(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】CRM197タンパク質の発現方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20240301BHJP
C07K 14/34 20060101ALI20240301BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20240301BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240301BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
C07K14/34
C12N15/70 Z
C12N1/21
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2020540274
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 US2019014156
(87)【国際公開番号】W WO2019143911
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC PTA-124609
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516080655
【氏名又は名称】オービーアイ ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リー-チェン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】イ-ミン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】チャ-フン・チウ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184215(US,A1)
【文献】特表2016-501550(JP,A)
【文献】特表2014-512185(JP,A)
【文献】Bioengineered,2017年,Vol.8, No.2,pp.147-153
【文献】Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology,2012年,Vol.39,pp.383-399
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CRM197タンパク質を産生する方法であって、
(a)配列番号1と少なくとも90%同一のCRM197ヌクレオチド配列、及び
(b)CRM197ヌクレオチド配列の5'末端に配列番号2のアミノ酸をコードする分泌シグナル配列
を含むポリヌクレオチドを有する発現プラスミドを含む細胞を培養する工程、並びに
MOPS緩衝液及びTris緩衝液からなる群から選択され
る緩衝液
を含む発現培地中、pH7.
5~8.0でCRM197タンパク質の発現を誘導する工程
を含み、
発現プラスミドはリン酸調節プロモーターを含み、
リン酸調節プロモーターが細菌アルカリホスファターゼAプロモーターである、細胞は大腸菌(E. coli)を含む、方法。
【請求項2】
分泌シグナル配列は、ペクチン酸リアーゼB(PelB)配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PelB配列はエルウィニア属種(Erwinia spp.)由来である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
CRM197タンパク質は可溶性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CRM197タンパク質はペリプラズム性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
CRM197タンパク質は折りたたまれており、イントラジスルフィド結合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
CRM197タンパク質の発現温度は、最初に37℃でインキュベートし、次いで約20~25℃に低下させることである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月19日出願の、米国仮出願第62/619,449号の利益を主張するものであり、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、細菌宿主における組換えタンパク質の産生の分野に関する。具体的には、本発明は、細菌細胞から十分に折りたたまれた可溶性組換えCRM197タンパク質を得る方法に関する。本開示はまた、組換えCRM197タンパク質の発現プラスミド及び宿主細胞にも関する。
【背景技術】
【0003】
ジフテリア毒素(DT)は、病原体、例えば、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)によって合成されるタンパク質性外毒素である。毒素産生株は、毒素遺伝子を担うバクテリオファージ溶原菌を含有する。DTは、ジスルフィド結合によって繋がる断片A(触媒ドメイン)と断片B(受容体結合ドメイン及び膜貫通ドメイン)とを含有する535個のアミノ酸のポリペプチドとして合成される。毒素は細胞受容体(HB-EGF-受容体)に結合し、エンドサイトーシスによって細胞に侵入し、そこで、断片Aがタンパク質分解切断によって断片Bから放出される。断片Aは、哺乳動物伸長因子2(EF-2)のヒスチジン715でジフタミドのN-1へのADP-リボシル基の転移を触媒することによって、タンパク質の翻訳を阻害することができる。したがって、DTは、細胞表面の受容体に結合し、サイトゾルに侵入し、リボソームEF-2を不活性化することにより、真核細胞を殺滅することができる。
【0004】
交差反応物質197(CRM197)の遺伝子は、変異ファージβ197tox-によって担持される。CRM197は、グルタミン酸からグリシン(G52E)への単一アミノ酸置換を含有し、そのADPリボシルトランスフェラーゼ活性を喪失しているが結合活性を保持している、ジフテリア毒素の無毒形態である。CRM197は、多糖又はオリゴ糖のコンジュゲートワクチンの担体として一般的に使用されている。CRM197は、莢膜形成細菌に対するコンジュゲートワクチン向けの理想的な担体である。免疫原性が低く且つT細胞非依存性である莢膜多糖に共有結合でコンジュゲートしたCRM197を含む、コンジュゲートワクチンによって、免疫原性が高く、結果として抗原に対して永続的な免疫をもたらすコンジュゲート抗原が、創出される。CRM197は、いくつかのワクチンにおいて、例えば、Hibワクチン(Novartis Vaccines社)、7価及び13価の肺炎球菌ワクチン(Wyeth社)、及び髄膜炎菌血清群Cコンジュゲートワクチン(Novartis Vaccines社及びWyeth社)において、担体タンパク質として広く使用されている。最近の研究によれば、CRM197が、ヘパリン結合上皮増殖因子(HB-EGF)、上皮増殖因子受容体(EGFR)リガンドを阻害できることが示唆されている。EGFR及びそのリガンドは、細胞の発生、増殖及び分化に関与し、腫瘍形成を誘発することができる。
【0005】
結論として、CRM197は、コンジュゲートワクチンにおいて一般的に使用される担体タンパク質である。その純度が高レベルであり、構造が均質であり、且つリジン残基が有効であるので、正確に規定され且つ特徴がはっきりした複合糖質ワクチンの産生が可能である。CRM197のこういった魅力的な特徴を使用して、免疫原性が証明されたいろいろなCRM197ベースのコンジュゲートワクチンが開発されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbour Laboratory、1982)
【文献】Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons、1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願では、適切に折りたたまれた可溶性CRM197タンパク質を産生する新規な方法が提供され、タンパク質は、正しいジスルフィド連結、例えば2つのイントラジスルフィド(intra-disulfide)結合で形成されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、CRM197タンパク質を産生する方法が本明細書で提供される。方法は、ポリヌクレオチドを有する発現プラスミドを含む細菌細胞を培養する工程、及びCRM197タンパク質の発現を誘導する工程を含む。ポリヌクレオチドは、(a)配列番号1と少なくとも90%同一のCRM197ヌクレオチド配列、及び(b)CRM197ヌクレオチド配列の5'末端に配列番号2のアミノ酸をコードする分泌シグナル配列を含む。
【0009】
好ましくは、分泌シグナル配列は、ペクチン酸リアーゼB(PelB)配列とし得る。より好ましくは、PelB配列は、エルウィニア属種(Erwinia spp.)由来とし得る。
【0010】
好ましくは、発現プラスミドは、リン酸調節プロモーターを含み得る。より好ましくは、リン酸調節プロモーターは、細菌アルカリホスファターゼAプロモーターとし得る。
【0011】
好ましくは、細菌細胞は大腸菌(E. coli)を含み得る。より好ましくは、大腸菌は、BL21コンピテントセルとし得る。
【0012】
好ましくは、CRM197タンパク質は、可溶性であってもよく、ペリプラズム性であってもよく、及び/又は適切に折りたたまれていてもよい。より好ましくは、CRM197タンパク質は、イントラジスルフィド結合を含み得る。
【0013】
好ましくは、CRM197タンパク質の発現温度は、最初に37℃でインキュベートし、次いで約20~25℃に低下させることである。
【0014】
好ましくは、誘導は、貯蔵緩衝液中、pH7.0~8.0で行われる。
【0015】
好ましくは、貯蔵緩衝液は、MOPS緩衝液、Tris緩衝液及びアンモニウム緩衝液からなる群から選択される。
【0016】
別の態様では、ポリヌクレオチドが本明細書で提供される。ポリヌクレオチドは、(a)配列番号1と少なくとも90%同一のCRM197ヌクレオチド配列、及び(b)CRM197ヌクレオチド配列の5'末端に位置する配列番号2のアミノ酸をコードする分泌シグナル配列を含む。
【0017】
別の態様では、発現プラスミドが本明細書で提供される。発現プラスミドは、上記のポリヌクレオチド、及びポリヌクレオチドの発現を開始する誘導性プロモーターを含む。
【0018】
別の態様では、宿主細胞が本明細書で提供される。宿主細胞は、上記のポリヌクレオチド又は上記の発現プラスミドを含む。
【0019】
別の態様では、CRM197組換えタンパク質が本明細書で提供される。タンパク質は、2017年11月28日に寄託されたATCC受託番号PTA-124609で寄託された発現プラスミドによって産生される。
【0020】
別の態様では、CRM197組換えタンパク質が本明細書で提供される。タンパク質は、(a)配列番号1のヌクレオチドから転写されたアミノ酸配列と少なくとも90%同一のポリペプチド、及び(b)ポリペプチドのN末端に配列番号2の分泌シグナル配列を含む。
【0021】
本発明の他の態様は、添付の図面及び以下の説明からみて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】CRM197コード遺伝子及びアミノ酸の配列を例示する図である。下線が引かれた配列は、5'-HindIII及び3'-EcoRI制限部位である。
【
図2】pelBss-CRM197_pEGm-phoA 1.0のプラスミドマップを例示する図である。
【
図3】CRM197構築物のアガロースゲル画像を例示する図である。5つの構築物をHindIII及びEcoRI制限消化により確かめ、1%アガロースゲルで分析した。正しい構築物は、およそ1.67kbのCRM197遺伝子断片を放出するはずである。構築物#3-14をDNAシーケンシングのために更に送り、正しいCRM197コード配列に関して確かめた。
【
図4】CRM197発現のSDS-PAGE分析を例示する図である。 (A)
図3からのCRM197構築物#3-14をコンピテントセルBL21に形質転換し、CRM197発現についてスクリーニングした。6つの形質転換体を、同じ発現条件下で調べた。同量の総可溶形タンパク質(6μg)を10%SDS-PAGEで分析した。強い誘導タンパク質バンドが58kDaに観察された。これら全ての形質転換体は、同等のCRM197発現であると示された。3-14-8株を、さらなるタンパク質品質分析のために選択した。 (B)インキュベートして28時間及び45時間でのPelB-CRM197のペリプラズム発現の図である。矢印はCRM197融合タンパク質を指し示す。
【
図5】種々の培地中での大腸菌BL21株におけるPelBシグナル配列と融合したCRM197の発現を例示する図である。
【
図6】種々のpH値での大腸菌BL21株におけるPelBシグナル配列と融合したCRM197の発現を例示する図である。
【
図7(A)】組換えpelBss-CRM197切断部位分析の結果を例示する図である。 (A)CRM197のRP-HPLCマッピングの図である。発現株#3-14-8からの一工程のDEAE精製CRM197をLC-MS分析に供して、pelBシグナル配列とCRM197の間の切断部位を確かめた。CRM197(1-GADDVVDSSK-10)の最初の10個のアミノ酸のみが、試料の両方のバッチ(基本培地としてのphoA及びMTB)から検出されたという、上の結果が示され、細胞プロテアーゼによってpelBシグナル配列が正確かつ完全に除去されたことが、示唆された。
【
図7(B)】組換えpelBss-CRM197切断部位分析の結果を例示する図である。 (B)RT25.7でのペプチドのCIDスペクトルの図である。7Aのピークを確かめるペプチド(1-GADDVVDSSK-10)のCIDスペクトルは実際、CRM197の最初の10個のアミノ酸である。
【
図8(A)】CRM197ジスルフィド結合連結分析の結果を例示する図である。 (A)phoA培地ベースの図である。発現株#3-14-8からの一工程のDEAE精製CRM197をLC-MS分析に供して、CRM197がCysl86-Cys20lの間及びCys46l-Cys47lの間に正しいジスルフィド連結を形成しているどうか調べた。正しい2つのジスルフィド連結が検出され(T44-S-S-T45及びT18-T19-S-S-T22-T23)、試料の両方のバッチから、遊離のスルフヒドリル基及びスクランブル化ジスルフィド連結は同定されなかった、という結果が明らかになった。
【
図8(B)】CRM197ジスルフィド結合連結分析の結果を例示する図である。 (B)MTB培地ベースの図である。Cysl86-Cys20lの間及びCys46l-Cys47lの間に正しいジスルフィド連結を形成しているかどうか調べた。正しい2つのジスルフィド連結が検出され(T44-S-S-T45及びT18-T19-S-S-T22-T23)、試料の両方のバッチから、遊離のスルフヒドリル基及びスクランブル化ジスルフィド連結は同定されなかった、という結果が明らかになった。
【
図9(A)】CRM197細菌株安定性アッセイの結果を例示する図である。 (A)タンパク質発現安定性分析の結果の図である。継代の6、66及び96世代から収集されたCRM197発現株#3-14-8を、同じ条件下でCRM197発現に供した。同量の総可溶形タンパク質(6μg)を10%SDS-PAGEで分析した。強力で同等のCRM197発現レベルが、27.5時間後に継代細胞の6、66及び96世代で観察されたが、4時間の接種では観察されなかった。
【
図9(B)】CRM197細菌株安定性アッセイの結果を例示する図である。 (B)プラスミド制限マッピング分析の結果の図である。継代の6、66及び96世代後に#3-14-8株から抽出されたpelBss-CRM197_pEGm phoA 1.0プラスミドの制限酵素消化。DNA 0.5μgを、HindIII及びEcoRI(B)消化に37℃で1時間供し、1%アガロースゲルで更に分析した。
【
図9(C)】CRM197細菌株安定性アッセイの結果を例示する図である。 (C)プラスミド制限マッピング分析の結果の図である。継代の6、66及び96世代後に#3-14-8株から抽出されたpelBss-CRM197_pEGm phoA 1.0プラスミドの制限酵素消化。DNA 0.5μgを、EcoRV(C)消化に37℃で1時間供し、1%アガロースゲルで更に分析した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本開示の前述の態様及び他の態様について、本明細書で説明される他の実施形態に対して、より詳細に説明する。本発明は様々な形態で具体化することができ、本明細書に記載された実施形態に制限されるものではないことを理解されたい。むしろ、これらの実施形態は、この開示を徹底的並びに完全なものにして、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0024】
本明細書の本発明の説明で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明記されていない限り、複数形も含むことを意図する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「特徴付けられる(characterized by)」、又はこれらの任意の他の語尾変化は、明示的に指示されるあらゆる制限を条件として、非排他的に含まれるものを対象としてカバーすることを意図している。例えば、構成要素の一覧表を含む組成物、混合物、方法(process)、又は方法(method)は、必ずしもそれらの構成要素のみに限定されず、明示的に列挙されていない、或いはこのような組成物、混合物、方法(process)、又は方法(method)に固有のその他の構成要素も含み得る。
【0026】
移行句「からなる」は、特定されないあらゆる構成要素、工程、又は成分を排除する。請求項中に存在する場合、そのようなものは、通常それに付随する不純物を除き、列挙されたもの以外の材料を含めることに対してその請求項を閉ざすことになる。語句「からなる」が、プレアンプルの直後ではなく請求項の本文の条項中に現れる場合、それはその条項に記載された構成要素のみを限定し、他の構成要素はその請求項から全体としては排除されない。
【0027】
移行句「から実質上なる」は、文字通り開示されたものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は構成要素を含む組成物又は方法を規定するために使用されるが、ただし、それらの追加の材料、工程、特徴、成分、又は構成要素が、その特許請求された発明の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を及ぼさないことを条件とする。用語「から実質上なる」は、「含む」と「からなる」の中間を占める。
【0028】
出願人らが、「含む」などのオープンエンドな用語により発明又はその一部を規定する場合、(別段の指定がない限り)その記載はまた、用語「から実質上なる」又は「からなる」を使用してそのような発明も記載しているものと解釈されるべきであることは容易に理解されよう。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「約」とは、値は例えば測定装置の固有の誤差の変動を含むものであり、その方法は値を又は研究対象間に存在する変動を決定するのに用いられていることを、指し示して使用される。
通常、この用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%若しくは20%の又はそれ未満の変動を包含すること意味する。
【0030】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、選択肢のみを指すこと或いは選択肢が互いに排他的であることが明示的に示されない限り、「及び/又は」を意味するものとして使用されるが、本開示は、選択肢のみと「及び/又は」とを指す定義を指示する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「形質転換する」、「形質転換された」又は「核酸を宿主細胞に導入する」とは、(ベクター又はプラスミドなど)外来核酸を、付随する物質の存在の有り無しで、宿主細胞に導入するための任意の方法の適用を指す。用語「細胞を形質転換する」又は「形質転換細胞」とは、宿主細胞が外来核酸を含有するように、外来核酸が細胞又はその娘細胞に導入されることを示唆する。宿主細胞に導入されると、核酸は染色体と一体になり、その断片となるか、又は複製の目的で染色体外因子として残る。例えば、発現ベクターによる適切な宿主細胞の形質転換は、電気穿孔法及び粒子衝撃法などの当技術分野で知られている方法を使用して、又は、リン酸カルシウムで形質転換過程を触媒するなどの化学的方法を使用して、行うことができる。これらの方法は、例えば、Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbour Laboratory、1982)、又はAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, 1994)に記載されている。
【0032】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有するものとする。本明細書で引用される全ての出版物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、参考文献が提示されている文及び/又は段落に関連する教示について、その全体が本明細書に参照により明示的に組み込まれる。
【0033】
本出願の発明による実施形態は、組換えCRM197タンパク質を産生するための方法に関する。
【0034】
本発明の実施形態による方法は、ポリヌクレオチドを有する発現プラスミドを含む細菌細胞を培養する工程を伴う。培養後、細胞を、例えば大腸菌を、最適な条件下でCRM197タンパク質を発現するように誘導するが、その結果、可溶形で組換えCRM197タンパク質の過剰発現が首尾よく達成された。好ましくは、細胞は、約15℃から約37℃、より好ましくは20~35℃、20~30℃、又は20~25℃の温度で増殖又は誘導される。この方法は、本来のコンフォメーション及びジスルフィド結合での組換えCRM197の産生及び精製に役立つであろう。
【0035】
本発明の方法は、例えば、大腸菌細胞又は大腸菌の派生体若しくは株などの細菌細胞の形質転換のために、コドン最適化ポリヌクレオチドを発現ベクターにクローニングする工程を、更に含み得る。ポリヌクレオチドは、配列番号1と少なくとも90%同一のCRM197ヌクレオチド配列、及びCRM197ヌクレオチド配列の5'末端に配列番号2のアミノ酸をコードする分泌シグナル配列を含む。上記細胞によって発現するCRM197タンパク質が、可溶性であり、細胞内、ペリプラズム性、又は分泌性であるように、ペクチン酸リアーゼB(PelB)配列を、CRM197タンパク質向けのリーダー配列として使用し得る。一実施形態では、PelB配列は、エルウィニア属種由来とし得る。分泌シグナル配列は、CRM197ヌクレオチド配列に直接連結され得る。或いは、分泌シグナル配列とCRM197ヌクレオチド配列との間にスペーサーが存在し得る。スペーサーは、例えば5~20ヌクレオチドなどの9個よりも多い又は少ないヌクレオチドを含み得る。好ましい実施形態では、発現エンハンサーは、CRM197ヌクレオチド配列の上流にリボソーム結合部位及びATGコドンを含む。
【0036】
本発明の具体化を、下に記載の特定の実施例を用いて更に例示する。本発明の範囲から逸脱することなく変更及び修正が可能であることから、これらの実施例は単に例示のためのものであって、限定することを意図するものではないことは、当業者であれば理解するであろう。
【0037】
さらなる詳細が無くても、当業者であれば、上の説明に基づき、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施例は単に例示的なものであって、いかなる場合でも開示の残りの部分を制限するものではないと解釈されたい。本明細書に引用された刊行物は全て、参照により組み込まれる。
【実施例】
【0038】
(実施例1):pEGm-phoA 1.0ベクター、アルカリホスファターゼAプロモーター由来の発現ベクターの構築
要約すると、標的遺伝子CRM197のコドン最適化配列を、CRM197の発現をペリプラズムに誘導することができる種々の5'末端シグナル配列に融合させて、正しいジスルフィド結合形成及び適切なタンパク質フォールディングを達成した。組換えCRM197を、発現に適した条件下で発現制御プロモーターに作動可能に連結した。関連する態様では、5'末端シグナル配列は、ペリプラズム発現のためにPelBがCRM197に融合されたような、Sec依存性シグナル配列をコードする。CRM197遺伝子の最適化配列(配列番号1)を、pMK-RQベクター(CRM197_pMK-RQ)中で合成し、数対のプライマーを使用して、pMK-RQベクターのCRM197の5'末端にシグナル配列を挿入した。元々のCRM197配列を最適化し、種々のシグナル配列と融合させ、続いて、発現ベクター、例えばpEGm-phoA 1.0、にサブクローニングしたが、このベクターには、カナマイシンなどの選択マーカー遺伝子、及びタンパク質発現を制御するリン酸調節プロモーターが含有されていた。
【0039】
具体的には、pEGm-phoA 1.0は、市販のベクターpTAC-MAT-Tag(登録商標)-2から改変した。詳細には、pTAC-MAT-Tag(登録商標)-2中の選択マーカー、Amp(登録商標)を、Kan(登録商標)で置き換えた。加えて、元々のpTACプロモーターも大腸菌アルカリホスファターゼA(phoA)プロモーターで置き換えた(Craigら、1991)。pEGm-phoA 1.0の発現ベクターのphoAプロモーターを利用して、リン酸濃度を細かく制御した培養培地下でCRM197の発現を調節した。
【0040】
(実施例1-1):選択マーカーとしてのカナマイシン耐性遺伝子の構築
カナマイシン耐性遺伝子のDNA断片を、鋳型としてpET27b(+)プラスミドを使用して、一対の特異的プライマー(Table 1(表1)、配列番号3及び配列番号4)
【0041】
【0042】
によって増幅し、入手した。pEGm-phoA 1.0のベクターバックボーンはまた、鋳型としてpTAC-MAT-Tag(登録商標)-2を使用して、Amp(登録商標)耐性遺伝子無しで2つの特異的プライマー(Table 1(表1)、配列番号5及び配列番号6)によって増幅した。PhusionハイフィデリティーPCRキットをこれらの2つのDNA断片の増幅で使用し、GeneArt(登録商標) seamless cloning and assembly kitを2つのDNA断片のクローニングで更に適用して、Kan(登録商標)遺伝子を有する改変pTAC-MAT-Tag(登録商標)-2ベクターを作出し、pTAC-MAT-Tag(登録商標)-2-Kanと称した。
【0043】
(実施例1-2): pTACプロモーターのphoAプロモーターによる置き換え。
pTAC-MAT-Tag(登録商標)-2-Kanを鋳型として更に使用して、2つのプライマー(Table 1(表1)、配列番号7及び配列番号8)を介してphoAプロモーター配列の挿入を有するベクター全体を増幅した。phoAプロモーターは、-35(CTGTCATAAAGTTGTCAC)領域にPhoボックス配列を含有する(Craigら、1991)。最後に、DNAシーケンシング後、正しいphoAプロモーター配列を有する新しい2つの構築物を得た。これらの新しい発現ベクターを、pEGm-phoA 1.0#2及びpEGm-phoA 1.0#3と称した。
【0044】
(実施例2):CRM197発現プラスミドの構築
(実施例2-1):CRM197遺伝子合成
CRM197遺伝子のコード配列を、GeneArt(登録商標)(Life technologies(商標)社)によって合成し、コドン使用頻度を大腸菌発現向けに最適化した(
図1)。合成したCRM197遺伝子をpMK-RQベクターに挿入し、CRM197_pMK-RQと称し、これは、さらなるクローニング向けの2つの制限部位、5'-HindIII及び3'-EcoRIを有する。
【0045】
(実施例2-2):CRM197の5'末端でのpelBシグナル配列の挿入
タンパク質合成の過程でCRM197の適切なフォールディング及びジスルフィド結合形成を達成するために、設計した2つのプライマー(Table 1(表1)、配列番号9及び配列番号10)でCRM197_pMK-RQを増幅することにより、pelB(pelBss)のリーダーヌクレオチド配列をCRM197コード配列の5'末端に挿入した。pelBは、融合タンパク質をペリプラズム空間に誘導することができるアミノ酸22個のペプチド(MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA;配列番号2)であり、内因性シグナルペプチダーゼによって除去されることになる。新しいCRM197構築物を、pelBss-CRM197_pMK-RQと称した。
【0046】
(実施例2-3):pelBss-CRM197のpEGm-phoA 1.0への構築
CRM197発現プラスミドの構築のための最終工程は、HindIII及びEcoRI制限部位によってpelBss-CRM197遺伝子をpEGm-phoA 1.0ベクターにサブクローニングして、発現プラスミド、pelBss-CRM197_pEGm-phoA 1.0(
図2)を作出することであった。CRM197インサートの適確なサイズ、約1.67kb、を有するいくつかのクローンを得た。構築物#3-14を、シーケンシングにより正しいpelBss-CRM197コード配列を有すると確かめ、続いて、タンパク質発現に使用した(
図3)。
【0047】
(実施例3):発現細菌株スクリーニング
発現ベクターpelBss-CRM197_pEGm-phoA 1.0 #3-14を大腸菌BL21株に形質転換し、LB寒天プレート(カナマイシン30μg/ml含)上で、37℃一晩のインキュベーションで、プレーティングして、いくつかの単一コロニーの形質転換体を得た。6つの形質転換体をスクリーニングして、最高のCRM197発現株を選択した。形質転換体を最初に、14mlのポリプロピレンチューブに含まれるLBブロス(カナマイシン30μg/ml含)5mlに37℃、225rpmで5時間、OD
600が約1.0になるまで、接種した。次に、各株の培養物0.5mLを250mlフラスコに含まれる発現培地50mLに、37℃、225rpmで別の3時間、移した。発現培地は、30mM硫酸アンモニウム;2.4mMクエン酸三ナトリウム脱水物;14.35mM塩化カリウム;酵母抽出物1.07g/L;トリプトン3.22g/L;0.11M MOPS pH8;グルコース0.55%及び0.007mM硫酸マグネシウム、を含む。OD
600が約0.5~1、好ましくは0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1.0に達すると、温度を約16℃~25℃、好ましくは約20℃~25℃、より好ましくは20、21、22、23、24又は25℃にCRM197発現向けに29時間、変えた。可溶性CRM197の発現レベルをSDS-PAGEで更に分析し、候補細菌株を決定した。試料それぞれ培養物の上清画分から計6μgを、分析のために10%SDS-PAGEにロードした(
図4(A))。これらの6つの株間のCRM197発現レベルは同等に見えるが、#3-14-8株をさらなる研究向けに選択した。
【0048】
加えて、
図4(B)に、タンパク質誘導の28時間及び45時間でのPelB-CRM197の発現を示す。上記の条件の通りに発現細菌株を培養したが、誘導時間はそれぞれ28時間及び45時間とした。結果から、タンパク質発現はタンパク質誘導の28時間及び45時間で類似しており、PelB-CRM197の発現が、誘導の28時間で又はその前に最高になり得ることを指摘している。
【0049】
加えて、#3-14-8株とは、ATCC受託番号PTA-124609で、2017年11月28日に、The American Type Culture Collection (ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110、米国、での下に寄託されたものであり、且つ、BCRC受託番号BCRC 940662で、2017年12月7日に、Food Industry Research and Development Institute (FIRDI)、331 Shih-Pin Road、Hsinchu、台湾300、R.O.C.、での下に寄託されたものである。
【0050】
(実施例3-A):誘導条件の最適化
(実施例3-A-1):発現培地
PelB-CRM197のペリプラズム発現を、種々の緩衝液組成物、例えば、1MのMOPS、Tris又はリン酸緩衝液を含む培地で試験した。#3-14-8株を接種し、1MのMOPS、Tris及びリン酸緩衝液pH8を添加した培地で培養した。培養した細菌を異なる時点で、すなわち3時間及び24時間で、採取して、CRM197の発現レベルに対する緩衝液組成の影響を調べた。採取した細胞を溶解緩衝液で破壊した。可溶性総タンパク質6μgを10%SDS-PAGE分析で分画した。
【0051】
図5の結果より、MOPSを添加した培地が、誘導の24時間後に最もCRM197タンパク質発現を誘導し、これに続いてTris緩衝液及びリン酸緩衝液であったことが、わかる。
【0052】
(実施例3-A-2):発現培地のpH値
PelB-CRM197のペリプラズム発現を、1M MOPSについて、種々のpH値、例えば、pH7.0、7.5又は8.0を有する培地で試験した。#3-14-8株を接種し、7.0、7.5、又は8.0の種々のpH値を有する培地で培養した。培養細菌を異なる時点で、3時間及び24時間で採取して、CRM197発現に対するpH値の影響を調べた。採取した細胞を溶解緩衝液で破壊した。可溶性総タンパク質6μgを10%SDS-PAGE分析で分画した。
【0053】
図6の結果から、pH8.0の培地が、誘導の24時間後に最もCRM197タンパク質発現を誘導し、これに続いて7.5及び7.0であったこと、がわかる。
【0054】
(実施例4):pelBss-CRM197 N末端切断部位分析
可溶形CRM197が首尾よく発現したので、次いで、細胞プロテアーゼによってCRM197組換えタンパク質からpelBシグナル配列が正確かつ完全に除去されたかどうか調べることを進めた。したがって、部分的に精製したCRM197を、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)の分析に供した。この実験の場合、CRM197発現細胞の2つのバッチを調製した:一方はphoA培地で培養し、他方は基本培地としてMTBを使用した流加培養システムで培養した(酵母抽出物24g/L;フィトンペプトン12g/L;グリセロール8g/L;塩化ナトリウム5g/L;リン酸カリウム一塩基性0.232g/L;及びリン酸カリウム二塩基性1.643g/L)。LC-MS分析用の均質化したCRM197を得るために、採取した細胞を一工程DEAEクロマトグラフィーに更に供した。pelBシグナル配列及びCRM197タンパク質のN末端欠失型はこれらの部分的に精製された試料中にまったく観察されなかった、というLC-MS及びCID分析の結果(
図7)が明確に示され、その結果、pelBシグナル配列が組換えCRM197から正確かつ完全に除去されたことが、示唆された。
【0055】
(実施例5):pelBss-CRM197ジスルフィド結合形成分析
CRM197は、4個のシスチンを含有し、Cys186-Cys201の間及びCys461-Cys471の間の2つのイントラジスルフィド結合を形成することができる。したがって、上の部分的に精製したCRM197もジスルフィド連結分析に適用した。
図8の結果から、CRM197試料のこれら2つのバッチで、Cysl86-Cys201及びCys461-Cys471の2つのジスルフィド連結が同定され、遊離のスルフヒドリル基及びスクランブル化ジスルフィド連結はまったく同定されなかったことが、明らかになった。結果が指摘するところは、組換えCRM197産物は正しいジスルフィド連結を形成していた、ということである。
【0056】
(実施例6):pelBss-CRM197_pEGm-phoA 1.0 BL21 #3-14-8細菌株安定性アッセイ。
CRM197発現株、例えば#3-14-8株の安定性を把握するために、タンパク質発現分析及びプラスミド安定性分析の両方を行った。継代の数世代後の株の安定性を評価するために、細菌株を連続培養し、96世代までの間、対数増殖期に維持した(倍加時間はphoA培地で約40分である、データ示さず)。要約すると、pelBss-CRM197_pEGm-phoA 1.0 BL21 #3-14-8 RCBの1つのバイアルを解凍し、グリセロールストック0.4mLを250mLフラスコに含まれるphoA培地(カナマイシン30μL/mL含有)40mlに、37℃、225rpmで、接種した。OD600が1(およそ4時間)に達すると、培養ブロス0.4mlを新鮮なphoA培地40mlが入った別のフラスコに移した。この手順を16回繰り返し行った。培養細胞のある特定の段階(6、66及び96世代)を収集し、グリセロールストックも作製し、さらなる分析用に-75℃で保存した。
【0057】
(実施例6-1):タンパク質発現安定性分析
CRM197発現安定性を調べるために、異なる3世代のCRM197 #3-14-8株を、CRM197発現に供した。タンパク質発現手順については先に述べられており、最終的なCRM197発現分析を
図9に示した。phoA培地で27.5時間培養した後、培養細胞の6、66及び96世代が、10%SDS-PAGE分析により同等のCRM197発現レベルを有していた、という結果が明確に示された(
図9(A))。加えて、4時間及び27.5時間のインキュベート後に測定したOD
600値は非常に類似しており(Table 2(表2)):
【0058】
【0059】
4時間で0.552~0.592、27.5時間で3.402~3.576であり、これらの3世代の株について類似の増殖率が示唆された。結果として、pelBss-CRM197_pEGm-phoA 1.0 BL21 #3-14-8 RCBは、継代の96世代まで優れた発現安定性を維持していた。
【0060】
(実施例6-2):プラスミド安定性分析
CRM197発現ベクターはまた、DNA断片の欠失、重複又は逆位無しでその安定性を保持しているかどうかを確認するために、細胞の6、66及び96世代から抽出したプラスミドを制限酵素消化及びDNAシーケンシングに供した。2セットの制限酵素をプラスミド消化に適用した。HindIII及びEcoRIは、pelBss-CRM197遺伝子断片(約1.67kb)及びベクターバックボーン(約5.13kb)を放出できる。一方、EcoRVは、pelBss-CRM197_pEGm-phoA 1.0中に、一方はCRM197遺伝子に、他方はカナマイシン遺伝子に、2つの認識部位を有し、これらは2つのDNA断片(それぞれ約2.65及び4.15kb)を放出できる。
図9(B)及び
図9(C)の制限マッピングの結果から、異なる3世代の細胞からのプラスミド0.5μgを、HindIII/EcoRI又は EcoRVで消化し、1%アガロースゲルで分析すると、予想されるDNA断片が観察されることが明らかとなった。加えて、96世代の細胞から抽出したプラスミドも、Genomics BioSci & Tech社によるDNAシーケンシング(Table 1(表1)、配列番号11、配列番号12及び配列番号13)に供し、CRM197コード遺伝子の正しい配列が確認された(データ示さず)。まとめると、継代の96世代まで、本出願のCRM197発現株は、依然としてしっかりしたプラスミド安定性を維持していた。
【0061】
(実施例6-3):プラスミドコピー数保持率分析
更に、継代の96世代後のプラスミドコピー数保持率を調べた。これを行うために、リアルタイム定量PCR(qPCR)ベースの方法を適用して、大腸菌のプラスミドコピー数を決定した(Leeら、2006)。絶対及び相対のプラスミドコピー数を計算するために、2セットのプライマーを使用して、標的遺伝子としてのプラスミドのCRM197遺伝子を検出した(Table 1(表1)、配列番号14及び配列番号15)。宿主染色体中のDXS遺伝子(D-1-デオキシキシルロース5-リン酸シンターゼ)を参照遺伝子として使用した(Table 1(表1)、配列番号16及び配列番号17)。CRM197及びDXSはベクター及び大腸菌染色体の単一コピー遺伝子であるので、プラスミドのコピー数はCRM197/DXSの比率として決定できる。プラスミド(標的遺伝子)及びリファレンス遺伝子の正確なコピー数を計算するために、2本の標準直線を最初に作成して、pelBss-CRM197_pEGm phoA 1.0及びDXS_pEGm phoA 1.0の既知の分子(濃度から計算)によってプラスミド分子をCt値に変換した。次に、6、66及び96世代の細胞から抽出した総DNA(pelBss-CRM197プラスミド及びゲノムDNAを含有する)をqPCRに供し、CRM197遺伝子(プラスミド)及びDXS遺伝子(ゲノム)の量を計算した。最後に、絶対プラスミドコピー数をCRM197/DXSの数によって得た。Table 3(表3)
【0062】
【0063】
に示すように、試料の6世代のプラスミドコピー数で割ることにより、コピー数保持率を更に計算した。2回の実験からの結果より、プラスミドコピー数保持率は、継代の96世代まで少なくとも80%を依然として維持していたことが明らかとなった。
【0064】
開示された実施形態に対して様々な修正及び変更をなし得ることは、当業者であれば明らかであろう。本明細書及び実施例は例示としてのみ考慮されることが意図され、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって示される。
【0065】
参考文献
下に列挙し、本明細書に参照される参考文献は、本明細書が明確に別段の定めをしない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
[参考文献]
【配列表】