(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】コーティング製剤、その物品及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C09D 7/65 20180101AFI20240301BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240301BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240301BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240301BHJP
C08L 101/00 20060101ALN20240301BHJP
C08K 3/08 20060101ALN20240301BHJP
C08K 7/22 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
C09D7/65
C09D7/63
C09D7/61
C09D201/00
C08L101/00
C08K3/08
C08K7/22
(21)【出願番号】P 2021506932
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 SG2019050395
(87)【国際公開番号】W WO2020032874
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】10201806816W
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】リー,シュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤップ,チン チョン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジアティン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,シュゥ イー
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-502473(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190815(WO,A1)
【文献】特開昭63-281964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C09D1/00-10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
a)無機脱酸素剤;
b)天然粘土、合成粘土及び改質粘土からなる群から選択される界面活性剤;
c)活性化因子;
d)アルキレンオキシド、カルボン酸、及びそれらの組み合わせから選択されるモノマーを含むポリマーから選択される親水性剤;
e)場合によっては、添加剤;及び
f)ポリマーマトリクス;
を含む、コーティング製剤
であって、前記活性化因子は、ハロゲン化物塩又は酸性化剤である、コーティング製剤。
【請求項2】
前記無機脱酸素剤は、無機金属材料と炭素材料との複合物である、請求項1に記載のコーティング製剤。
【請求項3】
前記炭素材料は、孔径が10nm~700nmの範囲である多孔質構造を有する、請求項2に記載のコーティング製剤。
【請求項4】
前記無機金属材料は、鉄である、請求項2又は3に記載のコーティング製剤。
【請求項5】
前記無機金属
材料と炭素
材料との複合物が、前記炭素材料の内部又はその上に配置された粒状形態の複数の無機金属を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載のコーティング製剤。
【請求項6】
前記無機金属材料の粒径は、500nm未満である、請求項5に記載のコーティング製剤。
【請求項7】
前記コーティング製剤における
前記無機脱酸素剤の量は、1質量%~20質量%の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング製剤。
【請求項8】
前記界面活性剤は、固体である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング製剤。
【請求項9】
前記コーティング製剤における
前記界面活性剤の量は、0.5質量%~10質量%の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング製剤。
【請求項10】
前記コーティング製剤における前記親水性剤の量は、0.5質量%~10質量%の範囲である、請求項1~
9のいずれか一項に記載のコーティング製剤。
【請求項11】
前記添加剤が存在する場合、前記添加剤は還元性有機酸である、請求項1~1
0のいずれか一項に記載のコーティング製剤。
【請求項12】
前記コーティング製剤における前記添加剤の量は、0質量%~2.5質量%の範囲である、請求項1~1
1のいずれか一項に記載のコーティング製剤。
【請求項13】
前記ポリマーマトリクスは、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシド(若しくはエポキシ)又はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)から選択される、請求項1~1
2のいずれか一項に記載のコーティング製剤。
【請求項14】
a)無機脱酸素剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、場合によっては添加剤を混合する工程、及びb)工程a)の混合物を、ポリマーマトリクス又は前記ポリマーマトリクスのモノマーと混合する工程、を含む、請求項1~1
3のいずれか一項に記載のコーティング製剤の調製方法。
【請求項15】
さらに、脱ガス工程を含む、請求項1
4に記載の方法。
【請求項16】
さらに、重合架橋剤を添加して前記ポリマーマトリクスを形成することができる複数のモノマーにより前記ポリマーマトリクスが形成される架橋工程、を含む、請求項1
4又は15に記載の方法。
【請求項17】
無機脱酸素剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、及び場合によっては、ポリマーマトリクス内に分散された添加剤、を含む請求項1~1
3のいずれか一項に記載のコーティング製剤を含む、物品。
【請求項18】
フィルムである、請求項1
7に記載の物品。
【請求項19】
可視光線透過率が70%を超える、請求項1
7又は18に記載の物品。
【請求項20】
厚さが20μm~40μmの範囲である、請求項1
7~
19のいずれか一項に記載の物品。
【請求項21】
無機脱酸素剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、場合によっては添加剤、及びポリマーマトリクス又は前記ポリマーマトリクスのモノマーを含むコーティング製剤を硬化する工程を含む、請求項1
7~2
0のいずれか一項に記載の物品を形成する方法。
【請求項22】
さらに、重合架橋剤を添加して前記ポリマーマトリクスを形成することができる複数のモノマーにより前記ポリマーマトリクスが形成される架橋工程を含む、請求項2
1に記載の方法。
【請求項23】
さらに、前記物品をポリマー基質上にコーティングして、前記ポリマー基質上にフィルム又はコーティングを形成する工程を含む、請求項2
1又は2
2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2018年8月10日に出願されたシンガポール出願第10201806816W号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、脱酸素包装用のコーティング製剤、物品、及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
酸素(O2)は、食品の腐敗を起こす主要な要因の一つである。O2の存在により、品質の劣化、変色、栄養分喪失、及び微生物増殖がもたらされる。このように、真空包装や包装中の酸素濃度を制限する改良雰囲気包装(MAP)等の様々な技術が一般に用いられる。しかしながら、当該技術は投資費用がかかり、包装食品中のO2を完全に除去できず、残留濃度は約0.5~2%である。さらに、プラスチック包装内の酸素レベルは、包装内に混入する外部環境由来のO2により、経時的に上昇する。
【0004】
従来の脱酸素剤の多くは、鉄粉、アスコルビン酸、及び不飽和炭化水素除去剤に基づく。有機及び不飽和炭化水素除去剤は比較的不安定であり、酸化プロセス後に副生成物として臭気が発生する場合がある。
【0005】
包装の内壁に固定されたシート状脱酸素剤を調製する公知の方法は、濾過を含んでいた。濾過により調製した脱酸素フィルムを、酸素透過性が1000cc/m2・日より大きいフィルム間に積層した。脱酸素剤は、50ミクロンより大きいサイズの鉄粉末に基づいた。微小サイズの鉄粒子、塩化ナトリウム、及び塩化アルミニウム等の酸性化成分を機械的混合機に添加し、成分の均一な混合を達成することにより、他の多層膜を調製した。しかし、用いたミクロンサイズの鉄粉末を考慮すると、鉄粉末は移動しやすく、膜の脱酸素能に影響を及ぼした。
【0006】
他の公知の方法を用いて、生分解性基質及び十分な濃度の還元鉄粒子を含む生分解性酸素吸収プラスチックを提供した。当該脱酸素剤は、一般的なポリオレフィンと比較するとガス透過性がより高い生分解性基質(PLA)で囲まれていた。次いで、アルミニウム箔の層をフィルム上に積層した。しかしながら、これにより不透明なフィルムが形成され、これは望ましくない。
【0007】
ポリマーマトリクス中に微細に分散した鉄/塩粒子を製造するさらなる他の公知の方法は、溶融押出法を用いて1~25ミクロンの平均粒子サイズの鉄を予備被覆した。分散を最大にするために樹脂ペレット又は被覆された鉄粉の処理に用いられる界面活性剤は、鉱油等の潤滑剤、ステアリン酸等の脂肪酸、及びワックス等の低分子量化合物を含んでいた。当該界面活性剤のいくつかは、有機性であってよく、又は当該食品の芳香と相互作用して、食品の味覚又は芳香を変化させてよい。従って、当該脱酸素剤は、消費者の食品経験に影響を与えるため、食品包装には用いられえない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、上記欠点の1又はそれ以上を克服又は改善するコーティング製剤、物品、及びその調製方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本開示は、以下の:
a)無機脱酸素剤;
b)界面活性剤;
c)活性化因子;
d)親水性剤;
e)場合によっては、添加剤;及び
f)ポリマーマトリクス;
を含む、コーティング製剤に関する。
【0010】
有利には、鉄系脱酸素剤等の無機脱酸素剤は、広く利用可能であり、除去効率が高い。界面活性剤は、無機脱酸素剤及び活性化因子のポリマーマトリクスへの分散の促進に寄与しうる。親水性剤の導入により、ポリマーマトリクスの水分透過性が改善され、脱酸素能がさらに向上しうる。最後に、添加剤の添加により、酸化後に無機脱酸素剤が再生されて、無機脱酸素剤の除去能の向上に寄与しうる。
【0011】
さらに有利には、当該コーティング製剤は、プラスチック包装の一部として、脱酸素後に高透明で無臭になるよう塗布しうる。当該調製されたコーティング製剤は、プラスチックフィルム製造中に工業的被覆プロセスを用いて塗布しうる。
【0012】
他の態様では、本開示は、本明細書で特定されるコーティング製剤の調製方法に関し、a)無機脱酸素剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、場合によっては添加剤を混合する工程、及びb)工程a)の混合物を、ポリマーマトリクス又は前記ポリマーマトリクスのモノマーと混合する工程、を含む。
【0013】
他の態様では、本開示は、無機脱酸素剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、及び場合によっては、ポリマーマトリクス内に分散された添加剤、を含む物品に関する。
【0014】
有利には、無機脱酸素剤の良好な分散(均一性)は、凝集せずに達成されて、透明な物品となりうる。
当該物品は、フィルム又はコーティングであってよい。
【0015】
他の態様では、本開示は、無機脱酸素剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、場合によっては添加剤、及びポリマーマトリクス又は前記ポリマーマトリクスのモノマーを含むコーティング製剤を硬化する工程を含む、物品を形成する方法に関する。
【0016】
〔定義〕
本開示で用いられる以下の用語は、以下の意味である:
用語「バイオマス材料」は、生物又は生物由来の生物材料を含むと広く解釈されるべきである。これはしばしば植物系材料を意味するのに用いられるが、バイオマスがエネルギーに用いられる場合には動植物由来の材料にも同様に適用できる。ここで、バイオマスは炭素系で、通常は酸素原子、しばしば窒素、及びアルカリ、アルカリ土類及び重金属を含む少量の他の原子を含む、水素を含む有機分子の混合物から構成される。
【0017】
本明細書で用いられる用語「複合物」は、著しく異なる物理的又は化学的特性がある2又はそれ以上の構成材料から作られる材料をいい、組み合わされて、材料を生成する。個々の構成要素は、完成した材料内でも分離したままで、区別できる。
【0018】
本明細書中で用いられる用語「脱酸素(酸素除去;oxygen scavenging)」は、閉鎖された領域又は混合物から酸素を収集又は除去する行為をいう。
【0019】
特段の定めがない限り、用語「含む(comprising;comprise)」及びそれらの文法的変形は、「開放」又は「包含」の言葉を表すことを意図し、引用された要素及び、さらなる非引用要素が包含されうる。
【0020】
本明細書中で用いられる用語「約」は、製剤の処方物の成分濃度に関連して、通常、記載される値の+/-5%、より典型的には、記載値の+/-4%、より典型的には、記載値の+/-3%、より典型的には、記載値の+/-2%、さらにより典型的には、記載値の+/-1%、さらにより典型的には、記載値の+/-0.5%をいう。
【0021】
本開示を通して、特定の実施形態を範囲フォーマットで開示しうる。当該範囲フォーマットの記載は、単なる便宜上にすぎず、簡潔性のためであり、開示された範囲について当該範囲の制限を柔軟性なく解釈すべきでない。つまり、範囲に関する記載は、可能なかぎりすべての亜範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6等の範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の亜範囲、及び、例えば1、2、3、4、5、及び6等のその範囲内の個々の数字を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0022】
特定の実施形態はまた、本明細書において広く一般的に記載されうる。包括的開示の範囲内にあるより狭い種及び亜属の群も各々、開示の一部を構成する。これは、摘出された材料が本明細書中で具体的に記載されているか否かにかかわらず、いかなる主題を属から除去する仮限定又は消極限定を伴う実施形態の一般的説明を含む。
【0023】
コーティング製剤の例示的、非限定的な実施形態を開示する。
本開示は、以下の:
a)無機脱酸素剤;
b)界面活性剤;
c)活性化因子;
d)親水性剤;
e))場合によっては、添加剤;及び
f)ポリマーマトリクス;
を含む、コーティング製剤に関する。
【0024】
当該無機脱酸素剤は、無機金属材料と炭素材料との複合物であってよい。当該炭素材料は、バイオマス材料由来の炭素粒子であってよい。当該バイオマス材料は、リグニン、サッカリド、脂肪酸、タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されうる。当該バイオマス材料のタイプは、炭素熱反応を受けて炭素粒子を形成しうる限り、特に限定されないことに留意されたい。上記のように、炭素材料の供給源としてバイオマスを用いるため、得られた炭素材料には、無機金属材料を吸収しうる糖(単糖類、二糖類、多糖類又はオリゴ糖等)の層がある。
【0025】
当該炭素材料には、多孔質構造があってよい。当該多孔質炭素材料の孔径は、約10nm~約700nm、約10nm~約100nm、約10nm~約200nm、約10nm~約300nm、約10nm~約400nm、約10nm~約500nm、約10nm~約600nm、約100nm~約700nm、約200nm~約700nm、約300nm~約700nm、約400nm~約700nm、約500nm~約700nm、又は約600nm~約700nmの範囲でありうる。当該炭素材料は、球形又は実質的に球形の形状又は形態である炭素であってよい。
【0026】
当該炭素材料の直径の範囲は、約100nm~約1μm、約100nm~約200nm、約100nm~約300nm、約100nm~約400nm、約100nm~約500nm、約100nm~約600nm、約100nm~約700nm、約100nm~約800nm、約100nm~約900nm、約200nm~約1μm、約300nm~約1μm、約400nm~約1μm、約500nm~約1μm、約600nm~約1μm、約700nm~約1μm、約800nm~約1μm、又は約900nm~約1μmであってよい。
【0027】
当該無機金属/炭素複合材料は、炭素材料の内部又はその上に配置された粒状形態の複数の無機金属材料を含んでよい。当該無機金属粒子は、炭素材料の表面又は炭素材料の細孔内のいずれにかかわらず、炭素材料上に均一に又はランダムに分布してよい。当該無機金属粒子の粒子サイズは、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満又は約1nm~約50nmでありうる。炭素材料内又はその上に埋め込まれた当該ナノサイズの無機金属粒子は、ポリマー系からの無機金属の移動リスクを制限しうる。
【0028】
無機金属材料は鉄であってよい。当該鉄は、炭素材料上に堆積された場合、ゼロ価鉄粒子でありうる。
【0029】
当該無機金属/炭素複合材料は、炭素球内又はその上に埋め込まれた複数の鉄粒子であってよい。当該無機金属/炭素複合材料は、ナノ粒子でありうる。
【0030】
当該コーティング製剤における無機脱酸素剤の量の範囲は、約1質量%~約20質量%、約1質量%~約18質量%、約1質量%~約16質量%、約1質量%~約14質量%、約1質量%~約12質量%、約1質量%~約10質量%、約1質量%~約8質量%、約1質量%~約6質量%、約1質量%~約4質量%、約1質量%~約2質量%、約2質量%~約20質量%、約4質量%~約20質量%、約6質量%~約20質量%、約8質量%~約20質量%、約10質量%~約20質量%、約12質量%~約20質量%、約14質量%~約20質量%、約16質量%~約20質量%、又は約18質量%~約20質量%でありうる。
【0031】
当該界面活性剤は、天然粘土、合成粘土又はシラン改変粘土であってよい。当該界面活性剤は粘土であってよい。当該界面活性剤は、モンモリロナイト(MMT)、ベントナイト、ラポナイト、カオリナイト、サポナイト、バーミキュライト、層状複水酸化物(LDH)及びそれらの混合物からなる群から選択されうる。当該固体界面活性剤の少量を当該無機金属/炭素複合材料に添加しうる。当該コーティング製剤における界面活性剤の量の範囲は、約0.5質量%~約10質量%、約1質量%~約10質量%、約2質量%~約10質量%、約3質量%~約10質量%、約5質量%~約10質量%、約7質量%~約10質量%、約9質量%~約10質量%、約0.5質量%~約9質量%、約0.5質量%~約7質量%、約0.5質量%~約5質量%、約0.5質量%~約3質量%、約0.5質量%~約2質量%又は約0.5質量%~約1質量%でありうる。当該界面活性剤は固体界面活性剤であってよい。
【0032】
当該活性化因子は、ハロゲン化物塩又は酸性化剤でありうる。当該ハロゲン化物塩のカチオンは、元素周期律表の第1族、第2族又は第13族から選択される金属であってよい。当該ハロゲン化物塩のアニオンは塩化物であってよい。当該活性化因子は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化アルミニウム(AlCl3)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カルシウム(CaBr2)、臭化アルミニウム(AlBr3)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)、又はヨウ化アルミニウム(AlI3)でありうる。当該活性化因子が酸性化剤である場合、当該酸性化剤は、ポリエチルアクリル酸、ポリマレイン酸又はクエン酸であってよい。当該コーティング製剤における当該活性化因子の量の範囲は、約1~約20質量%、約2~約20質量%、約5~約20質量%、約10~約20質量%、約15~約20質量%、約1~約15質量%、約1~約10質量%、約1~約8質量%、約1~約6質量%、約1~約5質量%、約1~約3質量%、又は約5~10質量%でありうる。
【0033】
当該親水性剤は、アルキレンオキシド、カルボン酸及びそれらの組み合わせから選択されるモノマーを含むポリマーであってよい。当該アルキレンオキシドモノマーは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、オクチレンオキシド、ノニレンオキシド又はデシレンオキシドでありうる。当該カルボン酸モノマーは、アクリル酸又はマレイン酸でありうる。当該ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。当該ポリマーの分子量の範囲は、約100,000~約5,000,000であってよい。当該親水性剤は、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)又はポリアクリル酸等の短鎖ポリマーからなる群から選択されうる。当該コーティング製剤における当該親水性剤の量の範囲は、約0.5~約10質量%、約0.6~約10質量%、約0.8~約10質量%、約1~約10質量%、約0.5~約5質量%、又は約0.5~約2質量%でありうる。
【0034】
当該添加剤は還元剤であってよい。当該添加剤は還元性有機酸であってよい。当該添加剤はアスコルビン酸であってよい。当該添加剤のpH値の範囲は、1.0~2.5であってよい。
【0035】
当該コーティング製剤における添加剤の量の範囲は、約0~約2.5質量%、約0.1~約2.5質量%、約0.2~約2.5質量%、約0.3~約2.5質量%、約0.4~約2.5質量%、約0.5~約2.5質量%、約0.7~約2.5質量%、約0.9~約2.5質量%、約1~約2.5質量%、約1.2~約2.5質量%、約1.5~約2.5質量%、約1.7~約2.5質量%、約2~約2.5質量%、約0.1~約2.3質量%、約0.1~約2質量%、約0.1~約1.5質量%、約0.1~約1.2質量%、約0.1~約1質量%、約0.2~約1質量%、約0.3~約1質量%、約0.5~約1質量%、約0.6~約1質量%、又は約0.7~約1質量%であってよい。
【0036】
当該ポリマーマトリクスは、ポリウレタン(PU)、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシド(若しくはエポキシ)又はエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)から選択されてよい。形成されるポリマーの分子量の範囲は、約10,000~約500,000、約20,000~約500,000、約50,000~約500,000、約100,000~約500,000、約200,000~約500,000、約300,000~約500,000、約10,000~約300,000、約10,000~約100,000、約20,000~約200,000、約50,000~約200,000、約100,000~約200,000、約120,000~約200,000、約150,000~約200,000でありうる。
【0037】
本明細書に記載される当該コーティング製剤は、以下の:
a)無機Fe/C複合物;
b)界面活性剤としての粘土;
c)活性化因子としての塩化ナトリウム(NaCl);
d)親水性剤としてのポリエチレンオキシド(PEO)又はポリアクリル酸;
e)添加剤としてのアスコルビン酸;及び
f)ポリウレタン、ポリアクリレート及び/又はエポキシ等のポリマーマトリクス;
を含んでよい。
【0038】
本明細書に記載されるコーティング製剤の調製方法の例示的、非限定的な実施形態を開示する。
本明細書に記載されたコーティング製剤の調製方法は、a)無機脱酸素剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、場合によっては添加剤を混合する工程、及びb)工程a)の混合物を、ポリマーマトリクス又は前記ポリマーマトリクスのモノマーと混合する工程を含む。
【0039】
当該コーティング製剤の混合プロセスは、シンキー(Thinky)ミキサー、ボルテックス、ホモジナイザー、高速撹拌により行うことができる。
【0040】
コーティング製剤の調製方法は、さらに、脱ガス工程を含んでよい。当該コーティング製剤を脱気する様々な方法は、超音波分解器(脱ガス)、シンキーミキサー(脱ガスモード)、又は窒素又はヘリウムガスのバブリングを用いて行うことができる。当該脱ガスは、特にホモジネーションで混合後、気泡を除去するのに必要である。
【0041】
当該コーティング製剤の調製方法は、さらに、重合架橋剤を添加してポリマーマトリクスを形成することができる複数のモノマーによりポリマーマトリクスが形成される架橋工程を含んでよい。当該ポリマーマトリクスを形成しうる複数のモノマーは、カルバメート、(メタ)アクリレート、エポキシド、アルキレン、アルケノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されうる。当該ポリマーマトリクスは、ホモポリマー又はコポリマー等のポリマーを含んでよい。当該重合架橋剤を含む得られた混合物は、2、3、4又は5分間混合されうる。その後、当該混合物を2、3、4又は5分間脱気してよい。
【0042】
本明細書に記載されるコーティング組成物を調製する方法は、以下の工程:
a)無機Fe/C材料と粘土界面活性剤と活性化因子溶液の混合工程;
b)場合によっては、工程a)で得られた混合物と少なくとも1つの添加剤の混合工程;
c)添加剤が存在する場合、工程a)又はb)で得られた混合物と親水性剤の混合工程;
d)工程c)で得られた混合物とポリウレタンモノマーの混合工程;
e)工程d)で得られた混合物と架橋剤を混合して、本明細書中に記載されたコーティング製剤を形成する工程;
を含んでよい。
【0043】
物品の例示的な非限定的な実施形態を開示する。
当該コーティング製剤は、物品の形成に用いられうる。有利には、粘土を用いて、物品中の無機脱酸素剤の分散を高めうる。さらに有利には、界面活性剤はまた、活性化因子の分散を促進し、かつ、物品に組み込むことができる。
【0044】
当該物品は、無機除去剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、及び場合によってはポリマーマトリクス内に分散された添加剤を含んでよい。
【0045】
当該物品は、フィルム又はコーティングであってよい。当該物品は、透明フィルム又はコーティングであってよい。当該透明フィルム又はコーティングの厚さの範囲は、約5μm~約50μm、約5μm~約40μm、約5μm~約30μm、約5μm~約20μm、約5μm~約10μm、約10μm~約50μm、約20μm~約50μm、約30μm~約50μm、約40μm~約50μm、約10μm~約40μm、約20μm~約40μm、又は約30μm~約40μmであってよい。
【0046】
当該物品の透過率は、約70%より高く、約75%より高く、約80%より高く、約85%より高く、約90%より高く、又は約95%より高くてよい。当該透過レベルを達成する、物品中の無機脱酸素剤の量は、形成されるポリマーマトリクスのタイプに依存しうる(すなわち、ポリマーマトリクスの形成に用いられるモノマーのタイプに依存する)。当該ポリマーマトリクスがポリウレタンである場合、透過率が約70%を超えるためには、当該ポリマーマトリクス中の無機脱酸素剤の量は5質量%未満であってよい。当該ポリマーマトリクスがエチレンビニルアルコールコポリマーである場合、透過率が約70%を超えるためには、ポリマーマトリクス中の無機脱酸素剤の量は約20質量%未満であってよい。
【0047】
脱酸素用の当該物品は、作動温度の範囲内で用いうる。当該作動温度は、約0~約125℃、約10~約125℃、約20~約125℃、約30~約125℃、約50~約125℃、約100~約125℃、約10~約100℃、約10~約50℃、約10~約30℃、約20~約30℃の範囲でありうる。作動条件は、保存用に室温であってよい。当該作動条件はまた、食品滅菌用に高温であってよい(例えば、約120℃のレトルト包装)。
【0048】
添加剤を含まない物品の最大脱酸素能の範囲は、60℃で1.41質量%の無機脱酸素剤に基づいて、約7~約9cc/100cm2、約7.5~約9cc/100cm2、約8~約9cc/100cm2、約8.5~約9cc/100cm2、約7~約7.5cc/100cm2、約7~約8.0cc/100cm2、又は約7~約8.5cc/100cm2であってよい。より低温で同様の脱酸素能を発揮するには、より長い時間が必要となる。
【0049】
添加剤を含む物品の最大脱酸素能の範囲は、60℃で1.41質量%の無機脱酸素剤に基づいて、約12~約14cc/100cm2、約12.5~約14cc/100cm2、約13~約14cc/100cm2、約13.5~約14cc/100cm2、約12.0~約12.5cc/100cm2、約12.0~約13cc/100cm2、又は約12.0~約13.5cc/100cm2であってよい。より低温で同様の脱酸素能を発揮するには、より長い時間が必要となる。
【0050】
当該コーティング製剤への当該添加剤を添加すると、無機脱酸素剤の脱酸素能を強化する相乗効果を発揮し得る。当該無機脱酸素剤の脱酸素能は、無機金属材料を高酸化状態から低酸化状態に還元する添加剤の再生効果により、約40~60%の範囲で高められることができ、無機金属の低酸化状態は、再び酸素を除去(又は酸素と反応)して酸化物を形成しうる。無機金属粒子が鉄の場合、添加剤はFe(III)をFe(II)に還元し、それによりFe(II)を再生し、存在する酸素を除去して酸化鉄を形成する。アスコルビン酸である添加剤は、アスコルビン酸の酸化によりFe(III)/Fe(II)サイクルが可能となるため、Fe(III)の蓄積を緩和しうる。再生されたFe(II)は、酸素を除去してFe(III)の形成にさらに用いることができ、脱酸素能が向上する。アスコルビン酸はまたキレート効果によりFe(III)/Fe(II)の酸化還元電位を低下させることができ、アスコルビン酸は第一鉄イオンによる酸素活性化を介して活性酸素種の生成を増強しえた。
【0051】
本開示はまた、無機脱酸素剤、界面活性剤、活性化因子、親水性剤、場合によっては添加剤、及びポリマーマトリクス又は前記ポリマーマトリクスのモノマーを含むコーティング製剤を硬化する工程を含む、物品を形成する方法に関する。当該ポリマーマトリクスは、重合架橋剤を添加してポリマーマトリクスを形成することができる複数のモノマーにより形成されうる。
【0052】
本方法は、さらに、ポリマー基質上に物品をコーティングして、ポリマー基質上にフィルム又はその上にコーティングを形成する工程を含んでよい。
【0053】
当該ポリマー基質のポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)からなる群から選択されうる。当該ポリマー基質上の当該物品の厚さの範囲は、約20~約40μmでありうる。必要に応じて、ポリマー基質上の物品は乾燥されてよい。
【0054】
添付の図面は、開示された実施形態を示し、開示された実施形態の原理を説明するのに役立つ。しかしながら、図面は、例示のみを目的として設計されており、本発明の限界を特定するものとしては設計されていないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】親水性剤としてPAA又はPEOを、対照としてPETフィルムを用いて調製したフィルムの透過率を示すグラフである。
【
図2】Fe/C複合材料とPETフィルムの量を変えて作製したフィルムの透過率を対照として示したグラフである。
【
図3】界面活性剤として粘土を含まない(A)、粘度を含む(B)膜形成の比較を示す写真である。
【
図4】EVOH中の鉄/炭素脱酸素剤により形成された膜の外観を示す写真である。
【
図5】アスコルビン酸の有無による膜の脱酸素能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の非限定的な実施例及び比較例は、特定の実施例を参照することによりさらに詳細に説明されるが、本発明の範囲を限定するものとは決して解釈すべきではない。
【実施例1】
【0057】
材料及び方法
〔シンキーミキサーを用いたコーティング製剤の調製〕
0.015gのNaCl(VWR Chemicals製99.5-100.5%、ACS試薬グレード)を最初に2mlのH2Oで溶解した。鉄/炭素除去剤は、参照により本明細書に援用されるPCT/SG2018/050235に開示されている方法により調製される。簡潔には、鉄/炭素除去剤の炭素球サイズは、約300nmであり、40質量%の鉄及び20質量%のグルコサミンを用いて合成された。様々な量の鉄/炭素脱酸素剤[表1及び2に記載の通り]を溶液に添加し、ボルテックスで混合した。1mlのPAA(ポリサイエンス製分子量450k)を懸濁液に添加し、再度混合した。MMT粘土(Nanocor)溶液(4質量%)1mlを懸濁液に添加し、ボルテックスミキサーを用いて再度混合した。
【0058】
次に、調製した懸濁液をPUモノマー(STAHL社製ポリカーボネート系ポリウレタン水溶液)に添加し、容器に密封し、N2でフラッシュし、シンキーミキサーを用いて5分間混合した。PU架橋剤(STAHL製水性被覆用メラミン系架橋剤)を添加し、さらに2分間混合し、続いて2分間変形させた。コーティング懸濁液をPETフィルム上にコーティングし、真空オーブン中で硬化温度(110℃)で乾燥した。
【0059】
上記の順序でPAAを置換することにより、PEO(Stigma Aldrich製分子量400k)でのフィルム調製のために同じ手順を用いた。PEO及びPAAを親水性剤として用いたフィルムの透明度をPETフィルム単独と比較して
図1に示す。親水性剤としてPEOを用いたフィルムは、親水性剤としてPAAを用いたフィルムと比較して、透明度がより高かった。親水性剤としてPAAとPEOを用いた両フィルムは可視域で70%以上の透過率を示した。
【0060】
表1にコーティング製剤の組成と1週間後の脱酸素能を示す。
【0061】
【表1】
様々な量の鉄/炭素脱酸素剤を用いた膜の透明度をPET膜単独の場合と比較して
図2に示す。透過率は鉄/炭素脱酸素剤の含有量が多いほどわずかに低下した。フィルムの下にあるロゴが明瞭に見える。
表2は、様々な質量%のコーティング製剤を調製するのに用いた様々な量の鉄/炭素除去剤を示す。脱酸素能は、60℃1週間(コーティング厚20μm)に基づいて、計算した。
【0062】
【表2】
コーティング製剤(PU中の4.6質量%鉄/炭素)がない場合、調製した膜に対して脱酸素は観察されなかった。適当な処方により、鉄/炭素質量比率が高まると共に脱酸素能が高まる膜に対して脱酸素酸素を達成しうる。
【実施例2】
【0063】
〔塩化ナトリウムを溶解できないポリマー用塩化ナトリウムによるコーティング製剤〕
0.015gのNaClを最初に2mlのH2Oで溶解した。1mlのMMT粘土溶液(4質量%)を懸濁液に加え、ボルテックスミキサーを用いて再度混合した。0.2gの鉄/炭素脱酸素剤を溶液に添加し、ボルテックスにより混合した。調製した懸濁液を10gのポリウレタン(三井化学製水性ポリカーボネート系ポリウレタン)に添加し、容器に密封し、N2でフラッシュし、シンキーミキサーを用いて5分間混合し、5分間脱気した。コーティング懸濁液をPETフィルム上にコーティングした後、硬化温度で真空オーブン中で乾燥させた。
【0064】
乾燥したフィルムの8cm×12cmの断片を切断し、50mlフラスコに入れ、ゴム隔膜で密閉した。SYSTECH Headspace Gas Analyserを用いて酸素濃度を測定する。結果は以下の通りである。
【0065】
表3に、塩化ナトリウムの有無、室温、60℃(コーティング厚20μm)におけるコーティング製剤の脱酸素能を示す。
【0066】
【表3】
図3に示すように、粘土を界面活性剤としたフィルムは、粘土を界面活性剤としないフィルムと比較して、表面が著しく滑らかであった。4.6質量%の鉄/炭素をポリウレタンに分散させただけでは、分散不良が観察された(
図3A)。粘土添加により、良好な分散が達成された(
図3B)。
【実施例3】
【0067】
〔
EVOHにおける鉄/炭素脱酸素剤〕
EVOHペレットをn-プロパノール/水に溶解して10質量%EVOH溶液を調製し(65:35)、65℃で一晩(約18時間)撹拌した。10質量% EVOH溶液10gに0.2gの鉄/炭素脱酸素剤を添加し、20質量%コーティング(鉄/炭素のEVOHに対する質量)を達成した。
図4にEVOH中の鉄/炭素脱酸素剤を用いた膜の外観を示す。ポリウレタン中で調製した膜と同様に透明度は良好であった。
表4にフィルムの脱酸素能とその外観を示す。
【0068】
【実施例4】
【0069】
〔EVOHにおける粘土を含む鉄/炭素脱酸素剤〕
プロパノール/H2O中の粘土を調製するには、0.2gのMMT粘土を5mlのH2O中に分散させ、プロパノールを5ml添加してプロパノール/H2O中の2質量%を得る必要がある。さもなければ、MMT粘土が沈殿する。上記実施例に従って、鉄/炭素、粘土、EVOHコーティング製剤を製造しうる。
【実施例5】
【0070】
〔アスコルビン酸添加による鉄/炭素コーティングの除去能の改善〕
0.015gのNaClを最初に2mlのH2Oで溶解した。0.2gの鉄/炭素脱酸素剤を当該溶液添加し、ボルテックスにより混合した。50mgのアスコルビン酸(AA)(L-(+)-アスコルビン酸、Alfa Aesar製99+%)を添加した。1mlのPAAを懸濁液に添加し、再度混合した。MMT粘土溶液(4質量%)1mlを懸濁液に添加し、ボルテックスミキサーを用いて再度混合した。
【0071】
次に、調製した懸濁液をPUモノマー(STAHL社製ポリカーボネート系ポリウレタン水溶液)に添加し、容器に密封し、N2でフラッシュし、シンキーミキサーを用いて5分間混合した。PU架橋剤(STAHL製水性被覆用メラミン系架橋剤)を添加し、さらに2分間混合し、続いて2分間変形させた。コーティング懸濁液を40μmの厚さでPETフィルム上にコーティングし、硬化温度で真空オーブン中で乾燥させた。4.6質量%の鉄/炭素コーティング製剤を達成した。
同じ手順を用いて、3.5質量%の鉄/炭素でフィルムを調製した。
【0072】
表5は、アスコルビン酸(AA)によるフィルムの除去能が向上(コーティング厚40μm)したことを示す。
【0073】
【実施例6】
【0074】
〔
アスコルビン酸添加による鉄・炭素材料の除去能の向上〕
調製した鉄/炭素粉末の脱酸素能と性能をアスコルビン酸を添加した場合と比較した。0.05gの鉄/炭素脱酸素剤粉末を0.0035gのNaCl及び0.03gのアスコルビン酸と混合し、混合物を50mlの三角フラスコに入れ、ゴム隔膜で密閉した。酸素比率を所定の期間モニターした。アスコルビン酸を添加すると、相乗効果が観察された。Fe(III)サイクルをFe(II)サイクルに還元するアスコルビン酸の再生効果により、脱酸素能と持続時間は上昇した。
アスコルビン酸の有無による鉄/炭素脱酸素剤の脱酸素特性を
図5に示す。アスコルビン酸を添加すると、さらに脱酸素能が向上する。
表6は、アスコルビン酸の添加すると、鉄/炭素脱酸素剤材料の脱酸素能が改善されたことを示す。
【0075】
【実施例7】
【0076】
〔アスコルビン酸添加による鉄/炭素コーティングの除去能の改善〕
1.33質量%のMMT粘土溶液3mlをアルゴン(Ar)で10分間バブリングし、溶液中の酸素を除去した。0.05gの鉄/炭素脱酸素剤粉末を粘土溶液に添加し、10分間ホモジナイズする一方で、Ar.でバブリングした。予め水1mlに溶解した、0.005gのNaCl及び0.03gのアスコルビン酸を、上記の鉄/炭素懸濁液に添加した。ポリウレタン10gも加え、さらに10分間ホモジナイズした。次いで、混合物をシンキーミキサーを用いて2分間脱気した。コーティング懸濁液を厚さ20μmのコーティングバーを用いてPETフィルム上にコーティングし、硬化温度で真空オーブン中で乾燥した。1.41wt%の鉄/炭素コーティング製剤を達成した。
アスコルビン酸を含まないPETフィルム上に1.41wt%の鉄/炭素コーティングでフィルムを調製するために同じ手順を用いた。5×5cmのフィルムサイズを切断し、20mlバイアルに入れ、100%湿度下で60℃で試験した。コーティング中にアスコルビン酸を添加すると、除去速度と容量が高まった。
表7は、アスコルビン酸を添加すると、鉄・炭素コーティングの除去能が向上したことを示す。
【0077】
【表7】
データを比較したところ、鉄/炭素脱酸素剤とアスコルビン酸の組み合わせで得られる効果は、明らかに、個々の効果の単なる付加ではないことが示された。アスコルビン酸は公知の脱酸素剤であるが、脱酸素剤反応それ自体は遅いため、大量のアスコルビン酸が必要である。対照実験では、アスコルビン酸単独では脱酸素は検出されなかった。この実施例は、アスコルビン酸が鉄/炭素脱酸素剤と共にFe(III)からFe(II)サイクルに対して再生効果を形成し、アスコルビン酸と鉄の間の相乗効果をもたらすことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示では、当該物品は、効率的に脱酸素するための食品又は飲料の包装用の包装フィルムとして用いうる。当該包装フィルムは、脱酸素剤として用いることができ、当該物品を介した酸素の流れに対する透過性が低くてよい。食品又は飲料の包装に当該物品を用いると、食品又は飲料の保存期間が延長されうる。
上記開示を読んだ当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な他の修正及び適合が明らかとなることは明らかであり、このようなすべての修正及び適合は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。