(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20240301BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240301BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
H01L23/30 D
H01L21/56 R
(21)【出願番号】P 2020027648
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴博
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-046094(JP,A)
【文献】特開2011-114311(JP,A)
【文献】特開平02-023640(JP,A)
【文献】特開平11-233738(JP,A)
【文献】特開2011-222869(JP,A)
【文献】特開2012-212703(JP,A)
【文献】特開平04-171970(JP,A)
【文献】特開平04-092459(JP,A)
【文献】特開平09-289269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力に対する感度が高い素子領域が素子面に形成された半導体素子と
、
前記応力に対する感度が高い素子領域の上面を覆うように設けられた低応力樹脂膜と、
前記半導体素子と前記低応力樹脂
膜を被覆する封止樹脂と、
を備え、
前記低応力樹脂膜は、前記封止樹脂よりも小さいヤング率を有し
、前記半導体素子と接する
裏面が平面であって前記裏面の反対面の主面に最外の端部が最も厚い第1凹状曲面を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
平面視において、前記低応力樹脂膜の周縁部が多角形を成し、そのすべての内角が鈍角であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
平面視において、前記低応力樹脂膜の周縁部が円もしくは楕円であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子の素子面と前記封止樹脂の上表面が平行であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記封止樹脂の上表面に第2凹状曲面を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体素子
の素子面に形成された応力に対する感度が高い素子領域の上面を覆うように、前記半導体素子と接する裏面が平面であって前記裏面の反対面の主面に最外の端部が最も厚い第1凹状曲面
を有する低応力樹脂膜を形成する工程と、
前記半導体素子と前記低応力樹脂
膜を被覆する封止樹脂を形成する工程と、
からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体素子の素子面に前記低応力樹脂膜を形成する工程では、フィルム状低応力樹脂膜を貼り付ける方法を用いることを特徴とする請求項6記載の半導体装置
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型軽量化及び高機能化のニーズに伴い、電子機器に半導体装置を高密度に実装することが可能な表面実装型パッケージが多用されている。アナログICなどでは、近年、さらなる電気特性の高精度化が要求されている。しかし、パッケージング工程などの実装工程において、半導体素子に応力がかかることで電気特性の変動が生じて目標とする電気特性を得られないことがある。
モールド樹脂と半導体素子の間にモールド樹脂よりもヤング率の小さい低応力樹脂膜を設けることで、半導体素子にかかる応力を低減することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気特性の変動に対する要求がさらに厳しくなっているという環境の中、半導体素子にかかる応力をさらに低減することが求められている。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、半導体素子への応力を低減することができる半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を用いた。
半導体素子と、
前記半導体素子が載置されたダイパッドと、
前記ダイパッドと離間して配置されたリードと、
前記半導体素子の素子面に設けられた低応力樹脂膜と、
前記半導体素子と前記低応力樹脂膜と前記ダイパッドと前記リードを被覆する封止樹脂と、を備え、
前記低応力樹脂膜は、前記封止樹脂よりも小さいヤング率を有し、前記低応力樹脂膜の前記半導体素子と接する面の反対面に第1凹状曲面を有することを特徴とする半導体装置とする。
また、半導体素子と、
前記半導体素子を載置されたダイパッドと、
前記ダイパッドと離間して配置されたリードと、
前記半導体素子の素子面に設けられた低応力樹脂膜と、
前記半導体素子と前記低応力樹脂膜と前記ダイパッドと前記リードを被覆する封止樹脂と、を備える半導体装置の製造方法であって、
前記ダイパッド上に前記半導体素子が搭載され、前記ダイパッドと離間して配置したリードを用意する工程と、
前記半導体素子の素子面上に、第1裏面が平面であって前記第1裏面と反対面である第1主面が第1凹状曲面である低応力樹脂膜を形成する工程と、
前記半導体素子と前記低応力樹脂膜と前記ダイパッドと前記リードを被覆する封止樹脂を形成する工程と、からなることを特徴とする半導体装置の製造方法を用いる。
【発明の効果】
【0006】
上記手段を用いることで、半導体素子への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図2】本発明の第2実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図3】本発明の第3実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図4】本発明の第4実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図5】本発明の第5実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図6】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
【
図7】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
【
図8】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
【
図9】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置と比較例を示す構造図である。
【
図10】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の半導体装置の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図1(a)の断面図に示すように、ダイパッド5上に半導体素子1が搭載されている。ダイパッド5の周囲にはダイパッド5と離間してリード4が設けられている。そして、半導体素子1の上面に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4の上面とが接続部材であるワイヤ3を介して電気的に接続されている。ワイヤ3の材料としては金(Au)や銅(Cu)が用いられる。なお、半導体素子1とリード4との電気的接続はワイヤ法に限られることなく、バンプを介したフリップチップボンディング法を用いても構わない。
【0009】
半導体素子1とダイパッド5とワイヤ3の周囲は封止樹脂2によって被覆されるが、ダイパッド5の半導体素子1搭載面の反対側の裏面は封止樹脂2から露出している。ダイパッド5の裏面はメッキ層12によって覆われて放熱性に優れる形状である。リード4の底面と外側面も封止樹脂2から露出し、リード4の底面の露出面もメッキ層12で覆われる構成である。リード4の外側面は封止樹脂の側面から突出せず、ノンリードタイプの半導体装置21となっている。なお、メッキ層12は、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)のいずれかの金属もしくは複数の金属の合金からなり、電解メッキ法または無電解メッキ法によって形成される。
【0010】
半導体装置21を構成する半導体素子1の素子面には応力に対する感度が高い素子領域1aがあり、それを覆うように低応力樹脂膜51が設けられている。低応力樹脂膜51の裏面は半導体素子1の素子面と接し、その厚さ方向において裏面の反対面である主面は凹状球面16を成している。そして、ダイパッド5と半導体素子1と低応力樹脂膜51とリード4は封止樹脂2によって封止されている。封止樹脂2の上表面は半導体素子1の素子面に対し平行である。このような形状とすることで、封止樹脂2からの応力は凹状球面16で分散され、応力に対する感度が高い素子領域1aにかかる応力は小さなものとなる。ここで、低応力樹脂膜51のヤング率は封止樹脂2のヤング率よりも小さいものである。なお、図では比較的浅い凹状球面を図示しているが、球面の曲率をより小さくして深い凹状球面とすることも可能である。また、凹状球面16は複数の曲率を有する凹状曲面であっても同等の効果を有する。
【0011】
図示するように、低応力樹脂膜51の主面の最も高い部分の高さがワイヤ3のループ高さと同等以下であることが望ましい。本例では低応力樹脂膜51の主面に凹状球面が形成されているため、最外の端部が最も高い部分となり、この部分をループ高さと同等としている。このような形状とすることで、封止樹脂2の上表面から低応力樹脂膜51の主面端部までの厚さT1をワイヤ3上の封止樹脂2の厚さと同等にしている。これにより、低応力樹脂膜51を設けることでの信頼性低下を回避している。
【0012】
図1(b)は半導体装置の上面から透視した平面図である。矩形形状の封止樹脂2の中央領域にダイパッド5が配置されている。封止樹脂2の一方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置され、一方の辺と対向する他方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置されている。そして、互いの辺(側面)に沿って配置されたリード4はダイパッド5を挟んで向かい合っている。ダイパッド5上には半導体素子1が搭載され、半導体素子1の外周に配置された電極パッド6とリード4がワイヤ3を介して電気的に接続されている。半導体素子1には応力に対する感度が高い素子領域1aとこれに対し相対的に応力に対する感度が低い素子領域1bがある。
【0013】
高温の成形用金型に注入された溶融状の樹脂が硬化する時、及び常温に戻る時の樹脂の収縮によって、シリコンからなる半導体素子1に圧縮、せん断等の応力が加わると、シリコン単結晶にピエゾ効果が生じ、半導体素子の表面に形成された半導体集積回路素子の電気特性が変動することがあるが、該半導体集積回路素子の中でもピエゾ効果の影響で電気特性が変動しやすい素子が応力に対する感度が高い素子に相当する。例えば、カレントミラー回路は、対を形成するPチャネルMOSトランジスタ間で同一な電流が流れることを利用して、2つの電流経路の電流が等しくなるように働くことを利用した回路であるが、この回路に応力がかかると2つの電流経路の電流がずれてしまう。このような対を成すトランジスタはその特性が大きく違わないことが必要であり、上述の応力に対する感度が高い素子領域1aに形成されることが望ましい。
【0014】
低応力樹脂膜51は応力に対する感度が高い素子領域1aを覆うように形成され、その周縁部の形状は円形である。半導体素子1の外周領域には電極パッド6が配置されているが、低応力樹脂膜51は電極パッド6が配置されている領域と重畳しないことが望ましい。このような形状とすることで、ワイヤ3を被覆する樹脂が封止樹脂2のみとなり、ワイヤ3の断線を回避できる。
【0015】
以上説明したように、応力に対する感度が高い素子領域1aの上に低応力樹脂膜51を設けることで、封止樹脂2からの応力は凹状球面16で分散され、応力に対する感度が高い素子領域1aにかかる応力は小さなものとなる。その結果、この素子領域1aに形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことを低減できる。このように、上記構造とすることで半導体素子1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置21を実現できる。
以上では、封止樹脂2の2つの側面のそれぞれにリード4を設けたDFN(Dual Flat Non-leaded)パッケージの例で説明したが、本技術は封止樹脂2の4つの側面のそれぞれにリード4を設けたQFN(Quad Flat Non-leaded)パッケージにも適用可能である。また、本技術は、ダイパッドを封止樹脂から露出した半導体装置に限らず、フルモールドタイプの半導体装置にも適用可能である。
【0016】
図2は、本発明の第2実施形態にかかる半導体装置の構造図であって、低応力樹脂膜の各種形状を示した平面図である。
図2(a)に示す半導体装置22では、低応力樹脂膜52の周縁部が楕円である例を示し、この楕円に囲まれた領域の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。
図2(b)に示す半導体装置23では、低応力樹脂膜53の周縁部が多角形で、すべての内角が鈍角である例を示し、この多角形の周縁部の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。
図2(c)に示す半導体装置24では、低応力樹脂膜54の周縁部が角を丸くした四角形である例を示し、この角を丸くした四角形に囲まれた領域の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。以上のように、いずれの形状でも低応力樹脂膜52,53,54の周縁部の一部に鋭角な領域を有することのないようにしている。このような形状とすることで、低応力樹脂の周縁部に接する封止樹脂2自身にクラックが生じることが無い構造とすることができる。
【0017】
図3は、本発明の第3実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図1に示した半導体装置21との違いは、低応力樹脂膜55の主面の外端に位置する主面端部の鋭角な部分を除去している点である。
図3(a)に示す半導体装置25では、主面端部を平面とし、その平面領域の内側に凹状球面16を設ける形状とした。また、
図3(b)に示す半導体装置26では、低応力樹脂膜56の上端部をラウンド形状とした。このような形状とすることで、低応力樹脂膜55、56から封止樹脂2に対し鋭角に突出する部分がなくなり、封止樹脂2自身がクラックに対し強い構造とすることができる。主面端部の形状が上記のように変わっても、応力に対する感度が高い素子領域1aの上には凹状球面16を有する低応力樹脂膜55、56を設けられることで、封止樹脂2からの応力は凹状球面16で斜め下方に分散され、応力に対する感度が高い素子領域1aにかかる応力は小さなものとなる。その結果、この素子領域1aに形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことを回避できるという点は第1実施形態の半導体装置21と変わらない。
【0018】
図4は、本発明の第4実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図1に示した第1実施形態の半導体装置21との違いは、封止樹脂2の上表面の断面形状が相違するものである。第1実施形態と異なるリード構造のノンリードタイプの半導体装置を用いて以下説明する。
ダイパッド5上に半導体素子1が搭載され、ダイパッド5の周囲にはダイパッド5と離間してリード4が設けられている。半導体素子1上の電極パッド(図示せず)とリード4がワイヤ3を介して電気的に接続されている。リード4はインナーリード部4aとアウターリード部4bからなり、インナーリード部4aがアウターリード部4bよりも高くなるように折り曲げられている。そして、ダイパッド5上の半導体素子1、ワイヤ3、リード4は封止樹脂2によって封止されている。ダイパッド5の半導体素子1搭載面と反対側である裏面は封止樹脂2から露出し、その露出面はメッキ層12にて被覆されており、放熱性にすぐれている。ダイパッド5の上端部にはダイパッド5の厚みを薄くした肉薄部5aが設けられ、肉薄部5aの裏面には封止樹脂2が回り込んでダイパッド5が封止樹脂から抜けにくい構造となっている。
リード4のインナーリード部4aは封止樹脂2によって封止されているが、封止樹脂2の底面と同一平面となるダイパッド5の裏面およびアウターリード部4bの底面は封止樹脂2から露出し、メッキ層12で覆われている。
【0019】
第1実施形態では封止樹脂2に設けられた封止樹脂2の上表面が半導体素子1の素子面に対し平行であったのに対し、本実施形態では封止樹脂2の上表面の一部を凹状球面19としている。封止樹脂2に設けられた凹状球面19は低応力樹脂膜57に設けられた凹状球面16の上方に位置しており、平面視的に凹状球面19は凹状球面16と重畳して同等以上の大きさを有している。封止樹脂2の凹状球面19と低応力樹脂膜57の凹状球面16の曲率が同じ場合、低応力樹脂膜57の上に設けられる封止樹脂2の厚さは一様であり、封止樹脂2から低応力樹脂膜57の主面にかかる応力はほぼ均等となる。そして、この応力を低応力樹脂膜57の凹状球面16を介して分散され、応力に対する感度が高い素子領域1aにかかる応力は、封止樹脂2の上面が平面である場合に比べより小さなものとなる。その結果、この素子領域1aに形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことを低減できる。このように、上記構造とすることで半導体素子1への封止樹脂2からの応力を低減できる半導体装置27を実現できる。
本実施形態ではリード4をアップセットしたノンリードタイプの半導体装置にて説明したが、封止樹脂2に凹状球面19を設けることは
図1に図示した他のノンリードタイプの半導体装置にも適用可能である。
なお、
図4では封止樹脂2の凹状球面19と低応力樹脂膜57の凹状球面16の曲率を同じとしているが、この例に限らず、互いに異なる曲率としても構わない。また、凹状球面19は複数の曲率を有する凹状曲面であっても良い。
【0020】
図5は、本発明の第5実施形態にかかる半導体装置の構造図である。第1実施形態との違いはワイヤボンディング法に代えてフリップチップボンディング法を用いた点である。
第1実施形態では、半導体素子1の素子面がリード4と反対方向に向く構造であったのに対し、本実施形態では、
図5(a)の断面図に示すように、金属材料からなる放熱板13の下面に固着した半導体素子1の素子面がリード4に向く構造としている。半導体素子1の素子面にはバンプ電極11が設けられ、このバンプ電極11を介して半導体素子1の素子面とリード4が向い合って電気的に接続している。バンプ電極11は錫(Sn)や金(Au)などの金属材料からなる。
【0021】
放熱板13とリード4は半導体素子1を上下に挟む構造で、半導体素子1と放熱板13とリード4は封止樹脂2によって被覆される。ただし、放熱板13の裏面、すなわち、本図における放熱板13の上面に相当する面は封止樹脂2から露出し、メッキ層12で覆われている。また、リード4の底面と外側面も封止樹脂2から露出し、リード4の底面の露出面もメッキ層12で覆われる構成である。リード4の外側面は封止樹脂の側面から突出しないノンリードタイプの半導体装置28となっている。
半導体素子1の素子面の一部には、応力に対する感度が高い素子領域1aがあり、その下には低応力樹脂膜58が設けられている。低応力樹脂膜58は応力に対する感度が高い素子領域1aの下に選択的に設けられ、半導体素子1の全領域と重なるように設けられていない。
【0022】
図5(b)は半導体装置28の底面側からの平面図である。メッキ層12は図示していない。矩形形状の封止樹脂2の中央領域に銅材からなる放熱板13が配置されている。封止樹脂2の一方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置され、一方の辺と対向する他方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置されている。そして、互いの辺(側面)に沿って配置されたリード4は放熱板13を中心にして向かい合っている。放熱板13には半導体素子1が固着され、半導体素子1の外周に配置されたバンプ電極11とリード4が重なって電気的に接続されている。半導体素子1には応力に対する感度が高い素子領域1aとこれに対し相対的に応力に対する感度が低い素子領域1bがある。例えば、カレントミラー回路は、対を形成するPチャネルMOSトランジスタ間で同一な電流が流れることを利用して、2つの電流経路の電流が等しくなるように働くことを利用した回路であるが、この回路に応力がかかると2つの電流経路の電流がずれてしまう。このような対を成すトランジスタはその特性が大きく違わないことが必要であり、上述の応力に対する感度が高い素子領域1aに形成されることが望ましい。
【0023】
低応力樹脂膜58は応力に対する感度が高い素子領域1aを覆うように形成され、その周縁部の形状は円形である。そして、この円形に囲まれた領域の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。半導体素子1の外周領域にはバンプ電極11が配置されているが、リード4とバンプ電極11が重畳していることから低応力樹脂膜58はバンプ電極11が配置されている領域と重畳しない。
以上のように、応力に対する感度が高い素子領域1aの下に主面に凹状球面16を有する低応力樹脂膜58を設けることで、この素子領域1aにかかる応力が低減することができる。その結果、この素子領域1aに形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことを低減できる。このように、上記構造とすることで半導体素子1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置28を実現できる。
以上では、封止樹脂2の2つの側面のそれぞれにリード4を設けたDFN(Dual Flat Non-leaded)パッケージの例で説明したが、本技術は封止樹脂2の4つの側面のそれぞれにリード4を設けたQFN(Quad Flat Non-leaded)パッケージにも適用可能である。また、低応力樹脂膜には
図1乃至
図3で説明した平面形状や断面形状を適用することも可能である。
【0024】
図6は、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。まず、
図6(a)に示すように、ダイパッド5とダイパッド5の周囲に離間して複数のリード4を配置したリードフレーム7を用意する。リードフレーム7は矩形状のダイパッド5およびダイパッド5から離間して配置された複数のリード4を1つのユニット7aとして、そのユニット7aを複数有する形状である。破線で囲むように図示するユニット7aはフレーム枠7bに囲まれており、リード4はフレーム枠7bに接続され、ダイパッド5は吊りリード7cを介してフレーム枠7bに接続されている。なお、リードフレーム7は主に銅材からなるものである。
図6(b)は
図6(a)に示されるX-X線に沿った断面図である。この段階で隣接するユニット7aどうしのリード4はフレーム枠7bを介して繋がっている。
次いで、
図6(c)に示すように、ダイパッド5上に半導体素子1を搭載し、半導体素子1上に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4とをワイヤ3を介して電気的に接続する。
【0025】
図7は、
図6に続く、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
図7(a)に示すように、半導体素子1の素子面に低応力樹脂膜51を熱圧着にて貼り付ける。低応力樹脂膜51はあらかじめフィルム状に成型した低応力樹脂膜51であって、平面である裏面と凹状球面である主面を備えている。ちなみに、低応力樹脂膜51のヤング率は0.1GPaであって、封止樹脂2のヤング率20GPaに比べ極めて低い値である。
【0026】
次に、
図7(b)に示すように、半導体素子1を搭載したリードフレーム7を封止するための金型8を用意する。金型8は上金型8aと下金型8bとから構成され、それらの間にキャビティ9を有する。そして、キャビティ9に封止樹脂2を流入させ、半導体素子1とダイパッド5とワイヤ3とリード4を封止樹脂2にて封止する。
【0027】
図7(c)に示すように、封止体15を金型8から取り出し、ダイパッド5の裏面およびリード4の底面にメッキ層12を形成する。その後、回転ブレード14を用いてフレーム枠7bに沿って封止体15を切断する。このとき、回転ブレード14の幅をフレーム枠7bの幅よりも大きくすることでフレーム枠7bを完全に除去することができる。なお、回転ブレード14による切断方向は封止体15底面から上方向、上面から下方向のいずれでも構わない。
【0028】
切断後、
図8に示すような個々に分離された半導体装置21が得られる。
図8(a)は断面図、
図8(b)は平面図であり、複数の半導体装置21の集合体として図示している。なお、上記では金型の一つのキャビティから複数の半導体装置を得る方法について述べたが、一つのキャビティから一つ半導体装置を得るという封止方法を採用することも可能である。
【0029】
次に、
図9および
図10を用いて、本実施形態の効果について説明する。
図9は、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置と比較例を示す構造図であって、
図9(a)には、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置A、
図9(b)には比較例である半導体装置B、
図9(c)には比較例である半導体装置Cを図示している。半導体装置Aは半導体素子1の素子面上に主面が凹状球面16である低応力樹脂膜10aを載せ、半導体素子1上に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4とをワイヤ(図示せず)を介して電気的に接続している。そして、半導体素子1と低応力樹脂膜10aとダイパッド5とリード4を封止樹脂2で被覆した構成である。なお、本図では半導体素子1上に設けられた電極パッドとリード4を電気的に接続するワイヤは図示していない。半導体素子1の素子面と封止樹脂2の上表面の間の封止樹脂2の厚さT2は0.17mm、応力に対する感度が高い素子領域1a上の低応力樹脂膜10aの厚さは0.1mm、低応力樹脂膜10aの主面端部における厚さは0.135mm、低応力樹脂膜10aの幅L1は0.9mm、凹状球面の曲率半径は2.9mmである。また、低応力樹脂膜51のヤング率は0.1GPa、封止樹脂2のヤング率は20GPaである。
【0030】
半導体装置Bは半導体素子1の素子面上に主面が平面17である低応力樹脂膜10bを載せ、半導体素子1上に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4とをワイヤ(図示せず)を介して電気的に接続している。そして、半導体素子1と低応力樹脂膜10bとダイパッド5とリード4を封止樹脂2で被覆した構成である。半導体素子1の素子面と封止樹脂2の上表面の間の封止樹脂2の厚さT2は0.17mm、応力に対する感度が高い素子領域1a上の低応力樹脂膜10bの厚さは0.1mm、低応力樹脂膜10bの主面端部における厚さは0.135mm、低応力樹脂膜10bの幅L1は0.9mmである。また、低応力樹脂膜51のヤング率は0.1GPa、封止樹脂2のヤング率は20GPaである。
【0031】
半導体装置Cは半導体素子1の素子面上に主面が凸状球面18である低応力樹脂膜10cを載せ、半導体素子1上に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4とをワイヤ(図示せず)を介して電気的に接続している。そして、半導体素子1と低応力樹脂膜10cとダイパッド5とリード4を封止樹脂2で被覆した構成である。半導体素子1の素子面と封止樹脂2の上表面の間の封止樹脂2の厚さT2は0.17mm、応力に対する感度が高い素子領域1a上の低応力樹脂膜10cの厚さは0.1mm、低応力樹脂膜10aの幅L1は0.9mm、凸状球面18の曲率半径は1.6mmである。また、低応力樹脂膜51のヤング率は0.1GPa、封止樹脂2のヤング率は20GPaである。
以上のように、半導体装置A、B、Cは低応力樹脂膜10a。10b、10cの主面の形状が異なるだけで他のディメンジョンは同一である。
【0032】
上記の半導体装置A、B、Cのそれぞれについて、応力に対する感度が高い素子領域1aにかかる応力を調べた結果を
図10に示す。半導体装置Aでは27.5MPa、半導体装置Bでは39.8MPa、半導体装置Cでは51.4MPaという応力が応力に対する感度が高い素子領域1aにかかっている。このように、低応力樹脂膜の主面の形状によって半導体素子1に対する応力のかかり方が明らかに異なり、主面が凹状球面16では平面17よりも小さく、主面が凸状球面18では平面17よりも大きい応力がかかることがわかる。
【0033】
半導体素子1上に低応力樹脂膜を形成する場合、一般に液状の低応力樹脂を滴下する方法が用いられ、その主面形状は半導体装置Cのように凸状球面18となることが多い。このような形状であると封止樹脂2からの応力が凸状球面18を介して半導体素子1内、特に、その中央付近に配置された応力に対する感度が高い素子領域1aに集中することになり、主面が平面17であるときよりも大きい応力がかかることになる。他方、主面が凹状球面16の低応力樹脂膜10aを有する半導体装置Aでは、封止樹脂2からの応力が凹状球面16で分散され、主面が平面17であるときよりも小さい応力がかかると考えられる。
以上説明したように、低応力樹脂膜の主面を凹状球面とすることで半導体素子1にかかる応力を大幅に低減でき、半導体素子を封止しても電気特性の変動が小さい半導体装置とすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 半導体素子
1a 応力に対する感度が高い素子領域
1b 応力に対する感度が低い素子領域
2 封止樹脂
3 ワイヤ
4 リード
4a インナーリード部
4b アウターリード部
5 ダイパッド
5a 肉薄部
6 電極パッド
7 リードフレーム
7a ユニット
7b フレーム枠
7c 吊りリード
8 金型
8a 上金型
8b 下金型
9 キャビティ
10a、10b、10c 低応力樹脂膜
11 バンプ電極
12 メッキ層
13 放熱板
14 回転ブレード
15 封止体
16 凹状球面
17 平面
18 凸状球面
19 凹状球面
21、22、23、24,25、26、27、28 半導体装置
51、52、53、54、55、56、57、58 低応力樹脂膜
A、B、C 半導体装置
T1、T2、T3 厚さ
L1 長さ