(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】セラミックをリサイクルする方法、それによって得られる再生材料、及びセラミックを製造するための再生材料の使用
(51)【国際特許分類】
B09B 3/35 20220101AFI20240301BHJP
B02C 19/18 20060101ALI20240301BHJP
B09B 101/60 20220101ALN20240301BHJP
【FI】
B09B3/35 ZAB
B02C19/18 C
B09B101:60
(21)【出願番号】P 2020519280
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2018075609
(87)【国際公開番号】W WO2019068483
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】102017217611.3
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼフェリン・ザイフェルト
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・トーメ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・バッハ
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-075769(JP,A)
【文献】特表2012-517891(JP,A)
【文献】特開2010-137146(JP,A)
【文献】特表2014-532548(JP,A)
【文献】重石光弘,パルスパワーによるコンクリートからの粗骨材の分離回収,コンクリート工学年次論文集,Vol.28,No.1,日本,2006年,1475-1480
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B
B02C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みセラミックを電気力学的粉砕によって処理して再生材料を得ることを特徴とする、セラミックのリサイクル方法であって、
前記電気力学的粉砕では超短水中パルスが生成され、パルスの立ち上がり時間は500ナノ秒未満であり、
前記再生材料は少なくとも90%の遊離度を有
し、
前記使用済みセラミックは耐火性セラミックであり、
前記電気力学的粉砕は100kVから600kVの電圧で、かつセラミック1キログラムあたり50パルスからセラミック1キログラムあたり500パルスで実施され、前記パルスは1Hzから20Hzの周波数で放出されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
多電極システム及び/又は取り付けられた電極が、電気力学的粉砕に使用されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記再生材料は乾燥されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記再生材料は選別されることを特徴とする、請求項1から
3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記選別は、スクリーニング、光学的選別、レーザー誘起プラズマ分光法、又は密度分離によって実施されることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記再生材料は、セラミック、特に耐火性セラミックの生産に使用されることを特徴とする、請求項1から
5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から
6の何れか一項に記載の方法により得られる再生材料。
【請求項8】
セラミック、特に耐火性セラミックの生産のための、請求項
7に記載の再生材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックをリサイクルする方法、それによって得られる再生材料、及びセラミックを製造するための再生材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中の産業の多くの部門は、セラミック製品(セラミック)、従ってその入手可能性及び価格に依存している。技術的及び機能的セラミックなどのセラミック製品は、多種多様な商用製品を生産するために多くの産業プロセスで必要とされている。それらは、バインダーマトリックス及びフィラーを備えている場合に成形することができ、このようにして例えば焼成された石又はレンガ、噴霧された塊又は耐火性コンクリートとして使用することができる、特定の鉱物粒子画分の混合物からなる。耐火性、機械的強度、使用中の耐久性などの特性は、とりわけ粒子の組成及び個々の鉱物成分の純度に起因する。様々な産業プロセスでは、これらのセラミックは消耗品又は摩耗材料として作用し、生産を継続するためには、定期的に新しい材料と交換する必要がある。特に耐火性セラミックは、産業の多くの部門にとって非常に重要である。これらのセラミック材料は、鉄鋼、非鉄金属、セメント及びセラミック産業、並びに廃棄物焼却プラント、精製所又は発電所における高炉、転炉、溶解及び輸送容器など、熱工学プラントのライニング及び耐火性ライナーに対して高温負荷で通常使用される製品である。これらのケースでは、それらは反応空間を閉じ込め、固体、液体だけでなく気体、時には非常に攻撃的な反応成分及び反応生成物と接触する。これらの耐火材料なしでは、例えば、鋼、鉄、アルミニウム、セメント及びガラスの製造に欠かせない技術的な熱プロセスは存在しない。セラミックライニングはまた、エネルギー供給又は残留物質の処理のためのプラントにおいても必要とされる。
【0003】
耐火物産業だけでも、ドイツでは毎年、約100万トンの成形された耐火製品及び60万トンの無形の耐火製品が生産されている。製造された製品の価値は、約15億ユーロである。EU全体では、約400万トンの耐火石又はレンガ及び200万トンの耐火物が2010年に生産され、総額は約40億ユーロである。この産業部門に対する原料資源は現在、EUの外、特に中国に位置しており、依存度が高くなっている。
【0004】
セラミックの製造には、通常、高純度で高価な原料又は半製品、例えば、シャモット、ボーキサイト、コランダム又は高品質コランダム、板状アルミナ、ジルコニウム(ケイ酸ジルコニウム)、酸化ジルコニウム及び/又は炭化ケイ素、並びに他の鉱物原料などが必要とされる。これらは順番に、か焼、焼結反応又はメルトフロープロセスなどの非常に複雑でエネルギー及び排出量の多い熱プロセスによって、酸化物原料から生産される。そのような原料に対する最大の資源は、主に中国、ロシア、南アフリカ及びオーストラリアに位置している。従って、ドイツだけでなく世界中のセラミック産業は、これらの国からの輸入に高く依存している。例えば、現在ますます厳しくなっている中国の環境規制の過程で、耐火性半製品のための多くの生産プラントが閉鎖されており、その結果、これらの材料は一時的に市場で入手できないか、又はより高い価格で少量でしか提供されていない。さらに、天然資源の不足が深刻化しており、将来的に大きな経済問題につながる可能性がある。例えば、耐火材料の平均耐用年数は、溶解炉(鋳造産業における溶解炉、液体溶解用のチャネル及び輸送容器)における2~3週間から、焼結炉、鉄鋼産業における高炉、セメント産業、精製所又は廃棄物焼却プラントにおけるロータリーキルン、における例外的な数年まで及ぶ。その後、耐火ライニングを交換又は修理する必要がある。これにより、高炉用の耐火材料が供給されずに鉄鋼生産が停止し、プラント建設、自動車産業、及び関連するサプライヤー(産業及び中小企業)に悪影響を及ぼす。同様に、ロータリーキルン用の耐火材料が不足すると、例えばセメント産業が停止し、それは建設産業全体に直接的な影響を及ぼす。
【0005】
近い将来、多くの様々なセラミック原料又はセラミック半製品の供給が保証されず、及び/又は、価格が大幅に上昇すると予想される。基本的な問題は、現在、セラミック製品の「実際の」リサイクルがないことである。セラミック製品の製造で発生する生産廃棄物(破損又は端材など)は現在、セラミック生産において部分的に再利用されているが、その程度は非常に限定的である。廃棄物の一部は、破損として、つまり純粋なフィラー材料としてのみ、生産において再利用される。ここでの主な問題は、現時点では様々な成分をきれいに分離することが不可能であり、従って「実際の」リサイクルが実現可能でないことである。
【0006】
従って、現状のセラミックスのリサイクルでは、セラミックス材料系から単一の高品質の原料(再生原料)を得ることができない。この状況は、将来的にそれが依存する産業部門に影響を与え、故に経済全体に影響を及ぼす。
【0007】
上記の原料不足及び経済・政治状況に対する解決策は、現在は存在しない。しかしながら、既に使用されたセラミック材料の何かしらのリサイクル又は再利用の試みは行われている。多くのテクニカルセラミック材料(セラミック)、特に耐火材料は摩耗材料であるため、それらは定期的に交換又は修理する必要がある。一般的に知られている方法は、既に使用されたセラミック材料の再利用を試みることである。火力発電プラント(焼結及び溶解炉、輸送機器など)用のライニングとして使用される材料の大部分は完全に摩耗し、もはや使用できないか、又は過度の化学汚染を示す。しかしながら、材料の小部分は、分解後にリサイクルされ、いわゆる再生材料として、新しい耐火材料又はセラミック材料の生産に使用される。この目的のために、セラミック材料は、掘削機又は手で様々な使用場所(炉又は転炉など)から取り出され、通常は手で、場合によっては純粋に視覚的に、大まかに事前に分類される。ここでの分類基準は、決定できる限り、単一タイプの純度、鉱物成分のタイプ、不純物の付着、及び化学組成である。次に、リサイクルされるセラミックは、ジョークラッシャー、インパクトミル、遠心ミル、振動粉砕ミル、ボールミルなどの機械的粉砕プラントで組み合わせて部分的に粉砕され、後で再利用するために望ましい粒子サイズにされる。残留含水率に応じて、この破砕又は粉砕された材料は、ロータリーキルンで乾燥され、0~2%の残留含水率にされる。次に、乾燥された材料は一般的な等級曲線に分類され、その後、新しい耐火材料又は他のセラミック製品用の骨材又は再生材料として販売できる。しかしながら、純粋に機械的な破砕又は粉砕では単一タイプの汚染のない分離が可能にならないため、耐火材料産業に必要とされるこれらの再生材料の化学的純度は達成できず、保証できない。その結果、きれいな粒子構造は達成できない。純粋に破砕された材料は依然として、スラグ残留物、焼結製品又は古いバインダーマトリックスで汚染されている。さらに、機械的方法では、金属の摩耗により粉砕材料が汚染される。高い化学的純度を達成するためには、貴重な再生材料をセラミックバインダーマトリックスから単一タイプ又は相純粋な形態で分解させる必要があるが、これは機械的方法では不可能である。これらの理由から、今日、再利用されるリサイクル材はほとんどない(約10~20%)。ほとんどの場合、破損材料、従って貴重な二次原料も、特別な埋立地に廃棄されるが、なぜなら、それらは依然として付着している金属含有又は塩含有のスラグ残留物で汚染されているためである。
【0008】
耐火材料の再利用自体も知られている。今までこれは、破砕された耐火材料を新しい材料又はいわゆる補修物に使用することを伴っていた。個々の成分を高い化学的純度で回収することを目的とした耐火材料のリサイクルについてではなかった。
【0009】
特許文献1は、電気油圧式粉砕によって複合材料をリサイクルする方法を記載している。しかしながら、この方法の欠点は、エネルギー消費が高く、低い程度の遊離のみが達成されることである。
【0010】
特許文献2は、高電圧パルス技術によって脆くて高強度のセラミック/鉱物材料及び複合材料を破砕/爆破する方法を記載している。しかしながら、この方法は材料を解体するためだけに使用され、それらをリサイクルするためには使用されない。この先行技術は、記載された方法により得られた最終生成物が再利用に適するような品質であることの表示を含まない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許出願公開第10 2015 216 932号明細書
【文献】独国特許第10 2006 037 914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、先行技術から進んで、セラミック、特に耐火性セラミックをリサイクルするための改善された方法、並びに、このようにして得られる改善された再生材料を提供することであり、特に、きれいな再生材料を選択的に得ることができ、低エネルギー入力のみが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の方法、請求項11に記載の再生材料、及び請求項13に記載の再生材料の使用によって達成される。本発明の有利なさらなる発展が従属請求項に見出される。
【0014】
本発明によれば、使用済みセラミックを電気力学的粉砕によって処理し、それにより高品質の再生材料を得ることを特徴とするセラミックのリサイクル方法が提案される。
【0015】
従って、本発明によれば、使用済みセラミックを本発明による方法でリサイクルして、その後に使用済みセラミックと同じ用途分野で使用することができるセラミックの生産に使用できる再生材料を得ることができる。
【0016】
本発明の意味でのセラミックとして、任意の種類のセラミック、特に建設用セラミック、耐火性セラミックなどの陶器、他の陶器及び石器、石器及び磁器などの焼結材料、及び特殊なセラミック物を使用することができる。幾つかの実施形態では、セラミックは耐火性セラミックである。驚くべきことに、本発明による方法を用いて、特に使用済みセラミックとして耐火性セラミックを使用する場合、特にきれいな再生材料を選択的に得ることができることが分かった。特に、使用済みセラミックとして耐火性セラミックを使用する場合、これらの再生材料は、少なくとも90%、特に95%以上の遊離度を有することができる。遊離度は、付着物を有する粒子の量に関連して、遊離粒子として利用可能な粒子の量を示す。
【0017】
使用済み耐火性セラミックの例は、溶鋼用の処理取鍋におけるいわゆるパージプラグであり、これには、アルミナセメント(高温セメント)のマトリックスに結合された板状アルミナ(Al2O3、コランダム)が主成分として含まれている。第2成分として、この耐火性セラミックには高品質コランダムが含まれている。耐火性セラミックの別の例は、ボーキサイト、SiC及びジルコニウムアルミナの溶融粒子、及びアルミナセメントをベースとするバインダーマトリックスを有する耐火性コンクリートレンガであり、それは、セラミック産業において高応力領域に対する炉内ライニング用のレンガとして使用することができる。さらに、耐火性セラミックの例として、例えばアルミニウム産業における溶融タンクのライニングに使用することができる高品質アルミナをベースとする耐火性レンガを挙げることができる。
【0018】
本発明による方法は、高い化学的純度を有する単一タイプの再生材料を得ることを目的として、セラミックの実際のリサイクルを可能にする。これらの単一タイプの化学的に純粋な再生材料は、ここでは、生産プロセスから、又は破砕された材料、すなわち、電気力学的粉砕によって既に使用された材料(使用済みセラミック)からセラミック廃棄物をリサイクルすることによって得ることができる。
【0019】
電気力学的粉砕では、ジェネレーター(例えば、マルクスジェネレーター)を使用して2つの電極間に超短水中パルスを生成し、それは、断片化される材料を通過する(パルスの立ち上がり時間<500ナノ秒、電気力学的効果)。リサイクル又は断片化される材料は、2つの電極間の水で充填された処理容器に配置される。
【0020】
電気力学的方法では、超短パルス立ち上がり時間で固体が周囲の水よりも低い破壊強度を有するため、パルスは材料内に押し込まれる。材料内では、パルスは好ましくは相境界に沿って走る。パルスが対向電極に到達するとすぐに、高圧及び高温を有するいわゆるプラズマチャネルが作成され、これにより、断片化される材料が内部から外部へと引き裂かれるため、タイプに応じて分離される。さらに、水中に衝撃波が生成され、分離がさらに容易になる。
【0021】
この電気力学的断片化技術により、タイプ又は相に応じたセラミックの分離が可能になるが、これは、純粋な機械的処理(破砕又は研磨)又は電気油圧式断片化(例えば、上述の特許文献1を参照)ではほとんど不可能又は完全に不可能である。電気油圧式断片化と比較して、電気力学的断片化は、大幅に少ないエネルギーを必要とする。
【0022】
従って、本発明によれば、様々なセラミック耐火材料(溶融又は焼結炉からの生産廃棄物及び発生材料)を電気力学的断片化によってリサイクルすることができ、その後の選別後に得られた再生材料を耐火材料において再び使用することができる。一次原料を有するサンプル(元のサンプル)と、一次原料を本発明によって生産された再生材料で置き換えたサンプル(再生材料サンプル)との間の材料特性(特に、新鮮なセラミック物のレオロジー、耐火特性及び機械的特性)の比較は、このように、予想することができなかった再生材料サンプルの驚くほど肯定的な結果を示した。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態では、電気力学的粉砕は、100kVから600kV、特に150kVから250kV、より具体的には約180kVの電圧で実施することができる。本発明の幾つかの実施形態では、電気力学的粉砕は、セラミック1キログラムあたり50パルスからセラミック1キログラムあたり500パルス、特にセラミック1キログラムあたり約190パルスで実施することができる。パルスは、ここでは、1Hzから20Hz、特に約5Hzの周波数で放出され得る。本発明による方法がこれらのパラメータの少なくとも1つを用いて実施される場合、特にきれいな単一タイプの再生材料を、好ましい方法で選択的に得ることができ、その後、重要なさらなる処理ステップなしで再び使用することができる。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態では、多電極システム及び/又は取り付けられた電極を電気力学的粉砕に使用することができる。これにより、本発明による方法を特に好ましい方法で実施することができる。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態では、再生材料を乾燥させることができる。この乾燥ステップは、高温及び/又は真空中で実施することができる。この乾燥ステップでは、電気力学的粉砕によって導入される可能性のある水を、特に0~2%まで可能な限り除去し、再生材料に悪影響を及ぼさないようにする。
【0026】
乾燥後、得られた材料を、>3mm、2~3mm、1~2mm、及び<1mmの粒子サイズ画分などの粒子サイズ画分に分割することができる。これは、例えば、それ自体既知の方法でスクリーニングタワーを用いて達成することができる。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態では、再生材料を、例えば、スクリーニング、光学的選別、レーザー誘起プラズマ分光法、又は密度分離によって選別することができる。これらの方法はそれ自体当業者に知られているため、当業者はそれらを実施する方法を知っている。
【0028】
本発明による方法を用いて再生材料が得られる。本発明の意味での再生材料は、使用済みセラミックを調製することによって得られる製品であり、特に単一タイプの高品質材料である。この再生材料は、使用済みセラミックが使用されたのと同じ用途に対して使用されるように、その特性の点で十分な品質を有する。本発明の幾つかの実施形態では、再生材料を、使用済みセラミックと同じ用途分野に対して使用できるセラミックの生産に使用することができる。例えば、使用済み材料として耐火性セラミックを使用する場合、再生材料を使用して再度耐火性セラミックを生産することができる。このことは、再生材料がその特性の点で、品質を大幅に損なうことなく同じ目的でセラミックを生産するために使用できるような高い品質を有することを意味する。
【0029】
驚くべきことに、本発明による方法によって得られた再生材料は、さらなる処理及び調製ステップなしでセラミック、特に本発明による方法で使用される使用済みセラミックと同じ目的で使用することができるセラミックの生産に使用することができるような優れた品質を有することが見出された。宣言に拘束されることなく、このことは、結果として得られる再生材料が少なくとも90%、特に少なくとも95%の高い遊離度を有するという事実に寄与することができ、遊離度は、付着物を有する粒子の量に関連して、遊離粒子として利用可能な粒子の量を示す。
【0030】
使用済み耐火性セラミックを電気力学的断片化によって調製することにより、そこに含まれる貴重な原料又はセラミック半製品(例えば、板状アルミナ、ボーキサイト、シャモット、及びケイ酸ジルコニウム)を単一タイプの再生材料として回収することができ、リサイクルされた再生材料を用いてそこから同品質の耐火性セラミックを再度生産することができる。
【0031】
本発明による方法でセラミックを調製する場合、きれいに分離された材料混合物(>1mmの画分)に加えて、別の材料混合物、すなわち<1mmの粒子サイズの微細画分を生産することが可能である。この微細画分は、調製後に処理水に存在し、適切なフィルターを使用して処理水からろ過することができる。ろ過及び乾燥された微細材料は、通常、セラミックマトリックス材料(バインダーマトリックスなど)と微細再生材料(板状アルミナ、高品質コランダムなど)との材料混合物である。この微細材料はまた、追加の粉末として、又は微細な骨材として、セラミック生産内に導入することもできる。場合によっては、この微細材料は依然として油圧で活性であり、例えば焼成前に水硬セメント系と結合されたセラミックグリーン製品(耐火性セラミックなど)の強度に追加的に寄与することができる。耐火性セラミックの場合、この材料は、例えば、耐火材料の補修及びスプレーされた塊の微細な骨材として使用することができる。従って、本発明による方法により、セラミック廃棄物のほぼ100%のリサイクルが可能である。
【0032】
さらに、本発明の主題は、上記の方法によって得ることができる再生材料に関する。この再生材料は、それが少なくとも90%、特に少なくとも95%の遊離度を有するという点で、他の方法、例えば使用済みセラミックを解体することによる方法、又は他の粉砕方法によって得られる再生材料と区別することができる。さらに、再生材料の表面での溶融の痕跡により、それが電気力学的に粉砕されたことを分析的に証明することができる。従って、この点で、本発明による方法により電気力学的断片化によって得ることができる再生材料は、他の再生材料と区別可能であり、この違いは分析的に検出可能である。
【0033】
本発明による方法及び結果として得られる再生材料は、特に上記の実施形態において、以下に記載される複数の利点を有する。
【0034】
セラミック、特に耐火性セラミックの記載された調製は、欠点なく非常に高い化学的純度を有する再生材料が得られ、それを新しい高品質セラミックの生産に使用することができるという利点を有する。これらの再生材料は、一次原料及びセラミック半製品を置き換えることにより、これらの材料の実際のリサイクルを可能にすることができる。最大の利点は、セラミック複合材料の単一タイプ及び/又は相純粋な分離であり、さらに、研削工具による機械的摩耗によって汚染されない。さらなる定性的、経済的、及び生態学的な利点を以下で説明する。
【0035】
定性的な利点:
電気力学的断片化による処理によって、一次原料及び半製品とほぼ同一であるきれいな粒子構造が得られる。これにより、必要な耐火性、体積抵抗、耐熱衝撃性、及び耐薬品性などの定性的パラメータが最適化される。重要な機械的及び温度依存の強度もまた、従来の方法と比較して、きれいで純粋な粒子構造によって改善される。従って、高い化学的純度を有する再生材料が得られ、それは、スラグ又はその他の異成分などの付着物を示さない。再生材料は、高い単一タイプの純度及び画定された粒子サイズを有する。
【0036】
経済的な利点:
リサイクルされた材料の純度が高いため、セラミック及び耐火製品に対する生産プロセスにおいて、一次原料で可能であるような同様の高品質製品を再度生産することができる。現在使用されているリサイクル方法では、この必要な品質を提供することはできない。この理由により、生産者はこれらのリサイクル製品を使用して、現在使用されている再生材料と比較して価値を高めることができる。再生材料は一次原料よりもはるかに安価であり、世界市場及び独占的地位(中国など)への依存度が低く、輸送コストがより低い。さらに、最終消費者のコストを節約することができる。
【0037】
生態学的な利点:
耐火材料産業で使用される多くの鉱物原料は世界中に蓄積されており、ヨーロッパ市場向けに購入されている。それらは、それぞれの地域で原料として採掘され、様々な熱処理によって調製される。シャモット、ボーキサイト、アルミナ及びコランダムは、場合によっては1700℃までの温度でか焼又は焼結される。フュージョンキャスト鉱物原料は、1850℃までの高温でさらに処理される。化石燃料は一般的に、この目的で使用される。従って、電気力学的粉砕によって生産される再生材料の使用が増加すると、製造プロセス中及び世界中の輸送におけるCO2排出量が大幅に削減される。世界中の原料資源が大幅に軽減される。一次原料のエネルギー集約型生産を減らすことにより、エネルギー収支を減らすことができる。輸送コストが低くなり、埋め立て材料の量が削減される。さらに、原料の生産における赤泥から、火力発電プラントの修復からの発生材料の処分まで、特別な埋立地が削減される。
【0038】
本発明は、セラミック産業にとって非常に興味深い。セラミック製品の製造業者、とりわけ耐火性セラミック製品の製造業者は、常に高品質の原料を探しており、中国などの少数の供給国に依存している。この依存は、高品質のリサイクル原料(再生材料)の使用の増加によって打ち消される可能性がある。一方で、本発明を使用して、原料を回収するために自身の生産廃棄物を調製することができる。他方で、セラミック廃棄物(発生材料など)をユーザー(鉄、鋼、アルミニウム、及びセメント産業など)から回収して先行技術による低級の方法でそれをリサイクルするセラミック製品の企業又はメーカーが既に存在している。しかしながら、回収された材料の大部分はリサイクルするには汚染されすぎているため、埋め立てられている。本発明により、企業は、「廃棄物」から高品質の原料を回収し、「塊」が埋め立てられることを大幅に減らすか、又は理想的な場合には完全に防ぐことができる。セラミック又は耐火材料産業の利点は多種多様である。高い化学的純度を有する再生材料の回収及びその再利用により、セラミック生産のコストを削減することができる。再生材料は現在、一次原料よりもはるかに低価格で取引されている。例えば、一次板状アルミナは1,000.00ユーロ/トンで取引され、再生材料としては500.00から550.00ユーロ/トンでしか取引されていない。本発明により、現在使用されている再生材料と比較して30~40%の再生材料の価値の増加が生産者にとって可能である。一次原料のエネルギー集約型生産の削減により、エネルギー収支、またCO2排出量がさらに改善される。
【0039】
本発明は、一般的な発明概念を限定することなく、図面及び実施例によって以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】耐火性セラミック(パージプラグ)の単一タイプの分離、及びその後の選別の例を示す。
【
図3】異なる温度で処理した後の、元のサンプルと、再生材料サンプルとの冷間曲げ引張強度及び冷間圧縮強度の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、電気力学的断片化を概略的に示す。電気力学的断片化では、ジェネレーター(図示せず、例えばマルクスジェネレーター)を使用して、2つの電極2a、2bの間に、断片化される材料3を通過する超短水中パルス1を生成する(パルス立ち上がり時間<500ナノ秒、電気力学的効果)。調製又は断片化される材料3は、2つの電極2a、2bの間の水中の反応容器に配置される。
【0042】
[実施例]
本発明による方法を、選択された耐火材料の例を用いてより詳細に説明する。選択された材料は、例えば溶鋼用の処理取鍋におけるいわゆるパージプラグとして使用される、耐火性セラミック又は耐火性レンガである。この耐火性セラミックの主成分は、アルミナセメント(高温セメント)のマトリックスに結合された貴重な板状アルミナ(Al2O3、コランダム)である。二次成分として、この耐火性セラミックはまた、貴重な高品質コランダムも含む。
【0043】
再生材料として関心のある成分:板状アルミナ。
【0044】
【0045】
耐火性セラミック(パージプラグ)は、電気力学的断片化のためにこぶしサイズのピースを得るように、粗く事前に粉砕されるか、又は事前に粉砕された。次に、事前に粉砕された破片を断片化プラントで処理した。ここでは、180kVの電圧を有する高電圧パルスを水中耐火性セラミックに印加した。材料1キログラムあたり約190パルスを5Hzの周波数で放出した。エネルギー消費量は0.05kWh/kg未満であった。高電圧パルス処理は、タイプに応じて、バインダーマトリックス(凝結アルミナセメント)から板状アルミナ及び高品質コランダムを分離又は露出した。結果として得られた板状アルミナ、高品質コランダム、及びバインダーマトリックスの材料混合物を乾燥させてから、スクリーニングタワーによって>3mm、2~3mm、1~2mm、及び<1mmの粒子サイズ画分に分割した。次に、これらの画分を光学的選別によって選別して、再生材料としての板状アルミナ及び高品質コランダムを得た。この場合、白色の板状アルミナ及びガラス質の透明な高品質コランダムは灰色又は青色のバインダーマトリックスと明確に区別できるため、光学的選別で十分であった。選別プロセスの後、板状アルミナ及び高品質コランダムは、異なる粒子サイズ画分で利用可能であった(
図2を参照)。
【0046】
次に、再生材料として得られた板状アルミナを、アルミナセメントをベースとする市販のセラミック耐火物において耐火骨材として使用した。一次板状アルミナを、所定の勾配曲線に従って、ほぼ1:1でリサイクルされた板状アルミナによって置き換えた。サンプル(試験片プリズム4×4×16cm
3)を、2つのセラミックの塊(元の又は一次板状シリカを有する塊、及び、本発明によるリサイクルされた板状シリカを有する塊)から生産した。同じw/z値(水対セメントの比率)を両方の塊に対して使用できた。レオロジー特性は同じであった。生産されたサンプルを、約24時間後に金型から取り出し、乾燥キャビネット内において120℃でさらに24時間乾燥させた。これは、本発明により得られた板状シリカの使用が、従来技術による破砕された再生材料の使用の場合に知られているような水需要の増加、凝結問題、又は凝結及び乾燥中の亀裂の増加につながらないことを示す。乾燥後、高温炉で、サンプルの一部を1000℃、別の部分を1500℃で焼成した。全てのサンプルは高温で安定しており、一次板状シリカを有するサンプル(元のサンプル)とリサイクルされた板状シリカを有するサンプル(再生材料サンプル)との間に違いは見出せなかった。さらに、機械的強度(冷間圧縮強度及び冷間曲げ引張強度)も、(120℃で乾燥され、1000℃又は1500℃で焼成された)全てのサンプルで試験された。結果は驚くべきものであった。純粋に乾燥したサンプルと、さらに焼成したサンプルとの強度値を比較しても、元のサンプルと比較して有意差は示さなかった。場合によっては、再生材料のサンプルの強度値は、元のサンプルの強度値よりも僅かに高かった(
図3)。純粋に視覚的な観点から見た場合でも、再生材料を有するサンプルと元の材料を有するサンプルとの間に違いはなかった。
【0047】
【0048】
【0049】
この例は、使用済み耐火性レンガを電気力学的断片化によって調製することにより、その中に含まれる貴重な原料又はセラミック半製品(板状アルミナなど)を単一タイプの再生材料として回収することができ、同等の品質の耐火性レンガをリサイクルされた再生材料を用いてそこから再度生産することができることを示す。
【0050】
上記の手順はまた、コランダムレンガ又はジルコニウムボーキサイトレンガなどの既に使用されている他の耐火性セラミックにも適用された。全ての場合において、電気力学的断片化により、廃棄物から貴重な成分(高品質コランダム、ジルコニウム、ボーキサイトなど)を、欠点なしに新しい耐火性セラミックに再導入することができる単一タイプの化学的に純粋な再生材料として回収することが可能になった。
【0051】
もちろん、本発明は、例示された実施形態に限定されない。従って、上記の説明は限定的なものではなく、説明的なものと見なされるべきである。以下の請求項は、述べられた特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に存在するという方法で理解されるべきである。これは、さらなる特徴の存在を排除するものではない。請求項及び上記の説明が「第1」及び「第2」の実施形態を定義する場合、この指定は、ランキング順序を決定せずに2つの同様の実施形態を区別するために使用される。
【符号の説明】
【0052】
1 超短水中パルス
2a 電極
2b 電極