(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】反応押出成形による無溶媒且つ非酵素的な連続的ペプチド合成
(51)【国際特許分類】
C07K 1/06 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
C07K1/06
(21)【出願番号】P 2020543811
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2019053389
(87)【国際公開番号】W WO2019158506
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】515085211
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド モンペリエ
(73)【特許権者】
【識別番号】520305720
【氏名又は名称】エコール ナショナル シュペリオーレ ドゥ シミ ドゥ モンペリエ(イーエヌエスシーエム)
(73)【特許権者】
【識別番号】520305731
【氏名又は名称】エコール デ マインズ ダレス
(73)【特許権者】
【識別番号】520305742
【氏名又は名称】アソシアスィヨン プル ラ ルシェルシュ エ ル デヴロップマン デ メトーデ エ プロセス アンデュストリエル(エーアールエムアイエヌイーエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】イェブー,イブ
(72)【発明者】
【氏名】ガラール,バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ル モワーニュ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ラマティ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】メトロ,トマス―グザヴィエ
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-339298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0252935(US,A1)
【文献】Angewandte Chemie - International Edition,2009年,Vol.48,pp.9318-9321
【文献】Green Chemistry,2017年,Vol.19,pp.2620-2625
【文献】Macromolecular Materials and Engineering,2017年,Vol.302, No.1600338,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)
Ra-POLYPEP-Rc (I)
式中、
POLYPEPは、ポリアミノ酸化合物であり、
Raは、N-保護基を意味し、
Rcは、-O-Rdを意味し、Rdは、水素原子、(C1~C24アルキル)基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10)アリール基、O-保護基、又は-NReRf基を意味し、Re及びRf基は、互いに独立して、水素原子、(C1~C24)アルキル基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10アリール)基、若しくはN-保護基を意味する、
の化合物
を合成する為の、無溶媒且つ非酵素的な連続的方法であって、
a)押出反応器に、
(1)下記の式(II)
Ra-PEPNt-Rg (II)
式中、
PEPNtは、モノ-又はポリ-アミノ酸化合物であり、
Raは、式(I)の化合物について定義された通りであり、
Rgは、脱離基である、
の化合物、及び
(2)下記の式(III)
H-PEPCt-Rc (III)
式中、
PEPCtは、モノ-又はポリ-アミノ酸化合物であり、
Rcは、式(I)の化合物について定義された通りである、
の化合物
を溶媒の非存在下で供給し、それによって、
NaHCO
3
及びアセトンの存在下で、該式(II)の化合物と該式(III)の化合物とが互いに反応して、該式(I)の化合物を生成すること、及び
b)該式(I)の化合物を該押出反応器から集めること
の工程を含む、上記方法。
【請求項2】
下記の式(I’)
【化1】
式中、
mは、1以上の整数であり、
nは、1以上の整数であり、
Raは、N-保護基を意味し、
各Rb1は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH
2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH
2、-NH-C(NH)(NH
2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、
Rb2は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はN-保護基からなる群の中から選択され、
各Rb3は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH
2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH
2、-NH-C(NH)(NH
2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、
或いは、
Rb1とRb2の対又はRb3とRb2の対はそれぞれ、Rb1とRb2の1つの対又はRb2とRb3の1つの対がRb1とRb2の他の対又はRb2とRb3の他の対それぞれとは独立して、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成し、
各Rn1は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH
2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH
2、-NH-C(NH)(NH
2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、
Rn2は、水素原子、アルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、
各Rn3は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH
2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH
2、-NH-C(NH)(NH
2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、
或いは、
Rn1とRn2の対又はRn3とRn2の対はそれぞれ、Rn1とRn2の1つの対又はRn3とRn2の1つの対がRn1とRn2の他の対又はRn3とRn2の他の対それぞれとは独立して、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成し、
Rcは、-O-Rdを意味し、Rdは、水素原子、(C1~C24アルキル)基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10)アリール基、O-保護基、又は-NReRf基を意味し、Re及びRf基は、互いに独立して、水素原子、(C1~C24)アルキル基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10アリール)基、又はN-保護基を意味する、
の化合物
を合成する為の、請求項1に記載の、無溶媒且つ非酵素的な連続的方法であって、
a)押出反応器に、
(1)下記の式(II’)
【化2】
式中、
m、Ra、Rb1、Rb2、及びRb3は、式(I’)の化合物について定義される通りであり、且つ
Rgは、脱離基である、
の化合物、及び
(2)下記の式(III’)
【化3】
式中、
n、Rn1、Rn2、Rn3、及びRcは、式(I’)の化合物について定義されている通りである、
の化合物
を溶媒の非存在下で供給し、それによって、該式(II’)の化合物と該式(III’)の化合物が互いに反応して、該式(I’)の化合物を生成すること、及び、
b)該式(I’)の化合物を押出反応器から集めること
の工程を含む、前記方法。
【請求項3】
Rb1及びRb2、又はRb2及びRb3が、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成する場合、上記複素環はピロリジニル基である、請求項2に記載の連続的な方法。
【請求項4】
Rn1及びRn2、又はRn2及びRn3が、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成する場合、上記複素環はピロリジニル基である、請求項2又は3に記載の連続的な方法。
【請求項5】
Rb1が、水素原子、メチル基、-CH
2-CH
2-CH
2-NH-C(=NH)NH
2、-CH
2-C(=O)-NH
2、-CH
2-COOH、-CH
2-SH、-(CH
2)
2-C(=O)-NH
2、-(CH
2)
2-COOH-、CH
2-イミダゾリル、-CH(CH
3)-CH
2-CH
3、-CH
2-CH(CH
3)
2、-(CH
2)
4-NH
2、-CH
2-CH
2-S-CH
3、-CH
2-フェニル、-CH
2OH、-CH(OH)-CH
3、-CH
2-インドリル、-CH
2-フェニル-OH、及びイソプロピル基からなる群から選択され、Rb3が水素原子であり、且つRb2が水素原子である、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Rn1が、水素原子、メチル基、-CH
2-CH
2-CH
2-NH-C(=NH)NH
2、-CH
2-C(=O)-NH
2、-CH
2-COOH、-CH
2-SH、-(CH
2)
2-C(=O)-NH
2、-(CH
2)
2-COOH-、CH
2-イミダゾリル、-CH(CH
3)-CH
2-CH
3、-CH
2-CH(CH
3)
2、-(CH
2)
4-NH
2、-CH
2-CH
2-S-CH
3、-CH
2-フェニル、-CH
2OH、-CH(OH)-CH
3、-CH
2-インドリル、-CH
2-フェニル-OH、及びイソプロピル基からなる群から選択され、Rn3が水素原子であり、且つRn2が水素原子である、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項2に記載の、式(I
’)又は式(II
’)の化合物のRb1基の及び該式(I
’)又は式(III
’)の化合物のRn1基の、官能性のNH
2、NH、COOH、CONH
2、OH、SHの基は、1以上の、同一若しくは異なるN-保護基、O-保護基又はS-保護基によって保護されている、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項2に記載の、式(II’)の化合物の-C(O)-Rg基が、N-置換カルバメート、ペンタフルオロフェニルヒドロキシレート、スクシンイミジル N-ヒドロキシレート、イミダゾレート、ベンズイミダゾレート、ベンゾトリアゾール N-ヒドロキシレート、アザベンゾトリアゾール N-ヒドロキシレート、ピリミジンヒドロキシレート、トリアジンヒドロキシレート、パラニトロフェニルヒドロキシレート、及びオキシメート(例えばOxyma(商標))、フロリド、ブロミド、クロリド、カルボキシレート及びカルボナートからなる群から選択される、請求項
2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)が、塩基を添加することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記押出反応器が、一軸押出反応器及び二軸押出反応器の中から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)が、選択された一定の温度で、前記反応器を維持することによって行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)が、30℃~100℃の温度で行われる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程a)が、35℃~70℃の温度で行われる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基が、無機塩基及び有機塩基からなる群から選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基がカルボナートであり、該カルボナートが、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸セシウムからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1記載の式(I)又は式(II)の化合物において、Raは、互いに独立して、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、及びニトロ-ベラトリルオキシカルボニルからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1記載の式(I)若しくは
請求項2記載の式(I’)の化合物、又は
請求項1記載の式(III)若しくは
請求項2記載の式(III’)の化合物において、Re及びRfが、互いに独立して、水素原子、(C1~C24)アルキル基、1以上のフェニル基で置換されたメチル基、非置換の(C6~C10)アリール基、又はN-保護基からなる群から選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項2に記載の式(I’)及び式(II’)の化合物において、mが、1~100、例えば1~50、の整数である、請求項
2に記載の方法。
【請求項19】
請求項2に記載の式(I’)及び式(III’)の化合物において、nが、1~100、例えば1~50、の整数である、請求項
2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド合成の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドは一般的に、食品産業、診断産業、化粧品産業、及び治療産業を含む、産業の様々な分野において高い有用性を有する。治療ペプチドは、とりわけ有望な医薬品有効成分としてそれ自体を位置づける幅広く有利な特徴を示す(K. Fosgerau, T. Hoffmann, Drug Discov. Today 2015, 20, 122; J. L. Lau, M. K. Dunn, Biorg. Med. Chem. 2017, DOI: 10.1016/j.bmc.2017.06.052.)。実際、治療ペプチドは、非常に低用量において生物学的に活性であり、選択性が高く、良好な忍容性を示し、無毒性のアミノ酸に生分解可能である。それでもなお、ペプチドの工業的製造は、溶液状態で、又は固相ペプチド合成(SPPS)により稼働し、合成及び精製工程中に莫大な量の毒性の有機溶媒が必要とされるという欠点がある(Bray, Nature Rev. Drug Discov. 2003, 2, 587; A. M. Thayer, Chem. Eng. News 2011, 89, 21; Mergler et al, Chimia 2013, 67, 874; Werbitzky et al., RSC Drug Discovery Ser. 2015, 42, 290; Patel, Chem. Eng. News 2017, 95, 27)。きわめて懸念される環境上の問題を惹起しつつも、極性の非プロトン溶媒、例えばDMF、DCM、THF、及び1,4-ジオキサン、が通常使用されている(規制(EC)No1272/2008に従えば、DMFは、生殖毒性を呈するものとして、DCM、THF、及び1,4-ジオキサンは毒性及び/又は発癌性として分類される(カテゴリー2))。REACH実施の圧力下では、製薬産業は、これらの溶媒に対する代替物を必要としている(Patel, Chem. Eng. News 2017, 95, 27; D. J. C. Constable, P. J. Dunn, J. D. Hayler, G. R. Humphrey, J. J. L. Leazer, R. J. Linderman, K. Lorenz, J. Manley, B. A. Pearlman, A. Wells, A. Zaks, T. Y. Zhang, Green Chem. 2007, 9, 411)。工業的ペプチド製造の発展は、従来の不連続バッチの製造モード、並びにペプチドの溶解度が一般的に低いことに関する制限によっても妨げられている。実際に、溶媒の利用は、反応物質が機械力の適用によって粉砕され、共に混合される限り、ペプチド合成を実施するのに必須でない(James et al., Chem. Soc. Rev. 2012, 41, 413; Metro, et al., in Ball Milling Towards Green Synthesis: Applications, Projects, Challenges (Eds.: A. Stolle, B. Ranu), The Royal Society of Chemistry, 2015, pp. 114)。実際に、Lamatyのグループは2009年に、ウレタン保護されたα-アミノ酸 N-カルボキシ無水物(UNCA)、α-アミノエステル塩、及びNaHCO3をボールミルで共に粉砕することによる、甘味料のアスパルテームを含む様々なジペプチドの無溶媒合成について報告した(Declerck, et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 9318)。この新しいパラダイムに基づき、当分野における他の発展により、様々なペプチド、例えばペンタペプチドのLeu-エンケファリンの製造が可能になった(Hernandez et al., J. Org. Chem. 2010, 75, 7107; Strukil et al., Chem. Commun. 2012, 48, 12100; Duangkamol et al., RSC Adv. 2015, 5, 52624; Porte et al., Eur. J. Org. Chem. 2016, 3505; Landeros et al., Eur. J. Org. Chem. 2017, 687; Gonnet et al., ACS Sustainable Chem. Eng. 2017, 5, 2936; Hernandez et al., Green Chem. 2017, 19, 2620; Maurin et al., Beilstein J. Org. Chem. 2017, 13, 2087; Petry et al., Beilstein J. Org. Chem. 2017, 13, 2169)。最良の場合、4gを超えるジペプチドの製造を可能にしたものの、このアプローチは不連続なバッチ及び研究室スケールの製造に限定され、これによりペプチド業界における幅広い普及が妨げられた。より最近では、反応押出成形によりα-L-アミノ酸エステル塩酸塩を酵素触媒重合させ、それによりホモ-オリゴ-ペプチドを合成する可能性について報告された(Ardila-Fierro et al., Green Chem. 2018, DOI: 10.1039/C7GC03205F)。それでもなお、重合は、単一のα-L-アミノ酸エステルモノマーに基づくので、そのような方法は、ペプチドのα-L-アミノ酸配列の多様性を精密に制御する可能性を一切許容しない。更に、ペプチドカップリングの立体選択性は、該試験において示されなかった。その上、この酵素の利用は、α-D-アミノ酸残基のカップリングにおいて非効率的であることがこれまでに証明された(Hernandez, J. G. et al., Green Chem. 2017, 19, 2620-2625)。従って、公知の無溶媒法よりも多量のペプチドの製造を可能にする無溶媒ペプチド合成に関する合成法を含む、ペプチド合成法の改善に対する必要性が当技術分野においてなおまた存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、下記の式(I)
Ra-POLYPEP-Rc (I)
式中、
POLYPEPは、ポリアミノ酸化合物であり、
Raは、N-保護基を意味し、
Rcは、-O-Rdを意味し、Rdは、水素原子、(C1~C24アルキル)基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10)アリール基、O-保護基、又は-NReRf基を意味し、Re及びRf基は、互いに独立して、水素原子、(C1~C24)アルキル基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10アリール)基、若しくはN-保護基を意味する、
の化合物
を合成する為の、無溶媒且つ非酵素的な連続的方法であって、
a)押出反応器(extrusion reactor)に、
(1)下記の式(II)
Ra-PEPNt-Rg (II)
式中、
PEPNtは、モノ-又はポリ-アミノ酸化合物であり、
Raは、式(I)の化合物について定義された通りであり、
Rgは、脱離基である、
の化合物、及び
(2)下記の式(III)
H-PEPCt-Rc (III)
式中、
PEPCtは、モノ-又はポリ-アミノ酸化合物であり、
Rcは、式(I)の化合物について定義された通りである、
の化合物
を溶媒の非存在下で供給し、それによって、該式(II)の化合物と該式(III)の化合物とが互いに反応して、該式(I)の化合物を生成すること、及び
b)該式(I)の化合物を該押出反応器から集めること
を含む、上記方法に関する。
【0004】
開示される方法の幾つかの特別な実施態様において、化合物(II)Ra-PEPNt-Rgは、下記の式(II’)
【0005】
【化1】
式中、Ra基、Rb1基、Rb2基、Rb3基、及びRg基のそれぞれの意味は、本開示書において更に特定されている、
の化合物からなる。
【0006】
開示される方法の幾つかの特別な実施態様において、化合物(III)のH-PEPCt-Rcは、下記の式(III’)
【0007】
【化2】
式中、Rn1基、Rn2基、Rn3基、及びRc基は、本開示書において更に特定されている、
の化合物からなる。
【0008】
幾つかの実施態様において、各Rb1基は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH-C(NH)(NH2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表す。
【0009】
幾つかの実施態様において、各Rb3基は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH-C(NH)(NH2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表す。
【0010】
幾つかの他の実施態様において、Rb1とRb2の対又はRb3とRb2の対はそれぞれ、Rb1とRb2の1つの対又はRb2とRb3の1つの対がRb1とRb2の他の対又はRb2とRb3の他の対それぞれとは独立して、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成する。
【0011】
幾つかの実施態様において、各Rn1は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH-C(NH)(NH2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表す。
【0012】
幾つかの実施態様において、各Rn3は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH-C(NH)(NH2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表す。
【0013】
幾つかの他の実施態様において、Rn1とRn2の対又はRn3とRn2の対はそれぞれ、Rn1とRn2の1つの対又はRn3とRn2の1つの対がRn1とRn2の他の対又はRn3とRn2の他の対それぞれとは独立して、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成する。
【0014】
該方法の幾つかの実施態様において、工程a)は、塩基、例えば無機塩基及び有機塩基からなる群から選択される塩基、を添加することを含む。
【0015】
該方法の幾つかの実施態様において、該押出反応器は、一軸押出反応器及び二軸押出反応器の中から選択される。
【0016】
該方法の幾つかの実施態様において、工程a)は、選択された一定の温度、例えば35℃~70℃の温度を含む、30℃~100℃の温度で反応物質を維持することによって行われる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者等は、ペプチド合成の為の方法であって、該方法は、無溶媒且つ非酵素的な連続的方式でペプチド合成を可能にし、従って工業的要件に適合する量で所望のペプチドの製造を可能にする上記方法について検討してきた。
【0018】
更に、本発明者等によって検討された該方法は、高収率且つ高純度で所望のペプチドの製造を可能にし、且つ(i)液体添加剤及び未反応生成物の低レベルを考慮した、低い環境影響の為の要件、及び(ii)達成される高生産収率を考慮した場合の経済的利益に十分に適合する。
【0019】
本発明は、下記の式(I)
Ra-POLYPEP-Rc (I)
式中、
POLYPEPは、ポリアミノ酸化合物であり、
Raは、N-保護基を意味し、
Rcは、-O-Rdを意味し、Rdは、水素原子、(C1~C24アルキル)基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10)アリール基、O-保護基、又は-NReRf基を意味し、Re及びRf基は、互いに独立して、水素原子、(C1~C24)アルキル基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10アリール)基、若しくはN-保護基を意味する、
の化合物を合成する為の無溶媒且つ非酵素的な連続的方法であって、
a)押出反応器に、
(1)下記の式(II)
Ra-PEPNt-Rg (II)
式中、
PEPNtは、モノ-又はポリ-アミノ酸化合物であり、
Raは、式(I)の化合物について定義される通りであり、
Rgは、脱離基である、
の化合物、及び
(2)下記の式(III)
H-PEPCt-Rc (III)
、式中、
PEPCtは、モノ-又はポリ-アミノ酸化合物であり、
Rcは、式(I)の化合物について定義されている通りである、
の化合物
を溶媒の非存在下で供給し、それによって、該式(II)の化合物と該式(III)の化合物が互いに反応して、該式(I)の化合物を生成すること、及び
b)該式(I)の化合物を押出反応器から集めること
を含む方法に関する。
【0020】
語「式(X)の化合物」及び「化合物(X)」、例えば「式(I)の化合物」及び「化合物(I)」は、本明細書において交換可能に使用されうる。
【0021】
語「アミノ酸」及び「アミノアシル」は、本明細書において交換可能に使用されうる。これらの語の慣用的使用において、「アミノ酸」は、別の残基に結合していない残基を包含し、一方、「アミノアシル」は、別の化学基、例えば別のアミノアシル残基、に結合され化学基としてみられるアミノ酸残基を包含する。
【0022】
本明細書において使用される場合、PEPNtがモノ-アミノ酸化合物である複数の実施態様において、Ra基は、上記アミノ酸の中央のアミノ基の窒素原子に結合されており、且つRg基は、上記アミノ酸の中央のカルボニル基の炭素原子と結合されている。
【0023】
本明細書において使用される場合、PEPNtがポリ-アミノ酸化合物である複数の実施態様において、Ra基は、上記ポリ-アミノ酸化合物のN末端に位置するアミノ酸の中央のアミノ基の窒素原子に結合されており、且つRg基は、上記ポリ-アミノ酸化合物のC末端に位置するアミノ酸の中央のアシル基の炭素原子と結合されている。
【0024】
本明細書において使用される場合、所与のアミノ酸化合物の「中央の」アミノ基は、上記所与のアミノ酸化合物が、別のアミノ酸化合物に結合されている場合に、ペプチド結合に関与するアミノ基からなる。
【0025】
本明細書において使用される場合、所与のアミノ酸化合物の「中央の」カルボニル基又はアシル基は、上記所与のアミノ酸化合物が別のアミノ酸化合物に結合されている場合に、ペプチド結合に関与するカルボニル基又はアシル基からなる。
【0026】
本明細書において使用される場合、PEPCtがモノ-アミノ酸化合物である複数の実施態様において、「H」で表される水素原子は、上記アミノ酸の中央のアミノ基の窒素原子に結合されており、且つRc基は、上記アミノ酸のカルボニル基の炭素原子と結合されている。
【0027】
本明細書において使用される場合、PEPCtがポリ-アミノ酸化合物である複数の実施態様において、「H」で表される水素原子は、上記ポリ-アミノ酸化合物のN末端に位置するアミノ酸の中央のアミノ基の窒素原子に結合されており、且つRc基は、上記ポリ-アミノ酸化合物のC末端に位置するアミノ酸の中央のカルボニル基の炭素原子と結合されている。
【0028】
本明細書において使用される場合、POLYPEPは、Ra基が、上記ポリ-アミノ酸化合物のN末端に位置するアミノ酸のアミノ基の窒素原子に結合されており、且つRg基が、上記ポリ-アミノ酸化合物のC末端に位置するアミノ酸のアシル基の炭素原子と結合されているポリ-アミノ酸化合物である。
【0029】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸」は、その最も一般的な定義において、官能性の第一級又は第二級のアミノ基と官能性のカルボキシル基とを含む化合物からなる。例示的には、官能性の第二級アミノ基を含むプロリンを除き、全ての天然アミノ酸は、官能性の第一級アミノ基を含む。
【0030】
定義により、方法の工程a)が、「m」個のアミノ酸を含む式(II)の化合物を、「n」個のアミノ酸を含む式(III)の化合物と反応させることを含む場合、結果として生じた式(I)の化合物は、「m」+「n」個のアミノ酸を含む。
【0031】
本開示書において別途詳述される通り、化合物(II)及び化合物(III)のそれぞれのサイズに関係なく、同一の固有の反応工程が行われる故に、式(II)の化合物に又は式(III)の化合物に含まれるアミノ酸の数に厳格な制限はない。
【0032】
方法の幾つかの実施態様において、PEPNt及びPEPCtはそれぞれ、慣用的なaa1-C(=O)-NH-aa2-アミドペプチド結合(式中、aa1及びaa2はそれぞれアミノアシル残基を表す)を通じて結合されているアミノアシル残基を排他的に含む。
【0033】
幾つかの他の実施態様において、PEPNt及びPEPCtのうちの一方、又はPEPNt及びPEPCtの両方は、非慣用的なペプチド結合、例えばaa1-C(=O)-O-aa2(式中、aa1はアミノアシル残基を表し、且つaa2は非慣用的なアミノアシル残基を表し、ここで、官能性のアミノ基は存在しない)、を通じて結合されている1以上の残基を含む。これらの実施態様に従うと、残基に結合されている少なくとも1つの慣用的なアミドペプチド結合は、エステル結合に置き換えられる。2つの残基が、そのような非慣用的なエステル結合により結合されているペプチドは当技術分野において周知であり、通常「デプシペプチド」と呼ばれる。
【0034】
一般的に、化合物(II)及び化合物(III)は、αアミノアシル残基、すなわち官能性のアミノ基が、そのカルボキシル基からみてα位に位置する炭素原子と結合されているアミノアシル残基、を主に含む。例示的には、20個の天然アミノ酸のそれぞれは、αアミノ酸からなる。
【0035】
幾つかの実施態様において、化合物(II)若しくは化合物(III)のうちの一方、又は化合物(II)及び化合物(III)の両方は、1以上のβアミノアシル残基を含む。βアミノアシル残基、官能性のアミノ基が、そのカルボキシル基からみてβ位に位置する炭素原子と結合されている。周知のβアミノ酸は、βアラニンである。
【0036】
幾つかの実施態様において、化合物(II)若しくは化合物(III)のうちの一方、又は化合物(II)及び化合物(III)の両方は、1以上のγアミノアシル残基を含む。γアミノアシル残基;官能性のアミノ基が、そのカルボキシル基からみてγ位に位置する炭素原子と結合されている。周知のγアミノ酸は、γアミノ酪酸である。
【0037】
化合物(II)、化合物(III)、又は化合物(II)及び化合物(III)の両方が、ポリ-アミノ酸化合物からなる実施態様のうちの幾つかの実施態様において、化合物(II)若しくは化合物(III)のうちの一方、又は化合物(II)及び化合物(III)の両方が、偽ペプチドを含み、但し、
化合物(II)について、Raは、化合物(II)のN末端に位置するアミノアシル残基の中央のアミノ基の窒素原子に結合されており、且つRg基は、化合物(II)のC末端に位置するアミノ酸の中央のカルボニル基の炭素原子に結合されており、
化合物(III)について、「H」で表される水素原子は、化合物(III)のN末端基に位置するアミノ酸の中央のアミノ基の窒素原子に結合されており、且つRcは、化合物(III)のC末端に位置するアミノ酸の中央のカルボニル基の炭素原子と結合されている。
【0038】
本明細書において使用される場合、「偽ペプチド」は、アミノアシル残基を非排他的に含む化学的鎖、最も好ましくは任意的に置換された炭化水素鎖、を含む化合物からなり、上記化合物は、(i)本明細書において「N末端」と呼ばれうる、上記化学的鎖の一方の端部において、官能性のアミノ基を含み、(ii)本明細書において「C末端」と呼ばれうる、化学的鎖の他方の端部において官能性のカルボキシル基を含む。
【0039】
幾つかの実施態様において、化合物(II)は、1~500個のアミノ酸残基、例えば、1~50個のアミノ酸残基を包含する、1~100個のアミノ酸残基、を含む。
【0040】
幾つかの実施態様において、化合物(III)は、1~500個のアミノ酸残基、例えば、1~50個のアミノ酸残基を包含する、1~100個のアミノ酸残基、を含む。
【0041】
本明細書においてこれまでに既に記載されるように、化合物(II)及び化合物(III)の両方は、慣用的なアミドペプチド結合を通じて、相互に結合されているアミノアシル残基を排他的に含みうる。
【0042】
開示される方法の幾つかの特別な実施態様において、化合物(II)Ra-PEPNt-Rgは、下記の式(II’)
【0043】
【化3】
式中、Ra基、Rb1基、Rb2基、Rb3基、及びRg基のそれぞれの意味は、本開示書において更に特定されている、
の化合物からなる。
【0044】
開示される方法の幾つかの特別な実施態様において、化合物(III)H-PEPCt-Rcは、下記の式(III’)
【0045】
【化4】
式中、Rn1基、Rn2基、Rn3基、及びRc基の意味は、本開示書において更に特定されている、
の化合物からなる。
【0046】
開示される方法のこれらの特別な実施態様は、本明細書の下記において詳述される通り、下記の式(I’)の化合物を得ることを可能にする。
【0047】
従って、本発明はまた、下記の式(I’)
【0048】
【化5】
式中、
mは、1以上の整数であり、
nは、1以上の整数であり、
Raは、N-保護基を意味し、
各Rb1は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH
2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH
2、-NH-C(NH)(NH
2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、
Rb2は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はN-保護基からなる群の中から選択され、
各Rb3は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH
2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH
2、-NH-C(NH)(NH
2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、
或いは、
Rb1とRb2の対又はRb3とRb2の対はそれぞれ、Rb1とRb2の1つの対又はRb2とRb3の1つの対がRb1とRb2の他の対又はRb2とRb3の他の対それぞれとは独立して、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成し、
各Rn1は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH
2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH
2、-NH-C(NH)(NH
2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、
Rn2は、水素原子、アルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、
各Rn3は、互いに独立して、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH
2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH
2、-NH-C(NH)(NH
2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、
或いは、
Rn1とRn2の対又はRn3とRn2の対はそれぞれ、Rn1とRn2の1つの対又はRn3とRn2の1つの対がRn1とRn2の他の対又はRn3とRn2の他の対それぞれとは独立して、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成し、
Rcは、-O-Rdを意味し、Rdは、水素原子、非置換の(C1~C24アルキル)基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10)アリール基、O-保護基、又は-NReRf基(式中、Re及びRf基は、互いに独立して、水素原子、(C1~C24)アルキル基、1以上のフェニル基によって置換されたメチル基、非置換の(C6~C10アリール)基、又はN-保護基を意味する、
の化合物
を合成する為の無溶媒且つ非酵素的な連続的方法であって、
a)押出反応器に、
(1)下記の式(II’)
【0049】
【化6】
式中、
m、Ra、Rb1、Rb2、及びRb3は、式(I’)の化合物について定義される通りであり、且つ
Rgは、脱離基である、
化合物、及び
(2)下記の式(III’)
【0050】
【化7】
式中、
n、Rn1、Rn2、Rn3、及びRcは、式(I’)の化合物について定義されている通りである、
の化合物
を溶媒の非存在下で供給し、それによって、該式(II’)の化合物と該式(III’)の化合物が互いに反応して、該式(I’)の化合物を生成すること、及び、
b)該式(I’)の化合物を押出反応器から集めること
を含む方法に関する。
【0051】
幾つかの実施態様において、該式(I)の化合物又は該式(I’)の化合物は、薬学的に許容されるその塩を包含する。
【0052】
「(C1~C24)アルキル基」という語は、本発明の趣旨からすれば、1~24個の炭素原子を有する任意の直鎖状又は分岐状のアルキル基、特にメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソ-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基を意味する。好都合には、これは、メチル基又はt-ブチル基である。
【0053】
「アリール」は、別途規定しない限り、炭素原子6~14個、好ましくは炭素原子6~10個、からなる芳香族単環式又は多環式の炭化水素環構造を意味する。例示的アリール基は、フェニル又はナフチルを含む。例示的には、(C6)アリール基はフェニルである。
【0054】
「N-保護基」という語は、本発明の趣旨からすれば、望ましくない反応からNH2基を保護する任意の置換基、例えばGreene、「Protective Groups In Organic Synthesis」に記載されているN-保護基を意味する(John Wiley & Sons, New York (1981)) and Harrison et al. “Compendium of Synthetic Organic Methods”, Vols. 1-8 (J. Wiley & Sons, 1971-1996))。N-保護基は、カルバメート、アミド、N-アルキル化誘導体、アミノアセタール誘導体、N-ベンジル化誘導体、イミン誘導体、エナミン誘導体、及びN-ヘテロ原子誘導体を含む。特に、N-保護基は、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、フェニルスルホニル基、ベンジル(Bn)基、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジル-オキシカルボニル基、トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基、トリフルオロアセチル基、ベンジルカルバメート(置換又は非置換のいずれか)等を含む。例えば、Bocの場合、中程度の酸、例えばトリフルオロ酢酸、若しくは酢酸エチル中の塩酸を用いて、又はCbzの場合は接触水素化により、比較的容易に除去することができるので、N-保護基としてBoc又はCbzが使用に有利である。好都合に、これはBoc基である。
【0055】
「O-保護基」という語は、本発明の趣旨からすれば、望ましくない反応からヒドロキシル基又はカルボキシル基、すなわち反応性酸素原子を保護する任意の置換基、例えばGreene、「Protective Groups In Organic Synthesis」に記載されているO-保護基、を意味する(John Wiley & Sons, New York (1981)) and Harrison et al. “Compendium of Synthetic Organic Methods”, Vols. 1-8 (J. Wiley & Sons, 1971-1996))。O-保護基は、置換又は非置換のメチル又はアルキルエーテル、例えばメトキシメチル、ベンジルオキシメチル、2-メトキシエトキシメチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、t-ブチル、ベンジル、及びトリフェニルメチル、ベンジルエーテル(置換又は非置換)、テトラヒドロピラニルエーテル、アリルエーテル、置換されたエチル、例えば2,2,2-トリクロロエチル、エーテル、シリルエーテル、又はアルキルシリルエーテル、例えばトリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、及びt-ブチルジフェニルシリル、複素環式エーテル;並びに、ヒドロキシル基とカルボン酸との反応により調製されるエステル、例えばtert-ブチル、ベンジル、又はメチルエステル、カーボネート、特にベンジルカーボネート又はハロアルキルカーボネート、アセテート、プロピオネート、ベンゾエート等を含む。好都合には、これはベンジル基である。
【0056】
その後、式(I’)の化合物は、-OH、-NH2、-SH、-NH、-CONH2、及び-COOH官能基が保護されていないペプチドを得る為に脱保護されうる。
【0057】
語「脱離基」とは、本発明の趣旨からすれば、式(II’)の化合物の-C(O)-Rg基が式(III’)の化合物の基NH-Rn2と反応するのを可能にする任意の化学基を意味する。従って、脱離基は、当業者に周知であり、ペプチド合成の公知の化学反応において、2つのアミノ酸残基間のカップリング反応で使用される任意の基を包含する。脱離基は、例えばN-置換カルバメート、ペンタフルオロフェニルヒドロキシレート、及びスクシンイミジル N-ヒドロキシレートからなる群から選択されうる。脱離基は、イミダゾレート、ベンズイミダゾレート、ベンゾトリアゾール N-ヒドロキシレート、アザベンゾトリアゾール N-ヒドロキシレート、ピリミジンヒドロキシレート、トリアジンヒドロキシレート、パラニトロフェニルヒドロキシレート、及びオキシメート(例えばOxyma(商標))からなる群から選択される基を包含する。脱離基は、ハライド、例えばフロリド、ブロミド、及びクロリド、の群から選択される基をまた包含する。脱離基は、カルボキシレート及びカルボナートの群から選択される基も包含する。それに包含される脱離基は、El-Faham等(2011, Chemical reviews, Vol. 111(11) : 6557-6602)の公開資料において、当業者により見出されうる。
【0058】
「対」の基によって、Rb1とRb2、Rb3とRb2、Rn1とRn2、又はRn3とRn2は、2つの一対の基が、化合物(I’)、 化合物(II’)、又は化合物(III’)の同一のモノマーユニットの一部であり、ここで、一対の基のうちの第1の基(第1の基であるRb1、Rb3、Rn1、Rn3のうちの一つ)が、一対の基のうちの第2の基が結合されている窒素原子に隣接した炭素原子に結合されていることが本明細書において企図されている。
【0059】
従って、式(I’)の化合物は、Rb1基、Rb2基、及びRb3基を含むm個のユニット、及びRn1基、Rn2基、及びRn3基を含むn個のユニットから形成される。Rb1基、Rb2基、及びRb3基を含む各ユニットは本明細書においてアミノ酸残基と呼ばれうるが、より正確な語「アミノアシル基」も使用されうる。Rn1基、Rn2基、及びRn3基を含む各ユニットは、本明細書においてアミノ酸残基と呼ばれうるが、より正確な語「アミノアシル基」も使用されうる。
【0060】
次に、「m+n」個のアミノ酸残基を含む式(I’)の化合物は、本明細書においてペプチドと呼ばれうる。
【0061】
本明細書で別途より詳細に記載されるように、Rb1、Rb2、及びRb3の意味の幾つかの組み合わせは、天然アミノ酸を構成するユニット、すなわち天然アミノアシル基を定義する。また、Rn1、Rn2、及びRn3の意味の幾つかの組み合わせは、天然アミノ酸を構成するユニット、すなわち天然アミノアシル基を定義する。
【0062】
本明細書に記載される連続的ペプチド合成法は、反応押出成形による無溶媒及び非酵素的合成法からなる。
【0063】
本出願に記載されるように、本明細書における連続的ペプチド合成法は、非酵素的ペプチド合成法であり、それは、上記方法は、あらゆる添加された酵素の非存在下で行われることを意味する。本明細書における方法は、無溶媒ペプチド合成の為の純粋に化学的方法である。
【0064】
式(I’)の化合物は、これらm+n個のユニットのポリマー鎖を形成するm+n個のモノマーユニットを含む。
【0065】
本明細書において使用される場合、式(I’)の化合物は、ペプチド、すなわち式(I’)のペプチド、と呼ばれうるが、但し慣用的に、例えば天然ペプチドについて慣用的に使用される命名法を参照すれば、化合物(II’)によりもたらされるm個のモノマーユニットはその「N末端」に位置し、化合物(III’)によりもたらされるn個のモノマーユニットはその「C末端」に位置する。
【0066】
更に、本明細書に記載される連続的ペプチド合成法は、(i)第1の所与のモノマーユニットのRb1基、Rb2基、及びRb3基は、(ii)第2の所与のモノマーユニットのRb1基、Rb2基、及びRb3基とは相違しうるので、相違するモノマーユニットを含む、式(I’)の化合物を得ることを可能にする。同様に、(i)第1の所与のモノマーユニットのRn1基、Rn2基、及びRn3基は、(ii)第2の所与のモノマーユニットのRn1基、Rn2基、及びRn3基とは相違しうる。なおも同様に、(i)第1の所与のモノマーユニットのRb1基、Rb2基、及びRb3基は、(ii)第2の所与のモノマーユニットのRn1基、Rn2基、及びRn3基とは相違しうる。
【0067】
言い換えれば、本明細書に記載される連続的ペプチド合成法に従えば、式(I’)の化合物を含む式(I)の化合物は、m+n個のモノマーユニットのホモポリマーに限定されず、従ってその中に含まれる上記モノマーユニットの少なくとも2つが互いに相違する、m+n個のモノマーユニットのヘテロポリマーを包含する。
【0068】
従って、式(I’)の化合物を含む式(I)の化合物に含まれるユニットが、天然アミノ酸残基からなる幾つかの実施態様において、本明細書に記載される連続的合成法は、アミノ酸配列が決定済みのペプチド、例えば治療有用性のあるペプチドを得ることを可能にする。
【0069】
更に、化合物(I’)を包含する化合物(I)の幾つかの特別な実施態様において、その中に含まれる全てのモノマーユニットが同一であることは明示的に除外される。言い換えれば、化合物(I)又は化合物(I’)のこれらの特別な実施態様に従うと、上記化合物(I)又は化合物(I’)は、ホモポリマー化合物からならない、例えば所与のアミノ酸残基のホモポリマー、例えばポリ-Alaペプチドからならない。
【0070】
本開示書の内容から自明なように、本明細書における連続的ペプチド合成法は、化合物(I)又は化合物(I’)に含まれるユニット鎖の配列の完全な制御を可能にする。言い換えれば、モノマーユニットが天然アミノ酸からなる例示的実施態様において、本明細書における連続的ペプチド合成法は、得られた式(I)又は式(I’)のペプチドのアミノ酸配列について、その完全な制御を可能にする。
【0071】
意外にも、本発明者等は、押出反応器内部で、(i) 式(II)又は式(II’)の活性化した第1のアミノ酸又は活性化した第1のペプチドと、(ii) 式(III)又は式(III’)の反応性の第2のアミノ酸又は反応性の第2のペプチドとを接触させることにより、式(I)又は式(I’)の化合物が、溶媒の非存在下で合成されうることを明らかにした。
【0072】
意外にも、本発明者等は、押出反応器内部で、(i) 式(II)又は式(II’)の活性化した第1のアミノ酸又は活性化した第1のペプチドと、(ii) 式(III)又は式(III’)の反応性の第2のアミノ酸又は反応性の第2のペプチドと、(iii) 塩基とを接触させることにより、式(I)又は式(I’)の化合物が、溶媒の非存在下で合成されうることをまた明らかにした。
【0073】
幾つかの好ましい実施態様において、(i) 添加される、式(II)又は式(II’)の上記第1のアミノ酸又は第1のペプチド、及び(ii) 式(III)又は式(III’)の上記第2のアミノ酸又は上記第2のペプチドは、共に反応して式(I)又は式(I’)の化合物を形成するが、両者は固体形態で、一般的に固体状態で、好ましくは粉末の形態、で提供される。該方法のこれらの好ましい実施態様に従うと、工程a)は、化合物(II)又は化合物(II’)及び化合物(III)又は化合物(III’)の混合物の粘度を低下させる為に、並びに化合物(II)又は化合物(II’)及び化合物(III)又は(化合物III’)の混合を改善する為に、液体添加剤を添加することも含む。
【0074】
幾つかの他の好ましい実施態様において、化合物(II)(若しくは化合物(II’))又は化合物(III)(若しくは化合物(III’))の一方は、液状形態である。例示的には、化合物(II)(若しくは化合物(II’))又は化合物(III)(若しくは化合物(III’))の一方は、上記化合物の溶液からなる。これらの他の実施態様に従うと、反応混合物の適切な粘度は、化合物(II)(若しくは化合物(II’))又は化合物(III)(若しくは化合物(III’))の溶液に含まれる液体添加剤により既に到達しているので、連続的合成法の工程a)の実施は、液体添加剤の添加を必要としない。
【0075】
他の種類の反応器、例えばボールミルデバイス、において発揮される粉砕力とは対照的に、押出反応器中に生じる剪断力は、これら2つの主要な反応物質について、その実質的な粉末粒子サイズの低下を引き起こすことなく、従って活性表面の実質的増加を引き起こすことなく、均質な混合を単に可能にするにすぎないということから、これら2つの主要な反応物質の間の瑕疵なく完全な反応は、なおいっそう驚くべきことである。また、押出機内で反応混合物に適用される機械力は、他の種類の反応器内で適用される力、特にボールミルデバイス内で適用される力と比較した場合、それとは完全に異なる性質、及びそれよりもかなり低い強度を有することが公知であるので、2つの化合物(II)又は化合物(II’)及び化合物(III)又は化合物(III’)の間の瑕疵なく完全な反応は、やはりなおいっそう驚くべきことである。
【0076】
本明細書における連続的合成法の幾つかの好ましい実施態様において、工程a)は、幾つかの例に示すように、添加される塩基の非存在下で行われる。
【0077】
本明細書における連続的合成法の幾つかの好ましい実施態様において、工程a)は、他の例に示されるように、塩基の添加を含む。
【0078】
該方法の幾つかの他の好ましい実施態様において、特に化合物(III)又は化合物(III’)が塩の形態にある実施態様において、上記塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、又はジベンゼンスルホンアミデート塩を含む群から選択されうる。
【0079】
本明細書における連続的方法を用いて得られる、瑕疵なく完全な反応とは、意外ではあるが、押出反応器デバイスの使用は、反応を完了させるのに必要とされる3つの試薬、すなわち(1) 式(II)又は式(II’)の化合物、及び(2) 式(III)又は式(III’)の化合物、或いは(1) 式(II)又は式(II’)の化合物、及び(2) 式(III)又は式(III’)の化合物、及び(3) 塩基の同時接触を可能にすることを意味する。従って、意外ではあるが、本明細書における連続的方法は、初期の反応混合物を形成する為の3つの必要とされる試薬を同時に、又はほぼ同時に添加する場合、高収率ペプチド合成を可能にする。
【0080】
反応押出成形は、食品及びプラスチック産業において幅広く使用されており、また製薬産業では、興味深い技術として識別されてきたが、反応押出成形による高付加価値の化学物質の製造は稀である(Jimenez-Gonzalez et al., Org. Process Res. Dev. 2011, 15, 900; Dhumal et al., Pharm. Res. 2010, 27, 2725; Medina et al., J. Pharm. Sci. 2010, 99, 1693; Daurio et al., Faraday Discuss. 2014, 170, 235; Crawford et al., Chem. Sci. 2015, 6, 1645; Crawford et al., Chem. Commun. 2016, 52, 4215; Karak et al., J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 1856; Crawford et al., Green Chem. 2017, 19, 1507; Crawford et al., Chem. Commun. 2017, , 53, 13067;. Isoni et al., Org. Process Res. Dev. 2017, 21, 992; Ardila-Fierro et al., Green Chem. 2018, DOI: 10.1039/C7GC03205F)。文献で報告された第1の例は、有機性の共結晶の形成について記載した。その後、反応押出成形は、金属-有機-フレームワーク(MOF)、深共晶溶媒(DES)、共有結合-有機-フレームワーク(COF)、及び縮合反応によるα,β-不飽和カルボニル及びイミンの合成に適用された。反応押出成形によるNaBH4を用いたアルデヒドの還元についても記載されている。より最近では、反応押出成形によるα-L-アミノ酸エステル塩酸塩の酵素触媒重合により、ホモ-オリゴ-ペプチドを合成する可能性について記載された(Ardila-Fierro et al., Green Chem. 2018, DOI: 10.1039/C7GC03205F)。それでもなお、重合は単一のα-L-アミノ酸エステルモノマーに基づくので、そのような方法は、ペプチドのα-L-アミノ酸配列の多様性を精密に制御する可能性を一切許容しない。更に、ペプチドカップリングの立体選択性は、試験において実証されなかった。その上、この酵素の利用は、α-D-アミノ酸残基のカップリングにとって不十分であることをこれまでに証明した(Hernandez, J. G. et al., Green Chem. 2017, 19, 2620-2625)。酵素触媒ペプチドカップリングは、α-D-アミノ酸残基をカップリングさせるのに不十分であり、一方、化学的方法は、L及びDアミノ酸残基の両方をカップリングさせるのに等しく十分であることは、当業者に周知である。
【0081】
本発明者等の知識に従えば、押出反応器を使用する、ペプチド合成の為の非酵素的方法について、本明細書において初めて記載される。この方法は、ペプチドのα-アミノ酸配列の多様性を精密に制御することを可能にし、そのようなペプチドの合成が探求される。
【0082】
本明細書に記載される、無溶媒の連続的ペプチド合成法は、反応物質の所望のペプチドへの完全な変換を可能にする。
【0083】
実施例で明らかにされるように、本明細書に記載される連続的合成法は、工業的ペプチド製造の主要な障害を克服する。
【0084】
押出機は、圧縮力及び剪断力を通じて材料の効率的輸送及び混合を可能にする1つ又は2つの回転スクリューを収納するバレルからなる。とりわけ、再循環パイプの存在は、連続的合成法の幾つかの実施態様において、押出成形される材料の滞留時間の制御を可能にすることができる。好都合には、この種の機器は、制御された定常流条件下での作動を可能にする一方、バレルは反応混合物の全体的な押出成形を円滑化する溶融相を誘発する為に加熱されることができる。
【0085】
粘稠性液体及び/又は不溶性固体には適合性を有さない古典的な溶液に基づくフローケミストリーとは異なり、押出機は、粘稠性及び/又は固体含有反応混合物の効率的な混合を可能にする。
【0086】
実施例で明らかにされるように、本明細書に記載される連続的合成法は、アミノ酸ユニットがその初期のエナンチオマー形態を維持したペプチドの製造を可能にする。言い換えれば、実施例で明らかにされるように、本明細書に記載される連続的合成法は、方法の工程a)において所望のアミノ酸エナンチオマーを反応させることにより、所与のアミノ酸のL-エナンチオマー又はD-エナンチオマーを第2のアミノ酸又はペプチド鎖に添加する際に、その制御を可能にする。
【0087】
本明細書における連続的合成法は、当技術分野において公知の様々な押出反応器デバイスにおいて実施されうる。
【0088】
幾つかの実施態様において、本明細書における連続的合成法は、一軸反応デバイスにおいて行われる。
【0089】
好ましい実施態様において、本明細書における連続的合成法は、ツインスクリュー反応デバイスとも呼ばれうる二軸反応デバイスにおいて行われる。
【0090】
いかなる特定の理論にも拘泥するつもりもないが、本発明者等は、二軸反応デバイスを用いた本明細書における連続的合成法の実施は、反応物質、式(II)又は式(II’)の化合物、式(III)又は式(III’)の化合物、及び任意的に塩基それぞれのより緊密な混合を可能にすると考える。
【0091】
幾つかの好ましい実施態様において、工程a)は、反応物質を選択された一定温度において維持することによって行われる。本明細書において使用される場合、「一定」温度とは、(i)押出機バレルの特定の断面を考慮する場合、反応混合物の全質量において実質的に同一であり、(ii)押出機バレルの長さ方向に沿って反応混合物の場所が異なっても実質的に同一である温度を意味する。本明細書において使用される場合、一定温度は、所望の温度目標値と比較して±10%変動する温度値を包含する。
【0092】
本明細書における連続的方法の幾つかの他の好ましい実施態様において、工程a)は、化合物(II)又は化合物(II’)と化合物(III)又は化合物(III’)との間の反応中に、温度を変化させながら行われる。例示的には、工程a)の開始時に化合物(II)又は化合物(II’)、及び化合物(III)又は化合物(III’)、及び任意的に塩基を添加した後、第1の選択された温度Aにおいて最初の反応混合物を維持するようにプログラムされている押出機の供給端において、反応混合物の温度は、押出機デバイスのバレルに沿って上記反応混合物が進行すると共に変化しうるが、例えば反応混合物の温度は、押出デバイスのバレルに沿って上記反応混合物が進行すると共に増加しうる。例示的には、押出機バレル温度は、押出機バレルに沿って反応混合物が進行するのに伴い、反応混合物の温度プロファイルを適用するように、すなわち反応完了の進行に伴い、反応混合物の温度プロファイルを適用するようにプログラムされうる。化合物(II)又は化合物(II’)と、化合物(III)又は化合物(III’)と、任意的に塩基との間の反応を実施する為に、選択された温度プロファイルを適用すれば、反応工程a)のより正確な制御が可能となり、反応物質の一方又は両方の加水分解を減少させ、又は完全に回避しつつ、上記反応の収率を更に増加させうる。連続的方法の工程a)において温度プロファイルを適用することは、例示的には押出機バレルに沿って位置する複数の加熱手段を備えた押出デバイスを使用することにより、当業者により容易に実施されうるが、但しこれらの加熱手段のそれぞれの温度は個別に制御されうる。
【0093】
従って、本明細書における連続的合成法の幾つかの実施態様において、例えば、化合物(II)又は化合物(II’)、及び化合物(III)又は化合物(III’)、及び任意的に塩基の反応混合物は、押出機バレルの供給端に導入される場合、開始温度T1℃に設定され、次に反応混合物の温度は、反応温度T2℃まで、例えばプログラムされた温度勾配のスロープを通じて漸進的に高められた後に、方法の工程b)において、反応混合物又はより正確には合成された化合物(I)を含む材料が、押出成形デバイスから収集される温度を代表しうる温度T3℃に向かって、反応混合物の温度がその後低下するというプロファイルに従い、温度プロファイルが工程a)に適用されうる。
【0094】
押出反応器デバイス内で、反応混合物の温度を精密に制御することが可能になれば、これらの好ましい実施態様が利用可能となる。
【0095】
一般的に、押出反応器デバイスは、鋳造金属スプリットシリンダー、例えば鋳造スチールスプリットシリンダー、を備えており、その中に絶縁抵抗ワイヤーが包埋されている。例示的ヒーターデバイスは、マイカ絶縁体間にサンドイッチされたコーティング型抵抗ワイヤーを含むマイカバンドヒーターであり、支持用のスチールエンクロージャーを有する。押出反応器デバイスの幾つかの実施態様において、ヒーターデバイスは、公知のセラミックヒーターからも構成されうる。使用されるヒーターデバイスの種類を問わず、押出機バレルの横及び縦方向の両方を通じて、高エネルギー移送能力及び反応混合物の均質な温度の制御を可能にする為に、ヒーターは、押出機バレルと密接に接触している。
【0096】
本明細書における連続的合成法を実施する際に、そのような精密な温度制御、特に反応混合物の質量全体を通じて均質に温度制御するというそのような制御は、得られたペプチドの製造収率に関する連続的合成法の再現性、そのように合成されたペプチドのエナンチオマー純度、並びに反応物質の加水分解レベルが低いこと、例示的には、式(II)又は式(II’)の化合物の加水分解が低下していること又は検出さえ不可能であることの再現性を確実にすることを含め、きわめて再現性のある様式で上記連続的方法の実施を可能にする。
【0097】
反応混合物のそのような精密且つ一定した温度制御は、他の種類の反応器、典型的にはボールミリング反応器を用いたのでは行われることはできない。
【0098】
実施例で明らかにされるように、当業者は、望ましい反応条件の種類に従い、反応温度、任意的に反応温度プロファイルを適合しうる。実施例に含まれる実験データは、特に探求される反応期間に従い、本明細書における連続的合成法を実施する為の最適な温度条件について、当業者に完全なガイダンスをもたらす。
【0099】
しかしながら、好ましい実施態様において、上記当業者は、反応物質の加水分解を最低限に抑えること、例示的には式(II)の化合物の加水分解を最低限に抑えることを可能にする温度条件を使用する。
【0100】
幾つかの実施態様において、工程a)は、30℃~100℃の温度で行われる。
【0101】
幾つかの実施態様において、工程a)は、35℃~70℃の温度で行われる。
【0102】
幾つかの実施態様において、工程a)は、55℃~100℃の温度、例えば55℃~90℃、で行われる。
【0103】
本明細書の実施例は、当業者が適切な反応条件を選択するのを可能にするが、該反応条件は、(i)反応混合物の温度、及び(ii)工程a)の持続時間に依存する。本明細書の実施例に示されるように、反応混合物の温度を高めれば、得られた式(I)又は式(I’)の化合物を得る為の反応時間、すなわち工程a)の持続時間、の短縮が可能となる。
【0104】
連続的合成法の工程a)の他の一般的な条件、特に、例えば押出機バレルの長さ、スクリューの数、1以上のスクリュープロファイル、並びに1以上の押出機スクリューの回転スピードを含む、押出機反応デバイスの種類は当業者により容易に決定されうる。
【0105】
幾つかの実施態様において、方法の工程a)の持続時間は30秒~120分、好都合には1分~20分、である。
【0106】
実施例で明らかにされるように、1以上の押出機スクリューの回転スピード値を増加させると、所与の反応期間における反応収率が増加し得る。例示的スクリュー回転スピード値は、本明細書の実施例に開示されている。
【0107】
例示的には、スクリュー回転スピード値は、特に工程a)における温度条件に応じて、30rpm(1分間当たりの回転数)~200rpm、例えば50rpm~150rpm、でありうる。
【0108】
連続的合成法の工程a)の最適な反応条件は、本明細書の実施例、及び当業者の一般的な技術的知識に照らして、例えば押出成形バレルの長さ方向に沿った反応混合物の進行スピードを考慮して、バレル長及びスクリュープロファイルが反応に適合され、押出成形バレルの出口において式(I)の化合物を集める工程b)を実施する際に、所望のペプチドが効率的に取得されるような押出反応器デバイスを選択する等して、当業者により容易に決定されうる。
【0109】
方法の幾つかの実施態様において、反応がその終了時に完全に生ずるように、反応混合物が十分に滞留する時間を許容しないバレル、長さ又はスクリュープロファイルを備えた押出反応器が使用されうる。これらの実施態様において、押出成形バレル内を反応混合物が更に通過する間に反応が完了するように、再循環パイプを含む押出成形バレルを使用するのが好ましい。これらの実施態様に従うと、式(I)の化合物が生成するように、式(II)又は式(II’)の化合物と、式(III)又は式(III’)の化合物との間の反応が完了するまで、反応混合物の再循環が行われる。これらの特別な実施態様の幾つかの実施態様に従うと、反応混合物は、押出機バレルの供給端に向かって再循環されうる一方、新鮮な反応物質、すなわち化合物(II)又は化合物(II’)、化合物(III)又は化合物(III’)、及び任意的に液体添加剤、及び/又は塩基は、押出機バレル中に継続して添加される。
【0110】
好ましい実施態様において、押出成形バレルを通じて反応混合物が1回通過した後、式(I)又は式(I’)の化合物が生成するように、式(II)又は式(II’)の化合物と、式(III)又は式(III’)の化合物との間の反応を完了させるのに十分である長さ及びスクリュープロファイルの押出成形バレルが使用される。
【0111】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、工程a)は、30℃~100℃、例えば55℃~100℃、の温度で、30秒~20分の期間中に、ツインスクリュー押出デバイスを使用し、50rpm~150rpmの回転スピードを包含する、30rpm(1分間当たりの回転数)~200rpmの回転スピードを適用することによって実施されうる。
【0112】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、化合物(II’)のRb1基及びRb2基が、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成する場合、上記複素環はピロリジニル基である。これは、式(II’)の化合物がプロリル残基を含む連続的合成法の実施態様を包含する。上記Rb1基及びRb2基が、Rg基に直接結合されているユニットに属する、これらの実施態様のうちの特定の実施態様において、化合物(II’)が活性化プロリル末端残基、例えば活性化プロリルC末端残基、を含む連続的ペプチド合成法の実施態様を包含する。
【0113】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、化合物(II’)のRb3基及びRb2基が、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成する場合、上記複素環はピロリジニル基である。これは、式(II’)の化合物がプロリル残基を含む連続的合成法の実施態様を包含する。上記Rb3基及びRb2基がRg基に直接結合されているユニットに属する、これらの実施態様のうちの特定の実施態様において、化合物(II’)が活性化プロリル末端残基、例えば活性化プロリルC末端残基、を含む連続的ペプチド合成法の実施態様を包含する。
【0114】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、化合物(III’)のRn1基及びRn2基が、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成する場合、上記複素環はピロリジニル基である。これは、式(III’)の化合物がプロリル残基を含む連続的合成法の実施態様を包含する。
【0115】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、化合物(III’)のRn3基及びRn2基が、それらが結合されている炭素原子及び窒素原子それぞれと共に、少なくとも1つの窒素原子を含む複素環を形成する場合、上記複素環はピロリジニル基である。これは、式(III’)の化合物がプロリル残基を含む連続的合成法の実施態様を包含する。
【0116】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、化合物(I’)又は化合物(II’)に含まれるモノマーユニットにおいて、従ってRb1基とRb3基の対について、Rb1基又はRb3基のうちの一方は、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH-C(NH)(NH2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、Rb1基及びRb3基のうちの他方の基は水素原子である。これらの実施態様のうちの幾つかの実施態様において、Rb2は水素原子である。
【0117】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、化合物(I’)又は化合物(II’)に含まれるモノマーユニットにおいて、Rb1又はRb3は、水素原子、メチル基、-CH2-CH2-CH2-NH-C(=NH)NH2、-CH2-C(=O)-NH2、-CH2-COOH、-CH2-SH、-(CH2)2-C(=O)-NH2、-(CH2)2-COOH-CH2-イミダゾリル、-CH(CH3)-CH2-CH3、-CH2-CH(CH3)2、-(CH2)4-NH2、-CH2-CH2-S-CH3、-CH2-フェニル、-CH2OH、-CH(OH)-CH3、-CH2-インドリル、-CH2-フェニル-OH、及びイソプロピル基からなる群から選択され、Rb1及びRb3のうちの他方は水素原子である。これらの実施態様のうちの幾つかの実施態様において、Rb2は水素原子である。これは、式(II’)の化合物が、グリシン残基、アラニン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リジン残基、メチオニン残基、フェニルアラニン残基、セリン残基、トレオニン残基、トリプトファン残基、チロシン残基、及びバリン残基からなる群から選択される1以上のアミノ酸残基を含む実施態様を包含する。
【0118】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、化合物(I’)又は化合物(III’)に含まれるモノマーユニットにおいて、従ってRn1とRn3基の対について、Rn1基又はRn3基の一方は、水素原子、非置換の(C1~C6)アルキル基;又は非置換の若しくは-OH基によって置換されたアリール基、-OH、-COOH、-CONH2、-SH、-S-(C1~C6アルキル)、-NH2、-NH-C(NH)(NH2)、-イミダゾリル及びインドリルの中から選択される基によって置換された(C1~C6)アルキル基を表し、Rn1基及びRn3基のうちの他方の基は水素原子である。これらの実施態様のうちの幾つかの実施態様において、Rn2は水素原子である。
【0119】
本明細書における連続的合成法の幾つかの実施態様において、化合物(I’)又は(III’)に含まれるモノマーユニットにおいて、Rn1又はRn3は、水素原子、メチル基、-CH2-CH2-CH2-NH-C(=NH)NH2、-CH2-C(=O)-NH2、-CH2-COOH、-CH2-SH、-(CH2)2-C(=O)-NH2、-(CH2)2-COOH、-CH2-イミダゾリル、-CH(CH3)-CH2-CH3、-CH2-CH(CH3)2、-(CH2)4-NH2、-CH2-CH2-S-CH3、-CH2-フェニル、-CH2OH、-CH(OH)-CH3、-CH2-インドリル、-CH2-フェニル-OH、イソプロピル基からなる群から選択され、Rn2は水素原子である。これらの実施態様のうちの幾つかの実施態様において、Rn2は水素原子である。これは、式(III)の化合物が、グリシン残基、アラニン残基、アルギニン残基、アスパラギン残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、グルタミン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リジン残基、メチオニン残基、フェニルアラニン残基、セリン残基、トレオニン残基、トリプトファン残基、チロシン残基、及びバリン残基からなる群から選択される1以上のアミノ酸残基を含む実施態様を包含する。
【0120】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの好ましい実施態様において、工程a)は、塩基の添加を含まない。
【0121】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの他の好ましい実施態様において、工程a)は塩基の添加を含む。これらの好ましい実施態様において、工程a)において使用される塩基は、任意の公知の無機塩基、例えば炭酸塩及びリン酸塩、からなる群から選択されうる。これらの好ましい実施態様のうちの幾つかの他の実施態様において、塩基は、水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、並びに水酸化バリウム又はカルシウムを含む群から選択される水酸化物、でありうる。これらの好ましい実施態様のうちの幾つかの更なる実施態様において、塩基は、有機塩基、例えばトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ナトリウム又はカリウムメトキシド、水酸化テトラブチルアンモニウム、ピリジン、ナトリウム又はカリウムビス(トリメチルシリル)アミドを含む群から選択される塩基、でありうる。
【0122】
従って、本明細書における連続的合成法の幾つかの好ましい実施態様において、工程a)は、塩基の添加を含む。
【0123】
該方法の幾つかの他の好ましい実施態様において、特に化合物(III)又は(III’)が塩の形態にある実施態様において、上記塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、又はジベンゼンスルホンアミデート塩を含む群から選択されうる。
【0124】
これらの実施態様において、脱プロトン化した化合物(III)又は(III’)が生成し、それが化合物(II)又は(II’)との反応にとってきわめて反応性となるように、添加された塩基は、化合物(III)又は(III’)と反応する。
【0125】
連続的合成法の工程a)において使用される塩基が、炭酸塩の中から選択される実施態様において、上記炭酸塩が好ましくは、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸セシウムからなる群から選択される。
【0126】
本明細書における連続的合成法の工程a)のこれらの実施態様において添加される塩基の量は、添加される塩基の種類を問わず、当業者により容易に決定されうる。当業者は、化合物(III)又は化合物(III’)の脱プロトン化を可能にする塩基の量を容易に決定しうる。
【0127】
例示的には、式(III)又は式(III’)の化合物の脱プロトン化を引き起こす、工程a)において使用される塩基の種類を決定する為に、当業者は、式(III)又は式(III’)の化合物のpKaを参照しうる。例示的には、Rc基を含むユニットが、天然アミノ酸のメチルエステルの塩酸塩からなる実施態様において、塩基NaHCO3は、天然アミノ酸のメチルエステルの塩酸塩を脱プロトン化するのに十分に塩基性であり、従って天然アミノ酸のメチルエステルの遊離塩基が式(II)又は式(II’)の化合物と反応するのを可能にする。
【0128】
幾つかの実施態様において、工程a)の開始時に添加されうる選択された塩基は、固体状態にあり、好ましくは粉末の形態、にある。
【0129】
幾つかの他の実施態様において、工程a)の開始時に添加されうる選択された塩基は、液状形態にあり、例えば液体の塩基溶液である。実施例で明らかにされるように、式(II)又は式(II’)の化合物と、式(III)又は式(III’)の化合物との間の反応は化学量論的である。
【0130】
従って、本明細書に記載される連続的合成法の好ましい実施態様において、式(II)又は式(II’)、及び式(III)又は式(III’)の化合物それぞれについて、実質的に等モル量が提供され、工程a)の開始時に押出反応器にフィードされる。
【0131】
本明細書において使用される場合、2つの化合物の、例えば式(II)又は式(II’)、及び式(III)又は式(III’)の化合物の「実質的に等モル量」とは、最も多量に存在する化合物のモル数が、他方の化合物のモル数よりも、最大で15%過剰であることを意味する。
【0132】
本明細書に記載される連続的合成法の工程a)の好ましい実施態様において、式(II)又は式(II’)の化合物は、式(III)又は式(III’)の化合物と比較して10%モル過剰で提供される。
【0133】
塩基が方法の工程a)において添加される更に好ましい実施態様において、塩基は、工程a)において、式(II)又は式(II’)の化合物、及び式(III)又は式(III’)の化合物のうちで最も多量に存在する化合物の各モル量と比較して、やはり「実質的に等モル量」で添加される。
【0134】
これらの更に好ましい実施態様に従うと、塩基は式(II)又は式(II’)の化合物、及び式(III)又は式(III’)の化合物の両方と比較してモル過剰で添加されうる。
【0135】
例示的には、本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、反応物質は、工程a)において、(i) 化合物(II)又は化合物(II’)につき1モル当量、(ii) 化合物(III)又は化合物((III’)につき1.1モル当量、及び塩基、例えば炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウム、につき1.2モル当量の各モル量で添加されうる。
【0136】
式(I)若しくは式(I’)の化合物、又は式(II)若しくは式(II’)の化合物の幾つかの実施態様において、Raは、互いに独立して、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、及びニトロ-ベラトリルオキシカルボニルからなる群から選択される。
【0137】
式(I)若しくは式(I’)の化合物、又は式(III)若しくは式(III’)の化合物の幾つかの実施態様において、Rc基は-O-Rdを意味し、但し、Rdはベンジル基である。
【0138】
式(I)の化合物、又は式(III)若しくは式(III’)の化合物の幾つかの実施態様において、Re及びRfは、互いに独立して、水素原子、(C1~C24)アルキル基、1以上のフェニル基で置換されたメチル基、非置換の(C6~C10)アリール基、又はN-保護基、例えばtert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、及びニトロ-ベラトリルオキシカルボニル、からなる群から選択される。
【0139】
式(I)若しくは式(I’)の化合物、又は式(III)若しくは式(III’)の化合物の幾つかの実施態様において、Re基及びRf基の一方、又はRe基及びRf基の両方は、ベンジル基を表す。
【0140】
式(I)若しくは式(I’)の化合物、又は式(II)若しくは式(II’)の化合物の幾つかの実施態様において、Raはtert-ブチルオキシカルボニルである。
【0141】
脱離基Rgは、N-置換カルバメート、ペンタフルオロフェニルヒドロキシレート、スクシンイミジル N-ヒドロキシレート、イミダゾレート、ベンズイミダゾレート、ベンゾトリアゾール N-ヒドロキシレート、アザベンゾトリアゾール N-ヒドロキシレート、ピリミジンヒドロキシレート、トリアジンヒドロキシレート、パラニトロフェニルヒドロキシレート、オキシメート(例えばOxyma(商標))、フロリド、ブロミド、クロリド、カルボキシレート及びカルボナートからなる群から選択されうる。
【0142】
幾つかの実施態様において、活性化したRg基は、ヒドロキシスクシンイミジル基(本明細書において「OSu」とも呼ばれる)からなる。
【0143】
幾つかの実施態様において、式(I’)又は式(II’)の化合物のRb1基及びRb3基、並びに式(I’)又は式(III’)の化合物のRn1基及びRn3基において、そのNH2、NH、COOH、CONH2、OH、SHの基は、1以上の、同一若しくは異なるN-保護基、O-保護基又はS-保護基によって保護されている。これらの実施態様のうちの幾つかの実施態様において、N-保護基はRa基と同一であり、この場合全てのN-保護基は、所望であれば同時に除去されうる。幾つかの他の実施態様において、N-保護基のうちの1以上は、Ra基と相違し又は相違せず、この場合Ra及び他方のN-保護基のうちの1以上は、選択的に除去されうる。
【0144】
幾つかの好ましい実施態様において、式(III)又は式(III’)の化合物は、工程a)において塩の形態で提供される。式(III)又は式(III’)の化合物の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、及びジベンゼンスルホンアミデートからなる群から選択されうる。グリシン酸ナトリウムについての例示が、実施例に開示されている。
【0145】
式(I)の化合物又は式(I’)の化合物に含まれうるモノマーユニットの数、例えばアミノ酸残基の数に厳格な制限は存在しない。本明細書の実施例は、ジペプチド及びトリペプチドからなる式(I)の化合物又は式(I’)の化合物を生成する為の連続的合成法の実施について例示する。製造される式(I)の化合物又は式(I’)の化合物の長さに伴って、反応収率は検出可能に減少しないことが特筆される。
【0146】
式(I)の化合物又は式(I’)の化合物、及び式(II)の化合物又は式(II’)の化合物の場合、mは1以上の整数であり、1~500のn値、1~200のn値、1~100のn値、1~50のn値、1~40のn値、1~30のn値、1~20のn値、及び1~10のn値、を包含する。
【0147】
式(I)の化合物又は式(I’)の化合物、及び式(III)の化合物又は式(III’)の化合物の場合、nは1以上の整数であり、1~500のn値、1~200のn値、1~100のn値、1~50のn値、1~40のn値、1~30のn値、1~20のn値、及び1~10のn値を包含する。
【0148】
幾つかの実施態様において、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、及び100からなる群から選択される数値を有する整数である。
【0149】
幾つかの実施態様において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、及び100からなる群から選択される数値を有する整数である。
【0150】
実施例は、mが1であり、且つnが1又は2である連続的合成法の実施態様について例示する。
【0151】
本明細書に記載される連続的合成法の幾つかの実施態様において、特に化合物(II)又は化合物(II’)、化合物(III)又は化合物(III’)、及び任意的に塩基が、固体材料の形態で、工程a)において添加されるその実施態様において、反応混合物を液状化させ、従って押出反応器内の反応混合物のホモジナイゼーションを促進する為、従って式(II)の化合物又は式(II’)の化合物と、式(III)の化合物又は式(III’)の化合物と、任意的に塩基との間の反応を改善する為に、液体添加剤がまた、工程a)の開始時に提供される。
【0152】
工程a)の開始時に添加される液体添加剤は、化合物(II)又は化合物(II’)と、化合物(III)又は化合物(III’)と、任意的に塩基との間の化学反応を化学的に干渉しない、従って上記化学反応に関して中性の液体(neutral liquid)としてふるまう。
【0153】
液体添加剤は、工程a)において使用される場合、アセトン、水、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メタノール、メチルエチルケトン、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、1以上のヘキサン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチル-tert-ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、イソオクタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、キシレン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチルピロリジノン、酢酸、エチレングリコール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジメチルアセテート、ジオキサン、ジメトキシエタン、グリセロール、又は反応混合物の粘度を低下させる任意の他の液体からなる群から選択されうる。液体添加剤は、上記液体のうちの2つ又はそれ超の混合物であることもできる。
【0154】
本明細書に記載される連続的合成法の工程a)の開始時に添加される液体添加剤の量は、当業者により容易に決定されうる。液体添加剤の適切な量は、反応混合物、一般的に粉末の反応混合物を十分に液状化しなければならず、それによって、押出反応器デバイス内で処理される際に容易にホモジナイズされる反応混合物ペーストが形成される。適切な量の液体添加剤の例示的実施態様は、本明細書の実施例において与えられる。
【0155】
幾つかの実施態様において、液体添加剤は、(1) 式(II)の化合物又は式(II’)の化合物、(2) 式(III)の化合物又は式(III’)の化合物、及び(3) 任意的に塩基、例えば炭酸塩、からなる固体1グラム当たり0.05mL~1.0mLの量、例えば0.08mL/g~0.3mL/g、又は例えば0.1mL/g~0.2mL/g、で添加される。
【0156】
工程a)において使用される液体添加剤は、溶媒からならないものと理解されなければならない。
【0157】
本明細書において使用される場合、「溶媒」は、試薬を完全に可溶化し、且つ化学反応に直接寄与しない製品である。例示的には、本明細書に記載される連続的合成法で使用される塩基は、化合物(III)又は化合物(III’)の脱プロトン化を引き起こして該化合物が化合物(II)と反応するのを促進するので、溶媒ではなく、むしろ反応物質化合物である。
【0158】
言い換えれば、上記液体添加剤は、工程a)で使用される試薬を完全に溶解せず、従って式(II)又は式(II’)の化合物、式(III)又は式(III’)の化合物、及び後者が存在する場合には、塩基を溶解しない。
【0159】
つまり、液体添加剤の主要な効果は、式(II)又は式(II’)の化合物、式(III)又は式(III’)の化合物、及び後者が存在する場合には、塩基のみを含む反応混合物の粘度を低下させるということになる。
【0160】
本発明の別の観点において、式(I)又は式(I’)の化合物は、2つの化合物(但し、2つの反応物質のそれぞれは複数のアミノ酸ユニットを含む)を反応させることにより取得されうる。例示的には、本発明の他のこの観点に従えば、2つのトリペプチドは、6つのアミノ酸ユニットを含む式(I)又は式(I’)の化合物を形成する為に共に反応しうる。
【0161】
本発明のなおも別の観点において、式(I)又は式(I’)の化合物は、3つの化合物を反応させることにより取得されうるが、その場合、2つの反応物質のそれぞれ;すなわち、化合物(II)及び(III)は、複数のアミノ酸ユニットを含み、及び第3の反応物質は塩基である。例示的には、本発明の他のこの観点に従えば、2つのトリペプチドは、6つのアミノ酸ユニットを含む式(I)又は式(I’)の化合物を形成する為に共に反応しうる。
【0162】
本発明は、いかなる場合においても下記の実施例に限定されることなく、更に下記に記載されている。
【実施例】
【0163】
実施例1:制御された温度での反応押出成形による、無溶媒の連続的ペプチド合成の一般的な方法
反応押出成形をペプチド合成に適用することを考慮し、本発明者等は、Boc-Trp-OSuをHCl・H-Gly-OMe及びNaHCO3と溶媒の非存在下で反応させることによって、ジペプチドBoc-Trp-Gly-OMeを生成する共回転ツインスクリュー押出機(MC15マクロコンパウンダー、Xplore(商標))の能力を試験することを決定した。それでもなお、溶融相が存在せずスクリューの適切な回転を妨害することに起因して、反応混合物は押出成形されることができなかった。押出成形バレルを100℃に加熱することは問題を解決しなかった。押出機バレル内での反応混合物の流動性を改善する為に、様々な液体添加剤がスクリーニングされ、最良の液体添加剤としてアセトンを識別するに至った。次に、Boc-Trp-OSu(1.0当量)、HCl・H-Gly-OMe(1.1当量)、及びNaHCO3(1.2当量)が、アセトン(η=0.15mL/g)(ηは、液体の容積(mL)を固体の総質量(グラム)で割り算した比として定義される)と共に、40℃で稼働する押出機に、スクリュー速度は50rpmに固定されたまま注入された。反応混合物の再循環を伴う5分間の混合後、押出成形物が急冷され、そしてHPLCにより分析され、73%の転化率を示した(下記の表1、項目1)。スクリュー速度を150rpmまで及び温度を70℃まで増加させることは、転化率に対してプラスの効果を有した(表1、項目2及び3)。バレルが100℃に加熱された場合に転化率は93%に達したが、Boc-Trp-OSuからBoc-Trp-OHへの部分的な加水分解をもたらした(表1、項目4)。反応混合物が40℃及び150rpmで10分間再循環された場合、Boc-Trp-OSuの加水分解に起因するBoc-Trp-OHの痕跡なしに、Boc-Trp-OSuの完全な転化が得られた。
【0164】
【0165】
押出成形物の古典的な精密検査の後、Boc-Trp-Gly-OMeが、85%の収率で生成され、鏡像異性体過剰率が完全に保持された(>99% ee;表1、項目5)。
【0166】
実施例2:様々なエナンチオマー的に純粋なジペプチド及びトリペプチドの合成
次に、これらの最適化された反応条件は、Boc-Trp-Phe-OMeの合成に適用され、それは61%の収率且つジアステレオマー過剰率>99%で単離されることができた(下記の表2、項目1)。喜ばしいことに、押出機内で反応混合物を再循環させる必要なしに、Boc-Asp(OBzl)-Phe-OMeが取得されるために、Boc-Asp(OBzl)-OSuは、Boc-Trp-OSuよりもいっそう反応性であった。押出成形バレル内で1.5分という滞留時間は、Boc-Asp(OBzl)-OSuを完全変換するのに十分であり、92%の収率且つ>99% deでBoc-Asp(OBzl)-Phe-OMeをもたらした(表2、項目2)。無溶媒気体状HCl処置によってBocを除去後、HCl・H-Trp-Gly-OMe及びHCl・H-Trp-Phe-OMeが押出機内でBoc-Asp(OBzl)-OSuと反応された。対応するBoc-Asp(OBzl)-Trp-Gly-OMe及びBoc-Asp(OBzl)-Trp-Phe-OMeトリペプチドが、86%及び89%の収率で且つ優れた純度(それぞれ96%及び94%;表2、項目3及び項目4)で生成された。
【0167】
【0168】
実施例3:溶液状態での且つ反応押出成形によるペプチド合成の比較分析
ボールミル及び溶液状態での合成による反応押出成形プロセスの効率を比較する為に、本発明者等は、これらのプロセスのそれぞれについて空時収率(STY)を計算した。空時収率は、単位反応時間における単位反応器容積当たりの最終生成物の量として定義され(g・cm3・日-1として表される)、それ故に、プロセスの増強を評価する為の非常に有用なツールである。比較された2つのジペプチドについて、STYが、ボールミル及び溶液合成の場合よりも、特に溶液と比較すると3桁を超えるほど断然に高かった(表3、項目1及び3)。一方で、生成される廃棄物の量は、ボールミル又は溶液状態での合成と比較して劇的に低下した。反応押出成形を使用する場合、E-ファクターは0.9~1.2であったが、このメトリックは、ボールミル合成において常に上回り、且つ溶液状態では12~33倍高かった(下記の表3)。
【0169】
【0170】
実施例4:Boc(L)-Trp-Gly-OMe(CAS 57769-48-9)の合成
Boc-(L)-Trp-OSu(6.27g、15.617mmol、1.0当量)、NaHCO3(1.57g、18.740mmol、1.2当量)、HCl・H-Gly-OMe(2.16g、17.179mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.3当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。10分間の再循環後、バルブが開放され、そして褐色ペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた褐色固体(m=6.64g、収率100%の場合にはm=4.36gの純粋なペプチドを含有する)が、EtOAc(200mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液を用いて2回(2×75mL)、そして1Mの水性NaOH溶液を用いて2回(2×75mL)洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、淡黄色固体として所望の生成物を得た(m=3.72g、収率85%、STY:48.02g・cm-3・日-1)。
【0171】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=15.617×0.85×375.43=5.0g
反応時間:10分=6.94×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:5.00/(15×6.94×10-3)=48.02g・cm-3・日-1
【0172】
E-ファクターの計算の詳細
Boc-(L)-Trp-OSu:6.27g
HCl・H-Gly-OMe:2.16g
NaHCO3:1.57g
アセトン:1.5mL×0.784g・mL-1=1.18g
反応物質の総量:6.27+2.16+1.57+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18/5.00)-1=1.24
【0173】
【0174】
鏡像異性体過剰率がHPLC分析により決定され(Chiralpak IE、ヘプタン/エタノール:70/30)、流速=1mL/分、T=26℃、λ=220.4及び230.4nm、tr=7.40分(D)及びtr=8.34分(L)、>99% eeであった。
【0175】
実施例5:Boc-Trp-(L)-Phe-OMe(CAS 72156-62-8)の合成
Boc-(L)-Trp-OSu(5.43g、13.523mmol、1.0当量)、NaHCO3(1.36g、16.228mmol、1.2当量)、HCl・H-(L)-Phe-OMe(3.21g、14.876mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.5当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。10分間の再循環後、バルブが開放され、そして白色ペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=4.96g、収率100%の場合にはm=3.44gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(150mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液を用いて1回(50mL)、そして1Mの水性NaOH溶液を用いて2回(2×70mL)洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、白色固体として所望の生成物を得た(m=2.11g、収率61%、STY:36.98g・cm-3・日-1)。
【0176】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=13.523×0.61×465.55=3.85g
反応時間:10分=6.94×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:3.85/(15×6.94×10-3)=36.98g・cm-3・日-1
【0177】
E-ファクターの計算の詳細
Boc-(L)-Trp-OSu:5.43g
HCl・H-(L)-Phe-OMe:3.21g
NaHCO3:1.36g
アセトン:1.5mL×0.784g・mL-1=1.18g
反応物質の総量:5.43+3.21+1.36+1.18=11.18g
ペプチドの推定された総質量:3.85g
E-ファクター=(11.18/3.85)-1=1.90
【0178】
【0179】
ジアステレオアイソマー過剰率がHPLC分析により決定され(Chromolith(商標)高分解能RP-18e 50-4.6mm、CH3CN/0.1%TFA中H2O/0.1%TFA:0~100%)、流速=3mL/分、T=26℃、λ=214nm、tr=2.81分(L,L)及びtr=2.90分(D,L)、>99% deであった。
【0180】
実施例6:Boc-(L)-Asp(OBzl)-(L)-Phe-OMe(CAS 104413-52-7)の合成
Boc-(L)-Asp(OBzl)-OSu(5.54g、13.185mmol、1.0当量)、NaHCO3(1.32g、15.822mmol、1.2当量)、HCl・H-(L)-Phe-OMe(3.13g、14.503mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.5当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定された。試薬を押出機中に導入開始後、白色ペーストが押出機から漏出し始めた(滞留時間:1分30秒)。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=5.60g、収率100%の場合にはm=3.93gの純粋なペプチドを含有する)が、EtOAc(100mL)中に懸濁され、そして、1Mの水性塩化水素溶液を用いて2回(2×30mL)洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、白色粉末として所望の生成物を得た(m=3.62g、収率92%、STY:376.51g・cm-3・日-1)。
【0181】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=13.185×0.92×484.55=5.88g
反応時間:1.5分=1.04×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:5.88/(15×1.04×10-3)=376.51g・cm-3・日
【0182】
E-ファクターの計算の詳細
Boc-(L)-Asp(OBzl)-OSu:5.54g
HCl・H-(L)-Phe-OMe:3.13g
NaHCO3:1.33g
アセトン:1.5mL×0.784g・mL-1=1.18g
反応物質の総量:5.54+3.13+1.33+1.18=11.18g
ペプチドの推定された総質量:5.88g
E-ファクター=(11.18/5.88)-1=0.90
【0183】
【0184】
ジアステレオアイソマー過剰率がHPLC分析により決定され(Chiralpak IC、ヘプタン/エタノール:90/10)、流速=1mL/分、T=26℃、λ=210.4及び220.4nm、tr=14.06分(D,L)及びtr=15.79分(L,L)、>99% deであった。
【0185】
実施例7:Boc-(L)-Asp(Bzl)-(L)-Trp-Gly-OMeの合成
Boc-(L)-Asp(OBzl)-OSu(4.87g、11.572mmol、1.0当量)、NaHCO3(1.12g、13.889mmol、1.2当量)、HCl・H-(L)-Trp-(L)-Phe-OMe(3.97g、12.729mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.8当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。10分間の再循環後、バルブが開放され、そして褐色で粘着性のペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた褐色固体(m=1.60g、収率100%の場合にはm=1.17gの純粋なペプチドを含有する)が、EtOAc(50mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液を用いて2回(2×25mL)、1Mの水性NaOH溶液を用いて2回(2×25mL)洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、褐色固体として所望の生成物を得た(m=1.00g、収率86%、STY:55.16g・cm-3・日-1)。
【0186】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=11.572×0.86×580.64=5.75g
反応時間:10分=6.94×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:5.75/(15×6.94×10-3)=55.16g・cm-3・日-1
【0187】
E-ファクターの計算の詳細
Boc-(L)-Trp-OSu:4.87g
HCl・H-Trp-Gly-OMe:3.97g
NaHCO3:1.12g
アセトン:1.5mL×0.784g・mL-1=1.18g
反応物質の総量:4.87+3.97+1.12+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18/5.75)-1=0.95
【0188】
【0189】
実施例8:Boc-(L)-Asp(Bzl)-(L)-Trp-(L)-Phe-OMeの合成
Boc-(L)-Asp(OBzl)-OSu(4.36g、10.381mmol、1.0当量)、NaHCO3(1.05g、12.457mmol、1.2当量)、HCl・H-(L)-Trp-(L)-Phe-OMe(4.59g、11.419mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、2.0当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。10分間の再循環後、バルブが開放され、そして褐色で粘着性のペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた褐色固体(m=1.65g、収率100%の場合にはm=1.24gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(50mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液を用いて2回(2×25mL)、そして1Mの水性NaOH溶液を用いて2回(2×25mL)洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、淡黄色固体として所望の生成物を得た(m=1.10g、収率89%、STY:59.52g・cm-3・日-1)。
【0190】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=10.381×0.89×670.76=6.20g
反応時間:10分=6.94×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:6.20/(15×6.94×10-3)=59.52g・cm-3・日-1
【0191】
E-ファクターの計算の詳細
Boc-(L)-Trp-OSu:4.36g
HCl・H-Trp-Phe-OMe:4.59g
NaHCO3:1.05g
アセトン:1.5mL×0.784g・mL-1=1.18g
反応物質の総量:4.36+4.59+1.05+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18/6.20)-1=0.80
【0192】
【0193】
実施例9:Boc-(L)-Trp-Gly-OHの合成
Boc-(L)-Trp-OSu(6.74g、16.792mmol、1.0当量)、H-Gly-ONa(3.26g、33.585mmol、2.0当量)、及び蒸留水(1.5mL、η=0.15μL/mg、5.0当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。3分間の再循環後、バルブが開放され、そして白色ペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=7.05g、収率100%の場合にはm=4.03gの純粋なペプチドを含有する)が蒸留水(100mL)中に溶解され、1Mの水性塩酸塩溶液を用いてpH=3まで酸性化された。得られた沈殿物が濾過され、脱イオン水を用いて2回洗浄され、P2O5上、減圧下で乾燥すると、白色粉末として所望の生成物を得た(m=3.71g、収率92%、STY:177.14g・cm-3・日-1)。
【0194】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=16.792×0.92×361.4=5.58g
反応時間:3分=2.1×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:5.58/(15×2.0×10-3)=177.14g・cm-3・日
【0195】
E-ファクターの計算の詳細
Boc-(L)-Trp-OSu:6.74g
H-Gly-ONa:3.26g
水:1.5mL×1g・mL-1=1.5g
反応物質の総量:6.74+3.26+1.50=11.50g
ペプチドの推定された総質量:5.58g
E-ファクター=(11.50/5.58)-1=1.06
【0196】
【0197】
鏡像異性体過剰率は、HPLC分析により決定され(Chiralpak ID-H、ヘプタン/エタノール+0.1%TFA:60/40)、流速=1mL/分、T=26℃、λ=220.4、及び254.4nm、tr=5.93分(D)、及びtr=7.38分(L)、>99% eeであった。
【0198】
実施例10:Boc-(L)-Trp-D-Phe-OMe[90983-25-8]の合成
Boc-(L)-Trp-OSu(5.43g、13.5mmol)、NaHCO3(1.36g、16.2mmol、1.2当量)、HCl・H-(D)-Phe-OMe(3.21g、14.9mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.5当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。10分間の再循環後、バルブが開放され、そして白色ペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=6.40g、収率100%の場合にはm=4.44gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(50mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液(2×20mL)を用いて、1Mの水性NaOH溶液(2×20mL)及びブライン(1×20mL)を用いて洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、白色固体として、2.99gの所望の生成物を得た(収率67%、E-ファクター:1.65、STY:40.51g・cm-3・日-1)。
【0199】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=4.22g
反応時間:10分=6.94×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:40.51g・cm-3・日-1
【0200】
E-ファクターの計算の詳細
最終生成物の量:4.22g
アセトンの質量:1.5mL×0.784=1.18g
試薬の総質量=5.43+1.36+3.21+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18-4.22)/4.22=1.65
【0201】
【0202】
実施例11:Boc-(L)-Trp-β-Ala-OMeの合成
Boc-(L)-Trp-OSu(6.12g、15.25mmol)、NaHCO3(1.54g、18.3mmol、1.2当量)、HCl・H-β-Ala-OMe(2.34g、16.8mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.3当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。10分間の再循環後、バルブが開放され、そして白色ペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=6.31g、収率100%の場合にはm=4.18gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(50mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液(2×20mL)を用いて、1Mの水性NaOH溶液(2×20mL)及びブライン(1×20mL)を用いて洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、黄色固体として所望の生成物を得た(m=3.74g、収率90%、E-ファクター:1.10、STY:51.04g・cm-3・日-1)。
【0203】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=5.32g
反応時間:10分=6.94×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:51.04g・cm-3・日-1
【0204】
E-ファクターの計算の詳細
最終生成物の量:5.32g
アセトンの質量:1.5mL×0.784=1.18g
試薬の総質量=6.12+1.54+2.34+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18-5.32)/5.32=1.10
【0205】
【0206】
実施例12:Boc-Asp(OBzl)-D-Phe-OMe[1516893-20-1]の合成
Boc-(L)-Asp(OBn)-OSu(5.54g、13.2mmol)、NaHCO3(1.33g、15.8mmol、1.2当量)、HCl・H-D-Phe-OMe(3.13g、14.5mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.5当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。5分間の再循環後、バルブが開放され、そして白色ペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=5.60g、収率100%の場合にはm=3.93gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(50mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液(2×20mL)を用いて、1Mの水性NaOH溶液(2×20mL)及びブライン(1×20mL)を用いて洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、白色固体として所望の生成物を得た(m=3.45g、収率88%、E-ファクター:1.00、STY:107.58g・cm-3・日-1)。
【0207】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=5.60g
反応時間:5分=3.47×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:107.58g・cm-3・日-1
【0208】
E-ファクターの計算の詳細
最終生成物の量:5.60g
アセトンの質量:1.5mL×0.784=1.18g
試薬の総質量=5.54+1.33+3.13+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18-5.60)/5.60=1.00
【0209】
【0210】
実施例13:Boc-Asp(OBzl)-β-Ala-OMeの合成
Boc-(L)-Asp(OBn)-OSu(6.23g、14.8mmol)、NaHCO3(1.49g、17.8mmol、1.2当量)、HCl・H-β-Ala-OMe(2.28g、16.3mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.4当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。10分間の再循環後、バルブが開放され、そして白色ペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=7.35g、収率100%の場合にはm=4.95gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(50mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液(2×20mL)を用いて、1Mの水性NaOH溶液(2×20mL)及びブライン(1×20mL)を用いて洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、黄色油状物として所望の生成物を得た(m=3.77g、収率76%、E-ファクター:1.43、STY:44.25g・cm-3・日-1)。
【0211】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=4.61g
反応時間:10分=6.94×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:44.25g・cm-3・日-1
【0212】
E-ファクターの計算の詳細
最終生成物の量:4.61g
アセトンの質量:1.5mL×0.784=1.18g
試薬の総質量=6.23+1.49+2.28+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18-4.61)/4.61=1.43
【0213】
【0214】
実施例14:Fmoc-Leu-Phe-OMe
1
[827018-96-2]の合成
Fmoc-(L)-Leu-OSu(5.71g、12.7mmol)、NaHCO3(1.28g、15.2mmol、1.2当量)、HCl・H-(L)-Phe-OMe(3.01g、13.95mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.6当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。5分間の再循環後、バルブが開放され、そして固体が回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=2.41g、収率100%の場合にはm=1.72gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(30mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液(2×15mL)を用いて、1Mの水性NaOH溶液(2×15mL)及びブライン(1×20mL)を用いて洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、白色固体として所望の生成物を得た(m=1.38g、収率81%、E-ファクター:1.13、STY:100.93g・cm-3・日-1)。
【0215】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=5.26g
反応時間:5分=3.47×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:100.93g・cm-3・日-1
【0216】
E-ファクターの計算の詳細
最終生成物の量:5.26g
アセトンの質量:1.5mL×0.784=1.18g
試薬の総質量=5.71+1.28+3.01+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18-5.26)/5.26=1.13
【0217】
【0218】
実施例15:Fmoc-Leu-Val-OBn
2
[221174-11-4]の合成
Fmoc-(L)-Leu-OSu(4.65g、10.3mmol)、NaHCO3(1.04g、12.4mmol、1.2当量)、TsOH・H-(L)-Val-OBn(4.31g、11.4mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、2.0当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。10分間の再循環後、バルブが開放され、そして白色粉末が回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=2.65g、収率100%の場合にはm=1.52gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(30mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液(2×15mL)を用いて、1Mの水性NaOH溶液(2×15mL)及びブライン(1×20mL)を用いて洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、白色固体として所望の生成物を得た(m=1.13g、収率75%、E-ファクター:1.67、STY:40.08g・cm-3・日-1)。
【0219】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=4.18g
反応時間:10分=6.94×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:40.08g・cm-3・日-1
【0220】
E-ファクターの計算の詳細
最終生成物の量:4.18g
アセトンの質量:1.5mL×0.784=1.18g
試薬の総質量=4.65+1.04+4.31+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18-4.18)/4.18=1.67
【0221】
【0222】
実施例16:Fmoc-Leu-Gly-OMe
3
[1316293-41-0]の合成
Fmoc-(L)-Leu-OSu(6.53g、14.5mmol)、NaHCO3(1.46g、17.4mmol、1.2当量)、HCl・H-Gly-OMe(2.00g、16.0mmol、1.1当量)、及び試薬等級のアセトン(1.5mL、η=0.15μL/mg、1.4当量)がビーカー内に導入され、そしてスパチュラを用いて30秒間混合された。混合物が、40℃に加熱された押出機中にゆっくりと注入され、スピードスクリューが150rpmに設定され、そして、アウトプットバルブが再循環パイプ側に切り替えられた。5分間の再循環後、バルブが開放され、そして白色ペーストが回収された。P2O5上、減圧下で24時間乾燥後、得られた白色固体(m=3.76g、収率100%の場合にはm=2.57gの純粋なペプチドを含有する)がEtOAc(30mL)中に溶解され、1Mの水性HCl溶液(2×15mL)を用いて、1Mの水性NaOH溶液(2×15mL)及びブライン(1×20mL)を用いて洗浄された。有機相が、MgSO4で乾燥され、濾過され、そして減圧濃縮されて、白色固体として所望の生成物を得た(m=2.30g、収率90%、E-ファクター:1.02、STY:106.07g・cm-3・日-1)。
【0223】
STYの計算の詳細
ペプチドの推定された総質量:n(制限反応物質)×収率×M(ペプチド)=5.52g
反応時間:5分=3.47×10-3日
反応器の容積:15mL
STY:106.07g・cm-3・日-1
【0224】
E-ファクターの計算の詳細
最終生成物の量:5.52g
アセトンの質量:1.5mL×0.784=1.18g
試薬の総質量=6.53+1.46+2.00+1.18=11.18g
E-ファクター=(11.18-5.52)/5.52=1.02
【0225】
【0226】