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  • 特許-無端ベルト及び無端ベルトの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】無端ベルト及び無端ベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 3/10 20060101AFI20240301BHJP
   F16G 1/10 20060101ALI20240301BHJP
   F16G 1/16 20060101ALI20240301BHJP
   B65G 15/34 20060101ALI20240301BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20240301BHJP
   D04B 21/20 20060101ALI20240301BHJP
   B29D 29/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F16G3/10 D
F16G1/10
F16G1/16
B65G15/34
D04B1/00 Z
D04B21/20 Z
B29D29/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019233363
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021102970
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 広大
(72)【発明者】
【氏名】中井 直道
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010653(JP,A)
【文献】特開2009-202990(JP,A)
【文献】特開2011-133029(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00279794(EP,A1)
【文献】特開2003-205554(JP,A)
【文献】実開平05-019224(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 3/10
F16G 1/10
F16G 1/16
B65G 15/34
D04B 1/00
D04B 21/20
B29D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心体層と、
熱可塑性樹脂で形成され、前記心体層の一方の表面に設けられた第1中間層と、
前記第1中間層の表面に設けられた第1表面層と、
互いに相補的な形状を有する第1端部と第2端部が接合された継手部と
を備えた、無端ベルトであって、
前記第1端部と前記第2端部の間の前記第1中間層に埋設された補強シートを備え、
前記補強シートは、厚み方向に貫通した空隙を有し、
前記第1中間層は、
前記補強シートの前記第1表面層側に配置され、前記第1中間層の熱可塑性樹脂で形成される表面側中間部と、
前記補強シートの前記心体層側に配置され、前記第1中間層の熱可塑性樹脂で形成される心体側中間部と、
前記空隙を通じて前記表面側中間部と前記心体側中間部とをつなぎ、前記第1中間層の熱可塑性樹脂で形成される接続部と
を有し、
厚み方向からみた、前記補強シートにおける単位面積当たりの前記空隙の割合が35%以上70%以下である
無端ベルト。
【請求項2】
前記第1端部及び前記第2端部は、互いに相補的な複数の凹部及び凸部を有し、
前記補強シートは、前記第1端部の凹部の基端から、前記第2端部の凹部の基端までの長さよりも長い領域に配置されている、請求項に記載の無端ベルト。
【請求項3】
熱可塑性樹脂で形成され、前記心体層の他方の表面に設けられた第2中間層と、
前記第2中間層の表面に設けられた第2表面層と
を備え、
前記第2表面層は、駆動プーリに接触可能である、請求項1又は2に記載の無端ベルト。
【請求項4】
前記補強シートは、編布である、請求項1~のいずれか1項に記載の無端ベルト。
【請求項5】
心体層と、
熱可塑性樹脂で形成され、前記心体層の一方の表面に設けられた第1中間層と、
前記第1中間層の表面に設けられた第1表面層と
を備えた帯状ベルトの
長手方向の第1端部及び第2端部における前記第1中間層に、それぞれ先端から長手方向に切り込みを入れ、前記第1中間層を、前記第1表面層に一体化された表面側中間部と、前記心体層に一体化された心体側中間部とに分離する工程と、
前記第1端部と前記第2端部を、互いに相補的な形状に加工する工程と、
突き合わせた状態の前記第1端部と前記第2端部にまたがるように、前記心体側中間部の表面に、厚み方向に貫通した空隙を有する補強シートを配置する工程と、
前記第1表面層に一体化された前記表面側中間部及び前記第1表面層で前記補強シートを覆い、前記表面側中間部の熱可塑性樹脂と前記心体側中間部の熱可塑性樹脂が前記空隙を通じて互いに融着し一体となるように、前記第1端部と前記第2端部を接合する工程と
を備え、
厚み方向からみた、前記補強シートにおける単位面積当たりの前記空隙の割合が35%以上70%以下である
無端ベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルト及び無端ベルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速伝動ベルトとしての無端ベルトは、一般的に、心体層を備える帯状ベルトを用いる。無端ベルトは、帯状ベルトの両端を、接着剤や熱接着を用いて一体に接着した継手部を有する。帯状ベルトの両端は、互いに相補的な形状、例えば、フィンガー形状である。
【0003】
無端ベルトの継手部は、心体層が切断された状態であるため、引張強度が低い。したがって、無端ベルトは、継手部を起点として破断しやすいという問題があった。
【0004】
無端ベルトの継手部の引張強度を向上する解決策は、継手部をまたがって補強布を配置し、補強布と心体層を一体的に接合することである(例えば、特許文献1)。特許文献1には、帆布で形成された心体層と、熱可塑性樹脂を含む中間層と、表面帆布層とを積層したベルトが開示されている。補強布は、熱可塑性樹脂を塗布した織布を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-10653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の無端ベルトの補強布において、織布と熱可塑性樹脂は互いに表面同士のみで接着しており、当該熱可塑性樹脂を介して心体層、中間層、及び表面帆布層のいずれか2層と接着している。補強布における織布と熱可塑性樹脂の接着力は十分とはいえず、織布が熱可塑性樹脂から剥離してしまう、という問題があった。補強布と熱可塑性樹脂が剥離した場合、上記継手部は十分な強度が得られない。
【0007】
本発明は、継手部における強度をより向上することができる無端ベルト及び無端ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無端ベルトは、心体層と、熱可塑性樹脂で形成され、前記心体層の一方の表面に設けられた第1中間層と、前記第1中間層の表面に設けられた第1表面層と、互いに相補的な形状を有する第1端部と第2端部が接合された継手部とを備え、前記第1端部と前記第2端部の間の前記第1中間層に埋設された補強シートを備え、前記補強シートは、厚み方向に貫通した空隙を有し、前記第1中間層は、前記補強シートの前記第1表面層側に配置される表面側中間部と、前記補強シートの前記心体層側に配置される心体側中間部と、前記空隙を通じて前記表面側中間部と前記心体側中間部とをつなぐ接続部とを有する。
【0009】
本発明に係る無端ベルトの製造方法は、心体層と、熱可塑性樹脂で形成され、前記心体層の一方の表面に設けられた第1中間層と、前記第1中間層の表面に設けられた第1表面層とを備えた帯状ベルトの長手方向の第1端部及び第2端部における前記第1中間層に、それぞれ先端から長手方向に切り込みを入れ、前記第1中間層を、前記第1表面層に一体化された表面側中間部と、前記心体層に一体化された心体側中間部とに分離する工程と、前記第1端部と前記第2端部を、互いに相補的な形状に加工する工程と、突き合わせた状態の前記第1端部と前記第2端部にまたがるように、前記心体側中間部の表面に、厚み方向に貫通した空隙を有する補強シートを配置する工程と、前記第1表面層に一体化された前記表面側中間部及び前記第1表面層で前記補強シートを覆い、前記表面側中間部と前記心体側中間部が前記空隙を通じて一体となるように、前記第1端部と前記第2端部を接合する工程とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1中間層が、補強シートの空隙を通じて、一体であるので、補強シートとより強固に接合している。したがって無端ベルトは、継手部における強度をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1のaは本実施形態に係る無端ベルトの平面図、図1のbは本実施形態に係る無端ベルトの図1のaに示す1b-1b断面図である。
図2】本実施形態に係る無端ベルトの断面を模式的に示す部分拡大断面図である。
図3】本実施形態に係る無端ベルトの製造方法を段階的に示す断面図であり、図3のcは切り込みを入れる前、図3のdは切り込みを入れた後である。
図4】本実施形態に係る無端ベルトの製造方法を段階的に示す断面図であり、図4のeは補強シートを設置した状態、図4のfは分離部をかぶせた状態である。
図5】本実施形態に係る無端ベルトの使用状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の詳細を説明する。
【0013】
(全体構成)
図1に示す無端ベルト10は、心体層12、第1中間層14、第2中間層16、第1表面層18、及び第2表面層20を備える。無端ベルト10の厚さは、通常0.5~10.0mmである。無端ベルト10の幅は、通常10~5000mmである。図1におけるx方向を「長手方向」、y方向を「幅方向」、z方向を「厚み方向」という。
【0014】
心体層12は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、又はガラス繊維を縦糸、横糸の原料として用いた帆布で形成される。
【0015】
第1中間層14は心体層12の一方の表面に、第2中間層16は心体層12の他方の表面に、それぞれ設けられている。第1中間層14及び第2中間層16は、熱可塑性樹脂で形成される。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、又はポリオレフィン系エラストマーである。
【0016】
第1表面層18は第1中間層14の表面に、第2表面層20は第2中間層16の表面に、それぞれ設けられている。第1表面層18及び第2表面層20は、ゴム、樹脂、帆布、又は合成皮革で形成されている。ゴムは、例えば、ミラブルウレタン、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H-NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、又はクロロスルフォン化ポリエチレンである。樹脂は、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、又はポリオレフィン系エラストマーである。帆布は、例えば、ポリエステル繊維、又はナイロン繊維などの繊維を使用した帆布でもよい。第2表面層20は、上記具体例の中から選択することができ、第1表面層18と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
無端ベルト10は、継手部15を有する。継手部15はフィンガー継手である。継手部15は、接合された状態の第1端部22と第2端部24とを有する。第1端部22は、帯状ベルト(図示しない)の長手方向の先端を含む。第2端部24は、帯状ベルト(図示しない)の長手方向の基端を含む。無端ベルト10は、第1端部22と第2端部24を接合して、無端状とされている。
【0018】
第1端部22及び第2端部24は、互いに相補的な複数の凹部19及び凸部21をそれぞれ有する。凹部19は、無端ベルト10の長手方向の内側に凹んだ二等辺三角形及び直角三角形である。凸部21は、長手方向の外側に突出した二等辺三角形及び直角三角形である。第1端部22及び第2端部24は、複数の凹部19及び凸部21が形成された鋸刃形状である。凹部19及び凸部21の幅方向の長さは5~30mm、凹部19及び凸部21の長手方向の長さは5~250mmである。
【0019】
無端ベルト10の第1中間層14は、第1端部22と第2端部24の境界をまたぐ位置に、補強シート26を有する。補強シート26は、前記第1端部22の凹部19の基端23から、前記第2端部24の凹部19の基端25までの範囲よりも広い領域に配置されている。補強シート26の長手方向の長さは、凹部19又は凸部21の長手方向の長さの2倍程度であり、10~500mmである。補強シート26の幅方向の長さは、無端ベルト10の幅方向の長さと同じでもよい。補強シート26の幅方向の長さは、無端ベルト10の幅方向の長さの50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上でもよい。
【0020】
補強シート26は、図2に示すように、厚み方向に貫通した複数の空隙28を有する。補強シート26は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、又はガラス繊維の編布で形成される。補強シート26の空隙28は、上記繊維と繊維の間の隙間である。
【0021】
第1中間層14は、補強シート26の第1表面層18側に配置される表面側中間部27と、補強シート26の心体層12側に配置される心体側中間部29と、空隙28を通じて表面側中間部27と心体側中間部29とをつなぐ接続部31とを有する。接続部31は、それぞれの空隙28を埋めるように形成されている。接続部31は、空隙28を通じて補強シート26を厚み方向へ貫いている。表面側中間部27と、心体側中間部29と、接続部31は、一体である。補強シート26の表面は表面側中間部27と心体側中間部29に挟まれ、空隙28は接続部31で埋められている。補強シート26は、接着剤を用いずに第1中間層14と一体化している。
【0022】
補強シート26は、厚み方向からみた、単位面積当たりの空隙28の割合が35%以上70%以下である。空隙28の割合が70%以下であれば、補強シート26は十分な強度を有する。空隙28の割合が35%以上であれば、表面側中間部27と、心体側中間部29と、接続部31が十分に一体となり、第1中間層14と補強シート26の剥離を抑制することができる。
【0023】
(製造方法)
図3のcに示すように、接合前の前記第1端部22と前記第2端部24の前記第1中間層14に、それぞれ先端から長手方向に1か所切り込みを入れ、切り込み部32を形成する。図3のcは、代表して第1端部22について示している。切り込み部32は、長手方向に平行に形成する。切り込み部32の長手方向の長さは、後に形成する凹部19及び凸部21の長手方向の長さよりも長い。切り込み部32は、第1中間層14の厚みの中心位置に形成するのが好ましい。切り込み部32を形成した後の第1中間層14は、第1表面層18と一体の表面側中間部27と、心体層12と一体の心体側中間部29とに分離される。
【0024】
切り込み部32を形成した後の第1端部22は、図3のdに示すように、第1表面層18と表面側中間部27とからなる分離部33を有する。分離部33は、表面側中間部27と心体側中間部29が離れる方向に折り返すことができる。表面側中間部27と心体側中間部29が離れる方向は、第1表面層18の表面へ向かって、分離部33の先端を折り曲げる方向である。図示しないが、切り込み部32を形成した後の第2端部24は、同様に、分離部33を有する。
【0025】
第1端部22と第2端部24に、公知の工具を用いて、複数の凹部19及び凸部21をそれぞれ形成する。凹部19及び凸部21を形成する長手方向の範囲は、切り込み部32が形成された領域より狭い。第1表面層18を上向きとし、第1端部22と第2端部24を、互いの凹部19と凸部21を組み合わせて、突き合わせる。
【0026】
図4のeに示すように、分離部33を折り返した状態で、第1端部22と第2端部24の境界をまたぐように、心体側中間部29上に補強シート26を配置する。補強シート26は、凹部19及び凸部21が形成された範囲を超え、切り込み部32が形成された領域内に配置する。
【0027】
図4のfに示すように、補強シート26を分離部33で覆い、表面側中間部27を補強シート26表面に接触させる。分離部33同士の凹部19と凸部21を組み合わせて突き合わせる。この状態で第1端部22と第2端部24を中心に、少なくとも切り込み部32が形成された領域を、厚み方向に加圧しながら加熱する。加熱することによって、第1中間層14及び第2中間層16の熱可塑性樹脂が溶融し、第1端部22と第2端部24の先端同士が融着する。
【0028】
第1中間層14において、表面側中間部27と心体側中間部29の溶融した熱可塑性樹脂は、補強シート26の空隙28を通じて流動し、空隙28を介して互いに融着する。熱可塑性樹脂が冷却固化することによって、第1中間層14及び第2中間層16は、第1端部22と第2端部24同士の間で、一体となる。
【0029】
表面側中間部27と心体側中間部29は、接続部31を介して一体となる。この結果、第1中間層14は、第1端部22と第2端部24の境界をまたぐ位置で補強シート26を保持する。上記のようにして、第1中間部14に補強シート26が埋設された無端ベルト10を得ることができる。
【0030】
(作用及び効果)
無端ベルト10は、図5に示すように、第2表面層20と駆動プーリ30の表面が接触するように、駆動プーリ30に装着され、伝動ベルト又は搬送ベルトとして用いることができる。表面側中間部27、心体側中間部29、及び接続部31は、補強シート26の空隙28を通じて一体であるので、第1中間層14が補強シート26とより強固に接合している。したがって無端ベルト10は、補強シート26と第1中間層14の剥離を抑制し、継手部15の強度をより向上することができる。厚み方向からみた、単位面積当たりの空隙28の割合が35%以上70%以下であることによって、継手部15の強度をより確実に向上することができる。
【0031】
無端ベルト10は、心体層12に対し駆動プーリ30の半径方向の外側において引張応力、内側において圧縮応力が生じる。無端ベルト10の第1中間層14は、心体層12に対し駆動プーリ30の半径方向外側に配置される。引張応力が生じる第1中間層14に設けられた補強シート26は、継手部15における引張強度をより向上する。
【0032】
無端ベルト10は、補強シート26を第1中間層14に埋設するために接着剤を必要としない。一般的に接着剤は第1中間層14の熱可塑性樹脂より、硬度が高い。継手部15は、接着剤を有していないため、他の部分と同じ柔軟性を有する。したがって、無端ベルト10は、駆動プーリ30上の異物に無端ベルト10が乗り上げるなどして第1中間層14により大きい引張応力が生じた場合であっても、継手部15に応力が集中することを防ぎ、亀裂の発生を抑制することができる。
【0033】
空隙28を通じて補強シート26を厚み方向へ貫いている接続部31には、無端ベルト10を引っ張る力によって、せん断応力が生じる。接続部31のせん断応力は、第1中間層14と補強シート26の面方向の位置ずれを抑制する。接続部31には、厚み方向に引張応力が生じる。接続部31の引張応力は、補強シート26表面との間の接着力と相俟って補強シート26を第1中間層14から剥がれにくくする。
【0034】
編布で形成された補強シート26の空隙28は、繊維同士の間の隙間であり、複雑な形態である。接続部31は当該空隙28を埋めるようにして形成されている。補強シート26は、第1中間層14に対し繊維が複雑に絡み合うようにして一体化される。したがって第1中間層14と補強シート26は、熱可塑性樹脂と織布が表面のみで接着する場合に比べ、剥がれにくい。
【0035】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0036】
本実施形態に係る継手部15はフィンガー継手であるが、本発明における無端ベルトの継手は、相互に相補的であれば特に限定されず、例えば、先端に向かって厚みが漸減するスカイバー継手でもよい。
【0037】
本実施形態に係る無端ベルト10は、1本の帯状ベルトの両端部を突き合せて接合された1本のベルトで形成できるが、本発明の無端ベルトはこれに限定されず、別々のベルトの両端部の端面同士を接合して形成してもよい。
【0038】
本実施形態に係る無端ベルト10は、第1中間層14に補強シート26を設ける場合について説明したが、本発明はこれに限らない。補強シート26は、第2中間層16に設けてもよく、第1中間層14及び第2中間層16に設けてもよい。
【0039】
本実施形態に係る無端ベルト10は、5層構造である場合について説明したが、少なくとも心体層12、第1中間層14、第1表面層18を備えていれば足り、3層、4層、又は6層以上の構造でもよい。
【0040】
補強シート26は、編布である場合について説明したが、例えば、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、又はアラミド樹脂のシートを用いてもよい。この場合、補強シート26は、空隙28として厚み方向に貫通した穴を有する。穴の形状は、円形、楕円形、多角形とすることができる。補強シート26は、厚み方向からみた、単位面積当たりの空隙28の割合が35%以上70%以下であることによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 無端ベルト
12 心体層
14 第1中間層
15 継手部
16 第2中間層
18 第1表面層
19 凹部
20 第2表面層
21 凸部
22 第1端部
24 第2端部
26 補強シート
27 表面側中間部
28 空隙
29 心体側中間部
31 接続部
33 分離部
図1
図2
図3
図4
図5