(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】外接型ギヤポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/18 20060101AFI20240301BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F04C2/18 321B
F04C15/00 B
(21)【出願番号】P 2020201056
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】打上 幹訓
(72)【発明者】
【氏名】荒井 淳之
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-106479(JP,A)
【文献】特開2010-159724(JP,A)
【文献】特開昭55-060681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/18
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸の駆動力によって回転する駆動側ギヤと、
従動軸に支持され前記駆動側ギヤに咬合することにより前記駆動側ギヤの駆動力により回転する従動側ギヤと、
前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとを収容するポンプケースと、
前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの側面からの流体の漏出を防止するシールユニットとを備えると共に、
前記シールユニットが、前記駆動軸が挿通する駆動軸孔と、前記従動軸が挿通する従動軸孔とを有し、内面を前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの側面に接触して配置されるシール体、及び、前記シール体の前記内面を、前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの側面に接触させる付勢力を作用させる付勢部材を備え
、
前記シール体の前記内面と反対側となる外面に形成され、前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの吐出圧を前記ポンプケースの内部にて導入し、導入した吐出圧を前記外面に伝える圧力導入路を備えている外接型ギヤポンプ。
【請求項2】
前記付勢部材が、前記シール体の前記内面の反対側となる外面に配置され、前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの軸芯に沿う方向視において、前記駆動軸と前記従動軸との中間位置に付勢力を作用させる請求項1に記載の外接型ギヤポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外接型ギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
外接型ギヤポンプは、駆動側ギヤと従動側ギヤとを咬合させ、駆動側ギヤと従動側ギヤとが回転する際に一方から流体を吸引し、他方に流体を吐出するものであり、駆動側ギヤと従動側ギヤとの側面にシール部材を備えるものが、以下に説明する特許文献1に示されている。
【0003】
つまり、特許文献1には、ケースの内部に駆動側ギヤと従動側ギヤとを収容し、これらのギヤの側面に仕切板とシール部材とを配置し、これらの外方に配置される蓋部でケースの端部を閉塞した構成が記載されている。
【0004】
この特許文献1では、駆動側ギヤと従動側ギヤとが駆動回転した際の吐出側の流体の一部をシール部材のループ内に流し、この流体の圧力を仕切板に作用させることにより仕切板を駆動側ギヤの側面と従動側ギヤの側面とに押圧させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるように流体の圧力によりシール性能を高めるものでは、ギヤが低速で回転し、流体量が少ない場合などには、流体の圧力だけでは十分なシール性能が得られないことも考えられた。
【0007】
特に、大型の作業車では、大型のアクチュエータを駆動するため、大容量のポンプを必要とするものの、例えば、シール性能が低いポンプでは、流体の漏出量を考慮するとポンプの大型化が避けられないものであった。
【0008】
このような理由から、流体の漏出を良好に抑制する外接型ギヤポンプが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る外接型ギヤポンプの特徴構成は、駆動軸の駆動力によって回転する駆動側ギヤと、従動軸に支持され前記駆動側ギヤに咬合することにより前記駆動側ギヤの駆動力により回転する従動側ギヤと、前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとを収容するポンプケースと、前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの側面からの流体の漏出を防止するシールユニットとを備えると共に、前記シールユニットが、前記駆動軸が挿通する駆動軸孔と、前記従動軸が挿通する従動軸孔とを有し、内面を前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの側面に接触して配置されるシール体、及び、前記シール体の前記内面を、前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの側面に接触させる付勢力を作用させる付勢部材を備え、前記シール体の前記内面と反対側となる外面に形成され、前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの吐出圧を前記ポンプケースの内部にて導入し、導入した吐出圧を前記外面に伝える圧力導入路を備えている点にある。
【0010】
この特徴構成によると、駆動側ギヤと従動側ギヤとの側面に接触するシール体が、接触方向に付勢部材で付勢されるため、駆動側ギヤと従動側ギヤとの吐出圧に拘わらず接触状態を維持し、駆動側ギヤと従動側ギヤとの側面からの流体の漏出を抑制できる。
シール体の外面に吐出側からの流体の圧力と、付勢部材の圧力とを同時に作用させることが可能となり、一層良好なシール状態を作り出せる。
従って、流体の漏出を良好に抑制する外接型ギヤポンプが構成された。
【0011】
上記構成に加えた構成として、前記付勢部材が、前記シール体の前記内面の反対側となる外面に配置され、前記駆動側ギヤと前記従動側ギヤとの軸芯に沿う方向視において、前記駆動軸と前記従動軸との中間位置に付勢力を作用させても良い。
【0012】
これによると、単一の付勢部材を用いるものでありながら、駆動側ギヤの側面と従動側ギヤの側面とに対してシール体を均一の圧力で圧接させることが可能となり、構造の簡素化を実現する。
【0013】
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1駆動軸と第2駆動軸とを示す外接型ギヤポンプの断面図である。
【
図2】第1駆動軸を示す外接型ギヤポンプの断面図である。
【
図3】駆動側ギヤと従動側ギヤとシール体とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1~
図3に示すように、駆動軸1の駆動力で回転する駆動側ギヤ2と、駆動軸1と平行する姿勢の従動軸3に支持され駆動側ギヤ2と咬合することにより、駆動側ギヤ2の回転に伴って回転する従動側ギヤ4と、これらのギヤを収容するポンプケース5とを備えて外接型ギヤポンプPが構成されている。
【0017】
この外接型ギヤポンプPは、トラクタやバックホー等の作業車において油圧アクチュエータに供給する作動油(流体の一例)を供給するものを示している。
【0018】
特に、この外接型ギヤポンプPは、
図1、
図2に示す第1駆動側ギヤ2aと第1従動側ギヤ4aとで構成される第1ギヤユニットG1と、第2駆動側ギヤ2bと第2従動側ギヤ4bとで構成される第2ギヤユニットG2とを備えており、第2ギヤユニットの容量より、第1ギヤユニットの容量を大きくしている。
【0019】
図2に示すように、ポンプケース5は、単一の吸入ポート5INが形成されると共に、第1ギヤユニットG1に対応する第1吐出ポート5P1と、第2ギヤユニットG2に対応する第2吐出ポート5P2とが形成されている。
【0020】
〔第1ギヤユニットと第2ギヤユニット〕
図1に示すように、この外接型ギヤポンプPは、駆動軸1が、外部の駆動源からの駆動力が伝えられる入力部1Dを有する第1駆動軸1aと、この第1駆動軸1aと同軸芯で配置され第1駆動軸1aと一体的に回転する第2駆動軸1bとで構成されている。また、従動軸3は、第1駆動軸1aに隣接する第1従動軸3aと、この第1従動軸3aと同軸芯で配置され第2駆動軸1bに隣接する第2従動軸3bとで構成されている。尚、第1駆動軸1aの端部の入力部1Dは、ポンプケース5の外部に突出させている。
【0021】
駆動側ギヤ2は、第1駆動軸1aと一体的に回転する第1駆動側ギヤ2aと、第2駆動軸1bと一体的に回転する第2駆動側ギヤ2bとで構成されている。従動側ギヤ4は、第1駆動側ギヤ2aに咬合する状態で第1従動軸3aと一体回転する第1従動側ギヤ4aと、第2駆動側ギヤ2bに咬合する状態で第2従動軸3bと一体回転する第2従動側ギヤ4bとで構成されている。
【0022】
図1、
図2に示すように、ポンプケース5は、フランジ部5fが一体形成された第1端部ケース5aと、この第1端部ケース5aの反対側に配置される第2端部ケース5bと、これらの間に挟み込まれる中間ケース5cとで構成されている。
【0023】
〔シールユニット〕
図1~
図3に示すように、シールユニットSは、シール体10とスプリング11(付勢部材の一例)とで構成されている。
【0024】
つまり、外接型ギヤポンプPは、駆動側ギヤ2(第1駆動側ギヤ2a、第2駆動側ギヤ2b)と、従動側ギヤ4(第1従動側ギヤ4a、第2従動側ギヤ4b)との側面に接触して配置されることで駆動側ギヤ2と従動側ギヤ4との側面からの作動油(流体)の漏出を防止するため4箇所にシール体10を備え、このシール体10をギヤの側面に接触させる付勢力を作用させる圧縮コイル型のスプリング11を備えている。
【0025】
シール体10は、焼結金属で形成され、その外周部位がポンプケース5の内周に密接する形状に成形されている。また、
図1に示すように、ポンプケース5は、シール体10がギヤの側面から離間する方向への移動の限界を決める規制部5rが形成されている。
【0026】
図3に示すように、シール体10は、駆動軸1(第1駆動軸1aと第2駆動軸1bとの何れか)が挿通する駆動軸孔10aと、従動軸3(第1従動軸3aと第2従動軸3bとの何れか)が挿通する従動軸孔10bとが形成されている。
【0027】
このシール体10は、ギヤの側面に対応する内面が平坦に成形され、この内面と反対側となる外面に吐出側からの作動油が供給される圧力導入溝10cが形成されている。つまり、圧力導入溝10cは、吐出側に隣接する導入端10dからの作動油を、分流し駆動軸孔10aを取り囲む領域と、従動軸孔10bを取り囲む領域とに供給する領域に形成されている。
【0028】
尚、シール体10の外面側に形成される圧力導入溝10cは吐出側の作動油を吸入側に流す流路として形成されているが、必ずしも吸入側に流すように形成する必要はなく、導入端10dから供給された作動油の圧力を受けることが可能な凹状に形成するものであっても良い。また、シール体10の内面は、平坦に形成するものに限らず、例えば、潤滑のために作動油の一部を流す溝を形成するように構成することも可能である。
【0029】
スプリング11は、シール体10の外面で、駆動軸1と従動軸3との軸芯に沿う方向視で駆動軸1と従動軸3との中間位置に付勢力を作用させている。より具体的には、本実施形態では、駆動軸1の軸芯と従動軸3との軸芯とを結ぶ直線上にスプリング11の中心軸を配置している。4つのシール体10のうち
図1に示すように両端(同図で左右の端部)に配置されるものについては、夫々のシール体10のスプリング11の外面とポンプケース5の内面との間にスプリング11が配置され、4つのシール体10のうち、内側に配置される2つのものについては、夫々のシール体10の外面の間に1つのスプリング11が配置されている。
【0030】
このような構成から、駆動側ギヤ2と従動側ギヤ4との側面に接触するシール体10が、スプリング11(付勢部材)の付勢力によって駆動側ギヤ2と従動側ギヤ4との側面に押圧されるため、駆動側ギヤ2と従動側ギヤ4との吐出圧に拘わらず、シール体10を適切な接触状態に維持し、作動油の漏出を抑制できる。その結果として、外接型ギヤポンプPの大型化を招くことなく、必要とする作動油の供給を可能にしている。
【0031】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0032】
(a)付勢部材として圧縮コイル型のスプリング11に代えて板状のスプリングを用いる。また、付勢部材は、1つのシール体10に対して1だけ備える構成に限るものではなく、例えば、2以上の数を備えても良い。
【0033】
(b)上述した実施形態では、シール体10に圧力導入溝10cを形成していたが、シール体10は、必ずしも圧力導入溝10cを必要とするものでない。また、シール体10は焼結金属で形成されたものに限るものではなく、樹脂や金属材で形成されるものでも良い。
【0034】
(c)上述した実施形態では、外接型ギヤポンプPは、単一の駆動軸1に2つの駆動側ギヤ2を備え、単一の従動軸1に2つの従動側ギヤ4を備えた構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、駆動軸1に備えられる駆動側ギヤ2の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。同様に、従動軸2に備えられる従動側ギヤ4の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、駆動軸2及び従動軸4を2本以上備えていてもよい。
【0035】
(d)上述した実施形態では、駆動側ギヤ2及び従動側ギヤ4の一方の側面に当接するシール体10と他方の側面に当接するシール体10の両方をスプリング11で付勢しているが、これに限らず、一方の側面に当接するシール体10のみをスプリング11で付勢する構成としてもよい。例えば、4つのシール体10のうち両端(
図1で左右の端部)に配置されるものをスプリング11で付勢し、4つのシール体10のうち内側に配置される2つについてはスプリング11を配置しない構成としてもよい。あるいは、4つのシール体10のうち両端(
図1で左右の端部)に配置される2つについてはスプリング11で付勢せず、4つのシール体10のうち内側に配置される2つをスプリング11で付勢するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、外接型ギヤポンプに利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 駆動軸
2 駆動側ギヤ
3 従動軸
4 従動側ギヤ
5 ポンプケース
10 シール体
10a 駆動軸孔
10b 従動軸孔
10c 圧力導入溝
11 スプリング(付勢部材)
S シールユニット