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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】高所作業車における作業床の制御手段
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240301BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B66F9/24 H
B66F11/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020082887
(22)【出願日】2020-05-09
(65)【公開番号】P2021176801
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】391033115
【氏名又は名称】株式会社カナモト
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 道信
(72)【発明者】
【氏名】長島 敏一
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-124297(JP,A)
【文献】実開平06-016842(JP,U)
【文献】特開平10-007398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機構と、前記昇降機構により移動するとともに作業員が搭乗して所定の作業を行うための作業床と、前記作業床が障害物と干渉するに至った場合に前記作業床の移動を停止する第一の障害物検出センサと、前記昇降機構の動作を操作するための操作部と、前記作業床の移動を制御する主制御部と、を含み、
前記第一の障害物検出センサは、
前記作業床の所定領域にて間隔をあけて備えた領域仕切り部と、
隣り合う領域仕切り部間にわたって所定のテンションをもって架け渡される架け渡し部と、
前記領域仕切り部に備えられる検出部と、
前記架け渡し部の一端側に備えられ、前記検出部が備えられる領域仕切り部にて、前記検出部によって検出可能に備えられる遮蔽部と、
を有し、
前記遮蔽部は、前記架け渡し部に所定以上のテンションが掛かった際に、前記検出部が検出不可能な非検出構成を備えており、
前記主制御部は、前記検出部が、前記遮蔽部の非検出状態を検出したとき、前記作業床の移動を制御し、
前記架け渡し部はロープで、
前記検出部は透過型センサで、
前記遮蔽部は、前記架け渡し部に所定以上のテンションが掛かった際に前記検出部の検出領域から離脱して前記透過型センサが入光を検出可能に構成され、
前記透過型センサは、入光を検出した際に前記主制御部に移動停止信号を送信することを特徴とする高所作業車における作業床の制御手段。
【請求項2】
前記領域仕切り部の所定位置に収容部が取り付けられており、
前記収容部は、前記領域仕切り部に固定される受け部と、前記受け部上に着脱自在に被せられる蓋部とに、鉛直方向で上下に分割構成され、
前記収容部には、前記透過型センサと前記遮蔽部とが収容され、
前記遮蔽部は、前記架け渡し部に所定以上のテンションが掛かると、前記収容部から外方に飛び出して前記検出部の検出領域から離脱するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車における作業床の制御手段。
【請求項3】
前記架け渡し部の一端側は収容部に固定されると共に、他端側は隣り合う収容部内に収容された遮蔽部に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の高所作業車における作業床の制御手段。
【請求項4】
前記作業床には、作業床の上昇方向に突出した第二の障害物検出センサを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高所作業車における作業床の制御手段。
【請求項5】
前記操作部は前記作業床に配設され、
前記作業床には、前記操作部と連携した主スイッチ及び非常動作スイッチが配設されており、
前記主制御部は、前記主スイッチの動作を条件として前記操作部の所定の操作により前記作業床の移動を制御し、
前記主制御部が前記作業床の移動を制御したとき、前記主スイッチが動作していても前記操作部の操作による前記作業床の移動を禁止するとともに、前記主スイッチの動作と非常動作スイッチの動作とを条件として前記操作部の操作による前記作業床の移動を許容する安全制御部と、を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載高所作業車における作業床の制御手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業に用いられる作業装置の制御手段に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高所作業に用いられる作業装置として高所作業車が提供されている。高所作業車は高所に上昇できる作業床(作業員が搭乗するバスケット等の場所)を備えて作業者による高所での所定の作業を可能にするものである。この種の高所作業車において作業床は予め定められた所定の移動範囲を移動するように構成されている。
【0003】
高所作業車は、作業床が所定の移動範囲を移動している場合でも、当該移動範囲に障害物が存在する場合には、障害物と作業床との干渉を生起する。そこで、かかる干渉を未然に防止すべく種々の安全手段が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1をはじめとして、従来技術の殆どが鉛直方向で作業床の上方にある障害物、例えば、屋外環境では電線や橋梁の下面など、屋内では天井面や梁などとの近接・接触を防止することを目的とするものであった。
すなわち、作業床が水平方向で移動(旋回移動)する際に、作業床に対して横方向から近接・接触する可能性のある障害物との干渉を防止する装置は提供されていなかった。
例えば、屋外で街路樹の剪定作業などにおいて高所作業車を用いていた場合、旋回移動などをするにあたり、横方向に伸びた枝や街路灯などに作業床が近接・接触してしまう虞があるにも関わらず、これを防止する措置が全く採られていなかったのが現状であった。すなわち、枝や街路灯などが作業床の手すりなどに引っ掛かったままで旋回移動してしまうと、作業床が引っ張られてバランスを崩し、大変危険であったため、さらなる安全性を考慮する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-55983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の有する課題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、水平方向(横方向)に存する障害物と作業床との干渉を未然に防止するよう作業床の移動を停止する作業装置の制御手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために第1の本発明がなした技術的手段は、昇降機構と、前記昇降機構により移動するとともに作業員が搭乗して所定の作業を行うための作業床と、前記作業床が障害物と干渉するに至った場合に前記作業床の移動を停止する第一の障害物検出機構と、前記昇降機構の動作を操作するための操作部と、前記作業床の移動を制御する主制御部と、を含み、
前記第一の障害物検出機構は、
前記作業床の所定領域にて間隔をあけて備えた領域仕切り部と、
隣り合う領域仕切り部間にわたって所定のテンションをもって架け渡される架け渡し部と、
前記領域仕切り部に備えられる検出部と、
前記架け渡し部の一端側に備えられ、前記検出部が備えられる領域仕切り部にて、前記検出部によって検出可能に備えられる遮蔽部と、
を有し、
前記遮蔽部は、前記架け渡し部に所定以上のテンションが掛かった際に、前記検出部が検出不可能な非検出構成を備えており、
前記主制御部は、前記検出部が、前記遮蔽部の非検出状態を検出したとき、前記作業床の移動を制御し、
前記架け渡し部はロープで、
前記検出部は透過型センサで、
前記遮蔽部は、前記架け渡し部に所定以上のテンションが掛かった際に前記検出部の検出領域から離脱して前記透過型センサが入光を検出可能に構成され、
前記透過型センサは、入光を検出した際に前記主制御部に移動停止信号を送信することを特徴とする高所作業車における作業床の制御手段としたことである。
【0008】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記領域仕切り部の所定位置に収容部が取り付けられており、
前記収容部は、前記領域仕切り部に固定される受け部と、前記受け部上に着脱自在に被せられる蓋部とに、鉛直方向で上下に分割構成され、
前記収容部には、前記透過型センサと前記遮蔽部とが収容され、
前記遮蔽部は、前記架け渡し部に所定以上のテンションが掛かると、前記収容部から外方に飛び出して前記検出部の検出領域から離脱するように構成されていることを特徴とする高所作業車における作業床の制御手段としたことである
【0009】
第3の本発明は、第2の本発明において、前記架け渡し部の一端側は収容部に固定されると共に、他端側は隣り合う収容部内に収容された遮蔽部に固定されていることを特徴とする高所作業車における作業床の制御手段としたことである。
【0010】
第4の本発明は、第1の本発明乃至第3の本発明のいずれかにおいて、前記作業床には、作業床の上昇方向に突出した第二の障害物検出センサを備えたことを特徴とする高所作業車における作業床の制御手段としたことである。
【0011】
第5の本発明は、第1の本発明乃至第4の本発明において、前記操作部は前記作業床に配設され、
前記作業床には、前記操作部と連携した主スイッチ及び非常動作スイッチが配設されており、
前記主制御部は、前記主スイッチの動作を条件として前記操作部の所定の操作により前記作業床の移動を制御し、
前記主制御部が前記作業床の移動を制御したとき、前記主スイッチが動作していても前記操作部の操作による前記作業床の移動を禁止するとともに、前記主スイッチの動作と非常動作スイッチの動作とを条件として前記操作部の操作による前記作業床の移動を許容する安全制御部と、を含むことを特徴とする高所作業車における作業床の制御手段としたことである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水平方向(横方向)に存する障害物と作業床との干渉を未然に防止するよう作業床の移動を停止する作業装置の制御手段を提供し得た。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る制御方式を適用した高所作業車の全体を示す模式図である。
図2図1に示す高所作業車のバスケット部分を抽出・拡大して詳細に示す斜視図である。
図3】本発明の作業装置における障害物検出センサの一実施形態を示す分解斜視図である。
図4図3に示す障害物検出センサの要部を示す概略断面図で、(a)は遮蔽部の検出状態を示し、(b)は遮蔽部の非検出状態を示す。
図5】障害物検出センサの他の実施の一形態の要部を示す概略断面図で、(a)は遮蔽部の検出状態を示し、(b)は遮蔽部の非検出状態を示す。
図6】本発明の実施の形態に係る制御方式を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
本実施形態は、作業装置の一例として、図1に示す高所作業車を想定する。
なお、本実施形態は本発明の実施の一形態に過ぎず何等これに限定解釈されるものではない。
【0015】
図1に示す高所作業車Iは、車体6上に旋回台5が水平旋回自在に設けられている。
旋回台5は車体6に設けられたブーム旋回モータ16(図3)により車体6に対して水平旋回自在に構成されている。旋回台5の上部にはブーム1が上下方向に起伏自在に設けられている。
【0016】
ブーム1は、旋回台5に設けられる屈伸ブーム1Aと、屈伸ブーム1Aに設けられる伸縮ブーム1Bからなる。
伸縮ブーム1Bはその先端に作業床であるバスケット2が取付けられており、屈伸ブーム1Aの先端からその軸方向に伸縮することによりバスケット2の位置を移動する。
【0017】
バスケット2は、伸縮ブーム1Bの先端に取り付けられる矩形状の床本体2aと、床本体2aの上面周縁から立設される4つの壁面からなる囲い枠2bと、で構成され、バスケット2の所定位置には、ブーム1の伸縮操作や旋回操作を行うための操作部12を備えるとともに、床上面には主スイッチであるフットスイッチFを備え、また、操作部12には非常動作スイッチSWを備えている。
バスケット2は、作業員4が搭乗する一方、ブーム1でバスケット2を移動することにより、図中の走行低速範囲Aおよび走行停止範囲Bからなる作業範囲(A+B)内で作業員4が所定の高所作業を行うようになっている。
なお、本実施形態の壁状の囲い枠に代えて手すりで囲われて構成される形態であってもよく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0018】
バスケット2には、図2に示すように、障害物を検出するための障害物検出機構が備えられている。
本実施形態では、障害物検出機構として、第一の障害物検出センサ20と第二の障害物検出センサ70の2種の障害物検出センサが備えられている。
【0019】
第一の障害物検出センサ20は、バスケット2を水平方向に旋回移動した際の障害物との接触を回避、あるいは接触した際の危険を回避するものである。
例えば本実施形態では、バスケット2の囲い枠2bの四隅に、領域仕切り部としてのポール3A,3B,3C,3Dを上方に向けて突設し、隣り合うポール3Aと3Bとの間、3Bと3Cとの間、3Cと3Dとの間、3Dと3Aとの間に、それぞれ架設して備えられている。
【0020】
具体的には、角柱状に形成されたポール3A,3B,3C,3Dと、ポール3A,3B,3C,3Dのそれぞれの所定位置に取り付けられた連結ボックス22と、隣り合う連結ボックス22の間にわたって所定のテンションをもって架け渡される架け渡し部40と、それぞれの連結ボックス22に備えられる検出部S1,S2,S3,S4と、架け渡し部40の一端側に備えられ、各検出部S1(S2,S3,S4)が備えられる連結ボックス22にて、各検出部S1(S2,S3,S4)によって検出可能に備えられる各遮蔽部44と、で構成されている(図2乃至図5参照。)。
【0021】
各第一の障害物検出センサ20は、すべて同一構成からなるもので、ここではポール3Aに取り付けられ、隣り合うポール3Bとの間にわたって備えられるものをもって説明する。
【0022】
連結ボックス22は、本実施形態では、ポール3Aを嵌挿してポール3Aの所定位置に固定される上面と下面の双方を開放した中空角筒状の固定部24と、固定部24の横に一体に設けられている収容部26と、収容部26の横に一体に設けられている係止片部34と、で構成されている。固定部24と収容部26と係止片部34とは、同一の横軸上に一体に成形されている(図2図3参照。)。
【0023】
収容部26は、中空の立方体形状に形成される受け部28と、該受け部28と略同一形状の中空の立方体形状に形成され、受け部28上に被せて嵌合される蓋部30とで着脱自在に構成されている。
受け部28と蓋部30は、隣り合うポール3Bと対向する面部28a・30aと、その面部28a・30aと対向する面部28b・30bとに、同一の縦スリット(切り欠き)32,32が形成されている。
収容部26の受け部28と蓋部30との嵌合部分には、遮蔽部44の軸46を回転自在に支持する軸支部38が形成されている。
軸支部38は、受け部28と蓋部30の面部28c・30cと、その面部28c・30cと対向する面部28d・30dとに、それぞれ相対向して形成された略U字状の切欠き溝部38a・38b及び38c・38dとで構成されるものとしている。
【0024】
収容部26内には、受け部28の内底面に検出部S1が固定して備えられている。
本実施形態において検出部S1は、透過型センサを想定している。透過型センサS1は特に限定解釈されるものではなく一般周知のものが本発明の範囲内で適宜選択採用される。
【0025】
係止片部34は、収容部26の側面、すなわち、本実施形態では、ポール3Dと対向する収容部26の側面から水平方向に突設され、係止孔部36を貫通して設けている(図2図3参照。)。係止孔部36は、架け渡し部40のフック部42が着脱自在に係止される。
【0026】
架け渡し部40は、本実施形態ではロープが想定されている。
ロープ40の一端は遮蔽部44の外周に固定されるとともに、該遮蔽部44の外周に卷回されている。そして、ロープ40の他端にはフック部42が備えられており、該フック部42が隣り合うポール3Bに備えた連結ボックス22の係止片部34の係止孔部36に引っ掛けられている。
なお、ロープ40の材質は特に限定解釈されるものではなく、切断・破損し難い材質からなるものが好ましく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0027】
遮蔽部44は、本実施形態では図3に示すプーリー形態の回転円板部が想定されている。
回転円板部44は、その両側面から同軸上に軸部46を突設し、軸部46を介して収容部26内に回動自在に支持されている。回転円板部44は、収容部26内にて、軸支部38に軸46が軸支されて左右方向に回転自在に保持されるとともに、透過型センサS1の入光領域を遮るようにして収容されている(図3図4参照。)。
回転円板部44は、その外周面を周方向に凹設してロープ卷回部44bとし、そのロープ卷回部44bにロープ40の一端を固定するとともに所定量卷回している。なお、ロープ40の卷回量もストローク(ロープ40の引っ張り量)などの仕様に応じて適宜設計変更可能である。このとき、回転円板部44のロープ卷回部44bとなる外周面の幅や外径及び凹設深さ等は仕様に応じて適宜変更可能である。また、例えば、本実施形態にて図示したプーリー式の遮蔽部に代えてスプール式の遮蔽部とすることも本発明の範囲内である。
【0028】
そして、回転円板部44は、例えば、隣り合うポール3A,3B間に所定のテンションで架け渡したロープ40に所定以上のテンションが掛かった際に、透過型センサS1が回転円板部44を検出不可能な非検出構成を備えている。
【0029】
本実施形態では、回転円板部44の一部に切り欠き部48を設けており、この切り欠き部48が、透過型センサS1が回転円板部44を検出不可能な非検出構成として機能する。
【0030】
例えば、本実施形態では次のような構成を想定している。
平常時は、透過型センサS1の入光領域を遮蔽するように回転円板部44が位置していて入光を遮断している。すなわち、ロープ40に所定のテンションが掛かって隣り合うポール(例えば3A・3B)間に架け渡されている平常時において、回転円板部44の円板部分44aが、透過型センサS1の入光領域を遮蔽するように設定する(図4(a)状態)。
また、回転円板部44は、常時、コイルスプリングなどの弾性部材60を介して、ロープ40を引き寄せる方向(図4において時計回り方向)に付勢されている。
【0031】
このように入光を遮断しているときが回転円板部44を検出しているOFF状態(図4(a)状態)となるように設定し、例えば、ロープ40に木の枝や街路灯などが引っ掛かった状態のまま作業床2を旋回移動したような場合において、所定以上のテンションがロープ40に掛かり、回転円板部44が所定方向に回転することで、切り欠き部48が上記入光領域に到達する(図4(b)状態)。これにより、遮蔽状態が解除され入光を検出(遮蔽部の非検出状態を検出)するため、このときにON状態となるように設定する。
そして、このON状態となったときに作業床2の動作を停止させる停止信号を主制御部11Aへと送り、この停止信号を受けた主制御部11Aが、作業床2の移動を制御するように設定する。
また、作業員4が誤ってロープ40に接触したり、ロープ40が風や振動などを受けたりすることによって、ロープ40に不意のテンションが掛かり、回転円板部44が回転して切り欠き部48が入光領域に到達してしまうということもあり得る。このような状況は異常状態(危険状態)ではないため作業床2の旋回移動を抑制しては作業に支障を来たしてしまう。よって、本実施形態では、透過型センサS1が入光を検出しても、一定時間(例えば入光の検出信号を受けてから0.3秒程度)は信号を無視するように設定している。なお、この信号を無視する一定時間は仕様に応じて適宜設計変更可能であり、またこのような信号を無視する時間をあえて設定しないことももちろん可能で本発明の範囲内である。
【0032】
上述のように、ロープ40に木の枝や街路灯などが引っ掛かった状態のまま作業床2を旋回移動したような場合において、所定以上のテンションがロープ40に掛かり、回転円板部44が所定方向に回転することで、切り欠き部48が上記入光領域に到達する(図4(b)状態)ことで、遮蔽状態が解除され、透過型センサS1が入光を検出(遮蔽部の非検出状態を検出)すると、そのb接点(制御装置とともに後に詳述する)を開放する。かかる異常状態を検出した場合には、操作部12や主スイッチであるフットスイッチFを用いての通常のバスケット2の移動・制御が禁止される。
かかる禁止状態は非常動作スイッチSWとフットスイッチFを同時に動作させることで解除されるが、この間の制御の詳細に関しては図6に基づき詳述する。
【0033】
図6は本実施形態に係る高所作業車の制御装置を示すブロック図である。以下、ポール3Aと3Bとの間に架け渡されるロープ40に障害物が干渉した場合を想定して説明する。
図6に示すように、制御装置IIは、高所作業車Iの全体の制御を行うECU(電子制御ユニット)で形成した主制御部11Aと、高所作業車Iの作業の安全を担保するための安全制御部11Bとを有している。
安全制御部11Bは、ロープ40に所定以上のテンションが掛り、透過型センサS1(S2,S3,S4)が入光を検出して動作した場合、主スイッチであるフットスイッチFが動作していても操作部12の操作によるバスケット2の移動を禁止するとともに、フットスイッチFの動作と非常動作スイッチSWの動作を条件として操作部12の操作によるバスケット2の移動を許容する。
【0034】
主制御部11Aは、ジョイスッティックを有する操作部12の操作により開閉制御される電磁弁15を介してブーム旋回モータ16を動作させる。
かかるブーム旋回モータ16の動作により、バスケット2が所定の方向に旋回移動するよう制御する。
【0035】
安全制御部11B中、CはリレーRのコイル、RaはリレーRのa接点、RbはリレーRのb接点、FaはフットスイッチFのメーク接点、FbはフットスイッチFのブレーク接点、S1,S2,S3,S4は各透過型センサの各b接点である。
【0036】
この結果、フットスイッチFの動作時には、メーク接点Faが閉成され、ブレーク接点Fbが開放される。すなわち、フットスイッチFのメーク接点Faとブレーク接点Fbとの間では、一方が閉成時には他方が開放され、一方が開放時には他方が閉成され、いわゆるインターロックが実現されている。a接点Raは主制御部11AのCOM(+12v)端子とメーク接点Faとの間に、b接点Rbはa接点Raの主制御部11A側とブレーク接点Fbの主制御部11A側との間に接続されている。a接点およびb接点を有するリレーRのコイルCは一方がa接点の主制御部11A側でそのCOM端子に接続され、他方が透過型センサのb接点S4に接続されている。ここで、透過型センサS1,S2,S3,S4のb接点は相互に直列に接続されている。また、非常動作スイッチSWは、そのメーク接点SWaがコイルCとb接点S4との間で、b接点S4,S3,S2,S1に並列に接続されている。本形態における非常動作スイッチSWは、プッシュ釦スイッチで好適に形成し得るが、いずれにしてもプッシュ釦の押下等、その操作が継続されている間のみメーク接点SWaが閉成されるスイッチを用いる。
【0037】
上述の如く構成された制御装置IIによる制御は次のような態様で実行される。
1)平常時(バスケット2が障害物に干渉することなく移動している場合)
透過型センサS1,S2,S3,S4はいずれも動作していないので、各b接点は全て閉成されている。この結果、リレーRのコイルCが励磁され、a接点Raを閉成するとともに、b接点Rbを開放する。かかる状態でフットスイッチFを踏み込めばメーク接点Faが閉成され、同時にブレーク接点Fbが解放される。
【0038】
かかる状態で、本形態ではジョイスティックで形成した操作部12の所定の操作を行うことにより主制御部11Aを介して電磁弁15のON/OFFを制御し、適宜ブーム旋回モータ16を駆動してバスケット2を所定の方向に旋回移動する。
【0039】
2)異常検出時(バスケット2が障害物に干渉した状態で移動している場合)
障害物がロープ40に引っ掛かった状態のままバスケット2が所定の旋回移動をすることにより、所定以上のテンションが掛り、回転円板部44が、図4において反時計回り方向に回転し、切り欠き部48が入光領域に到達して透過型センサS1が入光を検出することによって、b接点S1が解放されると、リレーRのコイルCが消勢される。この結果、a接点Raが解放されるとともに、b接点Rbが閉成される。
かかる状態ではフットスイッチFを踏み込んで、操作部12を操作しても電磁弁15を動作させることはできない。リレーRのコイルCが消勢され、a接点Raが解放されているからである。かくしてブーム旋回モータ16を介してのバスケット2の旋回移動が禁止される。
【0040】
3)異常状態の解除時(バスケット2に非常停止位置からの退避時)
透過型センサS1によって入光を検出した上記異常時には、非常用スイッチSWを作動する(プッシュ釦スイッチの場合はスイッチ釦を押下する)。このことによりコイルCを励磁することでa接点Raを閉成し、b接点を開放する。これは、通常時と同様のモードである。そこで、通常時と同様にフットスイッチFを踏み込めばメーク接点Faが閉成され、同時にブレーク接点Fbが開放される。この結果、通常時と同様に、操作部12を操作することにより電磁弁15を制御し、ブーム旋回モータ16を駆動させてバスケット2を旋回移動することができる。この結果、透過型センサS1の動作状態が解除される。ここで、非常用スイッチSWは押下している間、動作してメーク接点SWaが閉成されているので、コイルCの励磁状態も継続される。そこで、ロープ40と障害物の接触が解除されるまで非常用スイッチSWを押下した状態で、同時に操作部12を操作してバスケット2を障害物との干渉がない位置に移動する。
【0041】
なお、本実施形態では、ロープ40が切断・破損し難い材質からなるものをもって説明したが、ロープ40を切断・破損し易い材質からなるものとしてもよい。すなわち、木の枝などの障害物にロープ40が引っ掛かった状態のままバスケット2を旋回移動し、所定以上のテンションが掛かってロープ40が切断されると、弾性部材60の戻り力によって入光領域に切り欠き部48が位置するように設計すれば上記実施の形態と同様の作用効果を発揮することができ、このように構成することも本発明の範囲内である。
また、連結ボックス22に別途図示しない振動センサを備え、連結ボックス22に障害物が干渉した場合であってもその干渉時の振動を検出してアラートを出したり、停止信号を送るようにしたりすることも可能で本発明の範囲内である。
【0042】
また、本実施の形態では、検出部の一実施の形態として透過型センサS1(S2,S3,S4)をもって説明したが、反射型センサを採用することも本発明の範囲内であって適宜設計変更可能である。
「他の実施の形態」
【0043】
透過型センサ50が回転円板部44を検出不可能な非検出構成の他の実施形態として、例えば図5に示すものが一例としてあげられる。
図5は、第一の障害物検出センサ20の他の実施の一形態の要部を示す概略断面図で、(a)は遮蔽部(回転円板部)44の検出状態を示し、(b)は遮蔽部(回転円板部)44の非検出状態を示す。
【0044】
本実施の形態では、回転円板部44の構成において上記実施の形態と相違しており、その他の構成及び作用効果は上記実施の形態と同じである。
本実施の形態では、回転円板部44に切り欠き部48を有していないものを想定している。そして、本実施の形態では、所定以上のテンションがロープ40に掛かると、蓋部30の嵌合状態を解除して回転円板部44が収容部26から外に飛び出す(離脱する)ことで、透過型センサS1の入光領域から外れ、遮蔽状態を解除するような構成を想定している。
本実施の形態による作用効果は上記実施の形態と同じであるため、上記実施の形態の説明を援用し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
次に第二の障害物検出センサ70の一実施形態について説明する。
【0046】
第二の障害物検出センサ70は、バスケット2の上方への移動した際の障害物との接触を回避、あるいは接触した際の危険を回避するものである。
例えば、本実施形態では、ポール3A,3B,3C,3Dの先端に、リミットスイッチL1,L2,L3,L4がそれぞれ上方に向けて突設されている。
各リミットスイッチL1~L4は、可撓性部材で形成したアクチュエータL1a,L2a,L3a,L4aを有している。これは、障害物に接触した場合に各アクチュエータL1a~L4aが撓むことにより接触時の衝撃を吸収させるためである。
【0047】
バスケット2の上昇移動に伴い、バスケット2が障害物に干渉する虞が生起された場合には、いずれかのアクチュエータL1a~L4aが障害物に接触して撓むことにより、対応するリミットスイッチL1~L4が動作して、そのb接点(制御装置とともに後に詳述する)を開放する。かかる異常状態を検出した場合には、操作部12や主スイッチであるフットスイッチFを用いての通常のバスケット2の移動・制御が禁止される。かかる禁止状態は非常動作スイッチSWとフットスイッチFを同時に動作させることで解除されるが、この間の制御の詳細に関しては図6に基づき詳述する。
【0048】
図6は本実施形態に係る高所作業車の制御装置を示すブロック図である。同図に示すように、制御装置IIは、高所作業車Iの全体の制御を行うECU(電子制御ユニット)で形成した主制御部11Aと、高所作業車Iの作業の安全を担保するための安全制御部11Bとを有している。安全制御部11Bは、障害物検出センサであるリミットスイッチL1~L4(図2参照。以下、同じ)が障害物を検出して動作した場合、主スイッチであるフットスイッチF(図2参照。以下、同じ)が動作していても操作部12の操作によるバスケット2(図1図2参照。以下、同じ)の移動を禁止するとともに、フットスイッチFの動作と非常動作スイッチSW(図2参照。以下、同じ)の動作を条件として操作部12の操作によるバスケット2の移動を許容する。
【0049】
主制御部11Aは、ジョイスッティックを有する操作部12の操作により開閉制御される電磁弁13を介して油圧シリンダ14を動作させる。かかる油圧シリンダ14の動作により高所作業車Iの各ブーム1(図1参照;以下同じ)を各油圧シリンダ14により伸縮させて、バスケット2が所定の位置に移動するよう制御する。
【0050】
安全制御部11B中、CはリレーRのコイル、RaはリレーRのa接点、RbはリレーRのb接点、FaはフットスイッチFのメーク接点、FbはフットスイッチFのブレーク接点、L1b,L2b,L3b,L4bはリミットスイッチL1~L4の各b接点である。
【0051】
この結果、フットスイッチFの動作時には、メーク接点Faが閉成され、ブレーク接点Fbが開放される。すなわち、フットスイッチFのメーク接点Faとブレーク接点Fbとの間では、一方が閉成時には他方が開放され、一方が開放時には他方が閉成され、いわゆるインターロックが実現されている。a接点Raは主制御部11AのCOM(+12v)端子とメーク接点Faとの間に、b接点Rbはa接点Raの主制御部11A側とブレーク接点Fbの主制御部11A側との間に接続されている。a接点およびb接点を有するリレーRのコイルCは一方がa接点の主制御部11A側でそのCOM端子に接続され、他方がリミットスイッチL4のb接点L4bに接続されている。ここで、リミットスイッチL1~L4のb接点L1b,L2b,L3b,L4bは相互に直列に接続されている。また、非常動作スイッチSWは、そのメーク接点SWaがコイルCとb接点L4bとの間で、b接点L4b,L3b,L2b,L1bに並列に接続されている。本形態における非常動作スイッチSWは、プッシュ釦スイッチで好適に形成し得るが、いずれにしてもプッシュ釦の押下等、その操作が継続されている間のみメーク接点SWaが閉成されるスイッチを用いる。
【0052】
上述の如く構成された制御装置IIによる制御は次のような態様で実行される。
1)通常時(バスケット2が障害物干渉することなく移動している場合)
リミットスイッチL1~L4はいずれも動作していないので、b接点L1b~L4bは全て閉成されている。この結果、リレーRのコイルCが励磁され、a接点Raを閉成するとともに、b接点Rbを開放する。かかる状態でフットスイッチFを踏み込めばメーク接点Faが閉成され、同時にブレーク接点Fbが解放される。
【0053】
かかる状態で、本形態ではジョイスティックで形成した操作部12の所定の操作を行うことにより主制御部11Aを介して電磁弁13のON/OFFを制御し、適宜油圧シリンダ14を駆動してブーム1を移動し、バスケット2を所定の位置に移動する。
【0054】
2)異常検出時(リミットスイッチL1~L4の動作時)
バスケット2が所定の作業範囲(A+B)(図1参照;以下同じ)内に在ってもリミットスイッチL1~L4の何れか一個が障害物に接触することによってb接点L1b~L4bの何れか一個が解放されると、リレーRのコイルCが消勢される。この結果、a接点Raが解放されるとともに、b接点Rbが閉成される。
【0055】
かかる状態ではフットスイッチFを踏み込んで、操作部12を操作しても電磁弁13を動作させることはできない。リレーRのコイルCが消勢され、a接点Raが解放されているからである。かくしてブーム1を介してのバスケット2の移動が禁止される。
【0056】
3)異常状態の解除時(バスケット2に非常停止位置からの退避時)
リミットスイッチLS1~LS4の動作によりバスケット2の移動が禁止された異常時には、非常用スイッチSWを作動する(プッシュ釦スイッチの場合はスイッチ釦を押下する)。このことによりコイルCを励磁することでa接点Raを閉成し、b接点を開放する。これは、通常時と同様のモードである。そこで、通常時と同様にフットスイッチFを踏み込めばメーク接点Faが閉成され、同時にブレーク接点Fbが開放される。この結果、通常時と同様に、操作部12を操作することにより電磁弁13を制御し、油圧シリンダ14を駆動させてバスケット2を移動することができる。この結果、リミットスイッL1~L4の動作状態が解除される。ここで、非常用スイッチSWは押下している間、動作してメーク接点SWaが閉成されているので、コイルCの励磁状態も継続される。そこで、リミットスイッL1~L4と障害物の接触が解除されるまで非常用スイッチSWを押下した状態で、同時に操作部12を操作してバスケット2を障害物との干渉がない位置に移動する。
【0057】
なお、本実施の形態ではブーム式の高所作業車で説明したが、他の形式、例えば垂直昇降式の高所作業車であっても構わない。ここで、垂直昇降式とは、作業床であるプラットホームが垂直に昇降する構造のものである。
【0058】
また、上記実施の形態においては、リミットスイッチL1~L4でバケット2の上方の障害物を検出するようにしたが、これに限るものではない。例えば水平方向に存在する障害物の検出に利用できるように構成することもできる。この場合には、例えばリミットスイッチL1~L4をバスケット2から水平方向に突出させれば良い。障害物検出センサとしてのリミットスイッチL1~L4もこれに限るものではない。例えば、近接センサで代替することもできる。
【0059】
また、主スイッチをフットスイッチFに限定するものでもない。マスターキー方式のキーを操作して動作させるスイッチでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、トラック式高所作業車、自走式高所作業車、あるいは作業台など、昇降機構によって昇降可能な作業台を備えた高所作業に用いられる作業装置全般に利用可能であって、車両及び車両以外のものも含む。また、旋回構造を備えていない高所作業装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
I 高所作業車
1 昇降機構(ブーム)
2 作業床(バスケット)
3A,3B,3C,3D 領域仕切り部(ポール)
11 主制御部
12 操作部
20 第一の障害物検出機構(第一の障害物検出センサ)
40 架け渡し部(ロープ)
44 遮蔽部(回転円板部)
48 非検出構成(切り欠き部)
S1,S2,S3,S4 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6