(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】エネルギーシステム及びエネルギーシステムの運転方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240301BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240301BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240301BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
H02J7/00 303E
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J3/38 170
H02J7/00 302C
(21)【出願番号】P 2020060042
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】南 和徹
(72)【発明者】
【氏名】上野山 覚
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-140206(JP,A)
【文献】特開2003-168464(JP,A)
【文献】特開平09-147892(JP,A)
【文献】特開2011-083089(JP,A)
【文献】特開2015-226431(JP,A)
【文献】特開2016-144299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/04-8/0668
H01M10/42-10/48
H02J3/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池が発電した発電電力を利用可能な負荷と、
前記燃料電池が発電した発電電力を充電可能な複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池への充電又は放電を制御する蓄電池制御部とを備え、
前記複数の蓄電池は、
前記燃料電池が発電した発電電力の充電及び前記負荷に電力を供給するための放電が可能な充放電用の少なくとも1つの第1蓄電池と、
前記燃料電池の起動に必要な起動電力の充電及び前記燃料電池に起動電力を供給するための放電が可能な起動電力供給用の少なくとも1つの第2蓄電池とを含
み、
前記複数の蓄電池の充放電可能容量を検出する容量検出部を備え、
前記蓄電池制御部は、前記容量検出部が検出した前記第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点で、前記複数の蓄電池の中の当該第1蓄電池以外の蓄電池のうち充放電可能容量の上限値が前記所定の閾値以上である蓄電池を新たな第1蓄電池に設定するように制御する、エネルギーシステム。
【請求項2】
前記蓄電池制御部は、前記第2蓄電池として用いられていた元の第2蓄電池が前記判定時点で新たな第1蓄電池に設定された場合、前記複数の蓄電池のうち、前記判定時点において前記充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満となった第1蓄電池として用いられていた元の第1蓄電池及び前記元の第2蓄電池以外のいずれかの蓄電池を新たな第2蓄電池に設定するように制御する、請求項
1に記載のエネルギーシステム。
【請求項3】
燃料電池と、
前記燃料電池が発電した発電電力を利用可能な負荷と、
前記燃料電池が発電した発電電力を充電可能な複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池への充電又は放電を制御する蓄電池制御部とを備え、
前記複数の蓄電池は、
前記燃料電池が発電した発電電力の充電及び前記負荷に電力を供給するための放電が可能な充放電用の少なくとも1つの第1蓄電池と、
前記燃料電池の起動に必要な起動電力の充電及び前記燃料電池に起動電力を供給するための放電が可能な起動電力供給用の少なくとも1つの第2蓄電池とを含み、
前記第1蓄電池の充放電可能容量を検出する容量検出部を備え、
前記蓄電池制御部は、前記容量検出部が検出した前記第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点で、前記判定時点において前記第2蓄電池として用いられていた元の第2蓄電池を新たな第1蓄電池に設定し、前記判定時点において前記第1蓄電池として用いられていた元の第1蓄電池を新たな第2蓄電池に設定するように制御する
、エネルギーシステム。
【請求項4】
前記所定の閾値は、前記燃料電池の起動に必要な起動電力より大きい、請求項
1~
3のいずれか1項に記載のエネルギーシステム。
【請求項5】
前記蓄電池制御部は、前記第1蓄電池を所定のタイミングで完全に放電するようにリフレッシュを行う、請求項1~
4のいずれか1項に記載のエネルギーシステム。
【請求項6】
前記第1蓄電池はメモリ効果による電圧低下が現れる蓄電池である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のエネルギーシステム。
【請求項7】
燃料電池と、前記燃料電池が発電した発電電力を利用可能な負荷と、前記燃料電池が発電した発電電力を充電可能な複数の蓄電池と、前記複数の蓄電池への充電又は放電を制御する蓄電池制御部とを備え、
前記複数の蓄電池は、
前記燃料電池が発電した発電電力の充電及び前記負荷に電力を供給するための放電が可能な充放電用の少なくとも1つの第1蓄電池と、
前記燃料電池の起動に必要な起動電力の充電及び前記燃料電池に起動電力を供給するための放電が可能な起動電力供給用の少なくとも1つの第2蓄電池とを含むエネルギーシステムの運転方法であって、
前記蓄電池制御部は、前記第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点で、前記複数の蓄電池の中の当該第1蓄電池以外の蓄電池のうち充放電可能容量の上限値が前記所定の閾値以上である蓄電池を新たな第1蓄電池に設定するように制御する、エネルギーシステムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーシステム及びエネルギーシステムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、系統電源が停電となった場合に、燃料電池システムを起動させるのに必要な電力を供給するための自立運転支援装置を有するシステムが開示されている。自立運転支援装置は、蓄電池を有しており、蓄電池は燃料電池システムを起動させるのに必要な電力を充電している。また、蓄電池は負荷変動に応じて充電電力を放電する。これにより、系統電源が停電した場合でも、蓄電池によって燃料電池システムを起動できるとともに、負荷変動に対応できるシステムを実現できる。
【0003】
蓄電池は一般に繰り返し満充電まで充電すると劣化する。特許文献2では、満充電よりも低い上限電気量まで充電を行うように制御することで、電池の劣化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-22650号公報
【文献】特許第5158217号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の蓄電池は、外部から供給された電力を充電するとともに、負荷変動に応じて充電した電力を放電する。一般に、蓄電池は、充放電を繰り返すことによって、電極表面への電気を通さない物質の結晶化、電極破損等により充電が十分にできなくなり劣化する。そのため特許文献1の蓄電池は充放電により劣化する。
【0006】
特許文献2の蓄電池は満充電までは充電しないものの、繰り返し充放電することから前述と同様に充放電による蓄電池の劣化は避けられない。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、繰り返しの充放電による蓄電池の劣化に対する対策を考慮しつつ、燃料電池システムを起動させるのに必要な電力を充電できるエネルギーシステム及びエネルギーシステムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエネルギーシステムの特徴構成は、
燃料電池と、
前記燃料電池が発電した発電電力を利用可能な負荷と、
前記燃料電池が発電した発電電力を充電可能な複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池への充電又は放電を制御する蓄電池制御部とを備え、
前記複数の蓄電池は、
前記燃料電池が発電した発電電力の充電及び前記負荷に電力を供給するための放電が可能な充放電用の少なくとも1つの第1蓄電池と、
前記燃料電池の起動に必要な起動電力の充電及び前記燃料電池に起動電力を供給するための放電が可能な起動電力供給用の少なくとも1つの第2蓄電池とを含み、
前記複数の蓄電池の充放電可能容量を検出する容量検出部を備え、
前記蓄電池制御部は、前記容量検出部が検出した前記第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点で、前記複数の蓄電池の中の当該第1蓄電池以外の蓄電池のうち充放電可能容量の上限値が前記所定の閾値以上である蓄電池を新たな第1蓄電池に設定するように制御する点にある。
【0009】
上記特徴構成のエネルギーシステムによれば、充放電用の第1蓄電池と、燃料電池の起動に必要な起動電力を充電している起動電力供給用の第2蓄電池とが別々に設けられている。第2蓄電池は起動電力供給用のみに用いられるため、充放電が繰り返されることによる劣化を抑制できる。
第1蓄電池は充放電が繰り返される蓄電池であり、充放電を繰り返すことによって、電極表面への電気を通さない物質の結晶化、電極の破損等により充電が十分にできなくなり劣化する可能性がある。劣化により第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が低下するが、判定時点において第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満となった場合には、上記特徴構成のように、当該第1蓄電池以外の蓄電池のうち、充放電可能容量の上限値が所定の閾値以上である蓄電池を新たな第1蓄電池とする。これにより、充放電可能容量の上限値が所定の閾値以上であり比較的劣化の少ない蓄電池を、劣化した充放電用の元の第1蓄電池から、新たな充放電用の第1蓄電池に設定できる。
【0012】
本発明に係るエネルギーシステムの更なる特徴構成は、
前記蓄電池制御部は、前記第2蓄電池として用いられていた元の第2蓄電池が前記判定時点で新たな第1蓄電池に設定された場合、前記複数の蓄電池のうち、前記判定時点において前記充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満となった第1蓄電池として用いられていた元の第1蓄電池及び前記元の第2蓄電池以外のいずれかの蓄電池を新たな第2蓄電池に設定するように制御する点にある。
【0013】
第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満となった場合、充放電可能容量の上限値が所定の閾値以上である蓄電池が選択されて新たな第1蓄電池に設定される。ここで、起動電力供給用として用いられていた元の第2蓄電池が新たな第1蓄電池になった場合、この元の第2蓄電池の代用が必要となる。そこで、本特徴構成によれば、元の第2蓄電池の代用として、判定時点において充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満となった元の第1蓄電池及び起動電力供給用として用いられていた元の第2蓄電池以外の蓄電池が複数の蓄電池の中から選択される。これにより、元の第2蓄電池を新たな第1蓄電池に設定しつつ、元の第2蓄電池の代用としての起動電力供給用の新たな第2蓄電池も用意することができる。
【0014】
本発明に係るエネルギーシステムの特徴構成は、
燃料電池と、
前記燃料電池が発電した発電電力を利用可能な負荷と、
前記燃料電池が発電した発電電力を充電可能な複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池への充電又は放電を制御する蓄電池制御部とを備え、
前記複数の蓄電池は、
前記燃料電池が発電した発電電力の充電及び前記負荷に電力を供給するための放電が可能な充放電用の少なくとも1つの第1蓄電池と、
前記燃料電池の起動に必要な起動電力の充電及び前記燃料電池に起動電力を供給するための放電が可能な起動電力供給用の少なくとも1つの第2蓄電池とを含み、
前記第1蓄電池の充放電可能容量を検出する容量検出部を備え、
前記蓄電池制御部は、前記容量検出部が検出した前記第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点で、前記判定時点において前記第2蓄電池として用いられていた元の第2蓄電池を新たな第1蓄電池に設定し、前記判定時点において前記第1蓄電池として用いられていた元の第1蓄電池を新たな第2蓄電池に設定するように制御する点にある。
【0015】
上記特徴構成のエネルギーシステムによれば、充放電用の第1蓄電池と、燃料電池の起動に必要な起動電力を充電している起動電力供給用の第2蓄電池とが別々に設けられている。第2蓄電池は起動電力供給用のみに用いられるため、充放電が繰り返されることによる劣化を抑制できる。
第1蓄電池は充放電が繰り返される蓄電池であり、劣化により充放電可能容量の上限値が低下する。第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満となった場合には、上記特徴構成のように元の第2蓄電池を充放電用の新たな第1蓄電池とし、元の第1蓄電池を起動電力供給用の新たな第2蓄電池とする。つまり、元の第1蓄電池と元の第2蓄電池とを入れ換える。
これにより、充放電せずに用いられることで劣化が抑制されていた元の第2蓄電池を充放電用の新たな第1蓄電池として利用することで、大きな不足電力の放電及び大きな余剰電力の充電に対応することができる。また、充放電により劣化した元の第1蓄電池を起動電力供給用の新たな第2蓄電池として充放電せずに用いることで、劣化した元の第1蓄電池の更なる劣化を抑制できる。
【0016】
本発明に係るエネルギーシステムの更なる特徴構成は、
前記所定の閾値は、前記燃料電池の起動に必要な起動電力より大きい点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、「所定の閾値>起動電力」である。そして、第1蓄電池の劣化後の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定された判定時点においては、「所定の閾値>第1蓄電池の劣化後の充放電可能容量の上限値>起動電力」の関係が未だ満たされていると考えられる。つまり、当該判定時点においては、劣化により第1蓄電池の充放電可能容量の上限値は低下しているものの、第1蓄電池は、燃料電池の起動に必要な起動電力を充電することは可能な状態であると考えられる。
よって、当該判定時点において劣化した元の第1蓄電池を起動電力供給用の新たな第2蓄電池とすることが可能である。この場合には、劣化した元の第1蓄電池に起動電力を充電させて充放電せずに用いることで、劣化した第1蓄電池の更なる劣化を抑制できる。
【0018】
本発明に係るエネルギーシステムの更なる特徴構成は、
前記蓄電池制御部は、前記第1蓄電池を所定のタイミングで完全に放電するようにリフレッシュを行う点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、第1蓄電池及び新たな第1蓄電池を含む充放電用の第1蓄電池は所定のタイミングでリフレッシュされる。リフレッシュによってメモリ効果による電圧低下を解消できるので好ましい。
【0020】
本発明に係るエネルギーシステムの更なる特徴構成は、
前記第1蓄電池はメモリ効果による電圧低下が現れる蓄電池である点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、充放電用の第1蓄電池はメモリ効果による電圧低下が現れる蓄電池であるが、リフレッシュすることによってメモリ効果を解消できる。
【0022】
本発明に係るエネルギーシステムの運転方法は、
燃料電池と、前記燃料電池が発電した発電電力を利用可能な負荷と、前記燃料電池が発電した発電電力を充電可能な複数の蓄電池と、前記複数の蓄電池への充電又は放電を制御する蓄電池制御部とを備え、
前記複数の蓄電池は、
前記燃料電池が発電した発電電力の充電及び前記負荷に電力を供給するための放電が可能な充放電用の少なくとも1つの第1蓄電池と、
前記燃料電池の起動に必要な起動電力の充電及び前記燃料電池に起動電力を供給するための放電が可能な起動電力供給用の少なくとも1つの第2蓄電池とを含むエネルギーシステムの運転方法であって、その特徴構成は、
前記蓄電池制御部は、前記第1蓄電池の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点で、前記複数の蓄電池の中の当該第1蓄電池以外の蓄電池のうち充放電可能容量の上限値が前記所定の閾値以上である蓄電池を新たな第1蓄電池に設定するように制御する点にある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】第1タイプの蓄電池において、充放電用蓄電池の充放電の様子と、起動電力を充電しているBOS用蓄電池の様子を示す模式図である。
【
図3】第1タイプの蓄電池において、劣化後の充放電用蓄電池を示す模式図である。
【
図4】第1タイプの蓄電池において、元の充放電用蓄電池を新たなBOS用蓄電池とし、元のBOS用蓄電池を新たな充放電用蓄電池とした場合の模式図である。
【
図5】第2タイプの蓄電池において、充放電用蓄電池の充放電の様子と、起動電力を充電しているBOS用蓄電池の様子を示す模式図である。
【
図6】第2タイプの蓄電池において、劣化後の充放電用蓄電池を示す模式図である。
【
図7】第2タイプの蓄電池において、元の充放電用蓄電池を新たなBOS用蓄電池とし、元のBOS用蓄電池を新たな充放電用蓄電池とした場合の模式図である。
【
図8】3つ以上の蓄電池間で充放電用蓄電池及びBOS用蓄電池を割り当てる様子を説明するための模式図である。
【
図9】3つ以上の蓄電池間で充放電用蓄電池及びBOS用蓄電池を割り当てる様子を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に実施形態に係るエネルギーシステム及びエネルギーシステムの運転方法について説明する。
(1)全体構成
図1に示すようにエネルギーシステム1は、燃料電池システム10と、蓄電池システム20と、スイッチSを介して系統電源30に接続されている分電盤40と、負荷50とを備えている。系統電源30は、電力会社等が供給する系統電力の供給源であり、分電盤40を介して燃料電池システム10及び蓄電池システム20に接続されている。また、分電盤40を介して負荷50が接続されている。
【0025】
(2)燃料電池システム
燃料電池システム10は、燃料電池11及びパワーコンディショナ13を備えている。燃料電池11は、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとを反応させることで発電を行う。燃料電池11は、定格運転、定格の80%の出力での運転、定格の50%の出力での運転、負荷50の負荷電力の大きさに応じた負荷追従運転などを行うことができる。負荷50は、燃料電池11の発電電力、系統電源30の系統電力及び蓄電池システム20に充電されている充電電力の少なくともいずれかの電力を消費可能である。そして、燃料電池11及び系統電源30の少なくともいずれかから負荷50に供給される供給電力に不足が生じる場合に、不足電力に相当する充電電力が蓄電池システム20から負荷50に供給される。一方、燃料電池11の発電電力のうち、負荷50により消費されなかった余剰電力は、蓄電池システム20において充電可能である。
パワーコンディショナ13は、燃料電池11が発電した直流電力である発電電力を交流電力に変換し、系統電源30の交流電力である系統電力と系統連系可能とする。
【0026】
(3)分電盤
分電盤40は、燃料電池システム10及び蓄電池システム20と系統電源30との間に設けられているとともに、負荷50が接続されている。負荷50は、分電盤40を介して、系統電源30からの系統電力、燃料電池システム10からの発電電力及び蓄電池システム20からの充電電力の少なくともいずれかの電力の供給を受けることが可能である。系統電源30が停電してスイッチSが開くと、分電盤40は系統電源30から切り離され、燃料電池システム10等が系統電源30から解列される。
【0027】
(4)蓄電池システム
蓄電池システム20は、パワーコンディショナ21と、充放電用蓄電池(第1蓄電池の一例)23と、BOS(Black Out Start)用蓄電池(第2蓄電池の一例)25と、蓄電池制御部27と、容量検出部29とを備えている。
【0028】
(4-1)パワーコンディショナ
パワーコンディショナ21は、蓄電池システム20に供給される交流電力を直流電力に変換し、充電のために充放電用蓄電池23及びBOS用蓄電池25に供給する。また、パワーコンディショナ21は、充放電用蓄電池23及びBOS用蓄電池25に蓄電されている直流電力を交流電力に変換し負荷50等に供給する。
【0029】
(4-2)蓄電池(充放電用蓄電池及びBOS用蓄電池)
本実施形態では、蓄電池として、充放電用蓄電池23及びBOS用蓄電池25が備えられている。充放電用蓄電池23とBOS用蓄電池25とは、後述の蓄電池制御部27が蓄電池切換スイッチ22を制御することで切り替えられる。
【0030】
BOS用蓄電池25は、停電等により系統電源30から燃料電池システム10が解列された場合に、系統電源30からの系統電力の供給を受けることなく燃料電池システム10を起動するのに必要な起動電力PBを充電する。通常、BOS用蓄電池25は、一旦、起動電力PBを充電すると、起動電力PBを保持しており、起動電力PBを使用する場合以外は放電を行わない。BOS用蓄電池25に起動電力PBを充電する場合、及び、起動電力PBを放電する場合等に、蓄電池切換スイッチ22はBOS用蓄電池25側に接続されている。
【0031】
一方、充放電用蓄電池23は、随時、充放電可能な蓄電池である。充放電用蓄電池23は、燃料電池システム10からの発電電力又は系統電源30からの系統電力の供給を受けて充電電力を充電するとともに、負荷50等に供給するために充電電力を放電する。充放電用蓄電池23の充放電を行う場合等に、蓄電池切換スイッチ22は充放電用蓄電池23側に接続されている。
【0032】
充放電用蓄電池23及びBOS用蓄電池25としては、これに限定されないが、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池等が挙げられる。
【0033】
(4-3)蓄電池制御部、容量検出部
(a)充電及び放電の制御
蓄電池制御部27は、充放電用蓄電池23及びBOS用蓄電池25への充電又は放電を制御する。
【0034】
蓄電池制御部27が蓄電池切換スイッチ22を充放電用蓄電池23側に切り替えた状態で、燃料電池システム10からの発電電力又は系統電源30からの系統電力が充放電用蓄電池23に充電されている。例えば、燃料電池11の発電電力のうち、負荷50により消費されなかった余剰電力が充放電用蓄電池23に充電される。一方、蓄電池制御部27が蓄電池切換スイッチ22を充放電用蓄電池23側に切り替えた状態で、負荷50の不足電力を補うために充放電用蓄電池23に充電されている充電電力が放電され、負荷50に供給される。このように、充放電用蓄電池23は、繰り返し充放電するように制御される。
また、蓄電池制御部27は、充放電用蓄電池23に充電されている充電電力を所定のタイミングで完全に放電するリフレッシュを行うように制御できる。
【0035】
また、蓄電池制御部27が蓄電池切換スイッチ22をBOS用蓄電池25側に切り替えた状態で、燃料電池システム10からの発電電力又は系統電源30からの系統電力がBOS用蓄電池25に充電されている。BOS用蓄電池25には、系統電源30からの電力供給を受けることなく燃料電池システム10を起動するのに必要な起動電力PBが充電される。蓄電池制御部27は、一旦、BOS用蓄電池25に起動電力PBを充電すると、当該起動電力PBを持続的にBOS用蓄電池25で保持するように制御する。つまり、蓄電池制御部27は、BOS用蓄電池25に対しては充放電を繰り返し行うようには制御しない。
【0036】
そして、例えば系統電源30から燃料電池システム10が解列等された際に、燃料電池システム10が運転を停止していた場合は、蓄電池制御部27は、蓄電池切換スイッチ22をBOS用蓄電池25側に切り替え、BOS用蓄電池25に充電されている起動電力PBを燃料電池システム10に供給する。これにより、燃料電池11は系統電源30から電力供給を受けることができない状態においても起動して発電を行うことができる。その後、蓄電池制御部27は、蓄電池切換スイッチ22をすぐに充放電用蓄電池23側に切り替えてもよい。あるいは、蓄電池制御部27は、蓄電池切換スイッチ22をBOS用蓄電池25側にしたままで燃料電池システム10からの発電電力(又は、解列が解除された場合には、系統電源30からの系統電力)をBOS用蓄電池25に充電した後、蓄電池切換スイッチ22を充放電用蓄電池23側に切り替えてもよい。
【0037】
なお、前述において燃料電池システム10が運転を停止していた場合とは、例えば、燃料の漏洩を検知するために設けられたガスメータにおいて燃料の漏洩を正確に検出するために、燃料電池システム10への燃料の供給が停止して燃料電池システム10が運転を停止している場合、燃料電池システム10に設けられた貯湯タンクが満蓄になって燃料電池システム10が運転を停止している場合等が挙げられる。このように燃料電池システム10が運転を停止している場合に、系統電源30から燃料電池システム10が解列等されると、燃料電池システム10は自力で起動して発電を行うことができない。BOS用蓄電池25は、このような場合に燃料電池システム10が起動するのに必要な起動電力PBを充電している。
【0038】
上記構成によれば、充放電用の充放電用蓄電池23と、燃料電池11の起動に必要な起動電力PBを充電している起動電力供給用のBOS用蓄電池25とが別々に設けられている。BOS用蓄電池25は起動電力供給用のみに用いられるため、充放電が繰り返されることによる劣化を抑制できる。
【0039】
なお、充放電用蓄電池23にメモリ効果による電圧低下が現れる蓄電池を用いた場合に、充放電に伴って充放電用蓄電池23を完全にゼロまで放電することでリフレッシュすると好ましい。既に充電されている充電電力を放電しきらない状態での再充電によって、見かけ上、使用可能な充電電力が減少するメモリ効果を、リフレッシュによって解消できる。
【0040】
(b)蓄電池の設定制御
充放電用蓄電池23は、充放電を繰り返すことによって、電極表面への電気を通さない物質の結晶化、電極の破損等により充電が十分にできなくなり劣化する可能性がある。容量検出部29は、充放電用蓄電池23の充放電可能容量を検出する。充放電可能容量は、蓄電池を0%から100%の満充電まで充電した場合の蓄電可能容量に対して、充放電に用いることが可能な容量である。充放電用蓄電池23の充放電可能容量は、例えば充放電用蓄電池23に流した電流と検出される電圧とに基づいて推定できる。また、充放電用蓄電池23の充放電可能容量は、充放電回数のカウント値及び充放電用蓄電池23の累積運転時間等から推定してもよい。充放電回数のカウント値が大きくなればなるほど、また、累積運転時間が大きくなればなるほど充放電用蓄電池23の劣化が進んでいると推定できる。よって、充放電回数のカウント値が所定値以上となったことに基づいて、また、累積運転時間が所定時間以上となったことに基づいて、劣化後の充放電可能容量を推定できる。
【0041】
蓄電池制御部27は、容量検出部29が検出した充放電用蓄電池23の充放電可能容量の上限値が所定の閾値電力量(以下、単に所定の閾値という)未満と判定した判定時点で、元の充放電用蓄電池23を起動電力供給用のBOS用蓄電池として設定し、元のBOS用蓄電池25を新たな充放電用蓄電池として設定するように制御する。つまり、蓄電池制御部27は、充放電用蓄電池23とBOS用蓄電池25とを切り換え、元のBOS用蓄電池25を新たな充放電用の蓄電池として記憶し、元の充放電用蓄電池23を起動電力供給用の蓄電池として記憶する。
【0042】
蓄電池の設定制御について以下にさらに説明する。
充放電用蓄電池23としては、例えば、蓄電池を完全に放電して充電電力が満充電に対して0%の状態から、満充電である100%の状態までの間で充放電可能な第1タイプと、満充電に対して0%よりも大きい所定の下限値から、満充電である100%よりも小さい所定の上限値までの間で充放電可能な第2タイプとが挙げられる。
【0043】
(b-1)第1タイプの充放電用蓄電池を用いる場合
以下では、まず、第1タイプの充放電用蓄電池23を用いる場合における蓄電池の設定制御について
図2~
図4を用いて説明する。
図2には、第1タイプの充放電用蓄電池23における充放電の様子と、BOS用蓄電池25における起動電力の充電の様子とが示されている。第1タイプの充放電用蓄電池23は満充電に対して0%まで放電可能であり、満充電の100%まで充電可能である。よって、第1タイプの充放電用蓄電池23が充電することができる最大の容量である蓄電可能容量A1は満充電の時の充電電力である。そして、第1タイプの充放電用蓄電池23は、0%~100%の満充電まで充電した場合の蓄電可能容量A1に対して、0%~100%まで充放電可能であるので、充放電可能容量A1は蓄電可能容量A1と同一である。
【0044】
なお、BOS用蓄電池25には、蓄電可能容量A3(=充放電可能容量A3)が設定されているものとする。BOS用蓄電池25には起動電力PBが充電されるが、起動電力PBは蓄電可能容量A3(=充放電可能容量A3)に対して例えばx%までの容量で充電可能となっている。これにより、BOS用蓄電池25は起動電力PBを余裕をもって充電可能である。
【0045】
図3では、第1タイプの充放電用蓄電池23が劣化しており、
図2の蓄電可能容量A1(=充放電可能容量A1)よりも蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)が低下している様子が示されている。蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)は劣化前の蓄電可能容量A1(=充放電可能容量A1)に対してy%(<100%)まで低下している。容量検出部29は、充放電用蓄電池23の劣化後の蓄電可能容量(=充放電可能容量)の上限値として、蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)を検出する。
【0046】
蓄電池制御部27は、容量検出部29が検出した充放電用蓄電池23の劣化後の蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の上限値が所定の閾値未満か否かを判定する。そして、蓄電池制御部27は、蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点で、
図4に示すように、元の充放電用蓄電池23を新たな起動電力供給用のBOS用蓄電池とし、元のBOS用蓄電池25を新たな充放電用蓄電池とするように制御する。
【0047】
図4の場合、劣化後の元の充放電用蓄電池23は、蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)を有しており、新たにBOS用の蓄電池に設定されることで起動電力PBを充電している。起動電力PBと蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)との関係は、「起動電力PB<蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)」となるように調整されると好ましい。
図4に示すように、蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の上限値は劣化前に比べてy%(<100%)まで低下しているが、劣化後の元の充放電用蓄電池23は、起動電力PBをz%(<y%)までの容量で充電している。つまり、新たにBOS用の蓄電池に設定された元の充放電用蓄電池23は、劣化後の蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の範囲内で起動電力PBを余裕をもって充電している。
【0048】
以上のように、充放電用蓄電池23は充放電を繰り返すことによる劣化により充放電用蓄電池23の蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の上限値が低下(
図2、
図3では、100%からy%まで低下)する。充放電用蓄電池23の蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の上限値が所定の閾値未満となった場合には、上記のように元の充放電用蓄電池23を新たな起動電力供給用のBOS用蓄電池とし、元のBOS用蓄電池25を新たな充放電用蓄電池とする。つまり、元の充放電用蓄電池23と元のBOS用蓄電池25とを入れ換える。
【0049】
これにより、充放電せずに用いられることで劣化が抑制されていた元のBOS用蓄電池25を充放電用の新たな蓄電池として利用することで、大きな不足電力の放電及び大きな余剰電力の充電に対応することができる。また、充放電により劣化した元の充放電用蓄電池23を新たな起動電力供給用のBOS用蓄電池として充放電せずに用いることで、劣化した元の充放電用蓄電池23の更なる劣化を抑制できる。
【0050】
ここで、前述の所定の閾値(所定の閾値電力量)は、燃料電池11の起動に必要な起動電力PBより大きい(所定の閾値>起動電力PB)。そして、充放電用蓄電池23の劣化後の蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の上限値が所定の閾値(>起動電力PB)未満と判定された判定時点においては、「所定の閾値>充放電用蓄電池23の劣化後の蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の上限値>起動電力PB」の関係が未だ満たされていると考えれる。つまり、当該判定時点においては、劣化により充放電用蓄電池23の蓄電可能容量A2(=充放電可能容量A2)の上限値は低下しているものの、充放電用蓄電池23は、燃料電池11の起動に必要な起動電力PBを充電することは可能な状態であると考えられる。
【0051】
よって、当該判定時点において劣化した元の充放電用蓄電池23を起動電力供給用の新たな蓄電池とすることで、燃料電池11の起動に必要な起動電力PBを充電することが可能である。このように、劣化した元の充放電用蓄電池23に起動電力PBを充電させて充放電せずに用いることで、劣化した元の充放電用蓄電池23の更なる劣化を抑制できる。
【0052】
(b-2)第2タイプの充放電用蓄電池を用いる場合
次に、第2タイプの充放電用蓄電池23を用いる場合における蓄電池の設定制御について
図5~
図7を用いて説明する。第2タイプの充放電用蓄電池23は、蓄電池の劣化を抑制するために、充電を満充電まで行わず、また放電を0%まで行わないタイプの蓄電池である。このような蓄電池においても本実施形態を適用可能であるので、この例について以下に説明する。
第2タイプの充放電用蓄電池23は満充電に対してj(>0)%まで放電可能であり、満充電のi(100>i>j)%まで充電可能である。よって、第2タイプの充放電用蓄電池23が蓄電可能な最大の容量である蓄電可能容量B1は満充電の時の充電電力である。そして、満充電に対してi%~j%まで充放電可能であるので、充放電可能容量B1は蓄電可能容量B1よりも小さくなる。i%及びj%は、充放電用電池の種類等に応じて適宜設定される。
【0053】
なお、BOS用蓄電池25には、蓄電可能容量B3(=充放電可能容量B3)が設定されているものとする。BOS用蓄電池25には起動電力PBが充電されるが、起動電力PBは蓄電可能容量B3(=充放電可能容量B3)に対して例えばx%までの容量で充電可能となっている。これにより、BOS用蓄電池25は起動電力PBを余裕をもって充電可能である。
【0054】
図6では、第2タイプの充放電用蓄電池23が劣化しており、
図5の蓄電可能容量B1よりも蓄電可能容量B2が低下している様子が示されている。蓄電可能容量B2は劣化前の蓄電可能容量B1に対してy%(<100%)まで低下している。これに伴って、充放電可能容量B2の上限値は、劣化前の蓄電可能容量B1に対してk%となっており、充放電可能容量B2の下限値は劣化前の蓄電可能容量B1に対してl%となっている。ここで、0<l<k<y<100、充放電可能容量B2<充放電可能容量B1である。k%及びl%は、充放電用蓄電池の種類等に応じて適宜設定される。
【0055】
容量検出部29は、充放電用蓄電池23の劣化後の充放電可能容量の上限値として、充放電可能容量B2の上限値を検出する。例えば、蓄電可能容量B1に対して、劣化後の充放電可能容量B2の上限値に対応する割合であるy%を乗算することで、充放電可能容量B2の上限値が求まる。
【0056】
蓄電池制御部27は、容量検出部29が検出した充放電用蓄電池23の劣化後の充放電可能容量B2の上限値が所定の閾値未満か否かを判定する。そして、蓄電池制御部27は、充放電可能容量B2の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点で、
図7に示すように、元の充放電用蓄電池23を新たな起動電力供給用のBOS用蓄電池とし、元のBOS用蓄電池25を新たな充放電用蓄電池とするように制御する。
【0057】
図7の場合、劣化後の元の充放電用蓄電池23は、充放電可能容量B2を有しており、新たにBOS用の蓄電池に設定されることで起動電力PBを充電している。起動電力PBと充放電可能容量B2の上限値との関係は、「起動電力PB<充放電可能容量B2の上限値」となるように調整されると好ましい。
図7に示すように、充放電可能容量B2の上限値は劣化前に比べてk%(k<100%)まで低下しているが、劣化後の元の充放電用蓄電池23は、起動電力PBをw%(<k%)までの容量で充電している。つまり、新たにBOS用の蓄電池に設定された元の充放電用蓄電池23は、劣化後の充放電可能容量B2の上限値までの範囲内で起動電力PBを余裕をもって充電している。なお、
図7では、新たにBOS用の蓄電池に設定された元の充放電用蓄電池23は、一例として0%から起動電力PBを充電可能としている。しかし、l%から起動電力PBを充電可能としてもよい。
【0058】
以上のように、劣化により充放電用蓄電池23の充放電可能容量の上限値が低下(
図5、
図6では、i%からk%まで低下)する。充放電用蓄電池23の充放電可能容量B2の上限値が所定の閾値未満となった場合には、上記のように元の充放電用蓄電池23を新たな起動電力供給用のBOS用蓄電池とし、元のBOS用蓄電池25を新たな充放電用蓄電池とする。つまり、元の充放電用蓄電池23と元のBOS用蓄電池25とを入れ換える。
【0059】
これにより、前述と同様に、劣化が抑制されていた元のBOS用蓄電池25を充放電用の新たな蓄電池として利用することで、大きな不足電力の放電及び大きな余剰電力の充電に対応することができる。また、充放電により劣化した元の充放電用蓄電池23を新たな起動電力供給用のBOS用蓄電池として充放電せずに用いることで、劣化した元の充放電用蓄電池23の更なる劣化を抑制できる。
【0060】
ここで、前述の所定の閾値(所定の閾値電力量)は、燃料電池11の起動に必要な起動電力PBより大きい(所定の閾値>起動電力PB)。そして、充放電用蓄電池23の劣化後の充放電可能容量B2の上限値が所定の閾値(>起動電力PB)未満と判定された判定時点においては、「所定の閾値>充放電用蓄電池23の劣化後の充放電可能容量B2の上限値>起動電力PB」の関係が未だ満たされていると考えれる。つまり、当該判定時点においては、劣化により充放電用蓄電池23の充放電可能容量B2の上限値は低下しているものの、充放電用蓄電池23は、燃料電池11の起動に必要な起動電力PBを充電することは可能な状態であると考えられる。
【0061】
よって、当該判定時点において劣化した元の充放電用蓄電池23を起動電力供給用の新たな蓄電池とすることで、燃料電池11の起動に必要な起動電力PBを充電することが可能である。このように、劣化した元の充放電用蓄電池23に起動電力PBを充電させて充放電せずに用いることで、劣化した元の充放電用蓄電池23の更なる劣化を抑制できる。
【0062】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0063】
(1)上記実施形態の蓄電池システム20では、
図1等に示すように1つの充放電用蓄電池23と1つのBOS用蓄電池25とが備えられている。充放電用蓄電池23及びBOS用蓄電池25の数はこれに限定されず、2つ以上の充放電用蓄電池23が備えられていてもよい。同様に、2つ以上のBOS用蓄電池25が備えられていてもよい。この場合において、上記実施形態と同様に劣化後の充放電可能容量が所定の閾値未満と判定された判定時点で蓄電池の設定制御を行う。
【0064】
2つ以上の充放電用蓄電池23及び1つのBOS用蓄電池25が備えられている場合、2つ以上の充放電用蓄電池23のうち1つの充放電用蓄電池23の劣化後の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定された判定時点で、1つのBOS用蓄電池25を充放電用の蓄電池とし、劣化した充放電用蓄電池23を起動電力供給用の蓄電池とする。
【0065】
1の充放電用蓄電池23及び2つ以上のBOS用蓄電池25が備えられている場合、1つの充放電用蓄電池23の劣化後の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定された判定時点で、2つのBOS用蓄電池25のうち1つを充放電用の蓄電池とし、劣化した充放電用蓄電池23を起動電力供給用の蓄電池とする。
2つ以上の充放電用蓄電池23及び2つ以上のBOS用蓄電池25が備えられている場合、2つ以上の充放電用蓄電池23のうち1つの充放電用蓄電池23の劣化後の充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定された判定時点で、2つ以上のBOS用蓄電池25のうち1つを充放電用の蓄電池とし、劣化した充放電用蓄電池23を起動電力供給用の蓄電池とする。
【0066】
以下では、さらに複数の蓄電池が備えられている場合における蓄電池の設定制御について
図8、
図9を用いて説明する。
【0067】
図8、
図9には、蓄電池システム20に備えられている複数の蓄電池α~εが示されている。各蓄電池α~εは、上記実施形態の第1タイプの蓄電池であり、充放電可能容量=蓄電可能容量であるものとする。
蓄電池α、β、γ、δ、εは、それぞれ充放電可能容量α、β、γ、δ、εである。現時点では、蓄電池α、γ、δ、εは充放電用蓄電池に設定され、蓄電池βはBOS用蓄電池に設定されている。
【0068】
ステップS1:容量検出部29は、各蓄電池α~εの充放電可能容量の上限値を検出している。
ステップS2:蓄電池制御部27は、例えば充放電用である蓄電池αに着目し、容量検出部29が検出した蓄電池αの充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満か否かを判定する。蓄電池制御部27は、蓄電池αの充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満の場合は、蓄電池αが劣化しているとしてステップS3に処理を進め、そうでない場合はステップS1に戻る。
ステップS3:蓄電池αの充放電可能容量の上限値が所定の閾値未満と判定した判定時点において、蓄電池α以外の他の蓄電池β、γ、δ、εの少なくともいずれかの充放電可能容量の上限値が所定の閾値以上か否かを判定する。蓄電池制御部27は、他の蓄電池β、γ、δ、εの少なくともいずれかの充放電可能容量の上限値が所定の閾値以上の場合は、ステップS4に処理を進め、そうでない場合はステップS1に戻る。
【0069】
ステップS4:蓄電池制御部27は、充放電可能容量の上限値が所定の閾値以上である他の蓄電池β、γ、δ、εのいずれかを、充放電用である蓄電池に新たに設定する。例えば、BOS用蓄電池である蓄電池βの充放電可能容量βの上限値が所定の閾値以上である場合、蓄電池制御部27は、BOS用蓄電池である蓄電池βを新たな充放電用の蓄電池に設定する。これにより、充放電可能容量が所定の閾値以上であり比較的劣化の少ない元のBOS用の蓄電池βを新たな充放電用の蓄電池に設定できる。
【0070】
ステップS5:蓄電池制御部27は、蓄電池αの代替としてされた他の蓄電池(ステップS4の例ではBOS用蓄電池である蓄電池β)がBOS用蓄電池か否かを判定する。上記の例によると、蓄電池βは、BOS用蓄電池に設定されていたため、蓄電池制御部27は処理をステップS6に進める。逆に、代替とされた蓄電池がBOS用蓄電池ではなかった場合には、蓄電池制御部27はステップS1に戻る。
【0071】
ステップS6:BOS蓄電池であった蓄電池βが充放電用蓄電池に設定されたため、蓄電池制御部27は、充放電用蓄電池であった元の蓄電池α及び新たに充放電用蓄電池に設定された蓄電池β以外からBOS用蓄電池にするための蓄電池を選択する。つまり、蓄電池制御部27は、蓄電池α、蓄電池β以外の蓄電池γ、δ、εからBOS用蓄電池を選択し、選択した蓄電池をBOS用蓄電池に設定する。これにより、BOS用蓄電池であった元の蓄電池βを新たな充放電用の蓄電池に設定しつつ、元のBOS用蓄電池βの代用として蓄電池γ、δ、εの中から起動電力供給用のBOS用蓄電池を用意することができる。
【0072】
(2)上記実施形態では、充放電用蓄電池23及びBOS用蓄電池25の電池の種類は特に限定していない。しかし、充放電用蓄電池としてニッケル-水素電池等のメモリ効果による電圧低下が現れる蓄電池が用いられてもよい。この場合、充放電用蓄電池23は、メモリ効果による電圧低下が現れる蓄電池であるが、充放電によってリフレッシュすることによってメモリ効果を解消できる。
【符号の説明】
【0073】
1 :エネルギーシステム
10 :燃料電池システム
11 :燃料電池
23 :充放電用蓄電池
25 :BOS用蓄電池
27 :蓄電池制御部
29 :容量検出部
50 :負荷
PB :起動電力