(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240301BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20240301BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/18 Z
F01N3/28 301D
F01N3/28 301G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019227953
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515111358
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ブルッチェ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク カダウ
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/030660(WO,A1)
【文献】特開2017-110632(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136034(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/18
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径(27)が少なくとも200mmである少なくとも1つのシリンダ(21)を有する内燃機関(20)であって、前記シリンダ(21)は、最大エンジン・スピードが600rpm未
満であり、且つ/又は最短サイクル時間が0.1秒を上回る低いエンジン・スピードで作動するように構成され、前記内燃機関が
、NH
3を含む還元剤を前記シリンダ(21)に供給するための少なくとも1つの供給ユニット(24)を備え
、前記供給ユニットは、シリンダ容積部の周りに等しく分布した複数のノズルを備える、内燃機関(20)。
【請求項2】
前記内燃機関(20)が
、前記シリンダ(21)の下流に配置された、NH
3スリップを削減するための装置(22)を備える、請求項1に記載の内燃機関(20)。
【請求項3】
NH
3スリップを削減するための前記装置(22)の合計体積が、400l/MW未満である、請求項2に記載の内燃機関(20)。
【請求項4】
NH
3スリップを削減するための前記装置(22)が、バナジウムを含
む、請求項2又は3に記載の内燃機関(20)。
【請求項5】
前記内燃機関(20)が、前記シリンダ(21)に新気を供給するためのターボ過給機(26)を備え、NH
3スリップを削減するための前記装置(22
)が、前記ターボ過給機(26)の上流に配置される、請求項2から4までに記載の内燃機関(20)。
【請求項6】
前記供給ユニット(24)が、ガス状NH
3を生成するための予蒸発装置(29)を備える、請求項1から5までのいずれか一項に記載の内燃機関(20)。
【請求項7】
前記供給ユニット(24)が、ある量の還元剤をサイクルごとに前記シリンダに供給するように構成され、前記量は、少なくとも化学量論的に、1サイクル中に生成される排気ガスに対応する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の内燃機関(20)。
【請求項8】
前記内燃機関(20)が
、NOxセンサ(23)と
、測定されたNOx値を基準値と比較するための制御ユニット(25
)とを備える、請求項1から7までのいずれか一項に記載の内燃機関(20)。
【請求項9】
前記制御ユニット(25)は、前記シリンダ(21)に供給すべき還元剤の量を調節するための
ものである、請求項
8に記載の内燃機関(20)。
【請求項10】
前記供給ユニットが
、前記シリンダのライナ又はカバーに配置される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の内燃機関(20)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の
内燃機関(20)のNOx排出を削減する方法であって、
600rpm未
満の低いエンジン・スピードで、且つ/又は0.1秒を上回るサイクル時間で、前記内燃機関(20)を作動させるステップと、
NH
3を含む還元剤を前記シリンダ(21)に供給するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記シリンダ内のNOxの量を、少なくとも50%だ
け削減するステップを含む、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
サイクルごとに、且つ/又は前記シリンダ(21)の体積当たりで前記シリンダ(21)に供給すべき還元剤の量は、還元剤の量が、サイクルごとに前記シリンダにおいて生成されるNOxの量に化学量論的に対応するように決定される、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
排気ガス中のNOx含有率を決定するステップ
と、測定されたNOx含有率を基準値と比較するステップ
と、決定されたNOx含有率に基づいて、前記シリンダ(21)に供給される前記還元剤の供給量を調節するステップ
とを含む、請求項11から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
NH
3スリップを削減するための装置(22)に、前記シリンダ(21)から出て行く排気ガスを案内するステップを含む、
請求項11から14までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのシリンダを有する内燃機関、好ましくは内径が少なくとも200mmである少なくとも1つのシリンダを備えた大型船舶エンジンを対象とし、内燃機関のNOx排出を削減する方法を対象とする。
【0002】
本発明は、燃焼機関及びその排出削減の技術分野に関する。
【0003】
本発明は、好ましくは、大型の船舶用若しくは舶用エンジン、又は定置エンジンのような、そのシリンダの内径が少なくとも200mmである内燃機関に関する。エンジンは、2ストローク・エンジン、又は2ストローク・クロス・ヘッド・エンジンであることが好ましい。エンジンは、ディーゼル・エンジンでもガス・エンジンでもよく、デュアル・フューエル・エンジンでもマルチ・フューエル・エンジンでもよい。こうしたエンジンでの液体燃料及び又はガス燃料の燃焼は、自己着火でも強制点火でも可能である。
【背景技術】
【0004】
内燃機関は、長手方向掃気式(longitudinally flushed)の2ストローク・エンジンでもよい。
【0005】
内燃機関という用語は、燃料の自己着火を特徴とするディーゼル・モードだけではなく、燃料のポジティブ点火を特徴とするオットー・モードでも運転することができ、又はこれら2つを組み合わせて運転することができる、大型エンジンも指す。さらに、内燃機関という用語は、特に、燃料の自己着火を使用して別の燃料をポジティブ点火するデュアル・フューエル・エンジン及び大型エンジンを含む。
【0006】
エンジン・スピードは、特に4ストローク・エンジンにおいては800RPM未満であることが好ましく、特に2ストローク・エンジンにおいては200RPM未満であることがより好ましく、これは、低速エンジンに指定されることを示す。
【0007】
燃料は、液化天然ガス(LNG:liquid natural gas)、液化石油ガス(LPG:liquid petrol gas)などのようなガスだけではなく、ディーゼル油でも船舶用ディーゼル油でもよく、重質燃料油でもよく、エマルジョンでもスラリーでもよく、メタノールでもエタノールでもよい。
【0008】
必要に応じて追加することができる、考えられる別の燃料は、LBG(液化バイオガス:Liquefied Biogas)、バイオ燃料(たとえば藻類から作られた油)、水素、(たとえばパワー・ツー・ガス又はパワー・ツー・リキッドから作られる)CO2による合成燃料である。
【0009】
大型船舶、具体的には貨物輸送用の船舶は、一般に、内燃機関、具体的にはディーゼル・エンジン及び/又はガス・エンジン、主として2ストロークのクロス・ヘッド・エンジンによって動力を供給される。重質燃料油、船舶用ディーゼル油、ディーゼル又は他の液体のような液体燃料がエンジンによって燃焼される場合、及びLNG、LPGなどのようなガス燃料がエンジンによって燃焼される場合、IMOの3次規制などの既存の規則に対応するために、この燃焼プロセスからの排気ガスを浄化する必要がある。
【0010】
一般に1次規制基準~3次規制基準と呼ばれているIMOの排出基準は、とりわけ、既存の船舶エンジン及び新しい船舶エンジンに関するNOx排出基準を定めている。
【0011】
大型船では、特に窒素酸化物の排出に関して排出要件が増えてきている。したがって、これらの船の内燃機関によって排出される排気ガス中の窒素酸化物の量を削減する必要性がある。
【0012】
燃焼機関の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)レベルを下げるために、SCR(選択触媒還元:selective catalytic reduction)技術が使用されている。SCRは、普通は地上ベースのエンジン、たとえば重量車(heavy duty vehicle)、産業プラント及び他の用途において使用される。SCR技術は、2ストローク・ディーゼル・エンジンと組み合わせて、海上の環境でも使用されてきた。前記船舶用ディーゼル・エンジン及び前記地上ベースのエンジンに対する規制上の要件により、効率的なSCRシステムの必要性が高まっている。
【0013】
SCRは、アンモニア(NH3)を用いて排気ガス中の窒素酸化物を還元することに基づき得る。通常、アンモニアは、尿素水などのアンモニア前駆物質を、燃焼機関の排気ガスに注入することによって生成される。たとえば、尿素水をノズルによって高温の排気ガスへと噴霧し、そこで液体尿素水が反応して、アンモニア、二酸化炭素、及び水蒸気になる。次いで、アンモニアは、SCR反応器において、触媒の影響下で窒素酸化物を窒素(N2)及び水(H2O)に還元する。液体尿素からのアンモニアの生成は吸熱性である。したがって、排気ガスが十分に高温である場合にのみ、尿素水の分解が完了し、窒素酸化物(NOx)が窒素(N2)に還元される。
【0014】
したがって、SCR触媒は、一般に、高温時にのみ使用することができる。適当な温度に到達していない限り、SCR触媒の作用は非効率的であり、SCR触媒は迂回されなければならないか、又は加熱のためにいわゆる「燃料ペナルティ」が必要になる。通常は、排気ガスの滞留時間が十分なものになる、体積の大きいSCR反応器が必要になる。体積の大きいSCR反応器は多くの空間を必要とし、コストがかかる。
【0015】
通常、SCR技術に使用される触媒は、TiO2によって担持されたバナジウム、タングステンを含むか、又はたとえば銅/ゼオライト若しくは鉄/ゼオライトのような金属置換(metal substituted)ゼオライトである。バナジウムにより、NOxの酸化が促進される。しかし、バナジウムの含有率は低く保たれなければならない。そうしないと、エンジン負荷が高くそれぞれの温度が高い状態では、SO2が酸化してSO3になり、一定の濃度を上回ると、SO3が煙道及びその下流に硫酸の青いプルーム(plume)を生じさせるからであり、これは何としても防止されなければならない。バナジウム含有率が多くなると、350℃を上回る温度では、NH3がNOxへと酸化する場合もある。したがって、より多くの還元剤が注入されなければならない。さらに、バナジウム含有率が多くなり、特にバナジウムとタングステンが組み合わさると、350℃を上回る温度では、N2Oの生成増加が促進される。
【0016】
WO2015/030660には、添加剤が燃焼機関の燃焼室に直接注入される、燃焼機械の制御方法が開示されている。一般に、シリンダ内では温度が高いので、求められる反応速度を触媒なしで得ることができる。しかし、温度が、添加剤が気化するのに十分に高くない場合、添加剤が壁面に付着する場合があり、堆積物の連続的な蓄積が生じる恐れがある。WO2015/030660では、適した量の添加剤を注入できるように、燃焼中に生じる窒素酸化物及び燃焼室の温度を予測することが提案されている。
【0017】
別の課題が、次のストロークが行われるまでの時間枠から生じ得る。時間枠が十分に長くないとき、注入された添加剤のすべてを使用することができない。したがって、求められる反応を十分に得ることができない。還元されていない窒素酸化物及び余分な還元剤がシリンダから出て行く。
【0018】
別の問題が、不十分な混合によって生じる。一般に、壁部は中央部よりも冷たいので、中央部ではより多くの窒素酸化物が生じ、壁部の近くではより少ない窒素酸化物が生じる。したがって、より多くのアンモニアが中央部に入らなければならず、より少ないアンモニアが壁部の近くに入らなければならない。そうでないと、中央部の窒素酸化物が出会うアンモニアは還元に不足し、壁部の近くの余分なアンモニアはすり抜ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の一目的は、従来技術の欠点を防止すること、具体的には、運転コストを削減し、後処理システムのサイズを小さくし、N2OやSO3などの副反応生成物の排出を最小限に抑え、且つ/又はアンモニア又はアンモニア前駆物質などの還元剤の供給を少なくすることを確実とする、内燃機関、及び内燃機関のNOx排出を削減する方法を生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、内径が少なくとも200mmである少なくとも1つのシリンダを有する内燃機関によって達成され、このシリンダは、低いエンジン・スピードで作動するように構成され、内燃機関は、特にNH3を含む還元剤をシリンダに供給するための少なくとも1つの供給ユニットを備える。
【0022】
シリンダは、600rpm未満、好ましくは200rpm未満、より好ましくは150rpm未満の最大エンジン・スピードで作動するように構成される。
【0023】
追加的に、又は別法として、シリンダは、0.1秒を上回る最短サイクル時間で作動するように構成される。
【0024】
還元剤は、尿素水などのアンモニア前駆物質でもよい。好ましくは、還元剤はアンモニアである。
【0025】
シリンダでは、いわゆる無触媒選択還元(SNCR:selective non catalytic reduction)を行うことができる。
【0026】
アンモニア又は尿素は、排気ガスが通常は760~1090℃の間であるシリンダに注入されて、燃焼プロセスにおいて形成される窒素酸化物と反応することができる。化学的酸化還元反応の結果として得られる生成物は、分子窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)、及び水(H2O)である。
【0027】
尿素(NH2CONH2)は、より危険なアンモニア(NH3)よりも、一般に取扱い及び保管が容易である。プロセスにおいては、尿素はアンモニアのように、すなわちNH2CONH2+H2O→2NH3+CO2のように反応することができる。
【0028】
還元は、(単純化された)4NO+4NH3+O2→4N2+6H2Oに従って起こる。反応メカニズム自体は、NOに付着し次いで分解する、NH2ラジカルに関係する。
【0029】
エンジンは、シリンダごとに少なくとも1つの供給ユニットを備えることが好ましい。したがって、還元は、すべてのシリンダで行うことができる。
【0030】
エンジン・スピードが低いことにより、還元反応を行うのに十分な時間があることが保証される。還元剤は、シリンダ内に広がり、排気ガスの全体に到達し、十分に混ざるのに十分な時間をもつ。還元剤は、排気ガスのうち、最大量のNOxが形成されるシリンダの中央部に位置している一部にも出会う。したがって、NOxが生成されるとすぐに、また新しいサイクルが始まる前に排気ガスがシリンダからジェット放出されない限り、還元を行うことができる。排気ガスがシリンダから出て行く時点では、還元に使用されなかった残りの還元剤が、シリンダ内に存在している場合がある。
【0031】
本発明の好ましい一実施例では、内燃機関は、シリンダの下流に配置された、NH3スリップを削減するための装置を備える。
【0032】
注入された還元剤のすべてがシリンダ内での還元反応に使用されなかった場合、残りの還元剤は、次の新しいサイクルが始まる前に、排気ガスとともにシリンダから出て行くことになり、新しい還元剤が注入されることになる。
【0033】
未反応のアンモニアは汚染物質と考えられ、したがって排気ガスが煙道から出て行く前に除去されるべきである。
【0034】
NH3スリップを削減するための装置は、SCR触媒を含んでもよい。
【0035】
SCR触媒では、通常、無水アンモニア、アンモニア水、又は尿素などの還元剤を使用して、触媒の助力により、窒素酸化物を二原子窒素N2及び水H2Oに変換する。二酸化炭素CO2は、尿素が還元剤として使用されるときの反応生成物である。
【0036】
したがって、SCR触媒により、シリンダにおいて開始した還元反応を強化することができる。窒素酸化物の大半はシリンダにおいて還元されているので、SCR触媒において処理されなければならないのは、全排気ガスのうちのごく一部のみである。したがって、必要とされるSCR触媒はごく小さい。
【0037】
SCR触媒は、SCR反応器の一部でもよく、SCR反応器は、尿素又はアンモニウムなどの添加剤のための供給ユニットを備える。したがって、NH3スリップがなく、余分な還元剤がシリンダから放出されていないときでも、排気ガス中の残りの窒素酸化物を還元することができる。
【0038】
NH3スリップを削減するための装置は、加水分解触媒を含んでもよい。
【0039】
加水分解触媒は、一般にHNCOをNH3に加水分解し、尿素分子をHNCO及びNH3に分解する助けとなる。さらに、高負荷時に存在する排気ガス温度では、加水分解触媒において、加水分解だけではなく、SCR反応に類似した副反応も生じ、シリンダから放出された余分なNH3の助けを借りて、NOxが著しく還元される。
【0040】
NH3スリップを削減するための装置は、NH3スリップ触媒作用装置、たとえばアンモニア酸化触媒(AOC:ammonia oxidation catalyst)を含んでもよい。還元剤は、触媒に吸着される。
【0041】
窒素酸化物の大部分はシリンダにおいて還元されているので、NH3スリップを削減するための装置は、その残りだけを除去するように機能する。したがって、好ましくはNH3スリップを削減するための装置の合計体積は、400l/MW未満である。
【0042】
本発明では、触媒の体積は、触媒の包絡体積(envelope volume)と理解される。
【0043】
内燃機関の好ましい一実施例では、NH3スリップを削減するための装置は、バナジウムを含み、好ましくは、バナジウムの割合は、触媒コーティングの総重量に対して0.7%未満、好ましくは0.5%未満である。
【0044】
バナジウムにより、NOxの酸化が促進される。しかし、窒素酸化物の大部分はシリンダにおいて還元されているので、NH3スリップを削減するための装置は、その残りだけを除去するように機能する。したがって、必要とされるバナジウム含有率はごく小さい。
【0045】
バナジウム含有率は低く保たれ、したがって、SO3及びN2Oの排出はごくわずかになる。
【0046】
注入される追加の還元剤を節減することができる。
【0047】
本発明の有益な一実施例では、内燃機関は、シリンダに新気を供給するためのターボ過給機を備える。
【0048】
排気ガスは、ターボ過給機のタービンに送られ、タービンを回転させるために使用される。ターボ過給機の圧縮機は、タービンによって生み出された回転力を使用して、吸気ガス、すなわち新気を加圧する。
【0049】
SRC触媒での排気ガスの滞留時間を原因とする圧力低下がないように、通常、還元触媒はタービンの下流に配置され、煙道によって排気される。
【0050】
好ましい一実施例では、NH3スリップを削減するための装置、好ましくはSCR反応器が、ターボ過給機の上流に配置される。
【0051】
高圧構成を用いると、NH3スリップを削減するための装置に入る前に排気ガスが著しく冷却されないので、よりよい性能が可能になる。さらに、NH3スリップを削減するための小型の装置しか必要とされず、したがって、ターボ過給機に到達するまでの排気ガスの移動時間が短いので、著しい圧力降下がない。硫黄燃料が使用される場合、排気ガスの温度が低すぎると、重硫酸アンモニウムが生成される場合がある。ターボ過給機の下流では温度が低すぎることが多く、重硫酸アンモニウムの生成を避けるために、人為的に排気ガス温度を上げなければならないことになる。このことにより、消費が多くなり、コストが高くなる。ターボ過給機の上流では、温度は依然として十分に高く、したがって、重硫酸アンモニウムは生じない。
【0052】
内燃機関の好ましい一実施例では、還元剤をシリンダに供給するための供給ユニットは、ガス状NH3を生成するための予蒸発装置を備える。したがって、ガス状NH3がシリンダに入り次第、還元反応が始まり得る。尿素分子をNH3に分解するための時間は必要とされない。
【0053】
好ましくは、供給ユニットは、供給量を制御するための制御ユニットを備える。
【0054】
有利には、供給ユニットは、ある量の還元剤をサイクルごとにシリンダに供給するように構成され、この量は、少なくとも化学量論的に、1サイクル中に生成される排気ガスに対応する。
【0055】
したがって、供給ユニットは、負荷、シリンダ内で使用される燃料の量、シリンダ内の温度及び/又はエンジン・スピードに関するデータなど、シリンダ・データを処理するように構成された制御ユニットを備えることが好ましい。供給ユニットは、シリンダ・データに基づいて、供給すべき還元剤の量を決定するように構成され得る。
【0056】
制御ユニットは、供給のための少なくとも1つの時間点及び/又は時間スパンを設定するように構成され得る。供給は、ピストンの運動に合わせて構成され得る。たとえば、ピストンが下方に動くときに供給が引き起こされてもよい。還元剤がシリンダに供給されるのが遅すぎる場合、つまりサイクルが終了し、ガスがシリンダから放出される少し前であった場合、還元剤は、還元反応を実施するための時間を有しない可能性がある。
【0057】
制御ユニットは、還元剤を連続的に供給するように構成され得る。
【0058】
本発明の有利な一実施例では、内燃機関は、NOxセンサを備える。
【0059】
NOxセンサは、NOx含有率を示すことを可能にするデータを測定するための装置を示すことを意図している。NOxセンサは、NOx値を測定することが好ましい。
【0060】
NOxセンサは、シリンダの下流に配置されることが好ましい。したがって、NOxセンサにより、シリンダ内での還元反応の効率に関する情報が提供される。
【0061】
優先的には、内燃機関は、決定されたNOx値を基準値と比較するための制御ユニットを備える。制御ユニットは、決定されたNOx値に基づいて、又は決定されたNOx値と基準値の間の差に基づいて、シリンダに供給すべき還元剤の量を調節することができる。
【0062】
決定されたNOx値、又は決定されたNOx値と基準値の間の差に応じて、供給すべき還元剤の量を増加又は減少させることができる。
【0063】
供給ユニットは、燃料注入ユニットと同じ軸方向位置に配置されることが有利である。還元剤は、シリンダの軸に対して、燃料とは異なる角度で注入されることが好ましい。
【0064】
供給ユニットは、シリンダのライナ及び/又はカバーに配置されてもよい。別法として、又は追加的に、ピストンに供給ユニットが存在してもよい。
【0065】
たとえば、供給ユニットは、シリンダ容積部の周りに等しく分布した複数のノズルを備えてもよい。
シリンダから出て行った後、排気ガスは冷える。排気ガス中のNOx還元がシリンダの下流である排気ガス後処理システムにおいてのみ行われるとき、通常は、エンジン負荷に関する第1の閾値が存在し、これを下回るとNOx還元は技術的に不可能である。
【0066】
第1の閾値と第2の閾値の間では、SCR触媒が適切に作用するような十分な温度に到達するには、燃料ペナルティが必要である。SCR反応器は、第2の閾値を上回る場合にのみ所望の通りに動作する。すべてのNOxがSCR触媒において還元されるので、触媒は、十分な容量を提供しなければならない。これにより、N2O及びSO3の排出が増加する恐れがある。
【0067】
NOxがシリンダ内で還元されるとき、非常に低い負荷から還元が開始する場合がある。後処理システムは、負荷が非常に高いときに余分な還元剤を除去し、最終的に、不完全に還元されたNOxを除去するためだけに必要とされる。したがって、小型の後処理システムしか必要とされない。したがって、低負荷時にもNOx還元が生じ、エンジン負荷がより低いときには燃料ペナルティの必要性がなく、N2O及びSO3の過度の排出がない。
【0068】
本発明の目的は、以下のステップを含む、内燃機関、好ましくは上述の燃焼機関のNOx排出を削減する方法によっても達成される。
【0069】
内燃機関は、600rpm未満、好ましくは200rpm未満、より好ましくは150rpm未満の低いエンジン・スピードで、且つ/又は0.1秒を上回るサイクル時間で作動する。
【0070】
特にNH3を含む還元剤が、シリンダに供給される。
好ましくは、シリンダ内のNOxの量は、少なくとも50%だけ、好ましくは少なくとも70%だけ、より好ましくは少なくとも76%だけ削減される。
【0071】
この燃焼プロセスからの排気ガスは、好ましくは、IMOの3次規制などの既存の規則に対応するように浄化される。
【0072】
方法の有益なステップでは、サイクルごとに、且つ/又はシリンダの体積当たりでシリンダに供給すべき還元剤の量は、還元剤の量が、サイクルごとにシリンダにおいて生成されるNOxの量に化学量論的に対応するように決定される。
【0073】
還元剤の量は、シリンダにおいて決定されたNOx値に基づいて計算されてもよい。
【0074】
還元剤の量は、シリンダの下流で決定されたNOx値に基づいて、フィードバック反応として計算されてもよい。
【0075】
還元剤の量は、燃料コマンド、エンジン・スピード、及びシリンダにおいて生成されるNOx量と相関するマップから決定することもできる。
【0076】
優先的な実施例では、方法は、排気ガス中のNOx含有率を決定するステップを含む。
【0077】
NOx含有率は、シリンダにおいて決定されてもよく、シリンダの下流で決定されてもよい。
【0078】
優先的には、測定されたNOx含有率は、所定の基準値と比較される。
【0079】
より優先的には、シリンダに供給される還元剤の供給量は、決定されたNOx含有率、又は測定されたNOx含有率と基準値の差に基づいて調節される。
【0080】
方法の有利な一実施例では、シリンダから出て行く排気ガスは、NH3スリップを削減するための装置へと案内される。
【0081】
NH3スリップを削減するための装置は、具体的には、SCR触媒、加水分解触媒、及びNH3スリップ触媒作用装置のうちの少なくとも1つを備える。
【0082】
以下では、図を用いて、実施例において本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1には、内径27が少なくとも200mmであるシリンダ21を有する内燃機関20の一実例の概略図が示してある。
【0085】
シリンダ21は、最大エンジン・スピードが600rpm未満であり、且つ/又は最短サイクル時間が0.1秒を上回る、低いエンジン・スピードで作動するように構成される。
【0086】
内燃機関20は、特にNH3を含む還元剤をシリンダ21に供給するための供給ユニット24を備える。
内燃機関20は、好ましくはSCR触媒、加水分解触媒、及びNH3スリップ触媒作用装置、たとえばアンモニア酸化触媒(AOC)のうちの少なくとも1つを備える、シリンダ21の下流に配置された、NH3スリップを削減するための装置22を備える。
【0087】
内燃機関20は、シリンダ21に新気を供給するためのターボ過給機26を備える。NH3スリップを削減するための装置22、好ましくはSCR反応器がターボ過給機26の上流に配置され、したがって、排気ガスは、煙道28に到達する前にターボ過給機26を通過する。
【0088】
供給ユニット24は、ガス状NH3を生成するための予蒸発装置29を備える。
【0089】
供給ユニット24は、ある量の還元剤をサイクルごとにシリンダに供給するように構成され、この量は、少なくとも化学量論的に、1サイクル中に生成される排気ガスに対応する。
【0090】
内燃機関20は、一方がシリンダに配置され、一方がシリンダの下流に配置された2つのNOxセンサ23と、測定されたNOx値を基準値と比較するための制御ユニット25とを備える。
【0091】
制御ユニット25は、シリンダ21に供給すべき還元剤の量を調節するように構成される。