(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】電力コンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 Q
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021086436
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2021-06-28
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504162361
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS, INC.
【住所又は居所原語表記】186 Ruey Kuang Road, Neihu, Taipei 114, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】張弛
(72)【発明者】
【氏名】バルボサ、ピーター
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0091828(US,A1)
【文献】JIAO YANG ET AL,Topology Evaluation and Comparison for Isolated Multilevel DC/DC Converter for Power Cell in Solid State Transformer,2019 IEEE APPLIED POWER ELECTRONICS CONFERENCE AND EXPOSITION (APEC), IEEE,2019年03月17日,802-809
【文献】ZHANG CHI ET AL,DC-link Capacitor Voltage Balancing Control for Series Half Bridge LLC Resonant Converter,2020 IEEE APPLIED POWER ELECTRONICS CONFERENCE AND EXPOSITION (APEC), IEEE,2020年03月15日,2163-2169
【文献】JIAO YANG ET AL,Topology Evaluation and Comparison for Isolated Multilevel DC/DC Converter for Power Cell in Solid S,2019 IEEE APPLIED POWER ELECTRONICS CONFERENCE AND EXPOSITION (APEC), IEEE,2019年03月17日,802-809
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧又は出力電流を少なくとも1つの負荷に供給するため、電圧源からの入力信号を受信する電力コンバータであって、
(a)1次側回路と、(b)2次側回路と、(c)制御回路とを備え、
(a)前記1次側回路は、(i)直列接続された第1組及び第2組スイッチングデバイスと、(ii)LC共振回路と、(iii)絶縁トランスとを有し、
(i)前記第1組及び第2組スイッチングデバイスは、それぞれ、直列接続された複数のスイッチングデバイスを有し、各前記スイッチングデバイスは、スイッチ制御信号によって制御され、前記入力信号は、直列接続された前記第1組及び第2組スイッチングデバイスの両端へ供給され、
(ii)前記LC共振回路は、第1節点と第2節点との間に接続され、前記第1節点は、前記第1組スイッチングデバイスが有する第1スイッチングデバイスと第2スイッチングデバイスとの間の共通節点であり、前記第2節点は、前記第2組スイッチングデバイスが有する第3スイッチングデバイスと第4スイッチングデバイスとの間の共通節点であり、
(iii)前記絶縁トランスは、第1及び第2巻線を有し、
前記第1巻線は、前記LC共振回路に接続され、
前記第1巻線の一端は、共振インダクタと前記LC共振回路の励磁インダクタンスとの間に電気的に接続され、前記第1巻線の他端は、共振コンデンサと前記LC共振回路の前記励磁インダクタンスとの間に電気的に接続され、
(b)前記2次側回路は、前記絶縁トランスの第2巻線と並列に接続され、
前記2次側回路は、フィルタコンデンサを有し、
前記フィルタコンデンサは、
前記少なくとも1つの負荷に前記出力電圧又は前記出力電流を供給し、
(c)前記制御回路は、
前記出力電圧、前記出力電流、前記入力信号、及び1つ以上の外部制御信号のうちの少なくとも1つに基づいて任意の時点で2つ以上の変調モードのうちの1つを選択してこの選択された前記変調モードの下で前記1次側回路の前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させる前記スイッチ制御信号を供給し、
前記出力電圧又は前記出力電流に基づいて前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させるものであり、第1変調モード及び第2変調モードで動作するように構成されており、前記第1変調モード下では、3つの異なる電圧レベルからなる位相レッグ出力電圧を生成するために前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させ、前記位相レッグ出力電圧は前記第1節点と前記第2節点との間の電圧であり、前記第2変調モード下では、2つの異なる電圧レベルからなる前記位相レッグ出力電圧を生成するために前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させるものであり、
前記制御回路は、第4変調モードで動作するように更に構成されており、前記第4変調モード下では、前記第1組スイッチングデバイスの前記第1及び第2スイッチングデバイスのうち一方の2つのパルス信号毎の1つのデューティ比が増加し、前記第2組スイッチングデバイスの前記第3及び第4スイッチングデバイスのうち一方の2つのパルス信号毎の1つのデューティ比が増加し、又は、前記第1組スイッチングデバイスの前記第1及び第2スイッチングデバイスのうち一方の2つのパルス信号毎の1つデューティ比が減少し、前記第2組スイッチングデバイスの前記第3及び第4スイッチングデバイスのうち一方の2つのパルス信号毎の1つのデューティ比が減少し、
前記第2及び第3スイッチングデバイスは、それぞれ前記第1及び第4スイッチングデバイスに相補的である、電力コンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電力コンバータであって、
前記変調モードの1つが対称変調モードとして動作し、
前記対称変調モードでは、前記第1組及び第2組スイッチングデバイスの各組における前記スイッチングデバイスへの前記スイッチ制御信号は相補的であり、
前記第1組スイッチングデバイスの前記第1スイッチングデバイスを動作させる前記スイッチ制御信号及び前記第2組スイッチングデバイスの前記第
4スイッチングデバイスを動作させる前記スイッチ制御信号は、
同期されており、
50%のデューティサイクルのスイッチング信号である、電力コンバータ。
【請求項3】
請求項1に記載の電力コンバータであって、
前記変調モードの1つが非対称変調モードとして動作し、
前記非対称変調モードでは、前記第1組及び第2組スイッチングデバイスの各組における前記スイッチングデバイスへの
前記スイッチ制御信号が相補的であり、
前記第1組スイッチングデバイスの
前記第1スイッチングデバイスを動作させる前記スイッチ制御信号及び前記第2組スイッチングデバイスの
前記第
4スイッチングデバイスを動作させる前記スイッチ制御信号は、
共通のスイッチング周波数下で動作する25%デューティサイクル信号であり、
互いに180度位相シフトしている、電力コンバータ。
【請求項4】
請求項1に記載の電力コンバータであって、
前記第1組スイッチングデバイスの両端に接続された第1入力コンデンサと、
前記第2組スイッチングデバイスの両端に接続された第2入力コンデンサとを更に備え、
前記第1組スイッチングデバイスは、第1組スイッチ制御信号によって制御され、
前記第2組スイッチングデバイスは、第2組スイッチ制御信号によって制御され、
前記第1入力コンデンサの電圧が
前記第2入力コンデンサの電圧より高い場合、前記制御回路は、
前記第1組スイッチ制御信号の遷移を遅延させ、
前記第2組スイッチ制御信号の遷移を同じ量だけ時間的に進め、
前記第1入力コンデンサの電圧が
前記第2入力コンデンサの電圧よりも低い場合、前記制御回路は、
前記第1組スイッチ制御信号の遷移を早め、
前記第2組スイッチ制御信号の遷移を同じ量だけ遅延させる、電力コンバータ。
【請求項5】
請求項1に記載の電力コンバータであって、
前記制御回路は、周波数シフト、位相シフト、デューティサイクルシフト、及びそれらの組合せの何れかを使用し、選択された前記変調モード間を遷移する、電力コンバータ。
【請求項6】
請求項1に記載の電力コンバータであって、
前記第1組スイッチングデバイスは、
前記第1及び第2スイッチングデバイスを備え、
前記第2組スイッチングデバイスは、
前記第3及び第4スイッチングデバイスを備え、
(i)
前記第1及び第4スイッチングデバイスが両方とも非導通の場合、
前記第1及び第2節点の両端の電圧は第1電圧レベルであり、
(ii)
前記第1及び第4スイッチングデバイスのうちの1つが導通している場合、
前記第1及び第2節点の両端の電圧は第2電圧レベルであり、
(iii)
前記第1及び第4スイッチングデバイスが両方とも導通している場合、
前記第1及び第2節点の両端の電圧は第3電圧レベルであり、
前記第1電圧レベルは接地であり、前記第2電圧レベルは前記入力信号の略半分であり、前記第3電圧レベルは前記入力信号と略同レベルである、電力コンバータ。
【請求項7】
請求項1に記載の電力コンバータであって、
前記第1スイッチングデバイス、前記第2スイッチングデバイス、前記第3スイッチングデバイス及び前記第4スイッチングデバイスは、第1スイッチ制御信号、第2スイッチ制御信号、第3スイッチ制御信号及び第4スイッチ制御信号によってそれぞれ制御され、
前記第1変調モードでは、(i)-(iv)が成立しており、
(i)前記第1及び第2スイッチ制御信号が互いに実質的に相補的であり、前記第3及び第4スイッチ制御信号が互いに実質的に相補的であり、
(ii)前記第1、第2、第3、及び第4スイッチ制御信号が共通のスイッチング周期で周期的であり、
(iii)前記共通のスイッチング周期内において、(1)と、(2)又は(3)とを満たし、
(1
)各スイッチ制御信号には、2つの立ち上がりエッジと2つの立ち下がりエッジがあり、
(2)前記第1スイッチ制御信号の第1立ち上がりエッジは、前記第4スイッチ制御信号の第1立ち上がりエッジよりも第1所定時間だけ遅れ、前記第1スイッチ制御信号の第2立ち上がりエッジは、前記第4スイッチ制御信号の第2立ち上がりエッジよりも進んでおり、
(3)前記第1スイッチ制御信号の前記第1立ち上がりエッジは、前記第4スイッチ制御信号の前記第1立ち上がりエッジよりも前記第1所定時間進んでおり、前記第1スイッチ制御信号の前記第2立ち上がりエッジは、前記第4スイッチ制御信号の前記第2立ち上がりエッジよりも第2所定時間だけ遅れており、
(iv)前記制御回路は、前記スイッチング周期、前記第1所定時間、及び前記第2所定時間を変化させる、電力コンバータ。
【請求項8】
請求項7に記載の電力コンバータであって、
前記制御回路は、
前記第1変調モードとは異なる
前記第2変調モードに従い、前記第1、第2、第3、及び第4スイッチ制御信号を生成するように構成可能であり、
前記第2変調モードは、対称変調モードとして動作し、
前記第1及び第2変調モードのうちの1つは、可変周波数変調を含み、
前記第1及び第2変調モードのうちの1つは、定周波数変調制御を含み、
前記制御回路は、第1期間、前記第1変調モードの下で前記電力コンバータを動作させ、第2期間、前記第2変調モードの下で前記電力コンバータを動作させることによって、前記電力コンバータのゲインを変化させる、電力コンバータ。
【請求項9】
出力電圧又は出力電流を少なくとも1つの負荷に供給するため、電圧源から入力信号を受信するための第1及び第2入力端子を有する電力コンバータであって、
(a)1次及び2次巻線を備えるトランスと、(b)1次側回路と、(c)2次側回路とを備え、
(b)
前記1次側回路は、(i)第1、第2、第3及び第4の直列接続されたスイッチングデバイスと、(ii)共振タンク回路とを有し、
(i)前記
第1、第2、第3及び第4スイッチングデバイスは、前記第1及び第2入力端子の両端に接続されており、前記第1入力端子は前記第1スイッチングデバイスと接続され、前記第2入力端子は前記第4スイッチングデバイスと接続され、前記第1及び第2スイッチングデバイスは、それぞれ、第1及び第
2スイッチ制御信号によって制御され、前記第3及び第4スイッチングデバイスは、それぞれ、第3及び第
4スイッチ制御信号によって制御され、
(ii)前記共振タンク回路は、(1)前記第1及び第2スイッチングデバイスとの間の共通節点である第1節点と、前記第3及び第4スイッチングデバイスと間の共通節点である第2節点との間、及び(2)前記トランスの前記1次巻線に結合されている共振回路であり、
前記1次巻線の一端は、共振インダクタと前記共振タンク回路の励磁インダクタンスとの間に電気的に接続され、前記1次巻線の他端は、共振コンデンサと前記共振タンク回路の前記励磁インダクタンスとの間に電気的に接続され、
(c)前記2次側回路は、前記トランスの前記2次巻線に結合されており、前記2次側回路は、前記負荷へ前記出力電圧又は出力電流を供給するフィルタコンデンサを備え、制御信号は、共通のスイッチング周期を持つ周期的なものであり、
(iii)前記共通のスイッチング周期内に、
(1)各スイッチ制御信号が2つの立ち上がりエッジと2つの立ち下がりエッジを持ち、且つ、
(2)前記第1スイッチ制御信号の第1立ち上がりエッジは、前記第4スイッチ制御信号の第1立ち上がりエッジに第1所定時間遅延し、前記第1スイッチ制御信号の第2立ち上がりエッジは、前記第4スイッチ制御信号の第2立ち上がりエッジに第2所定時間先行するか、又は(3)前記第1スイッチ制御信号の前記第1立ち上がりエッジは、前記第4スイッチ制御信号の前記第1立ち上がりエッジに前記第1所定時間先行し、前記第1スイッチ制御信号の前記第2立ち上がりエッジは、前記第4スイッチ制御信号の前記第2立ち上がりエッジに前記第2所定時間遅延するか何れかであり、
(iv
)制御回路は、
前記スイッチング周期、前記第1所定時間、及び前記第2所定時間を変化させ、
前記出力電圧又は前記出力電流に基づいて、前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させ、
第1変調モードで動作するように構成され、
前記第1変調モード下では、3つの異なる電圧レベルからなる位相レッグ出力電圧を生成するために前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させ、前記位相レッグ出力電圧は前記第1節点と前記第2節点との間の電圧である、電力コンバータ。
【請求項10】
出力電圧又は出力電流を少なくとも1つの負荷に供給するため、電圧源から入力信号を受信する電力コンバータであって、
(a)1次側回路と、(b)2次側回路と、(c)制御回路とを備え、
(a)前記1次側回路は、(i)直列接続された第1組及び第2組スイッチングデバイスと、(ii)LC共振回路と、(iii)絶縁トランスとを有し、
(i)前記第1組及び第2組スイッチングデバイスは、それぞれ、直列接続された複数のスイッチングデバイスを有し、各前記スイッチングデバイスは、スイッチ制御信号によって制御され、前記入力信号は、直列接続された前記第1組及び第2組スイッチングデバイスの両端へ供給され、
(ii)前記LC共振回路は、第1節点と第2節点との間に接続され、前記第1節点は、前記第1組スイッチングデバイスが有する第1スイッチングデバイスと第2スイッチングデバイスとの間の共通節点であり、前記第2節点は、前記第2組スイッチングデバイスが有する第3スイッチングデバイスと第4スイッチングデバイスとの間の共通節点であり、
(iii)前記絶縁トランスは、第1及び第2巻線を備え、
前記第1巻線は、前記LC共振回路に接続され、
前記第1巻線の一端は、共振インダクタと前記LC共振回路の励磁インダクタンスとの間に電気的に接続され、前記第1巻線の他端は、共振コンデンサと前記LC共振回路の前記励磁インダクタンスとの間に電気的に接続され、
(b)前記2次側回路は、前記絶縁トランスの
前記第2巻線と並列に接続され、
前記2次側回路は、フィルタコンデンサを有し、
前記フィルタコンデンサは、前記少なくとも1つの負荷に前記出力電圧及び前記出力電流の少なくとも一方を供給するように適合されており、
(c)前記制御回路は、
前記出力電圧又は前記出力電流に基づいて、前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させ、
第1変調モード及び第2変調モードで動作するように構成され、
前記第1変調モード下では、3つの異なる電圧レベルからなる位相レッグ出力電圧を生成するように前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させ、前記位相レッグ出力電圧は前記第1節点と前記第2節点との間の電圧であり、前記第2変調モード下では、2つの異なる電圧レベルからなる前記位相レッグ出力電圧を生成するように前記
第1~第4スイッチングデバイスを動作させるものであり、
前記制御回路は、第4変調モードで動作するように更に構成されており、前記第4変調モード下では、前記第1組スイッチングデバイスの前記第1及び第2スイッチングデバイスのうち一方の2つのパルス信号毎の1つのデューティ比が増加し、前記第2組スイッチングデバイスの前記第3及び第4スイッチングデバイスのうち一方の2つのパルス信号毎の1つのデューティ比が増加し、又は、前記第1組スイッチングデバイスの前記第1及び第2スイッチングデバイスのうち一方の2つのパルス信号毎の1つデューティ比が減少し、前記第2組スイッチングデバイスの前記第3及び第4スイッチングデバイスのうち一方の2つのパルス信号毎の1つのデューティ比が減少し、
前記第2及び第3スイッチングデバイスは、それぞれ前記第1及び第4スイッチングデバイスに相補的である、電力コンバータ。
【請求項11】
請求項1~請求項10の何れか1つに記載の電力コンバータであって、
前記制御回路は、第3変調モードで動作するように更に構成されており、前記第3変調モードでは、
前記第1スイッチングデバイス、前記第2スイッチングデバイス、前記第3スイッチングデバイス、及び前記第4スイッチングデバイスはゼロ電圧レベルを生成するように動作する、電力コンバータ。
【請求項12】
請求項1~請求項8及び請求項10のいずれか1つを引用する請求項11に記載の電力コンバータであって、
前記制御回路は、前記第1変調モードでの動作と前記第2変調モードでの動作との間に、前記第3変調モードで動作する、電力コンバータ。
【請求項13】
請求項10に記載の電力コンバータであって、
前記制御回路は、前記第1変調モードでの動作と前記第2変調モードでの動作との間に、前記第4変調モードで動作する、電力コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力コンバータに関する。より具体的には、非常に広い電圧範囲に渡って出力電圧の調整を図るために、様々な変調方式を用いて共振DC/DCコンバータを制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電力変換アプリケーション(電気自動車(EV)のバッテリー充電等)は、広い電圧範囲に渡って安定化された出力電圧を必要としている。例えば、一般的なEVのバッテリー充電回路は、2つのコンバータ段がある。(i)固定DCバス電圧又は可変DCバス電圧の何れかを提供するフロントエンドAC/DCコンバータ、及び(ii)バッテリーと直接インターフェースで接続する絶縁型DC/DCコンバータである。DC/DCコンバータには、様々な負荷電流条件やバッテリーの充電状態の下で広い電圧範囲に渡って安定化電圧を提供する必要がある。例えば、従来のEVの一般的なバッテリーの電圧範囲は、240V~460Vである。但し、一部のプレミアム乗用EV、ユーティリティEV、及び電気バス又はトラックトレーラーは、500V~950Vの出力バッテリー電圧を有している。従って、異なるバッテリー電圧レベルでの充電要求に対応するために、非常に広い出力電圧範囲に渡って安定した出力電圧を提供できるDC/DCコンバータが望まれる。
【0003】
LLC共振型コンバータトポロジは、高効率、磁気統合によるシンプルな構造、1次と2次の両方のスイッチでのソフトスイッチング、及び幅広い電圧範囲のアプリケーションに適した機能により、絶縁型DC/DCコンバータとして広く使用されている。
【0004】
図1A及び
図1Bは、それぞれ、閉ループ電圧制御下の例示的な従来のフルブリッジLLC共振コンバータ、並びにスイッチ制御信号及び1次側フルブリッジ出力電圧V
ABに関するタイミング図である。これらの1次側スイッチのスイッチング周波数を制御することによって、出力電圧V
oは調整することができる。LLC共振コンバータが、共振インダクタL
rと共振コンデンサC
rで決定される共振周波数(f
r)で動作し、DC電圧ゲインMがトランスの巻数比N
P/N
Sに等しいとき(MはV
o/V
inに等しい)、最も高い効率が得られる。スイッチング周波数(f
sw)が共振周波数f
rより大きい場合、DC電圧ゲインMは減少する。逆に、スイッチング周波数f
swが共振周波数f
rより小さい場合は、ゲインMが増加する。但し、スイッチング周波数f
swが共振周波数f
rから離れるにつれて、効率は常に低下する。広い出力電圧範囲を実現するために、LLC共振コンバータは非常に広い周波数範囲で動作するため、必然的に効率が低下する。更に、LLC共振コンバータの最大及び最小DC電圧ゲインは、励磁インダクタンスL
mと共振インダクタンスL
rの比率等の回路パラメータと負荷条件とによって決定されるため、LLC共振コンバータは、すべての負荷条件で非常に広い出力電圧範囲を実現できない場合がある。
【0005】
バッテリー充電のような広い出力電圧範囲のアプリケーションの場合、LLC共振回路のパラメータは、効率と出力電圧範囲の間で慎重にトレードオフする必要がある。従来技術では、以下の非特許文献に開示されているような、出力電圧範囲を実現するための多くの技術が開発されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Design Methodology of LLC Resonant Converters for Electric Vehicle Battery Chargers, by J. Deng et al., published in the IEEE Transactions on Vehicular Technology, vol. 63, no. 4, pp. 1581-1592, May 2014
【文献】An LLC Resonant DC-DC Converter for Wide Output Voltage Range Battery Charging Applications, by F. Musavi et al., published in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 28, no. 12, pp. 5437-5445, Dec. 2013
【文献】A Design Procedure for Optimizing the LLC Resonant Converter as a Wide Output Range Voltage Source, by R. Beiranvand et al., published in the IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 27, no. 8, pp. 3749-3763, Aug. 2012
【文献】Optimal Design Methodology for LLC Resonant Converter in Battery Charging Applications Based on Time-Weighted Average Efficiency, by Z. Fang et al., published in the IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 30, no. 10, pp. 5469-5483, Oct. 2015
【文献】Multimode Optimization of the Phase-Shifted LLC Series Resonant Converter by U. Mumtahina and P. J. Wolfs, published in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 33, no. 12, pp. 10478-10489, Dec. 2018
【文献】The three-level ZVS PWM converter-a new concept in high voltage DC-to-DC conversion, by J. R. Pinheiro and I. Barbi, published in the Proceedings of the 1992 International Conference on Industrial Electronics, Control, Instrumentation, and Automation, San Diego, CA, USA, 1992, pp. 173-178 vol.1
【文献】Three-level LLC series resonant DC/DC converter, by Y. Gu, et al., published in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 20, no. 4, pp. 781-789, July 2005
【文献】DC-DC converter: four switches Vpk =Vin/2, capacitive turn-off snubbing, ZV turn-on, by I. Barbi, et al. in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 19, no. 4, pp. 918-927, July 2004
【文献】Asymmetrical Duty Cycle-Controlled LLC Resonant Converter With Equivalent Switching Frequency Doubler, by S. Zong, et al., published in IEEE Transactions on Power Electronics, vol. 31, no. 7, pp. 4963-4973, 7 2016
【文献】Wide input voltage range compensation in DC/DC resonant architectures for on-board traction power supplies, by A. Coccia, et al., published in 2007 European Conference on Power Electronics and Applications, 2007
【文献】Variable Frequency Multiplier Technique for High-Efficiency Conversion Over a Wide Operating Range, by W. Inam, et al., publi Electronics, vol. 4, no. 2, pp. 335-343, June 2016
【文献】Research on Dual-Operation Mode of 3-level LLC resonant converter, by A.Z. Li, et al., published in 2015 9th International Conference on Power Electronics and ECCE Asia (ICPE-ECCE Asia), 2015
【文献】Periodically Swapping Modulation (PSM) Strategy for Three-Level (TL) DC/DC Converters With Balanced Switch Current, by D. Liu, et al., published in IEEE Transactions on Industrial Electronics, vol. 65, no. 1, pp. 412-423, January 2018
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9263960号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0229225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それにもかかわらず、これらの技術は、従来のEV充電アプリケーションにおける限られた出力電圧範囲(例えば、200V~500V)を達成するためにコンバータ回路を最適化することしかできない。
【0009】
優れた効率でより広い出力電圧範囲を達成するために、従来のLLC共振型コンバータの回路構造と制御方式の変更が提案されている。例えば、非特許文献5では、従来の周波数制御方式と位相シフト制御方式を組み合わせて広い出力電圧範囲を実現するLLC共振コンバータを開示している。
図2Aと2Bはそれぞれ、閉ループ電圧制御を備えたMumtahinaのフルブリッジLLC共振コンバータと、スイッチ制御信号と1次側フルブリッジ出力電圧VABの位相シフト制御下のタイミング図を示している。Mumtahinaは、1次側スイッチの相脚での2組のゲート信号の間に位相シフトを提供することが教示されている。位相シフト制御とスイッチング周波数制御の両方を用いることで、MumtahinaのLLC共振コンバータは、電圧降圧動作でより低いスイッチング周波数で動作する。
【0010】
特許文献1(発明者M. Jovanovic and B. Irving タイトル"Power Converters for Wide Input or Output Voltage Range and Control Methods Thereof" 2016年2月16日登録)では、フルブリッジトポロジ又はハーフブリッジトポロジの何れかで動作するフルブリッジLLC回路のトポロジモーフィング制御方法を開示している。
図3A及び3Bは、それぞれ、トポロジモーフィング制御下のJovanovicのフルブリッジLLC共振コンバータと、フルブリッジからハーフブリッジトポロジへの遷移中のスイッチ制御信号のタイミング図を示している。Jovanovicでは、回路トポロジが制御信号に適応し、その結果、入力又は出力の動作条件に応答する。
【0011】
特許文献2(発明者 Y. Jang and M. Jovanovic タイトル"Resonant Converter and Control Methods Thereof," 2015年8月13日出願)では、可変周波数制御方式と遅延時間制御方式を組み合わせた直列共振型コンバータ(SRC)の制御方式を開示している。
図4は、JangのSRCの回路図である。Jangでは、1次側のスイッチに可変周波数制御方式を、2次側のスイッチに遅延時間制御方式を採用している。その結果、出力電圧を高めることができ、狭いスイッチング周波数範囲で広い出力電圧範囲を実現している。
【0012】
広い出力電圧範囲を達成するために、トポロジと制御方式の他の多くのバリエーションが従来のLLC共振コンバータに対して提案されてきた。但し、これらのバリエーションにはすべて、実装の複雑さ、部品点数の増加、望ましくないダイナミクス等の欠点がある。加えて、これらのバリエーションはまだ十分に広い出力電圧範囲を達成していない。例えば、200V~1000VのEV急速充電器はまだ実現されていない。
【0013】
広い出力電圧範囲を実現するための課題として、LLC共振コンバータへの入力電圧が、望ましくないほど高いDCゲインを回避するのに十分な高さでなければならないことである。1次側の各スイッチングデバイスは、入力電圧全体を遮断する必要があるため(例えば、
図1Aに示すLLC共振コンバータを参照)、入力電圧が高いと、高電圧コンポーネントのコストが増加する。
【0014】
広い出力電圧範囲を実現するためには、LLC共振コンバータへの入力電圧は、望ましくないほど高いDCゲインを回避するのに十分な高さである必要がある。これに関して、各スイッチングデバイスが入力電圧の半分だけを遮断する3レベルトポロジは、
図1の従来のフルブリッジトポロジより魅力的な代替案であり、3レベルトポロジは、例えば非特許文献6で開示されている。3レベルトポロジについては、非特許文献7でLLCコンバータについて説明されている。GuのLLCコンバータは、補助回路を追加することなく、スイッチのゼロ電圧スイッチング(ZVS)を実現している。
【0015】
積層型降圧トポロジとして知られる3レベルシリアルハーフブリッジ(SHB)トポロジは、非特許文献8に開示されている。Barbiは、Pinheiroの従来の3レベルトポロジの2つのクランプ用ダイオードを取り除いている。
【0016】
DC/DCコンバータの半入力電圧、2レベル変調方式は、非特許文献9で開示されている。Zongは、1次スイッチのスイッチング周波数を半分にして、駆動損失を減らしている。
【0017】
非特許文献10、11及び12の中で、広い入力電圧範囲、全入力電圧、2レベル変調及び半入力電圧であるアプリケーションについて、2レベル変調方式がSHB LLCコンバータに適用されている。
【0018】
広い出力電圧範囲を実現するために、一旦最大動作周波数に到達すると、3レベル変調アプローチにより電圧ゲインが減少する。
図5A及び5Bは、それぞれ、ゲート信号の回路図及びタイミング図を示し、2レベル変調方式もまた、出力電圧を調整するための効果的なアプローチであり得ることを実証している。但し、3レベル変調方式下では、1次電源スイッチを流れる電流は平衡化されないため、デバイスに熱アンバランスが発生し、デバイスの寿命が短くなり、デバイスの損傷につながることさえある。電源スイッチの電流のバランスをとるために、非特許文献13では定期的に交換する変調戦略が開示されている。
図6A及び
図6Bはそれぞれ、LiuのDC/DCコンバータにおけるゲート信号の回路図及びタイミング図である。 但し、各ハーフブリッジのLiuのゲート信号は相補的ではないためゲート駆動回路が複雑になる。更に、MOSFETのボディダイオードは、最適化されていないゲート信号により電流を伝導するが、これにより伝導損失が増加しシステム効率が低下する。
【0019】
従って、従来の技術の欠点を克服するために、改善された電力コンバータを提供する必要がある。
【0020】
本発明は、上述した従来技術の課題に対処するため、広い出力電圧範囲で動作する絶縁型DC/DCコンバータ及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、出力電圧又は出力電流を少なくとも1つの負荷に供給するため、電圧源からの入力信号を受信する電力コンバータであって、(a)1次側回路と、(b)2次側回路と、(c)制御回路とを備え、(a)前記1次側回路は、(i)直列接続された第1組及び第2組スイッチングデバイスと、(ii)LC共振回路と、(iii)絶縁トランスとを有し、(i)前記第1組及び第2組スイッチングデバイスは、それぞれ、直列接続された複数のスイッチングデバイスを有し、各前記スイッチングデバイスは、スイッチ制御信号によって制御され、前記入力信号は、直列接続された前記第1組及び第2組スイッチングデバイスの両端へ供給され、(ii)前記LC共振回路は、前記第1組スイッチングデバイスの第1節点及び前記第2組スイッチングデバイスの第2節点との間に接続され、(iii)前記絶縁トランスは、第1及び第2巻線を有し、第1巻線は、前記LC共振回路の第3及び第4節点の間に接続され、(b)前記2次側回路は、前記絶縁トランスの第2巻線と並列に接続され、前記2次側回路は、フィルタコンデンサを有し、前記フィルタコンデンサは、少なくとも1つの負荷に前記出力電圧又は前記出力電流を供給し、(c)前記制御回路は、任意の時点で2つ以上の変調方式のうちの1つを選択し、前記出力電圧、前記出力電流、前記入力信号、及び1つ以上の外部制御信号のうちの少なくとも1つに基づいて、選択された前記変調方式の下で前記1次側回路の前記スイッチングデバイスを動作させる前記スイッチ制御信号を供給する、電力コンバータが提供される。
【0022】
従って、本発明の実施形態の非常に効率的な方法は、SHB LLC共振コンバータが、狭いデバイススイッチング周波数範囲を使用して広い範囲に渡って出力電圧を調整することを可能に本発明の実施形態の方法は、変調方式制御とデバイススイッチング周波数制御の両方を使用することができる。動作中、変調方式は、コントローラから、又は外部コマンドで供給される1つ又は複数の制御信号に応答して選択することができる。デバイススイッチング周波数は、例えば、調整された出力電圧の閉ループ制御下で決定することができる。選択した変調方式とデバイススイッチング周波数に基づいて、コントローラは、SHB LLC共振コンバータの1次側スイッチングデバイスを駆動する制御信号を生成できる。
【0023】
本発明の一実施形態では、高出力電圧範囲で調整された電圧を達成するために、SHB LLC共振コンバータは閉ループ制御で調整されたデバイススイッチング周波数を備えた対称変調方式下で動作する。低出力電圧範囲で安定化電圧を実現するために、SHB LLC共振コンバータは、デバイススイッチング周波数制御を備えた非対称変調方式下で動作する。超低出力電圧範囲で安定化電圧を実現するために、SHB LLC共振コンバータは、閉ループ制御で調整されたデューティサイクルを備えた本発明の実施形態の3レベル変調方式下、最大許容スイッチング周波数で動作する。従って、SHB LLC共振コンバータは狭いデバイススイッチング周波数範囲で動作し効率が向上する一方で、異なる負荷条件下で非常に広い出力電圧範囲を実現する。更に、本発明の方法は、特定の回路パラメータ(例えば、Lm対Lr比)に対する制限が少ない一方で、所望の最小及び最大DC電圧ゲインを達成する。本発明の方法は、異なる2次側トポロジ及び2次側制御方式を有する共振コンバータに適用可能である。本発明の方法は、固定入力電圧及び可変入力電圧の両方の条件下で動作する。
【0024】
本発明の一実施形態では、LLC SHB共振コンバータは、2レベル非対称変調から3レベル変調及びその逆に遷移する。3レベルトポロジは、入力電圧と出力電圧の比が低い範囲、すなわち入力電圧が低い場合や出力電圧が高い場合に使用される。あるいは、入力電圧と出力電圧の比が高い範囲、すなわち入力電圧が高い場合や出力電圧が低い場合には、2レベル非対称変調に変更される。2つの変調の間の遷移は、4つのスイッチの軌道制御および/またはパルス幅変調(PWM)制御を介して行われる。具体的には、軌道制御を用いた場合、2レベル非対称変調と3レベル変調を切り替える際に、2つの変調の間に共振タンク電圧の余分な電圧レベルを挿入し、余分な電圧レベルの持続時間を変調遷移コントローラで予め設定する。具体的には、PWM制御を行う場合、3レベル変調から2レベル非対称変調に遷移する際に、第1組スイッチングデバイスの一方の2パルス毎のデューティ比を50%から0%に減少し、第2組スイッチングデバイスの一方の2パルス毎のデューティ比を50%から0%に減少するようにする。
【0025】
本発明は、以下の詳細な説明及び添付の図を考慮するとよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1Aは、閉ループ電圧制御下の例示的な従来のフルブリッジLLC共振コンバータである。
【
図1B】
図1Bは、閉ループ電圧制御下の例示的な従来のフルブリッジLLC共振コンバータのスイッチ制御信号及び1次側フルブリッジ出力電圧V
ABのタイミング図である。
【
図2A】
図2Aは、閉ループ電圧制御を備えた例示的な従来のフルブリッジLLC共振コンバータである。
【
図2B】
図2Bは、閉ループ電圧制御を備えた例示的な従来のフルブリッジLLC共振コンバータの位相シフト制御下でのスイッチ制御信号及び1次側フルブリッジ出力電圧V
ABのタイミング図である。
【
図3A】
図3Aは、トポロジモーフィング制御下の例示的な従来のフルブリッジLLC共振コンバータである。
【
図3B】
図3Bは、トポロジモーフィング制御下の例示的な従来のフルブリッジLLC共振コンバータのフルブリッジからハーフブリッジトポロジへの遷移中のスイッチ制御信号のタイミング図である。
【
図4】
図4は、周波数及び遅延時間制御下の例示的な従来のフルブリッジ直列共振コンバータである。
【
図5A】
図5Aは、例示的なシリアルハーフブリッジLLC共振コンバータである。
【
図5B】
図5Bは、非対称3レベル制御下の例示的なシリアルハーフブリッジLLC共振コンバータのスイッチ制御信号S
1~S
4及び1次側出力電圧V
ABのタイミング図である。
【
図6A】
図6Aは、例示的なシリアルハーフブリッジLLC共振コンバータである。
【
図6B】
図6Bは、定期的に交換する3レベル制御下の例示的なシリアルハーフブリッジLLC共振コンバータのスイッチ制御信号S
1~S
4及び1次側出力電圧V
ABのタイミング図である。
【
図7A】
図7Aは、全波2次側ダイオード整流器を備えた例示的なシリアルハーフブリッジ(SHB)LLC共振コンバータ700である。
【
図7B】
図7Bは、全波2次側ダイオード整流器を備えた例示的なシリアルハーフブリッジ(SHB)LLC共振コンバータ700の対称変調下のスイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号と位相レッグ出力電圧V
ABのタイミング図である。
【
図7C】
図7Cは、全波2次側ダイオード整流器を備えた例示的なシリアルハーフブリッジ(SHB)LLC共振コンバータ700の非対称変調下のスイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号と位相レッグ出力電圧V
ABのタイミング図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態による、SHB LLC共振コンバータ800であり、出力電圧V
o(及び任意選択で出力電流I
o)に基づいてスイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号を生成する制御回路801を含む、SHB LLC共振コンバータ800である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の一実施形態による、制御方式が対称変調方式から非対称変調方式に切替わるときの、スイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号及び位相レッグ出力電圧V
ABの図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明の一実施形態による、制御方式が非対称変調方式から対称変調方式に切替わるときの、スイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号及び位相レッグ出力電圧V
ABの図である。
【
図10A】
図10Aは、シリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ1000である。
【
図10B】
図10Bは、シリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ1000の3レベル変調方式下での1次スイッチングデバイスS
1~S
4への制御信号及び1次側出力電圧V
ABのタイミング図である。
【
図11】
図11は、
図10AのSHB LLC共振コンバータ1000のスイッチング周期T
swにおける主要な波形である。時間t
1、t
2、t
3、t
4、t
5、t
6、t
7、t
8、t
9、t
10、t
11、t
12、t
13、t
14、t
15、及びt
16における信号遷移である。
【
図12A】
図12Aは、期間(t
0、t
1)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12B】
図12Bは、期間(t
1、t
2)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12C】
図12Cは、期間(t
2、t
3)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12D】
図12Dは、期間(t
3、t
4)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12E】
図12Eは、期間(t
4、t
5)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12F】
図12Fは、期間(t
5、t
6)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12G】
図12Gは、期間(t
6、t
7)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12H】
図12Hは、期間(t
7、t
8)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12I】
図12Iは、期間(t
8、t
9)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12J】
図12Jは、期間(t
9、t
10)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12K】
図12Kは、期間(t
10、t
11)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12L】
図12Lは、期間(t
11、t
12)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12M】
図12Mは、期間(t
12、t
13)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12N】
図12Nは、期間(t
13、t
14)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12O】
図12Oは、期間(t
14、t
15)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図12P】
図12Pは、期間(t
15、t
16)に対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下でのSHB LLC共振コンバータ1000の動作段を示している。
【
図13】本発明の実施形態の3レベル変調方式下の、デッドタイムの影響を考慮しない、スイッチング周期T
swにおける1次スイッチングデバイスS
1~S
4の制御スイッチ電圧S
1~S
4及び同時電流I
1~I
4である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態による、SHB LLC共振コンバータ1400であり、SHB LLC共振コンバータ1400は出力電圧V
o(及び、任意選択で、出力電流I
o)に基づいて1次スイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号を生成する制御回路1401を含むSHB LLC共振コンバータ1400である。
【
図15A】
図15Aは、制御方式が対称変調方式から3レベル変調方式に切り替わるときの、1次スイッチングデバイスS
1~S
4への制御信号及び位相レッグ出力電圧V
ABである。
【
図15B】
図15Bは、本発明の一実施形態による、制御方式が3レベル変調方式から対称変調方式に切り替わるときの、1次スイッチングデバイスS
1~S
4への制御信号及び位相レッグ出力電圧V
ABである。
【
図16A】
図16Aは、本発明の一実施形態による、2次側にフルブリッジ同期整流器を備えたSHB LLC共振コンバータ1600である。
【
図16B】
図16Bは、本発明の一実施形態による、2次側にセンタータップ付きトランスTR及び同期整流器S
5及びS
6を備えたSHB LLC共振コンバータ1650である。
【
図17A】
図17Aは、本発明の一実施形態に従って制御される、可変DC入力電圧源1702を備えるSHB LLC共振コンバータ1700である。
【
図17B】
図17Bは、本発明の一実施形態に従って制御される、DC入力電圧V
in1及びV
in2を備えるSHB LLC共振コンバータ1750である。
【
図18A】
図18Aは、本発明の一実施形態による、変調遷移コントローラ1801を備えたシリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ1800の例示的な回路図である。
【
図18B】
図18Bは、シリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ1800の3レベル変調から2レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4のタイミング図である。
【
図18C】
図18Cは、シリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ1800の2レベル変調から3レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4のタイミング図である。
【
図18D】
図18Dは、シリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ1800が遷移前の2レベル変調及び3レベル変調下で動作するときの軌道を示している。
【
図19A】
図19Aは、3レベル変調から2レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4の他の可能なタイミング図である。
【
図19B】
図19Bは、3レベル変調から2レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4の他の可能なタイミング図である。
【
図19C】
図19Cは、3レベル変調から2レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4の他の可能なタイミング図である。
【
図20A】
図20Aは、2レベル変調から3レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4の他の可能なタイミング図である。
【
図20B】
図20Bは、2レベル変調から3レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4の他の可能なタイミング図である。
【
図20C】
図20Cは、2レベル変調から3レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4の他の可能なタイミング図である。
【
図21A】
図21Aは、本発明の一実施形態による、変調遷移コントローラ2101を備えたシリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ2100の例示的な回路図である。
【
図21B】
図21Bは、シリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ2100の3レベル変調から2レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4のタイミング図である。
【
図21C】
図21Cは、シリアルハーフブリッジLLC共振コンバータ2100の2レベル変調から3レベル変調遷移中のスイッチングデバイスS
1~S
4のタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施形態を参照しながら本発明をより具体的に説明する。以下の本発明の好ましい実施形態の説明は、図面及び説明のみを目的として本明細書に提示されることに留意されたい。網羅的であること、又は開示された正確な形式に限定されることは意図されていない。
【0028】
より高い入力電圧に関連するより高いコストを避けるために、マルチレベルトポロジは、1次側ブリッジに対して同じデバイス定格電圧を維持するように使用することができる。
図7Aは、1次側にシリアルハーフブリッジを有するLLC共振コンバータ700を提供する3レベルSHBトポロジ(「スタックドバックトポロジ」としても知られる)である。
図7Aに示すように、シリアルハーフブリッジは、4つの直列接続されたスイッチングデバイスS
1~S
4を含み、各スイッチングデバイスS
1~S
4は入力端子P及びN間の入力電圧の半分をブロックするように構成される。入力端子P及びNは、直列接続された入力コンデンサC
in1及びC
in2、ならびにスイッチングデバイスS
1及びS
4にまたがって設けられる。入力コンデンサC
in1及びC
in2の共通端子は、スイッチングデバイスS
1とS
3間の共通端子でもあるため、入力コンデンサC
in1はスイッチングデバイスS
1とS
1に並列に接続され、入力コンデンサC
in2はスイッチングデバイスS
3及びS
4に並列に接続される。2次側に全波ダイオード整流器D
1~D
4が設けられている。フィルタコンデンサC
oが2次側に設けられ、出力電圧V
o又は出力電流I
oを負荷に供給するように構成されている。
【0029】
第1位相レッグ出力端子Aは、スイッチングデバイスS1及びS1の間の共通端子に設けられ、第2位相レッグ出力端子Bは、スイッチングデバイスS3及びS4の間の共通端子に設けられている。端子A、B間に接続されているのは、絶縁変圧器TRと直列接続された共振インダクタLr、共振コンデンサCr、及び変圧器磁化インダクタLmで形成された共振回路である。絶縁トランスTRの1次側巻線は、励磁インダクタLmと並列に接続されている。絶縁トランスTRの2次側巻線は、(i)2つの整流構成要素を備えた中央タップ付き巻線、又は(ii)フルブリッジ整流器を備えた単一巻線があり得る。スイッチングデバイスS1~S4のそれぞれは、一方向での入力電圧の分割を遮断するが、スイッチングデバイスS1~S4それぞれは両方向に電流を伝導する。スイッチングデバイスS1~S4のそれぞれは、半導体スイッチ(例えば、MOSFET、IGBT、BJT又は別の半導体スイッチ)によって実装され得る。或いは、ダイオード整流器回路の代わりに、2次側を同期整流器で実装し、導通損失を低減することもできる。
【0030】
図7B及び7Cは、それぞれ、
図7のSHB LLC共振コンバータ700の「対称」及び「非対称」変調方式である。各変調方式は、スイッチ制御信号を制御して、スイッチングデバイスS
1~S
4を動作させる。どちらの変調方式でも、スイッチングデバイスS
1とS
1を動作させる信号は相補的であり、スイッチングデバイスS
3とS
4を動作させる信号も相補的である。実際には、位相レッグのシュートスルーを避けるために、相補スイッチ制御信号の各対の間に小さなデッドタイムが挿入される。
図7Bは、対称変調の下での、スイッチングデバイスS
1~S
4のスイッチ制御信号及び位相レッグ出力電圧V
ABのタイミング図である。スイッチングデバイスS
1及びS
4を動作させるスイッチ制御信号は、同じ50%デューティサイクル波形を有する同相信号である。同様に、スイッチングデバイスS
1とS
3を操作するスイッチ制御信号も、同じ50%デューティサイクル波形の同相信号だが、スイッチングデバイスS
1及びS
4を動作させるスイッチ制御信号は、スイッチングデバイスS
1及びS
3を動作させるスイッチ制御信号と相補的でないことが前提となる。その結果、位相レッグ出力電圧V
AB(つまり、ブリッジ出力電圧)は、デバイススイッチング周波数で50%のデューティサイクルでV
inと0の間で切り替わる。
【0031】
図7Cは、非対称変調下での、スイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号及び位相レグ出力電圧V
ABのタイミング図である。
図7Cで示すように、スイッチングデバイスS
1及びS
4を動作させるスイッチ制御信号は、互いに180°位相がずれた25%デューティサイクル信号であり、スイッチングデバイスS
1及びS
3を動作させるスイッチ制御信号は、同様に互いに180°位相がずれた75%デューティサイクル信号である。この非対称変調により、スイッチングデバイスS
1とS
3が閉じているとき、入力コンデンサC
in1の両端の電圧は位相レッグ出力電圧V
ABとして供給され、スイッチングデバイスS
1及びS
4が閉じているとき、入力コンデンサC
in2の両端の電圧は位相レッグ出力電圧V
ABとして供給され、スイッチングデバイスS
1及びS
3が閉じているとき、位相レッグ出力電圧V
ABは0Vである。従って、位相レッグ出力電圧V
ABは、デバイススイッチング周波数f
swの2倍で50%のデューティサイクルで0.5V
inと0Vの間で切り替わる。どちらの変調方式でも、デバイススイッチング周波数f
swは、さまざまな制御目標の達成に役立つ制御変数になり得る。
【0032】
図7B及び7Cの対称及び非対称変調方式はそれぞれ、直列接続されたL
r-C
r-L
m共振回路の両端の異なる位相レッグ出力電圧V
ABを生成する。その位相レッグ出力電圧V
ABには、さまざまなDC及びACの成分が含まれる。LLC共振コンバータ700の動作中、共振コンデンサC
rは、DC成分を遮断し、その結果、AC成分のみが、絶縁トランスTRの1次側巻線の両端に出現する。デバイススイッチング周波数f
swが下記式1で表される共振周波数f
rに等しい場合、出力電圧V
oは、位相レッグ出力電圧V
ABの整流されたAC成分とトランス電圧ゲインの積の平均に等しくなる。トランスの電圧ゲインは巻数比N
S/N
Pで表されるため、出力電圧V
oは下記式2で与えられる。ここでN
SとN
Pはそれぞれ2次側巻線と1次側巻線の巻数である。
【0033】
【0034】
対称変調の場合、位相レッグ出力電圧VABのAC成分は、デバイススイッチング周波数fswで振幅Vin/2を持つ50%のデューティサイクルのバイポーラ方形波であり、共振周波数frでのDC電圧ゲインはNS/2NPである。非対称変調の場合、位相レッグ出力電圧VABのAC成分は、デバイススイッチング周波数fswの2倍で振幅Vin/4を持つ50%のデューティサイクルのバイポーラ方形波であり、共振周波数frでのDC電圧ゲインはNS/4NPである。従って、対称変調下の共振周波数frでのDC電圧ゲインは、非対称変調下の共振周波数frでのDC電圧ゲインの2倍であり、LLC共振コンバータ700の電圧ゲインは、スイッチング周波数制御によって調整が可能である。
【0035】
上述のように、LLC共振コンバータ700が共振周波数fr又は共振周波数frに非常に近い動作点で動作するときに最大効率が達成される。広い出力電圧範囲を実現するために、従来の制御ではデバイススイッチング周波数fswを変更してDC電圧ゲインを調整する。しかしながら、スイッチング周波数制御により、動作点が回路の最大効率から離れる。更に、非常に広い出力電圧範囲の場合、そのような制御でさえも、回路パラメータが固定されているため、必要なDC電圧ゲインを達成できない場合がある。
【0036】
本発明の発明者は、異なる変調方式の組合せを用いることで、SHB LLC共振コンバータが非常に広い出力電圧範囲を提供できると同時に、共振周波数又はその近く(即ち、より狭い入力スイッチング周波数範囲)で異なる所望のDC電圧ゲインを効率的に達成できることがわかっている。更に、本発明の実施形態の制御方法は、回路パラメータ値が固定されていても、広い出力電圧範囲及び回路ゲインを達成する。
図8は、SHB LLC共振コンバータ800を示す概略図であり、本発明の一実施形態によれば、SHB LLC共振コンバータ800は、出力電圧V
o(及び、任意選択で、出力電流I
o)に基づき、スイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号を生成する制御回路801を有するものである。
【0037】
SHB LLC共振コンバータ800では、制御回路801は、その主要な制御目標として出力電圧Voを使用しても良い。出力電流Ioは、個別の制御目標として、又は負荷状態を表すフィードバック信号として使用しても良い。各制御目標を表す基準値は、制御回路801の内部で、又は外部ソースから生成されても良い。一実施形態では、選択された変調方式は、外部管理コントローラの指示の下で制御回路によって選択されてもよい。検知された電圧Vo(又は検知された電流Io)と対応する基準値との間の差に基づいて、制御回路801は、SHB LLC共振コンバータ800の1次側位相レッグでスイッチングデバイスS1~S4を動作させる2つ以上の変調方式の間で切替える。制御目標の1つ以上を使用して、選択した変調方式でのデバイススイッチング周波数fswや位相シフト等、他の制御パラメータの値を決定することができる。1次側のスイッチングデバイスS1~S4を動作させるスイッチ制御信号は、選択された変調方式及び他の制御パラメータ値に基づいて生成される。
【0038】
図8では、この例では単に倍率である絶縁トランスTRのトランス巻数比N
S/N
Pが1に設定されており、この詳細な説明を簡略化している。
図7B及び7Cで書かれているように、対称変調方式は、デバイススイッチング周波数f
sw或いは共振周波数f
r付近での非対称変調方式として出力電圧V
oの2倍の電圧を供給する。具体的には、対称変調下では、共振周波数f
rでの位相レッグ出力電圧V
AB(従って、出力電圧V
o)は0.5V
inである。一実施形態では、絶縁トランスTRの共振パラメータは、デバイススイッチング周波数f
swが0.5f
r~1.4f
rに変化するとき、出力電圧V
oが0.3V
in~0.8V
inに変化するようになっている。同様に、非対称変調下では、共振周波数f
rでの位相レッグ出力電圧V
AB(従って、出力電圧V
o)は0.25V
inである。同じ実施形態では、絶縁トランスTRの共振パラメータは、デバイススイッチング周波数f
swが0.25f
r~0.8f
rに変化するとき、出力電圧V
oが0.125V
in~0.4V
inに変化するようになっている。(デバイススイッチング周波数f
swは、位相レッグ出力電圧V
ABの半分の周波数であることを思い出して欲しい。)従って、本発明は更に、変調方式の選択と周波数制御を組み合わせて所定の出力電圧範囲を達成する制御方法を提供する。(変調方式は、それぞれの出力電圧レギュレーション範囲で重複する場合がある。)本発明の実施形態の下における変調方式の選択は、例えば、電圧制御目標、負荷条件、及び許容可能な動作周波数範囲等の制御パラメータに基づく。現在の方式とは異なる変調方式が好ましいように1つ又は複数の条件が変化すると、制御回路801は、現在の変調方式から好ましい変調方式への遷移を実行する。
【0039】
上述の実施形態では、SHB LLC共振コンバータ800は、デバイススイッチング周波数fswが0.25fr~1.6frの間の範囲であり、0.125Vin~0.8Vinの間の出力電圧範囲Voを有する場合がある。最大と最小のDCゲイン比は6.4であり、デバイスの最大スイッチング周波数fswはわずか1.6frである。出力電圧が低い場合、デバイススイッチング周波数fswは、従来の周波数制御の場合のように大幅に増加する必要がないため、大幅にスイッチング損失が発生する。(実際、デバイススイッチング周波数fswは、低出力電圧に周波数倍増非対称変調方式を使用すると更に低下する。)本発明の実施形態の方法の下では、特に、非常に低い出力電圧、非常に軽い負荷条件、又はその両方で、最大デバイススイッチング周波数fswが大幅に低下する。回路パラメータ値を調整することにより、同じ狭いデバイススイッチング周波数範囲で、従来の制御を使用するSHB LLC共振コンバータでは達成できない、更に高い最大-最小DCゲイン比を達成できる。
【0040】
図9A及び
図9Bは、本発明の一実施形態における制御方式が(i)対称変調方式から非対称変調方式に、及び(ii)非対称変調方式から対称変調方式に切替わるときの、スイッチングデバイスS
1及びS
4への制御信号と位相レッグ出力電圧V
ABを示す。
図9Aは、出力電圧制御目標が出力電圧範囲内で高電圧から低電圧に変化するときの対称変調方式(間隔901)から非対称変調方式(間隔903)への遷移を示す。変調方式間の遷移期間902は、周波数シフト、位相シフト、デューティサイクルシフト、又はそれらの任意の組合せ等の異なる方法で実装することができる。同様に、
図9Bは、出力電圧制御目標が出力電圧範囲内で低電圧から高電圧に変化するときの非対称変調方式(間隔904)から対称変調方式(間隔906)への遷移を示す。変調方式間の遷移期間905は、
図9Aの遷移の場合と同様に実装することができる。即ち、周波数シフト、位相シフト、デューティサイクルシフト、又はそれらの任意の組合せ等の制御パラメータを使用するが、順序は逆である。もちろん、他の適切な遷移制御方法を使用することも可能である。
【0041】
3レベル変調
本発明の一実施形態によれば、
図10Bは、
図10AのSHB LLC共振コンバータ1000の1次スイッチングデバイスS
1、S
1、S
3及びS
4を動作させる信号のための3レベル変調方式を示す。スイッチングデバイスS
1及びS
1を動作させる信号は相補的であり、スイッチングデバイスS
3及びS
4を動作させるための信号も相補的である。実際には、位相レッグのシュートスルーを回避するために、相補スイッチ信号の各対の間にわずかなデッドタイムが挿入される。この実施形態では、出力電圧又は出力電流に基づいて、制御回路は、第1、第2、第3、及び第4スイッチ制御信号S
1~S
4を、第1変調方式に従って生成するように構成可能である。第1変調方式は、(i)-(iv)が成立している。
(i)第1及び第2スイッチ制御信号が互いに実質的に相補的であり、第3及び第4スイッチ制御信号が互いに実質的に相補的である。
(ii)第1、第2、第3、及び第4スイッチ制御信号が共通のスイッチング周期で周期的である。
(iii)共通のスイッチング周期内において、(1)前記各スイッチ制御信号には、2つの立ち上がりエッジと2つの立ち下がりエッジがあり、(2)第1スイッチ制御信号の第1立ち上がりエッジは、第4スイッチ制御信号の第1立ち上がりエッジよりも第1所定時間だけ遅れ、一方、第1スイッチ制御信号の第2立ち上がりエッジは、第4スイッチ制御信号の第2立ち上がりエッジよりも進んでいるか、又は(3)第1スイッチ制御信号の第1立ち上がりエッジが、第4スイッチ制御信号の第1立ち上がりエッジよりも第1所定時間進んでおり、一方、第1スイッチ制御信号の第2立ち上がりエッジは、第4スイッチ制御信号の第2立ち上がりエッジよりも第2所定時間だけ遅れている。
(iv)制御回路は、スイッチング周期、第1所定時間、及び第2所定時間を変化させる、電力変換器を提供する。
【0042】
図10Bは、1次スイッチングデバイスS
1~S
4への信号及びSHB位相レッグ出力電圧V
ABのタイミング図である。スイッチング周期T
swでは、1次スイッチングデバイスS
1、S
1、S
3及びS
4のそれぞれが2回オンになり、2回オフになる。オンになるたびに、第1スイッチングデバイスS
1又はS
4は、スイッチング周期T
swの25%にわたる期間「オン」になり、累積される「オン」期間はスイッチング周期T
swの50%になる。
図10Bに示すように、スイッチング周期T
swの間、1次スイッチングデバイスS
1の第1立ち上がりエッジは、1次スイッチングデバイスS
4の第1立ち上がりエッジより遅れ、一方、1次スイッチングデバイスS
1の第2立ち上がりエッジは、1次スイッチングデバイスS
4の第2立ち上がりエッジよりも先行する。
図10Bに示すように、先行時間と遅延時間はそれぞれφである。更に、1次スイッチングデバイスS
1の第1立ち上がりエッジは、1次スイッチングデバイスS
4の第2立ち上がりエッジよりも1/2T
swだけ先行している。この方法で1次スイッチングデバイスS
1、S
1、S
3、及びS
4を動作させると、位相レッグ出力電圧V
ABは、3つの異なる電圧レベルを有することになる。この実施形態では、(i)第1及び第4スイッチングデバイスS
1、S
4が両方とも非導通であるとき、第1及び第2節点の両端の電圧は第1電圧レベルになる。(ii)第1及び第4スイッチングデバイスS
1、S
4の1つが導通すると、第1及び第2節点間の両端の電圧は、第2電圧レベルになる。(iii)第1及び第4スイッチングデバイスS
1、S
4が両方とも導通すると、第1節点両端の電圧は、第3電圧レベルになる。第1電圧レベルは接地であり、第2電圧レベルは実質的に入力信号の半分であり、第2電圧レベルは実質的に入力信号である。1次スイッチングデバイスS
1及びS
4が両方とも「オン」又は導通している場合、位相レッグ出力電圧V
ABはV
inに等しくなる。1次スイッチングデバイスS
1及びS
4が両方とも「オン」である場合、又は1次スイッチングデバイスS
1及びS
3が両方とも「オン」である場合、位相レッグ出力電圧V
ABは0.5V
inに等しい。1次スイッチングデバイスS
1及びS
3が両方とも「オン」の場合、位相レッグ出力電圧V
ABは0Vに等しくなる。
【0043】
従って、位相レッグ出力電圧VABの波形は、スイッチング周期Tswの半分の周期で周期的である。期間φは、1次スイッチングデバイスS1及びS4が両方とも「オン」であるとき、又は1次スイッチングデバイスS1及びS3が両方とも「オン」であるときの期間に対応するので、期間φは、位相レッグ出力電圧VABが1/2Vinに等しい期間を決定する。スイッチング周波数fsw(従って、スイッチング周期Tsw)と期間φは、さまざまな制御目標を設定するための制御変数である。
【0044】
主要な波形及び段の分析
この詳細な説明では、動作の分析を簡略化するために、
図10Aに示すように入力コンデンサC
in及び出力コンデンサC
Oのリップル電圧は、無視できると想定しており、それぞれ定電圧源V
inとV
Oで表すことができる。また、本明細書の半導体回路要素はそれぞれ、その「オン」又は導通状態では抵抗がゼロであると仮定している。(即ち、それらは短絡と見なす)。但し、1次スイッチングデバイスの出力容量は無視できないものとする。
【0045】
図11は、
図10のSHB LLC共振コンバータ1000のスイッチング周期T
sw間の主要な波形である。
図11は、スイッチ制御電圧S
1、S
2、S
3及びS
4(即ち、正の電圧は、それぞれ1次スイッチングデバイスS
1~S
4が「オン」状態であることを示す)、1次側出力電圧V
AB、共振インダクタL
rの電流i
Lr、励磁インダクタL
mの電流i
Lm、及び1次スイッチングデバイスS
1及びS
2間の両端の電圧V
S1及びV
S2を示す。
図11は、時間t
1、t
2、t
3、t
4、t
5、t
6、t
7、t
8、t
9、t
10、t
11、t
12、t
13、t
14、t
15、及びt
16における信号遷移を示す。
【0046】
図11に関連して、
図12A~
図12Pは、期間(t
0,t
1),(t
1,t
2),(t
2,t
3),(t
3,t
4),(t
4,t
5),(t
5,t
6),(t
6,t
7),(t
7,t
8),(t
8,t
9),(t
9,t
10),(t
10,t
11),(t
11,t
12),(t
12,t
13),(t
13,t
14),(t
14,t
15),及び(t
15,t
16)にそれぞれに対応する、本発明の実施形態の3レベル変調方式下でのSHB LLC共振コンバータ1000の16の動作段を示している。
図12A~
図12Pでは、開いている又は「オフ」のスイッチングデバイスは破線で示されている(例えば、
図12Aでは、1次スイッチングデバイスS
2及びS
3は開いている)。また、1次スイッチングデバイスS
1、S
2、S
3及びS
4の寄生コンデンサは、それぞれコンデンサC
S1、C
S2、C
S3及びC
S4で表されている。
【0047】
図12Aに示すように、期間(t
0、t
1)では、共振電流i
Lrは増加し、共振インダクタL
r、トランスTR、磁化インダクタL
m、共振コンデンサC
r、及び1次スイッチングデバイスS
1及びS
4を流れる。位相レッグ出力電圧V
ABは入力電圧V
inに等しくなる。
【0048】
図12Bに示すように、期間(t
1、t
2)では、1次スイッチングデバイスS
1が開いた後、コンデンサC
S1は1/2V
inまで充電され、コンデンサC
S2は完全に放電する(即ち、両端が0Vになるまで)。共振電流i
Lrは減少し始める。位相レッグ出力電圧V
ABは、コンデンサC
S1及びC
S2での充電と放電の結果として、1/2V
inに低下する。
【0049】
図12Cに示すように、期間(t
2、t
3)では、1次スイッチングデバイスS
2は、0Vで(即ち、スイッチング損失のない「ZVS」状態で)オンになる。位相レッグ出力電圧V
ABは1/2V
inに留まり、共振電流i
Lrは減少し続ける。
【0050】
図12Dに示すように、期間(t
3、t
4)では、1次スイッチングデバイスS
4がオフにされた後、コンデンサC
S4は1/2V
inまで充電され、コンデンサC
S3は完全に放電される。位相レグ出力電圧V
ABは、コンデンサC
S4及びC
S3での充電と放電の結果として、0Vになり、共振電流i
Lrは減少し続ける。
【0051】
図12Eに示すように、期間(t
4、t
5)では、1次スイッチングデバイスS
3は、ZVS状態でオンになる。位相レッグ出力電圧V
ABは0Vに留まり、共振電流i
Lrは減少し続ける。
【0052】
図12Fに示すように、期間(t
5、t
6)では、1次スイッチングデバイスS
3がオフにされた後、コンデンサC
S3は1/2V
inまで充電され、コンデンサC
S4は完全に放電される。位相レグ出力電圧V
ABは、コンデンサC
S4及びC
S3での充電と放電の結果として、1/2V
inまで上昇し、共振電流i
Lrは増加し始める。
【0053】
図12Gに示すように、期間(t
6、t
7)では、1次スイッチングデバイスS
4は、ZVS状態でオンになる。位相レッグ出力電圧V
ABは1/2V
inに留まり、共振電流i
Lrは増加し続ける。
【0054】
図12Hに示すように、期間(t
7、t
8)では、1次スイッチングデバイスS
2がオフにされた後、コンデンサC
S2は1/2V
inまで充電され、コンデンサC
S1は完全に放電される。位相レグ出力電圧V
ABは、コンデンサC
S2及びC
S1での充電と放電の結果として、V
inになり、共振電流i
Lrは増加し始める。
【0055】
図12Iに示すように、期間(t
8、t
9)では、1次スイッチングデバイスS
1は、ZVS状態でオンになる。位相レッグ出力電圧V
ABは1/2V
inに留まり、共振電流i
Lrは増加し続ける。
【0056】
図12Jに示すように、期間(t
9、t
10)では、1次スイッチングデバイスS
4が開くと、コンデンサCS
4は1/2V
inまで充電され、コンデンサCS
3は完全に放電される。共振電流i
Lrは減少し始め、位相レグ出力電圧V
ABは、コンデンサCS
4及びCS
3での充電と放電の結果として、1/2V
inまで下降する。
【0057】
図12Kに示すように、期間(t
10、t
11)では、1次スイッチングデバイスS
3は、ZVS状態でオンになる。位相レッグ出力電圧V
ABは1/2V
inに留まり、共振電流i
Lrは減少し続ける。
【0058】
図12Lに示すように、期間(t
11、t
12)では、1次スイッチングデバイスS
1がオフされると、コンデンサC
S1は1/2V
inまで充電され、コンデンサCS
1は完全に放電される。位相レッグ出力電圧V
ABは、コンデンサC
S1及びC
S2での充電と放電の結果として、0Vになり、共振電流i
Lrは減少し続ける。
【0059】
図12Mに示すように、期間(t
12、t
13)では、1次スイッチングデバイスS
1は、ZVS状態でオンになる。位相レッグ出力電圧V
ABは0Vに留まり、共振電流i
Lrは減少し続ける。
【0060】
図12Nに示すように、期間(t
13、t
14)では、1次スイッチングデバイスS
1がオフされると、コンデンサCS
1は1/2V
inまで充電され、コンデンサC
S1は完全に放電される。位相レッグ出力電圧V
ABは、コンデンサC
S2及びC
S1での充電と放電の結果として、1/2V
inまで上昇し、共振電流i
Lrは増加し始める。
【0061】
図12Oに示すように、期間(t
14、t
15)では、1次スイッチングデバイスS
1は、ZVS状態でオンになる。位相レッグ出力電圧V
ABは1/2V
inに留まり、共振電流i
Lrは増加し続ける。
【0062】
図12Pに示すように、期間(t
15、t
16)では、1次スイッチングデバイスS
3がオフされると、コンデンサC
S3は1/2V
inまで充電され、コンデンサC
S4は完全に放電される。位相レッグ出力電圧V
ABは、コンデンサC
S3及びC
S4での充電と放電の結果として、V
inとなり、共振電流i
Lrは増加し続ける。
【0063】
すべての1次スイッチングデバイスがZVS状態でオンになるので、本発明の実施形態の3レベル変調方式は、総スイッチング損失を大幅に低減する。
【0064】
本発明の3レベル変調方式の利点:A.出力電圧の低減
本発明の実施形態の3レベル変調方式は、直列接続されたLr-Cr-Lm共振回路の両端で、DC及びAC成分を含む制御可能な位相レッグ出力電圧VABを生成する。この実施形態では、LLC共振コンバータ動作中に、共振コンデンサCrがDC成分を遮断するので、AC成分のみがトランスTRの1次側巻線に現れる。デバイススイッチング周波数fswが下記式3で表される共振周波数frに等しく、期間φ=0の場合、出力電圧Voは、位相レッグ出力電圧VABの整流AC成分とトランスTRの電圧ゲインの積の平均に等しくなる。トランスTRの電圧ゲインは巻数比NS/NPであり、ここでNS及びNPはそれぞれ2次側巻線と1次側巻線の巻数であるため、出力電圧Voは下記式4になる。持続時間φの望ましい値に対して、スイッチング周波数frが固定されている場合、整流されたAC成分の平均電圧は減少する。従って、出力電圧Voも低下する。よって、本発明の実施形態の3レベル変調方式を使用して、スイッチング周波数frに影響を与えることなく出力電圧Voを調整することができる。
【0065】
【0066】
B.各1次スイッチングデバイスの電流ストレスのバランス
パワーデバイスの「オン」抵抗は、伝導損失を引き起こす。
図10AのSHB LLC共振コンバータ1000において、1次スイッチングデバイスS
1~S
4は、それらが導通しているときに伝導損失を引き起こす。
図13は、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下で、デッドタイムの影響を考慮せずに、1次スイッチングデバイスS
1~S
4における制御スイッチ電圧S
1~S
4、スイッチング周期T
sw中にそれらを流れる同時電流I
1~I
4を示す。電流I
1~I
4は同じ二乗平均平方根(RMS)値を持っているので、1次スイッチングデバイス間で熱ストレスのバランスが均等になる。その結果、これらのデバイスではより長い寿命が期待でき、SHB LLC共振コンバータ1000の信頼性が向上する。
【0067】
DCリンクコンデンサの電圧バランス
理想的には、本発明の実施形態の3レベル変調方式の下で上部及び下部コンデンサ(例えば、コンデンサCin1及びCin2)が同じ電力を共振タンクに供給するとき、それらのDCリンクコンデンサ電圧は、追加の制御なしで自動的に調整される。但し、等価直列抵抗(ESRs)とDCリンクコンデンサの容量のパラメータの不整合、及びスイッチ制御又はゲート信号のタイミングの不整合の両方とも、実際のSHB LLC共振コンバータでは避けられない。これらの不整合により、DCリンクコンデンサの電圧の不均衡が生じる。
【0068】
本発明の実施形態は、DCリンクコンデンサ電圧のバランスを取り、SHB LLC共振コンバータを安全な範囲で動作させ続ける方法を提供する。コンデンサCin1の電圧がコンデンサCin2より大きい場合、1次スイッチングデバイスS1及びS1へのスイッチ制御信号におけるすべての遷移が短時間遅延し、1次スイッチングデバイスS3及びS4へのスイッチ制御信号におけるすべての遷移は、同じ量だけ前に進められる。同様に、コンデンサCin2の電圧がコンデンサCin1より大きい場合、1次スイッチングデバイスS1及びS1へのスイッチ制御信号のすべての遷移は短期間だけ進められ、1次スイッチングデバイスS3及びS4のスイッチ制御信号のすべての遷移は、同じ量だけ遅れる。短時間の調整は、SHB LLC共振コンバータの正常な動作に悪影響を与えないように、所定の制限値、例えばスイッチング周期Tswの5%を超えないようにすることが好ましい。
【0069】
パルス周波数変調(PFM)と3レベル変調方式との組合せによる広出力電圧範囲の動作実現
上述のように、最大効率は、SHB LLC共振コンバータが共振周波数fr、又は共振周波数frに非常に近い動作点で動作するときに達成される。広い出力電圧範囲を実現するために、従来の制御はスイッチング周波数fswを変調してDC電圧ゲインを調整する。但し、スイッチング周波数制御により、動作点が回路の最大効率から離れる。更に、非常に広い出力電圧範囲の場合、そのようなスイッチング周波数制御でも、固定された回路パラメータによって必要なDC電圧ゲインを達成できない。
【0070】
本発明の発明者は、異なる変調方式を組合せることによって、SHB LLC共振コンバータが広い出力電圧範囲を提供できると同時に、共振周波数又はその近く(即ち、より狭い入力スイッチング周波数範囲)で異なる所望のDC電圧ゲインを効率的に達成できること、がわかっている。更に、本発明の実施形態の3レベル変調方式は、回路パラメータ値が固定されている場合でも、広い出力電圧範囲及び回路ゲインを達成できる。
図14は、本発明の一実施形態による、SHB LLC共振コンバータ1400であり、出力電圧V
o(及び、任意選択で、出力電流I
o)に基づいて1次スイッチングデバイスS
1~S
4へのスイッチ制御信号を生成する制御回路1401を含むSHB LLC共振コンバータ1400である。
【0071】
SHB LLC共振コンバータ1400の制御回路1401は、その主要な制御目標として出力電圧Voを使用することができる。出力電流Ioは、個別の制御目標又は負荷状態を表すフィードバック信号としても使用できる。各制御目標を表す基準値は、制御回路1401内で内部的に、又は外部ソースから生成することができる。検知された電圧Vo(又は検知された電流Io)と対応する基準値との間の差に基づき、制御回路1401は、SHB LLC共振制御コントローラ1401の1次側位相レッグにおけるスイッチングデバイスS1~S4を動作させる2以上の変調方式間で切り替える。1つ又は複数の制御目標は、選択された変調方式における信号のスイッチング周波数fsw及びデューティサイクルのような他の制御パラメータの値を決定するために、用いることができる。1次側スイッチングデバイスS1~S4を動作させる信号は、選択された変調方式と他の制御パラメータ値に基づいて生成される。
【0072】
従来の対称周波数変調方式は、共振周波数frを中心にスイッチング周波数fswを変化させることにより、所望の出力電圧ゲインを提供する。提案されている3レベル変調方式では、1次スイッチングデバイスが導通している期間を制御することにより、最大許容スイッチング周波数で追加の出力電圧ゲインを提供する。従って、本発明の実施形態は、選択された変調方式と周波数制御を組合せて所定の出力電圧範囲を達成する制御方法を提供する。(変調方式は、それぞれの出力電圧レギュレーション範囲で重複する場合がある。)本発明の下における実施形態の変調方式の選択は、例えば、電圧制御ターゲット、負荷条件、及び許容可能な動作周波数範囲等の制御パラメータに基づくことができる。
【0073】
変調遷移
【0074】
図15Aは、SHB LLC共振コンバータ1000において、制御方式が対称変調方式から3レベル変調方式に切替るときの1次スイッチングデバイスS
1~S
4への制御信号及び位相レッグ出力電圧V
ABである。本発明の一実施形態によれば、
図15Bは、SHB LLC共振コンバータ1400において、制御方式が3レベル変調方式から対称変調方式に切替るときの1次スイッチングデバイスS
1~S
4への制御信号及び位相レッグ出力電圧V
ABである。
図15Aに示すように、本発明の実施形態の対称変調方式(間隔1501)から3レベル変調方式(間隔1502)への切替えは、位相レッグ出力電圧V
ABの制御目標が出力電圧V
o中の高電圧から低電圧に変化するので、遷移期間を必要としない。同様に、
図15Bに示すように、本発明の実施形態の3レベル変調方式(間隔1503)から対称変調方式(間隔1504)への切替えも、位相レグ出力電圧V
ABの制御目標が出力電圧V
o中の低電圧から高電圧に変化するので、遷移期間を必要としない。一実施形態では、対称変調方式は可変周波数変調を有する。別の実施形態では、対称変調方式は定周波数変調を有する。
【0075】
他のトポロジへの拡張
本発明の実施形態は、他の2次側トポロジを有するSHB LLC共振コンバータにも等しく適用可能であり、同様の有益な狭いデバイススイッチング周波数で広い出力電圧範囲を提供する。本発明の一実施形態によれば、
図16A及び16Bはそれぞれ、(i)2次側にフルブリッジ同期整流器を備えたSHB LLC共振コンバータ1600、及び(ii)2次側にセンタータップ付きトランスTR及び同期整流器S
5及びS
6を備えたSHB LLC共振コンバータ1650である。SHB LLC共振コンバータ1600では、制御回路1601は、
図10Bに関して議論された方法を組合せることができる。
図10Bの方法は、1次側のスイッチングデバイスS
1~S
4及び2次側のスイッチングデバイスS
5~S
8を動作させるための信号を生成する従来の2次側制御方式を有する。SHB LLC共振コンバータ1650では、制御回路1651は、
図10Bに関して議論された方法を組合せることができる。
図10Bの方法は、1次側のスイッチングデバイスS
1~S
4及び2次側スイッチングデバイスS
5及びS
6を動作させるための信号を生成する従来の2次側制御方式を有する。本発明の実施形態は、SHB LLC共振コンバータ1600の2次側のスイッチングデバイスS5~S8、又はSHB LLC共振コンバータ1650の2次側スイッチングデバイスS
5~S
6が存在するSHB LLC共振コンバータにも等しく適用可能である。共振コンバータは、ダイオードに置き換えられる。
【0076】
本発明の実施形態はまた、
図17A及び17Bそれぞれに示されるような可変DC入力電圧を有する、又は2つの異なる入力電圧を有するSHB LLC共振コンバータに適用可能である。
図17A及び17Bはそれぞれ、本発明の一実施形態によって制御される、(i)可変DC入力電圧源1702を備えたSHB LLC共振コンバータ1700、及び(i)DC入力電圧V
in1及びV
in2をそれぞれ備えたSHB LLC共振コンバータ1750である。
図17Aに示されるように、可変DC入力電圧源1702は、信号V
ctrlによって制御され得、これは内部的に生成され得るか、又は外部的に提供され得る。信号V
ctrlの制御方法を上述の本発明の実施形態の方法の何れかと組合せると、出力電圧範囲を更に拡大、又はSHB LLC共振コンバータ1700のデバイススイッチング周波数範囲を更に低減することができ得る。
【0077】
更なる実施形態では、非常に広い入力又は出力電圧範囲で動作するSHB LLC共振コンバータの効率は、トランスの巻数比Np/Nsが同じで、共振槽成分Lr、Cr、Lmが同じ値の場合、3レベル変調モード下のDC電圧ゲインは、通常、2レベル非対称半入力電圧変調モード下のDC電圧ゲインよりも高くなることを認識することで改善できる。その結果、3レベル変調モードは、より高いDC電圧ゲインのアプリケーションに適しており、2レベル非対称半入力電圧変調モードは、より低いDC電圧ゲインのアプリケーションに適している。コンバータは、ある変調モード下で動作し、別の変調モードに遷移できるため、非常に広い入出力電圧範囲で動作するSHB LLC共振コンバータにおいて、適切な制御を行うことで最適な性能を得ることができる。
【0078】
最も単純な形態では、3レベル変調モードと2レベル非対称半入力電圧変調モードとの間の遷移、及びその逆の遷移を可能にするコントローラは、これらの変調モードのスイッチングパターンの間で遷移するために、スイッチングデバイスが短時間で中断されるように導入されてもよい。遷移中は入力端子と出力端子の間で電力の授受が行われないため、このアプローチの下で、出力変数(通常は出力電圧又は電流)が下がる(遷移中に出力変数の値が定常値よりも減少する)。この方法では、トポロジ遷移時に低下を減らし、出力変数を指定された範囲内に保つために、出力フィルタに蓄電量を増やすことができる。一方で、コントローラは、2つの変調モード間の遷移を可能にするスイッチングパターンを中断することなく導入できる。この2つの変調モードはスイッチングパターンが全く異なるため、瞬時に遷移するとシステムに激しい振動や電圧スパイクが発生し、コンバータが損傷する可能性がある。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、追加部品なしですべてのシステム変数を規定の範囲内に維持しながら、スイッチングデバイスを中断することなく(即ち、遷移中はすべてのスイッチングデバイスが変調されたまま)、遷移中又は遷移後に振動を導入することなく変調モードを遷移させることができる軌道制御に基づくSHB LLC共振コンバータが提供される。
【0080】
図18Aは、本発明の一実施形態による、システムに回路振動及びパラメータスパイクを導入することなく、3レベル変調モードと2レベル非対称半入力電圧変調モードとの間で変調モードを遷移させることが可能なSHB LLC共振コンバータ1800を示している。
図18Aは、3レベル変調モード又は2レベル非対称半入力電圧変調モードの何れかの下で動作するSHB LLC共振コンバータ1800を示している。
図18Aの回路では、2つの変調モードの間の遷移は、軌道制御によって実現されている。例えば、
図18Bは、3レベル変調モードから2レベル非対称半入力電圧変調モードに遷移する際のスイッチングデバイスS
1及びS
4のスイッチング信号を示している。3レベル変調モード下での動作中、スイッチングデバイスS
1~S
4は、固定のスイッチング周波数と可変の位相シフト角φで動作する。遷移が開始されると、コントローラ1801は、まず、遷移開始点であるV
ABの高電圧レベルに続く最後の1/2V
in電圧レベルを生成する。次に、コントローラ1801は、V
ABのゼロ電圧レベルを形成するための専用ゲート信号を生成するが、その継続時間はθである。ゼロレベルの後、コントローラ1801は、2レベル変調モードのゲート信号を生成し、遷移が完了する。
図18Cは、2レベル非対称半入力電圧変調モードから3レベル変調モードに遷移する際のスイッチングデバイスS
1及びS
4のスイッチング信号を示している。
図18Cに示すように、遷移が開始されると、コントローラ1801は、まず、2レベル変調モード下において遷移開始点であるV
ABの最後の1/2V
in電圧レベルを生成する。次に、コントローラ1801は、V
ABのゼロ電圧レベルを形成するための専用ゲート信号を生成するが、その継続時間はσである。ゼロレベルの後、コントローラ1801は、3レベル変調モードのゲート信号を生成し、遷移が完了する。
【0081】
遷移が起こる出力電圧は、共振タンクエネルギーによって決まり、通常、正規化共振電圧V
CRNと正規化共振電流i
LRNの軌跡で示される。
図18Dは、3レベル変調モードの下における軌跡と、2レベル変調モード下における軌跡を示している。濃い軌跡は、2レベル変調モード下における軌跡を表している。薄い軌跡は、3レベル変調モード下における軌跡を表している。3レベルの軌跡の一部と2レベルの軌跡の一部が重なっており、この2つの部分の原点と半径が同じであることを意味している。つまり、共振デバイスに蓄えられている共振タンクエネルギーは同じである。そのため、遷移の前後で共振タンク内のエネルギーの不一致が少なくなるように、重なった軌道の始まりで遷移が起こる可能性がある。そして、最適な遷移性能を得ることができる。
【0082】
図18B及び18Cに示すように、遷移前の3レベル変調モードの最後の1/2V
in電圧レベルを形成するために、スイッチングデバイスS
2及びS
4がオンになり、遷移後の2レベル変調モードの最初のゼロ電圧レベルを形成するために、スイッチングデバイスS
2及びS
3がオンになる。しかし、V
ABと同じ電圧レベルを生成することができる他のスイッチングパターンを使用することもできる。
図19は、3レベル変調モードから2レベル変調モードへの遷移時に可能性のある別のゲート信号を示している。そして、
図20は、2レベル変調モードから3レベル変調モードへの遷移時に可能性のある別のゲート信号を示している。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、別の方法では、出力フィルタの記憶容量を増やすことなく、出力変数を規定の範囲内に維持しつつ、スイッチングデバイスを中断することなく変調モードの遷移を提供する。
【0084】
図21A、21B及び21Cは、本発明の一実施形態による、スイッチングデバイスを中断することなく、3レベル変調モードと2レベル半入力電圧変調モードとの間の遷移を提供するSHB LLC共振コンバータを示しており、
図21Aは、3レベル変調モード又は2レベル非対称半入力電圧変調モードの何れかの下で動作することができるSHB LLC共振コンバータ2100を示している。
図21Aの回路の2つの変調モード間の遷移は、4つのスイッチングデバイスのPWM制御によって達成され、PWM制御はコントローラ2101によって制御される。例えば、
図21Bは、3レベル変調モードから2レベル半入力電圧変調モードに遷移する際のスイッチングデバイスS
1~S
4のスイッチング信号を示している。3レベル変調モード下での動作中、スイッチングデバイスS
1とS
4は可変スイッチング周波数と50%のデューティ比で動作する。遷移の間、スイッチングデバイスS2及びS3は、可変スイッチング周波数で動作し続け、それぞれスイッチングデバイスS
1及びS
4に相補的であり続け、PWM遷移制御は、スイッチングデバイスS
1の2つのパルスのうち1つのパルスのデューティ比を50%から0%へと単調に減少させ、スイッチングデバイスS
4の2つのパルスのうち2つのパルスのデューティ比を50%から0%へと単調に減少させる。また、スイッチングデバイスS
1の狭帯域パルスは、スイッチングデバイスS
4の狭帯域パルスと180度位相がずれており、スイッチングデバイス子S
1の不変パルスは、スイッチングデバイスS
4の不変パルスと180度位相がずれている。スイッチングデバイスS
1,S
4のデューティサイクルが25%になるため、LLC共振コンバータは,周波数可変制御の遷移期間中,2レベル半入力電圧変調モード下で動作し続けることになる。
図21Cは、2レベル半入力電圧変調モードから3レベル変調モードに遷移する際の、スイッチングデバイスS
1~S
4のスイッチング信号を示す図である。
図21Cに示すように、スイッチングデバイスS
1及びS4は、2レベル半入力電圧変調モードから3レベル変調モードへの遷移時に、3レベル変調モードから2レベル半入力電圧変調モードへの遷移時とは実質的に逆方向に変調される。即ち、スイッチングデバイスS
1及びS
4の2つのパルスのうち1つのパルスのデューティ比が0%から50%まで単調に増加し、S
1及びS
4の等価デューティ比が25%から50%まで増加する。
【0085】
いくつかの実施形態では、コントローラは、電源電圧、負荷電圧及び負荷電流の少なくとも1つに応じて、電力コンバータを動作させるために、3レベル変調モード及び2レベル変調モードの何れかを選択する。いくつかの実施形態では、コントローラは、可変スイッチング周波数、一定周波数のパルス幅変調モード、及び一定周波数の位相シフト制御の少なくとも1つを備えるスイッチングデバイスを動作させる。
【0086】
一実施形態では、変調モード遷移期間におけるスイッチングデバイスS1及びS4のデューティ比の変化は、共振コンデンサCrの平均電圧が3レベル変調モード用の値と2レベル半入力電圧変調モード用の値との間で変化するのに要する時間によって決定される。具体的には、3レベル変調モードから2レベル半入力電圧変調モードに遷移する際、共振コンデンサの平均電圧はVin/2からVin/4に変化する。これに対応して、2レベル半入力電圧変調モードから3レベル変調モードになると、平均電圧はVin/4からVin/2に変化する。トポロジの遷移時間が短すぎたり、最悪の場合は急激に遷移すると、トポロジの遷移が完了する前に、共振コンデンサCrの電圧が適切な値まで十分に充電されないことがある。このような場合、トランスの過渡的なV秒の不均衡により、トランスのコアが飽和したり、出力電圧が所望の範囲外になったりすることがある。
【0087】
図21B及び21Cに示すように、ターンオンエッジの遅延とターンオフエッジの先導を同時に行うことで、スイッチングデバイスS
1とS
4のデューティ比を低減している。但し、他のPWM制御方式も可能である。例えば、ターンオンエッジやターンオフエッジの遅延により、デューティ比を低減することができる。
【0088】
一般的に、変調モードの遷移は、入力又は出力電圧の変化、又は出力電流の変化にとって決定的である。結果として、遷移制御を行うためには、入力電圧、出力電圧、又は出力電流を検知する必要がある。トポロジの遷移は、システムコントローラ(例えば、電源管理コントローラ)又は自律的な電力変換コントローラの何れかによって開始することができる。変調モード遷移制御を行うコントローラは、アナログ回路とデジタル回路の両方で実装することができるが、適応制御や複雑なタイミング要求を容易に実現できるという点で、デジタルアプローチが好ましいと言える。
【0089】
本発明の実施形態に係るSHB LLC共振コンバータの変調モード遷移は、フルブリッジ2レベル変調モードとハーフブリッジ2レベル変調モードの間で変調モード遷移が起こる、従来のフルブリッジLLC共振コンバータを含む他の共振コンバータにも適用することができる。