(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-29
(45)【発行日】2024-03-08
(54)【発明の名称】溶融延伸ポリアミドフィラメント
(51)【国際特許分類】
D02J 1/22 20060101AFI20240301BHJP
C08G 69/00 20060101ALI20240301BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240301BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
D02J1/22 J
C08G69/00
C08J5/18
C08L77/00
(21)【出願番号】P 2021517818
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2019077341
(87)【国際公開番号】W WO2020074572
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-08-15
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラン デ ガンス リー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ヴィールプッツ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ハルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ダーク ハインリッヒ ビュッカー
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-206115(JP,A)
【文献】特開平03-241007(JP,A)
【文献】特開平05-156513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0344489(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
C08G 69/00 - 69/50
C08J 5/18
C08L 77/00 - 77/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも80重量%の直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族または半芳香族ポリアミドを含む延伸フィラメント
の製造方法であり、
乾式フィラメントをガラス転移温度と融点の間の温度で延伸し、
延伸したフィラメントを、
前記延伸時の全引張荷重
下で、水を使用せずに乾式で100℃未満に冷却
する、延伸フィラメント
の製造方法。
【請求項2】
前記延伸時の最小延伸温度Tstr,minが式(1):
【数1】
(式中、Tmは融点であり、Tgはガラス転移温度であり、XCは結晶化度であり、前記結晶化度は式(2):
【数2】
によって求められ、パラメータTm、Tg、およびΔHmは、EN ISO 11357-1:2016Dに準拠してDSCによって測定され、
【数3】
は、標準的な表組みから得られる。)
によって求められる、請求項1記載の延伸フィラメント
の製造方法。
【請求項3】
ガラス転移温度より高く、融点より低い温度
に加熱された場合に、引張方向の収縮性/弛緩性が低く、延伸された長さに対して最大6%である、請求項1または請求項2記載の延伸フィラメント
の製造方法。
【請求項4】
ガラス転移温度より高く、延伸時の温度より低い温度に加熱された場合に、引張方向の収縮性/弛緩性が低く、延伸された長さに対して最大6%である、請求項1または請求項2記載の延伸フィラメントの製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミド、アミノカルボン酸、もしくはラクタムのモノマー、またはこの種の異なるモノマーの混合物の炭素原子の算術平均
が少なくとも7.0であり、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせである場合、ジアミンとジカルボン酸の炭素原子の算術平均
が少なくとも7.0である、請求項1~請求項
4のいずれか1項記載の延伸フィラメント
の製造方法。
【請求項6】
前記延伸において、前記乾式フィラメントを少なくとも2.5倍延伸する、請求項1~請求項
5のいずれか1項記載の延伸フィラメントの製造方法。
【請求項7】
複合材料の製造のための、請求項1~請求項
6のいずれか1項記載の延伸フィラメント
の製造方法により製造された延伸フィラメントの使用。
【請求項8】
巻線層の製造のための、請求項1~請求項
6のいずれか1項記載の延伸フィラメント
の製造方法により製造された延伸フィラメントの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族または半芳香族ポリアミドをベースとする延伸フィラメントであり、フィラメントをガラス転移温度と融点の間の温度で延伸し、前記フィラメントを最大引張荷重で室温に冷却して得られる、延伸フィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化材料は通常、ポリマーにガラス繊維または炭素繊維を使用することを基本としている。これは、繊維とマトリックス材料との適合性に根本的課題があり、したがって、補強材料とマトリックス間の接着性に課題があることを意味している。これは、熱可塑性プラスチックをマトリックスとして使用する場合に著しい問題となることがしばしばある。さらに、これらの材料は、繊維を分離することが非常に難しいため、リサイクルできない。
【0003】
従来技術は、主として、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンを延伸する2種の方法である、溶融紡糸法(国際公開公報第2004/028803A1号)とゲル紡糸法(国際公開公報第2010/057982A1号)とを開示している。ポリオレフィンは室温で容易に延伸され、延伸による発熱のために比較的遅い延伸速度が選択される必要がある。延伸ポリオレフィンには、高温で処理すると延伸後に非常に著しく収縮するため、最初に所望の作業温度で平衡化する必要があるという欠点がある。さらに、延伸ポリオレフィンは、機械的価値が非常に限られているため、強化繊維としての使用が制限される。特に、熱安定性の欠如と圧縮応力(冷間成形性)の欠如は欠点である。
【0004】
特許文献1および特許文献2は、水または水蒸気などの助けを借りて制御された収縮による、延伸ポリアミドワイヤの機械的価値の向上を主張している。しかし、収縮プロセスは、本発明の目的にとっては不利である。より具体的には、引き裂き抵抗に関係する水の弊害である。
【0005】
特許文献3は、いわゆるプリプレグの構成要素としての、種々の熱可塑性プラスチック(好ましくはポリプロピレンおよびポリエチレン)の延性繊維を開示している。これらは、熱可塑性繊維と脆性繊維(特に炭素繊維)とのウィーブを意味すると理解されている。そして、これらの材料は、延性繊維材料のマトリックス中で熱成形または圧縮されることが好ましい。これにより、延性繊維が溶け、マトリックスと脆性繊維の間の接着性が改善される。
【0006】
特許文献4には、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(PPTA、以下のブランド名のアラミド:Kevlar(商標)(DuPont社の商標、米国)、Twaron(商標)(Teijin Lim社の商標、日本国))などの全芳香族ポリアミド繊維の製造が記載されている。これらの繊維は、硫酸溶液から、いわゆる湿式紡糸法によって製造される。この方法は、高額で、技術的に困難であり、そして環境に有害である。
【0007】
特許文献5では、半芳香族ポリアミドが5未満の延伸率で延伸されている。延伸温度は、ガラス転移温度をほんの少し下回ることが好ましい。引張荷重下で延伸フィラメントを可能な限り高温に加熱することによって、収縮を弱めることができ、この温度は延伸温度を上回る。したがって、これは、フィラメントを2回加熱する必要があることを意味している。
【0008】
特許文献6は、2つの非同形ポリアミドの混合物を開示しており、そのガラス転移温度は、120℃未満と140℃超でなければならない。前記混合物は、タイヤの安定化に用いられる。
【0009】
特許文献7では、まず粗麻を複数の送りロールと引き取りロールとの間で引っ張り、続いて当該引張フィラメントを加熱および冷却し、制御された張力下でそれらを焼鈍する方法によって、繊維が製造される。
【0010】
本明細書の文脈における「フィラメント」の語は、繊維、フィルム、またはリボンを意味すると理解される。好ましいフィラメントは、フィルムまたはリボンである。特にフィルムは、複数の方向に延伸されることが好ましい。フィラメントは、アスペクト比が2より大きい、より好ましくは10より大きい、よりいっそう好ましくは50より大きい、特に好ましくは100より大きいことが好ましい。アスペクト比は、厚みに対する幅の比として定義され、長さは、 幅の5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは100倍以上、特に好ましくは1,000倍以上である。いわゆる連続フィラメント(例えば、長さが10m以上のもの)が特に好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】ドイツ特許公報第766441号
【文献】イギリス特許公報第598820号
【文献】国際公開公報第2013/190149A1号
【文献】米国特許公報第3,869,430A号
【文献】国際公開公報第2015/107024A1号
【文献】米国特許公報第3,393,252号
【文献】米国特許公報第5,011,645号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、脂肪族または半芳香族熱可塑性プラスチックから延伸フィラメントを製造すること、そして、無害かつ単純で溶媒を必要としないポリアミドの延伸方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、フィラメントを延伸後に最大引張荷重で冷却して得られる、ポリアミドの延伸フィラメントによって解決された。
【0014】
本発明は、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族または半芳香族ポリアミドを、少なくとも80重量%、好ましくは85重量%、より好ましくは90重量%、よりいっそう好ましくは95重量%含む延伸フィラメント、特に直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族または半芳香族ポリアミドのみからなる延伸フィラメントであり、
乾式フィラメントをガラス転移温度と融点の間の温度で延伸し、
前記フィラメントを最大引張荷重で、乾式で、100℃未満に冷却して得られる、延伸フィラメント
を提供するものである。
【0015】
本発明はさらに、本発明による延伸フィラメントの製造方法を提供するものである。
【0016】
本発明はさらに、複合材料を製造するための、本発明による延伸フィラメントの使用を提供するものである。
【0017】
本発明はさらに、巻線層を製造するための、本発明による延伸フィラメントの使用を提供するものである。
【0018】
本発明による延伸フィラメントの利点の1つは、高温下でほとんど収縮しないこと、すなわち、弛緩作用がほとんどないことである。
【0019】
本発明による延伸フィラメントの機械的安定性が高いことも利点である。機械的安定性は、延伸方向の破断強度の形で測定されることが好ましい。加えて、破断前の最大強度を測定してもよい。
本発明による延伸フィラメントは、高温下でさえも機械的安定性が高いことも利点である。
【0020】
本発明による延伸フィラメント、本発明によるフィラメントを含む本発明による複合材料、そして本発明による製造および使用は、本発明がこれらの例示的な実施形態に限定されることを意図することなく、以下の例として説明される。範囲、一般式、または化合物群を以下に規定する場合、これらは、明示的に言及されている対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を除くことによって得られるすべての部分範囲および部分化合物群も包含することを意図されている。本明細書の文脈で文献が引用される場合、その全内容は、本発明の開示内容の一部であることが意図されている。以下に百分率の数値を示す場合、特に明記しない限り、これらは重量%での数値である。組成物の場合、百分率の数値は、特に明記しない限り、組成物全体に対する数値である。以下に平均値を示す場合、特に明記しない限り、これらは質量平均(重量平均)である。以下に測定値を示す場合、特に明記しない限り、これらの測定値は、101,325Paの圧力かつ25℃の温度で測定されたものである。
【0021】
保護範囲には、本発明による生成物の、商取引上慣習的な完成品および包装品それ自体と、それらの大きさを縮小した任意の形態との両方が、特許請求の範囲に規定されていない範囲まで含まれる。
【0022】
ポリアミドは、ω-アミノカルボン酸および/または対応するラクタムから、ジアミンとジカルボン酸との組み合わせによって調製可能である。この場合、ω-アミノカルボン酸もしくはラクタム、あるいはこの種の異なるモノマーの混合物の炭素原子の算術平均は、好ましくは少なくとも7.0個である。ジアミンとジカルボン酸の組み合わせの場合、ジアミンとジカルボン酸の炭素原子の算術平均は、好ましくは少なくとも7.0個である。本発明の適切なポリマーは、PA 6.9(ヘキサメチレンジアミン[6炭素原子]およびノナン二酸[9炭素原子]から調製可能;したがって、モノマー単位の炭素原子の平均は7.5個である)、PA 6.8、PA 6.10、PA 6.12、PA 6.13、PA 6.14、PA 6.18、PA 10.6、PA 10.10、PA 10.12、PA 12.12、PA 10.13、PA 10.14、PA 11、PA 12、PA 6.T、PA 9.T、PA 10.T、PA 12.T、PA 14.T、PA PACM.10(PACM=4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン)、PA PACM.12、PA MACM.10(MACM=3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン)、PA MACM.12、PA TMD.10(TMD=1,6-ジアミノ-2,4,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジアミノ-2,2,4-トリメチルヘキサン)、PA TMD.12、そして、一般的にはジアミンとノナデカン二酸に由来するポリアミドである。また、コポリアミドも適している;言及されたジアミンとジカルボン酸、ω-アミノカルボン酸およびラクタム単位については、必要に応じて組み合わせることができる。加えて、これらのポリアミドをベースとするポリエーテルアミドとポリエーテルエステルアミドも本発明に従うと適切である。ポリエーテルアミドは、ジカルボン酸で制御されたポリアミドブロックとポリエーテルジアミンブロックから形成され、ポリエーテルエステルアミドは、それに対応して、ジカルボン酸で制御されたポリアミドブロックとポリエーテルジオールブロックから形成される。ポリエーテル単位は、一般に、エーテル酸素当たり2~4個の炭素原子を有する。ポリエーテルアミドとポリエーテルエステルアミドは、当業者に知られており、多くの種類で市販されている。
【0023】
モノマー単位中のポリアミドの炭素原子の算術平均は、40個以下、より好ましくは26個以下であることが好ましい。
【0024】
ポリアミドは、いかなる溶媒も含まないことが好ましい。
【0025】
「乾式」の語は、フィラメントが液体、特に水と接触しないことを意味する。したがって、フィラメントは、最大で1.5重量%、より好ましくは最大で1重量%、特に最大で0.9重量%の水を含むことが好ましい。水分含有量は、標準的な従来技術の方法によって、好ましくは電量計を備えたカールフィッシャーによって測定される。適切な例は、メトローム KF831電量計である。 適切なオーブン温度は170℃である。
【0026】
最小延伸温度T
str,minは、式(1):
【数1】
(式中、T
mは融点であり、T
gはガラス転移温度であり、X
Cは結晶化度であり、前記結晶化度は式(2):
【数2】
によって求められ、本発明の範囲内のパラメータT
m、T
g、およびΔH
mは、DSC(好ましくはEN ISO 11357-1:2016Dに準拠したもの、より好ましくは実施例に記載されたもの)によって測定される。)
によって求められることが好ましい。
【0027】
結晶化度X
Cを計算するための値
【数3】
は、標準的な表組み(例えば、van Krevelen「ポリマーの特性」、第4版、2009年)から得られる。以下の値を想定することが好ましい。
【表1】
【0028】
値は、DSCの2回目の加熱における未延伸フィラメントのポリアミドに関係している。
【0029】
結晶化度が0、そして0に近い場合、延伸温度はガラス転移温度より少なくとも5℃高くなる。結晶化度が1、そして1に近い場合、延伸温度は溶融温度より少なくとも5℃低くなる。
【0030】
本発明によるフィラメントは、最小延伸温度T
str,minを超える温度で、より好ましくは、式(G3)に従って規定される延伸温度で延伸されることが好ましい。
【数4】
(G3)
(式中、γは、0.05~0.95、好ましくは0.1~0.8、より好ましくは0.2~0.7、特に好ましくは0.3~0.6の値である。)
【0031】
本発明によるフィラメントは、2.5以上、より好ましくは5以上、よりいっそう好ましくは10以上、特に好ましくは15以上の延伸率(SF)で延伸されたものであることが好ましい。
【0032】
本発明によるフィラメントは、自由空間で接触することなく延伸されたものであることが好ましい。延伸が行われる領域は、環境雰囲気が加熱される領域、すなわち、一種の炉、管状炉、または2つの加熱プレート間の空間などである。
【0033】
本発明によるフィラメントは、連続的にまたはバッチ式に延伸されることができる。
【0034】
静的延伸、すなわち、フィラメントの一端を10mm/分から最大200mm/分まで、好ましくは20mm/分から最大100mm/分まで、より好ましくは30mm/分から最大80mm/分までの速度にとどめる延伸操作が好ましい。
【0035】
好ましい連続延伸操作は、低搬送速度が、5mm/分から最大20,000mm/分まで、好ましくは10mm/分から最大3,000mm/分まで、さらに好ましくは50mm/分からから最大2,500mm/分まで、より好ましくは100mm/分から最大2,000mm/分まで、よりいっそう好ましくは500mm/分から最大1,500mm/分までの範囲となるように行われることが好ましい。延伸率は、より高速で動作する搬送ユニットの速度を計算するために使用される。
【0036】
本発明によるフィラメントは、たった1回の延伸操作によって、あるいは複数回の延伸操作によって連続して延伸することができる。後者の場合、選択される延伸温度は、高温でなければならない。1回きりの延伸操作がより好ましい。
【0037】
本発明によるフィラメントは、延伸操作後に100℃未満に冷却される。この冷却は、徐々に、好ましくは少なくとも1秒間、より好ましくは少なくとも5秒間、よりいっそう好ましくは少なくとも10秒間、さらに好ましくは少なくとも30秒間、特に好ましくは少なくとも1分間行われることが好ましい。
【0038】
延伸フィラメントの水冷は除外される。延伸フィラメントは、あらゆる状態の水にさらされないことが好ましく、これは、蒸気を明確に除外するものであり、さらに、標準状態から逸脱したもの(特に、異なる圧力を使用して生成された異なる物質状態の水)さえも除外する。
【0039】
本発明による延伸フィラメントは、融点より低い温度に加熱されたときに、張力方向にわずかだけ収縮/弛緩することが好ましい。
【0040】
弛緩温度は、ガラス転移温度より高く、溶融温度より低いこと、好ましくは延伸温度より低いことが好ましい。
【0041】
本発明によるフィラメントは、延伸された長さに対して、最大6%、好ましくは最大5.5%、より好ましくは最大5%、よりいっそう好ましくは最大4.5%、特に好ましくは最大4%弛緩することが好ましい。
【0042】
本発明によるフィラメントは、80℃の弛緩温度で、延伸された長さに対して、最大6%、好ましくは最大5.5%、より好ましくは最大5%、よりいっそう好ましくは最大4.5%、特に好ましくは最大4%弛緩することがより好ましい。
【0043】
本発明によるフィラメントの弛緩は、引張応力下で影響を受けないことが好ましい。
【0044】
本発明による延伸フィラメントは、長さに対して直角な寸法の5倍を超える長さを有することが好ましい;フィラメントは、いわゆるエンドレスフィラメントであることが好ましい。フィラメントの長さは、常に張力方向で測定される。
【0045】
本明細書の文脈における「フィラメント」の語は、繊維、フィルム、またはリボンを意味すると理解される。特にフィルムは、複数の方向に延伸されることが好ましい。
【0046】
個々のフィラメントを加工して、フィラメント束などの複合材料を作製することができる。したがって、好ましい繊維複合材料は、繊維束と糸である。繊維束や糸を含むフィラメント束を加工し、さらなる複合材料(好ましくは、一方向または多方向スクリム、マットなどのウィーブ、およびニット、あるいは混合形態物)を得ることができる。
【0047】
スクリムは、例えば、特定の長さに切断されたフィラメント、またはチューブ周りに巻かれた形のエンドレスフィラメントのいずれかで構成されていてよい。
【0048】
エンドレスフィラメントで構成された好ましいスクリムは、中空体の周りに巻かれた層である。それらは、単方向または多方向であることが好ましい。多方向巻線層は、フィラメントの張力方向に対して角度を有する。この角度は、5°~120°、より好ましくは30°~90°、特に好ましくは15°~80°の範囲である。チューブ周りに層を巻く場合、これらの巻線は、チューブの中心に対して傾斜角を有する。異なる巻線層は、異なる傾斜角を有することが好ましい。チューブ周りの巻線層は、巻き回った後に、層の縁が互いに面一になるように、傾斜角に対して設計されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、表1の結果のグラフである。左側グループの延伸率1.1(P 1.1)右側グループの延伸率2.5(P 1.2)太い陰影:弛緩温度80℃細かい陰影:弛緩温度120℃垂直方向の陰影は、延伸方向の収縮を表し、水平方向の陰影は、延伸方向に対して直角な伸長を表す。
【
図2】
図2は、σ
mを測定した温度に対する最大強度(σ
m[MPa])のプロットである;延伸率(SF)が異なるサンプルの測定。
【実施例】
【0050】
材料
PA 6.10:ベスタミド Terra HS 16(エボニック社)
PA 10.10:ベスタミド Terra DS 18(エボニック社)
PA 12:ベスタミド L2101 nf(エボニック社)
トロガミド:CX7323(エボニック社)
PA 11
【0051】
方法
DSC:
パーキンエルマー社、ダイアモンドタイプ、自動ピーク認識および自動集積、DIN EN ISO 11357-1:2010に準拠、加熱速度20K/分。
【0052】
実施例1 試験片の作製
上記のポリアミドを、押出機(コリンE45M)を用いて、融点より5℃~10℃高い温度(例えば、PA12の場合、250℃~260℃)で押し出して、厚さ150μm、350μm、および650μmのリボンを作製し、30℃~40℃に冷却した。
リボンを1.4m/分の速度でカレンダー加工にかけた;幅は35mmであった。
P 1.*はPA 12のサンプルである。
P 2.*はトロガミドのサンプルである。
P 3.*はPA 6.10のサンプルである。
P 4.*はPA 10.10のサンプルである。
P5.*はPA 11のサンプルである。
【0053】
実施例2 試験片の延伸
方法1
引張試験機(ズウィック社、Z101-K)で、実施例1による試験片を140℃で50mm/分の速度で延伸した。引張応力を解除する前に、試験片を室温まで冷却した。冷却は、2分以内にゆっくりと、あるいは10秒以内に素早く行った。
以下の表によるさらなるサンプル:
【表2】
【0054】
方法2
実施例1によるエンドレス試験片をコイル上に準備し、連続機(リテックドローイング)上で、1rpm~2.5rpmの材料供給速度かつ最大32rpmの引張速度で、延伸率(SF)3.5~8に延伸した。延伸は、60℃~140℃の温度で行われた。
実施例0:連続延伸法-サンプルP 1.*(PA12)、厚さ650μm、幅10mm。
【表3】
【0055】
実施例3 弛緩
実施例2からの試験片を10cmの長さに切断した。実施例2、方法1による試験片を両端で切断した。試験片を、熱オーブンに、引張荷重なしで、自由に移動できる方法で個別に横置きし、80℃と120℃の温度で5時間保管した。
【0056】
冷却後、サンプルの2つの面積寸法を測定した。結果を表1と
図1に示す。
【表4】
【0057】
ポリアミドサンプルは弛緩性が低く、驚くべきことだが、延伸率が高くなるにつれて弛緩性はいっそう低下する。
【0058】
実施例4 機械的試験
引張試験
DIN 527-5:1997に準拠したダンベル状試験片(試験片A)を、延伸リボンから打ち抜いた;厚さは、延伸実験の結果のものであり、変更されなかった。引張強さを3つの試験片で測定し、いずれの場合もズウィック引張試験機を使用して、異なる温度で測定した。試験速度=5mm/分、クランプ長さ=120mm、およびインクリメンタルゲージの測定長さ=75mm。
温度23℃、相対湿度50%。
【0059】
結果を表2、表3、および
図2に報告する。結果は、3つの試験片の算術平均である。
【表5】
【表6】
【表7】