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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240301BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20240301BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20240301BHJP
   G05D 105/15 20240101ALN20240301BHJP
【FI】
A01B69/00 303K
A01B69/00 303M
A01C11/02 331D
G05D1/00
G05D105:15
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020002537
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021108579
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都田 洋三
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】林田 淳一
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123829(JP,A)
【文献】特開2016-21892(JP,A)
【文献】特開2012-110286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/02
G05D 1/00
G05D 105/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に支持される走行機体と、
前記走行機体を操向する操向部と、
前記操向部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記走行機体が第1の方向に走行することにより基準方位を設定する基準方位設定処理と、
前記基準方位と平行な複数の直進経路を設定する直進経路設定処理と、
前記走行機体が前記第1の方向と交差する第2の方向に走行することにより、前記走行機体の側端部近傍を通り前記第2の方向に平行な仮想線を設定する枕地設定処理と、
前記複数の直進経路のうちいずれか1つの直進経路に沿って前記走行機体が走行するように前記操向部を制御する直進制御と、
前記複数の直進経路のうちの第1直進経路に沿った前記直進制御の実行中に、前記走行機体が、前記第1直進経路に沿った前記直進制御の前に実行された前記枕地設定処理によって設定された前記仮想線に達したことを契機に開始され、旋回途中で前記第1直進経路に沿って自動で前記直進制御が開始されることを規制しながら、前記制御部によって前記操向部を一定の操舵角に維持することにより前記走行機体を前記第1直進経路に隣接する第2直進経路に向けて旋回走行させる旋回制御と、を実行可能であり、
前記第1直進経路と前記第2直進経路との間の旋回走行中における所定の契機に基づいて前記第2直進経路に沿った前記直進制御の開始を許容し、前記直進制御の開始が許容された状態で少なくとも前記走行機体と前記第2直進経路との前記第2の方向における距離が所定値以下となった場合に、前記第2直進経路に沿った前記直進制御を開始し、前記直進制御の開始が許容されていない状態で前記走行機体と前記第2直進経路との前記第2の方向における距離が前記所定値以下となっても、前記第2直進経路に沿った前記直進制御を開始せず前記旋回制御を続け
前記所定の契機は、
前記第1直進経路から前記第2直進経路へ前記旋回制御を開始した旋回開始位置から前記走行機体が所定角度以上旋回したこと、
前記旋回開始位置から前記走行機体が所定距離以上走行したこと、及び
前記旋回走行中に前記走行機体の、前記第1の方向に対する角度が所定角度以上になったこと、の少なくともいずれか1つである、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行装置に支持される走行機体と、
前記走行機体を操向する操向部と、
枕地領域を含む地図データを記憶する記憶部と、
前記操向部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記走行機体が第1の方向に走行することにより基準方位を設定する基準方位設定処理と、
前記基準方位と平行な複数の直進経路を設定する直進経路設定処理と、
前記複数の直進経路のうちいずれか1つの直進経路に沿って前記走行機体が走行するように前記操向部を制御する直進制御と、
前記複数の直進経路のうちの第1直進経路に沿った前記直進制御の実行中に、前記走行機体が前記記憶部に記憶された前記枕地領域に達したことを契機に開始され、旋回途中で前記第1直進経路に沿って自動で前記直進制御が開始されることを規制しながら、前記制御部によって前記操向部を一定の操舵角に維持することにより前記走行機体を前記第1直進経路に隣接する第2直進経路に向けて旋回走行させる旋回制御と、を実行可能であり、
前記第1直進経路と前記第2直進経路との間の旋回走行中における所定の契機に基づいて前記第2直進経路に沿った前記直進制御の開始を許容し、前記直進制御の開始が許容された状態で少なくとも前記走行機体と前記第2直進経路との前記第1の方向に交差する第2の方向における距離が所定値以下となった場合に、前記第2直進経路に沿った前記直進制御を開始し、前記直進制御の開始が許容されていない状態で前記走行機体と前記第2直進経路との前記第2の方向における距離が前記所定値以下となっても、前記第2直進経路に沿った前記直進制御を開始せず前記旋回制御を続け
前記所定の契機は、
前記第1直進経路から前記第2直進経路へ前記旋回制御を開始した旋回開始位置から前記走行機体が所定角度以上旋回したこと、
前記旋回開始位置から前記走行機体が所定距離以上走行したこと、及び
前記旋回走行中に前記走行機体の、前記第1の方向に対する角度が所定角度以上になったこと、の少なくともいずれか1つである、
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を直進状態で作業し、畦際の枕地において旋回して往復状に作業する作業車両に係り、特に田植機に適用して好適な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS装置を備え、該GPS装置により田植機の位置を検出し、直線状に自律走行して一行程の植付等の作業をし、枕地において、自動旋回走行して次の作業開始位置に導く制御装置が提案されている(特許文献1)。植付作業のための基準線を設定するため、ティーチング作業が行われ、ティーチングSWを押下するように操作した時のGPS位置が開始点となり、ティーチング終了時のティーチングSWの押下により終了点が記憶され、植付開始点と終了点とを結ぶ線を基準線とし、該基準線と直交する交点を植付開始位置又は植付終了位置として、上記基準線と平行な線が目標経路として設定される。
【0003】
田植機が終了地点に到達すると、オペレータは、自律運転SWを旋回方向と対応する方向に操作し、田植機は、所望する方向に自動旋回し、次の植付開始位置に到達すると停止する。オペレータにより植付部を下降した後、引き続き目標経路を自律的に走行する(特許文献1)。
【0004】
また、走行機体の位置を検出し、複数の作業走行ラインの端部同士を接続して旋回ラインを取得し、該旋回ラインに沿った自動旋回制御を行う作業車が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-92818号公報
【文献】特開2018-117558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の旋回制御は、オペレータが専用の自律運転SWを操作することにより、各行程毎に左右方向を選択し、又は1度の選択によりその後は左右交互に変更しながら行われる。このため、オペレータの誤操作又は作業遅れにより、自動旋回開始点の精度がよくなく、またオペレータは、ステアリングハンドルから手を離しているため、畦に追突してしまう虞がある。また、自動旋回専用の自律運転スイッチを操作するため、操作が面倒である。
【0007】
また、上記特許文献2の旋回制御は、旋回ラインを生成・取得し、さらに旋回ラインに沿った機体走行を行わせる旋回制御が存在し、全体的に複雑な制御となっている。
【0008】
そこで、本発明は、比較的簡単な旋回制御をもって上述した課題を解決した作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走行装置に支持される走行機体と、
前記走行機体を操向する操向部と、
前記操向部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記走行機体が第1の方向に走行することにより基準方位を設定する基準方位設定処理と、
前記基準方位と平行な複数の直進経路を設定する直進経路設定処理と、
前記走行機体が前記第1の方向と交差する第2の方向に走行することにより、前記走行機体の側端部近傍を通り前記第2の方向に平行な仮想線を設定する枕地設定処理と、
前記複数の直進経路のうちいずれか1つの直進経路に沿って前記走行機体が走行するように前記操向部を制御する直進制御と、
前記複数の直進経路のうちの第1直進経路に沿った前記直進制御の実行中に、前記走行機体が、前記第1直進経路に沿った前記直進制御の前に実行された前記枕地設定処理によって設定された前記仮想線に達したことを契機に開始され、旋回途中で前記第1直進経路に沿って自動で前記直進制御が開始されることを規制しながら、前記制御部によって前記操向部を一定の操舵角に維持することにより前記走行機体を前記第1直進経路に隣接する第2直進経路に向けて旋回走行させる旋回制御と、を実行可能であり、
前記第1直進経路と前記第2直進経路との間の旋回走行中における所定の契機に基づいて前記第2直進経路に沿った前記直進制御の開始を許容し、前記直進制御の開始が許容された状態で少なくとも前記走行機体と前記第2直進経路との前記第2の方向における距離が所定値以下となった場合に、前記第2直進経路に沿った前記直進制御を開始し、前記直進制御の開始が許容されていない状態で前記走行機体と前記第2直進経路との前記第2の方向における距離が前記所定値以下となっても、前記第2直進経路に沿った前記直進制御を開始せず前記旋回制御を続け前記所定の契機は、前記第1直進経路から前記第2直進経路へ前記旋回制御を開始した旋回開始位置から前記走行機体が所定角度以上旋回したこと、前記旋回開始位置から前記走行機体が所定距離以上走行したこと、及び前記旋回走行中に前記走行機体の、前記第1の方向に対する角度が所定角度以上になったこと、の少なくともいずれか1つである、ことを特徴とする作業車両にある。
【0010】
また、本発明は、走行装置に支持される走行機体と、
前記走行機体を操向する操向部と、
枕地領域を含む地図データを記憶する記憶部と、
前記操向部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記走行機体が第1の方向に走行することにより基準方位を設定する基準方位設定処理と、
前記基準方位と平行な複数の直進経路を設定する直進経路設定処理と、
前記複数の直進経路のうちいずれか1つの直進経路に沿って前記走行機体が走行するように前記操向部を制御する直進制御と、
前記複数の直進経路のうちの第1直進経路に沿った前記直進制御の実行中に、前記走行機体が前記記憶部に記憶された前記枕地領域に達したことを契機に開始され、旋回途中で前記第1直進経路に沿って自動で前記直進制御が開始されることを規制しながら、前記制御部によって前記操向部を一定の操舵角に維持することにより前記走行機体を前記第1直進経路に隣接する第2直進経路に向けて旋回走行させる旋回制御と、を実行可能であり、
前記第1直進経路と前記第2直進経路との間の旋回走行中における所定の契機に基づいて前記第2直進経路に沿った前記直進制御の開始を許容し、前記直進制御の開始が許容された状態で少なくとも前記走行機体と前記第2直進経路との前記第1の方向に交差する第2の方向における距離が所定値以下となった場合に、前記第2直進経路に沿った前記直進制御を開始し、前記直進制御の開始が許容されていない状態で前記走行機体と前記第2直進経路との前記第2の方向における距離が前記所定値以下となっても、前記第2直進経路に沿った前記直進制御を開始せず前記旋回制御を続け前記所定の契機は、前記第1直進経路から前記第2直進経路へ前記旋回制御を開始した旋回開始位置から前記走行機体が所定角度以上旋回したこと、前記旋回開始位置から前記走行機体が所定距離以上走行したこと、及び前記旋回走行中に前記走行機体の、前記第1の方向に対する角度が所定角度以上になったこと、の少なくともいずれか1つである、ことを特徴とする作業車両にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、基準方位となる第1の方向と交差する第2の方向に沿って走行することにより設定された仮想線(枕地)に達したことを契機に旋回制御を開始するので、旋回制御開始時にオペレータの操作を必要としない簡単で手間のかからない操作により、旋回制御を高い精度で行うことができる。
【0012】
さらに、旋回制御を、操舵角を所定角度に維持する簡単で処理負担が小さい制御で行い、旋回制御終盤の次行程の直進経路との機体位置合わせを直進制御のルーチンで行うため、複雑で処理負担の大きな旋回制御を用いることなく自動走行の制御を行うことができる。
【0013】
また、旋回走行中の所定の契機に基づいて次工程の直進経路に沿って直進制御を再開するので、旋回走行の終了後の走行機体のふらつきを抑制し、誤作動なくスムーズに一連の自動運転制御を行うことができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、記憶部に記憶された枕地領域に達したことを契機に旋回制御を開始するので、旋回制御開始時にオペレータの操作を必要としない簡単で手間のかからない操作により、旋回制御を高い精度で行うことができる。
【0015】
さらに、旋回制御を、操舵角を所定角度に維持する簡単で処理負担が小さい制御で行い、旋回制御終盤の次行程の直進経路との機体位置合わせを直進制御のルーチンで行うため、複雑で処理負担の大きな旋回制御を用いることなく自動走行の制御を行うことができる。
【0016】
また、旋回走行中の所定の契機に基づいて次工程の直進経路に沿って直進制御を再開するので、旋回走行の終了後の走行機体のふらつきを抑制し、誤作動なくスムーズに一連の自動運転制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用し得る田植機を示す平面図。
図2】その側面図。
図3】その制御部分を示すブロック図。
図4】ティーチング走行制御を示すフロー図。
図5】自動旋回制御を示すフロー図。
図6】自動旋回制御を示すフロー図。
図7】自動旋回制御を示すフロー図。
図8】自動旋回制御を示すフロー図。
図9】自動旋回制御を示すフロー図。
図10】自動旋回制御を示すフロー図。
図11】(A)は、圃場外形データ演算フロー、(B)は、自動旋回制御を示すフロー図。
図12】自動旋回報知制御を示すフロー図で、(A),(B)は、異なる実施の形態を示す。
図13】自動操舵制御を示すフロー図。
図14】操作パネルを示し、(A)は、正体斜視図、(B)は、一部を拡大した正面図。
図15】一部変更した操作パネルを示し、(A)は、正体斜視図、(B)は、一部を拡大した正面図。
図16】自動操舵の圃場面を示す平面図。
図17】その枕地での拡大図。
図18】圃場面での警告報知を示す図で、(A),(B),(C)は、異なる状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。作業車両としての乗用型の田植機1は、図1及び図2に示すように、走行装置としての前輪2及び後輪3により支持される走行機体5を有し、走行機体5の後部には昇降リンク機構6を介して植付作業機7が昇降自在に支持されている。走行機体5の前部にはボンネット9で覆われているエンジンが搭載されており、該エンジンの左右両側には予備苗台10が配置されている。エンジンの動力は、後輪3の間に配置されたリヤアクスルケース(不図示)を介して後輪3に伝達され、植付クラッチ(不図示)を介して植付作業機7に伝達される。植付クラッチが作動することにより、植付作業機7へ伝達されるエンジンからの動力が断接される。上記走行機体5の後部は、運転席11になっており、該運転席にはオペレータが座れるシート12が配置され、その前方にはステアリングハンドル13及び主変速レバー15、副変速レバー16及び作業機操作レバー17及び各種スイッチ、表示用パネル等が配置されている。ステアリングハンドル13は、走行機体5の下部に配置されている操向装置4によって前輪2と連結されている。前輪2は、オペレータによるステアリングハンドル13の操向操作により、ステアリングハンドル13の操舵角に応じて操舵される。なお、ステアリングハンドル13及び操向装置4によって、本実施の形態において、走行機体5を操向する操向部Sが構成される。
【0019】
上記走行機体5には運転席11の前方の左右において上方に延びた2本のステー19が立設されており、該ステーの上方を幅方向に連結する横バー20に2個のGPS受信機21,21が機体中心から等間隔隔てて配置されており、これら2個のGPS受信機21は、田植機1の位置を検出し得ると共に、2個の受信機を結んだ直線に直交する直線方向を前後方向として、この前後方向に対して左右の受信機が左右何れにあるかにより、走行機体5の現在の前進方向を特定し得る。
【0020】
運転席11前方には、図14に示すように、操作パネル23が配置されており、該操作パネルには始点A点登録スイッチ25a及び終点B点登録スイッチ25bを有するA-B地点入力部25と、自動直進及び自動旋回の両方のON状態とOFF状態とを切り替える自動操舵スイッチ26dを有する自動操舵モード選択部26と、上記スイッチの作動状態や、速度超過、速度アップOK、目標ライン上等、自動直進走行及び自動旋回走行中の走行機体5の状態を表示する各ランプと、が配置されており、各ランプは、各スイッチのオン状態等で点灯表示する。
【0021】
また、一部変更した実施の形態として、図15に示すように、操作パネル23には、A-B地点入力部25、速度超過、速度アップOK、目標ライン上の各ランプの外、自動直進のON状態とOFF状態を切り替える自動直進スイッチ26aと、自動直進及び自動旋回の両方のON状態とOFF状態とを切り替えるフル操舵スイッチ26bと、を有する自動操舵モード選択部26と、自動直進、左自動旋回及び右自動旋回を選択し得るON/OFFスイッチ27とを有する。
【0022】
上記走行機体5には、図3に示すように、GNSS(全地球測位システム)ユニット30及び制御部としての制御ユニット31が配置されており、これらGNSSユニット30及び制御ユニット31がCAN通信されている。GNSSユニット30は、前記GPS受信機21から基準(位置)情報(21a)と方位(前進方向)情報(21b)が入力され、タブレット(携帯端末、ナビゲーションソフト)32からの各情報が入力され、またRIK基地局(補正情報出力装置)33からの情報が補正信号受信装置35を介して入力されて、上記GPS受信機21からの情報が補正される。なお、タブレット32が本実施の形態における制御部を構成してもよいし、GNSSユニット30、制御ユニット31及びタブレット32によって本実施の形態における制御部が構成されていてもよいし、制御部の構成としては、多様な構成が考えられる。
【0023】
制御ユニット31は、CPU31a、記憶部としてのROM31bやRAM31cを有しており、CPU31aは、必要に応じてROM31bやRAM31cに記憶された情報、タブレット32やGNSSユニット30から入力された情報を用いて各種演算を行う。制御ユニット31には前記操作パネル23の始点A点登録スイッチ25a、終点B点登録スイッチ25b、自動直進スイッチ26a、フル操舵スイッチ(自動直進、自動旋回)26b、入力操作を受け付けて入力操作に応じて信号を出力する操作手段(自動旋回操作手段)としての自動左旋回開始スイッチ22a及び自動右旋回開始スイッチ22b、作業機操作カムポテンショ24、リフト角ポテンショ28、植付クラッチ接続センサー29からの信号が入力され、更に主変速レバー15から変速信号、副変速レバー16からの副変速、前後進信号が入力され、ステアリングハンドル13による操舵角センサー38の旋回角信号が入力され、車速センサー36からの車速信号、及び走行距離を計測する計測手段としての回転センサー37からの走行機体5の走行距離信号が入力される。
【0024】
作業機操作カムポテンショ24は、回動して油圧コントロールバルブ(不図示)を開閉する作業機操作カム(不図示)の回動位置を検出する。作業機操作カムは、上昇位置、固定位置、下降位置及び植付位置の各回動位置を有しており、それぞれの回動位置は作業機操作カムポテンショ24により検出される。作業機操作カムの各回動位置に従い油圧コントロールバルブが開閉されると、植付作業機7(図2参照)が昇降する。
【0025】
作業機操作カムが上昇位置に位置しているときは、植付作業機7は上限高さまで上昇動作する上昇状態となり、作業機操作カムが固定位置に位置しているときは、植付作業機7は昇降動作が停止して任意の高さが維持される固定状態となり、作業機操作カムが下降位置に位置しているときは、植付作業機7はフロート8(図2参照)が接地するまで下降動作する下降状態となる。また、フロート8が接地している状態においては、植付作業機7は、圃場面への追従に伴うフロート8の姿勢及び高さの変化に基づいて油圧コントロールバルブが開閉されて自動的に昇降され、植付深さが一定に保たれる自動昇降状態となる。また、植付作業機7の昇降高さは、昇降リンク機構6(図2参照)の角度に基づいて図3に示すリフト角ポテンショ28により検出される。植付クラッチ接続センサー29は、植付クラッチの入切(接続、切断)を検出する。
【0026】
また、制御ユニット31から、ステアリングハンドル13を自動操舵(自動制御)する自動操舵信号がステアリングモータ39に出力され、かつ報知ブザー40及び報知表示部41に出力される。なお、ステアリングモータは、ステアリングハンドルを直接回動するように構成されていてもよいし、操向部における他の部位を操作するように構成されていてもよい。
【0027】
図4及び図16に沿って、制御ユニット31が実行するティーチング走行制御について説明する。田植機1が圃場の所定箇所から侵入し、予め圃場面に標付けられているA点に田植機1の植付中央位置を合せる。又は、田植機1を後退してその後面を畦に当接した位置から前進して、植付2回り(又は1回り)分の距離を進行した時点をA点と設定する。田植機1は、上記A点に植付中央位置を合せ、かつ予め標付けられているB点に向くように、横方向の畔と平行になるように進行方向を合せる。この状態で、オペレータは、始点A点登録スイッチ25aを押圧して、A点を登録し(S1)、植付作業を行いながら一方向(図16のY方向)に向けて走行するティーチング走行(基準走行)を開始する。田植機1の植付中央位置がB点に到ると、オペレータは、それをみて終点B点登録スイッチ25bを押圧してB点を登録する(S2)。また、予め植付距離Dwを制御ユニット31内に格納し、回転センサー37により田植機1の植付走行距離を測定し、該植付走行距離が上記植付距離Dwに達した位置を終点B点として、オペレータがB点登録スイッチ25bを押すようにしてもよい。
【0028】
そして、上記登録された上記A点をB点から植付作業を行う際の基準の方位(方向)となる基準方位(Y方向)としての基準ライン(仮想線)Lk0を演算(設定)する(S3)。更に、該基準ラインLk0に平行に、植付幅を演算して次工程以降の複数の直進経路としての走行目標ライン(仮想線)Lk1(第1直進経路),Lk2(第2直進経路),Lk3,・・・,Lknを演算(設定)する(S4)。なお、基準方位を設定するステップS3の処理が、本実施の形態における基準方位設定処理を構成し、複数の直進経路を設定するステップS4の処理が、本実施の形態における直進経路設定処理を構成する。
【0029】
ついで、図5図16図18に沿って、自動旋回制御について説明する。田植機1は、自動直進と自動旋回の両方がON状態にある。即ち、図14に示す操作パネル23では、自動直進スイッチ26aを操作し、図15に示す操作パネルでは、モード選択のフル操舵スイッチ26bを操作して、自動直進及び自動旋回を共にON状態とする(自動操舵モードがフル)。従って、自動直進はON状態にあり(S7;YES)、自動旋回報知制御に入る(S9)。自動直進のON状態では、制御ユニット31によるステアリングモータ39の制御によって、走行目標ライン(直進経路、Lk1,Lk2,・・・,Lkn)に沿って走行機体5が直進走行するように、ステアリングハンドル13を制御する直進制御が実行される。
【0030】
走行機体5が直進制御によって直進走行しながら植付作業が進行し、田植機1がB位置に対応する自動旋回位置に所定距離まで近づくと、自動旋回報知制御が作動する。該自動旋回報知制御は、例えば図18(A)に示すように、「まもなく旋回開始点に到達します。」と報知する。該自動旋回報知により、オペレータは、自動旋回開始を事前に知り、利便性を高めることができる。自動旋回報知制御では、走行機体5の位置が、自動旋回開始位置としての、ティーチング走行において記憶したA点又はB点、前回までの作業で植付クラッチが入切された地点(苗の植え付けを開始した点、苗の植え付けを終了した点)、又は旋回前に作業機が上昇開始した地点、旋回後に作業機が接地した地点を通り、基準ラインLk0と直交する仮想線X1に所定距離まで近づいたか(達したか)判断される。
【0031】
そして、オペレータは、該報知により田植機1の旋回開始点を注視し、前記基準ラインLk0のB点に対応する前工程での植付開始点に合せて、又は植付距離Dwに基づき制御ユニット31からの指令により、ステアリングハンドル13を旋回方向に操舵する。操舵角センサー38が、隣接する次工程の直進経路に向けたステアリングハンドル13の所定角θ0以上の操舵を検出すると(S10;YES)、旋回開始位置(自動旋回ON)として設定され、旋回フラグがセットされ、報知発動される(S11)。この状態では、フル操舵スイッチ26bにより自動操舵モードがフルになっているので(S12;YES)、自動直進ON規制状態となる。自動直進ON規制状態は、自動直進ON状態であっても直進制御が実行されない状態である。
【0032】
なお、制御ユニット31は、ステップS10において、ステアリングハンドル13の所定角θ0以上の操舵を検出する代わりに、ジャイロセンサー等によって走行機体5の所定角θk0以上の旋回を検出してもよいし、GNSSユニット30により算出した走行機体5の進行方向と基準ラインLk0との所定以上の角度差を検出してもよいし、オペレータによる自動左旋回開始スイッチ22aや自動右旋回開始スイッチ22bの操作を検出してもよいし、オペレータによるタッチパネル(不図示)等の操作手段に対する操作を検出してもよい。ステアリングハンドル13は、自動左旋回開始スイッチ22aが押圧操作(入力操作)されると左に操舵され、自動右旋回開始スイッチ22bが押圧操作(入力操作)されると右に操舵される。これにより、オペレータがステアリングハンドル13を直接操作しなくても、確実な旋回方向を設定することができる。また、自動左旋回開始スイッチ及び自動右旋回開始スイッチは押圧操作されるボタン式のスイッチに限らず、トグルスイッチ、ロッカースイッチ、ロータリースイッチ等でもよく、オペレータによる入力操作によって制御部に信号を出力可能であればよい。
【0033】
自動旋回のON状態かつ自動直進ON規制状態では、制御ユニット31によるステアリングモータ39の制御によって、ステアリングハンドル13の操舵角が一定の操舵角(所定旋回角度)に固定維持される旋回制御が実行される(S13)。制御ユニット31による旋回制御の実行中において、走行機体5は、次工程の直進経路に向けて旋回走行をする。なお、制御ユニットは、旋回制御において、前輪2の操舵角が固定維持されるように操向装置4を制御してもよい。また、本実施の形態において、走行機体5は、走行装置としての前輪2及び後輪3によって支持されているが、これに限定されない。例えば、走行装置は、フルクローラやハーフクローラであってもよい。また、操向装置は、クローラを操作するレバー等の操作部や差動装置であってもよく、このような場合、本願の操舵角とは、左右のクローラの回転差や操作部の操作量を指す。
【0034】
枕地M1(枕地領域、図16参照)において、田植機1が旋回走行の途中(半ば)では、ステアリングハンドル13は、所定旋回角度にあり、所定角θ0以上の操舵はないので(S10;NO)、旋回フラグが判断され、該旋回フラグはセットされているので(S14;セット)、旋回開始位置からの直進方向(基準ラインLk0)に対する機体角度が所定角度θ1(例えば90度、図17参照)以上旋回したか判断される(S15)。該機体が旋回の半ばで所定角度θ1未満の場合(S15;NO)、自動直進ON規制状態が継続され、走行機体5は、ステアリングハンドル13の所定旋回角度(本実施形態では最小旋回半径を得る旋回角度)で旋回走行が続行される(S16)。
【0035】
上記機体の直進方向に対する旋回角度が所定角θ1(例えば90°)以上となって、走行機体5の位置が前工程の直進経路よりも次工程の直進経路に近い位置になると(S15;YES)、自動直進ON許容状態となり、報知発動される(S17)。田植機1の旋回が半ばを超えると、直進制御における直進経路の認識が次行程の直進経路に移行したものとみなし、旋回制御から直進制御への切り替えを許容する自動直進ON許容状態となる。このように、旋回走行中における所定の契機に基づいて次工程の直進経路に沿った直進制御の開始を許容するので、制御ユニット31が前工程の直進経路に沿って直進制御を開始してしまうことの防止を図ることが可能となる。
【0036】
旋回開始位置からの直進方向に対する機体角度が所定角度θ2(例えば160度、図17参照)以上旋回すると、言い換えると、基準ラインLk0(又は走行目標ラインLk2)と走行機体5の進行方位との角度(方位差)が所定角度θ2以上に達すると(S19;YES)、旋回フラグがリセットされ、低速で条合わせするため、速いとの警告が報知発動される(S20)。例えば図18(B)に示すように、「速度超過、速度を落として下さい。」と報知され、旋回制御が終了される(S21)。なお、制御部は、ステップS19及びS20の処理を実行する代わりに、次工程の直進経路である走行目標ラインLk3と走行機体の進行方位との角度(方位差)が所定角度以下となったかを判定し、所定角度以下となった場合に、旋回フラグをリセットして報知発動を行ってもよい。このように、走行機体5の180°旋回が終了する前の旋回走行中に旋回制御から直進制御に切り替えられる。
【0037】
尚、前記ステップS15で自動直進ON許容状態で図15のON/OFFスイッチ27中の自動直進スイッチを押し操作すると、上述の自動的な直進制御へ切り替えに先立って人為的に旋回制御から直進制御に切り替えることができる。
【0038】
ついで、一部変更した自動旋回制御について説明する。図6に示す自動旋回制御は、先に説明した図5に示す自動旋回制御に対し、ステップS15,S19で一部相違し、他のステップは同じであるので、該変更されたステップを中心に説明する。ステップS13で旋回が開始されているので、ステップS14の旋回フラグはセット状態にある。田植機1が、旋回開始位置から、旋回走行の半ばに相当する所定距離、例えば、走行機体5の位置が前工程の直進経路よりも次工程の直進経路に近い位置となる所定距離Lm1(図17参照)以上走行すると(S15-2;YES)、自動直進ON許容状態になると共に報知発動し(S17)、旋回開始位置から所定距離Lm2(図17参照)以上走行されたか判断される(S19-2)。該所定距離Lm2は、走行機体5が略90°転向する状態となる距離であり、該ステップS19-2でYESの場合、旋回フラグがリセットされ(S20)、旋回制御が終了される(S21)。
【0039】
図7に示す自動旋回制御も同様に、ステップS15,S19が相違し、他のステップは同様なので、変更部分を中心に説明する。ステップS14において、旋回フラグがセット状態にあると、走行機体5の進行方向(進行方位)が第1の所定方向、例えば、走行機体5の進行方向と基準ラインLk0との方位差(角度差)が所定の角度であるか否かが判断される。具体的には、走行機体5の進行方向の基準ラインLk0(植付仮想線)に対する角度が90度に達して、走行機体5の位置が前工程の直進経路よりも次工程の直進経路に近い位置になったか否かが判断される(S15-3)。該ステップS15-3でYESの場合、即ち機体が第1の所定方向である場合、自動直進のONが許容され(S17)、更に機体の旋回が進行して、機体の進行方向が第2の所定方向、即ち180度に近い角度か判断される(S19-3)。そして、機体の進行方向が第2の角度になると(S19-3;YES)、旋回フラグがリセットされて(S20)、旋回制御が終了される(ステップS21)。
【0040】
図8に示す自動旋回制御は、ステップS15のみが相違し、他のステップは、図5に示す自動旋回制御と同じである。旋回フラグがセット状態にあると(S14;セット)、目標ラインが既に植付作業が終了したラインにあるか次に植付けるラインかを判断する(S15-4)。即ち、走行機体5と次工程の直進経路(例えば、図17に示すLk3)との基準ラインLk0と直交する直交方向Xの距離が、走行機体5と前工程の直進経路(例えば、図17に示すLk2)との直交方向の距離以下となって、走行機体5の位置が前工程の直進経路よりも次工程の直進経路に近い位置である場合、自動直進ON許容状態となるステップS17に進む。このように、制御ユニット31は、走行機体5と次工程の直進経路(例えば、Lk3)との直交方向の距離が、走行機体と前工程の直進経路(例えば、Lk2)との直交方向の距離以下であることに基づいて、旋回制御を終了し、直進制御を開始してもよい。なお、制御部は、走行機体と次工程の直進経路との直交方向の距離が、走行機体と前工程の直進経路との直交方向の距離によらない所定距離以下であることに基づいて、旋回制御を終了し、直進制御を開始してもよい。
【0041】
また、上述した自動旋回制御において、ステップS10でステアリングハンドルの所定角θ0以上の操作があるかを判断したが、該ステップS10を、不図示のジャイロセンサーからの信号やGNSSユニット30により算出した走行機体5の速度に基づいて走行機体の旋回角度を検出し、該旋回角度が所定角度以上操作されているかを判断するようにしてもよい。
【0042】
図9に示す自動旋回制御は、ステップS10のみが相違し、他のステップは、図5に示す自動旋回制御と同じである。自動旋回報知制御(S9)により報知が行われ、田植機1がROM31bやRAM31cに記憶した作業イベント地点、例えばティーチング走行で記憶した旋回の始点A、旋回の終点B、ティーチング走行若しくは自動直進経路に沿った自動直進走行における最初の作業走行時に植付クラッチが入切された地点(苗の植え付けを開始若しくは終了した地点)、ティーチング走行若しくは自動直進経路に沿った自動直進走行における最初の作業走行時に植付作業機7が接地した地点、又はティーチング走行若しくは自動直進経路に沿った自動直進走行における最初の作業走行時に植付作業機7が上昇を開始した地点を通り、基準ラインLk0と直交する仮想線X1(X2、図16参照)に到達したか判断される(S10-5)。
【0043】
なお、田植機1が作業イベント地点に到達したか否かを判断する際の田植機1の位置は、植付作業機の植え付け位置(植え付けが行われる位置)を基準としてもよいし、リヤアクスルケースの位置を基準にしてもよいし、走行機体や作業機の他の部位を基準にしてもよい。また、植付作業機7の接地や上昇の開始は、作業機操作カムポテンショ24(図3参照)によって検出してもよいし、リフト角ポテンショ28(図3参照)によって検出してもよい。田植機1が作業イベント地点に到達すると(S10-5;YES)、旋回開始位置(自動旋回ON)として設定され、旋回フラグがセットされ、報知発動される(S11)。
【0044】
図10に示す自動旋回制御は、ステップS10のみが相違し、他のステップは、図5に示す自動旋回制御と同じである。自動旋回報知制御(S9)により報知が行われ、植付クラッチが接続されてからの田植機1の走行距離が所定距離に達したか判断される(S10-6)。植付クラッチが接続されてからの田植機1の走行距離が所定距離に達すると(S10-6;YES)、旋回開始位置(自動旋回ON)として設定され、旋回フラグがセットされ、報知発動される(S11)。
【0045】
また、圃場の外周走行や圃場マップデータの取得に基づいて圃場外形データを演算し、この圃場外形データに基づいて自動旋回を行うように構成してもよい。図11(A)は、圃場外形データを演算する圃場外形データ演算フローであり、図11(B)は、圃場外形データに基づいて自動旋回を行うための自動旋回制御のフローである。図11(B)に示す自動旋回制御は、ステップS10のみが相違し、他のステップは、図5に示す自動旋回制御と同じである。
【0046】
オペレータは、外周走行により圃場外形データを演算する場合、まず、圃場の外周に沿って田植機1を走行させるティーチング走行を行う。このとき、オペレータは、A点及びB点を登録するY方向(第1の方向、図16参照)に向けた走行に加え、Y方向と交差するX方向(第2の方向、図16参照)に向けた走行を行う。制御ユニット31は、田植機1がX方向に向けて走行した際にGNSSユニット30により算出した走行機体5の位置を取得し(S51)、この際の走行機体5の位置と、予め制御ユニット31に記憶されている植付作業機7の左右方向の幅と、から枕地M1及び作業エリアW1を演算する(S52)。具体的には、S52の処理において、制御ユニット31は、田植機1が外周に沿ってX方向に走行した際(制御ユニット31がS51の処理を実行した際)の植付作業機7の側端部(走行機体5の側端部近傍)を通りX方向に平行な線であり、枕地M1と作業エリアW1との境界線である、仮想線X1,X2を演算して記憶する。なお、田植機1(走行機体5)がX方向に走行することにより実行されるステップS51の処理が、本実施形態における枕地設定処理を構成する。枕地M1及び作業エリアW1の演算を行うと、制御ユニット31は、予定作業経路を演算し(S53)、作業イベント地点(作業開始点、作業終了点、旋回開始点、旋回終了点等)を演算する(S54)。
【0047】
また、制御ユニット31は、例えばタブレット32から入力された圃場マップデータ(地図データ)に基づいて枕地M1及び作業エリアW1の演算を行ってもよい。この場合、圃場の外周に沿って田植機1をX方向に走行させる工程を省くことが可能となる。なお、田植機1は、圃場外形データ演算フローにおける演算結果が制御ユニット31に記憶されるものに限らず、タブレット32等の外部装置に記憶されるように構成されていてもよい。
【0048】
図11(B)に示す自動旋回制御では、自動旋回報知制御(S9)により報知が行われ、田植機1がステップS54で演算された旋回開始点に達したか、即ち、植付作業機7の植え付け位置が仮想線X1又は仮想線X2に達したか判断される(S10-7)。田植機1が旋回開始点に達すると(S10-7;YES)、旋回開始位置(自動旋回ON)として設定され、旋回フラグがセットされ、報知発動される(S11)。
【0049】
ついで、ステップS9に示す自動旋回報知制御について図9に沿って説明する。図12(A)において、ROM31bやRAM31cに記憶した作業イベント地点、例えばティーチング走行で記憶した旋回の始点A、旋回の終点B、自動直進経路に沿った最初の作業走行時に植付クラッチが入切された地点、自動直進経路に沿った最初の作業走行時に作業機が接地した地点、作業機が上昇を開始した地点を通り、基準ラインLk0と直交する仮想線X1(X2、図16参照)に所定距離まで接近したか判断される(S25)。該ステップS25がYESの場合、表示、音等の報知がなされる(S26)。
【0050】
図12(B)において、植付クラッチ入りから所定距離走行したか判断され(S27)、該ステップS27がYESの場合、報知がなされる(S26)。
【0051】
ついで、図13に沿って自動操舵制御について説明する。自動操舵(直進)制御は、ティーチング走行制御で演算された走行目標ライン(仮想線)から、現在の田植機1に最も近いラインを目標ラインとして検出して設定する(S30)。前述した自動旋回制御を実行し(S31)、自動直進ON許容状態か判断する(S32)。ここで、自動直進ON規制状態である場合(S32;NO)、例えば、走行機体5の位置が次工程の直進経路よりも前工程の直進経路に近い場合、仮に自動操舵スイッチ26dやフル操舵スイッチ26bが操作されても自動直進走行は開始されないため、前工程の直進経路に沿って自動直進走行が開始されることを防止している。自動直進ON許容状態である場合(S32;YES)、実際に自動直進がON状態であるか判断される(S33)。自動直進がON状態でない場合、即ち、自動直進がOFF状態である場合(S33;NO)、走行目標ラインとの横ずれが所定値Dauto以内か(S35)、走行目標ラインとの方向ずれが所定値θauto以内か(S36)、現行速度Vが所定値Vauto以内か(S37)判断される。これらステップS35,S36,S37がいずれも所定値以内の場合、自動旋回がOFF状態となり旋回制御が終了されると共に自動直進がON状態となり、それに基づく報知が発動される(S39)。走行目標ラインとの横ずれが所定値Dtole以内で(S40;YES)、かつ走行目標ラインとの方向ずれが所定値θtole以内の場合(S41;YES)、図18(C)に示すように、速度アップOKを報知する(S46)。これにより、オペレータは、速度アップを操作して田植機1を増速する。
【0052】
ステップS40又はS41でNOの場合、即ち走行機体5が横ずれ又は方向ずれしている場合、それに応じて修正操舵角θsが演算され、ステアリングモータ39へ該修正操舵角θsを出力して、機体ずれを修正する(S42)。このように、ステップS40、ステップS41及びステップS42の処理により、本実施の形態において、複数の直進経路のうちいずれか1つの直進経路に沿って走行機体5が走行するように操向部Sを制御する直進制御が構成される。更に、現行速度Vが所定値Vtole以上の場合(S43;YES)、速度超過を警告報知する(S45)。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態における田植機1は、オペレータの操作に基づいて処理負担の小さい簡易な制御である旋回制御を開始し、旋回制御の実行中の所定の契機に基づいて旋回制御を終了して、次工程の直進経路に沿った直進制御を開始する。これにより、畦との接触を防ぎつつ、処理負担の小さい簡易な制御により枕地での田植機1の自律旋回を行うと共に、旋回終了前に次工程の直進経路に向けた走行機体5の走行経路の調整を行うことが可能となる。これにより、植付の開始後の直進制御によるふらつき(オーバーシュート)を抑制し、植付けの作業性を向上することが可能となる。また、機体に最も近い直進経路の認識が、次行程の直進経路に確実に移ったであろう機体状態の検出により直進制御への移行が許容されるので、従来の直進制御のルーチンに対して大きな修正を加えることなく、旋回制御のルーチンを追加することも容易となる。
【0054】
なお、上述した実施の形態は、ステアリングハンドル13の操作角、直進方向(基準ラインLk0)に対するステアリングハンドル角を検出したが、これに限らず、ステアリングハンドルにより操作された機体の旋回を検出してもよい。
【0055】
また、制御ユニット31は、上述した実施の形態において、旋回走行中において、走行機体5の進行方位と次工程の直進経路との方位差、走行機体5と次工程の直進経路との直交方向の距離、旋回制御の開始時における走行機体5の進行方位と旋回走行中の走行機体5の進行方位との方位差、旋回制御の開始時からの走行機体5の走行距離等の条件に応じた所定の契機に基づいて、旋回制御を終了して次工程の直進経路に沿った直進制御を開始するが、これに限定されない。制御部は、上述した他の契機、例えば、オペレータのスイッチ操作や旋回終了位置との距離等に基づいて旋回制御を終了して次工程の直進経路に沿った直進制御を開始してもよいし、上述した条件のうち複数の条件を共に満たす場合に、旋回制御を終了して次工程の直進経路に沿った直進制御を開始してもよいし、上述した条件のうち複数の条件のうち少なくとも1つを満たす場合に、旋回制御を終了して次工程の直進経路に沿った直進制御を開始してもよい。例えば、制御部は、走行機体の進行方位と次工程の直進経路との方位差が所定角度以下である、及び走行機体と次工程の直進経路との直交方向の距離が所定距離以下である、の少なくとも一方である場合に、旋回制御を終了して次工程の直進経路に沿った直進制御を開始してもよい。また、制御部は、上記所定の契機に基づいて、直進制御の開始後に旋回制御を終了してもよいし、旋回制御の終了後に直進制御を開始してもよい。
【0056】
また、上述したいずれの実施の形態においても、作業車両として乗用型の田植機1について説明をしたが、これに限定されない。作業車両は、例えば、トラクタやコンバイン等、他の作業車両であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 作業車両(田植機)
2 走行装置(前輪)
3 走行装置(後輪)
5 走行機体
31 制御部(制御ユニット)
31b 記憶部(ROM)
31c 記憶部(RAM)
Lk1~Lkn 直進経路
M1 枕地領域(枕地)
S 操向部
S3 基準方位設定処理
S4 直進経路設定処理
S51 枕地設定処理
S40~S41 直進制御
X1,X2 仮想線
Y 基準方位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
図17
図18