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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ターゲット装置及び鉛直測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
G01C15/06 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020135332
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030974
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219319(JP,A)
【文献】特開2016-164556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の天井面又は床面に形成された貫通孔に設置されるターゲット装置であって、円筒部と該円筒部の上端に形成されたフランジ部と、前記円筒部の下端に形成された遮光部と、前記円筒部の内面に設けられたモータと、該モータにより回転駆動される支持部と、該支持部に取付けられたターゲットと、前記モータを遠隔操作する為の無線部とを有し、前記モータは前記ターゲットを少なくとも鉛直測定位置と非測定位置とに移動可能であり、鉛直測定位置では前記ターゲットが下方から視準可能であり、非測定位置では前記ターゲットに対する下方からの視通が前記遮光部で遮られる様に構成されたターゲット装置。
【請求項2】
前記モータは、前記支持部の回転により前記ターゲットを基準点測定位置に更に移動可能であり、基準点測定位置では前記ターゲットが前記フランジ部よりも上方に突出する様構成された請求項1に記載のターゲット装置。
【請求項3】
鉛直測定位置での前記ターゲットを通る鉛直線上に基準測定位置での前記ターゲットが位置し、鉛直測定位置と基準点測定位置での前記ターゲット間の鉛直方向の距離は既知である請求項2に記載のターゲット装置。
【請求項4】
前記ターゲットの裏面には十字状の視標が形成され、前記ターゲットが鉛直測定位置に位置する際に前記視標の交点と前記円筒部の軸心とが合致する様に構成された請求項1に記載のターゲット装置。
【請求項5】
前記円筒部よりも小径であり、前記モータと前記支持部と前記ターゲットとが設けられた筒部を更に有し、該筒部に下方から上方に向って傾斜する螺旋溝が形成され、前記円筒部の内周面に前記螺旋溝と嵌合可能なピンが設けられ、前記筒部と前記円筒部との相対回転により前記筒部が前記螺旋溝に対する前記ピンの摺動により上下方向に移動する様構成された請求項1~請求項4のうちのいずれか1項に記載のターゲット装置。
【請求項6】
前記支持部に前記ターゲットを囲繞する様に突出する円筒状の突起部が形成された請求項1~請求項5のうちのいずれか1項に記載のターゲット装置。
【請求項7】
前記ターゲット装置は天井面に下方から取付けられ、鉛直測定位置では前記ターゲットが前記円筒部の下端よりも下方に突出する様構成された請求項1に記載のターゲット装置。
【請求項8】
整準部と該整準部に水平方向に回転可能に設けられた測量装置本体とを有し、最下層階の基準点に設けられる測量装置と、構造物の各階の前記貫通孔にそれぞれ設置された請求項1~請求項7のうちのいずれか1項に記載のターゲット装置とを有する鉛直測定システムであって、前記測量装置本体は鉛直方向に回転可能に設けられ、測距部を内蔵する望遠鏡部と、前記無線部と通信可能な通信部を有する操作パネルと、前記測量装置本体の水平角と前記望遠鏡部の鉛直角を検出する測角部と、演算制御部とを具備し、該演算制御部は、測定対象の階の前記ターゲットのみが鉛直測定位置に位置し、他のターゲットが非測定位置に位置する様各モータを駆動させ、測定対象の階の前記ターゲットの測距と測角を実行し、該ターゲットの基準点に対する3次元位置の偏差を演算する様構成された鉛直測定システム。
【請求項9】
前記測量装置本体が構造物の各階の基準点の位置情報を含む設計図データを格納する記憶部を更に具備し、前記測量装置を測定対象の階に設置し、室内の所定の位置を基準とした前記測量装置及び前記ターゲットの位置を測定し、前記演算制御部は前記ターゲットの位置と前記3次元位置の偏差と前記設計図データとに基づき最下層階に対する測定対象の階の3次元位置ズレを演算する様構成された請求項8に記載の鉛直測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の構造物を建築する際に、地上の基準点を鉛直に延ばして各階にトレースする為のターゲット装置及び鉛直測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、基準点を階の異なる床面にトレースする場合には、下げ振りを階上から垂らし基準点に合わせる方法や、鉛直上方にレーザポインタ光を出し平面板に当て中心位置を読取る方法、階上から鉛直下方にレーザポインタ光を出し平面板に当て中心位置を読取る方法等がある。
【0003】
レーザポインタ光を照射する方法では、レーザポインタ光が正しく鉛直方向に照射されているかどうかを確認することが困難であると共に、正しく鉛直に調整するのに時間を要する。
【0004】
又、床面に形成された鉛直測定用の貫通孔にプリズムを有するターゲット装置を設置し、測量装置を用いて下層階からプリズムを測定し、この時の際の測定結果に基づき、基準点を床面にトレースする方法もある。然し乍ら、従来の場合、ターゲット装置により視通が遮られる。従って、更なる上層階で基準点を床面にトレースする為には、測量装置を上層階へ運ぶか或は、ターゲット装置を上層階へ移動する必要があった。
【0005】
更に、上記したターゲット装置では、特定の階からしかプリズムの測定が行えない。従って、複数の階から同一のプリズムを測定することができない。或は特定の階から複数階のプリズムを測定することができない。この為、鉛直方向に於ける構造物のズレを測定することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-219319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、異なる階層から同一のターゲットに対する視認、測定が可能なターゲット装置及び鉛直測定システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、構造物の天井面又は床面に形成された貫通孔に設置されるターゲット装置であって、円筒部と該円筒部の上端に形成されたフランジ部と、前記円筒部の下端に形成された遮光部と、前記円筒部の内面に設けられたモータと、該モータにより回転駆動される支持部と、該支持部に取付けられたターゲットと、前記モータを遠隔操作する為の無線部とを有し、前記モータは前記ターゲットを少なくとも鉛直測定位置と非測定位置とに移動可能であり、鉛直測定位置では前記ターゲットが下方から視準可能であり、非測定位置では前記ターゲットに対する下方からの視通が前記遮光部で遮られる様に構成されたターゲット装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記モータは、前記支持部の回転により前記ターゲットを基準点測定位置に更に移動可能であり、基準点測定位置では前記ターゲットが前記フランジ部よりも上方に突出する様構成されたターゲット装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、鉛直測定位置での前記ターゲットを通る鉛直線上に基準測定位置での前記ターゲットが位置し、鉛直測定位置と基準点測定位置での前記ターゲット間の鉛直方向の距離は既知であるターゲット装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記ターゲットの裏面には十字状の視標が形成され、前記ターゲットが鉛直測定位置に位置する際に前記視標の交点と前記円筒部の軸心とが合致する様に構成されたターゲット装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記円筒部よりも小径であり、前記モータと前記支持部と前記ターゲットとが設けられた筒部を更に有し、該筒部に下方から上方に向って傾斜する螺旋溝が形成され、前記円筒部の内周面に前記螺旋溝と嵌合可能なピンが設けられ、前記筒部と前記円筒部との相対回転により前記筒部が前記螺旋溝に対する前記ピンの摺動により上下方向に移動する様構成されたターゲット装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記支持部に前記ターゲットを囲繞する様に突出する円筒状の突起部が形成されたターゲット装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記ターゲット装置は天井面に下方から取付けられ、鉛直測定位置では前記ターゲットが前記円筒部の下端よりも下方に突出する様構成されたターゲット装置に係るものである。
【0015】
又本発明は、整準部と該整準部に水平方向に回転可能に設けられた測量装置本体とを有し、最下層階の基準点に設けられる測量装置と、構造物の各階の前記貫通孔にそれぞれ設置された上記のターゲット装置とを有する鉛直測定システムであって、前記測量装置本体は鉛直方向に回転可能に設けられ、測距部を内蔵する望遠鏡部と、前記無線部と通信可能な通信部を有する操作パネルと、前記測量装置本体の水平角と前記望遠鏡部の鉛直角を検出する測角部と、演算制御部とを具備し、該演算制御部は、測定対象の階の前記ターゲットのみが鉛直測定位置に位置し、他のターゲットが非測定位置に位置する様各モータを駆動させ、測定対象の階の前記ターゲットの測距と測角を実行し、該ターゲットの基準点に対する3次元位置の偏差を演算する様構成された鉛直測定システムに係るものである。
【0016】
更に又本発明は、前記測量装置本体が構造物の各階の基準点の位置情報を含む設計図データを格納する記憶部を更に具備し、前記測量装置を測定対象の階に設置し、室内の所定の位置を基準とした前記測量装置及び前記ターゲットの位置を測定し、前記演算制御部は前記ターゲットの位置と前記3次元位置の偏差と前記設計図データとに基づき最下層階に対する測定対象の階の3次元位置ズレを演算する様構成された鉛直測定システムに係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構造物の天井面又は床面に形成された貫通孔に設置されるターゲット装置であって、円筒部と該円筒部の上端に形成されたフランジ部と、前記円筒部の下端に形成された遮光部と、前記円筒部の内面に設けられたモータと、該モータにより回転駆動される支持部と、該支持部に取付けられたターゲットと、前記モータを遠隔操作する為の無線部とを有し、前記モータは前記ターゲットを少なくとも鉛直測定位置と非測定位置とに移動可能であり、鉛直測定位置では前記ターゲットが下方から視準可能であり、非測定位置では前記ターゲットに対する下方からの視通が前記遮光部で遮られる様に構成されたので、前記ターゲットが鉛直測定位置に位置する場合にのみ該ターゲットが測定可能となり、測定対象ではない前記ターゲットが誤検出されるのを防止することができる。
【0018】
又本発明によれば、整準部と該整準部に水平方向に回転可能に設けられた測量装置本体とを有し、最下層階の基準点に設けられる測量装置と、構造物の各階の前記貫通孔にそれぞれ設置された上記のターゲット装置とを有する鉛直測定システムであって、前記測量装置本体は鉛直方向に回転可能に設けられ、測距部を内蔵する望遠鏡部と、前記無線部と通信可能な通信部を有する操作パネルと、前記測量装置本体の水平角と前記望遠鏡部の鉛直角を検出する測角部と、演算制御部とを具備し、該演算制御部は、測定対象の階の前記ターゲットのみが鉛直測定位置に位置し、他のターゲットが非測定位置に位置する様各モータを駆動させ、測定対象の階の前記ターゲットの測距と測角を実行し、該ターゲットの基準点に対する3次元位置の偏差を演算する様構成されたので、前記ターゲット装置を着脱することなく鉛直測定位置に位置するターゲットのみを測定することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施例に係る鉛直測定システムの概略を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る鉛直測定システムの概略を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施例に係る測量装置を示す正断面図である。
図4】ターゲットが非測定位置に位置する場合のターゲット装置であり、(A)はターゲット装置の斜視図を示し、(B)はターゲット装置の平面図を示し、(C)はターゲット装置の側面図を示している。
図5】ターゲットが鉛直測定位置に位置する場合のターゲット装置であり、(A)はターゲット装置の斜視図を示し、(B)はターゲット装置の平面図を示し、(C)はターゲット装置の側面図を示している。
図6】ターゲットが基準点測定位置に位置する場合のターゲット装置であり、(A)はターゲット装置の斜視図を示し、(B)はターゲット装置の平面図を示し、(C)はターゲット装置の側面図を示している。
図7】(A)~(C)は前記ターゲット装置の変形例を示す側面図である。
図8】(A)~(C)は前記ターゲット装置の変形例を示す側面図である。
図9】(A)は前記ターゲット装置の変形例を示す斜視図であり、(B)はターゲット装置の側面図である。
図10】(A)(C)は遮光部の変形例を示す斜視図であり、(B)(D)は遮光部の変形例を示す平面図である。
図11】本発明の第2の実施例に係る鉛直測定システムの概略を示す斜視図である。
図12】ターゲットが非測定位置に位置する場合のターゲット装置であり、(A)はターゲット装置の斜視図を示し、(B)はターゲット装置の平面図を示している。
図13】ターゲットが鉛直測定位置に位置する場合のターゲット装置であり、(A)はターゲット装置の斜視図を示し、(B)はターゲット装置の平面図を示し、(C)はターゲットの斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0021】
先ず、図1図2に於いて、本発明の第1の実施例に係る鉛直測定システム1の概要について説明する。
【0022】
図1中、2は基準点P上に設置される測量装置であり、測距光を射出し、反射光を受光し、測距及び測角を行う。図示では、前記測量装置2はトータルステーションとなっており、三脚3に取付けられる整準部4と、該整準部4に取付けられた測量装置本体5とから構成される。
【0023】
又、例えば天井又は床には、それぞれ貫通孔6が形成され、該貫通孔6にターゲット装置7が設けられている。該ターゲット装置7は、前記貫通孔6に嵌合する筒形状であり、該貫通孔6に固定的に設けられてもよく、嵌脱可能に設けられてもよい。前記ターゲット装置7は入射した測距光をターゲット光として再帰反射(即ち、射出)するターゲット8を有する。該ターゲット8は、例えば再帰反射性を有する四角錐形状のピラミッドプリズムとなっている。
【0024】
前記貫通孔6が形成される位置は、基準点Pが転写される部位であり、設計図より求められる。又、前記貫通孔6は基準点Pの直上に位置している。前記貫通孔6の径は、ビルの施工誤差を考慮し、前記ターゲット装置7の位置調整が可能な様に、該ターゲット装置7の直径に対して充分な大きさとなっている。
【0025】
次に、図3に於いて、前記測量装置2について説明する。前記測量装置本体5は、固定部9と、托架部11と、水平回転軸12と、水平回転軸受13と、水平回転駆動部としての水平回転モータ14と、水平角エンコーダ15と、鉛直回転軸16と、鉛直回転軸受17と、鉛直回転駆動部としての鉛直回転モータ18と、鉛直角エンコーダ19と、鉛直回転部である望遠鏡部21と、操作部と表示部とを兼用する操作パネル22と、演算制御部23と、記憶部24等を具備している。尚、前記演算制御部23としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。又、前記望遠鏡部21は、前記ターゲット8を測距する為の測距部25を内蔵している。尚、前記水平角エンコーダ15と前記鉛直角エンコーダ19とで水平角と鉛直角を検出する為の測角部が構成される。
【0026】
前記水平回転軸受13は前記固定部9に固定される。前記水平回転軸12は鉛直な軸心12aを有し、前記水平回転軸12は前記水平回転軸受13に回転自在に支持される。又、前記托架部11は前記水平回転軸12に支持され、前記托架部11は水平方向に前記水平回転軸12と一体に回転する様になっている。
【0027】
前記水平回転軸受13と前記托架部11との間には前記水平回転モータ14が設けられ、該水平回転モータ14は前記演算制御部23により制御される。該演算制御部23は、前記水平回転モータ14により、前記托架部11を前記軸心12aを中心に回転させる。
【0028】
前記托架部11の前記固定部9に対する相対回転角は、前記水平角エンコーダ15によって検出される。該水平角エンコーダ15からの検出信号は前記演算制御部23に入力され、該演算制御部23により水平角データが演算される。該演算制御部23は、前記水平角データに基づき、前記水平回転モータ14に対するフィードバック制御を行う。
【0029】
又、前記托架部11には、水平な軸心16aを有する前記鉛直回転軸16が設けられている。該鉛直回転軸16は、前記鉛直回転軸受17を介して回転自在となっている。尚、前記軸心12aと前記軸心16aの交点が、測距光の射出位置であり、前記測量装置本体5の座標系の原点となっている。
【0030】
前記托架部11には、凹部26が形成されている。前記鉛直回転軸16は、一端部が前記凹部26内に延出し、前記一端部に前記望遠鏡部21が固着され、該望遠鏡部21は前記凹部26に収納されている。
【0031】
又、前記鉛直回転軸16の他端部には、前記鉛直角エンコーダ19が設けられている。前記鉛直回転軸16に前記鉛直回転モータ18が設けられ、該鉛直回転モータ18は前記演算制御部23に制御される。該演算制御部23は、前記鉛直回転モータ18により前記鉛直回転軸16を回転させ、前記望遠鏡部21は前記軸心16aを中心に回転される。
【0032】
前記望遠鏡部21の回転角は、前記鉛直角エンコーダ19によって検出され、検出信号は前記演算制御部23に入力される。該演算制御部23は、検出信号に基づき前記望遠鏡部21の鉛直角データを演算し、該鉛直角データに基づき前記鉛直回転モータ18に対するフィードバック制御を行う。
【0033】
又、前記演算制御部23で演算された測距データ、水平角データ、鉛直角データや測定結果は、前記記憶部24に保存される。又、該記憶部24には、各階に於ける基準点Pの位置を有する設計図データが予め格納されている。前記記憶部24としては、磁気記憶装置としてのHDD、光記憶装置としてのCD、DVD、半導体記憶装置としてのRAM、ROM、DRAM、メモリカード、USBメモリ等種々の記憶手段が用いられる。該記憶部24は、前記托架部11に対して着脱可能であってもよく、或は図示しない通信手段を介して外部記憶装置や外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0034】
前記記憶部24には、測距作動を制御するシーケンスプログラム、測距作動により距離を演算する演算プログラム、水平角データ及び鉛直角データに基づき角度を演算する演算プログラム、距離と角度に基づき所望の測定点の3次元座標を演算する演算プログラム、前記ターゲット装置7を駆動させる為の駆動プログラム、鉛直測定を実行する為の鉛直測定プログラム、1階の基準点に対する各階のずれ量を演算する為の演算プログラム、測定条件を設定する為の設定プログラム等の各種プログラムが格納される。又、前記演算制御部23により各種プログラムが実行されることで、各種処理が実行される。
【0035】
前記操作パネル22は、例えばタッチパネルであり、鉛直測定の指示や測定条件の変更等を行う操作部と、測距結果等を表示する表示部とを兼用している。又、前記操作パネル22は、通信部(図示せず)を有し、該通信部を介して前記ターゲット装置7の無線部(後述)と通信可能となっている。
【0036】
次に、図4図6を参照して、前記ターゲット装置7について更に説明する。
【0037】
該ターゲット装置7は、円筒状の筒部27と、フランジ部28と、遮光部29と、駆動部31と、前記ターゲット8と、無線部32とを有している。
【0038】
前記フランジ部28は、前記円筒部27の上端に形成され、外方に延出するリング状の板材となっている。尚、前記円筒部27の径は前記貫通孔6の径よりも小さく、前記フランジ部28の外径は前記貫通孔6の径よりも大きくなっている。前記貫通孔6に前記ターゲット装置7を設置した際には、前記フランジ部28と床面10に載置され、該床面10に前記ターゲット装置7が支持される様構成されている。
【0039】
前記遮光部29は、前記円筒部27の下端に形成され、中心方向に延出するリング状の板材となっている。尚、前記遮光部29は、前記円筒部27の下端を内側に折曲げて形成してもよく、リング状の板材を前記円筒部27の下端に溶接等で固着してもよい。
【0040】
前記駆動部31は、前記円筒部27の内周面の所定の位置に設けられている。前記駆動部31は、前記円筒部27の内面に設けられたモータ33と、前記円筒部27の内周面で前記モータ33と対向した位置に設けられ、該モータ33の出力軸と同一軸心上に設けられた軸部34と、前記モータ33の出力軸と前記軸部34とに掛渡って設けられた半円状或は円弧状の支持部35と、該支持部35の外周面に設けられた前記ターゲット8とを有している。前記支持部35は、前記モータ33の出力軸と前記軸部34とで回転可能に支持されている。又、前記モータ33を駆動させた際には、前記ターゲット8が前記支持部35と一体に回転する様になっている。
【0041】
尚、前記ターゲット8が設けられる位置は、例えば前記支持部35の中央部である。又、前記支持部35の回転半径は、前記円筒部27の内径よりも小さく、前記支持部35が回転した際に、前記ターゲット8が前記円筒部27の内周面に接触しない様に構成される。更に、前記支持部35の内径は、例えば前記遮光部29の内径よりも大きくなっている。
【0042】
前記モータ33は、例えばステッピングモータであり、非測定位置、鉛直測定位置、基準点測定位置のいずれかに前記ターゲット8が位置する様、該ターゲット8の位置を切替え可能に構成されている。
【0043】
図4(A)~図4(C)に示される様に、非測定位置は、前記ターゲット8が前記円筒部27の内周面に接近した位置となる。前記遮光部29の内径は前記支持部35の外径よりも小さくなっているので、この状態では、前記ターゲット8が前記遮光部29に遮られ、前記ターゲット8が下方から視認できない様になっている。
【0044】
又、図5(A)~図5(C)に示される様に、鉛直測定位置は、前記ターゲット8が下方を向いた位置となる。この状態では、前記ターゲット8が前記遮光部29で遮られることがなく、前記ターゲット8が下方から視認できる様になっている。尚、鉛直測定位置に於いては、前記ターゲット8の光学中心は前記円筒部27の軸心と合致している。
【0045】
更に、図6(A)~図6(C)に示される様に、基準点測定位置は、鉛直測定位置から前記支持部35が180°回転され、前記ターゲット8が上方を向いた位置となる。この状態では、前記ターゲット8が前記フランジ部28よりも上方に突出している。尚、基準点測定位置に於いては、前記ターゲット8の光学中心は前記円筒部27の軸心と合致している。又、前記ターゲット8の前記支持部35を中心とする回転半径は既知であり、鉛直測定位置と前記基準点測定位置に於ける前記ターゲット8間の距離は既知となっている。従って、鉛直測定位置に於ける前記ターゲット8の測定結果に対して鉛直方向に既知の距離をオフセットすることで、基準測定位置に於ける前記ターゲット8を測定することなく該ターゲット8の3次元座標を演算することができる。
【0046】
前記無線部32は、前記ターゲット装置7の所定の位置、例えば前記遮光部29の下面に設けられている。前記無線部32は、前記操作パネル22の通信部と通信可能であり、又、前記無線部32は、前記モータ33を遠隔操作可能に構成されている。前記操作パネル22からの指示に基づき、前記ターゲット8が所定の位置に移動する様前記モータ33を駆動させる。
【0047】
以下、第1の実施例の作動を説明する。尚、以下の説明では、最下層階である1階を除く各階層の各貫通孔6にそれぞれ前記ターゲット装置7が設けられている。又、本実施例では、基準点Pが設定された測定の基準となる階層を最下層階と称している。
【0048】
先ず、図1に示される様に、前記測量装置2を基準点Pに設置し、前記整準部4により前記測量装置本体5を水平姿勢に整準する。
【0049】
次に、作業者は、前記操作パネル22を介して、2階に設置された前記ターゲット装置7を遠隔操作し、前記ターゲット8を鉛直測定位置へと移動させる。又、作業者は、前記操作パネル22を介して、2階以外に設置された前記ターゲット装置7を遠隔操作し、前記ターゲット8を非測定位置へと移動させる。この状態では、2階以外の各ターゲット8は各遮光部29により遮られるので、2階の前記ターゲット8のみが前記測量装置2により視準可能となる。
【0050】
前記測量装置2は前記望遠鏡部21を鉛直方向に回転させ、2階の前記ターゲット8を視準し、測距光を射出する。該ターゲット8は測距光を再帰反射し、該ターゲット8からは再帰反射光が射出される。再帰反射光は、前記望遠鏡部21に内蔵された測距部で受光され、前記演算制御部23により前記ターゲット8迄の距離が測定される。又、前記水平角エンコーダ15と前記鉛直角エンコーダ19の検出結果に基づき、前記演算制御部23は基準点Pを通る鉛直線に対する前記ターゲット8の水平角と鉛直角を演算する。
【0051】
前記演算制御部23は、測距結果及び演算された水平角と鉛直角(測角結果)に基づき、2階の前記ターゲット8の基準点Pに対する3次元位置の偏差を演算する。即ち、前記演算制御部23は、前記ターゲット8の位置を基準とした基準点Pの水平位置を演算する。又、前記演算制御部23は、鉛直測定位置と基準点測定位置に於ける前記ターゲット8間の既知の距離に基づき、前記ターゲット8の位置を基準とした基準点Pの3次元位置(座標)を演算する。演算結果(転写された基準点P)は前記記憶部24に保存される。
【0052】
2階に設置された前記ターゲット8の測定が完了すると、前記操作パネル22を介して2階に設置された前記ターゲット装置7を遠隔操作し、前記ターゲット8を非測定位置へと移動させる。又、前記操作パネル22を介して、3階に設置された前記ターゲット装置7を遠隔操作し、前記ターゲット8を鉛直測定位置へと移動させる。この状態では、3階以外の各ターゲット8は各遮光部29により遮られるので、3階の前記ターゲット8のみが前記測量装置2により視準可能となる。
【0053】
該測量装置2は、3階の前記ターゲット8を視準し、測距光を射出する。該ターゲット8から射出された再帰反射光は、前記望遠鏡部21の測距部で受光され、前記演算制御部23により前記ターゲット8迄の距離が測定される。又、前記水平角エンコーダ15と前記鉛直角エンコーダ19の検出結果に基づき、前記演算制御部23は前記ターゲット8の鉛直に対する水平角と鉛直角を演算する。
【0054】
前記演算制御部23は、測距結果及び測角結果に基づき、3階の前記ターゲット8の基準点Pに対する3次元位置の偏差を演算する。即ち、前記演算制御部23は、前記ターゲット8の位置を基準とした基準点Pの水平位置を演算する。又、前記演算制御部23は、鉛直測定位置と基準点測定位置に於ける前記ターゲット8間の既知の距離に基づき、前記ターゲット8の位置を基準とした基準点Pの3次元位置を演算する。演算結果(転写された基準点P)は前記記憶部24に保存される。
【0055】
4階以降についても、上記した処理と同様に、前記操作パネル22を介して順次前記ターゲット装置7を遠隔操作し、前記測量装置2による前記ターゲット8の測定を順次実行する。これにより、2階から最上階迄の各階について、前記ターゲット8の位置を基準とした各階に於ける基準点Pの位置を求めることができる。
【0056】
次に、図2に示される様に、前記測量装置2を2階へと搬送し、2階の任意の位置に前記測量装置2を設置し、整準する。又、前記操作パネル22を介して2階に設置された前記ターゲット装置7を遠隔操作し、前記ターゲット8を基準点測定位置へと移動させる。この状態では、前記ターゲット8は床面よりも上方に突出している。
【0057】
前記測量装置2は、前記ターゲット8を視準し、測距光を射出する。該ターゲット8から射出された再帰反射光は、前記望遠鏡部21の測距部で受光され、前記演算制御部23により前記ターゲット8迄の距離が測定される。又、前記水平角エンコーダ15と前記鉛直角エンコーダ19の検出結果に基づき、前記演算制御部23は1階で演算した基準点Pの位置を基準とした前記測量装置2の3次元位置を演算する。或は、1階での前記ターゲット8の測定結果と、2階での前記ターゲット8の測定結果に基づき、後方交会により基準点Pを基準とした2階の前記測量装置2の位置を演算してもよい。
【0058】
これにより、2階に各種部材、例えば鉄骨柱を設置した際、2階に設置した前記測量装置2で鉄骨柱を測定することで、基準点Pに対する鉄骨柱のズレを測定することができる。又、鉄骨柱のズレに基づき、鉄骨柱が設計通りの角度で設けられているか、又1階に対して2階がずれていないかを判断することができる。
【0059】
又、2階から最上階迄の各階について、1階に対する各階の水平方向及び鉛直方向のずれ量が演算できると共に、各ズレ量に基づき構造物全体の傾斜量及び縮み量を演算することができる。
【0060】
上述の様に、第1の実施例では、前記ターゲット8を非測定位置、鉛直測定位置、基準点測定位置の3位置に移動可能なターゲット装置7を前記貫通孔6に設置している。
【0061】
従って、天井の前記ターゲット8を測定する時、床面のターゲット8を測定する時、該ターゲット8を測定しない時とで、その都度前記ターゲット装置7を着脱する必要がなく、前記駆動部31を駆動させるだけでよい。
【0062】
前記ターゲット8を非測定位置に移動させた際には、該ターゲット8が前記遮光部29で隠れ、前記ターゲット8に向う測距光は前記遮光部29によって遮られる。従って、前記ターゲット装置7を取外さなかったとしても、測定対象ではない前記ターゲット8が誤測定されるのを防止することができる。
【0063】
又、前記ターゲット装置7は各階の前記貫通孔6にそれぞれ設けられ、各ターゲット装置7は前記操作パネル22を介して遠隔操作が可能となっている。従って、測定対象外の前記ターゲット8を非測定位置へと移動させ、測定対象の前記ターゲット8のみを鉛直測定位置へと移動させることで、測定対象外の前記ターゲット8で視通を遮られることなく測定対象の前記ターゲット8のみを測定することができる。
【0064】
又、第1の実施例では、1階の基準点Pに設置した前記測量装置2により、任意の階の前記ターゲット8を測定することができる。従って、前記測量装置2を1階に設置した状態で、各階に前記ターゲット8の位置を基準とした基準点を転写することができ、作業時間の短縮及び作業性の向上を図ることができる。
【0065】
尚、前記ターゲット装置7の構成については、第1の実施例の構成に限られるものではない。
【0066】
例えば、図7(A)に示される様に、第1の実施例の前記駆動部31よりも上方に駆動部31を設け、前記ターゲット8が床面から大きく突出する様にしてもよい。該ターゲット8が大きく突出することで、基準点測定位置に於ける前記ターゲット8の視準及び測定を容易に実行することができる。
【0067】
又、第1の実施例では、前記ターゲット8を四角錐のピラミッドプリズムとしていたが、図7(B)に示される様に、四角錐形状のピラミッドプリズムを貼合せた正八面体のキューブプリズムを前記ターゲット8aとしてもよい。この場合、どの方向からでも測距光を再帰反射させることができるので、作業性を向上させることができる。又、基準点測定位置が鉛直測定位置を兼用することができ、鉛直測定位置を省略することができる。
【0068】
又、第1の実施例では、前記支持部35を前記モータ33と前記軸部34に掛渡る半円状又は円弧状としていたが、図7(C)に示される様に、前記モータ33に取付けられた1/4円弧状の支持部35aとしてもよい。この場合、前記軸部34は省略することができる。
【0069】
又、前記円筒部27内に別途筒部36を内嵌し、該筒部36が前記円筒部27に対して回転可能且つ上下に移動可能に構成してもよい。例えば、図8(A)に示される様に、前記筒部36の周面に下方から上方に向って傾斜した螺旋溝37を形成し、前記円筒部27の内面に前記螺旋溝37に嵌合するピン38を突設してもよい。この場合、前記筒部36を回転させ、前記ピン38を前記螺旋溝37に沿って摺動させることで、前記筒部36の上下方向に移動させることができる。或は、前記筒部36の外周面と前記円筒部27の内周面にそれぞれネジ部を形成し、前記筒部36を回転させ、前記ネジ部を介して前記筒部36が上下する様な構成としてもよい。
【0070】
尚、天井に於ける前記ターゲット8の絶対位置のみが測定できればよい場合は、図8(B)に示される様に、前記ターゲット装置7を下方から天井30に取付けてもよい。この場合には、ターゲット装置7aは、フランジ部28aを介して前記天井30に固着される。
【0071】
又、雨垂れ等により前記ターゲット8が汚れるのを防止する為、鉛直測定位置に於いて鉛直下方に突出する円筒状の突起部39を前記支持部35に設けてもよい。前記突起部39は、例えば前記ターゲット8を囲繞する様形成される。或は、該ターゲット8に撥水コートを施し、前記モータ33により前記支持部35を回転させ、遠心力により水を弾く様構成してもよい。
【0072】
又、第1の実施例では、前記モータ33と前記軸部34とに掛渡る円弧状の前記支持部35により、3位置間で前記ターゲット8を移動させているが、前記支持部35の形状は円弧状に限られるものではない。
【0073】
例えば、図9(A)、図9(B)に示される様に、前記円筒部27の内面にブラケット47を設けられている。該ブラケット47には、棒状の支持部48の基端部がピン49を介して回転自在に取付けられている。又、前記支持部48の先端部には、キューブプリズムである前記ターゲット8aが設けられている。
【0074】
前記支持部48は、図示しないモータにより所定の位置に移動する様構成されている。図9(A)、図9(B)中では、前記支持部48が前記円筒部27の軸心と平行となり、前記ターゲット8aが下方を向いた状態が非測定位置であり、前記支持部48が前記円筒部27の軸心と直交し、前記ターゲット8aの光学中心が前記円筒部27の軸心と合致した状態が鉛直測定位置であり、前記支持部48が非測定位置から180°回転し前記ターゲット8aが上を向いた状態が基準点測定位置となっている。尚、前記支持部35の長さ及び回転半径は既知である。従って、鉛直測定位置に於ける前記ターゲット8aと基準点測定位置に於ける前記ターゲット8aとの間の位置関係も既知となっている。
【0075】
図9(A)、図9(B)の場合も、第1の実施例と同様、前記ターゲット8aを3位置間で移動する様遠隔操作することで、測定対象ではない前記ターゲット8aが誤測定されるのを防止することができる。
【0076】
更に、第1の実施例では、前記遮光部29をリング状の板材としていたが、非測定位置に於いて前記ターゲット8への視通が遮られればどの様な形状であってもよい。例えば、図10(A)、図10(B)に示される様に、非測定位置に於ける前記ターゲット8の下方を除く部分を切除した遮光部29aとしてもよい。又、図10(C)、図10(D)に示される様に、前記ターゲット8の下方に突出する矩形の遮光部29bを前記円筒部27の下端に形成してもよい。
【0077】
次に、図11図13に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、図11図13中、図1図4図5中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
第2の実施例では、2階以上の貫通孔6に設置されたターゲット装置41のターゲット42を基準点として、該ターゲット42上に測量装置2が設置される。
【0079】
前記ターゲット装置41は、前記ターゲット42を鉛直測定位置と非測定位置の2位置間で移動させる様構成されている。又、前記ターゲット42は、支持部43に挾持される様該支持部43に取付けられている。又、前記ターゲット42の裏面には十字状の視標44が形成されている。該視標44は、鉛直測定位置に於いて十字の交点44aと円筒部27の軸心とが合致する様に構成されている。尚、鉛直測定位置に於ける前記ターゲット42の光学中心からフランジ部45の下面迄の高さ(床面迄の高さ)は既知となっている。
【0080】
第2の実施例では、各ターゲット装置41を遠隔操作し、測定対象となる階の前記ターゲット42を鉛直測定位置へと移動させ、測定対象外の階の前記ターゲット42を非測定位置へと移動させる。その後、前記測量装置2により測定対象である前記ターゲット42を測定し、該ターゲット42の測距及び測角を行う。
【0081】
又、各階に於いて前記ターゲット42の測距及び測角を順次実行し、1階の基準点Pに対する各ターゲット42の3次元位置の偏差を演算する。又、演算制御部23(図3参照)は前記ターゲット42と床面10迄の距離に基づき、前記ターゲット42の位置を基準とした転写された基準点Pの3次元位置(座標)を演算する。更に、各階毎に前記ターゲット42の位置を基準とした基準点Pの位置を求める(転写する)ことができる。
【0082】
次に、図11に示される様に、前記測量装置2を測定対象の階へと搬送し、前記視標44の交点44a直上に前記測量装置2を設置し、整準する。この時、前記ターゲット42は鉛直測定位置に位置している。
【0083】
この時、前記ターゲット42と前記床面10迄の距離は既知であり、前記測量装置2の高さも既知である。従って、1階で測定された前記ターゲット42の測定結果に基づき、基準点Pを基準とした前記測量装置2の3次元座標を求めることができる。
【0084】
これにより、2階に各種部材、例えば鉄骨柱を設置した際、2階に設置した前記測量装置2で鉄骨柱を測定することで、基準点Pに対する鉄骨柱のズレを測定することができる。又、鉄骨柱のズレに基づき、鉄骨柱が設計通りの角度で設けられているか、又1階に対して2階がずれていないかを判断することができる。
【0085】
上記処理を各階毎に実行することで、2階から最上階迄の各階について、1階に対する各階の水平方向及び鉛直方向のずれ量が演算できると共に、各ズレ量に基づき構造物全体の傾斜量及び縮み量を演算することができる。
【0086】
第2の実施例に於いても、前記ターゲット42を非測定位置に移動させた際には、該ターゲット42が遮光部46で隠れ、前記ターゲット42に向う測距光は前記遮光部46によって遮られる。従って、前記ターゲット42を2位置間で移動させるだけで、任意の階の前記ターゲット42のみを測定することができるので、前記ターゲット装置41を取外さなかったとしても、測定対象外の前記ターゲット42が誤測定されるのを防止することができる。
【0087】
尚、第2の実施例に於いても、第1の実施例に於ける各種変形例が適用可能であることは言う迄もない。
【0088】
又、第1の実施例及び第2の実施例に於いて、1階を最下層階としている。一方で、地下を最下層階とし、地下に設定した基準点Pを基準として1階以上の水平方向及び鉛直方向のずれ量を演算してもよい。更に、2階以上の階層に基準点Pを設定し、最下層階としてもよいのは言う迄もない。
【符号の説明】
【0089】
1 鉛直測定システム
2 測量装置
4 整準部
5 測量装置本体
6 貫通孔
7 ターゲット装置
8 ターゲット
21 望遠鏡部
22 操作パネル
23 演算制御部
24 記憶部
27 円筒部
28 フランジ部
29 遮光部
32 無線部
33 モータ
35 支持部
41 ターゲット装置
42 ターゲット
44 視標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13