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▶ グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニムの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】乾燥多糖を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20240301BHJP
   A61K 39/09 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C08B37/00 G
A61K39/09
A61P31/04
A61P11/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021502793
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019069286
(87)【国際公開番号】W WO2020016322
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】18184534.8
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド,ジャック ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ヘーヒシュテンバッハ,ジャン-フランソワ ポール
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-507590(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103828(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105131139(CN,A)
【文献】国際公開第2012/116280(WO,A1)
【文献】特開2017-141263(JP,A)
【文献】BUREY P; ET AL,GEL PARTICLES FROM SPRAY-DRIED DISORDERED POLYSACCHARIDES,CARBOHYDRATE POLYMERS,英国,2009年03月17日,VOL:76, NR:2,,PAGE(S):206 - 213,http://dx.doi.org/10.1016/j.carbpol.2008.10.001
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 1/00-37/18
A61K 39/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラム陽性菌に由来する単離莢膜多糖を乾燥させる方法であって、(a)少なくとも1つの濾過ステップ、及び(b)前記単離莢膜多糖を含む液体組成物を噴霧乾燥させるステップを含み、少なくとも1つの濾過ステップが噴霧乾燥ステップの前に実施され、前記液体組成物が賦形剤を含まず、前記液体組成物が保護剤を含まず、前記単離莢膜多糖が抗原である、方法。
【請求項2】
前記単離莢膜多糖が、連鎖球菌属(Streptococcus)細菌に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細菌が、B群連鎖球菌属種又は肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)種の細菌である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細菌が、肺炎連鎖球菌種の細菌である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細菌が、肺炎連鎖球菌血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fの細菌である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記単離莢膜多糖が、PS 1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記液体組成物中の前記単離莢膜多糖が、少なくとも99%(w/w)純粋である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記液体組成物中の前記多糖の濃度が、0.5~13g/Lの間である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
沈殿ステップを含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記液体組成物が、アルコールで処理されたものではない、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記液体組成物が、噴霧乾燥される前に、少なくとも2回濾過されたものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液体組成物が、前記単離莢膜多糖、及び1%(w/w)未満の、前記単離莢膜多糖以外の炭水化物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥多糖を調製するための、改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖は、細菌表面の主要な成分である。莢膜多糖抗原に対する免疫応答は、細菌性疾患に対する保護をもたらすことが示されている。莢膜多糖抗原に基づくいくつかのワクチンが、例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、B群連鎖球菌属(Streptococcus)、及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)に対するワクチンを含め、開発されている。
【0003】
ワクチン中で使用される多糖は、他の細菌成分から、十分に精製されていることが重要である。加えて、簡便な輸送及び保管のために、精製された多糖は、適切に乾燥される。これらは、産業スケールでは、困難かつ高価な工程である。例えば、1つの現行の方法は、固体多糖を、残留精製緩衝液から分離する、少なくとも1つの沈殿ステップを必要とする、煩瑣なマルチステップ工程を伴う。沈殿は、かなりの容量の溶媒を必要とし、その後、いくつかの洗浄ステップ及び乾燥ステップを必要とする。
【0004】
よって、乾燥多糖抗原の、産業スケールの、より簡便な方式における製造を可能とする方法が依然として必要とされている。
【0005】
噴霧乾燥は周知の乾燥技法であるが、ワクチン分野における使用は限定されている。タンパク質及び多糖を含む生物医薬分子の構造的/化学的性質は、変性、凝集、脱アミド化、及び加水分解を含む機構を介して、これらを、分解に対して感受性とする。
【0006】
多糖を噴霧乾燥させる場合の最大の憂慮点の1つは、方法が、加熱された空気による乾燥を伴い、多糖構造の完全性が高温による影響を受ける恐れがあることである。
【0007】
噴霧乾燥を使用してワクチンを製造する先行技術の方法は、噴霧乾燥条件により引き起こされる損傷から抗原を保護するための安定化成分を必要としている。例えば、Chenら、2010は、熱安定性A群髄膜炎菌タンパク質-多糖コンジュゲートワクチンの製造における、噴霧乾燥の使用について開示している。全ての噴霧乾燥髄膜炎菌製剤は、製剤を安定化させるために、トレハロース又はラクトースによる保護剤を含有した。著者らは、多糖-タンパク質コンジュゲートワクチンの噴霧乾燥が未だ報告されていないことを示し、工程をスケールアップする前に対処が必要となると述べている、収率のばらつきを特定した。
【0008】
Zhuら、2014は、モデルワクチン候補物質としての、インフルエンザヘマグルチニンペプチド抗原を安定化させるための、噴霧乾燥工程の使用について開示している。ある範囲の賦形剤、例えば、トレハロース、デキストラン、スクロース、アルギニン、加水分解ゼラチン、PVP-40、及び加水分解されたレシチンを含有する8つの製剤が調製された。噴霧乾燥時に、全ての製剤が、ワクチン候補物質を損傷から保護したわけではなかった。著者らは、最良の製剤の高い収率を、賦形剤及び作業条件の選択の結果であると考えた。
【0009】
同様に、US2005/0266011は、噴霧乾燥された免疫活性薬剤、例えば、賦形剤、例えば、スクロースと共に製剤化されたインフルエンザヘマグルチニンペプチドを例示する。著者らは、この文献において開示されたスクロース含有製剤が、噴霧乾燥後において、タンパク質の減少も、分子量の変化も伴わないことから利益を得たと述べている。
【0010】
Ohtakeら、2010は、熱安定性の麻疹ワクチン粉体を製造するための、噴霧乾燥工程の使用について開示している。弱毒化生麻疹ウイルスを、温和な工程条件下で、固有の安定化剤の組合せと共に噴霧乾燥させた。安定化剤は、トレハロース、スクロース、ミオイノシトール、アルギニン、グリセロール、及びプルロニックF68を含んだ。
【0011】
McAdamsら、2012は、噴霧乾燥及びワクチンの安定化についての総説を提示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、単離多糖を乾燥させる方法であって、単離多糖を含む液体組成物を噴霧乾燥させるステップを含む方法を提供する。また、該方法により得ることが可能であるか、又は得られる単離多糖、該方法により得ることが可能であるか、又は得られる単離多糖を含むコンジュゲート、該多糖又はコンジュゲートを含む医薬組成物又は免疫原性組成物、並びにこれに関する処置方法及び使用も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
乾燥多糖を調製するための改善された方法を提供することが本発明の目的である。驚くべきことに、本発明の方法は、実質的に無傷の乾燥多糖の高い収率を簡便な方式で達成する。一部の実施形態では、これは、保護剤、沈殿ステップ、及び/又は高濃度のフィード多糖溶液の使用を伴わずに達成される。さらなる実施形態では、噴霧乾燥多糖の特性は、所望の規格パラメーター内にある。
【0014】
多糖
「多糖」という用語は、グリコシド結合により一体に結合された複数の単糖単位からなる、ポリマー性炭水化物分子を指す。一実施形態では、単糖単位は、例えば、リポ糖を結果としてもたらす、1つ以上の脂質の付加により改変された単糖でありうる。したがって、本発明で使用される多糖は、例えば、リポ多糖(リポオリゴ糖を含む)を含みうる。単糖はまた、官能基、例えば、o-アセチル、ウロン酸、ヘキソサミン、及びメチルペントースの付加によっても改変されうる。
【0015】
単糖は、ペントース、ヘキソース、デオキシヘキソース、アミノデオキシヘキソース、ジアミノジデオキシヘキソース、ジアミノトリデオキシヘキソース、ヘキスロン酸、アミノデオキシヘキスロン酸、ヘプトース、オクツロン酸、ノヌロン酸、分枝状単糖、非炭水化物置換基(例えば、O-メチル、O-(1-カルボキシエチル)、O-アセチル、O-ラクチル、O-(2-ヒドロキシプロピオニル)、O-(2,4-ジヒドロキシブチリル)、リン酸、硫酸、N-アセチル、N-グリコリル、N-(2-アミノプロピオニル)、ピルビン酸)を有する単糖を含む。
【0016】
本発明に従う多糖は、単離多糖である。「単離」という用語は、多糖が、その通常の天然環境から分離されているが、化学改変されていないことを意味する。化学改変は、糖又は単離多糖ではない物質、例えば、タンパク質へのコンジュゲーションを含む。本明細書では、タンパク質、ペプチド、及びポリペプチドという用語は、互換的に使用される。したがって、本発明に従う単離多糖は、他の分子、とりわけ、タンパク質にコンジュゲートされていない。
【0017】
一実施形態では、単離多糖は、約0%~約40%の間のO-アセチル化、例えば、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満のO-アセチル化を有する。一実施形態では、単離多糖は、糖反復単位1mM当たり、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.35、又は約0.4mMのO-アセテートを有する。別の実施形態では、単離多糖は、糖反復単位1mM当たり、約0.01、0.02、0.03、0.04、又は0.05mM未満のO-アセテートを有する。
【0018】
代替的実施形態では、単糖単位は、非改変でありうる。
【0019】
適切には、単離多糖は、単離莢膜多糖である。より適切には、単離莢膜多糖抗原である。単離莢膜多糖抗原は、対象への投与時に、免疫応答を誘発することが可能な単離莢膜多糖である。
【0020】
莢膜多糖は、細菌細胞の莢膜内に天然で見出される多糖である。したがって、莢膜多糖は、細菌莢膜多糖と称されうる。莢膜多糖は、適切には水溶性、適切には酸性又は中性の(最も適切には、酸性)であり、適切に100~2000kDaの桁数の分子量を有する。莢膜多糖は、適切には直鎖状であり、適切には1つ~6つの単糖による反復部分単位からなる。
【0021】
適切には、単離多糖は、約5kDa~約2,000kDa、より適切には約50kDa~約1800kDa、より適切には約80kDa~約1500kDa、より適切には約100kDa~約1400kDa、より適切には約150kDa~約1300kDa、又は最も適切には約200kDa~約1200kDaの分子量を有する。
【0022】
当業者は、分子量の増大が、他の複数のパラメーターと並んで、溶液中の多糖の粘度の増大に寄与することを理解するであろう。当業者は、過度に低度であるか、又は過度に高度の粘度を使用する場合、噴霧乾燥効率が低減されることを理解し、このため、粘度を変更するようにパラメーターを調整するであろう。
【0023】
適切には、本発明の単離多糖は、細菌、適切にはグラム陽性菌に由来する。
【0024】
一実施形態では、単離多糖は、ヘモフィルス属(Haemophilus)(例えば、インフルエンザ菌、例えば、b型インフルエンザ菌(Hib))、連鎖球菌属(例えば、肺炎連鎖球菌(肺炎球菌)、A群連鎖球菌(GAS、例えば、A群溶血性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))、及びB群連鎖球菌(GBS))、ナイセリア属(Neisseria)(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(髄膜炎菌(meningococcus)、血清群A、B、C、W135、及び/又はY)、クレブシエラ属(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae))、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ属(Salmonella)(例えば、チフス菌(Salmonella typhi))、B群溶血性連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)(Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、及び/又はIX型)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(例えば、血清型5及び8)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)又はE.フェシウム(E.faecium)(三糖リピート)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、コレラ菌(Vibrio cholerae)からなるリストから選択される属に属する細菌に由来する。本発明の組成物中に含まれうる他の多糖は、グルカン(例えば、真菌グルカン、例えば、カンジダ・アルビカンスにおける真菌グルカン)、及び、例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)の莢膜に由来する真菌莢膜多糖を含む。含まれうる別の多糖は、A群溶血性連鎖球菌群特異的抗原(GAS炭水化物)である。より適切には、単離多糖は、連鎖球菌属、例えば、B群連鎖球菌属又は肺炎連鎖球菌に属する細菌に由来する。
【0025】
単離多糖は、最も適切には、肺炎連鎖球菌に由来する。一実施形態では、適切には、単離多糖は、肺炎球菌多糖血清型1(PS1)、肺炎球菌多糖血清型4(PS4)、肺炎球菌多糖血清型5(PS5)、肺炎球菌多糖血清型6B(PS6B)、肺炎球菌多糖血清型7F(PS7F)、肺炎球菌多糖血清型9V(PS9V)、肺炎球菌多糖血清型14(PS14)、肺炎球菌多糖血清型18C(PS18)、肺炎球菌多糖血清型19F(PS19F)、肺炎球菌多糖血清型23F(PS23F)である。一実施形態では、単離多糖は、肺炎連鎖球菌血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23F、より適切には7F又は14に由来する。
【0026】
代替的に、単離多糖は、B群連鎖球菌血清型Ia莢膜単離多糖(CPS Ia)、B群連鎖球菌血清型Ib莢膜単離多糖(CPS Ib)、B群連鎖球菌血清型II莢膜単離多糖(CPS II)、B群連鎖球菌血清型III莢膜単離多糖(CPS III)、B群連鎖球菌血清型IV莢膜単離多糖(CPS IV)、及びB群連鎖球菌血清型V莢膜単離多糖(CPS V)からなるリストから選択される。より特定すると、単離多糖は、B群連鎖球菌血清型Ia莢膜単離多糖(CPS Ia)、B群連鎖球菌血清型Ib莢膜単離多糖(CPS Ib)、及びB群連鎖球菌血清型III莢膜単離多糖(CPS III)からなるリストから選択される。
【0027】
本明細書で記載された方法のうちのいずれかに従う工程により得ることが可能な(例えば、これにより得られる)単離多糖は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0028】
多糖の製造
単離多糖は、様々な手段を使用して、細菌から得られうる。例えば、細菌は、発酵槽内で増殖されうる。発酵サイクルの終了時に、細菌細胞は、フェノールにより、化学的に不活化されうる。目的の特定の単離多糖は、例えば、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)による、不活性珪藻土(例えば、セライト545)への、1つの不純物複合体化ステップを実施して、細胞破砕物、核酸、及びタンパク質を除去することにより、細菌細胞破砕物から分離されうる。これに続き、小型の核酸及びフェノールを除去し、次のステップのために、緩衝液を交換することを目的とする、限外濾過ステップを行う。次いで、これに続き、CTABによる、不活性珪藻土(例えば、セライト512)への複合体化ステップを行い、CPS(C-多糖)を除去する。
【0029】
上記で論じられた通り、多糖の精製は、しばしば、四級アンモニウム塩(CTAB又はCetavlonなど)を用いる沈殿に基づく。このカチオン性デタージェントは、いくつかのポリアニオン、例えば、それらの等電点に応じて、酸性の多糖、核酸、及びタンパク質と共に、不溶性の複合体を形成する。セライトが、不溶性凝集塊の形成を回避するための分散剤として(さらに、このため、濾過助剤として)使用される。
【0030】
適切には、本発明の方法は、噴霧乾燥ステップの前に液体組成物を濾過する少なくとも1つのステップを含む。濾過は、実質的に純粋な単離多糖液体組成物、例えば、少なくとも90%純粋、例えば、少なくとも95%純粋、例えば、少なくとも98%純粋、例えば、少なくとも99%純粋、例えば、少なくとも99.5%純粋、例えば、少なくとも99.8%純粋、例えば、少なくとも99.9%純粋、例えば、少なくとも99.95%純粋、例えば、少なくとも99.99%(w/w)純粋な多糖溶液を適切に達成する。本明細書で使用される純度百分率とは、組成物中の他の溶解成分又は懸濁成分に対する単離多糖の比率を指す。100%純粋な単離多糖液体組成物は、液体溶媒及び単離多糖からなる。このような組成物中には、他の溶解成分又は懸濁成分は存在しない。
【0031】
噴霧乾燥に適する多糖純度のレベルを達成する、任意の濾過方法が使用されうる。このような方法は、膜濾過、例えば、限外濾過及びタンジェンシャルフロー濾過を含む。
【0032】
適切には、濾過は、噴霧乾燥ステップの前における、少なくとも1つのタンジェンシャルフロー濾過(TFF)ステップ、例えば、少なくとも2つのタンジェンシャルフロー濾過ステップにより達成される。このステップの目的は、小型のタンパク質夾雑物を液体組成物から除去することである。適切には、本発明の方法は、噴霧乾燥ステップの前に、セライト及びCTABを使用する、少なくとも1つのTFF濾過ステップ、例えば、少なくとも2つのこのような濾過ステップを含む。
【0033】
コンジュゲート
本明細書で記載される噴霧乾燥方法を使用して製造された後で、多糖は、タンパク質(例えば、タンパク質担体又は抗原性タンパク質)又は別の多糖にコンジュゲートされうる。これは、本発明のコンジュゲートをもたらす。
【0034】
タンパク質担体は、任意のタンパク質でありうる。タンパク質担体は、1つ以上のヘルパーT細胞エピトープを含みうる。本発明の一実施形態では、タンパク質担体は、TT、DT、CRM197、TTの断片C、インフルエンザ菌(H. influenzae)のプロテインD、肺炎球菌PhtD、及び肺炎球菌溶血素からなる群から選択される。担体タンパク質は、破傷風トキソイド(TT)、破傷風トキソイド断片C、破傷風毒素の非毒性突然変異体、ジフテリアトキソイド(DT)、CRM197、ジフテリア毒素の他の非毒性突然変異体(例えば、CRM176、CRM197、CRM228、CRM9、CRM45、CRM102、CRM103、及びCRM107、並びにNicholls及びYoule、「Genetically Engineered Toxins」、Frankel編、Maecel Dekker Inc, 1992により記載されている他の突然変異を含む突然変異体;欠失、又はGlu-148の、Aspへの突然変異、又はGln、Ser、及び/若しくはAla 158の、Glyへの突然変異、並びにUS 4709017又はUS 4950740において開示されている他の突然変異;Lys 516、Lys 526、Phe 530、及び/又はLys 534の、少なくとも1つ以上の残基の突然変異、並びにUS 5917017又はUS 6455673において開示されている他の突然変異;あるいはUS 5843711において開示されている断片)、肺炎球菌溶血素(Kuoら、1995)、OMPC(髄膜炎菌外膜タンパク質:通例、髄膜炎菌(N. meningitidis)のB血清群から抽出される(EP0372501))、合成ペプチド(EP0378881、EP0427347)、熱ショックタンパク質(WO93/17712、WO94/03208)、百日咳タンパク質(WO98/58668、EP0471177)、サイトカイン、リンホカイン、増殖因子、又はホルモン(WO91/01146)、多様な病原体由来抗原、例えば、N19タンパク質(Baraldoiら、2004)肺炎球菌表面タンパク質PspA(WO02/091998)に由来する、複数のヒトCD4+ T細胞エピトープを含む人工タンパク質(Falugiら、2001)、鉄取込みタンパク質(WO01/72337)、C.ディフィシル(C. difficile)の毒素A又はB(WO00/61761)、インフルエンザ菌タンパク質D(EP594610及びWO00/56360)、肺炎球菌PhtA(WO98/18930、Sp36ともまた称される)、肺炎球菌PhtD(WO00/37105において開示されており、Sp036Dともまた称される)、肺炎球菌PhtB(WO00/37105において開示されており、Sp036Bともまた称される)又はPhtE(国際公開第WO00/30299号において開示されており、BVH-3ともまた称される)でありうる。最も適切には、タンパク質担体は、CRM 197である。
【0035】
単離多糖は、任意の公知の方法(例えば、Likhite、米国特許第4,372,945号及びArmorら、米国特許第4,474,757号による方法)により、必要な場合、任意の適切なリンカーにより、担体タンパク質へと連結されうる。単離多糖は、例えば、カルボジイミド(例えば、EDAC)縮合化学反応を使用する方法により、担体タンパク質にコンジュゲートされうる。
【0036】
リンカー基を介する連結は、任意の公知の手順、例えば、US4,882,317及びUS4,695,624において記載されている手順を使用して作られうる。連結の1つの種類は、単離多糖の還元的アミン化、結果として得られるアミノ基の、アジピン酸リンカー基の1つの末端とのカップリング(EP 0477508、Porroら、1985、EP 0208375)を伴い、次いで、タンパク質の、アジピン酸リンカー基の他の末端へのカップリングを伴う。リンカーの使用に対する代替法として、直接連結も使用されうる。タンパク質への直接連結は、例えば、US4,761,283及びUS4,356,170において記載されている、単離多糖の酸化に続く、タンパク質による還元的アミン化、又は直接的なCDAP反応を含みうる。最も適切には、単離多糖は、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)リンカーにより、タンパク質にコンジュゲートされている。
【0037】
単離多糖は、典型的には、コンジュゲーションの前に、活性化又は官能化される。活性化は、例えば、シアニル化剤、例えば、CDAP(1-シアノ-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸)(WO95/08348及びWO96/29094)を伴いうる。他の適切な技法は、ヒドラジド、活性エステル、ノルボラン、p-ニトロ安息香酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、S-NHS、EDC、又はTSTUを使用する。
【0038】
加えて、単離多糖は、(1)タンパク質官能基を介する直接カップリング(例えば、チオール-チオール連結、アミン-カルボキシル連結、アミン-アルデヒド連結;酵素直接カップリング);(2)アミンのホモ二官能性カップリング(例えば、ビス-アルデヒドを使用する);(3)チオールのホモ二官能性カップリング(例えば、ビス-マレイミドを使用する);(4)光活性化型試薬を介するホモ二官能性カップリング;(5)アミンのチオールへのヘテロ二官能性カップリング(例えば、マレイミドを使用する);(6)光活性化型試薬(例えば、β-カルボニルジアゾファミリー)を介するヘテロ二官能性カップリング;(7)臭化シアンの活性化又はカルボキシメチル化を介する、アミン反応性基の多糖又はオリゴ糖への導入;(8)ヘテロ二官能性化合物、例えば、マレイミド-ヒドラジドを介する、チオール反応性基の多糖又はオリゴ糖への導入;(9)疎水性基のタンパク質への導入を介するタンパク質-脂質コンジュゲーション;及び(10)反応性基の脂質への組込みを介するタンパク質-脂質コンジュゲーションを含む技法によりコンジュゲートされうる。また、ヘテロ二官能性「非共有結合カップリング」技法、例えば、ビオチン-アビジン間相互作用も意図される。
【0039】
ある実施形態では、多糖-タンパク質コンジュゲートは、多糖を、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)で活性化させて、シアン酸エステルを形成することにより得られる。活性化多糖は、担体タンパク質上のアミノ基へと、直接カップリングされる場合もあり、スペーサー(リンカー)基を介してカップリングされる場合もある。例えば、スペーサーは、チオール化多糖をもたらすシスタミン又はシステアミンでありえ、これは、マレイミド活性化担体タンパク質(例えば、GMBSを使用する)又はハロアセチル化担体タンパク質(例えば、ヨードアセトイミド、SIB、SIAB、スルホ-SIAB、SIA、又はSBAPを使用する)との反応の後で得られるチオエーテル結合を介して担体にカップリングされうる。
【0040】
一態様では、シアン酸エステル(場合によって、CDAP化学反応により作られる)は、ヘキサンジアミン又はアジピン酸ジヒドラジド(ADH)とカップリングされ、アミノ誘導体化糖は、タンパク質担体上のカルボキシル基を介するカルボジイミド(例えば、EDAC又はEDC)化学反応を使用して、担体タンパク質にコンジュゲートされる。このようなコンジュゲートについては、例えば、国際特許出願公開第WO93/15760号、同第WO95/08348号、及び同第WO96/29094号において記載されている。
【0041】
医薬組成物
本発明の単離多糖及びコンジュゲートは、医薬組成物、例えば、免疫原性組成物(例えば、ワクチン組成物)における使用に適する。
【0042】
単離多糖は、医薬組成物のヒト用量1回分当たり、1~100ugの間の量で使用されうる。単離多糖は、約50ug、例えば、40~60ugの間、適切には45~55ugの間又は49~51ugの間又は50ugのレベルで使用されうる。さらなる実施形態では、医薬組成物のヒト用量は、単離多糖を、約25ug、例えば、20~30ugの間、適切には21~29ugの間又は22~28ugの間又は23~27ugの間又は24~26ugの間又は25ugのレベルで含む。
【0043】
一実施形態では、本発明の単離多糖又はコンジュゲート、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0044】
薬学的に許容される賦形剤は、組成物を施される個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘導しない、任意の賦形剤を含む。適切な賦形剤は、水、生理食塩液、グリセロール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース、トレハロース、ラクトース、及び脂質凝集物を含む。
【0045】
本発明の範囲内の医薬組成物はまた、生物学的に活性の場合もあり、不活性の場合もある、他の化合物も含有しうる。例えば、上記で記載したコンジュゲーション方法を介して、コンジュゲートを形成するように組み込まれるか、又は医薬組成物内の、個別の化合物として組み込まれる、他の多糖又はポリペプチド抗原の、1つ以上の免疫原性部分も存在しうる。
【0046】
医薬組成物は、薬学的に許容される塩を含有しうることが明らかであろう。このような塩は、有機塩基(例えば、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンの塩、並びに塩基性アミノ酸)、及び無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、及びマグネシウムの塩)を含む、薬学的に許容される非毒性塩基から調製されうる。
【0047】
当業者に公知の、任意の適する担体が、製剤化された医薬組成物中で用いられうるが、担体の種類は、投与方式に応じて変動するであろう。本発明の組成物は、例えば、局所投与、経口投与、経鼻投与、静脈内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、皮下投与、又は筋内投与を含む、任意の適切な投与方式のために製剤化されうる。非経口投与、例えば、皮下注射のために、担体は、好ましくは、水、生理食塩液、アルコール、脂肪、蝋、又は緩衝液を含む。経口投与のために、上記の担体又は固体担体、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウムのうちのいずれかが用いられうる。生体分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸-ポリグリコール酸)もまた、本発明の医薬組成物のための担体として用いられうる。
【0048】
非経口投与により送達される場合、医薬組成物のpHは、非経口投与に適するpHであるべきである。典型的に、pHは、4.0~9.0の範囲となろう。適切には、pHは、5.0~8.0、とりわけ、5.25~6.75、例えば、6.5~7.5、特に、pH 6.75~7.25の範囲となろう。約6.0のpHは、特に対象のpHである。pHは、例えば、トリス緩衝液又はリン酸緩衝液を含む緩衝液の使用により制御されうる。
【0049】
本発明の単離多糖及びコンジュゲートは、適切には、免疫刺激剤を含む免疫原性組成物を形成するように、組成物中に製剤化されうる。免疫刺激剤は、外因性抗原に対する免疫応答(抗体媒介性免疫応答及び/又は細胞媒介性免疫応答)を増強又は強化する任意の物質である。免疫刺激剤の例は、アジュバント、生体分解性マイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド(polylactic galactide))、及びリポソーム(この中に化合物が組み込まれる)を含む(例えば、Fullerton、米国特許第4,235,877号を参照されたい)。免疫原性組成物の調製については、一般に、例えば、Powell及びNewman編、「Vaccine Design (the subunit and adjuvant approach)」(1995)において記載されている。一部の実施形態では、本明細書で記載される免疫原性組成物は、ワクチンとして使用されうる。
【0050】
免疫刺激剤の例は、アジュバントである。大半のアジュバントは、抗原を、異化から保護するようにデザインされた物質、例えば、アルミニウム水酸化又は鉱物油、及び免疫応答の刺激因子、例えば、リピドA、百日咳菌(Bortadella pertussis)、又はマイコバクテリウム属(Mycobacterium)種若しくはマイコバクテリウム属由来タンパク質を含有する。例えば、脱脂化、脱糖脂質化されたM.バッケ(M. vaccae)(「pVac」)が使用されうる。適切なアジュバントは、例えば、フロイントの不完全アジュバント及び完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);Merck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc.、Rahway、NJ);AS01B、AS02A、AS15、AS-2、及びこれらの誘導体(GlaxoSmithKline、Philadelphia、PA);CWS(結核菌に由来する細胞壁骨格)、TDM(トレハロースジコリノミコレート)、Leif(リーシュマニア属(Leishmania)伸長開始因子)、アルミニウム塩、例えば、水酸化アルミニウムゲル(アラム)又はリン酸アルミニウム;カルシウム、鉄、又は亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁物;アシル化糖;カチオン又はアニオンにより誘導体化された多糖;ポホスファゼン;生体分解性マイクロスフェア;モノホスホリルリピドA(MPL(登録商標))(例えば、3D-MPL);及びquil A(例えば、QS17又はQS21、適切にはQS21)として市販されている。サイトカイン、例えば、GM-CSF、又はインターロイキン2、7、若しくは12もまた、アジュバントとして使用されうる。
【0051】
特定の実施形態では、免疫原性組成物は、サポニン及びTLR4アゴニストの両方を含む。具体例では、免疫原性組成物は、QS21及び3D-MPLを含む。
【0052】
TLR-4アゴニスト、例えば、リポ多糖、例えば、3D-MPLは、免疫原性組成物のヒト用量1回分当たり、1~100ugの間の量で使用されうる。3D-MPLは、約50ug、例えば、40~60ugの間、適切には45~55ugの間又は49~51ugの間又は50ugのレベルで使用されうる。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、3D-MPLを、約25ug、例えば、20~30ugの間、適切には21~29ugの間又は22~28ugの間又は23~27ugの間又は24~26ugの間又は25ugのレベルで含む。
【0053】
サポニン、例えば、QS21は、免疫原性組成物のヒト用量1回分当たり、1~100ugの間の量で使用されうる。QS21は、約50ug、例えば、40~60ugの間、適切には45~55ugの間又は49~51ugの間又は50ugのレベルで使用されうる。さらなる実施形態では、免疫原性組成物のヒト用量は、QS21を、約25ug、例えば、20~30ugの間、適切には21~29ugの間又は22~28ugの間又は23~27ugの間又は24~26ugの間又は25ugのレベルで含む。
【0054】
TLR4アゴニスト及びサポニンの両方が、免疫原性組成物中に存在する場合、TLR4アゴニストとサポニンとの重量比は、適切には1:5~5:1の間、適切には1:2~2:1の間、例えば、約1:1である。例えば、3D-MPLが、50ug又は25ugの量で存在する場合、QS21もまた適切に、免疫原性組成物のヒト用量1回分当たり、それぞれ、50ug又は25ugの量で存在しうる。本発明のある特定の免疫原性組成物は、QS21及び3D-MPLを、ヒト用量1回分当たり、各々1~100ugの間の量で、例えば、ヒト用量1回分当たり、各々10~75ugの間の量で含む。本発明の免疫原性組成物は、QS21及び3D-MPLを、適切には、ヒト用量1回分当たり、各々15~35ugの間の量で、例えば、ヒト用量1回分当たり、各々20~30ugの間の量で含みうる。
【0055】
一実施形態では、免疫刺激剤は、例えば、WO2008/142133に明示されているTLR9アゴニストである。具体例では、前記TLR9アゴニストは、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、特に、非メチル化CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドである。このようなオリゴヌクレオチドは、周知であり、例えば、WO96/02555、WO99/33488、及び米国特許第5,865,462号において記載されている。本明細書で記載される免疫原性組成物における使用に適するTLR9アゴニストは、オリゴヌクレオチドを含有するCpG、場合によって、少なくとも3つ、適切には少なくとも6つ以上のヌクレオチドで隔てられた、2つ以上のジヌクレオチドによるCpGモチーフを含有するCpGである。CpGモチーフは、シトシンヌクレオチドに続く、グアニンヌクレオチドである。
【0056】
一実施形態では、オリゴヌクレオチド内のヌクレオチド間結合は、ホスホジエステル結合、及び混合型ヌクレオチド間連結を伴うオリゴヌクレオチドを含む、他のヌクレオチド間結合もまた使用されうるが、ホスホロジチオエート結合、又は、おそらくは、ホスホロチオエート結合である。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド又はホスホロジチオエートを製造する方法については、米国特許第5,666,153号、米国特許第5,278,302号、及びWO95/26204において記載されている。異なるヌクレオチド間連結、例えば、混合型ホスホロチオエートホスホジエステルを含むオリゴヌクレオチドが意図される。オリゴヌクレオチドを安定化させる他のヌクレオチド間結合も使用されうる。
【0057】
医薬組成物及び免疫原性組成物は、全身経路又は経粘膜経路を介して、前記組成物を投与することにより、感染に対して感受性の哺乳動物を保護又は処置するのに使用されうる。これらの投与は、筋内経路、腹腔内経路、皮内経路若しくは皮下経路を介する注射;又は口腔/食道、気道、尿生殖路への経粘膜投与を介する注射を含みうる。肺炎又は中耳炎の処置のためには、組成物の鼻腔内投与が好ましい(肺炎球菌の鼻咽頭輸送が、より効果的に防止され、これにより、感染を、その初期において緩和しうるので)。組成物は、単回投与としても投与されうるが、この成分はまた、同じ時点において、一体に共投与される場合もあり、異なる時点において共投与される場合もある(例えば、肺炎球菌糖コンジュゲートは、互いに対する免疫応答の最適の協同作用のために、組成物の任意の細菌タンパク質成分の投与と別個に投与される場合もあり、これと同時に投与される場合もあり、この1~2週間後に投与される場合もある)。共投与のために、任意のTh1アジュバントが、異なる投与のいずれか又は全てに存在しうる。単一の投与経路に加えて、2つの異なる投与経路も使用されうる。例えば、糖又は糖コンジュゲートは、IM(又はID)投与され、細菌タンパク質は、IN(又はID)投与されうる。加えて、組成物は、プライミング投与のためにIM投与され、追加投与のためにIN投与されうる。
【0058】
本発明の一態様では、本発明の単離多糖抗原を含有するバイアルを含み、本明細書で記載される医薬担体を含有するバイアルをさらに含むワクチンキットが提供される。本発明のこの態様では、医薬担体は、噴霧乾燥多糖抗原を復元するのに使用されることが想定される。
【0059】
さらなる組成物成分
本発明に従い、単離多糖は、液体組成物中、最も適切には、水性組成物中に含まれる。
【0060】
多糖の分子量に関して上記で論じられた通り、当業者は、他の複数のパラメーターも、多糖溶液の粘度に影響を与えることを理解するであろう。当業者は、過度に低度であるか、又は過度に高度の粘度を使用する場合、噴霧乾燥効率が低減されることを理解し、このため、粘度を変更するようにパラメーターを調整するであろう。
【0061】
溶液の粘度は、噴霧乾燥能及び最終的な乾燥多糖粉体のパラメーターに影響を与えるであろう。適切には、単離多糖を含む液体組成物は、1~150cP、より適切には5~120cP、より適切には10~100cP、より適切には15~95cP、より適切には20~90cP、より適切には25~85cPの粘度を有する。
【0062】
適切には、液体組成物は、実質的に純粋な単離多糖を含む。適切には、単離多糖は、夾雑物が実質的に含まれない。適切には、単離多糖は、実質的に純粋、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、例えば、少なくとも98%、例えば、少なくとも99%、例えば、少なくとも99.5%、例えば、少なくとも99.8%、例えば、少なくとも99.9%、例えば、少なくとも99.95%、例えば、少なくとも99.99%(w/w)純粋である。
【0063】
適切には、液体組成物は、少なくとも70%の単離多糖、より適切には少なくとも80%の単離多糖、より適切には少なくとも90%の単離多糖、より適切には少なくとも95%の単離多糖、より適切には少なくとも98%の単離多糖、より適切には少なくとも99%の単離多糖、より適切には少なくとも99.5%の単離多糖、より適切には100%w/w(乾燥重量)の単離多糖を含む。
【0064】
適切には、液体組成物は、限定された量の夾雑物を含む。夾雑物は、単離多糖以外の任意の物質である。適切には、液体組成物は、20%未満、より適切には10%未満、より適切には5%未満、より適切には2%未満、より適切には1%未満、より適切には0.5%未満、より適切には0.2%未満、より適切には0.1%未満、より適切には0.05%未満、より適切には0.01%w/w(乾燥重量)未満の夾雑物を含む。最も適切には、液体組成物は、夾雑物を含まない。
【0065】
適切には、液体組成物は、夾雑物と単離多糖との低値の比を含む。適切には、夾雑物と単離多糖との比(夾雑物の単離多糖に対する比)は、0.5:1以下、より適切には0.3:1以下、より適切には0.1:1以下、より適切には0.05:1以下、より適切には0.01:1以下(乾燥重量で)である。
【0066】
液体組成物は、少量のタンパク質を含みうる。適切には、液体組成物中のタンパク質の単離多糖に対する割合は、典型的には0~5%(w/w)の間、適切には0~4%(w/w)の間、適切には0~3%(w/w)の間、適切には0~2%(w/w)、好ましくは0~1%(w/w)(乾燥重量)である。別の実施形態では、液体組成物は、1%未満のタンパク質、例えば、0.5%未満のタンパク質、例えば、0.1%未満のタンパク質、例えば、0.05%w/w(乾燥重量)未満のタンパク質を含み、例えば、0%w/w(乾燥重量)のタンパク質を含む。
【0067】
適切には、液体組成物は、限定された量の固体を含む。適切には、液体組成物は、20%未満、より適切には10%未満、より適切には5%未満、より適切には2%未満、より適切には1%未満、より適切には0.5%未満、より適切には0.2%未満、より適切には0.1%未満、より適切には0.05%未満、より適切には0.01%w/w(乾燥重量)未満の固体を含む。最も適切には、液体組成物は、固体を含まない。
【0068】
液体組成物は、保護剤を含みうる。保護剤は、多糖の構造を保護し、官能基の分解又は喪失を実質的に防止する物質、例えば、ガラス質の糖、例えば、トレハロース、スクロース、及びラクトースである。適切には、液体組成物中の全ての保護剤の全ての多糖に対する割合は、典型的には0~5%(w/w)の間、適切には0~4%(w/w)の間、適切には0~3%(w/w)の間、適切には0~2%(w/w)、好ましくは0~1%(w/w)である。別の実施形態では、液体組成物は、1%(w/w)未満、例えば、0.5%(w/w)未満、例えば、0.2%(w/w)未満、例えば、0.1%(w/w)未満、例えば、0.05%(w/w)未満、例えば、0.01%(w/w)未満の保護剤を含む。最も適切には、液体組成物は、保護剤を含まない。
【0069】
一実施形態では、液体組成物は、単離莢膜多糖、及び1%(w/w)未満、例えば、0.5%(w/w)未満、例えば、0.2%(w/w)未満、例えば、0.1%(w/w)未満、例えば、0.05%(w/w)未満、例えば、0.01%(w/w)未満の、単離多糖以外の炭水化物を含む。最も適切には、液体組成物は、単離莢膜多糖以外の炭水化物を含まない。
【0070】
一実施形態では、液体組成物は、単離莢膜多糖を含むが、単離莢膜多糖以外の炭水化物は存在しない。一実施形態では、液体組成物は、単離莢膜多糖を含むが、単離莢膜多糖以外の炭水化物を含まない。
【0071】
一実施形態では、液体組成物は、単離莢膜多糖を含むが、賦形剤を含まない。
【0072】
一実施形態では、液体組成物は、単離莢膜多糖を含むが、単離莢膜多糖以外に、炭水化物、単糖、二糖、シクロデキストリン、多糖、デンプン、セルロース、塩、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、ポリエチレングリコール(PEG)、プルロニック、又は界面活性剤を含まない。
【0073】
一実施形態では、液体組成物は、単離莢膜多糖を含むが、US2005/0266011において規定されている賦形剤を含まない。
【0074】
一実施形態では、液体組成物は、1つの多糖を含み、多糖は単離莢膜多糖である。
【0075】
一実施形態では、液体組成物は、1つの多糖を含み、多糖は単離莢膜多糖であり、この多糖は液体組成物中に存在する唯一の多糖である。
【0076】
一実施形態では、液体組成物は、溶媒及び単離莢膜多糖から実質的になる。一実施形態では、液体組成物は、水及び単離莢膜多糖から実質的になる。
【0077】
一実施形態では、液体組成物は、水及び単離莢膜多糖からなる。
【0078】
適切には、上記で言及された単離莢膜多糖は、PS 1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fである。
【0079】
本明細書で使用される「乾燥重量」とは、実質的に全ての溶媒が除去され、例えば、溶媒が0.01%未満、例えば、溶媒が0.005%未満、例えば、溶媒が0.001%未満であり、例えば、溶媒を含まない組成物を指す。
【0080】
疾患の処置又は予防
一実施形態では、医薬としての使用のための、本発明の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物が提供される。
【0081】
さらなる実施形態では、細菌感染の処置又は予防における使用のための、本発明の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物が提供される。
【0082】
さらなる実施形態では、細菌感染の処置又は予防のための医薬を製造するための、本発明の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物の使用が提供される。
【0083】
さらなる実施形態では、細菌感染を処置又は予防する方法であって、安全かつ有効用量の、本発明の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物の対象への投与を含む方法が提供される。
【0084】
適切には、上記の段落で言及された細菌は、ヘモフィルス属(例えば、インフルエンザ菌、例えば、b型インフルエンザ菌(Hib))、連鎖球菌属(例えば、肺炎連鎖球菌(肺炎球菌)、A群連鎖球菌(GAS、例えば、A群溶血性連鎖球菌)、及びB群連鎖球菌(GBS))、ナイセリア属(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(髄膜炎菌(meningococcus)、血清群A、B、C、W135、及び/又はY)、クレブシエラ属(Klebsiella)(例えば、クレブシエラ・ニューモニエ)、クロストリジウム・ディフィシル、カンジダ・アルビカンス、緑膿菌、サルモネラ属(例えば、チフス菌)、B群溶血性連鎖球菌(Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、及び/又はVIII型)、黄色ブドウ球菌(例えば、血清型5及び8)、エンテロコッカス・フェカーリス又はE.フェシウム、エルシニア・エンテロコリチカ、コレラ菌からなるリストから選択される属に属する。より適切には、連鎖球菌属、例えば、B群連鎖球菌属又は肺炎連鎖球菌に属する細菌である。最も適切には、肺炎連鎖球菌である。
【0085】
適切には、処置される対象は、哺乳動物、最も適切には、ヒトである。
【0086】
噴霧乾燥
噴霧乾燥とは、液体フィードから、脱水粉体を製造する方法である。噴霧乾燥は、食品業界及び医薬業界で広範に使用されている。乾燥とは一般に、揮発性物質(水分)を熱的に除去して、固体生成物を得る工程について記載する。多様なフィード原液の乾燥は、以下の理由:製品の保存及び保管、製品の輸送費用の軽減、並びに所望の品質の達成のために必要とされる。
【0087】
本発明の方法の噴霧乾燥ステップは、様々な装置デザイン及び作動条件を使用して実施されうる。最適の作動条件は、選び出された装置の詳細なデザインに依存しうる。
【0088】
噴霧乾燥ステップは、液体フィードの微粒化、液滴の乾燥、粉体の回収、及び後続の処理を含みうる。フィードの微粒化は、いくつかの方法を使用して達成されうる。回転式の振動型開口部及び静電噴霧方法が使用されており、医薬品を噴霧乾燥させるための主要な噴霧化方法は、二流体ノズルを利用する。この方法では、液体フィードの流動と、加圧された噴霧化流体の流動とが混合され、ノズルから出るように仕向けられ、この時点で、流体の急速な減圧及び液体流の操作された分散の結果として、液体の微粒化が生じ、液体を液滴の噴霧へと転換する。液滴の特性は、液体フィード特性(例えば、フィード濃度、溶媒、又は表面張力)、噴霧化流体の性質、及び噴霧ノズルの技工を変化させることにより、特定の製品規格に照らして調整されうる。微粒化は、最適の液滴サイズを達成することを目的とする。
【0089】
微粒化は、回転ホイール、サイクロン、及び/又は回転ノズルにより達成されうる。液体組成物が工程において曝露される、潜在的に損傷性のせん断力に、それらが影響を及ぼすことを踏まえると、微粒化パラメーターもまた、制御される必要がある。液滴は、加熱されて乾燥した不活性気体から典型的にはなる乾燥環境へと分散される。乾燥環境への材料の曝露は、フィード噴霧を、乾燥気体の並流又は向流へと導入するようにデザインされうる乾燥チャンバーにより制御される。次いで、乾燥気体は、濾過され、除湿され、閉鎖系内の乾燥チャンバーへと戻される。気体はまた、濾過され、開放系内の外部環境へと放出される場合もある。溶媒の蒸発エンタルピーとの関連において、乾燥環境の温度は、乾燥生成物を創出するために、極めて重要である。液滴が乾燥するにつれて、溶解/懸濁された材料は飽和まで濃縮され、この時点で、固体層が、残存するフィード液体の周囲に形成されうる。
【0090】
後続の乾燥は、乾燥した外層を介した溶媒蒸気の交換により生じる。気化冷却のために、乾燥液滴の温度は、周囲の乾燥気体の温度以下となるであろう。乾燥気体の温度は、ワクチンが、損傷性の高温へと曝露されないように制御されなければならない。
【0091】
乾燥したら、粒子は、乾燥環境から回収されなければならない。乾燥気体からの乾燥粒子の分離は、サイクロン回収機内の粒子慣性を使用して、フィルターへの衝撃により、又は静電沈殿を介して達成されうる。バルク粉体は、流動床上でさらに乾燥される場合もあり、さらなる賦形剤でコーティング若しくはカプセル化される場合もあり、又は他の粉体とブレンドされる場合もある。最終的なワクチン粉体は、バルクで保管される場合もあり、単回投与又は複数回投与用の容器へと再パッケージ化される場合もある。
【0092】
凍結乾燥に対する噴霧乾燥の利点は、連続工程で、制御可能で均一な生成物が生成し、凍結を必要とせず、工程が、よりたやすくスケールアップされ、多様な製品充填のための選択肢が利用可能であることである。これに対し、凍結乾燥は、時間を要し、電力要求量が大きく、大きな作業空間を必要とする(McAdams et al 2012)。
【0093】
適切には、噴霧乾燥工程時に、単離多糖が受ける最高温度は、200℃以下、より適切には190℃以下、より適切には185℃以下、より適切には180℃以下である。
【0094】
適切には、噴霧乾燥機は、200℃以下、より適切には150℃以下、より適切には130℃以下、より適切には120℃以下の入口温度を有する。適切には、噴霧乾燥機は、100~200℃の間、より適切には110~190℃の間、より適切には120~170℃の間の入口温度を有する。
【0095】
適切には、噴霧乾燥機は、100℃以下、より適切には80℃以下、より適切には70℃以下、より適切には65℃以下の出口温度を有する。適切には、噴霧乾燥機は、40~80℃の間、より適切には45~70℃の間、より適切には50~65℃の間の出口温度を有する。
【0096】
適切には、噴霧乾燥機内の液体組成物のフィード流量は、0.1~50L/時間の間、より適切には0.3~25L/時間の間、より適切には0.5~20L/時間の間、より適切には0.8~10L/時間の間である。
【0097】
当業者は、流量及び/又はタービンの回転速度の増大が、入口温度及び出口温度の上昇を相殺することを理解するであろう。これらの(及び他の)噴霧乾燥パラメーターは、著明な比率の多糖が、処理時に、損傷を受けずに維持される限りにおいて、工程を最適化するように調整されうる。
【0098】
適切には、本発明の方法は、沈殿ステップを必要としない。先行技術の多くの方法は、多糖を乾燥させる前に精製する沈殿ステップであって、著明な量の溶媒を必要とする沈殿ステップを必要とする。本発明における噴霧乾燥ステップの使用は、沈殿ステップの必要をなくし、その結果として、新たな方法における溶媒の消費量は、以前の方法と比較して、はるかに少ない。
【0099】
適切には、本発明の方法は、沈殿ステップを必要としない。先行技術の多くの方法は、多糖を乾燥させる前に精製する沈殿ステップであって、著明な量の溶媒、例えば、アルコールを必要とする沈殿ステップを必要とする。このアルコールの量は、乾燥多糖中に、夾雑物として残存しうる。
【0100】
本発明に従い、驚くべきことに、低濃度の多糖溶液が、効果的な噴霧乾燥方法において使用されうることが見出された。適切には、液体組成物中の多糖の濃度は、0.01~20g/Lの間、より適切には0.1~15g/Lの間、より適切には0.5~13g/Lの間、より適切には0.7~11g/Lの間、より適切には0.9~10g/Lの間である。
【0101】
一実施形態では、本発明の方法は、単離多糖を含む液体組成物を噴霧乾燥させるステップの前に、単離多糖を含む組成物を濾過するステップ(適切には、限外濾過により)を含む。より適切には、本発明の方法は、上記のステップを実施する前に、単離多糖を含む組成物を清澄化させるステップを含む。より適切には、上記の濾過ステップは、濃縮ステップ、第1の透析ステップ、第2の透析ステップ、及びすすぐステップを含むか、又は、より適切には、これらからなる。
【0102】
さらなる実施形態では、本発明の方法は、単離多糖を含む組成物を濾過するステップ(適切には、限外濾過により)、続く清澄化ステップ、続く濾過ステップ(適切には、限外濾過)、続くさらなる濾過ステップ(適切には、限外濾過)、続くさらなる清澄化ステップ、続くさらなる濾過ステップ(適切には、限外濾過)、続く、単離多糖を含む液体組成物を噴霧乾燥させるステップを含む。
【0103】
適切には、上記のステップに先行して、本発明の方法は、多糖を生成する発酵ステップ、続く不活化ステップを含む。
【0104】
項目
本発明の一部の特定の実施形態について記載する項目は、以下の通りである。
1.単離多糖を乾燥させる方法であって、単離多糖を含む液体組成物を噴霧乾燥させるステップを含む方法。
2.単離多糖が、単離莢膜多糖である、項目1に記載の方法。
3.単離莢膜多糖が、抗原である、項目2に記載の方法。
4.単離莢膜多糖が、グラム陽性菌に由来する、項目2又は3に記載の方法。
5.単離莢膜多糖が、連鎖球菌属細菌に由来する、項目4に記載の方法。
6.細菌が、B群連鎖球菌属種又は肺炎連鎖球菌種の細菌である、項目5に記載の方法。
7.細菌が、肺炎連鎖球菌種の細菌である、項目6に記載の方法。
8.細菌が、肺炎連鎖球菌血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fの細菌である、項目7に記載の方法。
9.単離莢膜多糖が、PS 1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fである、項目7に記載の方法。
10.液体組成物が、1%(w/w)未満のタンパク質を含む、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
11.液体組成物が、タンパク質を含まない、項目10に記載の方法。
12.液体組成物が、1%(w/w)未満の保護剤を含む、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
13.液体組成物が、保護剤を含まない、項目12に記載の方法。
14.単離多糖が、少なくとも99%(w/w)純粋である、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
15.噴霧乾燥ステップが、0.3~25L/時間の間のフィード流量を有する、項目1から14のいずれか一項に記載の方法。
16.噴霧乾燥ステップにおいて使用される噴霧乾燥機が、110~190℃の間の入口温度を有する、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
17.噴霧乾燥ステップにおいて使用される噴霧乾燥機が、45~70℃の間の出口温度を有する、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
18.液体組成物中の多糖の濃度が、0.5~13g/Lの間である、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
19.液体組成物の粘度が、15~95cPである、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
20.噴霧乾燥ステップの前に、少なくとも1つの濾過ステップをさらに含む、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
21.液体組成物が、噴霧乾燥される前に濾過される、項目1から20のいずれか一項に記載の方法。
22.液体組成物が、タンジェンシャルフロー濾過により濾過される、項目21に記載の方法。
23.液体組成物が、噴霧乾燥される前に、少なくとも2回濾過される、項目21又は22に記載の方法。
24.凝集ステップを含まない、項目1から23のいずれか一項に記載の方法。
25.沈殿ステップを含まない、項目1から23のいずれか一項に記載の方法。
26.液体組成物が、アルコールで処理されない、項目1から23のいずれか一項に記載の方法。
27.項目1から26のいずれか一項に記載の方法により得ることが可能であるか、又は得られる単離多糖。
28.項目27に記載の単離多糖を含むコンジュゲート。
29.多糖が、タンパク質にコンジュゲートされている、項目28に記載のコンジュゲート。
30.単離多糖が、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)リンカーにより、タンパク質にコンジュゲートされている、項目29に記載のコンジュゲート。
31.項目1から30のいずれか一項に記載の単離多糖又はコンジュゲート、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
32.項目1から30のいずれか一項に記載の単離多糖又はコンジュゲート、及び免疫刺激剤を含む免疫原性組成物。
33.医薬としての使用のための、項目1から32のいずれか一項に記載の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物。
34.細菌感染の処置又は予防における使用のための、項目33に記載の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物。
35.細菌感染の処置又は予防のための医薬の製造における、項目1から32のいずれか一項に記載の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物の使用。
36.細菌感染の処置又は予防の方法であって、項目1から30のいずれか一項に記載の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物を対象へと投与するステップを含む方法。
37.細菌感染が、連鎖球菌属に属する細菌により引き起こされる、項目33から36のいずれか一項に記載の使用のための単離多糖、コンジュゲート、若しくは組成物、使用、又は方法。
38.細菌感染が、B群連鎖球菌属又は肺炎連鎖球菌種に属する細菌により引き起こされる、項目37に記載の使用のための単離多糖、コンジュゲート、若しくは組成物、使用、又は方法。
39.細菌感染が、肺炎連鎖球菌種に属する細菌により引き起こされる、項目38に記載の使用のための単離多糖、コンジュゲート、若しくは組成物、使用、又は方法。
40.単離莢膜多糖を含む液体組成物中の単離多糖を乾燥させるための、噴霧乾燥機の使用。
【0105】
さらなる項目
本発明の一部の特定の実施形態について記載するさらなる項目は、以下の通りである。
1.単離多糖を乾燥させる方法であって、単離多糖を含む液体組成物を噴霧乾燥させるステップを含む方法。
2.単離多糖が、単離莢膜多糖である、項目1に記載の方法。
3.単離莢膜多糖が、抗原である、項目2に記載の方法。
4.単離莢膜多糖が、グラム陽性菌に由来する、項目2又は3に記載の方法。
5.単離莢膜多糖が、連鎖球菌属細菌に由来する、項目4に記載の方法。
6.細菌が、B群連鎖球菌属種又は肺炎連鎖球菌種の細菌である、項目5に記載の方法。
7.細菌が、肺炎連鎖球菌種の細菌である、項目6に記載の方法。
8.細菌が、肺炎連鎖球菌血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fの細菌である、項目7に記載の方法。
9.単離莢膜多糖が、PS 1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fである、項目7に記載の方法。
10.細菌が、B群溶血性連鎖球菌種の細菌である、項目6に記載の方法。
11.細菌が、B群溶血性連鎖球菌(GBS)血清型Ia、Ib、II、III、IV、又はVの細菌である、項目10に記載の方法。
12.単離莢膜多糖が、PS Ia、Ib、II、III、IV、又はVである、項目11に記載の方法。
13.液体組成物が、1%(w/w)未満のタンパク質を含む、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
14.液体組成物が、タンパク質を含まない、項目13に記載の方法。
15.液体組成物が、1%(w/w)未満の保護剤を含む、項目1から14のいずれか一項に記載の方法。
16.液体組成物が、保護剤を含まない、項目15に記載の方法。
17.単離多糖が、少なくとも99%(w/w)純粋である、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
18.噴霧乾燥ステップが、0.3~25L/時間の間のフィード流量を有する、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
19.噴霧乾燥ステップにおいて使用される噴霧乾燥機が、110~190℃の間の入口温度を有する、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
20.噴霧乾燥ステップにおいて使用される噴霧乾燥機が、45~70℃の間の出口温度を有する、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
21.液体組成物中の多糖の濃度が、0.5~13g/Lの間である、項目1から20のいずれか一項に記載の方法。
22.液体組成物の粘度が、15~95cPである、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
23.噴霧乾燥ステップの前に、少なくとも1つの濾過ステップをさらに含む、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
24.液体組成物が、噴霧乾燥される前に濾過される、項目1から23のいずれか一項に記載の方法。
25.液体組成物が、タンジェンシャルフロー濾過により濾過される、項目24に記載の方法。
26.液体組成物が、噴霧乾燥される前に、少なくとも2回濾過される、項目24又は25に記載の方法。
27.凝集ステップを含まない、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
28.沈殿ステップを含まない、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
29.液体組成物が、アルコールで処理されない、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
30.液体組成物が、単離莢膜多糖、及び1%(w/w)未満、例えば、0.5%(w/w)未満、例えば、0.2%(w/w)未満、例えば、0.1%(w/w)未満、例えば、0.05%(w/w)未満、例えば、0.01%(w/w)未満の、単離多糖以外の炭水化物を含む、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
31.液体組成物が、単離莢膜多糖以外の炭水化物を含まない、項目30に記載の方法。
32.液体組成物が、単離莢膜多糖を含むが、単離莢膜多糖以外の炭水化物は存在しない、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
33.液体組成物が、単離莢膜多糖を含むが、単離莢膜多糖以外の炭水化物を含まない、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
34.液体組成物が、単離莢膜多糖を含むが、賦形剤を含まない、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
35.液体組成物が、単離莢膜多糖を含むが、単離莢膜多糖以外に、炭水化物、単糖、二糖、シクロデキストリン、多糖、デンプン、セルロース、塩、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、ポリエチレングリコール(PEG)、プルロニック、又は界面活性剤を含まない、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
36.液体組成物が、単離莢膜多糖を含むが、US2005/0266011において規定されている賦形剤を含まない、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
37.液体組成物が、1つの多糖を含み、多糖が単離莢膜多糖である、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
38.液体組成物が、1つの多糖を含み、多糖が単離莢膜多糖であり、この多糖が液体組成物中に存在する唯一の多糖である、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
39.液体組成物が、溶媒及び単離莢膜多糖から実質的になる、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。一実施形態では、液体組成物は、水及び単離莢膜多糖から実質的になる。
40.液体組成物が、水及び単離莢膜多糖からなる、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
41.項目1から40のいずれか一項に記載の方法により得ることが可能であるか、又は得られる単離多糖。
42.項目41に記載の単離多糖を含むコンジュゲート。
43.多糖が、タンパク質にコンジュゲートされている、項目42に記載のコンジュゲート。
44.単離多糖が、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)リンカーにより、タンパク質にコンジュゲートされている、項目43に記載のコンジュゲート。
45.項目1から44のいずれか一項に記載の単離多糖又はコンジュゲート、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
46.項目1から44のいずれか一項に記載の単離多糖又はコンジュゲート、及び免疫刺激剤を含む免疫原性組成物。
47.医薬としての使用のための、項目1から46のいずれか一項に記載の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物。
48.細菌感染の処置又は予防における使用のための、項目47に記載の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物。
49.細菌感染の処置又は予防のための医薬の製造における、項目1から46のいずれか一項に記載の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物の使用。
50.細菌感染の処置又は予防の方法であって、項目1から46のいずれか一項に記載の単離多糖、コンジュゲート、又は組成物を対象へと投与するステップを含む方法。
51.細菌感染が、連鎖球菌属に属する細菌により引き起こされる、項目48から50のいずれか一項に記載の使用のための単離多糖、コンジュゲート、若しくは組成物、使用、又は方法。
52.細菌感染が、B群連鎖球菌属又は肺炎連鎖球菌種に属する細菌により引き起こされる、項目40に記載の使用のための単離多糖、コンジュゲート、若しくは組成物、使用、又は方法。
53.細菌感染が、肺炎連鎖球菌種に属する細菌により引き起こされる、項目52に記載の使用のための単離多糖、コンジュゲート、若しくは組成物、使用、又は方法。
【0106】
本発明がよりよく理解されうるように、以下の実施例が明示される。これらの実施例は、例示だけを目的とするものであり、いかなる形でも、本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきではない。
【実施例
【0107】
各々が1つずつの異なる肺炎連鎖球菌多糖を含む、10の水溶液を調製した。これらの溶液を濾過し、タンジェンシャルフロー濾過により濃縮し、次いで、噴霧乾燥させた。
【0108】
これらの多糖について確立された乾燥方法は、多糖をペレットとして回収し、これを真空乾燥させるための、エタノール沈殿に続く濾過を伴う。これらの実験の目的は、噴霧乾燥を使用して、要求される規格を満たす粉体形態の乾燥多糖を製造し、この確立された乾燥方法の収率と同等な収率を得ることであった。
【0109】
下記の実施例は、収率最適化試験及び確立された乾燥多糖規格のパラメーターとの比較の両方を提示する。収率最適化作業のために、確立された方法から供給される多糖粉体を水中で溶解させて、噴霧乾燥を経る前に所望の濃度を達成した。確立された乾燥多糖規格のパラメーターとの比較のために、確立された方法の二次セライト溶出液ステップに由来する3リットルの試料アリコートを採取し、このアリコートを噴霧乾燥させて、解析のための粉体を得た。
【0110】
「二次セライト溶出液(E2Cl)」とは、さらなる試験のために、セライト濾過ステップから採取された全溶液の百分率を指す。噴霧乾燥手順は、確立された沈殿方法より小スケールの手順であった。したがって、噴霧乾燥された場合に採取される全溶液の百分率は、確立された沈殿方法を使用する場合に採取される全溶液の百分率より常に小さいので、回収された生成物は低量であることが予測されうる。
【0111】
これらの研究において最も重要なパラメーターは、乾燥後における多糖の収率、含水量、及び完全性である。
【0112】
下記の実施例で使用される技法:
HPSEC
HPSEC(%)とは、工程内で回収された無傷多糖の百分率を確認するために、試料に対して実施される高速サイズ除外クロマトグラフィー手順を指す。各々が屈折率検出器を伴う、2つの異なるカラム(TSKgel G5000 PWXL及びTosoh GMPWXL)を使用した。屈折率の変動は、溶液濃度と直接関連する。したがって、溶出時間及び抵抗ブリッジ出力は、特定のサイズの分子の相対存在度を示す。
【0113】
MSDは、比:
【0114】
【数1】
を測定することにより評価される。
【0115】
NMR
下記の実施例では、NMRを使用して、o-アセチル、ウロン酸、ヘキソサミン、及びメチルペントースを含む多糖内に存在する特定の官能基の含量を決定する。このような解析は、ワクチン用途のための多糖についてのQC出荷試験に準拠する。下記の表は、精製された各バルク多糖について、NMRにより調べた官能基を一覧する。
【0116】
【表1】
【0117】
カールフィッシャー
カールフィッシャーとは、試料中の含水量を測定するのに使用される解析技法である。カールフィッシャー滴定は、2つの反応を伴う。第1の反応では、アルコール(メタノール)、二酸化硫黄、及び塩基が反応して、アルキル亜硫酸塩中間体を形成する。第2に、このアルキル亜硫酸塩が、試料中のヨウ素及び含有水と反応する(酸化反応)。水及びヨウ素は、等モル量で消費されるので、消費されるヨウ素の量が既知である場合、これは、試料中に存在する水の量の定量を可能とする:
(1)CH3OH+SO2+RN←→[RNH]SO3CH3
(2)[RNH]SO3CH3+I2+2RN+H2O←→[RNH]SO4CH3+2[RNH]I
(3)電気化学に生成される、2I-→I2+2e-
【0118】
MALLS
静的光散乱とは、分子による光散乱の強度とその分子量及びサイズとの関係を使用して、分子量を測定する技法である。光子(入射ビーム)が分子に衝突すると、光子からのエネルギーの一部は、分子内に、振動双極子を誘発するのに使用される。その後、このエネルギーは、分子により、全ての方向に、光として再放射される。関係は、分子の分子量が散乱光のレイリー比と比例すると述べるレイリー理論により記載される。別の因子である角度依存性(分子のサイズ)もまた、散乱光の強度に影響を及ぼす。一般に使用される(静的光散乱において)分子サイズの1つの値は、回転半径(Rg)である。
【0119】
レイリー式は、
【0120】
【数2】
式中、
C=試料濃度
θ=測定角度
Rθ=測定角度θにおけるレイリー比(散乱光強度と、入射光強度との比)
Mw=分子量
A2=第2ビリアル計数
K及びPθは、より複雑な項:
【0121】
【数3】
式中、
λ0=真空中のレーザー波長
NA=アボガドロ数
n0=溶媒の屈折率
【0122】
【数4】
そして、最後に、
【0123】
【数5】
式中、
Rg=分子の回転半径である。
である。
【0124】
多角度レーザー光分光法(MALLS又はMALS)とは、多くの角度において散乱光を収集する検出法である。この技法は、SECクロマトグラフィー(検出器)の一部として使用され、解析される解析物の分子量の決定を可能とする。多角度散乱データにより、回転半径を計算して、分子のサイズを求めることができる。異なる角度における光強度についてのこれらのデータ全てを、ギニエプロット上にプロットすることにより、最良の当てはめ直線を外挿して0°へと戻し、ここから、分子量を計算することができる。この直線の初期の傾きは、分子サイズである、Rgの正確な計算を可能とする。プロットを完成させ、外挿して0°へと戻す。切片から分子量を計算し、直線の初期の傾きからRgを計算する。
【0125】
重量測定方法による含水量
水分含量は、噴霧乾燥の後における粉体について、最も一般に測定される特性のうちの1つである。本試験では、Halogen Moisture Analyzer METTLER TOLEDO HG53を使用した。測定器は、熱重量測定法の原理に沿って作動する:測定の開始時に、Moisture Analyzerが、試料の重量を決定し、次いで、統合型ハロゲン加熱モジュールにより試料を急速に加熱すると、水分が蒸発する。乾燥工程において、測定器は、試料の重量を持続的に測定し、水分の低減を示す。乾燥が完了したら、試料の水分含量又は固体含量を最終結果として示す。
【0126】
[実施例1]
PS 1
溶解させたPS 1により、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。ある特定のパラメーターを変動させることにより、噴霧乾燥収率は、17%上昇することが見出された。
【0127】
【表2】
【0128】
PS 1を使用して、さらなる実験を実施した。PS 1を含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0129】
【表3】
【0130】
流動粉体が生成した。試験の終了後、乾燥チャンバーを検分したところ、少量の沈着物だけが観察された。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0133】
溶解させたPS 1により実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0134】
【表5】
【0135】
[実施例2]
PS 4
溶解させたPS 4により、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。フィーディング溶液中の多糖濃度を低下させることにより、噴霧乾燥収率は、23%上昇することが見出された。
【0136】
【表6】
【0137】
PS 4を使用して、さらなる実験を実施した。PS 4を含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0138】
【表7】
【0139】
流動粉体が生成した。試験の終了後、乾燥チャンバーを検分したところ、少量の沈着物だけが観察された。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0140】
【表8】
【0141】
まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。高い収率が達成され、噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0142】
溶解させたPS 4により実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を、下記に示す。
【0143】
【表9】
【0144】
[実施例3]
PS 5
溶解させたPS 5により、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。フィーディング溶液中の多糖濃度を低下させることにより、噴霧乾燥収率は、24%上昇することが見出された。
【0145】
【表10】
【0146】
PS 5を使用して、さらなる実験を実施した。PS 5を含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0147】
【表11】
【0148】
流動粉体が生成した。試験の終了後、乾燥チャンバーを検分したところ、少量の沈着物だけが観察された。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0149】
【表12】
【0150】
まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0151】
溶解させたPS 5により実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0152】
【表13】
【0153】
[実施例4]
PS 6B
溶解させたPS 6Bにより、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。フィーディング溶液中の多糖濃度を低下させることにより、噴霧乾燥収率は、10%上昇することが見出された。
【0154】
【表14】
【0155】
PS 6Bを使用して、さらなる実験を実施した。PS 6Bを含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0156】
【表15】
【0157】
流動粉体が生成した。試験の終了後、乾燥チャンバーを検分したところ、少量の沈着物だけが観察された。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0158】
【表16】
【0159】
まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0160】
溶解させたPS 6Bにより実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0161】
【表17】
【0162】
[実施例5]
PS 9V
溶解させたPS 9Vにより、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。フィーディング溶液中の多糖濃度を低下させることにより、噴霧乾燥収率は、25%上昇することが見出された。
【0163】
【表18】
【0164】
PS 9Vを使用して、さらなる実験を実施した。PS 9Vを含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0165】
【表19】
【0166】
流動粉体が生成した。試験の終了後、乾燥チャンバーを検分したところ、少量の沈着物だけが観察された。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0167】
【表20】
【0168】
まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。
【0169】
溶解させたPS 9Vにより実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0170】
【表21】
【0171】
[実施例6]
PS 18C
溶解させたPS 18Cにより、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。ある特定のパラメーターを変動させることにより、噴霧乾燥収率は、48%上昇することが見出された。
【0172】
【表22】
【0173】
PS 18Cを使用して、さらなる実験を実施した。PS 18Cを含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0174】
【表23】
【0175】
流動粉体が生成した。試験の終了後、乾燥チャンバーを検分したところ、少量の沈着物だけが観察された。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0176】
【表24】
【0177】
まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0178】
溶解させたPS 9Vにより実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0179】
【表25】
【0180】
[実施例7]
PS 19F
溶解させたPS 19Fを噴霧乾燥させることにより、実験を実施した。実験で使用された条件を、下記の表にまとめる。
【0181】
【表26】
【0182】
PS 19Fを使用して、さらなる実験を実施した。PS 19Fを含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0183】
【表27】
【0184】
流動粉体が生成した。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0185】
【表28】
【0186】
まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0187】
溶解させたPS 19Fにより実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0188】
【表29】
【0189】
[実施例8]
PS 23F
溶解させたPS 23Fにより、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。パラメーターを変動させることにより、噴霧乾燥収率は、14%上昇することが見出された。
【0190】
【表30】
【0191】
PS 23Fを使用して、さらなる実験を実施した。PS 23Fを含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0192】
【表31】
【0193】
流動粉体が生成した。試験の終了後、乾燥チャンバーを検分したところ、少量の沈着物だけが観察された。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0194】
【表32】
【0195】
まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0196】
溶解させたPS 23Fにより実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0197】
【表33】
【0198】
[実施例9]
PS 7F
溶解させたPS 7Fにより、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。ある特定のパラメーターを変動させることにより、噴霧乾燥収率は、17%上昇することが見出された。
【0199】
【表34】
【0200】
PS 7Fを使用して、さらなる実験を実施した。PS 7Fを含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0201】
【表35】
【0202】
流動粉体が生成した。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0203】
【表36】
【0204】
本実施例では、多糖が中性の電荷を有することに起因して、精製のために、Qセファロース(Q seph)イオン交換カラムを使用した。まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。高い収率が達成され、噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0205】
溶解させたPS 7Fにより実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0206】
【表37】
【0207】
[実施例10]
PS 14
溶解させたPS 14により、実験を実施したところ、実験は、噴霧乾燥パラメーターを調整することにより、収率が増大しうることを示した。後続実験で使用され、下記の表にまとめられる条件は、最終粉体を、収率、含水量、及び粉体流動度に関して改善した。ある特定のパラメーターを変動させることにより、噴霧乾燥収率は、7%上昇することが見出された。
【0208】
【表38】
【0209】
PS 14を使用して、さらなる実験を実施した。PS 14を含む溶液を、以下のパラメーターに従い噴霧乾燥させた。
【0210】
【表39】
【0211】
流動粉体が生成した。粉体を特徴づけ、確立された沈殿/乾燥方法の後で得られた粉体と比較した。結果を下記に示す。
【0212】
【表40】
【0213】
本実施例では、多糖が中性の電荷を有することに起因して、精製のために、Qセファロース(Q seph)イオン交換カラムを使用した。まとめると、各方法により生成した粉体は、同様の特性を示した。噴霧乾燥させた多糖は、規格のパラメーターを満たした。
【0214】
溶解させたPS 14により実施された後続実験は、多糖の完全性が、噴霧乾燥試験の後で保存されることを示した。結果を下記に示す。
【0215】
【表41】
【0216】
まとめ
これらの多糖の噴霧乾燥が成功しうることが示された。噴霧乾燥させた多糖は、確立された沈殿方法を使用して生成した多糖と同様の完全性を有し、規格を満たした。噴霧乾燥させた試料中の残留アルコール量は低減された(この製造方法では、アルコールが使用されないために)。噴霧乾燥方法により、高い収率もまた達成された。
以下は、本発明の実施形態の一つである。
(1)単離多糖を乾燥させる方法であって、単離多糖を含む液体組成物を噴霧乾燥させるステップを含む方法。
(2)単離多糖が、単離莢膜多糖である、(1)に記載の方法。
(3)単離莢膜多糖が、抗原である、(2)に記載の方法。
(4)単離莢膜多糖が、グラム陽性菌に由来する、(2)又は(3)に記載の方法。
(5)単離莢膜多糖が、連鎖球菌属(Streptococcus)細菌に由来する、(4)に記載の方法。
(6)細菌が、B群連鎖球菌属種又は肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)種の細菌である、(5)に記載の方法。
(7)細菌が、肺炎連鎖球菌種の細菌である、(6)に記載の方法。
(8)細菌が、肺炎連鎖球菌血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fの細菌である、(7)に記載の方法。
(9)単離莢膜多糖が、PS 1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、又は23Fである、(7)に記載の方法。
(10)液体組成物が、1%(w/w)未満の保護剤を含む、(1)から(9)のいずれかに記載の方法。
(11)単離多糖が、少なくとも99%(w/w)純粋である、(1)から(10)のいずれかに記載の方法。
(12)液体組成物中の多糖の濃度が、0.5~13g/Lの間である、(1)から(11)のいずれかに記載の方法。
(13)液体組成物の粘度が、15~95cPである、(1)から(12)のいずれかに記載の方法。
(14)沈殿ステップを含まない、(1)から(13)のいずれかに記載の方法。
(15)液体組成物が、アルコールで処理されない、(1)から(14)のいずれかに記載の方法。
【0217】
書誌
Baraldoi et al 2004 Infect Immun 72; 4884-4887
Chen et al 2010 Vaccine 28:5093-5099
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Kuo et al 1995 Infect Immun 63; 2706-2713
McAdams et al 2012 Expert Rev Vaccines 11(10):1211-1219
Ohtake et al 2010 Vaccine 1275-1284
Porro et al. 1985 Mol. Immunol. 22:907
Zhu et al 2014 Pharm Res 31:3006-3018