(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ボンネット及びボンネットを備えた内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20240301BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F01M13/04 B
F01M13/04 E
F02F7/00 P
(21)【出願番号】P 2020195111
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000252252
【氏名又は名称】和興フィルタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】福吉 真也
(72)【発明者】
【氏名】高城 誠一
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-152897(JP,A)
【文献】特開2003-90204(JP,A)
【文献】特開平8-260936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイガス中のオイルを捕捉するフィルタエレメントを備えたオイルフィルタ部が内部に配設されたボンネットにおいて、
前記内部の天井面には、該天井面から下方に延在するリブが設けられており、
前記リブは、平面視において前記フィルタエレメントよりも外側の位置に配設されて
おり、
前記オイルフィルタ部は、前記フィルタエレメントを収容するフィルタケースを備えており、
前記フィルタケースは、前記フィルタエレメントの外周囲を囲む縦壁部を備えていて、
前記リブと前記縦壁部とは、側面視において互いに重複するように配設されていることを特徴とするボンネット。
【請求項2】
請求項1記載のボンネットにおいて、
前記リブは、前記フィルタエレメントの一辺に沿って延在されており、
平面視において、前記リブの端部は前記フィルタエレメントの前記一辺の端部よりも前記リブの延在方向の外側に位置していることを特徴とするボンネット。
【請求項3】
請求項2記載のボンネットにおいて、
前記リブの前記端部には、前記フィルタエレメントの前記一辺に対して交差する方向に延在する屈曲部が設けられていることを特徴とするボンネット。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のボンネットにおいて、
前記リブと前記縦壁部とを、水平方向において所定距離だけ離間させたことを特徴とするボンネット。
【請求項5】
請求項1~4のうち何れか一つに記載のボンネットにおいて、
吸気弁および排気弁を開閉する動弁機構として、クランク軸からの動力を受けて上下移動することにより弁腕を揺動させるプッシュロッドを備えており、
前記リブは、平面視において前記フィルタエレメントと前記プッシュロッドとの間の位置に配設されていることを特徴とするボンネット。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一つに記載のボンネットを備えた内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンネット及びボンネットを備えた内燃機関に係る。特に、本発明は、ブローバイガス中のオイルを捕捉するフィルタエレメントへのオイル(液相のオイル)の侵入を抑制するための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように内燃機関のシリンダヘッドの上側にボンネット(ヘッドカバー)を取り付け、該ボンネットの内部に、ブローバイガス中のオイル(潤滑油)を捕捉するフィルタエレメント(特許文献1ではオイルフィルタと称している)を配設した構成が知られている。この構成により、クランク室に吹き抜けたブローバイガスがボンネットの内部に導入され、このブローバイガスがフィルタエレメントを通過する際に、当該ブローバイガス中に含まれているミスト状のオイルが捕捉される。これにより、ミスト状のオイルが除去されたブローバイガスを大気中または内燃機関の吸気系に向けて流し、捕捉されたオイルをフィルタエレメントからオイルパンに戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボンネットの内部にフィルタエレメントを配設した構成にあっては、ボンネット内部の天井面に付着した液相のオイルが、この天井面を伝って流れてフィルタエレメントに侵入し、当該フィルタエレメントの内部の大部分が液相のオイルによって満たされてしまう可能性があった。この場合、フィルタエレメントのオイル捕捉機能(ブローバイガス中のミスト状のオイルを捕捉する機能)が低下したり、オイルが内燃機関外部(例えば大気中)に流出してしまう虞があった。
【0005】
特に、クランク軸からの動力を受けて上下移動するプッシュロッドの上端に弁腕の一端部が連結されたOHV(Over Head Valve)式の内燃機関にあっては、プッシュロッドの上下移動に伴って該プッシュロッドからボンネット内部の天井面に液相(液滴)のオイルが飛散し(プッシュロッド孔からオイルが噴出する等して飛散し)、この飛散したオイルがボンネット内部の天井面に付着することがある。この状態で、プッシュロッドの配設位置よりもフィルタエレメントの配設位置の方が下側になるように内燃機関が傾いた場合(例えば建設機械に搭載された内燃機関の場合に、当該建設機械が傾斜路を走行することで内燃機関が傾いた場合等)に、この液相のオイルがフィルタエレメントの配設位置に向かってボンネット内部の天井面を伝って流れ、この天井面を流れたオイルがフィルタエレメントに侵入(例えば天井面からフィルタエレメントに滴下する等して侵入)してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ボンネット内部の天井面に付着したオイルがフィルタエレメントに侵入することを抑制できる内燃機関のボンネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、ブローバイガス中のオイルを捕捉するフィルタエレメントを備えたオイルフィルタ部が内部に配設されたボンネットを前提とする。そして、このボンネットは、内部の天井面に、該天井面から下方に延在するリブが設けられており、前記リブが、平面視において前記フィルタエレメントよりも外側の位置に配設されており、前記オイルフィルタ部は、前記フィルタエレメントを収容するフィルタケースを備えており、前記フィルタケースは、前記フィルタエレメントの外周囲を囲む縦壁部を備えていて、前記リブと前記縦壁部とは、側面視において互いに重複するように配設されている。
【0008】
この特定事項により、仮にボンネット内部の天井面に液相のオイルが付着し、このオイルが、ボンネット内部の天井面を伝ってフィルタエレメントの配設位置に向かって流れる状況になった場合、この天井面を伝って流れるオイルは、平面視においてフィルタエレメントよりも外側の位置において前記天井面から下方に延在しているリブによって流れが止められることになり、フィルタエレメントの上側にまで到達することはない。このため、このボンネット内部の天井面を流れたオイルがフィルタエレメントに侵入してしまうといった状況を回避することができ、当該フィルタエレメントの内部の大部分が液相のオイルによって満たされてしまうことが抑制される。その結果、フィルタエレメントのオイル捕捉機能(ブローバイガス中のミスト状のオイルを捕捉する機能)を維持することができ、また、オイルが内燃機関外部(例えば大気中)に流出してしまうことを抑制できる。
また、リブによって流れが止められたオイルはリブの下端から滴下することになるが、本解決手段の構成では、リブとフィルタケースの縦壁部とは側面視において互いに重複しており、リブの下端位置はフィルタケースの縦壁部の上端位置よりも下側に位置している。このため、リブの高さ寸法(上下方向の寸法)が十分に確保できているので、仮に内燃機関が傾いた場合(リブの配設位置よりもフィルタエレメントの配設位置の方が下側になるように内燃機関が傾いた場合)であっても、リブの下端から滴下するオイルがフィルタエレメントに向けて滴下されるといった状況を抑制することができる(フィルタケースの縦壁部の上端位置を超えてフィルタエレメントに向けて滴下されるといった状況を抑制することができる)。このため、フィルタエレメントにオイルが侵入してしまうといった状況を確実に回避することができる。
【0009】
また、前記リブは、前記フィルタエレメントの一辺に沿って延在されており、平面視において、前記リブの端部は前記フィルタエレメントの前記一辺の端部よりも前記リブの延在方向の外側に位置している。
【0010】
この構成によれば、フィルタエレメントの一辺における如何なる位置に向けてボンネット内部の天井面を伝ってオイルが流れる状況にあっても、このオイルはリブによって確実に流れが止められることになる。これにより、ボンネット内部の天井面を流れたオイルがフィルタエレメントに侵入してしまうといった状況を確実に回避することができる。
【0011】
また、前記リブの前記端部には、前記フィルタエレメントの前記一辺に対して交差する方向に延在する屈曲部が設けられている。
【0012】
一般に、ボンネットは鋳造により成形されるが、リブの端部に前記屈曲部を設けた場合には、ボンネットの鋳造工程において、リブを成形する鋳湯が良好に回り込むことになり、フィルタエレメントの一辺に対向する部分における鋳湯切れを抑制することができる。これにより、リブの形状を前記オイルの流れを止める(ボンネット内部の天井面を伝ってフィルタエレメントの配設位置に向かうオイルの流れを止める)ための良好な形状に成形することが可能になり、リブの機能を良好に発揮させることができる。
【0015】
また、前記リブと前記縦壁部とを、水平方向において所定距離だけ離間させている。
【0016】
リブとフィルタケースの縦壁部との間の距離(水平方向における距離)が小さい場合、リブの下端に達したオイルが、リブとフィルタケースの縦壁部との間の隙間における毛細管現象によってこの両者間に流れ込み、このオイルが前記隙間を経てフィルタエレメントに向かって流れてしまう可能性がある。本解決手段では、リブとフィルタケースの縦壁部との間に所定距離を設けたことにより毛細管現象を回避し、リブとフィルタケースとの間にオイルが流れ込んでしまうことを防止して、フィルタエレメントにオイルが侵入してしまうことを抑制できる。
【0017】
また、吸気弁および排気弁を開閉する動弁機構として、クランク軸からの動力を受けて上下移動することにより弁腕を揺動させるプッシュロッドを備えており、前記リブは、平面視において前記フィルタエレメントと前記プッシュロッドとの間の位置に配設されている。
【0018】
この種の動弁機構を備えた内燃機関にあっては、プッシュロッドの上下移動に伴って該プッシュロッドからボンネット内部の天井面に液相のオイルが飛散し、この飛散したオイルがボンネット内部の天井面に付着することがある。この状態で内燃機関が傾く等して、液相のオイルがフィルタエレメントの配設位置に向かってボンネット内部の天井面を伝って流れる可能性があるが、本解決手段では、平面視においてフィルタエレメントとプッシュロッドとの間の位置にリブが配設されているため、天井面を伝って流れるオイルは、リブによって流れが止められることになり、フィルタエレメントの上側にまで到達することがない。このため、ボンネット内部の天井面を流れたオイルがフィルタエレメントに侵入してしまうといった状況を回避することができる。
【0019】
また、本発明は、前述のボンネットを備えた内燃機関も技術的思想の範疇である。これによれば、オイルが外部(例えば大気中)に流出してしまうことを抑制できる内燃機関が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ボンネット内部の天井面に、該天井面から下方に延在するリブを設け、該リブを、平面視においてフィルタエレメントよりも外側の位置に配設している。このため、ボンネット内部の天井面を伝ってフィルタエレメントの配設位置に向かってオイルが流れる状況になっても、この天井面を伝って流れるオイルはリブによって流れが止められることになり、フィルタエレメントの上側にまで到達することがない。これにより、ボンネット内部の天井面を流れたオイルがフィルタエレメントに侵入してしまうといった状況を回避することができ、当該フィルタエレメントの内部の大部分が液相のオイルによって満たされてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】ボンネットにオイルフィルタ部が装着された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図2におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】フィルタケース内でのブローバイガスおよびオイルの流れを説明するための断面図である。
【
図6】内燃機関が傾いていない状態におけるボンネット内部の天井面からのオイル落とし動作を説明するための断面図である。
【
図7】内燃機関が傾いた状態におけるボンネット内部の天井面からのオイル落とし動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、直列4気筒のOHV式の内燃機関(ディーゼルエンジン)に本発明に係るボンネットを適用した場合について説明する。
【0023】
-内燃機関の概略構成-
本実施形態の特徴であるボンネットの構成について説明する前に、本実施形態に係る内燃機関の概略構成について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る内燃機関1の断面図である。本実施形態に係る内燃機関1は、直列4気筒のOHV式のものであるが、
図1では、一つの気筒についての断面を示している。以下では、一つの気筒を対象として説明するが、他の気筒も同様の構成となっている。なお、本発明に係る内燃機関1としては、気筒数や気筒配列等は本実施形態のものには限定されない。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る内燃機関1は、シリンダブロック3の上側にシリンダヘッド4が取り付けられて内燃機関本体部2が構成されており、この内燃機関本体部2の下側(シリンダブロック3の下側)に、潤滑油を貯留するオイルパン5が取り付けられている。
【0026】
シリンダブロック3の下部には、気筒列方向に沿って水平方向に延在するクランク軸7が支承されている。シリンダブロック3内の上部(シリンダヘッド4側)にはシリンダ10が形成されており、該シリンダ10に、ピストン8が上下方向に摺動可能に内嵌されている。ピストン8はコンロッド9を介してクランク軸7に連結されており、燃焼室6での混合気の燃焼によりピストン8が上下方向に往復動することに伴ってクランク軸7が回転駆動される。
【0027】
また、シリンダヘッド4の上側には、ボンネット(弁腕ケース)11が取り付けられており、該ボンネット11の内部が弁腕室12とされている。この弁腕室12には動弁系(動弁機構)が収容されている。また、このボンネット11の内部には、後述するオイルフィルタ部30も収容されている。このオイルフィルタ部30は、ブローバイガス中のオイルを捕捉するためのものである。このオイルフィルタ部30およびその周辺の構成については後述する。
【0028】
シリンダヘッド4の下面とシリンダ10とピストン8とによって形成される燃焼室6には、シリンダヘッド4を上下方向に貫通した燃料噴射弁18(
図1では仮想線で示している)の先端(下端)が臨んでいる。
【0029】
また、シリンダヘッド4の側面には、吸気マニホールド19および排気マニホールド20が接続されており、吸気弁15cの開弁による気筒内への空気の供給、および、排気弁(図示省略)の開弁による気筒内からの排気の排出が行われるようになっている。
【0030】
シリンダブロック3の側部には燃料噴射ポンプ22が配設されており、図示しない燃料タンクに貯溜された燃料を、燃料噴射ポンプ22により加圧し、前記燃料噴射弁18に供給するようにしている。
【0031】
燃料噴射ポンプ22の下方には、潤滑油ポンプ23が配設されており、オイルパン5に貯溜した潤滑油を汲み上げて、シリンダブロック3内の図示しない油路等を介して各部に供給し、潤滑油を循環させて内燃機関1内部の潤滑を行うようにしている。
【0032】
また、シリンダブロック3における反対側の側部にはセルモータ24が配設されている。
【0033】
次に、動弁系について説明する。動弁系は、シリンダヘッド4の上部にボルト止めによって固定された弁腕サポート13、該弁腕サポート13に回転不能に支持された弁腕軸14、弁腕軸14に揺動自在に支持された吸気側の弁腕15および排気側の弁腕(図示省略)を備えている。
【0034】
弁腕サポート13は気筒列方向に亘って複数配設されている。この弁腕サポート13はシリンダヘッド4の上面にボルト止めされている。弁腕サポート13には弁腕軸14が挿通される弁腕軸挿通孔(図示省略)が形成されており、各弁腕サポート13がシリンダヘッド4に固定された状態にあっては、各弁腕サポート13の弁腕軸挿通孔が同一軸線上に配置され、これら弁腕軸挿通孔に亘って弁腕軸14が挿通されている。弁腕軸14の両端部は、気筒列方向の両端に位置する弁腕サポート13にボルト止め等の手段によって回り止めされた状態で支持されている。
【0035】
吸気側の弁腕15および排気側の弁腕は、内燃機関1の各気筒に対応した位置であって気筒列方向で隣り合う弁腕サポート13同士の間において、弁腕軸14に揺動自在に支持されている。つまり、気筒列方向で隣り合う弁腕サポート13同士の間には、吸気側の弁腕15および排気側の弁腕が1本ずつ配設されて、これら弁腕15が弁腕軸14に揺動自在に支持されている。具体的には、各弁腕15にも、前記弁腕サポート13と同様に弁腕軸挿通孔15aが形成されており、この弁腕軸挿通孔15aに弁腕軸14が挿通されていることにより、各弁腕15が弁腕軸14に揺動自在に支持されている。
【0036】
吸気側の弁腕15における気筒方向(
図1における右方向)側の端部は、連結部材15bを介して一対の吸気弁15c,15cの上端が連結されている。同様に、排気側の弁腕における気筒方向側の端部は、連結部材を介して一対の排気弁の上端が連結されている。また、各弁腕15における気筒方向とは反対方向(
図1における左方向)側の端部には、プッシュロッド28の上端が連結されている。プッシュロッド28の下端はクランク軸7の回転により回転されるカム軸29上のカム29aに当接され、該カム29aの回動によりプッシュロッド28が上下に往復動される。また、各連結部材15bとシリンダヘッド4との間における各弁15cのバルブステムの外周囲にはバルブスプリング15dが配置されている。これにより、各弁腕15は、プッシュロッド28に押された場合には、弁腕軸14周りを回動することにより、バルブスプリング15dの付勢力に抗して吸気弁15cや排気弁を下方に押すことで吸気ポートの開放(吸気行程での開放)や排気ポートの開放(排気行程での開放)が行われ、プッシュロッド28からの押圧力が解除された場合にはバルブスプリング15dの付勢力によって吸気弁15cや排気弁が上方に移動することで、吸気ポートや排気ポートが閉鎖されることになる。
【0037】
-ボンネットおよびオイルフィルタ部の構成-
次に、ボンネット11およびオイルフィルタ部30の構成について説明する。
図2は、ボンネット11にオイルフィルタ部30が装着された状態を示す斜視図(ボンネット11の上方から見た斜視図)である。
図3は、ボンネット11の下面図である。
図4は、
図2におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【0038】
図2および
図3に示すように、ボンネット11は下方が開放された箱形の部材で構成されている。このボンネット11はアルミニウムの鋳造によって成形されている。
【0039】
ボンネット11の各縦壁11a,11a,…には、当該ボンネット11をシリンダヘッド4にボルト止めするためのボス11b,11b,…が複数箇所に設けられている。また、
図3に示すように、ボンネット11の天板11cには矩形状の開口11dが形成されている。この開口11dは、ボンネット11の内部にオイルフィルタ部30のフィルタエレメント31(
図4を参照)を挿入するためのものである。なお、
図4では、フィルタエレメント31の全体にハッチングを付している。
【0040】
図4に示すように、オイルフィルタ部30は、フィルタエレメント31と、該フィルタエレメント31を収容するフィルタケース32と、フィルタエレメント31の上側に配設されてボンネット11の天板11cに締結された蓋部材33とを備えている。
【0041】
フィルタエレメント31は、エレメントケース31a内にエレメント本体(図示省略)が収容された構成となっている。エレメント本体は、グラスウール等のマット材で成り、ブローバイガス中に含まれるミスト状のオイルの捕捉が可能となっている。エレメントケース31aは、上側および下側が開放された直方体形状の箱形の部材で構成されている。このエレメントケース31aの平面視の形状は、前記天板11cに形成された前記開口11dの形状と同様の矩形状となっている。そして、クランク室71(
図1を参照)に吹き抜けたブローバイガスが、シリンダブロック3やシリンダヘッド4に形成された図示しないブローバイガス通路を経てボンネット11の内部(弁腕室12)に導入され、このブローバイガスがエレメントケース31aの上側から下側に向けて通過する際に、エレメント本体によってミスト状のオイルが捕捉される。つまり、フィルタエレメント31の内部でブローバイガスとオイルとが分離され、オイルが除去されたブローバイガスがエレメントケース31aからフィルタケース32に向けて下側に流れ出す構成となっている。
【0042】
フィルタケース32は、フィルタエレメント31を支持する支持部32aと、該支持部32aの下側に一体的に設けられた流体流通部32bとを備えている。支持部32aは、フィルタエレメント31を支持すると共に、このフィルタエレメント31を通過することで分離されたブローバイガスとオイルとを流体流通部32bに向けて流す機能を有している。また、流体流通部32bは、支持部32aから導入されたブローバイガスとオイルとを分離状態のまま流し、ブローバイガスを外気に向けて流すと共に、オイルをオイルパン5に流下させる機能を有している。以下、フィルタケース32の概略構成について説明する。
【0043】
前記支持部32aは、フィルタエレメント31のエレメントケース31aの下端が当接されることで当該エレメントケース31aを支持する座部32cを備えている。そして、この座部32cの外側端には、鉛直方向に延在し、フィルタエレメント31のエレメントケース31aの外周囲(外周囲に位置する4つの外側面)を囲む縦壁部32dが設けられている。この縦壁部32dの内側面がエレメントケース31aの外側面に当接または近接された状態で、フィルタエレメント31はフィルタケース32の支持部32aに支持されている。つまり、フィルタエレメント31は、フィルタケース32の縦壁部32dによって囲まれた空間(上側が開放された空間)に上側から挿入されて座部32c上に支持されている。なお、フィルタケース32の縦壁部32dの上端位置は、フィルタエレメント31の上端位置(エレメントケース31aの上端位置)よりも所定寸法だけ上側に位置している。
【0044】
蓋部材33は、ボンネット11の天板11cに締結される蓋部33aと、該蓋部33aから下方に延在し、エレメントケース31aの上面を押さえ込む鉛直部33bとを備えている。つまり、フィルタケース32の縦壁部32dによって囲まれた空間にフィルタエレメント31が挿入された状態で、蓋部材33の蓋部33aがボンネット11の天板11cに締結されることにより、鉛直部33bがエレメントケース31aの上面を押さえ込み、これによってフィルタエレメント31が固定されるようになっている。
【0045】
図5(フィルタケース32内でのブローバイガスおよびオイルの流れを説明するための断面図;この
図5ではフィルタエレメント31を省略している)に示すように、フィルタケース32の流体流通部32bには、分離状態のブローバイガスおよびオイルが流れる流体通路32eと、この流体通路32eの底面上を流れたオイルを回収するオイル回収部32fとを備えている。
【0046】
流体通路32eは水平方向に延びており、フィルタエレメント31から流れ出した(エレメントケース31aから下向きに流れ出した)ブローバイガスを水平方向の一方側(例えば
図5における手前側から奥側)に流すようになっている。フィルタケース32の上面には、流体通路32eの下流端(ブローバイガスの流れ方向の下流端)に連通するガス排出孔32gが設けられており、流体通路32eを流れたブローバイガスが、このガス排出孔32gを経てガス排出管34に向けて流出されるようになっている(
図5における実線の矢印を参照)。このガス排出管34の下流端は大気に開放されている。なお、このガス排出管34の下流端が内燃機関1の吸気系に接続され、ブローバイガスを吸気系に流すようになっていてもよい。
【0047】
オイル回収部32fの下端には、オイルパン5に向けてオイルを流下させるための開口32hが形成されており、このオイル回収部32fに回収されたオイル(
図5における破線の矢印を参照)は、この開口32hからオイルパン5に向けて流下されることになる。
【0048】
このようにしてブローバイガスおよびオイルが流されることにより、ボンネット11の内部に導入されたブローバイガスは、オイルが除去されて大気中に排出され、ブローバイガスから分離されたオイルはオイルパン5に戻されることになる。
【0049】
そして、本実施形態の特徴は、ボンネット11の内部の天井面11eにリブ40が設けられている点にある。以下、このリブ40について説明する。
【0050】
図1、
図3および
図4に示すように、ボンネット11の内部の天井面11eには、該天井面11eから下方に延在するリブ40が設けられている。このリブ40は、ボンネット11がシリンダヘッド4に取り付けられた状態にあっては、平面視においてフィルタエレメント31よりも外側(
図1および
図4にあっては左側)の位置に配設されている。より具体的に、このリブ40は、平面視においてフィルタエレメント31とプッシュロッド28との間の位置に配設されている。以下、具体的に説明する。
【0051】
図3に示すように、リブ40は、ボンネット11の天板11cに形成されている開口11dにおけるプッシュロッド28の配設位置側(
図3における下側)の一辺11fの延在方向に沿って水平方向に延在されたリブ本体部41と、該リブ本体部41の一端部(
図3における左端部)から外側(
図3における下側)に屈曲された屈曲部42とを備えている。
【0052】
図3に仮想線で示すように、前記プッシュロッド28の配設位置は、リブ40のリブ本体部41とボンネット11の外縁(リブ本体部41の位置に対して開口11dの形成位置側とは反対側の外縁)11Aとの間に設定されている。つまり、ボンネット11の下面図である
図3における紙面の手前側であって、リブ40のリブ本体部41とボンネット11の外縁11Aとの間の領域に対向する位置にプッシュロッド28は配設されている。
【0053】
また、前記リブ本体部41の水平方向における一端(
図3における右側の先端)41Xは開口11dの前記一辺11fの延在方向における一端(
図3における右側の先端)11Xよりも当該延在方向の外側(
図3における右側)に位置している。また、リブ本体部41の水平方向における他端(
図3における左側の先端;屈曲部42との境界点)41Yは開口11dの前記一辺11fの延在方向における他端(
図3における左側の先端)11Yよりも当該延在方向の外側(
図3における左側)に位置している。前述したように、ボンネット11の天板11cの開口11dの下側にはフィルタエレメント31(開口11dの平面視形状と略合致した平面視形状のフィルタエレメント31)が配設されているので、前記構成は、リブ40のリブ本体部41が、フィルタエレメント31におけるプッシュロッド28の配設位置側の一辺の延在方向(
図3における左右方向)に沿って水平方向に延在されていると言うことができる。また、リブ40のリブ本体部41の水平方向における一端41Xはフィルタエレメント31の一辺の延在方向における一端よりも当該延在方向の外側に位置しており、リブ40のリブ本体部41の水平方向における他端41Yはフィルタエレメント31の一辺の延在方向における他端よりも当該延在方向の外側に位置していると言うことができる。つまり、平面視において、リブ40の端部はフィルタエレメント31の一辺の端部よりもリブ40の延在方向の外側に位置していると言うことができる。これにより、フィルタエレメント31におけるプッシュロッド28の配設位置側の一辺の外側(平面視においてフィルタエレメント31とプッシュロッド28との間の位置)には、当該一辺の全体に対向するように延在されたリブ40が配設されていることになる。
【0054】
また、リブ40の上下方向(鉛直方向)の長さ寸法(ボンネット11の天井面11eからの垂下寸法;
図4における寸法t1)は、このリブ40とフィルタケース32の縦壁部32dとが、該縦壁部32dに対して直交する方向からの側面視において互いに重複するような寸法として設定されている。つまり、リブ40とフィルタケース32の縦壁部32dとが水平方向で対向するようにリブ40の上下方向の長さ寸法は設定されている。一例として、このリブ40の上下方向の長さ寸法t1は10mmに設定されている。リブ40の上下方向の長さ寸法t1としてはこれに限定されるものではない。
【0055】
更に、リブ40の配設位置としては、フィルタケース32の縦壁部32dに対し、水平方向において所定距離(
図4における寸法t2)だけ離間された位置に配設されている。一例として、このリブ40とフィルタケース32の縦壁部32dとの間隔寸法t2は5mmに設定されている。この間隔寸法t2としてはこれに限定されるものではないが、リブ40とフィルタケース32の縦壁部32dとの間で毛細管現象が発生しない範囲で、できるだけ短い寸法であることが好ましい。
【0056】
次に、前述したリブ40の機能について説明する。本実施形態のようなOHV式の内燃機関1にあっては、プッシュロッド28の上下移動に伴って該プッシュロッド28からボンネット11内部の天井面11eに液相のオイルが飛散し、この飛散したオイルがボンネット11内部の天井面11eに付着することがある(
図1の矢印Oを参照)。そして、従来技術(リブ40を備えないもの)にあっては、
図6(オイルフィルタ部30周辺の断面)に破線の矢印で示すように、ボンネット11内部の天井面11eに付着した液相のオイルが、この天井面11eを伝って流れてフィルタエレメント31に侵入してしまう可能性があった。これに対し、本実施形態では、
図6に実線の矢印で示すように、この液相のオイルがフィルタエレメント31の配設位置に向かってボンネット11内部の天井面11eを伝って流れる場合であっても、この天井面11eを伝って流れるオイルはリブ40によって流れが止められることになり、フィルタエレメント31の上側にまで到達することはない。このようにリブ40によってオイルの流れが止められるため、フィルタエレメント31の上側にまで到達したオイルが天井面11eからフィルタエレメント31に滴下する等して侵入してしまうといったことが防止される。これにより、フィルタエレメント31の内部の大部分が液相のオイルによって満たされてしまうことが抑制されることになり、フィルタエレメント31のオイル捕捉機能(エレメント本体によってブローバイガス中のオイルを捕捉する機能)を維持することができ、また、オイルが内燃機関外部(例えば大気中)に流出してしまうことを抑制できる。
【0057】
特に、
図7に示すように、プッシュロッド28の配設位置よりもフィルタエレメント31の配設位置の方が下側になるように内燃機関1が傾いた場合には、液相のオイルがフィルタエレメント31の配設位置に向かってボンネット11内部の天井面11eを伝って流れる状態が顕著になるが、本実施形態にあっては、前述したように、この天井面11eを伝って流れるオイルはリブ40によって流れが止められることになり、フィルタエレメント31の上側にまで到達することがなく、前述した効果を顕著に発揮することができる。この
図7においても、従来技術(リブ40を備えないもの)におけるオイルの流れを破線の矢印で示し、本実施形態(リブ40を備えたもの)におけるオイルの流れを実線の矢印で示している。
【0058】
また、前述したように、フィルタエレメント31におけるプッシュロッド28の配設位置側の一辺の外側(平面視においてフィルタエレメント31とプッシュロッド28との間の位置)に、当該一辺の全体に対向するように延在されたリブ40が配設されているため、フィルタエレメント31における前記一辺における如何なる位置に向けてボンネット11内部の天井面11eを伝ってオイルが流れる状況にあっても、このオイルはリブ40によって確実に流れが止められることになる。これにより、ボンネット11内部の天井面11eを流れたオイルがフィルタエレメント31に侵入してしまうといった状況を確実に回避することができる。
【0059】
また、本実施形態では、リブ40に、リブ本体部41の一端部から外側に屈曲された屈曲部42を設けている。前述したようにボンネット11はアルミニウムの鋳造により成形されるが、リブ40に前記屈曲部42を設けた場合には、ボンネット11の鋳造工程において、リブ40を成形する鋳湯が、リブ40において、屈曲部42を経由してリブ本体部41まで良好に回り込むことになり、リブ本体部41における鋳湯切れを抑制することができる。これにより、リブ本体部41の形状を、前記オイルの流れを止める(ボンネット11内部の天井面11eを伝ってフィルタエレメント31の配設位置に向かうオイルの流れを止める)ための良好な形状に成形することが可能になり、リブ40の機能を良好に発揮させることができる。
【0060】
また、リブ40によって流れが止められたオイルはリブ40の下端から滴下することになるが、本実施形態の構成では、
図4で示したように、リブ40(リブ本体部41)とフィルタケース32の縦壁部32dとは側面視において互いに重複しており、リブ40の下端位置はフィルタケース32の縦壁部32dの上端位置よりも下側に位置している。このため、リブ40の高さ寸法(上下方向の寸法)が十分に確保できているので、
図7に示すように内燃機関1が傾いた場合(リブ40の配設位置よりもフィルタエレメント31の配設位置の方が下側になるように内燃機関1が傾いた場合)であっても、リブ40の下端から滴下するオイルがフィルタエレメント31に向けて滴下される(フィルタケース32の縦壁部32dの上端位置を超えてフィルタエレメント31に向けて滴下される)といった状況を抑制することができる。なお、
図7では、内燃機関1が傾いた場合(より具体的には45°傾いた場合)におけるリブ40の下端からのオイルの滴下方向を一点鎖線の矢印で示している。このように、フィルタエレメント31にオイルが侵入してしまうといった状況を確実に回避することができる。
【0061】
更に、本実施形態では、リブ40とフィルタケース32の縦壁部32dとは、水平方向において所定距離(前記間隔寸法t2;
図4を参照)を存した位置にそれぞれ配設されている。リブ40とフィルタケース32の縦壁部32dとの間の距離(水平方向における距離)が小さい場合、リブ40の下端に達したオイルが、リブ40とフィルタケース32の縦壁部32dとの間の隙間における毛細管現象によってこの両者間に流れ込み、このオイルが前記隙間を経てフィルタエレメント31に向かって流れてしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、リブ40とフィルタケース32の縦壁部32dとの間に所定距離(間隔寸法)t2を設けたことにより毛細管現象を回避し、リブ40とフィルタケース32との間にオイルが流れ込んでしまうことを防止して、フィルタエレメント31にオイルが侵入してしまうことを抑制することができる。
【0062】
-他の実施形態-
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0063】
例えば、前記実施形態では、OHV式の内燃機関1に本発明を適用した場合について説明したが、OHC(Over Head Camshaft)式の内燃機関に対しても本発明は適用可能である。
【0064】
また、前記実施形態では、リブ40を、平面視においてフィルタエレメント31とプッシュロッド28との間の位置にのみ配設していた。本発明はこれに加えて、フィルタエレメント31のその他の辺に対向する位置にもリブ40を配設するようにしてもよい。例えば、平面視においてフィルタエレメント31の外周囲の全体に亘ってリブ40を配設するようにしてもよい。これによれば、プッシュロッド28からボンネット11内部の天井面11eに飛散されたオイルだけでなく、その他の原因(例えばブローバイガス中のオイルが天井面11eに堆積して液滴となる等)でボンネット11内部の天井面11eに付着したオイルがフィルタエレメント31の配設位置に向かってボンネット11内部の天井面11eを伝って流れる状況においても、そのオイルの流れを止めてフィルタエレメント31にオイルが侵入してしまうといった状況を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、内部にフィルタエレメントが配設されたボンネットに適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 内燃機関
7 クランク軸
11 ボンネット
11e 天井面
28 プッシュロッド
30 オイルフィルタ部
31 フィルタエレメント
32 フィルタケース
32d 縦壁部
40 リブ
41 リブ本体部
42 屈曲部