(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】液晶表示デバイスの製造方法及び液晶表示デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
G02F1/1335 520
G02F1/1335 510
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021179959
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・サガルドワイビュリュ
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・シュプリンガー
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-167351(JP,A)
【文献】特開平10-268801(JP,A)
【文献】特開2002-202506(JP,A)
【文献】特開2003-075646(JP,A)
【文献】特開2002-148373(JP,A)
【文献】特表2003-533727(JP,A)
【文献】特開2003-066233(JP,A)
【文献】特表2009-500653(JP,A)
【文献】特開平06-258632(JP,A)
【文献】特開2003-255300(JP,A)
【文献】特開2005-031641(JP,A)
【文献】国際公開第01/037350(WO,A1)
【文献】特表2004-515817(JP,A)
【文献】特開昭52-055895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02F 1/1333
G04G 9/00-9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶分子が平坦若しくは垂直に整列する液晶セル(2)を備える反射性又は半透過性液晶表示デバイス(1)の製造方法であって、前記液晶セル(2)は、観察者(6)の側に位置する透過性表基体(4)、及び同様に透過性である裏基体(8)から形成し、前記裏基体(8)は、前記表基体(4)の下に、前記表基体(4)に平行に、前記表基体(4)からある距離で延在し、前記表基体(4)及び前記裏基体(8)の2つは、液晶組成物を中に閉じ込める封止筐体(12)を画定する封止枠(10)により互いに接合し、前記表基体(4)及び前記裏基体(8)は、前記表基体(4)及び前記裏基体(8)の対向面上が導電性透明電極(14)及び対電極(16)により被覆され、前記液晶組成物の光学特性は、電極(14)と対応する対電極(16)との間の交差点に電界を印加することによって変更し、前記液晶表示デバイス(1)は、反射偏光膜(24)を備え、反射偏光膜(24)は、前記表基体(4)を通じて前記液晶セル(2)に入る第1の光成分(26)を吸収し、前記第1の光成分の方向に直交する方向で偏光される第2の光成分(26)を反射するように構成し、前記反射偏光膜(24)は、少なくとも部分的に反射性の反射器(34)と組み合わせた吸光偏光子(32)を備え、前記反射器(34)は、前記吸光偏光子(32)の下に配設し、前記方法は、観察者(6)が前記液晶セル(2)の前記表基体(4)を通じて見える、前記液晶表示デバイス(1)の背景の装飾及び/又は前記反射器(34)の反射機能に関する
、着用者の肉眼で知覚できる表示を行う形状を前記反射器(34)に含まれる透過性材料層(38)に与えるように、前記
透過性材料層(38)を浮彫にし、次に、光を拡散させる接着剤層(46)を介して前記透過性材料層(38)を前記吸光偏光子(32)に固定することで前記反射器(34)を前記吸光偏光子(32)の下に締結し、前記吸光偏光子(32)自体は、前記裏基体(8)の下面(28)に対して締結されることから構成するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも部分的に反射性の反射偏光膜(24)は、前記透過性材料層(38)を浮彫にすることによって得られ、前記透過性材料層(38)には、所望の装飾的及び/又は機能的浮彫形状が付与され、前記透過性材料層(38)の裏面(40)には、少なくとも部分的に反射性の層(42)を堆積し、前記透過性材料層(38)は、前記裏面(40)の反対側に表面(44)も備え、前記表面(44)上に、前記吸光偏光子(32)を締結し、前記反射偏光膜(24)は、前記少なくとも部分的に反射性の層(42)、前記透過性材料層(38)、及び前記吸光偏光子(32)から形成し、前記吸光偏光子(32)を介して、光透過性接着剤層(30)により前記裏基体(8)の下面(28)に対して締結することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも部分的に反射性の層(42)は、金属製であることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属は、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、白金、パラジウム、金及びこれら金属の合金によって形成される群から選択することを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記少なくとも部分的に反射性の層(42)は、物理蒸着、蒸着又はスパッタリングによって得られることを特徴とする、請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも部分的に反射性の層(42)は、複数の誘電材料層から形成し、前記複数の誘電材料層は、互いに異なる屈折率を有し、誘電体ミラーを形成することを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記透過性材料層(38)は、樹脂から作製することを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記透過性材料層(38)は、樹脂の射出又は樹脂シートの熱形成によって形成することを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも部分的に反射性の反射器(34)は、金属膜又はプラスチック膜を浮彫にすることによって得られ、前記金属膜又は前記プラスチック膜の裏面は、少なくとも部分的に反射性の層で被覆し、前記被覆金属膜又は前記プラスチック膜の表面は、前記吸光偏光子(32)を上に締結した前記透過性材料層(38)で覆い、前記反射偏光膜(24)は、前記反射器(34)及び前記吸光偏光子(32)から形成し、前記吸光偏光子(32)を介して前記光透過性接着剤層(30)により前記裏基体(8)の前記下面(28)に対して締結することを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
液晶分子が平坦若しくは垂直に整列する液晶セル(2)を備える反射性又は半透過性液晶表示デバイス(1)であって、前記液晶セル(2)は、観察者の側に位置する透過性表基体(4)、及び同様に透過性である裏基体(8)から形成し、前記裏基体(8)は、前記表基体(4)の下に、前記表基体(4)に平行に、前記表基体(4)からある距離で延在し、前記表基体(4)及び前記裏基体(8)の2つは、液晶組成物を中に閉じ込める封止筐体(12)を画定する封止枠(10)により互いに接合し、前記表基体(4)及び前記裏基体(8)は、前記表基体(4)及び前記裏基体(8)の対向面上が導電性透明電極(14)及び対電極(16)により被覆され、前記液晶組成物の光学特性は、電極(14)と対応する対電極(16)との間の交差点に電界を印加することによって変更し、前記液晶表示デバイス(1)は、反射偏光膜(24)を備え、前記反射偏光膜(24)は、前記表基体(4)を通じて前記液晶セル(2)に入る第1の光成分(26)を吸収し、前記第1の光成分の方向に直交する方向で偏光する第2の光成分(26)を反射し、前記反射偏光膜(24)は、少なくとも部分的に反射性の反射器(34)と組み合わせた吸光偏光子(32)を備え、前記反射器(34)は、前記吸光偏光子(32)の下に配設し、前記反射器(34)は透過性材料層(38)と光を拡散させる接着剤層(46)とを有し、前記透過性材料層(38)は、観察者(6)が前記液晶セル(2)の表基体(4)を通じて見える、前記液晶表示デバイス(1)の背景の装飾及び/又は前記反射器(34)の反射機能に関する
、着用者の肉眼で知覚できる表示を行う浮彫形状を有し、前記接着剤層(46)を介して前記透過性材料層(38)を前記吸光偏光子(32)に固定することで前記反射器(34)を前記吸光偏光子(32)の下に締結し、前記反射偏光膜(24)は、前記吸光偏光子(32)を介して、光透過性接着剤層(30)により前記液晶セル(2)の前記裏基体(8)の下面(28)に締結される、液晶表示デバイス(1)。
【請求項11】
前記少なくとも部分的に反射性の層(34)は、前記透過性材料層(38)を備え、前記透過性材料層(38)の裏面(40)は、所望の装飾的及び/又は機能的浮彫形状を有し、少なくとも部分的に反射性の層(42)で覆われ、前記透過性材料層(38)は、前記裏面(40)の反対側に表面(44)も備え、前記表面(44)上に前記吸光偏光子(32)を締結することを特徴とする、請求項10に記載の液晶表示デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも部分的に反射性の層(42)は、金属製であることを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示デバイス。
【請求項13】
前記少なくとも部分的に反射性の層(42)を作製する前記金属は、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、白金、パラジウム、金及びこれら金属の合金によって形成される群から選択することを特徴とする、請求項12に記載の液晶表示デバイス。
【請求項14】
前記少なくとも部分的に反射性の層(42)は、複数の誘電材料層から形成し、前記複数の誘電材料層は、互いに異なる屈折率を有し、誘電体ミラーを形成することを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示デバイス。
【請求項15】
前記少なくとも部分的に反射性の反射器(34)は、金属膜又はプラスチック膜から形成し、前記金属膜又は前記プラスチック膜の裏面は、少なくとも部分的に反射性の層で覆い、前記被覆金属膜又は前記プラスチック膜の表面は、前記吸光偏光子(32)を上に締結した前記透過性材料層(38)で覆うことを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示デバイス。
【請求項16】
前記透過性材料層(38)は、樹脂から作製することを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の液晶表示デバイス。
【請求項17】
請求項10から16のいずれか一項に記載の表示デバイスを備える計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示デバイスの製造方法、及び特に本方法により得られる液晶表示デバイスに関する。本発明は、より詳細には、液晶表示デバイスに、この液晶表示デバイスの透過性表示面を通じて知覚できる装飾的及び/又は機能的パターンを提供することを可能にする製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、デジタル型表示デバイスに関し、即ち、目盛りと反対に変位する1つ又は複数の針(複数可)により情報を表示するアナログ表示デバイスとは反対に、情報を英数字形態で表示することができる表示デバイスに関する。
【0003】
デジタル表示デバイスの周知のファミリーは、液晶表示デバイスを群とする。これら液晶表示デバイスは、従来、液晶セルを備え、液晶セルは、観察者の側に位置する透過性表基体、及び透過性又は非透過性である裏基体から形成され、裏基体は、表基体に平行に、表基体からある距離で延在する。これら表基体及び裏基体の2つは、通常、液晶組成物が中に閉じ込められる封止筐体の境界を定める封止枠によって互いに接合される。最後に、表基体及び裏基体は、表基体及び裏基体の対向面上が導電性透明電極及び対電極で被覆され、電極と対応する対電極との間に電界を印加することにより、電極と対応する対電極との交差点の液晶組成物の光学特性を変更する。
【0004】
本発明の範囲内において、特に、
-ねじれネマチック、即ち「TN」型、
-超ねじれネマチック、即ち「STN」型、
-ゲスト・ホスト型、
-垂直配向、即ち「VA」型、又は電気制御複屈折液晶セル、即ち「ECB」型
の液晶セルに関心が向けられる。
【0005】
反射モードで動作できるようにするため、TN、STN、ゲスト・ホスト又は垂直配向又は電気制御複屈折液晶セル型液晶セルは、反射偏光子を備えなければならず、反射偏光子は、ほとんどの場合、裏基体の下面に対して積層され、反射偏光子の機能は、光を反射させることであり、この光は、液晶セルの表面を通じて液晶セルに入り、光が前記偏光子上で反射されるまで全厚さ部にわたりこの液晶セルを通過する。
【0006】
いくつかの種類の反射偏光子があり、場合に応じて、鏡面反射又は拡散反射をもたらす。最初の種類の反射偏光子は、吸光性/透過性偏光子から構成される。この種類の偏光子は、第1の光成分を吸収し、第1の成分の方向に直交する方向で偏光される他の光成分を透過させる。反射偏光子を形成するため、吸光性/透過性偏光子の下面は、反射器、例えば、アルミニウム又は銀の薄い金属層を備え、吸光性/透過性偏光子によって透過された光は、反射器上で反射され、液晶セルの上に戻され、観察者の方に向かう。
【0007】
半透過性型液晶表示デバイス、即ち、反射性及び透過性の両方である液晶表示デバイスの場合、偏光子は、反射性及び透過性の両方でなければならない。部分的に反射性、透過性の両方であるそのような偏光子を得ることを可能にするため、1つの解決策は、吸光偏光子内に設けた金属層の厚さをかなり低い値まで、数ナノメートル範囲内に低減することにあり、この厚さは、正確に制御される。この場合、そのような半透過性液晶表示デバイスは、バックライト・デバイスに取り付けられ、バックライト・デバイスは、裏基体の下に配置され、部分反射性/透過性偏光子を通じて液晶セルの上部に向けて光を放出する。
【0008】
TN、STN、ゲスト・ホスト、垂直配向又は電気制御複屈折型液晶セルを反射モードで動作可能にする別の解決策は、そのような液晶セルが反射性/透過性偏光子を備えることであり、反射性/透過性偏光子は、偏光方向の光を反射し、偏光の直交方向に対して透過性である。そのような反射性/透過性偏光子は、Dual Brightness Enhancement Filmというブランド名で3M社によって販売されているもの等の「共押出多層複屈折干渉偏光器」型、又は「ワイヤグリッド偏光子」型とすることができる。反射性/透過性偏光子は、例えば積層によって裏基体の下面に締結され、黒色又は着色背景層は、反射してはならない光を吸収するように追加される。半透過性液晶セルを得ることが望ましいケースでは、黒色又は着色背景は、裏基体の下に配置したバックライト・デバイスが生成する光を通過させるように部分的にのみ吸光性である。
【0009】
金属反射器が、表基体と裏基体との間に配設される一方で、表基体の上面上に単一偏光子を備える液晶セルを備える表示デバイスもある。
【0010】
したがって、従来技術のTN、STN、ゲスト・ホスト、垂直配向又は電気制御複屈折液晶セル型表示セルを備える液晶表示デバイスは、鏡面反射又は拡散反射型の均質平坦背景に対して分離する英数字又はアイコンの形態で情報を表示する。したがって、従来技術の液晶表示デバイスの間で可能な外観の変形形態はほとんどなく、このため、製造業者が互いから差別化されるのは困難である。同様に、特にそのような液晶表示デバイスを備える腕時計等の物体は、非常に似通った外観を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、反射性又は半透過性型液晶表示デバイスの作製を可能にする製造方法を依然として提供することによって、上述の問題及びその他を克服することを目的とし、こうした液晶表示デバイスの外観は、無限に変更することができる。本発明は、独創的で美しい外観を有する反射性又は半透過性型液晶表示デバイスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的で、本発明は、液晶分子が平坦若しくは垂直に整列する反射性又は半透過性液晶セルを備える液晶表示デバイスの製造方法に関し、この液晶セルは、観察者の側に位置する透過性表基体、及び同様に透過性である裏基体から形成し、裏基体は、表基体の下に、表基体に平行に、表基体からある距離で延在し、これら表基体及び裏基体の2つは、液晶組成物を中に閉じ込める封止筐体を画定する封止枠により互いに接合され、表基体及び裏基体は、表基体及び裏基体の対向面が導電性透明電極及び対電極により被覆され、液晶組成物の光学特性は、電極と対応する対電極との間の交差点に電界を印加することによって変化し、液晶表示デバイスは、反射偏光膜を備え、反射偏光膜は、表基体を通じて液晶セルに入る第1の光成分を吸収し、第1の光成分の方向に直交する方向で偏光する第2の光成分を反射するように構成し、この反射偏光膜は、少なくとも1つの部分的に反射性の反射器と組み合わせた吸光偏光子を備え、反射器は、吸光偏光子の下に配設し、方法は、観察者が液晶セルの表基体を通じて見える装飾的及び/又は機能的形状を与えるように反射器を浮彫にし、次に、この反射器を吸光偏光子の下に締結し、吸光偏光子自体は、裏基体の下面に対して締結されることから構成するステップを含む。
【0013】
本発明の特定の実施形態によれば、
-少なくとも部分的に反射性の反射器は、裏面を備える透過性材料層を浮彫にすることによって得られ、透過性材料層には、所望の装飾的及び/又は機能的浮彫形状が付与され、少なくとも部分的に反射層が上に堆積され、透過性材料層は、裏面の反対側に表面も備え、表面上に吸光偏光子が締結され、反射偏光膜は、少なくとも部分的に反射性の層及び吸光偏光子から形成され、この吸光偏光子を介して光透過性接着剤層により裏基体の下面に対して締結される。
-少なくとも部分的に反射性の層は金属製である。
-金属は、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、白金、パラジウム、金及びこれら金属の合金によって形成される群から選択される。
-少なくとも部分的に反射性の層は、物理蒸着、蒸着又はスパッタリングによって得られる。
-少なくとも部分的に反射性の層は、複数の誘電材料層から形成され、複数の誘電材料層は、互いに異なる屈折率を有し、誘電体ミラーを形成する。
-透過性材料層は、樹脂から作製される。
-透過性材料層は、樹脂の射出又は樹脂シートの熱形成によって形成される。
-少なくとも部分的に反射性の反射器は、金属膜又はプラスチック膜を浮彫にすることによって得られ、金属膜又はプラスチック膜の裏面は、少なくとも部分的に反射性の層で被覆し、被覆金属膜又はプラスチック膜の表面は、吸光偏光子を上に締結した透過性材料層で覆われ、反射偏光膜は、反射器及び吸光偏光子から形成され、この吸光偏光子を介して光透過性接着剤層により裏基体の下面に対して締結される。
【0014】
本発明は、液晶分子が平坦若しくは垂直に整列する液晶セルを備える反射性又は半透過性液晶表示デバイスにも関し、この液晶セルは、観察者の側に位置する透過性表基体、及び同様に透過性である裏基体から形成し、裏基体は、表基体の下に、表基体に平行に、表基体からある距離で延在し、これら表基体及び裏基体の2つは、液晶組成物を中に閉じ込める封止筐体を画定する封止枠により互いに接合し、表基体及び裏基体は、表基体及び裏基体の対向面が導電性透明電極及び対電極により被覆され、液晶組成物の光学特性は、電極と対応する対電極との間の交差点に電界を印加することによって変更し、液晶表示デバイスは、反射偏光膜を備え、反射偏光膜は、表基体を通じて液晶セルに入る第1の光成分を吸収し、第1の光成分の方向に直交する方向で偏光する第2の光成分を反射し、反射偏光膜は、少なくとも部分的に反射性の反射器と組み合わせた吸光偏光子を備え、反射器は、吸光偏光子の下に配設し、反射器は、観察者が液晶セルの表基体を通じて見える装飾的及び/又は機能的浮彫形状を有し、反射偏光膜は、吸光偏光子を介して光透過性接着剤層により液晶セルの裏基体の下面に締結される。
【0015】
特定の実施形態によれば、
-少なくとも部分的に反射性の層は、透過性材料層を備え、透過性材料層は、所望の装飾的及び/又は機能的浮彫形状を有し、透過性材料層の裏面は、少なくとも部分的に反射性の層で覆われ、透過性材料層は、裏面の反対側に表面も備え、表面は、吸光偏光子を上に締結した透過性材料層で覆われる。
-少なくとも部分的に反射性の層は金属製である。
-少なくとも部分的に反射性の層が作製される金属は、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、白金、パラジウム、金及びこれら金属の合金によって形成される群から選択される。
-少なくとも部分的に反射性の層は、複数の誘電材料層から形成され、複数の誘電材料層は、互いに異なる屈折率を有し、誘電体ミラーを形成する。
-透過性材料層は、樹脂から作製される。
-少なくとも部分的に反射性の反射器は、少なくとも部分的に反射性の層と共に裏面上に被覆した金属膜又はプラスチック膜から形成され、被覆金属膜又はプラスチック膜の表面は、吸光偏光子を上に締結した透過性材料層で覆われる。
【0016】
本発明は、上述の種類の表示デバイスを備える計時器にも関する。
【0017】
こうした特徴により、本発明は、背景上にアルファベット、デジタル又は他の情報を浮彫状態で表示する反射性又は半透過性液晶表示デバイスの製造方法を提供し、革新的で互いからかなり異なる態様を有する。この結果は、時計着用者が液晶セルの有用表示面を見た際、着用者の肉眼で知覚できる浮彫形状を反射器上に印刷するという教示によって達成される。特に、本発明による液晶表示デバイスを腕時計内に埋め込むケースでは、反射器に浮彫をもたらし、従来の時計文字板:クル・ド・パリ、コート・ド・ジュネーブ、織効果、サンブラッシュ、エンジン・ターンド等の外観を模したテクスチャを与えることができる。高さの単純な変更も反射器上に刻印することができ、テクスチャ付き若しくはテクスチャ無しの領域、又は表示区分が位置する液晶セルの有用表示面領域を強調する。最後に、本発明により、植物パターン、又はカメオ、コイン面、彫刻を想起させるパターン、又は更に浅浮彫等、象徴的パターンを反射器内に印刷することも可能である。したがって、本発明は、反射性又は半透過性液晶表示デバイスを備える時計又は他の電子製品の製造業者が、従来の液晶ベースの技術を使用しながら、外観が独創的で競合品から目立つ物体を顧客に提供することを可能にする。この従来の液晶ベースの技術は、習熟されており、したがって信頼でき、安価である。本発明により、液晶表示デバイスの背景装飾が容易に変更可能であり、製造業者が、広範囲の製品を、一般的な技術プラットフォームに基づくがそれぞれ異なった美しい外観にすることを可能にし、これにより、製品費用の共有を可能にする。例えば、表示デバイスが様々な装飾的及び/又は技術的要素を有するとはいえ、本発明による液晶セルの区分及びアイコンの形状は、いくつかの表示デバイスに共通であってもよい。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明による方法の一実施形態に対する以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。本例は、単に非限定的な例示として、限定の目的ではなく、添付の図面を参照しながら示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】液晶セルと反射偏光膜とを備える液晶表示デバイスの概略断面図であり、反射偏光膜は、浮彫にした反射器、及び吸光偏光子から形成され、反射偏光膜は、吸光偏光子を介して、光透過性接着剤層により、液晶セルの裏基体の下面に対して締結される。
【
図2】
図1の図と同様の図であり、バックライト・デバイスは、液晶表示デバイスの下に配設される。
【
図3】液晶セルを備える腕時計の図であり、液晶セルの反射偏光膜は、液晶表示デバイスの下に配設され、液晶セルの有用表示面を通じてカメオの象徴的画像を表示するように浮彫にされている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、全体として、全体参照数字1によって指定される液晶表示デバイスの断面図である。この液晶表示デバイス1は、液晶セル2を含み、液晶セル2は、観察者6の側に位置する透過性表基体4と、同様に透過性である裏基体8とを備え、裏基体8は、表基体4の下に、表基体4に平行に、表基体4からある距離で延在する。表基体4及び裏基体8の2つは、液晶組成物が中に閉じ込められる封止筐体12の境界を定める封止枠10によって互いに接合される。表基体4及び裏基体8は、表基体4及び裏基体8の対向面上が導電性透明電極14及び対電極16により被覆される。液晶組成物の光学特性は、電極14と対応する対電極16との間の交差点に電界を印加することによって変更される。液晶セル2は、吸光偏光子18も備え、吸光偏光子18は、光学透明接着剤、即ちOCAとしても公知である光透過性接着剤層22により表基体4の上面20に接合される。
【0021】
最後に、液晶セル2は、反射偏光膜24を備え、反射偏光膜24は、表基体4を通じて液晶セル2に入る第1の光成分26を吸収し、第1の光成分に直交する方向で偏光された第2の光成分を反射するように構成される。この反射偏光膜24は、OCA型光透過性接着剤層30により裏基体8の下面28に対して締結される。
【0022】
反射偏光膜24は、少なくとも部分的に反射性の反射器34と組み合わせた吸光偏光子32を備える。この反射器34が部分的に反射性であるか、完全に吸光性であるかに応じて、表示デバイス1は、半透過性であるか、反射性である。表示デバイス1が半透過性である場合、バックライト・デバイス36は、反射偏光膜24の下に配設される(
図2を参照)。
【0023】
本発明による方法は、液晶セル2の表基体4を通じて観察者6に見える装飾的及び/又は機能的形状を反射器34に付与するように反射器34を浮彫にし、次に、この反射器34を吸光偏光子32の下に締結し、吸光偏光子32自体は、光透過性接着剤層30により裏基体8の下面28に対して締結されることから構成するステップを含む。
【0024】
少なくとも部分的に反射性の反射器34は、所望の装飾的及び/又は機能的浮彫形状が付与される透過性材料層38を成形することによって得られる。この透過性材料層38は、裏面40と、裏面40の反対側の平坦表面44とを備え、裏面40は、所望の浮彫形状を有し、裏面40上に、少なくとも部分的に反射性の層42が堆積される。吸光偏光子32は、光学透明接着剤、即ちOCA型光透過性接着剤から形成される接着剤層46により透過性材料層38の平坦表面44上に締結される。この接着剤層46は、透過性材料層38上に積層される感圧膜の形態であっても、液体接着剤層としてこの透過性材料層38上に分配してもよい。最後に、吸光偏光子32は、光学透明接着剤、即ち「OCA」型光透過性接着剤から形成した接着剤層30で覆われる。接着剤層46を介して吸光偏光子32を透過性材料層38上に固着すると、反射偏光膜24が得られ、反射偏光膜24は、光透過性接着剤層30により液晶セル2の裏基体8の下面28に対して固着される。
【0025】
透過性材料層38の裏面40上に堆積され、反射器34を形成する少なくとも部分的に反射性の層42は、金属製とすることができる。この場合、金属は、有利には、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、白金、パラジウム、金及びこれら金属の合金によって形成される群から選択される。この少なくとも部分的に反射性の層42は、物理蒸着、蒸着又はスパッタリングによって非排他的に堆積することができる。この少なくとも部分的に反射性の層42は、複数の誘電材料層から形成することもでき、複数の誘電材料層は、互いに異なる屈折率を有し、誘電体ミラーを形成する。
【0026】
少なくとも部分的に反射性の層42が堆積される裏面40上の透過性材料層38に関し、透過性材料層38は、例えば、樹脂の射出又は樹脂シートの熱形成によって樹脂から作製することができる。したがって、樹脂は、型に射出することができ、型の一部分は、反射器34に与えることが求められる形状に対応する浮彫形状を有する。使用する樹脂が感光性である場合、樹脂は、樹脂が型の2つの部分の間にある際に紫外線に露出することによって固化することができる。樹脂シートを基材として使用する場合、樹脂シートを浮彫にすることは、樹脂シートに与えることが求められる形状に対応する浮彫形状を有する型に対する冷変形又は熱変形によって得、所望の反射器34を得ることができる。シート状樹脂が感光性である場合、樹脂の形状は、紫外線への露出によって凍結することができる。
【0027】
透過性材料層38を、少なくとも部分的に反射性の層42が反射器34を形成するように裏面40上に成形、被覆した後、吸光偏光子32を表面44上に締結する。透過性材料層38の重合前又は後、光透過性接着剤層46は、この透過性材料層38上に堆積され、この光透過性接着剤層46により、吸光偏光子32がこの透過性材料層38上に締結される。
【0028】
少なくとも部分的に反射性の反射器34は、少なくとも部分的に反射性の金属膜又はプラスチック膜を浮彫にすることによって得ることもでき、金属膜又はプラスチック膜の裏面は、少なくとも部分的に反射性の層、例えば金属層で被覆される。この場合、被覆金属膜又はプラスチック膜の表面は、光透過性接着剤層46により吸光偏光子32を上に締結した透過性材料層38で覆われる。反射器34及び吸光偏光子32から形成される反射偏光膜24は、この吸光偏光子32を介して光透過性接着剤層30により液晶セル2の裏基体8の下面28に対して締結される。
【0029】
図3は、液晶セルを備える腕時計60の図であり、液晶表示デバイスの下に配置される液晶セルの反射偏光膜は、液晶セルの有用表示面を通じてカメオの象徴的画像62を表示するように浮彫にされている。したがって、液晶表示デバイスによって表示される有用情報64が、反射偏光膜内に形成した象徴的画像62上に永続的、又は要求に応じて重ねられ、これにより、腕時計60に完全に際立った、革新的な美しい外観をもたらすことがわかる。当然、反射偏光膜は、象徴的画像だけでなく、例えば目盛り等、液晶表示デバイスが表示する情報と協働する技術的情報も表示するように成形することができる。
【0030】
本発明は、たった今説明してきた反射性又は半透過性液晶表示デバイスの実施形態に限定されるものではなく、当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び単純な変形形態を考慮し得ることは言うまでもない。特に、用語「反射偏光子」とは、一方向の偏光を反射し、直交方向の偏光を透過する偏光子を意味することに留意されたい。同様に、用語「吸光偏光子」とは、1つの光成分を吸収し、吸光成分に直交する他の光成分を透過させる偏光子を意味する。本発明は、液晶分子が平坦に整列する、即ち、長軸が液晶セルの基体に平行に延在する液晶セル、又は液晶分子が垂直に整列する、即ち、長軸が液晶セルの基体に直交して延在する液晶セルに適用されることにも留意されたい。そのような液晶セルの例は、ねじれネマチック、超ねじれネマチック、ゲスト・ホスト型、又は垂直配向、即ちVA、又は電気制御複屈折、即ちECB型液晶セルによって示される。接着剤層30、38及び46は、反射光に対してつや消し又は光沢のある外観をもたらすように、わずかに拡散する材料により作製し得ることにも留意されたい。本発明は、上記した種類の液晶表示デバイス1を備える計時器、特に腕時計にも関する。したがって、時計の着用者は、液晶セル2の表基体4を通じて、この液晶セル2が表示する情報、反射偏光膜24内に浮彫状態で印刷された装飾又はあらゆる他の機能的表示が背景内に見え、この時計に、独特で、競合品から時計の外観を区別する外観を与えることを可能にする。
【符号の説明】
【0031】
1 液晶表示デバイス
2 液晶セル
4 表基体
6 観察者
8 裏基体
10 封止枠
12 封止筐体
14 電極
16 対電極
18 吸光偏光子
20 上面
22 接着剤層
24 反射偏光膜
26 光
28 内面
30 接着剤層
32 吸光偏光子
34 反射器
36 バックライト・デバイス
38 透過性材料層
40 裏面
42 層
44 表面
46 接着剤層
60 腕時計
62 象徴的画像
64 有用情報