(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】張力測定方法
(51)【国際特許分類】
G01L 5/10 20200101AFI20240301BHJP
【FI】
G01L5/10 F
(21)【出願番号】P 2020148924
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-02-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載日 2019年9月24日 ウェブサイトのアドレス https://confit.atlas.jp/guide/event-img/mmij2019b/3K0201-07-05/public/pdf?type=in 公開者 椎木 貞則、及川 雅司、守谷 敏之、塚田 和彦 (2)開催日 2019年9月26日 集会名、開催場所 一般社団法人資材・素材学会 資源・素材2019(京都)-2019年度資源・素材関係学協会合同秋季大会- 公開者 椎木 貞則、及川 雅司、守谷 敏之、塚田 和彦 (3)ウェブサイトの掲載日 2019年9月24日 ウェブサイトのアドレス https://confit.atlas.jp/guide/event-img/mmij2019b/3K0201-07-05/public/pdf?type=in 公開者 椎木 貞則、及川 雅司、守谷 敏之、塚田 和彦
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】塚田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】守谷 敏之
(72)【発明者】
【氏名】糸井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】椎木 貞則
(72)【発明者】
【氏名】及川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】中上 晋志
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134013(JP,A)
【文献】特開2016-013492(JP,A)
【文献】国際公開第2009/133812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
G01L 1/00-1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの張力を測定する張力測定方法であって、
前記張力測定方法は、
被測定物である前記ケーブルに、筒形状のソレノイドコイル形成部を備えた張力測定用リールを設置する第1リール設置工程と、
前記ソレノイドコイル形成部に導線を巻き付け、第1コイルを作製する第1コイル作製工程と、
前記第1コイルに通電することで磁界を形成し、前記ケーブルの磁気ヒステリシス環線を測定する磁化特性測定工程と、
前記磁気ヒステリシス環線から求めたパラメータを用いて前記ケーブルの張力を算出する張力算出工程と、を有しており、
前記ソレノイドコイル形成部は、中心軸に沿って第1貫通孔を備え、
前記第1貫通孔内には磁界センサおよび磁束センサが設置されており、
前記第1リール設置工程では、前記ケーブルが前記第1貫通孔内に位置するように前記ケーブルに前記張力測定用リールを設置し、
前記磁化特性測定工程では、前記磁気ヒステリシス環線が近飽和磁化領域を含むように前記磁界を変化させ、前記磁界センサおよび前記磁束センサを用いて前記磁気ヒステリシス環線を測定し、
前記張力算出工程で用いる前記パラメータが、前記近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度、残留磁化、保磁力、透磁率、およびヒステリシス損失から選択された1種類以上である張力測定方法。
【請求項2】
前記張力測定用リールは、前記第1貫通孔の周方向に沿って複数の部材に分割可能であり、
前記第1リール設置工程では、複数の部材に分割した前記張力測定用リールを前記ケーブルの周方向に沿って配置する請求項1に記載の張力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、張力測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、張力のかかっているケーブルに衝撃を与え、ケーブルの任意の点における振動を検出して周波数分析を行い、その分析結果より得られた複数の固有振動数と該固有振動数の次数との間に成り立つ関係からケーブルの曲げ剛性及び張力を求めることを特徴とするケーブルの曲げ剛性及び張力の測定方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、鉄筋等鋼材の透磁率が応力の変化に敏感であることを利用した応力測定センサを用いて、鉄筋コンクリート構造物の鉄筋現有応力を測定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-101289号公報
【文献】特開2003-270059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吊橋に用いられているメインケーブル、ハンガーロープや、斜張橋に用いられている斜材、プレストレストコンクリートに用いられているPC鋼材等、各種ケーブルが建築物に用いられている。これらのケーブルは、建築物を構成する部材を支持したり、建築物を構成する部材に緊張力を与えるため、建築物の施工時や、施工後において適切な大きさの張力が加わっていることが求められる。このため、建築物の施工管理や、点検のため、ケーブルの施工時や、ケーブルの施工後の任意のタイミングで、ケーブルの張力を測定することが従来から求められている。
【0006】
特許文献1に開示されているように、橋梁などに架設されているケーブルの張力測定には振動法がよく用いられている。しかし振動法は、ケーブル長が短い場合や、ケーブルの途中に屈曲部や結節部を有する場合、ケーブルやケーブルの末端部に様々な付属物が存在して固定点が不明確となる場合には張力を正確に求めることができない。
【0007】
特許文献2に開示された応力測定センサは、筒状に成形され、測定する鉄筋コンクリート構造物の鉄筋をその中空部に挿嵌する中空部材と、中空部材の内側周囲に巻回した2次コイルと、中空部材の外側周囲に巻回した1次コイルと、鉄筋の温度を検出する温度計とを備えている。そして、1次コイルにパルス電流を加え、2次コイルを介して誘導電流値を検出し、該誘導電流値から算出した透磁率や、温度を用いて、応力を算出するとされている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された応力測定センサをケーブルに適用した場合、パルス電流による励磁ではケーブル内に必然的に渦電流が発生する。そして、撚り線構造であるケーブルでは、励磁により生じた渦電流の流れが複雑であり、かつ常に一定とは限らない。
【0009】
さらに、ケーブルの励磁にパルス電流を用いた場合、ケーブルの磁化を、該ケーブルの内部まで十分強く行うことができない。このため、張力評価に用いる透磁率は、ケーブルに加えられた過去の磁気履歴や応力履歴(残留磁化)の影響を受けることになる。
【0010】
従って、特許文献2に開示された応力測定センサを、ケーブルの張力測定に適用した場合、架設状態等によっては再現性ある張力評価を行うことができないと考えられる。
【0011】
そこで、振動法等ではない、ケーブルに作用している張力を測定できる新たな張力測定方法が求められていた。
【0012】
本開示は、ケーブルに作用している張力を測定できる新たな張力測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一観点によれば、ケーブルの張力を測定する張力測定方法であって、
前記張力測定方法は、
被測定物である前記ケーブルに、筒形状のソレノイドコイル形成部を備えた張力測定用リールを設置する第1リール設置工程と、
前記ソレノイドコイル形成部に導線を巻き付け、第1コイルを作製する第1コイル作製工程と、
前記第1コイルに通電することで磁界を形成し、前記ケーブルの磁気ヒステリシス環線を測定する磁化特性測定工程と、
前記磁気ヒステリシス環線から求めたパラメータを用いて前記ケーブルの張力を算出する張力算出工程と、を有しており、
前記ソレノイドコイル形成部は、中心軸に沿って第1貫通孔を備え、
前記第1貫通孔内には磁界センサおよび磁束センサが設置されており、
前記第1リール設置工程では、前記ケーブルが前記第1貫通孔内に位置するように前記ケーブルに前記張力測定用リールを設置し、
前記磁化特性測定工程では、前記磁気ヒステリシス環線が近飽和磁化領域を含むように前記磁界を変化させ、前記磁界センサおよび前記磁束センサを用いて前記磁気ヒステリシス環線を測定し、
前記張力算出工程で用いる前記パラメータが、前記近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度、残留磁化、保磁力、透磁率、およびヒステリシス損失から選択された1種類以上である張力測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、ケーブルに作用している張力を測定できる新たな張力測定方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、ケーブルに加える張力を変化させた際の磁気ヒステリシス環線の変化の説明図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様に係る張力測定方法で好適に用いることができる張力測定用リールの斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様に係る張力測定方法で好適に用いることができる張力測定用リールの縦断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の一態様に係る張力測定方法のフロー図である。
【
図9】
図9は、検量線を作成する場合のフロー図である。
【
図10】
図10は、ケーブルの張力と近飽和磁化領域における磁束量との関係の説明図である。
【
図11】
図11は、ケーブルの張力と残留磁化との関係の説明図である。
【
図12】
図12は、ケーブルの張力と保磁力との関係の説明図である。
【
図13】
図13は、ケーブルの張力と近飽和磁化領域における透磁率との関係の説明図である。
【
図14】
図14は、ケーブルの張力と残留磁化の点における透磁率との関係の説明図である。
【
図15】
図15は、ケーブルの張力と保磁力の点における透磁率との関係の説明図である。
【
図16】
図16は、ケーブルの張力とヒステリシス損失との関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0017】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0018】
(1)本開示の一態様に係る張力測定方法は、ケーブルの張力を測定する張力測定方法であって、
前記張力測定方法は、
被測定物である前記ケーブルに、筒形状のソレノイドコイル形成部を備えた張力測定用リールを設置する第1リール設置工程と、
前記ソレノイドコイル形成部に導線を巻き付け、第1コイルを作製する第1コイル作製工程と、
前記第1コイルに通電することで磁界を形成し、前記ケーブルの磁気ヒステリシス環線を測定する磁化特性測定工程と、
前記磁気ヒステリシス環線から求めたパラメータを用いて前記ケーブルの張力を算出する張力算出工程と、を有しており、
前記ソレノイドコイル形成部は、中心軸に沿って第1貫通孔を備え、
前記第1貫通孔内には磁界センサおよび磁束センサが設置されており、
前記第1リール設置工程では、前記ケーブルが前記第1貫通孔内に位置するように前記ケーブルに前記張力測定用リールを設置し、
前記磁化特性測定工程では、前記磁気ヒステリシス環線が近飽和磁化領域を含むように前記磁界を変化させ、前記磁界センサおよび前記磁束センサを用いて前記磁気ヒステリシス環線を測定し、
前記張力算出工程で用いる前記パラメータが、前記近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度、残留磁化、保磁力、透磁率、およびヒステリシス損失から選択された1種類以上である。
【0019】
本開示の一態様に係る張力測定方法によれば、ソレノイド式磁化器を用いることで、被測定物であるケーブルの周りに均一かつ安定に磁界を形成できる。そして、ケーブルの張力と強い相関を有する、近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度と、残留磁化と、保磁力と、透磁率と、ヒステリシス損失とから選択された1種類以上のパラメータを用いることで、ケーブルに作用している張力を測定できる新たな張力測定方法を提供できる。
【0020】
(2)前記張力測定用リールは、前記第1貫通孔の周方向に沿って複数の部材に分割可能であり、
前記第1リール設置工程では、複数の部材に分割した前記張力測定用リールを前記ケーブルの周方向に沿って配置してもよい。
【0021】
張力測定用リールを複数に分割可能とすることで、既設のケーブルに張力測定用リールを設置でき、該ケーブルの張力が測定可能になる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)に係る張力測定方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許の請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0023】
本発明の発明者らは、ケーブルに作用している張力を測定できる新たな張力測定方法について鋭意検討を行った。
【0024】
吊橋に用いられるメインケーブル、ハンガーロープや、斜張橋に用いられる斜材、プレストレストコンクリートに用いられるPC鋼材等の各種ケーブルは、印加された張力に耐えられるように、その材料として鋼等の強磁性体を含む各種金属が用いられている。そして、強磁性体の材料は、応力が作用すると磁化状態が変化する応力磁気効果を有している。
【0025】
図1に、ケーブルに加える張力を変化させた際の磁気ヒステリシス環線(以下、単に「ヒステリシス環線」と記載する)の変化を示す。
図1において横軸は磁界の強さを、また縦軸は、ケーブル内部の磁束量や磁束密度に対応する、ケーブル内部の磁化の強さを示している。
【0026】
図1には、ケーブルである鋼線に加えた張力が1000kNの場合のヒステリシス環線10Aと、加えた張力が2000kNの場合のヒステリシス環線10Bと、加えた張力が3000kNの場合のヒステリシス環線10Cとを示している。
図1に示すように、同一のケーブルであっても、ケーブルに加わる張力によりケーブルに生じる磁化の強さが変化すること、すなわちケーブルが応力磁気効果を示すことが確認できる。
【0027】
そして、係る応力磁気効果を用いて、ケーブルの張力を評価する方法としては、以下の3つの方法が考えられる。
【0028】
図1に示すヒステリシス環線のうち、例えば曲線が閉じた領域の点において、磁束量や磁束密度が、ケーブルに加えられる張力により変化することが確認できる。また、ヒステリシス環線上の点である残留磁化、保磁力についても、同様にケーブルに加えられる張力により変化することが確認できる。
【0029】
このため、ケーブルの張力を評価する第1の方法として、ヒステリシス環線の特定の点を用いて、ケーブルの張力を算出することが考えられる。具体的には、
図1中の近飽和磁化領域11までケーブルを磁化した際の、ある磁界強さにおける磁束量または磁束密度を測定し、該ケーブルに加わる張力を算出する方法が考えられる。なお、近飽和磁化領域とは、磁界の増減において磁化曲線が同一曲線上をたどる領域、すなわちヒステリシス環線が閉塞している領域を意味する。また、領域12内の残留磁化、領域13内の保磁力を測定し、ケーブルに加わる張力を算出する方法が考えられる。
【0030】
また、
図1に示したヒステリシス環線上の点の傾き、つまり透磁率もケーブルに加えられる張力により変化することが確認できる。具体的には例えば特定の磁界の強さを示す直線Aと、各ヒステリシス環線10A~10Cとの交点における各ヒステリシス環線の接線14A、14B、14Cの傾きが異なることが確認できる。このため、ケーブルの張力を評価する第2の方法として、ヒステリシス環線上の特定の点(位置)における曲線の傾き、すなわち透磁率を求め、該ケーブルに加わる張力を算出する方法が考えられる。
【0031】
また、ケーブルに加えられた張力により、ヒステリシス環線の面積も変化する。そして、ヒステリシス損失は、ヒステリシス環線の面積に比例する。このため、ケーブルの張力を評価する第3の方法として、ヒステリシス環線の面積に比例するヒステリシス損失を求め、該ケーブルに加わる張力を算出する方法が考えられる。
【0032】
ケーブルの磁化状態は、近飽和磁化領域まで強く磁化を正負に繰り返して得たヒステリシス環線の外側には出ることはない。このため、近飽和磁化領域を含むように強く磁化を正負に繰り返して得たヒステリシス環線上の、近飽和磁化領域等の、ある磁界強さにおける、磁束量または磁束密度や、残留磁化、保磁力、透磁率、ヒステリシス損失は、ケーブルの磁気履歴の影響を受けない。従って、係る磁束量等を用い、ケーブルの張力を算出することで、ケーブルの磁気履歴によらず、ケーブルの張力を正確に算出できる。
【0033】
ヒステリシス環線の傾きを用いる第2の方法の場合、渦電流が発生しやすい急激な磁界変化を伴う交流磁界や変動磁界は用いず、渦電流が発生しない緩やかな磁界変化を与えることが好ましい。ヒステリシス環線の傾きの測定に、ケーブルに急激な磁界変化を伴う交流磁界や変動磁界を加えた場合、磁界の変化を妨げるようにケーブル内に渦電流が生じる。ケーブルは通常複数の素線を撚り合せた構造を有しており、ケーブルに急激な磁界変化を伴う交流磁界等を加えた場合、素線同士が接触している部分でも渦電流が生じることになる。しかし、素線相互の接触状態はケーブルの長さ方向に沿って均一であるとは言えないことから、急激な磁界変化を伴う交流磁界や変動磁界を用いないことが好ましい。
【0034】
以上のように本発明の発明者は、近飽和磁化領域を含むように磁界を変化させて得たヒステリシス環線の、近飽和磁化領域での磁束量または磁束密度や、残留磁化、保磁力、透磁率、ヒステリシス損失が、ケーブルに加えられた張力に応じて変化する現象を用いることで、ケーブルに作用している張力を測定できることを見出した。また、係るケーブルの張力測定方法によれば、正確にケーブルの張力を測定できることを見出した。
【0035】
そして、本実施形態の張力測定方法では、上記の方法によりケーブルの張力を測定するため、本発明の発明者らは、被測定物であるケーブルの周囲に、所定の磁界を形成する方法についてさらに検討を行った。
【0036】
電源を要せず、装置をシンプルな構成にできるため、磁界を形成する手段として永久磁石を用いることも考えられる。しかし、永久磁石を用いた場合、磁石からの距離により磁界の大きさが大きく変化し、ケーブルの周囲に均一かつ安定した磁界を形成することは困難である。また、磁界を形成する手段として永久磁石を用いた場合、磁界の強さを変更することもできないため、被測定物であるケーブルの種類やサイズ、本数によっては、例えば近飽和磁化領域まで達する磁界を加えることができない恐れがある。また、磁界の強さを変更できないため、残留磁化や、保磁力、ヒステリシス損失について同じ装置で測定を行うことができない。
【0037】
これに対して、磁界を形成する手段として、ソレノイド式磁化器を用いた場合、該ソレノイド式磁化器のコイルで囲まれた領域内に均一かつ安定した磁界を形成できる。また、ソレノイド式磁化器のコイルに供給する電流値を調整することで、磁界の強さを制御し、ケーブルが近飽和磁化領域まで達する磁界を形成できる。さらに、磁界の強さを変化させ、残留磁化や、保磁力を同じ装置で測定できる。
【0038】
以上の検討結果から、本発明の発明者らは被測定物であるケーブルの周囲に、該ケーブルが近飽和磁化領域まで達する磁界をソレノイド式磁化器により形成し、該磁界によりケーブルを磁化した際の磁束量や磁束密度から張力を再現性良く求められることを見出した。
【0039】
本実施形態の張力測定方法を説明する前に、本実施形態の張力測定方法に好適に用いることができる張力測定用リール、および張力測定用リールを含む張力測定装置の構成例について説明する。
【0040】
〔張力測定用リール〕
既述の様に、本発明の発明者らの検討によれば、磁界を形成するための手段としてソレノイド式磁化器を用いることが好ましい。このため、本実施形態の張力測定方法に用いる張力測定装置は、被測定物であるケーブルを収容し、該ケーブルの周囲にソレノイド式磁化器のソレノイドコイルを形成、支持するための張力測定用リールを有することができる。
【0041】
本実施形態の張力測定用リールは、被測定物であるケーブルの外周に配置できる。そして、本実施形態の張力測定用リールは、第1貫通孔を有し、筒形状であるソレノイドコイル形成部を有することができる。
【0042】
以下、張力測定用リールについて
図2~
図6に基づいて、具体的に説明する。
【0043】
図2は張力測定用リールの斜視図である。
図3は張力測定用リールの縦断面図であり、
図2におけるXZ平面での断面図に相当する。
図4~
図6は拡張測定用リールの第1貫通孔内に配置できる検出装置の説明図であり、後述する。
【0044】
図2、
図3に示すように、張力測定用リール20は、ソレノイドコイル形成部21を有することができる。
図3に示すように、ソレノイドコイル形成部21は、中心軸CLに沿って内部に第1貫通孔23Aを有し、筒形状とすることができる。ソレノイドコイル形成部21の第1貫通孔23A内には被測定物であるケーブルを収容できる。ソレノイドコイル形成部21の第1貫通孔23Aを取り囲む外側面には、後述するように導線を巻き付け、ソレノイド式磁化器となる第1コイルを形成できる。
【0045】
本実施形態の張力測定用リール20は、ソレノイドコイル形成部21以外にも任意の部材を有することができる。
【0046】
図2、
図3に示すように張力測定用リール20はさらに、ソレノイドコイル形成部21の第1貫通孔23Aの長さ方向、すなわち図中のZ軸に沿った一方の端部である第1端部211側に、第2貫通孔23Bを有し、筒形状であるプーリー22を備えることができる。この場合、第1貫通孔23Aと、第2貫通孔23Bとは連続した貫通孔23であり、貫通孔23内に被測定物であるケーブルを配置、収容できることが好ましい。
【0047】
プーリー22は、ソレノイドコイル形成部21に導線を巻き付ける際に、張力測定用リール20を回転させるために用いる部材である。このため、プーリー22の回転にあわせてソレノイドコイル形成部21も回転できるよう、ソレノイドコイル形成部21と、プーリー22とは、その軸心を共通にすることが好ましい。
【0048】
張力測定用リール20は、ソレノイドコイル形成部21の、第1端部211とは反対側に位置する第2端部212側に、ソレノイドコイル形成部21に配置した導線の端部を巻き付ける等して固定するための導線端部固定部24を備えることもできる。導線端部固定部24は、例えば第3貫通孔23Cを有し、筒形状とすることができる。第3貫通孔23Cについても、第1貫通孔23Aや第2貫通孔23Bと連続した貫通孔23とすることが好ましい。
【0049】
さらに、張力測定用リール20は、プーリー22、ソレノイドコイル形成部21、導線端部固定部24のそれぞれの両端に、各領域を画するフランジを備えることもできる。具体的には例えば
図2、
図3に示したように、プーリー22の両端部には、第1フランジ25A、第2フランジ25Bを設けられる。ソレノイドコイル形成部21の両端部には、第2フランジ25B、第3フランジ25Cを、導線端部固定部24の両端部には第3フランジ25C、第4フランジ25Dをそれぞれ設けられる。
【0050】
図2、
図3に示すように第2フランジ25Bはプーリー22とソレノイドコイル形成部21とで、第3フランジ25Cはソレノイドコイル形成部21と、導線端部固定部24とでそれぞれ兼用してもよい。フランジは任意の部材であることから、上述の全てのフランジを設ける必要はなく、一部または全てを設けないこともできる。
【0051】
フランジには、
図2、
図3に示すようにソレノイドコイル形成部21へ、ソレノイドコイルを形成するための導線を導入、導出させる開口部等を必要に応じて設けておくことができる。
【0052】
例えば
図2、
図3に示すように、導線端部固定部24からソレノイドコイル形成部21へ導線を導入するため、第3フランジ25Cに導入口26を設けておくことができる。任意の場所でソレノイドコイル形成部21へ導線を導入するために、複数の導入口26を設けておくこともできる。
図2では4個の導入口を第3フランジ25Cの内周側に、ソレノイドコイル形成部21の周方向に沿って設けた例を示しているが、係る形態に限定されず、4個より多くても良く、4個より少なくても良い。
【0053】
また、
図2、
図3に示すように、第3フランジ25Cに導出口27を設けておくこともできる。任意の場所でソレノイドコイル形成部21から導線を導出するために、複数の導出口27を設けておくこともできる。
図2では4個の導出口を第3フランジ25Cの外周側に、ソレノイドコイル形成部21の周方向に沿って設けた例を示しているが、係る形態に限定されず、4個より多くても良く、4個より少なくても良い。
【0054】
ケーブルの張力は建築物の施工時や、施工後、任意のタイミングで行う点検時等に測定することが求められる。従って、張力測定に要する装置は、取り付け、取り外しが容易にでき、当然のことながら建築物を破損等させることなく張力を測定できることが求められる。
【0055】
そこで、張力測定用リール20は、既設のケーブルにも取り付け可能なように、すなわち既設のケーブル30を、貫通孔23内に配置できるように構成されていることが好ましい。このため、
図2に示すように、張力測定用リール20は、第1貫通孔23Aの周方向に沿って複数の部材に分割できるように構成されていることが好ましい。なお、第1貫通孔23Aは貫通孔23に含まれるから、張力測定用リール20は、貫通孔23の周方向に沿って複数の部材に分割できるように構成されていることが好ましいと言い換えることもできる。
【0056】
図2では、張力測定用リール20が、第1リール半体20Aと、第2リール半体20Bとの2つの部材に分割できる例を示したが係る例に限定されず、3つ以上の部材に分割できるように構成することもできる。
【0057】
そして、貫通孔23内に、ケーブル30を配置した後、複数の部材、例えば第1リール半体20Aと、第2リール半体20Bとを組み合わせて固定し、1つの張力測定用リール20となるように構成されていることが好ましい。
【0058】
図2では、第1フランジ25A、第4フランジ25Dにねじ穴292が設けられ、第1当板28A、第2当板28B、第3当板28C、第4当板28Dを、ねじ291により上記フランジに固定している。
図2では、上述のようにフランジに当板を固定することで、第1リール半体20Aと、第2リール半体20Bとを固定している。
図2に示した例の場合、各当板は、フランジ表面の形状にあわせて湾曲していることが好ましい。
【0059】
ただし、張力測定用リール20が複数の部材に分割できる場合に、各部材間を接合する方法は係る形態に限定されない。例えば、第2当板28Bと、第3当板28Cとを蝶番とし、第1リール半体20Aと、第2リール半体20Bとについて、第1当板28A、第4当板28Dで固定する側のみを開閉可能に構成することもできる。
【0060】
張力測定用リール20の材料(材質)は、第1コイルにより形成した磁場に影響を与えないように非磁性材料でなければならない。張力測定用リールの材料としては、例えばアルミニウムなどの非磁性金属や、各種樹脂材料を用いることが好ましい。ソレノイドコイル形成部21に形成した第1コイルから発熱があることから、張力測定用リール20の材料は、放熱性に優れるアルミニウムがより好ましいが、この限りではない。
【0061】
図3に示したように、張力測定用リール20は、第1貫通孔23A内に検出装置40をさらに有することもできる。検出装置40は、第1貫通孔23A内に配置したケーブル30の近傍に形成された磁界の強さを測定する磁界センサと、ケーブル30内を通る磁束量または磁束密度を測定する磁束センサとを備えることができる。
【0062】
検出装置40は、第1貫通孔23A内に配置されていれば良いが、
図3に示すように、第1貫通孔23Aの長さ方向、すなわち
図3中のZ軸方向の中央部に配置しておくことが好ましい。ここでいう中央部とは厳密な意味での中央部を意味するものではなく、中央部の近傍も含むものである。
【0063】
検出装置40は、ソレノイドコイル形成部21に形成した第1コイルにより生じさせた磁界の強さや、係る磁界により第1貫通孔23A内に配置されたケーブル30内に生じた磁束量、磁束密度を測定できる。そこで、検出装置40は、第1貫通孔23A内に配置されたケーブル30の外表面を囲むように配置されることが好ましい。このため、検出装置40は、円環形状を有することが好ましい。
【0064】
検出装置40の構成は特に限定されないが、例えば以下のように構成できる。
【0065】
検出装置40の構成例について、
図4~
図6を用いて説明する。
【0066】
図4~
図6は、検出装置40を拡大して示している。
図4は、検出装置40の下面図であり、例えば
図2、
図3のZ軸に沿って見た場合の図に当たる。
図4には、張力測定用リール20の第1貫通孔23Aも点線であわせて示している。
図5は、検出装置40の側面図であり、
図4におけるブロック矢印Bに沿って見た場合の図に相当する。
図6は、
図4のC-C´線での断面図である。
【0067】
検出装置40は、既述の様に全体として円環形状を有することができる。このため、検出装置40を下面、または上面から見た場合に、検出装置40は貫通孔41を備えている。なお、検出装置40の貫通孔41を、既述の張力測定用リール20の第1貫通孔23A等と区別する場合には、第4貫通孔と呼ぶこともできる。
【0068】
検出装置40の内径に当たる貫通孔41の直径Rは、被測定物であるケーブルの外径よりも長いことが好ましい。
【0069】
検出装置40は、後述する磁界センサ等を保持するため、円環形状を有する筐体42を有することができる。筐体42の構成は特に限定されないが、筒形状を有する内板421、筒形状を有する外板422、および内板421と外板422とを接続する横板423を有することができる。
【0070】
内板421は、
図4~
図6に示すように、中央部に既述の貫通孔41を有する筒形状を有する。外板422は、内板421よりも開口部の直径が大きい筒形状を有する。外板422は、内板421と外板422との間の空間に磁界センサ等を収容できるように、また張力測定用リール20の第1貫通孔23A内に検出装置40を収容できるよう、そのサイズを選択できる。横板423は、内板421と、外板422との間の空間を覆うように、該空間の上面、および下面に設けることができ、中央部に貫通孔41に対応した開口部を有する円板形状を有することができる。
【0071】
筐体42の材料は、既述の磁界の強さや磁束量等の測定値に影響を与えないために非磁性の材料でなければならず、かつ渦電流の発生を避けるために非導電性の材料(絶縁材料)でなければならない。このため、筐体42の材料としては、例えば各種樹脂材料を用いることが好ましい。なお、ここでは検出装置40が筐体42を有する例を用いて説明したが、係る形態に限定されない。例えば後述する磁界センサ等を、第1貫通孔23Aの内側面に直接設置、固定しておくこともでき、この場合、検出装置40は、筐体42を有しなくてもよい。
【0072】
検出装置40は貫通孔41を囲むように、複数の磁界センサ43を有することができる。磁界センサ43は、貫通孔41に配置されたケーブル30の表面近傍の磁界の強さを測定でき、例えばホール素子を用いることができる。
【0073】
検出装置40が磁界センサ43を有することで、ソレノイドコイル形成部21に形成した第1コイルに通電して磁界を形成する際に、検出した磁界の強さに応じて第1コイルに供給する電力量を調整し、所望の強さの磁界を形成できる。
【0074】
磁界センサ43は、貫通孔41の周方向に沿って複数個設けることが好ましい。複数の磁界センサ43を設ける場合、磁界センサ43間の距離は等しいことが好ましい。複数個の磁界センサ43を設け、出力の平均値を該磁界センサ43からの検出値とすることで、被測定物が撚り線構造のケーブルや複数本のケーブルの場合、磁界センサ43と、各素線または各ケーブルとの間の距離が一定でない場合でも、測定誤差を抑制できる。
【0075】
検出装置40は貫通孔41を囲むように、磁束センサ44を有することができる。磁束センサ44の構成は特に限定されないが、例えばコイルを用いることができる。磁束センサ44は、張力測定用リール20のソレノイドコイル形成部21に形成した第1コイルによる磁界により、被測定物であるケーブル30内に生じた磁束量や、磁束密度を測定できる。係る磁束センサ44が測定した磁束量や、磁束密度に基づいてケーブルの張力を算出できる。
【0076】
横板423にはコネクタを設けておくことができ、上記磁界センサ43や、磁束センサ44と外部装置との間を、該コネクタを介して接続するように構成できる。例えば第1コネクタ45を設け、磁界センサ43を、第1コネクタ45を介して第1シールド線47と接続できる。また、第2コネクタ46を設け、磁束センサ44を、第2コネクタ46を介して第2シールド線48と接続できる。
【0077】
検出装置40についても、既設のケーブルに取り付け可能なように構成されていることが好ましい。このため、
図4に示すように検出装置40は、貫通孔41の周方向に沿って複数の部材に分割できることが好ましい。
図4では、検出装置40が、第1半体40Aと、第2半体40Bとの2つの部材に分割できる例を示したが係る例に限定されず、3つ以上の部材に分割できるように構成することもできる。
【0078】
ただし、検出装置40は、既述の様にコイルである磁束センサ44を備えているため、検出装置40の第1半体40Aと、第2半体40Bとを組み合わせた際に、磁束センサ44のコイルの配線も接合できるように構成されていることが好ましい。このため、例えば
図6に示したように、第1半体40Aと、第2半体40Bとの分割線で分割した際に、第1半体40A側の磁束センサ44を構成する導線の両端部に接続端子441を設けておくことが好ましい。また、第2半体40B側の磁束センサ44を構成する導線の両端部にも、接続端子441に対応する接続端子を設けておき、第1半体40Aと、第2半体40Bとを組み合わせた際に、接続端子同士が接続され、磁束センサ44のコイルが形成できることが好ましい。
【0079】
なお、ここでは磁束センサ44についてのみ説明したが、必要に応じて磁界センサ43を接続する導線にも接続端子を設け、第1半体40Aと、第2半体40Bとを組み合わせた際に、接続端子同士が接続させるように構成しても良い。
【0080】
また、張力測定用リール20と、検出装置40とが、それぞれ複数の部材に分割できる場合、これらの複数の部材を組み合わせた際に、複数の部材に分割する線が、貫通孔23を通り、かつ貫通孔と平行な同一平面上に位置することが好ましい。
【0081】
以上に説明した検出装置40は、張力測定用リール20の第1貫通孔23A内に固定していても良く、取り外し可能に構成しておくこともできる。
[張力測定装置]
本実施形態の張力測定装置について、
図7を用いて説明する。
【0082】
本実施形態の張力測定装置70は、既述の張力測定用リール20と、張力測定用リール20のソレノイドコイル形成部21に導線を巻き付けて形成した第1コイル71とを有することができる。
【0083】
具体的には、被測定物であるケーブル30に張力測定用リール20を設置した後、ソレノイドコイル形成部21の外側面に導線を巻き付け、第1コイル71を形成できる。具体的な手順については張力測定方法の中で説明するため、ここでは説明を省略する。
【0084】
張力測定装置70の第1コイル71の導線72の両端は磁化電源73に接続できる。後述するように、被測定物であるケーブル30の周囲に形成する磁界の強さや向きを変更し、ヒステリシス環線を描くために、磁化電源73は、供給する電気の極性を反転させる極性切り替え装置(スイッチ)を備えている。また、バイポーラ電源を磁化電源73として用いることができる。
【0085】
張力測定用リール20の第1貫通孔23A内に設置した検出装置40の磁界センサ43に接続された第1シールド線47を磁界測定装置74に、磁束センサ44に接続された第2シールド線48を磁束測定装置75にそれぞれ接続できる。
【0086】
また、磁束測定装置75は、演算装置76と接続しておくことができ、演算装置76は、磁束測定装置75が測定した磁界強さ、磁束量または磁束密度に基づいて、ケーブルの張力を算出できる。演算装置76には必要に応じて、ケーブルの磁界強さ、磁束量または磁束密度と、張力との関係式や、検量線を予めインプットしておくことができる。
【0087】
本実施形態の張力測定装置は、例えば制御手段77をさらに有することもできる。制御手段77は、磁化電源73、磁界測定装置74、および磁束測定装置75から選択された1つ以上と接続しておくことができ、例えば磁界測定装置74が測定した磁界の強さのデータを取得し、磁化電源73が供給する電力量を制御するように構成できる。
【0088】
また、後述するように、ケーブルの張力を測定するに当って、ケーブルのヒステリシス環線を描くことができる。このため、ヒステリシス環線が描けるように、制御手段77は、例えば第1コイル71が形成する磁界の大きさが変化するように、磁界測定装置74が測定した磁界の強さに基づいて、磁化電源73が出力する電力量を制御できる。
【0089】
以上に説明した本実施形態の張力測定装置によれば、被測定物を第1貫通孔23A内に収容し、第1貫通孔23Aを取り囲むソレノイドコイル形成部21に電磁石となる第1コイル71を形成できる。このため、本実施形態の張力測定装置を用いることで、被測定物であるケーブルの周りに、第1コイル71により均一かつ安定した磁界を形成できる。また、第1コイル71に供給する電力量を調整することで、磁界の強さを制御し、ケーブルが所定の磁化領域まで達する磁界を形成できる。
【0090】
そして、ヒステリシス環線上の近飽和磁化領域等の所定の領域、点に達するように磁界を形成し、ケーブル内に生じた磁束量または磁束密度を測定することで、ケーブルの張力を再現性良く算出できる。
[張力測定方法]
本実施形態の張力測定方法について説明する。
【0091】
本実施形態の張力測定方法は、既述の張力測定装置を用いて実施できるため、既に説明した事項については説明を一部省略する。
【0092】
本実施形態の張力測定方法は、以下の工程を有することができる。
【0093】
被測定物であるケーブルに、筒形状のソレノイドコイル形成部を備えた張力測定用リールを設置する第1リール設置工程。
ソレノイドコイル形成部に導線を巻き付け、第1コイルを作製する第1コイル作製工程。
第1コイルに通電することで磁界を形成し、ケーブルのヒステリシス環線を測定する磁化特性測定工程。
ヒステリシス環線から求めたパラメータを用いてケーブルの張力を算出する張力算出工程。
磁化特性測定工程では、ヒステリシス環線が近飽和磁化領域を含むように磁界を変化させ、磁界センサおよび磁束センサを用いてヒステリシス環線を測定する。
【0094】
張力算出工程で用いるパラメータは、近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度、残留磁化、保磁力、透磁率、およびヒステリシス損失から選択された1種類以上とすることができる。
【0095】
本実施形態の張力測定方法は、
図8に示したフロー
図80に従って実施できる。以下、工程毎に説明する。工程の名称の後に、
図8のフロー
図80におけるステップ番号を記載する。
(第1リール設置工程:S81)
第1リール設置工程(S81)では被測定物であるケーブルに、筒形状のソレノイドコイル形成部を備えた張力測定用リールを設置できる。
【0096】
既述のようにソレノイドコイル形成部は、中心軸に沿って第1貫通孔を備え、第1貫通孔内には磁界センサおよび磁束センサが設置されている。第1リール設置工程では、ケーブルが第1貫通孔内に位置するようにケーブルに張力測定用リールを設置できる。
【0097】
本実施形態の張力測定方法で張力を測定するケーブルとしては特に限定されず、張力が加わっている各種ケーブルを用いることができる。ただし、本実施形態の張力測定方法では、ケーブルの周囲に磁界を形成し、該磁界によりケーブルを磁化する。このため、被測定物となるケーブルは強磁性体の材料を含む必要があり、被測定物となるケーブルとしては、例えば構成する素線の少なくとも一部が強磁性体の材料を含むケーブルが挙げられる。被測定物となるケーブルとしては、例えば、吊橋に用いられているメインケーブル、ハンガーロープや、斜張橋に用いられている斜材、プレストレストコンクリートに用いられている複数本の素線を撚り合せたPC鋼撚り線や、PC鋼棒等のPC鋼材が挙げられる。
【0098】
建築物等では、撚り合わせていない複数本のケーブルがまとめて用いられている場合があるが、ケーブル同士が接触等しており、適切に振動を加えられないため、従来の振動法では係る複数本のケーブルの張力を測定することは困難であった。振動法では張力を算出する際に固定点間の距離であるケーブル長が必要となるが、上述のような複数本のケーブルを含む場合等にはケーブルが交差、接触等している場合があり、ケーブル長が明らかではなく、張力を求められない場合があった。しかしながら、本実施形態の張力測定方法によれば、ソレノイドコイルを用いることでコイル内に均一な磁界を形成し、磁化できるため、この様な複数本のケーブルの張力も再現性よく測定できる。このため、本実施形態の張力測定方法の被測定物であるケーブルは、1本のケーブルでもよく、2本以上の複数本のケーブルでも良い。本実施形態の張力測定方法によれば、被測定物が2本以上の複数本のケーブルの場合でも張力を再現性良く測定でき、従来技術と比較して特に高い効果を発揮できる。
【0099】
張力測定用リールについては既述のため、ここでは説明を省略する。
【0100】
既述の様に、張力測定用リール20の第1貫通孔23Aには、磁界センサ43、および磁束センサ44を備えた検出装置40が配置されている。このため、張力測定用リール20の第1貫通孔23A内にケーブル30を設置することで、併せて該検出装置40の貫通孔41内にケーブル30を設置できる。
【0101】
また、張力測定用リール20は、既述の様に第1貫通孔23Aの周方向に沿って、複数に分割可能であることが好ましい。具体的には、例えば
図2等を用いて説明したように、第1リール半体20Aと、第2リール半体20Bとに分割できるように構成できる。このように張力測定用リール20が、複数に分割可能な場合、第1リール設置工程では、複数の部材に分割した張力測定用リール20を、ケーブル30の周方向に沿って配置し、組み立てることができる。例えば
図2に示した張力測定用リール20の場合、まずケーブル30の周方向に沿って、第1リール半体20Aと、第2リール半体20Bとを配置する。次いで、張力測定用リール20の第1フランジ25A、第4フランジ25Dにおいて、接合用の第1当板28A、第2当板28B、第3当板28C、第4当板28Dと、ねじ291とにより第1リール半体20Aと、第2リール半体20Bとを固定できる。
【0102】
この様に、張力測定用リール20を複数に分割可能とすることで、既設のケーブルにも張力測定用リールを設置でき、該ケーブルの張力が測定可能になる。すなわち、張力測定用リール20が複数に分割可能な場合、被測定物となるケーブルは、新設のケーブルおよび、既設のケーブルを含む。
【0103】
第1リール設置工程S81を実施することで、
図2の様に、ケーブル30の周囲に張力測定用リール20が設置された状態にできる。
(第1コイル作製工程:S82)
第1コイル作製工程では、張力測定用リールのソレノイドコイル形成部に導線を巻き付け、ソレノイド式磁化器となる第1コイルを作製できる。
【0104】
第1コイル作製工程では、例えば以下のようにしてソレノイドコイル形成部21に導線を巻き付け、第1コイルを形成できる。
【0105】
第1コイル作製工程を実施するに当っては、ソレノイドコイル形成部に巻き付ける導線の一端部を、張力測定用リール20の第3フランジ25Cに形成された任意の導入口26を通して、導線端部固定部24に巻き付け、固定しておく。
【0106】
そして、張力測定用リール20を、ケーブル30を中心に回転させることで、導線をソレノイドコイル形成部21に巻き付ける。この際、ソレノイドコイル形成部21に形成される第1コイルが、ケーブル30を均一に磁化できるように、ソレノイドコイル形成部21に導線を整列巻にする、すなわちソレノイドコイル形成部21に導線を均一に巻くことが好ましい。作業者は、導線を整列巻にできるように、導線が巻かれる位置を調整することが好ましい。ソレノイドコイル形成部21に導線を巻き終え、第1コイルが形成されたら、導線の他端部を、第3フランジ25Cに形成された任意の導出口27を通して固定するか、ソレノイドコイル形成部21の第1コイルに固定することが好ましい。
【0107】
張力測定用リール20を回転させる方法は特に限定されない。例えば、回転自在なドラムに巻き付けられたロープを引き出し、張力測定用リール20のプーリー22に掛け、該ロープの端部をウィンチに接続しておく。そして、ウィンチによりロープを巻き取ることで、プーリー22を含む張力測定用リール20を回転させることができる。
【0108】
以上の操作により、張力測定用リールのソレノイドコイル形成部に導線を巻き付け、第1コイルを作製できる。また、これにより
図7に示した張力測定装置70とすることができる。
【0109】
ケーブル30を磁化するための磁界を形成する手段として第1コイルを用いることで、永久磁石を用いた場合と比較して、第1コイルで囲まれた領域、例えば第1貫通孔23A内の磁界を特に均一にできる。このため、太いケーブルや、被測定物が複数本のケーブルの場合であっても、均一に磁化し、その張力を適切に評価できる。また、磁界の強さを変化できるため、ヒステリシス環線を描くことができ、残留磁化、保磁力についても測定できる。
【0110】
第1コイル作製工程終了後、張力測定装置70の第1コイル71の導線72の両端を、磁化電源73に接続できる。張力測定用リール20の第1貫通孔23A内に設置した検出装置40の磁界センサ43に接続された第1シールド線47を磁界測定装置74に、磁束センサ44に接続された第2シールド線48を磁束測定装置75にそれぞれ接続できる。
(磁化特性測定工程)
磁化特性測定工程(S83)では、第1コイルに通電することで磁界を形成し、ケーブルのヒステリシス環線を測定する。ヒステリシス環線を測定する際、ヒステリシス環線が近飽和磁化領域を含むように磁界を変化させる。具体的には、ヒステリシス環線が近飽和磁化領域を含むように磁界の増減を繰り返す。
【0111】
そして、第1貫通孔内に設置された磁界センサにより測定された磁界強さと、磁束センサにより測定されたケーブル内部の磁束量または磁束密度からヒステリシス環線を測定する。
【0112】
ヒステリシス環線を描くことで、磁束量または磁束密度、残留磁化、保磁力、透磁率、ヒステリシス損失などの全てを測定できる。透磁率は、既述のようにヒステリシス環線上の点での傾きとなる。また、ヒステリシス損失は、ヒステリシス環線で囲まれた領域の面積に比例した値となる。
【0113】
なお、近飽和磁化領域とは、磁界の増減において磁化曲線が同一曲線上をたどる領域,すなわちヒステリシス環線が閉塞している領域を意味する。
【0114】
ヒステリシス環線を測定する場合、磁界の変化に伴う渦電流の発生を抑制するため、磁界をゆっくり変化することが好ましい。具体的には、磁化特性測定工程において、ヒステリシス環線を、1サイクル当たり60秒以上をかけて測定することが好ましく、80秒以上かけて測定することがより好ましい。
【0115】
ヒステリシス環線を測定する際に、1サイクル当たり60秒以上かけることで、被測定物であるケーブル内に渦電流が発生しない緩やかな磁界変化を与えることができる。このため、特に精度よくケーブルの磁化特性を測定できる。
【0116】
上述のように、磁界の変化は遅い方が好ましいため、ヒステリシス環線を測定する際の1サイクル当たりの時間の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、ヒステリシス環線を1サイクル測定するために要する時間は300秒以下であることが好ましく、180秒以下であることがより好ましい。
【0117】
ヒステリシス環線を1サイクル測定するとは、
図1に示したヒステリシス環線を1回描くことを意味する。すなわち、一方向の磁界の増減に引き続き、正負を逆転させた磁界の増減を行う過程を1回行うことを意味する。
【0118】
磁化特性測定工程においては、ヒステリシス環線を2回以上、すなわち2サイクル以上測定することが好ましい。
【0119】
ヒステリシス環線を2回以上繰り返し測定することで、測定を開始する直前の磁気履歴に影響されない残留磁化や保磁力などの磁気特性の特に正確な値を測定できる。また、上述のようにヒステリシス環線を2回以上測定することで、再現性のあるヒステリシス環線を描けているかを確認できる。磁化特性測定工程では、例えば2回以上5回以下、ヒステリシス環線を測定することが好ましい。そして、測定した複数のヒステリシス環線のうち、同じ形状のヒステリシス環線を張力の算出に用いることが好ましい。
【0120】
磁界センサ43は、ケーブル30近傍の磁界の強さを計測でき、第1コイル71によって発生する磁界の強さを計測できる。既述の様に、磁界センサ43としては例えばホール素子を用いることができる。
【0121】
磁束センサ44は、第1コイル71により磁化されたケーブル30内を通る磁束量を計測できる。なお、磁束量の測定中、張力測定装置70は固定されており、移動させないため、測定箇所におけるケーブルの断面積は一定であり、磁束センサ44は磁束密度を測定することもできる。
【0122】
なお、後述する第2磁化特性測定工程と区別する場合には、本工程は第1磁化特性測定工程とすることができる。
【0123】
(張力算出工程:S83)
ケーブルの張力は上述の方法によって精密に測定されたヒステリシス環線から算出できる。
【0124】
既述のように、張力は、例えば近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度や、残留磁化、保磁力、透磁率、ヒステリシス損失などを用いて算出できる。
【0125】
図10~
図16に、ケーブルに加えた張力と、各パラメータとの関係図を示す。
図10は張力と近飽和磁化領域における磁束量との関係を示している。
図11は張力と残留磁化との関係を示している。
図12は張力と保磁力との関係を示している。
図13は張力と近飽和磁化領域における透磁率との関係を示している。
図14は張力と残留磁化の点における透磁率との関係を示している。
図15は張力と保磁力の点における透磁率との関係を示している。
図16は張力とヒステリシス損失との関係を示している。
【0126】
図10~
図16に示すように、ケーブルの張力は、近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度や、残留磁化、保磁力、透磁率、ヒステリシス損失等と相関を有しており、これらのパラメータを用いて、ケーブルの張力を算出できる。なお、ヒステリシス損失はヒステリシス環線の面積に比例する。このため、パラメータとしてヒステリシス損失を用いる場合には、パラメータとしてヒステリシス環線の面積を用いる場合も含む。
【0127】
上記いずれかのパラメータのみを用いて張力を算出することもできるが、本発明の発明者の検討によれば、張力の算出を、複数のパラメータを用いて算出することが、測定精度を高める観点から好ましい。すなわち、張力算出工程では、近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度と、残留磁化と、保磁力と、傾きなどから選択された1種類以上のパラメータを用いて、張力を算出することが好ましい。
【0128】
既述の様に、本実施形態の張力測定方法では、測定した磁束量、磁束密度等からケーブル30に加わった張力を算出できる。そして、本実施形態の張力測定方法では、張力を算出する際に用いる検量線を予め作成する必要がある。
【0129】
検量線を作成する工程として、具体的には例えば
図9に示したフロー
図90に従って実施でき、この場合、本実施形態の張力測定方法はさらに以下の工程を有することができる。
【0130】
検量用ケーブルに、筒形状のソレノイド形成部を備えた張力測定用リールを設置する第2リール設置工程(S91)。
【0131】
張力測定用リールのソレノイドコイル形成部に導線を巻き付け、第2コイルを作製する第2コイル作製工程(S92)。
【0132】
第2コイルに通電することで磁界を形成し、検量用ケーブルのヒステリシス環線を測定する第2磁化特性測定工程(S93)。
【0133】
第2磁化特性測定工程により得られた、検量用ケーブルの張力と、検量用ケーブルの磁化特性との関係をグラフ化して検量線を作成する検量線作成工程(S94)。
【0134】
第2磁化特性測定工程では、検量用ケーブルに導入する張力が異なる複数の水準において、ヒステリシス環線を測定できる。
【0135】
以下、各工程について説明する。
(第2リール設置工程、第2コイル作製工程)
第2リール設置工程(S91)と、第2コイル作製工程(S92)とは、ケーブルとして、検量用ケーブルを用いる点以外は、第1リール設置工程や、第1コイル作製工程と同様にして実施できるため、ここでは説明を省略する。また、第2コイル作製工程後は、設置するケーブル30が検量用ケーブルである点以外は、
図7に示した張力測定装置70と同じ構成の張力測定装置が得られる。
【0136】
第2コイルは、検量用ケーブルの周囲に検量線作成時に必要となる所定の磁界を形成できればよく、その構成は特に限定されない。このため、既述の第1コイル作製工程において作製する第1コイルと、第2コイル作製工程で作製する第2コイルとは、導線の巻回数や、導線の材質が同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0137】
ただし、検量線の作成時の測定条件と、被測定物の測定時の測定条件とは同じであることが好ましいことから、第1コイルと、第2コイルとは、用いる導線の巻回数や、材質等が同じであることが好ましい。
【0138】
(第2磁化特性測定工程)
第2磁化特性測定工程(S93)では、第2コイルに通電することで磁界を形成し、検量用ケーブルを磁化できる。この際、磁界センサにより検量用ケーブルの近傍に形成された磁界の強さを測定し、予め定めた所望の強さの磁界を形成できているかを確認することが好ましい。磁界の強さが設定値からずれている場合には、第2コイルに供給する電流を調整することが好ましい。
【0139】
第2磁化特性測定工程では、既述の(第1)磁化特性測定工程の場合と同様に、第2コイルによりヒステリシス環線が近飽和磁化領域を含むように磁界を変化させ、ケーブル内部の磁界強さ、磁束量または磁束密度からヒステリシス環線を測定する。ヒステリシス環線を描くことで、近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度、残留磁化、保磁力、透磁率、ヒステリシス損失などの全てのパラメータを測定できる。第2磁化特性測定工程でヒステリシス環線を描く場合、(第1)磁化特性測定張力算出工程で説明した条件と同様の条件でヒステリシス環線を測定することが好ましい。
【0140】
第2磁化特性測定工程では、検量用ケーブルに導入する張力について複数の水準(条件)で、ヒステリシス環線を測定できる。
【0141】
このため、第2磁化特性測定工程を行う前に、予め実際に測定を行うケーブルについて想定される張力の最大値までの範囲内で、検量用ケーブルに導入し、磁化特性を測定する張力について複数の水準(条件)を設定しておくことが好ましい。
【0142】
そして、第2磁化特性測定工程では以下の張力導入工程と、ヒステリシス環線測定工程とを、張力について設定した複数の水準の測定を終えるまで、交互に繰り返し実施できる。
【0143】
張力導入工程では、設定した複数の水準から選択した1つの水準の張力を検量用ケーブルに導入できる。検量用ケーブルには、例えばロードセルを用いて所定の張力を導入できる。
【0144】
ヒステリシス環線測定工程では、張力導入工程で検量用ケーブルに導入した張力を保持した状態でヒステリシス環線の測定を実施できる。ヒステリシス環線測定工程の間は検量用ケーブルに導入した張力を変更することなく、保持することになる。
【0145】
張力導入工程と、ヒステリシス環線測定工程とは、予め設定した張力についての全ての水準の測定を終えるまで繰り返し実施できるが、各水準について複数回、ヒステリシス環線の測定を行うことが好ましい。各水準について複数回、ヒステリシス環線の測定を行うことで、検量線の精度を高めることができる。上述のように各水準について複数回、ヒステリシス環線の測定を行う場合、張力が同じ水準のヒステリシス環線測定工程は連続して行わず、他の水準についての測定を実施してから、再度検量用ケーブルの張力を調整し、実施することが好ましい。
【0146】
(検量線作成工程)
検量線作成工程(S94)では、第2磁化特性測定工程で得られた検量用ケーブルの張力と、検量用ケーブルの磁化特性との関係をグラフ化して検量線を作成する。
【0147】
なお、第1リール設置工程と、第2リール設置工程とは、同じ張力測定用リールを用いることができる。このため、検量線作成工程終了後、第2リール設置工程、第2コイル作製工程で作製した第2コイルを解体し、取り外した張力測定用リールを、第1リール設置工程で用いることもできる。
【0148】
以上に説明した本実施形態の張力測定方法によれば、ケーブルに作用している張力を測定できる新たな張力測定方法を提供できる。また、本実施形態の張力測定方法によれば、ソレノイド式磁化器を用いることで、被測定物であるケーブルの周りに均一かつ安定に磁界を形成できる。そして、ケーブルの張力と強い相関を有する近飽和磁化領域における磁束量または磁束密度と、残留磁化と、保磁力と、透磁率と、ヒステリシス損失とから選択された1種類以上のパラメータを用いることで、ケーブルに作用している張力を正確に測定できる。
【符号の説明】
【0149】
10A、10B、10C ヒステリシス環線
11 近飽和磁化領域
12 領域
13 領域
14A、14B、14C 接線
A 直線
CL 中心軸
20 張力測定用リール
20A 第1リール半体
20B 第2リール半体
21 ソレノイドコイル形成部
211 第1端部
212 第2端部
22 プーリー
23 貫通孔
23A 第1貫通孔
23B 第2貫通孔
23C 第3貫通孔
24 導線端部固定部
25A 第1フランジ
25B 第2フランジ
25C 第3フランジ
25D 第4フランジ
26 導入口
27 導出口
28A 第1当板
28B 第2当板
28C 第3当板
28D 第4当板
291 ねじ
292 ねじ穴
30 ケーブル
40 検出装置
40A 第1半体
40B 第2半体
41 貫通孔(第4貫通孔)
42 筐体
421 内板
422 外板
423 横板
441 接続端子
43 磁界センサ
44 磁束センサ
45 第1コネクタ
46 第2コネクタ
47 第1シールド線
48 第2シールド線
B ブロック矢印
R 直径
70 張力測定装置
71 第1コイル
72 導線
73 磁化電源
74 磁界測定装置
75 磁束測定装置
76 演算装置
77 制御手段
80、90 フロー図
S81 第1リール設置工程
S82 第1コイル作製工程
S83 磁化特性測定工程
S84 張力算出工程
S91 第2リール設置工程
S92 第2コイル作製工程
S93 第2磁化特性測定工程
S94 検量線作成工程