(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】カルバメートの製造方法及びイソシアネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 269/04 20060101AFI20240301BHJP
C07C 263/04 20060101ALI20240301BHJP
C07C 265/14 20060101ALI20240301BHJP
C07C 271/48 20060101ALI20240301BHJP
C07C 271/52 20060101ALI20240301BHJP
C07C 271/54 20060101ALI20240301BHJP
C07C 271/56 20060101ALI20240301BHJP
C07C 271/58 20060101ALI20240301BHJP
C07D 307/54 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C07C269/04
C07C263/04
C07C265/14
C07C271/48
C07C271/52
C07C271/54
C07C271/56
C07C271/58
C07D307/54
(21)【出願番号】P 2020519904
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2019019415
(87)【国際公開番号】W WO2019221210
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-06-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2018094157
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】三宅 信寿
(72)【発明者】
【氏名】中岡 弘一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】永本 翠
(72)【発明者】
【氏名】高垣 和弘
(72)【発明者】
【氏名】篠畑 雅亮
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】赤澤 高之
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/115110号
【文献】国際公開第2009/139061号
【文献】国際公開第2008/084824号
【文献】特開昭60-011440号公報
【文献】特開2007-022932号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び工程(2)を含むカルバメートの製造方法であって、
(1)一分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する有機第一級アミンと、尿素とを用いて
、尿素結合を有する化合物(A)
(ただし、ウレイド基を有する化合物を除く)を
、尿素結合が分解することに基づく前記化合物(A)の熱解離温度より低温で製造する工程;
(2)前記化合物(A)と炭酸エステルとを反応させてカルバメートを製造する工程;
前記尿素モル量が、前記有機第一級アミンの一級アミノ基のモル量に対して0.5倍未満であることを特徴とするカルバメートの製造方法。
【請求項2】
前記有機第一級アミンが一分子中に3個の一級アミノ基を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機第一級アミンがアミノ酸エステル及びアミノ酸エステルの塩のうち少なくともいずれか1種である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記有機第一級アミンがカルボキシ基を有し、
前記工程(1)の前に、又は、前記工程(1)の後であって、前記工程(2)の前に、下記工程(Y)を更に含む請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
(Y)前記有機第一級アミンが有するカルボキシ基をエステル化する、又は、前記工程(1)で得られた前記化合物(A)が有するカルボキシ基をエステル化する工程
【請求項5】
前記工程(1)において、芳香族ヒドロキシ化合物存在下で反応させる請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法を用いてカルバメートを得、
得られたカルバメートを熱分解反応に付してイソシアネートを製造するイソシアネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバメートの製造方法及びイソシアネートの製造方法に関する。
本願は、2018年5月15日に、日本に出願された特願2018-094157号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートは、ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤等の製造原料として広く用いられている。イソシアネートの主な工業的製造方法は、アミン化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン法)であり、全世界の生産量のほぼ全量がホスゲン法により生産されている。
例えば、特許文献1には、(環状)脂肪族ジイソシアネート類をホスゲン法により製造する方法が開示されており、特許文献2には、芳香族ジイソシアネート類をホスゲン法により製造する方法が開示されている。また、特許文献3には、200℃以上600℃以下の蒸気相中で、トリアミンを、いかなる運動部分もない円筒反応室内で流速を少なくとも3m/sに維持してホスゲン化することで、(環状)脂肪族トリイソシアネートを製造する方法が開示されている。また、特許文献4には、2,6,2’-トリアミノエチルヘキサノエート・三塩酸塩を、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩及びホスホニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の触媒存在下でホスゲン化して、2,6,2’-トリイソシアネートエチルヘキサノエートを製造する方法が開示されている。
【0003】
しかしながら、ホスゲン法には多くの問題がある。
第1に、原料としてホスゲンを大量に使用することである。ホスゲンは極めて毒性が高く、従業者への暴露を防ぐためにその取扱いには特別の注意を要し、廃棄物を除去するための特別の装置が必要である。
第2に、ホスゲン法においては、腐食性の高い塩化水素が大量に副生するため、塩化水素を除去するためのプロセスが必要となる。さらに、製造されたイソシアネートには多くの場合、加水分解性塩素が含有されることになる。このため、ホスゲン法で製造されたイソシアネートを使用すると、ポリウレタン製品の耐候性及び耐熱性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0004】
このような背景から、ホスゲンを使用しないイソシアネート化合物の製造方法が望まれている。ホスゲンを使用しないイソシアネート化合物の製造方法の一つとして、カルバメートの熱分解による方法が提案されている。カルバメートの熱分解によってイソシアネートとヒドロキシ化合物とが得られることは公知である(例えば、非特許文献1参照)。その基本反応は下記式によって例示される。
【0005】
【0006】
(一般式(Ia)中、R11は「n11」価の有機残基である。R12は1価の有機残基である。n11は1以上の整数である。)
【0007】
尿素を使用するカルバメートの製造方法としては、例えば、ジアミンとアルコールと尿素とを反応させてカルバメートに変換する方法が挙げられる(例えば、特許文献5等参照)。また、例えば、脂肪族1級ポリアミン、尿素及びアルコールから、ビス尿素を製造した後、カルバメートを製造する方法が挙げられる(例えば、特許文献6等参照)。また、例えば、尿素とアルコールとを部分的に反応させる第1工程と、ジアミンを供給してカルバメートを製造する第2工程とを含む製造方法が挙げられる(例えば、特許文献7等参照)。また、例えば、有機第一級アミンと炭酸ジアリールとを反応させてカルバメートを製造し、前記反応をおこなう反応装置と配管で接続された別の反応装置において該カルバメートを熱分解することによりイソシアネートを製造する方法等が挙げられる(例えば、特許文献8等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第0289840号明細書
【文献】独国特許出願公開第4217019号明細書
【文献】特開平9-012525号公報
【文献】特開平6-234723号公報
【文献】米国特許出願公開第4713476号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0568782号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0657420号明細書
【文献】国際公開第2009/139061号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Berchte der Deutechen ChemischenGesellschaft,第3巻,653頁,1870年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、ホスゲンを用いずにイソシアネートを製造する方法の例はあるが、特定のイソシアネートの例であり、ホスゲン法での開示のある3官能イソシアネートや2,6,2’-トリイソシアネートエチルヘキサノエートといったアミノ酸骨格を有するイソシアネートへの適用例はない。また、商業ベースで大量のイソシアネートを製造するには炭酸ジアリール等の炭酸エステルの市場流通量が十分ではない場合が多い。また、上記特許文献5~7のように、アミン化合物と尿素とヒドロキシ化合物とからカルバメートを製造する方法も開示されているが、反応には高温を要し、カルバメートが熱的に不安定な場合は好ましくない副反応を生起させる場合が多い。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ホスゲンを使用せず、且つ、炭酸エステルの使用量を低減できるカルバメートの製造方法、及び、前記製造方法で得られたカルバメートを用いるイソシアネートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るカルバメートの製造方法は、下記工程(1)及び工程(2)を含む方法であり、
(1)一分子中に少なくとも2個の一級アミノ基を有する有機第一級アミンと、尿素とを用いて、尿素結合を有する化合物(A)(ただし、ウレイド基を有する化合物を除く)を、尿素結合が分解することに基づく前記化合物(A)の熱解離温度より低温で製造する工程;
(2)前記化合物(A)と炭酸エステルとを反応させてカルバメートを製造する工程;
前記尿素モル量が、前記有機第一級アミンの一級アミノ基のモル量に対して0.5倍未満である。
前記有機第一級アミンが一分子中に3個の一級アミノ基を有してもよい。
前記有機第一級アミンがアミノ酸エステル及びアミノ酸エステルの塩のうち少なくともいずれか1種であってもよい。
上記第1態様に係るカルバメートの製造方法は、前記有機第一級アミンがカルボキシ基を有し、前記工程(1)の前に、又は、前記工程(1)の後であって、前記工程(2)の前に、下記工程(Y)を更に含んでもよい。
(Y)前記有機第一級アミンが有するカルボキシ基をエステル化する、又は、前記工程(1)で得られた前記化合物(A)が有するカルボキシ基をエステル化する工程。
前記有機第一級アミンが、一分子中に3個の一級アミノ基を有してもよい。
前記工程(1)において、芳香族ヒドロキシ化合物存在下で反応させてもよい。
【0013】
本発明の第2態様に係るイソシアネートの製造方法は、上記第1態様に係る製造方法を用いてカルバメートを得、得られたカルバメートを熱分解反応に付してイソシアネートを製造する方法である。
【発明の効果】
【0014】
上記態様のカルバメートの製造方法は、ホスゲンを使用せず、且つ、炭酸エステルの使用量を低減できる。上記態様のイソシアネートの製造方法は、前記製造方法により得られたカルバメートを用いる方法であり、様々な種類のイソシアネートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例で用いた熱分解反応装置の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の本実施形態に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0017】
≪カルバメートの製造方法≫
本実施形態のカルバメートの製造方法は、下記工程(1)及び工程(2)を含む方法である。
(1)一分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有する有機第一級アミンと、二酸化炭素及び炭酸誘導体のうち少なくともいずれか1種とを用いて、尿素結合の熱解離温度より低温で、尿素結合を有する化合物(A)を製造する工程;
(2)前記化合物(A)と炭酸エステルとを反応させてカルバメートを製造する工程
【0018】
本実施形態のカルバメートの製造方法は、上記構成を有することで、ホスゲンを使用せず、且つ、少ない炭酸エステルで様々な種類のカルバメートを製造することができる。
本実施形態のカルバメートの製造方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
【0019】
<工程(1)>
工程(1)では、一分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有する有機第一級アミンと、二酸化炭素及び炭酸誘導体のうち少なくともいずれか1種とを用いて、尿素結合の熱解離温度より低温で、尿素結合を有する化合物(A)を製造する。本実施の形態でいう、「熱解離温度」とは、尿素結合を有する化合物の熱解離が進行する温度を指す。通常、試料の温度を一定のプログラムによって変化または保持させながら、試料の重量を温度の関数として測定する方法において、当該化合物の重量減少の起こる温度として観測することができる。窒素を代表として挙げられる不活性ガスの気流下で、毎分10℃の昇温速度で加熱し、仕込みの重量に対して、3%、好ましくは5%の重量減少が起こる温度を熱解離温度とする。
この場合、用いる化合物の種類によっては、上記した「重量減少」が、尿素結合の熱解離に起因する重量減少である場合のみならず、該化合物を構成する尿素結合以外の官能基の熱解離に起因する重量減少である場合もあるが、本実施の形態の趣旨を勘案すると、尿素結合の熱解離に起因する重量減少を採用する方が好ましい。この場合、尿素結合、該化合物を構成する尿素結合以外の官能基の、どちらの熱解離が生じているかを判別する方法としては、例えば、熱重量測定装置からの排出ガスを質量分析装置に導入して該排出ガスに含有される成分を分析する方法を用いることができる。また、用いる化合物の種類によっては、該尿素結合の熱解離が生じたとしても、熱解離生成物の分子量が大きいために(多くの場合、熱解離生成物の沸点が高いために)、熱解離反応が重量減少として観測されない場合もある。このような場合には、示差熱分析、示差走査熱量分析等の方法により、当該熱解離反応に伴う吸熱が観測される温度を以って、熱解離温度とすることもできる。より高い正確さを確保するために、示差熱分析や示差走査熱量分析と、熱重量測定装置とを組み合わせる方法を用いることができる。また、加熱時の、該尿素結合の熱解離反応を、(近)赤外分光光度計、ラマン分光光度計等により観測して該尿素結合を定量し、仕込みの量に対して、3%、より好ましくは5%の減少が起こる温度を、熱解離温度とすることもできる。
【0020】
[反応条件:二酸化炭素を用いて化合物(A)を製造する場合]
上記有機第一級アミンと二酸化炭素とを化合物(A)を生成する反応では、まず、上記有機第一級アミンのアミノ基と、二酸化炭素とが反応してカルボキシアミノ基が生成する。続いて、カルボキシアミノ基と、別のアミノ基とが脱水縮合することにより、水と尿素結合(ウレア結合)を有する化合物(A)とを生成する。
【0021】
上記有機第一級アミンと二酸化炭素とを反応させる方法としては、例えば、反応容器に有機第一級アミンを投入した後、二酸化炭素を導入する方法や、反応容器を二酸化炭素で満たしておき、そこに有機第一級アミンを添加する方法等が挙げられ、適宜採用される。
また、反応容器に投入する有機第一級アミンは、例えば、有機第一級アミンを二酸化炭素の気流にさらしておく方法や、有機第一級アミンを二酸化炭素でバブリングする方法等によって、予め二酸化炭素を吸収させておいてもよい。
二酸化炭素は、例えば、ポンプ、コンプレッサー、ブロワ-等の装置を用いて、反応容器に導入することができる。
【0022】
反応温度は、使用する化合物の種類にもよるが、尿素結合の熱解離温度より低温であることが好ましい。例えば、80℃以上350℃以下の範囲で実施することができ、100℃以上300℃以下が好ましく、120℃以上250℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることにより、有機第一級アミンへの二酸化炭素の吸収がより良好なものとなり、カルボキシアミノ基の生成反応がより効率的であり、且つ、カルボキシアミノ基とアミノ基との反応による尿素結合の生成反応速度が低くなることを抑制することができる。一方、反応温度が上記上限値以下であることにより、有機第一級アミンへの二酸化炭素の吸収が悪化することを防ぎ、カルボキシアミノ基の生成反応が遅くなることを防ぎ、且つ、カルボキシアミノ基とアミノ基との反応による尿素結合の生成反応速度がより高くなる。また、反応温度の設定にあたっては、使用する化合物の熱安定性も考慮する必要がある。
【0023】
圧力は、0.1MPa以上20MPa以下(絶対圧)が好ましく、0.5MPa以上15MPa以下がより好ましく、1MPa以上10MPa以下がさらに好ましい。圧力が上記下限値以上であることにより、反応容器内の二酸化炭素濃度が希薄となりカルボキシアミノ基の生成反応が遅くなることを防ぐことができる。
一方、圧力が上記上限値以下であることにより、大掛かりな反応容器を用いずに反応を行うことができる。また、圧力が上記上限値以下であることにより、SUS316やSUS304等のステンレス材料製の反応容器を用いた場合に、二酸化炭素による腐食を防ぐことができる。
圧力の制御方法としては、反応容器を密閉して二酸化炭素を用いて制御する方法、又は、二酸化炭素を流通させながら背圧弁を用いて制御する方法が好ましい。
反応容器を密閉する手法を指向した場合、二酸化炭素のモル量は、有機第一級アミンの一級アミノ基のモル量に対して、化学量論比で0.5倍以上500倍以下の範囲とすることができ、0.6倍以上400倍以下の範囲が好ましく、0.7倍以上350倍以下の範囲がより好ましく、1倍以上300倍以下の範囲がさらに好ましい。二酸化炭素の使用量が上記下限値以上であることにより、未反応のアミノ基が残留することをより効果的に防ぐことができ、上限値以下であることにより、例えば、圧力一定条件下においては気相容積を小さくすることで反応器サイズを小さくすることができ、例えば、体積一定条件下においては反応圧力を下げることで反応器に求められる耐圧性能を軽減化せしめる為、好ましい。
二酸化炭素を流通させながら反応する場合は、二酸化炭素の有機第一級アミンに対するモル量は大過剰となり、反応を優位に進行せしめる形態である為、好ましい。
【0024】
反応は平衡反応であり、尿素結合を生成する際に生じる水を反応系外に除去しなければ、ある程度の量の化合物(A)が生成したところで、見かけ上、反応の進行は停止し、化合物(A)が所望の収量に達しない場合が多い。したがって、工程(1)において、有機第一級アミンと二酸化炭素とを用いて化合物(A)を製造する場合に、有機第一級アミンと二酸化炭素との反応によって生成する水を反応系外に抜き出しながら反応を行うことが好ましい。
【0025】
工程(1)において、化合物(A)の生成反応は液相でおこなわれることが好ましく、溶媒を用いることがより好ましい。溶媒としては、ニトリル化合物、ハロゲン又はニトロ基によって置換された芳香族化合物類、多環炭化水素化合物類、脂肪族炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類及びチオエーテル類、エステル化合物、スルホキシド類、芳香族ヒドロキシ化合物類、脂肪族アルコール類等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ヒドロキシ化合物類が好ましい。ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。ハロゲン又はニトロ基によって置換された芳香族化合物類としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ニトロベンゼン、ニトロナフタレン等が挙げられる。多環炭化水素化合物類としては、例えば、ジフェニル、置換ジフェニル、ジフェニルメタン、ターフェニル、アントラセン、ジベンジルトルエン等が挙げられる。脂肪族炭化水素類としては、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトフェノン、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、モノエステル化合物であってもよく、ジエステル化合物であってもよい。モノエステル化合物としては、例えば、酢酸エチル、安息香酸エチル等が挙げられる。ジエステル化合物としては、例えば、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ベンジルブチルフタレート等が挙げられる。エーテル類及びチオエーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド等が挙げられる。スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等が挙げられる。芳香族ヒドロキシ化合物類としては、例えば、フェノール、ジメチルフェノール等が挙げられる。脂肪族アルコール類としては、例えば、プロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これら溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
また、工程(1)において、必要に応じて、反応速度を高める目的で、触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、又は、それらの金属塩、エステル誘導体、アミド若しくは無水物等が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等が挙げられる。エステル誘導体としては、例えば、フェニルエステルやアルキルエステル等が挙げられる。アミドとしては、例えば、ホスホロアミダイド等が挙げられる。無水物としては、例えば、ピロリン酸、メタリン酸等が挙げられる。また、触媒としては、第三級アミン、リン塩化物、ホスファイト誘導体、ホスフィン誘導体、アリールボロン酸、第4周期金属ハロゲン化物等が挙げられる。第三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。リン塩化物としては、例えば、三塩化リン等が挙げられる。ホスファイト誘導体としては、例えば、トリアリールホスファイト等が挙げられる。ホスフィン誘導体としては、例えば、トリアリールホスフィンやトリアリールホスフィンジハロゲン化物等が挙げられる。アリールボロン酸としては、例えば、3,5-ビストリフルオロフェニルボロン酸等が挙げられる。第4周期金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化鉄等が挙げられる。これら触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
また、工程(1)において、化合物(A)の生成量を所望量に制御するために、末端封止剤を用いてもよい。
末端封鎖剤としては、モノアミン、モノカルボン酸、炭酸エステル等が挙げられる。モノアミンとしては、例えば、ヘキシルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン等が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、ラウリン酸、安息香酸等が挙げられる。炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジフェニル等が挙げられる。これら末端封止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。末端封鎖剤の添加量は特に限定されず、目的化合物の収量及び尿素結合の生成量を所望量に制御するために適切な量を用いることができる。
【0028】
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01時間以上100時間以下である。反応時間は、目的化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、目的化合物や尿素結合の含有量を定量し、使用した有機第一級アミンに対して所望の収率に到達していることを確認して、反応を終了することができる。
【0029】
[反応条件:炭酸誘導体を用いて化合物(A)を製造する場合]
有機第一級アミンと炭酸誘導体とから化合物(A)を製造する方法は、特に限定はされないが、以下に示す方法(i)又は方法(ii)が好ましい。
(i)有機第一級アミンと炭酸誘導体とを反応させて、“1段階で”尿素結合を有する化合物(A)を製造する方法;
(ii)炭酸誘導体が尿素及びN-無置換カルバミン酸エステルのうち少なくともいずれか1種であって、有機第一級アミンと炭酸誘導体とを反応させて、ウレイド基を有する化合物を含む反応混合物を得る工程(ii-1)と、該工程(ii-1)で得たウレイド基を有する化合物を縮合させて、尿素結合を有する化合物(A)を製造する工程(ii-2)とを含む方法
【0030】
方法(i)及び方法(ii)において、炭酸誘導体として炭酸エステルを使用することもできるが、本実施形態の目的である炭酸エステルの使用量を減らすという観点からは必ずしも推奨されない。
また、炭酸誘導体としては、N-無置換カルバミン酸エステル、N,N’-ジ置換尿素、N-置換尿素及び尿素のうち少なくともいずれか1種であることが好ましく、尿素であることがより好ましい。
【0031】
(方法(i))
方法(i)における“1段階で”とは、方法(ii)とは異なり、工程が分割されていないという意味であって、必ずしも、有機第一級アミンと炭酸誘導体との反応から、直接、化合物(A)が製造されるという意味ではない。
【0032】
方法(i)では、例えば、下記一般式(Ib)で表される反応によって、化合物(A)(尿素結合を有する化合物)が製造される。
【0033】
【0034】
一般式(Ib)中、R111は1価の有機基である。R111における有機基としては、後述するR251において1価の有機基として例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0035】
なお、上記一般式(Ib)では、説明を簡単にするために、1種類の、一分子中に1個の1級アミノ基を有する有機第一級アミン(すなわち、単官能の有機第一級アミン)を用い、炭酸誘導体として尿素を使用した場合を示しているが、本実施形態で使用する有機第一級アミンが、一分子中に2個以上の1級アミノ基を有する有機第一級アミン(すなわち、2官能以上の有機第一級アミン)である場合や、炭酸誘導体として尿素以外の化合物、例えば尿素誘導体として尿素の各々のアミノ基をアルキル基で置換されたN-アルキル尿素或いはN,N’-ジアルキル尿素を用いる場合でも、同様の反応が生起することは当業者であれば容易に理解できる。例えば、N,N’-ジアルキル尿素を用いた場合、上記一般式(Ib)に記載の副生するアンモニアに代わり、アルキル基に対応するアルキルアミンが副生する。
【0036】
有機第一級アミンと炭酸誘導体とを反応させる反応条件は、反応させる化合物によっても異なるが、以下に好ましい範囲を例示する。
炭酸誘導体のモル量は、有機第一級アミンの一級アミノ基のモル量に対して、化学量論比で0.5倍以上50倍以下の範囲とすることができ、0.1倍以上10倍以下の範囲が好ましく、0.2倍以上5倍以下の範囲がより好ましく、0.3以上2倍以下の範囲がさらに好ましい。炭酸誘導体の使用量が上記下限値以上であることにより、未反応のアミノ基が残留することをより効果的に防ぐことができる。一方、炭酸誘導体の使用量が上記上限値以下であることにより、反応装置の大きさや、炭酸誘導体の溶解性を考慮する必要がなく、目的とする化合物(A)の生成量の減少をより効果的に抑制することができる。
また、炭酸誘導体のモル量は、有機第一級アミンの一級アミノ基のモル量に対して、化学量論比で0.5倍未満とすることもできる。炭酸誘導体の使用量をこの範囲にすることにより、尿素結合を有する化合物(A)を1段階で安定かつ収率高く合成する事が出来る。
【0037】
反応温度は、使用する有機第一級アミンと炭酸誘導体との反応性にもよるが、尿素結合の熱解離温度より低温であることが好ましい。具体的には、50℃以上250℃以下の範囲が好ましく、80℃以上220℃の範囲がより好ましく、100℃以上180℃の範囲がさらに好ましい。反応温度が上記上限値以下であることにより、炭酸誘導体の分解や、生成物である化合物(A)の分解反応や変性反応等が生起することを、より効果的に抑制することができる。一方、反応温度が上記下限値以上であることにより、反応時間が長時間となることをより効果的に防ぐことができ、また、目的とする化合物(A)の収量をより十分なものとすることができる。
【0038】
反応圧力は、例えば、反応系の組成、反応温度、副生物(例えば、アンモニア)の除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧又は加圧とすることができるが、通常、0.01kPa以上10MPa以下(絶対圧)の範囲とすることができ、工業的実施の容易性を考慮すると、減圧又は常圧が好ましく、0.1kPa以上1MPa以下(絶対圧)の範囲がより好ましい。
【0039】
方法(i)で用いられる反応装置は、特に制限がなく、公知の反応装置が使用できるが、凝縮器を具備した、槽型反応器及び塔型反応器のうち少なくともいずれか一つの反応装置が好ましく使用される。具体的には、例えば、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等が挙げられ、これら従来公知の反応装置を適宜組み合わせて使用できる。
反応装置及び凝縮器の材質にも特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製や、基材にグラスライニングを施したものや、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったもの等を用いることができる。中でも、SUS304やSUS316、SUS316L等が安価でもあり、好ましく使用できる。必要に応じて、流量計、温度計等の計装機器、リボイラー、ポンプ、コンデンサー等の公知のプロセス装置を付加してよい。また、加熱はスチーム、ヒーター等の公知の方法でよく、冷却も自然冷却、冷却水、ブライン等の公知の方法が使用できる。必要に応じて、各種工程を付加してもよい。
【0040】
有機第一級アミンと炭酸誘導体との反応では、例えば、炭酸誘導体として尿素を用いる場合にはアンモニアが、炭酸誘導体としてN-置換アルキル尿素を用いる場合はアンモニアと置換アルキル基に対応するアルキルアミン、N,N’-置換ジアルキル尿素を用いる場合は置換アルキル基に対応するアルキルアミン、N-無置換カルバミン酸エステルを用いる場合にはヒドロキシ化合物及びアンモニアが副生する場合が多い。これらのアンモニア、アルキルアミンやヒドロキシ化合物は系外に除去しながら反応をおこなってもよい。これら化合物を系外に除外する方法としては、例えば、反応蒸留法、不活性ガスによる方法、膜分離、吸着分離による方法等が挙げられる。反応蒸留法は溶媒等の沸騰下でアンモニア、アルキルアミンやヒドロキシ化合物等を除去しながら反応を行う方法である。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成するアンモニア、アルキルアミンやヒドロキシ化合物を、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、1種単独で、又は、2種以上混合して使用し、該不活性ガスを反応系中に導入する方法である。吸着分離する方法において使用される吸着剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、各種ゼオライト類、珪藻土類等の、当該反応が実施される温度条件下で使用可能な吸着剤が挙げられる。これらの方法は、1種単独で実施してもよく、複数種の方法を組み合わせて実施してもよい。
【0041】
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01時間以上100時間以下である。反応時間は、目的化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、目的化合物や尿素結合の含有量を定量し、使用した有機第一級アミンに対して所望の収率に到達していることを確認して、反応を終了することができる。
【0042】
(方法(ii))
方法(ii)は、下記工程(ii-1)と下記工程(ii-2)とを含む方法であり、有機第一級アミンと炭酸誘導体とを反応させる方法である。
(ii-1)有機第一級アミンと炭酸誘導体とを反応させて、ウレイド基を有する化合物を含む反応混合物を得る工程;
(ii-2)工程(ii-1)で得られたウレイド基を有する化合物を縮合させて、化合物(A)を製造する工程。
【0043】
以下、工程(ii-1)について詳細に説明する。
工程(ii-1)では、炭酸誘導体が尿素、尿素の各々のアミノ基をアルキル基で置換されたN-アルキル尿素、N,N’-ジアルキル尿素及びN-無置換カルバミン酸エステルのうち少なくともいずれか1種であって、有機第一級アミンと炭酸誘導体とを反応させて、ウレイド基を有する化合物を含む反応混合物を得る。
なお、該工程(ii-1)においても化合物(A)が生成する場合があり、該工程(ii-1)で得られる化合物(A)を、続く工程(2)で用いられる化合物(A)として使用することもできる。
【0044】
有機第一級アミンと炭酸誘導体との反応を行う反応条件は、反応させる化合物によって異なるが、該有機第一級アミンの一級アミノ基のモル量に対する炭酸誘導体のモル量は、0.5倍以上100倍以下の範囲とすることができ、1倍以上50倍以下の範囲が好ましく、1.2倍以上10倍以下の範囲がより好ましく、1.5倍以上5倍以下の範囲がさらに好ましい。炭酸誘導体の使用量が上記下限値以上であることにより、未反応のアミノ基が残留することをより効果的に防ぐことができる。一方、炭酸誘導体の使用量が上記上限値以下であることにより、反応装置の大きさや、炭酸誘導体の溶解性を考慮する必要がなく、目的とする化合物(A)の生成量の減少をより効果的に抑制することができる。
また、炭酸誘導体のモル量は、有機第一級アミンの一級アミノ基のモル量に対して、0.5倍未満とすることもできる。炭酸誘導体の使用量をこの範囲にすることにより、化合物(A)を安定かつ収率高く合成する事が出来る。
【0045】
反応温度は、使用する有機第一級アミンと炭酸誘導体との反応性にもよるが、尿素結合の熱解離温度より低温であることが好ましい。具体的には、50℃以上200℃以下の範囲が好ましく、80℃以上190℃の範囲がより好ましく、100℃以上180℃の範囲がさらに好ましい。反応温度が上記上限値以下であることにより、炭酸誘導体の分解や、生成物である化合物(A)の分解反応や変性反応等が生起することを、より効果的に抑制することができる。一方、反応温度が上記下限値以上であることにより、反応時間が長時間となることをより効果的に防ぐことができ、また、目的とする化合物(A)の収量をより十分なものとすることができる。
【0046】
反応圧力は、例えば、反応系の組成、反応温度、副生物(例えば、アンモニア)の除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧又は加圧とすることができるが、通常、0.01kPa以上10MPa以下(絶対圧)の範囲とすることができ、工業的実施の容易性を考慮すると、減圧又は常圧が好ましく、0.1kPa以上1MPa以下(絶対圧)の範囲がより好ましい。
【0047】
工程(ii-1)で用いられる反応装置及び反応装置の材質は、特に制限はなく、上記方法(i)で例示されたものと同様のものが挙げられ、公知の材質、反応装置が使用できる。
有機第一級アミンと炭酸誘導体との反応では、例えば、炭酸誘導体として尿素を用いる場合にはアンモニア、N-置換アルキル尿素を用いる場合は置換アルキル基に対応するアルキルアミン、炭酸誘導体としてN-無置換カルバミン酸エステルを用いる場合はヒドロキシ化合物が副生する場合が多い。これらのアンモニアやヒドロキシ化合物は系外に除去しながら反応をおこなってもよい。その方法は上記方法(i)で例示された方法と同様の方法を用いることができる。
また、工程(ii-1)において、溶媒として水を用いることもできる。
【0048】
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01時間以上100時間以下である。反応時間は、目的化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、目的化合物や尿素結合の含有量を定量し、使用した有機第一級アミンに対して所望の収率に到達していることを確認して、反応を終了することができる。
【0049】
工程(ii-1)では下記一般式(Ic)で表される反応によって、ウレイド基を有する化合物と共に、該ウレイド基を有する化合物の縮合物や、有機第一級アミンと該ウレイド基を有する化合物との反応物として、化合物(A)(尿素結合を有する化合物)も生成する(例えば、下記一般式(Id)及び(Ie)参照)。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
一般式(Ic)~(Ie)中、R112、R113、R114及びR115はそれぞれ独立に、1価の有機基である。R112、R113、R114及びR115における1価の有機基としては、後述するR251において1価の有機基として例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0054】
なお、上記一般式(Id)及び(Ie)では、説明を簡単にするために、1種類の、一分子中に1個の1級アミノ基を有する有機第一級アミン(すなわち、単官能の有機第一級アミン)を用い、炭酸誘導体として尿素を使用した場合を示しているが、本実施形態で使用する有機第一級アミンが、一分子中に2個以上の1級アミノ基を有する有機第一級アミン(すなわち、2官能以上の有機第一級アミン)である場合や、炭酸誘導体として尿素以外の化合物、例えば尿素誘導体として尿素のアミノ基をアルキル基で置換されたN-アルキル尿素を用いる場合でも、同様の反応が生起することは当業者であれば容易に理解できる。例えば、N-ジアルキル尿素を用いた場合、上記一般式(Id)に記載の副生するアンモニアに代わり、アルキル基に対応するアルキルアミンが副生する。
【0055】
次いで、工程(ii-2)では、工程(ii-1)で得られたウレイド基を有する化合物を縮合させて、尿素結合を有する化合物(A)を製造する。すなわち、例えば、上記一般式(Id)で表される反応が行われる。
【0056】
工程(ii-1)で得られたウレイド基を有する化合物を含む反応混合物は、そのまま工程(ii-2)に用いてもよく、工程(ii-2)を行う前に、ウレイド基を有する化合物を分離回収する工程を設けてもよく、或いは、分離回収したウレイド基を有する化合物を精製する工程を更に設けてもよい。工程(ii-1)で反応溶媒を使用した場合、工程(ii-2)を行う前に、工程(ii-1)の反応混合物から該反応溶媒を除去してもよく、除去せずにそのまま工程(ii-2)を行ってもよい。
【0057】
反応温度は、使用する有機第一級アミンと炭酸誘導体との反応性にもよるが、100℃以上200℃以下の範囲が好ましく、110℃以上190℃の範囲がより好ましく、120℃以上180℃の範囲がさらに好ましい。反応温度が上記上限値以下であることにより、生成物である化合物(A)の分解反応や変性反応等が生起することを、より効果的に抑制することができる。一方、反応温度が上記下限値以上であることにより、反応時間が長時間となることをより効果的に防ぐことができ、また、目的とする化合物(A)の収量をより十分なものとすることができる。
【0058】
反応圧力は、例えば、反応系の組成、反応温度、副生物(例えば、アンモニア)の除去方法、反応装置等によって異なり、減圧、常圧又は加圧とすることができるが、通常、0.01kPa以上10MPa以下(絶対圧)の範囲とすることができ、工業的実施の容易性を考慮すると、減圧又は常圧が好ましく、0.1kPa以上1MPa以下(絶対圧)の範囲がより好ましい。
【0059】
工程(ii-2)で用いられる反応装置及び反応装置の材質は、特に制限はなく、上記方法(i)で例示されたものと同様のものが挙げられ、公知の材質、反応装置が使用できる。
工程(ii-2)のウレイド基を有する化合物の縮合反応では、例えば尿素が副生する場合が多い。この尿素は反応系外に除去しながら反応を行うことができる。尿素を系外に除去する方法としては、例えば、反応蒸留法、不活性ガスによる方法等が挙げられる。反応蒸留法は、溶媒等の沸騰下で尿素等を除去しながら反応を行う方法である。また、不活性ガスによる方法とは、反応下で逐次生成する尿素等を、気体状で不活性ガスに同伴させることによって反応系から分離する方法である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等を、1種単独で、又は、2種以上混合して使用し、該不活性ガスを反応系中に導入する方法である。
【0060】
工程(ii-1)で触媒を使用し、工程(ii-1)で得られた反応混合物をそのまま工程(ii-2)に用いる場合、触媒を追加してもよく、追加しなくてもよい。
【0061】
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01時間以上100時間以下である。反応時間は、目的化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、目的化合物や尿素結合の含有量を定量し、使用した有機第一級アミンやウレイド基を有する化合物に対して所望の収率に到達していることを確認して、反応を終了することができる。
【0062】
<工程(2)>
工程(2)では、化合物(A)と炭酸エステルとを反応させてカルバメートを製造する。
【0063】
[反応条件]
工程(2)における反応温度は、50℃以上250℃以下が好ましく、80℃以上220℃以下がより好ましく、100℃以上200℃以下がさらに好ましい。反応温度が上記下限値以上であることにより、熱解離反応速度が小さく反応効率が悪化することをより効果的に防ぐことができる。一方、反応温度が上記上限値以下であることにより、化合物(A)の尿素結合が熱解離反応し、生成するイソシアネート基やアミノ基の変性反応が生起することをより効果的に防ぐことができる。
【0064】
使用される炭酸エステルの量は、該炭酸エステルの種類や反応条件にもよるが、化合物(A)の尿素結合の数に対して、炭酸エステルの数が10以下であることが好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。炭酸エステルの数が上記上限値以下であることにより、反応速度を高め反応の効率を良好なものに保ちながら、N-アルキル化等の副反応が生起することをより効果的に防ぐことができる。
【0065】
工程(2)における反応は、溶媒の存在下にて行われることが好ましい。溶媒としては、化合物(A)及び炭酸エステルを溶解し、上記範囲の反応温度にて安定な化合物であればよく、上記「工程(1)」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0066】
また、工程(2)における反応において、例えば、反応速度を高める目的で、触媒を使用することができる。触媒としては、上記「工程(1)」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0067】
また、工程(2)における反応は、加圧、常圧又は減圧のいずれの条件によって実施されてもよい。また、工程(2)における反応は、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガス雰囲気下で実施されることが好ましい。
【0068】
反応装置は、例えば、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等が挙げられ、これら従来公知の反応装置を適宜組み合わせて使用できる。反応温度を一定にするために、反応装置には、公知の冷却装置及び加熱装置のうち少なくともいずれかの装置が設置されていてもよい。また、材質については特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製、基材にグラスライニングを施したもの、テフロン(登録商標)コーティング等を用いることができる。
【0069】
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01時間以上100時間以下である。反応時間は、目的化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、目的化合物の含有量を定量し、使用した炭酸エステルや化合物(A)又は尿素結合の量に対して、所望の収率に到達していることを確認して、反応を終了することができる。
【0070】
<工程(Y)>
本実施形態のカルバメートの製造方法は、上記工程(1)及び上記工程(2)を含む方法によってカルバメートを製造することができる。一方、本実施形態のカルバメートの製造方法において、有機第一級アミンとして、アミノ酸及びアミノ酸の塩のうち少なくともいずれか1種等のカルボキシ基を有する有機第一級アミンを使用する場合、上記工程(1)前に、又は、上記工程(1)の後であって、上記工程(2)の前に、下記工程(Y)を更に含む方法を用いることが好ましい。
(Y)有機第一級アミンが有するカルボキシ基をエステル化する、又は、上記工程(1)で得られた化合物(A)が有するカルボキシ基をエステル化する工程
【0071】
有機第一級アミンが有するカルボキシ基、又は、上記工程(1)で得られた化合物(A)が有するカルボキシ基と反応し、エステル結合を形成させるための化合物としては、例えば、アルコール性ヒドロキシ基を有する化合物等が挙げられる。このとき、例えば、下記一般式(If)で表される反応により、工程(Y)は行われる。
【0072】
【0073】
一般式(If)中、R116及びR117はそれぞれ独立に、1価の有機基である。R116及びR117における有機基としては、後述するR251において1価の有機基として例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0074】
なお、一般式(If)の左辺第一項で表されるアミノ酸残基(-C(NH2)COOH)が、酸との塩を形成している場合においても、塩基との塩を形成している場合においても同様に上記反応が行われる。また、R91及びR92がアミノ基(-NH2)を含有している場合、該アミノ基が酸との塩を形成していてもよい。
また、一般式(If)において、説明を簡単にするために、アミノ酸を用いた場合のエステル化反応を示しているが、上記工程(1)で得られた化合物(A)を用いた場合でも、同様の反応が生起することは当業者であれば容易に理解できる。
【0075】
アルコール性ヒドロキシ基を有する化合物の、アミノ酸残基に対する使用量は、化学量論比(モル比)で、0.5倍以上10倍以下が好ましく、1倍以上5倍以下がより好ましく、1.2倍以上3倍以下がさらに好ましい。
【0076】
反応温度は、30℃以上200℃以下が好ましく、50℃以上180℃以下がより好ましく、70℃以上150℃以下がさらに好ましい。
【0077】
工程(Y)における反応は、溶媒の存在下にて行うこともできる。溶媒としては、反応物(化合物(A)及びアルコール性ヒドロキシ基を有する化合物等)を溶解し、上記範囲の反応温度にて安定な化合物であればよく、上記「工程(1)」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0078】
また、工程(Y)における反応において、例えば、反応速度を高める目的で、触媒を使用することができる。触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸が好ましく使用される。これらの無機酸は、工程(Y)における原料である、工程(1)で得られた化合物(A)及びアルコール性ヒドロキシ基を有する化合物のうち少なくともいずれか1種に含有されるアミノ基、又は、工程(Y)における生成物である、アミノ酸エステルに含有されるアミノ基と、塩を形成する場合が多いため、触媒としてのこれら無機酸の使用量としては、上記塩を形成する量よりも多い量であることが好ましい。また、工程(Y)における反応で、高温や減圧の条件を採用する場合、上記塩を形成している酸や、触媒として使用している酸が反応系外に留出する場合がある。そのため、反応の進行に必要な量の酸を添加しながら、反応を実施することが好ましい。
【0079】
上記一般式(If)で表される反応(エステル化反応)は、水の生成を伴う平衡反応であることから、生成する水を抜出しながら反応を実施することが好ましい。したがって、エステル化反応は、加圧、常圧及び減圧のいずれの条件によって実施されてもよいが、常圧又は減圧下で行われることが好ましい。
また、工程(Y)における反応は、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガス雰囲気下で実施されることが好ましい。
【0080】
反応装置は、例えば、攪拌槽、加圧式攪拌槽、減圧式攪拌槽、塔型反応器、蒸留塔、充填塔、薄膜蒸留器等が挙げられ、これら従来公知の反応装置を適宜組み合わせて使用できる。反応温度を一定にするために、反応装置には、公知の冷却装置及び加熱装置のうち少なくともいずれかの装置が設置されていてもよい。また、材質については特に制限はなく、公知の材質が使用できる。例えば、ガラス製、ステンレス製、炭素鋼製、ハステロイ製、基材にグラスライニングを施したもの、テフロン(登録商標)コーティングをおこなったもの等が挙げられる。
【0081】
反応時間(連続反応の場合は滞留時間)は、反応系の組成、反応温度、反応装置、反応圧力等によって異なるが、通常、0.01時間以上100時間以下である。反応時間は、目的化合物の生成量によって決定することもできる。例えば、反応液をサンプリングして、目的化合物の含有量を定量し、所望の収量に到達していることを確認して反応を終了することができる。
【0082】
<原料及び生成物>
次いで、本実施形態の製造方法に用いられる原料及び生成物について詳細を説明する。
【0083】
[有機第一級アミン]1)アミン化合物(II)
工程(1)で用いられる有機第一級アミンとしては、一分子中に少なくとも1個の一級アミノ基を有するものであればよいが、中でも、下記一般式(II)で表されるアミン化合物(以下、「アミン化合物(II)」と称する場合がある)が好ましい。
【0084】
【0085】
一般式(II)中、n21は1以上の整数である。R21は「n21」価の有機基である。
【0086】
(R21)
一般式(II)中、R21としては、炭素数3以上85以下の有機基が好ましく、炭素数3以上30以下の有機基がより好ましい。
R21における有機基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合してなる基である。具体的なR21としては、例えば、環式炭化水素基、非環式炭化水素基、非環式炭化水素基と1種以上の環式基とが結合した基、及び、これらの基が特定の非金属原子と共有結合している基等が挙げられる。前記環式基としては、例えば、環式炭化水素基、ヘテロ環基、ヘテロ環式スピロ基、ヘテロ架橋環基等が挙げられる。前記環式炭化水素基としては、例えば、単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基等が挙げられる。前記非金属原子としては、例えば、炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素等が挙げられる。
【0087】
なお、「特定の非金属原子と共有結合している」とは、例えば、上記例示した基が、下記式((II)-1a)~((II)-1m)で表される基と共有結合している状態である。
【0088】
【0089】
(n21)
一般式(II)中、製造の容易性や取り扱いの容易性を考慮すると、n21は、1以上5以下の整数が好ましく、2又は3がより好ましく、3がさらに好ましい。
【0090】
アミン化合物(II)において、n21が2である2官能のアミン(すなわち、一分子中に2個の一級アミノ基を有する化合物)である場合、好ましいアミン化合物(II)としては、例えば、炭素数4以上30以下の脂肪族ジアミン、炭素数8以上30以下の脂環族ジアミン、炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するジアミン等が挙げられる。
炭素数4以上30以下の脂肪族ジアミンとして具体的には、例えば、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,4-ジアミノ2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,6-ジアミノ2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン、リジンメチルエステルジアミン、リジンエチルエステルジアミン等が挙げられる。
炭素数8以上30以下の脂環族ジアミンとして具体的には、例えば、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミンメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、水添テトラメチルキシリレンジアミン、ノルボルネンジアミン等が挙げられる。
炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するジアミンとして具体的には、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,6-トリレンジアミン、キシリレンジアミン、テトラメチルキシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられる。
なお、上記例示した化合物に構造異性体が存在する場合は、その構造異性体も好ましいアミン化合物(II)の例示に含まれる。
また、これら化合物は、好ましいアミン化合物(II)の一例に過ぎず、好ましいアミン化合物(II)はこれに限定されない。
【0091】
また、3分子の上記2官能のアミンが、イソシアヌレート環構造やビウレット結合等を介して3量体化した化合物を3官能のアミンとして用いることもできる。
【0092】
1-1)アミン化合物(II-1)
アミン化合物(II)において、n21が3である3官能のアミン(すなわち、一分子中に3個の一級アミノ基を有する化合物)である場合、好ましいアミン化合物(II)としては、例えば、下記一般式(II-1)で表されるアミン化合物(以下、「アミン化合物(II-1)」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、この化合物は、好ましいアミン化合物(II)の一例に過ぎず、好ましいアミン化合物(II)はこれに限定されない。
【0093】
【0094】
一般式(II-1)中、複数存在するY211は、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル基及びエーテル基からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基である。複数存在するY211は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。R211は、水素原子又は炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。
【0095】
(R211)
一般式(II-1)中、R211としては、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基が好ましい。R211における炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基等が挙げられる。R211における炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素基として具体的には、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基等が挙げられる。
【0096】
(Y211)
一般式(II-1)中、好ましいY211としては、例えば、炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基、炭素数2以上20以下であって脂肪族炭化水素基と脂肪族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数2以上20以下であって脂肪族炭化水素基と脂肪族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基、炭素数7以上20以下であって脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数7以上20以下であって脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基、炭素数14以上20以下であって芳香族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエステル基を介して結合した2価の基、炭素数14以上20以下であって芳香族炭化水素基と芳香族炭化水素基とがエーテル基を介して結合した2価の基が挙げられる。
【0097】
好ましいアミン化合物(II-1)としては、例えば、Y211が炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基である化合物、Y211が炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基である化合物、下記一般式(II-1-1)で表される化合物(以下、「化合物(II-1-1)」と称する場合がある)、下記一般式(II-1-2)で表される化合物(以下、「化合物(II-1-2)」と称する場合がある)、及び、下記一般式(II-1-3)で表される化合物等が挙げられる。
【0098】
Y211が炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基である化合物として具体的には、例えば、1,8-ジアミン4-アミンメチルオクタン、1,3,6-トリアミンヘキサン、1,8-ジアミノ4-(アミノメチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,5-ジアミノ3-(アミノメチル)ペンタン、1,6,11-トリアミノンデカン、1,4,7-トリアミノヘプタン、1,2,2-トリアミノブタン、1,2,6-トリアミノヘキサン、1-アミノ2,2-ビス(アミノメチル)ブタン、1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、1,7-ジアミノ4-(3-アミノプロピル)ヘプタン、1,3-ジアミノ2-(アミノメチル)-2-メチルプロパン等が挙げられる。
【0099】
Y211が炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基である化合物として具体的には、例えば、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,3,5-トリアミノ2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノプロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノプロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノメチル)-2-メチルベンゼン、2,2’-((2-アミノ1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス(アミンベンゼン)等を挙げることができる。
【0100】
【0101】
一般式(II-1-1)中、m211、m212及びm213はそれぞれ独立に、0又は1である。n211、n214及びn216はそれぞれ独立に、1以上4以下の整数である。n212、n213及びn215はそれぞれ独立に、0以上5以下の整数である。
【0102】
【0103】
一般式(II-1-2)中、R221は炭素数1以上4以下の1価の炭化水素基である。n221、n222及びn224はそれぞれ独立に、1以上6以下の整数であり、n221、n222及びn224の和は3以上18以下である。n223は0以上3以下の整数である。
【0104】
【0105】
一般式(II-1-3)中、R231、R232及びR233はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。Y231、Y232及びY233はそれぞれ独立に、単結合、又は、エステル基及びエーテル基からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基である。
【0106】
1-1-1)化合物(II-1-1)
化合物(II-1-1)は上記一般式(II-1-1)で表される化合物である。
【0107】
(m211、m212及びm213)
一般式(II-1-1)中、m211、m212及びm213はそれぞれ独立に0又は1である。中でも、m211及びm213が0であり、且つ、m212が1であることが好ましい。
【0108】
(n211、n212、n213、n214、n215及びn216)
n211、n214及びn216はそれぞれ独立に、1以上4以下の整数である。なお、m211、m212及びm213が0である場合、n211、n214及びn216は存在しない。中でも、n211及びn216が存在せず(m211及びm213が0であり)、且つ、n214が2以上4以下の整数であることが好ましい。
n212、n213及びn215はそれぞれ独立に、0以上5以下の整数である。中でも、n212が1以上4以下の整数であり、且つ、n213及びn215が0であることが好ましく、n212が3以上4以下の整数であり、且つ、n213及びn215が0であることがより好ましい。
【0109】
好ましい化合物(II-1-1)としては、例えば、1,2,3-プロパントリアミン(一般式(II-1-1)中、m211=m212=m213=0、n212=n213=1、n215=0)、トリス(2-アミノエチル)アミン(一般式(II-1-1)中、m211=m212=m213=0、n212=n213=n215=2)、1,6,11-トリアミノンデカン(一般式(II-1-1)中、m211=m212=m213=0、n212=n213=5、n215=0)、1,3,6-ヘキサメチレントリアミン(一般式(II-1-1)中、m211=m212=m213=0、n212=3、n213=2、n215=0)、1,8-ジアミノ4-(アミノメチル)オクタン(一般式(II-1-1)中、m211=m212=m213=0、n212=4、n213=1、n215=3)、2-アミノエチル-2,5-ジアミノペンタノエート(一般式(II-1-1)中、m211=m213=0、m212=1、n212=3、n213=n215=0、n214=2)、ビス(2-アミノエチル)-2-アミノブタンジオエート(一般式(II-1-1)中、m211=m212=1、m213=0、n211=n214=2、n212=1、n213=n215=0)、ビス(2-アミノエチル)-2-アミノペンタンジオエート(一般式(II-1-1)中、m211=m212=1、m213=0、n211=n214=2、n212=2、n213=n215=0)、トリス(2-アミノエチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート(一般式(II-1-1)中、m211=m212=m213=1、n211=n214=n216=2、n212=3、n213=2、n215=0)、下記一般式(II-1-1-1)で表される脂肪族アミン(以下、「脂肪族アミン(II-1-1-1)」と称する場合がある)(一般式(II-1-1)中、m211=m213=0、m212=1、n212=4、n213=n215=0)等が挙げられる。中でも、化合物(II-1-1)としては、脂肪族アミン(II-1-1-1)が好ましい。
【0110】
【0111】
一般式(II-1-1-1)中、n217は2以上4以下の整数である。
【0112】
1-1-1-1)脂肪族アミン(II-1-1-1)
脂肪族アミン(II-1-1-1)は、上記一般式(II-1-1-1)で表される化合物である。
【0113】
(n217)
一般式(II-1-1-1)中、n217は2以上4以下の整数であり、1又は2が好ましく、2がより好ましい。すなわち、(CH2)n217は、炭素数2以上4以下のアルキレン基であり、炭素数2以上4以下の直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基であることが好ましい。このようなアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられ、中でも、エチレン基が好ましい。
【0114】
好ましい脂肪族アミン(II-1-1-1)としては、例えば、2-アミノエチル-2,6-ジアミノヘキサノエート(一般式(II-1-1-1)中、n217=2)等が挙げられる。
【0115】
1-1-2)化合物(II-1-2)
化合物(II-1-2)は上記一般式(II-1-2)で表される化合物である。
【0116】
(R221)
一般式(II-1-2)中、R221は炭素数1以上4以下の1価の炭化水素基であり、該炭化水素基は、鎖状であってもよく、環状であってもよいが、鎖状であることが好ましい。該炭化水素基が鎖状である場合、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このようなR221としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。中でも、R221としては、メチル基、エチル基又はイソプロピル基が好ましい。
【0117】
(n221、n222、n223及びn224)
n221、n222及びn224はそれぞれ独立に1以上6以下の整数であり、n221、n222及びn224の和は3以上18以下である。n223は0以上3以下の整数である。中でも、n221、n222及びn224が1であり、且つ、n223が0又は1であることが好ましい。
【0118】
好ましい化合物(II-1-2)としては、例えば、下記式(II-1-2-1)で表される化合物等が挙げられる。
【0119】
【0120】
1-1-3)化合物(II-1-3)
化合物(II-1-3)は上記一般式(II-1-3)で表される化合物である。
【0121】
(R231、R232及びR233)
一般式(II-1-3)中、R231、R232及びR233はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基である。R231、R232及びR233における炭素数1以上12以下の1価の炭化水素基としては、上記R211において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0122】
(Y231、Y232及びY233)
Y231、Y232及びY233はそれぞれ独立に、単結合、又は、エステル基及びエーテル基からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基である。Y231、Y232及びY233におけるエステル基及びエーテル基からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基としては、上記Y211において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0123】
好ましい化合物(II-1-3)としては、例えば、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,3,5-トリアミノ2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノプロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノプロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノメチル)-2-メチルベンゼン、2,2’-((2-アミノ1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス(アミンベンゼン)等が挙げられる。
【0124】
1-2)アミノ酸(II-2)及びアミノ酸エステル(II-3)
また、アミン化合物(II)において、n21が1である1官能のアミン(すなわち、一分子中に1個の一級アミノ基を有する化合物)である場合、下記一般式(II-2)で表されるα-アミノ酸(以下、「アミノ酸(II-2)」と称する場合がある)及び下記一般式(II-3)で表されるα-アミノ酸エステル(以下、「アミノ酸エステル(II-3)」と称する場合がある)のうち少なくともいずれか1種であってもよい。
なお、α-アミノ酸では、α炭素へのアミノ基やカルボキシル基等の結合様式が立体的に2通り可能であり、それぞれ、D型、L型の光学異性体として区別される。上記アミノ酸(及びアミノ酸エステル等のアミノ酸骨核を有する化合物)は、D型であってもよく、L型であってもよく、その混合物やラセミ体であってもよい。工業的に安価に入手できる多くのアミノ酸は、発酵で生産されるアミノ酸で、L型であることがほとんどであるが、それらは好ましく使用できる。本明細書中では、立体配置を示していないが、D型及びL型のいずれかを示している。
【0125】
【0126】
一般式(II-2)中、R251は水素原子又は1価の有機基である。
【0127】
【0128】
一般式(II-3)中、R252及びR253はそれぞれ独立に、1価の有機基である。
【0129】
1-2-1)アミノ酸(II-2)
アミノ酸(II-2)は、上記一般式(II-2)で表される化合物である。
【0130】
(R251)
一般式(II-2)中、R251は1価の有機基である。
前記1価の有機基としては、炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上20以下の1価の芳香族炭化水素基が好ましい。
前記炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基としては、鎖状であってもよく、環状であってもよい。炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基が鎖状である場合、直鎖状でもよく、分岐鎖状であってもよい。鎖状の脂肪族炭化水素基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基が環状である場合、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂肪族炭化水素基として具体的には、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂肪族炭化水素基として具体的には、例えば、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
前記炭素数6以上20以下の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基(各異性体)、エチルフェニル基(各異性体)、プロピルフェニル基(各異性体)、ブチルフェニル基(各異性体)、ペンチルフェニル基(各異性体)、ヘキシルフェニル基(各異性体)、ジメチルフェニル基(各異性体)、メチルエチルフェニル基(各異性体)、メチルプロピルフェニル基(各異性体)、メチルブチルフェニル基(各異性体)、メチルペンチルフェニル基(各異性体)、ジエチルフェニル基(各異性体)、エチルプロピルフェニル基(各異性体)、エチルブチルフェニル基(各異性体)、ジプロピルフェニル基(各異性体)、トリメチルフェニル基(各異性体)、トリエチルフェニル基(各異性体)、ナフチル基(各異性体)等が挙げられる。
また、R251における上記炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基、及び、上記炭素数6以上20以下の1価の芳香族炭化水素基は、これら基を構成する水素原子のうち、少なくとも1個がアミノ基、グアジニノ基、水酸基、チオール基、カルボキシ基、カルボキサミド基、複素環基等の官能基に置換されていてもよい。複素環基としては、例えば、インドール環基、イミダゾール環基、ピロリジン環基等が挙げられる。また、R251における上記炭素数1以上20以下の1価の脂肪族炭化水素基、及び、上記炭素数6以上20以下の1価の芳香族炭化水素基は、これら基を構成する炭素原子が硫黄原子に置換されていてよく、また、炭素-炭素結合がジスルフィド結合に置換されていてもよい。
【0131】
好ましいアミノ酸(II-2)としては、例えば、リジン、アルギニン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。
【0132】
1-2-2)アミノ酸エステル(II-3)
アミノ酸エステル(II-3)は、上記一般式(II-3)で表される化合物である。
【0133】
(R252及びR253)
一般式(II-3)中、R252及びR253はそれぞれ独立に、1価の有機基である。
R252及びR253としては、上記R251において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0134】
好ましいアミノ酸エステル(II-3)としては、例えば、下記式(II-3-1)で表される化合物、下記式(II-3-2)で表される化合物等が挙げられ、公知の手法でエステル化することが好ましい形態の一つである。また、このエステルを形成せしめる工程は、前記工程(1)の前、または後にあっても好ましい態様の一つである。エステル化することで、対応するアミノ酸のカルボキシル基が保護された状態となり、基質として用いた時の基質安定性が向上する。
【0135】
【0136】
また、アミノ酸(II-2)及びアミノ酸エステル(II-3)に含有されるアミノ基は、酸と塩を形成していてもよい。例えば、無機酸との塩である場合、無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等を挙げられる。
【0137】
また、アミノ酸(II-2)に含有されるカルボキシ基は、塩基と塩を形成していてもよい。例えば、無機塩基との塩である場合、無機塩基としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。有機塩基との塩である場合、有機塩基としては、例えば、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アンモニア等を挙げられる。第1級アミンとしては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン等が挙げられる。第2級アミンとしては、例えば、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、イミダゾール等が挙げられる。第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
工程(1)で用いられる有機第1級アミンとしては、一分子中に少なくとも1個のアミノ基を有するものであればよく、2個のアミノ基を有するものであればより好ましく、2個のアミノ基を有するものであれば更に好ましい。一分子当たりに有するアミノ基が多い事により、当該有機第1級アミンに対応するイソシアネート化合物をポリウレタンフォーム、塗料、接着剤等の製造原料として使用した際の機能(例えば、ポリウレタンフォームの硬度)を向上させることができる。
【0138】
[二酸化炭素及び炭酸誘導体]
工程(1)で用いられる二酸化炭素としては、工業用途で通常用いられるグレードのものであって、気体状態のものであればよく、特別な限定はない。
また、本明細書において、「炭酸誘導体」とは、カルボニル基(-C(=O)-)を有する化合物全般を指す。工程(1)で用いられる炭酸誘導体としては、N-無置換カルバミン酸エステル、N,N’-ジ置換尿素、N-置換尿素及び尿素のうち少なくともいずれか1種が好ましい。
【0139】
(N-無置換カルバミン酸エステル)
N-無置換カルバミン酸エステルとしては、下記一般式(III-1)で表される化合物(以下、「化合物(III-1)」と称する場合がある)が好ましい。
【0140】
【0141】
一般式(III-1)中、R31は、酸素原子を含んでもよい、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上20以下の芳香族脂肪族基である。
【0142】
一般式(III-1)中、R31が脂肪族炭化水素基である場合、該脂肪族炭化水素基としては、例えば、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、及び、上記鎖状炭化水素基と上記環状炭化水素基とが結合した基等が挙げられる。上記鎖状炭化水素基と上記環状炭化水素基とが結合した基としては、例えば、水素原子のうち少なくとも1個が鎖状炭化水素基で置換された環状炭化水素基、水素原子のうち少なくとも1個が環状炭化水素基で置換された鎖状炭化水素基(アラルキル基)等が挙げられる。
アラルキル基として具体的には、例えば、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が、芳香族炭化水素基で置換された基が挙げられ、炭素数1以上14以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が炭素数6以上19以下の芳香族炭化水素基で置換された基であることが好ましい。
【0143】
R31が芳香族基炭化水素基である場合、該芳香族炭化水素基としては、例えば、単環式芳香族炭化水素基、縮合多環式芳香族炭化水素基、架橋環式芳香族炭化水素基、環集合芳香族炭化水素基、ヘテロ環式芳香族炭化水素基等が挙げられ、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、又は、置換若しくは無置換のアントリル基が好ましい。
置換基としては、例えば、水素原子、上記脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素基等が挙げられ、置換基は、上記脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とで構成される基であってもよい。
【0144】
中でも、R31としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基又は炭素数7以上20以下のアラルキル基が好ましい。
炭素数が1以上20以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。炭素数が6以上20以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、クミルフェニル基、ビフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジブチルフェニル基、ジペンチルフェニル基、ジヘキシルフェニル基、ジヘプチルフェニル基、ターフェニル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、トリプロピルフェニル基、トリブチルフェニル基等が挙げられる。炭素数が7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基等が挙げられる。
【0145】
中でも、R31としては、炭素数1以上8以下のアルキル基又は炭素数6以上15以下のアリール基がより好ましい。炭素数1以上8以下のアルキル基メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。炭素数6以上15以下のアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、クミルフェニル基、ビフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、ジペンチルフェニル基等が挙げられる。
【0146】
好ましい化合物(III-1)として具体的に、例えば、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸プロピル、カルバミン酸ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸ヘプチル、カルバミン酸オクチル、カルバミン酸ノニル、カルバミン酸デシル、カルバミン酸ウンデシル、カルバミン酸ドデシル、カルバミン酸トリデシル、カルバミン酸テトラデシル、カルバミン酸ペンタデシル、カルバミン酸ヘキサデシル、カルバミン酸ヘプタデシル、カルバミン酸オクタデシル、カルバミン酸ノナデシル、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸(メチルフェニル)、カルバミン酸(エチルフェニル)、カルバミン酸(プロピルフェニル)、カルバミン酸(ブチルフェニル)、カルバミン酸(ペンチルフェニル)、カルバミン酸(ヘキシルフェニル)、カルバミン酸(ヘプチルフェニル)、カルバミン酸(オクチルフェニル)、カルバミン酸(ノニルフェニル)、カルバミン酸(デシルフェニル)、カルバミン酸(ビフェニル)、カルバミン酸(ジメチルフェニル)、カルバミン酸(ジエチルフェニル)、カルバミン酸(ジプロピルフェニル)、カルバミン酸(ジブチルフェニル)、カルバミン酸(ジペンチルフェニル)、カルバミン酸(ジヘキシルフェニル)、カルバミン酸(ジヘプチルフェニル)、カルバミン酸(ターフェニル)、カルバミン酸(トリメチルフェニル)、カルバミン酸(トリエチルフェニル)、カルバミン酸(トリプロピルフェニル)、カルバミン酸(トリブチルフェニル)、カルバミン酸(フェニルメチル、カルバミン酸(フェニルエチル)、カルバミン酸(フェニルプロピル)、カルバミン酸(フェニルブチル)、カルバミン酸(フェニルペンチル)、カルバミン酸(フェニルヘキシル)、カルバミン酸(フェニルヘプチル)、カルバミン酸(フェニルオクチル)、カルバミン酸(フェニルノニル)等を挙げられる。
【0147】
(N,N’-ジ置換尿素、N-置換尿素)
N,N’-ジ置換尿素としては、下記一般式(III-2)で表される化合物(以下、「化合物(III-2)」と称する場合がある)が好ましい。
【0148】
【0149】
一般式(III-2)中、R32及びR33はそれぞれ独立に、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は水素原子である。R32及びR33は同時に水素原子とならない。
【0150】
R32及びR33における炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基及び炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基としては、上記R31において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、R32及びR33としては、炭素数1以上8以下のアルキル基又は炭素数6以上14以下のアラルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、クミルフェニル基、ビフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジプロピルフェニル基又はジペンチルフェニル基がより好ましい。
【0151】
[炭酸エステル]
工程(2)で用いられる炭酸エステルは、下記一般式(IV)で表される化合物(以下、「化合物(IV)」と称する場合がある)が好ましい。
【0152】
【0153】
一般式(IV)中、複数存在するR41は、それぞれ独立に、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基である。複数存在するR81は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、複数存在するR41は、同一であることが好ましい。
【0154】
(R41)
R41における1価の有機基としては、上記R21において1価の有機基として例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0155】
化合物(IV)で好ましいものとしては、例えば、下記一般式(IV-1)で表される炭酸ジアリール(以下、「炭酸ジアリール(IV-1)」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、この化合物は、好ましい化合物(IV)の一例に過ぎず、好ましい化合物(IV)はこれに限定されない。
【0156】
【0157】
一般式(IV-1)中、複数存在するR411はそれぞれ独立に、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基である。
【0158】
R411としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基であり、炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6以上8以下の芳香族炭化水素基がより好ましい。このようなR411として具体的には、上記R251において炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基として例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0159】
炭酸ジアリール(IV-1)で好ましいものとしては、R411が炭素数6以上8以下の芳香族炭化水素基である炭酸ジアリール等が挙げられる。このような炭酸ジアリール(IV-1)として具体的には、例えば、炭酸ジフェニル、炭酸ジ(メチルフェニル)(各異性体)、炭酸ジ(ジエチルフェニル)(各異性体)、炭酸ジ(メチルエチルフェニル)(各異性体)等が挙げられる。
なお、これら化合物は、好ましい炭酸ジアリール(IV-1)の一例に過ぎず、好ましい炭酸ジアリール(IV-1)はこれに限定されない。
【0160】
また、炭酸エステルは、金属原子を含有していてもよい。炭酸エステルの質量に対する金属原子の含有量は、0.001ppm以上100,000ppm以下の範囲が好ましく、0.001ppm以上50,000ppm以下の範囲がより好ましく、0.002ppm以上30,000ppm以下の範囲がさらに好ましい。
また、該金属原子は、金属イオンとして存在していてもよく、金属原子単体として存在していてもよい。中でも、金属原子としては、2価以上4価以下の原子価をとりうる金属原子が好ましく、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、銅及びチタンからなる群より選ばれる1種以上の金属がより好ましい。
【0161】
炭酸エステルの製造方法としては、公知の方法を用いることができる。中でも、国際公開第2009/139061号(特許文献8)に記載されている、スズ-酸素-炭素結合を有する有機スズ化合物と二酸化炭素とを反応させて脂肪族炭酸エステルを製造し、該脂肪族炭酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とから芳香族炭酸エステル(すなわち、炭酸ジアリール)を製造する方法が好ましい。
【0162】
[カルバメート]1)カルバメート(V)
本実施形態の製造方法で得られるカルバメートは、下記一般式(V)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(V)」と称する場合がある)であることが好ましい。
【0163】
【0164】
一般式(V)中、n51は、上記n21と同じである。R51は上記R21と同じである。R52は上記R51と同じである。
【0165】
カルバメート(V)において、n51が2である2官能のカルバメート(すなわち、一分子中に2個のカルバメート基を有する化合物)である場合、好ましいカルバメート(V)としては、例えば、炭素数4以上30以下の脂肪族ジカルバメート、炭素数8以上30以下の脂環族ジカルバメート、炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するジカルバメート等が挙げられる。
【0166】
炭素数4以上30以下の脂肪族ジカルバメートとして具体体的には、例えば、1,4-テトラメチレンジ、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸メチルエステル)2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸メチルエステル)2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸メチルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,4-テトラメチレンジ、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸エチルエステル)2-エチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸エチルエステル)2,5-ジエチルヘキサン、2,2,4-トリエチル1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸エチルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,4-テトラメチレンジ、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)2-ブチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)2,5-ジブチルヘキサン、2,2,4-トリブチル1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、リジンブチルエステルジ(カルバミン酸ブチルエステル)、リジンブチルエステルジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,4-テトラメチレンジ、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)2-フェニルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)2,5-ジフェニルヘキサン、2,2,4-トリフェニル1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、リジンフェニルエステルジ(カルバミン酸フェニルエステル)、リジンフェニルエステルジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,4-テトラメチレンジ、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)2-ジメチルフェニルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)2,5-ジジメチルフェニルヘキサン、2,2,4-トリジメチルフェニル1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、リジンジメチルフェニルエステルジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、リジンジメチルフェニルエステルジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、1,4-テトラメチレンジ、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸ジブチルフェニルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸ジブチルフェニルエステル)2-ジブチルフェニルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ジブチルフェニルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸ジブチルフェニルエステル)2,5-ジジブチルフェニルヘキサン、2,2,4-トリジブチルフェニル1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ジブチルフェニルエステル)、リジンジブチルフェニルエステルジ(カルバミン酸ジブチルフェニルエステル)、リジンジブチルフェニルエステルジ(カルバミン酸ジブチルフェニルエステル)等が挙げられる。
【0167】
炭素数8以上30以下の脂環族ジカルバメートとして具体的には、例えば、イソホロンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸メチルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸メチルエステル)、水添テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸メチルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸エチルエステル)エチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸エチルエステル)、水添テトラエチルキシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸エチルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸ブチルエステル)ブチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、水添テトラブチルキシリレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸フェニルエステル)フェニル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、水添テトラフェニルキシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ジメチルフェニル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、水添テトラジメチルフェニルキシリレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)等が挙げられる。
【0168】
炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するジカルバメートとして具体的には、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸メチルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸エチルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、テトラエチルキシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、テトラブチルキシリレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、テトラフェニルキシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、4,4’-ジジメチルフェニルメタンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、テトラジメチルフェニルキシリレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)等が挙げられる。
【0169】
なお、上記例示した化合物に構造異性体が存在する場合は、その構造異性体も好ましいカルバメート(V)の例示に含まれる。
また、これら化合物は、好ましいカルバメート(V)の一例に過ぎず、好ましいカルバメート(V)はこれに限定されない。
【0170】
1-1)カルバメート(V-1)
カルバメート(V)において、n51が3である3官能のカルバメート(すなわち、一分子中に3個のカルバメート基を有する化合物)である場合、好ましいカルバメート(V)としては、例えば、下記一般式(V-1)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(V-1)」と称する場合がある)等が挙げられる。
なお、この化合物は、好ましいカルバメート(V)の一例に過ぎず、好ましいカルバメート(V)はこれに限定されない。
【0171】
【0172】
一般式(V-1)中、複数存在するY511及びR512、並びに、R511は、それぞれ上記Y211及び上記R41、並びに、上記R211と同じである。
【0173】
好ましいカルバメート(V-1)としては、例えば、Y511が炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基である化合物、Y511が炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基である化合物、下記一般式(V-1-1)で表される化合物(以下、「化合物(V-1-1)」と称する場合がある)、下記一般式(V-1-2)で表される化合物(以下、「化合物(V-1-2)」と称する場合がある)、下記一般式(V-1-3)で表される化合物(以下、「化合物(V-1-3)」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0174】
【0175】
一般式(V-1-1)中、複数存在するR513は、上記R41と同じである。m511、m512及びm513はそれぞれ、上記m211、上記m212及び上記m213と同じである。n511、n512、n513、n514、n515及びn516はそれぞれ、上記n211、上記n212、上記n213、上記n214、上記n215及び上記n216と同じである。
【0176】
【0177】
一般式(V-1-2)中、R521及び複数存在するR522はそれぞれ、上記R251及び上記R41と同じである。n521、n522、n523及びn524はそれぞれ、上記n221、上記n222、上記n223及び上記n224と同じである。
【0178】
【0179】
一般式(V-1-3)中、R531、R532、R533及び複数存在するR534はそれぞれ、上記R231、上記R232、上記R233及び上記R41と同じである。Y231、Y232及びY233はそれぞれ、上記Y231、上記Y232及び上記Y233と同じである。
【0180】
Y511が炭素数1以上20以下の2価の脂肪族炭化水素基である化合物として具体的には、例えば、1,8-ジ(カルバミン酸メチルエステル)4-(カルバミン酸メチルエステル)メチルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸メチルエステル)4-((カルバミン酸メチルエステル)メチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸メチルエステル)3-((カルバミン酸メチルエステル)メチル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ンデカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸メチルエステル)2,2-ビス((カルバミン酸メチルエステル)メチル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸メチルエステル)4-(3-(カルバミン酸メチルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸メチルエステル)2-((カルバミン酸メチルエステル)メチル)-2-メチルプロパン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルエステル)2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸メチルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸メチルエステル)ベンゼン)、1,8-ジ(カルバミン酸エチルエステル)4-(カルバミン酸エチルエステル)エチルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸エチルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸エチルエステル)4-((カルバミン酸エチルエステル)エチル)-2,4,7-トリエチルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸エチルエステル)3-((カルバミン酸エチルエステル)エチル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸エチルエステル)ンデカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸エチルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸エチルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸エチルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸エチルエステル)2,2-ビス((カルバミン酸エチルエステル)エチル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸エチルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸エチルエステル)4-(3-(カルバミン酸エチルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸エチルエステル)2-((カルバミン酸エチルエステル)エチル)-2-エチルプロパン、1,3,5-トリ(カルバミン酸エチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸エチルエステル)2-エチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)プロパン-2-イル)-2-エチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)エチル)-2-エチルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸エチルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸エチルエステル)ベンゼン)、1,8-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)4-(カルバミン酸ブチルエステル)ブチルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)4-((カルバミン酸ブチルエステル)ブチル)-2,4,7-トリブチルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)3-((カルバミン酸ブチルエステル)ブチル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ンデカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸ブチルエステル)2,2-ビス((カルバミン酸ブチルエステル)ブチル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)4-(3-(カルバミン酸ブチルエステル)プロピル)ヘプタン等が挙げられる。
【0181】
Y511が炭素数6以上20以下の2価の芳香族炭化水素基である化合物として具体的には、例えば、1,3-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)2-((カルバミン酸ブチルエステル)ブチル)-2-ブチルプロパン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)2-ブチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)プロパン-2-イル)-2-ブチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)ブチル)-2-ブチルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸ブチルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸ブチルエステル)ベンゼン)、1,8-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)4-(カルバミン酸フェニルエステル)フェニルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)4-((カルバミン酸フェニルエステル)フェニル)-2,4,7-トリフェニルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)3-((カルバミン酸フェニルエステル)フェニル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ンデカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸フェニルエステル)2,2-ビス((カルバミン酸フェニルエステル)フェニル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)4-(3-(カルバミン酸フェニルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)2-((カルバミン酸フェニルエステル)フェニル)-2-フェニルプロパン、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)2-フェニルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)プロパン-2-イル)-2-フェニルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)フェニル)-2-フェニルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸フェニルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸フェニルエステル)ベンゼン)、1,8-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)4-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ジメチルフェニルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)4-((カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ジメチルフェニル)-2,4,7-トリジメチルフェニルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)3-((カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ジメチルフェニル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ンデカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)2,2-ビス((カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ジメチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)4-(3-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)2-((カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ジメチルフェニル)-2-ジメチルフェニルプロパン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)2-ジメチルフェニルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)プロパン-2-イル)-2-ジメチルフェニルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ジメチルフェニル)-2-ジメチルフェニルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ベンゼン)等が挙げられる。
【0182】
1-1-1)化合物(V-1-1)
好ましい化合物(V-1-1)として具体例には、例えば、以下に示すものが挙げられる。・一般式(V-1-1)中、m511=m512=m513=0、n512=n513=1、n515=0
1,2,3-プロパントリ(カルバミン酸エチルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
1,2,3-プロパントリ(カルバミン酸メチルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
1,2,3-プロパントリ(カルバミン酸ブチルエステル))(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
1,2,3-プロパントリ(カルバミン酸フェニルエステル))(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
1,2,3-プロパントリ(カルバミンジメチルフェニルエステル))(一般式(V-1-1)中、R511がジメチルフェニル基)
【0183】
・一般式(V-1-1)中、m511=m512=m513=0、n512=n513=n515=2である
トリス(2-(カルバミン酸エチルエステル)エチル)(カルバミン酸エチルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
トリス(2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル)(カルバミン酸メチルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
トリス(2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル)(カルバミン酸ブチルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
トリス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)(カルバミン酸フェニルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
トリス(2-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)エチル)(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がジメチルフェニル基)
【0184】
・一般式(V-1-1)中、m511=m512=m513=0、n512=n513=5、n515=0
1,6,11-トリ(カルバミン酸エチルエステル)デカン(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
1,6,11-トリ(カルバミン酸メチルエステル)デカン(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
1,6,11-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)デカン(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
1,6,11-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)デカン(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
1,6,11-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)デカン(一般式(V-1-1)中、R511がジメチルフェニル基)
【0185】
・一般式(V-1-1)中、m511=m512=m513=0、n512=3、n513=2、n515=0
1,3,6-ヘキサメチレントリ(カルバミン酸エチルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
1,3,6-ヘキサメチレントリ(カルバミン酸メチルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
1,3,6-ヘキサメチレントリ(カルバミン酸ブチルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
1,3,6-ヘキサメチレントリ(カルバミン酸フェニルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
1,3,6-ヘキサメチレントリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)(一般式(V-1-1)中、R511がジメチルフェニル基)
【0186】
・一般式(V-1-1)中、m511=m512=m513=0、n512=4、n513=1、n515=3
1,8-ジ(カルバミン酸エチルエステル)4-((カルバミン酸エチルエステル)エチル)オクタン(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
1,8-ジ(カルバミン酸メチルエステル)4-((カルバミン酸メチルエステル)エチル)オクタン(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
1,8-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)4-((カルバミン酸ブチルエステル)エチル)オクタン(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
1,8-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)4-((カルバミン酸フェニルエステル)エチル)オクタン(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
1,8-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)4-((カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)エチル)オクタン(一般式(V-1-1)中、R511がジメチルフェニル基)
【0187】
・一般式(V-1-1)中、m511=m513=0、m512=1、n512=3、n513=n515=0、n514=2
2-(カルバミン酸エチルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸エチルエステル)ペンタノエート(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸メチルエステル)ペンタノエート(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)ペンタノエート(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ペンタノエート(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
2-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ペンタノエート(一般式(V-1-1)中、R511がジメチルフェニル基)
【0188】
・一般式(V-1-1)中、m511=m512=1、m513=0、n511=n514=2、n512=1、n513=n515=0
ビス(2-(カルバミン酸エチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸エチルエステル)ブタンジオエート(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
ビス(2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸メチルエステル)ブタンジオエート(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
ビス(2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸ブチルエステル)ブタンジオエート(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
ビス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸フェニルエステル)ブタンジオエート(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
【0189】
・一般式(V-1-1)中、m511=m512=1、m513=0、n511=n514=2、n512=2、n513=n515=0
ビス(2-(カルバミン酸エチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸エチルエステル)ペンタンジオエート(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
ビス(2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸メチルエステル)ペンタンジオエート(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
ビス(2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸ブチルエステル)ペンタンジオエート(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
ビス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸フェニルエステル)ペンタンジオエート(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
【0190】
・一般式(V-1-1)中、m511=m512=m513=1、n511=n514=n516=2、n512=3、n513=2、n515=0
トリス(2-(カルバミン酸エチルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート(一般式(V-1-1)中、R511がエチル基)
トリス(2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート(一般式(V-1-1)中、R511がメチル基)
トリス(2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート(一般式(V-1-1)中、R511がブチル基)
トリス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート(一般式(V-1-1)中、R511がフェニル基)
【0191】
・一般式(V-1-1)中、m511=m513=0、m512=1、n512=4、n513=n515=0
下記一般式(V-1-1-1)で表される脂肪族カルバメート(以下、「脂肪族カルバメート(V-1-1-1)」と称する場合がある)
【0192】
【0193】
(一般式(V-1-1-1)中、R514及びn517はそれぞれ上記R41及びn217と同じである。)
【0194】
中でも、化合物(V-1-1)としては、脂肪族カルバメート(V-1-1-1)が好ましい。
好ましい脂肪族カルバメート(V-1-1-1)としては、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。・一般式(V-1-1-1)中、n517=2
2、2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸メチルエステル)ヘキサノエート(一般式(V-1-1-1)中、R514がメチル基)
2-(カルバミン酸エチルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸エチルエステル)ヘキサノエート(一般式(V-1-1-1)中、R514がエチル基)
2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘキサノエート(一般式(V-1-1-1)中、R514がブチル基)
2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサノエート(一般式(V-1-1-1)中、R514がフェニル基)
2-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ヘキサノエート(一般式(V-1-1-1)中、R514がジメチルフェニル基)
【0195】
1-1-2)化合物(V-1-2)
化合物(V-1-2)は、上記一般式(V-1-2)で表される化合物である。
好ましい化合物(V-1-2)としては、例えば、下記式(V-1-2-1)で表される化合物等が挙げられる。
【0196】
【0197】
1-1-3)化合物(V-1-3)
化合物(V-1-3)は、上記一般式(V-1-3)で表される化合物である。
好ましい化合物(V-1-3)として具体的には、例えば、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルエステル)2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸メチルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸メチルエステル)ベンゼン)、1,3,5-トリ(カルバミン酸エチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸エチルエステル)2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸エチルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸エチルエステル)ベンゼン)、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸ブチルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸ブチルエステル)ベンゼン)、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸フェニルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸フェニルエステル)ベンゼン)、1,3,5-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、2,2’-((2-(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)1,3-フェニレン)ビス(メチレン))ビス((カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)ベンゼン)等が挙げられる。
【0198】
1-2)カルバメート(V-2)及びカルバメート(V-3)
また、上記アミノ酸(II-2)又は上記アミノ酸エステル(II-3)を使用する場合は、それぞれ下記一般式(V-2)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(V-2)」と称する場合がある)、又は、下記一般式(V-3)で表されるカルバメート(以下、「カルバメート(V-3)」と称する場合がある)が得られる。
【0199】
【0200】
一般式(V-2)中、R551は上記R41と同じである。R552は下記一般式((V-2)-1a)で示される基(以下、「基((V-2)-1a)」と称する場合がある)を含んでもよい1価の有機基である。
【0201】
【0202】
一般式((V-2)-1a)中、R553は上記R41と同じである。
【0203】
【0204】
一般式(V-3)中、R554及びR556はそれぞれ、上記R41及び上記R253と同じである。R555は下記一般式((V-3)-1a)で示される基(以下、「基((V-3)-1a)」と称する場合がある)を含んでもよい1価の有機基である。
【0205】
【0206】
一般式((V-3)-1a)中、R557は上記R41と同じである。
【0207】
1-2-1)カルバメート(V-2)
カルバメート(V-2)は、上記一般式(V-2)で表される化合物である。
【0208】
(R552)
一般式(V-2)中、R552は下記一般式((V-2)-1a)で示される基を含んでもよい1価の有機基である。
カルバメート(V-2)の原料であるアミノ酸(II-2)において、R251がアミノ基を含まない場合、上記基((V-2)-1a)を含まず、R552は上記R251と同じである。
一方、カルバメート(V-2)の原料であるアミノ酸(II-2)において、R552がアミノ基を含む場合、該アミノ基は、化合物(IV)と反応してカルバメート化し、上記基((V-2)-1a)が形成されるため、R552は基((V-2)-1a)を含む1価の有機基である。ここでいう1価の有機基は、上記「R251」で例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0209】
好ましいカルバメート(V-2)としては、例えば、下記式(V-2-1)で表される化合物等が挙げられる。
【0210】
【0211】
1-2-2)カルバメート(V-3)
カルバメート(V-3)は、上記一般式(V-3)で表される化合物である。
【0212】
(R555)
一般式(V-3)中、R555は下記一般式((V-3)-1a)で示される基を含んでもよい1価の有機基である。
カルバメート(V-3)の原料であるアミノ酸エステル(II-3)において、R252がアミノ基を含まない場合、上記基((V-3)-1a)を含まず、R555は上記R252と同じである。
一方、カルバメート(V-3)の原料であるアミノ酸エステル(II-3)において、R252がアミノ基を含む場合、該アミノ基は、化合物(IV)と反応してカルバメート化し、上記基((V-3)-1a)が形成されるため、R555は基((V-3)-1a)を含む1価の有機基である。ここでいう1価の有機基は、上記「R251」で例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0213】
好ましいカルバメート(V-3)としては、例えば、下記式(V-3-1)で表される化合物、下記式(V-3-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0214】
【0215】
≪イソシアネートの製造方法≫
上記製造方法で得られたカルバメートを熱分解反応に付して、イソシアネートを製造することができる。イソシアネートの製造方法として好適な例を以下に示す。
【0216】
熱分解反応は、上記カルバメートから、イソシアネートとヒドロキシ化合物とを生成させる反応である。この反応は液相で行うことが好ましい。用いられる溶媒としては、上記「工程(1)」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0217】
反応温度は、通常100℃以上300℃以下の範囲であり、150℃以上250℃以下の範囲が好ましい。反応温度が上記範囲であることにより、反応速度を高く維持しながら、カルバメート及び生成物であるイソシアネートのうち少なくともいずれか1種によって、副反応が引き起こされることをより効果的に防ぐことができる。反応温度を一定にするために、熱分解反応器には、公知の冷却装置及び加熱装置のうち少なくともいずれかの装置が設置されていてもよい。
また、反応圧力は、用いる化合物の種類や反応温度によって異なるが、減圧、常圧及び加圧のいずれであってもよく、通常1Pa以上1×106Pa以下の範囲で行われる。
反応時間(連続法の場合は滞留時間)に、特に制限はなく、通常、0.001時間以上100時間以下が好ましく、0.005時間以上50時間以下がより好ましく、0.01時間以上10時間以下がさらに好ましい。
【0218】
熱分解反応器の形式に、特に制限はないが、気相成分を効率よく回収するために、公知の蒸留装置を使用することが好ましく、蒸発缶、連続多段蒸留塔、充填塔、薄膜蒸発器及び流下膜蒸発器からなる群より選ばれる少なくとも1つの反応器から構成されることがより好ましい。
これらの他にも、例えば、蒸留塔、多段蒸留塔、多管式反応器、内部に支持体を備えた反応器、強制循環反応器、落膜蒸発器、落滴蒸発器のいずれかを含む反応器を用いる方式、及び、これらを組み合わせた方式等、公知の種々の方法が用いられる。中でも、反応器としては、充填塔又は管型反応器が好ましく、管型反応器がより好ましく、管型薄膜蒸発器又管型流下膜蒸発器等の管型反応器がさらに好ましい。また、これら反応器の内部構造としては、生成する低沸点成分を気相にすみやかに移動させられる気-液接触面積の大きな構造が好ましい。
【0219】
また、充填塔を用いる場合、固体充填材としては、蒸留塔や吸収塔に一般的に使用されている充填材を適宜使用できる。好ましい固体充填材として具体的には、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、スパイラルリング、ボールリング、インターロックスサドル、ステッドマンパッキング、マクマホンパッキング、ディクソンパッキング、ヘリックスパッキング、コイルパッキング、ヒートパイプパッキング等が挙げられる。充填材の材質は、磁製、金属製等特に限定されない。中でも、本実施形態の製造方法で用いられる充填材としては、熱伝導性の高い材質からなる充填材が好ましい。
【0220】
上記カルバメートの製造方法で用いられる反応装置と熱分解反応器とは、同一の種類であってもよく、異なる種類でもよく、上記カルバメートの製造方法で用いられる反応装置と該熱分解反応器とは、塔型反応器及び槽型反応器からなる群より選ばれる少なくとも1つの反応装置であることが好ましい。
【0221】
熱分解反応器及びラインの材質は、該カルバミン酸エステルや生成物である芳香族ヒドロキシ化合物、イソシアネート等に悪影響を及ぼさない公知のものを適宜選択して用いることができるが、例えば、SUS304、SUS316、SUS316L等が安価であり、好ましく使用できる。
【0222】
熱分解反応において、触媒は必ずしも必要ではないが、反応温度を低下させる目的や、反応を早期に完結させるために、触媒を使用することができる。
触媒の使用量は、カルバメートの質量に対して0.01質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
触媒としては、例えば、ルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物、有機スズ化合物、銅族金属を含む化合物、鉛を含む化合物、亜鉛を含む化合物、鉄族金属を含む化合物、アミン類等が挙げられる。
ルイス酸及びルイス酸を生成する遷移金属化合物として具体的には、例えば、AlX3、TiX3、TiX4、VOX3、VX5、ZnX2、FeX3、SnX4等が挙げられる。ここで、「X」は、ハロゲン、アセトキシ基、アルコキシ基又はアリーロキシ基である。
有機スズ化合物として具体的には、例えば、(CH3)3SnOCOCH3、(C2H5)SnOCOC6H5、Bu3SnOCOCH3、Ph3SnOCOCH3、Bu2Sn(OCOCH3)2、Bu2Sn(OCOC11H23)2(ジラウリン酸ジブチルスズ)、Ph3SnOCH3、(C2H5)3SnOPh、Bu2Sn(OCH3)2、Bu2Sn(OC2H5)2、Bu2Sn(OPh)2、Ph2Sn(CH3)2、(C2H5)3SnOH、PhSnOH、Bu2SnO、(C8H17)2SnO、Bu2SnCl2、BuSnO(OH)、オクチル酸スズ等が挙げられる。ここで、「Bu」はブチル基、「Ph」はフェニル基である。
銅族金属を含む化合物として具体的には、例えば、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、CuI、CuI2、Cu(OAc)2、Cu(acac)2、オレフィン酸銅、Bu2Cu、(CH3O)2Cu、AgNO3、AgBr、ピクリン酸銀、AgC6H6ClO4等が挙げられる。ここで、「acac」はアセチルアセトンキレート配位子である。
鉛を含む化合物としては、例えば、オクチル酸鉛等が挙げられる。
亜鉛を含む化合物として具体的には、例えば、Zn(acac)2等が挙げられる。
鉄族金属を含む化合物として具体的には、例えば、Fe(C10H8)(CO)5、Fe(CO)5、Fe(C4H6)(CO)3、Co(メシチレン)2(PEt2Ph2)、CoC5F5(CO)7、フェロセン等が挙げられる。
アミン類として具体的には、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
中でも、触媒としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクチル酸鉛又はオクチル酸スズが好ましい。これらの触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0223】
また、本実施形態のイソシアネートの製造方法は、下記に示す、「混合液調製工程」、「低沸点分解生成物回収工程」及び「高沸点成分回収工程」を含んでもよい。
【0224】
[混合液調製工程]
本工程は、上記製造方法により得られたカルバメートと、上記触媒や溶媒等とを混合する工程である。
溶媒は、カルバメートを溶解し熱分解反応器に搬送する目的、熱分解によって生成したイソシアネートとヒドロキシ化合物との再結合を抑制する目的、未分解のカルバメートや、カルバメート及びイソシアネートのうち少なくともいずれか1種に由来する副反応生成物を溶解し熱分解反応器から液相成分として搬出する目的等、種々の目的に応じて選択し使用することができる。
混合液の総質量に対するカルバメートの含有量は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
混合液の総質量に対するカルバメートの含有量が上記下限値以上であることにより、イソシアネートの収率をより高くすることができ、工業的に実施する場合に有利となる。また、上記上限値以下であることにより、熱分解反応時における副反応の生起をより効果的に防ぐことができる。
【0225】
[低沸点分解生成物回収工程]
本工程は、カルバメートの熱分解反応によって生成する低沸点の分解生成物や溶媒等の、熱分解反応器において熱分解反応条件下で気体となっている成分を、気体状で連続的に抜き出す工程である。ここでいう「低沸点の分解生成物」としては、カルバメートの熱分解反応によって生成するイソシアネート及びヒドロキシ化合物のうち少なくともいずれか1種が好ましく、ヒドロキシ化合物及びイソシアネートの両方がより好ましい。
【0226】
これらの成分を気体状態で回収するために、使用する化合物やカルバメートの熱分解によって生成する化合物に応じて、該工程をおこなうための温度、圧力等の条件を設定することが好ましい。
【0227】
また、低沸点分解生成物の回収を速やかにおこなうために、搬送剤を導入することもできる。このような搬送剤としては、例えば、不活性ガス、炭化水素ガス類等が挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス、メタン、エタン、プロパン等が挙げられる。
同様な効果を奏するものとして、低沸点の有機溶媒類を用いてもよい。低沸点の有機溶媒類としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類、低級炭化水素類、エーテル類等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、ジクロルメタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。低級炭化水素類としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
これらの搬送剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの搬送剤は、予め加熱して用いることが好ましい。
【0228】
熱分解反応器より回収された気体状の低沸点分解生成物等の気体成分は、そのままの状態で冷却器に導入し、一部又は全部を液状で回収してもよい。また、気体状態で、又は、冷却器に導入して液状とした状態で、蒸留塔に供給して精製分離を行ってもよい。
【0229】
[高沸点成分回収工程]
高沸点成分回収工程では、前記低沸点分解生成物回収工程で、気体成分として回収されなかった液相成分を反応器から連続的に抜き出し回収する。本工程で回収される高沸点成分は、カルバメートの熱分解によって生成するイソシアネートとカルバメートとによる副反応生成物、イソシアネートによる副反応生成物、カルバメートによる副反応生成物、これらの副反応生成物がさらに反応して生成する化合物等が含まれる場合が多い。また、熱分解反応条件下で液体状態である溶媒(以下、「高沸点溶媒」と称する場合がある)を用いた場合は、該高沸点溶媒も含有される場合が多い。高沸点成分は、反応器の表面に付着して閉塞等を引き起こす原因となる場合が多いため、これら高沸点成分を熱分解反応器から液相成分として連続的に回収することによって、反応器表面への付着を防止する効果を奏する。
【0230】
以上に示した、混合液調製工程、低沸点分解生成物回収工程及び高沸点成分回収工程は、複数の装置を用いて各工程を個別に行ってもよく、1つの装置を用いて同時に行ってもよい。
【実施例】
【0231】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例1~26及び実施例50~72は参考例である。
<参考:分析方法>
(1)NMR分析方法
装置:日本電子(株)社製JNM-A400 FT-NMRシステム
・1Hおよび13C-NMR分析サンプルの調製
サンプル溶液を約0.3g秤量し、重クロロホルム(米国、アルドリッチ社製、99.8%)を約0.7gと内部標準物質としてテトラメチルスズ(日本国、和光純薬工業社製、和光一級)を0.05g加えて均一に混合した溶液をNMR分析サンプルとした。
・定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(2)液体クロマトグラフィー分析方法
装置:日本国、島津製作所社製 LC-10ATシステム
カラム:日本国、GLサイエンス社製 Inertsil-ODSカラムを2本直列に接続
展開溶媒:5mmol/L酢酸アンモニウム水溶液(A液)とアセトニトリル(B液)との混合液
展開溶媒流量:2mL/min
カラム温度:35℃
検出器:R.I.検出器(屈折率計)、および、PDA検出器(フォトダイオードアレイ検出器、測定波長範囲:200nm~300nm)
・液体クロマトグラフィー分析サンプル
サンプルを約0.1g秤量し、テトラヒドロフラン(日本国、和光純薬工業社製、脱水)を約1gと内部標準物質として1,1-ジエチル尿素(日本国、東京化成社製)を約0.02g加えて均一に混合した溶液を、液体クロマトグラフィー分析のサンプルとした。
・定量分析法
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。
(3)熱解離温度測定方法
装置:TG/DTA分析装置、日本国、リガク社製 TG8120
MS分析装置:日本国、島津社製 GCMS-QP 2010plus
雰囲気:ヘリウム
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:室温(約25℃)~400℃
・分析方法
上記測定条件にて試料(約5mg)を加熱し、発生するガスをMS分析装置にて分析した。尿素結合の分解によって生成するNH2基を含む化合物が検出される温度を、当該化合物の熱解離温度とした。
【0232】
[実施例1](二酸化炭素を用いた尿素結合を有する化合物の製造工程)
1,6-ヘキサメチレンジアミン120g(1.03モル)を3LのSUS316製オートクレーブに入れ密閉後、気相に二酸化炭素を1MPa(絶対圧)まで昇圧・常圧に落圧を3回実施して置換した。内温が210℃になるように加熱し、全圧が8MPaになる様に二酸化炭素をオートクレーブに張り込み、圧力を8MPaに保持したまま12時間加熱撹拌を行った後、反応容器を室温まで降温・落圧した。反応後に含まれる成分をIR(KBr法)で分析した所、1620cm-1(C=O伸縮)及び1570cm-1(NH伸縮)に帰属される吸収を確認し、尿素結合を有する化合物に転化した事を確認した。液体クロマトグラフィーで定量したところ、原料アミンの転化率は87%であった。また、サンプルとして取得した本反応液の溶媒を留去し、残った残渣をTG/DTA分析にて測定した所、生成した尿素結合体を含む成分の熱解離温度は220℃であった。
【0233】
(カルバメート体の製造工程)
撹拌機を具備する2L4口フラスコに前記工程にて生成した尿素結合を有する化合物を含む組成物を移し、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを950g、生成した尿素結合体と等モルの炭酸ジフェニルを224g(1.05モル)添加し、80℃で10時間反応させた。反応液をサンプリングし、液体クロマトグラフィーで分析したところ、目的とするN,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(以下、カルバメート体と称する)が生成していた。反応液に濃度が1モル/Lの塩酸を加えて撹拌した後、有機層を回収し、次いで、有機層をイオン交換水で洗浄した。ロータリエバポレーターを用いて有機層からオルトジクロロベンゼンを留去して得た固体の1H-NMR分析をおこなった所、目的とするカルバメート体(純度99%)であった。原料アミンに対するカルバメート体の収率は92%であった。
【0234】
(混合溶液調製工程)上記工程で得られたカルバメート体10重量%、オルトジクロロベンゼン90重量%からなる混合溶液を得た。
【0235】
(反応混合物製造工程、分解工程、低沸点分解生成物回収工程及び高沸点溶媒回収工程)上記で得た混合溶液を
図1に示す熱分解反応装置に連続的に導入した。具体的には、まず、原料予熱器1を160℃に予熱し、混合溶液を、原料予熱器1を経由して管型第1反応器2の上部に送り、600g/hrの流量で連続的に導入した。
【0236】
管型第1反応器2は内径5cmであり、上部に導入された原料混合物を均一に分配するための分配器が設置されており、内部にはステンレススチール製のラシヒリングが充填されていた。また、充填層には15cm毎に液再分配器が設けられていた。
前記管型第1反応器2の下部から抜き出した反応混合物を、600 g/hrの流量で、槽型の反応器からなる第2反応器3に連続液に導入した。この時、前記第2反応器3の液中には、250℃に予熱した乾燥窒素ガスを搬送剤として200NL/hrで連続的に導入した。
前記管型第1反応器2及び前記槽型第2反応器3の温度は共に250℃に保ち、圧力は8kg/cm2に保った。
反応液の平均滞留時間は、管型第1反応器2中で20分、槽型第2反応器中で15分であった。
【0237】
前記槽型第2反応器3から出るフェノール及びオルトジクロロベンゼンの蒸気は、搬送剤である窒素ガスと共に反応管の下部より抜き出し、管型第1反応器2に導入した。
前記管型第1反応器2の上部から出る気体成分は、150℃に保たれた部分凝縮器4を通過させることによって、大部分がオルトジクロロベンゼンからなる液成分と、少量のオルトジクロロベンゼン蒸気を含むフェノール蒸気及び窒素ガスからなる気体成分に分離した。
【0238】
部分凝縮器4によって分離された液成分は、そのまま管型第1反応器2の上部から戻され、気体成分は冷却器に導かれ、少量のオルトジクロロベンゼンを含むフェノールからなる液成分と窒素ガスに連続的に分離した。
【0239】
また、槽型第2反応器3の下部からは、ヘキサメチレンジイソシアネートを含むオルトジクロロベンゼン溶液が連続的に抜き出された。反応が定常状態になった後、オルトジクロロベンゼン溶液を分析した結果、未分解のカルバメート及び反応中間体は存在せず、86%の選択率でヘキサメチレンジイソシアネートが生成していた。
【0240】
[実施例2~10]
使用する原料アミンを表1及び2の「アミン」の欄に示す各種アミンに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表1および2に示すように得た。
【0241】
【0242】
【0243】
[実施例11](二酸化炭素を用いた尿素結合を有する化合物の製造工程)
1,6-ヘキサメチレンジアミン120g(1.03モル)を3LのSUS316製オートクレーブに入れ密閉後、気相に二酸化炭素を1MPa(絶対圧)まで昇圧・常圧に落圧を3回実施して置換した。内温が240℃になる様に加熱し、全圧が8MPaになる様に二酸化炭素をオートクレーブに張り込んだ。圧力を8MPaに保持したまま加熱撹拌を行い、途中、3時間、6時間、9時間の計3回、容器圧力を常圧まで落圧し、副生する水を系外に留出させた後、再度二酸化炭素で全圧が8MPaにする操作を繰り返し、延べ12時間加熱撹拌を行った後、反応容器を落圧した。反応後に含まれる成分をIR(KBr法)で分析した所、1620cm-1(C=O伸縮)及び1570cm-1(NH伸縮)に帰属される吸収を確認した。NMRで定量した所、原料アミンの転化率は98%であった。カルバメート体の製造工程以降の工程は実施例1と同様の操作を行い、対応するイソシアネートを表2に示すように得た。
【0244】
[実施例12](リジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩の合成)
撹拌機を具備する1Lの4口フラスコに35重量%塩酸を313g(3.0モル)仕込み、氷浴で冷却し、エタノールアミン122g(2.0モル)をゆっくり滴下した。次いで、リジン一塩酸塩183g(1.0モル)を添加した。反応器内の圧力を4kPaとし、反応液温度を110℃に加熱して、反応液中の水を200g留去した。
【0245】
反応器中に、圧力4kPa、反応液温度110℃を保ったまま、余熱器で圧力4kPa、温度110℃に加熱したキシレンガスを反応液底部から供給した。キシレンガスの流量は18g/Hrであった。キシレンガスを供給しながら、キシレンと水とを反応系外に留去し、反応液中の水含有量を0.4重量%以下とした。
得られた反応液を、撹拌機を具備する500mLフラスコに入れ、反応液温度を110℃として、常圧下で塩化水素ガスを反応液重量の1.0重量%となるように供給した。
上記した工程Aをさらに2回繰り返し、エステル化率が80%の反応液を得た。
なお、エステル化率は下記式により算出した。
エステル化率(%)=M1/M2×100
【0246】
上記式において、M1は、生成したリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩のモル数(高速液体クロマトグラフィーにて分析し定量した値)を表し、M2は、原料として用いたリジン一塩酸塩のモル数を表す。
【0247】
これにメタノール720g及びオルトジクロロベンゼン480gの混合液を加えて溶解した後、少量の種晶を加えて晶析した。固体を濾別し、晶析時と同一組成のメタノール/オルトジクロロベンゼン混合液を用いて固体を洗浄し濾別した。減圧乾燥器を用いて固体を乾燥し、液体クロマトグラフィーで分析したところリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩であった。
【0248】
(二酸化炭素を用いた尿素結合を有する化合物の製造工程)上記工程にて得られたエステル体を用いた事と、加熱温度及び時間を140℃、15時間としたこと以外は実施例1と同様の操作を行いて尿素結合を有する化合物を得た。
【0249】
(カルバメート体の製造工程~反応混合物製造工程、分解工程、低沸点分解生成物回収工程及び高沸点溶媒回収工程)
上記工程において得られた尿素結合を有する化合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表2に示すように得た。
【0250】
[実施例13~24]
実施例13で使用したアミノ酸及びアミノ酸エステルを合成する時に使用したアルコールを表2~4に記載した各種アミノ酸(表3及び4の「アミノ酸構造式」の欄)及びアルコール(表3及び4の「アルカノールアミン/アルコール」の欄)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表2~4に示すように得た。なお、アルギニンを使用する場合は、公知の方法によりオルニチンに加水分解して使用した。また、グルタミン、アスパラギンを使用する場合は、公知の方法により、それぞれ、グルタミン酸、アスパラギン酸に加水分解して使用した。
【0251】
【0252】
【0253】
[実施例25](二酸化炭素を用いた尿素結合を有する化合物の製造工程)
リジン一塩酸塩183g(1.0モル)を3LのSUS316製オートクレーブに入れ密閉後、気相に二酸化炭素を1MPa(絶対圧)まで昇圧・常圧に落圧を3回実施して置換した。溶媒として脱水2,5-ジメチルフェノール1100gを入れ、内温が140℃になる様に加熱し、全圧が8MPaになるように二酸化炭素をオートクレーブに張り込んだ。圧力を8MPaに保持したまま12時間加熱撹拌を行った後、反応容器を室温まで降温・落圧した。混合物からロータリーエバポレータを用いて溶媒を留去して乾固させた後、反応後残渣に含まれる成分をIR(KBr法)で分析した所、1620cm-1(C=O伸縮)及び1570cm-1(NH伸縮)に帰属される吸収を確認し、リジンのアミノ基が尿素結合に転換された、尿素結合を有する化合物に転化した事を確認した。NMRで定量した所、原料アミンの転化率は74%であった。
【0254】
(尿素結合を有するリジンエステル体の合成)撹拌機を具備する1Lの4口フラスコに35重量%塩酸を261g(2.5モル)仕込み、上記で合成した尿素結合を有する組成物(原料リジン塩酸塩に対して1.0モル相当)、脱水エタノール230g(5.0モル)を次いでゆっくり追添した。反応器内の温度を50℃に2時間保持した後、系内の圧力を25kPaに保持し、反応液中の水109g相当を含む溶媒を水-エタノール共沸蒸留により留去した。
【0255】
得られた反応液を撹拌機を具備する500mLフラスコに入れ、反応液温度を80℃として、常圧下で塩化水素ガスを反応液重量の1.0重量%となるように供給し、エステル化率が85%の反応液を得た。
【0256】
メタノール600g及びオルトジクロロベンゼン350gの混合液を加えて溶解した後、少量の種晶を加えて晶析した。固体を濾別し、晶析時と同一組成のメタノール/オルトジクロロベンゼン混合液を用いて固体を洗浄し濾別した。減圧乾燥器を用いて固体を乾燥し、液体クロマトグラフィーで分析したところ尿素結合を有するリジンエチルエステル二塩酸塩であった。
【0257】
(カルバメート体の製造工程~反応混合物製造工程、分解工程、低沸点分解生成物回収工程及び高沸点溶媒回収工程)
上記工程に於いて得られた尿素結合を有する化合物を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表5に示すように得た。
【0258】
[実施例26]
実施例25で使用したリジン一塩酸塩の代わりに、等モルのオルニチンを使用した以外は実施例25と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表5に示すように得た。
【0259】
[実施例27](炭酸誘導体を用いた尿素結合を有する化合物の製造工程)
1,6-ヘキサメチレンジアミン120g(1.03モル)、尿素60.5g(1.00モル)、を3Lの4口フラスコに入れ、気相を窒素置換した。この時、仕込み原料のアミノ基に対する尿素のモル比は0.488倍であった。脱水2,5-ジメチルフェノール1100gを入れ、内温が140℃、内圧50kPaになる様に調節した。副生するアンモニアを系外に留去しながら反応を15時間継続した後、反応容器を室温まで降温・落圧した。反応後に含まれる成分をIR(KBr法)で分析した所、1618cm-1(C=O伸縮)及び1571cm-1(NH伸縮)に帰属される吸収を確認した。NMRで定量した所、原料アミンの転化率は81%であった。
【0260】
(カルバメート体の製造工程)
撹拌機を具備する2L4口フラスコに前記工程にて生成した尿素結合を有する化合物を含む組成物を移し、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを950g、生成した尿素結合体と等モルの炭酸ジフェニルを209g(0.98モル)を添加し、80℃で10時間反応させた。反応液をサンプリングし、液体クロマトグラフィーで分析したところ、目的とするカルバメート体が原料尿素結合体に対して88%生成していた。反応液に濃度が1モル/Lの塩酸を加えて撹拌した後、有機層を回収し、次いで、有機層をイオン交換水で洗浄した。ロータリエバポレーターを用いて有機層からオルトジクロロベンゼンを留去して得た固体の1H-NMR分析をおこなった所、目的とするカルバメート体(純度99%)であった。原料アミンに対するカルバメート体の収率は88%であった。
【0261】
(反応混合物製造工程、分解工程、低沸点分解生成物回収工程及び高沸点溶媒回収工程)
上記操作で得られたカルバメートを用い、実施例1に記載と同様の操作を行い、対応するイソシアネートを表5に示すように得た。
【0262】
[実施例28~36]
使用する原料アミンを表5及び6に示す各種アミンに変更した以外は実施例27と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表5及び6に示すように得た。なお、仕込み原料のアミノ基に対する尿素のモル比は実施例27と同じとした。
【0263】
【0264】
【0265】
[実施例37]
実施例12で得られたリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩224g(0.75モル)と尿素67.5g(1.12モル)を添加した以外は、実施例27のカルバメート体の製造工程以降に記載の方法と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表6に示すように得た。
【0266】
[実施例38~49]
アミノ酸及びアミノ酸エステルを合成する時に使用したアルコールを表6~9に記載した各種アミノ酸及びアルコールとした以外は、実施例37と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表6~9に示すように得た。なお、添加した尿素は尿素結合に転化する原料アミン末端に相応する量を添加した。また、アルギニンを使用する場合は公知の方法によりオルニチンに分解して使用した。また、グルタミン、アスパラギンを使用する場合は、公知の方法により、それぞれ、グルタミン酸、アスパラギン酸に加水分解して使用した。
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
[実施例50](炭酸誘導体を用いたウレイド基を有する化合物の製造工程)
1,6-ヘキサメチレンジアミン120g(1.03モル)、尿素124g(2.06モル)、を3Lの4口フラスコに入れ、気相を窒素置換した。この時、仕込み原料のアミノ基に対する尿素の量は1.00倍であった。脱水2,5-ジメチルフェノール1100gを入れ、内温が120℃、80kPaになる様に調節した。副生するアンモニアを系外に留去しながら反応を15時間継続した後、反応容器を室温まで降温・落圧した。NMRで定量した所、原料アミンの転化率は95%であった。
【0271】
(ウレイド基を有する化合物から尿素結合を有する化合物を得る工程)
上記ウレイド基を有する化合物の製造工程で得られた反応液を用い、160℃で1時間常圧にて加熱撹拌後、全圧を20kPaまで徐々に減圧し、溶媒である2,5-ジメチルフェノールと共に尿素結合体生成時に副生する尿素を7時間掛けて系外に留去した。溶媒留去後に降温・常圧に戻し、残渣をIR(KBr法)で分析した所、1618cm-1(C=O伸縮)及び1572m-1(NH伸縮)に帰属される吸収を確認し、尿素結合を有する化合物に転化した事を確認した。NMRで定量した所、原料のウレイド基を有する化合物から生成した尿素結合体が、原料アミンに対して87%収率で得られた。
【0272】
(カルバメート体の製造工程)
撹拌機を具備する2L4口フラスコに前記工程にて生成した尿素結合を有する化合物を含む組成物を移し、溶媒としてオルトジクロロベンゼンを950g、生成した尿素結合体と等モルの炭酸ジフェニルを209g(0.98モル)添加し、80℃で10時間反応させた。反応液をサンプリングし、液体クロマトグラフィーで分析したところ、目的とするカルバメート体が原料尿素結合体に対して85%生成していた。反応液に濃度が1モル/Lの塩酸を加えて撹拌した後、有機層を回収し、次いで、有機層をイオン交換水で洗浄した。ロータリエバポレーターを用いて有機層からオルトジクロロベンゼンを留去して得た固体の1H-NMR分析をおこなった所、目的とするカルバメート体(純度99%)であった。原料アミンに対するカルバメート体の収率は88%であった。
【0273】
(反応混合物製造工程、分解工程、低沸点分解生成物回収工程及び高沸点溶媒回収工程)
上記操作で得られたカルバメートを用い、実施例27に記載と同様の操作を行い、対応するイソシアネートを表9に示すように得た。
【0274】
[実施例51~59]
使用する原料アミンを表9に示す各種アミンに変更した以外は実施例50と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表9に示すように得た。なお、仕込み原料のアミノ基に対する尿素のモル比は実施例50と同じとした。
【0275】
【0276】
[実施例60]
実施例12で得られたリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩224g(0.75モル)と尿素134g(2.25モル)を添加したこと以外は実施例50のカルバメート体の製造工程以降に記載の方法と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表10に示すように得た。
【0277】
[実施例61~72]
アミノ酸及びアミノ酸エステルを合成する時に使用したアルコールを表10及び11に記載した各種アミノ酸及びアルコールとした以外は実施例60と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表10及び11に示すように得た。なお、添加した尿素はウレイド基に転化する原料アミン末端に相応する量を添加した。また、アルギニンを使用する場合は公知の方法によりオルニチンに分解して使用した。また、グルタミン、アスパラギンを使用する場合は、公知の方法により、それぞれ、グルタミン酸、アスパラギン酸に加水分解して使用した。
【0278】
【0279】
【0280】
【0281】
[比較例1]
実施例1において、二酸化炭素の代わりに窒素を張り込んだ以外は実施例1と同様の操作を行ったが、カルバメート体を得る工程で原料アミンと炭酸ジフェニルから対応するカルバメートは得られたが、炭酸ジフェニルの使用量がアミン末端に対して1等量消費され、仕込み炭酸ジフェニル量が増大した。
【0282】
[比較例2]
実施例27において、尿素を追添しなかった以外は実施例27と同様の操作を行ったが、カルバメート体を得る工程で原料アミンと炭酸ジフェニルからカルバメートは得られたが、炭酸ジフェニルの使用量がアミン末端に対して1等量消費され、仕込み炭酸ジフェニル量が増大した。
【0283】
[比較例3]
実施例50において、尿素を追添しなかった以外は実施例50と同様の操作を行ったが、カルバメート体を得る工程で原料アミンと炭酸ジフェニルからカルバメートは得られたが、炭酸ジフェニルの使用量がアミン末端に対して1等量消費され、仕込み炭酸ジフェニル量が増大した。
[実施例73]
実施例27において、脱水2,5-ジメチルフェノールを脱水o-ジクロロベンゼンとした以外は実施例27と同様の操作を行った。反応後に含まれる成分をIR(KBr法)で分析した所、1618cm-1(C=O伸縮)及び1571cm-1(NH伸縮)に帰属される吸収を確認したが、反応後の容器に一部ゲル状物が付着していた為、この溶液を移し替えることなく、このままカルバメート体の製造工程に供した。
(カルバメート体の製造工程)
実施例27と同じ条件で合成を行ったところ、付着したゲル状物が経時的に溶解し、最終的には均一溶液となった。液体クロマトグラフィーで分析したところ、目的とするカルバメート体が原料尿素結合体に対して86%生成していた。
[実施例74~95]
実施例28~49において、脱水2,5-ジメチルフェノールを脱水o-ジクロロベンゼンとした以外は実施例28~49同様の操作を行い、対応するカルバメ
ート体及びイソシアネートを表14~17に示すように得た。
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
【表17】
[比較例4]
実施例1の二酸化炭素を用いた尿素結合を有する化合物の製造工程において、内温を300℃にしたこと以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、対応するカルバメート体を表18に示すように得た。
[比較例5]
実施例27の炭酸誘導体を用いた尿素結合を有する化合物の製造工程において、反応温度を250℃(2,5-ジメチルフェノールの大気圧の沸点が212℃であるため、3LのSUS316製オートクレーブを用いた加圧系で実施)にしたこと以外は実施例27と同様の操作を行ったところ、対応するカルバメート体を表18に示すように得た。
[比較例6]
実施例50のウレイド基を有する化合物から尿素結合を有する化合物を得る工程において、反応温度を250℃(2,5-ジメチルフェノールの大気圧の沸点が212℃であるため、3LのSUS316製オートクレーブを用いた加圧系で実施)にしたこと以外は実施例50と同様の操作を行ったところ、対応するカルバメート体を表18に示すように得た。
[比較例7]
実施例1の(二酸化炭素を用いた尿素結合を有する化合物の製造工程)において、カルボニル源としてホスゲンを使用したこと以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、対応するカルバメート体を表18に示すように得たが、複数の副生物が生成し、得られたカルバメートや、これを原料としたイソシアネートは黄~茶褐色に呈色していた。
[実施例96~118]
使用する炭酸誘導体の量を各種アミン末端に対して0.4モルに変更したこと以外は実施例27~49と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表18~22に示すように得た。
【0288】
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
【表22】
[実施例119~141]
使用する炭酸誘導体の量を各種アミン末端に対して0.3モルに変更したこと以外は実施例27~49と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表22~26に示すように得た。
【0293】
【0294】
【0295】
【0296】
【表26】
[実施例142~164]
使用する炭酸誘導体を尿素からN,N’-ジブチル尿素に変更したこと以外は実施例27~49と同様の操作を行い、対応するカルバメート体及びイソシアネートを表26~30に示すように得た。
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
【産業上の利用可能性】
【0301】
本実施形態のカルバメートの製造方法は、ホスゲンを使用せず、且つ、炭酸エステルの使用量を低減できる。また、本実施形態のイソシアネートの製造方法は、前記製造方法により得られたカルバメートを用いる方法であり、様々な種類のイソシアネートを製造することができる。
【符号の説明】
【0302】
1:原料予熱器、2:管型第一反応器、3:槽型第二反応器、4:部分凝縮器、10:熱分解反応装置