(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】イオン交換装置
(51)【国際特許分類】
B01J 47/022 20170101AFI20240301BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20240301BHJP
B01J 49/60 20170101ALI20240301BHJP
B01J 49/05 20170101ALI20240301BHJP
【FI】
B01J47/022
C02F1/42 A
B01J49/60
B01J49/05
(21)【出願番号】P 2020086792
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】島崎 敦
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-043610(JP,A)
【文献】特開平01-127047(JP,A)
【文献】特開昭56-141844(JP,A)
【文献】特開平09-206744(JP,A)
【文献】特開2017-170271(JP,A)
【文献】特開2012-200709(JP,A)
【文献】特開2011-201115(JP,A)
【文献】中国実用新案第208898566(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0277298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 39/00-49/90
C02F 1/42
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液をイオン交換処理し処理液とするイオン交換手段を充填する充填部と、
前記イオン交換手段に通液した被処理液と当該イオン交換手段とを分離する固液分離部と、
前記イオン交換手段に対し被処理液を通液する方向に行くに従い流路が狭くなり、前記固液分離部に向け、当該イオン交換手段に通液した被処理液を導く案内部と、
を備え
、
前記案内部は、複数設けられ、
複数の前記案内部同士は、被処理液を通液する方向から見たときに隙間を生じることなく、敷き詰められる平面充填になるように配され、
複数の前記案内部は、被処理液を通液する方向から見たときにハニカム構造をなすように配される、
イオン交換装置。
【請求項2】
前記案内部の上部は、被処理液を通液する方向から見たときに正六角形であり、当該正六角形の各辺は隣接する案内部の正六角形の各辺と接することを特徴とする請求項1に記載のイオン交換装置。
【請求項3】
前記案内部は6枚の板状部材からなることを特徴とする請求項
1または2に記載のイオン交換装置。
【請求項4】
前記板状部材は三角形状または台形形状であることを特徴とする請求項3に記載のイオン交換装置。
【請求項5】
前記充填部の内壁から当該内壁に隣接する前記案内部に、前記イオン交換手段に通液した被処理液を導く第2の案内部をさらに備えることを特徴とする請求項
1乃至4の何れか1項に記載のイオン交換装置。
【請求項6】
前記第2の案内部は、前記案内部に連続して設けられ、当該第2の案内部は、前記充填部の内壁から前記案内部に向かう方向に行くに従い流路が狭くないような傾斜部であることを特徴とする請求項5に記載のイオン交換装置。
【請求項7】
前記固液分離部を配するための開口部が設けられるとともに、前記案内部を配するための板部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至
6の何れか1項に記載のイオン交換装置。
【請求項8】
前記固液分離部は、前記板部に配された状態で、前記案内部の底部となる位置に配されることを特徴とする請求項
7に記載のイオン交換装置。
【請求項9】
前記固液分離部の前記底部からの高さは、前記案内部の当該底部からの高さより低いことを特徴とする請求項
8に記載のイオン交換装置。
【請求項10】
一の前記案内部の前記底部となる位置に、一の前記固液分離部が配されることを特徴とする請求項
8または
9に記載のイオン交換装置。
【請求項11】
被処理液をイオン交換処理し処理液とするイオン交換手段を充填する充填部と、
前記イオン交換手段の再生を行う際に、当該イオン交換手段に再生液を導入する導入部と、
前記イオン交換手段に再生液を通液する方向に行くに従い流路が広くなり、前記導入部から当該イオン交換手段に向け、再生液を導く案内部と、
を備え
、
前記案内部は、複数設けられ、
複数の前記案内部同士は、再生液が通液される方向から見たときに隙間を生じることなく、敷き詰められる平面充填になるように配され、
複数の前記案内部は、再生液が通液される方向から見たときにハニカム構造をなすように配される、
イオン交換装置。
【請求項12】
再生液は、前記イオン交換手段に上向流にて通液することを特徴とする請求項
11に記載のイオン交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換装置に係り、より詳しくは、例えば、工業用水、糖液、塩水等の被処理液を処理するために使用するイオン交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水、糖液、塩水等の被処理液中からイオン類を除去するための装置としてイオン交換装置が知られている。このイオン交換装置には、イオン交換樹脂等のイオン交換手段が内部に充填されている。そしてイオン交換手段に被処理液を通液することで、被処理液中に含まれるイオン類とイオン交換手段に具備されたイオンとがイオン交換し、これによりイオン類を除去する。イオン交換処理後は、イオン交換手段と被処理液とは分離され、処理液としてイオン交換装置の外部に取り出される。
またイオン交換装置は、工業用水を処理して純水を製造するのみならず、例えば、糖液の脱色や脱塩、塩水の精製など種々の分野において利用されている。
【0003】
特許文献1には、向流式イオン交換装置が開示されている。この向流式イオン交換装置は、上、下部に各々鏡板を有し、内部にイオン交換樹脂層を内蔵した下向流通水・上向流再生を行う向流式イオン交換装置において、下部鏡板中心近傍に排水用集水装置を配備する。そして、その上方に集配水装置を設けると共に、集水装置を水より比重が大きい高比重不活性樹脂により埋覆し、高比重不活性樹脂層の上部にイオン交換樹脂層が配備されている。また上部鏡板部又は上部鏡板部近傍に上部集配水装置を配備し、その上方に洗浄排水装置を兼ねる空気抜用集水装置を設けると共に、イオン交換樹脂層上方に空間部を介して、水より比重が小さい浮上性不活性樹脂が集水装置を埋蔵するように配備されている。
【0004】
特許文献2には、アニオン交換槽と、カチオン交換槽と、塔体側部とを備えるイオン交換装置が開示されている。このイオン交換装置は、アニオン交換槽およびカチオン交換槽の外を引き回された連通手段によってアニオン交換槽とカチオン交換槽とが連通され、アニオン交換槽の上部および下部に液を供給又は排出するための給排配管とカチオン交換槽の上部および下部に液を供給又は排出するための給排配管とを備えている。平板には、水は通すがイオン交換樹脂の通過を阻止する集配水部材が配置され、上部給排配管、第1の連通配管、第2の連通配管及び下部給排配管の末端がそれぞれ集配水部材に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-206744号公報
【文献】特開2017-170271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イオン交換樹脂等のイオン交換手段を再生するときは、イオン交換手段に再生液を、イオン交換装置の導入部から導入し、イオン交換手段に通液することで行う。このときイオン交換手段への液流れを良くするため、導入部の近辺にセラミックビーズを配し、イオン交換樹脂を導入部から離して充填する場合がある。
しかしながら、セラミックビーズは、イオン交換手段の再生後に洗浄を行う際に、洗浄性が良いとは言えない。また、セラミックビーズは、一般に高価であり、イオン交換装置の運転費用がより高額になりやすい。
本発明の目的は、セラミックビーズを使用しなくても、イオン交換樹脂を再生する際に、再生液の液流れが悪くなりにくいイオン交換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして本発明によれば、被処理液をイオン交換処理し処理液とするイオン交換手段を充填する充填部と、イオン交換手段に通液した被処理液とイオン交換手段とを分離する固液分離部と、イオン交換手段に対し被処理液を通液する方向に行くに従い流路が狭くなり、固液分離部に向け、イオン交換手段に通液した被処理液を導く案内部と、を備え、案内部は、複数設けられ、複数の案内部同士は、被処理液を通液する方向から見たときに隙間を生じることなく、敷き詰められる平面充填になるように配され、複数の案内部は、被処理液を通液する方向から見たときにハニカム構造をなすように配される、イオン交換装置が提供される。
処理液や再生液を固液分離部に向け、より円滑に導くことができる。また、再生時に、再生液をイオン交換手段に向け、より円滑に導くことができる。案内部の製造がより容易になる。
【0008】
ここで、案内部の上部は、被処理液を通液する方向から見たときに正六角形であり、正六角形の各辺は隣接する案内部の正六角形の各辺と接するようにすることができる。
また、案内部は6枚の板状部材からなるようにすることができる。
そして、板状部材は三角形状または台形形状とすることができる。
さらに、充填部の内壁から内壁に隣接する案内部に、イオン交換手段に通液した被処理液を導く第2の案内部をさらに備えるようにすることができる。この場合、処理液や再生液をさらに円滑に導くことができる。
ここで、第2の案内部は、案内部に連続して設けられ、第2の案内部は、充填部の内壁から案内部に向かう方向に行くに従い流路が狭くなるような傾斜部とすることができる。
そして、固液分離部を配するための開口部が設けられるとともに、案内部を配するための板部をさらに備えるようにすることができる。この場合、分離した処理液を板部の下方で集液し、さらに外部に排出することができる。
また、固液分離部は、板部に配された状態で、案内部の底部となる位置に配されるようにすることができる。この場合、案内部により導かれた処理液を、より効率よく固液分離部に取り込むことができる。
さらに、固液分離部の底部からの高さは、案内部の底部からの高さより低いようにすることができる。この場合、案内部により導かれた処理液を、より効率よく固液分離部に取り込むことができる。
そして、一の案内部の底部となる位置に、一の固液分離部が配されるようにすることができる。この場合、処理液や再生液をさらに円滑に導くことができる。
【0009】
また本発明によれば、被処理液をイオン交換処理し処理液とするイオン交換手段を充填する充填部と、イオン交換手段の再生を行う際に、イオン交換手段に再生液を導入する導入部と、イオン交換手段に再生液を通液する方向に行くに従い流路が広くなり、導入部からイオン交換手段に向け、再生液を導く案内部と、を備え、案内部は、複数設けられ、複数の案内部同士は、再生液が通液される方向から見たときに隙間を生じることなく、敷き詰められる平面充填になるように配され、複数の案内部は、再生液が通液される方向から見たときにハニカム構造をなすように配される、イオン交換装置が提供される。
ここで、再生液は、イオン交換手段に上向流にて通液するようにすることができる。この場合、イオン交換手段の再生処理の効率がより向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セラミックビーズを使用しなくても、イオン交換樹脂を再生する際に、再生液の液流れが悪くなりにくいイオン交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態のイオン交換装置について説明した断面図である。
【
図2】ストレーナの構造について示した断面図である。
【
図3】ガイド部の構造について示した斜視図である。
【
図4】(a)は、
図3のIVa方向から見たときの図である。さらに、(b)は、(a)のIVb-IVb断面図であり、イオン交換樹脂に通液後の被処理液の液流れの状態について示した図である。
【
図5】(a)~(c)は、第1ガイド部を他の形状とした場合を示している。
【
図6】(a)~(b)は、イオン交換樹脂の再生を行う際の、再生液の液流れの状態について示した図である。
【
図7】(a)~(b)は、実施例1で使用するイオン交換装置の大きさおよび流量を説明した図である。
【
図8】(a)は、実施例1で使用した試験機のイオン交換装置を示した図である。(b)は、比較例1で使用したイオン交換装置について示した図である。(c)は、比較例2で使用したイオン交換装置について示した図である。
【
図9】実施例1、比較例1、2の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施する形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0013】
〔イオン交換装置〕
図1は、本実施の形態のイオン交換装置1について説明した断面図である。
図1に示したイオン交換装置1は、全体としては、略円筒形状のカラムである。
イオン交換装置1は、イオン交換樹脂Iを充填する充填部10と、被処理液を導入するディストリビュータ20と、被処理液をイオン交換樹脂Iから分離するストレーナ30と、ストレーナに被処理液を集液するガイド部40と、ストレーナ30およびガイド部40を取り付ける目皿板50とを備える。また、
図1では、本実施の形態のイオン交換装置1を構成するものではないが、イオン交換手段の一例としてイオン交換樹脂Iを併せて図示している。また、被処理液を通液する方向である通液方向を図示している。図示するように、本実施の形態では、被処理液は、下向流にて通液する。
【0014】
充填部10は、内部にイオン交換樹脂Iを充填し、被処理液をイオン交換処理するための反応塔である。イオン交換樹脂Iは、被処理液をイオン交換処理し処理液とする。本実施の形態で用いられるイオン交換樹脂Iに、特に制限はなく、一般的な陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を用いることができる。また、イオン交換樹脂Iは、キレート樹脂や合成吸着剤であってもよい。イオン交換樹脂Iの形状としては、粒状、円筒形状など種々の形状のものが充填可能であり、特に制限はない。また大きさとしては、例えば、0.1mm以上1mm以下である。イオン交換樹脂Iは、充填部10に、例えば、約5割を占めるかさ体積になるように充填される。
【0015】
本実施の形態のイオン交換装置1でイオン交換処理を行う被処理液は、特に制限されるものではないが、例えば、純水を製造するために使用される原水としての工業用水や水道水である。また、被処理液は、脱色や脱塩に供される糖液や、精製に供される塩水であってもよい。ただし、通常は、フィルタ等を備える濾過器等による固形物の除去を行うことが好ましい。また、活性炭処理装置等により活性炭処理を行い、被処理液中に含まれる溶剤などの有機物や重金属イオンなどを除去する処理を予め行うようにしてもよい。
【0016】
充填部10は、イオン交換樹脂Iや被処理液の重量を支えることができる材料からなる。具体的には、充填部10は、例えば、炭素鋼、ステンレス、樹脂等の材料からなる。また、充填部10の内部にライニングを施すこともできる。ライニングを施すことにより、充填部10を構成する材料と被処理液やイオン交換樹脂の再生等に供する再生液とを非接触にすることができる。これにより、強度は有するが耐食性に劣る材料であっても、充填部10の材料として使用することができる。そして、イオン交換装置1のメンテナンスの頻度を低減することができ、イオン交換装置1の装置寿命を長くすることができる。ライニングの材質は、被処理液に含まれる陽イオンや陰イオンの種類、被処理液の種類や使用する再生液などにより適宜選択することができる。具体的には、例えば、硬質ゴム等からなるゴムライニングを用いることができる。
【0017】
充填部10は、上方に位置する上部鏡部11と、中央部に位置する直胴部12と、下方に位置する下部鏡部13とを備える。
上部鏡部11は、図示するように、下部が直胴部12の内部に通じる開口を有するとともに、上部に弧状に湾曲する膨らみを有し、充填部10の上部を塞ぐ。上部鏡部11は、被処理液を導入するための配管H1が挿入される。なお、
図1では、配管H1は、上部から挿入されているが、側部から挿入するようにしてもよい。
直胴部12は、円筒形をなす部材である。イオン交換樹脂Iは、主に直胴部12の内部に充填される。
下部鏡部13は、図示するように、上部が直胴部12の内部に通じる開口を有するとともに、下部に弧状に湾曲する膨らみを有し、充填部10の下部を塞ぐ。イオン交換樹脂Iを通液後の処理液は、下部鏡部13の内壁を伝って下方向に移動する。そして下部鏡部13の下部に設けられた出口部13aに集められる。そして、処理液は、出口部13aから、配管H2によりイオン交換装置1の外部に排出することができる。
【0018】
上部鏡部11と直胴部12とは、ボルトおよびナットにより接続する。また、直胴部12と下部鏡部13とは、後述する目皿板50を挟み、ボルトおよびナットにより接続する。
【0019】
ディストリビュータ20は、例えば、多数の小孔を設けた管状体をなす。実際には、ディストリビュータ20は、配管H1を中心に複数の管状体が、イオン交換樹脂Iの上方に放射状に設けられる。そしてディストリビュータ20の小孔から被処理液を散布することでイオン交換樹脂Iに、より均一に被処理液を供給することができる。
【0020】
ストレーナ30は、イオン交換樹脂Iに通液した被処理液とイオン交換樹脂Iとを分離する固液分離部の一例である。
図2は、ストレーナ30の構造について示した断面図である。
ストレーナ30は、イオン交換樹脂Iと処理液とを分離する機能を有する上部頭部31と、処理液を排出する下部頭部33と、上部頭部31と下部頭部33とを接続する取り付け部32とからなる。
【0021】
上部頭部31は、目皿板50を挟み、直胴部12側に儲けられ、イオン交換樹脂Iと処理液とを分離するためのスリットSが複数設けられている。そしてスリットSは、固体であるイオン交換樹脂Iが通過できる幅より狭く作成される。つまりこの場合、イオン交換樹脂IはスリットSを通過できないが、液体である処理液は、スリットSを通過できるため、これによりイオン交換樹脂Iと処理液との分離を行うことができる。つまり固液分離を行うことができる。
【0022】
上部頭部31、取り付け部32および下部頭部33の内部は、中空になっており、これらの中空部は、ストレーナ30の中空部として互いに繋がっている、よって、上部頭部31のスリットSを通過した処理液は、上部頭部31、取り付け部32、下部頭部33の中空部を順に通過する。
【0023】
下部頭部33は、目皿板50を挟み、下部鏡部13側に儲けられ、スリットSが複数設けられている。よって、下部頭部33の中空部に達した処理液は、さらにスリットSから排出される。そして以後、処理液は、
図1で説明したように、イオン交換装置1の外部に排出される。
以上のような構造のストレーナ30を使用することで、直胴部12内で精製された処理液をイオン交換樹脂から分離して取り出すとともに、処理液を下部鏡部13の側に排出する処理を連続的に行うことができる。
【0024】
上部頭部31、取り付け部32および下部頭部33は、例えば、ねじこみやはめ込みにより互いに接続することで、ストレーナ30として、目皿板50に固定することができる。
ストレーナ30は、例えば、熱可塑性を有する樹脂等の材料からなり、射出成形等により製造することができる。またストレーナ30は、イオン交換樹脂Iと処理液とを均一かつより高速に分離できるという観点から、複数個取り付けられる。
【0025】
図1に戻り、ガイド部40は、イオン交換樹脂Iを通液した被処理液をストレーナ30に導く。
図3は、ガイド部40の構造について示した斜視図である。また、
図4(a)は、
図3のIVa方向から見たときの図である。さらに、
図4(b)は、
図4(a)のIVb-IVb断面図であり、イオン交換樹脂Iに通液後の被処理液の液流れの状態について示した図である。
【0026】
図3に示すように、ガイド部40は、第1ガイド部41と、第2ガイド部42とを備える。
図4(b)に示すように、第1ガイド部41は、イオン交換樹脂Iに対し被処理液を通液する方向に行くに従い流路が狭くなる。そしてこれにより、液は、第1ガイド部41に沿って矢印方向に流れ、ストレーナ30に達する。つまり、第1ガイド部41は、ストレーナ30に向け、イオン交換樹脂Iに通液した被処理液を導く案内部として機能する。
【0027】
第1ガイド部41は、複数設けられ、一のストレーナ30に対し、一の第1ガイド部41が配される。ただし、複数のストレーナ30に対し、1つの第1ガイド部41が設けられるようにすることを妨げるものではない。
【0028】
そして、複数の第1ガイド部41同士は、被処理液を通液する方向から見たときに平面充填になるように配される。この場合、「複数の第1ガイド部41同士が平面充填になる」とは、複数の第1ガイド部41同士が、ほぼ隙間を生じることなく、敷き詰められることを意味する。また、本実施の形態では、複数の第1ガイド部41は、被処理液を通液する方向から見たときにハニカム構造をなすように配される。つまり、第1ガイド部41の上部は、正六角形状となり、その各辺は、隣接する第1ガイド部41の正六角形状の各辺と接する。これにより、それぞれが正六角形状をなす複数の第1ガイド部41は、ハニカム構造となる。
【0029】
第1ガイド部41は、通液する方向に行くに従い、流路が狭くなるため、第1ガイド部41の最上部では、最も流路が広く、底部では、最も流路が狭くなる。よって、複数の第1ガイド部41がハニカム構造をなす場合、各第1ガイド部41は、6枚の三角形状あるいは台形形状の板状部材からなる。そして、各第1ガイド部41の底部は、目皿板50であり、またこの位置にストレーナ30が配される。よって、ストレーナ30は、目皿板50に配された状態で、第1ガイド部41の底部となる位置に配される、と言うこともできる。
そして、ストレーナ30の底部からの高さh1は、第1ガイド部41の底部からの高さh2より低い。これにより、第1ガイド部41により導かれた処理液を、より効率よくストレーナ30に取り込むことができる。
【0030】
また、複数のガイド部41の外縁部は、正六角形状の各辺となり、円形状の充填部10の内壁に隙間なく接することができない。よって、本実施の形態では、充填部10の内壁からこの内壁に隣接する第1ガイド部41に、イオン交換樹脂Iに通液した被処理液を導く第2ガイド部42をさらに設ける。即ち、充填部10の内壁から第1ガイド部41に向かう方向に行くに従い流路が狭くなるような傾斜部を設ける。第2ガイド部42を設けることで、充填部10の内壁に沿って流れてくる被処理液を、第1ガイド部41に導くことができる。そして、被処理液は、第1ガイド部41により、ストレーナ30に導くことができる。つまり、本実施の形態では、被処理液をストレーナ30に向け、よどみが生じるのを抑制しつつ流通させ、導くことができる。つまり、第2ガイド部42は、第2の案内部として機能する。
【0031】
図5(a)~(c)は、第1ガイド部41を他の形状とした場合を示している。
このうち、
図5(a)~(b)は、複数の第1ガイド部41が、平面充填となる場合を示し、
図5(c)は、複数の第1ガイド部41が、平面充填とならない場合を示している。
図5(a)は、各第1ガイド部41を矩形とすることで、複数の第1ガイド部41同士が平面充填となる場合を示している。また、
図5(b)は、各第1ガイド部41を三角形とすることで、複数の第1ガイド部41同士が平面充填となる場合を示している。複数の第1ガイド部41同士が平面充填となることで、各第1ガイド部41の間に隙間が生じない。これにより、処理液の流れによどみが生じるのを抑制しつつ流通させ、ストレーナ30に向け、導くことができる。なお、平面充填となるために使用する図形としては、同じ図形を使用する必要はなく、例えば、矩形と三角形との組み合わせなどであってもよい。ただし、処理液をより円滑に導くことができるとともに、製造の容易さの観点から、上述したハニカム構造とすることが好ましい。
【0032】
対して、
図5(c)は、各第1ガイド部41を円形とすることで、複数の第1ガイド部41同士に隙間が生じた例を示している。この場合、隙間の部分で処理液がよどみやすくなり、処理液の流通が円滑になりにくくなる。
【0033】
再び
図1に戻り、目皿板50は、直胴部12と下部鏡部13との間を仕切る部材である。目皿板50は、ストレーナ30を配するための開口部が設けられるとともに、ガイド部41を配するための板部の一例である。よって、目皿板50は、イオン交換樹脂Iを支えるとともに、ストレーナ30やガイド部40を支える強度を有する材料からなる。目皿板50は、充填部10と同様に、例えば、炭素鋼、ステンレス、樹脂等の材料からなる。また、目皿板50の表面にライニングを施すこともできる。
【0034】
また、イオン交換樹脂Iは、イオン交換能力に上限があるため、再生処理を必要とする。このとき、再生液を、被処理液を通液する方向とは逆方向に流す。つまり、再生液は、イオン交換樹脂Iに上向流にて通液する。
つまり、再生液は、配管H2から出口部13aを経て、充填部10に入る。そして、ストレーナ30を通過し、イオン交換樹脂Iに上向流にて通液する。そして、イオン交換樹脂Iを通液後は、ディストリビュータ20の小孔に入り、配管H1から外部に排出される。
このとき、ストレーナ30は、イオン交換手段の再生を行う際に、イオン交換樹脂Iに再生液を導入する導入部として機能する。そして、ガイド部40は、ストレーナ30からイオン交換樹脂Iに向け、再生液を導く案内部として機能する。
再生液は、イオン交換樹脂が、陽イオン交換樹脂である場合は、例えば、塩酸や硫酸等の酸の水溶液を用いることができる。また、イオン交換樹脂が、陰イオン交換樹脂である場合は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液や水酸化カリウム(KOH)水溶液である。また炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液やアンモニア(NH3)水溶液を用いる場合もある。
【0035】
図6(a)~(b)は、イオン交換樹脂Iの再生を行う際の、再生液の液流れの状態について示した図である。
このうち、
図6(a)は、本実施の形態のガイド部40を設けた場合の再生液の液流れの状態について示した図である。また、
図6(b)は、ガイド部40を設けなかった場合の再生液の液流れの状態について示した図である。
【0036】
図6(a)に図示するように、再生の際は、ガイド部40の第1ガイド部41は、イオン交換樹脂Iに再生液を通液する方向に行くに従い流路が広くなる。そしてこれにより、液は、第1ガイド部41に沿って矢印方向に流れ、イオン交換樹脂Iに通液する。つまり、第1ガイド部41を設けることで、イオン交換樹脂Iに向け、再生液を、よどみが生じるのを抑制しつつ流通させることができる。また、第2ガイド部42を設けることで、再生液を、充填部10の内壁に沿って流れる方向に導くことができる。この場合も、第2ガイド部42を設けることで、充填部10の内壁に沿って、再生液を、よどみが生じるのを抑制しつつ流通させることができる。また、再生後に水洗を行い、再生液を洗い流す際に、水洗性が良好となる。
【0037】
対して、
図6(b)に図示するように、ガイド部40がないときは、ストレーナ30から排出された再生液は、ストレーナの両側には流れにくく、よどみ部Dが生じる。その結果、よどみ部Dに充填されるイオン交換樹脂Iに再生液が流通しにくくなる。また、再生後に水洗を行い、再生液を洗い流す際に、よどみ部Dの箇所で、水洗性が悪くなりやすい。なお、水洗の際は、再生液と同様に、水を上向流にて供給する。
【0038】
本実施の形態のイオン交換装置1では、被処理液をイオン交換樹脂Iによりイオン交換し、処理液とする運転時と、イオン交換樹脂Iを再生液により再生する再生時との双方において、ガイド部40を設けることで液流れを円滑にすることができる。ただし、ガイド部40を設けることで、再生時において、よどみ部Dが生じにくくなり、水洗性が良好となる効果が特に大きい。そして、イオン交換樹脂Iの水洗に要する水量の節減や、水洗に要する時間の短縮に対する寄与が大きい。
【0039】
なお、上述した例では、被処理液をイオン交換樹脂Iによりイオン交換処理するときは、下向流で通液し、イオン交換樹脂Iの再生時には、上向流で通液したが、これに限られるものではない。例えば、被処理液をイオン交換樹脂Iによりイオン交換処理するときに、上向流とし、再生時に下向流とすることもできる。また、双方の通液方向をともに上向流や下向流とし、通液方向を同じとすることもできる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
図7(a)~(b)は、実施例1で使用するイオン交換装置1の大きさおよび流量を説明した図である。また、
図8(a)は、実施例1で使用した試験機のイオン交換装置1を示した図である。
このうち、
図7(a)は、イオン交換装置1の実機について示した図であり、
図7(b)は、実機に運転条件を合わせた試験機について示した図である。
図7(a)に示すように、実機のイオン交換装置1は、φ680mm×H10000mmの大きさを有する。一方、試験機のイオン交換装置1は、これと相似形とし、
図7(b)に示すように、φ100mm×H425mmの大きさとした。
【0042】
そして、実機のイオン交換装置1では、イオン交換樹脂Iの水洗時の線速度(LV)は、25m/hであり、空間速度(SV)は、25h-1、流量(Q)は、151.3L/minである。一方、試験機のイオン交換装置1は、このうち空間速度(SV)を同じとし、線速度(LV)は、10m/h、空間速度(SV)は、25h-1、流量(Q)は、1.3L/minとした。
【0043】
また、ストレーナ30は、実機のイオン交換装置1では、φ50mm×H50mmの大きさのものが複数個配される。一方、試験機のイオン交換装置1は、φ20mm×H20mmの大きさのものを1個とした。
【0044】
そして、
図8(a)に示す試験機のイオン交換装置1を用いて、イオン交換樹脂Iの再生を行った、このときイオン交換樹脂Iは、三菱ケミカル株式会社製のダイヤイオンUBA100(OH形)を用いた。そして再生液として、3%-NaOHを用いた。そして、イオン交換樹脂Iの再生後に、上記条件にて水洗を行った。
【0045】
(比較例1)
図8(b)は、比較例1で使用したイオン交換装置2について示した図である。
図8(b)で示すイオン交換装置2は、
図8(a)で使用した、実施例1のイオン交換装置1に対し、ガイド部40がないことを除き、他は、同様である。また、水洗時の条件についても実施例1と同様とした。
【0046】
(比較例2)
図8(c)は、比較例2で使用したイオン交換装置3について示した図である。
図8(c)で示すイオン交換装置3は、
図8(b)で使用した、比較例1のイオン交換装置2と同様である。ただし、イオン交換樹脂Iの下部に、1/8inchセラミックビーズCbを配置した。また、水洗時の条件については、実施例1と同様とした。
【0047】
〔評価〕
そして、水洗の際に、排出される水の電気伝導度が50μS/cmに達したときの通液量を、BV(Bed Volume)で評価した。BVは、イオン交換樹脂の体積の何倍量の水を通液したのかを表し、単位はL/L-Rである。
【0048】
結果を表1および
図9に示す。
図9で、横軸は、通液量(
図9では、水流BVとして図示)を表し、縦軸は電気伝導度を表す。
【0049】
【0050】
表1および
図9で示すように、実施例1の場合に通液量が最も少なかった。また、比較例1や比較例2の場合は、実施例1に対し、通液量が大きくなった。これは、実施例1の水洗性が最も良好であったことを意味する。また、比較例2のように、イオン交換装置1に、セラミックビーズCbを使用する必要がないことを意味する。
【符号の説明】
【0051】
1…イオン交換装置、10…充填部、20…ディストリビュータ、30…ストレーナ、40…ガイド部、41…第1ガイド部、42…第2ガイド部、50…目皿板、I…イオン交換樹脂