(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】カーボンブラック組成物、それを含むポリマー組成物および空気式タイヤ
(51)【国際特許分類】
C09C 1/50 20060101AFI20240301BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240301BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240301BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240301BHJP
C08L 23/22 20060101ALI20240301BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C09C1/50
C08K3/04
C08L7/00
C08L9/00
C08L23/22
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2021061944
(22)【出願日】2021-03-31
(62)【分割の表示】P 2018224164の分割
【原出願日】2014-03-13
【審査請求日】2021-04-14
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515253142
【氏名又は名称】オリオン エンジニアード カーボンズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Orion Engineered Carbons GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Strasse 60-68,65760 Eschborn Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイゲー, ベアンハード
(72)【発明者】
【氏名】ニーデアメイアー, ヴェルネル
(72)【発明者】
【氏名】ペルスター, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シンケル, アーンドペーター
(72)【発明者】
【氏名】テイケ, シルケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォグラー, コーニー
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505939(JP,A)
【文献】特開平07-126659(JP,A)
【文献】特開2001-164149(JP,A)
【文献】特開平11-012487(JP,A)
【文献】特開平11-335577(JP,A)
【文献】特開昭62-277446(JP,A)
【文献】特開2008-038153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0236816(US,A1)
【文献】W.Niedermeier、外1名,Nano-Structure Blacks. A New Carbon Black Family Designed to Meet Truck Tire Performance Demands.,Kautschuk Gummi Kunststoffe,ドイツ,1999年10月,Vol.52 No.10,Page.670-676
【文献】新井啓哲,―新しく炭素材料実験を始める人のために―カーボンブラックの製法と特性,炭素,日本,2006年06月15日,Vol.2006 No.223,Page.232-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.58から0.65のΔD
50/D
モード
、1.2から1.5の四分位比(QR)D
75
/D
25
および0.5から0.8の相対スパン(D
90-D
10)/D
50を示し、
前記ΔD
50/D
モードは、半値全幅(FWHM)であるΔD
50をモード径D
モードで割ることによりえられる幅の相対的分測である、
ファーネスカーボンブラック組成物。
【請求項2】
さらに、1.35未満の多分散性指数を示し、
前記多分散性指数は、D
wをD
nで割ることによりえられる比率D
w/D
nであり、ここで、D
wは質量加重平均粒径であり、D
nは数加重平均粒
径である、
請求項
1に記載
の組成物。
【請求項3】
90から180m
2/gのSTSA値を示す請求項
1に記載
の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のカーボンブラック組成物を含む、ポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のカーボンブラック組成物、または請求項
4に記載のポリマー組成物を含む空気式タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
【0002】
本発明は、カーボンブラックの領域に属し、改良した形状を伴う修飾したファーネス反応器を使用することによってえることができる、狭い凝集体サイズ分布および改良した特性を示す、カーボンブラックを含む組成物について言及する。
【背景技術】
【0003】
技術の現状
【0004】
カーボンブラックは、ゴム組成物における最先端の補強材である。その形態、例えば、比表面積および構造などは、最終製品の種々の物理的性質、例えば、タイヤの摩耗性能、転がり抵抗、熱ビルドアップおよび引裂き抵抗などに影響を与える。前記摩耗性能は、タイヤが非常に重い負荷に対処する必要がある、バスおよびトラックのタイヤに特に重要である。トラックまたはバス用トレッドコンパウンドにおいて、細かく分散したカーボンブラック粒子は、摩耗性能の非常に高いレベルを達成するために必要とされる。しかしながら、これは、カーボンブラックの比表面積の増加に伴って分散可能性がより厳しくなるという事実により限定される。
【0005】
カーボンブラックは、その最小の分散可能単位である、より大きな凝集体を形成するナノメートルの範囲の略球状の一次粒子から成る。カーボンブラックの構造は、これらの凝集体の形状およびサイズによって決定される。凝集体サイズ分布(ASD)は、各カーボンブラック組成物に関する指紋である。ASDは、ゴムの補強能力の1つの重要な因子として認識されている、前記組成物中の凝集体サイズの分布の尺度である。カーボンブラックの他のすべての特徴が一定に維持されるならば、より小さな凝集体は摩耗性能に強く寄与する。より大きな凝集体は、容易に分散させることができるが、摩耗性能に対して小さな凝集体ほど良好に寄与しない。特に、低比率のより大きな凝集体によって著しく摩耗性能が損なわれうることがよく知られている。
【0006】
カーボンブラック組成物を特徴付け、1つの組成物を別の1つの組成物と区別するためには、2つ以上の値がかなり重要である。
【0007】
ASDは、各サイズで質量による相対量を反映する。それは、大抵は単一モード(単一ピーク)であるが、単分散(全て1つのサイズ)ではない。モード径Dモード(「モード」とも呼ぶ)は、分布のピーク位置に等しい、最も多い直径である。分布の幅は、ΔD50とも呼ぶ、その半値全幅(FWHM)によって表すことができる。DIN ISO 15825にしたがって、ΔD50は前記モードの半値点で測定された質量分布の幅を表す。幅の相対的分測は、ΔD50/Dモード値によって示されるΔD50をモード径Dモードで割ることによりえられる。
【0008】
前記ΔD50/Dモード値は分布曲線のピークの広さに関する唯一の尺度であるが、それは小さな凝集体の量も大きな凝集体の量もいずれも反映していない。したがって、第2の値が必要とされる。
【0009】
ASD曲線を統合すると、累積分布がえられる。それは、特定のサイズでまたは特定のサイズより下での質量による相対量を反映する。前記累積分布がえられると導き出すことができる絶対幅のいくつかの尺度がある。1つの一般的な尺度は、いわゆるスパン、D90-D10である。幅の無次元尺度は、スパンと中央径の商(D90-D10)/D50で定義される、いわゆる相対スパン(RS)である(Weiner,“What is a Continuous Particle Size Distribution”,Brookhaven Instruments,2011参照)。D10、D50およびD90は、それぞれ10、50および90%における累積曲線から決定した体積分率を表す。分布が狭ければ狭いほど、幅ΔD50およびRSの絶対尺度はゼロにより近づく。
【0010】
いわゆる四分位比(QR)D75/D25は、より大きな粒子に対するより小さい粒子の質量の関係を表す第3の任意のパラメーターである。DIN ISO 15825にしたがい、QR値は、累積曲線下の面積の下方四分位数に対する上方四分位数の比として定義される。ΔD50およびRSとは対照的に、分布が狭くなるほど、幅のこの相対的な尺度は単一により近づく。
【0011】
最終的に、質量加重平均粒径Dwおよび数加重平均粒径Dnの比は、全体的な粒子サイズの均一性に関する尺度である。この比率Dw/Dnは、多分散性指数とも呼ばれる。大きな値は不均一を反映し、小さな値は均一な粒子サイズ分布を表す。
【0012】
先に示した説明を考慮すると、狭い粒度分布を有するカーボンブラック組成物、特に、以下を示す組成物が市場では深刻に必要とされている。
(a)0.58から0.65のΔD50/Dモードと同時に
(b)0.5から0.8のRS値とさらに任意に
(c)1.2から1.5のQR値および/または
(d)1.35未満のDw/Dn値
【0013】
技術の現状から、従来の広いASDを有するカーボンブラック組成物をえるための様々な方法が知られており、前記方法は、カーボンブラックを形成するために炭化水素原料を分解するため、およびまたは不完全燃焼のために使用されるファーネス反応器の形状が主に異なる。
【0014】
例えば、欧州特許第0546008号(CABOT)は、以下の多数の特性により特徴付けられる改良されたカーボンブラックについて言及している:155m2/gを超えるCTAB値、180mg/gを超えるヨウ素価、160m2/gを超えるN2SA値、145%を超える着色価、90から105cc/100gのCDBPの値、155から140cc/100gのDBP値、20から35cc/100gのΔDBP=DBP-CDBP値、40nm未満のΔD50値、40から65nmのDモード、0.55から0.67のΔD50/Dモード比、および1376.000nm3未満のASTM凝集体積。前記カーボンブラックは、「段階的」、ファーネス反応器とも呼ばれる、モジュールを用いてえられる。この反応器は、本発明の改良した形状を有する修飾したファーネス反応器と比べて異なる寸法を有する。
【0015】
このような反応器からえられたカーボンブラックは、本発明の基礎となる複雑なプロファイルとは一致しない。具体的には、比表面積および着色価がより高い。
【0016】
また、欧州特許第0608892号(株式会社ブリヂストン)には、カーボンブラックを製造するための特定のファーネス反応器が開示されている。
図2に示されるように、燃焼室は、反応室に向かって円錐状に開くベンチュリ部分に連結される。しかしながら、この反応器の寸法は、本発明の修飾した反応器と比べて異なる。特に、チョーク領域が1よりも大きい直径対長さ比を有する。前記カーボンブラック組成物は、0.61から0.79のΔD
50/D
モード値を示す。表3によれば、製品Aは、好ましい領域内にある0.61の比を示すが、ΔD
10/D
モード値および
図1からも、前記組成物は、相当量の大きなサイズの粒子を含むことは明らかである。
【0017】
欧州特許出願公開第0792920号(三菱化学株式会社)によれば、0.47から0.53のみのΔD50/Dモード比を示すカーボンブラックが、長いチョーク(d/l=0.1から0.8)を有するがベンチュリ部分のないファーネス反応器を用いてえられる。この方法により、非常に狭いASDを有する粒子が提供され、本発明におけるよりもΔD50/Dモードに関して非常に狭い形態である。
【0018】
非常に類似した教示は欧州特許出願公開第0982378号(三菱化学株式会社)からえられ、非常に狭いASDを有するが、最大で13nmの非常に小さい粒子サイズを有するカーボンブラックが開示され、非常に長いチョーク部分を伴う反応器からえられる。この方法も、最大3容積%、好ましくは0.05から1容積%の原料の注入で、特定の酸素濃度を必要とする。
【0019】
国際公開第2013/015368号(株式会社ブリヂストン)には、光散乱法によりえられたカーボンブラックの凝集体分布の標準偏差によって特徴付けられるカーボンブラックが開示されている。ファーネス反応器は、円筒状の反応ゾーンによって特徴付けられ、均一な粒径分布を有するカーボンブラックを製造するには適当ではない。
【0020】
仏国特許出願公開第2653775号(東海カーボン株式会社)も、125から162m2/gのBET値および0.55から0.66のΔDst/Dst比を有するカーボンブラックを製造するための方法に関する。対応する反応器は、本発明の修飾したファーネス反応器と比べて異なる形状を有する。特に、燃料の一部は、第1の予備燃焼ゾーンに注入されるが、別の部分は、軸方向または半径方向へ第2の予備燃焼ゾーンに導入される。このようにしてえられた製品は、先に説明した複雑なプロファイルを満足しない。
【0021】
米国特許第5,254,325号(新日鐵化学株式会社)には、ピストン流状態で高温ガスを維持するために喉を有するカーボンブラックを製造するための反応器が開示されている。カーボンブラック原料は主に喉の後ろのベンチュリ部分内に異なる位置で導入される。このようにしてえられたカーボンブラックは、示された実施例からも明らかなように、狭いASDを表すには程遠い。対応するΔD50/Dst比は、0.73から1.20の範囲内にある。
【0022】
特開2001-240768号(三菱化学株式会社)は、16nm以下の平均粒径を有する塗料に使用するための、500mm以上の非常に長いチョーク領域を伴うファーネス反応器からえられたカーボンブラックについて言及し、それは硝酸で後処置される。えられた製品は、高揮発画分を含み、ゴム組成物中に組み込むことは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
これまでの技術水準から公知の方法は、特にゴムおよびタイヤ業界における、ポリマーの増大するニーズを満たすカーボンブラック組成物を提供するには適していない。具体的には、前記反応器および方法は、均一な粒径分布を有するカーボンブラックを製造するには不向きである。したがって、本発明の目的は、0.58から0.65のΔD50/Dモード比、約0.5から約0.8の相対スパンを同時に示し、任意に約1.2から約1.5のQR値および1.35未満のDw/Dn値も示す、狭いカーボンブラック組成物を入手可能とすることであった。本発明の第2の目的は、先に説明したプロファイルと一致するカーボンブラック組成物を製造することができ、新規または修飾したファーネス反応器を開発することであった。最後に、特にバスおよびトラックのタイヤを製造するための、向上した耐摩耗性と補強性を示す特定の新規なゴム組成物において、新規なポリマー組成物を提供することも本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明の詳細な記載
本発明の第1の目的は、以下の部材を含む、修飾したファーネス反応器に向けられる:
(i)燃焼室、
(ii)原料を導入するための円筒状管(「チョーク」)、
(iii)カーボンブラック形成のためのベンチュリ形状の反応トンネルおよび
(iv)急冷によりカーボンブラック形成を終了させるための円筒状トンネル、
前記反応器において、
(a)前記燃焼室はその長さl1にわたって直径d1から直径d2まで円錐状に狭くなり、
(b)前記管はその長さl2にわたって一定の直径d2を示し、
(c)前記反応トンネルはその長さl3にわたって直径d2から直径d3まで拡張しかつ
(d)前記円筒状トンネルはその長さl4にわたって一定の直径d3を示し、
比d2:l2は1:3.5から1:4.5の範囲内にあるという条件が付される。
【0025】
驚くべきことに、狭いASDを有する所望の新規なカーボンブラック組成物は、本発明の修飾した形状を有するファーネス反応器を用いてえられることが観察された。特に、直径がベンチュリ形状に開くまで一定の直径を示す管(ii)を大きくすると、流速が上がり、カーボンブラックが形成される領域の逆流が減るかさらには回避されることが見出された。
【0026】
予想外に、形状におけるこれらの変更により、凝集体サイズの大幅に狭められた分布がもたらされることが見出された。より具体的には、燃焼と反応ゾーンの間の狭窄の直径d2と、一定の直径を示すトンネルの長さl2との間の比が、所望の狭いASDを示す本発明の生成物をえることができる反応器から従来のASDのみを提供する類似の反応器と区別するために信頼性のあるパラメーターを表すことが判明した。
【0027】
さらに、新規なカーボンブラック組成物は、その中にカーボンブラックが組み込まれる、ポリマー組成物および顔料の品質の向上に関する複雑な要件を満たす。特に、タイヤトレッドの補強性および耐摩耗性の向上が観察される。
【0028】
カーボンブラック組成物
【0029】
本発明の第2の目的は、以下を示すカーボンブラック組成物である。
・0.58から0.65、好ましくは0.60から0.63、より好ましくは0.62から0.63のΔD50/Dモード値、
・約0.50から約0.80、好ましくは約0.55から約0.75、より好ましくは約0.60から約0.72、最も好ましくは約0.64から約0.70の相対スパン、および任意に、
・約1.2から約1.5、好ましくは約1.30から約1.48、より好ましくは約1.35から約1.45の四分位比、および/または
・約1.35未満、好ましくは約1.33未満、より好ましくは約1.31未満の多分散性指数。
【0030】
さらに好ましいそれらのカーボンブラック組成物は、約90から約180m2/g、好ましくは約100から約140m2/gまたは約120から160m2/gのSTSA値を示し、STSA値はカーボンブラックの比表面積を表す。
【0031】
さらに好ましいそれらのカーボンブラック組成物は、以下を示す。
・約50から約400ml/100g、好ましくは100から約200ml/100g、より好ましくは約115から約150ml/100g、最も好ましくは約120から約140ml/100gの吸油価(OAN)および/または
・約80から約130ml/100g、好ましくは約90から約120ml/100g、より好ましくは約100から約115ml/100gの圧縮されたサンプルの吸油価(COAN)。さらに、特に好ましいのは、約95から約105ml/100gの範囲である。
【0032】
本発明の第3の目的は、以下を示すカーボンブラック組成物に関し、
・約0.58から約0.65、好ましくは約0.60から約0.63、より好ましくは約0.62から約0.63のΔD50/Dモード値、
・約0.50から約0.80、好ましくは約0.55から約0.75、より好ましくは約0.60から約0.72、最も好ましくは約0.64から約0.70の相対スパン、および任意に、
・約1.2から約1.5、好ましくは約1.30から約1.48、より好ましくは約1.35から約1.45の四分位比、および/または
・1.35未満、好ましくは1.33未満、より好ましくは1.31未満の多分散性指数、
前記組成物は、
(A)熱分解を達成するために、炭化水素出発原料を高温燃焼ガス流にさらし、
(B)反応ガスを冷却しかつ
(C)えられたカーボンブラックを回収し、
反応は以下の部材、
(i)燃焼室、
(ii)前記原料を導入するための円筒状管(「チョーク」)、
(iii)カーボンブラック形成のためのベンチュリ形状の反応トンネルおよび
(iv)急冷によりカーボンブラック形成を終了させるための円筒状トンネル
を含むファーネス反応器において行い、
該反応器において、
(a)前記燃焼室はその長さl1にわたって直径d1から直径d2まで円錐状に狭くなり、
(b)前記管はその長さl2にわたって一定の直径d2を示し、
(c)前記反応トンネルはその長さl3にわたって直径d2から直径d3まで拡張しかつ
(d)前記円筒状トンネルはその長さl4にわたって一定の直径d3を示し、
比d2:l2は約1:2から約1:6の範囲内にあるという条件が付される、
ことによってえることができる。
【0033】
ファーネス反応器および製造方法
【0034】
本発明の別の目的は、以下を示すカーボンブラック組成物をえるための方法に関し、
・約0.58から約0.65、好ましくは約0.60から約0.63、より好ましくは約0.62から約0.63のΔD50/Dモード値、
・約0.50から約0.80、好ましくは約0.55から約0.75、より好ましくは約0.60から約0.72、最も好ましくは約0.64から約0.70の相対スパン、および任意に、
・約1.2から約1.5、好ましくは約1.30から約1.48、より好ましくは約1.35から約1.45の四分位比、および/または
・1.35未満、好ましくは1.33未満、より好ましくは1.31未満の多分散性指数、
具体的には、0.58から0.65のΔD50/Dモード比および0.5から0.8の相対スパン(D90-D10)/D50を示すカーボンブラック組成物をえるための方法に関し、
前記方法は、以下の工程、
(A)熱分解を達成するために、炭化水素出発原料を高温燃焼ガス流にさらす工程、
(B)反応ガスを冷却する工程および
(C)えられたカーボンブラックを回収する工程
を含み、
反応は以下の部材、
(i)燃焼室、
(ii)前記原料を導入するための円筒状管(「チョーク」)、
(iii)カーボンブラック形成のためのベンチュリ形状の反応トンネルおよび
(iv)急冷によりカーボンブラック形成を終了させるための円筒状トンネル
を含むファーネス反応器において行い、
前記反応器において、
(a)前記燃焼室はその長さl1にわたって直径d1から直径d2まで円錐状に狭くなり、
(b)前記管はその長さl2にわたって一定の直径d2を示し、
(c)前記反応トンネルはその長さl3にわたって直径d2から直径d3まで拡張しかつ
(d)前記円筒状トンネルはその長さl4にわたって一定の直径d3を示し、
比d2:l2は1:3.5から1:4.5の範囲内にあるという条件が付される。
【0035】
先に説明したように、本発明の中心は、狭い凝集体サイズ分布を有し、以下を示すカーボンブラック組成物を初めて製造することが可能になる改良した形状を有する修飾したファーネス反応器について言及する:
・約0.58から約0.65、好ましくは約0.60から約0.63、より好ましくは約0.62から約0.63のΔD50/Dモード値、
・約0.50から約0.80、好ましくは約0.55から約0.75、より好ましくは約0.60から約0.72、最も好ましくは約0.64から約0.70の相対スパン、および任意に、
・約1.2から約1.5、好ましくは約1.30から約1.48、より好ましくは約1.35から約1.45の四分位比、および/または
・1.35未満、好ましくは1.33未満、より好ましくは1.31未満の多分散性指数。
【0036】
先に示した特徴(A)、(B)および(C)は、カーボンブラックをえるための標準的な手順について記載するが、前記反応器の形状、特に、チョークおよびベンチュリ形状の反応トンネルの形状は必須であり、最も重要な特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明のファーネス反応器の横断面を示す図。
【
図2】実施例1および比較例C1にしたがったASDの比較を示す図。
【
図3】実施例2および比較例C2にしたがったASDの比較を示す図。
【
図4】実施例3および比較例C3にしたがったASDの比較を示す図。 前記の新規反応器の形状を
図1に示す。円錐形状の燃焼室は、約1,400から1,800mm、好ましくは約1,600mmの全長l
1を有するが、直径はd
1=約800から約1,000mm、好ましくは約900mmからd
2=約100から約200mm、好ましくは約110から約125mmまで減少する。該直径d
2は、反応トンネルと燃焼室とを連結するチョークの直径を表す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の重要な特徴は、低流速および高逆流が特に望ましくない大きな粒子の形成に関する運転パラメーターとして同定されたので、この領域で流速を上げかつカーボンブラックが形成される領域で逆流を回避するか少なくとも減じることである。典型的には、前記チョークは、約350から約600mm、好ましくは約450mmの長さl2を有する。本発明を首尾よく実施するための重要なパラメーターは、直径d2とチョークの長さl2の比であり、前記比は、約1:2から約1:6であることが特許請求の範囲に開示され、好ましくは約1:3.5から約1:4.5である。
【0039】
カーボンブラックの形成は、原料導入後前記チョーク内で開始される。このチョークはその直径d2を有し、カーボンブラックの形成が継続する、ベンチュリ形状のトンネルに変化する。前記トンネルは3から4°の角度で約200から約300mm、好ましくは約250mmの最終直径d3まで広がる。前記トンネルの長さl3は、約900から約1,800mm、好ましくは約1,000から約1,300mmである。
【0040】
前記反応器の最後の部分は、円筒形状およびd3の直径を有する、急冷部分である。その長さは重要ではなく、約500から約2,000mmの間で変化しうる。カーボンブラックの形成を終了させ、かつプロセスガスを伴う望ましくない副反応を避けるために、冷却トンネルには、反応ガスを急冷するための水または特別な液体類を導入することを可能にする、ノズル(「チョーク」)が備えられる。
【0041】
上記されたような方法は、
(a)燃焼工程、
(b)反応工程、および
(c)反応を終了させるための工程
を含み、従来の方法と同様であってもよい。
【0042】
具体的には、前記燃焼工程において、高温燃焼ガスを形成するために、酸素含有ガスとして空気と気体または液体の燃料炭化水素を混合し燃焼させることになる(このゾーンを燃焼ゾーンと呼ぶ)。燃料炭化水素として、水素、一酸化炭素、天然ガス、石炭ガス、石油ガス、石油系液体燃料、例えば、重油など、または、石炭系液体燃料、例えば、クレオソート油などを用いることができる。前記燃焼ゾーンは、出発原料の炭化水素が均一に蒸発し熱分解できるように充分に高い温度雰囲気であることが望ましく、前記温度は、好ましくは1,600°C以上、より好ましくは1,700から2,400℃である。前記燃焼ゾーンに所望される他の条件は、可能な限り燃焼ガス中の酸素濃度を抑えることである。酸素が燃焼ガス中に存在すると、出発原料の炭化水素の部分燃焼は、反応ゾーン内で起こる可能性が高く、それによって反応ゾーン内で不均一性がもたらされる可能性が高い。
【0043】
前記燃焼ガス中の酸素濃度は、kファクターによって調整される。kファクターは、過剰な空気を特徴付けるために指数として使用される。それは、化学量論的な燃焼に必要な空気量と燃焼のために使用される空気の実際の量との比を表す。好ましくは、kファクターは、0.3から1.0、より好ましくは0.6から0.8に調整される。燃焼空気の量は、典型的には約2,500から約10,000Nm3/h、より好ましくは約2,800から約3,000Nm3/hであるが、その温度は典型的には約300から900℃の範囲内にある。
【0044】
前記反応工程において、出発原料の炭化水素は、高温燃焼ガス流に対して平行にまたは横断方向に設けたバーナーから噴出されるように、前記燃焼工程でえられた高温燃焼ガス流に導入され、そこで、前記出発原料の炭化水素が熱分解されカーボンブラックに変換される(このゾーンを反応ゾーンと呼ぶ)。反応効率を向上させるために、前記反応ゾーン内にチョークを備えることは一般的であり、チョークの大きさは、チョークの上流部分の直径に対するチョークの直径の比が0.1~0.8となるような大きさである。
【0045】
出発原料の炭化水素は、具体的には、芳香族炭化水素、例えば、アントラセン、CTD(コールタール蒸留物)、ECR(エチレンクラッカー残基)など、または石油系重油、例えば、FCC油(流動触媒分解残油)などであってもよい。
【0046】
出発原料の炭化水素の油滴を均一に蒸発させかつ熱分解させることができるように前記出発原料を微細に噴霧しかつファーネス内に均一に分散されるように、反応ゾーンへの前記出発原料の炭化水素の導入を行うことが好ましい。微細噴霧する方法としては、燃焼ガス流によって霧状にする方法を採用することが有効である。前記出発原料の炭化水素を導入するための位置での燃焼ガスの流速は、好ましくは250m/秒以上、より好ましくは300から500m/秒である。さらに、ファーネス内で前記出発原料を均一に分散させるために、前記出発原料の導入は、好ましくは、前記出発原料の炭化水素が、複数のノズル、2つ以上のノズル、より好ましくは3から12、より具体的には4から16のノズルからファーネス内に導入されるように行われる。
【0047】
前記凝集体は、前記出発原料の炭化水素を均一に蒸発させかつ熱分解させ、それによって、前駆体の核が生じ、相互に互いと衝突して融合し、炭化されて凝集体を形成することになるような方法で形成されると考えられる。したがって、凝集体形成ゾーンは、流路、例えば、チョークなどにおける、例えば、変化のために非常に乱れた部位がないことが望ましいと考えられる。これは、前記出発原料の炭化水素を導入した後、0.4秒以上であるチョークでの滞留時間を調整することによって達成することができる。
【0048】
前記反応を終了させる工程において、前記高温反応ガスは、例えば、水噴霧によって、1,000から800℃以下のレベルまで冷却される(このゾーンを急冷部分と呼ぶ)。冷却されたカーボンブラックは、従来の方法によって、例えば、ガスから分離する方法によって、例えば、収集バッグフィルターを用いて回収することができる。典型的には、前記反応器の出口での温度は、約500から約1,000℃である。
【0049】
工業的応用
【0050】
本発明の第1の部分は、狭いASDを有するカーボンブラック組成物および新規または修飾したファーネス反応器を用いてこのような組成物をえるための方法に向けられる。
【0051】
本発明の以下の部分において、より広い、従来のASDを示す市場由来の標準品と比較して優れた性能を示す、添加剤または顔料としての新規なカーボンブラック組成物の応用について専ら記載する。
【0052】
ポリマー組成物のための添加剤
【0053】
したがって、本発明の別の目的は、以下を示す新規なカーボンブラック組成物を添加することによって、ポリマー組成物の特性を改良するための方法に向けられる。
・約0.58から約0.65、好ましくは約0.60から約0.63、より好ましくは約0.62から約0.63のΔD50/Dモード値、
・約0.50から約0.80、好ましくは約0.55から約0.75、より好ましくは約0.60から約0.72、最も好ましくは約0.64から約0.70の相対スパン、および任意に、
・約1.2から約1.5、好ましくは約1.30から約1.48、より好ましくは約1.35から約1.45の四分位比、および/または
・1.35未満、好ましくは1.33未満、より好ましくは1.31未満の多分散性指数。
【0054】
また、ポリマー組成物用の添加剤として前記組成物の使用を特許請求の範囲に開示する。
【0055】
前記ポリマーは、様々な異なるタイプ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル類、ポリウレタン類などを包含しうるが、好ましいポリマーは、合成または天然ゴムである。
【0056】
天然ゴムは、パラゴムノキのラテックスに由来し、タンパク質、土などのような微量の不純物を含む主としてポリ-cis-イソプレンである。それは、機械的性能の面で多くの優れた特性を示すが、天然ゴムは、特にその熱安定性および石油製品との互換性に関しては、多くの場合、特定の合成ゴムに劣る。
【0057】
合成ゴムは、モノマーと呼ばれる様々な石油系前駆体の重合によって製造される。最も一般的な合成ゴムは、スチレンと1,3-ブタジエンの共重合から誘導されるスチレン-ブタジエンゴム(SBR)である。他の合成ゴムは、架橋のためのわずかな比率のイソプレンと共に、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)、およびイソブチレン(メチルプロペン)から調製される。これらおよび他のモノマーは、広範な物理的、機械的および化学的特性を有する製品を製造するために共重合される種々の割合で混合することができる。前記モノマーは、純粋に製造することができ、不純物または添加剤の添加は、最適な特性を付与するための設計により制御することができる。純粋なモノマーの重合は、所望の割合のシスおよびトランス二重結合がえられるようによりよく制御することができる。合成または天然ゴム系のポリマーに関して、本発明の他の目的は、耐摩耗性および補強性を向上させるための方法、およびそのようなポリマー組成物の前記方法である。
【0058】
また、本発明は、ゴム組成物に添加されると前記効果を達成するための、このようなカーボンブラック組成物の使用を包含する。一般にはポリマーに、特にはゴムに添加されるカーボンブラックの量は、約10から約120phr1(1phr=100部のゴム当たりの部)、好ましくは約35から約100phr、より好ましくは約40から60phrの範囲内にある。
【0059】
顔料の応用
【0060】
本発明の別の目的は、様々な目的、例えば、塗料およびラッカーなどのために、顔料として、特に、黒色顔料としての新規なカーボンブラック組成物の用途に向けられる。
【0061】
カーボンブラックは、耐光性であり、化学的攻撃に耐性があり、他の無機顔料、例えば、酸化鉄などよりも優れる深い黒色を示すので、理想的な黒色顔料の代表である。それは、2つの応用、漆黒度が支配的なパラメーターである、純粋な黒色コーティング、および着色力がより重要である、灰色コーティングおよび塗料に主に使用される。最初のカテゴリーは、小さな一次粒子サイズを主に有するカーボンブラック黒色顔料を含み、第2のカテゴリーは、中間から大きな粒子サイズを有するカーボンブラック黒色顔料を含む。黒および灰色のコーティングの主な目的は、装飾および保護である。黒のコーティング、即ち、マストーン着色において、微細な粒子サイズの黒は青みがかったアンダートーンを示すが、粗い黒は茶色がかったアンダートーンを示す。深い黒のコーティングは、主に自動車および家具業界からの需要がある。また一方で、顕著な青いアンダートーンを示すカーボンブラックがさらに求められている。これは、青みがかった黒の方が、茶色がかった黒色のアンダートーンを有するものよりも暗く見えるという事実による。今日まで、これは今までよりも小さいサイズのカーボンブラックを製造することによってのみ果たすことができていた。凝集体は最小分散単位であるため、ASDも漆黒度(黒さ)に、特にアンダートーン(より青みがかった)に影響を及ぼす。ASDが狭くなればなるほど、特にASDがより対称になればなるほど、粗大粒子(凝集体)の量は減り、結果的に、アンダートーンはより青みがかかる。
【0062】
プラスチックの深い着色用の黒色顔料としては、主にハイカラー(HC)およびミディアムカラー(MC)クラスのカーボンブラックが使用されている。これらのブラックは、多種多様な最終製品、例えば、パネル用材、包装材、繊維材、シート材、履き物などに使用され、それらの多くは、射出成形品である。黒さMyにより決定されるポリマーの漆黒度を増加させるために、一次粒子のより小さいサイズのカーボンブラック、低構造のブラックを用いるか、カーボンブラックの濃度を増加させることができる。最初の2つの選択肢を使用すると、カーボンブラックの分散がより困難になり、逆効果をもたらしうる。多くのプラスチック類の機械的特性は、高濃度で通常悪影響があるため、ポリマー中のカーボンブラックの濃度は、実際には特定の量しか増加させることができない。狭く、特に、より対称的なASDを示すカーボンブラックは、機械的特性を悪化させることなくまたは分散挙動を低下させることなく、ポリマーにおけるより高い漆黒度をもたらす。
【0063】
インクジェット用インクへの応用において、その傾向はより小さな液滴に向かっており、前記液滴はわずか数マイクロメートルの直径を有するプリントヘッドのノズルが必要とされる。プリントヘッド上のノズルの目詰まりおよび付着物の防止は、長期的な印刷の信頼性を確保するためには必須である。顔料の粒子の細かさ(凝集体)は、印刷の信頼性においてこれらの要件を満たすために重要な役割の1つである。特に、少量の粗い粒子は、最終的な着色されたインクジェット用インクの印刷適性に加えて、濾過特性にも影響を与える。ASDが狭ければ狭いほど、粗い粒子(凝集体)の量が少なくなるので、印刷の信頼性が落ちる危険性が低下する。
【0064】
カーボンブラックは、該顔料組成物中に、約0.3から約45重量%、好ましくは約1から約25重量%の量で存在しうる。
【0065】
ポリマー組成物、ゴム組成物および最終製品
【0066】
本発明の別の目的は、以下を示す新規なカーボンブラック組成物を含むポリマーである。
・約0.58から約0.65、好ましくは約0.60から約0.63、より好ましくは約0.62から約0.63のΔD50/Dモード値、
・約0.50から約0.80、好ましくは約0.55から約0.75、より好ましくは約0.60から約0.72、最も好ましくは約0.64から約0.70の相対スパン、および任意に、
・約1.2から約1.5、好ましくは約1.30から約1.48、より好ましくは約1.35から約1.45の四分位比、および/または
・1.35未満、好ましくは1.33未満、より好ましくは1.31未満の多分散性指数。
【0067】
前記ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル類、ポリウレタン類からなる群より選択されうるが、好ましくは、前記ポリマーは、合成または天然ゴムのいずれかである。
【0068】
前記カーボンブラックは、該顔料組成物中に、約0.3から約45重量%、好ましくは約1から約25重量%の量で存在しうる。
【0069】
前記ポリマー組成物が、タイヤを基準として扱うために指定されたゴム組成物である場合、そのような組成物は一般に、エラストマー組成物、補強充填剤および部分的にシランカップリング剤を含む。前記組成物は、硫黄加硫剤および促進剤を含む、種々の加工助剤を用いて硬化させうる。
【0070】
ゴム
【0071】
従来用いられている任意のゴム配合エラストマーは、本発明によってカバーされるゴム組成物に潜在的に適している。典型的な組成物において潜在的に有用なエラストマーの非限定的な例としては、個別におよび組み合わせて、前記ゴム組成物の所望する最終的な粘弾性特性に応じて、以下が含まれる:天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、架橋ポリエチレン、ネオプレン、ニトリルゴム、塩素化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、特殊熱および油耐性ゴム、他の特殊ゴム、および熱可塑性ゴム、そのような用語は、The Vanderbilt Rubber Handbook,Thirteenth Edition,(1990)で使用される。これらのエラストマーは、以下に限定されないが、スズ、ケイ素およびアミン含有官能基を含む、様々な官能基を含みうる。
【0072】
このようなポリマー配合物の比率は、重合ゴム化合物に関して所望される最終的な粘弾性特性に応じて、可能な限り広い範囲に及びうる。当業者は、過度の実験を行うことなく、どのエラストマーおよびどのような相対量が結果として所望される粘弾性特性の範囲に適切であるかを容易に決定しうる。前記ゴム組成物は以下を含みうる。
・液体ヒドロキシル末端ポリアルキレン、
・イソブチレンとp-メチルスチレンのハロゲン化共重合体、またはその両方、
・EPDM系ゴム、
・イソオレフィンとパラ-アルキルスチレンのハロゲン化共重合体、
・高トランス・スチレン-ブタジエンゴムを含む、スチレン-ブタジエンゴム、および/または
・高ビニルポリブタジエン・エラストマー。
【0073】
補強充填剤
【0074】
典型的に、前記ゴム組成物は、カーボンブラックおよびシリカを含む、補強充填剤と配合される。前記カーボンブラックは、約10から約120phr、または約35から約100phr、または約40から約60phrの範囲の量で存在しうる。前記カーボンブラックは、ペレット化した形態またはペレット化されていない軟凝集塊であってもよい。
【0075】
適切なシリカ補強充填剤の例としては、これらに限定されるものではないが、水和非晶質シリカ、沈殿非晶質シリカ、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ヒュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが含まれる。
【0076】
シランカップリング剤
【0077】
シリカカップリング剤は、前記ゴムに前記シリカを化学的に結合させるために使用しうる。一般的にいえば、シリカカップリング剤の任意の通常のタイプ、例えば、シランおよびゴム、特に、硫黄加硫性ゴムと反応しうる構成成分または部分を有するものを、使用することができる。前記カップリング剤は、このように、前記シリカと前記ゴムとの間の接合ブリッジとして作用する。シランカップリング剤のゴム反応性基には、メルカプト、ポリスルフィド、アミノ、ビニルおよびエポキシ基が含まれる。適切なシリカカップリング剤の例には、N-β-(アミノエチル)-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピル-トリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリス(β-メトキシエチル)シランが含まれる。一般的には、シランカップリング剤は、ポリスルフィド成分または構造、例えば、アルコキシ基におけるアルキル基がメチルおよびエチル基から選択され、シラン部分のアルキル基がエチル、プロピルおよびブチル基から選択され、ポリスルフィドのブリッジが(a)2から6、および2,1から2,8、硫黄原子の平均、または(b)2から8、および3,5から4,5、硫黄原子の平均を含む、ビス(3-アルコキシシリルアルキル)ポリスルフィドなどを含みうる。
【0078】
このようなカップリング剤の代表的な例は、(a)そのポリスルフィドのブリッジ中に2から6、および2,1から2,8、硫黄原子の平均、または(b)そのポリスルフィドのブリッジ中に2から8、および3,5から4,5、硫黄原子の平均、を有するビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)-ポリスルフィドである。典型的なカップリング剤には、Evonik製のSi69(登録商標)としても知られている、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-テトラスルフィド、およびビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-ジスルフィドが含まれる。他の追加のカップリング剤には、3-オクタノイルチオ-l-プロピルトリエトキシシランおよびメルカプト機能オルガノシランが含まれる。さらなる適切なシランカップリング剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第0857752号に記載されている。
【0079】
前記シリカカップリング剤の量は変化しうるが、一般的には約3から約24phf2(100部の充填剤に対する部)または約15から約13phfである。
【0080】
ゴム配合成分
【0081】
加工助剤。前記ゴム組成物は、様々な硫黄加硫性成分ゴムを、様々な一般的に使用される添加材料、例えば、硬化助剤(例えば、硫黄、活性化剤、遅延剤、および促進剤など)、加工添加剤(例えば、オイル、粘着付与樹脂を含む樹脂、シリカ、および可塑剤など)、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤、素練り促進剤、および補強材(例えば、カーボンブラックなど)などと混合するなどして配合しうる。
【0082】
加工助剤の量は、約0から約10phrでありうる。このような加工助剤には、例えば、芳香族系、ナフテン系および/またはパラフィン系のプロセスオイルが含まれうる。酸化防止剤の典型的な量は、約1から約5phrを含みうる。代表的な酸化防止剤は、例えば、ジフェニル-p-フェニレンジアミン、TMQ、およびその他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344-346頁に開示されているものであってもよい。オゾン劣化防止剤、例えば、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-ベンゼンジアミン(6PPD)などの典型的な量は、約1から5phrを含みうる。脂肪酸の典型的な量は、使用する場合、ステアリン酸を含むことができ、約0.5から約3phrを含みうる。酸化亜鉛の典型的な量は、約1から約5phrを含みうる。ワックスの典型的な量は、約1から約5phrを含みうる。しばしばマイクロクリスタリンワックスが使用される。素練り促進剤の典型的な量は、約0.1から約1phrを含みうる。典型的な素練り促進剤は、例えば、ペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。加工助剤、例えば、フェノール樹脂(約2phr)およびC5脂肪族HC樹脂(約5phr)(粘着付与剤)なども有用でありうる。
【0083】
加硫剤。加硫は、硫黄加硫剤の存在下で行いうる。適切な硫黄加硫剤の例としては、元素硫黄(遊離硫黄)または硫黄供与性加硫剤、例えば、アミンジスルフィド、高分子ポリスルフィドまたは硫黄オレフィン付加物などが挙げられる。硫黄加硫剤は、約0.5から約8phrの範囲の量で使用しうる。
【0084】
促進剤。促進剤は、加硫に必要な時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改良するために使用される。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤を使用しうる。一次促進剤は、約0.5から約4phrの範囲の合計量で用いられる。別の実施形態では、一次および二次促進剤の組み合わせが、加硫物の特性を活性化しかつ改良するためにより少量(約0.05から約3phrの)で使用される二次促進剤と共に使用される可能性がある。加えて、遅延作用促進剤は、通常の加工温度によって影響されないが、通常の加硫温度で満足な硬化を生じさせるものを用いうる。加硫遅延剤もまた使用されうる。使用しうる適切なタイプの促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チウラム、スルホンアミド、ジチオカルバメート、キサンテート、およびスルフェンアミドでありうる。前記一次促進剤は、チアゾール、例えば、ベンゾチアゾール系促進剤などであってもよい。典型的なベンゾチアゾール系促進剤は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、(TBBS)、4-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBTS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OCBS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)およびジベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)を含むことができ、かつ約0.8から約1.2phrの量で存在しうる。一実施形態では、ベンゾチアゾール促進剤の量は、前記硫黄加硫剤の約30から約60重量%でありうる。
【0085】
空気入りタイヤ
【0086】
本発明の最終目的は、新規なカーボンブラック組成物を含む空気入りタイヤまたは該カーボンブラック組成物を添加剤として含むゴム組成物に向けられる。好ましくは、該タイヤはバス用タイヤまたはトラック用タイヤである。
【0087】
本発明の実施形態にしたがった空気入りタイヤは、前述のカーボンブラック組成物および/または該カーボンブラック組成物を含むゴム組成物をトレッド部分におけるタイヤトレッドに用いることによって、優れた耐摩耗性および低発熱性を示す。さらに、本実施形態にしたがった空気入りタイヤは、従来公知の構造を有し、特に限定されず、通常の方法で製造することができる。また、前記実施形態にしたがった空気入りタイヤに充填されるガスは、空気、または調節された酸素分圧を有するが、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなども含む空気を用いることができる。
【0088】
空気入りタイヤの一例として、好ましくは、一対のビーズ部分、前記ビーズ部分間に不活性に延びるカーカス、前記カーカスのクラウン部分を取り巻くベルトおよびトレッドなどを含む空気入りタイヤが記載される。本発明の実施形態にしたがった空気入りタイヤは、ラジアル構造またはバイアス構造を有しうる。
【0089】
前記トレッドの構造は、特に限定されず、1層構造または多層構造または、路面と直接接触する上層キャップ部分および空気入りタイヤにおける前記キャップ部分の内側に隣接して配置される下層ベース部で構成される、いわゆるキャップベース構造を有しうる。本実施形態では、本発明の実施形態にしたがったゴム組成物を用いて少なくともキャップ部分を形成することが好ましい。前記実施形態にしたがった空気入りタイヤの製造方法における制限は特になく、例えば、以下のように、製造することができる。すなわち、前記実施形態にしたがったゴム組成物を最初に調製し、えられたゴム組成物を、緑色の空気入りタイヤにおけるケーシングのクラウン部分に既に取り付けられた未硬化のベース部分に付着させ、その後所定の温度および圧力の下で既定の型内で加硫形成する。
【0090】
実施例
【0091】
実施例1から3
【0092】
狭いASDを有するカーボンブラック組成物の調製
【0093】
図1に示すような構造を有するファーネス反応器を設置した。具体的には、前記ファーネス反応器は、1,605mmの長さl
1を有する燃焼室を有し、前記燃焼室は、930mmの直径d
1から114mmのくびれへと狭小化した。前記反応器には、空気および燃料を導入するためのダクトと燃焼バーナーが備えられた。前記燃焼室は、114mmの一定直径d
2および456mmの長さl
2を有するチョークに連結された。前記チョークは、その円周に沿って備えられた出発原料を導入するための複数のノズルを備え、1,180mmの長さl
3および114mmの直径d
2(240mmの直径d
3に開く)を有するベンチュリ形状の反応トンネルに連結された。前記反応トンネルは、最終的に約1,500mmの円筒状急冷部分に連結された。両トンネルは急冷装置を備えていた。反応条件の例を以下の表1に示す。
【0094】
【0095】
反応が完了したら、生成物を前記反応器から回収し、最終的なカーボンブラック製造過程に送った。前記生成物のサンプルについて、主要な特性を決定するために分析を行った。その方法を以下により詳細に説明する。
【0096】
凝集体サイズ分布
【0097】
凝集体サイズ分布曲線は、赤色発光ダイオードを伴うBrookhaven BI-DCPディスク遠心機を用いて測定する。この機器は、吸光度の測定値から微細に分割された固体の凝集体サイズ分布曲線を決定するために特に開発され、凝集体サイズ分布を決定するための自動測定部および評価プログラムが装備されている。測定を行うには、まず分散液を以下の方法で調製する:目盛付きの1Lフラスコに、200mlのエタノール、0.5gのNonidet P40代替品(Substitute)、Flukaおよび750mlの脱イオン水を加える。えられた溶液を、9-10のpHまで0.1NのNaOH溶液で調整し、その後、1,000mlまで脱イオン水で満たす。
【0098】
さらに、スピン流体を以下のように調製する:0.25gのNonidet P40代替品、Flukaを950mlの脱イオン水に溶解する。その後、pHを9-10に0.1NのNaOH溶液で調整する。次いで、前記溶液を脱イオン水で1,000mlまで満たす。
【0099】
その後、20mlの分散液を、20mgのカーボンブラックに添加する。分散流体中のカーボンブラックを、50%の電力と80%のパルスに調整した先端DH 13Gを伴うBandelin UW2200 sonifierを使用して、冷却浴中で4、5分間にわたり超音波処理によって分散させる。実際の測定を開始する前に、遠心分離機を11,000rpmの速度で30分間作動させる。ディスクを停止し、0.85mlのエタノールを注入する。11,000rpmの回転速度でディスクを起動し、15mlのスピン流体を注入し、その後、さらに、0.15mlのエタノールを加える。約1分後、250μlのカーボンブラック懸濁液を注入し、機器の測定プログラムを起動し、遠心分離機中のスピン流体の上に50μlのドデカンを積層する。測定開始直後の開始温度(Ts)を記録し、試験直後の終了温度(Te)を記録する。測定のために、各サンプルに対して重複して測定を行う。生のデータ曲線について、その後、散乱光の補正を用いかつ自動ベースライン適応を用い、機器の演算プログラムを使用して評価する。
【0100】
以下のパラメーターは、ソフトウェアに基づいた計算に使用した:
散乱光補正:
補正の種類:ミー(Mie)補正、
ファイル:CARBON.PRM(水中のカーボンブラック)
粒子密度:1.86g/cc
スピン流体:水
スピン流体体積:15ml
温度:T=Ts+2/3×(Te-Ts)
【0101】
実施例1から3に関するASD分布を
図2から4に示す。上記で説明した標準的な条件の下で、3つの実施例を製造した。
【0102】
ヨウ素吸着
【0103】
ヨウ素吸着は、ASTM D-1510にしたがって決定する。
【0104】
BET表面積
【0105】
BET表面積は、ASTM D-6556にしたがって決定する。
【0106】
STSA表面積
【0107】
STSA表面積は、ASTM D-6556にしたがって決定する。
【0108】
着色
【0109】
着色力は、ASTM D-3265にしたがって決定する。
【0110】
吸油数(OAN)
【0111】
吸油数は、ASTM D-2414にしたがって決定する。
【0112】
圧縮されたサンプルの吸油数(COAN)
【0113】
圧縮されたサンプルの吸油数は、ASTM D-3493にしたがって決定する。
【0114】
比較例C1からC3
【0115】
従来のASDを示す市場で入手可能で、標準ファーネス反応器で調製した3つのカーボンブラック組成物を、比較のために使用した。比較例C1からC3のASD分布を、
図2から4に示す。表2は、実施例1から3と比較例C1からC3の主な分析データの比較を表す。
【0116】
【0117】
比較により、本発明のカーボンブラック組成物は、より小さな凝集体の数が少なく、このことは分散および再軟凝集に対してプラスの効果を有し、また、より大きな凝集体の数も少なく、このことはゴム補強および摩耗性能にプラスの効果を有することが示される。また、着色が大幅に向上した。
【0118】
ゴム化合物中のカーボンブラック組成物の特性
【0119】
ゴム化合物は、当該技術分野から知られ、そして、例えば、“Rubber Technology Handbook”,W. Hofmann,Hanser Verlag,1994において公開されている一般的な指示にしたがって調製した。本発明にしたがった3つの試験組成物と3つの標準的な調合物について、以下の表3にまとめる。すべての量はphrとして示す。前記配合物は、二工程方法で調製した。工程1の基本混合物を145から155℃のバッチ温度でかつ50rpmで内部ミキサー(Werner & Pfleiderer GK 1.5 E)を使用し5分以内に調製した。工程2の最終混合物をえるために、前記基本混合物を硫黄および安定化剤で処理し、さらに2分間、50rpmで100から110℃で混合した。最後に、前記配合物は、ゴムシートを製造するためにミル上でえられた。
【0120】
【0121】
ゴム試験の結果を以下の表4にまとめる。
【0122】
【0123】
比較することにより、本発明のカーボンブラックを含むゴム組成物の優れた性能が、特に、補強に関して、明確に実証される。
【0124】
耐摩耗性
【0125】
摩耗抵抗性とも呼ばれる、耐摩耗性は、Grosch, K.A., the 131th ACS Rubber Div. Meeting, No. 97 (1987)およびGrosch, K.A. et al., Kautschuk Gummi Kunststoffe, 50, 841 (1997)に記載された方法にしたがって測定した。
【0126】
実施例1から3および比較例C1からC3にしたがったゴム組成物に関する結果を、以下の表5に示す。各実施例の摩耗抵抗性指数を、参考として対応する比較例(摩耗抵抗性指数=100%)と比較して、示す。
【0127】
【0128】
前記データにより、狭いASDを有する新規なカーボンブラックを含むゴム組成物が、標準的な組成物と比較して優れた耐摩耗性を示すことが明確に実証される。
【0129】
以下に本発明の実施態様を示す。
条項1:
以下の部材、
(i)燃焼室、
(ii)原料を導入するための円筒状管、
(iii)前記円筒状菅から離れるにつれて拡径するカーボンブラック形成のための反応トンネルおよび
(iv)急冷によりカーボンブラック形成を終了させるための円筒状トンネルを含むファーネス反応器であって、
前記反応器において、
(a)前記燃焼室はその長さl1にわたって直径d1から直径d2まで円錐状に狭くなり、
(b)前記管はその長さl2にわたって一定の直径d2を示し、
(c)前記反応トンネルはその長さl3にわたって直径d2から直径d3まで3から4°の角度で拡張しかつ
(d)前記円筒状トンネルはその長さl4にわたって一定の直径d3を示し、
比d2:l2は1:3.5から1:4.5の範囲内にあるという条件が付される、 前記反応器。
条項2:
0.58から0.65のΔD50/Dモードおよび0.5から0.8の相対スパン(D90-D10)/D50を示すカーボンブラック組成物。
条項3:
さらに、1.2から1.5の四分位比(QR)D75/D25を示す、条項2に記載の前記組成物。
条項4:
さらに、1.35未満の多分散性指数を示す、条項2に記載の前記組成物。
条項5:
90から180m2/gのSTSA値を示す条項2に記載の前記組成物。
条項6:
0.58から0.65のΔD50/Dモード比および0.5から0.8の相対スパン(D90-D10)/D50を示すカーボンブラック組成物をえるための方法であって、以下の工程、
(A)熱分解を達成するために、炭化水素出発原料を高温燃焼ガス流にさらす工程、
(B)反応ガスを冷却する工程および
(C)えられたカーボンブラックを回収する工程
を含み、
反応は以下の部材、
(i)燃焼室、
(ii)前記原料を導入するための円筒状管、
(iii)前記円筒状菅から離れるにつれて拡径するカーボンブラック形成のための反応トンネルおよび
(iv)急冷によりカーボンブラック形成を終了させるための円筒状トンネル
を含むファーネス反応器において行い、
かつ
(a)前記燃焼室はその長さl1にわたって直径d1から直径d2まで円錐状に狭くなり、
(b)前記管はその長さl2にわたって一定の直径d2を示し、
(c)前記反応トンネルはその長さl3にわたって直径d2から直径d3まで3から4°の角度で拡張しかつ
(d)前記円筒状終了トンネルはその長さl4にわたって一定の直径d3を示し、
比d2:l2は1:3.5から1:4.5の範囲内にあるという条件が付される、
前記方法。
条項7:
条項2に記載の又は条項6に記載の方法で得られたカーボンブラック組成物を添加することによりポリマー組成物の特性を改良する方法。
条項8:
条項2に記載の又は条項6に記載の方法で得られたカーボンブラック組成物を添加することにより、ポリマー組成物の耐摩耗性および補強性を向上させる方法。
条項9:
前記ポリマーは合成ゴムまたは天然ゴムである、条項7または条項8に記載の前記方法。
条項10:
条項2に記載の又は条項6に記載の方法で得られたカーボンブラック組成物の、ポリマー組成物のための添加剤としての用途。
条項11:
条項2に記載の又は条項6に記載の方法で得られたカーボンブラック組成物の、ポリマー組成物の耐摩耗性および補強性を向上させるための用途。
条項12:
前記ポリマーは合成ゴムまたは天然ゴムである、条項10または条項11に記載の前記用途。
条項13:
条項2に記載の又は条項6に記載の方法で得られたカーボンブラック組成物の、顔料としての用途。
条項14:
条項2に記載の又は条項6に記載の方法で得られたカーボンブラック組成物を含むポリマー組成物。
条項15:
条項2に記載の若しくは条項6に記載の方法で得られたカーボンブラック組成物、または条項14に記載のポリマー組成物を含む空気式タイヤ。
更に本発明の実施態様を示す。
1.
以下の部材、
(i)燃焼室、
(ii)原料を導入するための円筒状管、
(iii)カーボンブラック形成のためのベンチュリ形状の反応トンネルおよび
(iv)急冷によりカーボンブラック形成を終了させるための円筒状トンネルを含むファーネス反応器であって、
前記反応器において、
(a)前記燃焼室はその長さl1にわたって直径d1から直径d2まで円錐状に狭くなり、
(b)前記管はその長さl2にわたって一定の直径d2を示し、
(c)前記反応トンネルはその長さl3にわたって直径d2から直径d3まで拡張しかつ
(d)前記円筒状トンネルはその長さl4にわたって一定の直径d3を示し、
比d2:l2は1:3.5から1:4.5の範囲内にあるという条件が付される、
前記反応器。
2.
0.58から0.65のΔD50/Dモードおよび0.5から0.8の相対スパン(D90-D10)/D50を示すカーボンブラック組成物。
3.
さらに、1.2から1.5の四分位比(QR)D75/D25を示す、前記2に記載の前記組成物。
4.
さらに、1.35未満の多分散性指数を示す、前記2に記載の前記組成物。
5.
90から180m2/gのSTSA値を示す前記2に記載の前記組成物。
6.
0.58から0.65のΔD50/Dモード比および0.5から0.8の相対スパンを示すカーボンブラック組成物をえるための方法であって、以下の工程、
(A)熱分解を達成するために、炭化水素出発原料を高温燃焼ガス流にさらす工程、
(B)反応ガスを冷却する工程および
(C)えられたカーボンブラックを回収する工程
を含み、
反応は以下の部材、
(i)燃焼室、
(ii)前記原料を導入するための円筒状管、
(iii)カーボンブラック形成のためのベンチュリ形状の反応トンネルおよび
(iv)急冷によりカーボンブラック形成を終了させるための円筒状トンネル
を含むファーネス反応器において行い、
かつ
(a)前記燃焼室はその長さl1にわたって直径d1から直径d2まで円錐状に狭くなり、
(b)前記管はその長さl2にわたって一定の直径d2を示し、
(c)前記反応トンネルはその長さl3にわたって直径d2から直径d3まで拡張しかつ
(d)前記円筒状終了トンネルはその長さl4にわたって一定の直径d3を示し、
比d2:l2は1:3.5から1:4.5の範囲内にあるという条件が付される、
前記方法。
7.
前記2に記載のカーボンブラック組成物をポリマー組成物に添加することにより前記ポリマー組成物の特性を改良する方法。
8.
前記2に記載のカーボンブラック組成物をポリマー組成物に添加することにより、前記ポリマー組成物の耐摩耗性および補強性を向上させる方法。
9.
前記ポリマーは合成ゴムまたは天然ゴムである、前記7または前記8に記載の前記方法。
10.
前記2に記載のカーボンブラック組成物の、ポリマー組成物のための添加剤としての用途。
11.
前記2に記載のカーボンブラック組成物の、ポリマー組成物の耐摩耗性および補強性を向上させるための用途。
12.
前記ポリマーは合成ゴムまたは天然ゴムである、前記10または前記11に記載の前記用途。
13.
前記2に記載のカーボンブラック組成物の、顔料としての用途。
14.
前記2に記載のカーボンブラック組成物を含むポリマー組成物。
15.
前記2に記載のカーボンブラック組成物または前記14に記載のポリマー組成物を含む空気式タイヤ。
加えて、本発明の実施態様を以下に示す。
I-1.
0.58から0.65のΔD50/Dモードおよび0.5から0.8の相対スパン(D90-D10)/D50を示し、
前記ΔD50/Dモードは、半値全幅(FWHM)であるΔD50をモード径Dモードで割ることによりえられる幅の相対的分測である、
ファーネスカーボンブラック組成物。
I-2.
ファーネス反応器においてえられる、前記I-1に記載の前記組成物。
I-3.
さらに、1.2から1.5の四分位比(QR)D75/D25を示す、前記I-1または2に記載の前記組成物。
I-4.
さらに、1.35未満の多分散性指数を示し、
前記多分散性指数は、DwをDnで割ることによりえられる比率Dw/Dnであり、ここで、Dwは質量加重平均粒径であり、Dnは数加重平均粒径比率である、
前記I-3に記載の前記組成物。
I-5.
90から180m2/gのSTSA値を示す前記I-3に記載の前記組成物。
さらに、本発明の実施態様を以下に示す。
II-1.
0.58から0.65のΔD50/Dモードおよび0.5から0.8の相対スパン(D90-D10)/D50を示し、
前記ΔD50/Dモードは、半値全幅(FWHM)であるΔD50をモード径Dモードで割ることによりえられる幅の相対的分測である、
ファーネスカーボンブラック組成物。
II-2.
さらに、1.2から1.5の四分位比(QR)D75/D25を示す、II-1に記載の前記組成物。
II-3.
さらに、1.35未満の多分散性指数を示し、
前記多分散性指数は、DwをDnで割ることによりえられる比率Dw/Dnであり、ここで、Dwは質量加重平均粒径であり、Dnは数加重平均粒径比率である、
II-2に記載の前記組成物。
II-4.
90から180m2/gのSTSA値を示すII-2に記載の前記組成物。
II-5.
II-1に記載のカーボンブラック組成物を含む、ポリマー組成物。
II-6.
II-1に記載のカーボンブラック組成物、またはII-5に記載のポリマー組成物を含む空気式タイヤ。
さらに、本発明の追加の実施態様を以下に示す。
III-1.
0.58から0.65のΔD
50
/D
モード
、1.2から1.5の四分位比(QR)D
75
/D
25
および0.5から0.8の相対スパン(D
90
-D
10
)/D
50
を示し、
前記ΔD
50
/D
モード
は、半値全幅(FWHM)であるΔD
50
をモード径D
モード
で割ることによりえられる幅の相対的分測である、
ファーネスカーボンブラック組成物。
III-2.
さらに、1.35未満の多分散性指数を示し、
前記多分散性指数は、D
w
をD
n
で割ることによりえられる比率D
w
/D
n
であり、ここで、D
w
は質量加重平均粒径であり、D
n
は数加重平均粒径である、
III-1に記載の組成物。
III-3.
90から180m
2
/gのSTSA値を示すIII-1に記載の組成物。
III-4.
III-1に記載のカーボンブラック組成物を含む、ポリマー組成物。
III-5.
III-1に記載のカーボンブラック組成物、またはIII-4に記載のポリマー組成物を含む空気式タイヤ。