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特許7446174電動式の円弧状ドア装置およびその組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】電動式の円弧状ドア装置およびその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/643 20150101AFI20240301BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
E05F15/643
E05D15/06 119
E05D15/06 125A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020128043
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025301
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】森藤 広喜
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 辰徳
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-112120(JP,A)
【文献】特開平8-270318(JP,A)
【文献】実開平7-14075(JP,U)
【文献】特開2006-118240(JP,A)
【文献】特開2019-148138(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2642057(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧軌跡に沿った移動案内をするガイドレールと、該ガイドレールに案内されて左右方向に移動することで出入り口部を開閉する円弧形状のドア体とを備え、該ドア体の開閉移動を電動式の開閉機により行う構成にした電動式の円弧状ドア装置において、
前記ドア体に、前記円弧軌跡に沿うガイド部材を設け、該ガイド部材に、開閉機に設けた駆動輪体に懸回される長尺状の伝動体の左右両端縁部を、該伝動体がガイド部材の外周面に沿う状態で連結して、駆動輪体の正逆回転に伴う伝動体の左右移動によりドア体の自動的な開閉を行うよう構成するにあたり、
前記駆動輪体を、ガイド部材とは離間する対向状態でガイド部材と伝動体との対向間に配して、駆動輪体のガイド部材とは反対側部位に、伝動体が左右両側に向けて接線状態で懸回される構成にしたことを特徴とする電動式の円弧状ドア装置。
【請求項2】
ドア体は、出入り口部の上方に設けたガイドレールに案内されるハンガー式であり、ガイド部材および開閉機はガイドレールの上方に配される状態で、ガイド部材がドア体の上端縁部に取り付けられ、開閉機がガイドレールに取り付けられることを特徴とする請求項1記載の電動式の円弧状ドア装置。
【請求項3】
開閉機は、駆動輪体が下側のガイドレールとのあいだに配される状態でガイドレールに取り付けられることを特徴とする請求項2記載の電動式の円弧状ドア装置。
【請求項4】
開閉機は、ガイドレールを取り付けるための支持部材に支持されることを特徴とする請求項2または3記載の電動式の円弧状ドア装置。
【請求項5】
ガイド部材は、ガイドレール上方の円弧内側に偏倚した内周側部位に配され、駆動輪体は、ガイドレールの直上部位に配されることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置。
【請求項6】
ガイド部材は、第一連結部材を介してガイドレールの円弧内周側でドア体に取り付けられ、開閉機は、第二連結部材を介してガイドレールの円弧外周側で該ガイドレールに取り付けられることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置。
【請求項7】
開閉機の駆動制御をするための制御部は、ガイドレールを取り付けるための支持部材に取り付けられることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置。
【請求項8】
開閉機の駆動制御をするための制御部は、出入り口部の左右何れか一方に設けられる縦部材に取り付けられることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置。
【請求項9】
出入り口部は、戸先側、戸尻側の左右前面パネル体と、該前面パネル体に対して直角状に設けられる側面パネル体とにより囲繞形成されるブースの左右前面パネル体間に形成される出入り口部であり、開閉機は、左右何れか一方の前面パネル体と側面パネル体とのあいだのコーナー部に配されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置。
【請求項10】
出入り口部の上方に設けられ、円弧軌跡に沿った移動案内をするガイドレールと、該ガイドレールに案内されて左右方向に移動することで出入り口部を開閉する円弧形状をしたハンガー式のドア体とを備えて構成される円弧状ドア装置に、前記円弧軌跡に沿う状態でドア体に設けられるガイド部材と、該ガイド部材の外周面に沿う状態で左右両端縁部をガイド部材に連結した長尺状の伝動体と、該伝動体を左右移動させてドア体の開閉を行うための駆動輪体が設けられた電動式の開閉機とを設けて電動式にするための組み立て方法であって、
該組み立て方法には、
・ガイドレールに、駆動輪体がガイド部材に対して離間した対向状態で配されるよう開閉機を取り付ける工程、
・駆動輪体のガイド部材とは反対側部位に、左右両側部位が接線状態になるよう伝動体を懸回する工程、
を備えていることを特徴とする電動式の円弧状ドア装置の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等のブース(部屋)の出入り口、さらにはビル等の建物の出入り口等の出入り口部に建て付けられる電動式の円弧状ドア装置およびその組み立て方法の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トイレブース等のブースの出入り口やビルの出入り口等の出入り口部に建て付けられるドア装置として、平面視で円弧状のドア体(戸体)をガイドレールの円弧軌跡に沿って左右にスライド移動させることで出入り口部の開閉をするようにした所謂円弧状のドア装置が知られている。
そしてこのような円弧状ドア装置においても、ドア体が平板状になった通常のドア装置の場合と同様、電動式の開閉機を用いてドア体の開閉を自動で行うよう構成することが要求されることがあり、このような要求には、新設の場合だけでなく、既設の円弧状ドア装置についても電動化したいという要求もある。
ところで円弧状ドア装置のドア体は、直線状ではなく円弧状のガイドレールに案内されるものであるため、ドア体と電動式の開閉機とを連動連結する伝動体(例えば伝動ベルト)についても、直線状ではなく、ガイドレールの円弧軌跡に沿うよう円弧状に配設する必要がある。このためドア体に、円弧形状をしたガイド部材を一体的に設け、伝動体を、該ガイド部材の外周面に沿う(当接する)よう配した構成にし、これによって伝動体を開閉機の正逆駆動に連動して左右方向に移動(相対移動)するようにしてドア体の円弧状の開閉移動ができるようにしたものが提唱されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-112120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが前記従来のものは、前記ガイド部材に沿わせた伝動体を、ガイド部材に沿う部位から引き出した状態で駆動輪体(例えば駆動プーリや駆動スプロケット)だけでなく、従動輪体(例えば従動プーリや従動スプロケット)、中間輪体(例えば中間プーリや中間スプロケット)をさらに設け、これら輪体に懸回する構成にしていたため、駆動輪体だけでなく従動輪体、中間輪体を別途設けなければならないうえに伝動体も引き出してこれらに懸回する分、長いものが必要になって部品点数が多く構造が複雑化するだけでなく、これら輪体の配設スペースを伝動体やガイド部材の移動の邪魔にならないよう確保しなければならないことになって装置が大型化する等の問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、円弧軌跡に沿った移動案内をするガイドレールと、該ガイドレールに案内されて左右方向に移動することで出入り口部を開閉する円弧形状のドア体とを備え、該ドア体の開閉移動を電動式の開閉機により行う構成にした電動式の円弧状ドア装置において、前記ドア体に、前記円弧軌跡に沿うガイド部材を設け、該ガイド部材に、開閉機に設けた駆動輪体に懸回される長尺状の伝動体の左右両端縁部を、該伝動体がガイド部材の外周面に沿う状態で連結して、駆動輪体の正逆回転に伴う伝動体の左右移動によりドア体の自動的な開閉を行うよう構成するにあたり、前記駆動輪体を、ガイド部材とは離間する対向状態でガイド部材と伝動体との対向間に配して、駆動輪体のガイド部材とは反対側部位に、伝動体が左右両側に向けて接線状態で懸回される構成にしたことを特徴とする電動式の円弧状ドア装置である。
請求項2の発明は、ドア体は、出入り口部の上方に設けたガイドレールに案内されるハンガー式であり、ガイド部材および開閉機はガイドレールの上方に配される状態で、ガイド部材がドア体の上端縁部に取り付けられ、開閉機がガイドレールに取り付けられることを特徴とする請求項1記載の電動式の円弧状ドア装置である。
請求項3の発明は、開閉機は、駆動輪体が下側のガイドレールとのあいだに配される状態でガイドレールに取り付けられることを特徴とする請求項2記載の電動式の円弧状ドア装置である。
請求項4の発明は、開閉機は、ガイドレールを取り付けるための支持部材に支持されることを特徴とする請求項2または3記載の電動式の円弧状ドア装置である。
請求項5の発明は、ガイド部材は、ガイドレール上方の円弧内側に偏倚した内周側部位に配され、駆動輪体は、ガイドレールの直上部位に配されることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置である。
請求項6の発明は、ガイド部材は、ガイドレールの円弧内周側に配した第一の連結部材を介してドア体に取り付けられ、開閉機は、ガイドレールの円弧外周側に配した第二の連結部材を介してガイドレールに取り付けられることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置である。
請求項7の発明は、開閉機の駆動制御をするための制御部は、ガイドレールを取り付けるための支持部材に取り付けられることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置である。
請求項8の発明は、開閉機の駆動制御をするための制御部は、出入り口部の左右何れか一方に設けられる縦部材に取り付けられることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置である。
請求項9の発明は、出入り口部は、戸先側、戸尻側の左右前面パネル体と、該前面パネル体に対して直角状に設けられる側面パネル体とにより囲繞形成されるブースの左右前面パネル体間に形成される出入り口部であり、開閉機は、左右何れか一方の前面パネルと側面パネルとのあいだのコーナー部に配されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1記載の電動式の円弧状ドア装置である。
請求項10の発明は、出入り口部の上方に設けられ、円弧軌跡に沿った移動案内をするガイドレールと、該ガイドレールに案内されて左右方向に移動することで出入り口部を開閉する円弧形状をしたハンガー式のドア体とを備えて構成される円弧状ドア装置に、前記円弧軌跡に沿う状態でドア体に設けられるガイド部材と、該ガイド部材の外周面に沿う状態で左右両端縁部をガイド部材に連結した長尺状の伝動体と、該伝動体を左右移動させてドア体の開閉を行うための駆動輪体が設けられた電動式の開閉機とを設けて電動式にするための組み立て方法であって、該組み立て方法には、ガイドレールに、駆動輪体がガイド部材に対して離間した対向状態で配されるよう開閉機を取り付ける工程、駆動輪体のガイド部材とは反対側部位に、左右両側部位が接線状態になるよう伝動体を懸回する工程、を備えていることを特徴とする電動式の円弧状ドア装置の組み立て方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、円弧状ドア装置を電動式の開閉機を用いて自動開閉する構成とした場合に、開閉機に設けられる駆動輪体が、円弧状のガイド部材と該ガイド部材の外周面に沿う伝動体との対向間に配される状態で、ガイド部材とは反対側部位に伝動体が左右両側に向けて接線状態で懸回されこととなり、この結果、従動輪体のような部材を不要にでき、しかも伝動体についても他部位に引き回す必要がなく短いものでよいことになって、電動式としたものであっても、部品点数を少なくし、簡単な構造でコンパクト化したものとすることができる。
請求項2の発明とすることにより、ドア体をハンガー式とした円弧状ドア装置を電動式とする場合に、開閉機が、出入り口部の上方に設けたガイドレールを有効利用して取り付けられることになって、構造の簡略化、コンパクト化にさらに寄与できることになる。
請求項3の発明とすることにより、開閉機は、駆動輪体が下側のガイドレールとのあいだに配される状態でガイドレールに取り付けられるため、更なる構造の簡略化、コンパクト化にさらにできることになる。
請求項4の発明とすることにより、開閉機は、ガイドレールを取り付けるための支持部材に支持されることになって、開閉機の強固な取り付けが、該支持部材を有効に利用してできることになる。
請求項5の発明とすることにより、伝動体が外周面側に沿うよう設けられるガイド部材がガイドレール上方の内周部位に配され、駆動輪体がガイドレールの直上位置に配されることとなって、ガイドレールの上方空間を有効に利用して伝動体と駆動輪体のコンパクト配置ができることになる。
請求項6の発明とすることにより、ガイド部材は円弧内周側の第一連結部材によってドア体に取り付けられ、開閉機は円弧外周側の第二連結部材によつてガイドレールに取り付けられることで、ガイド部材と開閉機との取り付けが内外振り分け状にできることとなって、互いに干渉することのない取り付けが簡単にできることになる。
請求項7の発明とすることにより、開閉機の駆動制御をするための制御部が、ガイドレールを取り付けるための支持部材に支持されることになって、制御部の強固な取り付けが、該支持部材を有効に利用してできることになる。
請求項8の発明とすることにより、開閉機の駆動制御をするための制御部が、出入り口部に配される縦部材に支持されることになって、制御部の強固な取り付けが、該縦部材を有効に利用してできることになる。
請求項9の発明とすることにより、出入り口部が、トイレブースのようなブースの出入り口である場合に、開閉機は、ブースを構成する前面パネル体と側面パネル体とのコーナー部に配されることになって、開閉機のコンパクト配置ができることになる。
請求項10の発明とすることにより、新設の場合は勿論、既設の円弧状ドア装置を電動式にする場合に、ガイド部材、伝動体、駆動輪体が設けられた開閉機を部材を設けることになるが、この場合に、ガイドレールに、駆動輪体がガイド部材に対して離間した対向状態で配されるよう開閉機を取り付ける工程、駆動輪体のガイド部材とは反対側部位に、左右両側部位が接線状態になるよう伝動体を懸回する工程を備えたものとすることで、簡単な方法で電動式にできることになつて作業性の向上が図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】トイレブースの正面図である。
図2】ドア体が閉鎖姿勢になった状態のトイレブースの平面図である。
図3】ドア体が開放姿勢になった状態のトイレブースの平面図である。
図4】トイレブースの縦断面図である。
図5】ドア体が閉鎖姿勢になった状態の開閉機配設部位の平面図である。
図6】ドア体が開放姿勢になった状態の開閉機配設部位の平面図である。
図7】開閉機配設部位の縦断面図である。
図8】ガイド部材連結部位の縦断面図である。
図9】(A)(B)(C)はドア体が閉鎖姿勢、中途開姿勢、開放姿勢の状態を示す概略平面図である。
図10】駆動スプロケットと振れ止め体との配置状態を示す平面図である。
図11】第二の実施の形態のドア体が閉鎖姿勢になった状態のトイレブースの平面図である。
図12】第二の実施の形態のトイレブースの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はトイレブースであって、該トイレブース1は、左右に複数が隣接する状態で設けられたものであり、出入り口部(開口部)Eを構成すべく前面(正面)に出入り口部Eとしての左右間隙を存する状態で床面Fから立設される戸先側、戸尻側の前面パネル体2、3と、これら前面パネル体2、3に先端部(前端部)に突き当たるように設けられていてこれら前面パネル体2、3とトイレブース奥端の壁面等の躯体側面Wとのあいだを仕切る側面(奥行き)パネル体4とを備えることで区画形成されていること等は何れも従来通りである。因みにこのようなブースとしては、側面パネルの一方または両方を壁等の躯体面として構成する場合もあり、これらは必要において適宜実施されるものである。尚、Tはトイレブース1内に設けられる便器、Pは出入り口部Eの正面上側部位のパネル体である。
【0009】
5は平面視で円弧形状をしたハンガー式のドア体(戸体、扉体)であって、該ドア体5の左右上端縁部には、連結金具6aを介して上方に突出する状態でハンガーローラ(吊りローラ)6が設けられるが、該ハンガーローラ6が、トイレブース1の上方部位に設けたガイドレール(ハンガーレール、案内レール)7に転動案内されることでドア体5はハンガー式のものとなっている。
前記ガイドレール7は、前記ドア体5の円弧形状に合わせて移動軌跡を円弧軌跡とし、出入り口部Eの上方において、該出入り口部Eの戸先側端縁部に配される戸先側前面パネル体2部位から戸尻側端縁部に配した戸尻側前面パネル体3部位を越えて戸尻側の側面パネル体4に沿う状態でトイレブース1内に入り込むよう円弧形状をしたものであり、そして該ガイドレール7は、本実施の形態では左右の前面パネル体2、3および戸尻側の側面パネル体4の上端部に都合四本の第一~第四の支持ブラケット(本発明の「支持部材」に相当する。)7a、7b、7c、7dを介して連結されることで躯体側に設けられた構成になっている。
【0010】
そしてこのように構成されることにより、ドア体5は、ハンガーローラ6がガイドレール7を左右水平方向に転動することにより、円弧軌跡に沿って左右方向にスライド移動して前記出入り口部Eを閉鎖する閉鎖姿勢と、戸尻側のトイレブース1内に入り込んで出入り口部Eを開放(開口)する開放姿勢とに変姿するようになっている。
この場合にドア体5は、閉鎖姿勢になった場合の戸尻側端縁部5aと、開放姿勢になった場合の戸先側端縁部5bとの各端縁部が、何れも戸尻側前面パネル体3に近接する部位に位置するよう設定される。
さらに具体的には、ドア体5が閉鎖姿勢になった場合のドア体5の戸尻側端縁部5aと、開放姿勢となった場合のドア体5の戸先側端縁部5bとは、何れも戸尻側前面パネル体3の戸先側端縁部に対向し、かつ戸尻側の側面パネル体4の前端縁部に対向するように設定されるが、前記閉鎖姿勢になった場合の戸尻側端縁部5aは、開放姿勢となった場合の戸先側端縁部5bに対して戸尻側に位置する構成になっている。そしてこのように構成することにより、図9、10に示すように、ドア体5が閉鎖姿勢になった場合の戸尻側端縁部5a位置と開放姿勢となった場合の戸先側端縁部5b位置とのあいだの領域Xは、ドア体5の開閉移動(移動軌跡)上の領域であって、ドア体5の開閉作動に拘わらず、常にドア体5が位置する(存在する)ことになっており、該ドア体5によって常時閉鎖された閉鎖領域(オーバーラップ領域)Xを構成している。
【0011】
そしてこのものでは、ガイドレール7と天井面Hとのあいだに間隙Sがあり、この間隙Sを利用してドア体5を電動で開閉するための部材装置が配されたものになっており、以下、これらについて詳述する。尚、ガイドレール7を含む前記部材装置のうち出入り口部Eの上方に配設されるものは、前記パネル体Pによって覆蓋されていて正面からは視認できない構成になっている。
【0012】
8はドア体5に設けられるガイド部材であって、該ガイド部材8は、ガイドレール7の円弧軌跡に沿うよう円弧状に湾曲した板状体を用いて構成されたものであって、第一連結部材9を介してドア体5の上端部に連結される。
具体的には、第一連結部材9は、ガイドレール7に対し円弧内周側において前後方向に間隙を存した状態で、該ガイドレール7よりも上下に延出して配されたものであって、第一連結部材9の下端部は、ドア体5の円弧内周側面5cの上端部にビス9aを介して取り付けられ、上端部には、ガイド部材8がビス9bを介して取り付けられており、このように第一連結部材9を介してガイドレール7の円弧内周側に取り付けられたガイド部材8は、ガイドレール7よりも上方、かつ円弧内周側に偏倚する(ドア体5の厚さ中心(またはガイドレール7の前後幅中心)に対して円弧内周側に偏倚する)位置に配されるよう設定されている。
【0013】
さらにガイド部材8は、戸先側端縁部がドア体5の戸先側端縁部5bまでには至らないが、戸尻側端縁部についてはドア体5の戸尻側端縁部5aよりも戸尻側に向けて円弧状に延出する長さに設定されている。
そしてガイド部材8の左右両端縁部には、本発明の「伝動体」に相当する伝動ベルト(歯付きベルト)10がガイド部材8の外周面8aに沿う(対向する)状態で配され、その左右両端縁部がホルダー11を介してガイド部材8の左右両端縁部に取り付けられている。この場合に伝動ベルト10は、歯部10aが設けられた歯付きのものであって、歯部10aがガイド部材8の外周面8aに対向する状態で、外周面8aに対して緊張状態ではなく、後述するように駆動輪体13に懸回されるべく弛みのある弛緩状態で取り付けられている。尚、図中、11bはホルダー11をガイド部材8に取り付けるためのビスである。
【0014】
一方、12は電動式の開閉機であって、該開閉機12は、ガイド部材8よりも上方位置において、ガイドレール7の上方に位置するよう前後(戸先側、戸尻側)一対の第二の連結部材13、14を介してガイドレール7に取り付けられており、これによって開閉機12とガイドレール7とのあいだに、開閉機12から下方に突出するよう設けられた歯部15aが設けられた歯付きの駆動スプロケット(本発明の「駆動輪体」に相当する。)15の配設スペースが確保されている。
【0015】
次に、前記第二の連結部材13、14を用いて開閉機12を取り付ける構成について具体的に説明するが、戸先側の第二の連結部材13にいて着目すると、該第二連結部材13はL字形をしたものであって、下片部13aがボルト13bを介してガイドレール7の上面部(具体的にはガイドレール7の幅方向中央部位)に固定され、縦片部13cがガイドレール7の円弧外側(外周側)に起立状に配されており、そして該縦片部13cに、開閉機12に設けた取り付けブラケット12aがビス12dを介して固定されており、このように構成することにより、開閉機12の戸先側端縁部は、第二連結部材13を介してガイドレール7の円弧外周側で該ガイドレール7に取り付けられることになる。
【0016】
一方、戸尻側の第二連結部材14についても、戸先側の第二連結部材13と同様の連結構造(形状は連結部位に対応して異なっている。)を採用しているが、前記戸先側の第二連結部材13については、該第二連結部材下片部13aとガイドレール7とのあいだに、ガイドレール7を戸尻側前面パネル体3に支持するための第二支持ブラケット7bが挟持される状態で固定されたものとなっており、このようにすることで開閉機12は、躯体側部材である戸尻側前パネル体3に対しても支持ブラケット7bを介して固定支持される構成になっている。
これに対して戸尻側の第二連結部材14は、ガイドレール7にのみ取り付けられ、支持ブラケットには支持されない構成になっており、この点が戸先側の第二連結部材13とは異なった開閉機12の取付け構成になっている。勿論、戸尻側の第二連結部材14についても、側面パネル体4にガイドレール7を取り付けるための第三支持ブラケット7cに取り付ける構成にしてもよい。
【0017】
開閉機12が、このようにして取り付けられることで、戸尻側の前面パネル体3と側面パネル体4とのコーナー部において、ガイドレール7の上方(直上)に位置し、かつブース1内に傾斜状に配された状態で取り付けられている。
そして開閉機12から下方に突出するよう設けた駆動スプロケット15は、上側の開閉機12と下側のガイドレール7とのあいだのコーナー状のスペースに配されることになるが、該駆動スプロケット15の配設位置は、前述したドア体5が閉鎖姿勢になった場合の戸尻側端縁部5a位置と開放姿勢となった場合の戸先側端縁部5b位置とのあいだの前記領域Xの範囲となるように構成されている。
【0018】
また前記開閉機12に設けた駆動スプロケット15には前記伝動ベルト10が懸回されることになるが、この場合に伝動ベルト10は、駆動スプロケット15のガイド部材8とは反対側部位、つまりガイドレール7の円弧外周側部位において、歯部10a、15a同士が噛合する状態で、伝動ベルト10が左右両側に向けて接線状態で懸回されている。
そして開閉機12が駆動して駆動スプロケット15が正逆回転をした場合に、伝動ベルト10は、前記接線状態を維持した懸回状態で左右方向に移動することになり、これによってドア体5は、該ドア体5に対する駆動スプロケット15の位置が左右に相対移動することになって左右開閉移動がなされるように構成されている。
【0019】
さらにこのものでは、ドア体5の下端縁部に冂字形をした凹溝5dが形成されるが、該凹溝5dには、戸尻側前面パネル体3の下端部に取り付けブラケット16aを介して取り付けられた振れ止め体16が遊嵌しており、これによってドア体5の下端部の振れ止めをするように構成されているが、該振れ止め体16は、前記駆動スプロケット15と同様、ドア体5が閉鎖姿勢になった場合の戸尻側端縁部5a位置と開放姿勢となった場合の戸先側端縁部5b位置とのあいだの領域Xに配されているが、特に本実施の形態においては、駆動スプロケット15の配設位置を、振れ止め体16の配設位置の直上位置となるよう設定されている。
【0020】
さらにこのものには、前記開閉機12の開閉駆動制御を実行するための制御部17が設けられるが、該制御部17は、本実施の形態では、戸尻側の側面パネル体4にガイドレール7を支持するための第三、第四の支持ブラケット7c、7dの上面に載置される状態で該支持ブラケット7c、7dに取り付けられる構成になっており、このようにすることで、制御部17は、側面パネル4とガイドレール7とのあいだのスペースを有効に利用して取り付けられる構成になっている。
【0021】
叙述の如く構成された本実施の形態において、円弧状ドア装置は、円弧軌跡に沿った移動案内をするガイドレール7と、該ガイドレール7に案内されて左右方向に移動することで出入り口部Eを開閉する円弧形状のドア体5とを備えたものであり、そして該ドア体5の開閉移動を電動式の開閉機12により行うようにしたものであるが、該電動式にするため、ドア体5に、前記ガイドレール7の円弧軌跡に沿うよう円弧状にしたガイド部材8を設け、該ガイド部材8に、ガイド部材8の外周面に沿う状態で長尺状の伝動ベルト10の左右両端縁部を取り付け、そして開閉機12に設けられる駆動スプロケット15に前記伝動ベルト10を懸回したものとして、駆動スプロケット15の正逆回転に連動して伝動ベルト10を左右移動させることによりドア体5の自動的な開閉を行うようものである。
この場合に、前記駆動スプロケット15は、ガイド部材8とは離間する対向状態で該ガイド部材8と伝動ベルト10との対向間に配され、そして駆動スプロケット15のガイド部材8とは反対側部位、つまり円弧外周側部位において、伝動ベルト10が左右両側に向けて接線状態で懸回された構成になっている。
この結果、従動スプロケットのような部材を不要にし駆動スプロケット15だけでドア体5の開閉移動ができることになり、しかも伝動ベルト10についても、ガイド部材8に当接している部位から駆動スプロケット15に接線状態で懸回する長さがあれば充分であって、従動スプロケットのように他部材に引き回す必要がなく短いものでよいことになって、電動式としたものであっても、部品点数を少なくし、簡単な構造でコンパクト化したものとすることができる。
【0022】
しかもこのものでは、ドア体5をハンガー式とし、この場合に設けられる開閉機12とガイド部材8とは、ガイドレール7の上方に配され、そしてガイド部材8についてはドア体5の上端縁部に取り付けられ、開閉機12についてはガイドレール7に取り付けられたものとなって、構造の簡略化、コンパクト化にさらに寄与できることになる。
そのうえ開閉機12は、駆動スプロケット15が、上側の開閉機12と下側のガイドレール7とのあいだに配される状態でガイドレール7に取り付けられるため、更なる構造の簡略化、コンパクト化に寄与できることになる。
この場合において開閉機12は、ガイドレール7を躯体側である戸尻側前面パネル体3に取り付けるための第二支持ブラケット7bに支持されているため、開閉機12の強固な取り付けが、該第二支持ブラケット7bを有効に利用してできることになる。
【0023】
またこのものではガイド部材8が、ガイドレール7の上方の円弧内側に偏倚した内周側部位に配され、駆動スプロケット15が、ガイドレール7の直上部位に配されているため、伝動体が外周面側に沿うよう設けられるガイド部材8がガイドレール上方の内周部位に配され、駆動スプロケット15がガイドレール7の直上位置に配された構成にすることができ、この結果、ガイドレール7の上方間隙Sを有効に利用して伝動ベルト10と駆動スプロケット15のコンパクト配置ができることになる。
そしてガイド部材8については、ガイドレール7の円弧内周側に配した第一連結部材9を介してドア体5に取り付けられ、開閉機12については、ガイドレール7の円弧外周側に配した戸先側の第二連結部材13を介してガイドレール7に取り付けられるため、ガイド部材8と開閉機12との取り付けが、円弧内外に振り分け状にできることとなって、互いに干渉することのない取り付けが簡単にできることになる。
【0024】
しかも電動式とするため必要となる開閉機12用の制御部17は、ガイドレール7を側面パネル体4に取り付けるための第三、第四の支持ブラケット7c、7dに対して上側に配される状態で取り付けられるため、制御部17の強固な取り付けが、前記支持ブラケット7c、7dを有効に利用してできることになって構造の簡略化、コンパクト化が図れることになる。因みに本実施の形態においては制御部17は、戸尻側に配した構成になっているが、戸先側に配したものであってもよいことは勿論である。
そしてこのものでは、出入り口部Eは、戸先側、戸尻側の左右前面パネル体2、3と、該前面パネル体2、3に対して直角状に設けられる側面パネル体4とにより囲繞形成されるトイレブース1の形成される出入り口部Eであり、開閉機12は、戸尻側の前面パネル3と側面パネル4とのあいだのコーナー部に配されたものとなっているため、開閉機12のコンパクト配置ができることになる。
【0025】
このように本発明が実施されたものでは、円弧状ドア装置を電動化したものであるが、既設の円弧状ドア装置を電動化する場合には、ガイド部材8、駆動スプロケット15が設けられる開閉機12、伝動ベルト10、制御部17等の電動化するために必要な部材装置を別途用意し、そして電動化する場合の作業工程として、新設、既設の何れの場合においても、ガイド部材8をドア体5に取り付ける工程、伝動ベルト10をガイド部材8の外周面に沿わせるように取り付ける工程、開閉機12、制御部17を躯体側に取り付ける工程等の従来から電動化する場合において必要な工程に加えて、ガイドレール7に、駆動スプロケット15がガイド部材8に対して離間した対向状態で配されるよう開閉機12を取り付ける工程と、駆動スプロケット15のガイド部材8とは反対側部位に、左右両側部位が接線状態になるよう伝動ベルト10を懸回する工程とを備えたものとしているため、新設、既設に拘わらず簡単で共通した作業で電動式の円弧状ドア装置にできることになって作業性の向上が図れることになる。
【0026】
尚、本発明は前記実施の形態のものに限定されないことは勿論であって、トイレブースやシャワーブース等のブースに限定されるものではなく、ビル等の建造物の出入り口に設けられる円弧状ドア装置においても実施することができる。
【0027】
また、開閉機12の駆動制御をするための制御部17としては、ガイドレール7を取り付けるための支持ブラケットに設けたものではなく、図11、12に示す第二の実施の形態のように、出入り口部Eの戸尻側(戸先側であっても勿論よい。)に設けられる前面パネル体3のブース内側面に取り付けたものとすることもでき、このようにした場合には、制御部17は、前面パネル体3s側面パネル体4とのコーナー部にコンパクト配設される、という利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等のブース(部屋)の出入り口、さらにはビル等の建物の出入り口等の出入り口部に建て付けられる電動式の円弧状ドア装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 トイレブース
5 ドア体
5a 戸尻側端縁部
5b 戸先側端縁部
5d 凹溝
6 ハンガーローラ
7 ガイドレール
7a~7d 第一~第四支持ブラケット
8 ガイド部材
10 伝動ベルト
12 開閉機
15 駆動スプロケット
16 振れ止め体
17 制御部
E 出入り口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12