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特許74462265-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/502 20060101AFI20240301BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240301BHJP
   C07D 237/32 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240301BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240301BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K31/502
A61P29/00
A61P37/06
C07D237/32
A61K9/08
A61K47/24
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/22
A61P37/02
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020538592
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019000012
(87)【国際公開番号】W WO2019137825
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】18000019.2
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512205898
【氏名又は名称】メトリオファーム アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(74)【代理人】
【識別番号】100220696
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一郎
(72)【発明者】
【氏名】サール インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ブリシュ ヴォルフガング
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/046120(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/140430(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/140422(WO,A1)
【文献】特表2009-513642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0188540(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0275642(US,A1)
【文献】Phosal 53 MCT(商標名)(テクニカルデータシート)[online],2007年,<URL:http://www.americanlecithin.com/TDS/TDS_53MCT.PDF>,retrieved on 17 January 2023
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 45/00
C07D 237/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンのナトリウム塩、カリウム塩もしくはリチウム塩またはそれらの混合物を可溶化するための方法であって、下記の工程:
a)5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンのナトリウム塩、カリウム塩もしくはリチウム塩またはそれらの混合物を室温および0.2バール~1バールの圧力において0.1重量%~2重量%で提供する工程;
b)20重量%~80重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン、
10重量%~70重量%の少なくとも1つの中鎖トリグリセリド、
1重量%~15重量%の少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン、
1重量%~20重量%の少なくとも1つのC~Cアルコール、ならびに
それぞれ0.5重量%~10重量%のステアリン酸グリセリルおよび/または飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つの可溶化薬剤を任意の順序で加え、
前記成分の相対的重量百分率は合計で100重量%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が互いに独立して、食品添加物および/または医薬的に許容され得る賦形剤である、工程;
c)得られた混合物を20分~60分の期間にわたって、温度を0.5℃/分~3℃/分の連続した温度増分により連続して上昇させることによって加熱する工程;
d)透明な溶液に達するとすぐに、温度上昇を30℃~125℃の温度範囲において停止する工程;および
e)得られた可溶化物を室温にまで冷却する工程を含み、
前記得られた可溶化物は、透明であり、ポリソルベートを含まず、エマルションではない、
方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸がオレイン酸である
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのC~Cアルコールがエタノールである
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、工程b)において、0.01重量%~10重量%の少なくとも1つの酸化防止剤が加えられ、前記少なくとも1つの酸化防止剤が医薬的に許容され得る賦形剤であり、前記成分の相対的重量百分率には、前記少なくとも1つの酸化防止剤の相対的重量百分率も含まれる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの酸化防止剤がパルミチン酸アスコルビルおよび/または少なくとも1つのトコフェロールである
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンのナトリウム塩、カリウム塩もしくはリチウム塩またはそれらの混合物の可溶化物であって、
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンのナトリウム塩、カリウム塩もしくはリチウム塩またはそれらの混合物を0.1重量%~2重量%と、
可溶化薬剤として、
20重量%~80重量%の少なくとも1つのホスファチジルコリン、
10重量%~70重量%の少なくとも1つの中鎖トリグリセリド、
1重量%~15重量%の少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン、
1重量%~20重量%の少なくとも1つのC~Cアルコール、ならびに
それぞれ0.5重量%~10重量%のステアリン酸グリセリルおよび/または飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸からなり、
前記成分の相対的重量百分率は合計で100重量%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が互いに独立して、食品添加物および/または医薬的に許容され得る賦形剤であり;
前記可溶化物は、透明であり、ポリソルベートを含まず、エマルションではない可溶化物。
【請求項7】
請求項6に記載の可溶化物であって、予防医療又は治療に用いられる、医療用の可溶化物。
【請求項8】
請求項6または7に記載の可溶化物であって、
過度な免疫反応を伴う状態、または免疫不全の背景を有する状態を処置するための免疫調節剤である可溶化物。
【請求項9】
請求項6に記載の可溶化物と、少なくとも1つの医薬的に活性な薬剤とを含む医薬であって、
前記少なくとも1つの医薬的に活性な薬剤は、ステロイド性抗炎症薬および非ステロイド性抗炎症薬;免疫調節剤;免疫刺激剤;免疫抑制剤;抗生物質;抗感染剤;抗ウイルス剤;抗真菌剤;抗原虫剤;駆虫剤;鎮痛剤;局所麻酔剤;抗凝固剤;抗血小板薬;筋弛緩剤;強壮剤;ならびに同化剤を含む群から選択される少なくとも1つの医薬的に活性な薬剤であり、
過度な免疫反応を伴う状態、または免疫不全の背景を有する状態の予防および/または処置において使用される医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩を可溶化するための方法、本方法によって製造される可溶化物、その使用、および前記可溶化物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血液の痕跡を清浄することまたは除去することを誰かが懸命に試みたとしても、数十年来、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン(ルミノール)が、その痕跡を検出するために犯罪現場捜査官によって使用されている(Barni他、Talanta、2007、72、896~913を参照のこと)。ヘモグロビン中の鉄によって触媒される酸化を受けたときの強いルミネセンスにより、ルミノールは高感度センサーとなっている。その法医学的使用の他に、環境応用から医療応用にまで及ぶ数多くの他の応用が、ルミノールの合成に関する最初の報告が発表された以降では確立されている(A.J.Schmitz、Uber das Hydrazid der Trimesinsaure und der Hemimellithsaure、Heidelberg、1902)。例えば、ルミノールが、生物分析化学において重金属検出またはバイオセンシングのために使用される(KlopfおよびNieman、Anal.Chem.1983、55、1080~1083を参照のこと)。
【化1】
【0003】
ルミノールのナトリウム塩がその医薬活性について関心を再び集めたので、ルミノールの様々なアルカリ塩が最近になってやっと構造的に特徴づけられている(Guzei他、J.Coord.Chem.2013、66、3722~3739)。Naルミノラートは大きな可能性を炎症性疾患および自己免疫疾患の免疫調節処置において示す。そのうえ、Naルミノラートでは多形が多く示されており、3つの無水物結晶構造がこれまでに特徴づけられている(国際公開WO2011/107295A1;国際公開WO2016/96143A1を参照のこと)。ルミノール自体についてもまた、2つの結晶形態が公表されている(Paradies、Ber.Bunsen-Ges.Phys.Chem、1992、96、1027~1031;国際公開WO2017/140430A1)。水溶液におけるルミノールの異性体形態の一般的な物理化学的特性がSkripnikova他(2017;J Mol Struct、1154:59~63)によって公表されている。これらのNaルミノラート結晶形態またはルミノール結晶形態についての特別な治療的使用が国際公開WO2017/202496A1に記載されている。
【0004】
化合物の結晶形態が、異なる物理的特性(例えば、溶解性、溶解速度および安定性など)を示し得ることが知られている(HaleblianおよびMcCrone(1969):Journal of Pharmaceutical Sciences、58:911~929を参照のこと)。これらの特性は、化合物の製剤加工、同様にまた、その生物学的利用能および薬物動態学、したがって、その生物学的効力に影響を与える可能性がある(Griesser(2006)、Polymorphisms in the Pharmaceutical Industry、Hilfiker(編)、211~234を参照のこと)。少なくとも1つのピペリン系化合物を溶液に加えることによって薬物の経口生物学的利用能を増大させるための配合物が国際公開WO2013/108254A1に開示された。
【0005】
これまでに記載されたルミノール塩は水に易溶性であるが、ルミノール自体は水溶性が極めて不良である。そのうえ、溶解され得る少量は、数日後には沈殿する傾向がある。また、光、高温および金属カチオンに対して敏感であることも記載されている。このことはルミノール水溶液の使用を大きく妨げている。この問題が、塩基性溶液を使用することによって、あるいはエタノールまたはDMSOのような希釈剤を使用することによって解決される場合がある。しかしながら、これらの希釈剤は広範囲の様々な医薬用途のためには受け入れられない。
【0006】
ルミノールナトリウム塩の使用は、水性環境における溶解性に関して好都合である。しかしながら、胃腸管での吸収、経皮送達のための局所適用、または血液脳関門を越える輸送については、遊離酸が、ルミノールの生物学的利用能を増大させるために投与され得るであろうならば、好ましいであろう。したがって、十分に高い血漿中濃度および細胞内濃度が、ルミノールの治療可能性を最大にするために達成され得るであろう。したがって、ルミノールを水性媒体において可溶化するための方法を見出すことが求められている。
【0007】
親油性医薬剤の溶解性を、そしてまた、多くの場合にはその生物学的利用能をも、可溶化技術を使用することによって改善するための様々な取り組みが存在する。本明細書中では、媒体における薬剤の溶解性が、第3の物質を加えることによって増強される。これらの第3の物質は可溶化剤(可溶化用薬剤)として示され、すなわち、例えば、可溶化される物質との複合体を形成してもよい物質である。そのようなキレート剤の例として、安息香酸ナトリウムおよびサリチル酸ナトリウムが挙げられる。可溶化剤の別の作用機構が、溶媒の溶解能を、例えば、水のクラスター構造を乱すことによって増強することである。そのような構造破壊剤の例として、グリセロール(グリセリン)およびマクロゴール(ポリエチレングリコール、PEG)が挙げられる。
【0008】
第3の可溶化機構がミセルおよびリポソームの応用技術である。そのような技術は過去数十年にわたって幅広い注目を集めてきた。本明細書中では、送達されることになる物質が界面活性剤分子の球状集合体に閉じ込められる。これらの分子は、極性の頭部基と、長い非極性鎖(「尾部」)とによって特徴づけられる。水性媒体の中に入れられると、これらの分子は、極性の頭部基が周りの媒体に向かって、かつ、非極性鎖が球体の内側に向かって配向することにより球状構造に集合することによって会合する傾向がある。これらの球体がそのような両親媒性分子の1層のみからなるとき、それらはミセルと呼ばれる。両親媒性分子の性質および反応条件に依存して、2つ以上の層を有する球体を形成させることもまた可能である。本明細書中では、第2の層が球体の外層の内側に形成され、この第2の層の非極性基が外層の非極性基の方を向いており、極性の頭部基が球体の内側の方を向いている。そのような集合体はリポソームと呼ばれる。その構造において、リポソームは細胞膜の脂質二重層に似ている。少なくとも2つのリポソーム球体が互いに同心円状に形成され、したがって、多球状集合体を組み立てる多層リポソームもまた存在する。親油性媒体に入れられると、これらの物質は、親油性の鎖が溶液媒体の方を向き、他の層がそれに応じて配置される反転した球状構造となる傾向がある。
【0009】
そのような負荷された球体の種々の使用がこの技術分野では記載されてきており、それらの中でも、親油性物質を適用するための、かつ/または閉じ込められた物質の生物学的利用能を増大させるための投薬形態物としての使用法が記載されてきている。ミセルでは、閉じ込められた非極性物質が、両親媒性分子の非極性鎖が向いている球体の内側空間に集まる。しかしながら、リポソームでは、球体の内側空間は、水性の、それぞれ親水性の媒体である。この内側空間は、親水性分子を詰めるために役立ち得る。しかしながら、水溶性が不良である、それぞれ親油性の分子は、ほとんどがリポソーム層の親油性構造部の間に集まる。
【0010】
ミセルに基づく可溶化技術が、例えば、国際公開WO03/007907A1または同WO2014/094921A1に開示されている。それらにおいて、HLB(親水性・親油性バランス)値が9~16である、または13~18である乳化剤がそれぞれ使用される。ポリソルベート(Tween)20または80が使用されることが多い。この技術の実施は一見したところ、チューインガムの製造に限定されるようである。
【0011】
さらなる取り組みが、グルクロン酸抱合阻害剤を医薬組成物に混合することである。ポロキサマーまたはポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80などの界面活性剤が広く使用される。別の一般的なグルクロン酸抱合阻害剤がビオペリン(bioperine)である。しかしながら、グルクロン酸抱合阻害剤は本来の代謝もまた阻害し、その結果として、他の薬物または内因性物質の排除もまた阻害する。したがって、グルクロン酸抱合阻害剤の使用は両刃の剣であり、それぞれの個々の患者への薬物療法に左右されるにちがいない。したがって、そのような組成物は、特に多疾病患者では、長期の薬物療法については様々な問題をもたらすかもしれない。
【0012】
経験的な薬物動態学測定から、生物はミセルならびにリポソームを、腸絨毛を介して胃腸管において吸収することができることが知られている。しかしながら、それらの吸収度合いはかなり変動し得るようであり、したがって、これらの方法は、閉じ込められた化合物の生物学的利用能を強化することについては交錯した成功となっている。細胞膜を越える輸送、すなわち、それぞれ細胞膜を越える吸収速度は、様々な要因(例えば、分子サイズ、親油性の程度、細胞膜の内部における適切な輸送体分子の存在など)に依存して、それぞれの物質についての固有の特性である。多くの化合物について、これらのパラメーターは知られておらず、この具体的な化合物のための好適な詰め込みを見出す前に最初に決定されなければならないであろう。
【0013】
リポソームの様々な応用が医療および薬理学において広範囲に議論されており、いくつかの洗練された解決策が具体的な活性な薬剤について開発されている。しかしながら、それらの使用はあまり一般的ではない。1つの理由が、比較的高い製造コストであり、もう1つの理由が、起こり得る有害な副作用である。水溶性が不良である栄養補助食品および医薬用の活性な薬剤のための、リポソームに基づく自己乳化方法が、欧州特許公開EP3290026A1に開示された。特に、非経口適用されたときには、リポソームは、肝臓、脾臓および/または骨髄に蓄積する危険性がある。したがって、リポソーム配合物は懐疑的に見られることが多い。
【0014】
薬物の生物学的利用能を増大させるための、ナノリポスフェア(nano-liposphere)に基づく配合方法が、国際公開WO2013/108254に開示された。この方法は最先端の技術よりもいくらか進歩しているが、いくつかの固有の欠点もまた存在する。高圧ホモジナイザーが、これらの固体脂質ナノ粒子の製造のために必要である。しかしながら、高圧により誘発される薬物分解が、いくつかの薬物または栄養補助食品については報告されている。脂質の結晶化、ゲル化現象、およびいくつかのコロイド種の共存が生じている。さらなる制限要因、例えば、食作用の後での細胞毒性作用、有機残留物の毒性作用、および困難な工業的規模拡大などのために、それらの使用は現在まで制限されている(MehnertおよびMader、Adv Drug Deliv Res、2001、47、165~196;Dudala他、Int J Pharm Investg、2014、4、149~155)。そのうえ、ナノリポスフェアに基づく配合物の薬物負荷能は比較的小さく、それらは低い粘度を示す。このため、それらは、局所用または経皮用の塗布形態物のためにはあまり魅力的になっていない(Mukherjee他、Indian J Pharm Sci、2009、71、349~358)。さらに、両親媒性溶媒の使用が、例えば、乳酸の低級アルキルエステルまたはN-メチルピロリドンなどの使用が、国際公開WO2013/108254では要求される。N-メチルピロリドンは、潜在的発ガン性および生殖毒性を有することに関して非常に懸念すべき物質であるとして列挙されている。乳酸メチルは通常、水性環境において乳酸およびメタノールに加水分解される。乳酸エチルなどが十分に許容される。しかしながら、比較的大きい製造コストのために、乳酸エチルは非常に魅力的な溶媒ではない。
【0015】
トリグリセリド含有軽油によるユビキノンQ10のための可溶化技術が国際公開WO03/007907A1に記載された。
【0016】
別の可溶化技術が、可溶化されることになる物質のシクロデキストリン(例えば、α-、β-またはγ-シクロデキストリンなど)またはシクロデキストリン誘導体(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリンまたはトリメチル-β-シクロデキストリンなど)との包接複合体を形成させることである。典型的には、シクロデキストリンは、大環状分子を形成する6個~8個の1,4-結合したα-D-グルコピラノシドから構成される。したがって、疎水性物質をその内部に受け入れることができる水溶性トロイド(円錐形状またはバケツ形状)構造が生じる。この内部の空間は、水性環境と接触する外側よりも親水性がかなり小さい。シクロデキストリンは酵素処理によってデンプンから製造される。シクロデキストリンには、可溶化されることになる化合物が分散によって負荷される。可溶化されることになる化合物はその後、その具体的な組成に依存して、これらの複合体を水と接触させることによって、pHまたは温度の変化によって放出させることができる。しかしながら、シクロデキストリンの開発は一見したところ、容易ではなく、比較的費用がかかるようである。このため、シクロデキストリンの使用は今まで制限された。さらなる問題が、シクロデキストリンは防腐剤(例えば、パラベン類など)と相互作用するということである。
【0017】
したがって、すべてのこれらの技術にはそれらの利点があり、しかし、欠点もまたいくつかある。
【0018】
様々なポリソルベートがこれらの可溶化技術において広く使用される。しかしながら、健康に対するポリソルベートの有害影響についての論争が続いている。ポリソルベート-20には、(少なくとも一部の供給者からは)未反応の1,4-ジオキサンおよびエチレンオキシドが混入していると論じられている。これらは、知られている皮膚透過性発ガン性物質である(http://www.fda.gov/ohrms/dockets/98fr/060199a.txt(2017年3月22日現在)を参照のこと)。ポリソルベート80は、マウスの腸内微生物叢に対する有害な作用を有すること、したがって、肥満および炎症性腸疾患を増進させることが近年見出された(Chassaing他、Dietary emulsifiers impact the mouse gut microbiota promoting colitis and metabolic syndrome、Nature、2015、519、92~96)。このことは、慢性炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病など)の患者については特に重要である(Roberts他、Translocation of Crohn’s disease Escherichia coli across M-cells:contrasting effects of soluble plant fibres and emulsifiers、Gut、2010、59、p.1331~1339)。IBDは、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの治療的使用のための標的適応症である。ポリソルベート(例えば、Tween80など)のさらなる問題が、ポリソルベートは、広く使用されている防腐剤(例えば、パラベンなど)の効力を、防腐剤と結合することによって低下させるということである(Blanchard他、Effect of sorbitol on interaction of phenolic preservatives with polysorbate 80、1977、J Pharm Sci、66、p.1470~1473を参照のこと)。しかしながら、パラベンのエストロゲン様の潜在能力のために、パラベン濃度をそれに応じて増大させるべきではない(Okubo他、ER-dependent estrogenic activity of parabens assessed by proliferation of human breast cancer MCF-7 cells and expression of ERalpha and PR、2001、Food Chem Toxicol、39、p.1225~1232を参照のこと)。ポリソルベート(特にポリソルベート80)の他のよく知られている問題が、患者の過敏性反応である(Steele他、Hypersensitivity reactions to the polysorbate contained in recombinant erythropoietin and darbepoietin、Nephrology、2005、10、p.317~320;Norris他、Polysorbate 80 hypersensitivity reactions:a renewed call to action、Commun Oncol、2010、7、425~428を参照のこと)。ポリソルベート80はまた、アミオダロン配合物において、死に至る場合さえある全身性低血圧と関連付けられている(Cushing他、PM 101:A cyclodextrin-based intravenous formulation of amiodarone devoid of adverse hemodynamic effects、Eur J Pharmacol、2009、607、p.167~172を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】国際公開WO2011/107295A1
【文献】国際公開WO2016/96143A1
【文献】国際公開WO2017/140430A1
【文献】国際公開WO2017/202496A1
【文献】国際公開WO2013/108254A1
【文献】国際公開WO03/007907A1
【文献】国際公開WO2014/094921A1
【文献】欧州特許公開EP3290026A1
【文献】国際公開WO2013/108254
【文献】国際公開WO03/007907A1
【非特許文献】
【0020】
【文献】Barni他、Talanta、2007、72、896~913
【文献】A.J.Schmitz、Uber das Hydrazid der Trimesinsaure und der Hemimellithsaure、Heidelberg、1902
【文献】KlopfおよびNieman、Anal.Chem.1983、55、1080~1083
【文献】Guzei他、J.Coord.Chem.2013、66、3722~3739
【文献】Paradies、Ber.Bunsen-Ges.Phys.Chem、1992、96、1027~1031
【文献】Skripnikova他、2017;J Mol Struct、1154:59~63
【文献】HaleblianおよびMcCrone(1969):Journal of Pharmaceutical Sciences、58:911~929
【文献】Griesser(2006)、Polymorphisms in the Pharmaceutical Industry、Hilfiker(編)、211~234
【文献】MehnertおよびMader、Adv Drug Deliv Res、2001、47、165~196
【文献】Dudala他、Int J Pharm Investg、2014、4、149~155
【文献】Mukherjee他、Indian J Pharm Sci、2009、71、349~358
【文献】http://www.fda.gov/ohrms/dockets/98fr/060199a.txt(2017年3月22日現在)
【文献】Chassaing他、Dietary emulsifiers impact the mouse gut microbiota promoting colitis and metabolic syndrome、Nature、2015、519、92~96
【文献】Roberts他、Translocation of Crohn’s disease Escherichia coli across M-cells:contrasting effects of soluble plant fibres and emulsifiers、Gut、2010、59、p.1331~1339
【文献】Blanchard他、Effect of sorbitol on interaction of phenolic preservatives with polysorbate 80、1977、J Pharm Sci、66、p.1470~1473
【文献】Okubo他、ER-dependent estrogenic activity of parabens assessed by proliferation of human breast cancer MCF-7 cells and expression of ERalpha and PR、2001、Food Chem Toxicol、39、p.1225~1232
【文献】Steele他、Hypersensitivity reactions to the polysorbate contained in recombinant erythropoietin and darbepoietin、Nephrology、2005、10、p.317~320
【文献】Norris他、Polysorbate 80 hypersensitivity reactions:a renewed call to action、Commun Oncol、2010、7、425~428
【文献】Cushing他、PM 101:A cyclodextrin-based intravenous formulation of amiodarone devoid of adverse hemodynamic effects、Eur J Pharmacol、2009、607、p.167~172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化方法は以下の基準を満たさなければならない:
・扱いやすいこと
・好都合な組成物を見出すための開発時間が長くないこと
・費用のかかる設備を必要としないこと
・安価な材料および製造コスト
・ポリソルベート(Tween)可溶化剤の添加を必要としないこと。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことに、本発明による方法はこの課題を解決することができることが見出された。
【0023】
本明細書中において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンが、下記の工程:
a)5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンを室温および0.2バール~1バールの圧力において0.1重量%~25重量%の範囲全体で提供する工程;
b)重20重量%~80重量%の範囲全体での少なくとも1つのホスファチジルコリン、
10重量%~70重量%の範囲全体での少なくとも1つの中鎖トリグリセリド、
1重量%~15重量%の範囲全体での少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン、
1重量%~20重量%の範囲全体での少なくとも1つのC~Cアルコール、ならびにそれぞれ0.5重量%~10重量%の範囲全体でのステアリン酸グリセリルおよび/または飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つ
の可溶化薬剤を任意の順序で加え、
すべての成分の相対的重量百分率は合計で100%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が医薬的に許容され得る賦形剤である、工程;
c)得られた混合物を20分~60分の期間にわたって、温度を0.5℃/分~3℃/分の連続した温度増分により連続して上昇させることによって注意深く加熱する工程;
d)透明な溶液に達するとすぐに、温度上昇を30℃~125℃の温度範囲において停止する工程;および
e)得られた可溶化物を室温にまで冷却する工程
を含む本発明による方法によって可溶化される。
【0024】
好ましい実施形態において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンは、下記の工程:
a)5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンを室温および0.2バール~1バールの圧力において0.5重量%~10重量%の範囲全体で提供する工程;
b)20重量%~80重量%の範囲全体での少なくとも1つのホスファチジルコリン、
10重量%~70重量%の範囲全体での少なくとも1つの中鎖トリグリセリド、
1重量%~15重量%の範囲全体での少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン、
1重量%~20重量%の範囲全体での少なくとも1つのC~Cアルコール、ならびにそれぞれ0.5重量%~10重量%の範囲全体でのステアリン酸グリセリルおよび/または飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つ
の可溶化薬剤を任意の順序で加え、
すべての成分の相対的重量百分率は合計で100%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が医薬的に許容され得る賦形剤である、工程;
c)得られた混合物を20分~60分の期間にわたって、温度を0.5℃/分~3℃/分の連続した温度増分により連続して上昇させることによって注意深く加熱する工程;
d)透明な溶液に達するとすぐに、温度上昇を30℃~125℃の温度範囲において停止する工程;および
e)得られた可溶化物を室温にまで冷却する工程
を含む本発明による方法によって可溶化される。
【0025】
本発明の別の局面は、本発明による方法は可溶化剤および/または乳化剤としてのポリソルベートを必要としないということである。したがって、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンを、下記の工程:
a)5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンを室温および0.2バール~1バールの圧力において0.1重量%~25重量%の範囲全体で提供する工程;
b)20重量%~80重量%の範囲全体での少なくとも1つのホスファチジルコリン、
10重量%~70重量%の範囲全体での少なくとも1つの中鎖トリグリセリド、
1重量%~15重量%の範囲全体での少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン、
1重量%~20重量%の範囲全体での少なくとも1つのC~Cアルコール、ならびにそれぞれ0.5重量%~10重量%の範囲全体でのステアリン酸グリセリルおよび/または飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つ
の可溶化薬剤を任意の順序で加え、
すべての成分の相対的重量百分率は合計で100%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が医薬的に許容され得る賦形剤である、工程;
c)得られた混合物を20分~60分の期間にわたって、温度を0.5℃/分~3℃/分の連続した温度増分により連続して上昇させることによって注意深く加熱する工程;
d)透明な溶液に達するとすぐに、温度上昇を30℃~125℃の温度範囲において停止する工程;および
e)得られた可溶化物を室温にまで冷却する工程
を含み、
得られた可溶化物にはポリソルベートが含まれないことにおいて特徴づけられる、本発明による方法によって可溶化することができる。
【0026】
さらなる実施形態において、本発明による可溶化物はまた、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの様々な塩からも作製することができる。ナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩が治療応用のために記載されている(国際公開WO2010/082858を参照のこと)。リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩およびセシウム塩についての結晶構造が、Guzei他(2013、Journal of Coordination Chemistry、66、3722~3739)に記載された(国際公開WO2011/107295A1、同WO2016/96143A1もまた参照のこと)。一般に、これらの塩は水溶性であり、したがって、水溶液のために可溶化されることを必要としない。しかしながら、治療的に使用されるときには、本発明による可溶化物は、液体投薬形態物の貯蔵寿命を延ばす傾向がある。経口投与のための液体投薬形態物において、これらの液体投薬形態物は、多くの患者には魅力的でない5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩溶液の味を覆い隠すことができる。そのうえ、これらの液体投薬形態物は、胃腸管からの5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンのこれらの塩の再吸収を量および時間に関して改善する。これにより、好都合な薬物動態学特性をもたらすかもしれないことではあるが、生物学的利用能を改善することができる。しかしながら、より高いイオン濃度は、本発明による可溶化物を水溶液に溶解するために不可欠であると考えられる多重膜小胞の形成を妨げる。したがって、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン塩の最大相対量は遊離塩基の場合よりも低い。
【0027】
最大で2重量%の5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン塩が本発明の方法に従って溶解され得ることが見出された。
【0028】
したがって、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの塩が、下記の工程:
a)5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの塩を室温および0.2バール~1バールの圧力において0.1%~2%の範囲全体で提供する工程で、
前記塩が、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはリチウム塩またはそれらの混合物である、工程;
b)20重量%~80重量%の範囲全体での少なくとも1つのホスファチジルコリン、
10重量%~70重量%の範囲全体での少なくとも1つの中鎖トリグリセリド、
1重量%~15重量%の範囲全体での少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン、
1重量%~20重量%の範囲全体での少なくとも1つのC~Cアルコール、ならびにそれぞれ0.5重量%~10重量%の範囲全体でのステアリン酸グリセリルおよび/または飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つ
の可溶化薬剤を任意の順序で加え、
すべての成分の相対的重量百分率は合計で100%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が医薬的に許容され得る賦形剤である、工程;
c)得られた混合物を20分~60分の期間にわたって、温度を0.5℃/分~3℃/分の連続した温度増分により連続して上昇させることによって注意深く加熱する工程;
d)透明な溶液に達するとすぐに、温度上昇を30℃~125℃の温度範囲において停止する工程;および
e)得られた可溶化物を室温にまで冷却する工程
を含む本発明による方法によって可溶化される。
【0029】
好ましい実施形態において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンのこれらの塩の実施形態もまた、得られた可溶化物にはポリソルベートが含まれないことにおいて特徴づけられる。
【0030】
以下の説明および実施形態では、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの前記塩が遊離塩基の場合のように同様に参照されることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
混乱させる定義、また、それどころか、矛盾する定義が、この技術分野では見出され得る。曖昧さをどのようなものであれ避けるために、本発明による可溶化物は以下のように定義される:
可溶化物は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物と、本発明に従って定義されるような可溶化用薬剤との組成物である。溶媒または希釈剤をさらに加えることは、この用語によって包含されないものとする。本発明による可溶化物が最初に本発明による可溶化方法によって作製され、その後、具体的な医薬組成物が前記可溶化物を用いて作製され、最後に前記医薬組成物が、それぞれの投薬形態物のための好適な医薬的に許容され得る容器に包装される。
【0032】
本発明による可溶化物は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物の実質的に完全な可溶化によって、したがって、分子が溶液において実質的に独立した実体として挙動し、かつ、ブラウン運動の分布および熱力学的規則を実質的に受けるほぼ完全な溶液であることによって特徴づけられる。したがって、本発明による可溶化物は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物を高濃度で含有する透明な溶液である。一般に、本発明による可溶化物は、希釈を伴わない投与のためのもの、すなわち、医薬的に許容され得る投薬形態物に配合されることなくそれぞれ投与されるためのものではない。ほとんどの場合において、小分けされた可溶化物が数mlの体積となる。
【0033】
本特許出願の範囲において、用語「可溶化集合体」または用語「可溶化実体」は、「可溶化物」と同義的に使用されるものとする。
【0034】
本発明による可溶化物は懸濁物(コロイド状懸濁物)と区別されなければならない。この用語は、遅かれ早かれ沈降することになる固体粒子を含有する不均一な混合物を定義する。本発明による可溶化物はまた、エマルション(通常は混和しない2つの液体の混合物)とも異なる。
【0035】
物質の生物学的利用能を増大させるためには、完全な可溶化が非常に好ましい。
【0036】
本発明に従って使用される用語の可溶化物は医薬組成物と区別されなければならない。本発明による医薬組成物は、液体投薬形態物を製造するために本発明による可溶化物を好ましくは水性の溶液に希釈することによって、または本発明による可溶化物を局所投薬形態物(すなわち、カプセルまたは坐剤)に混合することによって作製される。
【0037】
本願の範囲における希釈剤(diluent)は希釈用薬剤(希釈剤(dilutant)、薄め液)である。希釈剤は、本発明による可溶化物の一部ではない。
【0038】
本願の範囲において、用語「可溶化用薬剤(solubilizing agent)」は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物を可溶化するために5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物に加えられ、その結果、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物が水溶液に溶解され得るようにする化学物質をどのようなものであれ示す。用語「可溶化剤(solubilizer)」が同義的に使用されるものとする。
【0039】
本願の範囲において、用語「医療」は、ヒト医療および獣医学医療を含むものとする。
【0040】
そのような可溶化物の大きな利点は、その小さい体積にある。したがって、可溶化物を患者にやさしい単位物に容易に分けることができ、または、比較的大量の可溶化された物質を低コストで輸送することができる。投薬形態物を製造するために、調製を医療スタッフまたは患者によって容易に行うことができる。
【0041】
本発明による可溶化物はまた、高濃度物とも区別されなければならない。高濃度物は、複合物、すなわち、それぞれ希釈剤を含まない化合物の組成物である。高濃度物が希釈剤の中に放出されると、高濃度物はそれ自体が希釈剤に完全に溶解するか、または希釈剤との懸濁物もしくはエマルションを形成するかのどちらかである。高濃度物は、本質的には水または水溶液に可溶性であるため、可溶化用薬剤との相互作用を必要としない。
【0042】
本発明による方法の好ましい実施形態において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンが2重量%~15重量%の範囲全体で提供され、より好ましい実施形態においては2重量%~10重量%の範囲全体で提供される。
【0043】
ホスファチジルコリンは、コリンに連結されるリン脂質の一群である。ホスファチジルコリンは細胞膜の主要な成分であり、例えば、卵黄、ウシの肝臓、海洋動物、オキアミ油またはダイズから得られる。実際問題として、ホスファチジルコリンの起源がその生物学的作用および化学的作用にかなり影響することが示された。本発明によれば、少なくとも1つのホスファチジルコリン(PC)は、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、天然型(非水素化)ダイズPCまたは水素化ダイズPC、天然型卵PCまたは水素化卵PC、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)または1,2-ジオレイル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1-オレオイル-パルミトイルホスファチジルコリン(OPPC)、ジアステロイルホスファチジルコリン(DSPC)、モノステアロイルホスファチジルコリン(MSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)およびそれらの混合物を含む群から選択することができる。好ましいホスファチジルコリンは、非水素化ダイズPC、DMPC、POPCおよびDOPCである。非水素化ホスファチジルコリンもまた好ましい。特に好ましいものは非水素化ダイズPCである。
【0044】
本発明による可溶化物の局所投薬形態物のためには、非水素化ホスファチジルコリンが特に好ましい。
【0045】
レシチンがホスファチジルコリンの同義語として一般に使用される。レシチンは、ホスファチジルコリンと他の化合物との混合物である。
【0046】
本発明の方法によれば、ホスファチジルコリンが20重量%~80重量%の範囲全体で使用され、好ましくは40重量%~70重量%の範囲全体で使用され、より好ましくは50重量%~65重量%の範囲全体で使用され、最も好ましくは60重量%で使用される。
【0047】
中鎖トリグリセリド(MCT)は、炭素原子が6個~12個である脂肪族尾部をその脂肪酸が有するトリグリセリドを示す。MCTに組み込まれる脂肪酸が中鎖脂肪酸(MCFA)と呼ばれる。トリグリセリドにおいて、3つの脂肪酸分子がグリセロール骨格に結合する。定義によって、MCTでは、これら3つの脂肪酸のうちの少なくとも2つがMCFAでなければならない。本発明によれば、MCFAを、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、それらの不飽和誘導体、およびそれらの混合物を含む群から互いに独立して選択することができる。好ましいMCFAは、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸およびラウリン酸である。
【0048】
1個~3個のミリスチン酸残基および/またはパルミチン酸残基をMCFAの代わりに含有するトリグリセリドを使用することが本発明のいくつかの実施形態においては好都合であり得る。したがって、これらの2つの脂肪酸は、本発明による用語MCTに包含されるものとする。
【0049】
MCT油またはMCT脂肪は、主として前記MCTを含有する油または脂肪である。これらの用語は、様々なMCFAを含有し得る異なるMCTのそれぞれの混合物を示す。本発明によれば、無理のない混合比率はどれも、これらの用語によって包含されるものとする。MCT脂肪は特定の植物脂肪から抽出されることが多く、一方、MCT油は天然には存在しない。MCT油およびMCT脂肪は、健康栄養補助食品として、すなわち、それぞれ栄養における長鎖脂肪の代用物として広範囲に販売されている。
【0050】
本発明の方法によれば、MCTは、10重量%~70重量%の範囲全体で使用され、好ましくは20重量%~40重量%の範囲全体で使用され、より好ましくは25重量%~35重量%の範囲全体で使用され、最も好ましくは30重量%で使用される。
【0051】
リゾホスファチジルコリン(LPC、lysoPC、同様にリゾレシチン)は、脂肪酸基の1つが除かれるその部分加水分解から生じるホスファチジルコリンの誘導体の一群である。生物において、この加水分解は酵素ホスホリパーゼA2によって引き起こされる。本発明によれば、少なくとも1つのリゾホスファチジルコリンは、上記で列挙されるホスファチジルコリンのすべての加水分解化合物、1-リゾホスファチジルコリン(2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、2-リゾホスファチジルコリン、L-アルファ-リゾホスファチジルコリン、およびそれらの混合物を含む群から互いに独立して選択することができる。
【0052】
本発明の方法によれば、リゾホスファチジルコリンは、1重量%~15重量%の範囲全体で使用され、好ましくは3重量%~8重量%の範囲全体で使用され、より好ましくは5重量%~7重量%の範囲全体で使用され、最も好ましくは6重量%で使用される。
【0053】
本願の範囲において、前記リゾホスファチジルコリンはホスファチジルコリンに代わる単なる異形体または代替物ではなく、独立した役割を果たす。驚くべきことに、化学的構成が類似しているが、同一ではない2つの可溶化用薬剤が、一様でない比率で使用されるならば、可溶化効果を著しく改善し得ることが見出された。本発明によれば、ホスファチジルコリン対リゾホスファチジルコリンの比率は80:1~1.33:1であり、好ましくは40:1~3:1であり、より好ましくは25:1~5:1であり、最も好ましくは20:1~8:1である。
【0054】
本発明によれば、少なくとも1つのC~Cアルコール(低級アルコール)は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、イソブタノール(2-メチル-1-プロパノール)、エチレングリコール(エタン-1,2-ジオール)、α-プロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)、β-プロピレングリコール(プロパン-1,3-ジオール)、1,2-ブチレングリコール(ブタン-1,2-ジオール)、1,3-ブチレングリコール(ブタン-1,3-ジオール)、1,4-ブチレングリコール(ブタン-1,4-ジオール)およびジエチレングリコールを含む群から選択することができる。好ましいものはエタノールである。
【0055】
本発明の方法によれば、C~Cアルコールは、1重量%~20重量%の範囲全体で使用され、好ましくは2重量%~10重量%の範囲全体で使用され、より好ましくは3重量%~8重量%の範囲全体で使用され、最も好ましくは5重量%で使用される。
【0056】
ステアリン酸グリセリル(モノステアリン酸グリセロール、GMS)は乳化剤である。フレーク状粉末はまた吸湿性でもある。GMSは、増粘剤、乳化剤、固化防止剤、老化防止剤、また、防腐剤として使用される。
【0057】
本発明によれば、少なくとも1つの飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸はステアリン酸グリセリルの代わりに、またはステアリン酸グリセリルとの組合わせで使用することができる。少なくとも1つの飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸は、ミリスチン酸(14:0)、ペンタデカン酸(15:0)、パルミチン酸(16:0)、ヘプタデカン酸(17:0)、ステアリン酸(18:0)、ノナデカン酸(19:0)、アラキジン酸(20:0)、ミリストレイン酸(14:1、cis-Δ)、パルミトレイン酸(16:1、cis-Δ)、サピエン酸(16:1、cis-Δ)、ヘキサデカトリエン酸(16:3、(n-3)、オレイン酸(18:1、cis-Δ)、エライジン酸(18:1、trans-Δ)、バクセン酸(18:1、trans-Δ11)、リノール酸(18:2;cis,cis-Δ,Δ12)、リノレアジン酸(linoleadic acid)(18:2、trans,trans-Δ,Δ12)、α-リノレン酸(18:3、cis,cis,cis-Δ,Δ12,Δ15)、γ-リノレン酸(18:3、(ω-3))、カレンド酸(8E,10E,12Z-オクタデカトリエン酸)、ステアリドン酸(18:4(n-3))、ジホモ-γ-リノレン酸(20:3;(ω-6))、エイコサジエン酸(20:2、(n-6))、エイコサトリエン酸(20:3、(n-3))、エイコサテトラエン酸(20:4、(n-3))、アラキドン酸(20:4、cis,cis,cis,cis-Δ,Δ,Δ11,Δ14)、エイコサペンタエン酸(20:5、cis,cis,cis,cis,cis-Δ,Δ,Δ11,Δ14,Δ17)を含む群から選択することができる。好ましいものは、偶数のC14~C20脂肪酸である。特に好ましいものはオレイン酸である。
【0058】
本発明の方法によれば、ステアリン酸グリセリルおよび/または飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸は、0.5重量%~10重量%の範囲全体で使用され、好ましくは1重量%~8重量%の範囲全体で使用され、より好ましくは2重量%~6重量%の範囲全体で使用され、最も好ましくは3重量%で使用される。
【0059】
本発明による方法は通常、室温で開始される。しかしながら、代替となる実施形態においては、予熱温度が28℃を越えないならば、本発明の方法の工程b)において加えられることになる5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンおよび/またはいずれかの可溶化用薬剤を予熱することもまた可能である場合がある。
【0060】
本発明による方法は0.2バール~1バールの圧力で行うことができる。しかしながら、本発明による方法は1バール(大気圧)で実施されることが好まれる。ある特定の適用のためには、軽微な真空を使用することが好ましい場合がある。そのような軽微な真空を適用し、維持し、かつ制御するための工業用装置が、この技術分野では広く知られている。
【0061】
本発明の方法によれば、得られた混合物は、20分~60分の期間にわたって温度を連続的に上昇させることによって工程c)において注意深く加熱される。好ましい実施形態において、この期間は25分~40分であり、最も好ましくは30分~35分である。
【0062】
本発明による方法の本質的な特徴は、温度制御(時間あたりの温度増分および加熱の持続期間)である。可溶化用薬剤の相対的量には変動性があるが、制御された温度上昇は不可欠である。明らかなことではあるが、可溶化されることになるそれぞれの物質のための最適な使用域が、可溶化用薬剤の使用された混合物に依存して存在する。正確な値は、予測することが困難であり、経験的に見出されなければならない。
【0063】
連続した温度増分(温度勾配の急峻さ)は0.5℃/分~3℃/分の間で変化させることができ、好ましくは1℃/分~2℃/分の間で変化させることができ、最も好ましくは2℃/分とすることができる。
【0064】
工程d)によれば、透明な溶液に達するとすぐに、温度上昇が30℃~125℃の温度範囲において停止される。この時期は、選択された可溶化薬剤および反応条件に大きく依存する。明らかなことではあるが、この「可溶化温度」を、使用されることになっている特定の成分に基づいて予想することは不可能である。これらの成分のそれぞれの組成物が、実験的に見出されなければならない特定の特性を示す。したがって、これらのパラメーターの最適な組合わせを見出すことが実験者にはふさわしい。
【0065】
本発明による方法は、工程b)の可溶化用薬剤のいずれかを最初に提供することができ、その後、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物、ならびに他の可溶化用薬剤を任意の順序で加えることができるような様式で変更され得ることが理解される。工程b)の可溶化用薬剤の混合物を最初に提供し、その後、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物を加えることもまた可能である。このような変化は、本発明による方法の結果に対して中立であることが見出された。
【0066】
好ましい実施形態において、工程b)の可溶化用薬剤の前記混合物と、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物とが、二区画システムで提供される。これは本発明による可溶化プロセスを容易にする場合があり、そして、それぞれの区画が別々に販売されることが可能である。このことは、本発明による投薬形態物の安定性のために、したがって、本発明による投薬形態物の保存寿命のために好都合であり得る。
【0067】
得られた可溶化物が透明な溶液になった時点が、実験者の観察によって判定される。一般には、この時点は、溶液が透明に見え、沈降、沈殿、スラー(slur)、しみ(smear)または縞模様(ゼブラ効果)を何ら示さないときに達成される。
【0068】
代替となる実施形態において、前述のように決定された本発明による温度勾配についてのパラメーターは、自動化または半自動化されたデバイス設定で実行することができる。このことは、例えば、高級・高品質な産業用途では好都合となる場合がある。
【0069】
本発明の方法に従って製造される可溶化物は、冷えたときにはこの透明さを維持しており、貯蔵されたときには透明かつ安定なままである。前記可溶化物を含有する医薬用投薬形態物の達成可能な貯蔵期間(これは大雑把には製造物の保存寿命に対応する)は一見したところ、制限されないようである。予備的な安定性分析において、最小貯蔵期間は6ヶ月を超えるものであった。
【0070】
しかしながら、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物のこれらの可溶化物の貯蔵寿命を増すために、少なくとも1つの酸化防止剤を可溶化物に加えることができる。好ましい実施形態において、この少なくとも1つの酸化防止剤は、医薬的に許容され得る賦形剤である。好適な酸化防止剤を、乳酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、トコフェロール、アルファ-トコフェロール、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロール、アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、デルタ-トコトリエノール、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸エチル、グアイアック樹脂、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリトルビン酸(erythorbin acid)、ナトリウムエリトルビン、tert-ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、アノキソマー(anoxomer)、エトキシキン、乳酸カリウム、塩化第一スズ、チオ硫酸ナトリウム、4-ヘキシルレゾルシノール、グルコースオキシダーゼを含む群から選択することができる。好ましいものは、パルミチン酸アスコルビル、およびアルファ-トコフェロール、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロールである。特に好ましいものは、パルミチン酸アスコルビルと、アルファ-トコフェロール、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、デルタ-トコフェロールの少なくとも1つとの組合わせである。
【0071】
用語トコフェロールは、前述のトコフェロールのいずれか、またはそれらの混合物を示す。
【0072】
本発明の方法によれば、この少なくとも1つの酸化防止剤は必要な場合には、前記可溶化物またはその好ましい実施形態に0.01重量%~10重量%の範囲全体で、好ましくは0.1重量%~5重量%の範囲全体で、より好ましくは0.2重量%~1重量%の範囲全体で、最も好ましくは0.3重量%~0.5重量%の範囲全体で加えることができる。
【0073】
したがって、本願はまた、本発明による可溶化方法から生じる可溶化物にも言及する。すなわち、
0.5重量%~10重量%の範囲での5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンと、下記の可溶化薬剤:
a)20重量%~80重量%の範囲全体での少なくとも1つのホスファチジルコリン;
b)10重量%~70重量%の範囲全体での少なくとも1つの中鎖トリグリセリド;
c)1重量%~15重量%の範囲全体での少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン;
d)1重量%~20重量%の範囲全体での少なくとも1つのC~Cアルコール、および
e)およびそれぞれ0.5重量%~10重量%の範囲でのステアリン酸グリセリルまたは飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つ
とを含む可溶化物であって、
すべての成分の相対的重量百分率は合計で100重量%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が互いに独立して、医薬的に許容され得る賦形剤である、可溶化物。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明による可溶化物は、
1重量%~8重量%の範囲での5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンと、
a)40重量%~70重量%の範囲全体での少なくとも1つのホスファチジルコリン;
b)20重量%~40重量%の範囲全体での少なくとも1つの中鎖トリグリセリド;
c)3重量%~8重量%の範囲全体での少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン;
d)2重量%~10重量%の範囲全体での少なくとも1つのC~Cアルコール、および
e)およびそれぞれ0.5重量%~5重量%の範囲でのステアリン酸グリセリルまたは飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つ
とを含み、
ただし、すべての成分の相対的重量百分率は合計で100%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が互いに独立して、医薬的に許容され得る賦形剤である。
【0075】
さらなる好ましい実施形態において、本発明による可溶化物は、
2重量%~5重量%の範囲での5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンと、
a)40重量%~60重量%の範囲全体での少なくとも1つのホスファチジルコリン;
b)25重量%~35重量%の範囲全体での少なくとも1つの中鎖トリグリセリド;
c)5重量%~7重量%の範囲全体での少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン;
d)4重量%~7重量%の範囲全体での少なくとも1つのC~Cアルコール、および
e)およびそれぞれ0.5重量%~5重量%の範囲でのステアリン酸グリセリルまたは飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つ
とを含み、
ただし、すべての成分の相対的重量百分率は合計で100%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が互いに独立して、医薬的に許容され得る賦形剤である。
【0076】
代替となる実施形態において、本発明による方法はまた、下記の可溶化物にも言及する。すなわち、
0.1重量%~2重量%の範囲での5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン塩
(ただし、前記塩は、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはリチウム塩またはそれらの混合物である)、ならびに
a)20重量%~80重量%の範囲全体での少なくとも1つのホスファチジルコリン;
b)10重量%~70重量%の範囲全体での少なくとも1つの中鎖トリグリセリド;
c)1重量%~15重量%の範囲全体での少なくとも1つのリゾホスファチジルコリン;
d)1重量%~20重量%の範囲全体での少なくとも1つのC~Cアルコール、および
e)およびそれぞれ0.5重量%~10重量%の範囲でのステアリン酸グリセリルまたは飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸の少なくとも1つ
とを含む可溶化物であって、
すべての成分の相対的重量百分率は合計で100%になり、かつ、すべての可溶化薬剤が互いに独立して、医薬的に許容され得る賦形剤である、可溶化物。
【0077】
本発明によれば、前記可溶化物またはその好ましい実施形態はさらに、前記で列挙されるような酸化防止剤を0.01重量%~10重量%の範囲全体で、好ましくは0.1重量%~5重量%の範囲全体で、より好ましくは0.2重量%~1重量%の範囲全体で、最も好ましくは0.3重量%~0.5重量%の範囲全体で含有する場合がある。
【0078】
この可溶化物の特に好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの飽和もしくは不飽和のC14~C20脂肪酸はオレイン酸である。
【0079】
この可溶化物の特に好ましい実施形態において、前記少なくとも1つのC~Cアルコールはエタノールである。
【0080】
好ましい実施形態において、0.01重量%~10重量%の範囲全体での少なくとも1つの酸化防止剤がさらに、本発明による可溶化物に含有され、ただし、前記少なくとも1つの酸化防止剤は、医薬的に許容され得る賦形剤である。
【0081】
特に好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの酸化防止剤はパルミチン酸アスコルビルおよび/または少なくとも1つのトコフェロールである。
【0082】
本願の別の局面は、医療における予防的使用または治療的使用のための本発明による可溶化物、同様にまた、医療における前記可溶化物の予防的使用または治療的使用である。
【0083】
本願の範囲において、用語「医療」は、ヒト医療、同様にまた獣医学医療を示すものとする。
【0084】
特に、本願は、免疫調節剤としての予防的使用または治療的使用のための本発明による可溶化物に言及する。
【0085】
本願はまた、過度な免疫反応を伴う状態、または免疫不全の背景を有する状態を処置するための本発明による可溶化物の使用にも言及する。
【0086】
本願はまた、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物の本発明による可溶化物を含む、医学的状態を処置するための医薬組成物にも言及する。
【0087】
本明細書中において、透過性という用語は、薬物がヒトにおいて腸壁を越えて吸収される度合いを示す。確立された定義によれば、薬物は、経口投与された用量の90%以上が胃腸管で再吸収されるならば、高透過性であるとして分類される。これに対応して、吸収率が90%未満である薬物は低透過性であるとして分類される。
【0088】
このように、溶解性および透過性は固有の物質特性である。しかしながら、吸収および生物学的利用能は、好適な方策によって改善され得る薬学パラメーターを表す。再吸収は、胃腸管から吸収される経口適用された物質量からの割合を示すが、物質の生物学的利用能は吸収に従属するだけでなく、血中における種特異的タンパク質結合、および薬物動態学パラメーター(例えば、初回通過代謝など)にも従属する。
【0089】
したがって、本発明の別の局面は、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物の吸収および/または生物学的利用能を高めるための本発明による可溶化物の予防的使用または治療的使用である。
【0090】
したがって、本願はまた、医薬用投薬形態物において使用されるための本発明による可溶化物にも言及する。
【0091】
そのうえ、本願はまた、医薬用投薬形態物での本発明による可溶化物の医療における使用にも言及する。
【0092】
ほとんどの場合において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物の可溶化物はまだ医薬用投薬形態物ではない。液体投薬形態物での摂取のために即座に使用されるためには、前記可溶化物は希釈剤に溶解されなければならない。液体投薬形態物のための好ましい希釈剤は水である。したがって、本発明による可溶化物は好適な容器において水溶液に加えられる。容器は、ボトル、バイアル、小瓶、グラス、カップ、シリンジ、ジャー、ポット、ディスペンサー、ボックス、チューブ、キャップ、小袋、および特注の二区画容器または多区画容器(これらに限定されない)を含む群から選択することができる。好ましい容器は、ボトル、バイアルおよびジャーである。
【0093】
水溶液と、それに溶解される可溶化物とを含む容器は、水溶液における可溶化物の均一な分布を保証するために数回振とうまたは撹拌されることが好ましい。
【0094】
したがって、本願はまた、本発明による可溶化物が水溶液に溶解される医薬用投薬形態物にも言及する。
【0095】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明による可溶化物は軟質ゼラチンカプセル(SGC)に含められる。SGCは、胃腸管を通過するときに溶解する。SGCは主に、様々な量の可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビタンなど)が富化されるゼラチンからなる。放出速度はSGCキャリア材料の具体的な配合に依存する。SGCはまた、活性な薬剤の持続放出のためにも適している。SGCは、水溶性が不良である活性な薬剤を投与するために特に有用である。SGCは、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化物を空洞に受け入れるために優れて適している。
【0096】
本発明の別の実施形態において、本発明による可溶化物は硬質ゼラチンカプセルで提供される。硬質ゼラチンカプセルは、ゼラチン、水、および通常の場合には着色剤からなり、しかし、可塑剤を含有しない。本発明による可溶化物は製造過程の間に含められることができる。本発明による可溶化物は、硬質ゼラチンカプセルが溶解したときに放出されることになる。
【0097】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明による可溶化物は咀嚼錠剤または硬カラメルに含められる。本明細書中において、本発明による可溶化物は錠剤またはカラメルのマトリックスに一体化される。
【0098】
本発明のさらなる実施形態において、本発明による可溶化物は坐剤に含められる。典型的な製造方法において、低融点のワックスと、同様にまた、脂肪酸グリセリドの混合物(例えば、カカオバターなど)とが最初に溶融される。その後、活性な薬剤、本明細書中では5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物の可溶化物が、撹拌方法または他の混合方法のもとで均一に分散させられる。溶融した均質な混合物はその後、好適な鋳型に移され、固化するまで冷却される。
【0099】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明による可溶化物は、局所塗布形態物として、例えば、クリーム、エマルション、ローション、ゲル、ヒドロゲル、ペースト、粉末、軟膏、リニメント剤、フィルム、リポソーム、皮膚パッチ、経皮パッチ、経皮スプレー剤または懸濁物などとして提供される。
【0100】
さらなる局面において、本願はまた、前記で定義されたような投薬形態物に配合される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンまたはその様々な塩の1つまたはそれらの混合物と、少なくとも1つの医薬的に許容され得る賦形剤とを含有する医薬組成物にも言及する。
【0101】
用語「医薬用賦形剤」は、医薬用の活性な薬剤と共に医薬配合物に加えられる天然化合物または合成化合物を示す。医薬用賦形剤は、配合物の嵩を大きくするために、配合物の所望の薬物動態学特性または安定性を高めるために役立つ場合があり、同様にまた、製造プロセスにおいて有益である場合がある。本発明による賦形剤の好都合な部類には、キャリア、結合剤、滑剤、流動促進剤、崩壊剤、着色剤、緩衝剤、防腐剤、乳化剤、浸透促進剤、酸化防止剤、希釈剤、pH調節剤、ファティカー(fatiquor)、溶媒、稠度強化剤、ヒドロトープ剤(hydrotope)、甘味料、酸性化剤、増粘剤、付着防止剤、フィラー、香料、甘味料、乳白剤、香味物質および芳香物質が含まれる。
【0102】
1つまたは複数の医薬的に許容され得るキャリアを医薬的に活性な薬剤に加えることが好都合で、それぞれ必須であり得る。適格なものは、この技術分野で公知のすべてのキャリア、およびそれらの組合わせである。固体投薬形態物において、キャリアは、例えば、植物および動物の脂肪、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、滑石、酸化亜鉛が可能である。液体投薬形態物およびエマルションのためには、好適なキャリアは、例えば、溶媒、可溶化用薬剤、乳化剤であり、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコール、綿実油、ピーナッツ油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチルグリコール、ソルビタンの脂肪酸エステルなどである。本発明による懸濁物では、この技術分野で公知のキャリア、例えば、希釈剤(例えば、水、エタノールまたはプロピレングリコール)、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンおよびポリオキシエチレンソルビタンエステル、微結晶セルロース、ベントナイト、寒天、トラガカントなどが使用される場合がある。
【0103】
結合剤という用語は、粉末を結びつけて、または粉末を接着して一緒にし、それにより、顆粒形成を通じて粉末を凝集性にする物質を示す。結合剤は配合物の「接着剤」として働く。結合剤は、提供された希釈剤またはフィラーの結合力を増大させる。
【0104】
好適な結合剤は、例えば、コムギ、トウモロコシ、コメまたはジャガイモから得られるデンプン、ゼラチン、天然に存在する糖(例えば、グルコース、スクロースまたはベータ-ラクトースなど)、トウモロコシから得られる甘味料、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカントまたはアルギン酸カルシウムアンモニウムなど)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ワックスなどである。組成物における結合剤の割合は、1重量%~30重量%、好ましくは2重量%~20重量%、より好ましくは3重量%~10重量%、最も好ましくは3重量%~6重量%の範囲が可能である。
【0105】
着色剤は、飲料の組成物、それぞれ投薬形態物に着色を与える賦形剤である。これらの賦形剤は食品着色剤が可能である。着色剤は、好適な吸着手段(例えば、粘土または酸化アルミニウムなど)に吸着させることができる。着色剤の量は、医薬組成物の0.01重量%~10重量%の間で、好ましくは0.05重量%~6重量%の間で、より好ましくは0.1重量%~4重量%の間で、最も好ましくは0.1重量%~1重量%の間で変化する場合がある。
【0106】
好適な医薬用着色剤は、例えば、クルクミン、リボフラビン、リボフラビン-5’-リン酸、タルトラジン、アルカンニン、キノリオン(quinolione)イエローWS、ファストイエローAB、リボフラビン-5’-リン酸ナトリウム、イエロー2G、サンセットイエローFCF、オレンジGGN、コチニール、カルミン酸、シトラスレッド2、カルモイシン、アマランス、ポンソー4R、ポンソーSX、ポンソー6R、エリスロシン、レッド2G、アルラレッドAC、インダトレン(Indathrene)ブルーRS、パテントブルーV、インジゴカルミン、ブリリアントブルーFCF、クロロフィルおよびクロロフィリン、クロロフィルおよびクロロフィリンの銅錯体、グリーンS、ファストグリーンFCF、プレーンカラメル、苛性スルフィトカラメル、アンモニアカラメル、スルフィトアンモニアカラメル、ブラックPN、カーボンブラック、植物性カーボン、ブラウンFK、ブラウンHT、アルファ-カロテン、ベータ-カロテン、ガンマ-カロテン、アナトー、ビキシン、ノルビキシン、パプリカオレオレジン、カプサンチン、カプソルビン、リコペン、ベータ-アポ-8’-カロテナール、ベータ-アポ-8’-カロテン酸のエチルエステル、フラボキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、ロドキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、シトラナキサンチン、アスタキサンチン、ベタニン、アントシアニン、サフラン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄、アルミニウム、銀、金、顔料ルビン、タンニン、オルセイン、グルコン酸第一鉄、乳酸第一鉄である。
【0107】
そのうえ、緩衝剤溶液が液体配合物のために、特に医薬用液体配合物のために好ましい。緩衝剤、緩衝剤系および緩衝剤溶液(特に水溶液のもの)の用語は、酸または塩基の添加による、あるいは溶媒希釈によるpH変化を阻止する系の能力を示す。好ましい緩衝剤系は、ギ酸塩、乳酸塩、安息香酸、シュウ酸塩、フマル酸塩、アニリン、酢酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、グルタミン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、コハク酸塩、ピリジン、フタル酸塩、ヒスチジン、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、マレイン酸、カコジル酸塩(ジメチルアルセナート)、炭酸、ADA(N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸、PIPES(4-ピペラジン-ビス-エタンスルホン酸)、BIS-TRISプロパン(1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン)、エチレンジアミン、ACES(2-[(アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸)、イミダゾール、MOPS(3-(N-モルフィノ)-プロパンスルホン酸、ジエチルマロン酸、TES(2-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノエタンスルホン酸、HEPES(N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)、同様にまた、pKが3.8~7.7の間である他の緩衝剤を含む群から選択される場合がある。
【0108】
好ましいものは、炭酸緩衝剤(例えば、酢酸塩緩衝剤など)、およびジカルボン酸緩衝剤(例えば、フマル酸塩、酒石酸塩およびフタル酸塩など)、同様にまたトリカルボン酸緩衝剤(例えば、クエン酸塩など)である。
【0109】
好ましい緩衝剤のさらなる一群は、無機緩衝剤、例えば、硫酸塩水酸化物緩衝剤、ホウ酸塩水酸化物緩衝剤、炭酸塩水酸化物緩衝剤、シュウ酸塩水酸化物緩衝剤、水酸化カルシウム緩衝剤およびリン酸塩緩衝剤などである。好ましい緩衝剤の別の一群は、窒素含有プッファー(puffer)、例えば、イミダゾール、ジエチレンジアミンおよびピペラジンなどである。さらに好ましいものは、スルホン酸緩衝剤、例えば、TES、HEPES、ACES、PIPES、[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス-(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸(TAPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-プロパンスルホン酸(EEPS)、4-モルホリノ-プロパンスルホン酸(MOPS)およびN,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)などである。好ましい緩衝剤の別の一群は、グリシン、グリシル-グリシン、グリシル-グリシル-グリシン、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)グリシンおよびN-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシン(トリシン)である。好ましいものがまた、アミノ酸緩衝剤、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン、グルタミン、システイン、メチオニン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、N,N,N-トリメチルリシン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシ-リシン、o-ホスホセリン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸塩、[イプシロン]-N-アセチルリシン、[オメガ]-N-メチルアルギニン、シトルリン、オルニチンおよびそれらの誘導体である。
【0110】
液体投薬形態物またはサプリメントのための防腐剤を必要に応じて使用することができる。防腐剤は、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カルシウム、メチルパラベン、エチルパラベン、メチルエチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、p-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、パラ-ヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム、パラ-ヒドロキシ安息香酸エチルナトリウム、パラ-ヒドロキシ安息香酸プロピルナトリウム、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェニルエチルアルコール、クレゾール類、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、チオメルサール(2-(エチルメルクリチオ)安息香酸ナトリウム)、二酸化イオウ、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素カリウム、ビフェニル、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、チアベンダゾール、ナイシン、ナタマイシン、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム、ヘキサミン、ホルムアルデヒド、二炭酸ジメチル、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、二酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸アンモニウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、乳酸、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸カリウム、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、二酸化炭素、リンゴ酸、フマル酸、リゾチーム、硫酸銅(II)、塩素、二酸化塩素、および当業者に公知の他の好適な物質または組成物(これらに限定されない)を含む群から選択される場合がある。
【0111】
さらなる乳化剤を、例えば、下記のアニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤から選択することができる:アニオン性乳化剤ワックス、セチルアルコール、セチルステアリルアルコール、ステアリン酸、オレイン酸、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒマシ油および/または硬化ヒマシ油に対する2mol~60molのエチレンオキシドの付加生成物、ウールワックス油(ラノリン)、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエテンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエテンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエテンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエテンソルビタンモノステアラート、ポリオキシエテンソルビタントリステアラート、ポリオキシエテンステアラート、ポリビニルアルコール、メタ酒石酸、酒石酸カルシウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロパン-1,2-ジオール、カラギーナン、加工ユーケマ(eucheuma)藻類、ローカストビーンガム、トラガカント、アラビアゴム、カラヤガム、ジェランガム、ガッチゴム(gum ghatti)、グルコマンナン、ペクチン、アミド化ペクチン、アンモニウムホスファチド、臭素化植物油、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ウッドロジンのグリセロールエステル、リン酸二ナトリウム、二リン酸三ナトリウム、二リン酸四ナトリウム、二リン酸二カルシウム、二リン酸二水素カルシウム、三リン酸ナトリウム、三リン酸五カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カルシウムナトリウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸アンモニウム、ベータ-シクロデキストリン、粉末化セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、クロスカルメロース、酵素加水分解カルボキシメチルセルロース、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリド、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの酢酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの酒石酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドのモノアセチル酒石酸エステルおよびジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの混合酢酸酒石酸エステル、スクシニル化モノグリセリド、脂肪酸のスクロースエステル、スクログリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ポリグリセロールポリリシノレアート、脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、グリセロールおよびプロパン-1のラクチル化脂肪酸エステル、脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドと相互作用した熱酸化ダイズ油、ジオクチルナトリウムスルホスクシナート、ナトリウムステアロイル-2-ラクチラート、カルシウムステアロイル-2-ラクチラート、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ナトリウムステアロイルフマラート、カルシウムステアロイルフマラート、酒石酸ステアリル、クエン酸ステアリル、ナトリウムステアロイルフマラート、カルシウムステアロイルフマラート、ラウリル硫酸ナトリウム、エトキシル化されたモノグリセリドおよびジグリセリド、メチルグルコシド-ココナッツ油エステル、ソルビタンモノステアラート、ソルビタントリステアラート、ソルビタンモノラウラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタントリオレアート、ポリリン酸ナトリウムカルシウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸アンモニウム、コール酸、コリン塩、グリセロール架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、アセチル化酸化デンプン。
【0112】
好ましいものは、モノオレイン酸グリセリンおよびステアリン酸である。
【0113】
安定剤は、望まれない変化を防ぐために加えることができる物質である。安定剤は真の乳化剤ではないが、安定剤もまた、エマルション、それぞれ可溶化物の安定性に寄与する場合がある。安定剤についての好適な例が、オキシステアリン、キサンタンガム、寒天、オートムギガム、グアーガム、タラガム、ポリオキシエテンステアラート、アスパルテーム-アセスルファム塩、アミラーゼ、プロテアーゼ、パパイン、ブロメライン、フィシン、インベルターゼ、ポリデキストロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、クエン酸トリエチル、マルチトール、マルチトールシロップである。
【0114】
さらなる界面活性可溶化用薬剤(可溶化剤)として好適なものは、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエステル、ポリエチルプロピレングリコールコポリマー、シクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリンおよびβ-シクロデキストリンなど)、モノステアリン酸グリセリル(例えば、Solutol HS15(BASFから得られるマクロゴール-15-ヒドロキシステアラート、PEG660-15ヒドロキシステアラート)など)、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンオキシステアリン酸トリグリセリド、ポリビニルアルコール、ドデシル硫酸ナトリウム、(アニオン性)グリセリルモノオレアートなどである。
【0115】
好適なさらなる溶媒は、水、炭酸水、注射用水、等張化剤を含む水、生理食塩水、等張生理食塩水、アルコール(特にエチルアルコールおよびn-ブチルアルコール)、グリコール、オレイン酸トリグリセリドおよびリノール酸トリグリセリド、カプリル酸およびカプリン酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、ポリオキシエチレンカプリル酸グリセリドおよびポリオキシエチレンカプリン酸グリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、低アルキル脂肪酸エステル、ダイズ油、プロピレングリコールラウラート、ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリルトリオレアート、酪酸エチル、カプリル酸エチル、オレイン酸エチルおよびそれらの混合物(これらに限定されない)を含む群から選択される場合がある。
【0116】
好適な等張化剤は、例えば、医薬的に許容され得る塩(特に塩化ナトリウムおよび塩化カリウム)、糖(例えば、グルコースまたはラクトースなど)、糖アルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトールなど)、クエン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびそれらの混合物である。
【0117】
好適な増粘剤を、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、ポリデキストロース、加工デンプン、アルカリ加工デンプン、漂白デンプン、酸化デンプン、酵素処理デンプン、リン酸化デンプン、トリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンによりエステル化されるリン酸架橋デンプン、ホスファートジスターチホスファート(phosphate distarch phosphate)、アセチル化リン酸架橋デンプン、無水酢酸によりエステル化される酢酸デンプン、酢酸ビニルによりエステル化される酢酸デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化グリセロール架橋デンプン、グリセリン架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルグリセリン架橋デンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルグリセロール架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、アセチル化酸化デンプン、ヒドロキシエチルセルロース(これらに限定されない)を含む群から選択することができる。
【0118】
希釈剤またはフィラーは、最小量の活性な薬剤を扱うために薬物に加えられる不活性な物質である。希釈剤またはフィラーは可溶化プロセスにおいて有用であり得る。好適な希釈剤の例が、水、マンニトール、アルファ化デンプン、デンプン、微結晶セルロース、粉末化セルロース、ケイ化微結晶セルロース、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、アラビアゴム、またはどのような組合わせであれ、それらの組合わせである。
【0119】
浸透促進剤が局所用投薬形態物において使用されることが多い。好適な浸透促進剤には、この技術分野において公知のすべての医薬的に許容され得る浸透促進剤が含まれる:例えば、限定されないが、アゾン、例えば、ラウロカプラン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンなど;スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド、DMAC、DMFなど;ピロリドン、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンなど;アルコール、例えば、エタノール、1,2-プロパンジオールまたはデカノールなど;グリコール、例えば、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールなど;脂肪酸、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチン酸、ミリスチン酸イソプロピル、カプリン酸など;ノニック(nonic)界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレン-2-オレイルエーテル、ポリオキシエチレン-2-ステアリルエーテルなど;テルペン;テルペノイド;オキサゾリジノン;尿素;セラミド類似体、アゾン類似体、メントール誘導体、エーテル化誘導体、エステル化誘導体、各種トランスカルバム(transkarbam)、カルバマート塩、TXA誘導体、DDAIP(2-(ジメチルアミノ)プロパン酸ドデシル)、DDAK、天然精油(それらのすべてが、Chen他(2014)、Asian J.Pharm.Sc.、9、51~64に列挙される);クエン酸エステル、例えば、クエン酸トリエチルなど;ヒドロフォビン(hydrophobin)ポリペプチド;アルファ-ビサボロール;ジメチルイソソルビド(Arlasolve(登録商標)DMI);エトキシジグリコール。好ましいものが、1,2-プロパンジオールである。
【0120】
局所適用のために好適である防腐剤についての典型的な例が、例えば、安息香酸ベンジル、安息香酸、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、N-セチル-N-N-トリメチルアンモニウム臭化物(Cetrimid、Merck)、クロルヘキシジン、クロルブタノール、クロルクレゾール、イミド尿素、パラベン(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンまたはブチルパラベンなど)、ナトリウムメチルパラベン、ナトリウムプロピルパラベン、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、フェニルメルクリアセタート、フェニルメルクリボラート、フェニルメルクリニトラート、ソルビン酸またはチオメルサール(メチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)である。好ましいものは、メチルパラベン、プロピルパラベン、同様にまた、ナトリウムメチルパラベンおよびナトリウムプロピルパラベンである。
【0121】
十分な量の酸化防止剤を加えることが局所用投薬形態物では特に好ましい。酸化防止剤についての好適な例には、メタ重亜硫酸ナトリウム、α-トコフェロール、アスコルビン酸、マレイン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フマル酸または没食子酸プロピルが含まれる。好ましいことが、メタ重亜硫酸ナトリウムの使用である。
【0122】
局所用投薬形態物のための好適なpH調節剤が、例えば、水酸化ナトリウム、塩酸、緩衝剤物質(例えば、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムなど)である。
【0123】
クリーム調製物はまた、流動特性を改善するために、他の賦形剤および添加剤(例えば、ファティカー、溶媒、稠度強化剤またはヒドロトープ剤など)を含有する場合がある。本明細書中において、添加剤または賦形剤の同じ群からのただ1つの物質、同様にまた、いくつかの物質が混合物に存在する場合がある。
【0124】
好適なファティカーは、例えば、オレイン酸デシルエステル、水和ヒマシ油、軽質鉱油、鉱油、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0125】
好適な溶媒は、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ダイズ油、オレイン酸エチル、グリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールである。
【0126】
稠度強化剤は、例えば、セチルアルコール、セチルエステルワックス、水和ヒマシ油、微結晶ワックス、非イオン性乳化剤ワックス、蜜蝋、パラフィンまたはステアリック(stearylic)アルコールである。
【0127】
好適なヒドロトープ剤は、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、またはポリオール(例えば、グリセリンなど)である。
【0128】
本発明によれば、可溶化物の本発明の使用が妨げられない限り、または毒性作用が生じる場合がある限り、またはそれぞれの国内法に違反する限り、前述の賦形剤および賦形剤部類のすべてが、限定されないが、単独で、またはどのような組合わせであれそれらの想定される組合わせで使用することができる。
【0129】
したがって、本願はまた、医療において使用されるための本発明による医薬組成物にも言及する。
【0130】
本願はまた、経口投与、非経口投与または局所投与のための本発明による医薬組成物にも言及する。
【0131】
過度な免疫反応を伴う状態は、例えば、限定されないが、移植後の移植片拒絶、活動性自己免疫障害、それぞれ自己免疫成分を伴う疾患(特に活動性関節リウマチ)、再発寛解型多発性硬化症、ルポイド肝炎、結節性多発動脈炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、ベーチェット病、ベーチェットブドウ膜炎、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、多発性筋炎、乾癬、乾癬関節炎、強直性脊椎炎、発作性夜間ヘモグロビン尿症、自己免疫性甲状腺炎障害(例えば、橋本甲状腺炎、オード甲状腺炎またはグレーブス病など)、紅斑性狼瘡、白斑、自己免疫性脳脊髄炎、特発性視神経炎、交感性眼炎、前部ブドウ膜炎、網膜変性、末梢潰瘍性角膜炎、水疱性類天疱瘡、慢性じんま疹、疱疹状皮膚炎、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、自己免疫性腸症、自己免疫性多内分泌腺性症候群(例えば、APECED(自己免疫性多腺性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉ジストロフィー)、シュミット症候群およびXPID(X連鎖型多腺性内分泌障害性免疫不全症および下痢症候群)など)、慢性胃炎、皮膚筋炎、1型糖尿病、2型糖尿病、グレーブス眼症、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症、ギラン・バレー症候群、硬化性苔癬、粘膜苔癬(Lichen ruber mucosae)、線状IgA皮膚症、顕微鏡的多発血管炎、筋痛性脳脊髄炎、ナルコレプシー、PANS(小児急性発症神経精神症候群)(例えば、PANDAS(小児自己免疫性溶連菌感染関連性神経精神障害)など)、落葉状天疱瘡、脂漏性天疱瘡、尋常性天疱瘡、多発性軟骨炎、リウマチ性多発筋痛症、リウマチ熱、SAPHO症候群(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨増殖症、骨炎)、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、強皮症、スティッフマン症候群、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、セリアック病、急性散在性脳脊髄炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性心筋症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性膵炎、自己免疫性多内分泌腺性症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性再発性多発性骨髄炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、チャーグ・ストラウス症候群、寒冷凝集素症、疼痛性脂肪腫症、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、橋本脳症、反対型ざ瘡、間質性膀胱炎、川崎病、シャープ症候群、神経性筋強直症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、原発性胆汁性肝硬変、レイノー現象、下肢静止不能症候群、横断性脊髄炎および血管炎、再生不良性貧血、天疱瘡、類天疱瘡、内因性ブドウ膜炎;ネフローゼ症候群およびアトピー性皮膚炎;同様にまた、敗血症性状態(例えば、グラム陰性細菌もしくはグラム陽性細菌(例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)など)または真菌性病原菌による感染によって誘発される敗血症性状態など)、および他の要因、例えば、免疫学的要因または化学的要因によって誘発される全身性炎症反応症候群(SIRS)である。
【0132】
免疫不全の背景を有する状態には、限定されないが、頻繁なインフルエンザ様感染症;再発性気道感染症;遠心性尿路の再発性感染症;疲労;悪液質;起源不明の集中障害;リコンバレセンス(reconvalescence);慢性ウイルス感染症、特にヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV-1およびHIV-2など)、B型肝炎、C型肝炎、脳炎、帯状疱疹、単純ヘルペス、内耳感染症、水痘、麻疹、サイトメガリ(cytomegaly)、エプスタイン・バー、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルスおよびパルボウイルス(例えば、アムドウイルス、ボカウイルス、デペンドウイルス、エリスロウイルスおよびパルボウイルスspec.など)、いくつかの腫瘍性疾患、特にヘアリー細胞白血病、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、カポジ肉腫、皮膚T細胞リンパ腫、鼻咽頭ガン、カルチノイド、腎ガン、膀胱ガン、基底細胞ガン、転移性ガンおよび悪性黒色腫;敗血症性肉芽腫症、好中球減少症;性器疣贅;角化症;自己免疫疾患、特に非活動期、例えば、再発間での再発寛解型多発性硬化症など;放射線起源の大腸炎、憩室炎;アレルギー、特に枯草熱、多形日光疹、湿疹、神経皮膚炎;腸炎;大腸炎;同様にまた、化学療法および放射線の前、期間中および後が含まれる。
【0133】
要約すると、本発明の方法により製造される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化物は、炎症促進性サイトカインの放出、特にIL-6およびTNF-αの放出における実質的な増大を示すすべての炎症性疾患を処置するために特に適している。前述の例に加えて、これはまた、創傷治癒、例えば、外科的介入、外傷または火傷の後での創傷治癒の期間中においても、乾性角膜炎などの無関係な免疫プロセスにおいても、あるいは起源不明の急性炎症または慢性炎症(例えば、腱鞘炎または変形性関節症など)においても当てはまる。
【0134】
本発明の方法によって製造される5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化物はまた、少なくとも1つの他の公知の医薬的に活性な薬剤および/または標準的な治療との組合わせで投与することができる。
【0135】
したがって、本願はまた、本発明による可溶化物と、少なくとも1つの医薬的に活性な薬剤との組合わせにも言及する。
【0136】
本願は同様に、過度な免疫反応を伴う状態、または免疫不全の背景を有する状態の予防および/または処置において使用されるための、本発明による可溶化物と、少なくとも1つの医薬的に活性な薬剤との組合わせにも言及する。
【0137】
そのような組合わせのために好適である医薬的に活性な薬剤を、ステロイド性抗炎症剤および非ステロイド性抗炎症剤、免疫調節剤、免疫刺激剤、免疫抑制剤、抗感染剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、駆虫剤、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗凝固剤、抗血小板薬、筋弛緩剤、強壮剤、ならびに同化剤を含む群から選択することができる。医薬的に活性な薬剤のそのような組合わせは、その必要性のある人における予防的適用および/または治療的用途のために使用することができる。
【0138】
ステロイド性抗炎症剤についての好適な例には、コルチコステロイド、グルココルチコイド、コルチゾン、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デルタゾン(deltasone)、トリアムシノロン、チキソコルトールピバラート、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシコニド(fluociconide)、フルオシノロン、ハルシノニド、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-バレラート、ハロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルバート、クロベタゾン-17-’ブチラート、クロベタゾール-17-プロピオナート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、ヒドロコルチゾン-17-ブチラート、ヒドロコルチゾン-17-アセポナート、ヒドロコルチゾン-17-ブテプラート、シクレソニド、フルニソリド、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾンが含まれる。
非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)についての好適な例には、アセチルサリチル酸、サリチル酸およびサリチル酸塩、パラセタモール(アセトアミノフェン)、サルサラート、ジフルニサル、イブプロフェン、デキシブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレクソキシブ(celexoxib)、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ニメスリド、クロニキシン、リコフェロン(licofelone)、H-ハルパギド(H-harpagide)、フルニキシン、チアプロフェン酸が含まれる。
【0139】
免疫調節剤についての好適な例には、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミドおよびアプレミラストが含まれる。
【0140】
免疫刺激剤についての好適な例には、インターフェロン(アルファ-インターフェロン、ベータ-インターフェロン、ガンマ-インターフェロン、タウ-インターフェロン)、インターロイキン、CSF、PDGF、EGF、IGF、THF、レバミソール、ジメプラノール、イノシンが含まれる。
【0141】
免疫抑制剤についての好適な例には、グルココルチコイド、例えば、上記のグルココルチコイドなど;細胞増殖抑制剤、例えば、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド)など、代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、レフルノミドなど、タンパク質合成阻害剤、および特定の抗生物質、例えば、ダクチノマイシン、アントラサイクリン系抗生物質、マイトマイシンC、ブレオマイシンおよびミトラマイシンなど、挿入剤、例えば、ミトキサントロンなど;抗体、例えば、ムロモナブ-CD3、リツキシマブ、ウステキヌマブ、アレムツズマブ、ナタリズマブ、バシリキシマブおよびダクリズマブなど;イムノフィリンに作用する薬剤、例えば、シクロスポリン、タクロリムスおよびシロリムスなど;未分類の免疫抑制剤、例えば、ベータ-インターフェロン、ガンマ-インターフェロンなど、オピオイド、TNF結合タンパク質、例えば、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど;またはクルクミン、カテキン類、ミコフェノール酸、フィンゴリモド、ミリオシンおよびフマル酸ジメチルエステルが含まれる。
【0142】
抗感染剤は、細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、原虫感染症および蠕虫感染症の処置において使用することができ、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、駆虫剤およびさらなる抗寄生虫剤を含む化合物についての一般的用語である。
【0143】
抗生物質についての好適な例には、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、セファロスポリン系抗生物質、アズトレオナム、ペニシリン系抗生物質(例えば、ペニシリンGおよびペニシリンVなど)、ピペラシリン、メズロシリン、アンピシリン、アモキシシリン、フルクロキサシリン、メチシリン、オキサシリン、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム、スルタミシリン、ホスホマイシン、テイコプラニン、バンコマイシン、バシトラシン、コリスチン、グラミシジン、ポリミキシンB、チロトリシン、テイクソバクチン(teixobactin)、ホスミドマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、クロラムフェニコール、フシジン酸、セスロマイシン、ナルボマイシン、テリスロマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、ダプトマイシン、ダルホプリスチン、キヌプリスチン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、リネゾリド、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、チゲサイクリン、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、メトロニダゾール、チニダゾール、アミノクマリン、スルファジアジン、スルファドキシン、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、ピリメタミン、トリメトプリム、リファンピシンが含まれる。
【0144】
抗ウイルス剤についての好適な例には、アンクリビロック、アプラビロック、セニクリビロック、エンフビルチド、マラビロック、ビクリビロック、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリル、イドクスウリジン、アシクロビル、ブリブジン、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ソリブジン、バラシクロビル、シドホビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ソホスブスビル(sofosbusvir)、ホスカルネット、リバビリン、タリバビリン、フィリブビル、ネスブビル、テゴブビル、フォスデビリン、ファビピラビル、メリメポジブ(merimepodib)、アスナプレビル、バラピラビル、ボセプレビル、シルプレビル、ダノプレビル、ダクラタスビル、ナルラプレビル、テラプレビル、シメプレビル、バニプレビル、ルピントリビル、ホミビルセン、アメナメビル、アリスポリビル、ベビリマット、レテルモビル、ラニナミビル、オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルが含まれる。
【0145】
抗真菌剤についての好適な例には、アバフンギン(abafungin)、アムホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、リモシジン(rimocidin)、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、フルコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフィチフィン(nafitifine)、テルビナフィン、アニデュラフンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、安息香酸、シクロピロクス、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、トルナフタート、ウンデシル酸、クリスタルバイオレット、ペルーバルサムが含まれる。
【0146】
抗原虫剤についての好適な例には、メトロニダゾール、チニダゾール、オルニダゾール、アトバコン、クリオキノール、クロルキナルドール、エメチン、イセチオン酸ペンタミジン、エフロルニチン、ニトロフラール、ハロフジノン、ミルテホシン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、メパクリン、プリマキン、アモジアキン、パマキン、ピペラキン、プログアニル、エンボン酸シクログアニル、キニーネ、メフロキン、ピリメタミン、アルテメテル、アルテミシニン、アルテスナート、ジヒドロアルテミシニン、ハロファントリン、ルメファントリン、スルファドキシンが含まれる。
【0147】
駆虫剤についての好適な例には、メベンダゾール、プラジカンテル、アルベンダゾール、ジエチルカルバマジン、フルベンダゾール、イベルメクチン、レバミソール、メトリホナート、ニクロサミド、オキシクロザニド、オキサムニキン、オキサンテル、ピペラジン、ピランテル、パモ酸ピランテル、モノパンテル(monopantel)、デルカンテル、硫酸ペレチエリン(pelletierin sulfate)、ピルビニウム、チアベンダゾール、フェンベンダゾール、トリクラベンダゾール、アバメクチン、スラミン、エモデプシド、エンボン酸ピルビニウム、アミノアセトニトリルが含まれる。
【0148】
さらなる抗寄生虫薬についての好適な例には、アンチモン酸メグルミン、ベンズニダゾール、スチボグルコン酸ナトリウム、フマギリン、ハロファントリン、メラルソプロール、ニフルチモックス、ニタゾキサニド、ペルメトリン、リンデン、マラチオン、カルバリル、除虫菊、フェノトリン、ビオ-アレトリン、イミダクロプリド、モキシデクチン、ニテンピラム、フィプロニル、ピリプロール、セラメクチン、ジムピラート、スピノサド、インドキサカルブ、メトプレン、ピリプロキシフェン、ルフェヌロン、ニーム油、シトロネラ油、チョウジ油、ペパーミント油、ユーカリ油が含まれる。
【0149】
鎮痛剤についての好適な例には、上記で列挙されるNSAID;オピオイド鎮痛剤、例えば、モルヒネ、フェンタニル、メタドン、オキシコドン、カルフェンタニル、ジヒドロエトルフィン、オーメフェンタニル(ohmefentanyl)、エトルフィン、スフェンタニル、レミフェンタニル、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ヒドロモルホン、レボメタドン、ヒドロコドン、ピントラミド(pintramide)、ナルブフィン、タペンタドール、ペンタゾシン、ジヒドロコデイン、コデイン、ペチジン、トラマドール、チリジン、メプタジノール、ナロキソン、ナルトレキソン、ジプレノルフィン、ロペラミド、アポモルヒネなど;エピバチジン;スコポラミン;ジコニチド(ziconitide);カンナビノイド、例えば、テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオール、マリノールなど;フルピルチン;ケタミンおよび上記で列挙される局所麻酔剤が含まれる。
【0150】
局所麻酔剤についての好適な例には、リドカイン、リグノカイン、メントール、アルチカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン(dimethocaine)、ラロカイン(larocaine)、ピペロカイン、プロポキシカイン、プロカイン、ノボカイン、プロパラカイン、テトラカイン、アメトカイン、シンコカイン、ジブカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、メプラバカイン(meplavacaine)、プリロカイン、トリメカイン、サキシトキシン、ネオサキシトキシン、テトロドトキシン、オイゲノールが含まれる。
【0151】
抗凝固剤についての好適な例には、ヘパリン類、クマリン類(例えば、フェンプロクモン(Marcumar)およびワルファリンなど)、アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、クエン酸塩、EDTA、フォンダパリヌクス、アルガトロバン、オタミキサバンが含まれる。
【0152】
抗血小板薬についての好適な例には、アブシキシマブ、アセチルサリチル酸、ジピリダモール、クロピドグレル、エプチフィバチド、イロメジン(ilomedine)、プロスタサイクリン、プラスグレル、チカグレロル、チクロピジン、チロフィバンが含まれる。
【0153】
筋弛緩剤についての好適な例には、テルクロニウム(tercuronium)、1-エチルカルバモイル-3-(3-トリフルオロメチルフェニル)ピロリジン、メタキサロン、メトカルバモール、メプロバマート、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ダントロレン、ジアゼパム、オルフェナドリン、キニーネ、ロクロニウム、スクシニルコリン、デカメトニウム、パンクロニウム、ベルロニウム(veruronium)、ラパクロニウム、ダクロニウム、デュアドル(duador)、マロウエチン(malouetine)、ジピランジウム(dipyrandium)、ピペルクロニウム(pipercuronium)、カンドニウム(chandonium)、HS-342、アトラクリウム、ミバクリウム、ドキサクリウム、d-ツボクラリン、ジメチルツボクラリン、ガラミン、アルクロニウム、アナトルキソニウム(anatruxonium)、ジアドニウム(diadonium)、ファザジニウム、トロペイニウム(tropeinium)、シサトルクリウム(cisatrucurium)が含まれる。
【0154】
強壮剤は、身体を強化したり、緊張を増大させたり、またはその生理学的機能を回復させたりする薬剤についての一般的用語である。強壮剤は、草本起源または動物起源のものが可能である。
【0155】
同化剤は、同化代謝と、細胞のコラーゲン足場を強化することとを促進させることができる。しかしながら、広範囲にわたる乱用は、スポーツおよびボディービルにおいてはドーピングとして知られている。したがって、本発明による可溶化物との組合わせは、使用がそれぞれの国内法令によって包含される限りにおいて推奨されるだけである。
【0156】
当業者は、上述の医薬的に活性な薬剤についての標準的治療法を最新技術から容易に特定するであろう。医薬的に活性な薬剤の上述の組合わせのそれぞれの投与様式および投薬量は、組み合わされた活性な薬剤についての既に確立された標準的治療法に関して順応していることが好ましい。
【実施例
【0157】
続く実施例では、可溶化用薬剤の相対的量を本発明による方法におけるそれぞれ成分について示される限界の範囲内で変化させることができる。オレイン酸グリセリルおよび/または酸化防止剤の添加は随意的である。
【0158】
示された量のアップスケールまたはダウンスケールを可溶化物に可溶化されることになる薬剤の所望の絶対量に従って行うことが可能である。可溶化物は、その必要性のある患者に投与されるべき薬剤の所望の最終的な量に従って分配することができる。
【0159】
一般に、本発明の方法に従って製造される得られた可溶化物は比密度が0.92~0.94kN/mであった。
【0160】
それぞれの実施例において、本発明による可溶化物についての投薬形態物の製造は例示目的のために記載される。本発明による可溶化物はまた、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第22版、Pharmaceutical Press、2013年;これは参照によって組み込まれるものとする)において説明されるように、この技術分野で公知のどのような対応する投薬形態物においてでも使用され得ることが理解される。
【0161】
標準の化学物質をSigma-Aldrich(Darmstadt、ドイツ)購入した。
【実施例1】
【0162】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化-実施形態1
【0163】
以下の表示は混合物の重量パーセントを示す。約100mlの可溶化物が作製される。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンが提供され、その後、可溶化用薬剤を室温(20±5℃)および大気圧で5分間にわたって撹拌下のもとで1つずつ混合する。
【0164】
【表1】
【0165】
その後、この組成物を連続した撹拌のもと、およそ1℃/分の温度増分により注意深く加熱する。約20分後(約40℃)、組成物は透明な溶液になり始める。この可溶化プロセスは約16分以上にわたって継続する。このようにして、本発明による可溶化物が約56℃で約36分後に得られる。その後、加熱および撹拌を停止し、得られた可溶化物を室温にまで冷却する。可溶化物は、少なくとも6ヶ月の観察期間にわたって透明かつ安定なままである。
【実施例2】
【0166】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化-実施形態2
【0167】
以下の表示は混合物の重量パーセントを示す。約100mlの可溶化物が作製される。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンが提供され、その後、可溶化用薬剤を室温(20±5℃)および大気圧で5分間にわたって撹拌下のもとで1つずつ混合する。
【0168】
【表2】
【0169】
その後、この組成物を連続した撹拌のもと、およそ1.5℃/分の温度増分により注意深く加熱する。約23分後(約55℃)、組成物は透明な溶液になり始める。この可溶化プロセスは約10分以上にわたって継続する。このようにして、本発明による可溶化物が約70℃で約33分後に得られる。その後、加熱および撹拌を停止し、得られた可溶化物を室温にまで冷却する。可溶化物は、少なくとも6ヶ月の観察期間にわたって透明かつ安定なままである。
【実施例3】
【0170】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩の可溶化
【0171】
以下の表示は混合物の重量パーセントを示す。約100mlの可溶化物が作製される。5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンナトリウム塩(国際公開WO2011/107295A1に記載されるような多形体Iの形態での塩)が提供され、その後、可溶化用薬剤を室温(20±5℃)および大気圧で5分間にわたって撹拌下のもとで1つずつ混合する。
【0172】
【表3】
【0173】
その後、この組成物を連続した撹拌のもと、およそ1℃/分の温度増分により注意深く加熱する。約32分後(約52℃)、組成物は透明な溶液になり始める。この可溶化プロセスは約8分以上にわたって継続する。このようにして、本発明による可溶化物が約60℃で約40分後に得られる。その後、加熱および撹拌を停止し、得られた可溶化物を室温にまで冷却する。可溶化物は、少なくとも2ヶ月の観察期間にわたって透明かつ安定なままである。
【実施例4】
【0174】
経口適用のための液体投薬形態物の調製
【0175】
下記の組成(重量%)を有する45mlの液体キャリアにおいて
【0176】
【表4】
【0177】
実施例1の可溶化物の5mlを溶解する。この溶液(50ml)は、この技術分野で公知の好適な滴下ボトルに充填することができる。
【0178】
この配合物はさらなる乳化剤(例えば、ポリソルベートなど)を必要としない。
【実施例5】
【0179】
非経口適用のための液体投薬形態物の調製
【0180】
下記の組成(重量%)を有する245mlの液体キャリアにおいて
【0181】
【表5】
【0182】
実施例1の可溶化物の5mlを溶解する。この非経口溶液(250ml)は、この技術分野で公知の好適な輸液バッグに充填することができる。
【0183】
この配合物はさらなる乳化剤(例えば、ポリソルベートなど)を必要としない。
【実施例6】
【0184】
軟質ゼラチンカプセル剤としての固体投薬形態物の調製
【0185】
軟質ゼラチンカプセル殻の組成(重量%):
【表6】
【0186】
5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化物を含有する軟質ゼラチンカプセルを、MahatoおよびNarang、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery(第2版、第18.3.5章)において説明されるように、標準的方法に従って製造する。本明細書中において、実施例1の可溶化物の1.25mlを提供された軟質ゼラチンカプセルの金型キャビティーに注入し、その後、軟質ゼラチンカプセルを封じる。
【実施例7】
【0187】
硬質ゼラチンカプセル剤としての固体投薬形態物の調製
【0188】
硬質ゼラチンカプセル殻の組成(重量%):
【表7】
【0189】
硬質ゼラチンカプセル(サイズ「000」、1.4mlの容量を有する)をこの技術分野で公知の標準的方法によって製造する。実施例1で製造されるような可溶化物の1.25mlをカプセルにそれぞれ充填する。その後すぐに、2片の硬質ゼラチンカプセルを合わせる。
【実施例8】
【0190】
クリームとしての局所投薬形態物の調製
【0191】
下記の成分を使用する(重量%):
【表8】
【0192】
第1の調製物において、5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの可溶化物、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、セテアレス20、セテアレス12、オレイン酸デシルおよびセテアリル硫酸ナトリウムを混合し、70℃に加熱する。第2の調製物において、アラントイン、グリセリンおよび水を混合し、70℃に加熱する。その後、第1の調製物と、第2の調製物とをゆっくり混合し、分散機(Ultra-Turrax T-18(登録商標))により2分間~3分間にわたって均質化する。35℃にまで冷却されると、Rokonsal ND(登録商標)からなる第3の調製物を加え、均一に撹拌する。混合物を約45℃で1分間、再び均質化する。その後、得られた混合物を、ここでは空気の混入を避けながら、撹拌のもと、室温にまで冷却する。必要ならば、pHをNaOHまたはクエン酸により調節することができる。
【0193】
クリームのpHは5.40である。このスキンクリームの安定性は40℃で少なくとも6ヶ月であった。この温度において、相分離が生じなかった。
【0194】
得られたクリームの50mlをこの技術分野で公知の折り畳み可能な好適なアルミニウムチューブに詰める。
【実施例9】
【0195】
ヒドロゲルとしての局所投薬形態物の調製
【0196】
ヒドロゲルを、米国特許出願公開第2010/0129448号A1に開示される方法のわずかな変更によって作製する。
【0197】
3%のCMC(カルボキシメチルセルロース)溶液を、実施例1の可溶化物の5mlをWFI(注射用水)と混合することによって作製し、続いて、オートクレーブ処理して、CMCを完全に溶液に溶解し、それにより、CMCヒドロゲルを形成する。懸濁物を、WFIに溶解された前記可溶化物をCMCヒドロゲルに加えることによって作製する。安定剤(TEA、クエン酸)をCMCヒドロゲルに加える。得られた組合わせ物を、米国特許出願公開第2005/0175707号に記載されるような高剪断条件(パドルミキサーおよび超音波処理)のもと、高温(40~50℃)で混合する。グリセロールおよび追加のWFIもまた懸濁物に加える。ヒドロゲルに加えられる賦形剤の量を、含有する5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンの所望の濃度を達成するように制御する。
【0198】
この3%CMCヒドロゲル懸濁物をさらに20分間混合し、これにより、原体のヒドロゲル懸濁物が形成される。原体のヒドロゲル懸濁物を100倍の倍率で光学顕微鏡で観察する。懸濁粒子の一次粒子サイズが約10μm未満であり、したがって、このことは、擦過を伴わない開放創または他の組織への組成物の局所適用を可能にする。
【実施例10】
【0199】
坐剤としての固体投薬形態物の調製
【0200】
坐剤基剤の組成(重量%):
【表9】
【0201】
1)溶融するために、坐剤基剤を50℃~52℃に加熱する。その後、溶融した脂肪基剤をゆっくり36℃に冷却する。
2)注型されるそれぞれの坐剤について、実施例3の可溶化物0.5mlのそれぞれの量を脂肪基剤に加える。柔らかい基剤が形成される。
3)前記柔らかい基剤を、重量が約2gである3cmの長さの魚雷形状の直腸坐剤を製造するために構成される坐剤鋳型に充填する。
4)坐剤を室温にまで冷却し、集める。
本発明による可溶化物の使用は、さらなる乳化剤および/または可塑剤の使用を伴わない坐剤の製造を可能にする。したがって、本発明によるそのような坐剤はポリソルベートを含まない。