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特許7446223部分的に架橋された熱可塑性ポリマーで作製された多孔質層を含む強化材料及び関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】部分的に架橋された熱可塑性ポリマーで作製された多孔質層を含む強化材料及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240301BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240301BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C08J5/04 CFG
B32B5/26
B32B5/24 101
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020528160
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 FR2018052925
(87)【国際公開番号】W WO2019102136
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】1761056
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515306965
【氏名又は名称】ヘクセル ランフォルセマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビアール、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ベネテュイリエール、ティボー
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-214704(JP,A)
【文献】特表2012-528224(JP,A)
【文献】特表平08-509921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16、15/08-15/14、C08J5/04-5/10、5/24、
B29C41/00-41/36、41/46-41/52、70/00-70/88、
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その少なくとも1つの面に半結晶性ポリマーにより構成されるポリマー多孔質層を伴う少なくとも1つの繊維強化材を含む強化材料であって、存在する前記ポリマー多孔質層が前記強化材料の総重量の0.5%以上10%以下である強化材料において、
存在する前記ポリマー多孔質層が、熱可塑性部分と架橋部分とを含む部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含み、
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーの前記架橋部分が前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーの重量の30~70重量%であり、
前記熱可塑性部分の融点に対応する前記ポリマー多孔質層の融点が150℃未満であることを特徴とする、強化材料。
【請求項2】
前記多孔質層を構成する前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが半結晶性ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の強化材料。
【請求項3】
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが、熱又は放射線の作用下で架橋性官能基を架橋することによって得られ、前記架橋は化学触媒を必要としないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の強化材料。
【請求項4】
前記架橋性官能基が不飽和官能基から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の強化材料。
【請求項5】
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーがコポリアミド類に属することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の強化材料。
【請求項6】
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが、
-ジエチレントリアミン、ペンタエリトリトール、メリト酸、及び2,2-ジメチロールプロピオン酸から選択される多官能性モノマー(A)に由来する少なくとも1つの単位と、
-少なくとも、鎖制限剤として使用される少なくとも1つの不飽和一酸の存在下での、
-同じ数の炭素原子を持たない少なくとも2つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
-又は、同じ数の炭素原子を持たない少なくとも2つのラクタム、
-又は、少なくとも1つのラクタム、少なくとも1つのカルボン酸二酸、及び少なくとも1つのジアミン、
-又は、同じ順序の炭素原子を持たない1つのラクタム及び/又は1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
-又は、1つのジアミン及び1つのカルボン酸二酸
-又は、少なくとも1つのジアミン、少なくとも1つのカルボン酸二酸、及び少なくとも1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
の縮合から生じる鎖構造と、
から構成される不飽和末端を有する分岐コポリアミドを架橋することによって得られ、
(A)の割合が、(A)及び他の前述のモノマーの合計の9重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の強化材料。
【請求項7】
不飽和末端を有する前記分岐コポリアミドの鎖構造が、少なくともカプロラクタム及びラウリルラクタムを含むことを特徴とする、請求項6に記載の強化材料。
【請求項8】
不飽和末端を有する前記分岐コポリアミドの鎖構造が、少なくともカプロラクタム、ジアミンヘキサメチレン、及びアジピン酸を含むことを特徴とする、請求項6に記載の強化材料。
【請求項9】
不飽和末端を有する前記分岐コポリアミドの前記不飽和一酸が、クロトン酸又はウンデシレン酸であることを特徴とする、請求項6~8のいずれかに記載の強化材料。
【請求項10】
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが、イソシアナート及びエポキシ官能基を含むコポリアミドを架橋することによって得られることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の強化材料。
【請求項11】
前記繊維強化材が、強化繊維の一方向ラップ、強化繊維の布、又はステッチング若しくは他の物理的手段によって互いに接続された一方向ラップのスタックであること、及び/又は前記繊維強化材が炭素繊維から構成されることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の強化材料。
【請求項12】
その少なくとも1つの面に多孔質層を伴う前記繊維強化材、に相当する強化繊維の一方向ラップから構成されることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の強化材料。
【請求項13】
異なる方向に配向された一方向強化繊維ラップのスタックから構成され、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含む少なくとも1つのポリマー多孔質層が2つの一方向強化繊維ラップ間及び/又は前記スタックの表面に配置されることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の強化材料。
【請求項14】
前記繊維強化材が、強化繊維の一方向ラップであることを特徴とする、請求項13に記載の強化材料。
【請求項15】
強化繊維の一方向ラップの相互間の結合及び少なくとも1つの多孔質層との結合が、ステッチング、ニッティング、又はニードリングによって行われることを特徴とする、請求項13又は14のいずれか一項に記載の強化材料。
【請求項16】
存在する多孔質層が、多孔質フィルム、グリッド、粉末堆積物、又は布であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の強化材料。
【請求項17】
少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー多孔質層を伴う繊維強化材を含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載の強化材料を製造するための前駆体材料。
【請求項18】
以下の連続するステップ、
a1)繊維強化材を有するステップと、
a2)部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層を有するステップと、
a3)前記繊維強化材を、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される前記少なくとも1つのポリマー多孔質層と結合させるステップと
を含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の強化材料の調製方法。
【請求項19】
ステップa3)の結合が、少なくとも1つの多孔質層を前記繊維強化材に適用することによって得られ、前記適用が、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーの加熱を伴うか又はその後の加熱によって、軟化又は溶融し、続いて冷却されることを特徴とする、請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
以下の連続するステップ、
b1)少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成されるポリマー多孔質層を伴う繊維強化材を含む、請求項17に記載の前駆体材料を有するステップと、
b2)前記熱可塑性ポリマー上に存在する前記架橋性官能基の少なくとも一部を架橋するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載の強化材料の調製方法。
【請求項21】
ステップb2)の架橋が、熱、又はUV、ガンマ、若しくはベータ線の作用下で行われることを特徴とする、請求項20に記載の調製方法。
【請求項22】
ステップb1)の上流に、以下の連続するステップ、
c1)繊維強化材を有するステップと、
c2)架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層を有するステップと、
c3)前記繊維強化材を、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成される前記少なくとも1つのポリマー多孔質層と結合させるステップと
を含むことを特徴とする、請求項20又は21に記載の調製方法。
【請求項23】
ステップc3)の結合が、前記少なくとも1つの多孔質層を前記繊維強化材に適用することによって得られ、前記適用が、架橋性官能基を有する前記熱可塑性ポリマーの加熱を伴うか又はその後の加熱によって、軟化又は溶融するが、前記架橋性官能基は架橋されず、続いて冷却されることを特徴とする、請求項22に記載の調製方法。
【請求項24】
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物とともに、プリフォーム又は複合部品を作製するための、請求項1~16のいずれかに記載の強化材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品を構成する強化材料の技術分野に関する。より具体的には、本発明の目的は、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーで作製された多孔質層を含む、射出又は注入された樹脂と共に複合部品を作成するための強化材料、及び関連する方法及び使用である。
【0002】
複合部品又は複合製品、即ち、1つ以上の繊維強化材、特に一方向繊維ラップ(laps)、及び母材(通常、熱硬化型で、1つ以上の熱可塑性物質を含んでもよい)を含むものは、例えば、いわゆる「直接」法又は「LCM」(液体複合材成形)法を使用して作製され得る。直接法の定義は、1つ以上の繊維強化材を、「乾燥」(即ち、最終的な母材がない)状態で、例えば、繊維強化材を内包する金型への射出(「RTM」即ち「樹脂トランスファ成形」法)、繊維強化材の厚さ全体への注入(「LRI」即ち「液体樹脂注入」法、若しくは「RFI」即ち「樹脂フィルム注入」法)、又は、ローラ若しくはブラシを使用した、その形態に連続塗布された繊維強化材単位層の各々へのコーティング/手動含浸によって、樹脂又は母材を別々に用いて、使用することである。
【0003】
RTM、LRI、又はRFI法では、通常、最初に所望の完成品の形状の繊維プリフォーム又はスタックを製造し、次にこのプリフォーム又はスタックに母材を構成する樹脂を含浸させる必要がある。樹脂は温度差圧によって射出又は注入され、必要な樹脂の全量がプリフォーム内に含まれると、アセンブリはより高い温度に引き上げられ、重合/硬化サイクルが実施されて硬化される。
【0004】
モータ、航空、又は海軍産業で使用される複合部品は、特に機械的特性の点で非常に厳しい要件が課せられる。燃料を節約し、部品のメンテナンスを容易にするために、航空産業では多くの金属材料が軽量の複合材料に置き換えられてきた。
【0005】
部品を作製するときに、特に射出又は注入によって繊維強化材と後で結合される樹脂は、熱硬化性樹脂、例えばエポキシ系樹脂であってもよい。様々な繊維強化材層のスタックで構成されるプリフォーム全体を樹脂が適切に流れるようにするために、この樹脂は、多くの場合、非常に流動性が高く、例えば、注入/射出温度における粘度は50~200mPa・s以下である。この種類の樹脂の主な欠点は、重合/硬化後の脆性であり、そのため、作成された複合部品の耐衝撃性は低い。
【0006】
この問題を解決するために、先行技術は、繊維強化材層を熱可塑性ポリマー多孔質層、特に熱可塑性繊維の不織布(ウェブとも呼ばれる)と結合することを提案している。この種類の解決策は、1125728号、米国特許第6,828,016号、国際公開第00/58083号、国際公開第2007/015706号、国際公開第2006/121961号、米国特許第6,503,856号、米国特許出願公開第2008/7435693号、国際公開第2010/046609号、国際公開第2010/061114号及び2547816号、米国特許出願公開第2008/0289743号、米国特許出願公開第2007/8361262号、米国特許出願公開第2011/9371604号、及び国際公開第2011/048340号に開示されている。特に不織布系のこの熱可塑性層を追加することによって、構造の耐衝撃性を特性評価するために広く使用されている衝撃後圧縮(CAI)試験において、製造された複合部品の機械的特性が向上する。
【0007】
それにもかかわらず、これらの解決策には特定の欠点がある。第1に、使用される熱可塑性ポリマー多孔質層は、特に150℃を超える高い融点を有することが多く、そのため、これらの強化材料の製造方法は高価である。
【0008】
さらに、多孔質層を構成するポリマー熱可塑性材料は、後で射出又は注入される熱硬化性樹脂と相互作用する可能性がある。これは、熱可塑性材料の融点が低下するにつれてますます起こりやすくなる。その結果、熱硬化性樹脂の局所的な化学量論が変更され、繊維強化材に熱硬化性樹脂が含浸されると、繊維強化材に拡散する可能性があり、これは回避すべきである。
【0009】
この問題を解決するために、出願人は、先行技術において、熱可塑性ポリマー多孔質層の代わりに、Hexcel社Primetex 43098 S 1020 S E01 1Fの参照名で開発された布に使用されているものなどのエポキシ粉末を使用することを提案した。軟化温度が約100℃のエポキシ粉末を堆積させることによって得られるこの種類の熱硬化層は、低温予備成形が可能であるため、複合部品をより迅速かつ安価に、特により低温で製造できるようにする。それにもかかわらず、この種類の技術は、粉末の使用に起因する実用上の問題を含み、満足な機械的耐性が得られない。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、熱可塑性多孔質層を含む強化材料を使用した場合に観察されている機械的性能への有益な効果を保持する、射出又は注入樹脂と共に複合部品を作製するための新規の強化材料を提供することである。
【0011】
さらに、中間材料で作製された従来技術による部品は、湿熱サイクル下で、構造の耐久性を変える可能性のある微小亀裂を有していたことが指摘されている。航空構造物は、その寿命を通して、熱的サイクルと加湿期間とを経る(高温の砂漠での駐機、極寒条件での高高度の飛行、メンテナンスなど地上に静止中の多湿状態への回帰、飛行中の乾燥など)。このような現象によって、先行技術の強化材料の使用は、この種類の用途に適さない場合がある。
【0012】
したがって、本発明はまた、湿熱応力を受けたときに、そのような材料から作製される複合部品における微小亀裂の生成を制限する強化材料を提供するという目標を有する。
【0013】
これに関連して、本発明は、その少なくとも1つの面にポリマー多孔質層を伴う少なくとも1つの繊維強化材を含む強化材料であって、ポリマー多孔質層が強化材料の総重量の10%以下、好ましくは強化材料の総重量の0.5~10%、好ましくは強化材料の総重量の2~6%である強化材料に関する。本発明の枠組みにおいて、上記少なくとも1つのポリマー層は、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか、又はそれから構成される。ポリマー部分の重量が強化材料の総重量の10%以下であるそのような強化材料は、従来、乾燥強化材料と呼ばれており、大部分がポリマーからなり、複合部品の製造中に外部樹脂を追加する必要がない予備含浸材料とは対照的であり、そのため、まったく異なる諸所の問題がある。本発明の枠組みにおいて、強化材料内に存在する多孔質層の部分的に架橋された特性を考えると、強化材料は、強化材料に熱間射出又は熱間注入される熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物に部分的にのみ可溶であるか、又は完全に不溶でさえある。
【0014】
具体的には、多孔質層を構成する部分的に架橋された熱可塑性ポリマーの熱可塑性部分により、強化材料の製造及び使用中により低い温度を使用できるようになるため、複合部品を製造する際の費用及び時間を節約できる一方、熱硬化性部分は、その後に射出又は注入される熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物への多孔質層の完全な溶解を阻止する。部分的に架橋された熱可塑性ポリマーの熱可塑性部分が多孔質層の一部のみを構成している場合、この部分が溶融しても、特に80~130℃の範囲内では、架橋部分が溶融しないため、多孔質層は、射出又は注入される熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物に完全に可溶にはならない。この熱可塑性部分の存在は、自動化された製造方法、特に高温繊維の配置及び平坦なプリフォームの形成に適した温度で多孔質層と繊維強化材とを結合する強化材料の製造を可能にするという利点ももたらす。
【0015】
別の利点は、熱可塑性部分の融点に対応する多孔質層の融点が150℃未満であり得ることにより、部品作製(乾燥材料の調製から配置、予備成形まで)の最後に必要になる樹脂射出の前に、製造方法のすべてのステップを150℃未満、又はさらに低い温度で実施できることである。
【0016】
したがって、本発明の目的は、樹脂を注入又は射出する前に、製造方法のすべてのステップを150℃未満、さらに140℃未満、場合によっては80~130℃の範囲内の温度で実施する選択肢を有しつつ、耐衝撃性能に対する熱可塑性多孔質層の使用の有益な効果を組み合わせることにある。
【0017】
本発明の別の目的は、本発明による強化材料を調製する方法である。具体的には、そのような方法には、以下の連続するステップ、
a1)繊維強化材を有するステップと、
a2)部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層を有するステップと、
a3)繊維強化材を、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層と結合させるステップと
が含まれる。
【0018】
そのような方法はまた、少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー多孔質層を伴い、熱可塑性ポリマー上に存在する架橋性官能基の少なくとも一部を架橋後に、本発明による強化材料をもたらすことができる繊維強化材を含む前駆体材料から開始してもよい。そのような前駆体材料もまた、本発明の不可欠な部分である。
【0019】
最後に、本発明は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物と共に、プリフォーム又は複合部品を製造するための本発明による強化材料の使用、並びに本発明による少なくとも1つの強化材料から開始するプリフォーム又は複合部品の製造方法に関し、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物は、上記強化材料又は本発明によるいくつかの強化材料のスタック、並びにそのような方法によって製造された部品及びプリフォームに射出又は注入される。
【0020】
定義
「多孔質層」とは、プリフォーム又は複合部品が作製されるときに材料に射出又は注入される樹脂などの液体が通過できる透過層を意味する。具体的には、国際公開第2011/086266号に記載の方法を使用して測定されるそのような層の開口率は、30~99%の範囲内、好ましくは40~70%の範囲内である。多孔質層の例としては、多孔質フィルム、糸を織り交ぜることによって作成されたグリッド、粉末堆積によって得られた層、織布、及び不織布が挙げられ得る。それにもかかわらず、本発明の枠組みでは、記載の実施形態に関係なく、ウェブとも呼ばれる不織布の形態の多孔質層を使用することが好ましい。多孔質層は、ポリマー又はポリマーの混合物から構成され、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むため、ポリマー層と呼ばれる。本明細書において、ポリマー多孔質層は、簡潔化のため、より簡潔に「多孔質層」と呼ばれる場合がある。特に、多孔質層は、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーのみから、又は部分的に架橋されたポリマーと熱可塑性ポリマーとの混合物から構成され得る。2つ目の場合、部分的に架橋された熱可塑性ポリマー/熱可塑性ポリマー混合物は、部分的に架橋された熱可塑性ポリマー/熱可塑性ポリマー混合物の重量に対して、好ましくは少なくとも10重量%の部分的に架橋された熱可塑性ポリマー、さらにより好ましくは少なくとも70重量%の部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含む。部分的に架橋された熱可塑性ポリマー/熱可塑性ポリマー混合物の場合、部分的に架橋された熱可塑性ポリマー内の架橋を高い割合、具体的には50~90%にして、熱可塑性ポリマーの存在と組み合わせることができ、それによって、融点が好ましくは80~130℃の範囲内になる。逆に、部分的に架橋された熱可塑性ポリマー内の架橋を30~70%の低い割合にして、熱可塑性ポリマーの存在と組み合わせることができ、それによって、融点はより高温、具体的には150℃を超える、さらには180℃を超える、例えば180~400℃の範囲内になる。融点は、ISO規格11357-3を使用して測定できる。熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、芳香族ポリエーテルなどが挙げられ得る。本発明の枠組みにおいて、多孔質層を構成するポリマー材料は、最も好ましくは部分的に架橋された熱可塑性ポリマーであり、熱可塑性ポリマーとの混合物ではない。
【0021】
本発明の枠組みで使用されるポリマーは、直鎖又は分岐鎖に対応する熱可塑性部分及び三次元網目構造を形成する架橋部分を有するので、「部分的に架橋されている」と言われる。架橋部分は、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーの架橋によって得られる。上記架橋性官能基は、架橋ステップの前に熱可塑性ポリマー上に分布される。具体的には、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーは、分岐鎖の末端に架橋性官能基を有する分岐ポリマーの形態を取り得る。
【0022】
すべての種類の架橋性官能基が適している可能性があり、例としては、熱によって、UV、ガンマ、若しくはベータ線によって架橋可能な官能基、又は過酸化物系触媒の存在を必要とする官能基が挙げられ、これらは、部分的に架橋可能な熱可塑性ポリマーとの混合物に使用される。
【0023】
実用的な理由から、熱又は放射線の作用下で架橋性官能基を架橋することによって得られ、化学触媒を必要としない部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが好ましい。好ましくは、架橋のより優れた制御を可能にする、UV、ガンマ、又はベータ線の作用下で架橋可能な官能基の使用が選択される。架橋は、不活性雰囲気又は大気中で行うことができる。UV、ガンマ、又はベータ線の作用下で架橋可能な官能基の例としては、不飽和官能基が挙げられ得る。
【0024】
有利には、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーは、コポリアミド類、特にカプロラクタム及び/又はラウリルラクタムに属する。
【0025】
UV、ガンマ、又はベータ線の作用下で架橋可能なそのような不飽和官能基を含む部分的に架橋可能な熱可塑性ポリマーは、欧州特許出願第1591468号に記載されており、Platamid(登録商標)HX2632の参照名でARKEMA社から販売されている。
【0026】
本発明の枠組みに適したポリマーの例としては、
-ジエチレントリアミン、ペンタエリトリトール、メリト酸、及び2,2-ジメチロールプロピオン酸から選択される多官能性モノマー(A)に由来する少なくとも1つの単位と、
-少なくとも、鎖制限剤として使用される少なくとも1つの不飽和一酸の存在下での、
-同じ数の炭素原子を持たない少なくとも2つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
-又は、同じ数の炭素原子を持たない少なくとも2つのラクタム、
-又は、少なくとも1つのラクタム、少なくとも1つのカルボン酸二酸、及び少なくとも1つのジアミン、
-又は、同じ順序の炭素原子を持たない1つのラクタム及び/又は1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
-又は、1つのジアミン及び1つのカルボン酸
-又は、少なくとも1つのジアミン、少なくとも1つのカルボン酸二酸、及び少なくとも1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
の縮合から生じる鎖構造と、
から構成される不飽和末端を有する分岐コポリアミドを架橋することによって得られる部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが挙げられ得、
(A)の割合は、(A)及び他の上述のモノマーの合計の9重量%未満である。
【0027】
より具体的には、不飽和末端を有する分岐コポリアミドの鎖構造は、少なくともカプロラクタム及びラウリルラクタムを含み、又はそれらは、少なくともカプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、及びアジピン酸を含む。
【0028】
不飽和末端を有する分岐コポリアミドの不飽和一酸は、より具体的には、クロトン酸又はウンデシレン酸である。
【0029】
熱の作用下で架橋され、触媒を必要としない熱可塑性ポリマーの例としては、イソシアナート及びエポキシ官能基を含むコポリアミドを架橋することによって得られるポリマーが挙げられ得る。
【0030】
そのようなポリマーは、欧州特許第1808468号及び米国特許第9205630号に記載されており、例えば、Evonik社からVestamelt Hylink(X1333)という参照名で販売されている。
【0031】
多孔質層を構成するポリマーは、熱可塑性部分と架橋部分とを含む。熱可塑性部分は、好ましくは、ポリマーの重量の30~90重量%、より好ましくは3~70重量%である。したがって、大部分の非架橋多孔質層が残り、これはプリフォームを作製するために必要である。
【0032】
部分的に架橋されたポリマーの熱可塑性部分の重量部分は、熱可塑性部分が溶解できる溶媒に熱可塑性部分を可溶化し(例えば、周囲温度(23℃)で3日間浸漬)、例に示すように、可溶化前後の重量の差を測定する(可溶化後に得られた残留物を、例えば、濾過し、50℃で4時間乾燥させる)ことによって測定できる。
【0033】
有利には、部分的に架橋されたポリマーの熱可塑性部分の融点は、80~130℃の範囲内、好ましくは80~120℃の範囲内である。熱可塑性部分の融点に対応する部分的に架橋されたポリマーの融点は、ISO規格11357-3に従って、DSC「示差走査分析」によって測定できる。そのような融点を有することによって、本発明による材料を作製し、複合部品を作製するためのプリフォームを堆積及び作成するための操作を130℃未満の温度で行うことが可能であり、これは特に大規模生産に有利である。
【0034】
多孔質層を構成するポリマーは、非晶質ポリマーであってもよいが、好ましくは半結晶性(semi-crystalline)ポリマーである。半結晶性ポリマーのガラス転移温度はその融点よりも低いため、軟化しやすく、接着剤による繊維強化材との結合が容易になるか、又は本発明による強化材料のその後の配置及び/又は予備成形を促進する。さらに、半結晶性ポリマーは、鎖が整列した組織化された分子構造を有し、そのため、分子構造が組織化されていない非晶質ポリマーよりも優れた機械的特性を有する。
【0035】
「その少なくとも1つの面に多孔質層を伴う繊維強化材」とは、繊維強化材が、強化材の少なくとも1つの面に付着された少なくとも1つの多孔質層に接続されていることを意味する。この種類の接続は、多孔質層がその熱可塑性部分のためにホットメルト特性を有するという事実を考慮して、接着剤によって行われる。特に、いくつかの繊維強化材及びいくつかの多孔質層を含むスタックの場合、この接続を、ステッチング、ニッティング、又は他の物理的手段(ニードリングなど)などの機械的接続によって補完又は代替することもできる。
【0036】
本発明による強化材料は、複合部品の製造のために、結合剤、特に熱硬化性樹脂、と結合されることを意図しているため、「乾燥材料」と呼んでもよい。したがって、本発明による強化材料の多孔質層を構成する部分的に架橋された熱可塑性ポリマーの重量は、本発明による強化材料の総重量の10%以下であり、好ましくは本発明による強化材料の総重量の0.5~10%、さらにより好ましくは2~6%である。
【0037】
「不織布」は、「ウェブ」とも呼ばれ、従来、ランダムに配置された短繊維又は連続繊維のアセンブリを意味すると理解されている。これらの不織布又はウェブは、例えば、ドライレイド、ウェットレイド、スパンレイド、スパンボンド、及びメルトブローン法によって、又はエレクトロスピニング、フラッシュスピニング、若しくはフォーススピニング法によって製造でき、これらはすべて当技術分野で既知である。具体的には、不織布を構成する繊維の平均直径は、0.5~70μm、好ましくは0.5~20μmの範囲内であり得る。不織布は、短繊維又は好ましくは連続繊維から構成され得る。短繊維不織布の場合、繊維の長さは、例えば、1~100mmの範囲内である。不織布は、ランダムな、好ましくは等方性の被覆をもたらす。
【0038】
有利には、本発明による強化材料中に存在する不織布の単位面積当たりの質量は、0.2~20g/mの範囲内である。本発明による強化材料における不織布の厚さは、不織布をどのようにして繊維強化材結合するかに応じて変化し得る。好ましくは、本発明による強化材料に存在する不織布又は各不織布の厚さは、不織布のホットメルト特性を使用するために熱及び圧力を加えることによって結合を行った場合、繊維強化材との結合後、0.5~50ミクロン、好ましくは3~35ミクロンである。結合が、ステッチング、ニッティング、又はニードリングなどの機械的手段によって行われる場合、不織布の厚さは、50ミクロンより大きく、具体的には50~200ミクロンの範囲内であり得る。これらの不織布の特性は、国際公開第2010/046609号に記載の方法を使用して決定できる。
【0039】
「繊維強化材」とは、強化繊維の一方向の布又はラップの形態であり得る強化繊維の層を意味する。強化繊維は、ガラス、炭素、アラミド、又はセラミック繊維であり、炭素繊維が特に好ましい。
【0040】
従来、この分野では、「強化繊維の一方向ラップ又は層」は、相互に実質的に平行になるように、単一方向に沿って敷設された強化繊維から専ら又はほぼ専ら構成されるラップを意味すると理解される。特に、本発明の特定の実施形態によれば、一方向ラップには、強化繊維と織り交ざる横糸がなく、また、別の層、特にポリマー多孔質層との結合の前に一方向ラップに結束性をもたらすようなステッチもない。これによって、一方向ラップ内の圧着が防止される。強化繊維の一方向ラップは、単一の糸で構成できるが、多くの場合、並べて配置された複数の整列した糸で構成される。糸は、ラップの表面全体をすべて、又はほぼすべて覆うように配置される。この場合、中間材料を構成する各ラップでは、隙間又は重複を最小限に抑えるか又は完全に回避しながら、糸を端から端まで配置することが好ましい。
【0041】
一方向ラップでは、強化糸は、好ましくはポリマー結合剤に結合しておらず、したがって乾燥していると見なされ、即ち、強化糸は、ポリマー多孔質層との結合の前に、いかなる種類のポリマー結合剤とも含浸、被覆、又は結合していない。それにもかかわらず、強化繊維は、多くの場合、標準のサイジング重量濃度がその重量の最大2%であり得ることを特徴とする。これは、当技術分野で既知の直接法を使用した樹脂拡散によって複合部品を製造するのに特に適している。
【0042】
本発明の枠組みで使用される繊維強化材を構成する繊維は、好ましくは連続的である。一般に、繊維強化材は、いくつかの糸で構成される。
【0043】
具体的には、炭素糸は一組のフィラメントから構成され、一般に1000~80000のフィラメント、有利には12000~24000のフィラメントを有する。本発明の枠組みにおいて、1~24K、例えば3K、6K、12K又は24K、より好ましくは12~24Kの炭素糸が使用されるのが特に好ましい。例えば、本発明の枠組みで使用される繊維強化材内に存在する炭素繊維の番手は、60~3800テックス、好ましくは400~900テックスである。繊維強化材は、任意の種類の炭素糸で作製でき、炭素糸としては例えば、引張弾性率が220~241GPaの範囲内で、引張破壊応力が3450~4830MPaの範囲内の高抵抗(HR)糸、引張弾性率が290~297GPaの範囲内で、引張破壊応力が3450~6200MPaの範囲内の中間弾性(IM)糸、及び引張弾性率が3450~5520Paの範囲内の高弾性(HM)糸(「ASM Handbook」,ISBN 0-87170-703-9,ASM International 2001による)などが挙げられる。
【0044】
本発明による強化材料
本発明は、様々な種類の強化材料、例えば、互いに積み重なるように意図された単一の繊維強化材を含む単純な強化材料、又はスタックの形態のいくつかの繊維強化材を含むより複雑な強化材料用にカスタマイズでき、これらの材料は、単独でも、又はスタックの形態でも使用できる。
【0045】
単純な強化材料の例としては、その少なくとも1つの面に本発明の枠組みで提供される多孔質層を伴う、繊維強化材に対応する強化繊維の一方向ラップから構成される強化材料が挙げられ得る。対称的な材料を得るために、繊維強化材、特に強化繊維の一方向ラップは、その各面に、本発明の枠組みで提供される多孔質層を伴い、強化繊維の一方向ラップの各面に存在する多孔質層は好ましくは同一である。本発明の枠組みにおいて、多孔質層はホットメルト特性を有し、繊維強化材と多孔質層との結合は、多孔質層のホットメルト特性のおかげで有利に行われる。このホットメルト特性は、多孔質層を構成する部分的に架橋されたポリマーの熱可塑性部分に起因する。
【0046】
より複雑な強化材料の例としては、異なる方向に配向された一方向強化繊維のラップのスタックで構成され、本枠組みで提供される少なくとも1つの多孔質層が2つの一方向強化繊維ラップ間及び/又はスタックの表面に配置されている強化材料が挙げられ得る。第1の変形例によれば、そのような材料は、鎖構造(CM/R)に対応するスタックから構成されてもよく、CMは、本発明の枠組みで提供されるような部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー多孔質層を指定し、Rは、本発明の枠組みで説明したような繊維強化材であり、nは整数を指定し、好ましくは、すべてのCM層が同一の坪量を有するか、又はさらには同一である。
【0047】
第2の変形例によれば、そのような材料は、鎖構造(CM/R)/CMに対応するスタックから構成されてもよく、CMは、本発明の枠組みで提供されるような部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー多孔質層を指定し、Rは、本発明の枠組みで説明したような繊維強化材であり、nは整数を指定し、好ましくは、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー外側多孔質層の坪量は、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー内側多孔質層の各々の半分の坪量に等しい。
【0048】
具体的には、この種類のスタックでは、繊維強化材Rは、強化繊維、より具体的には炭素繊維の一方向ラップであり、好ましくは坪量が同一である。
【0049】
このような材料は、NCF(非圧着布)と呼ばれる。NCF分野では、従来、強化繊維の一方向ラップ間、及び存在する多孔質層との結合は、ステッチング又はニッティングによって行われる。当然ながら、ステッチング又はニッティングによるこの結合は、多孔質層のホットメルト特性によって、又は他の種類の物理的接続(ニードリングなど)による接着によって代替又は補完され得る。
【0050】
NCFの場合、本発明による強化材料は、0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°の角度から選択される様々な方向にある一方向ラップから構成される。すべてのラップは異なる方向であることができ、又は一部のみが異なる方向であってもよい。例として、本発明による強化材料は、以下のスタック、0°/90°、90°/0°、45°/135°、135°/45°、90°/0°/90°、0°/90°/0°、135°/45°/135°、45°/135°/45°、0°/45°/90°、90°/45°/0°、45 °/0°/90°、90°/0°/45°、0°/135°/90°、90°/135°/0°、135°/0°/90°、90°/0°/135°、45°/0°/135°、135°/0°/45°、45°/135°/0°、0°/135°/45°、45°/135°/90°、90°/135°/45°、135°/45°/0°、0°/45°/135°、135°/45°/90°、90°/45°/135°、60°/0°/120 °、120°/0°/60°、30°/0°/150°、150°/0°/30°、135°/0°/45°/90°、90°/45°/0°/135°、45°/135°/0°/90°、90°/0°/135°/45°、0°/45°/135°/90°、90°/135°/45°/90°、90°/135°/0°/45°、45°/0°/135°/90°に従って作製でき、0°は、本発明による強化材料の製造機械の送り方向に対応する。ステッチング又はニッティングによる結合の場合、ステッチング又はニッティング糸の一般的な方向も、一般に0°に対応する。そのような多軸の作製は既知であり、“Textile Structural Composites,Composite Materials Series Volume 3”,Tsu Wei Chou&Franck.K.Ko,ISBN 0-444-42992-1,Elsevier Science Publishers B.V.,1989,Chapter 5,Paragraph 3.3、又は多軸繊維ラップの作製方法及び装置を記載した仏国特許第2761380号に記載のような従来技術によって実施される。一方向ラップは、多軸の作製前に構築するか、又は作製中に配置できる。様々な一方向ラップのステッチング又はニッティングを介した接続は、互いに平行な線上にあるソーイング又はニッティングステッチに沿って実施できる。ソーイング又はニッティングステッチは、1~20mm、好ましくは2~12mmの、好ましくは同一の間隔に沿って単一の線で離間している。同様に、ステッチング又はニッティングの2つの連続する線は、例えば、互いから2~50mm、好ましくは5~15mm離間している。好ましくは、一連の互いに平行な線の連続するステッチング線はすべて、同一の距離だけ離間する。本発明の枠組みに特に適したステッチ糸を構成する材料の例としては、ポリエステル(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、フェニレンポリスルフィド(PPS)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、液晶ポリマー(LCP)、ポリケトン、ポリアミド、架橋可能な熱可塑性樹脂、炭素、ガラス、玄武岩、シリカ、及びそれらの混合物が挙げられ得る。ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリ乳酸、及びそれらのコポリマーは、使用できるポリエステルの例である。糸の番手は、例えば、EN ISO規格2060に従って決定された、5~150デシテックスの範囲内、具体的には30デシテックス未満である。NCF系材料で使用できる構築法の詳細については、欧州特許第2547816号又は国際公開第2010/067003号を参照されたい。
【0051】
本発明による前駆体強化材料
本発明はまた、その少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー多孔質層を伴い、熱可塑性ポリマー上に存在する架橋性官能基の少なくとも一部を架橋後に、本発明による強化材料をもたらす繊維強化材を含む前駆体材料に関する。この前駆体材料は、ポリマーがまだ部分的に架橋されていないという事実によってのみ、本発明の材料とは異なる。残りについては、他の特徴は、あらゆる点で、本発明の前述の強化材料の特徴と同一である。図1は、その1つの面だけに架橋可能な熱可塑性多孔質層を伴う繊維強化材を含むそのような前駆体強化材料の、多孔質層の部分的な架橋後の本発明による強化材料への変換を示す。
【0052】
本発明による強化材料の調製方法
本発明の枠組みにおいて、多孔質層の架橋は、多孔質層が繊維強化材に配置されるか又は上記繊維強化材と結合される前又は後に実施できる。
【0053】
第1の変形例によれば、本発明による強化材料は、以下の連続するステップ、
a1)繊維強化材を有するステップと、
a2)部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層を有するステップと、
a3)繊維強化材を、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層と結合するステップと
を実施することによって調製できる。
【0054】
ステップa3)は、少なくとも1つの多孔質層を上記繊維強化材に適用することによって得ることができ、上記適用は、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーの加熱を伴うか又はその後の加熱によって、軟化又は溶融し、続いて冷却される。
【0055】
第2の変形例によれば、本発明による強化材料は、以下の連続するステップ、
b1)その少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成されるポリマー多孔質層を伴う繊維強化材を含む、本発明による前駆体材料を有するステップと、
b2)熱可塑性ポリマー上に存在する架橋性官能基の少なくとも一部を架橋するステップと
を実施することによって調製できる。
【0056】
この場合、方法は、ステップb1)の上流に、以下の連続するステップ、
c1)繊維強化材を有するステップと、
c2)架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層を有するステップと、
c3)繊維強化材を、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層と結合させるステップと
を含むことができる。
【0057】
ステップc3)は、少なくとも1つの多孔質層を繊維強化材に適用することによって得られ、上記適用は、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーの加熱を伴うか又はその後の加熱によって、軟化又は溶融するが、架橋性官能基は架橋されず、続いて冷却される。
【0058】
好ましくは、選択される変形例に関係なく、架橋性官能基は、照射によって、具体的にはUV、ガンマ、若しくはベータ線の作用によって、又は加熱によって架橋できる。
【0059】
架橋はまた、多孔質層内に存在する過酸化物系触媒を添加することによって行うことができる。触媒は、多孔質層上に堆積させることによって、特に噴霧することによって導入できる。
【0060】
当然ながら、架橋様式は、使用されるポリマー及び存在する架橋性官能基に基づいて選択される。
【0061】
架橋は、不活性雰囲気下又は大気中で行うことができる。多くの場合、UV、ガンマ、又はベータ架橋の場合、架橋は20~50℃の範囲内の温度で行われる。
【0062】
架橋条件は、使用される架橋可能な熱可塑性ポリマーに基づいて、及び上記ポリマー上に存在する架橋性官能基に基づいて、当業者によって適合され得る。具体的には、ガンマ線又はベータ線の場合、25~300kGy、好ましくは50~200kGy(キログレイ)の線量が採用され、ベータ線の場合、好ましくは60~300kV(キロエレクトロンボルト)の加速電圧が適用され得る。
【0063】
架橋のレベル、特に使用される放射線のパラメータを調整することにより得られる架橋のレベルを調整することによって、得られる部分的に架橋された多孔質層の不溶性の程度を制御することが可能である。
【0064】
前述のように、架橋は、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成されるポリマー層上で、繊維強化材との結合の前及び後の両方で行うことができる。それにもかかわらず、使用される架橋技術に応じて、特に制御がより容易な照射による架橋の場合、選択された技術は、多孔質層の数及びそれらのアクセス可能性に依存し得る。
【0065】
架橋ステップが本発明による強化材料の前駆体材料で行われる場合、上記前駆体材料は、その少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成されるポリマー多孔質層を伴う繊維強化材を含み、架橋は、得られた生成物をベータ線(「e-ビーム」とも呼ばれる)下に通過させることにより、自動化された方法の最終ステップとして行うことができる。ガンマ線下で架橋を活性化させる場合、前駆体材料のローラ又はパレットに照射を行うことも可能である。
【0066】
したがって、単一の繊維強化材を含む単純な材料の場合、第1又は第2の変形例を使用できるが、第2の変形例が好ましい。使用される架橋技術(ベータ線下での照射)に基づいて、強化繊維が放射線遮断幕として作用する状態で、材料の両面に照射を行う必要がある場合がある。
【0067】
2つの繊維強化材の間に少なくとも1つの多孔質層を含むより複雑な材料の場合、特にNCFの場合、特にベータ線の照射下で架橋が行われる場合、第1の変形例を使用するのが好ましい。
【0068】
当然ながら、使用される調製方法に関係なく、多孔質層及び強化材料は、最終的に、ポリマー多孔質層が強化材料の総重量の10%以下、好ましくは強化材料の総重量の0.5~10%、さらにより好ましくは得られた強化材料の総重量の2~6%になるように選択される。
【0069】
プリフォーム又は複合部品の製造のための、本発明による強化材料の使用及び使用方法
少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成されるポリマー多孔質層を伴う繊維強化材を含む本発明の強化材料は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物と共にプリフォーム又は複合部品を製造するのに完全に適している。
【0070】
従来、本発明による少なくとも1つの強化材料からプリフォーム又は複合部品を製造する方法では、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物が、上記強化材料、又はいくつかの強化材料のスタックに射出又は注入される。
【0071】
本発明の枠組みにおいて、強化材料内に存在する多孔質層に熱可塑性部分が存在することを考慮すれば、樹脂の射出又は注入の前に、強化材料内に存在する少なくとも1つの上記多孔質層のホットメルト特性を使用した配置又はレイアップを実施してもよい。有利には、プリフォーム又は複合部品の製造方法は、本発明による材料を配置又はレイアップするステップを含み、多孔質層は、本発明の枠組みで定義される多孔質層の少なくとも部分的な溶融をもたらす温度、特に80~130℃、好ましくは80~120℃の範囲内の温度に加熱される。
【0072】
複合部品の製造に使用されるステップは、従来のものであり、当技術分野で周知である。平坦なプリフォーム、さらには所望の三次元形状のプリフォームを作製できる。具体的には、本発明による強化材料の配置は、配置表面に垂直に圧力を加えて、強化材料をこの表面に押し付けることにより、連続して行うことができる。AFP(自動繊維配置)又はATL(自動テープレイアップ)として既知のそのような方法は、例えば、国際公開第2014/076433Al号又は国際公開第2014/191667号に記載されている。本発明による材料の様々なストリップは、作製されるプリフォームに応じて、平行でも平行でなくてもよい配置経路に沿って互いに隣り合って配置され、互いに上下に配置された一連のプライを形成できる。配置が進行するにつれて、多孔質層の熱可塑性材料は活性化され、つまり、軟化されて、材料のホットメルト特性が使用される。プライが完全に配置されると、方向が変更され、前のプライとは異なる配置経路に沿って次のプライが配置される。各ストリップは、前のストリップに平行又は非平行(作成するパーツの形状に応じて)に、ストリップ間に間隔を空けて又は空けずに、表面全体が溶融した状態で配置される。この配置方法は、幅が3~300 mmの範囲内の、好ましくは小さい幅(0.25mm未満)の変形例の強化材料に適している。強化材料の幅がそれより広い場合、他の適切な方法で配置できる。
【0073】
最終ステップとして、複合部品の製造において、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物を、本発明による強化材料又は強化材料のスタック内に注入又は射出を介して拡散するステップ、続いて、所定の温度サイクル及び加圧下での重合/架橋ステップ並びに冷却ステップを介して所望の部品を固化するステップを実施する。本発明に関連して説明されるすべての実施変形例に付随的に適した特定の実施形態によれば、拡散、固化、及び冷却ステップは、開放型又は閉鎖型で実施される。
【0074】
本発明による強化材料又は強化材料のスタック内に拡散された樹脂は、熱可塑性若しくは好ましくは熱硬化性であってもよく、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物から構成されていてもよい。熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、芳香族ポリエーテルなどが挙げられ得る。使用可能な熱硬化性樹脂は、特に、エポキシド、不飽和、ポリエステル、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、ベンゾオキサジン、シアン酸エステル、及びそれらの混合物から選択される。そのような樹脂にはまた、選択された熱硬化性ポリマーと共に使用されることが当技術分野で既知の1つ以上の硬化剤が含まれ得る。特に、本発明は、熱硬化性樹脂、具体的にはエポキシ樹脂で実施される。
【0075】
好ましくは、本発明は、複合部品の作製のために、減圧下、具体的には大気圧未満、より具体的には1バール未満、より好ましくは0.1~1バールの範囲内での熱硬化性樹脂の注入を使用する。好ましくは、注入は、例えば真空バッグ内の注入によって、開放型で行われる。
【0076】
最終的な複合部品は、熱処理ステップ後に得られる。具体的には、複合部品は、一般に、検討中のポリマーの熱処理による従来の固化サイクルによって得られ、この処理は、ポリマーの供給者によって推奨され、当技術分野で既知である。所望の部分を固化するステップは、所定の温度サイクル及び圧力下での重合/架橋、その後の冷却によって行われる。熱硬化性樹脂の場合、樹脂を硬化前にゲル化するステップが設けられることが多い。処理サイクル中に加えられる圧力は、減圧下の注入では低く、RTM型への射出では高くなる。
【0077】
以下の例は、添付の図面を参照して、本発明を例示するが、決して限定するものではない。
なお、下記[1]から[34]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
その少なくとも1つの面にポリマー多孔質層を伴う少なくとも1つの繊維強化材を含む強化材料であって、存在する前記ポリマー多孔質層が前記強化材料の総重量の10%以下、好ましくは前記強化材料の総重量の0.5~10%、好ましくは前記強化材料の総重量の2~6%である強化材料において、
存在する前記ポリマー多孔質層が部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むことを特徴とする、強化材料。
[2]
前記多孔質層を構成する前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが熱可塑性部分と架橋部分とを含み、前記熱可塑性部分が前記ポリマーの重量の30~90重量%、好ましくは30~70重量%であることを特徴とする、[1]に記載の強化材料。
[3]
前記多孔質層を構成する前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが熱可塑性部分と架橋部分とを含み、前記熱可塑性部分の融点が150℃未満、さらには140℃未満、好ましくは80~130℃の範囲内、好ましくは80~120℃の範囲内であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の強化材料。
[4]
前記多孔質層を構成する前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが半結晶性ポリマーであることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の強化材料。
[5]
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが、熱又は放射線の作用下で架橋性官能基を架橋することによって得られ、前記架橋は化学触媒を必要としないことを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の強化材料。
[6]
前記架橋性官能基が不飽和官能基から選択されることを特徴とする、[5]に記載の強化材料。
[7]
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーがコポリアミド類に属することを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載の強化材料。
[8]
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが、
-ジエチレントリアミン、ペンタエリトリトール、メリト酸、及び2,2-ジメチロールプロピオン酸から選択される多官能性モノマー(A)に由来する少なくとも1つの単位と、
-少なくとも、鎖制限剤として使用される少なくとも1つの不飽和一酸の存在下での、
-同じ数の炭素原子を持たない少なくとも2つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
-又は、同じ数の炭素原子を持たない少なくとも2つのラクタム、
-又は、少なくとも1つのラクタム、少なくとも1つのカルボン酸二酸、及び少なくとも1つのジアミン、
-又は、同じ順序の炭素原子を持たない1つのラクタム及び/又は1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
-又は、1つのジアミン及び1つのカルボン酸
-又は、少なくとも1つのジアミン、少なくとも1つのカルボン酸二酸、及び少なくとも1つのアルファ、オメガ-アミノカルボン酸、
の縮合から生じる鎖構造と、
から構成される不飽和末端を有する分岐コポリアミドを架橋することによって得られ、
(A)の割合が、(A)及び他の前述のモノマーの合計の9重量%未満であることを特徴とする、[1]に記載の強化材料。
[9]
不飽和末端を有する前記分岐コポリアミドの鎖構造が、少なくともカプロラクタム及びラウリルラクタムを含むことを特徴とする、[8]に記載の強化材料。
[10]
不飽和末端を有する前記分岐コポリアミドの鎖構造が、少なくともカプロラクタム、ジアミンヘキサメチレン、及びアジピン酸を含むことを特徴とする、[8]に記載の強化材料。
[11]
不飽和末端を有する前記分岐コポリアミドの前記不飽和一酸が、クロトン酸又はウンデシレン酸であることを特徴とする、[8]~[10]に記載の強化材料。
[12]
前記部分的に架橋された熱可塑性ポリマーが、イソシアナート及びエポキシ官能基を含むコポリアミドを架橋することによって得られることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の強化材料。
[13]
前記繊維強化材が、強化繊維の一方向ラップ、強化繊維の布、又はステッチング若しくは他の物理的手段によって互いに接続された一方向ラップのスタックであることを特徴とする、[1]~[12]のいずれかに記載の強化材料。
[14]
前記繊維強化材が炭素繊維から構成されることを特徴とする、[1]~[13]のいずれかに記載の強化材料。
[15]
その少なくとも1つの面に多孔質層を伴う前記繊維強化材、に相当する強化繊維の一方向ラップから構成されることを特徴とする、[1]~[14]のいずれかに記載の強化材料。
[16]
各面に多孔質層を伴う前記繊維強化材、に相当する強化繊維の一方向ラップから構成され、強化繊維の前記一方向ラップの各面に存在する前記多孔質層が同一であることを特徴とする、[15]に記載の強化材料。
[17]
前記少なくとも1つのポリマー多孔質層が、ホットメルト特性を有し、前記繊維強化材と前記少なくとも1つの多孔質層との結合が、前記多孔質層のホットメルト特性を介して行われたことを特徴とする、[1]~[16]のいずれかに記載の強化材料。
[18]
異なる方向に配向された一方向強化繊維ラップのスタックから構成され、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含む少なくとも1つのポリマー多孔質層が2つの一方向強化繊維ラップ間及び/又は前記スタックの表面に配置されていることを特徴とする、[1]~[14]のいずれかに記載の強化材料。
[19]
鎖構造(CM/R) に対応するスタックから構成され、CMは部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー多孔質層を指定し、Rは繊維強化材であり、nは整数を指定し、好ましくはすべてのCM層の坪量が同一であることを特徴とする、[18]に記載の強化材料。
[20]
鎖構造(CM/R) /CMに対応するスタックから構成され、CMは部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー多孔質層を指定し、Rは繊維強化材であり、nは整数を指定し、好ましくは、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるすべての外側ポリマー多孔質層の坪量が、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される内側ポリマー多孔質層の各々の半分の坪量に等しいことを特徴とする、[18]に記載の強化材料。
[21]
前記繊維強化材Rが、強化繊維の一方向ラップであり、好ましくは坪量が同一であることを特徴とする、[19]又は[20]に記載の強化材料。
[22]
強化繊維の一方向ラップの相互間の結合及び少なくとも1つの多孔質層との結合が、ステッチング、ニッティング、又はニードリングによって行われることを特徴とする、[18]~[21]のいずれか一項に記載の強化材料。
[23]
存在する多孔質層が、多孔質フィルム、グリッド、粉末堆積物、布、又は好ましくは不織布若しくはウェブであることを特徴とする、[1]~[22]のいずれか一項に記載の強化材料。
[24]
少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成されるポリマー多孔質層を伴う繊維強化材を含むことを特徴とする、[1]~[23]のいずれかに記載の強化材料の前駆体材料。
[25]
以下の連続するステップ、
a1)繊維強化材を有するステップと、
a2)部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層を有するステップと、
a3)前記繊維強化材を、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーを含むか又はそれから構成される前記少なくとも1つのポリマー多孔質層と結合させるステップと
を含むことを特徴とする、[1]~[23]のいずれか一項に記載の強化材料の調製方法。
[26]
ステップa3)の結合が、少なくとも1つの多孔質層を前記繊維強化材に適用することによって得られ、前記適用が、部分的に架橋された熱可塑性ポリマーの加熱を伴うか又はその後の加熱によって、軟化又は溶融し、続いて冷却されることを特徴とする、[25]に記載の調製方法。
[27]
以下の連続するステップ、
b1)少なくとも1つの面に、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成されるポリマー多孔質層を伴う繊維強化材を含む、[24]に記載の前駆体材料を有するステップと、
b2)前記熱可塑性ポリマー上に存在する前記架橋性官能基の少なくとも一部を架橋するステップと
を含むことを特徴とする、[1]~[23]のいずれかに記載の強化材料の調製方法。
[28]
ステップb2)の架橋が、熱、又は好ましくはUV、ガンマ、若しくはベータ線の作用下で行われることを特徴とする、[27]に記載の調製方法。
[29]
ステップb1)の上流に、以下の連続するステップ、
c1)繊維強化材を有するステップと、
c2)架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成される少なくとも1つのポリマー多孔質層を有するステップと、
c3)前記繊維強化材を、架橋性官能基を有する熱可塑性ポリマーを含むか又はそれによって構成される前記少なくとも1つのポリマー多孔質層と結合させるステップと
を含むことを特徴とする、[27]又は[28]に記載の調製方法。
[30]
ステップc3)の結合が、前記少なくとも1つの多孔質層を前記繊維強化材に適用することによって得られ、前記適用が、架橋性官能基を有する前記熱可塑性ポリマーの加熱を伴うか又はその後の加熱によって、軟化又は溶融するが、前記架橋性官能基は架橋されず、続いて冷却されることを特徴とする、[29]に記載の調製方法。
[31]
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物が、前記強化材料又は[1]~[23]のいずれかに記載のいくつかの強化材料のスタックに射出又は注入されることを特徴とする、[1]~[23]のいずれかに記載の少なくとも1つの強化材料からプリフォーム又は複合部品を製造する方法。
[32]
前記樹脂の射出又は注入の前に、前記強化材料内に存在する前記少なくとも1つの多孔質層のホットメルト特性を使用した配置又はレイアップを含むことを特徴とする、[31]に記載のプリフォーム又は複合部品の製造方法。
[33]
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物とともに、プリフォーム又は複合部品を作製するための、[1]~[23]のいずれかに記載の強化材料の使用。
[34]
熱硬化性樹脂、より具体的にはエポキシ樹脂が射出又は注入されることを特徴とする、[31]若しくは[32]に記載の製造方法又は[33]に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】前駆体強化材料の多孔質層の部分的な架橋を、断面で、極めて概略的に示し、その1つの面だけに架橋可能な熱可塑性多孔質層を伴う繊維強化材によってもたらされる本発明による強化材料、したがって、部分的に架橋された熱可塑性多孔質層を伴う繊維強化材を示す。
図2】「ウェブ付きUD」と呼ばれる強化材料の製造例で使用される方法を線図形式で示す。
図3】ベータ線の適用線量に基づく、HX2632ウェブ、及びそのようなウェブで作製されたウェブ付きUD材料について得られた架橋のレベルを示す。
図4】様々なウェブ及び樹脂を2枚のスライドガラスの間に置き、加熱した(又はしなかった)ときに光学顕微鏡で得られた画像を示す。
図5】様々なウェブ及び樹脂を2枚のスライドガラスの間に置き、加熱した(又はしなかった)ときに光学顕微鏡で得られた別の画像を示す。
図6】様々なウェブ及び樹脂を2枚のスライドガラスの間に置き、加熱した(又はしなかった)ときに光学顕微鏡で得られたさらに別の画像を示す。
図7】EN規格6032(1Hz、1℃/分、振幅15μm)に従った、様々な樹脂/ウェブサンプルで得られたDMA曲線を示す。
図8】EN規格6032(1Hz、1℃/分、振幅15μm)に従った、様々な樹脂/ウェブサンプルで得られた別のDMA曲線を示す。
図9】ISO規格11357-3に従った、DSCによる100kGyのベータ線照射後のHX2632ウェブの溶融挙動曲線を示す。
図10】強化材料の配置方法を線図形式で示す。
図11】例で使用した剥離試験を線図形式で示す。
図12】非平坦なプリフォームを作製するための予備成形方法を線図形式で示す。
図13】表5に記載の直径測定を行う場所を示す。
図14】例で報告された微小亀裂の挙動の調査に使用した湿熱サイクルを示す。
図15】存在する可能性のある微小亀裂を調べるために、例中のサンプルの準備に使用される切断面を示す。
図16】本発明又は従来技術による材料で作製された積層板で得られた微小亀裂の密度を示す。
図17】先行技術の材料で得られた積層板の光学顕微鏡下で得られた画像である。
図18】2枚のスライドガラスの間に置いた、180℃に加熱後のHylink粉末及びRTM6樹脂の電子顕微鏡下で得られた画像を示す。
図19】EN規格6032(1Hz、1℃/分、振幅15μm)に従った、様々な樹脂/ウェブ又は樹脂/粉末サンプルで得られたDMA曲線を示す。
【0079】
使用する材料/製品
本発明による多孔質層を、以下のいずれかで作製した:
1)Arkema社から販売されているPlatamid(登録商標)HX2632ポリマー(UV、ガンマ、又はベータ処理下で三次元網目構造を可能にする末端不飽和のコポリアミド)で作製された繊維のウェブであって、融点が117℃であり、このウェブ(以下、ウェブHX2632と呼ぶ)は、メルトブローによって得られ、繊維強化材に積層する前の単位面積あたりの質量は100μmである、ウェブ。ウェブを構成する繊維の直径は15μmである。国際公開第2011/086266号に記載の方法に従って測定されたそのような層の開口率は、50+/-10%である。
【0080】
2)又は、エポキシ及びイソシアナート官能基の存在により温度で架橋可能な熱可塑性コポリアミド粉末の堆積であって、T字型の三次元網目構造の作成を可能し、Evonik社から販売されているVestamelt Hylink(X1333)[欠落したテキスト:おそらく「製品など」]が挙げられ、融点は123℃である、堆積。架橋は150℃の温度で開始できる。
【0081】
比較の目的で使用する多孔質層は、以下のいずれかで作製した:
1)Protechnic社(66,rue des Fabriques,68702-CERNAY Cedex,フランス)から販売されている1R8D04熱可塑性ウェブであって、融点160℃であり、このウェブ(以下、ウェブ1R8D04と呼ぶ)は、メルトブローによって得られ、繊維強化材に積層する前の単位面積あたりの質量は4g/m、厚さは100μmである、ウェブ。ウェブを構成する繊維の直径は15μmである。国際公開第2011/086266号に記載の方法に従って測定されたそのような層の開口率は、50+/-10%である。
【0082】
2)又は、Arkema社から販売されている熱可塑性ポリマーPA11 LMNOで作製された繊維のウェブであって、融点が188℃であり、このウェブ(以下、ウェブPA11 LMNOと呼ぶ)は、メルトブローによって得られ、繊維強化材に積層する前の単位面積あたりの質量は4g/m、厚さは100μmである、ウェブ。ウェブを構成する繊維の直径は15μmである。国際公開第2011/086266号に記載の方法に従って測定されたそのような層の開口率は、50+/-10%である。
【0083】
3)又は、布Hexcel Primetex 43098 S 1020 S E01 1Fで使用されているエポキシ粉末の層の堆積。粉末の平均直径は、51μm(D50、中央値)で、ガラス転移温度は54~65℃の範囲内である。
【0084】
すべての場合で使用される繊維強化材は、IMA 12Kの参照名で出願人が販売している一方向性炭素繊維である。これら12K繊維の特性を以下の表1にまとめる。
【0085】
複合部品の作製に使用できる熱硬化性樹脂は、Hexcel Composites社(ダニュー、フランス)によって販売されているRTM6及びRTM230STエポキシ樹脂である。
【表1】
【0086】
実施した測定
DSC:示差走査分析。分析は、TA Instruments社(ギュイヤンクール、フランス)のQ2000装置で実施した。
【0087】
DMA:動的機械分析。分析は、TA Instruments社(ギュイヤンクール、フランス)のQ800装置で実施した。
【0088】
高温顕微鏡分析:分析は、Linkam Scientific Instruments社(タッドワース、英国)の加熱装置を備えた、Zeiss社(マルリー=ル=ロワ、フランス)のImager Axio M2m顕微鏡で実施した。
【0089】
レオロジー:粘度分析は、Thermofisher Scientific社(クールタブフ、フランス)のHAAKE Marsレオメータで実施した。
【0090】
ウェブの積層-「ウェブ付きUD」強化材料の製造
ウェブは、所望の坪量のラップが形成された直後に、この目的のために特別に使用される機械(図2)によって、炭素繊維の一方向ラップの両側に直接積層する。炭素糸1は、クリール4に取り付けられた炭素糸巻き3から巻き出され、コーム5を通過して、ガイドバー8aのガイドローラ6及びコーム7によって機械のシャフトに導かれる。炭素糸は、加熱バー9を使用して予熱され、次に、延展機バー8b及び加熱バー10によって、所望の単位面積あたりの炭素質量の一方向ラップ17に広げられる。ウェブロール13a及び13bは、張力なしで巻き出され、自由に回転可能なローラ14a、14b、14c、14dと加熱バー12a、12bとの間に取り付けられたコンベヤベルト15a、15bを使用して移送される。ウェブ2a、2bは、炭素糸1と接触する前にゾーン11a、11bで予熱され、エアギャップが制御される2つの加熱バー12a、12bの両側で積層される。次に、冷却されていてもよいカレンダ16は、各側17にウェブを有する一方向ラップに圧力を加える。リターンローラ18は、製品17を、製品17を引っ張る3つのローラ19を含み、次に製品17を巻き取る20牽引システムの方へ向け直し、エンジンによって駆動されて、成形材料17からなるロールを形成する。
【0091】
両側にウェブを組み合わせた炭素一方向ラップ(「ウェブ付きUD」と呼ばれる)を製造するための試験条件は以下の表2に列挙されている。
【表2】
【0092】
A.ウェブを使用する場合に実施した試験
I.生成された架橋部分への放射線照射の影響
ウェブHX2632は、様々なベータ線(COMET社(フラマット、スイス)の装置、加速電圧150キロエレクトロンボルト(kV)、及び照射線量50~100キログレイ(kGy))で処理する。
【0093】
照射は、ウェブを一方向材に結合する前に行う。熱可塑性コポリアミドはギ酸に可溶であるため、架橋部分は以下のように測定する。上記照射後に得られたウェブ又はウェブ付きUDをギ酸に周囲温度(23℃)で3日間浸漬し、次いで得られた残留物を濾過し、50℃で4時間乾燥させる。図3は、架橋後に得られたウェブの総重量に対する、上記残留物(したがって、架橋部分に対応する)によって表される重量パーセントの変化を示す。得られた結果は、ウェブのみに照射したか、ウェブ/一方向材の組み合わせに照射したかに関係なく、同じである。
【0094】
架橋部分は30~60%で変化し、使用した照射条件に基づいて変化すると思われる。
【0095】
II.RTM6樹脂への溶解度に対する架橋の影響
照射前のウェブHX2632、及びウェブに適用されたRTM6エポキシ樹脂を2つのスライドガラスの間に置き、スライドを光学顕微鏡下に置く。次に、アセンブリを、2℃/分の温度上昇で180℃まで昇温させ、これは、複合部品が作製されているときの樹脂の注入又は射出時の最終温度に対応する。したがって、樹脂を予備架橋するステップが使用されていないため、これはウェブの耐熱性にとって重要なサイクルである。
【0096】
図4は、23℃(左)及び180℃、したがって樹脂の架橋後(右)に得られた画像を示す。部分的に網状になっていない場合、ウェブは樹脂に溶解していると思われる。
【0097】
図5は、RTM6(左)及びRTM230ST(右)の2つの熱硬化性樹脂を使用して、使用したウェブが100kGyのベータ線を照射したウェブHX2632である場合に、180℃で得られた画像を示す。得られた架橋によって、ウェブはこれらの2つの樹脂に不溶性になると思われる。
【0098】
図6は、架橋レベルに基づくこの不溶性の変化を示し、50kGyのベータ線による処理(架橋部分の35+/-5重量)(左)、100kGyのベータ線による処理(架橋部分の57+/-5重量)(右)である。架橋レベルは、6つの測定値の算術平均をとることによって得られ、標準偏差は、平均における偏差の二次平均として定義される。
【数1】
【0099】
したがって、架橋部分の増加によって、ウェブの不溶性部分を増加及び制御することが可能になる。
【0100】
提示した写真は、多孔質層の架橋部分の存在によって、液体樹脂中でウェブの完全性を維持することが可能になり、熱可塑性部分の分子運動性が低下するように見えることを示す。
【0101】
III.DMAによって調査した架橋の影響
これらの結果は、RTM6/ウェブサンプルのDMA曲線(NE規格6032に従って取得)と相関させることができる。これらのサンプルは、金型内で垂直に保ったウェブを含浸させることによって調製した。RTM6樹脂による含浸が完了したら、サンプルを120℃で45分間予備重合し、その後180℃で2時間、後硬化させた。図7(DMA分析、1Hz、1℃/分-振幅15μm)に見られるように、ウェブに適用される照射線量は、DMAの結果が象徴する熱機械特性に大きく影響し、架橋レベルを上昇させることによって、RTM6樹脂のエポキシ-アミン網目構造のガラス転移まで材料の熱機械性能を維持でき、熱可塑性の寄与はごく僅かである(ベータ電子ビームで100kGyの線量)。一方、架橋がなければ、熱可塑性樹脂の転移は約80℃ではっきりと見え、熱機械特性の低下をもたらす。これは、光学顕微鏡で得られた結果を裏付けし、ウェブを照射することにより、ウェブとエポキシ樹脂との間の相互作用を制御できることを示す。
【0102】
これが本発明の要点である。なぜなら、100kGyのベータ線で処理されると、ウェブHX2632は、その低い融点にもかかわらず、熱硬化性樹脂の熱機械特性に影響を及ぼさないように見えるからである。
【0103】
さらに、100kGyの電子ビーム(ベータ線)を照射したウェブHX2632で得られた図8は、これらの観察が、使用される樹脂(RTM6又はRTM230ST)に関係なく確認されることを示す。
【0104】
IV.DSCを使用した調査
照射後のウェブの挙動を完全に理解するための最後のステップは、照射後もウェブが溶融できることを確認することであった。最も架橋されたウェブ(100kGyの電子ビームの照射後に得られた架橋部分が57重量%であり、50kGyの電子ビームの照射後に得られた架橋部分が35重量%である)について、ウェブ内に存在する架橋部分は、その後のウェブの溶融を妨げなかったことが確認された。
【0105】
実際、ウェブがホットメルト特性を保持しているという事実は、一方向材へのその後の接続のため、及びレイアップ中に、特にプリフォームの作製のために必要である。
【0106】
ISO規格11357-3に従って、DSCを使用して照射後のウェブの溶融挙動を観察した。図9に示す、得られた曲線は、ベータ電子ビームによる照射によって、ウェブの融点に関して僅かな差異が生じることを示すが、これはいずれの場合も約100℃で発生する。この低い融点は、時間及び費用の点で非常に有利であり、先行技術では一般に150℃を超える温度で行われる、プリフォームを作製するためのその後のレイアップステップ中に使用する温度を下げることができる。
【0107】
V.本発明による強化材料について行った調査
1)ウェブ付きUDにおける架橋
表2に列挙した条件下で、HX2632ウェブが一方向材の両側に積層されたウェブ付きUDについて、架橋レベルの測定を行った。電子ビーム照射のために加えた電圧は150kVであり、加えた線量は100kGyであった。炭素繊維は照射とは反応しないが、その密度のために光線の障壁として作用する可能性があるため、材料の片側のみ、又は両側で処理による影響を評価した。電子ビーム(ベータ線)で照射したウェブ付きUD材料を3日間ギ酸に浸し、濾過して乾燥させ、上記のように架橋レベルを評価した。
【0108】
結果を以下の表3に要約し、ウェブのみを照射して得られた架橋レベルと比較した。得られた結果は両方の材料で見かけ上類似しており、一方向材との結合より上流のウェブのみにおいて、又はウェブ付きUDにおいて、方法の2つの異なるステップで処理を実施できることが確認される。しかしながら、後者の場合、使用する架橋様式(電子ビーム下での照射)に基づいて、強化繊維の密度のために、材料の両面で処理を行う必要がある。ガンマ線照射の場合、片面だけの処理で十分である。
【0109】
表3は、検討中の多孔質層の総重量に対して得られた架橋部分の重量%を列挙している。
【表3】
【0110】
2)レイアップとプリフォーム
2.1)レイアップ
ウェブ付きUDの堆積は、ウェブ付きUDを堆積表面に適用するために堆積表面に垂直に圧力を加えて連続的に行われる。AFP(自動繊維配置)又はATL(自動テープレイアップ)として既知のそのような方法は、例えば、国際公開第2014/076433A1号又は国際公開第2014/191667号に記載されており、図10に示されている。中間材料の様々なストリップが、プライ200、200などを形成するように、平行な配置軌道に沿って上下に配置される。装置300は、熱可塑性材料(ウェブ、粉末など)を活性化し、即ち、材料のホットメルト特性を使用し、配置ユニット400に統合される。配置ユニット400は、材料の様々なストリップを配置するために移動され、ストリップは経路の端部で切り取られる。プライが完全に配置されると、方向が変更され、前のプライとは異なる配置経路に沿って次のプライが配置される。各ストリップは、前のストリップと平行に、ストリップ間に間隔を空けず、表面全体に接着剤が付いた状態で配置される。
【0111】
そのような方法は、本発明による材料で首尾よく使用されてきた。特に、以下の条件を使用した。
ウェブ付きUD強化材料の使用:HX2632ウェブを両面に一方向に積層し、各面に50kGyベータ線又は100kGyベータ線を照射する。FANUC社(日本)が販売するFANUC M16iBによって確保される配置電力及び配置速度。
【表4】
【0112】
プライの方向及び数:[(45/0/90/135/0])
【0113】
従来技術で使用されているエポキシ粉末系の熱硬化性材料の活性化の場合、主な利点は、約100℃の材料の活性化温度である。逆に、この種類の材料は、一般に、配置ユニット400の汚れをもたらす。このため、例えばウェブの形態の熱可塑性材料(国際公開第2010/046609号に引用されている熱可塑性材料など)が一般に好まれるが、しかし、先行技術で使用されている熱可塑性材料は、150℃を超える温度で活性化する。
【0114】
HX2632ウェブを備えた本発明のウェブ付きUD強化材料は、熱可塑性材料が部分的に架橋された場合でも、150℃未満の温度での材料の活性化の問題に対処することを提案する。特に、炭素ラップの各面に架橋HX2632ウェブを備えたウェブ付きUD材料は、80~130℃、より具体的には100~120℃の範囲内の温度で配置でき、これは、従来の熱可塑性ウェブと比較して、材料の配置に必要な電力が20~40%低く、特に配置手段の多くの加速段階で、配置速度を加速する(省エネルギー)。熱可塑性ウェブの架橋レベルは、これらの結果に影響を及ぼさない。なぜなら、残留熱可塑性部分は、その量に関係なく、材料の熱接着特性を保証するためである。より具体的には、同じ配置パラメータを、HX2632ウェブの架橋後に熱可塑性百分率が30~70重量%の範囲内の場合に使用できる。これらの結果から、本発明が大規模の配置操作に特に有利であり得ることが確認される。
【0115】
材料の配置の品質は、比較目的で使用される規格外の剥離試験によって評価した。剥離アセンブリを図11に示す。上記試験を行うために、事前に指定した配置電力及び配置速度を使用して、2つのウェブ付きUD材料のストリップを互いに平行に結合する。これによって形成した組(duo)を、50mm/分の任意の速度で200mmの距離(図11の予備成形距離)にわたって牽引して剥がし、生成された剥離力を測定する。したがって、配置の品質は、200mmにわたる剥離力の平均を測定することによって評価する。表5に示す結果は、IR8D04熱可塑性ウェブが両面に積層されたウェブ付きUD強化材料と、50又は100kGyのベータ線で処理されたHX2632ウェブが両面に積層されたウェブ付きUD強化材料との間の配置品質を比較したものである。3つのウェブの坪量は4g/mである。HX2632ウェブに照射処理を行ったにもかかわらず、接着特性にはまったく影響せず、したがって、純粋な熱可塑性ウェブで得られるものと同等の配置品質がもたらされ得ることは明らかである。
【0116】
表5は、使用されるウェブに従って、ウェブ付きUD中間材料の2つのストリップ間に200mmにわたって生成される剥離力を列挙している。
【表5】
【0117】
2.2)予備成形
2.1項で得られた平坦な多軸プリフォームは、続いて、一方向強化材料上に存在する熱可塑性材料の熱接着特性を再び使用することによって予備成形できる。これを行うには、平坦なプリフォームを予備成形ツール上に周囲温度で配置し、シリコーン真空バッグでアセンブリを覆い、次いで、アセンブリを熱可塑性又は熱硬化性材料の熱接着特性を活性化する温度でオーブンで加熱する。次に、減圧を適用して、平坦なプリフォームを所望の三次元形状に従って予備成形できるようにし、次いで、プリフォームを回収する前に、アセンブリを減圧下で冷却する。方法全体を図12に示す。(i)では、真空バッグを適用した、ツールに配置された二次元プリフォームを表示し、(ii)では、加熱によって熱接着が活性化され、(iii)では、真空を適用した予備成形ステップを行い、続いて、(iv)で真空状態で冷却し、(v)及び(vi)のステップ後にプリフォームが完成する。
【0118】
国際公開第2010/046609号に記載されているような強化材料は150℃を超える温度で予備成形する必要があるが、HX2632ウェブで作製した本発明の材料は、130℃未満、好ましくは120℃未満の温度で予備成形できる。これは、130℃未満の温度で方法全体を実施する大規模での使用における真の有用性を改めて示す。
【0119】
得られたプリフォームの品質を評価するために、プリフォーム上で直径測定を行う。配置品質の評価で行ったように、3つのウェブ付き材料、1RD04ウェブ、50kGyのベータ線照射を受けたHX2632ウェブ、及び100kGyのベータ線照射を受けたHX2632ウェブの積層を比較する。図12に示すようなプリフォームは、最初に、単位面積あたりの質量が210g/mの一方向プライ[(45/0/90/135/0)]を10個積み重ねることによって得た。予備成形サイクルと、得られたプリフォームで行った半径測定値とを表6に示す。図13は、プリフォーム上で直径を測定した場所を示す。
【表6】
【0120】
得られたプリフォームの品質を変えることなく予備成形温度を大幅に下げることができるため、結果は本発明の有用性を明確に示す。提示した例では、理論上の直径20mmに対する直径22mmは完全に許容可能と見なされる。
【0121】
3)パネルの処理
炭素坪量に適合したスタックシーケンスで構成された340mm x 340mmのプリフォームをプレス射出成形金型内に配置する。プリフォームを囲む既知の厚さのフレームによって、所望の繊維含有量(FC)が得られる。
【0122】
本発明による前述の強化材料2つと、従来技術で使用された他の強化材料2つとの4つの強化材料を比較する(表7)。
【表7】
【0123】
Hexcel Composites社がHexFlow RTM6の参照名で販売しているエポキシ樹脂を、プレス内で140℃に保たれているプリフォームを通して2バール、80℃で射出する。プレスによって加えられる圧力は5.5バールである。プリフォームが満たされ、樹脂が金型から出てくると、出口パイプが閉じ、重合サイクルが開始される(3℃/分で180℃まで昇温、続いて180℃で2時間の後硬化を行い、5℃/分で冷却)。
【0124】
次に、試験片を衝撃後圧縮(CAI)試験、面内せん断(IPS)試験、有孔圧縮(OHC)試験、並びに亀裂発生及び伝播試験(GIc及びGIIc)の実施に適した寸法に切断する。表8に要約する。
【表8】
【0125】
これらすべての試験で得られた結果を表9~11に列挙している。GIc及びGIIc試験の場合、700J/mを超える値が得られれば非常に満足できるものと見なされ、材料に関係なく得られる。
【表9】

【表10】

【表11】
【0126】
提示した機械的結果は、本発明の材料が対応する前述の方法の問題に加えて、これらの材料によって、特に耐衝撃性(CAI)、有孔試験(OHC)などの孔感度を示す機械的特性、面内せん断(IPS)、又は亀裂抵抗(亀裂発生及び伝播、GIc、GIIc)に関して最適な特性を備えた複合部品を得ることも可能になることを示す。
【0127】
具体的には、30Jの衝撃で250MPaを超える衝撃後圧縮強度を得ることができる。
【0128】
したがって、一方では、エポキシ粉末が乾燥プリフォームの実施形態のすべてのステップを80~130℃の範囲内の温度で実施する問題を解決するが、最適な機械的特性を有する複合部品が得られないことに留意されたい。さらに、従来のポリアミドウェブは最適な機械的特性が得られるが、低温の方法の問題を解決しない。
【0129】
したがって、本発明は、130℃未満の温度で乾燥プリフォームを作製する方法と、複合部品の最適な機械的特性とを組み合わせる。
【0130】
4)微小亀裂
微小亀裂の挙動は、単位面積あたりの質量が210g/mの一方向プライ[45°/0°/135°/90°]2を16個積み重ねることによって乾燥プリフォームが得られる複合材料について調査する。Hexcel社がHexFlow RTM6の参照名で販売しているエポキシ樹脂を、プレス内で140℃に保たれているプリフォームを通して2バール、80℃で射出する。プレスによって加えられる圧力は5.5バールである。プリフォームが満たされ、樹脂が金型から出てくると、出口パイプが閉じ、重合サイクルが開始される(3℃/分で180℃まで昇温、続いて180℃で2時間の後硬化を行い、5℃/分で冷却)。
【0131】
3つの強化材料、本発明による2つ、即ち前述の本発明による材料3及び4と、従来技術で使用される1つ、即ち前述の比較材料2と同様の強化材料であるが、繊維強化材の各面で多孔質層1R8D04が多孔質層PA11 LMNOに置き換えられた比較材料5とを比較する。
【0132】
その後、得られた複合材料は、航空部品が耐えなければならない可能性がある熱サイクル及び湿度期間をシミュレートするために、1つ以上の湿熱サイクルに供される。
【0133】
50mmx60mmx4mmのサンプルを切り取り、以下に定義する湿熱サイクルに供する。次に、各サンプルを再度切り取り、研磨して、サイクル中に発生した亀裂の数を数える。
【0134】
図14に示す湿熱サイクル:
サイクルには、2つの段階を何回か繰り返すことが含まれる。
50℃、湿度95%未満で湿度を上昇させ、その後1時間の熱サイクルを行う静止段階。これらの熱サイクルは、-55℃で15分間のプラトー期、続いて15分間の温度上昇によって72℃に達し、続いて72℃で15分間のプラトー期で構成される。このプラトー期の後に、新しい温度変化段階が続き、-55℃に戻る。この負の温度が選択されるのは、亜音速飛行中に航空機が受ける可能性がある温度に対応するためである。正の温度は放湿を加速する。
【0135】
加湿期間に起因する負荷によって、サンプル内に水の濃度勾配が生じる。この濃度プロファイルは、拡散係数が繊維方向に大きくなるため、サンプルの端部では異なる。繊維の向きが一方向プライごとに異なるため、拡散係数も同様に異なり、サンプルの端部に非常に複雑な水分濃度プロファイルが生成される。この現象は、サンプルの寸法決定及び調査対象領域の画定の際に考慮されている。
【0136】
湿熱サイクルは、Climatique et Thermique Service社(ZAC du Pujol、13390 Auriol、フランス)のCTS(気候試験システム)、モデルCS-70/280-15内で実施し、このシステムには、二段階の寒冷性液体の放出による冷却システムが含まれる。Carrier社(CARRIER S.A.S.Route du Thil 01122 Montluel Cedex)の冷凍ユニット、タイプ30 RA-040-B 0327-PEEは、その動作を保証するために、気候室の第1段階の冷却システム内に、かなりの量の再生グリコール化水を10℃で循環させる。この種類の装置は、-50℃未満の温度でも、10℃/分の冷却速度を保証し、この温度は、180℃~-70℃に設定されたこの室の使用温度範囲の低温端に近い温度である。
【0137】
この室の使用可能な空間内の湿度は、デューバス(dew bath)を使用して制御及び調整される。この装置に、乾燥機、具体的には、乾燥空気を注入するZANDER社(45219 エッセン、ドイツ)のZANDER Type K-MTI乾燥機を追加した。乾燥機の湿度レベルを0%に設定すると、空間は完全に乾燥したと見なされる。
【0138】
湿熱サイクル後に顕微鏡観察によって亀裂を数えるために、サンプル調製プロトコルを準備した。材料の微小亀裂などの内部の微細構造を観察する唯一の直接的な方法は、一部を切り取り、その部分の切断面を研磨することである。これは広く使用されている方法である。この方法には、ダイヤモンドクロス及び懸濁液が使用され、適切な分析に必要な平坦度を得るために、研磨する表面を擦り減らしてきめ細かさを増す。
【0139】
5×6cmの寸法のサンプルの使用を選択した。したがって、2つの同等の観察平面がある。湿熱サイクルを経た各サンプルは、図15に従って切り取る。中央のサンプル1は、研磨後の図15に示す観察平面で観察される。
【0140】
切断面Pは、一方向プライの平面に垂直である。サンプルを観察に役立つ鏡面状態に研磨する方法は、延性が大きいため粒の粗いサンドペーパーを使用するステップで、1つの金属に関して簡略化した。しかし、ダイヤモンド懸濁液を含む最終研磨段階では、超音波バス洗浄を分散させた、より細かいレベルの仕上げが必要である。
【0141】
最終的なサンプル100をもたらすサンプルの切断は、炭化ケイ素円形ブレードを備えたチェーンソーを使用して行う。切断は、ブレードの速度を事前に較正して、段階的な摩耗によって行う。次に、顕微鏡観察に好ましい鏡面研磨をもたらす以下の研磨プロトコルを切断面で実施する。
【0142】
研磨プロトコル
サンプルは、LamPlan社のResin 605(メタクリル酸メチルで重合したアクリル樹脂)でコーティングし、独立圧力自動研磨機(Presi社のMecapol P320)を使用して研磨する。
【0143】
これを行うには、切断したサンプルを円筒形の型の底に置く。研磨する表面は、型の底に向ける。次に、型にコールドコーティング二成分樹脂(LamPlan社、605)を充填し、この樹脂は、約15分で自然に重合する。次に、記載のプロトコルに従って、サンプルを型から外して研磨する。
様々な研磨ステップを以下の表12に列挙している。
【表12】
【0144】
ステップ1、2、及び3では、自動研磨機で、プレートの逆回転で回転速度150rpm、ヘッドの最大速度(100rpm)を使用する。不純物は洗い流される。
【0145】
ステップ4及び5では、プレートの逆回転で回転速度300rpm、ヘッドの最大速度(100rpm/分)を使用する。潤滑剤を滴下して不純物を除去する。
【0146】
次に、x5レンズ(倍率x50)を備えた顕微鏡(OLYMPUS社、モデルGX 51 F-T2 SN 4 G 0 9299)に取り付けられた5メガピクセルのデジタルカメラ(OLYMPUS社、モデルU-TVO.5XC-2-4F04335)によって取得された分析顕微鏡画像を使用して、亀裂を数える。使用した画像分析ソフトウェアは、Olympus France SAS社(Parc d’affaire Silic,74 rue d’Arcueil BP 90165,94533 Rungis cedex,France)から販売されている「Analysis Pro Five」である。p個の一方向プライの亀裂がはっきりと見えるようにレイアップされた、長さLのサンプルにわたる一方向プライiのNi亀裂の観察では、基準dは次式に従って定義される。
【数2】
【0147】
p係数は、積層板の一方向プライの総数から、炭素繊維が観察平面に平行な一方向プライの数を引いたものに相当し、これは、観察平面に平行な一方向プライ内では亀裂が見えないままであることを考慮に入れている。
【0148】
d係数は線形亀裂密度であり、cm-1で表され、これは、Lの選択を考慮に入れて、関連する負荷の下での材料の固有の特徴と見なすことができる。
【0149】
図16のグラフは、既定数の湿熱サイクル後の(測定方法が破壊的である場合の)様々なサンプルで得られたd係数(亀裂密度と呼ばれる)の値を示す。本発明による積層板は、密度がゼロであっても、亀裂密度がはるかに低いことが明らかに示されている。
【0150】
比較例23の積層板で400回の湿熱サイクル後に得られた微小亀裂の画像を図17に示す。
【0151】
この種類の結果は、本発明の別の貢献を示し、即ち、部分的に架橋された熱可塑性ポリマー多孔質層の追加によって、微小亀裂の発生が最小限に抑えられ、さらには排除される。
【0152】
B 粉末堆積物を使用して実施した試験
まず、Hylink結合剤を180℃のオーブンで30分間架橋した。架橋部分の重量の測定及び高温光学顕微鏡検査を、部分A-I及び部分A-IIで実施して、ポリマーの挙動を検証した。架橋部分の含有量レベルは、周囲温度で3日間ギ酸に浸漬して測定し、次いで濾過して、50℃で4時間乾燥させた。得られた結果は以下の通りである:
-初期架橋部分:ポリマーの総重量に対して7%+/-3%
-180℃で30分後の架橋部分:ポリマーの総重量に対して60%+/-9%。
【0153】
図18は、180℃で、したがって現在のRTM6樹脂の架橋後に光学顕微鏡で得られた画像を示す。提示した写真は、温度上昇下で部分的に架橋するポリマーの能力を示し、これによって、照射を受けたHX2632ウェブの場合と同じように、RTM6樹脂に不溶性を保つことができる。
【0154】
ここでも、これらの結果は、RTM6/Hylink結合剤サンプルのDMA曲線(EN規格6032に準拠)と相関させることができる。サンプルは、120℃で45分間予備重合し、その後180℃で2時間、後硬化した。図19に示す結果が示すように、Hylink結合剤に適用された温度での架橋処理は、DMAの結果に大きく影響し、架橋レベルを上げることによって、HX2632ウェブと同じように、材料の熱機械性能を維持できる。その結果、熱可塑性の寄与はごく僅かであり、このことは、顕微鏡観察を裏付ける。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19