及び液状のイソノナン酸エステルが必須成分として配合される。
【0021】
本実施形態の組成物に配合される紫外線吸収剤は、油溶性の公知のものであり、例えば、安息香酸エステル系紫外線吸収剤(2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルなど)、サリチル酸系紫外線吸収剤(サリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸ホモメンチルなど)、ケイ皮酸系紫外線吸収剤(パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルなど)、2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸2-エチルへキシルエステル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、4-tert-ブチル-4’-メトキシ-ジベンゾイルメタンが挙げられる。本実施形態の組成物には、一種又は二種以上の紫外線吸収剤が配合され、当該組成物における紫外線吸収剤の配合量は、1.0質量%以上30質量%未満が良く、2.0質量%以上25質量%未満が好ましく、3.0質量%以上20質量%未満がより好ましく、5.0質量%以上18質量%未満が更に好ましい。紫外線吸収剤の配合量が1.0質量%以上であると、皮膚又は毛髪の紫外線対策に好適であり、配合量が30質量%未満であると、低コスト化への対応に好適である。
【0022】
上記紫外線吸収剤の配合量は、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどの固形の紫外線吸収剤の配合量を高めても良い。固形の紫外線吸収剤は溶解性が低いのが一般的であるが、その溶解性は液状イソノナン酸エステルの配合により高まる。固形の紫外線吸収剤の一種又は二種以上を本実施形態の組成物に配合すると良く、当該組成物における固形の紫外線吸収剤の配合量は、0.3質量%以上10質量%未満が良く、0.5質量%以上8.0質量%未満が好ましく、1.0質量%以上7.0質量%未満がより好ましく、2.0質量%以上6.0質量%未満が更に好ましい。固形の紫外線吸収剤の配合量が0.3質量%以上であると、皮膚又は毛髪の紫外線対策に好適であり、配合量が10質量%未満であると、低コスト化への対応に好適である。
【0023】
上記紫外線吸収剤の選定においては、本実施形態の組成物のPAを向上させたいときには、紫外線A波の吸収に適した紫外線吸収剤を選定すると良く、SPFを向上させたいときには、紫外線B波の吸収に適した紫外線吸収剤を選定すると良い。
【0024】
本実施形態の組成物に配合される揮発性炭化水素は、軽質流動イソパラフィン、イソドデカンといった公知の揮発性炭化水素が挙げられ、常圧における沸点が260℃以下のものが良い。本実施形態の組成物には、一種又は二種以上の揮発性炭化水素を配合すると良く、当該組成物における揮発性炭化水素の配合量は、例えば10質量%以上90質量%未満が良く、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上がより更に好ましい。配合量が10質量%以上であると、供給が不安視される場合がある揮発性環状シリコーンの使用量削減に適する。
【0025】
本実施形態の組成物に配合する揮発性炭化水素としてイソドデカンを配合した場合、デカメチルシクロペンタシロキサンを配合する場合よりも、紫外線吸収剤の溶解性が高い。本実施形態の組成物におけるイソドデカンの配合量は、例えば10質量%以上90質量%未満が良く、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上がより更に好ましい。
【0026】
本実施形態の組成物に配合される液状のイソノナン酸エステルは、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシルなどの公知のものが挙げられる(ここで、「液状」のイソノナン酸エステルとは、融点が0℃以下のものである。)。本実施形態の組成物には、一種又は二種以上の液状イソノナン酸エステルを配合すると良く、当該組成物における液状イソノナン酸エステルの配合量は、1.0質量%以上が良く、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、20質量%以上がより更に好ましい。配合量が1.0質量%であると、紫外線吸収剤の溶解性に好適である。液状イソノナン酸エステルの配合量の上限は、特に限定されないが、例えば50質量%である。
【0027】
本実施形態の組成物には、上記に示した必須成分の他、公知の皮膚又は毛髪用組成物に配合されている成分を任意に配合できる。そして、任意に配合される成分としては、例えば、シリコーン、界面活性剤、高級アルコール、炭化水素、ロウ、エステル油、植物油、高分子化合物、湿潤剤、防腐剤、キレート剤、香料、着色剤が挙げられる
【0028】
本実施形態の組成物には、揮発性直鎖状シリコーン(25℃における動粘度が2mm2/s程度以下のもの)、揮発性環状シリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなど)、トリメチコンといった公知の揮発性シリコーンを配合しても良い。一種又は二種以上の揮発性シリコーンを配合すると良く、本実施形態の組成物における揮発性シリコーンの配合量は、例えば5質量%以上30質量%未満である。
【0029】
なお、揮発性環状シリコーンの使用量を抑える観点から、本実施形態の組成物においては、揮発性環状シリコーンよりも揮発性炭化水素の配合量が多いことが好ましく、揮発性環状シリコーンを無配合とするのがより好ましい。
【0030】
本実施形態の組成物には、皮膚又は毛髪の感触を改善する観点から、平均重合度が650以上のメチルポリシロキサンである高重合メチルポリシロキサンを配合すると良い。高重合メチルポリシロキサンの配合が紫外線吸収剤の溶解性を低下させることが一般的であるが、その低下を液状イソノナン酸エステルの配合により抑制できる。本実施形態の組成物における高重合メチルポリシロキサンの配合量は、例えば1.0質量%以上10質量%未満である。
【0031】
本実施形態の組成物には、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれた一種又は二種以上の公知の界面活性剤を配合しても良い。
【0032】
本実施形態の組成物が水系組成物の場合、揮発性炭化水素、液状イソノナン酸エステルなどで構成される油相を分散させる必要が生じるため、非水系組成物に比べて界面活性剤の配合量を多くする必要がある。そして、本実施形態の組成物が水系である場合の配合量は、油相を分散させる量として適宜設定されるべきであるが、例えば3.0質量%以上である。
【0033】
また、本実施形態の組成物が非水系の場合、水系の場合よりも界面活性剤の配合量を少なく設定すると良く、当該非水系組成物における界面活性剤の配合量は、例えば0.5質量%以下である。界面活性剤の配合量を少なく設定すると、紫外線吸収剤の溶解性が低くなると考えられるが、その溶解性の低下を液状イソノナン酸エステルの配合が抑える。
【0034】
本実施形態の組成物の粘度は、50mPa・s以上5000mPa・s未満が良く、100mPa・s以上3000mPa・s未満が好ましく、150mPa・s以上1000mPa・s未満がより好ましく、200mPa・s以上800mPa・s未満が更に好ましく、200mPa・s以上600mPa・s未満がより更に好ましい。粘度が50mPa・s以上であると、皮膚又は毛髪の紫外線対策と、手を用いて本実施形態の組成物を塗布する際のハンドリング性に適し、粘度が5000mPa・s未満であると、毛髪内部への浸透性に適する。
【0035】
なお、本実施形態の組成物の上記粘度は、レオメーター〔例えば、HAAKE社製のレオメーター「Rheo Stress 6000(商品名)〕を使用し、測定温度:25℃、コーンプレートセンサーの直径:35mm、コーンプレートセンサーの傾斜角:2°せん断速度dγ/dt:36s-1の条件で、定常フローカーブモードにおいて測定される値である。
【0036】
本実施形態の組成物の粘度を高める必要がある場合、粘度を高めるための一般的な手法をとると良い。例えば、成分の追加(当該成分を、便宜上「追加成分」という。)によって粘度を高めるには、その成分の配合前の組成物より粘度の高いものを追加成分に採用する。追加成分は、エステル油などの単一成分のみに限らず、高重合メチルポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン溶液や高重合メチルポリシロキサンのイソドデカン溶液といった複数成分からなるものも該当する。
【0037】
本実施形態の組成物が非水系の組成物である場合、粘度を高めると、PA等が向上することを確認している。したがって、配合する揮発性炭化水素がデカメチルシクロペンタシロキサンよりも動粘度が低いものであっても、本実施形態の組成物の粘度を高めることで、PA等の低下抑制又は向上が可能となる(ここで動粘度は、JIS K-2283により測定される値である。)。
【0038】
本実施形態の組成物は、皮膚用又は毛髪用のものであり、紫外線から受ける影響を抑えるため、皮膚又は毛髪に塗布して用いると良い。例えば、本実施形態の組成物を使用して毛髪処理する場合、組成物を液状の剤型とし、毛髪に噴霧又は手で塗布した後、必要に応じて温風で乾燥させ、洗い流さない使用態様が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例等に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0040】
実施例、比較例、参考例の非水系組成物を調製し、外観の確認、粘度測定、SPF測定、UVAPF測定のいずれかを行った。詳細は、次の通りである。
【0041】
(非水系組成物)
実施例1a~1b、比較例1a~1b、実施例2a~2d、比較例2の非水系組成物を、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソデシル、エチルヘキサン酸PPG-3ベンジルエーテル、イソドデカン、デカメチルシクロペンタシロキサン、高重合メチルポリシロキサンを使用して製造した。配合した成分、その配合量(配合量単位:質量部)の詳細は、表1~2に記載の通りとした。
【0042】
実施例3a~3cの非水系組成物を、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソドデカン、高重合メチルポリシロキサンを使用して製造した。配合した成分、その配合量(配合量単位:質量部)の詳細は、表3に記載の通りとした。
【0043】
実施例4a~4b、参考例4a~4bの非水系組成物を、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソドデカン(37.8℃での動粘度:1.35mm2/s)、高重合メチルポリシロキサン及びイソドデカンの混合物(B型粘度計、25℃、ローター回転数60rpmでの計測開始から60秒後の粘度測定値:2700mPa・s)、重質流動イソパラフィン、デカメチルシクロペンタシロキサンを使用して製造した。配合した成分、その配合量(配合量単位:質量部)の詳細は、表4に記載の通りとした。
【0044】
(外観)
調製した各非水系組成物の外観について、調製直後、調製してから2~3時間経過後、-5℃・1カ月保管後、-10℃・1カ月保管後のいずれかを確認した。なお、外観の確認においては、分離又は析出が認められる場合があり、分離及び析出が相対的に少ないときに、紫外線吸収剤の溶解性が高いと判断される。また、紫外線吸収剤の溶解性が低い場合、保管温度が低い程、その吸収剤の分離又は析出が生じやすい。
【0045】
(粘度)
実施例4a~4b、参考例4a~4bの非水系組成物の粘度を、HAAKE社製のレオメーター「Rheo Stress 6000」を使用し、測定温度:25℃、コーンプレートセンサーの直径:35mm、コーンプレートセンサーの傾斜角:2°せん断速度dγ/dt:36s-1の条件で測定した。
【0046】
(SPF、UVAPF)
実施例4a~4b、参考例4a~4bの非水系組成物について、in vitro試験方法によるSPF、UVAPF(UVAPF:PAのレベルを定めるための指標)測定を、非水系組成物を0.0325g塗布したHelioscreen社製「HELIOPLATE」を対象とし、Labsphere社製SPFアナライザー「UV2000S」を使用して行った。
【0047】
下記表1に、実施例1a~1b、比較例1a~1bに配合した成分、その配合量、外観を示す(表中の「―」は、成分無配合、又は、外観未確認を意味する。)。液状イソノナン酸エステル(イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル)及び揮発性炭化水素(イソドデカン)を配合した実施例1a~1bは、液状イソノナン酸エステル又は液状炭化水素を欠く比較例1a~1bのような分離又は析出が確認されず、固形の紫外線吸収剤(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)の溶解性が比較例1a~1bに比べて優れていたことを確認できる。
【0048】
【0049】
下記表2に、実施例2a~2d、比較例2に配合した成分、その配合量、外観を示す(表中の「―」は、成分無配合、又は、外観未確認を意味する。)。液状イソノナン酸エステル(イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル)及び揮発性炭化水素(イソドデカン)を配合した実施例2a~1dは、液状炭化水素を欠く比較例2のような析出が確認されず、固形の紫外線吸収剤(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)の溶解性が比較例2よりも優れていたことを確認できる。
【0050】
【0051】
下記表3に、実施例3a~3cに配合した成分、その配合量、外観を示す(表中の「―」は、成分無配合を意味する。)。液状イソノナン酸エステル(イソノナン酸2-エチルヘキシル)及び揮発性炭化水素(イソドデカン)を配合した実施例3a~3cは、固形の紫外線吸収剤(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル)の析出、分離が認められなかった。
【0052】
【0053】
下記表4に、実施例4a~4b、参考例4a~4cに配合した成分、その配合量、外観、粘度、SPF、UVAPFを示す(表中の「―」は、成分無配合を意味する。)。実施例4a~4b間での比較、参考例4a~4cでの比較において、粘度が高まるほど、SPF又はUVAPFの値が向上したことを確認できる。
【0054】