(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】電磁弁駆動装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/20 20060101AFI20240301BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20240301BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20240301BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240301BHJP
H01F 7/18 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F02D41/20
F02M51/00 G
F02M51/06 M
F16K31/06 310A
F16K31/06 385A
H01F7/18 D
(21)【出願番号】P 2020164324
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大顕
(72)【発明者】
【氏名】小川 功史
(72)【発明者】
【氏名】野村 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】黒田 啓介
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-201661(JP,A)
【文献】特開2020-041488(JP,A)
【文献】特開2017-005298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/20
F02M 51/00
F02M 51/06
F16K 31/06
H01F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドコイルを有する燃料噴射弁を駆動する電磁弁駆動装置であって、
バッテリの出力電圧であるバッテリ電圧を昇圧する昇圧回路と
前記昇圧回路と前記ソレノイドコイルの第1端部との間に配置される第1スイッチング素子と、
前記バッテリと前記第1端部との間に配置される第2スイッチング素子と、
前記第1端部とグランドとの間に配置される第3スイッチング素子と、
前記ソレノイドコイルの第2端部とグランドとの間に配置される第4スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子をオン状態にするために必要な電圧を生成するブートストラップコンデンサと、
前記昇圧回路を経由せずに前記バッテリから前記ブートストラップコンデンサに対して充電する第1充電経路と、
前記昇圧回路から前記ブートストラップコンデンサに対して充電する第2充電経路と、
前記ブートストラップコンデンサに対して充電する充電経路を、前記第1充電経路又は前記第2充電経路に切り替える切替制御部と
を有し、
前記切替制御部は、前記バッテリ電圧が所定値を下回った場合には前記充電経路を第1充電経路から第2充電経路に切り替える電磁弁駆動装置。
【請求項2】
前記第1充電経路に設けられ、前記バッテリ電圧を降圧することで前記ブートストラップコンデンサに対して充電するための電圧を生成する第1電圧生成部と、
前記第2充電経路に設けられ、前記昇圧回路で昇圧された昇圧電圧を降圧することで前記ブートストラップコンデンサに対して充電するための電圧を生成する第2電圧生成部と、
を更に備える、
請求項1に記載の電磁弁駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、燃料噴射弁のソレノイドコイルに通電することで燃料噴射弁を開弁させる電磁弁駆動装置が開示されている。電磁弁駆動装置は、ハイサイド側のスイッチング素子(以下、「ハイサイド側スイッチング素子」という。)と、ローサイド側のスイッチング素子(以下、「ローサイド側スイッチング素子」という。)を有している。電磁弁駆動装置は、ハイサイド側スイッチング素子及びローサイド側スイッチング素子のそれぞれをオン状態に制御することで、バッテリ電圧及びバッテリ電圧を昇圧した昇圧電圧のいずれかをソレノイドコイルに通電する。
【0003】
電磁弁駆動装置は、ハイサイド側スイッチング素子をオン状態に制御するための電圧(以下、「ブート電圧」という。)を生成するブートストラップ回路を備える場合がある。ブートストラップ回路は、ダイオード及びコンデンサを備え、このコンデンサに充電することでブート電圧を生成する。
【0004】
ブート電圧を生成するためには、前記コンデンサを充電するための電圧(以下、「充電電圧」という。)を生成する必要がある。そこで、従来の電磁弁駆動装置は、前記昇圧電圧を所定の電圧まで降圧することで充電電圧を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、昇圧電圧を所定の電圧まで降圧すると損失が大きい。そこで、発明者は、バッテリ電圧から充電電圧を生成するという着想を得た。ただし、バッテリ電圧は車両の走行状態や異常などの様々な要因により低下したり不安定になることが想定され、安定したブート電圧を生成することができない虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ハイサイド側スイッチング素子をオン状態に制御するためのブート電圧を安定して生成可能な電磁弁駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様は、ソレノイドコイルを有する燃料噴射弁を駆動する電磁弁駆動装置であって、バッテリの出力電圧であるバッテリ電圧を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路と前記ソレノイドコイルの第1端部との間に配置される第1スイッチング素子と、前記バッテリと前記第1端部との間に配置される第2スイッチング素子と、前記第1端部とグランドとの間に配置される第3スイッチング素子と、前記ソレノイドコイルの第2端部とグランドとの間に配置される第4スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子をオン状態にするために必要な電圧を生成するブートストラップコンデンサと、前記昇圧回路を経由せずに前記バッテリから前記ブートストラップコンデンサに対して充電する第1充電経路と、前記昇圧回路から前記ブートストラップコンデンサに対して充電する第2充電経路と、前記ブートストラップコンデンサに対して充電する充電経路を、前記第1充電経路又は前記第2充電経路に切り替える切替制御部とを有し、前記切替制御部は、前記バッテリ電圧が所定値を下回った場合には前記充電経路を第1充電経路から第2充電経路に切り替える電磁弁駆動装置である。
【0009】
(2)上記(1)の電磁弁駆動装置であって、前記第1充電経路に設けられ、前記バッテリ電圧を降圧することで前記ブートストラップコンデンサに対して充電するための電圧を生成する第1電圧生成部と、前記第2充電経路に設けられ、記昇圧回路で昇圧された昇圧電圧を降圧することで前記ブートストラップコンデンサに対して充電するための電圧を生成する第2電圧生成部と、を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、ハイサイド側スイッチング素子をオン状態に制御するためのブート電圧を安定して生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る燃料噴射弁の構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る電磁弁駆動装置の構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る第1充電経路及び第2充電経路の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る電磁弁駆動装置の動作タイミングを示す図である。
【
図5】本実施形態に係る電磁弁駆動装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る電磁弁駆動装置を、図面を用いて説明する。
【0014】
本実施形態に係る電磁弁駆動装置1は、燃料噴射弁Lを駆動する駆動装置である。具体的には、本実施形態に係る電磁弁駆動装置1は、車両に搭載された内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁L(電磁弁)を駆動対象とする電磁弁駆動装置である。
【0015】
燃料噴射弁Lは、車両に搭載されたガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジン等の内燃機関に燃料を噴射する電磁弁(ソレノイド弁)である。
以下に、燃料噴射弁Lの構成例について、
図1を用いて説明する。
【0016】
図1に示すように、燃料噴射弁Lは、固定コア2、弁座3、ソレノイドコイル4、ニードル5、弁体6、リテーナ7、ロアストッパ8、弁体付勢バネ9、可動コア10、及び可動コア付勢バネ11を備える。本実施形態では、固定コア2、弁座3、及びソレノイドコイル4が固定部材であり、ニードル5、弁体6、リテーナ7、ロアストッパ8、弁体付勢バネ9、可動コア10、及び可動コア付勢バネ11が可動部材である。
【0017】
固定コア2は、円筒状の部材であり、燃料噴射弁Lのハウジング(不図示)に固定されている。固定コア2は、磁性材料によって形成されている。
【0018】
弁座3は、燃料噴射弁Lのハウジングに固定されている。弁座3は、噴射孔3aを有する。
噴射孔3aは、燃料が噴射される孔であって、弁座3に弁体6が着座した場合に閉鎖し、弁体6が弁座3から離間した場合に開放される。
【0019】
ソレノイドコイル4は、電線が環状に巻回されることにより形成されている。ソレノイドコイル4は、固定コア2と同心状に配置されている。
ソレノイドコイル4は、電磁弁駆動装置1と電気的に接続されている。ソレノイドコイル4は、電磁弁駆動装置1から通電されることで、固定コア2及び可動コア10を含む磁路を形成する。
【0020】
ニードル5は、固定コア2の中心軸に沿って延在する長尺状の棒部材である。ニードル5は、固定コア2及び可動コア10を含む磁路により発生する吸引力によって、固定コア2の中心軸の軸方向(ニードル5の延在方向)に移動する。なお、以下の説明において、固定コア2の中心軸の軸方向において、上記吸引力により可動コア10が移動する方向を上方と称し、上記吸引力により可動コア10が移動する方向と反対の方向を下方と称する。
【0021】
弁体6は、ニードル5における下方の先端に形成されている。弁体6は、弁座3に着座することによって噴射孔3aを閉鎖し、弁座3から離間することによって噴射孔3aを開放する。
【0022】
リテーナ7は、ガイド部材71及びフランジ72を備える。
ガイド部材71は、ニードル5における上方の先端に固定された円筒状の部材である。
フランジ72は、上方におけるガイド部材71の端部において、ニードル5の径方向に突出するように形成されている。
フランジ72は、下方の端面が可動コア付勢バネ11との当接面である。また、フランジ72における上方の端面は、弁体付勢バネ9との当接面である。
【0023】
ロアストッパ8は、弁座3とガイド部材71との間のニードル5に固定された円筒状の部材である。このロアストッパ8は、上方の端面が可動コア10との当接面である。
【0024】
弁体付勢バネ9は、固定コア2の内部に収容された圧縮コイルバネであり、ハウジングの内壁面と、フランジ72と間に介挿されている。弁体付勢バネ9は、弁体6を下方に付勢する。すなわち、ソレノイドコイル4に通電されてない場合には、弁体付勢バネ9の付勢力により、弁体6が弁座3に当接される。
【0025】
可動コア10は、ガイド部材71とロアストッパ8との間に配置されている。可動コア10は、円筒状の部材であり、ニードル5と同軸に設けられている。この可動コア10は、中央にニードル5が挿通される貫通孔が形成されており、ニードル5の延在方向に沿って移動可能である。
可動コア10の上方の端面は、固定コア2及び可動コア付勢バネ11との当接面である。一方、可動コア10の下方の端面は、ロアストッパ8との当接面である。可動コア10は、磁性材料によって形成されている。
【0026】
可動コア付勢バネ11は、フランジ72と可動コア10との間に介挿されている圧縮コイルバネである。可動コア付勢バネ11は、可動コア10を下方に付勢する。すなわち、可動コア10は、ソレノイドコイル4に通電されていない場合には、可動コア付勢バネ11の付勢力により、ロアストッパ8に当接される。
【0027】
次に、本実施形態に係る電磁弁駆動装置1について、説明する。
【0028】
図2に示すように、電磁弁駆動装置1は、昇圧回路20、第1電圧生成部21、第2電圧生成部22、ブートストラップ回路23、切替部24、第1スイッチング素子25~第4スイッチング素子28、第1ダイオード29、第2ダイオード30、電流検出用抵抗器31、スイッチ32、制限抵抗器33、抵抗器34及び制御部35を備える。なお、スイッチ32等は制御部35内に実装されていてもよい。
【0029】
昇圧回路20は、車両に搭載されたバッテリBTから入力されるバッテリ電圧Vbを所定の電圧まで昇圧する。例えば、昇圧回路20は、チョッパ回路である。昇圧回路20は、バッテリ電圧を昇圧することで昇圧電圧Vsを生成する。昇圧回路20は、昇圧比が例えば十~数十程度であり、制御部35によって動作が制御される。
【0030】
第1電圧生成部21は、バッテリ電圧Vbを降圧することで第1電圧V1を生成する。例えば、第1電圧生成部21は、リニアレギュレータやスイッチングレギュレータなどのDC-DCコンバータを備える。
【0031】
第2電圧生成部22は、昇圧電圧Vsを降圧することで第2電圧V2を生成する。例えば、第2電圧生成部22は、リニアレギュレータやスイッチングレギュレータなどのDC-DCコンバータを備える。第1電圧V1及び第2電圧V2は、同一の電圧値である。ただし、第1電圧V1及び第2電圧V2は、互いに異なる電圧値であってもよい。
【0032】
ブートストラップ回路23は、ハイサイド側のスイッチング素子(以下、「ハイサイド側スイッチング素子」という。)をオン状態に制御するための電圧(以下、「ブート電圧」という。)Vbootを生成する。ハイサイド側スイッチング素子とは、第1スイッチング素子25及び第2スイッチング素子26の少なくともいずれかである。ブートストラップ回路23は、第1電圧V1及び第2電圧V2のいずれかの電圧からブート電圧を生成する。ブートストラップ回路23は、ダイオード40及びブートストラップコンデンサ41を備える。
【0033】
ダイオード40は、アノードが切替部24に接続され、カソードがブートストラップコンデンサ41に接続されている。
【0034】
ブートストラップコンデンサ41は、第1端部がダイオード40のカソードに接続され、第2端部が第1スイッチング素子25及び第2スイッチング素子26の各ソースに接続されている。ブートストラップ回路23は、ブートストラップコンデンサ41が充電されることでブート電圧Vbootを生成する。
【0035】
切替部24は、ブートストラップコンデンサ41に対して充電する充電経路を、第1充電経路100又は第2充電経路200に切り替える。第1充電経路100は、昇圧回路20を経由せずにバッテリBTからブートストラップコンデンサ41に対して充電する経路である。本実施形態の第1充電経路100は、第1電圧生成部21で生成した第1電圧V1をブートストラップコンデンサ41に印加することでブートストラップコンデンサ41を充電する経路である。ただし、これに限定されず、第1充電経路100は、バッテリ電圧Vbをブートストラップコンデンサ41に印加することでブートストラップコンデンサ41を充電する経路であってもよい。
【0036】
第2充電経路200は、昇圧回路20からブートストラップコンデンサ41に対して充電する経路である。本実施形態の第2充電経路200は、第2電圧生成部22で生成した第2電圧V2をブートストラップコンデンサ41に印加することでブートストラップコンデンサ41を充電する経路である。ただし、これに限定されず、第2充電経路200は、昇圧電圧Vsをブートストラップコンデンサ41に印加することでブートストラップコンデンサ41を充電する経路であってもよい。
【0037】
切替部24は、ブートストラップコンデンサ41に対して充電する充電経路を、第1充電経路100又は第2充電経路200に切り替え可能であれば、その構成には特に限定されないが、例えば、三路スイッチを有してもよい。
【0038】
例えば、切替部24は、第1端子24a、第2端子24b及び第3端子24cを備える。切替部24は、第1端子24aと第3端子24cとを電気的に接続する第1状態と、第2端子24bと第3端子24cとを電気的に接続する第2状態と、を切り替え可能である。第1端子24aは、第1電圧生成部21の出力端子に接続されている。第2端子24bは、第2電圧生成部22の出力端子に接続されている。第3端子24cは、ダイオード40のアノードに接続されている。切替部24は、制御部35によって第1状態に制御されることで、ブートストラップコンデンサ41に対して充電する充電経路を第1充電経路100に切り替える。切替部24は、制御部35によって第2状態に制御されることで、ブートストラップコンデンサ41に対して充電する充電経路を第2充電経路200に切り替える。
【0039】
第1スイッチング素子25は、例えば、MOSトランジスタであり、昇圧回路20の出力端とソレノイドコイル4の第1端部との間に設けられている。すなわち、第1スイッチング素子25は、ドレインが昇圧回路20の出力端子に接続され、ソースが抵抗器34を介してソレノイドコイル4の第1端部に接続されている。第1スイッチング素子25のゲートは、制御部35に接続されている。第1スイッチング素子25は、制御部35によってオン/オフ(閉/開)動作が制御される。
【0040】
第2スイッチング素子26は、例えば、MOSトランジスタであり、バッテリBTの出力端子とソレノイドコイル4の第1端部との間に設けられている。第2スイッチング素子26は、ドレインが第2ダイオード30を介してバッテリBTの出力端子に接続され、ソースが抵抗器34を介してソレノイドコイル4の第1端部に接続されている。第2スイッチング素子26のゲートは、制御部35に接続されている。第2スイッチング素子26は、制御部35によってオン/オフ(閉/開)動作が制御される。
【0041】
第3スイッチング素子27は、例えば、MOSトランジスタであり、ドレインがソレノイドコイル4の第1端部に接続され、ソースがGND(基準電位)に接続されている。第3スイッチング素子27のゲートは、制御部35に接続されている。第3スイッチング素子27は、制御部35によってオン/オフ(閉/開)動作が制御される。第3スイッチング素子27は、オン状態(開状態)となることで回生電流の経路を形成するスイッチである。
【0042】
第4スイッチング素子28は、例えば、MOSトランジスタであり、ソレノイドコイル4の第2端部に接続され、ソースが電流検出用抵抗器31の第1端部に接続されている。第4スイッチング素子28は、ゲートが制御部35に接続されている。第4スイッチング素子28は、制御部35によってオン/オフ(閉/開)動作が制御される。
【0043】
第1ダイオード29は、カソードが昇圧回路20の出力端子に接続され、アノードがソレノイドコイル4の第2端部に接続されている。
【0044】
第2ダイオード30は、カソードが第2スイッチング素子26のドレインに接続され、アノードがバッテリBTの出力端子に接続されている。第2ダイオード30は、逆流防止用のダイオードである。第2ダイオード30は、第1スイッチング素子25及び第2スイッチング素子26がいずれもオン状態になった場合に、昇圧回路20の出力電流がバッテリBTの出力端に流入することを防止する。
【0045】
電流検出用抵抗器31は、第1端部が第4スイッチング素子28のソースに接続され、第2端部がGND(基準電位)に接続されたシャント抵抗器である。電流検出用抵抗器31は、第4スイッチング素子28を介してソレノイドコイル4に直列接続されており、ソレノイドコイル4を流れる電流が通過する。電流検出用抵抗器31は、第1端部と第2端部との間において、ソレノイドコイル4を流れる電流の大きさに応じた電圧(以下、「検出電圧」という。)が発生する。
【0046】
スイッチ32は、ブートストラップ回路23とGND(基準電位)との間に接続されている。スイッチ32は、第1端子32a及び第2端子32bを備え、第1端子32aと第2端子32bとを電気的に接続するオン状態と、当該接続を解除するオフ状態とを切り替え可能である。第1端子32aは、ブートストラップコンデンサ41の第2端部に接続されている。第2端子32bは、制限抵抗器33の第1端部に接続されている。スイッチ32は、ブートストラップコンデンサ41を充電させるためのスイッチである。
【0047】
制限抵抗器33は、第1端部がスイッチ32に接続され、第2端部がGND(基準電位)に接続されている。
抵抗器34は、第1端部がブートストラップコンデンサ41の第2端部に接続され、第2端部がソレノイドコイル4の第1端部に接続されている。
【0048】
制御部35は、上位制御系から入力される指令信号に基づいて、昇圧回路20、切替部24及び第1スイッチング素子25~第4スイッチング素子28を制御する。例えば、制御部35は、集積回路(IC:Integrated Circuit)である。以下において、制御部35の機能部について説明する。
【0049】
制御部35は、昇圧制御部50、電圧検出部51、切替制御部52、駆動制御部53、電流検出部54、及び開弁検出部55を備える。
【0050】
昇圧制御部50は、昇圧回路20の動作を制御するため、電流フィードバック制御を行う。このとき、制御手法としては、PWM信号(昇圧制御信号)を用いてもよい。PWM信号を用いた場合は、昇圧制御部50は、PWM信号を生成して昇圧回路20に出力する。これにより、昇圧回路20は、昇圧電圧Vsを生成する。
【0051】
電圧検出部51は、バッテリBTの出力であるバッテリ電圧Vbを検出する。電圧検出部51は、検出したバッテリ電圧Vbを切替制御部52に出力する。
【0052】
切替制御部52は、切替部24の切り替え動作を制御する。切替制御部52は、電圧検出部51で検出されたバッテリ電圧Vbが所定値Vthを下回った場合には、ブートストラップ回路23に対する充電経路を第1充電経路100から第2充電経路200に切り替えさせる。例えば
図3に示すように、切替制御部52は、バッテリ電圧Vbが所定値Vth以上である場合にはブートストラップ回路23に対する充電経路を第1充電経路100に制御し、所定値Vthを下回った場合のみ前記充電経路を第2充電経路200に制御する。例えば、所定値Vthは、バッテリBTの電圧が十分であるかを判定する閾値であり、予め設定されている。バッテリBTの電圧が十分であるとは、例えば、第1電圧生成部21で第1電圧V1を生成できるのに十分な電圧であることである。例えば、所定値Vthは、第1電圧V1に対して、第1電圧生成部21で降圧する分の電圧を加算した電圧よりも高い電圧値である。
【0053】
例えば、切替制御部52は、電圧検出部51で検出されたバッテリ電圧Vbが所定値Vthを下回った場合には、切替部24に対して切替信号を出力する。切替制御部52は、電圧検出部51で検出されたバッテリ電圧Vbが所定値Vth以上の場合には切替部24に対する切替信号の出力を停止する。切替部24は、切替信号を受信した場合にのみ第2状態に移行し、それ以外では第1状態となる。
【0054】
駆動制御部53は、充電制御部60、通電制御部61及び回生制御部62を備える。
【0055】
充電制御部60は、スイッチ32をオン状態又はオフ状態に制御する。充電制御部60は、スイッチ32をオン状態に制御することで、ブートストラップコンデンサ41に充電させる。これによって、ブートストラップ回路23は、ブート電圧Vbootを生成する。例えば、充電制御部60は、車両に搭載された内燃機関に燃料を噴射する前において、スイッチ32を一定周期ごとにオン状態に制御することで、ブートストラップコンデンサ41に間欠的に充電させる間欠充電を実行する。
【0056】
通電制御部61は、第1スイッチング素子25をオン状態又はオフ状態に制御する。具体的には、通電制御部61は、第1スイッチング素子25を制御するための第1ゲート信号を生成し、当該第1ゲート信号を第1スイッチング素子25のゲートに出力する。これにより、第1スイッチング素子25は、オン状態となる。
【0057】
通電制御部61は、第2スイッチング素子26をオン状態又はオフ状態に制御する。具体的には、通電制御部61は、第2スイッチング素子26を制御するための第2ゲート信号を生成し、当該第2ゲート信号を、第2スイッチング素子26のゲートに出力する。これにより、第2スイッチング素子26は、オン状態となる。
【0058】
通電制御部61は、第4スイッチング素子28をオン状態又はオフ状態に制御する。具体的には、通電制御部61は、第4スイッチング素子28を制御するための第4ゲート信号を生成し、当該第4ゲート信号を第4スイッチング素子28のゲートに出力する。これにより、第4スイッチング素子28は、オン状態となる。
【0059】
回生制御部62は、第3スイッチング素子27をオン状態又はオフ状態に制御する。具体的には、回生制御部62は、第3スイッチング素子27を制御するための第3ゲート信号を生成し、当該第3ゲート信号を第3スイッチング素子27のゲートに出力する。これにより、第3スイッチング素子27は、オン状態となる。
【0060】
電流検出部54は、一対の入力端子を備え、一方の入力端子が電流検出用抵抗器31の一端に接続され、他方の入力端子が電流検出用抵抗器31の他端に接続されている。電流検出部54は、電流検出用抵抗器31で発生した検出電圧が入力され、この検出電圧に基づいて検出電流を検出する。電流検出部54は、検出した検出電流を開弁検出部55及び駆動制御部53に出力する。
【0061】
開弁検出部55は、電流検出部54から入力される検出電流に基づいて、燃料噴射弁Lの開弁を検出する。具体的には、開弁検出部55は、電流検出部54で検出された検出電流の1階微分値又は2階微分値における変曲点を特定することにより、燃料噴射弁Lが開弁したことを検出する。
【0062】
次に、本実施形態に係る電磁弁駆動装置1の動作について説明する。
燃料噴射弁Lを開弁させる前の第1期間T1において、制御部35は、ブートストラップコンデンサ41を充電する。具体的には、切替制御部52は、電圧検出部51で検出されたバッテリ電圧Vbが所定値Vth以上か否かを一定周期ごとに判定している。切替制御部52は、電圧検出部51で検出されたバッテリ電圧Vbが所定値Vth以上である場合には、常に切替部24を第1状態に制御する。一方、切替制御部52は、電圧検出部51で検出されたバッテリ電圧Vbが所定値Vthを下回った場合には、切替部24を第2状態に制御する。充電制御部60は、第1期間T1において、スイッチ32を間欠的にオン状態に制御することで、ブートストラップコンデンサ41に間欠的に充電させる。これによって、ブートストラップ回路23は、バッテリ電圧Vbが所定値Vth以上である場合には、第1充電経路100が形成され、昇圧回路20を経由せずにバッテリ電圧Vbからの電力からブート電圧Vbootを生成する。
【0063】
例えば、バッテリ電圧Vbが14V、昇圧電圧Vsが65V、第1電圧V1及び第2電圧V2が10Vであると仮定する。この場合において、第1充電経路100でブートストラップコンデンサ41を充電すると、14Vから10Vへ降圧されるため、W1=4V×Iの電力損失が生じる。一方、第2充電経路200でブートストラップコンデンサ41を充電すると、65Vから10Vへ降圧されるため、W2=55V×Iの電力損失が生じる。よって、切替制御部52は、バッテリ電圧Vbが所定値Vthを下回る場合にのみ、第2充電経路200でブートストラップコンデンサ41を充電し、それ以外の場合には、第1充電経路100でブートストラップコンデンサ41を充電する。これにより、電磁弁駆動装置1は、電力損失を最小限にしながら、安定してブート電圧Vbootを生成することができる。
【0064】
電磁弁駆動装置1で燃料噴射弁Lを閉弁状態から開弁状態に駆動する場合、通電制御部61は、
図4に示すように、駆動開始時の第2期間T2において昇圧回路20が生成する昇圧電圧Vsを燃料噴射弁Lに供給する。すなわち、第2期間T2では、昇圧制御部50が昇圧回路20に昇圧制御信号を出力することによって、所定の昇圧電圧Vsを昇圧回路20から出力させる。例えば、第2期間T2は、ソレノイドコイル4に昇圧電圧Vsが供給されてから、ソレノイドコイル4に流れる電流が予め設定された閾値を超えるまでの期間である。
【0065】
この第2期間T2では、通電制御部61は、第1ゲート信号を第1スイッチング素子25のゲートに出力することによって昇圧電圧Vsをソレノイドコイル4の第1端部に供給すると共に、第4スイッチング素子28に第4ゲート信号を出力することによって、ソレノイドコイル4の第2端部を、電流検出用抵抗器31を介してGND(基準電位)に接続させる。
【0066】
この結果、第2期間T2では、
図4に示すように比較的高い昇圧電圧Vsがソレノイドコイル4に供給され、ピーク状の立ち上がり駆動電流がソレノイドコイル4に流れる。このような駆動電流は、固定コア2及び可動コア10を含む磁路を形成し、この磁路により発生する吸引力によって可動コア10を固定コア2側(上方)に移動させる。すなわち、ニードル5は、駆動電流に起因する吸引力によって上方に移動し、以って弁体6が弁座3から離間する。
【0067】
ここで、第2期間T2において、バッテリ電圧Vbよりも高い電圧の昇圧電圧Vsを用いるのは、駆動電流の立ち上がりを高速化させて燃料噴射弁Lの開弁動作を高速化するためである。すなわち、第2期間T2では、前記駆動電流によって燃料噴射弁Lの開弁速度がバッテリ電圧を用いた場合よりも高速化される。
【0068】
第2期間T2が経過すると、通電制御部61は、第1ゲート信号の出力を停止させて、ソレノイドコイル4に対する昇圧電圧Vsの供給を停止する。この場合には、第1スイッチング素子25、第2スイッチング素子26、及び第3スイッチング素子27はオフ状態であり、第4スイッチング素子28はオン状態である。
【0069】
回生制御部62は、通電制御部61によりソレノイドコイル4に対する昇圧電圧Vsの供給が停止されると、第3ゲート信号を第3スイッチング素子27のゲートに出力することにより、ソレノイドコイル4の逆起電力に起因する電流(以下、「回生電流」という。)をGNDに回生させる。
【0070】
具体的には、回生制御部62が第3スイッチング素子27をオン状態に制御すると、ソレノイドコイル4で発生する逆起電力によりGND、第3スイッチング素子27、ソレノイドコイル4、第4スイッチング素子28、電流検出用抵抗器31を経由してGNDに前記逆起電力に起因する回生電流が流れる。なお、第3スイッチング素子27をオン状態に制御されると、ブートストラップコンデンサ41は、第1電圧V1又は第2電圧V2によって充電される。例えば、切替部24が第1状態である場合には、ブートストラップコンデンサ41を充電する第1充電経路100は、第1電圧生成部21、切替部24、ブートストラップ回路23、抵抗器34、第3スイッチング素子27を通る経路となる。切替部24が第2状態である場合には、ブートストラップコンデンサ41を充電する第2充電経路200は、第2電圧生成部22、切替部24、ブートストラップ回路23、抵抗器34、第3スイッチング素子27を通る経路となる。
【0071】
回生電流が流れることによってソレノイドコイル4の起電圧が時間の経過とともに徐々に低下する。そして、ソレノイドコイル4に流れる電流は、この起電圧の低下を主因として
図4に示すように徐々に減衰するが、可動コア10は固定コア2側への移動を継続し、最終的に固定コア2に衝突する。
【0072】
開弁検出部55が燃料噴射弁Lの開弁を検出すると、通電制御部61は、昇圧電圧Vsよりも低いバッテリ電圧Vbをソレノイドコイル4に出力させる。例えば、通電制御部61は、第2ゲート信号を第2スイッチング素子26に出力することによってバッテリ電圧Vbをソレノイドコイル4の第1端部に供給すると共に、第4スイッチング素子28に第4ゲート信号を出力する。
【0073】
このように、開弁検出部55が燃料噴射弁Lの開弁を検出すると、通電制御部61は、燃料噴射弁Lの開弁状態を保持するために昇圧電圧よりも低いバッテリ電圧Vbをソレノイドコイル4に出力させる。このとき、第1スイッチング素子25及び第3スイッチング素子27はオフ状態であり、第2スイッチング素子26及び第4スイッチング素子28はオン状態である。
【0074】
ここで、通電制御部61は、電流フィードバック制御を行う。このとき、制御手法としては、PWM信号を用いてもよい。PWM信号を用いた場合は、通電制御部61は、所定のデューティ比のPWM信号を第2ゲート信号として第2スイッチング素子26に供給する。そのため、バッテリ電圧Vbはソレノイドコイル4に対して断続的に供給される。したがって、ブートストラップコンデンサ41に対しても断続的に充電される。
【0075】
前記デューティ比は電流検出部54が検出した検出電流の大きさに基づいて設定される。すなわち、通電制御部61は、電流検出部54が検出した検出電流の大きさに基づいてPWM信号のデューティ比を設定することにより燃料噴射弁Lの開弁状態を保持するための保持電流が所定の目標値を維持するようにフィードバック制御する。この結果、燃料噴射弁Lの開弁状態が保持される。また、前記デューティ比を2段階に変更することによって、駆動電流を段階的に変化させてもよい。
【0076】
制御部35は、燃料噴射弁Lを駆動している間においては、第1充電経路100によってブートストラップコンデンサ41を充電させてもよい。制御部35は、燃料噴射弁Lを開弁して燃料を噴射している期間においては、第1充電経路100によってブートストラップコンデンサ41を充電させてもよい。燃料噴射弁Lを開弁して燃料を噴射している期間とは、例えば、第2期間T2が経過した後の期間であってもよい。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0078】
例えば、電磁弁駆動装置1は、切替部24を備えなくてもよい。例えば、
図5に示すように、切替制御部52は、第1電圧生成部21及び第2電圧生成部22のそれぞれの動作を制御してもよい。切替制御部52は、第1電圧生成部21を動作させることでブートストラップコンデンサ41に対する充電経路を第1充電経路100に制御し、第2電圧生成部22を動作させることで前記充電経路を第2充電経路200に制御してもよい。この場合において、ダイオード40は、
図5に示すように、第1電圧生成部21及び第2電圧生成部22の出力のそれぞれに設けてもよい。
【0079】
以上、説明したように、本実施形態の電磁弁駆動装置1は、昇圧回路20を経由せずにバッテリBTからブートストラップコンデンサ41に対して充電する第1充電経路100と、昇圧回路20からブートストラップコンデンサ41に対して充電する第2充電経路200と、を有し、ブートストラップコンデンサ41に対して充電する充電経路を、第1充電経路100又は第2充電経路200に切り替える切替制御部52を備える。
【0080】
このような構成によれば、ハイサイド側スイッチング素子をオン状態に制御するためのブート電圧を安定して生成することが可能となる。
【0081】
また、切替制御部52は、バッテリ電圧Vbが所定値Vthを下回った場合にのみ充電経路を第1充電経路100から第2充電経路200に切り替えてもよい。ただし、これに限定されず、切替制御部52は、任意のタイミングでブートストラップコンデンサ41に対して充電する充電経路を、第1充電経路100から第2充電経路200に切り替えてもよい。すなわち、通常、切替制御部52は、ブートストラップコンデンサ41に対して充電する充電経路を第1充電経路100としており、例外的に第1充電経路100から第2充電経路200に切り替える。この例外とは、例えば、バッテリ電圧Vbが車両の走行状態や異常などの様々な要因により低下したり、不安定になることである。バッテリ電圧Vbの低下やバッテリ電圧Vbが不安定であることは、バッテリ電圧Vbを直接検出することで検出してもよいし、車両に設けられた種々のセンサの信号や車両の走行状態によって間接的に検出してもよいし、車両に設けられた種々のセンサの信号に基づいて予測してもよい。
【0082】
なお、上述した駆動制御部53の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、駆動制御部53の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 電磁弁駆動装置
21 第1電圧生成部
22 第2電圧生成部
23 ブートストラップ回路
25 第1スイッチング素子
26 第2スイッチング素子
27 第3スイッチング素子
28 第4スイッチング素子
35 制御部
52 切替制御部