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  • 特許-回転から直線へのトルク伝達装置 図1
  • 特許-回転から直線へのトルク伝達装置 図2
  • 特許-回転から直線へのトルク伝達装置 図3
  • 特許-回転から直線へのトルク伝達装置 図4
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  • 特許-回転から直線へのトルク伝達装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】回転から直線へのトルク伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/04 20060101AFI20240301BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20240301BHJP
   F16C 19/46 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
F16H19/04 N
F16C35/067
F16C19/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020560787
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2019029556
(87)【国際公開番号】W WO2019212925
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】62/664,308
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500146093
【氏名又は名称】ネクセン・グループ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nexen Group, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クライバー,アンソニー ウィル
(72)【発明者】
【氏名】クラーン,アイザック ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ベルジュ,ダニエル ロバート
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-220763(JP,A)
【文献】特開2013-036488(JP,A)
【文献】特表2012-529606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/04
F16C 35/067
F16C 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯を有する出力部材と、
前記出力部材の前記複数の歯と噛み合う複数のローラーを有するピニオンと、を備え、
前記複数のローラーの各ローラーは、そのローラーに対応する、回転軸受要素を有する軸受に支持され、各々の軸受には、前記ローラーと前記回転軸受要素との間にクリアランスがあり、前記クリアランスがゆえ、前記複数のローラーのうちの少なくとも1つのローラーと前記出力部材の前記複数の歯のうちの少なくとも1本との間に干渉が生じ、前記出力部材の前記複数の歯はそれぞれ、前記複数のローラーの各ローラーの直径と、そのローラーに対応する回転軸受要素の内接円の直径との径差に等しいクリアランス補正によりずれた軌跡で形成される、トルク伝達装置。
【請求項2】
前記複数のローラーはトロコイド運動で移動し、前記クリアランス補正を含むトロコイドに対するパラメトリック方程式が次のように与えられ、
【数1】

【数2】

式中、Xは水平軸上のトロコイドの値であり、Yは垂直y軸上の前記トロコイドの値であり、Rは円の半径であり、θは前記円が回転する角度であり、PCDは、ずれた軌線と前記円の中心との間の距離であり、dはローラーの直径であり、cは前記クリアランス補正である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数の歯は、ラックまたはギアで規定される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記対応する軸受は、ニードル軸受である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
複数の歯を有するラックを準備し、
前記ラックの前記複数の歯と噛み合う複数のローラーを有するピニオンを準備し、
前記複数のローラーの各ローラーを回転可能に支持し、回転軸受要素を有する軸受であって、前記複数のローラーのうちの少なくとも1つのローラーと前記ラックの前記複数の歯のうちの少なくとも1本との間に干渉を引き起こすクリアランスが前記ローラーと前記回転軸受要素との間にある、前記軸受を準備することを含む、トルク伝達装置のクリアランスを補正する方法であって、
前記ピニオンの前記複数のローラーの各ローラーの直径と前記複数のローラーの前記回転軸受要素の内接円の直径との間の径差に等しい前記ラックの前記複数の歯の軌跡におけるクリアランス補正を提供することを含み、
前記クリアランス補正が、各ローラーの直径と、前記回転軸受要素の内接円の直径との径差に基づくものである、方法。
【請求項6】
前記複数のローラーはトロコイド運動で移動し、クリアランス補正を提供するトロコイドに対するパラメトリック方程式が次のように与えられ、
【数3】

【数4】

式中、Xは水平軸上のトロコイドの値であり、Yは垂直y軸上の前記トロコイドの値であり、Rは円の半径であり、θは前記円が回転する角度であり、PCDは、ずれた軌線と前記円の中心との間の距離であり、dはローラーの直径であり、cは前記クリアランス補正である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記軸受はニードル軸受である、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転から直線へのトルク伝達装置に関し、特に、各々が軸受に支持されて出力の複数の歯と噛み合う複数のローラーを含むピニオンを有し、歯に軸受の半径方向のクリアランスを補正する特徴がある、リニアトルク伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動とトルクを直線運動に変換するための伝達装置の進歩が、近年、産業用オートメーションの市場で成功をおさめている。例えば、米国特許第6,023,989号には、回転する動きと直線方向の動きとの間でトルクを変換するための伝達装置が開示されている。特に、そこに開示されている伝達装置は、複数の歯を有するラックと、ラックの歯と噛み合うローラーを有するピニオンとを含む。産業用オートメーションの市場では、それぞれの機械で用いる、より精度の高い製品が常に求められている。このため、運動精度を高めた回転から直線へのトルク伝達装置に需要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様において、トルク伝達装置は、出力の複数の歯と噛み合う複数のローラーを有するピニオンを含む。各ローラーは、回転軸受要素を有する軸受に支持されている。各々の軸受には、ローラーと回転軸受要素との間にクリアランスがあり、このクリアランスがゆえ、少なくとも1つのローラーと出力の歯のうちの少なくとも1本との間に干渉が生じることがある。出力の歯は、各ローラーの直径と、そのローラーに対応する回転軸受要素の内接円の直径との間の径差に等しいクリアランス補正を含むため、干渉の機会が排除される。
【0004】
本発明の別の態様において、トルク伝達装置の寸法クリアランスを補正する方法は、複数の歯を有するラックと、ラックの歯と噛み合う複数のローラーを有するピニオンとを準備することを含む。また、この方法は、各ローラーを回転可能に支持するための軸受を準備することを含み、各軸受は回転軸受要素を有し、各軸受には、補正されなければ少なくとも1つのローラーとラックの少なくとも1本の歯との間に干渉を生む可能性のある寸法クリアランスがある。さらに、本方法は、複数のローラーと軸受との間のクリアランス補正を提供することを含み、クリアランス補正が、各ローラーの直径と、そのローラーに対応する回転軸受要素の内接円の直径との間の径差に基づいて決定され、クリアランス補正が、計算され、ラックの歯の軌跡に適用される。
【0005】
図面に関連して説明される以下の詳細な説明に照らして、例示的な実施形態が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
例示的な実施形態は、添付の図面を参照して説明することで、最も良く説明することができる。
【0007】
図1図1は、複数の歯を有するラックと、ローラーがラックの歯と噛み合うように設けられたピニオンとを含む従来のトルク伝達装置の部分図を示す。
図2図2は、図1の枠で囲った部分Eの拡大図であり、従来のトルク伝達装置の技術のモデルを示す。
図3図3は、ローラーとローラーを支持する軸受との間のクリアランスCと、従来のトルク伝達装置におけるクリアランスの補正不足により生じる干渉Aを示す図である。
図4図4は、ピニオンの回転運動を、不要な干渉を生じることなく正確にラックの直線運動に伝達する歯4Aの一形態を示す。
図5図5は、クリアランス補正を含むパラメトリック方程式における用語に対する参照符号とともに、図4の歯4Aの一形態を示す図である。
図6図6は、クリアランス補正前後の本発明によるトルク伝達装置の位置と誤差との関係を示すチャートである。
【0008】
図面はいずれも本発明の基本的な教示内容の説明を容易にするだけの目的で描かれており、例示的な実施形態を形成するための部品の数、位置、関係および寸法に関して図をどこまで拡張できるかについては、説明がなされるか、以下の説明を読んで理解すれば当業者の技能の範囲内にあるであろう。さらに、特定の力、重量、強度および同様の要件に合わせるための正確な寸法および寸法比も同様に、以下の説明を読んで理解すれば当業者の技能の範囲内にあるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、トルク伝達装置1は、複数の歯4を有するラック5とピニオン7とを備え、ピニオン7には、ラック5の歯4に噛み合ってピニオン7を入力軸2と一緒に回転させるローラー6が設けられている。ピニオン7の回転する動きに伴って、ラック5が滑るように駆動される。これに関して、米国特許第6,023,989号の開示内容を本明細書に援用し、本明細書でも同じ参照符号を用いる。
【0010】
図2を参照すると、米国特許第6,023,989号に記載されているような従来のトルク伝達装置の技術のモデルの概略図が示されている。特に、図2に示すように、ローラー6は、対応する軸受10と、トルク伝達装置1の歯4の表面に対して位置Tで接する1箇所の接点によって、完全に支持されている。
【0011】
米国特許第6,023,989号に記載されているようなトルク伝達装置では、ローラー6すなわち転動体は、歯が基本的に以下に示すパラメトリック方程式で表される軌跡を描くトロコイド運動で移動することが知られている。
【0012】
【数1】
【0013】
【数2】
【0014】
式中、Xは水平x軸上のトロコイドの値であり、Yは垂直y軸上のトロコイドの値であり、Rはピニオンがトロコイド運動で転がる円の半径であり、θは円が回転する角度であり、PCDは、ずれた軌線と円の中心との間の距離であり、dはローラー6の半径である。
【0015】
本願の発明者らは、軸受10の大きさが異なると軸受10によって作られる内接円とローラー6との間に生じるクリアランスも変わり、予測数学モデルでは説明がつかない様々な不正確さが生じることを見いだした。これに基づいて、本願の発明者らは、誤差には別の未知の原因があることを見出した。図3を参照すると、ローラー6(図示の目的で、ローラー6A、6B、6Cが示されている)は、何らかのタイプの軸受10、最も一般的にはニードル軸受10によって支持されている。これらの軸受10には、機械加工公差および部品公差を補正し、軸受を製造業者が推奨するとおりに動作させるために、ある程度のクリアランスがなければならない。このクリアランスがゆえ、ローラー6が、従来のすべての数学モデルで中心位置であると仮定される転動直径の厳密な中心から外れてしまう。しかしながら、2つのローラー(すなわち、ローラー6Aおよび6B)がずれると、それが原因で中央のローラー6Cが歯4の歯元に接触する。この接触により、干渉領域Aが生じ、精度の誤差が引き起こされる。このように、図2に関連して説明したモデルでは、支持軸受10によって作られる内接円とローラー6との間のクリアランスが補正されていない。
【0016】
本発明では、ローラー6と支持軸受10との間のクリアランスを補正する。本発明によれば、パラメトリック方程式にクリアランス成分が追加される。
【0017】
【数3】
【0018】
【数4】
【0019】
式中、Xは水平軸上のトロコイドの値であり、Yは垂直y軸上のトロコイドの値であり、Rは円の半径であり、θは円が回転する角度であり、PCDは、ずれた軌線と円の中心との間の距離であり、dはローラーの大きさであり、cはクリアランス補正である。本発明によれば、クリアランス補正は、ローラー6の直径12とニードル軸受10におけるニードルローラー16などの回転軸受部材の内接円の直径14との径差である。
【0020】
図4および図5を参照すると、この数学モデルを用いることにより、歯4Aの歯元Bでの不必要な干渉を生じることなくピニオン(すなわち、ローラー6および軸受10)の回転運動をラック5での直線運動に正確に伝達する形の歯4Aが提供される。
【0021】
図6は、このようなローラー補正がある場合とない場合のトルク伝達装置Lの位置と誤差との関係を示すチャートである。図5から、補正前BCと補正後ACとの間で、トルク伝達装置1の精度が大幅に改善されることが分かる。
【0022】
このように、本明細書に開示された本発明は、その意図または主な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で具現化することができるものであり、そのうちのいくつかの形態を示してあるため、本明細書に記載の実施形態は、あらゆる点で例示的であって限定的ではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示されるべきであり、特許請求の範囲の意味および等価物の範囲内のすべての変更は、そこに包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6