(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】熱交換流体/冷却材の相変化材料
(51)【国際特許分類】
C09K 5/06 20060101AFI20240301BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240301BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240301BHJP
H01M 10/659 20140101ALI20240301BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240301BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240301BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20240301BHJP
【FI】
C09K5/06 L
C09K5/06 J
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/659
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6567
(21)【出願番号】P 2020537203
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2019050260
(87)【国際公開番号】W WO2019135001
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501354624
【氏名又は名称】カストロール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクセン,アンドレ,アントニウス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ペッシェル,ヘンドリック,パーシー
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,ロバート,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト,ケビン,リチャード
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/077379(WO,A1)
【文献】特開平02-246255(JP,A)
【文献】特表2003-533844(JP,A)
【文献】特開2017-022081(JP,A)
【文献】特表2021-529413(JP,A)
【文献】特開2002-053850(JP,A)
【文献】特開2006-083276(JP,A)
【文献】特開2016-188349(JP,A)
【文献】特表平09-503801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョンであって、
水性担体流体、および
水性担体流体内のミセルの分散体であって、各ミセルが、相変化材料を含む固体疎水性コア粒子と、固体疎水性コア粒子の周りにミセルシェルを形成する1つまたはそれ以上の乳化剤とを含み、ミセルが、0.1μm~
1μmの範囲の平均粒径を
有し、ミセルサイズ分布d10は、d50の60%
以上であり、d90はd50の140%
以下である分散体を含むエマルジョン。
【請求項2】
前記ミセ
ルが、0.2μm~0.8μmの範囲
の平均直径を有する請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
ミセルサイズ分布d10は、d50の75%
以上であり、d90はd50の125%
以下である請求項1
または2に記載のエマルジョン。
【請求項4】
1つまたはそれ以上の乳化剤の
エマルジョンの総重量に基づいて5重量%未満が非結合状態で水溶液中に存在する請求項1または2に記載のエマルジョン。
【請求項5】
1つまたはそれ以上の乳化剤の
エマルジョンの総重量に基づいて2重量%
未満が非結合状態で水溶液中に存在する請求項1~3
のいずれ
かに記載のエマルジョン。
【請求項6】
前記相変化材料が、パラフィン、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、脂肪酸、脂肪アミド含有材料、スルホンアミド材料
、天然源から作製された樹脂材料、合成樹脂、オリゴマー、ポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらの組み合わせから選択さ
れる請求項1~
5のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項7】
前記相変化材料が、パラフィンである請求項1~5のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記相変化材料が、1-シクロヘキシロオクタデカン、4-ヘプタダカノン、キノン、ベンズアミド、またはそれらの混合物である請求項1~5のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項9】
前記相変化材料が、少なくとも30℃の融点を有する請求項1~8のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項10】
前記相変化材料が、エマルジョンの総重量に基づいて
10重量%~70重量%の量で組成物中に存在する請求項1~9のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項11】
1つまたはそれ以上の乳化剤が、構造ヒドロカルビル基-アリール基-ポリエーテル基を有する分子からなる群より選択される請求項1~10のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項12】
10J/gK~35J/gKの範囲の熱容量を有する請求項1~11のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項13】
0.05W/mK~1W/mKの範囲の熱伝導率を有する請求項1~11のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項14】
3~40cStの動粘度を有する請求項1~13のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載のエマルジョンを水性流体と組み合わせることによって調製される、または請求項1~14のいずれかに記載のエマルジョンを含む熱管理流体。
【請求項16】
バッテリーパックであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された1つまたはそれ以上の電気化学セルと、
前記ハウジングを通って延在し、1つまたはそれ以上の電気化学セルと実質的に熱伝達する流体経路と、および
流体経路に配置された請求項1~14
に記載のエマルジョンまたは請求項15
に記載の熱管理流体を含むバッテリーパック。
【請求項17】
請求項1~14に記載のエマルジョンまたは請求項15に記載の熱管理流体を表面上に通過させる
ことと、
表面から熱管理流体中の熱エネルギを吸収する
こととを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ミセルエマルジョンに関する。本開示は、より詳細には、熱管理流体として有用なミセルエマルジョン、そのようなエマルジョンを調製するための方法、およびそのようなエマルジョンを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2035年までに、1億2000万台以上の電気自動車(すなわち、バッテリ電気自動車(BEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)などの動力の全部または一部に電力を使用する車両)が道路上にあると推定される。最終的には、車両の大部分は電気式になると思われる。電気自動車技術が進化し続けるにつれて、改良された電源(例えば、バッテリシステムまたはモジュール)を提供する必要がある。例えば、そのような車両がバッテリを再充電する必要なしに走行距離を増加させ、そのようなバッテリの性能を向上させ、バッテリ充電に関連するコストおよび時間を低減させることが望ましい。
【0003】
現在、ほぼリチウムイオン電池技術を用いた電池電気自動車に向かう動きがある。リチウムイオン電池は、同等のニッケル水素電池に比べて多くの利点があるが、ニッケル水素電池とは異なり、リチウムイオン電池は電池温度のばらつきの影響を受けやすく、非常に厳しい熱管理要件を必要とする。たとえば、10℃未満の動作温度は非効率的であるが、最適なバッテリ動作温度は10~35℃の範囲である。バッテリの動作は、温度が35~70℃に上昇するにつれてますます非効率的になり、これらの温度で動作すると、時間の経過とともにバッテリにダメージを与える。70℃を超える温度では、熱暴走の危険が大きくなる。その結果、リチウムイオンバッテリは、車両動作中にその温度を調節するシステムを必要とする。また、充電中は投入電力の10%までが熱となる。リチウムイオン電池の高速充電がより一般的になるにつれて、電池の熱管理のための効率的なシステムに対する必要性が残っている。
【0004】
水溶液中の固体パラフィンワックスの分散体は、相変化材料(PCM)スラリーまたは液体冷却剤として使用されてきた。これらのスラリーおよび液体冷却剤は、バッテリー(例えば、リチウムイオンバッテリー)の熱管理流体として使用するために提案されている。固体パラフィンワックス分散体は、融解の高い融解エンタルピーのためにパラフィンが融解する温度範囲にわたって熱管理流体の熱容量を増加させる。この潜熱効果により、熱管理流体は、流体の温度を実質的に上昇させることなく(すなわち、より効率的な冷却剤として作用する)、熱表面から熱エネルギを除去することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
相変化材料冷却剤は有望であるが、冷却剤システムでのそれらの使用を妨げる可能性がある2つの鍵となる欠点がある。第一に、溶融パラフィンの合体は相変化材料冷却材としてのその使用のための主要な欠点を提示する。具体的には、溶融パラフィンの合体は、冷却システム中の固体パラフィンの堆積および冷却システムの最終的な閉塞をもたらす。次に、分散パラフィン粒子は、流体の粘度を増加させる。一般に、相変化材料冷却剤の粘度は、パラフィン含有量の増加およびパラフィン粒子サイズの増加と共に増加する。これは、熱が低粘度流体を通ってより迅速に拡散することができるので、流体の熱伝導率に有害である。したがって、相変化材料冷却剤は、冷却剤流体の二つの臨界特性-熱容量と熱伝導率-の間のトレードオフである。したがって、これらの欠点を克服することができる熱管理流体を提供することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、相変化材料の分散を改善した単純でコスト効率のよいエマルジョンを見出した。改良された分散は、順に、溶融時に分散された相変化材料(例えば、パラフィン)が合体する傾向を減少させる。さらに、相変化材料は、非常に小さい直径および非常に狭いサイズ分布を有するミセルに処方され、これは、今度は、本開示のエマルジョンが改善された粘度および結果として熱拡散性を有することを可能にする。より小さいミセルサイズはまた、エマルジョン中の相変化材料のより高い濃度を可能にし、したがってエマルジョンの熱容量を改善する。小さな直径および狭いサイズ分布を有するミセルのより多い数は、比較されるミセルの増加した表面積をもたらし、これは、次に、エマルジョンのより速い温度応答および改善された熱伝導率を可能にする。相変化材料は、所望の温度範囲にわたる融解潜熱の効果を通して熱を吸収する。
【0007】
したがって、本開示の一態様は、
水性担体、および水性担体流体内のミセルの分散体であって、各ミセルが、相変化材料と、固体疎水性コア粒子の周りにミセルシェルを形成する1つまたはそれ以上の乳化剤とを含む固体疎水性コア粒子を含み、ミセルが、約0.1μm~約1.5μmの範囲(例えば、好ましくは、約0.25μm~約1.0μmの範囲)の平均粒径を有する分散体を含むエマルジョンを提供する。
【0008】
本開示のエマルジョンは、種々の濃度で提供することができる。例えば、特定の実施形態では、本開示のエマルジョンは、熱管理流体濃縮物としての使用に適した濃度、すなわち、熱管理流体を提供するために水性媒体で希釈することができる濃度で提供される。他の実施形態において、本開示のエマルジョンは、それ自体熱管理流体(例えば、完全に配合された熱管理流体)としての使用に適した濃度で提供される。
【0009】
本開示の別の態様は、水性担体流体中に溶解された1つまたはそれ以上の乳化剤を含む第1の流体と、1つまたはそれ以上の相変化材料を含む第2の流体とを組み合わせること、および中間流体を生成するために剪断力下で第1の流体を第2の流体と接触させること、および中間流体からエマルジョンを回収することを含むエマルジョンを調製するための方法を提供する。
【0010】
本開示の別の態様は、表面上に本開示のエマルジョンまたは熱管理流体を通すこと、および
表面から熱管理流体中の熱エネルギを吸収することを含む方法を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された1つまたはそれ以上の電気化学セルと、
前記ハウジングを通って延在し、1つまたはそれ以上の電気化学セルと実質的に熱伝達する流体経路、および
開示されたエマルジョンまたは熱管理流体を含むバッテリーパックを提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、
電気部品の周りおよび/または通って延在する流体経路と、
熱交換器と、
ポンプと、
前記流体経路、前記熱交換器、および前記ポンプと、開示のエマルジョンまたは熱管理流体とを接続する少なくとも1つの導管であって、熱管理流体が、前記流体経路、前記熱交換器、前記ポンプおよび前記導管に配置される導管を含む熱管理回路を提供する。
【0013】
添付の図面は、本開示の組成物および方法のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は必ずしも縮尺通りではなく、明瞭にするために様々な要素の大きさが歪んでいてもよい。図面は、本開示の1つまたはそれ以上の実施形態を例示し、明細書と共に本開示の原理および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態による熱管理回路の概略断面図である。
【
図2】本開示の別の実施形態による熱管理回路の概略断面図である。
【
図3】実施例1のエマルジョンの-80℃~+80℃の温度における比熱容量の変動を示すグラフである。データは、同じ材料について行われた3つの異なる測定を重ねたものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に示されている詳細は、例として、本発明の好ましい実施形態の例示的な議論の目的のためのみであり、本発明の様々な実施形態の原理および概念的態様の最も有用であり、容易に理解される説明であると考えられるものを提供する目的において提示される。この点に関して、本発明の幾つかの形成が実際にどのように具体化され得るかを当業者に明らかにする図面および/または実施例を用いて取られた説明は、本発明の基本的な理解のために必要である以上に詳細に本発明の構造的詳細を示す試みはなされていない。したがって、開示されたプロセスおよびデバイスが記載される前に、本明細書に記載される態様は、特定の実施形態、装置、または構成に限定されず、当然ながら、変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書中で使用される用語は、特定の態様のみを記載する目的のためであり、本明細書中で特に定義されない限り、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0016】
本発明を説明する文脈において使用される用語「a」、「an」、「the」および類似の指示対象は、(特に、以下の実施形態および特許請求の範囲の文脈において)、本明細書中に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を意味すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲内に入る各別個の値を個別に参照する簡略な方法として役立つことを意図しているに過ぎない。本明細書中に別段の指示がない限り、各個々の値は、あたかもそれが個々に本明細書中に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。範囲は、本明細書では、1つの特定の値の「約」から、および/または別の特定の値の「約」までと表現することができ、そのような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表現される場合、前述の「約」の使用によって、特定の値は、別の態様を形成することが理解される。範囲の始点および終点は、それぞれ他方の点(終点および始点)との関連において重要な意味を持ち、且つ、当該他方の点とは独立した意味を有している。
【0017】
本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序の工程で実施することができる。本明細書中に提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言葉(例えば、「そのような」)の使用は、単に、本発明をよりよく解明することを意図しており、特に記載がなければ特許請求される本発明の範囲に限定をもたらすものではない。明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠ないかなるクレームされていない要素も示すものと解釈されるべきではない。
【0018】
文脈上明らかに別段の要求がない限り、明細書および特許請求の範囲を通して、「含む」、「含んでいる」等の語は、排他的または網羅的な意味とは対照的な包括的な意味で解釈されるべきである。すなわち、「含む」という意味では、単数形または複数形を使用する語は、それぞれ複数形および単数形も含む。また、本願において使用される場合、「ここ(本明細書)で(herein)」、「上(above)」および「下(below)」並びに類似の語は、本願全体を意味し、本願の特定の部分を意味するものではない。
【0019】
当業者によって理解されるように、本明細書に開示された各実施形態は、その特定の記載された要素、工程、成分または構成からなるか、本質的に構成されているか、または構成されることができる。本明細書において、「含む(comprise)」または「含む(comprises)」という転換語は、特定されていない要素、工程、成分または構成を、主要な量であっても、含むが、これらに限定されず、含むことを許容する。「からなる(consisting of)」という転換語は、特定されていない任意の要素、工程、成分または構成を除外する。「本質的に構成されている(consisting essentially of)」という転換語は、実施形態の範囲を特定の要素、工程、成分または構成に限定し、実施形態に実質的に影響を与えないものに限定される。
【0020】
したがって、特に断らない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において、用語「約」によって修飾されるものと理解されるべきである、したがって、反対に示されない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に依存して変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとする試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らし、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。さらなる明瞭性が必要とされる場合、用語「約」は、記載された数値または範囲と一緒に使用される場合、すなわち、記載された値または範囲よりもいくらか多いかまたはいくらか少ないことを示す場合、記載値の±20%、記載値の±19%、記載値の±18%、記載値の±17%、記載値の±16%、記載値の±15%、記載値の±14%、記載値の±13%、記載値の±12%、記載値の±11%、記載値の±10%、記載値の±9%、記載値の±8%、記載値の±7%、記載値の±6%、記載値の±5%、記載値の±4%、記載値の±3%、記載値の±2%、または±1%の範囲内のように当業者によってそれに合理的に帰する意味を有する。
【0021】
全てのパーセント、割合および比率は特に記載のない限り重量である。
【0022】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、本質的に、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。
【0023】
本明細書に開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書中に見出される他の要素との任意の組み合わせで、参照および特許請求され得る。便宜性および/または特許性の理由のために、グループの1つまたはそれ以上のメンバーが、グループに含まれ得るか、またはグループから削除され得ることが予想される。そのような包含または欠失が生じる場合、明細書は、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの文書による説明を満たすように修正されたグループを含むと見なされる。
【0024】
本発明を実施するために本発明者らに公知の最良の形態を含む、本発明のいくつかの実施形態が本明細書に記載される。もちろん、これらの記載された実施形態の変形は、前述の説明を読めば、当業者に明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に採用することを期待し、本発明者は、本発明が、本明細書に具体的に記載される以外に実施されることを意図する。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。更に、上述の要素のあらゆる可能な変形でのあらゆる組み合わせが、本明細書に別段の指示がない限り、または明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0025】
さらに、本明細書を通して、特許および印刷された出版物に対して多数の参照がなされている。引用された参考文献および印刷された刊行物の各々は、その全体が参照により本明細書に個々に組み込まれる。
【0026】
最後に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることを理解されたい。使用され得る他の改変は、本発明の範囲内である。したがって、限定ではなく例として、本発明の代替構成を、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、正確に示されおよび説明されたものに限定されない。
【0027】
一般に、開示された材料および方法、ならびに装置は、溶融時に分散相変化材料(例えば、パラフィン)が凝集する傾向を低減するエマルジョン(例えば、熱管理流体としての使用に適した)の改善を提供する。さらに、相変化材料は、非常に小さい直径および非常に狭いサイズ分布を有するミセルに処方され、これは、今度は、本開示のエマルジョンが改善された粘度および結果として熱伝導性を有することを可能にする。より小さいミセルサイズはまた、エマルジョン中の相変化材料のより高い濃度を可能にし、したがってエマルジョンの熱容量を改善する。小さな直径および狭いサイズ分布を有するミセルのより多い数は、ミセルの増加した表面積をもたらし、これは、次に、エマルジョンのより速い温度応答および改善された熱伝導率を可能にする。相変化材料は、所望の温度範囲にわたる融解潜熱の効果を介して熱を吸収し、その結果、固相として存在する材料は、特定の温度で融解し、したがって、熱を吸収し、液相に入る。エマルジョンが融点未満に冷却されると、液相中の相変化材料は固相に凝固し、エマルジョンのその後の加熱サイクル中に使用する準備が整う。固相変化材料がある範囲の温度にわたって液相に入るように、各々が異なる融点および/または質量を有する種々の相変化材料を含むエマルジョンを提供することも可能である。この結果、エマルジョンは、所望に応じて、一定のまたは変化する冷却効果を提供することができる。例えば、より低い融点を有するワックスは、一般的な使用に適してもよく、中程度の融点を有するワックスは、電池の充電に適してもよく、より高い融点を有するワックスは、電池内での熱暴走を防止するために使用される。また、エマルジョンを熱交換器に通して、例えば、熱をバッテリから遠ざけることによって冷却効果を提供することができることが望ましい場合がある。
【0028】
したがって、本開示の一態様は、
水性担体流体、および
前記水性担体流体内のミセルの分散体であって、各ミセルが、相変化材料を含む固体疎水性コア粒子と、固体疎水性コア粒子の周りにミセルシェルを形成する1つまたはそれ以上の乳化剤とを含み、ミセルが、約0.1μm~約1.5μmの範囲の平均粒径を有する分散体を含むエマルジョンを提供する。
【0029】
当業者が理解するように、ミセルは、コロイド中に分散された乳化剤分子の凝集体であり、ここで、第1の材料の粒子は、第2の材料中に懸濁され、2相系を生成する。溶液中とは異なり、第1の材料は、第2の材料中に不溶性または非混和性である(すなわち、エマルジョンになる)。水溶液中では、ミセルは、乳化剤分子の疎水性尾部が内側を向いており、乳化剤分子の親水性頭部が外側を向いている凝集体を形成する。これは順相ミセルを形成し、水中油相混合物をもたらす。逆相ミセルは逆構造をもち、乳化剤分子の親水性頭部が内側を向いており、疎水性尾部が外側を向いている。これは、油中水相混合物をもたらす。乳化剤分子の充填挙動は、ミセルのコアの周りの乳化剤分子の単一層をもたらし得、これは、表面エネルギの考慮に続いて、典型的には、球を形成し得る。したがって、特定の実施形態では、本開示のミセルは、一般に、構造が球形である。本実施形態では、相変化材料が固体油性(ワックス状)材料であるので、水中油システムが想定される。
【0030】
乳化剤のさらなる層はまた、ミセルの外側の周りに充填されてもよい。これは、さらなる乳化剤が混合物に添加される場合に当てはまる。例えば、相変化材料に剪断力が加えられると、相変化材料の分子は伸張する。この延伸は、分子を平坦にし、層状構造を形成し、したがって、任意の乳化剤が引きつけられ得る表面積を増加させる。水中の乳化剤の分散体の分子の周りの層流と組み合わせると、乳化剤の充填分率は≦1/3から>1/2に増加する。一旦、剪断力が分子から除去されると、乳化剤の構造がミセルの最小表面エネルギ配置を層状または円筒状にさせない限り、表面エネルギの考慮のために、それは球状ミセルを形成する。例えば、ジェミニ乳化剤は、時には二量体乳化剤として知られ、ミセルのコアを細長い卵形に歪める2つの疎水性尾部を有する。次いで、乳化剤充填画分は、球状ミセルについて≦1/3に還元され、したがって、分子の一時的な層流配置に引き付けられた任意の乳化剤は、ミセルの周りにさらなる乳化剤の層を形成する。しかし、順相ミセルの場合、乳化剤分子の偶数の層は、乳化剤分子の第1の層の親水性頭部と接触した親水性頭部と配置され、疎水性尾部が外側を向いているので、奇数の層のみが形成される。逆相ミセルの場合は逆である。したがって、両方の場合において、ミセルは、1、3、5、7...n=2k+1層の乳化剤を有する。これはまた、乳化剤が複数の層でこれらのミセル内に結合されるので、乳濁液内の任意の形態の遊離乳化剤を効果的に生じない。上記のように、水溶液中に存在する非結合乳化剤は実質的に存在しない。乳化剤の添加量が多いほど、ミセル中の乳化剤の層数が多くなる。したがって、特定の実施形態では、乳化剤分子は、単一の分子層中の疎水性コアの周囲に配置される。特定の他の実施形態では、乳化剤分子は、3つまたはそれ以上の分子層中の疎水性コアの周囲に配置される。特定の実施形態では、異なる分子層は、2つまたはそれ以上の乳化剤を含み得る。例えば、非イオン性乳化剤が表面層内に存在してもよく、イオン性乳化剤が層内に存在してもよい。
【0031】
本開示の流体および方法の1つの利点は、エマルジョン中のミセルの均一なサイズである。ミセルの平均直径の分布は、ガウスプロファイルに従う。平均ミセル直径は、ミセルについて行われた種々の直径測定の平均であり、球状ミセルの場合、ミセル直径にほぼ等しい(測定の場所に関係なく、直径の変動はほとんどまたは全くないため)。
【0032】
上記のように、本発明者らは、比較的狭いミセル粒径分布を有するミセルエマルジョンを使用することは、多数の利点をもたらし得ることに留意した。当業者が理解するように、ミセルサイズ分布は、d50、d10およびd90値によって特徴付けることができ、ここで、d50はメディアン粒径サイズであり、d10は、サイズによってランク付けされた粒子の10thパーセンタイルにおける粒子サイズであり、d90は、サイズによってランク付けされた粒子の90thパーセンタイルにおける粒子サイズである。特定の実施形態において、本明細書中で別途記載される特定のエマルジョンのミセルは、0.1μm~1.5μm、例えば0.1μm~1.2μm、または0.1μm~1.0μm、または0.1μm~0.5μm、または0.1μm~0.4μm、または0.2μm~1μm、または0.2μm~0.8μm、または0.2μm~0.6μm、または0.2μm~0.5μm、または0.2μm~0.4μm、または0.4μm~1μm、または0.4μm~0.8μm、または0.4μm~0.6μm、または0.4μm~0.5μm、または0.3μm~0.5μm、または0.35μm~0.45μmの範囲のd50値を有する。特定の実施形態では、d10はd50の50%以上であり、d90はd50の150%以下である。特定の実施形態では、d10はd50の60%以上であり、d90はd50の140%以下である。特定の実施形態では、d10はd50の70%以上であり、d90はd50の130%以下である。特定の実施形態では、d10はd50の75%以上であり、d90はd50の125%以下である。特定の実施形態では、d10はd50の80%以上であり、d90はd50の120%以下である。
【0033】
特定の実施形態では、ミセルは、1.5μm以下;例えば、0.1μm~1.5μm;例えば、0.1μm~1.2μm、または0.1μm~1.0μm、または0.1μm~0.5μm、または0.1μm~0.4μm、または0.2μm~1μm、または0.2μm~0.8μm、または0.2μm~0.6μm、または0.2μm~0.5μm、または0.2μm~0.4μm、または0.4μm~1μm、または0.4μm~0.8μm、または0.4μm~0.6μm、または0.4μm~0.5μm、または0.3μm~0.5μm、または0.35μm~0.45μmの平均直径を持ち、特定の実施形態では、特に好ましい平均直径は、0.1μm~1.0μmの範囲である。
【0034】
ミセル粒径およびミセル粒径分布の両方を決定するための多数の適切な測定技術が存在するが、本開示の目的のための定量化のために、ベックマン コールター レーザー回析 PS 分析器(LS 13 320)を使用するレーザー粒径分析が使用される。この方法は、粒子サイズを決定するためにFraunhoffer回折と偏光散乱強度差計測(PIDS)を採用している。
【0035】
上記のように、本開示のミセルは、相変化材料を含む。本明細書で使用される場合、相変化材料は、ある温度で溶融および凝固する場合に、エネルギを貯蔵および放出することができる、高い融解熱(例えば、100kJ/kg超、または150kJ/kg超、またはさらに200kJ/kg超)を有する材料である。当技術分野で公知の種々の相変化材料を、本発明の実施において好適に使用することができる。望ましくは、本開示のミセルを使用するのに適した相変化材料は、熱サイクル可能であり、非危険性または非毒性であり、他の電池部品に対して非反応性または不活性である。特定の実施形態では、相変化材料は、ワックス状、ワックス系、またはワックス含有材料である。
【0036】
適切な相変化材料の選択は、本開示の流体の用途に依存する。相変化材料は、完全に配合されたワックス状材料であってもよく、または成分のブレンドであってもよく、ここで、少なくとも1つの成分はワックス状である。特定の実施形態では、相変化材料は、パラフィン、微結晶ワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックス、脂肪酸、脂肪アミド含有材料、スルホンアミド材料、異なる天然源(例えば、トール油ロジンおよびロジンエステル)から作製された樹脂材料、合成樹脂、オリゴマー、ポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。
【0037】
特定の実施形態では、相変化材料はパラフィンである。パラフィンワックスは、14および40の炭素原子の範囲を有するほとんど直鎖アルカンの混合物からなる。市販のパラフィンワックスは、完全に精製グレード(すなわち、0.5%未満の油を含有する)、半精製グレード(すなわち、0.5%および1.5%の油の範囲で含有する)、スケールワックスグレード(すなわち、0.5%~5%の油の範囲で含有する)、およびスラックワックスグレード(すなわち、5%~20%の油の範囲で含有する)であり得る。当業者は、サイズおよびグレードに関する適切なパラフィンの選択が、エマルジョンの所望の特性に依存することを認識する。いくつかの商業的供給源は、例えば、パラフィンワックスのParafolおよびSasolwax ブランド(ドイツ、Sasolから入手可能)、パラフィンワックスのIndrawax ブランド(ニューヨーク、プレーンビュー、Industrial Raw Materials LLCから入手可能)、ドイツ、BASFから入手可能なパラフィンワックス、およびパラフィンワックスのParvan(商標)ブランド(テキサス、アービング、Exxon Mobil Corporationから入手可能)を含む。
【0038】
特定の実施形態では、相変化材料は、1-シクロヘキシロオクタデカン、4-ヘプタダカノン、キノン、ベンズアミド、およびそれらの混合物から選択されてもよい。特定の実施形態では、相変化材料は、1-シクロヘキシロオクタデカン、4-ヘプタダカノン、キノン、およびベンズアミドのうちの1つまたはそれ以上と組み合わせたパラフィンであってもよい。
【0039】
相変化材料の選択はまた、熱管理アプリケーションおよびデバイスの動作温度に依存してもよい。したがって、特定の実施形態では、相変化材料は、少なくとも30℃、例えば、少なくとも35℃、または少なくとも40℃、または少なくとも50℃、または少なくとも60℃、または少なくとも70℃、または30℃および100℃の範囲、または30℃~90℃の範囲、または30℃~80℃の範囲、または30℃~75℃の範囲、または30℃~70℃の範囲、または30℃~65℃の範囲、または30℃~60℃の範囲、または35℃~100℃の範囲、または35℃~90℃の範囲、または35℃~80℃の範囲、または35℃~75℃の範囲、または35℃~70℃の範囲、または35℃~65℃の範囲、または35℃~60℃の範囲、または40℃~100℃の範囲、または40℃~90℃の範囲、または40℃~80℃の範囲、または40℃~75℃の範囲、または40℃~70℃の範囲、または40℃~65℃の範囲、または40℃~60℃の範囲、または50℃~100℃の範囲、または50℃~90℃の範囲、または50℃~80℃の範囲、または50℃~75℃の範囲、または50℃~70℃の範囲、または50℃~65℃の範囲、または50℃~60℃の範囲の融点を有する。
【0040】
注目すべきことに、本発明者らは、ワックス(例えば、パラフィン)のような高粘度または固相添加剤は、一般に、乳化することが困難であるが、本明細書に記載の方法を使用して、それらをうまく安定して乳化することができると決定した。特定の実施形態では、エマルジョンは、60/40の水/エチレングリコール冷却剤を模倣して、約3.4cPの30℃(ASTM D455に準拠)での全体粘度値を有してもよい。
【0041】
本開示のエマルジョンは、1つの相変化材料を含み得る(すなわち、本開示のミセルは、1つの相変化材料を含み得る)。本開示のエマルジョンはまた、2つまたはそれ以上の異なる相変化材料を含み得る。例えば、特定の実施形態では、ミセルは、第1の相変化材料を含む固体疎水性コア粒子を有する第1のミセルセット、および第1の相変化材料とは異なる第2の相変化材料を含む固体疎水性コア粒子を有する第2のミセルセットを含む。第1の相変化材料および第2の相変化材料は、実質的に同じ融点(例えば、融点の5℃以下の差、または融点の2℃以下の差、または融点の1℃以下の差)を有してもよい。第1の相変化材料および第2の相変化材料はまた、異なる融点(例えば、融点における少なくとも10℃の差、または融点における少なくとも20℃の差、または融点における少なくとも50℃の差)を有してもよい。
【0042】
本開示の特定の実施形態では、エマルジョンは、エマルジョンの総重量に基づいて、約10重量%~約60重量%の範囲内の量の相変化材料を含む。例えば、本明細書に別段に記載されるようなエマルジョンの特定の実施形態では、相間移動材料は、約10重量%~約50重量%、または約10重量%~約30重量%、または約10重量%~約15重量%、または約40重量%~約60重量%、または約45重量%~約55重量%、または約50重量%~約60重量%、または約50重量%~約55重量%の量で存在する。特に好ましい実施形態は、約53.9重量%のワックス含有量を使用する。
【0043】
上記のように、本開示のエマルジョンは、1つまたはそれ以上の乳化剤を含む。本発明者らは、特定の実施形態において、1つまたはそれ以上の乳化剤がミセルに実質的に結合されることを見出した。例えば、特定の実施形態において、1つ以上の乳化剤の1重量%以下が、エマルジョンの総重量に基づいて、非結合状態(すなわち、ミセルの一部ではない)でエマルジョン中に存在する。特定の実施形態において、エマルジョンの総重量に基づいて、0.5重量%以下、または0.1重量%以下、または0.05重量%以下、またはさらには0.01重量%以下が、非結合状態でエマルジョン中に存在する。エマルジョンが過剰な乳化剤を実質的に含まなくなる点は、エマルジョンの表面張力を測定することによって決定することができる。臨界ミセル濃度に達し、乳化剤分子が表面層にはもはや含まれなくなると、エマルジョンの表面張力は不連続性を示す。これは、当業者に公知の表面張力測定技術によって検出することができる。この点を決定するための他の技術には、核磁気共鳴(NMR)技術および光学散乱技術が含まれる。これらには、James-Smithら、Journal of Colloid and Interface Science, 310:590-598(2007)に教示されているものが含まれる。
【0044】
本明細書中に別途記載されるような特定の望ましい実施形態において、エマルジョンは、消泡剤および泡止め剤化合物を実質的に含まない。本発明者らは、実質的な量の消泡剤/泡止め剤化合物を含まないにもかかわらず、本明細書に記載の乳化技術が、発泡しにくいエマルジョンを提供できると判断した。例えば、特定の実施形態において、本開示のエマルジョンは、エマルジョンの総重量に基づいて、2重量%以下の1つまたはそれ以上の消泡剤および泡止め剤化合物を含み、例えば、1重量%以下、または0.5重量%以下、または0.1重量%以下、または0.01重量%以下、または0.005重量%以下、またはさらには0.001重量%以下である。
【0045】
金属加工流体に一般的に使用される典型的な消泡剤/泡止め剤組成物は、有機変性シロキサン泡止め剤、PDMS(ポリジメチルシロキサン)泡止め剤、およびワックス消泡剤を含む。有機変性シロキサン泡止め剤およびPDMS泡止め剤の両方は、ポリシロキサン主鎖に基づく。PDMS泡止め剤では、ケイ素原子にメチル基と酸素だけがシリコン原子に結合している。オルガノ変性シロキサン泡止め剤では、有機側鎖(エチレン-/プロピレン-オキシドのコポリマーなど)がポリシロキサン主鎖に化学的に結合している。典型的なワックス消泡剤としては、エチレンビスステアラミド(EBS)、パラフィンワックス、エステルワックス、および脂肪アルコールワックスが挙げられるが、これらに限定されない。各タイプの泡止め剤/消泡剤では、泡止め剤/消泡剤中の疎水性固体材料によって、泡止め剤/消泡剤材料と泡の液滴との間に形成されるフィルムが破壊される。本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、本開示のエマルジョンは、有機変性シロキサン泡止め剤、PDMS(ポリジメチルシロキサン)泡止め剤、およびワックス消泡剤の合計1重量%以下、またはエマルジョンの総重量に基づいて2重量%以下の1つまたはそれ以上の泡止め剤および消泡剤化合物、例えば、1重量%以下、または0.5重量%以下、または0.1重量%以下、または0.01重量%以下、または0.005重量%以下、またはさらには0.001重量%以下を含む。
【0046】
本開示の実施形態での使用に適した乳化剤は、一般構造ヒドロカルビル基-アリール基-ポリエーテル基を有するものを含む、極性頭部分子と油溶性であるすべてのものを含む。特に有用なワックス乳化剤は、アルキルフェノールエトキシレート等のアルキルおよびアルキルエトキシレートの混合物からなるものである。特定の実施形態において、乳化剤は、界面活性剤を含み得る。当業者は、本明細書の開示に基づいて望ましい乳化剤を選択するであろう。
【0047】
本開示の特定の実施形態において、本開示のエマルジョンは、エマルジョンの総重量に基づいて約0.1重量%~約10重量%の範囲内の量の1つまたはそれ以上の乳化剤を含む。例えば、本明細書に別途記載されるようなエマルジョンの特定の実施形態において、1つ以上の乳化剤は、エマルジョンの総重量に基づいて、約0.1重量%~約8重量%、または約0.1重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2重量%、または約0.1重量%~約1重量%、または約0.2重量%~約10重量%、または約0.2重量%~約8重量%、または約0.2重量%~約5重量%、または約0.2重量%~約2重量%、または約0.2重量%~約1重量%、または約0.5重量%~約10重量%、または約0.5重量%~約8重量%、または約0.5重量%~約5重量%、または約0.5重量%~約2重量%、または約1重量%~約10重量%、または約1重量%~約8重量%、または約1重量%~約5重量%、または約2重量%~約10重量%、または約2重量%~約8重量%、または約2重量%~約5重量%の量で存在する。当業者が理解するように、1つまたはそれ以上の乳化剤の量は、相変化材料の重量%と共に直接的に計測可能である。
【0048】
当業者が理解するように、乳化剤の量に対する相変化材料の量の比率は、ミセルサイズを決定する因子である。本明細書に別途記載されるような特定の実施形態において、相変化材料の量と乳化剤の量との重量比は、約1~約10、または約1~8、または約2~10の範囲である。
【0049】
本開示の特定の実施形態における水性担体流体は、水であり得る。特定の実施形態では、水性担体流体は、水であってもよく、グリセロール、メタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびジエチレングリコールのうちの1つまたはそれ以上であってもよい。特定の実施形態では、グリセロール、メタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびジエチレングリコールのうちの1つまたはそれ以上は、水性担体流体の総重量に基づいて約1~10重量%の量で存在してもよい。
【0050】
当業者が開示に基づいて理解するように、本開示のエマルジョンはまた、熱管理用途のための組成物における従来のものなどの種々の他の成分を含むことができる。例としては、腐食防止剤、防腐剤、殺生物剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
特定の実施形態では、エマルジョンは、腐食防止剤、防腐剤、殺生物剤の1つまたはそれ以上およびそれらの組み合わせをさらに含んでもよく、例えば、エマルジョンの総重量に基づいて5.0重量%までの量で存在する。特定のそのような実施形態において、腐食防止剤、防腐剤、殺生物剤の1つまたはそれ以上およびそれらの組み合わせは、エマルジョンの総重量に基づいて、約0.1重量%~約5.0重量%、または約1.0重量%~約5.0重量%、または約0.1重量%~約1.0重量%の範囲の量で存在する。
【0052】
当業者は、種々の他の成分が本開示のエマルジョン中に存在し得ることを理解する。
【0053】
本開示の特定の実施形態において、本開示のエマルジョンは、約1J/gK~約50J/gKの範囲の熱容量を有してもよい。例えば、本明細書に別途記載されるようなエマルジョンの、ある実施形態では、約1J/gK~約30J/gK、または約1J/gK~約20J/gK、または約1J/gK~約15J/gK、または約1J/gK~約10J/gK、または約3J/gK~約30J/gK、または約3J/gK~約20J/gK、または約3J/gK~約15J/gK、または約3J/gK~約10J/gK、または約2J/gK~約5J/gK、または約3J/gK~約4J/gKの範囲の熱容量を有してもよい。
【0054】
本開示の特定の実施形態では、本開示のエマルジョンは、約0.05W/mK~約1W/mKの範囲の熱伝導率を有してもよい。例えば、本明細書に別途記載されるようなエマルジョンの特定の実施形態では、約0.25W/mK~約1W/mK、または約0.5W/mK~約1W/mK、約0.75W/mK~約1W/mK、または約0.05W/mK~約0.5W/mKの範囲の熱伝導率を有してもよい。
【0055】
本開示の特定の実施形態において、本開示のエマルジョンは、ASTM D455に従って測定され、30℃で約1~約10cSt、例えば、約1~約9cSt、または約1~約8cSt、または約1~約7cSt、または約1~約6cSt、または約5~約10cSt、または約5~約9cSt、または約5~約8cSt、または約5~約7cStの動粘度を有し得る。
【0056】
上記のように、本開示のエマルジョンは、種々の濃度で提供することができる。特定の実施形態では、本開示のエマルジョンは、熱管理流体としての使用にそれ自体適した濃度で提供され/そのようなエマルジョンは、熱管理用途において希釈せずに使用することができる。したがって、本開示の別の態様は、本開示のエマルジョンの形態の熱管理流体である。
【0057】
また、他の実施形態において、本開示のエマルジョンは、熱管理流体濃縮物としての使用に適した濃度、すなわち、熱管理流体を提供するために、他の媒体(例えば、水、または水と、グリセロール、メタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびジエチレングリコールのうちの1つまたはそれ以上との組み合わせ)で希釈され得る濃度で提供される。例えばギ酸カリウムのような塩を使用して、エマルジョンの凝固点を下げることができる。
【0058】
したがって、本開示のエマルジョンはまた、より濃縮されたエマルジョン(例えば、本開示のより濃縮されたエマルジョン)を希釈することによって提供され得る。
【0059】
例示的な一実施形態では、本開示のエマルジョンは、約10~約60重量%の範囲の相変化材料と、約5~約10重量%の乳化剤と、約0~約50重量%のグリセロールと、約0~約5重量%の他の添加剤と、残りは水を含む。特定のこのような実施形態では、グリセロールは、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのいずれかで置き換えられてもよい。特定のこのような実施形態では、エマルジョンは、約0~約25重量%の範囲の塩などの他の凝固点降下剤をさらに含み得る。特定のそのような実施形態では、伝統的な水ベースの冷却剤に使用される様々な添加剤もまた、エマルジョンに含まれてもよい。このようなエマルジョンは、例えば、熱管理流体のための濃縮物として使用することができる。
【0060】
したがって、本開示の別の態様は、例えば、本開示のエマルジョンを水性流体と組み合わせることによって調製される、本開示のエマルジョンを含む熱管理である。本開示のエマルジョンは、例えば、所望の量の水で希釈され得る。特定の実施形態では、エマルジョンは、熱管理流体の総重量に基づいて約1重量%~約50重量%、例えば、約5重量%~約30重量%、または約5重量%~約20重量%、または約20重量%~約30重量%の量で使用される。特定の実施形態において、希釈は、1回以上実施されてもよく、例えば、プロセスは、効果的に、開示のエマルジョンのより低い濃度を有する各後続の流体と共に、一連の熱管理流体を形成してもよい。当業者は、所望の熱管理性能が達成されるまで、熱管理流体を希釈することができる。
【0061】
本開示のエマルジョンを調製する適切な方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2013/0201785号に記載されている。この刊行物は、水中油または油中水流体のいずれかを生成するために、剪断力および層流下で相変化材料および水性材料を混合するための装置を開示する。したがって、本開示のエマルジョンを調製する方法であって、水性担体流体(例えば、水)中に溶解された1つまたはそれ以上の乳化剤を含む第1の流体を得ること、相変化材料を含む第2の流体を得ること、剪断力下で第1の流体を第2の流体と接触させて中間流体を生成することを含む方法を提供する。この中間流体は、コロイド状エマルジョンの形態であってもよく、自由流動性またはゲル状であってもよい。中間流体はまた、第1の流体または第2の流体のいずれかよりも高い粘度、例えば、少なくとも5%高い、または少なくとも10%高い、または少なくとも50%高い粘度を有してもよい。この中間流体は、水性担体流体中の相変化材料のミセルを含み得る。第1の流体および第2の流体の両方は、撹拌機が、約1200~約1600rpmの回転速度で回転することによって、剪断力下で2つの流体を一緒に混合するために使用されるチャンバに添加されてもよい。チャンバの形状および撹拌器のサイズは、チャンバの壁の周囲の領域が乱流を伴わないことを確実にするように選択されてもよい。したがって、相変化材料が剪断下にある間、乳化剤の水性懸濁液は、この領域においてチャンバの周りを流れることができ、それによって層流を生成する。特定の実施形態では、層流下で第3の流体を中間流体に添加してもよい(例えば、水性担体流体の水分含有量を増加させて、得られるエマルジョンの粘度を低下させる)。
【0062】
本開示の方法は、高い粘度を有する材料を安定なエマルジョンに乳化することを可能にする。現在の技術を使用して、40℃で約100~150cStを超える粘度を有する流体を乳化することは、現在困難である。本開示の方法は、8000~12,000cStの粘度を有する流体および40℃の固相材料を乳化するために使用され得る。実際の限界は、乳化中の種々の成分の温度に依存する。例えば、乳化を達成するために、成分を約90℃まで加熱することが必要であり得る。
【0063】
特定の他の局面において、本開示は、1つまたはそれ以上の乳化剤を含む第1の流体を得る工程、相変化材料を含む第2の流体を得る工程、中間流体を生成するために剪断力下で第1の流体を第2の流体と接触させる工程、および層流下で中間流体を水性担体流体(例えば、水)と接触させてエマルジョンを得る工程を含む、本開示のエマルジョンを調製する方法を提供する。中間流体は、第1の流体または第2の流体のいずれかよりも高い粘度、例えば、少なくとも5%高い、または少なくとも10%高い、または少なくとも50%高い粘度を有してもよい。第1の流体および第2の流体の両方は、撹拌機が、約1200~約1600rpmの回転速度で回転することによって、剪断力下で2つの流体を一緒に混合するために使用されるチャンバに添加されてもよい。
【0064】
本開示の別の態様は、上述したいずれかの実施形態による熱管理流体を表面上を通過させ、表面から熱管理流体中の熱エネルギを吸収することを含む方法を提供する。このような方法の一実施形態が、
図1を参照して図示される。熱管理回路100が、
図1の概略断面側面図に示されている。熱管理回路100は、回路を通って循環され、表面142上を通過する熱管理流体120を含む。表面142の温度は、熱管理流体120の温度と比較して上昇する。その結果、熱エネルギは、表面142から熱管理流体120に吸収される。
【0065】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、この方法は、電気部品を操作することによって熱エネルギを生成することを含む。例えば、熱管理回路100は、動作中に熱を生成する電気部品140と関連している。特定の実施形態では、熱は、電気部品の蓄電と充放電の要素として生成される。当業者には理解されるように、電気部品の動作における非効率性および回路内の抵抗は、電流が電気部品の回路および素子を通過するときに熱を発生させる。例えば、電気部品140の動作からの熱は、表面142を温度上昇させ、次いで、熱エネルギを熱管理流体120に移動させる結果となる。他の実施形態では、熱エネルギは、発熱反応などの化学反応によって、または摩擦によって生成される。さらに他の実施形態では、熱管理流体は冷却され、周囲温度またはわずかに上昇した温度で表面から熱エネルギを吸収する。
【0066】
本明細書に別途記載される特定の実施形態では、電気部品は、バッテリーパック、キャパシタ、燃料電池、モータ、またはコンピュータを含む。例えば、特定の実施形態では、電気部品は、ハウジング内に配置された1つまたはそれ以上の電気化学セルを含むバッテリーパックである。他の実施形態では、電気部品は、電解コンデンサまたは電気二重層コンデンサ、例えばスーパーコンデンサのような1つまたはそれ以上のコンデンサである。さらに他の実施形態では、電気部品は、高分子電解質膜燃料電池、直接メタノール燃料電池、アルカリ燃料電池、リン酸燃料電池、溶融炭酸塩燃料電池、固体酸化物燃料電池、または可逆燃料電池などの1つまたはそれ以上の燃料電池である。特定の実施形態では、電気部品は電気モータである。さらに他の実施形態では、電気部品は、コンピュータ、例えば、パーソナルコンピュータまたはサーバである。
【0067】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、表面は、電気部品の表面である。例えば、
図1において、電気部品140のハウジング150は、熱管理流体120のリザーバを含む。熱を生成する特定の回路を含む電気部品の要素は、熱管理流体120に沈められ、熱管理流体は、電気部品140の外面142から直接熱エネルギを吸収する。
【0068】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、表面は、導管の内部表面である。例えば、
図2は、複数の個々の単位244を含む電気部品240を含む熱管理回路200を示す。特に、電気部品240は、複数の電気化学セル244を含む電池である。電気部品240は、電気部品の内側を通って電気化学セル244の間に延在する導管246をさらに含む。電気部品が熱エネルギを生成すると、導管246の内部表面242が加熱され、熱エネルギが熱管理流体220によって吸収される。
【0069】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、導管は、電気部品を取り囲むハウジングを通過する。例えば、熱管理回路200内の導管246は、電気部品240を取り囲むハウジング250内の開口部252を通って延在し、これにより熱管理流体220を熱管理回路200の他の要素に搬送することができる。
【0070】
本開示の別の態様は、ハウジングと、ハウジング内に配置された1つまたはそれ以上の電気化学セルと、ハウジングを通って延在し、1つまたはそれ以上の電気化学セルと実質的に熱伝達する流体経路と、流体経路内に配置された、上述の実施形態のいずれかによる熱管理流体とを含む電池パックを提供する。例えば、
図2の熱管理回路200は、バッテリーパック210を含む。バッテリーパックは、ハウジング250の内側に配置された複数の電気化学セル244を含む。導管246は、ハウジングを通って延在する流体経路を形成する。導管246内に配置された熱管理流体220は、それによって、電気化学セル244と熱伝達するように配置される。電気化学セル244が充放電すると、それらは熱を生成し、熱管理流体220によって吸収される。特定の実施形態では、電気化学セルは、大量の熱を生じる高速充電に供される。熱管理流体の高い熱容量は、この大量の熱を、生成されるにつれて迅速に吸収することができる。
【0071】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、流体経路は、ハウジングの空洞によって少なくとも部分的に画定される。例えば、特定の実施形態では、流体経路の少なくとも一部は、構成要素140内の流体経路122と同様に、電気化学セルとハウジングの内壁との間に形成される。
【0072】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、流体経路は、ハウジング内に配置された少なくとも1つの導管によって少なくとも部分的に画定される。例えば、バッテリーパック210では、導管246は、ハウジング250を通る流体経路222を提供する。
【0073】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、電気化学セルは、リチウムイオン電気化学セルである。他の実施形態では、電気化学セルは、アルミニウムイオンセル、鉛酸セル、またはマグネシウムイオンセルである。
【0074】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、バッテリーパックは、電気自動車の構成要素である。いくつかの実施態様において、電気自動車は、完全電気自動車またはハイブリッド電気自動車である。他の実施形態では、バッテリーパックは、例えば、ソーラーパネルまたは風力タービンのような地域の再生可能エネルギ源と協働して作動する家庭用エネルギ蓄積解決法のような、定置式エネルギ蓄積解決法の一部である。
【0075】
本開示の別の態様は、電気部品、熱交換器、ポンプ、流体経路、熱交換器、およびポンプを接続する少なくとも1つのダクト、および上記のいずれかの実施形態による熱管理流体の周囲および/または通って延在する流体経路を含む熱管理回路を提供し、熱管理流体は、流体経路、熱交換器、ポンプ、および接続ダクト内に配置される。例えば、
図1に示す熱管理回路100は、電気部品140の周囲を流れる流体経路122を含む。熱管理流体120は、電子部品140からの熱エネルギを吸収する経路122を通って流れる。流体経路122から、熱管理流体120は、第1ダクト130を通って熱交換器160に流れる。熱管理流体120内に蓄積された熱エネルギは、流体が第2ダクト132を通ってポンプ170に流れる前に、熱交換器160内の流体から除去される。ポンプ170の後、熱管理流体120は、電気部品140を取り囲む流体経路122に戻る第3ダクト134を通過する。
図1に示される回路100は、記載された熱管理流体を使用する複雑でない実施形態の概略図である。他の実施形態では、熱管理回路は、バルブ、ポンプ、熱交換器、リザーバおよびダクトの任意の組み合わせなどの追加要素を含む。
【0076】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、流体経路は、電気部品の周りのハウジングによって画定される。例えば、
図1のハウジング150は、電気部品140を取り囲み、熱管理流体120のための空洞を提供する。電気部品140は、ハウジング150の壁から距離を置いてハウジング内に保持され、これにより、熱管理流体120がハウジング150と電気部品140との間に形成されるための経路が可能になる。ハウジング150は、熱管理流体120へのアクセスを提供する特定の開口部152を有する封鎖された形状を有するが、他の実施形態では、ハウジングの頂部は開口しており、熱管理流体は重力によってハウジング内に保持される。
【0077】
本明細書に別途記載される特定の実施形態では、流体経路は、電気部品によって生成される熱エネルギを吸収するように、電気部品と実質的に熱伝達するように熱管理流体を位置決めするように構成される。例えば、熱管理回路100では、流体経路122は、電気部品140の周囲に延在し、電気部品140の表面と直接接触している。さらに、熱管理回路200では、流体経路222は、電気部品240の要素に隣接して延びる導管246を通過する。いずれの場合も、流体経路は、熱管理流体が構成要素からの熱エネルギを容易に吸収するように、電気部品に近接して熱管理流体を配置する。
【0078】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、熱交換器は、熱管理流体から熱を除去するように構成される。例えば、熱管理回路100では、熱管理流体120がハウジング150からポンプで送り出された後、熱交換器160に渡され、そこで熱エネルギが周囲空気または冷却液などのより冷却された流体に伝達される。
【0079】
本明細書に別途記載されるような特定の実施形態では、熱管理回路は、上述の実施形態のいずれかによるバッテリーパックを含む。例えば、熱管理回路200は、バッテリーパック210を含む。
【0080】
当業者には、開示の範囲から逸脱することなく、ここに記載されているプロセスおよび装置に対して様々な修正および変形を行うことができることは明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入ることを条件として、本発明のそのような修正および変形をカバーすることが意図される。
【0081】
本開示の特定の態様は、次に、以下の非限定的な実施例を介してさらに説明される。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
本開示のエマルジョンは、上記の方法を使用することによって調製された。具体的には、53.9重量%パラフィンワックス(Sasolwax、Sasolから入手可能)、64℃の融点、6.9重量%乳化剤(Wax Emulsifier 2106、Clariantから入手可能)、および6.9重量%グリセロールを32.3重量%の水中で混合し、乳化した。乳化後、得られたミセルを、ベックマン コールター レーザー回析 PS 分析器(LS13 320)を使用して分析した。エマルジョン中のミセルの平均粒径は0.510μmであると決定され、メディアン粒径は0.505μmであり、モード粒径は0.520μmであり、10%未満の粒子が0.415μm未満または0.617μm超の平均直径を有した。
【0083】
図3は、得られたエマルジョンの比熱容量の-80℃から+80℃への変動を示す。
図3のデータもまた、以下の表1に示す。12J/gK付近の熱容量のスパイクは、-8.4℃で融解する連続水相からの氷による(グリセロールの存在のために、溶液の融点は0℃より低いことに留意されたい)。参考のために、水のみまたは50:50の水/グリコールを含有する流体の比熱容量は、それぞれ4.18J/gKまたは3.41J/gKである。したがって、実施例1のエマルジョンは、冷却液流体の熱容量を劇的に増加させた。熱容量の第2のスパイクはワックスの融点にある。
【0084】
【0085】
本発明者らは、異なるパラフィンが、それらの融点に基づいて選択され得ると決定した。例えば、最終用途に最も関連する融点を有するパラフィン、例えば、バッテリー充電を使用することができる。固相変化材料がある範囲の温度にわたって液相に入るように、各々が異なる融点および/または質量を有する種々の相変化材料を含むエマルジョンを提供することも可能である。この結果、エマルジョンは、所望に応じて、一定のまたは変化する冷却効果を提供することができる。
【0086】
本明細書に記載されている実施例および実施形態は、例示のみを目的とするものであり、当業者には、それらに照らして様々な修正または変更が示唆され、本願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に組み込まれることが理解される。本明細書に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
本開示の様々な実施形態は、以下を含むが、これらに限定されない。
1.エマルジョンであって、
水性担体流体、および
水性担体流体内のミセルの分散体であって、各ミセルが、相変化材料を含む固体疎水性コア粒子と、固体疎水性コア粒子の周りにミセルシェルを形成する1つまたはそれ以上の乳化剤とを含み、ミセルが、約0.1μm~約1.5μmの範囲の平均粒径を有する分散体を含むエマルジョン。
【0088】
2.ミセルサイズ分布d10がd50の50%以上であり、d90がd50の150%以下であるか、またはd10がd50の60%以上であり、d90がd50の140%以下であるか、またはd10がd50の70%以上であり、d90がd50の130%以下であるか、またはd10がd50の75%以上であり、d90がd50の125%以下であるか、またはd10がd50の80%以上であり、d90がd50の120%以下である実施形態1に記載のエマルジョン。
【0089】
3.d50が、0.1μm~1.5μm、例えば、0.1μm~1.2μm、または0.1μm~1.0μm、または0.1μm~0.5μm、または0.1μm~0.4μm、または0.2μm~1μm、または0.2μm~0.8μm、または0.2μm~0.6μm、または0.2μm~0.5μm、または0.2μm~0.4μm、または0.4μm~1μm、または0.4μm~0.8μm、または0.4μm~0.6μm、または0.4μm~0.5μm、または0.3μm~0.5μm、または0.35μm~0.45μmの範囲である実施形態2に記載のエマルジョン。
【0090】
4.ミセルの平均直径が、0.1μm~1μm、例えば、約0.1μm~約0.8μm、または約0.1μm~約0.6μm、または約0.1μm~約0.5μm、または約0.1μm~約0.4μm、または約0.2μm~約1μm、または約0.2μm~約0.8μm、または約0.2μm~約0.6μm、または約0.2μm~約0.5μm、または約0.2μm~約0.4μm、または約0.4μm~約1μm、または約0.4μm~約0.8μm、または約0.4μm~約0.6μm、または約0.4μm~約0.5μm、または約0.3μm~約0.5μm、または約0.35μm~約0.45μmの範囲を有する実施形態1または2に記載のエマルジョン。
【0091】
5.1つまたはそれ以上の乳化剤が実質的にミセル中に結合され、例えば、1つまたはそれ以上の乳化剤の5重量%未満が非結合状態で水溶液中に存在するか、またはエマルジョンの総重量に基づいて2重量%未満、または1重量%未満、または0.1重量%未満、または0.01重量%未満、またはさらには0.001重量%未満である実施形態1~4のいずれかに記載のエマルジョン。
【0092】
6.相変化材料がワックス性材料である実施形態1~5のいずれかに記載のエマルジョン。
【0093】
7.相変化材料がパラフィンである実施形態1~5のいずれかに記載のエマルジョン。
【0094】
8.相変化材料が、1-シクロヘキシロオクタデカン、4-ヘプタダカノン、キノン、ベンズアミド、またはそれらの混合物である実施形態1~5のいずれかに記載のエマルジョン。
【0095】
9.相変化材料が、少なくとも30℃、例えば、少なくとも50℃、または少なくとも70℃、または30℃~100℃の範囲の融点を有する実施形態1~8のいずれかに記載のエマルジョン。
【0096】
10.ミセルが1つの相変化材料を含む実施形態1~9のいずれかに記載のエマルジョン。
【0097】
11.ミセルが、第1の相変化材料を含む固体疎水性コア粒子を有する第1のミセルセット、および第1の相変化材料とは異なる第2の相変化材料を含む固体疎水性コア粒子を有する第2のミセルセットを含む実施形態1~9のいずれかに記載のエマルジョン。
【0098】
12.第1の相変化材料および第2の相変化材料が、実質的に同じ融点(例えば、融点の5℃以下の差、または融点の2℃以下の差、または融点の1℃以下の差)を有する実施形態11に記載のエマルジョン。
【0099】
13.第1の相変化材料および第2の相変化材料が、異なる融点(例えば、融点の少なくとも10℃差、または融点の少なくとも20℃差、または融点の少なくとも50℃差)を有する実施形態11に記載のエマルジョン。
【0100】
14.相変化材料が、エマルジョンの総重量に基づいて約1重量%~約70重量%、例えば約1重量%~約50重量%、または約1重量%~約30重量%、または約1重量%~約15重量%、または約1重量%~約10重量%、または約1重量%~約5重量%、または約2重量%~約70重量%、または約2重量%~約50重量%、または約2重量%~約30重量%、または約2重量%~約15重量%、または約2重量%~約10重量%、または約5重量%~約70重量%、または約5重量%~約50重量%、または約5重量%~約30重量%、または約5重量%~15重量%、または約10重量%~約70重量%、または約10重量%~約50重量%、または約10重量%~約30重量%、または約20重量%~約70重量%、または約20重量%~約50重量%、または約40重量%~約70重量%の量で組成物中に存在する実施形態1~13のいずれかに記載のエマルジョン。
【0101】
15.1つまたはそれ以上の乳化剤が、構造ヒドロカルビル基-アリール基-ポリエーテル基を有する分子からなる群より選択される実施形態1~14のいずれかに記載のエマルジョン。
【0102】
16.1つまたはそれ以上の乳化剤が、エマルジョンの総重量に基づいて約1重量%~約10重量%、例えば約1重量%~約8重量%、または約1重量%~約6重量%、または約1重量%~約5重量%、または約2重量%~約10重量%、または約2重量%~約8重量%、または約2重量%~約6重量%、または約2重量%~約5重量%、または約3重量%~約10重量%、または約3重量%~約8重量%、または約3重量%~約6重量%、または約3重量%~約5重量%、または約5重量%~約10重量%、または約5重量%~約8重量%、または約5重量%~約6重量の量で存在する実施形態1~15のいずれかに記載のエマルジョン。
【0103】
17.約10J/gK~約35J/gKの範囲の熱容量を有する実施形態1~16のいずれかに記載のエマルジョン。
【0104】
18.約0.05W/mK~約1W/mKの範囲の熱伝導率を有する実施形態1~17のいずれかに記載のエマルジョン。
【0105】
19.約3~約40cStの動粘度を有する実施形態1~18のいずれかに記載のエマルジョン。
【0106】
20.実施形態1~19のいずれかに記載のエマルジョンを調製する方法であって、
水性担体流体中に溶解された1つまたはそれ以上の乳化剤を含む第1の流体を得ること、
1つまたはそれ以上の相変化材料を含む第2の流体を得ること、
剪断力下で第1の流体を第2の流体と接触させて中間流体を生成し、および
エマルジョンを中間流体から回収することを含む方法。
【0107】
21.前記第1の流体と前記第2の流体とを接触させることが、約1200~約1600rpmの範囲の回転速度で撹拌することを含む実施形態20に記載の方法。
【0108】
22.エマルジョンを回収する前に、ラメラ流下で中間流体を第3の流体と接触させることをさらに含む実施形態21または22に記載の方法。
【0109】
23.実施形態1~19のいずれかに記載のエマルジョンを水性流体と組み合わせることによって準備される、または実施形態1~19のいずれかに記載のエマルジョンを含む熱管理流体。
【0110】
24.エマルジョンが、熱管理流体の総重量に基づいて約1重量%~約50重量%;例えば、約5重量%~約40重量%、または約5重量%~約20重量%、または約20重量%~約50重量%の量で使用される実施形態23に記載の熱管理流体。
【0111】
25.実施形態1~19のエマルジョンまたは実施形態23または24の熱管理流体を表面上に通過させること、および
表面から熱管理流体中の熱エネルギを吸収すること含む方法。
【0112】
26.電気部品を操作することによって熱エネルギを生成することをさらに含む実施形態25に記載の方法。
【0113】
27.電気部品が、バッテリーパック、コンデンサ、燃料電池、モータ、インバータ、電気ケーブルまたはコンピュータを含む実施形態25または実施形態26に記載の方法。
【0114】
28.表面は、電気部品の表面である実施形態26または実施形態27に記載の方法。
【0115】
29.表面が導管の内部表面である実施形態25~27のいずれかに記載の方法。
【0116】
30.導管は、電気部品を取り囲むハウジングを通過する実施形態29に記載の方法。
【0117】
31.バッテリーパックであって、
ハウジングと、
ハウジング内に配置された1つまたはそれ以上の電気化学セルと、
ハウジングを通って延在し、1つまたはそれ以上の電気化学セルと実質的に熱伝達する流体経路と、および
流体経路に配置された実施形態1~19のエマルジョンまたは実施形態23または24の熱管理流体を含むバッテリーパック。
【0118】
32.前記流体経路は、前記ハウジングの空洞によって少なくとも部分的に画定される実施形態31に記載のバッテリーパック。
【0119】
33.前記流体経路が、前記ハウジング内に配置された少なくとも1つの導管によって少なくとも部分的に画定される実施形態31または実施形態32に記載のバッテリーパック。
【0120】
34.前記電気化学セルは、リチウムイオン電気化学セルである実施形態31~33のいずれかに記載のバッテリーパック。
【0121】
35.バッテリーパックが電気自動車の構成要素である実施形態31~34のいずれかに記載のバッテリーパック。
【0122】
36.前記電気自動車が、完全電気自動車またはハイブリッド電気自動車である実施形態31~34のいずれかに記載のバッテリーパック。
【0123】
37.熱管理回路であって、
電気部品の周りにおよび/または通って延在する流体経路と、
熱交換器と、
ポンプと、
流体経路、熱交換器、およびポンプを接続する少なくとも1つのダクトと、および
熱管理流体が流体経路、熱交換器、ポンプ、および接続ダクトに配置される実施形態1~19のエマルジョンまたは実施形態23または24の熱管理流体を含む熱管理回路。
【0124】
38.流体経路は、電気部品の周囲のハウジングによって規定される実施形態37に記載の熱管理回路。
【0125】
39.流体経路が、熱管理流体内の前記電気部品によって生成された熱エネルギを吸収するように構成される実施形態37または実施形態38に記載の熱管理回路。
【0126】
40.熱交換器は、熱管理流体から熱を放散するように構成される実施形態37~39のいずれかに記載の熱管理回路。
【0127】
41.電気部品は、複数の電気化学セルを含む電池であり、および
流体経路は、電気化学セルの少なくとも2つの間を通過する実施形態37~40のいずれかに記載の熱管理回路。