(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】合成物生産システム
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20240301BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20240301BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20240301BHJP
C07C 29/151 20060101ALI20240301BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20240301BHJP
C07C 41/09 20060101ALI20240301BHJP
C07C 43/04 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C07C1/12
C01B3/04 R
C07C9/04
C07C29/151
C07C31/04
C07C41/09
C07C43/04 D
(21)【出願番号】P 2020026879
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】圓島 信也
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 忠輝
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】安藤 喜昌
(72)【発明者】
【氏名】加茂 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】入江 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】堤 淳史
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-183202(JP,A)
【文献】特開2012-188360(JP,A)
【文献】特開2018-150254(JP,A)
【文献】特表2019-504153(JP,A)
【文献】特開2002-193858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/12
C01B 3/04
C07C 9/04
C07C 29/151
C07C 31/04
C07C 41/09
C07C 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を処理するための原料処理プラントに接続され、前記原料処理プラントにおいて副生物として発生する原料処理由来の水素含有ガスが供給される第1供給ラインと、
再生可能エネルギーを
利用した発電設備からの電力供給を受けて水素ガスを生成する水素生成装置に接続され、前記水素生成装置からの前記水素ガスが供給される第2供給ラインと、
水素と二酸化炭素とを合成することによって合成物を生産するように構成された合成プラントと、
前記第2供給ラインに設けられ、前記水素ガスの流量を検出するための流量センサと、
前記第1供給ラインに設けられ、前記流量センサによって検出された前記水素ガスの供給量に応じて前記水素含有ガスの供給量を調整するように構成された流量調整装置と、
を備え、
前記流量調整装置は、
前記再生可能エネルギーの変動に起因して前記流量センサによって検出された前記水素ガスの供給量が減少した場合に前記水素含有ガスの供給量を増加させ、
前記再生可能エネルギーの変動に起因して前記流量センサによって検出された前記水素ガスの供給量が増加した場合に前記水素含有ガスの供給量を減少させるように前記水素含有ガスの供給量を調整する
合成物生産システム。
【請求項2】
前記流量調整装置は、前記水素含有ガスの成分分析の分析結果に応じて前記水素含有ガスの供給量を制御する
請求項1に記載の合成物生産システム。
【請求項3】
前記第1供給ラインに位置し、前記水素含有ガスに含まれる水素成分を精製するための精製装置を備える
請求項1又は2に記載の合成物生産システム。
【請求項4】
前記第1供給ラインと前記第2供給ラインとが合流する合流部を備え、
前記精製装置が前記水素成分を精製した後の前記水素含有ガスは、前記合流部に供給される
請求項3に記載の合成物生産システム。
【請求項5】
前記二酸化炭素を前記合成プラントに供給するための二酸化炭素供給ラインと、
前記合成プラントに供給される前記水素ガスの供給量を検出するための少なくとも一つのセンサと、
前記二酸化炭素供給ラインに設けられ、前記合成プラントに供給する前記二酸化炭素の量を調整するように構成された流量調整弁と、
を備え、
前記流量調整装置は、前記センサが検出した前記水素ガスの供給量に応じて前記流量調整弁の開度を制御する
請求項1乃至4の何れか一項に記載の合成物生産システム。
【請求項6】
前記少なくとも一つのセンサは、
前記第2供給ラインに設けられる前記流量センサと、
前記第1供給ライ
ンに設けられる
他の流量センサ
と、
を含み、
前記流量調整装置は、前記水素含有ガスの成分分析の分析結果に応じて前記水素含有ガス及び前記二酸化炭素の供給量を制御する
請求項5に記載の合成物生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素と水素の合成物を生産するための合成物生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止策として、二酸化炭素を回収して、それを水素と化学反応させて合成物(燃料、化学素材等)の資源として活用することが提案されている。例えば、特許文献1には、水分解によって得られた水素と、発電設備の排ガスから分離した二酸化炭素とを合成し、燃料を生成するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、水素を水分解によって生成する場合、そのためのエネルギーが必要である。ここで、水分解のエネルギーとして再生可能エネルギーを利用する場合、地球温暖化を防止する目的に適している。しかしながら、再生可能エネルギーは、外部環境によって変動する場合があるため、再生可能エネルギーを利用して生成した水素を安定供給することが困難である。その結果、合成プラントの稼働率が低下してしまう。
【0005】
再生可能エネルギーを利用して生成した水素をより安定的に供給するためには、水素を貯蔵するための貯蔵装置を設けることが考えられる。しかし、このような貯蔵装置は高価であるため、コストが高くなってしまう。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示は、コストの増加を抑えつつ、合成プラントの稼働率を向上させることが可能な合成物生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る合成物生産システムは、
原料処理由来の水素含有ガスが供給される第1供給ラインと、
再生可能エネルギーを用いて生成された水素ガスが供給される第2供給ラインと、
供給された水素を二酸化炭素と合成することによって合成物を生産するように構成された合成プラントと、
前記水素ガスの供給量に応じて前記水素含有ガスの供給量を調整するように構成された流量調整装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、合成物生産システムにおいて、コストの増加を抑えつつ、合成物の生産に必要な水素をより安定的に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る合成物生産システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係る合成物生産システムの構成を概略的に示す図である。
【
図3】一実施形態に係る合成物生産システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(合成物生産システムの構成)
以下、実施形態に係る合成物生産システム1の構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る合成物生産システム1(1A)の構成を概略的に示す図である。
図2は、一実施形態に係る合成物生産システム1(1B)の構成を概略的に示す図である。
図3は、一実施形態に係る合成物生産システム1(1C)の構成を概略的に示す図である。なお、これらの図において、実線矢印は、配管(例えばガスの供給ライン)を示し、破線矢印は、センサの信号又は制御信号を示している。
【0012】
図1~
図3に示すように、合成物生産システム1(1A、1B、1C)は、原料処理由来の水素含有ガスが供給される第1供給ライン11と、再生可能エネルギーを用いて生成された水素ガスが供給される第2供給ライン12と、二酸化炭素が供給される二酸化炭素供給ライン13と、合成物を生産するように構成された合成プラント10と、水素含有ガスの供給量を調整するように構成された流量調整装置20と、を備える。第1供給ライン11には、第1弁51が設けられる。第1弁51は、流量調整弁であってもよいし、開閉弁であってもよい。
【0013】
合成プラント10は、第1供給ライン11及び第2供給ライン12から供給されるガスに含まれる水素を、二酸化炭素供給ライン13から供給される二酸化炭素と合成することによって合成物を生産する。合成プラント10は、合成物として、メタノール、メタン、及びジメチルエーテルのうち少なくとも1種を生産するように構成される。このような合成物は、燃料や化学素材として利用可能である。また、合成プラント10は、合成物の副産物である水を排水する。
【0014】
第1供給ライン11の上流側は、原料処理プラント30に接続される。原料処理プラント30は、原料処理由来の水素含有ガスを排出するプラントである。原料処理由来の水素含有ガスは、原料処理によって副産物として発生する水素を主成分とするガスである。原料処理由来の水素含有ガスは、例えば、苛性ソーダ、鉄鋼、石油化学等の処理において発生する副生水素ガスであってもよいし、天然ガス、LPG、石炭などから抽出される化石燃料改質水素ガスであってもよい。原料処理プラント30は、製油所、コークス炉、塩電解設備等であってもよい。
【0015】
第2供給ライン12の上流側は、水素生成装置40に接続される。水素生成装置40は、再生可能エネルギーを利用した発電設備からの電力供給を受けて、水電解によって水素ガスを生成する。発電設備が商用の電力系統に接続されていない場合、水素生成装置40に供給される電力は変動し得る。なお、水素生成装置40は、水電解以外の方法によって水素ガスを生成するように構成されてもよい。例えば、水素生成装置40は、再生可能エネルギーを利用した発電設備からの電力供給を受けて、PSA(Pressure Swing Adsorption)法によって水素含有ガスから水素ガスを生成してもよいし、他の方法によって水素ガスを生成してもよい。
【0016】
流量調整装置20(20A、20B)は、水素生成装置40からの水素ガスの供給量に応じて化石燃料由来の水素含有ガスの供給量を調整する。流量調整装置20(20A、20B)は、第1弁51の開閉制御を実行する構成であってもよいし、第1弁51の開度を制御して流量を調整する流量制御を実行する構成であってもよい。
【0017】
幾つかの実施形態において、流量調整装置20(20A、20B)は、水素生成装置40からの水素ガスの供給量が減少した場合に原料処理由来の水素含有ガスの供給量を増加させ、水素生成装置40からの水素ガスの供給量が増加した場合に水素含有ガスの供給量を減少させるように水素含有ガスの供給量を調整してもよい。このような制御により、原料処理由来の水素含有ガスの供給量が調整される。流量調整装置20(20A、20B)は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、CPU(Central Processing Unit)等から構成される。
【0018】
幾つかの実施形態において、流量調整装置20(20A、20B)は、水素含有ガスの成分分析を行い、その分析結果に応じて水素含有ガスの供給量を制御してもよい。例えば、
図3に示すように、第1供給ライン11に水素成分を検出するための分析装置80が設けられてもよい。流量調整装置20(20B)は、分析装置80の分析結果に基づいて第1弁51を制御してもよい。
【0019】
具体的には、例えば、流量調整装置20(20A、20B)は、水素含有ガスに含まれる水素成分が基準値以下である場合には、水素含有ガスに含まれる水素成分が基準値を上回っている場合よりも第1弁51の開度を大きくするように第1弁51を制御する。これにより、合成プラント10に供給する水素の量を確保することができる。
【0020】
幾つかの実施形態において、合成物生産システム1(1B)は、例えば、
図2に示すように、水素含有ガスに含まれる水素成分を精製するための精製装置60を備えていてもよい。この場合、精製装置60により、水素含有ガスに含まれる水素以外の不純物(例えば、CH
4、CO
2等)が除去される。精製装置60は、第1供給ライン11に設けられる。なお、
図2では、第1弁51より上流側の位置に精製装置60が設けられている。しかし、第1弁51より下流側の位置に精製装置60が設けられてもよい。
【0021】
幾つかの実施形態において、合成物生産システム1(1A、1B、1C)は、例えば、
図1~
図3に示すように、第1供給ライン11と第2供給ライン12とが合流する合流部14を備えていてもよい。合流部14は、合成プラント10に接続され、合流後の水素ガスは合成プラント10に供給される。
【0022】
合成物生産システム1(1B)は、例えば、
図2に示すように、精製装置60が水素成分を精製した後の水素含有ガスが合流部14に供給されるように構成されていてもよい。この場合、合流部14より上流側で不純物を除去し、合流部14より下流側を流れるガスの水素濃度を高い状態にすることができる。合成物の原料(水素と二酸化炭素)以外の不純物が含まれると合成プラント10における合成物の生産効率の低下及び原料圧縮機の動力の増加が発生する。この点、上記構成では、精製装置60により水素含有ガスの水素成分を予め精製して合成プラント10に供給するため、合成物の生産効率を向上させることができる。また、第1供給ライン11に精製装置60を設けた場合には、合流部14より下流側の位置に精製装置60を設けた場合に比べて、精製装置60の処理負担を軽減することができる。
【0023】
幾つかの実施形態において、合成物生産システム1(1C)は、例えば、
図3に示すように、二酸化炭素を合成プラント10に供給するための二酸化炭素供給ライン13と、合成プラント10に供給される水素ガスの供給量を検出するための少なくとも一つのセンサと、二酸化炭素供給ライン13に設けられ、合成プラント10に供給する二酸化炭素の量を調整するように構成された第2弁52と、を備えていてもよい。少なくとも一つのセンサは、例えば、第1供給ライン11に設けられる流量センサ71と、第2供給ライン12に設けられる流量センサ72とを含んでいてもよい。
【0024】
なお、2つの流量センサ71、72は、1つの流量センサに変更されてもよい。例えば、
図3において点線で示すように合流部14と合成プラント10の間の位置に流量センサ73を設けて、流量センサ73が合流後の水素ガスの供給量を検出してもよい。
【0025】
上記構成において、第2弁52は、流量調整弁であり、流量調整装置20(20B)は、センサ(例えば、流量センサ71、72)が検出した水素ガスの供給量に応じて第2弁52の開度を制御してもよい。なお、合成物生産システム1は、流量調整弁の代わりに、第1弁51として、三方弁や逆止弁を備え、流量調整弁と同様の制御を実行するように構成されてもよい。
【0026】
幾つかの実施形態において、例えば、
図3に示すように、少なくとも一つのセンサは、第1供給ライン11及び第2供給ライン12のそれぞれに設けられる流量センサ71、72を含み、流量調整装置20(20B)は、水素含有ガスの成分分析の分析結果に応じて水素含有ガス及び二酸化炭素の供給量を制御してもよい。例えば、流量調整装置20(20B)は、流量センサ71、72の計測値及び分析装置80の分析結果に基づいて、第1供給ライン11に設けられた第1弁51と二酸化炭素供給ライン13に設けられた第2弁52とを制御してもよい。
【0027】
具体的には、例えば、流量センサ71が検出した水素含有ガスの流量に分析装置80が検出した水素濃度を乗じることによって得られる水素ガスの流量と、流量センサ72が検出した水素ガスの流量とを加算することによって、水素ガスの流量が求められる。流量調整装置20(20B)は、この水素ガスの流量に対して、合成プラント10における化学反応の反応式に応じた二酸化炭素の流量が供給されるように、第2弁52の開度を制御してもよい。
【0028】
幾つかの実施形態において、例えば、
図1及び
図2に示すように、合成物生産システム1(1A、1B)は、第2供給ライン12に流量センサ72を備え、流量調整装置20(20A)は、流量センサ72が検出した水素ガスの流量に応じて、第1弁51を制御してもよい。また、幾つかの実施形態において、例えば、
図3に示すように、合成物生産システム1(1C)は、二酸化炭素供給ライン13に流量センサ74を備え、流量調整装置20(20A)は、流量センサ74が検出した二酸化炭素の流量に応じて、第1弁51を制御してもよい。
【0029】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0030】
(まとめ)
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0031】
(1)本開示の一実施形態に係る合成物生産システム(1)は、
原料処理由来の水素含有ガスが供給される第1供給ライン(11)と、
再生可能エネルギーを用いて生成された水素ガスが供給される第2供給ライン(12)と、
供給された水素を二酸化炭素と合成することによって合成物を生産するように構成された合成プラント(10)と、
前記水素ガスの供給量に応じて前記水素含有ガスの供給量を調整するように構成された流量調整装置(20)と、
を備える。
【0032】
上記(1)に記載の構成では、再生可能エネルギーの減少によって生成される水素ガスが減少した場合には、原料処理由来の水素含有ガスによって合成物の生産に必要な水素を供給することが可能である。そのため、合成物の生産に必要な水素をより安定的に供給し、合成プラントの稼働率を向上させることが可能となる。また、安価な原料処理由来の水素含有ガスを利用することによって水素の貯蔵装置が不要となるため、コストを抑えることが可能となる。
【0033】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記流量調整装置(20)は、前記水素ガスの供給量が減少した場合に前記水素含有ガスの供給量を増加させ、前記水素ガスの供給量が増加した場合に前記水素含有ガスの供給量を減少させるように前記水素含有ガスの供給量を調整する。
【0034】
上記(2)に記載の構成によれば、合成物の生産に必要な水素の安定的な供給をより確実にすることが可能となる。
【0035】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の構成において、前記流量調整装置(20)は、前記水素含有ガスの成分分析の分析結果に応じて前記水素含有ガスの供給量を制御する。
【0036】
上記(3)に記載の構成によれば、水素含有ガスに不純物が含まれる場合においても、その水素成分に着目し、合成プラント(10)に供給する水素の量をより安定的に制御することが可能となる。
【0037】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか一つに記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記第1供給ライン(11)に位置し、前記水素含有ガスに含まれる水素成分を精製するための精製装置(60)を備える。
【0038】
合成物の原料(水素と二酸化炭素)以外の不純物が含まれると合成プラント(10)における合成物の生産効率の低下及び原料圧縮機の動力の増加が発生する。この点、上記(4)に記載の構成によれば、精製装置(60)により水素含有ガスの水素成分を予め精製して合成プラント(10)に供給するため、合成物の生産効率を向上させることができる。
【0039】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記第1供給ライン(11)と前記第2供給ライン(12)とが合流する合流部(14)を備え、
前記精製装置(60)が前記水素成分を精製した後の前記水素含有ガスは、前記合流部(14)に供給される。
【0040】
上記(5)に記載の構成によれば、合流部(14)より下流側には高純度の水素ガスが流れるため、合成プラント(10)に高純度の水素ガスをより確実に供給することが可能となる。
【0041】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか一つに記載の構成において、前記合成物生産システム(1)は、
前記二酸化炭素を前記合成プラント(10)に供給するための二酸化炭素供給ライン(13)と、
前記合成プラント(10)に供給される前記水素ガスの供給量を検出するための少なくとも一つのセンサ(例えば、流量センサ(71)、(72))と、
前記二酸化炭素供給ライン(13)に設けられ、前記合成プラント(10)に供給する前記二酸化炭素の量を調整するように構成された流量調整弁(例えば、第2弁(52))と、
を備え、
前記流量調整装置(20)は、前記センサが検出した前記水素ガスの供給量に応じて前記流量調整弁(例えば、第2弁(52))の開度を制御する。
【0042】
二酸化炭素の供給量を多くすることはできるものの、二酸化炭素の回収にはコストがかかる場合がある。一方、二酸化炭素の供給量に対して水素含有ガスの供給量が少ない場合がある。このような場合、合成プラント(10)が生産する合成物の量は、水素ガスの供給量に依存するため、二酸化炭素の回収量に余剰が生じる。この点、上記(6)に記載の構成によれば、水素ガスの供給量に応じて合成物の生成に必要な量の二酸化炭素を合成プラント(10)に供給し、不要な二酸化炭素を回収しないようにすることができるため、コストを低減できる。
【0043】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の構成において、
前記少なくとも一つのセンサは、前記第1供給ライン(11)及び前記第2供給ライン(13)のそれぞれに設けられる流量センサ(71、72)を含み、
前記流量調整装置(20)は、前記水素含有ガスの成分分析の分析結果に応じて前記水素含有ガス及び前記二酸化炭素の供給量を制御する。
【0044】
上記(7)に記載の構成によれば、水素含有ガスに含まれる水素成分を考慮して、全体の水素ガス(水素ガスと水素含有ガスに含まれる水素の量)の供給量と二酸化炭素の供給量のバランスを調整することができる。その結果、無駄を低減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 合成物生産システム
10 合成プラント
11 第1供給ライン
12 第2供給ライン
13 二酸化炭素供給ライン
14 合流部
20 流量調整装置
30 原料処理プラント
40 水素生成装置
51 第1弁
52 第2弁
60 精製装置
71、72、73、74 流量センサ
80 分析装置