(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】眼を検査する方法及び視力検査システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20240301BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20240301BHJP
A61B 3/107 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61B3/103
G02B21/00
A61B3/107
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020005074
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】10 2019 101 409.3
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509081562
【氏名又は名称】オクルス オプティクゲレーテ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタインミュラー アンドレアス
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152469(JP,A)
【文献】特開2013-236902(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017210577(DE,A1)
【文献】特開平05-031073(JP,A)
【文献】特表2013-503020(JP,A)
【文献】特開平08-280624(JP,A)
【文献】特開平09-276219(JP,A)
【文献】特開2001-112715(JP,A)
【文献】米国特許第06007204(US,A)
【文献】特開2005-296310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0085294(US,A1)
【文献】特開2017-070557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/103
G02B 21/00
A61B 3/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1測定装置(11)、第2トポグラフィ測定装置(12)、第3屈折度測定装置(13)、及び処理手段(14)を備える視力検査システム(10)によって被験者の眼を検査する方法であって、
前記被験者の眼(16)の軸長(L)は、前記第1測定装置によって測定され、
前記眼の角膜(35)の曲率は、前記第2トポグラフィ測定装置によって測定され、
前記眼の屈折特性は、第3屈折度測定装置によって測定され、
前記眼において測定が前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置によって同時に実行され、
前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置による測定の測定データは、前記処理手段によって処理され、
前記処理手段は、正常データを持つデータベースを備え、前記測定データの前記正常データとの比較が実行され、前記比較の結果は、前記処理手段によって出力される、
方法。
【請求項2】
屈折の程度が、前記測定データを前記正常データと比較することによって前記処理手段(14)によって求められることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
正常データとして、眼の軸長(L)、前記眼の角膜(35)の曲率、及び前記眼の屈折特性と共に、正常集団の眼(16)の測定データが用いられることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
それぞれの場合において前記処理手段(14)は、前記眼(16)の測定された軸長(L)、前記曲率、及び前記屈折特性を、眼の軸長(L)、曲率、及び屈折特性の正常データと比較し、前記処理手段は、前記比較のための前記正常データを、軸長(L)、曲率、又は屈折特性の前記測定の前記測定データとの整合性に従って選択することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
処理手段(14)は、前記測定データを比較する時に、被験者の年齢を考慮に入れることを特徴とする、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定の前の時点で決定された被験者の測定データは、前記眼の軸長(L)、前記眼の角膜(35)の曲率、及び前記眼の屈折特性と共に、正常データとして用いられることを特徴とする、請求項1-5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理手段(14)は、前記第3屈折度測定装置(13)の前記測定データを、前記第1測定装置(11)及び/又は前記第2トポグラフィ測定装置(12)の測定データによって補正することを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記処理手段(14)が、眼の軸長(L)及び/又は眼の角膜(35)の曲率によって、眼(16)の測定された他覚屈折値の妥当性チェックを実行し、屈折値が異なるときには、前記屈折値を前記軸長(L)及び/又は前記角膜(35)の曲率に従って補正することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
眼(16)によって無限大に焦点が合わせられる固視マークは、視力検査システム(10)の固視手段(53)によって表示され、前記眼は、前記固視マークに焦点を合わせ、前記眼は、前記視力検査システムに対して固定されることを特徴とする、請求項1-8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記眼(16)は、毛様体筋麻痺薬を投与することなく検査されることを特徴とする、請求項1-9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第1測定装置(11)、第2トポグラフィ測定装置(12)、第3屈折度測定装置(13)、及び処理手段(14)を備える、被験者の眼を検査する視力検査システム(10)であって、
前記被験者の眼(16)の軸長(L)は、前記第1測定装置によって測定され、
前記眼の角膜(35)の曲率は、前記第2トポグラフィ測定装置によって測定され、
前記眼の屈折特性は、第3屈折度測定装置によって測定され、
前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置は、眼における測定を同時に実行するよう構成され、
前記処理手段は、前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置による測定の測定データを処理するよう構成され、
前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折度測定装置は、1個の機器として統合されている、
視力検査システム。
【請求項12】
前記処理手段は、正常データを持つデータベースを備え、
前記処理手段は、前記測定データの前記正常データとの比較を実行し、前記比較の結果を出力するよう構成されることを特徴とする、請求項11に記載の視力検査システム。
【請求項13】
前記第1測定装置(11)、前記第2トポグラフィ測定装置(12)、及び前記第3屈折度測定装置(13)は、前記眼(16)の光軸(15)と一致する共通の測定軸(17)を用いることを特徴とする、請求項11又は12に記載の視力検査システム。
【請求項14】
前記第2トポグラフィ測定装置(12)及び/又は前記第3屈折度測定装置(13)は、前記眼(16)と、前記第2トポグラフィ測定装置(12)及び/又は前記第3屈折度測定装置(13)との距離を測定する距離測定手段(67)と協働することを特徴とする、請求項11-13のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項15】
前記第1測定装置(11)、前記第2トポグラフィ測定装置(12)、及び/又は前記第3屈折度測定装置(13)は、前記視力検査システム(10)に対して前記眼(16)を固定する固視手段(53)と協働することを特徴とする、請求項11-14のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項16】
前記第1測定装置(11)は、超音波測定装置であることを特徴とする、請求項11-15のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項17】
前記第1測定装置(11)は、干渉法測定装置であることを特徴とする、請求項11-15のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項18】
前記第1測定装置(11)は、光学コヒーレンス干渉法(OCT)のための干渉計であることを特徴とする、請求項17に記載の視力検査システム。
【請求項19】
前記第1測定装置(11)は、部分コヒーレンス干渉計(18)であり、前記部分コヒーレンス干渉計は、コヒーレント光源(22)、2つの測定アーム(33,34)、及び前記眼(16)の前面(37)及び網膜(36)を同時にキャプチャする検出器手段(27)を有するよう設計されることを特徴とする、請求項17に記載の視力検査システム。
【請求項20】
前記第2トポグラフィ測定装置(12)は、ケラトメータ(19)及び/又はシャインプルーフシステムであることを特徴とする、請求項11-19のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項21】
ケラトメータ(19)は、
カメラ(44)、及び
前記カメラによってキャプチャされ得て、円形であって平行化されていない蛍光ストリップ及び2つの平行化された光点によって実現される測定マーク(46)
を有する検査手段(43)を備える
ことを特徴とする、請求項20に記載の視力検査システム。
【請求項22】
前記シャインプルーフシステムは、前記眼に光のギャップを当てるよう設計された投影手段、及び前記眼(16)における前記光のギャップの断面図をキャプチャするよう設計されたカメラを有する検査手段を備え、
前記投影手段及び前記カメラは、互いに対してシャインプルーフの原理に従って配置されることを特徴とする、請求項20又は21に記載の視力検査システム。
【請求項23】
前記第3屈折度測定装置(13)は、オートレフラクトメータ(20)であることを特徴とする、請求項11-22のいずれか1項に記載の視力検査システム。
【請求項24】
前記オートレフラクトメータ(20)は、
ライティングパターンを前記眼(16)の網膜(36)上に投影するよう設計された投影手段(51)、及び
回折ユニット(60,61)及び前記眼における前記ライティングパターンをキャプチャするよう設計されたカメラ(63)を有する検査手段(52)
を備えることを特徴とする、請求項23に記載の視力検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴を有する被験者の眼を検査する方法及び請求項11の特徴を有する視力検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屈折測定装置は、被験者の眼の屈折値を求めるために、十分に知られ、日常的にその役割を果たしている。屈折値は、眼の光学的屈折異常を評価するために利用され得る。屈折異常のよくある形態は、焦点面が網膜の前にある近視であり、これはぼやけた視覚的印象を生む。近視の異なる形態の間には差異がある。いわゆる軸性近視においては、眼軸長が伸びる。屈折性近視においては、眼の屈折部分、例えば角膜又は水晶体の屈折度が増す。増加した屈折度は、例えば、角膜のような屈折表面の増加した曲率によって生じる。水晶体の屈折率は、増加した屈折度が発生するように変化する。近視は、視距離が近い視覚的作業のような異なる環境因子によって小児期に既に進行し得て、又は年齢が進むと、例えば水晶体の毛様体筋の調節能力の低下によって進行し得る。薬剤摂取以外にも、糖尿病のような病気又は遺伝素因も近視の原因となり得る。
【0003】
屈折測定装置を用いて、屈折値は、ディオプトリ(dpt)の単位で比較的容易に客観的に求められ得る。視力検査システムは、例えば、屈折測定装置から及びトポグラフィ測定装置から形成されるDE 102 006 017 389 A1から知られている。屈折測定装置は、本件では、ケラトメータの形で実現される局所測定装置と組み合わせられるオートレフラクトメータである。ケラトメータを用いて、角膜のトポグラフィが決定され得て、これは、可能性がある近視の原因、例えば推定される(supposed)白内障についての情報を得ることを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それにもかかわらず、このようにして得られた屈折及びトポグラフィのデータを評価することは難しく、それは、屈折測定は、瑕疵があり得て、他の影響を及ぼす要因もある屈折値の原因であり得るからである。瑕疵のある屈折測定は、例えば、被験者が測定中に眼から近い範囲に遠近調節をするときに起こり得る。これを除外するために、毛様体筋は、薬剤によって麻痺(毛様体筋麻痺)され得るが、これは、時間がかかり被験者には不快である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって本発明は、それを用いて屈折値が容易に信頼性高く求められ得る方法及び視力検査システムを提案する目的に基づいている。
【0006】
この目的は、請求項11の特徴を有する視力検査システムによってと同時に、請求項1の特徴をする方法によって実現される。
【0007】
本発明による被験者の眼を検査する方法は、第1測定装置、第2トポグラフィ測定装置、第3屈折測定装置、及び処理手段を備える視力検査システムによって実行され、前記被験者の眼の軸長は、前記第1測定装置によって測定され、前記眼の角膜の曲率は、前記第2トポグラフィ測定装置によって測定され、前記眼の屈折特性は、第3屈折測定装置によって測定され、前記眼において測定が前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折測定装置によって同時に実行され、前記第1測定装置、前記第2トポグラフィ測定装置、及び前記第3屈折測定装置による測定の測定データは、前記処理手段によって処理され、前記処理手段は、正常データを持つデータベースを備え、前記測定データの前記正常データとの比較が実行され、前記比較の結果は、前記処理手段によって出力される。
【0008】
眼の軸長、眼の角膜の曲率、及び眼の客観的屈折特性つまり例えばディオプトリの屈折値は、同時に測定されるという事実のために、異なる測定機器によって順次、測定がなされるときに発生し得るような測定誤差は、防止され得る。第1、第2、及び第3測定装置が同時に測定を実行する時、得られた全ての測定データは、時間軸上のこの点における眼の状態を参照するので、同じ条件の下で測定データを比較することができるようになる。異なる装置を用いるとき、又は測定が一つずつ実行されるとき、眼は、眼の動きのために、又は異なる収容状態にあるために、測定軸に対して常に異なる方向を向くことになる。屈折値を客観的に求めること以外にも、眼の軸長と共に、トポグラフィ又は角膜の曲率の測定データが本方法で特定され得る。その後、同時に利用可能になるこれら測定データのおかげで、検査を実行する人は、測定された屈折値をより容易に評価し得る。
【0009】
特に、処理手段が、正常データを持つデータベースを備え、測定データの正常データとの比較を実行するという事実によって、その比較の結果、つまり測定値及び正常値の間のそれぞれの差異に基づいて、偏差は容易に評価され得る。もし、例えば、角膜の曲率についての測定値が正常値から大きく逸脱するなら、検査を実行している人は、正常値からやはり逸脱している屈折値を、より容易に解釈できる。前述された例では、角膜の曲率は、屈折値の原因であり得る。さらに、検査を実行している人は、屈折値の理由になるには大きすぎる軸長を求めることができる。もし正常値から逸脱する角膜の曲率及び眼の軸長の測定値が存在しないなら、水晶体の屈折率は、例えば異なり得る。全体的に見て、測定値が同時に得られるという事実により、正確な測定値を容易に素早く得て、それらを正常値と比較することができるようになる。ここで、処理手段は、上記比較を実行し、比較の結果を出力し、その結果、検査を実行する人が得られた測定データをより容易に評価できるようにする。ここで処理手段は、コンピュータ及びディスプレイスクリーンのようなデータ処理及び表示のための手段を備える。
【0010】
処理手段によって、屈折度は、測定データと正常データとの比較によって求められる。屈折度によって、特定された測定値は、正常データからの偏差に基づいて、データベース中に含まれる正常データに対してカテゴライズされ得る。処理手段は、測定値の物理的量に基づいて、客観的屈折度を特定し得る。ここで測定値は、異なるように重み付けされ得て、又は測定値は、互いに対して関連付けされ得る。処理手段は、例えば、スクリーン上に客観的屈折度を出力し、眼の屈折特性をより容易に評価できるようにし得る。
【0011】
正常データとして、正常集団の眼の測定データは、眼の軸長、眼の角膜の曲率、及び眼の屈折特性と共に用いられ得る。正常データは、眼の測定データが特定された比較グループの人間の50パーセンタイルに対応し得る。正常データは、比較グループの全ての測定データを含み得るので、処理手段は、比較グループの50パーセンタイルから視力検査システムによって特定された測定データの正確な偏差を出力することができ、この偏差は、例えば、それぞれの例においてその測定データが比較グループのどのパーセンタイルに相当するかも示す。代表的な集団平均(representative population average)は、ここで正常集団(normal population)と呼ばれる比較グループであると理解される。
【0012】
有利なことに、この処理手段は、それぞれの例において、測定された眼の軸長、曲率、及び屈折特性を、正常データの眼の軸長、曲率、及び屈折特性と比較できるので、本処理手段は、軸長、曲率、又は屈折特性の、測定の測定データとの一貫性に従って、比較のための正常データを選択するよう構成される。したがって処理手段は、軸長、曲率、及び屈折特性について独立して測定データ及び正常データのそれぞれの記録を比較するだけでなく、データベース又は正常データから、眼又はそのような眼に関連付けられた正常データ又は視力検査システムによって測定された又はそれらに対応する測定データに最も近い測定データを選択できる。したがって処理手段は、視力検査システムによって測定された眼と、測定データの形でデータベースに含まれる眼とを比較し、この比較結果を出力する。検査を実行する人は、この結果に基づいて、視力検査システムによって測定された眼が、標準からどの程度、逸脱しているか、又は既知の症状を既に呈しているかを容易に評価できる。
【0013】
処理手段は、測定データを比較する時、被験者の年齢を考慮に入れ得る。正常データを有するデータベースは、それぞれの例において年齢の情報(indication)に割り当てられ得る正常データを同様に含み得る。比較のために、処理手段は、正常データを有するデータベースから、被験者の年齢に対応する正常データをそれから選択し得る。被験者の年齢は、例えば、測定の前に又は後に、入力手段を介して処理手段に入力され得る。近視及び年齢の間の既知の関係のために、年齢を考慮することによって、測定データのさらにより正確な比較が可能になる。加えて、処理手段は、測定データを比較する時に、例えば、当該集団中の近視の有症率を考慮に入れてもよい。年齢以外には、職業プロファイル及び性質も考慮され得る。
【0014】
眼の軸長、眼の角膜の曲率、眼の屈折特性によって、その測定の前のある時点で求められた被験者の測定データは、正常データとして用いられ得る。このようにして、視力検査システムによって、異なる時点において、同じ被験者の測定値を得て、それぞれの場合において測定データを取得及び記憶することが可能である。これら測定データは、比較のための正常データとして用いられ得る。このようにして、当該眼の光学的特性の潜在的な変化が、例えば、何ヶ月又は何年かの期間に渡って求められ得る。例えば、悪化していく屈折値の原因が、さらにより容易にこのようにして特定され得る。しかしオプションとしては、それぞれの測定時刻において測定された測定データを、比較グループの正常データと常に比較することも可能である。
【0015】
処理手段は、第3測定装置の測定データを、第1測定装置及び/又は第2測定装置によって訂正することが可能である。上述のように屈折は多くの要因及び環境条件によって影響されるので、客観的屈折値を求めることは、しばしば困難であり、誤差の影響を受ける。しかし角膜の曲率及び軸長は、例えば薬剤又は脳の活動の影響を受けない測定値である。したがって第3測定装置の測定データは、第1及び/又は第2測定装置の測定データによって、優位性をもって訂正され得る。
【0016】
このようにして、処理手段は、眼の測定された客観的屈折値についてのもっともらしさ(plausibility)のチェックを、眼の軸長及び/又は角膜の曲率によって実行し、屈折値が異なるときに、その屈折値を軸長及び/又は角膜の曲率に従って訂正するよう構成される。ここでもっともらしさチェックは、それぞれの測定値についての公差を記述する範囲表示(range indications)に基づいて実行され得る。この範囲表示は、データベースに記憶されてもよい。範囲表示は、経験に基づいてもよく、又は統計的平均と併せて、標準偏差に基づいて決定されてもよい。
【0017】
眼によって無限遠で焦点が合わされ得る固視マークは、視力検査システムの固視手段によって表示され得て、眼は、固視マーク上に焦点を合わすことができ、眼は、視力検査システムに対して固定され得る。視力検査システムの測定軸に対する眼の正しい位置は、視力検査システムの正確な測定のために必須である。有利には、ここで眼の光軸は、視力検査システムの測定軸とアラインされる。ここで、眼は、固視マークが被験者に提示されるように配置され得て、被験者は、無限遠においてこの固視マーク上に焦点を合わせることができる。固視マークは、例えば、物体の画像表現であり得る。視力検査システムの光路に交わるスクリーンは、画像表現を実行し得る。視力検査システムによって測定する間に眼の毛様体筋が完全に緩和した状態であるように、被験者の眼のための画像表現は、無限遠においてであることが必要である。
【0018】
有利には、そして眼は、毛様体筋麻痺薬を処方することなく試験されることも可能である。よって眼は、より容易により速く試験することが可能である。
【0019】
本発明による被験者の眼を検査する視力検査システムは、第1干渉計測定装置、第2トポグラフィ測定装置、第3屈折測定装置、及び処理手段を備え、前記被験者の眼の軸長は、前記第1測定装置によって測定され、前記眼の角膜の曲率は、前記第2測定装置によって測定され、前記眼の屈折特性は、第3測定装置によって測定され、前記第1、第2及び第3測定装置は、眼における測定を同時に実行するよう構成され、前記処理手段は、前記第1、第2及び第3測定装置による測定の測定データを処理するよう構成され、前記処理手段は、正常データを持つデータベースを備え、前記処理手段は、測定データの、正常データとの比較を実行し、この比較の結果を出力するよう構成される。本発明による視力検査システムの優位性については、本発明による方法の優位性の記載が参照される。
【0020】
第1測定装置、第2測定装置、及び第3測定装置は、眼の光軸と一致させられ得る共通の測定軸を備え得る。測定装置群が共通の測定軸を備える事実により、特に正確で容易に比較できる形で測定データを得ることが可能になる。もし共通測定軸が眼の光軸とアラインさせられるなら、眼の軸長を正確に求めることができるという点で特に優位性がある。
【0021】
第2測定装置及び/又は第3測定装置は、眼と、第2測定装置及び/又は第3測定装置との間の距離を測定する距離測定装置を備え得る。距離測定手段は、屈折測定装置及び/又はトポグラフィ測定装置と、検査されるべき眼との間の距離を測定し得る。この距離は、測定データの補正のために必要であり、距離データを獲得することによって、被験者を視力検査システムの前にそれにしたがって正確に配置すること、又は屈折測定装置によって測定された測定データを適切に補正することが可能になる。このようにして、屈折測定装置と、眼の角膜、特に角膜の前面との間の距離は、距離測定手段によって有利に測定され得る。加えて、網膜又は眼の後面からの距離も、距離測定手段によって軸長を考慮して求められ得る。オプションとして、角膜の後面、水晶体の前面、及び/又は水晶体の後面からの距離も求められ得る。距離測定手段の構造のタイプは、基本的に任意であり、この距離測定手段は、トポグラフィ測定装置によって、ケラトメータによって、又はシャインプルーフシステムによって実現され得る。
【0022】
第1測定装置、第2測定装置、及び/又は第3測定装置は、視力検査システムに対して眼を固定する固視手段を備え得る。固視手段は、例えば、スクリーン又は適切なプロジェクタを備え得て、それによって、眼のための固視マークは、無限遠において可視化して表現され得る。固視マークは、一点へ眼の焦点が合わせられることを避けるよう、物体の画像表現であり得る。固視マークは、例えばスプリッタキューブを介して視力検査システムの光路に結合されることによって、固視マークが被験者に見えるようにされ得る。
【0023】
第1測定装置は、部分コヒーレンス干渉計(partial coherence interferometer、PCI)であり得て、この干渉計は、角膜の前面及び網膜又は眼の光学的境界表面を同時にキャプチャする、コヒーレントな光源、2つの測定アーム、及び検出器手段を有するよう設計されている。この干渉計は、2つの測定アームを使用するという事実により、眼の前面及び網膜を同時に検出し、前面及び網膜の相対的距離を、結果的には眼の軸長を求めることが可能である。ここで、眼が視力検査システムに対して有するのがどの距離であるかは重要ではないが、これは、眼の距離又は軸長は、干渉計によって視力検査システムからの距離とは独立して測定され得るからである。視力検査システムに対しての眼の間隔が空けられた位置に起因する干渉計の測定誤差は、いずれも、このようにして完全に除去され得る。軸長は、結果的に特に正確に測定され得る。軸長以外にも、角膜の後面、水晶体の前面、水晶体の後面、及び光学的境界表面の間の距離のような、眼の他の光学的境界表面は、干渉計によって測定され得て、処理手段によって処理され得る。これら測定データは、対応する正常データとの比較のための処理手段によっても利用され得る。
【0024】
第2測定装置は、ケラトメータ及び/又はシャインプルーフシステムであり得る。そのような測定装置によって、眼の角膜のトポグラフィ又は曲率を求めることができる。
【0025】
ケラトメータは、カメラ及びカメラによってキャプチャされ得て、円形であり、平行化され(collimated)ない蛍光ストリップによって、及び2つの平行化された光点によって実現され得る測定マークを有する検査手段を備え得る。ケラトメータの測定マークの構成のタイプは、基本的に任意であり、発光ダイオードが光源として想定され得る。蛍光ストリップは、円形光伝導要素によって生成され得る。複数の同心円状の円形蛍光ストリップを生成することも想定され得る。有利には、測定マークのための光としては、赤外光も用いられ得る。検査手段は、視力検査システムの、又はケラトメータの光路にスプリッタキューブを介して結合されているカメラであり得る。カメラによって、眼の角膜上の測定マークの寄生画像(parasitic image)がキャプチャされ得る。画像処理によって、角膜の曲率は、測定マークの寄生画像から容易に導出され得て、処理手段によって表示され得る。さらに、被験者の眼の正確な配置及び方向付けのために、視力検査システムのためのセットアップカメラとして、又はオーバービューカメラとして前記のカメラを使用することが可能である。
【0026】
シャインプルーフシステムは、眼に光のギャップ(light gap)を照射するよう設計され得る投影手段、及び眼における光のギャップの断面図をキャプチャするよう設計され得るカメラを有する検査手段を備え得て、この投影手段及びカメラは、シャインプルーフの原理に従った関係で互いに対して配置されるよう構成される。投影手段によって、光のギャップは、それから眼の上に投影され得て、眼の光軸、つまり視軸に沿った眼のギャップ照射が実行され得るようになる。シャインプルーフ原理に従って配置されるカメラによって、このようにして生成される眼におけるライトギャップの断面図がキャプチャされ、照射された眼における断面領域又は眼の前部が光学的にキャプチャ可能であり得る。このようにして生じる眼の長手方向の断面図は、角膜の及び水晶体の光学的境界表面をそれから有利に再現し得る。処理手段は、光学的境界表面の相対的距離を、このようにして得られた画像データのセットから容易に計算し得る。さらに、角膜の曲率も容易に特定され得る。シャインプルーフシステムは、第2測定装置単体を、又はケラトメータと併せて、実現し得る。
【0027】
有利には、第3測定装置は、オートレフラクトメータであり得る。
【0028】
このオートレフラクトメータは、ライティングパターンを眼の網膜上に投影するよう設計され得る投影手段、及び回折ユニット及び眼におけるライティングパターンをキャプチャするよう設計され得るカメラを有する検査手段を備え得る。ここで、ライティングパターンは、ライティングパターンの焦点が網膜上に合わされるようなやり方で投影され得る。光学的検査手段によって、網膜において反射されるライティングパターンは、画像パターンがカメラの光電センサ上に表示されることで、眼の水晶体を通して検査され得る。この画像パターンは、カメラによってキャプチャされ、画像編集によって評価される。眼の屈折特性に対応して、網膜上に投影されるライティングパターンは、特徴的に歪まされることで、眼の屈折特性は、歪の度合いからライティングパターンを分析するフレームワークの中で導出され得る。回折ユニットは、例えば、円形に配置されたいくつかの孔を有する開口板であり得て、この孔の光路はそれぞれ、偏光プリズム又は対応するレンズを介してカメラのセンサ上へと偏向される。代替として、回折ユニットは、回折光学要素(DOE)であってもよい。
【0029】
視力検査システムの他の優位性を持つ実施形態は、方法の請求項1へと戻って参照する従属請求項に含まれる特徴の記載から実現される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下において、本発明は、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【
図1】第1干渉測定装置、第2トポグラフィ測定装置、第3屈折測定装置及び処理手段を備える視力検査システムの構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図は、第1干渉測定装置11、第2トポグラフィ測定装置12、第3屈折測定装置13及び処理手段14を備える視力検査システム10の構成の概略的な表現を示す。視力検査システム10は、視軸15が視力検査システム10の測定軸17に対応するよう、視軸15つまり検査される眼16の光軸に対して配置されている。第1干渉測定装置11は、部分コヒーレンス干渉計18によって実現され、第2トポグラフィ測定装置12は、ケラトメータ19によって実現され、第3屈折測定装置13は、オートレフラクトメータ20によって実現される。
【0032】
干渉計18は、本質的には、第1スプリッタキューブ30及び第2スプリッタキューブ31と共に、レーザ光源22及びレンズ構成23を有するレーザ手段21、第1ミラー25及び第2ミラー26を有するミラー手段24、検出器28及びレンズ構成29を有する検出器手段27によって実現される。特に第2ミラー26は、両矢印32に沿って長手方向に変位可能であるように配置され、その結果、第2参照アーム34の長さ又は対応する参照パスの長さは変更され得る。しかし第1参照アーム33は、その長さが変更され得るようには実現されていない。第2ミラー26の変位を通して、視軸15上に位置する眼16の異なる領域がスキャンされ得る。特に、眼16の角膜35から網膜36までの、つまり角膜35の前面37から網膜36の後面38までの軸長(L)を測定することが可能である。部分コヒーレンス干渉計18の既知の機能のより深い説明は、ここでは割愛される。さらに、角膜35の前面37、角膜35の後面39、水晶体41の前面40、水晶体41の後面42、網膜36の後面38のような視軸15上の光学境界表面の相対位置を記述する測定データも獲得され得る。
【0033】
ケラトメータ19は、カメラ44を用いてキャプチャされ得て、それぞれ赤外光源47によって及びレンズ構成48によって実現される測定マーク46と共に、カメラ44及びレンズ構成45を有する検査手段43を備える。赤外光源は、例えば、発光ダイオードであり得る。測定マーク46は、カメラ44を用いてキャプチャされ得る、角膜35上の2つの平行化された光点を実現し得る。測定マーク46は、円形で、平行化されず、図示されない蛍光ストリップによって補充される。検査手段43は、スプリッタキューブ49を介して視力検査システム10の光路50と結合される。
【0034】
オートレフラクトメータ20は、眼16の屈折特性を求める働きをし、固視手段53と共に、投影手段51及び検査手段52を実質的に備える。光学的投影手段51を用いて、ライティングパターンが眼16の網膜36上に投影され、そこに焦点が集まり得る。ここで、投影手段51は、開口板54、レンズ構成55、及び赤外光源56を備える。ライティングパターンは、オートレフラクトメータ20の第1スプリッタキューブ59を介して開口板58を有するミラー57を通して視力検査システムの光路50に結合される。光学的検査手段52は、6つ折り(6-fold)開口板60、偏光プリズム61、レンズ構成62、及びカメラ63を備える。カメラ63を用いてキャプチャされる画像データは、処理手段14において処理及び評価されることによって、眼16の屈折特性を求めることができる。検査手段52は、ミラー57及び第1スプリッタキューブ59を介して光路50に結合される。
【0035】
オートレフラクトメータ20の固視手段53は、固視マークの画像表現のためのスクリーン64によって、及び無限大における固視マークを表示するためのレンズ構成65によって実現される。第2スプリッタキューブ66は、固視マークを光路50に結合することを可能にする。第1スプリッタキューブ59及び第2スプリッタキューブ66は、オートレフラクトメータ20の一部である。
【0036】
さらに、距離測定手段67は、ここではケラトメータ19によって実現されることが想定される。距離測定手段67は、測定マーク46及び検査手段43を備える。
【0037】
ここで図示される視力検査システム10によって、第1測定装置11、第2測定装置12、及び第3測定装置13において測定が同時に実行され、処理手段14は、第1測定装置11、第2測定装置12、及び第3測定装置13の測定による測定データを処理し、この処理手段14は、ここで不図示の、正常データ(normal data)を有するデータベースを備え、測定データの正常データとの比較が実行され、この比較の結果が処理手段14によって出力される。