(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】イオン変性シリコーン、組成物、およびそれから形成された医療機器
(51)【国際特許分類】
C08F 30/08 20060101AFI20240301BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20240301BHJP
C07F 7/10 20060101ALI20240301BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20240301BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240301BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240301BHJP
A61K 31/4535 20060101ALI20240301BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240301BHJP
A61K 31/5575 20060101ALI20240301BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240301BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240301BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240301BHJP
A61L 29/06 20060101ALI20240301BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20240301BHJP
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A61L 31/10 20060101ALI20240301BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20240301BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20240301BHJP
A61L 15/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240301BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240301BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240301BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20240301BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20240301BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240301BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240301BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C08F30/08
C07F7/08 X CSP
C07F7/10 X
G02C7/04
A61K45/00
A61K31/5377
A61K31/4535
A61K31/4709
A61K31/5575
A61K9/06
A61K47/34
A61K9/70
A61L29/06
A61L29/16
A61L31/06
A61L31/10
A61L29/12 100
A61L31/16
A61L15/00
A61P37/08
A61P9/00
A61P1/00
A61P11/00
A61P5/00
A61P3/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/04
A61P27/02
A61P23/02
A61P9/02
A61P9/12
A61P37/04
A61P17/16
(21)【出願番号】P 2019544651
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(86)【国際出願番号】 US2018018476
(87)【国際公開番号】W WO2018152392
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】メーラ,ミーナル
(72)【発明者】
【氏名】マサド,ラヴィーンドラ
(72)【発明者】
【氏名】バット,シュリーダル
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540087(JP,A)
【文献】特表2014-509612(JP,A)
【文献】特表2014-517083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 30/08
C07F 7/08
C07F 7/10
G02C 7/04
A61K 45/00
A61K 31/5377
A61K 31/4535
A61K 31/4709
A61K 31/5575
A61K 9/06
A61K 47/34
A61K 9/70
A61L 29/06
A61L 29/16
A61L 31/06
A61L 31/10
A61L 29/12
A61L 31/16
A61L 15/00
A61P 37/08
A61P 9/00
A61P 1/00
A61P 11/00
A61P 5/00
A61P 3/00
A61P 35/00
A61P 31/00
A61P 31/04
A61P 27/02
A61P 23/02
A61P 9/02
A61P 9/12
A61P 37/04
A61P 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のシリコーン化合物であって、
【化1】
ここでR
1は、単結合、または酸素、硫黄、もしくは窒素から選択されるヘテロ原子を任意に含み1から16個の炭素原子を含む二価の基から選択され;
R
2は、直鎖、分岐、環状、もしくはケージ様シロキサニル部分、または下記一般構造(a)を有するシラン部分であり
【化2】
pが0である;
X
1は、1から16個の炭素原子を含む直鎖アルキル基または3から16個の炭素原子を含む分岐アルキル基、トリメトキシシリル、トリメチルシリルオキシ、(CH
3)
3Si(CH
2)
oCH
2-、ここでoは0から3から選択される整数である、(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、または(CH
3)
3Si(CH
2CH
2Si(CH
3)
2O)
s-、ここでsは0から200から選択される整数である、から独立して選択され;
X
2は、1から16個の炭素原子を含む直鎖アルキル基または3から16個の炭素原子を含む分岐アルキル基、トリメトキシシリル、トリメチルシリルオキシ、(CH
3)
3Si(CH
2)
oCH
2-、ここでoは0から3から選択される整数である、(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、または(CH
3)
3Si(CH
2CH
2Si(CH
3)
2O)
z-、ここでzは0から200から選択される整数である、または-[OSi(CH
3)
2]
mG
1、ここでG
1は(CH
3)
3SiO-であり、そしてmは
1から400の整数である、または一般式(b1)もしくは(b2)の反応性もしくは非反応性シリコーン基から独立して選択され、
【化3】
ここでlは0から200から選択される整数であり
;
X
3およびX
5は、C1-C6アルキル
、トリメチルシリルオキシ、(CH
3)
3SiCH
2CH
2-または(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、および-OSi(CH
3)
2
-から独立して選択され、但し(i)X
6が-O[Si(CH
3)
2O-]
nであるとき、X
3およびX
5はそれぞれ-OSi(CH
3)
2-であり、そしてX
5はX
6と単結合を形成して二価の-X
5-X
6-基を対応して形成し、それはケイ素原子に結合して環状ポリシロキサン環を形成するという条件であり;
X
6、X
7、およびX
8は、1から16個の炭素原子を含む直鎖アルキル基または3から16個の炭素原子を含む分岐アルキル基、アルコキシまたはトリメチルシリルオキシ、または-O[Si(CH
3)
2O-]
n、ここでnは1から9から選択される整数である、から独立して選択され、そしてここで、X
6、X
7及びX
8が、-O[Si(CH
3)
2O-]
nのとき、二価のX
6と二価のX
7、二価のX
7と二価のX
8、または二価のX
6と二価のX
8は環を形成し得;
X
4は、ジメチルシロキシ、-O[Si(CH
3)
2O-]、-CH
2CH
2(CH
3)
2SiO-部分から独立して選択される任意の接続基であり;
Gは、直鎖もしくは分岐
の飽和脂肪族基または炭素環式基から独立して選択される、シロキサン部分と反応性部分との間の三価の架橋単位であり;
Aは、ないまたはヘテロ原子から選択され;
Iは、酸素原子を含み0から200個の炭素原子を有するイオン含有部分であり、そして下記式のものであり、
------K-L-M(X)
w
ここでKは酸素原子であり、
Lは、単結合、または酸素原子を含み得る、0から50個の炭素原子を有する置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐、脂肪族もしくは芳香族炭化水素を含む二価炭化水素基であり、
MおよびXは、イオン性官能
基であり、ここでMとXは、互いに化学結合していない反対に帯電した種であり、wは
1から10であり、
Mは以下から独立して選択され、
【化6】
Xは、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(ピリジン)、ポリ(イミダゾリウム)、
またはポリアクリレート
の第4級アンモニウム塩から選択されるカチオン性ポリマー、アルキル、アラルキル、脂環式、芳香族、分岐または非分岐アミンの第4級アンモニウム化合物、アルカリ金属
イオン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから独立して選択され;
そしてRは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、および脂環式であって1から100個の炭素原子を有して任意にてヘテロ原子を有し、ヒドロキシ、アミド、ウレタン、尿素、エステル、アミン、チオール、ジスルフィド、エーテルおよび下記式などの官能基を含み得るものから独立して選択され、
【化7】
ここでG
1
は、脂肪族、芳香族、脂環式であって1から100個の炭素原子を有する基から選択される三価の基であり、
Z
1は、下記式の反応性の官能性部分であり、
【化8】
ここでR
14、R
15、およびR
16は、水素または1から5個の炭素原子を有する一価炭化水素基から独立して選択され;そしてFは、1から16個の炭素原子を有し任意にてヘテロ原子を含む脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素基から選択されるリンカー基であり;そしてR
1およびR
2は請求項1で定義された通りであり、そしてxは1であり、
Zは、一般式(c)を有する重合性基であり、
【化5】
ここでR
14、R
15、およびR
16は、水素または1から5個の炭素原子を有する一価炭化水素基から独立して選択され;そしてFは、1から16個の炭素原子を有し任意にてヘテロ原子を含む脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素基から選択されるリンカー基であり、
Aは、なしまたはヘテロ原子から選択される、化合物。
【請求項2】
Xは下記から独立して選択され、
【化9】
ここでRは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、および脂環式であって1から100個の炭素原子を有して任意にてヘテロ原子を有し、ヒドロキシ、アミド、ウレタン、尿素、エステル、アミン、チオール、ジスルフィド、エーテル、および式(i)などの官能基を含み得るものから独立して選択され:
【化10】
ここでG
1
は、脂肪族、芳香族、脂環式であって1から100個の炭素原子を有する基から選択される三価の基であり、
Z
1は、下記式の反応性の官能性部分であり、
【化11】
ここでR
14、R
15、およびR
16は、水素または1から5個の炭素原子を有する一価炭化水素基から独立して選択され;そしてFは、脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素基であって、1から16個の炭素原子を有し、任意にてヘテロ原子を含むものから選択されるリンカー基であり
;そしてR
1およびR
2は、請求項1での定義の通りであり、そしてxは1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Kは酸素であり、LはC1-C6二価炭化水素基であり、そしてMは-C(O)-O
-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
(A)ゲル材料および(B)活性物質を含む組成物であって、ここでゲル材料(A)は、請求項1から3のいずれか一項に記載のシリコーン化合物を含む反応混合物から形成されてなる、組成物。
【請求項5】
ゲル材料(A)が形成される反応混合物は、ビニルモノマー、アクリルアミドモノマー、アクリルモノマー、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される有機モノマーを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
(a)ビニルモノマーは、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、ビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニル含有シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択され;(b)アクリルモノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシルプロピルメタクリレート、トリメチルアンモニウム2-ヒドロキシプロピルメタクリレートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル化親水性もしくは疎水性有機シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ゲル材料(A)が形成される反応混合物は、(i)任意にて化学線硬化条件に対して反応性または非反応性の活性成分、および(ii)任意にて有機モノマー、有機マクロマー、反応性ポリマー、架橋剤、相溶化剤、着色剤、開始剤、またはそれらの2つ以上の組み合わせをさらに含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
式(I)のシリコーン化合物は、組成物の1重量パーセントから99重量パーセントの量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
式(I)のシリコーン化合物と有機モノマーとの比は1:99から99:1である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
活性物質(B)は、中枢神経系に影響を与える薬剤、抗アレルギー剤、心血管剤、呼吸器官に影響を及ぼす薬剤、消化器官に影響を及ぼす薬剤、ホルモン製剤、代謝に影響を及ぼす薬剤、抗腫瘍剤、抗生物質製剤、化学療法薬、抗菌薬、局所麻酔薬、抗ヒスタミン薬、消炎薬、収斂剤、眼科的に活性な薬物、ビタミン、抗真菌剤、末梢神経麻酔薬、血管拡張薬、生薬エッセンス、チンキ剤、生薬粉末、降圧剤、免疫抑制剤、潤滑剤、湿潤剤、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
眼科的に活性な薬物は、ピロカルピン、エピネフリン、テトラサイクリン、フェニレフリン、エセリン、ホスホリンヨージド、デメカリウムブロミド、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ペニシリン、エリスロマイシン、カルバコール、スルファセタミド、ポリミキシンB、イドクスウリジン、イソフロロフェート、フルオロメタロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、デキサメタゾン21-ホスフェート、フルオロキノロン、メドリゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-ホスフェート、プレドニゾロンアセテート、ベタメタゾン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、クロリクロメン、ジクロフェナクジエチルアンモニウム、ピロキシカム、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、チモロールマレエート、ケトチフェンフマレート、モキシフロキサシンヒドロクロリド一水和物、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項4に記載の組成物から形成されてなるゲル。
【請求項13】
ゲルがフィルムの形である、請求項12に記載のゲル。
【請求項14】
請求項4に記載の組成物から形成されるヒドロゲル。
【請求項15】
ヒドロゲルが活性成分を含む、請求項14に記載のヒドロゲル。
【請求項16】
コンタクトレンズの形の請求項14に記載のヒドロゲル。
【請求項17】
請求項14に記載のヒドロゲルを含むコンタクトレンズ。
【請求項18】
請求項4から11のいずれか一項に記載の組成物、請求項12に記載のゲル、または請求項14に記載のヒドロゲルを含む活性物質送達システム。
【請求項19】
ヒドロゲルがヒドロゲルフィルムである、請求項18に記載の活性物質送達システム。
【請求項20】
ヒドロゲルがコンタクトレンズの形である、請求項18に記載の活性物質送達システム。
【請求項21】
請求項20に記載の活性物質送達システムを含むコンタクトレンズ。
【請求項22】
請求項20に記載の活性物質送達システムをその表面に配置して含む医療機器。
【請求項23】
医療機器が、プローブ、ワンド、フィルム、バンド、パッチ、コンタクトレンズ、またはインサートから選択される、請求項22に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2017年2月16日に出願された米国仮出願第62/459,632号の優先権および利益を主張し、その開示全体は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、シリコーン化合物およびそのような化合物を含む組成物に関する。特に、正味中性である全体電荷を有するイオン変性シリコーン化合物、そのようなシリコーン化合物を含む組成物、そのような組成物から形成されたヒドロゲルを組み込む能動送達システム、およびそのような組成物から形成された物品が提供される。
【背景技術】
【0003】
長期間にわたる連続装用のコンタクトレンズは、ポリジメチルシロキサンから調製されたシリコーンゴムで作られている。シリコーンゴムコンタクトレンズは非常に撥水性が高く、そして熱伝導率や熱拡散率などの熱特性が角膜と大きく異なるため、酸素透過性にもかかわらず、異物感、特に灼熱感を与える場合がある。シリコーンゴム製のコンタクトレンズは、着用するのが不快になる傾向がある。さらに、シリコーンゴムは柔らかく弾力性があるため、切断、研削、研磨などの精密な機械的処理を行うことが困難である。シリコーンゴムレンズの表面を親水性にするための多くの試みが行われてきたが、完全に満足できるコンタクトレンズは開発されていない。高含水率のコンタクトレンズは通常、ポリ-N-ビニルピロリドンポリマーでできている。高含水率のコンタクトレンズは通常、重量で約60%から約80%の水を含むため、それらは、(a)低含水率のコンタクトレンズと比較して材料品質が弱く、(b)使用中にレンズに浸透して蓄積する涙に見られる無機および有機化合物で容易に汚染され、および(c)使用中に水が蒸発するためレンズの輪郭を維持するのが悪く、これが屈折率を容易に変化させるという欠点を有している。
【0004】
反応性シリコーンハイドロゲル配合物は、比較的高い酸素透過性、柔軟性、快適さ、角膜合併症の低減により、長時間の装用ソフトコンタクトレンズの製造に使用される。従来のヒドロゲル材料(2-ヒドロキシメチルメタクリレート、HEMAなど)自体は酸素透過性が低く、吸収された水分子を介して酸素を眼に輸送する。水は低い酸素透過性を有し、これはDk値とも称され、それはBarrerで表すことができ、1Barrer=10-11(cm3O2)cmcm-2s-1mmHg-1、ここで、「cm3O2」は標準の温度と圧力の酸素量で、「cm」は材料の厚さを表しそして「cm-2」は、その材料の表面積の逆数である。水のDkは約80Barrerである。大気に長時間さらされると、これらのレンズはゆっくり脱水され、角膜に運ばれる酸素の量が減る。目の刺激、発赤、およびその他の角膜合併症が発生する可能性があり、レンズの使用が限られた装用期間に制限される場合がある。反応性シリコーンモノマーを従来のモノマーと配合することは可能性のある解決策であるが、そのような配合は相溶性の問題によって損なわれている。
【0005】
この問題の可能な解決策は、モノマーに親水性ユニットを組み込むことにより、シリコーンモノマーを親水性にすることである。親水性シリコーンモノマーを提供する1つのアプローチは、架橋剤の存在下で有機変性シリコーンモノマーを有機モノマーと重合させることである。親水性を提供する従来の試みの例には、米国特許第4,260,725;5,352,714;5,998,498;6,867,245;6,013,711;6,207,782;7,601,766;7,557,231;7,732,546;7,781,558;および7,825,273が挙げられ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。このアプローチでは、水-イソプロパノール溶媒混合物によってマトリックスから浸出性モノマーを抽出する必要がある未制御の粘度増大により、多数の未反応モノマーが生じる。これは、増大した処理コストにつながる。さらに、これらの方法によって作られたシリコーンヒドロゲル配当物は、依然として顕著な濡れ性を示さない。
【0006】
メタアクリロキシプロピルトリス-(トリメチルシロキシ)シランモノマーは、シリコーン含有ヒドロゲルの調製に使用されてきた。(メタ)アクリルオキシプロピルトリス-(トリメチルシロキシ)シランは疎水性であり、ポリウレタン-シリコーンポリマーの調製に使用される。これらのポリウレタンシリコーンポリマーは、疎水性シリコーンのブロックを含んでいる。これらのポリマーから作られたコンタクトレンズは、ポリマー内の疎水性領域のために目の不快感を引き起こす可能性がある。
【0007】
シリコーンヒドロゲルは、通常、アクリレートまたはメタクリレート官能化シリコーンモノマーから作られ、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)などの親水性有機モノマー、およびメチルメタクリル酸(MA)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)などの他のモノマーと架橋剤およびフリーラジカルまたは光開始剤の存在下で重合される。架橋剤は一般に、分子の異なる部位に2つ以上の反応性官能基を持っている。通常、これらの部位は、重合可能なエチレン性不飽和基を含んでいる。シリコーンヒドロゲルを形成する重合中に、2つの異なるポリマー鎖と共有結合を形成し、安定した3次元ネットワークを形成してポリマーの強度を向上させる。コンタクトレンズに従来使用されている架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレートおよびトリメチルオイルプロパントリメタクリレートを含む。他の有用な架橋剤には、ジエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ジグリシジルビスフェノールAジメタクリレート、およびジメタクリレート末端ポリエチレングリコール、および反応性線状ポリエーテル変性シリコーンが含まれる。これらのシリコーンヒドロゲルの酸素透過性は、アクリレートまたはメタクリレート官能化シリコーンモノマーの化学構造と、架橋ポリマーの調製に使用される反応性炭素-炭素二重結合を含む他のモノマーの選択の影響を受ける。
【0008】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ材料は、通常、疎水性の単官能性シリコーンモノマーまたは多官能性親水性シリコーンモノマーを使用して作成され、その後に二次表面処理が行われる。コンタクトレンズ産業では、単官能性シリコーンモノマーは、多官能性シリコーンモノマーよりもよく使用され、なぜなら後者は、それから作られたレンズの高められた剛性につながるからである。しかしながら、既知の単官能性シリコーンモノマーには欠陥があり得る。例えば、単官能性シロキサン-ポリエーテル(メタ)アクリレートは空気酸化を受けやすい。6員環のシロキサン基に対する(メタ)アクリルオキシ基の1,4-置換を含む単官能性(メタ)アクリルオキシ官能性シロキサン、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-4-[2-ビス-(トリメチルシロキシ)メチルシラニル-エチル]-シクロヘキシルエステルは、シリコーンヒドロゲルを通る酸素の透過性を阻害する可能性のある高度に秩序化されたコポリマーを形成する。6員環上のシロキサン基への(メタ)アクリロキシ基の1,3-置換、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-5-[2-ビス-(トリメチルシロキシ)メチルシラニル-エチル]-シクロヘキシルエステルは、低度に秩序化された共重合体を形成するが、(メタ)アクリロキシ基の中程度の極性がシリコーンヒドロゲルの親水性に影響を与える可能性がある。
【0009】
上記の特許に記載されているシリコーン系の材料を含むソフトコンタクトレンズの最新技術は、配合相溶性、準最適表面濡れ性、脂質沈着、ポリマーの調製における相溶化剤の必要性、内部湿潤剤、または「プラズマ酸化」表面処理などの後処理処理などの大きな不足をいまだ有している。これらのアプローチは、酸素透過性を低下させるか、製造プロセス中におけるコストを追加する相溶化剤の使用を必要とする可能性がある。現在の技術水準の在来シリコーン含有材料が有する欠点および必要とする高価な表面処理なしで、コンタクトレンズを製造するために使用できる、有利な濡れ性および酸素透過性を備えた親水性シリコーンモノマーが依然として必要である。
【0010】
メタクリル酸含有イオンレンズは、良好な親水性と含水率を提供する。ただし、メタクリル酸に関連する問題は、アニオン性カルボキシレート基によるレンズへの堆積である。コンタクトレンズ表面への涙液膜成分の沈着は、レンズの全体的な性能の低下と炎症反応の増加を引き起こす。涙液膜の組成、材料のイオン性、含水率、細孔径、疎水性など、コンタクトレンズ材料への堆積に影響するさまざまな要因がある。涙液層のタンパク質の大部分はリゾチームであり、グループIVの材料(イオン性、高含水率)は、このタンパク質を他のグループよりも大きく引き付ける傾向がある。グループII(非イオン性、高含水率)レンズ素材は、涙液層から脂質を引き寄せる傾向がある。一部のSiH材料は、従来のヒドロゲルよりもかなり少ないタンパク質と脂質を堆積することがわかっているが、堆積のパターンは材料の式と表面処理されているかどうかに依存するように見える。また、タンパク質が表面処理のためにレンズのマトリックスに浸透できないため、一部のSiHレンズに変性タンパク質がより高い割合で蓄積する可能性もある。
【0011】
眼疾患の治療は、従来、局所投与を利用して、眼内の治療薬濃度を達成している。局所療法には、主に点眼薬、軟膏またはローションの点眼が含まれまる。しかし、点眼薬の投与時に、流涙および瞬きまたは鼻涙システムを介した排液による薬物の希釈および洗浄により、薬物の著しい損失が発生し、その治療効率が制限される。ここで、軟膏またはローションを使用すると、角膜との接触時間が長くなり、薬物の吸収が増加するが、患者の視力がゆがんでぼやける。
【0012】
生物学的利用能を高めるために、薬物の滞留時間とその吸収を高める必要があるため、眼球送達のためのコンタクトレンズの使用が導入されている。眼の薬物送達に関する以前の試みの例には、米国特許第8,414,912;9,102,105;8,349,351;8,404,271およびEP2370054が挙げられ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。過去の多くの研究者は、薬液に浸してその後装着する際にコンタクトレンズを使用している(European Journal of Clinical pharmacology, 1999, 55(4): 317-323)。米国特許第8,273,366号は、点眼薬の分散ナノ粒子を有するコンタクトレンズを含む薬物送達システムを開示している。さらに、米国特許第7,638,137号およびEP2 543 358 B1は、P-HEMA(ポリ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート)またはPMAA(ポリ(メタクリレート酸))を含むヒドロゲルコンタクトレンズを使用して、ナノキャリアまたは薬物封入アプローチを使用した効果的な眼送達方法を記載している。Int. J. Pharm. (2003, vol. 257, no. 1-2, pages141-151)の論文は、トロモリンナトリウム、ケトチフェンフマレート、ケトロラクトロメタミン、およびデキサメタゾンソディウムホスフェートとシリコーンおよびp-HEMA含有ヒドロゲルコンタクトレンズのin vitro取り込みおよび放出挙動を説明している。
【0013】
シリコーンコンタクトレンズからの薬物の取り込みおよび放出が検討されてきたが、デバイスとしてコンタクトレンズを使用する眼への薬物の制御および持続的放出の必要性が残っている。薬物との相互作用によりヒドロゲルに機能性モノマーを組み込むと、薬物の取り込みが促進され、そして持続的放出が可能になる。
【0014】
したがって、有利な濡れ性、空気酸化に対する安定性、高い酸素透過性、低い破片形成、および相溶化剤を必要とせずにポリマーを作るために使用される他の反応性モノマーへの高い溶解性を備えた親水性シリコーンモノマーの必要性が残っている。
【発明の概要】
【0015】
以下に、本開示の概要を示し、いくつかの態様の基本的な理解を提供する。この概要は、主要な要素または重要な要素を特定することも、実施形態または特許項の制限を定義することも意図していない。さらに、この概要は、本開示の他の部分でより詳細に説明され得るいくつかの態様の簡略化された概要を提供し得る。
【0016】
本発明は、シリコーン化合物(例えば、モノマー、マクロマー、ポリマーおよびそのヒドロゲル配合物)、およびそのようなシリコーン化合物を含む薬物送達システムに関する。態様において、本発明は、正味中性である全体的な電荷を有するイオン変性シリコーンを提供する。そのようなイオン変性シリコーンに由来するヒドロゲルを含む薬物送達システムは、濡れ性、配合相溶性、空気酸化に対する安定性、気体透過性の利点を提供するのに役立ち、破片の形成を少なくする。本明細書の態様において、それらは、そのような材料から形成された組成物および材料(例えば、コンタクトレンズ)に抗菌特性を付与してもよい。それらはまた、イオン-イオン相互作用を介して、医薬活性物質などの活性物質を保持または放出するために利用することができる。
【0017】
一態様では、式(I)のシリコーン化合物が提供され:
【化1】
ここでR
1は、化学結合、または1から16個の炭素原子を含み、酸素、硫黄、もしくは窒素から選択されるヘテロ原子を任意にて含む二価の基から選択され;
R
2は、直鎖、分岐、環状、もしくはケージ様シロキサニル部分、または下記一般構造(a)を有するシラン部分であり、
【化2】
X
1は、1から16個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、トリメトキシシリル、トリメチルシリルオキシ、-O[Si(CH
3)
2O-]
n、ここでnは1から9から選択される整数である、(CH
3)
3Si(CH
2)
oCH
2-、ここでoは0から3の整数である、(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、または(CH
3)
3Si(CH
2CH
2Si(CH
3)
2O)
s-、ここでsは、0から200から選択される整数である、から独立して選択され、
X
2は、1から16個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、トリメトキシシリル、トリメチルシリルオキシ、-O[Si(CH
3)
2O-]
n、ここでnは1から9から選択される整数である、(CH
3)
3Si(CH
2)
oCH
2-、ここでoは0から3の整数である、(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、もしくは(CH
3)
3Si(CH
2CH
2Si(CH
3)
2O)
z-、ここでzは0から200から選択される整数である、-[OSi(CH
3)
2]
mG
1、ここでG
1は(CH
3)
3SiO-でありそしてmは0から400の整数である、または一般式(b1)または(b2)の反応性または非反応性シリコーン基から独立して選択され:
【化3】
ここでlは0から200から選択される整数であり;そしてX
2が式(b1)または(b2)のものである場合、式(a)のpは0であり;
X
3およびX
5は、C1-C6アルキル、トリメチルシロキシ、(CH
3)
3SiCH
2CH
2-、(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、および-OSi(CH
3)
2から独立して選択され、但し(i)X
1またはX
6が-O[Si(CH
3)
2O-]
nのとき、X
3およびX
5は、それぞれ、-OSi(CH
3)
2であり、そしてX
1はX
3と化学結合を形成し、X
5はX
6と化学結合を形成してそれぞれ二価の-X
1-X
3-またはX
5-X
6-基を形成し、それはケイ素原子に結合して環状ポリシロキサン環を形成する、および(ii)X
3および/またはX
6は、-OSi(CH
3)
2のとき、X
1および/またはX
6は、-O[Si(CH
3)
2O-]
nであり、そしてX
1はX
3と化学結合を形成し、および/またはX
5はX
6と化学結合を形成して、二価の-X
1-X
3-またはX
5-X
6-基を形成し、それはケイ素原子に結合して環状ポリシロキサン環を形成するという条件であり、
ここでX
1、X
2およびX
3は任意選択的に、それぞれ-O[Si(R
7)O-]
nであり得、相互接続して式(b3)に記載されているポリシルセスキオキサン環を形成することがあり得、そしてR
7は、直鎖または分岐アルキルまたはアラルキル基から独立して選択され;
【化4】
X
6、X
7、およびX
8は、1から16個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、アルコキシ、トリメチルシリルオキシ、または-O[Si(CH
3)
2O-]
nから独立して選択され、ここでnは1から9から選択される整数であり、そしてここでX
6とX
7、X
7とX
8、またはX
6とX
8は環を形成してもよく;
X
4は、ジメチルシロキシ、-O[Si(CH
3)
2O-]、または-CH
2CH
2(CH
3)
2SiO-部分から独立して選択される任意の接続基であり、
pは0から10から選択される整数であり;
Gは、直鎖もしくは分岐アルキル基または炭素環式基であってヘテロ原子を任意にて含むものから独立して選択される、シロキサン部分と反応性部分との間の架橋単位であり;
Aはヘテロ原子であり;
Iは、0から200個の炭素原子を有しヘテロ原子を任意にて含むイオン含有部分であり、ここでイオン含有部分は対イオンで相殺され;そして
Zは、一般式(c)を有する重合性基であり:
【化5】
ここでR
14、R
15、およびR
16は、水素または1から5個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカルから独立して選択され;そしてFは、任意にてヘテロ原子を含む1から16個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素ラジカルから選択されるリンカー基である。
【0018】
一実施形態において、Iは下記式のものであり、
------K-L-M(X)w
ここでKは二価のヘテロ原子であり、一実施形態ではKは酸素原子であり、
Lは、化学結合、またはヘテロ原子を含み得る、1から50個の炭素原子を有する置換または非置換、直鎖または分岐、脂肪族または芳香族炭化水素を含む二価炭化水素ラジカルであり、実施形態では、アルコール、エーテル、エステル、アミド、アミン、尿素、ウレタン、シアノ、カーボネート、カルバメート、チオール、チオエーテル、チオールエステル、またはそれらの2つ以上の組み合わせから独立して選択される官能基を含むことができ;
MおよびXは、イオン性官能基またはイオン性官能基形成化合物であり、ここでMとXは、互いに化学結合していない反対に帯電した種であり;
そして
wは1から10である。
【0019】
一実施形態では、Mは下記から独立して選択され、
【化6】
Xは、第4級アンモニウム化合物、第4級アンモニウム基形成化合物、カチオン性ポリマー、N、P、As、Sb、またはBiから選択される15族元素、金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属、またはそれらの組み合わせから独立して選択される。
【0020】
一実施形態では、Xは下記から独立して選択され、
【化7】
ここでRは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、および脂環式であって1から100個の炭素原子を有し任意にてヘテロ原子を有し、ヒドロキシ、アミド、ウレタン、尿素、エステル、アミン、チオール、ジスルフィド、エーテル、および下記式などの官能基を含み得るものから独立して選択され、
【化8】
ここでG
1は、アルキル、アリール、アラルキル、および脂環式であって、1から100個の炭素原子を有して任意にてヘテロ原子を有するものであり;
Z
1は、下記式の反応性または非反応性の官能性部分であり、
【化9】
ここでR
14、R
15、およびR
16は、水素または1から5個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカルから独立して選択され;そしてFは、1から16個の炭素原子を有して任意にヘテロ原子を含む脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素ラジカルから選択されるリンカー基であり;そしてAは、なしまたはヘテロ原子から選択され;そしてR1およびR2は請求項1で定義された通りであり、xは0から10である。
【0021】
任意の前述の実施形態の化合物の一実施形態では、ここでXが、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(ピリジン)、ポリ(イミダゾリウム)、ポリアクリレート系の4級アンモニウム塩、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択されるカチオン性ポリマーである。
【0022】
任意の前述の実施形態の化合物の一実施形態では、Kは酸素であり、LはC1-C6二価炭化水素ラジカルであり、そしてMは-C(O)-OHである。
【0023】
他の態様において、(A)ヒドロゲル材料と(B)活性物質を含む組成物が提供され、ここでヒドロゲル材料(A)は、任意の前述の実施形態のシリコーン化合物を含む反応混合物から形成される。
【0024】
一実施形態では、ヒドロゲル材料(A)が形成される反応混合物は、ビニルモノマー、アクリルアミドモノマー、アクリルモノマー、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される有機モノマーを含む。
【0025】
任意の前述の実施形態の組成物の一実施形態では、(a)ビニルモノマーは、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、ビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニル含有シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択され;(b)アクリルモノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシルプロピルメタクリレート、トリメチルアンモニウム2-ヒドロキシプロピルメタクリレートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル化親水性または疎水性有機シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0026】
任意の前述の実施形態の組成物の一実施形態では、ヒドロゲル材料(A)が形成される反応混合物は、(i)任意選択的に化学線硬化条件に対して反応性または非反応性の活性成分、および(ii)任意選択的に、有機モノマー、有機マクロマー、反応性ポリマー、架橋剤、相溶化剤、着色剤、開始剤、またはそれらの2つ以上の組み合わせをさらに含む。
【0027】
任意の前述の実施形態の組成物の一実施形態では、式(I)のシリコーン化合物は、組成物の約5重量パーセントから約90重量パーセントの量で存在する。
【0028】
任意の前述の実施形態の組成物の一実施形態では、式(I)のシリコーン化合物と有機モノマーとの比は約1:99から99:1である。
【0029】
任意の前述の実施形態の組成物の一実施形態では、活性物質(B)は、中枢神経系に影響を与える薬剤、抗アレルギー剤、心血管剤、呼吸器官に影響を与える薬剤、消化器官に影響を与える薬剤、ホルモン製剤、代謝に影響を与える薬剤、抗腫瘍薬、抗生物質製剤、化学療法薬、抗菌薬、局所麻酔薬、抗ヒスタミン薬、消炎薬、収斂剤、ビタミン、抗真菌薬、末梢神経麻酔薬、血管拡張薬、生薬エッセンス、チンキ剤、生薬粉末、降圧剤、免疫抑制剤、潤滑剤、湿潤剤またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0030】
任意の前述の実施形態の組成物の一実施形態では、活性物質(B)は、眼科的に活性な薬物である。
【0031】
任意の前述の実施形態の組成物の一実施形態では、眼科的に活性な薬物は、ピロカルピン、エピネフリン、テトラサイクリン、フェニレフリン、エゼリン、ホスホリンヨージド、デメカリウムブロミド、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ペニシリン、エリスロマイシン、カルバコール、スルファセタミド、ポリミキシンB、イドクスウリジン、イソフロロフェート、フルオロメタロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、デキサメタゾン21-ホスフェート、フルオロシノロン、メドリゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-ホスフェート、プレドニゾロンアセテート、ベタメタゾン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、クロリクロメン、ジクロフェナクジエチルアンモニウム、ピロキシカム、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、チモロールマレエート、ケトチフェンフマレート、モキシフロキサシンハイドロクロリド一水和物、またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0032】
さらに別の態様では、任意の前述の実施形態の組成物から形成されたゲルが提供される。
【0033】
一実施形態では、ゲルはフィルムの形である。
【0034】
さらに別の態様では、任意の前述の実施形態の組成物から形成されたヒドロゲルが提供される。
【0035】
一実施形態では、ヒドロゲルは活性成分を含む。
【0036】
一実施形態では、任意の前述の実施形態のヒドロゲルは、コンタクトレンズの形である。
【0037】
一実施形態では、任意の前述の実施形態によるヒドロゲルで作られたコンタクトレンズが提供される。
【0038】
なおさらなる態様において、任意の前述の実施形態による組成物、ゲル、またはヒドロゲルを含む活性物質送達システムが提供される。
【0039】
活性物質送達システムの一実施形態では、ヒドロゲル材料が形成される反応混合物は、(i)任意にて化学線硬化条件に対して反応性または非反応性の活性成分、および(ii)任意にて、有機モノマー、有機マクロマー、反応性ポリマー、架橋剤、相溶化剤、着色剤、開始剤、またはそれらの2つ以上の組み合わせをさらに含む。
【0040】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、ヒドロゲル材料が形成される反応混合物は、ビニルモノマー、アクリルアミドモノマー、アクリルモノマー、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される有機モノマーを含む。
【0041】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、(a)ビニルモノマーは、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、ビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニル含有シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択され、(b)アクリルモノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシルプロピルメタクリレート、トリメチルアンモニウム2-ヒドロキシプロピルメタクリレートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル化親水性または疎水性有機シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0042】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、式(I)のシリコーン化合物は、組成物の約1重量パーセントから約99重量パーセントの量で存在する。
【0043】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、式(I)のシリコーン化合物と有機モノマーとの比は約1:99から99:1である。
【0044】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、薬学的活性物質は、中枢神経系に影響を与える薬剤、抗アレルギー剤、心血管剤、呼吸器官に影響を与える薬剤、消化器官に影響を与える薬剤、ホルモン製剤、代謝に影響を与える薬剤、抗腫瘍剤、抗生物質製剤、化学療法薬、抗菌薬、局所麻酔薬、抗ヒスタミン薬、消炎薬、収斂剤、ビタミン、抗真菌薬、末梢神経麻酔薬、血管拡張薬、生薬エッセンス、チンキ剤、生薬粉末、降圧剤、免疫抑制剤、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0045】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、薬学的活性物質は、眼科的に活性な薬物である。
【0046】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、眼科的に活性な薬物は、ピロカルピン、エピネフリン、テトラサイクリン、フェニレフリン、エセリン、ホスホリンヨージド、デカメリウムブロミド、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ペニシリン、エリスロマイシン、カルバコール、スルファセタミド、ポリミキシンB、イドクスウリジン、イソフルロフェート、フルオロメタロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、デキサメタゾン21-ホスフェート、フルオシノロン、メドリゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-ホスフェート、プレドニゾロンアセテート、ベタメタゾン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、クロリクロメン、ジクロフェナクジエチルアンモニウム、ピロキシカム、メチルプレドニゾロネン、トリアムシノロン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0047】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、ヒドロゲル材料はヒドロゲルフィルムである。
【0048】
任意の前述の実施形態による活性物質送達システムの一実施形態では、ヒドロゲル材料は、コンタクトレンズの形である。
【0049】
一実施形態では、任意の前述の実施形態によるヒドロゲルで作られたコンタクトレンズが提供される。
【0050】
一実施形態では、任意の前述の実施形態による活性物質送達システムで作られたコンタクトレンズが提供される。
【0051】
さらに別の態様では、任意の前述の実施形態の活性物質送達システムを含む医療機器が提供される。
【0052】
一実施形態では、機器は、プローブ、ワンド、フィルム、バンド、パッチ、コンタクトレンズ、またはインサートから選択される。
【0053】
以下の説明および図面は、さまざまな例示的な態様を開示する。いくつかの改善および新規の態様は明確に特定され得るが、その他は説明および図面から明らかになり得る。
【0054】
図面を参照して、様々な実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、チモロールマレエートの取り込みを経時的に示すグラフである。
【0056】
【
図2】
図2は、モキシフロキサシンヒドロクロリド一水和物の取り込みを経時的に示すグラフである。
【0057】
【
図3】
図3は、ケトチフェンフマレートの取り込みを経時的に示すグラフである。
【0058】
【
図4】
図4は、例34および例35のヒドロゲルフィルムからのチモロールマレエートの放出を示すグラフである。
【0059】
【
図5】
図5は、例36および例37のヒドロゲルフィルムからのモキシフロキサシンヒドロクロリド一水和物の放出を示すグラフである。
【0060】
【
図6】
図6は、例38および例39のヒドロゲルフィルムからのケトチフェンフマレートの放出を示すグラフである。
【0061】
【
図7】
図7は、例42および例43のヒドロゲルフィルムからのチモロールマレエートの放出を示すグラフである。
【0062】
【
図8】
図8は、例44および例45のヒドロゲルフィルムからのモキシフロキサシンヒドロクロリド一水和物の放出を示すグラフである。
【0063】
【
図9】
図9は、例46および例47のヒドロゲルフィルムからのケトチフェンフマレートの放出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
次に、例示的な実施形態を参照し、その例を添付の図面に示す。他の実施形態を利用することができ、構造的および機能的な変更を行うことができることを理解されたい。さらに、様々な実施形態の特徴を組み合わせたり変更したりすることができる。したがって、以下の説明は、例示のみを目的として提示されており、例示された実施形態に対して行われ得る様々な代替形態および修正形態を決して限定するものではない。本開示では、多数の特定の詳細が主題の開示の完全な理解を提供する。本開示の態様は、必ずしも本明細書で説明されるすべての態様などを含むわけではない他の実施形態で実施されてもよいことを理解されたい。
【0065】
本明細書で使用される場合、「例」および「例示的な」という言葉は、例または実例を意味する。「例」または「例示的」という言葉は、主要または好ましい態様または実施形態を示すものではない。「または」という言葉は、文脈からそうでないことが示唆されない限り、排他的ではなく包括的であることを意図している。例として、「AはBまたはCを使用する」という語句には、包括的な置換が含まれる(たとえば、AはBを使用する;AはCを使用する;またはAはBとCの両方を使用する)。別の問題として、冠詞「a」および「an」は、文脈からそうでないことが示唆されない限り、一般に「1つ以上」を意味することを意図している。
【0066】
本発明は、そのような化合物を含むモノマー、マクロメア、またはポリマー組成物などのシリコーン化合物、およびそのような組成物から形成された物品に関する。組成物は、ヒドロゲルを形成するために使用され得る。組成物は、イオン変性シリコーン、ビニルモノマー、活性成分、および架橋剤を含むコンタクトレンズ形成組成物であり得る。イオン変性シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、濡れ性、配合相溶性、空気酸化に対する安定性、ガス透過性の利点を提供するのに役立ち、正味電荷が中性の場合の破片の形成を少なくすることを提供する。それらはまた、イオン-イオン相互作用を介して活性物質を保持または放出するために利用でき、薬物送達システムの一部として提供できる。
【0067】
「マクロマー」とは、さらなる重合/架橋反応を受けることができる官能基を含む中分子量から高分子量の化合物またはポリマーを指す。中分子量および高分子量とは、通常、平均分子量が700ダルトンを超えることを意味する。好ましくは、マクロマーはエチレン性不飽和基を含み、化学線的または熱的に重合することができる。
【0068】
本明細書で使用するポリマー材料(モノマーまたはマクロマー材料を含む)の「分子量」は、特に明記しない限り、または試験条件がそうでないことを示さない限り、数平均分子量を指す。
【0069】
「ポリマー」は、1つまたは複数のモノマー、マクロマー、および/またはオリゴマーを重合/架橋することによって形成された材料を意味する。
【0070】
本明細書で使用される「ビニルモノマー」は、エチレン性不飽和基を有し、化学線的または熱的に重合することができる低分子量化合物を指す。低分子量は、典型的には平均分子量が700ダルトン未満であることを意味する。
【0071】
本明細書で使用される「親水性ビニルモノマー」は、完全に水和したときに少なくとも10重量パーセントの水を吸収できるホモポリマーを形成することができるビニルモノマーを指す。
【0072】
本明細書で使用する「疎水性ビニルモノマー」は、完全に水和したときに10重量パーセント未満の水を吸収できるホモポリマーを形成することができるビニルモノマーを指す。
【0073】
「バインダーポリマー」とは、架橋剤によって、または化学的または物理的手段(例えば、水分、加熱、UV照射など)による開始時に架橋して、当該技術分野で知られているような医療機器(好ましくはコンタクトレンズ)に着色剤を上または中に閉じ込めるまたは結合することができる架橋性ポリマーを指す。
【0074】
「光開始剤」は、光の使用によりラジカル架橋および/または重合反応を開始する化学物質を指す。
【0075】
「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用によりラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。
【0076】
「ケージ様」シロキサンまたはシロキサニル構造は、ポリセスキオキサン型構造を指す。
【0077】
「活性物質」は、医療機器から送達できる成分または化学物質を指す。
【0078】
一態様では、シリコーン化合物が提供される。シリコーン化合物は、親水性であるように構成されている。本化合物によれば、シリコーン化合物は、正味の中性電荷を有するイオン変性化合物である。シリコーン化合物は、イオン基、イオン形成基でイオン的に修飾されており、そして全体的に正味の中性電荷を持つような化合物が提供される。これらの基を有するシリコーン化合物を提供することは、親水性化合物を提供することであることが判明した。化合物は水分散性であり、重合を受けて親水性材料を提供し得る。
【0079】
式(I)のシリコーン化合物が提供され:
【化10】
ここでR
1は、化学結合、または1から16個の炭素原子と、任意にて酸素、硫黄、または窒素から選択されるヘテロ原子を含む二価の基から選択され;
R
2は、直鎖、分岐、環状、またはケージ様シロキサニル部分、または一般構造(a)を有するシラン部分であり、
【化11】
X
1は、1から16個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、トリメトキシシリル、トリメチルシリルオキシ、-O[Si(CH
3)
2O-]
n、ここでnは1から9から選択される整数である、(CH
3)
3Si(CH
2)
oCH
2-、ここでoは0から3の整数である、(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、または(CH
3)
3Si(CH
2CH
2Si(CH
3)
2O)
s-、ここでsは0から200から選択される整数である、から独立して選択され;
X
2は、1から16個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、トリメトキシシリル、トリメチルシリルオキシ、-O[Si(CH
3)
2O-]
n、ここでnは1から9から選択される整数である、(CH
3)
3Si(CH
2)
oCH
2-、ここでoは0から3の整数である、(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、または(CH
3)
3Si(CH
2CH
2Si(CH
3)
2O)
z-、ここでzは0から200から選択される整数である、または-[OSi(CH
3)
2]
mG
1、ここでG
1は(CH
3)
3SiO-であり、そしてmは0から400の整数である、または一般式(b1)または(b2)の反応性または非反応性シリコーン基から独立して選択され、
【化12】
ここでlは0から200から選択される整数であり;そしてX
2が式(b1)または(b2)のものである場合、式(a)のpは0であり;
X
3およびX
5は、C1-C6アルキル、トリメチルシロキシ、(CH
3)
3SiCH
2CH
2-、(CH
3)
3SiCH
2CH
2Si(CH
3)
2O-、および-OSi(CH
3)
2から独立して選択され、但し(i)X
1またはX
6が-O[Si(CH
3)
2O-]
nのとき、X
3およびX
5は、それぞれ、-OSi(CH
3)
2であり、そしてX
1はX
3と化学結合を形成し、X
5はX
6と化学結合を形成してそれぞれ二価の-X
1-X
3-またはX
5-X
6-基を形成し、それはケイ素原子に結合して環状ポリシロキサン環を形成する、および(ii)X
3および/またはX
6は、-OSi(CH
3)
2のとき、X
1および/またはX
6は、-O[Si(CH
3)
2O-]
nであり、そしてX
1はX
3と化学結合を形成し、および/またはX
5はX
6と化学結合を形成して、二価の-X
1-X
3-またはX
5-X
6-基を形成し、それはケイ素原子に結合して環状ポリシロキサン環を形成するという条件であり、
ここでX
1、X
2およびX
3は任意選択的に、それぞれ-O[Si(R
7)O-]
nであり得、相互接続して式(b3)に記載されているポリシルセスキオキサン環を形成することがあり得、そしてR
7は、直鎖または分岐アルキルまたはアラルキル基から独立して選択され;
【化13】
X
6、X
7、およびX
8は、1から16個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基、アルコキシ、トリメチルシリルオキシ、または-O[Si(CH
3)
2O-]
nから独立して選択され、ここでnは1から9から選択される整数であり、そしてここでX
6とX
7、X
7とX
8、またはX
6とX
8は環を形成してもよく;
X
4は、ジメチルシロキシ、-O[Si(CH
3)
2O-]、または-CH
2CH
2(CH
3)
2SiO-部分から独立して選択される任意の接続基であり、
pは0から10から選択される整数であり;
Gは、直鎖もしくは分岐アルキル基または炭素環式基であって任意にてヘテロ原子を含むものから独立して選択される、シロキサン部分と反応性部分との間の架橋単位であり;
Aはヘテロ原子であり、そして一実施形態では、酸素または硫黄から選択され;
Iは、ヘテロ原子を任意にて含み0から200個の炭素原子を有するイオン含有部分であり、ここでIは対イオンで相殺されて正味中性の電荷を提供し;そして
Zは、一般式(c)を有する重合性基であり:
【化14】
ここでR
14、R
15、およびR
16は、水素または1から5個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカルから独立して選択され;そしてFは、1から16個の炭素原子を有して、任意にてヘテロ原子を含む脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素ラジカルから選択されるリンカー基である。
【0080】
実施形態において、R
1は、酸素、硫黄、または窒素から選択されるヘテロ原子を任意に含む二価のC1-C16アルキル基から選択されてもよい。一実施形態では、R
1は、結合または二価C1-C16アルキル、二価C2-C10アルキル、さらには二価C4-C6アルキル基から選択される。R
1では、二価アルキル基は二価アルキル鎖の炭素原子の数を指す。R
1の二価のアルキル基は、CH
2基または炭素基であり、水素原子は、任意にてヘテロ原子を含むC1-C10、C2-C8、またはC4-C6の直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素ラジカルから選択される他の基で置換される。一実施形態では、R
1は、下記式の二価ラジカルから選択され、
【化15】
ここでR
4、R
5、およびR
6は、水素、1から10個の炭素原子、1から6個の炭素原子、1から4個の炭素原子、または1から2個の炭素原子を有し、任意にてヘテロ原子を含む直鎖、分岐、または環状炭化水素ラジカルから独立して選択され、R
3は、1から5個の炭素原子、1から4個の炭素原子、または1から2個の炭素原子を有する炭化水素基であり;qは0から10から選択される整数である。一実施形態において、R
4-R
6は、水素またはC1-C5炭化水素から選択される。一実施形態では、R
3-R
6はそれぞれ、C1-C6炭化水素ラジカルから選択される。一実施形態では、R
3-R
6はそれぞれメチルである。
【0081】
R2に関して、X1およびX2は、pが0よりも大きいとき二価の基であり、そしてpが0のとき一価の基である。
【0082】
一実施形態では、G基は、二価の直鎖または分岐アルキル基、または二価の炭素環式基から選択される。一実施形態では、Gは、下記一般式を有する分岐アルキル部分であり、
【化16】
ここでaは0から16であり、bは1である。
【0083】
一実施形態において、Gは、下記一般式を有する5から10個の炭素原子を含む飽和炭素環単位
【化17】
およびそのアイソマーを含み、ここでcは0から5である。
【0084】
一実施形態では、cは1であり、Gはシクロヘキシレン基である。AおよびR基は、AおよびR基が互いにパラまたはメタに配向されるように、G基に結合することができる。一実施形態では、G単位はシクロヘキシレン基であり、化合物中に以下のように配置される:
【化18】
一実施形態では、Gは、以下の配座異性体の1つ以上から選択される。
【化19】
【0085】
I基は、イオン部分およびイオン形成部分から個別に選択される。I基は、シリコーン化合物が正味の中性電荷を持つように提供される。一実施形態では、イオン性部分は、アニオン性部分とカチオン性部分を含む。一実施形態では、イオン形成部分は、アニオン形成部分とカチオン形成部分を含む。
【0086】
一実施形態では、I基は下記式の基から選択され、
------K-L-M(X)
w (g)
ここでKは二価のヘテロ原子であり、一実施形態ではKは酸素原子であり、
Lは、化学結合、またはヘテロ原子を含み得る、1から50個の炭素原子を有する置換または非置換、直鎖または分岐、脂肪族または芳香族炭化水素を含む二価炭化水素ラジカルであり、実施形態では、アルコール、エーテル、エステル、アミド、アミン、尿素、ウレタン、シアノ、カーボネート、カルバメート、チオール、チオエーテル、チオールエステル、またはそれらの2つ以上の組み合わせから独立して選択される官能基を含むことができ;
MおよびXは、イオン性官能基またはイオン性官能基形成化合物であり、ここでMとXは、互いに化学結合していない反対に帯電した種であり、そしてwは1から10である。Mのための適切なアニオンまたはアニオン形成官能基の例には、限定されるものではないが、以下の基が含まれる:
【化20】
ここでRは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、および脂環式であって、1から100個の炭素原子を有して任意にてヘテロ原子を有し、ヒドロキシ、アミド、ウレタン、尿素、エステル、アミン、チオール、ジスルフィド、エーテルおよび下記式などの官能基を含み得るものから独立して選択され、
【化21】
ここでG
1は、アルキル、アリール、アラルキル、および脂環式であって、1から100個の炭素原子を有して任意にてヘテロ原子を有するものである。適切なカチオン性またはカチオン形成性官能基Xの例には、これらに限定されないが、4級アンモニウム化合物、4級アンモニウム形成化合物、カチオン性ポリマー、15族元素(例、N、P、As、Sb、Bi)、金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属またはその組み合わせが挙げられる。適切な4級アンモニウム化合物の例には、アルキル、アラルキル、脂環式、芳香族、分岐または非分岐アミンが含まれるが、これらに限定されない。適切なカチオン性ポリマーの例には、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(ピリジン)、ポリ(イミダゾリウム)、ポリアクリレート系4級アンモニウム塩、例えば、ポリ(2-トリメチルアンモニウムエチルアクリレート)、ポリ(2-アミノエチルアクリレート)が含まれるが、これらに限定されない。実施形態において、カチオン性基は、式(h1)、(h2)のものであり得:
【化22】
ここでRは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、および脂環式であって、1から100個の炭素原子を有して任意にてヘテロ原子を有し、ヒドロキシ、アミド、ウレタン、尿素、エステル、アミン、チオール、ジスルフィド、エーテルおよび下記式などの官能基を含み得るものから独立して選択され、
【化23】
ここでG
1は、アルキル、アリール、アラルキル、および脂環式であって、1から100個の炭素原子を有して任意にてヘテロ原子を有するものであり、
Z
1は、下記式の反応性または非反応性の官能性部分であり、
【化24】
ここでR
14、R
15、およびR
16は、水素または1から5個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカルから独立して選択され;そしてFは、1から16個の炭素原子を有し、任意にヘテロ原子を含む脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素ラジカルから選択されるリンカー基であり;そしてAは、なしまたはヘテロ原子から選択され;そしてR1およびR2は請求項1で定義された通りであり、xは0から10である。
【0087】
一実施形態では、Xは下記構造から独立して選択され、
【化25】
ここでtは1から16である。
【0088】
実施形態では、wは1から10;1から5;さらには1から2である。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、MとXはイオン結合またはイオン相互作用によって接続される。MおよびX結合は、アニオンおよびカチオン構造を利用可能な対イオンと反応させることによって作成される。
【0089】
Lが炭素原子を含まない基である場合、KはM基に直接結合する。Lが化学結合の場合、M基は-NR2、-OPO(OR)2、-OSO3H、または-OH基を含むことはできない。
【0090】
一実施形態において、Lは、直鎖または分岐鎖であり得るC1-C10の二価炭化水素ラジカルから選択される。二価の炭化水素ラジカルLは飽和していても不飽和結合を含んでいてもよい。一実施形態では、Lは、C1-C8二価炭化水素ラジカル、C1-C6二価炭化水素ラジカル;さらにはC1-C4二価炭化水素ラジカルから選択される。一実施形態において、Lは、C4飽和二価炭化水素ラジカルまたは少なくとも1つの不飽和結合を含むC4二価炭化水素ラジカルから選択される。
【0091】
Fは、1から16個の炭素原子を有し、任意にヘテロ原子を含む脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素ラジカルから選択されるリンカー基である。任意にて、Fは、A基が式(l)中のカルボニル基に直接結合するような結合である。一実施形態では、Fは一般式(m)を有し、
【化26】
ここでnは0から約15から選択される整数であり;Sは、O、CH
2、NR
19、または硫黄から独立して選択される二価のヘテロ原子であり;Jは、官能基-C(O)-、-NR
20C(O)-、-OC(O)-、-OS(O)-、または-P(O)OR
21から独立して選択され;R
17およびR
18は、1から5個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルから独立して選択され;R
19、R
20およびR
21は、水素または1から5個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカルから独立して選択される。一実施形態では、Fは以下の一般構造(18)を有する:
【化27】
ここでkは0から5である。
【0092】
(a)式Iのシリコーン化合物、(b)化学線硬化条件に対して反応性または非反応性の活性成分、および(c)任意にて、有機モノマー、有機マクロマー、反応性ポリマー、架橋剤、相溶化剤、着色剤、開始剤、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む硬化性組成物もまた提供される。
【0093】
シリコーン化合物は、ゲル材料を形成するために使用され得る。「ゲル」とは、コロイド成分よりも動態が遅い分散媒中でコロイド成分が連続的な(相互貫入)ネットワークを形成する固体特性を有するコロイド系である。分散した成分は、共有結合、水素結合、双極子力、ファンデルワールス力、および/または機械的絡み合いによって一緒に保持される。ゲルは、ヒドロゲル(水用)、アルコゲル(アルコール用)、リオゲル(有機溶媒用)、エアロゲル(空気用)などを含む、分散媒(水、アルコール、有機溶媒、空気)に基づいてさまざまなカテゴリにわけられ得る。空気が分散剤として含まれている場合、ゲルは乾燥/調製のタイプに応じてさらに区別される。ゲル液が単純な乾燥によって除去され、液体/蒸気界面が形成された場合、乾燥ゲルは「キセロゲル」と称される。ゲル液がその臨界点と圧力(超臨界条件)を超えて除去された場合、乾燥したゲルは「エアロゲル」と称される。超臨界状態のため、界面は形成されない。液体が凍結乾燥によって除去された場合、乾燥した製品は「クリオゲル」と称される。ここでは、昇華により固体/気体界面が克服される。
【0094】
有機モノマーは、限定されないが、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル、アクリルまたは他の--C=C--含有基などの、少なくとも1つの--C=C--基を含むオレフィン性不飽和基含有化合物から選択することができる。限定されないが、例示的なアクリルモノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシルプロピルメタクリレート、トリメチルアンモニウム2-ヒドロキシプロピルメタクリレートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル化親水性または疎水性有機シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0095】
有機モノマーは、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、ビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニル含有シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせなどのビニルモノマーから選択され得る。
【0096】
ビニル含有シリコーンの例としては、限定されるものではないが、メタクリルオキシアルキルシロキサン、3-メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、ビス(メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、モノメタクリル化ポリジメチルシロキサン、メルカプト末端ポリジメチルシロキサン、N-[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、N-[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、トリス(ペンタメチルジシロキシアニル)-3-メタクリラートプロピルシラン(T2)、およびトリストリメチルシリルオキシシリルプロピルメタクリレート(TRIS)などのシロキサン含有ビニルモノマーを含む。例示的なシロキサン含有モノマーはTRISであり、これは3-メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランと称され、CAS番号17096-07-0で表される。「トリス」という用語には、3-メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランの二量体も含まれる。
【0097】
親水性モノマーは、本発明で使用することができる。適切な親水性モノマーには、ヒドロキシル置換低級アルキル(C1からC8)アクリレートおよびメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、(低級アリル)アクリルアミドおよび-メタクリルアミド、エトキシ化アクリレートおよびメタクリレート、ヒドロキシル置換(低級アルキル)アクリルアミドおよび-メタクリルアミド、ヒドロキシル置換低級アルキルビニルエーテル、ソディウムビニルスルホネート、ソディウムスチレンスルホネート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-ビニルピロール、N-ビニル-2-ピロリドン、2-ビニルオキサゾリン、2-ビニル4,4’-ジアルキルオキサゾリン-5-オン、2-および4-ビニルピリジン、合計3から5個の炭素原子を有するビニル性不飽和カルボン酸、アミノ(低級アルキル)-(「アミノ」という用語には四級アンモニウムも含まれる)、モノ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)およびジ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)アクリレートおよびメタクリレート、アリルアルコールなどが含まれるが、これらに限定されない。特に適切な親水性ビニルモノマーには、Ν,Ν-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、トリメチルアンモニウム2-ヒドロキシプロピルメタクリレートヒドロクロリド、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、グリセロールメタクリレート(GMA)、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アリルアルコール、ビニルピリジン、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、アクリル酸、およびメタクリル酸がある。
【0098】
ヒドロキシ基-OH、アミノ基-NHR(ここでRは水素またはC1からC8アルキルである)、カルボキシ基-COOH、エポキシ基、アミド基-CONHRおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む任意の既知の適切なビニルモノマーは、本発明における官能基を持たせるビニルモノマーとして使用することができる。このようなビニルモノマーの好ましい例には、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、HEMA、HEA、およびN-ヒドロキシメチルアクリルアミド(NHMA)が含まれる。
【0099】
架橋剤は、例えば、アリル(メタ)アクリレート、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジまたはトリビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルフタレートまたはジアリルフタレートから選択することが出来る。好ましい架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロイルプロパントリメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ジグリシジルビスフェノールAジメタクリレート、ジメタクリレート末端化ポリエチレングリコール、反応性直鎖またはペンダントポリエーテル変性シリコーン、ジアクリレートまたはメタクリレート化シリコーン、またはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0100】
組成物は、熱または光開始剤を含み、ここで光開始剤は、ペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)、Darocure(登録商標)タイプ、およびIrgacure(登録商標)タイプ、好ましくは、Darocure(登録商標)1 173、Irgacure(登録商標)4265およびIrgacure(登録商標)2959から選択される。アゾ型開始剤(例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル))は、光または熱開始剤として使用することが出来る。適切な熱開始剤の例としては、限定されるものではないが、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、ペルオキシド、例えばベンゾイルペルオキシドなどが挙げられる。好ましくは、熱開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、またはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0101】
イオン変性シリコーンは、ヒドロゲル組成物の約1重量パーセントから約99重量パーセント;5重量パーセントから約90重量パーセント、10重量パーセントから約75重量パーセント;または25重量パーセントから約50重量パーセントの量で存在する。イオン変性シリコーンマクロマーと有機モノマーとの比は、約1:100から約100:1である。一実施形態では、親水性シリコーンマクロマーとフリーラジカル重合性有機モノマーとの比は約1:99から99:1;1:75から75:1;または1:50から約50:1である。一実施形態では、イオン変性シリコーンと有機モノマーの比は、約1:10から約10:1である。一実施形態では、イオン改質シリコーンと有機モノマーの比は約1:1である。
【0102】
組成物を化学線硬化して、ホモポリマー、コポリマーまたは架橋ネットワークを作製することができる。それらはまた、有機またはシロキサンモノマー、マクロマーまたはプレポリマーと配合して、ヒドロゲルを得ることができる。本明細書に記載されるヒドロゲルは、医療機器、医療用インサート、またはコンタクトレンズ、眼内インサートなどで使用され得る。医療機器は、本組成物から形成されてもよく、または組成物から形成されたフィルムまたは層を含んでもよい。
【0103】
また、イオン変性シリコーンを含むヒドロゲルと、ヒドロゲル材料に関連させた薬学的に活性な物質とを含む薬物送達システムも提供される。薬物送達システムは、医療機器自体(例えば、コンタクトレンズ)を形成してもよく、または医療機器(例えば、プローブ、ワンド、インサート、パッチなど)の表面上のフィルムまたは材料として提供されてもよい。
【0104】
医療機器は、全体的に有効な中性電荷を持つイオン表面を有する。これにより、より少ない生体材料を引き付け、そして表面上に破片をより少なくすることができる親水性の表面が提供される。有効な中性電荷を持つイオン部分はまた、医療機器に固有の抗菌特性を提供することができる。
【0105】
ヒドロゲル組成物は、水溶性または水分散性であり得る。ヘルスケアに親しい界面活性剤または溶媒を加えることにより、水分散性または溶解性が向上される。硬化におけるヒドロゲルは、5から150℃で簡単に抽出され、環境に優しい方法で未反応の成分を除去することができる。抽出は、以下の方法で行うことができる。ヒドロゲル物品は、水または水混和性溶媒で調製して、DI水または緩衝水溶液に移すことができる。所望の濃度に達するまで、浸出可能な反応物または添加物について物品は抽出されることができる。
【0106】
「レンズ形成材料」とは、熱または化学線で硬化(すなわち、重合および/または架橋)して架橋ポリマーを得ることができる重合性組成物(または配合物)を指す。本明細書で使用する場合、重合性組成物または材料またはレンズ形成材料の硬化または重合に関して「化学線的に」は、硬化(例えば、架橋および/または重合)が化学線照射、例えばUV照射、イオン化放射線(例えば、ガンマ線またはX線照射)、マイクロ波照射などにより行われることを意味する。熱硬化法または化学線硬化法は、当業者に周知である。レンズ形成材料は、当業者に周知である。これらは、有機またはシロキサンモノマー、マクロマーまたはプレポリマーと配合して、ヒドロゲルを得ることができる。ヒドロゲルは、医療機器、医療用インサート、コンタクトレンズ、眼用インサートなどを形成またはコーティングするために使用できる。結果として得られる医療機器は、全体的に有効な電荷が中性のイオン表面を有している。これにより、より少ない生体材料を引き付け、表面上によりすくない破片を形成することができる親水性の表面が提供される。有効な中性電荷を持つイオン部分はまた、医療機器に固有の抗菌特性を提供することができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「活性成分」という用語は、生物学的に活性および/または光放射に対して活性である材料を指す。活性成分は、反応性成分でも非反応性成分でもよい。反応性活性成分とは、活性物質に結合した重合可能なエチレン基を含む活性成分を指す。非反応型活性成分とは、生物学的または光活性であるが、化学線重合条件下で重合可能な基を持たない活性成分を指す。非反応性の活性成分は、架橋ポリマーネットワークまたはポリマー鎖の内部に浸透するか、組み込まれることとなる。この活性物質は、ポリマーと非共有結合を形成できる官能基を持つことができる。
【0108】
本明細書で使用される「相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)」は、少なくとも1つが他の存在下で合成および/または架橋される2つ以上のポリマーの密接なネットワークを広く指す。IPNを調製するための技術は、当業者に知られている。一般的な手順については、米国特許第4,536,554号、第4,983,702号、第5,087,392号、および第5,656,210号を参照されたく、これらの内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。重合は一般に、ほぼ室温から約145℃の範囲の温度で実施される。
【0109】
非反応性活性成分を組み込む方法は、ポリイオン材料の溶液中で活性物質を好ましくは1.5マイクロメートル以下の粒子サイズに粉砕して分散液を得ること、ここでポリイオン材料の濃度は、顔料粒子をコーティングするのに十分であり、好ましくは約0.01%から20%(wt.vol.)である;顔料粒子を有する溶液をろ過すること;任意にて、ろ過された顔料粒子を洗浄すること;および任意にて、1つ以上のポリイオン材料でコーティングされたろ過された顔料粒子を乾燥させることを含む。ポリカチオン性材料は、ポリ(アリルアミンヒドロクロリド)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリアメチルアミン)、ポリアニリン、スルホン化ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(ピリジニウムアセチレン)、およびそれらの混合物からなる群から選択され、ここでポリアニオン材料は、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(チオフェン-3-酢酸)、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ソディウムポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(ソディウムスチレンスルホネート)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本発明で使用されるポリカチオン材料は、高分子第4級アンモニウム化合物(ポリクワット)も含むことができる。ポリクワットが眼科用レンズのコーティングに使用される場合、それらは眼科用レンズに抗菌特性を付与し得る。
【0110】
本発明では、任意の標準的な粉砕法を使用することができる。適切な混合装置には、限定されるものではないが、高速ミキサー、カディミル、コロイドミル、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、ソナレーター、超音波ミル、ロールミル、ボールミル、ローラーミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、バリキネティックディスペンサー、三本ロールミル、バンバリーミキサー、または当業者に知られている他の技術が含まれる(Ross Sand Morrison ID, Colloidal Systems and Interfaces. New York: John Wiley &Sons, 1988.参照)。
【0111】
単独または組み合わせて使用できる反応基を含む放射線または光に対して活性な活性物質は、ReactiveBlack 5 [2,7-ナフタレンジスルホン酸、4-アミノ-5-ヒドロキシ-3,6-ビス((4-((2-(スルホオキシ)エチル)スルホニル)フェニル)アゾ)-テトラナトリウム塩](CAS登録番号17095-24-8);ReactiveBlue 21 [銅,(29H,31H-フタロシアニナト(2-)-N29,N30,N31,N32)-,スルホ((4-((2-スルホオキシ)エチル)スルホニル)フェニル)アミノ)スルホニル誘導体](CAS登録番号73049-92-0);ReactiveOrange 78 [2-ナフタレンスルホン酸,7-(アセチルアミノ)-4-ヒドロキシ-3-((4-((2-(スルホオキシ)エチル)スルホニル)フェニル)アゾ)-](CAS登録番号68189-39-9);ReactiveYellow 15 [ベンゼンスルホン酸,4-(4,5-ジヒドロ-4-((2-メトキシ-5-メチル-4-((2-(スルホオキシ)エチル)スルホニル)フェニル)アゾ)-3-メチル-5-オキソ-1H-ピラゾール-1-イル)-](CAS登録番号60958-41-0);ReactiveBlue No. 19 [2-アントラセン-スルホン酸,1-アミノ-9,10-ジヒドロ-9,10-ジオキソ-4-((3-((2-(スルホオキシ)エチル)スルホニル)フェニル)アミノ)-,二ナトリウム塩](CAS登録番号2580-78-1);ReactiveBlue No. 4 [2-アントラセンスルホン酸,1-アミノ-4-(3-((4,6-ジクロロ-s-トリアジン-2-イル)アミノ)-4-スルホアニリノ)-9,10-ジヒドロ-9,10-ジオキソ,二ナトリウム塩](CAS登録番号4499-01-8);C.I.Reactive Red 11 [5-((4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)-4-ヒドロキシ-3-((1-スルホ-2-ナフタレニル)アゾ)-2,7-ナフタレンジスルホン酸,三ナトリウム塩](CAS登録番号12226-08-3);C.I.Reactive Yellow 86 [1,3-ベンゼンジスルホン酸,4-((5-アミノカルボニル-1-エチル-1,6-ジヒドロ-2-ヒドロキシ-4-メチル-6-オキソ-3-ピリジニル)アゾ)-6-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)-,二ナトリウム塩](CAS登録番号61951-86-8);C.I.Reactive Blue 163 [トリフェノジオキサジンジスルホン酸,6,13-ジクロロ-3,10-ビス((4-((4.6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ)スルホフェニル)アミノ)-,四ナトリウム塩](CAS登録番号72847-56-4);およびC.I.Reactive Red 180 [5-(ベンゾイルアミノ)-4-ヒドロキシ-3-((1-スルホ-6-((2-(スルホオキシ)エチル)スルホニル)-2-ナフタレニル)アゾ)-2,7-ナフタレンジスルホン酸,四ナトリウム塩](CAS登録番号98114-32-0)である。
【0112】
天然染料は、植物、無脊椎動物、または鉱物に由来する染料または着色料である。天然染料の大部分は、植物源-根、果実、樹皮、葉、および木-および菌類や地衣類などの他の有機源からの植物性染料である。パプリカ、クルクミン、クロロフィルなどの天然染料も、非反応性の活性物質として使用できる。パプリカ、クルクミンおよびクロロフィルのメタクリル化は、天然染料の反応性形態をもたらし、ヒドロゲル組成物で使用できる。
【0113】
一実施形態では、活性物質は、医学で使用される薬学的に活性な物質であり得る。薬学的に活性な物質は、生理活性物質または医薬品(例えば、中枢神経系に影響を及ぼす薬剤、抗アレルギー剤、心血管剤、呼吸器官に影響を及ぼす薬剤、消化器官に影響を及ぼす薬剤、ホルモン製剤、代謝に影響を及ぼす薬剤、抗腫瘍薬、抗生物質製剤、化学療法薬、抗菌薬、局所麻酔薬、抗ヒスタミン薬、消炎薬、収斂剤、ビタミン、抗真菌薬、末梢神経麻酔薬、血管拡張薬、生薬エッセンス、チンキ剤、生薬粉末、降圧剤、免疫抑制剤など)であり得る。これらには、抗菌、抗バクテリア、医薬などの物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
特に適切な活性物質は、眼科領域に関連するものである。眼科用活性物質送達製剤は、任意の眼科用活性薬物、特に緑内障などの眼の疾患の治療に使用することが知られているアミン系薬物との使用に特に適している。これらの点眼薬には、ピロカルピン、エピネフリン、テトラサイクリン、フェニルエフリン、エセリン、ホスホリンヨージド、デメカリウムブロミド、シクロペントラート、ホマトロピン、スコポラミン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ペニシリン、エリスロマイシン、カルバコール、スルファセタミド、ポリミキシンB、イドクスウリジン、イソフロロフェート、フルオロメタロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、デキサメタゾン21-ホスフェート、フルオロシノロン、メドリゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-ホスフェート、プレドニゾロンアセテート、ベタメタゾン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、クロリクロメン、ジクロフェナクジエチルアンモニウム、ピロキシカム、メチルプレドニゾロン、ケトチフェン、モキシフロキサシン、およびトリアムシノロンが含まれる。3.0から8.5のpH範囲の水性媒体中でカチオン性を有する眼科的、光学的または経鼻的に許容される薬学的に活性な化合物。最も好ましい基本的な活性物質は、ベタキソロール、チモロール、およびジピベフリンである。本発明の組成物は、2つ以上の基本的な活性成分を組み合わせて含有してもよい。基本的な活性成分は、約0.01から4.0%、好ましくは0.10から1.0%のレベルで存在する。
【0115】
眼科用薬物または活性物質は、薬物の目的を達成するのに有効なレベルでヒドロゲル組成物中に存在する。点眼薬の通常の使用レベルは、ヒドロゲル組成物の約0.03から約15重量パーセントの範囲である。これらの活性物質は、そのまま配合物中に使用することも、ポリマー、イオン性ポリマー、または界面活性剤と混合して使用することもできる。
【0116】
ポリマー懸濁物質を使用して活性物質を分散させることができ、上記ヒドロゲル組成物に添加剤として添加することができる。本発明の組成物に含まれるポリマー懸濁成分は、カルボキシビニルポリマーと、ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;およびカルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ジメチルシロキサン)などからなる群から選択されるポリマーとの組み合わせから本質的になり得る。
【0117】
薬学的に活性な物質は、吸収または分子インプリンティングなどの他の方法によってヒドロゲルと結合させることもできる。吸収において、ヒドロゲルは薬学的に活性な物質の溶液に浸される。ヒドロゲルは、薬学的に活性な物質を吸収する。ヒドロゲルは、標的環境に配置または接触すると、例えば、注射、摂取、挿入(例えば、ヒドロゲルから形成されたコンタクトレンズの眼への挿入による)すると、薬学的に活性な物質を放出する。
【0118】
一実施形態において、眼科的に活性な成分は、ポリマーからゆっくり浸出して、物品の周りの臨界濃度を維持して、所望の医薬活性を与えることができる。
【0119】
ヒドロゲルを作成するためのキットまたはシステムを製造することができる。キットは医学的に許容される条件を使用して製造され、無菌性、純度、および薬学的に許容される調製を有する前駆体(例えば、モノマー、架橋剤などの他の反応性成分を伴う式(I)の化合物)を含む。キットは、必要に応じてアプリケーターならびに説明書を含み得る。治療薬は、事前に混合されたもの、または混合に利用可能なものが含まれ得る。溶媒/溶液はキットで提供されるか、個別に提供されるか、または成分は溶媒と事前に混合され得る。キットは、混合および/または送達のためのシリンジおよび/または針を含んでもよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、治療薬と共にin situでヒドロゲルを形成するのに必要な前駆体および他の材料を有するキットが提供されてもよく、ここで構成部品は本明細書に記載のものを含む。ヒドロゲルは容易に除去可能または自己除去可能であってもよく、生分解性であるか、または分散することなく容易にアクセス可能な領域への送達に適し得る。1つの容器にすべての前駆体を組み合わせるオプションを使用して、簡単に混合して使用できるように作成され得る。ヒドロゲルは、安全な全合成材料で作成され得る。分解および/または送達速度は、記載された期間に適合するように制御され得る。患者コンプライアンスは、繰り返し投与を避けることにより向上され得る。同様に、本明細書に記載の材料、例えば、事前に形成された脱水ヒドロゲルを含むアプリケーターを備えたキットを作製してもよい。
【0121】
ヒドロゲル材料は、医療機器に関連して使用することもできる。ヒドロゲル材料は、医薬活性材料を患者に送達するために、および/または機器に特性(例えば、抗生物質または抗菌剤)を提供するために使用できる医療機器の表面または領域上のフィルムとして提供されてもよい。例えば、薬学的に活性な薬剤を有するヒドロゲルフィルムは、薬学的に活性な薬剤が患者に送達され得るように、患者に挿入され得るワンドまたはプローブの先端に提供され得る。別の実施形態において、ヒドロゲルフィルムは、患者に薬剤または薬物を送達するために患者に配置され得るパッチ(例えば、医薬パッチまたはバンドエイド)の層の一部として提供され得る。
【0122】
本親水性シリコーン化合物は、繊維、紙、皮革、パーソナルケア、ヘルスケア、ホームケア、コーティング、塗装または種子処理製剤におけるフィルム形成添加剤としてなど、さまざまな用途に使用できる。
【実施例】
【0123】
例
【0124】
平衡含水率
【0125】
フィルムをpH6.5-8.5の緩衝液(イオン型に基づいて選択)に48時間浸漬する。次に、糸くずのないティッシュペーパーを使用して、表面の水をそっと拭き取る。水和フィルムを正確に秤量し、次いで、固形分分析器で150℃で15分間乾燥させ、乾燥重量について再度秤量する。含水率は、以下の式を使用して重量変化に基づいて計算される。
【0126】
水濡れ性
%含水率=[水和レンズの重量-乾燥レンズの重量]/水和レンズの重量×100%
【0127】
水濡れ性は、以下に従って測定される:Neumann A W, Godd R J. Techniques ofmeasuring contact angles. In: Good R J, Stromberg R R, Editors. Surface andColloid science-Experimental methods, vol. 11. New York:Plenum Publishing; (1979), pp. 31-61。
【0128】
フィルム表面の水濡れ性は、Tracker TECLISゴニオメーターを使用して接触角を測定することにより評価される。静的接触角法では、湿ったフィルムを糸くずの出ないティッシュペーパーで最初に押し、次に水滴を表面に置く。接触角はゴニオメーターを使用して測定される。接触角の値が低いほど、フィルムの親水性の度合いが高いか、表面濡れ性が優れていることを表す。
【0129】
活性物質送達
【0130】
活性物質充填実験
【0131】
薬学的活性物質充填フィルムは、ヒドロゲルフィルムおよびリン酸緩衝液中の薬物溶液(renu溶液)を含む方法により調製される。
【0132】
吸収方法には次の手順が含まれる:0.3gのヒドロゲルフィルムを2mlの薬物溶液(3%w/w)に24時間吸収させた。
【0133】
別の方法では、ヒドロゲル配合物中に薬物の6%wwを混合することにより、薬物インプリンティングレンズフィルムを調製した。得られた透明で均質な溶液を、PET(ポリ(エチレンテレフタレート))に1mmの測定間隔まで注いだ。配合物は、105mW/cm2のUV照射に20から180秒間曝すことにより硬化した。重合後、フィルムをイソプロパノールで洗浄して未反応モノマーを除去した。次に、脱イオン蒸留水と0.9%NaCl溶液で洗浄して、テンプレート薬物を除去した。洗浄液を分光測光法で分析することにより、チモロールの完全な除去が確認された。得られたフィルムを、薬物取り込みのために24時間、2mlの薬物溶液(3%w/w)にて吸収させた。
【0134】
HPLCによる活性物質放出
【0135】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):HPLC法は、薬物とサンプルマトリックスの極性を考慮することにより、ポリマーマトリックスから放出される薬物の定量に最適化されている。溶媒条件は、水(0.02%H3PO4)/アセトニトリル混合溶媒を使用して、0から5分間で10から90%のアセトニトリルの勾配で最適化して、薬物分析物の狭く対称なピークを生成した。さまざまな時間間隔で収集された薬物アリコートを、40°Cに保持されたカラムExtend C18、150x4.6mm、5μmを使用してShimadzuProminence LC 20ADシステムで分析し、サンプルを5μLの注入量で、1mL/分の流量で注入した。定量化プロセスでは、300nmのUV検出器で薬物濃度をモニターし、10から500ppmの範囲で濃度が変化する一連の標準溶液を使用して、それぞれの薬物の外部較正プロットを生成した。薬物応答は線形であることが判明し、標準曲線はサンプル中の未知の薬物濃度の計算に使用される。
【0136】
弾性率
【0137】
水和フィルムのヤング率は、Instron引張試験機を使用して測定される。湿ったサンプルを6cm×0.8cmのストリップに切断し、50Nのロードセルと10mm/分のクロスヘッド速度で機械的特性を測定する。弾性率は、応力-ひずみ曲線の初期勾配から決定される。弾性率は、材料の柔らかさと直接相関している。弾性率が下がると、材料はより柔らかくなる。
【0138】
例1:4-(2(-アクリロイルオキシ)-4-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)シクロヘキシル)オキシ-4-オキサブタン酸の合成
【0139】
攪拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコに、100グラムのビニルシクロヘキシルエポキシ官能化トリシロキサンおよびトルエンを充填し、反応混合物を70から75℃に加熱した。この時点で、触媒量のチタンイソプロポキシドおよびTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)を添加し、反応混合物をさらに90℃に加熱した。この反応混合物に、21グラムのアクリル酸を徐々に加えた。完了後、反応混合物をDowex-WBA樹脂に通して、未反応のアクリル酸を除去した。活性炭を使用して生成物を脱色し、そしてセライトベッドでろ過した。ろ液を真空ストリッピングして、淡黄色の生成物、5-(2-(1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレートを得た。
【0140】
5-(2-(1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート(50グラム)、トルエン、および無水コハク酸(18グラム)を、攪拌棒、還流冷却器、窒素注入口を備えた丸底フラスコにさらに充填した。これに、トリエチルアミンおよびヒドロキノンをそれぞれ触媒およびラジカルスカベンジャーとして添加し、そして反応混合物を60-65℃に加熱した。完了後、生成物を真空ストリッピングし、クロロホルムに再溶解し、ブライン溶液で洗浄した。有機相をTulsion T66-MP樹脂に通して微量のトリエチルアミンを除去し、そして活性炭を使用して脱色した。炭を除去した後、有機層を濃縮して、淡黄色の粘性のある生成物を得た。
【0141】
例2:(4-(((2-(アクリロイルオキシ)-5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)シクロヘキシル)オキシ)-4-オキソブタ-2-エン酸の合成
【0142】
5-(2-(1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート(50グラム)、トルエン、および無水マレイン酸(18グラム)を、攪拌棒、還流冷却器、窒素注入口を備えた丸底フラスコにさらに充填した。これに、トリエチルアミンおよびヒドロキノンをそれぞれ触媒およびラジカルスカベンジャーとして添加し、そして反応混合物を60から65℃に加熱した。完了後、生成物を真空ストリッピングし、クロロホルムに再溶解し、そしてブライン溶液で洗浄した。有機相をTulsion T66-MP樹脂に通して微量のトリエチルアミンを除去し、そして活性炭を使用して脱色した。炭を除去した後、有機層を濃縮して、淡黄色の粘性生成物を得た。
【0143】
例3:3-(((-2-(アクリロイルオキシ)-5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)シクロヘキシル)オキシ)カルボニル)ブタ-3-エン酸の合成
【0144】
攪拌棒、還流冷却器、および窒素注入口を備えた丸底フラスコに、5-(2-(1,1,1,3,5,5,5,-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレート(50グラム)とトルエンを入れた。これに、トリエチルアミンおよびヒドロキノンをそれぞれ触媒およびラジカルスカベンジャーとして添加し、反応混合物を60から65℃に加熱した。これに、無水イタコン酸(20グラム)を徐々に加えた。完了後、生成物を真空ストリッピングし、クロロホルムに再溶解し、そしてブライン溶液で洗浄した。有機相をTulsion T66-MP樹脂に通して微量のトリエチルアミンを除去し、活性炭を使用して脱色した。炭を除去した後、有機層を濃縮して、淡黄色の粘性のある生成物を得た。
【0145】
例4:4-((5-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-(2-メタクリルアミドアセトキシ)シクロヘキシル)オキシ)-4-オキソブタン酸の合成
【0146】
攪拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコに、ビニルシクロヘキシルエポキシ官能化トリシロキサン(25グラム)メチルエチルケトン、およびTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルを充填して、そして反応混合物を75から80℃に加熱した。この時点で、グリシンメタクリレート少々と触媒量のチタンイソプロポキシドを加え、反応混合物をさらに80℃に加熱した。この反応混合物に、グリシンメタクリレート(10グラム)を徐々に加えた。完了後、生成物を単離し、酢酸エチルに再溶解し、有機層をブラインで洗浄した。有機層を濃縮して淡黄色の生成物、4-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシル2-メタクリルアミドアセテートを得た。
【0147】
4-(2-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)エチル)-2-ヒドロキシシクロヘキシル2-メタクリルアミドアセテート(15グラム)、トルエン、および無水コハク酸(4.6グラム)を、攪拌棒、還流冷却器、および窒素注入口を備えた丸底フラスコにさらに充填した。これに、トリエチルアミンおよびヒドロキノンをそれぞれ触媒およびラジカルスカベンジャーとして添加し、そして反応混合物を60から65℃に加熱した。完了後、生成物を真空ストリッピングし、クロロホルムに再溶解し、ブライン溶液で洗浄した。有機相をTulsion T66-MP樹脂に通して微量のトリエチルアミンを除去し、活性炭を使用して脱色した。炭を除去した後、有機層を濃縮して、淡黄色の粘性のある生成物を得た。
【0148】
例5:4-((2-(メタクリロイルオキシ)-4-エチルシクロヘキシル)オキシ)-4-オキソブタン酸官能化ポリジメチルシロキサンの合成
【0149】
攪拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコに、4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド1.6gを入れ、70から75℃に加熱した。この時点で、キシレン中の触媒量の白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液(Pt約2%)を添加し、反応混合物をさらに90℃に加熱した。この反応混合物に、10グラムのモノヒドリド官能化ポリジメチルシロキサンを滴下にて加えた。完了後、反応混合物を70から75℃に冷却し、20mlのトルエンと触媒量のチタンイソプロポキシドをTEMPOとともに加え、反応混合物をさらに90℃に加熱した。この反応混合物に、2グラムのメタクリル酸を2時間かけて滴下した。1H-NMR分光法を使用して反応をモニターした。反応の完了後、混合物を50℃に冷却し、無水コハク酸(4.6グラム)をトリエチルアミンとともにフラスコにさらに入れた。反応混合物を60から65℃に12時間加熱した。完了後、溶媒を真空ストリッピングし、粗生成物をジクロロメタンに再溶解し、温ブライン溶液で洗浄した。有機相をTulsion T66-MP樹脂に通して微量のトリメチルアミンを除去し、活性炭を使用して脱色した。有機層をセライトカラムでろ過して木炭を除去し、Dowex-WBA樹脂と一緒に攪拌して未反応のメタクリル酸を除去した。有機相をさらに濾過し、濃縮して、淡黄色の粘性のある生成物を得た。生成物は、NMRおよびHPLC技術により特徴付けられた。
【0150】
例6:シリコーンカルボキシレートの電荷中性複合体の合成
【0151】
電荷中性複合体は、例3のシリコーンカルボン酸のナトリウム塩と第4級アンモニウム基(メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド)含有反応性または非反応性の有機またはシリコーン系材料の等モル混合物を混合することにより形成され、シリコーンの電荷中性複合体を形成するために使用される。この複合体は、必要に応じて沈殿法によって精製される。
【0152】
例7:シリコーンカルボン酸の電荷中性複合体の合成
【0153】
例3のシリコーンカルボン酸とアミン基(3-アミノプロピル)トリス(トリメチルシロキシ)シラン、2-アミノエチルメタクリレート含有反応性または非反応性有機またはシリコーン系材料の等モル混合物を使用して、シリコーンの電荷中性複合体を形成する。この複合体は、必要に応じて沈殿法によって精製される。
【0154】
例8:シリコーンカルボン酸またはカルボキシレートとポリイオンポリマーの電荷中性複合体の合成
【0155】
例3のシリコーンカルボン酸のナトリウム塩を、カチオン性基を含むカチオン性ポリマーと混合して、複合材料を作製する。基含有カチオン性ポリマーは、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、MW1200-60000のポリ(エチレンイミン)溶液、ポリ(スチレンスルホネート)-ポリ(エチレンイミン)複合体である。
【0156】
例9:シリコーンカルボン酸またはカルボキシレートの電荷中性複合体の合成
【0157】
例5および6で調製されたシリコーンの電荷中性複合体は、活性物質と混合される。この複合体は、必要に応じて沈殿法により精製されるか、そのまま使用される。
【0158】
例10:ポリイオン性ポリマーを用いた、シリコーンカルボン酸またはカルボキシレートと活性物質との電荷中性複合体の合成
【0159】
例3のシリコーンカルボン酸のナトリウム塩を、カチオン性ポリマーまたはカチオン性ポリマーブレンドとカルボキシレート基を含む活性分子と共に混合して、活性物質充填複合材料を作製した。カチオン性ポリマー材料は、MW1200-60000のポリ(エチレンイミン)溶液、ジエチルアミノエチル)デキストラン,ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート,ポリ(1-リシン)である。
【0160】
例11:シリコーンカルボン酸またはカルボキシレートと活性物質との電荷中性複合体の合成
【0161】
例3のシリコーンカルボン酸またはカルボキシレートのナトリウム塩を、活性物質である塩酸シプロフロキサシンと混合して、複合材料を作製する。
【0162】
例12:シリコーンカルボキシレートの電荷中性複合体の合成
【0163】
電荷中性複合体は、例11のシリコーンカルボン酸とトリメチルアミンの等モル混合物を混合することにより形成される。この複合体形成は、プロトンNMRのピークのシフトによって観察された。
【0164】
例13:シリコーンカルボキシレートの電荷中性複合体の合成
【0165】
例11のシリコーンカルボン酸とN-ブチルジメチルアミンの等モル混合物を混合することにより、電荷中性複合体が形成される。この複合体形成は、プロトンNMRのピークのシフトによって観察された。
【0166】
例14:シリコーンカルボキシレートの電荷中性複合体の合成
【0167】
電荷中性錯体は、例11のシリコーンカルボン酸とアリルアミンを3:1の比で混合することにより形成される。この複合体形成は、プロトンNMRのピークのシフトにより観察された。
【0168】
例15:シリコーンカルボキシレートの電荷中性複合体の合成
【0169】
電荷中性複合体は、例11のシリコーンカルボン酸と第4級アンモニウム基(塩化ベンジルトリメチルアンモニウム)の等モル混合物を混合することにより形成される。
【0170】
電荷中性複合体の形成は、1H NMRスペクトルにおける-COOHのブロードなピークとアミン官能基のアルキル基の鋭いピークへのシフトから確認された。ピークシフト値の違いを表1に示す。
【0171】
【0172】
非イオン性シリコーンの例
【0173】
例5のイオン性官能化シリコーンとの比較例として、非イオン性官能化シリコーンを合成し、活性物質の取り込みおよび放出研究について調べた。
【0174】
例16(比較例):4-((2-(メタクリロイルオキシ)-4-エチルシクロヘキシル)ヒドロキシル官能化ポリジメチルシロキサン
【0175】
攪拌棒、還流冷却器、および滴下漏斗を備えた丸底フラスコに、1.6gの4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシドを入れ、そして70から75℃に加熱した。この時点で、キシレン中の触媒量の白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液(Pt約2%)を添加し、反応混合物をさらに90℃に加熱した。この反応混合物に、10グラムのモノヒドリド官能化ポリジメチルシロキサンを滴下した。完了後、反応混合物を70から75℃に冷却し、20mlのトルエンと触媒量のチタンイソプロポキシドをTEMPOとともに加え、反応混合物をさらに90℃に加熱した。この反応混合物に、2グラムのメタクリル酸を2時間かけて滴下した。1H-NMR分光法を使用して反応をモニターした。反応の完了後、冷却した生成物をDowex-WBA樹脂とともに一晩撹拌して、未反応のメタクリル酸を除去した。有機相をさらにろ過し、濃縮して、淡黄色の粘性のある生成物を得た。生成物は、NMRおよびHPLC技術により特徴付けられた。
【0176】
ヒドロゲルフィルムの例
【0177】
選択されたヒドロゲルフィルム(表2、3、および4に列挙)は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)などの他の有機モノマーおよびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)などの架橋剤とともに例1から16に記載の材料を使用して調製された。配合物に使用された他の添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)であった。ラジカル開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(0.5重量%)を使用してフィルムを硬化させた。得られた透明で均質な溶液を、PET(ポリ(エチレンテレフタレート))に1mmの測定間隔まで注いだ。配合物は、105mW/cm
2のUV照射に20から180秒間曝すことにより硬化させた。得られたフィルムを水に浸漬した後、IPAに浸漬して未反応モノマーを浸出させた。得られたヒドロゲルフィルムを、平衡含水率、水濡れ性、活性物質送達、弾性率および透明性について評価した。
【表2】
【表3】
【表4】
【0178】
ヒドロゲルフィルムの含水率
【0179】
例32.ヒドロゲルフィルムの含水率は、例17から31のようにモノマーの組成を変えることにより制御することができ、その含水率は表5に示すように3から72%である。
【表5】
【0180】
接触角測定
【0181】
例33.例26の厚さ0.5mmのフィルムを、接触角測定を使用して濡れ性研究について評価した。測定は、固着液滴法を使用して65度の接触角を示す。
【0182】
弾性率研究
【0183】
例34.例26の厚さ0.8mmおよび長さ30mmのレンズフィルムを弾性率の研究のために調べた。応力対ひずみのプロットは、0.78MPaのヤング率の値を示している。
【0184】
活性物質放出の例
【0185】
例で使用される活性物質は、以下の表6に列挙されている。
【表6】
【0186】
例36.フィルム吸収におけるチモロールマレエート取り込み研究
【0187】
吸収時間による例26および例31のヒドロゲルフィルム中のチモロールマレエートの活性物質充填を
図1に示す。
【0188】
例37.フィルム吸収におけるチモロールマレエート取り込み研究
【0189】
例26および例31のヒドロゲルフィルム中のモキシフロキサシンヒドロクロリド一水和物の吸収時間による活性物質充填を
図2に示す。
【0190】
例38.フィルム吸収におけるケトチフェンフマレート取り込み研究
【0191】
例26および例31のヒドロゲルフィルムにおけるケトチフェンフマレートの吸収時間による活性物質充填を
図3に示す。
【0192】
非機能性ヒドロゲルフィルムとは対照的に、機能性イオン部分を有するヒドロゲルフィルムでは、より高い薬物充填と、より長い吸収時間による薬物取り込みの増加が観察される。ヒドロゲルフィルム内の機能性モノマーとイオン性薬物とのイオン性相互作用は、薬物へのより良い結合を示す。
【0193】
例39.薬物吸収フィルムからのチモロールマレエート放出
【0194】
24時間の吸収後の例26および例31のヒドロゲルフィルムにおけるチモロールマレエートの活性物質充填を表7に示す。薬物の放出は、薬物を充填したフィルムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)2mlに浸漬することにより試験した。0.5mlの溶液のアリコートをサンプリングし、所定の間隔で新しい溶液と交換した。媒体中に放出された薬物の量は、HPLC技術を使用して測定された。累積およびその正規化された薬物濃度を計算し、それぞれのサンプリング時間の関数としてプロットし、
図4に示すように、これは長時間(>24時間)の徐放を示している。48時間後のチモロールの総放出率を以下の表に示す。
【表7】
【0195】
例40.薬物吸収フィルムからのモキシフロキサシンヒドロクロリド一水和物の放出
【0196】
24時間の吸収後の例26および例31のヒドロゲルフィルムへのモキシフロキサシンの活性物質充填を表8に示す。薬物の放出は、薬物を充填したフィルムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)2mlに浸漬することにより試験した。0.5mlの溶液のアリコートをサンプリングし、所定の間隔で新しい溶液と交換した。媒体中に放出された薬物の量は、HPLC技術を使用して測定された。累積およびその正規化された薬物濃度を計算し、それぞれのサンプリング時間の関数としてプロットし、
図5に示すように、これは長時間(>24時間)の徐放を示している。48時間後のモキシフロキサシンの総放出率を以下の表に示す。
【表8】
【0197】
例41.薬物吸収フィルムからのケトチフェンフマレート放出
【0198】
24時間の吸収後の例26および例31のヒドロゲルフィルムにおけるケトチフェンの活性物質充填を表9に示す。薬物の放出は、薬物を充填したフィルムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)2mlに浸漬することにより試験した。0.5mlの溶液のアリコートをサンプリングし、所定の間隔で新しい溶液と交換した。媒体中に放出された薬物の量は、HPLC技術を使用して測定された。累積およびその正規化された薬物濃度を計算し、それぞれのサンプリング時間の関数としてプロットし、
図6に示すように、これは長時間(>24時間)の徐放を示している。48時間後のケトチフェンの総放出率を以下の表に示す。
【表9】
【0199】
例42.分子インプリンティングされたフィルムからのチモロールマレエート放出
【0200】
24時間の吸収後の例26および例31の分子インプリンティングされたヒドロゲルフィルムにおけるチモロールの活性物質充填を表10に示す。薬物の放出は、薬物を充填したフィルムを2mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)に浸漬することで試験した。0.5mlの溶液のアリコートをサンプリングし、所定の間隔で新しい溶液と交換した。媒体中に放出された薬物の量は、HPLC技術を使用して測定された。累積およびその正規化された薬物濃度を計算し、それぞれのサンプリング時間の関数としてプロットし、
図7に示すように、これは長時間(>24時間)の徐放を示している。48時間後のチモロールの総放出率を下の表に示す。
【表10】
【0201】
例43.分子インプリンティングされたフィルムからのモキシフロキサシンヒドロクロリド一水和物放出
【0202】
24時間の吸収後の例26および例31のヒドロゲルフィルム中のモキシフロキサシンの活性物質充填を表11に示す。薬物の放出は、薬物を充填したフィルムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)2mlに浸漬することにより試験した。0.5mlの溶液のアリコートをサンプリングし、所定の間隔で新しい溶液と交換した。媒体中に放出された薬物の量は、HPLC技術を使用して測定された。累積およびその正規化された薬物濃度を計算し、それぞれのサンプリング時間の関数としてプロットし、
図8に示すように、これは長時間(>24時間)の徐放を示している。48時間後のモキシフロキサシンの総放出率を以下の表に示す。
【表11】
【0203】
例44.分子インプリンティングされたフィルムからのケトチフェンフマレート放出
【0204】
24時間の吸収後の例26および例31のヒドロゲルフィルムにおけるケトチフェンの活性物質充填を表12に示す。薬物の放出は、薬物を充填したフィルムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH=7.4)2mlに浸漬することにより試験した。0.5mlの溶液のアリコートをサンプリングし、所定の間隔で新しい溶液と交換した。媒体中に放出された薬物の量は、HPLC技術を使用して測定された。累積およびその正規化された薬物濃度を計算し、それぞれのサンプリング時間の関数としてプロットし、
図9に示すように、これは長時間(>24時間)の徐放を示している。48時間後のケトチフェンの総放出率を以下の表に示す。
【表12】
【0205】
イオン性モノマーを組み込んだヒドロゲルフィルムの薬物充填は、フィルムの特性を損なうことなく、非機能性ヒドロゲルフィルムと比較して高いことが薬物の取り込み値から明らかである。より高い薬物充填は、眼表面上の治療レベル内での薬物の滞留時間と生物学的利用能を増加させる。
【0206】
イオン形態で存在する機能性薬物は、例26のようにヒドロゲルフィルムに存在するイオン部分に結合し、薬物を持続的に放出することができる。涙液中の持続的な薬物濃度は、フィルムの充填容量に比例する。
【0207】
上述したものは、本明細書の例を含む。もちろん、本明細書を説明する目的で成分または方法論の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、本明細書の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者であれば認めることであろう。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にあるすべてのそのような変更、修正、および変形を包含することを意図している。さらに、「含む(includes)」という用語が詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、そのような用語は、請求項における移行句として使用される「含む(comprising)」としての用語「含む(comprising)」と同様の方法で包括的であることを意図している。
【0208】
前述の説明は、全体的な正味中性電荷を有するイオン変性シリコーンならびにそれを含む組成物および材料の様々な非限定的な実施形態を特定する。改変は、当業者および本発明を作成および使用し得る者に生じ得る。開示された実施形態は、単に例示を目的としたものであり、本発明の範囲または特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図したものではない。